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 雨期の環境衛生

 ことしの入梅は、暦の上では十一
日だが、気象上では全国的に例年よ
り早目で、実際にはもはやずるずる
と雨期にはいった地方が多い。
 小児マヒ、赤痢などの伝染病や食
中毒は、ことしもすでに各地で続発
しているが、これからは例年格別ふ
えはじめる時期だから、環境衛生の
改善、向上のはどこでも一そう努力
する必要があることはいうまでもな
い。
 中でもチリ津波や伊勢湾台風の
被災地一帯は、災害後初のツユを迎
えるわけだが、衛生上ではきわめて劣悪
な条件に陥ったまま放置されている
ところが少なくない。だから、地方自
治体はじめ、衛生関係者は、まず、こ
ういう被災地に重点をおいて努力、
協力してもらいたい。
 たとえば応急仮設住宅の排水を
よくするようなことはもちろん、ゴ
ミやシ尿の処理を敏速に行なうこと
なども、被災地ではとくに緊要であ
る。名古屋市などはことしもすでに
空中からの薬剤散布を行なっている
が、被災地では害虫の駆除に最善の
努力を払ってもらいたい。
 伊勢湾台風直後の救援活動のうち
でも、医療、衛生面はとくに理想的
に行なわれて、被災地の伝染病を最
小限度にくいとめることができた
と、高く評価されている。しかし、
こうして一応大禍なきをえたため
に、かえって被災地の伝染病に対す
る警戒心が一般に低下している恐
れも少なくない。それだけに、関
係者は貴重な救援活動の経験を生
かして、こんご一そう衛生指導に
本腰を入れる必要が大きいのであ
る。
 しかし、被災地に限らず、どこで
も地方自治体や衛生関係者の努力と
並んで、住民一般の関心と協力がも
りあがらなければ、環境衛生を本当
によくすることはできない。たとえ
ば”蚊やハエをなくする運動”一つ
をとってみても、その必要は明らか
である。一軒の家だけでどんなに努
力しても効果は十分あがるまい。ま
た、どこでも下水の整備や水洗便所
の普及が肝要だが、それが一挙には
できないことだけに、住民の不断の
協力が大切なのである。
 最後に、環境衛生の盲点となりや
すいのは、観光地や公園のゴミ、公
衆便所などであろう。管理者の清掃
励行の必要はもちろん、公衆道徳の
向上には一人一人が互いに注意し合
いたいものである。