遅らすな麥蒔き 震災鹽害地へ注意
今回の津浪によつて鹽害をうけ
た耕地は相當面積に上つてゐる
がこの麥の蒔直しと地力の恢復
法について■食糧增産推進本部
技術部長山本縣農事試驗塲長は
つぎのとほり指針を發表して七
難八苦を乘り越え縣の聖旨奉答
運動である麥增産への協力を切
望した
【蒔直し】麥の蒔直しについて
は土砂、石塊の流入などによ
りたヾちに麥の作付をし難い
ところもあるが津浪による海
水流入後の耕地の鹽分含量は
その後の降雨によつて著しく
尠くなつてゐることは不幸中
の幸で食糧增産技術指導部員
の調査によれば概して一パー
セント以内のものが多いから
つぎのやうな注意によつて麥
の蒔直しを即時勵行して欲し
い、これに要する種子はそれ
々々縣から手配ずみである▲
被害耕地の排水につとめるこ
と▲播種に當つては春播型の
品種を選ぶこと(一例=小麥
は埼玉二七号、江島、神力、
農林三〇号、同三二号、裸麥
は太白、白■、白珍子二号、
大麥は倍収一〇号、三重珍子
)▲芽出し播を行ふこと(但
し海水永く停滯し鹽分の多い
見込の塲所は芽出し蒔を行は
ないこと)▲播種量はつぎの
標準により增加すること(小
麥、裸麥=反當四升、大麥反
當五升ないし五升五合)▲石
灰を反當二〇ないし三〇貫施
すこと▲よく腐熱した堆厩肥
を增施すること
【移植】すでに播種成育中の麥
を間引して移植することもよ
いが厚蒔の麥のうちで丈夫な
苗を叮嚀に掘取り移植する▲
移植する田畑には腐熱した堆
厩肥、石灰、木灰などを多く
施すこと▲株間を狹めるか植
付本數を增すかいづれかの方
法により密稙すること▲移植
後麥踏みを叮嚀にし灌水する
こと
地 力 恢 復 と 被害地の鹽抜き
被害地における鹽抜きと地力の
恢復について縣食糧增産推進本
部では、つぎのとほり指針を示
してゐる
◇被害地の鹽抜法=一、排水灌
漑を行ふこと、二、耕地して
置くかまたは高畦をつくるこ
と、三、鹽抜■を設けること
◇地力恢復法=一、腐熱堆肥、
厩肥を施用すること(本年被
害をうけた稻藁や野草、塵芥
などの材料でもつとも早く腐
熟する速成堆肥の方法による
のがよいが普通の作り方でも
なるべくよく腐熟させるため
下肥や硫安などをかけるとよ
い、厩肥のできるところは堆
積してなるべく腐熟させてお
くことが大切である)二、腐
熟堆肥、厩肥の施用時期はま
だ鹽が殆ど抜けぬうちに施用
すると却つて堆肥や厩肥中の
肥料分を流すばかりでなく鹽
抜きが困難となるのでなるべ
く鹽抜きの方法を講じてから
施すのがよい、裏作のできる
程度の被害地は播種または植
付の前に施用するのがよい
三、堆肥、厩肥の施用量はな
るべく多く反當二百貫以上は
用意しておくこと 四、下肥
はなるべく多量に使用しない
こと 五、金肥の塲合でも速
効性肥料を施用すること
震災被害者へ ガラス配給
今回の震災に
際してガラスの破損は相當に大
きかつたが縣下の各ガラス店の
倉庫を調査した結果、相當量が
確保されてゐることが判明した
ので縣では一應販賣停止を命じ
て配給方法について考慮中であ
るが近く被害の大きなところか
ら配給を開始する
從來は縣板硝子配給統制組合
で自治的統制をやつてゐたが
配給までは情実販賣は絶對に
できない
村井厚生省技師 縣下震災地視察
厚生省勤勞局指導部技師村井進
氏は石井屬を同行して廿日午前
十時四日市市に着、市役所を訪
問して北勢地方の震災被害状况
を視察後、縣廳に至り持永知事
刀禰内政部長らと震災復興對策
につき懇談、本省の方針を示し
て同夜は津市の櫻水樓に一泊、
廿一日は北牟婁郡尾鷲町に赴き
紀北地方の同樣被害状况を視察
して縣營住宅建設班を現地につ
いて指導し長島町に投宿、廿二
日も引つづき被害状况を視察し
て退縣、名古屋に至り同樣視察
の上一泊し廿三日歸京する
伊賀莚を急送 縣下の
震災地へ伊賀地方から罹災者の
保温用として叺用の莚を急送し
たがさらに二十日までに一万三
千枚年内には七千枚を送荷する
流失の我家を顧 みず輸送に奮闘
天晴れの水上班長澤田氏
北牟婁郡尾鷲町の警防團員水上
班長澤田初太郎さん■■は今回
の津浪で自宅を流失したが、水
上班長としての責任觀から家を
省みず持船の第二嘉壽丸の船長
として指揮をとり救恤物資の輸
送に献身的協力をつヾけた行爲
は輸送陣の範として縣輸送課で
も表彰方を考慮中である
生業資金貸出し 三重無盡から罹災者へ
三重無盡会社では地震の罹災者
に對し生業資金簡易貸出しを行
ふことになつた、額は百円から
五百円までと工塲、事業塲へ政
府預金部資金十万円まで、庶民
金庫の限度二千円までの三種、
なほ無盡通牒紛失の向には再發
行する
短 信
志 震災見舞に薯と■
■■会支部ならびに地
摩 方事務所では郡内に於
ける災害のなかつた農家一戸か
ら甘藷二貫と■一枚づつを供出
せしめ、甘藷は縣外の罹災者へ
■は縣内の罹災者にそれ々々贈
つて相互扶助の精神を■■
警防團長の■■ ■■村の山
■■太氏は警防團川■分團長と
して數年來献身的な活躍をなし
同所の警鐘台も自費で建設、ガ
ソリンポンプ購入の際にも率先
金千円を寄附して器具、資材の
整備に努力したものであるが今
度團員罹災基金のうちへ更に五
百円を寄附して部落民をいたく
感激せしめてゐる
北 土井家から義捐金一
牟 万円 長島町の土井八
婁 郎兵衛氏は震災罹災者
の義捐資金として二万円を■■
へ寄託した
鈴 疎開のヨイコも衣類
鹿 を寄贈 郡から寄贈す
郡 る縣下震災罹災者への
衣類は各方面の非常な同情で豫
定を遙かに凌駕し殊に關町にあ
る名古屋市東白■國民校兒童ら
も率先して七六三點を寄贈した
南 堀江警部補へ他縣か
牟 ら同情 震禍のあと襲
婁 ひくる津浪に村民の避
難誘導中■くも殉職した木本署
勤務、新鹿村駐在堀江武雄警部
補の責任感に感激、愛知縣瀬戸
市加藤■也氏から木本署長あて
金十円を贈つてきた
震災義捐金寄附者芳名 廿一日正午現在
五千円、神戸市▼一千円、津市
東亞印刷有限会社▼一千円、廣
島縣▼一千円、桑名市西園二郎
▼一千円、宇治山田市松井鉄工
所社長松井七藏▼一千円、三重
郡菰野町葛谷春太郎▼一千円、
桑名市昭和機械製作所社長岡実
累計金
二十万四千三百七十六円五十錢
震 災 罹 災 者 へ 寄 贈 衣 類 募 る
去る七日本縣を襲つた震災は相當な被害があ
り罹災者の窮状洵に同情に堪へないものがあ
ります、これが救助の一端に資するため縣民
實施期間 十二月三十一日迄
の義心に愬へ寄贈衣類を募ることになりまし
た、婦人會と靑少年團が頂きにまゐりますか
ら縣民各位の切なる御同情をお願ひします
主催 縣 市 長 會、縣 町 村 長 會
翼賛會縣支部、伊勢新聞社