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災害対策急げ 岩教組、県教委に申し入れ

 岩教組は、七日県教委にチリ地
 震津波の災害対策を急ぐようつ
 ぎのような要求を申し入れた。
①学校教育施設の復旧には災害復
旧費に要する経費を全額国庫補助
にするようつとめること②小災害
復旧事業十五万円未満の教育施設
についても、大幅に国庫補助対策
として措置されるようにされたい
③被災学童の教科書、学用品は全
員無償配布するとともにその他の
教育費についても全額無償とされ
たい④完全給食実施校の被災学童
の給食費は全額無償とされたい⑤
被災高校生に対しては、今年度授
業料の全免の措置を講ぜられたい
⑥被災者の子弟に育英資金の応急
貸与をされたい⑦被災教職員に対
しては規程の見舞い金をすみやか
に支給するとともに被災の程度に
応じ日常勤務に支障のないよう損
害の補償を措置されたい。

被災地その後⑧ 山田町 衛生的な水道ほしい 住宅はブロック建てに

前途見通し暗い

▽…“スルメの町”山田町は、
一瞬にして交通、通信網が絶た
れ、陸の孤島と化した。典型的
なリアス式海岸で、“天然の良
港”を自負していた町民は、全
く虚をつかれた形。町災害対策
本部の調べによる損害見積もり
は、住家の流失七十戸、全半壊
二百二十九戸のほか道路、護岸
の決壊、漁業資材や漁船の流失
破損など含め、十億六千万円に
のぼる。スルメやノリ、カキ養
殖に依存する零細漁民が、被災
者の大半を占め「住宅再建はお
ろか、明日の生活の見とおしさ
え立たない」と途方に暮れる姿
は痛々しい。

おくれた復旧作業

▽…十六戸を流失、四十戸を全
半壊した釜石洞地区は、町の中
心地帯だけに、復旧も早かった
が、同地区から南へ約一・五キロ
離れた織笠地区は、全戸数の三
分ノ二に当たる二百二十一戸が
流失、あるいは全半壊し、壊滅
に近い被害を受け、五日にやっ
とあと片付けが終わったばかり
織笠地区の復旧は、二級国道仙
台〜八戸線の決壊と山田線の不
通で、輸送路が絶たれた。地元
の応援隊が一日平均約二百人程
度で、他の被災地に比べて少な
かった、土台の弱い住宅が、ち
ょうど間引きされたかっこうで
作業がやりずらかった、などか
らおくれたが、自衛隊員百五十
人の応援と、宮古警察署員三十
人が、斉藤署長の陣頭指揮で、
人出の不足な老人世帯、未亡人
世帯の復旧作業に協力、さらに
輸送路確保のため、道路整備に
当たったことが、被災者の復旧
意欲を高め、自衛隊員と宮古警
察署員の活躍に町民は心から感
謝している。

つのる生活の不安

▽…津波直後、織笠小に収容さ
れた二十三世帯百十六人と、織
笠中の十七世帯八十人の被災者
は、復旧が進むにつれて、町内
の親類、知人宅に身を寄せ、い
までは両校に二世帯ずつ残って
いるだけだ。被災者たちは、落
ち着きだけはどうやら取り戻し
たもののカキやノリの生産資材
はメチャクチャにやられ、しか
も着のみ着のままで避難した者
が多く生活の不安はつのるばか
り。町当局でも「公益質屋を利
用する者さえない」と語ってい
るほどだ。織笠の八木善七さん
(七〇)は五月三十日、漁業資材や
加工場を流失、前途を悲観して
自殺したが、中流の暮らしをし
てきた人だけに被災者はかなり
強いショックを受けたようだ。
それ以来、生活に地震を失い、
生活扶助の希望者が十人も出
ており、町福祉課では「希望者
はさらに増加する」とみている

追い討ち赤痢発生

▽…同町は津波の復旧途上で、
赤痢の追い討ちまでかけられた
五日現在、患者は織笠地区十人
大沢地区二人、山田地区一人、
計十三人で、全員県立山田病院
に隔離された。集団発生した織
笠ちくは、水道があるが、利用
者が少なかった。津波後は、使
用できない井戸もあって、特定
の井戸が集中的に飲料水や洗た
くに利用され、ゴッタ返してい
る。これが赤痢まん延の一因と
なったようだが、地区民たちは
いま、安心して使用できる衛生
的な水道施設の拡充を望んでい
る。

まず生産資金確保

▽…町災害対策本部は、当面の
課題である被災者の生産資金の
確保と、住宅建設に力を注いで
いる。生産資金は漁業者の場合
山田湾漁連とタイアップして農
林中金の融資を、商工業者の場
合は、国民金融公庫、中小企業
金融公庫などの長期、低利の融
資導入に奔走している。住宅に
ついては、仮設住宅四十三戸の
割り当てをさらに三十七戸、応
急修理住宅五十五戸の割り当て
をさらに六十五戸、公営住宅二
十戸の割り当てをさらに三十戸
追加するため、佐藤町長が上
京、関係機関に強力に要請して
いる。また「ノーモア津波」を
訴える被災者たちは、すみやか
な恒久対策を望んでいるが、佐
藤町長は「国道は海岸保全を兼
ねたものにし、さらに安全地帯
に町道を通し、そこに市街地を
形成するようにしたい。漁港修
築した山田魚市場周辺は、被害
が少なかったが、この経験を生
かし、近い将来織笠地区の漁港
修築も実現させたい。住宅はブ
ロック建てを奨励していく。山
田は原料が豊富であり、かねて
町営ブロック工場の建設を計画
していた織笠地区の被害状況を
見ても、土台のガッチリした建
物は流失を免れており、住宅改
善の必要性を痛感した」と語っ
ている。〔写真はゴッタ返す織
笠地区の共同井戸〕