津波被害82億越す 県知事ら上京「特別立法」働きかけ
県災害対策本部は沿岸一帯を襲ったチリ地震津波の県関係被害状況を二十六日夜まとめたのが、被害総額八十二億三千三百二十六万二
千円にのぼっていることが判明した。
小川副知事、川田土木部次長らは
陳情第一陣として同夜この調査資
料と写真をたずさえ上京したが、
復旧対策として伊勢湾台風にとっ
たと同様な災害復旧の各種特別立
法を実現するよう強く政府、国会
などに働きかける。
■■被害状況によると被災者総数
は三万三千六百七十二人、六千七
百八十三世帯におよび、死者は五
十五人、行くえ不明八人、負傷者
二百六に(うち重傷五十四人)に
達し、物的損害は八十二億三千三
百二十六万二千円となっている。
このうちもっとも被害の大きい
のは個人住宅を含む建物で二十
六億一千九百四十四万円、つい
で漁船、共同施設、ノリ、カキ
などの養殖施設、定置網など漁
業施設と生産面に影響の大きか
った水産関係が二十二億八百九
十四万七千円となっている。三
番目は商工業および鉱業関係の
十二億七千八百二十二万円だが
これは商店街の商品流失損害な
どによるもの。
このほか土木関係が九億一千三万
七千円、耕地四億五千六百五十万
円などあるが、農作物は塩害を受
けた苗代、野菜など二億二千四十
九万六千円の被害で、林産は二億
四千三百二十四万七千円となって
いる。鉄道および電信、電話など
の公用、公共施設は二億六千七百
七十三万一千円、水道などの公営
企業は二百八万円で、その他畜産
関係三百三十六万円、教育施設二
千三百二十万四千円が主なもので
ある。
これらの災害に対し、県は応急対
策と恒久対策を要望するが、こん
どの災害復旧には新しい特別立法
措置以外に抜本的な対策はないと
して農林、水産、土木、厚生など
全般にわたって現行災害法のなか
で規定されている国庫補助率を増
額し、災害事業の適用ワクを広め
るなど伊勢湾台風と同様な特別立
法を要望する。また差し当たって
災害の現地査定を送球に行ない国
の補助額をきめるよう要望するが
応急措置として
▽特別交付税の増額▽公営住宅
の国庫補助額を高率とし、地方
負担額は全額起債による▽公庫
融資事務手続きの簡素化▽救農
土木事業の実施▽塩害除去費の
助成▽被保護世帯に対する一時
扶助費の増額。
などを陳情する。一方恒久対策と
しては
▽海岸保全事業の促進▽自作農
維持創設資金の融資ワク拡大▽
漁業共済制度の強化。
などをあげ、実現の促進を働きか
ける。
水産関係がひどい
以下被害のとくに大きかった水産
土木、商工関係の内訳をみる。
◇水産関係 二十億一千五百六十
二万七千円このうち共同作業所
加工施設などの損壊が最も大き
く、七億二千二百八十万円つぎ
は定置網百六十ヶ■など漁具被
害が四億三百十万円。カキだな
ノリヒビ資材が三億六千八百九
十万円、カキ種苗流失による生
産被害が一億八千百万円、漁船
が千九百六十隻の流失損傷で一
億三千三百八十万円の被害。
カキ、ノリが収穫を終わり、生産
被害は比較的少なかったが夏漁
を迎えて建て込まれていた定置
網や種苗をつけ終わったカキだ
な四千九百五十台が全滅した。
また地域別にみると大船渡がカ
キだな二千四百台、漁船二百三
十八隻、漁具五百九十の損失を
出し、六億四千五百十万円で圧
倒的に多く、ついで山田町の三
億七千万円、陸前高田の二億六
千万円、宮古の一億六千万円な
どとなっている。
◇土木関係 漁港施設を含め六億
六千六百七十万六千円。うち県
工事は五億二千一万円、市町村
工事は一億四千六百六十九万六
千円。施設別では道路の損壊が
三十二件三億1千万円、漁港し
ゅんせつ工事の埋没や互換決壊
が六十九ヶ所一億九千万円。
このほか一般港湾被害五ヶ所七
千万円、河川護岸崩壊十六ヶ
所五千七十万円、海岸堤防決壊
四ヶ所三千万円、橋梁の流失損
傷が八橋八百万円となっている
道路被害では沿岸を縦に結ぶ二
級国道八戸・仙台線が十五ヶ所
で決壊するほか、災害町村を走
る主要幹線はほとんど寸断され
た。また大槌川など沿岸河川は
津波のため増水逆流、七橋が流
失、久慈港はじめ八木、釜石の各
港がしゅんせつ、物揚場などに
被害を受け、漁港氏w節は小規模
被害ながら六十九ヶ所に損害を
出している。地区別では陸前高
田、宮古が二億円程度の被害を
出したほか大船渡が、一万トン岸
壁前面の九メートルしゅんせつが埋没
するなど二億円ちかい被害とな
っている。
◇商工関係 事業所の被害は十七
億四千五百二十万円。このうち
鉱工業が施設、原材料、製品を
合わせ二百七十事業、六億六千
五百三十万円、商業が千三百二
十四店十億七千九百九十万円に
なっている。鉱工業被害の主な
のものは小野田セメントがモー
ター三百五十台を冠水八千万円
釜石製鉄の桟橋が係船との接触
で傾むき一億円の被害となって
いる。
なお商業関係は大船渡はじめ被
災市町村の商店街の店舗被害で
店舗の損かい、商品の損傷など
非常に多い。このため大船渡で
は商工被害十三億円、山田が三
億円に及んでいる。
福田農相ら来県、被災地視察
災害地視察のため福田農相、楢橋
運輸相、渡辺厚相、村上建設相ら
が二十八日から二十九日にかけ来
県、大船渡、陸前高田地区を中心
に視察する。日程次のとおり。
▽福田農相=二十八日から気仙沼
市から本県入りし、大船渡、陸
前高田、釜石の各地区を視察し
花巻から帰京する。
▽楢橋運輸相=二十八日急行「お
いらせ」で仙台着、宮城県庁で
事情を聞いたのち自動車で塩釜
石巻、志津川、豊里から気仙沼
陸前高田氏まで視察、仙台に引
き返して一泊、翌二十九日飛行
機で帰京する。
▽渡辺厚相=二十六日午後十一時
上野発急行“おいらせ”で仙台
に向かい、二十七日自衛隊のヘ
リコプターで宮城、岩手両県下
の災害地を視察、同夜帰京する
▽村上建設相=二十九日来県予定
。
県福祉課、陳情を依頼
小川副知事は津波の復旧対策を政
府に陳情するため、二十六日夜七
時三十分盛岡駅発上り急行おいら
せで上京したが、県福祉課は小川
副知事に次の陳情を依頼した。
▽三十四年の風水害の場合に実
施した特別措置法と同様、社会
福祉施設の災害復旧費、母子福
祉資金に対する貸し付け費、低
所得階層に対する世帯更生資金
貸し付け費などについて特別立
法措置を講ずること▽被害家庭
と地域住民の復旧事務にともな
う保育児のぞ課について、児童
福祉法による児童措置費の特別
徴収基準を設定。措置費の国庫
負担の増額、臨時保育所の設置
に対する国庫補助など▽生活保
護法による日保護世帯と被災に
より生活保護を受けなければな
らない世帯の増加について特に
一時扶助費増額の特別配慮。
津波被災地の皆様へ
謹んでお見舞
申し上げます
八幡製鉄