社告 海嘯遭難者義捐金
地震、洪水、火事、旱魃、孰か人生の災禍にあらざられ然れども其尤も憫むべき△海嘯の
害より太甚しき△なし何となれ▲其來るや特に急劇にして而して遂に之を避くるの道あら
ざれ▲なり抑□今回の三陸東海岸に起りし大海嘯△連日の本誌に掲載するが如きの次第に
手其家屋人民の流失溺★夥しき數に達し實に近古未曾有の非常なる一大變災と謂べく此内
辛くして危難を免れたるも忽ち衣食に窮し活路に迷い悲愴慘擔名状すべからざるの不幸に
陥りしものも極めて多からん此慘苦を視て一滴の涙なきもの△人にあらざるなり吾社△乃
ち此に世の大慈悲心大義侠氣に富める有情者に訴へ汎く義捐金を募り以て聊か遭難者救助
の一部に充んとす其義捐金取扱手續△左の如し
一義捐金△十錢以上に限る
一義捐金△必ず其住所姓名を明記し本社に送致せれるべし
一本社△義援者に對して一々其領取書を出すべし
一義捐金募集締切期日弁に其配輿方法手續等△追て報告すべし
明治廿九年六月
村山合名東京朝日新聞會社
雑報 仙臺特報(廿二日發)
罹災民△何れも身に一絲を掛けず赤裸々の醜状を呈し居るより賑恤金の募集も急務ながら
衣類其他日用必需物品の給與△最急務に属するを以て縣廳も此點に苦慮して其寄附を取扱
ふ旨を公告し奥羽新聞又此事を江湖に訴へしか▲仙臺市民△翕然奮起或△自衣を脱し又△
妻子の衣類をする等即日にして二千五百點、次日△八千數百點の多さに達したるを以て之
を宮城縣消毒所に於て消毒の上罹災地へ遞送したり
當市在留米國宣教師モール氏夫人△今回の變を聞くや直ちに勝間田知事に面し夫妻罹災地
に出張して負傷者の看護をなさんとを願しに知事△其厚意を謝し被害地の現状より目下出
張の困難なるを説きしに夫人△如何なる困難も辭する所にあらず且食料品及コックを召連
れ夫妻の外に看護上の教養有る者二人を同伴する筈にて已に東京より呼下したりとて決然
動かすべからざるにぞ知事も遂に之を許容したるを以て右一行△氣仙沼さして出發し且つ
罹災者に必要の食料品を寄贈せんとて多分に携帶したる由
奥羽水陸運輸會社にて△被害地に輸送する荷物△官民とも無手數料にて取扱ひ又日本郵船
會社△汽船石港丸を無料にて日本鐡道會社へ貸與し荷物取扱ひの迅速を計らしめたり今回
の災害にて備荒儲蓄金の内より特別給與を要するものあり其總支額四萬七千百二十五圓の
見積なるも既定の豫算内を以て罹災者を救助し能はざるに依り本縣儲蓄金百分の五以上即
ち三萬六千五百九十七圓を政府より補助せられんとを請願するに決したり其特別支給方法
左の如し
食料△男女老幼を問はず一人に付一日下白米四合の割合莱さい代炊夫賃等△實費に依り總
て焚出米を以て三十日間之を給す
小屋掛料△家屋の流失破壞したるもの△家族の人員に拘らず一戸に付金十圓を給す
農具料△耕作に從事し得るもの五人未滿△一戸に送金十圓五人以上△同金十五圓を給す
財物の海岸に漂い居るもの多きより何處より現れけん數十の海賊船隊を作り晝夜の別なく
海上を横行し時に或△上陸して民家を掠むるとありと云へり