津波にも国際協定を
二十四日未明のチリ地震津波は太
平洋岸一帯に思わぬ大被害を与えた
が、その一番大きな原因が、津波
警報の出し遅れにあったことは、
気象庁自身も認めざるをえなかっ
た。
ハワイの津波警報センターが第一
報を出したのが、前日の午前十時す
ぎ、津波が太平洋全般に広がる可能
性があるという情報を出したのが同
日の午後七時少し前であるから、も
し津波警報が出されていたならば、
百数十人に上る犠牲者も出さずにす
んだであろうし、また物的被害もあ
る程度は避けることができたはずで
ある。
日本近海の地震による津波につい
ては、気象庁はこれまで敏速に警報
を出しているのに、こんどに限って
なぜ警報の発令が遅れたのか。チリ
の地震はその後も続発しており、ほ
かのところでもいつ同じようなこと
が起こらぬとも限らないのであるか
ら、こんどの災害に顧みて将来に備
える方策を立てておかなければなら
ないのである。
気象庁が重大なハワイの津波情報
を無視したのには、これまで外国の
地震によって津波を経験したことが
なかったという安易感に災いされて
いたことは否定できない。このよう
な過去の経験にばかり重きをおく防
災の考え方や方法は、十分反省され
なければならないが、これとともに、
外国の津波情報が尊重されるような
国際的な体制を作ることが急務であ
ることを強調したい。
国連にはわが国も加盟しているW
MO(世界気象機構)がある。そし
て気象観測には国際協定ができてい
るが、津波に関する国際協定はまだ
結ばれていない。だから、ハワイの
津波情報センターとの情報交換も好
意的に行なわれているに過ぎない。
こうした事情もハワイの津波警報無
視の心理に無関係とはいえない。
気象庁も、国内の津波観測と警報
伝達体制の強化について対策を立て
るとともに、各国に国際協定の必要
性を呼びかけることになった。いさ
さかおそきに失したうらみはある
が、ぜひ国際協定の締結が実現する
よう努力を傾けてもらいたい。
地震と津波に関する研究と、情報
の交換が適切、緊密に行なわれれ
ば、災害の防止、あるいは軽減に大
きく役立つことは疑いない。地震の
多い太平洋沿岸諸国が共同の利益の
ために、津波に関する国際協定の実
現に協力するよう望みたい。