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出水期に備えよう

 伊勢湾台風とチリ地震津波の災害
の傷跡もまだ生々しいというのに、
またいやな出水期がやってきた。
 どこでも水防体制の整備に真剣な
努力が払われており、各地で水防訓
練も行なわれているが、今年こそ水
害を防ぎ、災害を受けてもそれを最
小限度にくいとめるようにしなけれ
ばならない。
 出水期の防災対策について、建設
省は例年のように各都道府県に通達
を出している。これらの対策に万全
を期せねばならないことはいうまで
もないが、その前になすべきことが
あるのを忘れてはならないと思う。
それは堤防、橋、道路などの公共施
設を守ることによって、間接的に人
命や財産を保護するという、これま
での水防の考え方に対する反省であ
る。
 五千人を越える犠牲者を出した伊
勢湾台風の苦い経験から見ても、今
後の水防体制は、人命救護を第一義
的に考えて整備されなければならな
いのである。「人命の安全」を対策
の基本におく以上、予報、警報の発
令、伝達、避難について従来以上に
対策が強化されるべきことは当然と
いえる。
 しかし、水防体制を強化する前に
考えねばならないのは、河川や堤防
の水に対する抵抗力を強めることで
ある。それには恒久的な治山治水対
策と並んで、災害復旧を急ぐことで
ある。伊勢湾台風で大災害を受けた
愛知、岐阜、三重三県の復旧状況をみ
ると、比較的工事のしやすい海岸堤
防や中小河川の県営工事は一応順調
に進んでいる。しかし、これからは
農業期に伴う労働者の不足と雨期と
いう悪条件が加わる。
 それだけに、関係者としては、公
約通り秋の台風シーズンまでに復旧
を完成させるためには非常なの努力が
必要なことを銘記すべきである。ま
た復旧したとしても、原形復旧にす
ぎないので、さらに改良復旧にまで
進めることを忘れてはならない。
 国の直*工場の復旧について
は、心配が一層大きい。とくに海岸
堤防の復旧は三十七年の夏でなけれ
ば完成しないというが、伊勢湾台風
の事例に顧みても、高潮対策はもっ
と積極的に行なわなければならな
いはずのことである。
 伊勢湾台風の災害を二度とくりか
えさないために、水防体制の整備と
治山治水、災害復旧が急務であるこ
とを忘れてはならない。

津波対策で質疑 衆議院本会議

(夕刊つづき)十四日の衆議院本会
議はチリ地震津波対策法案を一括
上程、関係閣僚の趣旨説明のあと
質疑にはいり
田口 長治郎氏(自)一、地震観
 測、津波対策研究機関を充実す
 るとともに、国際観測体制の整
 備、協力が必要だ。
一、二十八年災、さきの伊勢湾台
 風の場合は公共土木関係災害対
 策として特別措置がとられたが
 今回はそれがとられていない。
一、今回の災害は寄細な個人災害
 がとくに多い。基本的対策は。
一、これらの施設災害を共同施設
 とみなし、公共災害対策に準じ
 た経済措置をとるべきだ。
岸首相 こんどのようなチリ地震
 津波の対策を立てるには、気象
 庁の機構も不十分であり、また
 経験不足だったので、政府とし
 ては機構の整備、国際協力など
 を強化し、研究を進めたい。
村上建設相 公共土木関係の特別
 立法は被害が少ないのでじなか
 った。公営住宅については、千
 戸分の予算を用意しているし、
 金融公庫でも準備している。
福田農相 今度は個人被害が多か
 ったので、苗代、家畜費など十
 分対策を講ずるし、またノリ業
 者に対しても十分救助する。
さらに佐藤蔵相、池田通産相らの
答弁があり同三時三十四分散会。