電報
●罹災地出張
今回の海嘯罹災地へ村上参事官
北村木村美松の三県属黒田佐土原小崎の三警部他
巡査三名いずれも昨日出張。
●本社員災害地に出張
別項報道せし釜石町盛
町の海嘯につき右罹災地へ取り敢えず本社員日戸
勝郎を派遣したれば災害惨況は最も迅速に最も詳
細に報道すべし。
●今回の海嘯について
今回の海嘯は今その詳報
を知るに由なれども独り釜石、盛のみに止まらず
して東海岸通り多少この災に罹りたるものなるべ
しと云へり。なお青森県鮫港地方も海嘯のため非常
の惨害に罹りたりとの噂あり。
●釜石、盛の海嘯
一昨夜来、昨朝にかけて当
市においても数回の地震あり。只事ならじと思い居り
しに昨日に至り号外を以って報じたるが如く計らず
も釜石、盛等の悲しむべき海嘯惨害の報を聴くに至
れり。天災如何ともし難しといえどもその父母兄弟妻子
の相抱き相擁し流離困頓の際に悲泣哀号生命を激
浪怒涛の間に失い幸いに万死の中より一命を免れ
たりとするもあるいは身傷つきあるいはその住を失い宙字に
彷徨し飢寒交々至るの■■を想い遣りては酸鼻の
極、誰か暗涙悲嘆に咽ばざるものあらんや。同胞
相恤の義真に今日に講せざるべからず。されば差し
当たりこれら罹災人民救恤の一事は実に刻下焦眉の急
務にしてこの事たる独り当局その人に委任すべきも
のにあらず。苛しくも眼底涙あり皮下血あるものは共
にどもに奮いてこの急務に処せざるべからず、嗚呼
惨事なる哉。