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社説

野党も災害審議に応じよ
 政局混迷の中で、たまた
ま発生した太平洋沿岸一帯の
津波禍に対して、国会は、
とりあえず安保問題と切り
*して、救援、復興の応急対策を審
議しなければならない。
 政府、与党が仮にもこの災害を
口実にして、新安保条約を自然承認
に持ち込もうとするならそれは論
外といわざるをえない。強行採決で
引き起こされた議会主*の**は、
この災害によってスリ替えられるわ
けではないからである。
 一方、社会、民主両野党が二十五
日、清瀬衆院議長の要請を断わっ
て、災害対策のための本会議、委員
会の審議に応じない態度をとったこ
とは納得できない。両党は、一般会
計の八十億円近い予備費を支出すれ
ば、応急対策は可能だとしているが、
そうとしても、国会会期中にこのよ
うな以上な災害が発生した以上、公
党としては国会で災害の実情を検討
し、本格的復興対策への道筋を作る
ことに協力する義務がある。
 伊勢湾台風の際には、一ヶ月後に
臨時国会が開かれたが、その時とh
違って、被災地は北海道から九州に
まで及んでいる。そのうえ政局は混
迷をきわめている。行政措置で応急
措置がとれるとはいっても、こうし
た悪条件をみると、国会審議で裏づ
けられ、本格的復興対策のおよその
見通しが立っていなければ、その行
政措置の円滑化を期することも困難
になりかねまい。
 野党は、見境のない**な態度を
捨てなければならない。政府、与党もま
た、この災害を安保自然承認に利用
してはならない。与野党ともに、災
害は災害、安保は安保という割り切
った態度をとって、災害対策だけに
問題をしぼって国会を軌道にのせる
べきである。
 もっとも、補正予算を組むとか、
災害特別法を提出するといった本格
的な復興対策は、すべて次期国会に
譲るほかはあるまい。現状のように
機能のマヒしている国会では、これ
らの審議に時間をかけることは許さ
れないからである。具体的にいえ
ば、来月十九日という新安保条約の
自然承認の期日より前に、災害対策
を審議し、岸内閣が総辞職して、後
継選挙管理内閣が衆議院を解散する
という手順を踏まねばならない。
従って今国会では本格的対策には及
びえないとしても、審議開始は一刻
を争ううえに、議事は能率的に進め
られることを要する。
 野党が二十七日以降は、国会は閉
会されると見なしているにしても、
十九日夜の衆議院の議決は、その議事
運営の当否にかかわらず、くつがえ
されない。しかもこの災害は、
たとえ国会休会中てあっても、臨時
国会の召集w自然とする性質のもの
てある。
 与野党は、災害対策については、政
治休戦すべきである。あらかじめ期
間を限ってその審議を果たして後、
議会政治回復の軌道を進むように求め
ざるをえない。

住宅に特別貸付  チリ津波で建設省決める

建設省は二十五日、同省に二十
四日の津波による公共土木施設、
住宅災害の復旧にそなえ村上建設
相を長とする災害復旧促進本部を
設けた。建設省の調査による*、
道路、堤防など公共土木施設の被
害額は二十五日朝まで九億八千
万円にのぼり、今後の調査によっ
て二十億円程度にのぼるものとみ
られているが、促進本部では被災
地に係官を急派し、復旧対策の指
導にあたらせている。また、住宅の
被害状況は全壊、流失二千九百四
十三むね、半壊二千百二十六むね、
床上浸水二万三万二千三百二十二む
ね、床下浸水一万八千四百九十四
むね(二十五日午前九時現在)に
のぼっているが、促進本部では住
宅災害復旧の応急措置として災害
公営住宅約九百戸(全壊)流失(全
住宅数の三割以内)に対し建設費
の三分の二を国庫補助することを
きめた。さらに一般の被災害住宅
に対しては住宅金融公庫の災害復
興住宅貸し付けを行うことにし
十億円を用意した。
 貸し付け限度額は建設一戸あた
り三十万円(北海道だけ四十六
万円)補修同十五万円、住宅整備
同五万円、土木取得費同三万
円、また被災者が個人住宅を建
設し、または土地を取得する場
合、個人住宅被害特別貸付を行
なう。貸し付け限度額は**建
設費、標準土地価格の七割五分
で従来どおり。

伊勢湾台風 なみに措置  金融機関

津波被害に対し日銀はじめ各金融
機関とも伊勢湾台風の場合と同じ
ように預貯金の払い戻し、手形交
換の臨時措置、現金準備の増加な
どをすることにしている。三重銀
行が地方銀行協会へ二十五日報告
したところでは三重県の真珠は完
成品の損失が多く、損害額は伊勢
湾台風のときを上回るもようであ
る。
 しかし災害地が海岸のため金融
 界では農林漁業金融公庫など政
 府金融機関や農林中金、地方銀
 行などが災害融資のにない手に
 なるとみており、地方銀行協会
 では二十五日預金の払い戻しな
 ど応急措置を決めるとともに政
 府に対し中小企業金融公庫、農
 林漁業金融公庫、住宅金融公庫
 中小企業信用保険公庫の代理貸
 しのワクをふやすよう申し入れ
 た。

農林漁業公庫も対策

農林漁業金融公庫は二十五日、津
波の被害に対し天災*資法が発動
されしだい、主務大臣指定の災害
復旧資金(三十五年程度のワクは二
億四千万円)を支出して被災者へ
の復旧融資を行なうことにした。
この資金は個人にも貸し付けられ
る。また共同利用施設(漁業共同
組合の建物など)の被害にはすぐ
災害貸し付けする。