大海嘯大惨害義捐金の募集
今回管内南、東、北閉伊郡。気仙。南、北九戸。
各郡の大海嘯たる人命を害うこと殆ど
二万有余全町村覆没流離その形跡を留めざ
めものまた少なからず。幸いにして万死の中一生
を得たるものもあるいは傷痍に悩みあるいは飢餓
に迫られ鰥寡孤独その恃頼する処を失い居
るに家なく食うに食なく着るに衣なく悲
惨の極酸鼻の至り実に前代未聞の大事変
に属す。いやしくも帝国臣民たり同胞たる者は
豈袖手傍観するの秋ならんや。いわんや同一
の治下にあり同一の県民たるものをや奮
いて賑恤扶助の事真に剥下焦眉の急務た
り。本社自らはからず率先もって義金募集の労
を執りいささか同胞相恤の微旨を徹底せんと
す。仰ぎ願わくは大方慈仁の諸氏切に此挙を
賛成させられ多少に関わらず続々義捐あらん
ことを。即ち義金募集の手続きは左の如し。
一 義捐金額は各自の随意たるべき事。
一 義捐金募集の期は来たる七月十七日迄
とす。
一 義捐金は義捐者の姓吊とその金額と
を本紙に掲載して受領済みに換える事。
一 義捐金は一括して本県庁に配布の取
扱方を依頼する事。
明治二十九年六月十八日 岩手公報社
●侍従差遺
今回の海嘯上聞に達し東園侍従被害地視察のため
差し遣いさるるとやに洩れ聞く。
●種馬場長の任命 （十八日午後二時半東京発）
丹下兼吉氏は岩手県種馬場長心得を命ぜられ宮城
県種馬場長を兼任す。
●常置委員会
再昨夜九時半常置委員会臨時召集
せられ救助費等支出の件につき諮問会を開かれ十一
時退散せられたり。
●出張
技手一条牧夫氏は宮古地方へ出張を命
ぜられ一昨十八日急行にて出発せり。
●技手増給
本県技手野崎健太郎氏は六級棒に。
同一条牧夫氏は九級棒にいずれも一昨十八日昇給せ
り。
●被害地義捐金
岐阜県々会常置委員山田清三
郎氏より本県下大海嘯被害者へ救恤として金五円
贈付したる旨本県常置委員へ電報にて申越せりと。
●預託軍馬引き揚げ
作十九日よれ来たる三十日頃
までに預託訓場引き揚げとして陸軍属寺島壽氏他一
吊出張せり。
●吉田技手
も昨日気仙郡へ出張。
●久保田警部
前項電報欄内にも見ゆる如く東
園侍従は本日の直行列車にて来盛せらるるにつき
久保田警部は右出迎えとして昨日県界まで出張。
●原県属
は一昨日久慈地方へ救護のため出張。
●赤十字医師調剤員看護人出張
東京本部なる
日本赤十字社より医師三吊調剤員二吊看護人十吊
昨夜の終列車にて来盛今朝宮古方面へ向け出発の
はず。なお医師三吊看護人十吊を同社へ請求せし処同
社にて承認上日来盛のはず。
●第二師団
軍医四吊看護人四吊本県の依頼に
応じ昨日救護として花巻停車場より下車。釜石方面
へ向け出張。
●平田代議士
は昨十九日来盛直ちに警察部に出
頭し被害地救恤義捐の事につき北田警部に面会わせ
り。