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復旧に県の総力 津波対策県議会

県議会本会議

本会議は午後一時二十分開会、全
員規律して犠牲者に対する黙とう
をささげた。ついで阿部知事から
臨時県議会招集のあいさつとして
 チリ地震津波による被害金額は
 九十八億九百万円に達し、さら
 に死者五十五人を数えたが、こ
 れらの犠牲者のめい福を祈りた
 い。県は四市二町に直ちに災害
 救助法を発動し、応急対策をと
 った。県はできるだけ送球に災
 害復旧対策を講じるが、政府の
 強力な救援施策も必要なので、
 各種特別立法の制定を要望し、
 対策に手ぬかりのないよう措置
 したい。
と述べた。このあと小川災害対策
本部長(副知事)が災害上京と応
急対策を報告した。ついで山崎議
長から諸般の報告のあと回帰を一
日間と決定、提出議案を一括議題
とし、吉岡総務部長から提案理由
の説明が行なわれ、委員会に付託
することを決定、議長を除く全員
で災害対策特別委員会を設置し、
審査のため同一時五十五分休憩。
同四時十二分再開、山本商水労委
員長、白木沢災害対策特別委員長
から付託議案の審査報告が行なわ
れ、質疑ののち採決にはいり全員
で可決、ついで発議案を原案通り
可決、被災関係議員を代表して鈴
木八五平氏(自民)から県の救済措
置に対する謝辞が述べられ、同四
時三十七分本議会を終わり、閉会

四議案も可決

可決された議案つぎのとおり
 ▽財政再建計画の変更▽三十五
 年後歳入歳出追加予算▽県立水
 産高校実習船兼指導船岩手丸の
 売却および建造工事の請負契約
 の締結に関する承認▽津波によ
 る災害復旧対策について各派共
 同提案による発議案。

応急住宅に二千五百六十万

可決された応急対策費と災害救助
費のおおなものはつぎのとおり。
◇災害救助費 五千五百八十九万
 五千八百円▽避難所設置費十
 六万五千二百円▽炊きだしその
 他食品の給与費百七十二万四百
 円▽被服寝具その他生活必需品
 千百三十三万六千百円▽救出捜
 索費五万六千五百円▽埋葬一万
 一千円▽学用品の給与五百二万
 二千五百円▽障害物除去六十一
 万円▽応急仮設住宅の設置二千
 五百六十七万六千円▽災害被災
 者に対する生業資金二百七十六
 万円
◇津波災害対策費 一億八千六百
 六十三万六千四百円▽警察用建
 物復旧修繕費八十三万一千八百
 円▽大船渡港■所応急修理費十
 二万四千円▽河川等災害復旧事
 業費千六百万八千円▽県単災害
 復旧事業費四百五十万円▽道路
 橋りょう等災害応急対策費七十
 万円▽久慈丸復旧費二十万五千
 円▽種市丸復旧費五万円▽広田
 丸復旧費百五十万円▽鏡丸撤去
 費五万円▽伝馬船建造費二隻九
 万円▽水産加工場建物復旧十万
 三千円▽伝染病予防対策費六十
 四万三千三百円▽被災農家の営
 業資金借り受けを円滑にするた
 めの県信連に対する金融準備積
 み立て金二千万円▽農作物種苗
 対策費二百三十万六千円▽被災
 中小企業者の復旧資金借り受け
 を円滑にさせるための商工中金
 に対する金融準備積み立て金四
 千万円▽被災漁業者の復旧資金
 借り受けを円滑にさせるための
 信漁連に対する金融準備積み立
 て金八千万円▽林野対策費十八
 万八千四百円▽農地および農業
 施設の応急復旧事業費千百六十
 万六千円。

県税の減免措置 県側答弁 六月県会に出す 災害対策特別委

災害対策特別委員会は午後二時五
分から開かれ、委員長白木沢純三
氏(自民)副委員長岩城惣一郎氏
(無所属ク)を互達、県議会から
派遣された津波調査班▽第一般(
大船渡、陸前高田地区)佐藤亦助
▽第二班(釜石、大槌地区)岩持
静麻▽第三班(宮古、山田地区)
山本徳太郎▽第四班(久慈地区)
金子太右衛門の各氏から報告が行
なわれ、審議にはいった。おもな
質疑次のとおり。
岩城惣一郎氏(無所属ク) 被災
 者に対する県税の減免措置を考
 えているか、また仮設住宅はど
 の程度建設するか。
吉岡総務部長 こんご国税の減免
 措置がとられるものと考えられ
 るので、この見とおしがつき次
 第、六月定例県議会に提案した
 い。減免率は被害実体をとらえ
 国税と調整して慎重に検討する
伊藤福祉課長 災害救助法では流
 失、全壊戸数の三分ノ一を措置
 することになっているが、現地
 の要望を聞いて十分配慮した。
 大船渡百十五戸、陸前高田四十
 五戸、大槌二十七戸、山田四十
 三戸、宮古二十九戸計二百五十
 九戸を建設する。
鈴木八五平氏(自民) 系統金融
 を受けることのできない一般被
 災者に対する資金手当はどうか
伊藤福祉課長 生業資金二百七十
 六万円を用意し、一世帯一万二
 千円を限度として貸しつける。
 また国民金融公庫などにも話し
 合いを進めており、五つの制度
 を合理的に活用して遺憾のない
 ようにしたい。

日報アンテナ 沿岸議員、議場を制す?

○…一ヶ月ほど前、東京でカゼ
のとりことなって静養していた
阿部知事が、津波臨時県議会に
久しぶりの顔を
見せた。壇上に
立った顔はツヤ
がなく、やつれ
気味。閉会後、
県議諸氏がお見
舞いの言葉を述
べていたが、健康上ばかりでな
く、岩手丸臨時県議会や、津波
県議会など五月中に二度も県政
上ありがたくない臨時県会議が
続き、渋い顔だった。
○…この日の議会は沿岸議員デ
ーといった感じ。議長はもちろ
ん宮古選出の山崎議長だが、災
害対策特別委員長は大船渡選出
の白木沢純三氏、副委員長は久
慈選出の岩城惣一郎氏といった
ぐあい。質問も沿岸議員の独壇
場で、選挙区向けの被災状況に
対する措置をたずねるものが多
かった。最後に被災地議員を代
表して大船渡選出の鈴木八五平
氏が県ならびに議会を通じて援
助に対する謝辞を述べたが、災
害県会らしく黙とうに始まり謝
辞に終わるといった近ごろめず
らしい議会風景だった。
○…津波被災地のお見舞いとし
て県東京事務所には各方面から
義援金が寄せられているが、天
皇、皇后両陛下のお見舞い金一
封をはじめとして愛知、長崎県
知事などが主なところ。愛知は
昨年伊勢湾台風でひどい目にあ
い、長崎は日本の台風銀座とい
われるだけに、天然の災害には
ことさら敏感なのか復旧の激励
とともにこんごの参考にと、地
元の復旧資料をそろえ県関係者
もすっかり感激している。
    (この項東京支社発)

社説

風土計

津波の被災地救護につ
いて、岩手日報朝刊の
「声」欄に、対象的な
投書があった。三十日
は「見舞い品は心をこ
めて」と題した■野市
の公務員■村郁子さん
で、三十一日は下閉伊郡山田町の
織笠小学校の先生が「感激にむせ
ぶ救援物資」と、岩手郡滝沢村■
木小学校とPTAの厚情に感謝し
ている▼津波に限らず大きな災害
のを受けた地方の人々に、一刻も
早い暖かな救護の手が大切なの
はいうまでもない。第三者には想
像もつかない窮乏のさなかであれ
ば、つまらない品でも意外に役立
つことが多い。けれども援護の気
持ちがあっても、結果においてハ
キダメに捨てるように受け取られ
るのは、みんなで注意しなくては
ならない▼遠野市の婦人公務員の
場合は、汚れがひどい衣類などを
洗ってから送るようにしているの
は、ほんとうにありがたいし「見
舞い品はお互にいただく人の身に
なって贈ろう」という心がけは、た
しかに必要だと思う。そうでない
とせっかくの愛の手が「仏も作ら
ず魂も入れず」になりかめない▼
岩手郡滝沢村の篠木小学校とPT
Aが協力して、下閉伊郡山田町の
織笠小学校へ米をはじめ救援物資
を自動車で運んだのは、被災地に
咲いた佳話の秀逸だった。山田町
は道路、鉄道、通信ともに途絶し
て、一時は陸の孤島になったため
救援が遅れていたから、滝沢村の
人々の友情が、ひとしお身にしみ
たのは想像に難くない▼篠木小学
校は昭和三十二年から織笠小学校
で海浜学校を開いた。三年の間に
暖められた友情が、かくもタイ
ムリーに花を咲かせた篠木小学
校のPTAには、県民として深じ
んな感謝と敬意を表したい。そし
てお礼の言葉を「声」の欄に投書
された織笠小学校の先生の気持ち
は、まったく同感である▼滝沢村
篠木と山田町織笠は、道路キロに
して約百四十キロだが、災害のさな
かであれば、運ぶ自動車の苦労も
大変だったろうと思われる。両校
の友情の花はともすれば暗くなり
がちな被災地に、明るい励ましと
なったことだろう。さらに、安保
をめぐる騒然たる近ごろの世情に
も、一服の清涼剤のようにも思わ
れてならない。

お見舞

この度突然襲来した未曾有の大津波により
災害を蒙られました皆々様に心からお見舞
申上げます。一日も早く復旧されるよう心
からお祈り致します。
昭和三十五年五月三十一日
 日本ゴム株式会社
仙台支店