津波の被害増大
二十四日北海道から本州、四国、九州までの太平洋岸一帯を襲
った大津波の被害は、通信線の回復につれてますますふえている。
大津波は一応おさまったものの、太平洋岸の各地では同夜も二、
三十分おきに一〜二メートルの津波が襲っており、住民は恐怖におのの
いている。同日午後十一時現在、共同通信社の調べによると、死
者は岩手五八、宮城三三人をはじめ全国で一〇七人、行くえ不明
八二人、負傷者八五四人に達した。また船舶の沈没、流失、破損
は二、四九八隻にのぼっている。このため十五市、十五町、二村
に災害救助法が発動された。国鉄の被害も大きく、大船渡線など
七線、十七区間がいぜん不通で、全部が開通するまでには相当の
日時がかかる模様。自衛隊でも災害対策本部を設け、陸上四千人、
海上三千人、艦艇十六隻を出動させ救援、復旧にあたっている。
なお気象庁は同夜十一時五十五分、九州、瀬戸内海沿岸の津波警
報を解除したが、四国から北海道にかけては二十五日朝まで警戒
が必要だといっている。二十四日午前四時ごろから六時ご
ろにかけて、本土太平洋岸を襲っ
た津波は本道でも釧路、■■、函
館などで二十三・五メートルと、それぞ
れ最大を記録したが、その後次第
に衰えはじめ、同日夕刻には一メートル
前後に落ち、被害の恐れはなくな
った。
本道の被害はその後、調査が進
むにつれ増加、同日午後十一時
現在道警本部の集計によると、
死者は十一人、行くえ不明三十
人、負傷十五人、家の全壊百七
十二戸、同半壊百六十三戸、同
流失三百五十戸、浸水した家
は床上、下合わせて三千四百
戸、人の住んでいない建物の被
害二百九十六むね、沈没した船
六十八隻、流失した船三十二
隻、ほかに破損した船百六隻、
破損した橋三ヵ所、冠水した田
畑四千五百六十一ヘクタールにのぼっ
た。床下浸水を除いた被災世帯
は三千三百三を数えている。
三十二市町村に災害救助法
北海道か
ら九州ま
での太平洋岸一帯を襲った大津波
の被害に対し、災害救助法を■■
しているが、二十四日夜までに厚
生省の中央災害対策本部にはいっ
た災害救助法適用地はつぎの十五
市、十五町、三村となっている。
▽北海道 厚岸郡浜中村▽青森県
八戸市▽岩手県 大船渡市、陸
前高国市、釜石市、宮古市、上■
伊郡大槌町、下■伊郡山田町▽宮
城県 石巻市、塩釜市、気仙沼
市、本吉郡志津川町、桃生郡雄勝
町、牡鹿郡女川町、牡鹿郡牡鹿町、
本吉郡■町、宮城郡七ヶ浜町▽三
重県 尾鷲市、■会郡南島町、■会
郡■■町、度合郡南勢町、■■■
郡長島町、北■■郡海山町▽和歌
山県 和歌山市、海南市、田辺市、
西■■郡白浜町▽徳島県 阿南市
▽高知県 須崎市▽宮崎県南那
珂郡南郷町▽鹿児島県 名瀬市、
大島郡■■村。
国鉄の被害
国鉄本社には
いった報告によると、二十四日午
後五時現在、津波の被害を受けた
北海道、東北、四国関係十線区、
二十区間のうち開通したのは函館
根室本線だけで、同夜中に開通
の見込みの■■線の一区間を除く
と残り十六区間は復旧の見通しが
立っていない。青函連絡船は上り
十八便摩周丸が二時間三十分遅れ
たが、同十四便十和田丸は、午後
五時五十分に出港、平常ダイヤに
戻った。国鉄は被害の多い盛岡、
仙台、女川、陸前原ノ町の四ヵ所
に復旧対策本部を設け、復旧作業
に力をいれている。道では、二十四日午後の部長会議
で、同日早朝に起きた太平洋岸津
波災害を協議した結果、つぎのよ
うな方針を決め、応急対策、復旧
事業に乗り出すことになった。
本道に災害対策本部をとく
に設ける必要はないが、浜中村
に被害が集中していいるので、同
村を重点に対策をおこなう。
一、災害救助法は浜中村に対
して発動したが、厚岸町につい
ては被害程度がそこまでひどく
ないので見送る。浸水家屋を多
数出している函館市は、こんご
状況をみて発動するかどうかを
決める。
一、浜中村大字■■■村のよう
に津波の災害を受けやすい地域
には、建築基準法による「災害
危険区域指定」を行ない、住宅
建築を禁止する必要があるが、
現地調査のうえ、現地町村長と
協議して決める。
一、救援物資の国鉄無賃輸送扱
いについて国鉄当局と■■す
る。
一、CAC(キリスト教奉仕
団)救援物資の供給を要請す
る。
一、被災地の食糧を確保するた
め、近隣町村から緊急輸送する
よう手配する。
一、現地から毛布二千枚の要請
があるが、釧路で百九十枚、日
赤から四百枚を調達、残りは釧
路自衛隊から借用する。
一、後藤民生部長を現地に派
遣、対策にあたらせる。 死者負傷不明家屋同 同 床上 床下田埋田冠道路橋 堤防山 船舶船舶 被災被災者
全壊半壊流失 浸水 浸水没 水 決壊決壊決壊崩れ沈没流失 世帯
青 森 1 2 3 24 91 14 1476 2490 5 78 1 1 6 1 12 492 5003 23858
岩 手 58 206 20 570 881 755 3741 4925 15 445 35 1 14 0 3 3 5481 27270
宮 城 33 626 15 899 650 454 9128 5309 10 710 3 9 11 0 261203 10160 50000
福 島 3 6 0 0 0 0 6 9 0 5 0 0 3 0 6 4 6 30
茨 城 0 0 0 0 0 0 0 4 0 0 0 8 1 0 1 82 0 0
千 葉 1 2 0 0 9 0 2 86 ■ 173 2 1 0 0 4 26 13 55
静 岡 0 0 0 0 0 0 1 247 0 0 0 0 0 0 1 1 13 830
愛 知 0 0 0 0 0 0 4 44 0 0 0 0 1 0 0 0 4 18
三 重 0 0 0 4 85 3 3490 2890 32 383 16 6 27 1 2 31 3580 16177
和歌山 0 0 0 2 10 0 896 1680 0 223 1 0 0 0 2 5 1282 5128
徳 島 0 0 0 0 0 0 1055 1032 1 189 2 0 10 0 1 4 1055 4328
高 知 0 1 0 9 45 2 591 623 200 516 1 1 1 3 4 3 808 3055
愛 媛 ■37
鹿児島 0 2 0 0 0 0 595 1194 0 87 3 4 10 0 3 5 594 2970
宮 崎 0 0 0 0 0 0 169 145 0 196 0 0 1 0 3 27 118 800
熊 本 0 0 0 0 0 0 3 13 0 10 0 0 0 0 0 0 3 7
長 崎 0 0 0 0 0 0 0 4 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
計 107 854 82168019341473 23613 18514 2637227 68 33 86 6 1342364 31599 149370 死負行 家 家 家 床 非船 船 船 橋田へ被
傷く 屋 屋 屋 上 住舶 舶 舶 梁畑ク災
者え 全 半 流 下 家沈隻流隻破隻流冠タ世戸
者 不 壊 壊 失 浸 被没 失 損 失水|帯
明 水 害 ル数
函館市 1 1435 176 1292
上磯町 234 103
木古内町 6
伊達町 75 4 4561 16
浦河町 20 1 1 6
様似町 2
■泉町 1 1 16 25 1
静内町 1
鵡川町 1
釧路市 110 18 48 13
白糠町 27
根室市 1 75 14 50
浜中村 9 28 170 110 249 540 71 30 3 1067
厚岸町 30 600 630
浦幌町 1 12 1 45 23 2 5 48
豊頃村 10 142 20 10 11 47
広尾町 115 1 90 20 3 30
合 計 111530 172 162 2503400 296 68 32 106 345613303
災害補正予算計上せよ 自民党内に意見強まる
政府は北海道、三陸地方を中心とする太平洋沿岸の津波災害対策として、さしあたり資金運用部からのつなぎ融資をおこなう手続きをとっ
たが、自民党内には被害状況からみて補正予算を計上すべきだとの意見が強まっている。政府首脳は早急に調整をはかり、その結論を
出したい意向である。
このため政府は二十五日午前十一
時から関係各省の次官会議を開
き、被害状況を中心にその取り扱
いも協議するが、与党内の意見は
”空白国会”打開の道を見いだす
ためにも、ぜひ補正予算を計上し
て、野党側を国会審議再開に同調
させるべきだとの政治的配慮をし
ているので、その調整には苦慮している。
これに対して社会党は災害対策
に便乗した国会審議の再開には
警戒の色を深め、災害対策は予
備費の形状など行政措置で十分
足りるとして補正予算計上に反
対の態度をうちだしている。し
かし政府、自民党があくまでも
災害対策を理由に補正予算計上
を野党側に迫った場合は、社会
党も拒否する正当な裏付けに乏
しいので、国会審議再開と補正
予算計上の間にはさまれて苦し
い立場に追い込まれそうであ
る。
政府はすでに二十四日、大蔵省の
地方財務局を通じて、被害市町村
に対し、さしあたり資金運用部か
らのつなぎ融資を行う手続きを
とった。しかし、大蔵省では、い
まのところ津波の被害は砂浜が多
いため、田畑の損害、海岸、堤
防の被害は割合少なく、家屋も
床上浸水程度で、被害規模は河川
んどの公共土木災害より、むしろ
小規模なものにとどまるのではな
いかとみている。したがって、補
正予算の必要はなく、予備費(本
年度は八十億円計上=このうち台
風災害五十億円=され、まだ一億
二千万円しかつかわれていない)で
まかなえるだろうとみている。だ
が年度初めでもあり、こんご大き
な台風災害が起こることを予想す
れば、補正予算を組むことも仕方
ないだろうといっている。
また現在まで報告されている被
害の対策だけでも、各地で災害
救助法が発動されている実情か
らみて、本年度の予備費八十億
円は十分突破するだろうと推定
している。そのため自民党が補
正予算計上を主張すれば、一応
名目も立つので、組まざるをえ
ないだろうとみている。
一方、社会党はこれに対して、明
らかに国会審議再開を企図するた
めの”便乗災害対策”だと、批判
的な空気が強いので、こんごなお
結論を出すまでには曲折があろう。
本会議開きたい
川島幹事長談
自民党の川島幹事長は、二十四日夕
の記者会見で、津波災害につき
「被害状況を調査して、救済立法
措置が必要ならば野党に呼びかけ
て本会議を開きたい。また被災地
には党から議員を派遣する。しか
しこれを国会正常化のきっかけに
するのではなく、これだけ切り離
してやるつもりだ」と語った。