地震や津浪など 詰らぬ流言に惑ふな 吉田特高課長要望
過般の震
災以來縣下には輕微な余震が
つヾきこの間敵機の空襲があ
り殊にさる十四日には神宮神
域を暴爆するの暴擧を敢行、
一億の憤激まさに頂點に達す
るとき聖地縣民の間にいたづ
らに不安感に驅られて冷靜な
常識では當抵考へられない事
態をさへ惹き起した実例があ
るので吉田縣特高課長は十六
日つぎの談話を發表、皇國危
急の秋太い神經をもつてあく
まで冷靜沈着を維持するやう
要望した
◇敵のわが本土空襲は日を逐ふ
て苛烈となり殊にさる十四日に
は神■をさへ暴爆するにおよび
畏れ多くも豊受大神宮の神域を
冒し奉るに至つた、この天人と
もに許さぬ米機の暴擧に對し一
億の恐懼憤激はまさに烈火と燃
え滅敵必勝の信念を奮起しつゝ
あらねばならぬとき未だ一部で
は過般の震災と津浪、これにつ
ヾく空襲からいたづらに不安感
に驅られ意識するとせざるとに
かゝはらず必勝の信念を鈍らせ
てゐるものがないでもないこと
は極めて遺憾に堪へぬ
◇たま■■去る十三日未明の強
震以來余震が熄まないため關心
が深くなつたともいへようが、
このやうなときにこそ冷靜沈着
な態度を欠くならば根も葉もな
いことに迷動して人騒がせをす
るやうな到底平靜な頭で考へら
れぬ 結果を 生むのである、現
に十四日の夜半津市の一部では
「津浪がくるぞ」との流言に■
らされて市内の高所へ寒夜大騒
ぎで避難したといふ樣な事態を
演じた、即時當局の適時適切な
措置指導によつてこれが全く流
言であることが判つて解散した
が、もしそのやうな騒ぎの最中
敵機が來襲して留守中に空襲で
もうけたとしたら一たいどうす
るのか、消火も防衞もできない
ではないか
◇今こそ皆で乘るか反るかの決
戰のさ中にたつときもつともつ
と圖太い神經と冷靜沈着な態度
をもつて信ずべき方面の情報以
外には絶對躍らされることなく
持塲を守つて戰つていたヾきた
い、もし根據のない流言を飛ば
しあるひはこれに迷はされて治
安を紊すやうな不届き者に對し
ては斷乎たる處斷を決行する方
針であるからよくよく注意して
もらひたい
寒鰤と〝いわし〟
紀北の漁場で月末から獲る
紀北の漁場では舊臘の震災で船
と網の被害が大きく一時は張り
込みも危まれたが流失した網は
潜水により海底から引揚げて整
備を急いでゐるから鰤、いわし
等の本格的漁勞は本月下旬から
開始され漁獲は茲に軌道に乘る
見込みである
九木浦の漁塲
鰤漁塲
として知られる紀北九鬼村九木
浦では災害復興に全力をあげた
結果、懸念された一號■漁塲も
十五日投網を終へたので既設の
二號漁塲ともに寒鰤漁獲に手具
脛を引き明日の水揚げに大きな
期待をかけてゐる
震災義捐金寄附者芳名 十六日正午現在
五千円、菊川鉄工所菊川武雄▼
二千円、龜山工業株式会社▼二
千円、鈴鹿市龜山町田中■吉▼
一千円、度会郡田丸町小林政太
郎▼一千円、東京都澁谷区八幡
■村井四郎▼一千円、津市藤田
覺三▼一千円、芝浦電氣專屬工
塲芝■工作所▼一千円、鈴鹿■
龜山■■間與市▼二千七百二十
円(五人分)
累計金
六十九万一千八百十円十九錢