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【土木学会論文集 第351号/II-2 1984年11月】 アーセル数が大きい場合の非線形分散波の方程式 EQUATIONS OF NONLINEAR DISPERSIVE LONG WAVES FOR A LARGE URSELL NUMBER 後藤智明* BY Chiaki GOTO

Abstract

Equations of nonlinear dispersive long waves are derived for a large Ursell number in water of varying depth.The equations include nonlinear dispersive effects.Numerical simulation of solitary waves are carried out by using the present and conventional theories.From comparisons between numerical and experimental results where the present theory provides a better agreement,it is concluded that nonlinear effects of dispersive terms are significantly important for finite amplitude waves.

1.序

 1983年5月26日,東北日本海沿岸一帯に猛威を振るった日本海中部地震津波は,なだらかな海岸線に面する秋田県峰浜村の海岸砂丘でT.P.+14mを越す陸上遡上高を示した.この海岸は1/200程度の遠浅海岸であり,波状段波として津波が発達する余裕があったことが従来の津波とは異なった結果をもたらした.
 現在,波源域の津波を正確におさえることができると,数値計算法で遡上痕跡高を精度よく再現できることが知られている.しかし,波状段波としての津波の変形を計算することは難しい.これは,分散項を含む長波理論の精度とその計算手法に問題が残されているためである.
長波を記述するパラメーターとしては,波高水深比\epsilon,相対水深&sigmaおよびこれらのパラメーターを結びつけたアーセル数Ur,(={\epsolon}/{\sigma})がよく用いられる.波高水深比は非線形性の強さ,相対水深は鉛直方向加速度(分散性)の重要度の目安を与えるものと考えてよい.長波をアーセル数で分類すると,U_r《1のとき線形理論,U_r》1のとき浅水理論,そしてU_r〜1のとき非線形分散波理論となる.
非線形分散波理論としてはBoussinesqの式1),KdVの式2),Mei-LeMehautの式3),Peregrineの式4)そして角谷の式5)が有名である.本研究の立場を明らかにする意味で従来の理論を簡単に説明する.説明には,斜面からの反射を含みより一般的であるという理由で,Peregrineの展開を用いる.彼の展開では他の展開と同様に波高水深比と相対水深がともに小さく,アーセル数が1のオーダーであると仮定する.その結果,第二次近似で次式を得る.
(1)
(2)
ここで,\bar{u}は断面平均流速,\etaは静水面からの水位変動,hは静水深,gは重力加速度である.式(1),(2)において,左辺の各項は第一次近似と第二次近似の量が加え合わされたもの,右辺は第二次近似の量である.したがって,第一義的な力のつり合いは線形長波の関係で表わされ,非線形項,分散項はそれを修正するものになっていることがわかる.
Peregrineの式と他の非線形分散波の式との関係を調べると,第二次近似の量までは完全に一致することがわかっている.Mei-LeMehauteの式はPeregrineの式を水底流速u_sで表現したものであり,水底流速と断面平均流速との関係は
(3)
で与えられる.Peregrineの式とBoussinesqの式,KdVの式,角谷の式との関係は岩崎6)の説明が詳しい.
以上の説明からわかるように,従来の非線形分散波理論は第一次近似が線形理論といった微小振幅波を対象としたものであり,有限振幅波あるいはごく浅い水域の分散性の波を考える場合には都合が悪い.このことは,従来の計算結果においてソリトン分裂が水理実験結果に比べ早めに起こったり,分裂後の第1波峰水位が高くなりすぎることが指摘されていることでも想像できる6).
最近,分散項に有限振幅の効果を与える試みが行われるようになってきている.Freeman・LeMehaute7)や著者8)は展開の第一次近似である線形長波の関係を第二次近似にあたる分散項の変形に用いたり,静水深を全水深に置き換えすることにより有限振幅性のある分散項に書き改めることを提案している.どちらにしても便宜的な修正であり,物理的根拠に乏しいといわざるを得ない.
本研究では,有限振幅性が著しい場合の非線形分散波の方程式を2種類の方法で導き,数値解法を用いてその性質および従来の理論との差を明らかにする.用いた展開は波高水深比を1のオーダーであると仮定し,相対水深を展開のパラメーターに採用したものであり,アーセル数が大きい場合に相当するものである.

*正会員 工博 東北大学助手 工学部土木工学科
(〒980 仙台市荒巻字青葉〉

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式(1〜3)

2.方程式の誘導

(1)無次元化
非圧縮性流体の二次元非回転運動を考える.静水面上にx軸,これより鉛直上向にz軸を採用する.(x,z)軸方向の流速を(u,w),\etaを静水面からの水位変動,pを圧力,hを静水深,gを重力加速度,$rhoを密度とおき,次の無次元化を考える.
(4)
ここでl_0,h_0は水平および鉛直方向の特性長,$eta_0は波高に相当し運動の大きさを表わす特性長である.
式(4)の無次元化を施すと,連続および運動の式は以下のようになる.
(5)
(6)
(7)
非回転の条件は
(8)
である.水表面および水底の条件は
(9)
(10)
(11)
である.ここで,\epsilon={\eta_0}/{h_0}は波高水深比,\sigma={h_0}/{l_0}}^2は相対水深を意味する.
(2)摂動法による誘導
いま,運動を\epsilon〜1,\sigma《1と仮定する.すなわち,アーセル数が大きい場合を考える.摂動展開のパラメーターとして\sigmaを選び,式(5)〜(11)の従属変数を次のように展開する.
(12)
式(12)を式(5)〜(11)に代入し整理すると,\sigma_0のオーダーからは
(13)
(14)
なる浅水理論が導かれる.Peregrineの展開では\epsilon〜\sigma《1と仮定するため,最低次近似は線形理論である.
\sigma_1のオーダーからは次の式群を得る.
(15)
(16)
(17)
(18)
(19)
(20)
(21)
である.
鉛直方向の運動の式(17)を積分し,水表面の圧力条件(20)を用いるとP_1は
(22)
となる.U_rは非回転の条件(18)をZ=N_0でU_1=U*なる条件で積分すると,
(23)
となる.
P_1,U_1を水平方向の運動の式(16)に代入すると,
(24)
が導かれる,ここで,G_3^」はである.
連続の式(15)を水表面波形連続条件(19)および水底条件(21)を用いて積分すると,
(25)
が導かれる.式(24),(25)が\sigma_1のオーダーにおける運動の式と連続の式である.
次に,\sigma_0と\sigma_1のオーダーの式を加え合わせることを考える.式(13)と式(25)を加え合わせると,
(26)
となる.式(26)中の大括弧内の項は流量フラックスを意味する.これを全水深(H+N-0十|sigmaN_1)で除することより,\sigma_1までの近似において断面平均流速\bar{U}は
(27)
で表わされる.運動の式に関しては,式(14)と式(24)を加え合わせることにより,
(28)
を得る.
以上のことから,(N_0+\sigmaN_1)を新たにNとおき,断面平均流速を用いて式(26),(28)を書き改めると,\sigma_1のオーダーまでの非線形分散波の方程式として,
(29)
(31)
が導かれる.ここで,Gprimeは$sigma_1のオーダーで現われる鉛直方向加速度に起因する項で
G^」=G_1^」十G_2^」十G_3^」
である.
式(29),(30)を有次元表示にすると
(31)
(32)
となる.ここで,G^」はGに相当する有次元量である.
このGに線形化を施すと,式(31),(32)はPeregrineの式(1),(2)に一致する.
(3)新しい展開法による誘導 ここでは,積分形の基礎方程式を用いた長波理論の新たな展開法を用いて,式(29),(30)に相当する非線形分散波の方程式を誘導する.線形理論および浅水理論までの展開では摂動法を用いてもあまり複雑とはならないが,その第二次近似にあたる非線形分散波理論では第一次近似と第二次近似の加え合わせといった面倒な方法を必要としたのに比べ,この展開法は比較的簡単な計算ですみ,また物理的考察を加えるにはよい方法でもある.
まず,連続の式(5)と運動の式(6),(7)を鉛直方向に積分する.連続の式は水表面波形連続条件と水底条件を用いると,
(33)
となる。鉛直方向の運動の式は水表面圧力条件を用いると,
(34)
となる。ここで,
式(タイトルなし)
である.水平方向の運動の式は
(35)
となる.式(35)の誘導には,水表面波形連続条件,水底条件および式(34)の関係を使っている.鉛直流速Wは連続の式と水底条件から
(36)
と表わされる.
摂動法と同様に,\epsolon〜1,\sigma《1と仮定する.また,水平方向流速ひを断面平均流速びとそれからのずれぴに分ける.非回転の条件(8)から
(37)
であるので,\bar{U}は\sigmaのオーダーの量であると考えてよい.ゆえに,以下の展開を
(38)
の仮定から進める.
式(38)を式(33),(35),(36)に代入し,
(39)
なる関係を用いると,
(40)
(41)
(42)
を得る.ここで,D=H+Nである.
したがって,連続の式は\epsilonのオーダーに関係せずに式(40)の形となる.水平方向の運動の式は,

であるので,\sigma_0のオーダーで
(43)
なる浅水理論,\sigma_1までのオーダーで
(44)
なる非線形分散波理論となる.
式(40),(44)を有次元表示にすると
(45)
(46)
となる.ここで,F_1,F_2はF_1^」,F_2^」に相当する有次元量である.dは全水深を表わす。式(32)と(46)は見掛け上異なった式であるが,式(32)は水底から水表面まで積分すると式(46)に一致する。
ここで示した展開法を用いて,さらに高近似の方程式を導くためには,式(37)を用いてUを\bar{U}で表わすことを考えればよい.

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式(4〜46)
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式(タイトルなし)

3.方程式の性質

 ここでは,新しく得られた方程式の性質を調べる目的で行った運動の式各項の大きさの比較計算結果について述べる.同時に,圧力分布に関しても,静水圧分布およびPeregrineの近似との比較も示す.
対象とした運動の式は鉛直方向に積分されたもので,水平床を仮定し
(47)
を用いた.初期値としては水平床上の孤立波を与え,式(47)の各項の大きさを差分で計算している.式(47)とPeregrineの運動の式(付録参照)との差は分散項だけであり,他の項は一致する.
圧力分布は,本近似では
(48)
で与えられ,Peregrineの近似では静水面上で
P=$rhog($eta一z)(49)
の静水圧分布,静水面下は
(50)
となる.
Fig.1およびFig.2に波高水深比0.1および0.5の計算結果を示す.各図は上から波形,運動の式各項の大きさ,分散項の大きさ,波峰における圧力分布の比較を示す.図中,$alphaは波高,Sは本近似の分散項全体,P_eはPeregrineの分散項,すなわち,
式(タイトルなし)
である.各項の大きさは最大値で基準化してある.また,Fig.2はFig.1に比べ水平軸が2倍に拡大されている.
Fig.1の波高水深比0.1の結果では,局所項\partial{d\bar{u}/\partial{t}と重力項gd・\partial{\eta}/\partial{x}が大きく,第1義的な力のつり合いは線形理論の関係であることがわかる.移流項\partial{d\bar{u^2}}/\partial{x}と分散項Sはともに小さく,局所項の20%以下の大きさである.分散項の中ではS_1が大きく,S_2,S_3は全体の12%程度の寄与しかない.本近似の分散項SとPeregrineの分散項との差も小さい.
Fig.2の波高水深比が0.5と大きい場合は,移流項および分散項が大きくなり,局所項の65〜85%程度に達する.分散項の中ではS_2およびS_3も大きくなり,S_1の15〜45%の大きさになり無視できなくなる.このため,Peregrineの分散項Pe,とのずれは,大きさだけではなくその分布形状にも違いが現われてくる.
Fig.1の波高水深比0.1の圧力分布は分散効果が小さいため,静水圧分布からのずれは小さい.波高水深比が0.5のFig.2では有限振幅性および分散効果が大きくなるため,静水圧分布からのずれが大きくなる.Peregrine近似の圧力分布とも有意な差が見られる.これは,式(48)〜(50)の比較でも明らかなように,Peregrine近似では鉛直方向加速度に起因する分散項に有限振幅性,非線形性が考慮されていないためである.
以上のことから,波高水深比が小さい場合は本近似とPeregrine近似との差は小さいが,波高水深比が大きくなると,分散項の有限振幅性,非線形性が大きくなり,Peregriae近似との差は無視できなくなることがわかる.また,分散項の中でもS_2,S_3,はS_1とも位相のずれがあるため,波の変形への影響が少なくないものと予想される.

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式(46〜50)
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式(タイトルなし)
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Fig.1 Comparisons of terms and pressure for a solitary wave of amplitude to depth ratio 0.1
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Fig.2 Comparisons of terms and pressure for a solitary wave of amplitude to depth ratio 0.5

4.数値解法

斜面上の孤立波の計算例としてはPeregrine4)とMadsen-Mei9)の研究が有名である。Peregrineは彼の導いた式を用いて一様勾配斜面上の孤立波の変形を差分法で計算している.Madsen一MeiはMei-LeMehautの式を水平床と一様勾配斜面を組み合わせた地形について特性曲線法を用いて計算している.ここでは,式(45),(46)を用いた計算を行い,彼らの結果と比較する.同時に,MAC法による計算結果10)およびStreetら11)の水理実験結果との比較も行う.
(1)計算法
計算は差分法とする.計算点の配置はリープフロッグ法と同じように水位と流量を交互におくものとする.差分は陰的な中央差分を採用する.陰解法を使用するので移流項等に風上差分を必要としない.
差分法で計算する場合に問題となることは,差分スキームの特性による数値分散性と数値粘性12)である.本計算では中央差分を用いているため,数値分散性が特に問題となる.本計算法の場合,差分スキームによる数値分散性の大きさは近似的に
(51)
と評価することができる.ここで,\Delta{x},\Delta{y}はそれぞれ空間格子および時間格子の寸法である.したがって,数値分散性の大きさは,\Delta{x}を細かいものに選ぶか,もしくは
式(タイトルなし1)
に近い\Delta{t}を用いることにより,おさえることができる.
この理由から,本計算では
式(タイトルなし2)
を採用している.ここで,h1は計算領域内の最大水深である.
(2)計算結果
Fig.3にPeregrineの計算結果との比較を示す.斜面勾配は1/30,初期条件は波高水深比0.1の孤立波である.図中,実線は式(45),(46)による計算結果,白丸印はPeregrineの式の計算結果である.ただし,白丸印のPeregrineの式を用いた結果はPeregrine自身のものではなく,著者が彼の式を用いて計算したものである.
Peregrineの計算では無次元時間T={t}/\sqrt{h_1*g}=25までしか行われていないが,本研究ではT=30までの結果を示す.両者の差は無視できる程度である.
式(45),(46)を用いた計算結果とPeregrineの式によるものとの差は,T=20まではまったくみられない.
丁=25からはPeregrineの方が波高増幅が大きく,鋭い波峰をもつ結果となる.Peregrineの方が前傾化が著しい理由は,非線形効果に比べ分散効果が過小に評価されるためであると考えられる.Peregrineの式を用いた計算は,Y=31.5以降に計算が不安定となる.ごく浅水域では波高水深比が大きくなり,方程式の精度のうえからもPeregrineの式の適応は問題であるが,数値計算上からも浅水域でのPeregrineの式を用いることは難しいようである.
Fig.4に式(45),(46)の計算結果とMAC法の結果の比較を示す.水底形状はMadsen-Meiの計算と同じ,水平床と1/20の一様勾配斜面が組み合わされたものであり,初期値はx/h_1=10に波峰をもつ波高水深比0.12の孤立波である.
MAC法の計算は従来のSOLA-VOF法13)に斜面の境界条件と水表面セルの条件に関して著者らが工夫を加えたものである.MAC法では格子寸法として\Delta{x}/h_1=4\Delta{z}/h_1=0.1を採用している.
本計算結果とMAC法の計算結果とは多少の位相のずれが認められるが良好な一致を示す.
Fig.5はMadsen-Meiの計算結果との比較である.
Madsen-Meiの結果は第1波峰の波高が大きく,第2波峰の生成が早めの結果となっている.これも先に述べたように,非線形の効果たよる第1波峰背後からの運動量補給に比べ,これをおさえる働きのある分散効果を過小に評価しているためである.
Fig.6はStreetらの水理実験結果と比較したものである.彼らは,本計算と同じ水底形状の水路内に孤立波を発生し,斜面通過後の波形化を調べている.図中のA,B,Cはそれぞれx/h_1=14.65,30.0,41.6の地点の経時変化である。本計算結果の方が従来の式を用いた結果より水理実験結果に近いものとなる.
Fig.7は分散項を考慮していない線形理論と浅水理論による計算結果を式(45),(46)によるものと比較した結果を示す.水底形状はFig.4と同一である.初期波の波高水深比0.1の孤立波である.
線形理論の結果は,分散項を考慮したものに比べ波速が相当遅いものとなる.また,斜面通過後の波形変化はまったく起こらない.浅水理論の結果は前傾化が著しいものとなる.波峰付近で数値計算上のオーバーシュートがみられる.
本研究で行った計算のCPU時間の比較をTable1に示す.線形理論および浅水理論は陽差分法,他の計算は陰差分法を用いた計算である.使用した計算機は東北大学大型計算機センターACOS1000である.

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式(タイトルなし2)
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Fig.3 Comparison of numerical results for a solitary wave approaching a beach
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Fig.4 Comparison of numerival results for a deformation of solitary wave propagating over a slope onto a shelf lf smaller depth
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Fig.5 Comparison with the numerical results of Medsen-Mei
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Fig.6 Comparison between numerical results and experiment
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Fig.7 Numerical results of a deformation of solitary wave by linear long wave theory and shallow water theory.
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Table1 Comparison of CPU time

5.結論

相対水深が小さく,波高水深比を1のオーダー,すなわちアーセル数が大きい場合を仮定し展開を行うと,浅水理論の高次近似にあたる式(45),(46)が導かれる.
この式は従来の非線形分散波理論に比べ,有限振幅性および非線形性を考慮した分散項を含む表現となっている.
孤立波の変形に関する数値解法を通じ,従来の理論では移流項の効果に比べ分散項の効果を過小に評価していることを明らかにした.
線形分散波理論からの類推で分散項が大きいと分散効果も大きいと考える傾向があるが,移流項の効果が大きい非線形分散波にこの考えをそのままあてはめるのは誤りである.強いてあげると,分散項から移流項の大きさを差し引いたものの時空間的な違いが分散効果を表わしているといえよう.線形波の分散とソリトンの分裂とはメカニズムが異なるのである.また,本論文では鉛直方向加速度に起因する項を一括して分散項と名付けているが,有限振幅の波を考える場合には,線形分散項とモードが異なる成分も含まれているから,一括して分散項と名付けることにも問題が残る.
本研究では一次元伝播問題に焦点を当てているが,平面的な広がりを有する二次元伝播問題への拡張も容易である.

謝辞

本研究をまとめるにあたり,ご指導・ご助
言をいただいた東北大学工学部 首藤伸夫教授に謝意を
表わす.また,計算等で協力してくれた東北大学大学院
藤間功司君に感謝する。

付録 新しい展開法によるPeregrineの式の誘導

積分された式(33),(35),(36)を用いる.\epsilon〜\sigma《1と仮定する.水平方向の流速Uを断面平均流速\bar{U}とそれからのずれぴに分ける.非回転の条件(8)からUprimeは\sigmaまたは\epsilonのオーダーであることがわかるので
U=\bar{U}+\epsilon*U^」 (A・1)
とおく.
(A・2)
アーセル数が大きい場合の非線形分散波の方程式
(A・3)
(A・4)
となる.したがって,$epsilon^」までのオーダーからは
(A・5)
(A・6)
なる線形理論,$epsilon_1までのオーダーからは
(A・7)
(A・8)
なる積分されたPeregrineの式を得る.

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式(A・1〜8)
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式(タイトルなし)

参考文献

1)Boussinesq,M.J.:Essai sur la theone des eaux counrantes,Hemo.Acad.Science,26eme Ser,Tome23, No.1,1877.
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6)岩崎敏夫:ソリトン分裂-非線型波動論-,1979年度水工学に関する夏期研修会講義集,B-5,1979.
7)Freeman,J.C.and LeMehaute,B.:Wave breakers on a beach and surges on a dry bed,J.H.D.,ASCE,HY2, 1964.
8)Goto,C.and Shuto,N.:Numerical simulation of Tsunami propagations and run-ups,Tsunamis:Their Science and Engineering,Terra Scientific Publishing
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9)Madsen,0.S.and Mei,C.C.:Solitary wave over an uneven bottom,J.F.M.,Vol.39,1969.
10)藤間功司・後藤智明・首藤伸夫:MAC法による孤立波の変形の数値計算,昭和58年度土木学会東北支部年講,1984.
11)Street,R.L.,Burges,S.L.and Whitford,P.W.: Dept.of Civil Engng.,Standford Univ.Tech.Rept No.93,1968.
12)たとえば伊藤剛編:数値計算の応用と基礎,アテネ出版,1971.
13)Nichols,B.D.,Hirt,C.W.and Hotchkiss,R.S.:A solution algorithm for transient fluid flow with multiple free boundaries,Los Alamos Scientific Lab.Tept., 1980.
(1984.3.13・受付)

【土木学会論文集 第357号/II-3 1985年5月】 津波による油の拡がりに関する数値計算 A SIMULATION MODEL OF OIL SPREAD DUE TO TSUNAMIS 後藤智明* By Chiaki GOTO

Abstract

A simulation model of oil spread due to tsunamis is developed.The equations for the motion of oil are the Navier-Stokes equation and the continuty equation.Since no effects of surface tension is included,the method is only applicable for a short time,in which the inertia and viscous effects dominate.This method is applied to Miyako Bay, on the North Sanriku Coast in Japan.It is assumed that 2000cubic meter oil spill from tanks due to earthquake.Input tsunami is the same magnitude as Tokachi-oki Tsunami hit in 1968.

1.序

津波による油の拡がりに関する数値計算法を検討する.
津波が直接の原因となって油が流出した例としては,1968年十勝沖地震津波の八戸港の例がある.港内に停泊していたタンカ〜の油槽が破損し,油が港内に拡がったのである。その他,直接の原因は津波ではないが,地震動のため石油タンクが壊れ,油が拡がった例は多い.
1964年の新潟地震では,流出した油が発火し,津波浸水域に火災をひろめている。
津波危険地域である三陸沿岸では,小さな漁港においても船舶用の石油タンクが設置されている所が数多くある。さらに,いくつかの港湾では,石油の大量備蓄が行われ,しかも津波対策が不十分な所が多い.もし,発火点が低い油であれば,流出後に火災を起こす危険が大きく,津波とともに市街地へ流れ込んでくる場合には,想像を絶するような二次災害を引き起こす可能性がある.
たとえ発火性の弱いものであっても,海水汚染により養殖水産業にとっては重大な問題となると思われる.
Fay1)の研究によると,静水面上に放出された油は,蒸発などによる体積減がなく,油層が水底に達しない程度であるならば,慣性力,重力,粘性力,表面張力の効果により拡がり,時間とともに,重カ-慣性力領域,重カ-粘性力領域そして表面張カ-粘性力領域へと変わっていくことが知られている.
重カ-慣性力領域の理論解法としては,Abbot2)の特性曲線法による数値解,Hoult3),Fannelopら4)の相似解を仮定する方法がある.この領域の解を求めるときに最も問題となるのは油層先端の条件である.普通,油層先端速度と油層厚の間に何らかの人為的な条件を設定している.
重カ-粘性力領域には,Hoult3),Fannelopら4)およびBuckHlaster5)の解がある.これらの理論は,油の粘性がきわめて大きく,あたかも平板が水面を滑っているのと同じ状態であると仮定し解かれている.
表面張カ-粘性力領域にはHoult3)の解がある.しかし,実験値とは大きく異なる結果となり,その原因はいまだに明らかにされていない.
一方,数値シミュレーションでは,力のつり合いとは関係なしに,拡散方程式を用いたり6),油層の移動速度を水や風などの移流速度と経験的に結び付けて計算しているもの7)が多い.したがって,計算結果が係数の大小に左右されるといった問題があるようである.
本研究では,油の運動の方程式を導き,それを解くといった,より実現象に近い数値シミュレーション法を検討する.油の拡がりに関する水理実験結果との比較を通じ数値計算の精度を検討する.また,この計算法を現地海岸へ適用することにより,実用上の問題点に関しても考察する.ただし,津波の現象は数時間のオーダーであるのに比べ,放出油量で多少異なるが表面張力の効果が卓越するのは数日後程度であることから,本研究では表面張力の影響を無視している.また,油を移流させる外力としては,津波の水流だけを考える.

*正会員 工博 東北大学助手 工学部土木工学科
(〒980 仙台市荒巻字青葉)

2.支配方程式と計算法

(1)油の連続と運動の式
水平方向に(x,y)軸を採用する.油の水平方向流速を(u_0,v_0),水の流速を(u,v),のとおく.基準面からの油層表面の高さを$eta_0。,水面の高さを&etaとおく。油の密度を$rho_0,水の密度を$rho,重力加速度をgとし,油の鉛直加速度は重力加速度に比べ小さいと仮定すると,油の連続および運動の式は
(1)
(2)
(3)
となる.ここで,D_0は油層の厚さであり,M_0=u_0*D_0,N_0=v_0*D_0である.&tau_x,&tau_yは抵抗力を表わす.
D_0と$eta_0の関係を導く.Fig.1(a)のように油層が水面上に浮いている場合とFig.1(b)のように油層が水底に達する場合に分けて考える.ただし,図に示すように,$eta,$eta_0は鉛直上向を正,h,h_0は鉛直下向を正にとる.
油の鉛直加速度が無視できると,鉛直方向の力のつり合いは,それぞれ
$rho_0*g*D_0=$rho*g*(D_0一$ety0十$eta)≦$rho*g*D (4)
および
$rho0*g*D0>$rho*g*(D0一$eta_0十$eta)=$rho*g*D (5)
で表わされる.したがって,D0と$eta0の関係は
D≧$rho_0*D_0/$rhoのとき $eta_0=$epsilon*D_0+$eta(6)
および
D<$rho0*D_0/$rhoのとき $eta_0=D_0-$eta (7)

となる.ここで,$epsilon={1一$rho_0}/$rhoである.式(6)中の$etaは水流に関する計算結果から既知の値であり,式(7)中のhは地盤データであるので,式(6),(7)により方程式系(1)〜(3)は閉じていることになる.
油層底面に働く抵抗力は相対速度の2乗に比例するものと仮定し,
D≧$rho_0*D_0/$rhoのとき
(8)
D<$rho_0*D_0/$rhoのとき
(9)
とおく.ここで,f,f_Bは抵抗係数である.
(2)計算法
式(1)〜(3)の計算にはリープフロッグ法を用いる.
差分式は津波に関するもの8)とほぼ同じである.計算の初期条件は油層厚および線流量の分布を与えるものとする.
本計算では特別な油層先端条件を用いていない.ただし,差分計算の誤差の特性上,油層先端で厚さが完全に零とはならないため,油層先端厚さと初期油層厚さの比が10-5となる地点を油の拡がりの先端と定める方法を用いている.本研究の範囲では10^-4以下の値を用いれば,全体の拡がり面積に影響を及ぼさない.

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式(1〜9)
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Fig.1(a,b)

3.計算結果と従来の研究成果の比較

(1)一次元拡がり
式(1)〜(3)を用いた計算で最も問題であると思われることは,抵抗係数の評価に関してである.特に,重カ-粘性力領域では,この抵抗係数の大小が油の拡がりを左右するといっても過言ではない.
ここでは,静水面上への油の一次元拡がりに関して従来の研究成果と計算結果を比較することにより,抵抗係数について検討を行う.油と水の間の抵抗係数としては,首藤ら9)の研究を参考として
f=f^」/Re(10)
を仮定する.ここで,Reは油に関するレイノルズ数で局所的な代表流速をU0,動粘性係数を$ny0とおくと
式(タイトルなし1)
で定義される.f^」は定数である.
計算は,埜口ら10)の水理実験と同様に,水槽端にシャッターをへだてて貯留した油をシャッターを引き上げることにより放出した油の拡がりに関して行う.水の流れはなく,式(4)を満足する水深を有するものと仮定する.
計算は一次元拡がりのみを考え,空間格子を2.5Cm,時間格子を0.05sとする.油は比重0.9,動粘性係数43cstのものであり,貯留量は0.75m^3である.水槽幅は0.5mとする.
 Fig.2に埜口らの水理実験結果と\bar{f}の値を変えた5種類の計算結果との比較を示す。図は拡がり長さに関するもので,各軸は,
式(タイトルなし2)
および
式(タイトルなし3)
で無次元化されている.ここで,yは放出油量,.Bは水槽幅である.
 f^」の小さい計算では実験値に比べ油の拡がり速度の大きい結果となる.f^」が0.25と大きい計算では,重カ-粘性力領域で拡がり速度が幾分小さめな結果となる.
以上のことから,本研究では油と水の間の抵抗係数としてf^」=0.2すなわちf=0.2/Reを採用する.ただし,油層の拡がりに伴う水の運動を本計算法では全く考えていないので,この抵抗係数は油層先端を含めた平均的なものと考えるべきである.実際,首藤ら9)は油層先端と他の部分では抵抗係数が大きく異なることを報告している.
Fig.3に油の一次元拡がりに関する従来の代表的な研究成果と計算結果を比較したものを示す.計算は上述のものに付け加え放出油量0.0075m^3に関しても行っており,その結果は黒丸印,黒三角印で示してある.従来の研究成果は実線,破線等で示してあり,上述の研究成果以外にSuchom11)の水理実験結果も載せてある.
放出油量のオーダーが異なる2種類の無次元拡がりに関する計算結果の差はほとんどみられず,埜口らおよびSuchonの実験値とよく一致する.したがって,抵抗係数にf=0.2/Reを用いることは当を得ているものと結論づけられる.
Fannelopら4)は,このダム決壊形式の一次元拡がりには,重カー慣性力領域になる前の段階として初期成長(Initial-growth)領域があることを指摘している.本計算結果からはこの領域に相当する現象を明確にとらえることはできない.これは,油層の急激な進行に伴い前方の水も流動するために起こる現象であり,計算では水の運動を一切考えていないことによる.
Fig.4は油層の断面形状に関して従来の研究成果と計算結果を比較したものである.横軸の1が油層先端であり,油層厚さ(縦軸)の基準は放出点の値を用いている.
計算結果は放出油:量0.75m^3のもので,重カ-慣性力および重カ-粘性力の各領域の結果は放出後2.5sおよび8.Osのものである.埜口ら10)の実験値とは条件が多少異なるため直接比較するのは難しいが,実験値が油層先端がくさび状で内部波が生じた結果になるのに比べ,重カ-慣性力領域の計算値は先細りの滑らかなものになる.
相似解を仮定したHoult3)やFannelopら4)の結果は矩形状のものとなっている.重カ-粘性力領域ではHoult,Fannelopらの理論解の形状と類似なものとなる.
(2)二次元拡がり
ここでは,油の二次元拡がりに関する埜口ら12)の水理実験結果と比較する.
埜口らは,幅12m,長さ12m,深さ0.3mの平面水槽1に幅0.31m,奥行き0.5mの小湾を作り,この湾奥から毎分0.0044m^3の油を連続的に放出し,静水上の油の二次元拡がりを測定している.使用した油は,動粘性係数13cst,比重0.86のものである.
Fig.5にこの水理実験と同じ諸元で行った計算結果を示す.計算には,10cmの正方格子および0.1sの時間間隔を用いている.計算値は計算格子に沿った階段状の実線で示している.破線で示されている埜口らの実験値に比べ計算値の方が幾分大きめな拡がりとなるが,良好な一致といえよう.
埜口らは,さらに,幅3.8m,有効実験区間40m,水深4mの大型回流水槽を用いて一様流(30cm/s)中に放出した油の二次元拡がりに関する水理実験を行っている.水路上流の水面直上に幅5cmのといを設置し,といから下流に向けて毎分0.003m^3の油を連続放出している.
Fig.6に実験結果と計算結果の比較を示す.放出開始後2sごとの結果である.流れ方向の拡がり長さについては両者は良好な一致を示すが,流れと垂直方向には多少の差がみられる.特に,流れ方向の油層先端幅には大きな差がある.これは,水流の乱れが原因と考えられ,乱流拡散をも考慮した計算が必要なことを示唆する。

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式(10)
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式(タイトルなし1)
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式(タイトルなし2)
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式(タイトルなし3)
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Fig.2 Comparison of computed results with various resistance coefficient.
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Fig.3 Comparison of one dimensional oil spread.
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Fig.4 Comparison of oil slick thickness distribution.
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Fig.5 Comparison with hydraulic experiments.
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Fig.6 Comparison of hydraulic experiments.

4.宮古湾に関する計算

(1)津波の計算13)
津波の計算は電算機の記憶容量および演算時間の制限のため,発生および外洋での伝播を扱う外海計算と宮古湾内の流動を詳細に扱う近海計算に分離して行う.まず,外海計算を行い,近海計算のための境界値を出力する.
近海計算では,この境界値を入力条件とし,宮古湾内の津波の水位および流速分布を出力する.
外海計算は北緯38度20分〜43度5分,東経140度30分〜145度15分の領域で線形長波理論を用いて行う.計算格子は水深分布により5910m〜657mの3種類の正方格子を用い,時間間隔を3sとする.対象とした津波は1968年の十勝沖地震津波であり,金森14)の断層パラメーター,羽鳥15)の波源域を用いる.
近海計算では,宮古湾の現況地形を対象とし,天文潮位T.P.Omのときに十勝沖地震津波と同じものが来襲する場合を想定している.Fig.7に宮古湾の地形を示す.
計算は,50mの正方格子,1sの時間間隔を用いて,マニングの摩擦抵抗則(粗度係数は0.02)を考慮した浅水理論で行っている.
(2)油の拡がりの計算
油の拡がりに関する計算は式(1)〜(3)を用いて行う.計算は近海津波計算と同じ50mの正方格子,1sの時間間隔で行う.抵抗係数はf=0.2/Reを用いる.f_Bに関しては0.02を仮定する.対象とする油はすべてB重油とし,比重を0,91,動粘性係数を43cstとおく.
油の初期流出条件としては,宮古港埠頭に2基の石油タンクを想定し,地震動によりタンクが破損したものと仮定する.石油タンクから流出した油は防油堤内に滞油しているものとする.防油堤の高さは地盤上40cmであり,その形状は計算格子(50mの正方格子)に等しいものとする.油量は1石油タンク当たり1000m^3とする.
(3)計算結果
外海津波計算結果と十勝沖地震津波の宮古港検潮記録を比較すると,第1波および第2波は計算値の方が低い水位となり,第3波以降は逆に高い水位となる.そこで,近海津波計算への入力点で波を入射波と反射波の各成分に分離し,入射波成分を補正し近海津波計算に入力することを考える.補正には,予備的な近海計算を数回繰り返すことにより各波峰,波谷ごとに倍率を定める方法を用いる.補正後の計算結果と検潮記録の比較をFig.8に示す.実線が計算結果,黒丸印が検潮記録である.時刻の原点は津波発生時である.
Fig.9およびFig.10に津波の水流に関する近海津波計算結果を示す.図には10cmごとの等水位線と流速ベクトルが描かれている.図中の数字はm単位の水位を表わす.宮古湾内の各地点の水位の経時変化はFlg.7に示されている.
Flg.11には,津波発生後40分から120分までの10分ごとの油の拡がりに関する計算結果が示されている.
図は宮古港の付近を拡大したもので,実線で囲まれた斜線部分が油の拡がり範囲である.
津波発生後40分で津波の第1波峰は閉伊川河口からのびた藤原地区防波堤付近まで達している.しかし,この時刻では宮古港埠頭の津波の水位は防油堤天端を越えておらず油の港内への流出は始まっていない.Fig.11のA,B点は石油タンクの位置を示す.
油の港内への流出は津波発生後42分頃から始まる。
最初は押し波のため陸上に向かって流出するが,次の引き波により港内に流される.
津波発生後70分になると,油の拡がりは宮古港竜ヶ崎防波堤の先端あたりまで達する.100分後では防波堤の開口部を越え,湾中央に向かって一層広範囲に拡がっている.また,110分後からは閉伊川上流へ向かう流れに乗り拡がっていく.
油の拡がり速度は,宮古港竜ヶ崎防波堤先端の開口部で津波の流れに乗ったときが最大で2.5m/sに達する.
しかし,津波の転流により引き戻されたりするので,長時間にわたり平均すると10〜25cm/s程度である.
Flg.12に油の拡がり長さと面積の時間変化を示す.
L_A,L_Bは石油タンクA,Bからの最大拡がり長さ,Sは拡がり面積を表わす.計算は津波発生後120分まで行ったが,油の拡がり面積はたかだか0.8km^2である.
実用的には,もう少し長時間にわたる計算が必要となろう.

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Fig.7 Water depth and computed tsunami wave history in Miyako Bay.
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Fig.8 Comparison with tidal record.
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Fig.9 Computed tsunami flow.
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Fig.10 Computed tsunami flow.
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Fig.11 Computed oil slick distribution
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Fig.12 Computed area and mazimum lengths of oil spread.

5.結論

本研究では,津波による油の拡がりに関する数値計算法の検討を行ったが,その主要な結論を列挙すると次のとおりである.
(1)油の運動の計算は,式(1)〜(3)と付帯条件(6),(7)を用いて差分法で安定に計算ができる.
(2)油と水の間の抵抗係数としてはf=0.2/Reを用いればよい.
(3)本計算では,水流の乱れによる拡散を一切考えていないが,油層が薄くなる場合には拡がりの重要な因子となるので今後何らかの工夫を要する.
(4)本計算法を現実問題へ応用する場合には,津波の水流以外に津波来襲時の風,気温等の気象条件が油の拡がりに重大な影響を及ぼすものと考えられる.今後これらの取り扱い方法を検討する必要がある.

謝辞

本研究をまとめるにあたり,ご指導,ご助言をいただいた東北大学工学部首藤伸夫教授に謝意を表わす.また,貴重な実験データを提供していただいた工業技術院中国技術試験所埜口英昭氏に感謝する.なお,本研究の一部は文部省科研費(代表者:東京大学工学部堀川清司教授)によって行われた.

参考文献

1)Fay,J.A.:The spread of oil slicks on a clam sea, Plenum Press,1969.
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8)後藤智明・小用由儒:Leap-frog法を用いた津波の数値計算法,東北大河川研報,1982.
9)首藤伸夫・大野操:石油の拡がりの実験,第24回海講論文集,1977.
10)埜口英昭・早川典生・橋本英資・山崎宗広:海上に流出した油の拡がりについて,第26回海講論文集,1979.
11)Suchon,W.:An experimental investigation of oii spreadiag over water,MIT Rept.,1970.
12)埜口英昭・山崎宗広:海面上に連続して放出する油の拡がり,第26回水講論文集,1979.
13)後藤智明:津波による木材の流出に関する計算,第30回海講論文集,1983.
14)Kanamori,H.:Focal mechanism of Tokachi-oki Earthquakes of May 16,1968,Contortion of the lithospere at a junction lf two trenches,Techtonophysics,Vol.12, 1971.
15)羽鳥徳太郎:東北田本太平洋側における津波の波源,地震,Vol.27,1974.
(1984.9.13・受付)

【土木学会論文集 第369号II-5 1986年5月】 非線形分散波式の精度の検討 ACCURACY OF NONLINEAR DISPERSIVE LONG WAVE EQUATIONS 藤間功司*・後藤智明**・首藤伸夫*** By Koji FUJIMA,Chiaki GOTO and Nobuo SHUTO

Abstract

Six equations of higher order approximation derived for U_r and U_r〜1 are examined numerically in comparison with the MAC method,with an emphasis on the development of soliton fission.The reason why the exsisting theories such as the KdV.
Boussinesq and Peregrine equations give a more rapid growth than hydraulic experiment is explained.The best fit is obtained with an equation for U_r》1.

1.緒言

現在における津波数値計算は,実用上十分な精度で打上げ高を再現できるまでに至っている.しかし,詳細な波形や流速のような,海岸部構造物の強度設計や安定計算に必要な諸量については精度が不十分で,これの向上が近い将来の重要な課題である.特に日本海中部地震津波でみられたような波先端部でソリトン分裂を起こす津波に関してはこの短周期成分の精度よい再現が必要である,
ソリトン分裂などの現象を表現できる長波の方程式(非線形分散波式)としては,今のところ,Peregrineの式1),KdVの式2),Boussinesqの式3)などのアーセル数(U_r)が1のオーダーの式と,最近著者らの1人が導いたアーセル数が1より大きい場合の式4)の2種類の系統がある.U_r〜1の場合の式は線形長波の式の高次近似,U_r》1の場合の式は浅水理論の式の高次近似であり,これらの長波理論はU_r〜1の場合とU_r》1の場合の2種類に分類できるといってよい.
この2種類の系統の非線形分散波式に関して,U_r〜1の系統の式を用いた数値計算ではソリトン分裂が実際よりも早く起こり波高増幅も大きくなる5)と指摘されており,U_r》1の系統の式を用いた方が少なくとも斜面上での波の変形では実験に近い計算値を与える6)という結果が得られている.
しかし,砕波点近くまでを含めて論議するには従来の方程式では不十分であり,より高精度の方程式が求められている.一方,津波の実用計算では,広大な海域が対象となるため,計算機容量,経費等の面からの制約もあり,無限に方程式の近似度を上げるわけにもいかない.
そこで,従来の式やより近似の高い式の数値計算結果の傾向を知り,適用範囲を決定し,かつ上記制限下に実用に供し得るものであるかを判断する必要にせまられている.
本研究では,まず新しい展開法を用いてU_r〜1,U_r》1の両者の場合で従来の式よりさらに高次近似の方程式を導く.さらに,MAC法によるソリトン分裂の数値計算結果を用いて従来の非線形分散波式,およびここで導いた高次近似式の精度を数値的に検討する.最後にソリトン分裂の機構を調べ,各非線形分散波式による数値計算がどのような結果を与えるかを考察する.

*学生会員 東北大学大学院工学研究科
(〒980 仙台市荒巻字青葉)
**正会員 工博 運輸省港湾技術研究所水工部主任研究官
***正会員 工博 東北大学教授 工学部土木工学科
(〒980 仙台市荒巻字青葉)

2.展開法

非粘性・非圧縮流体の二次元・非回転運動を考える.
波高,波長,水深の代表的な量をH_0,L_0,h_0とし,波高水深比\epsilon=H_0/h_0。,相対水深\sqrt{\sigma}=h_0/L_0と定義する.このとき,U_r=\epsilon/\sigmaとなる。z^」軸は鉛直上向きで静水面をガ=0,水底をz^」-h^」(x^」)とし,x^」方向流速,z^」方向流速をそれぞれガ,u^」,圧力をp^」,静水面からの水面の変位\etq^」表わす.また,水の密度を\rho,重力加速度をgとする.
連続の式,運動の式,水表面の条件,水底の条件,および非回転の条件を次のような無次元変数を使って無次元化する.
(1)
ただし,記号^」が有次元量を表わす.この無次元化はPeregrineの行ったものと本質的に同じである.
連続の式,運動の式,非回転の式などを鉛直方向に積分すると,基本方程式群として式(2)〜(6)を得る.
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
式(3)の中で左辺第1項が局所項,第2項が移流項,第3項が静水圧項(式(4)右辺第1項による部分),右辺は鉛直方向加速度に起因する静水圧以外の圧力(式(4)右辺第2項〉による項で,便宜上分散項とよぶことにする.式群を有次元に戻すには式(3)左辺第3項と式(4)右辺第1項にg,式(4)左辺に1/\rhoを付ければよい.
ここで,従来の摂動法とは異なり,本来物理現象として存在すべき波形\etaと底面からその波形に至る間についての断面平均流速万を基準にとり,これらに関して流速を展開する方法により方程式を誘導する.たとえばU_r〜1の式を求めるなら,式(2)〜(6)のパラメーターを\epsilon〜\sigma《1とし,式中のパラメーター\sigmaを\epsilonで置き換えてu,wを次のように展開する(この場合,\epsilon,\sigmaがともに展開に関係しており,パラメーターを\epsilonで統一するのは単にU_r》1の場合との混同を避けるためである).
(7)
そしてw_0,u_1,w_1を最終的に方程式に組み込まれる変数である\etaと\bar{u}で表わし,必要な部分までを式(2),(3)に代入して直接\etaと\bar{u}に関する式を導く.ただし,\bar{u}=\bar{u}(x;t),w_0,u_1などは(x,z:t)の関数である.
U_r》1の場合は^epsilon〜1,\sigma《1で,展開のパラメーターは\sigmaになる.この場合,パラメーター\epsilinは展開に一切関係がない.
w_0,u_1等を\etaと\bar{u}で表わすには,式(5)〜(7)から次のようにw_0,u_1,w_1…の順に求めることができる.
(8)
ただし,u_1,u_2,等の積分定数は,断面平均流速の定義
(9)
U_r〜1の場合には
(10)
U_r》1の場合には
(11)
として決定する.

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式(1〜11)

3.Ur〜1の場合の高次近似式

まず,\epsilon〜\sigma《1としてU_r〜1の場合の式を0(\epsilon^3)の精度まで求めると以下の結果を得る.
(12)
(13)
ここで,0(\epsilon)の精度を有する式は式(12),(13)の中の0(\epsilon)の項,0(\epsilon^2)の精度を有する式では0(\epsilon^3)の項までを考慮すればよい(以下,0(\epsilon^n)の精度を有する式を単に0(\epsilon^n)の式と書く).0(\epsilon)の式は線形長波の式,0(\epsilon^2)の式はPeregrineの式を積分したものに等しい.
このとき,u_1,w_0,w_1働は次のように表わされる.
(14)
(15)
(16)
圧力は,p=p_0+\epsilon*p_1+\epsilonn^2*p_2+…とおけば,式(4)から次のように得られる.
P_0=-a (17)
P_1=\eta (18)
(19)
(20)
さらに水平床として簡単化し,0(\epsilon^4)まで考慮すれば,水平床における式として次式を得る.
(22)
(23)
(24)
(25)
0(\epsilon)〜0(\epsilon^3)までの水平床の式は,同様に式(21),(22)から高次の微小項を取り除くことにより得られる。
水平床で正方向の進行波を考える場合には上の式から刀を消去でき,KdVの式の高次近似式として次式を得る.
(26)
式(タイトルなし)
ここで,0(\epsilon^2)までを考慮したものがKdVの式である.

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式(12〜26)

4.U_r》1の場合の高次近似式

次に\epsilon〜1,\sigma《1とおいてU_r》1の場合の式を0(\sigma^2)まで求めると,次の結果を得る.
(27)
(28)
式(タイトルなし)
0(\sigma^2)の式は浅水理論,0(\sigma^1)の式は著者らの1人が
導いた非線形分散波式を積分したものとそれぞれ一致す
る.このとき,u_1,w_1,p_1等は次のように与えられる.
(29)
(30)
(31)
(32)
(33)
(34)
さらにU_r〜1の場合と同様に水平床上で正方向の進行波を仮定して方程式から五を消去すれば,0(\sigma)の精
(35)
0(\sigma^0)までなら浅水理論の式と同じである。方程式を\etaのみの式で表わすことは0(\sigma^2)の式でも可能であるが,かなり複雑になる.

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式(27〜35)
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式(タイトルなし)

5.方程式の精度の数値的検討

ここでは,MAC法によるソリトン分裂の数値計算結果から,3.,4.で導いた各方程式の移流項,分散項を評価し,各式の精度を数値的に検討する.
MAC法では,断面平均をとるなどの操作を行わず,また微少パラメーターによる展開もせずに直接Eulerの運動の式を用いて計算するため,支配方程式による誤差が少ない.さらにEulerの運動の式には1階微分しか現われないために,数値計算上の誤差も少なく抑えることができる.ただし,x,z,tに関しての差分となるので,計算量は格段に増えることとなる.
(1)MAC法の計算方法
本計算方法7)は,MAC法の一種であるSOLA-VOF8)に斜面の境界条件と水表面セルでの水の授受に関して著者らが工夫を加えたものである.
計算領域をx方向とz方向に格子状に区切り,セルに対し図-1(a)の場所でu,w,pを定義する.
Eulerの連続の式,運動の式を差分化し,式(36)〜(38)を得る.移流項には風上差分を用いている.
(36)
式(タイトルなし1)
(37)
(38)
ここで,DUL,DUR等は
式(タイトルなし2)
を表わす.DWR等はwに関する同様な演算である.
底面の境界条件は,法線方向流速をゼロとするものであるが,本計算では式(36)を用いるときに,斜面セルにおいて式(39)を用いることとし,連続の式に組み入れた形で用いる(図-1(b)).
毒(娠脚・撫脚一秘ゆ・み祠
(39)
式(タイトルなし3)
自由表面での力学的境界条件(水表面で圧力ゼロ)では,水表面セルでの圧力を隣接するセルから直線補間して求める.また,運動学的条件である水表面セルでの水の授受に関しては,たとえば図-1(c)の斜線部の水が隣接するセルへ移動すると考える.
計算のアルゴリズムは以下のとおりである.t=n\Delta{t}のuとw,t=(n-1/2)\Delta{t}時のpと波形が決まっているとする.
1)u,wにより隣接するセル間で水を移動させ,t=(n+1/2)\Delta{t}時の波形を求める.
2)式(37),(38)からt=(n+1)\Delta{t}のu,wを求める.ただし,pとしてはt=(n\1/2)\Delta{t}時の値を用いる.
3)この流速値は前ステップでのpの値を準用したものであり,式(36)を厳密には満たしていない.そこですべてのセルで式(36)が収束条件を満たすようにpの値を変化させ繰り返し計算を行い,t=(n+1/2)\Delta{t}時のpとt=(n+1)\Delta{t}時のu,wを決める.もちろん,1)で決めた水表面を境界条件を与える場所として用いる.
(2)計算結果
数値計算は諸量をすべて無次元化し,図-2に示す計算条件に対し行った。初期条件は置濡10.0に波頂が位置する孤立波の第二次近似解を与えた.初期波高水深比は0.12である.底面形状はx=0〜20,30〜60が水平床,x=20〜30は勾配1/20の一様斜面である.格子間隔は\Delta{x}=0.1,\Delta{z}=0.025,配譜0.05とした.計算は東北大学大型計算機センターACOS-1000により無次元化された時間で41.4まで行い,演算時間は約9時間30分であった.
計算結果を図-3(a)〜(c)に示す.(a)は波形変化である.t=40まで,時間間隔2.5で書かれている.(b)は本計算と同じ問題をMadsen-Mei5)がMei-LeMehauteの式9)を特性曲線法を用いて行った数値計算結果との比較である.(c)は本計算とStreetら10)の実験結果および上述のMadsen-Meiの計算結果との比較である.A,B,C各点(x=14.65,30.0,41.65)での波高経時変化で示してある.A点で実験値が本計算やMadsen-Meiの計算に比べ険しい波形を示しているのは,実験では造波装置の制約で孤立波の理論波形よりも険しい初期波形を作っているためと考えられる.C点では逆に実験値は両計算値より緩やかな波形を示している.また両計算値を比べると,MAC法の結果がMadsen-Meiの計算よりも緩やかな波形となっている.(b)の結果とも考え合わせ,MAC法はMadsen-Meiの計算に比べて分裂が遅く,実験に比べれば分裂がやや早いことがわかる.これはMAC法では従来の方法に比べ実験に近い結果を得ることができるが,摩擦の影響を考慮していないことやMAC法そのものの計算誤差のため完全には一致しないものと解釈できる.
(3)評価
3.および4.で導いた各方程式による移流項,分散項をt=25〜40におけるMAC法の計算結果と比べて評価した結果を図-4(a)〜(d)に示す.上段の図は波形,中段の図はMAC法の結果から求めた静水圧項・移流項・分散項で,これは真の値であるとみなせるものとする.下段の図がMAC法の結果から算出した\etaと\bar{u}を使って各方程式の移流項・分散項を求めた結果である.
ただし中段・下段の図では図中の最大値で規格化してあり,各項の符号は流量(h+\eta)\bar{u}を大きくするように作用しているときを正とした.また,MAC法の計算は演算時間の制約のため,空間格子間隔を求められる精度が得られる範囲で比較的大きく設定してある.そのため数値的に高階微分をとることは困難で,MAC法の結果から計算される\bar{u}をFourier成分に分解し,高周波成分を除去して高階微分を実行している.
以下,MAC法の結果が正しいとみなして各方程式の精度を評価する.
移流項は0(\epsilon^2)の式を除けばどの式でもMAC法の結果にかなり近い.特に,0(\epsilon^4),0(\epsilon^2)の式による近似では,MAC法の結果とほとんど区別できない.0(\epsilon^3),0(\epsilon)の式の結果も,t=30まではMAC法とほとんど同じであり,その後も有意な差はみられない.そこで0(\epsilon^3),0(\epsilon)の式の移流項であり,従来から津波や高潮の計算に用いられている\partial{(h+\eta)\bar{u}^2)}/\Partial{x}即を用いれば十分な精度が得られるといえる.
一方,分散項は式によるばらつきが大きく,MAC法の結果との差も大きい.またその差は時間とともに増大する.
そこで,分散項の誤差の大きさを静水圧項の大きさとの比で表わし,
(40)
D_mn:各式の分散項の最大値
D_m:MAC法の分散項の最大値
S_m:MAC法の静水圧項の最大値
と定義して波の変形に伴う変化を調べた結果を図-5に示す.(a)は\epsilon,(b)は\sigmaによる変化を示す.ただし,対象としている波が孤立波であり,しかも2波に分裂する過程なので,波形から波長を直接定義することは困難である.そこで,便宜上\epsilon,\sigmaは局所的な量として,MAC法の計算波形から図-6のように代表的な寸法H,Lを決め,
\epsilon==H/h,\sigma==(h/L)^2 (41)
から求めた.孤立波の理論波形では,このように\epsilon,\sigmaを定義すれば\sigma〜0.1\epsilonとなる.したがってこの場合の見掛けのアーセル数(U_r)^」は(U_r)^」〜10で本来のアーセル数U_r〜1に相当する.本計算でも孤立波が斜面に上がる前は\sigma〜0.1\epsilonであり,斜面上で\sigmaより\epsilonの方が大きくなって水平床に乗り上げた後にソリトン分裂して再び\sigma〜0.1\epsilonに復帰する.本計算における\epsilon,\sigmaの履歴を図-7に示す。本計算波形での(U_r)^」は,最大でも孤立波の2倍程度の値であり,U_r〜1の\epsilonによる展開の仮定に近い.
図-5から0(\sigma),0(\epsilon^2),0(\epsilon^3),0(\epsilon^4),0(\sigma^2)の式の順で精度がよくなることがわかる.ただし0(\epsilon^2)の式のみが過小評価で他の式では過大評価である.U_r〜1の展開では,0(\epsilon^2),0(\epsilon^3),…と展開を進めても少しずつしかMAC法の結果に漸近しないのに比べ,U_r》1の\sigmaによる展開の方が早く漸近し,有利といえよう.
分散項の誤差が静水圧項の5%に達した時点をその方程式の適用限界とみなせば,表-1に示す数値を得る。
また,実際には分散項の大きさだけでなく,分散項のピークの位置にも方程式による差がみられる.0(\epsilon^2)の式は分散項の位置が波頂に近い方向にずれ,0(\sigma^2)の式では逆に遠い方向にずれている.
さらに,各方程式から評価できる流速・圧力分布をMAC法と比較した結果を図-8に示す.t=40での波頂位置におけるu,pの鉛直分布で示してある.0(\sigma^2)の式での流速分布が最もMAC法の結果に近い.しか
し,MAC法の結果は水表面近くでどの方程式による評価よりも大きな曲率をもっており,ここで誘導した方程式の精度の範囲では水表面近くまで流速分布を正確に表現するのは困難である.圧力分布では0(\sigma^2)と0(\epsilon^4)の式が近い.

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式(36〜41)
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式(タイトルなし1)
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式(タイトルなし2)
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図-1 計算方法
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図-2 計算条件
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図-3 計算結果 (a) Numerical results of the MAC method (b) Comparison with numerical results of Madsen-Mei (c) Comparison with experiments of Street et al.
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図-4 各方程式の精度の検討 (a)t=25 (b)t=30 (c)t=35 (d)t=30
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図-5 波の変形に伴う分散項の誤差の変化 (a)\epsilonによる変化 (b)\sigmaによる変化
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図-6 H,Lの定義
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図-7 \epsilon,\sigmaの履歴
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表-1 各方程式の適用限界
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図-8 流速・圧力分布の近似 (a)流速分布 (b)圧力分布

6. 0(\epsilon^2)の式が過大な波高増幅を与える理由

分散効果を取り入れた非線形分散波式の数値計算では,従来,0(\epsilon^2)の式が用いられている.しかし0(\epsilon^2)の式を用いた数値計算では,ソリトン分裂が実験より早く起こり,波高増幅も大きいことがわかっている5)(従来の非線形分散波式はここで導いたような積分された形で表わされていないが,やはりその精度は0(\epsilon^2)である.
ただし,移流項に関しては0(\epsilon^3)の精度をもった形で計算することが多い.
これを説明するために,まず波が水平床の浅海域に乗り上げた直後(t=25)からのソリトン分裂における第1波の成長と分離の機構を考察する。
図-4に示した運動の式の各項により波形変化を考える.少なくとも線形理論の範囲で\etaと\bar{u}は同位相であるので,定性的な議論では運動の式のみから波形変化を考えてもよいと思われる.なお各項の正負は前にも述べたとおり,流量(h+\eta)\bar{u}を大きくするように作用しているときを正にとってある.
t=25(図-4(a))では波頂付近の分散項のゼロ点,すなわち波形曲率の最大点が静水圧項・移流項のゼロ点(波頂)からずれており,時間とともにずれは小さくなることがわかる(図-4(a)〜(d)).これは,斜面通過に伴う波形の前傾によりこの分散項のゼロ点が波頂より前にずれていることを示している.このために分散項は波頂付近で正の値をもち,波高(正確には流量)を大きくするように作用し,波高増幅が起こると考えられる.
次に,波頂の前面と後面での分散項のゼロ点の位置をみると,波形前傾の影響で波頂背後での分散項のゼロ点が前面の分散項のゼロ点に比べて波頂に近い位置にある.また波頂背後の波形曲率が小さいため,波頂背後の分散項のゼロ点より後ろでは分散項はほとんど効かない.図-9にこの様子を示す.いま,局所的な波面の進行速度を考える.静水圧項は波の変形に寄与せず,移流項による波速の増加は水位のみによって決まるので,波頂の前後の水位が同一の点での波速を比べるには分散項の影響のみを考えればよい.図-9のA〜C点間では分散項は波速を遅らせ,C点より前では逆に速めるように作用している.A点より後ろでは分散項はほとんど効いていないので,領域Hでは波の前面よりも波面は速く進行し,逆に領域1では遅く進むことになる.図-10はt=25での静水圧項・移流項・分散項の和と静水圧項の比をとったもので,静水圧項のみなら波速\sqrt{gh}で進行するので,これは\sqrt{gh}を基準にした波速の2乗に対応している.この図から,実際にx=31〜34では波頂前面より波速が速く,x=31以下では遅いことが判断できる.したがって,分散項の位相のずれによって領IIの波面が速く進み第1波が分離することがわかり,領域Iに残された質量が第2波を形成すると考えられる.
結局,ソリトン分裂の原因は波形の前傾であり,波形前傾に伴う分散項の位相のずれによって第1波が成長・分離するといえよう.
したがって,ある非線形分散波式の計算結果の傾向を知るには,ある時刻の波形が与えられたときの,次のステップでの波形変化に直接効くその時刻での分散項の誤差だけでなく,その方程式で計算したときに分散項の位相のずれの大きさがどの程度になるかを考えなければならない.
0(\epsilon^2)の式の分散項は過小評価であった.一方,移流項は0(\epsilon^3)の形を用いることにより精度のよい評価になっているので,0(\epsilon^2)の式を用いると実際よりも波速が速く,前傾が著しい波形になる.そのため分散項の位相のずれが実際よりも大きく評価され,波高が大きく増幅し,分裂の早い結果を与えるものと考えられる.
また,0(\sigma)の式では逆に分散項が過大なので波速は遅れ,前傾化は進まない.したがって0(\sigma)の式を用いた計算では波高増幅が実際より小さくなるものと思われる.
孤立波の斜面上での変形で0(\sigma)の式による計算が実験結果とよく一致する原因は必ずしも明らかではないが,ソリトン分裂が分散項の位相のずれを徐々に解消してゆく過程であるのに対し,斜面上での変形は分散項の位相のずれが時間とともに増大してゆく現象である.したがって分散項が過大でも,位相のずれはやはり時間とともに増大し,水平床での変形のように速やかに位相のずれの効果がなくなるということはない.そこで,位相のずれが実際より小さい分を分散項が過大であることが補って結果的によい一致をみていると考えてよいのであろう.

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図-9 分散項の位相のずれ
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図-10 局所項の波面進行速度

7.結言

主要な結論を列挙する.
(1)新しい展開法により従来の非線形分散波式より高次近似の方程式を得た.
(2)展開を進めることにより方程式の精度はよくなる.しかし,U_r〜1の仮定のもとでの展開では0(\epsilon^4)程度まででは十分な改善にならず,ここで導いた式の中ではU_r》1の仮定のもとで得た0(\sigma^2)の精度を有する式が,式中の各項の近似でも流速分布の近似でも最もよい結果を与える.ただし,実用に供し得るかどうかは今後の検討が必要である, (3)分散項の誤差が静水圧項の5%に達したときを適用限界として,MAC法による計算結果によって各方程式の適用限界を定めることができた.
(4)著者らが工夫を加えたMAC法により,精度のよいソリトン分裂の数値計算が可能である。
(5)ソリトン分裂は,波形前傾による分散項の位相のずれによって起こる.
(6)Peregrineの式などを用いた計算で実験より波高が大きくなるのは,分散項が過小評価のために波形が実際より前傾化し,分散項の位相のずれが大きくなるからである.
最後に,本研究の一部は文部省科研費(代表:東北大学工学部教授 首藤伸夫)によって行われたことを付記する.

参考文献

1)Peregrine,D.H.:Long waves on a beach,J.Fluid Mech.,Vol.27,part 4,pp.815〜827,1967.
2)Korteweg,D.J.and De Vries,G.:On the change of form of long waves advancing in a rectangular canal and on a new type of long stationary waves,Phil.,Mag.S. 5,Vol.39,No.240,pp.422〜443,1895.
3)Boussinesq,J.:Theorie des ondes et des remous qui se propagent le long d’un canal rectangulaire horizontal,au communiquant an liquide contenue dans ce canal de vitesses sensiblement pareilles de la surface au fond, Liouvilles J.Math.17,pp.55〜108,1872.
4)後藤智明:アーセル数が大きい場合の非線形分散波の方程式,土木学会論文集,第351号,pp.193〜201,1984.
5)Madsen,O.S.and Mei,C.C.:The transformation of a solitary wave over an uneven bottom,J.Fluid Mech., Vol.39,part4,pp.781〜791,1969.
6)長尾昌朋・後藤智明・首藤伸夫:非線形分散波の数値計算,第32回海岸工学講演会論文集,pp.114〜118,1985.
7)藤間功司・後藤智明・首藤伸夫:非線形分散波理論の数値的な検討,第31回海岸工学講演会論文集,pp.93〜97,1984.
8)Nichols,B.D.,Hirt,C.W.and Hotchikiss,R.S.: SOLAVOF:A Solution Algorithm for Transient Fluid Flow with Multiple Free Boundaries,Los Alamos Sci. Labo.Rep.LA-83355,1980.
9)Mei,C.C.and LeMehaute,B.:Note on the equation of long waves over an uneven bottom,J.Geophys. Res.,Vol.71,No.2,PP.393〜400,1966.
10)Street,B.L.,Burges,S.J.and Whitford,P.W.: Dept.Civ.Engng.,Stanford Univ.Tech.Rep.No.93, 1968(たとえば,文献5)中に引用されているものを参照のこと).
(1985.6.28・受付)

【土木学会論文集 第375号II-6 1986年11月】 差分法による津波数値計算の打ち切り誤差 TRUNCATED ERROR OF TSUNAMI NUMERICAL SIMULATION BY THE FINITE DIFFERENCE METHOD 今村文彦*・後藤智明** By Fumihiko IMAMURA and Chiaki GOTO

Abstract

It is well known that truncated error of long wave simulation by the finite difference method appears as the dispersion or dissipation effects and causes numerical damping of wave height.In the present study,the truncated error of tsunami numerical simulation is investigated by using exact and approximate solutions of descretizated equations.As a result of one-dimensional initial value problem,it is clarified that numerical error varies dependently of Fourier spectrum of initial wave profile and resolution \Delta{x}/L and the value K(=\sqrt{gh}\Delta{t}/\Delta{x})are important parameters to estimate trunbated error.
Keywords:tsunami,numerical simulation,trunbated error

1.序言

近年,津波の挙動を予測するのに数値実験的手法がきわめて有効であることが認識されるようになってきた.
実際,適切な初期波形が与えられ十分に細かい差分格子を用いるならば,津波の最大打ち上げ高さを誤差15%以内で再現できるとまでいわれている1),2).しかしながら,この種の計算を経済的にかつ精度よく実施するうえで最も大切であると思われる差分格子寸法の定め方は難しく,もっぱら経験に頼って計算を行っているのも現状である.
このような背景としては,スーパーコンピュータが実用化されることでもわかるように電算機の計算能力の方が数値計算に関するわれわれの技術を上回って発達してきたことがあり,また,計算の安定性を満足する範囲では差分格子が細かいほど精度がよいという収束性に対する絶大なる信頼があることが挙げられる.しかし,電算機が万能視されているといっても限りがあり,大量の計算を経済的に行うことが要求されている今日,数値計算の原点に振り戻って計算誤差に関する検討を再度実施することが必要な時期に来ていると思われる.
そこで本研究では,津波数値計算の主要な誤差として打ち切り誤差を取り上げ,その発生原因および伝播特性について検討を行う.さらに,これらの検討を通し津波数値計算において信頼性の高い結果を得るための条件についても考察する.
ここで行う解析は,一次元伝播問題に関する線形長波計算の初期値問題と等価な差分方程式の厳密解および近似解を新たに求め,本来の微分方程式の解と比較検討するものである.また,代表的な津波波形を初期値にするというように現実問題に関する計算誤差の定量的評価についても行っている.ここで,厳密解とは差分方程式をフーリエ変換することにより導いた解析解を指し,近似解は差分方程式をテーラー級数展開することにより得られた擬似微分方程式から求めたものを意味する.直接差分方程式の解析解を導く方法は数学的には厳密であるが非線形問題への拡張が難しいという欠点がある.一方,擬似微分方程式を用いた方法は近似的なものであるが,物理的なイメージをもちやすく非線形問題への応用が容易であるという長所がある.
ここで取り扱う差分スキームは津波計算によく使用されるリープ・フロッグ法およびその比較としてクランク・ニコルソン法,2ステップ・ラックス・ウェンドロフ法である.リープ・フロッグ法およびクランク・ニコルソン法はそれぞれ陽差分法,陰差分法の違いがあるがともに数値分散性を有するものとして知られている.2ステップ・ラックス・ウェンドロフ法は数値散逸性をもつ代表的な陽差分法である.
本研究の立場を明らかにする意味で数値計算の誤差に関する従来の研究を簡単に説明する.過去の数値計算の研究は計算法自体に関するものが多く,同時にその誤差を詳細に検討しているものは少ない.特に,ここで扱うような発展方程式に関するものはvon Neuman3),Lax4)に代表されるごくわずかなものしかない.しかも,それは計算の安定性と収束性に主眼がおかれたものである.
差分スキームの数値分散性および数値散逸性を検討した例も若干あるが5),6),それらは理想化された一次元移流方程式の定性的な結果を報告するものであり,具体的な問題に関して打ち切り誤差を研究した例は見当たらないといってもよい.その他,ここで取り上げた津波数値計算の誤差に関した研究1),7)もあるが,これらは差分格子間隔を変えた計算を何種類も実施するといった数値実験的手法を用いて行ったものであり,本研究のように理論的に打ち切り誤差を検討したものではない.

*学生会員 工修 東北大学大学院 工学研究科
(〒980 仙台市荒巻字青葉)
**正会員 工博 運輸省港湾技術研究所 水工部
(〒239 横須賀市長瀬3-1-1)

2.離散化誤差(エリアジングの効果)

打ち切り誤差の解析を行う前に連続量を計算格子点上だけで定義した離散量とみなすときに生じる誤差すなわち離散化誤差について説明する.従来の数値計算の誤差解析では常微分方程式に関するものが多く,離散化誤差と打ち切り誤差を同じ意味に用いている場合もあるが8),ここでは発展方程式について検討するため両者を区別して考える.すなわち,微分を差分で代用することにより生ずる打ち切り誤差と無限級数に関する計算を部分和で表わすことに起因する離散化誤差に分けるのである.
離散化誤差の発生は差分計算において表わし得る最小の波長が格子間隔の2倍のものであることからも容易に理解できる.これは,また,フーリエ級数解析におけるエリアジングの効果の問題と考えてもよい.すなわち,有限フーリエ級数展開ではサンプリング間隔(差分計算では格子間隔に相当する〉の2倍を波長とする成分(ナイキスト波数)までしか表現できずこれより大きい波数成分はナイキスト波数より小さい成分に折り重ねられる現象である.この誤差は初期波形だけを論議する範囲では問題とはならないが,その後伝播することにより打ち切り誤差の効果と重なり合って徐々にその影響が現われてくるものと考えるとよい.
エリアジングの効果は以下のように説明することができる9).いま,連続的な波高分布が与えられているものとする.このとき波高\eta(x)は無限フーリエ級数を用いて
(1)
と表わされる.ここで,A_mは複素フーリエ係数である.
また,iは虚数単位\sqrt{-1}を表わす.一方,波高が離散量でありかつ有限個数の場合には次式の有限フーリエ級数で
(2)
と表わされることになる.ここで,Nは計算点の総数,
(3)
である.フーリエ係数A_mとa_mの関係を求めてみると,差分の計算点では\eta(x)=\eta(e)^」のであるので,式(1)を(3)に代入することにより,
(4)
を得る.したがって,有限複素フーリエ係数a_m蹴は同じ波数の無限フーリエ係数A_mとそのナイキスト波数よりも高次成分(lN+m)の総和として表わされることがわかる.これがエリアジングの効果である.エリアジングの効果に関する具体的な論議は打ち切り誤差のところで行う.

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式(1〜4)

3.差分方程式の解と打ち切り誤差の性質

ここでは,線形長波式を差分法を用いて計算する場合に発生する打ち切り誤差について擬似微分方程式を用いるものおよび差分方程式の厳密解を用いるものの2種類の方法で検討する.
(1)線形長波式の差分形
簡単なため水平床上の一次元伝播問題を考える.このとき線形長波式は
(5)
で表わされる.ここで,\etaは水位,Mは線流量,c_0は線形長波の波速(\sqrt{gh}),hは静水深,gは重力加速度を意味する.
式(5)をリープ・フロッグ法,クランク・ニコルソン法および2ステップ・ラックス・ウェンドロフ法で差分化すると次式のようになる.リープ・フロッグ法では,
(6)
であり,クランク・ニコルソン法では,
(7)
である.2ステップ・ラックス・ウェンドロフ法は本来は2段の計算ステップを踏むことになるが,それをまとめて1段で表わすと,
(8)
となる.以上の差分式において(\Delta{x},\Delta{t}),(j,n)はそれぞれ(x,t)の軸方向の差分格子間隔,格子点番号を意味する.また,図-1にそれぞれの差分法に関して計算点の配置および計算方向を示す.
(2)擬似微分方程式による近似解
まず,リープ・フロッグ差分式の擬似微分方程式を導くことを考える.式(6)の第1項をテーラー級数展開し差分から微分形式に書き換えると,
(9)
となる.ここで,無限回微分が可能であると仮定している.同様にして,この操作を他の項についても行うと,式(6)は
(10)
の形で表わされることになる.この式は擬似微分方程式とよばれ,差分方程式(6)に等価なものである。本来の解くべき線形長波式(5)に比べ,第3項が新たに加わったものとなっており,この項の存在が打ち切り誤差の発生を意味する.したがって,数値計算では線形長波式(5)を解くつもりが実際には打ち切り誤差を含む擬似微分方程式(10)を解いていることになるのである.
次に,この擬似微分方程式の解を導くことを考える.
式(10)は時間に関する高階の微分項が含まれておりこのまま解くことは難しいため,次の線形長波理論からの近似を用いる。すなわち,
(11)
または
(12)
の関係を用いるのである.式(11)と(12)はxの正の方向への進行波を考える場合には一致する.これらの式から時間に関する高階微分を変換し,線流量Mを消去すると式(10)の近似式として
(13)
が求まる.ここで,K==c_0(\Delta{t}/\Delta{x})である.式(13)においても第3項が本来の線形長波式に比べ付加されているものであり打ち切り誤差を表わす.付加された項は高階の偶数回微分からなり,線形Boussinesq式などからの類推で波数分散を意味するものとなっていることがわかる.
式(13)の性質を具体的に調べるため次のような簡単な初期値問題を考える.すなわち,
(14)
なる初期値が与えられた場合である.これは最も簡単な津波の発生・伝播問題に相当している.解としてxの正の方向へ伝播するものを考えると,
(15)
が導かれる.ここで,
(16)
(17)
である.したがって,式(13)の解はフーリエ変換により分解された各波数成分の合成として表わされ,各成分波は波数に関係した位相速度でそれぞれ伝播するといった波数分散現象を呈するものとなる.この波数分散は式(13)の第3項で表わされる打ち切り誤差により発生したもので,式(17)からも明らかなように差分格子間隔に関係する数値的なもので物理的なものと性質を異にしている.
クランク・ニコルソン差分および2ステップ・ラックス・ウェンドロフ差分に関しても同様にして
(18)
および
(19)
なる擬似微分方程式が得られる.式(12)または(13)を用いて近似的ではあるが\etaのみの式にすると,
(20)
および
(21)
が導かれる.両式から,クランク・ニコルソン差分はリープ・フロッグ差分のものと多少異なるが数値分散性を有することがわかり,2ステップ・ラックス・ウェンドロフ差分は高階の奇数階および偶数階微分項を含むため数値散逸性および数値分散性をともにもつものとなっていることが理解できる.
式(20)および(21)の初期値問題(14)の解はxの正の方向への進行波成分のみを考えるなら,
(22)
および
(23)
で与えられる.ここで,
(24)
(25)
(26)
である.
(3)差分方程式の厳密解
まず始めに,リープ・フロッグ差分式のフーリエ級数展開による厳密解法について述べる.
水位\eta,線流量Mの差分解は格子点上だけで定義されている有限かつ離散的なもめである.したがって,そのフーリエ級数展開としては
(27)
を考えればよい.ここで,\bar{\eta_m},\bar{M_m}は有限フーリエ係数であり,時間だけの関数である.また,Nは格子点数を意味する.式(27)を差分方程式(6)に代入し整理すると,
(28)
が導かれる。したがって,任意の一成分だけを考え,\bar{M_m}を両式から消去することにより
(29)
なる常差分方程式を得ることができる.この常差分方程式の初期値問題(14)の解はxの正の方向への進行波成分のみを考えるならば
(30)
で与えられる.したがって,差分方程式(6)の解としては式(30)の総和をとる形で
(31)
となる.ここで,
(32)
(33)
(34)
である.以上の解法は展開の途中にいっさいの近似を用いない厳密なものである.式(34)で表わされる波速は擬似微分方程式の解(17)と多少異なったものとなるが,やはり波数によって変化する分散現象を意味するものである.
次に,クランク・ニコルソン差分および2ステップ・ラックス・ウェンドロフ差分に関しても同様の厳密解を導いてみる.この場合も同様にして,
(35)
および
(36)
が成分波の常差分方程式となる.ここで,
(37)
である。したがって,各差分法の解は,それぞれ
(38)
および
(39)
で与えられる.ここで,
(40)
(41)
(42)
である.
(4)打ち切り誤差の性質
まず始めに,ここで導いた差分方程式の解が数値計算結果を説明し得るものかどうかを考察する.図-2は波高水深比0.1の弧立波(第1次近似)を初期値にして数値計算結果,線形長波式の理論解,差分方程式の厳密解および擬似微分方程式による近似解を比較した一例である.理論解,厳密解,近似解は離散化誤差が同じになるようにして高速フーリエ変換を用いて計算している.左側の図は1波長(静水面上の体積が95%含まれる区間長で定義している)を25分割する差分格子を用いて4波長伝播させた結果であり,右側の図は50分割で8波長伝播させたものである.Kの値は両者ともに0.5である.図から,理論解は弧立波形を保ったまま伝播するが,数値解は波数分散および散逸のため波高が減衰するとともにさざ波が主峰の後端に起こることがわかる.また,差分方程式の厳密解および近似解はともに数値解とよく一致し,数値計算結果は本研究で示した方法で精度よく評価できることも理解される.
次に,打ち切り誤差の性質に関する考察を行う.ともに離散化誤差のところで説明したように数値計算の誤差は打ち切り誤差のみならず離散化誤差との兼ね合いも考慮する必要があり,ここでは両者と同時に説明する.数値計算の誤差にはこのほかに電算機の有限桁性に起因する丸め誤差があるが,付録Aに示すようにその大きさは8桁浮動小数点計算で10^-4%程度の誤差であり打ち切り誤差,離散化誤差に比べ無視できるくらい小さい.図-3は波高水深比0.02の弧立波を初期値としたときの離散化誤差と打ち切り誤差を説明したものである.上段の図は初期波形のフーリエスペクトルを意味し,分割数Nを変化させた場合のエリアジングの効果(離散化誤差)を調べたものである.この図から,1波長当たりの分割数Nに応じてモードm=N/2に相当するナイキスト波数まででフーリエスペクトルが打ち切られるため,それより高波数(高モード)成分は低波数側に折り重ねられている様子がよくわかる.片対数図で描かれているためわかりずらいが各分割数のフーリエスペクトルの積分値は当然一致している.下段の図はリープ・フロッグ差分の打ち切り誤差である数値分散性を上段のフーリエスペクトル図に合わせて描いたものである.3種類のKの値に関して厳密解である式(34)で計算している.この図から,リープ・フロッグ差分の数値分散性はKの値で多少異なるもののナイキスト波数でその効果が最も大きくなり,ナイキスト波数近傍の成分が打ち切り誤差の影響を大きく受けることがわかる.したがって,ナイキスト波数近傍の成分は離散化誤差,打ち切り誤差がともに大きくなることが予想され,数値計算で再現すべきフーリエ成分とナイキスト波数との間の差が十分とれる差分格子を採用する必要があることが理解できる.
リープ・フロッグ差分に関してKの違いによる数値分散性の差を調べたものが図-4である.式(34)から数値計算結果の波速はKとk_m\Delta{x}に関係することがわかっており,横軸にはk_m\Delta{x}に相当する1波長当たりの分割数の逆\Delta{x}/Lを用い,内部パラメーターとしてKを使っている.ナイキスト波数は\Delta{x}/L=0.5に相当する.K=1がリープ・フロッグ差分法の弱安定条件5)の限界でありc/c_0=1となる理想的な差分格子の組合せの条件であるが,実際は任意形状の海底地形に関する計算が普通であり安定条件が最大水深で規定されるためKの値が1以下になる.したがって,計算の安定条
件を満たす範囲でKの値を大きく採ることが打ち切り誤差を小さくするひとつの条件である.
図-5はリープ・フロッグ差分に関して厳密解と近似解を比較したものである.K=0.5の場合である.数値分散性に関して近似解の方が多少小さめなものとなるが両者の差は小さく,近似解を用いても数値計算結果を十分な精度で評価できることがわかる.また,図には近似解の第1項(式(17)の総和をとる項でm=1のみのもの)に関しても描いてあるが,これだけでも非常によい近似になることがわかる.したがって,非線形問題の誤差解析を考える場合には擬似微分方程式による近似解法が有力な手段となることが想像される.図中に,0(\Delta{x}^4)の差分として示されているのは擬似微分方程式における0(\Delta{x}^3)の項を打ち消すように人為的な項を差分式に加えた場合のものを意味する.この場合,差分式は
(43)
となる.ここで,
(44)
である.波速は
(45)
(46)
で表わされる.通常の0(\Delta{x}^2)の差分より精度がよくなることが期待されるが,高波数成分の波速が線形長波理論のものより速くなるため主峰の前面にさざ波が起こるという不都合が生じ,あまり利点のあるものとはならないことが予想される.
図-6は物理的な分散性を有する微小振幅波理論の波速とリープ・フロッグ差分のものを比較した結果である.微小振幅波理論の方が線形長波理論に比べ精度が高いものであるので,多少分散性を有した方が現実の現象に近いという考え方もあるが,図から判断すると物理的な分散と数値的な分散がほぼ同じ振る舞いを示すのは非常に長周期の波に関する計算で差分格子を水深の2倍程度にできる場合に限られるようである.したがって,遠地津波を扱う場合には差分格子間隔を適当に選ぶことにより線形長波理論を用いた計算で物理的な分散効果を考慮したものに近い結果を得ることができる可能性がある.
図-7はクランク・ニコルソン差分,2ステップ・ラックス・ウェンドロフ差分の数値分散性をリープ・フロッグ差分のものと比較したものである.リープ・フロッグ差分に比べ他のものの分散効果が大きいことを示している.これは,式(6)から(8)に示したように連立の差分方程式を解く方法になっているので見通しが悪いが,線流量Mを消去し水位\etaだけの差分方程式にすると1時間ステップ計算するのに必要な空間ステップ数はリープ・フロッグ差分に比べ他の差分が2倍となっていることに起因している.どちらにせよリープ・フロッグ差分の方が約半分の分割数で同程度の精度を得ることになる.
2ステップ・ラックス・ウェンドロフ差分は数値分散性のほかに数値散逸性の効果も有しており,この数値散逸性について調べた結果が図-8である.図の縦軸は1時間ステップ当たりの減衰率に相当するe^-rを採っている.2ステップ・ラックス・ウェンドロフ差分の数値分散性はクランク・ニコルソン差分のものとさほど違わないが数値散逸性の効果により図-2に示した波形のように主峰後端に現われるさざ波の波高が小さくなるのである.

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式(5〜46)
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図-1 各差分法の計算点の配置と計算方向
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図-2 数値解と理論解の比較 a.リープフロッグ法(その1) b.リープフロッグ法(その2) c.クランクニコルソン差分 d.2ステップラックスエンドロフ差分
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図-3 エリアジング効果と数値分散性(厳密解)
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図-4 リープ・フロッグ差分の数値分散性(厳密解)
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図-5 リープ・フロッグ差分の厳密解と近似解の比較
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図-6 微小振幅波理論の分散特性との差
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図-7 各差分法の数値分散性の比較
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図-8 2ステップ・ラックス・ウェンドロフ差分の数値散逸性

4.所要の精度を得る条件

前節までの検討により差分法を用いた津波数値計算の打ち切り誤差を定量的に評価する方法が示された.打ち切り誤差は数値分散性または数値散逸性の効果として説明され,ともに波高を減衰するように働くことが明らかにされた.その大きさはフーリエ成分波の波数および差分格子間隔に関係し,また,伝播距離にも比例することが同時に示された.これらの解析は一次元伝播問題について検討されたものであるが,その主要な結果は現実の問題である二次元伝播問題に関しても使用可能なものである.なぜなら,付録Bに二次元伝播問題の打ち切り誤差を調べた結果の一例を示してあるが,その結論から座標軸方向へ伝播する成分の誤差が最も大きくなり,しかもその値は一次元伝播問題の結果に一致することが導けるからである.
ここでは,以上の打ち切り誤差の評価法を利用して,逆に,津波数値計算で所要の精度を得るための差分格子間隔に関する条件について考察する.
代表的な津波波形として選んだものは1964年アラスカ地震津波と1896年明治三陸大津波の一次元波形である.図-9に津波初期波形とそのパワースペクトルを示す.アラスカ津波は陸地近くで発生したもので,陸上部の地盤変化は測量により詳細に求められ海側の部分はそれから推定されて決められたものであり10),この種の津波波源としては精度の高いものと考えてよい.明治三陸大津波は相田11)のモデルを用いている.両者のパワースペクトル形状が大きく異なっているのは,アラスカ津波が主断層と副断層の2重のものが原因となっているのに比べ明治三陸大津波の方はMansinha-Smylie12)の方法で計算された主断層一面で推定されているからである.
したがって,ここでは複雑な津波初期波形と簡単な場合の2種類のケースを取り扱っていることになる.設定した水深は4000mである.
図-10はこの2種類の津波に関して数値計算結果と線形長波式の理論解,リープ・フロッグ差分方程式の厳密解を比較したものである.図の横軸は初期波形の主峰の位置を原点としたときの伝播距離を表わす.アラスカ津波は高波数成分を多く含むため打ち切り誤差の効果である分散性が強く現われた結果となる.その結果,主峰の波高減衰量も著しい.明治三陸大津波は数値計算結果と理論解の差はほとんどみられず,打ち切り誤差の影響が少ない.また,差分方程式の厳密解は主峰背後に発生したさざ波の部分まで数値計算結果と一致し,非常に複雑な初期波形の場合についても本研究で提示した方法で打ち切り誤差の評価ができることがわかる.
以上のような比較から,2種類の代表的な津波数値計算において所要の精度を得るための差分格子間隔の条件を求めた結果が図-11である.図-11は1波長伝播後の波高減衰量に関して

(誤差)=[(理論解)-(数値解)]/(理論解)×100 (47)

で定義した誤差である.Kの値は0.5と0.9の2種類のケースに関して示されている.図の横軸は各津波初期波形の差分分割数である.この図から,平均的なKの値が0.9の場合に誤差を10%以内にする条件が,アラスカ津波で150分割,明治三陸大津波で15分割と求め
ることができる.
1波長以上伝播したときの誤差評価に関しても同種の関係を容易に得ることができるが,1波長程度伝播すると高波数成分は遅れそれ以後の波高減衰が大きくなることは考えにくい.また,本研究で主として対象としているのは日本近海で発生する津波であり,この場合は1波長程度で日本沿岸に到達するので伝播距離としてそれ以上を考える必要はない.ここでアラスカ津波を取り上げたのは,初期波形の精度がよいことそしてその形状が複雑であるという理由による.

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図-9 代表津波の初期波形とパワースペクトル
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図-10 代表津波の数値計算結果と理論解・厳密解の比較(K=0.5)
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式(47)
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図-11 代表的な津波数値計算の波高に関する誤差と分割数

5.結言

本研究では,線形長波式を用いた津波数値計算の打ち切り誤差を定量的に評価する方法として差分方程式の厳密解を利用するものおよび擬似微分方程式を導きその近似解を求める方法の2種類を提示した.さらに,代表的な津波としてアラスカ津波および三陸大津波を選び津波数値計算で所要の精度を得るための差分格子間隔に関する条件を明らかにした.
差分格子間隔に関して従来の研究では1波長当たり20〜40分割といわれてきたが,実際は初期波形のスペクトル形状で大きく異なり,高波数成分を多く含むものは100分割以上細かくする必要があることが明らかとなった.
また,本研究で行った打ち切り誤差の解析法は基本的な誤差評価法として津波数値計算以外の発展方程式の計算や有限要素法を用いた計算にも原理的には使用できるものであることを付記しておく.さらに,差分方程式の厳密解を利用する方法は線形問題以外には適用が難しいが,擬似微分方程式による近似解法は,数値計算で発生する誤差を数値計算で評価するといった手法を用いることにより非線形問題へも拡張できるものである.

謝辞

本研究を遂行するにあたり東北大学工学部土木工学科 首藤伸夫教授にはご指導・ご助言を賜った.
また,東北水工研究会諸先生方(幹事:日本大学工学部高橋迪夫・長林久夫講師〉には熱心な討議をいただいた.
ここに記して謝意を表する.

付録A 丸め誤差の大きさ

 差分法による津波数値計算の丸め誤差の大きさについて数値実験的手法を用いて調べた結果を報告する.従来の丸め誤差に関する研究8)では打ち切り誤差について本研究で提示したような決定論的な取り扱いはなされておらず確率論的な色彩が強いものであった.これは,与える初期値によって計算の出発点における丸め誤差の分布が変化するため普遍的な丸め誤差の初期値が与えられないという難しさがあったためである.
  ここで行うものは数値実験的なもので,計算に利用する桁数を固定する比較的簡便な方法である.現在の電算機の計算処理法としては浮動小数点法が用いられており,正負によって桁数が若干異なるのが普通であるが,ここでは使用桁数を固定する最も単純な方法で調べている.
図-9は波高水深比0.1の弧立波を初期値にしてリープ・フロッグ差分法で計算したものの丸め誤差について示したものである.正解値として4倍精度(35〜36桁)計算の結果を採用し,5桁から16桁計算の波高に関する差を式(47)の形で計算したものである.横軸は計算の時閲ステップ数を表わしている.500ステップが1波長伝播する時間に相当している.通常の単精度(7〜8桁)計算では10^-3〜10^-4程度の誤差となり,本文で述べた打ち切り誤差の大きさ10^1〜10^-1%から判断すると丸め誤差は小さくあまり問題とはならないことがわかる.
図には示していないが倍精度(15〜16桁)計算における丸め誤差の大きさは10^-15%程度の大きさである.
以上の結果は36ビット電算機(東北大学大計センターACOS1000)で計算したものである.他の汎用電算機は32ビットのものが多く,この場合丸め誤差が多少大きくなることも考えられる.

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付図 差分法による津波数値計算の丸め誤差の大きさ

付録B 二次元伝播問題の打ち切り誤差

 ここでは,二次元伝播問題に関するリープ・フロッグ差分の打ち切り誤差について若干の検討を試みる.解析法としては擬似微分方程式を用いた近似的なものとする.
 最も簡単なものとして空間方向の差分格子間隔が等しい場合を考えると,擬似微分方程式は
(B・1)
となる.この式は一次元伝播問題では式(13)に相当する.ただし,式(B・1)の第3項で表わされる打ち切り誤差は第1次近似である.
式(B・1)から,リープ・フロッグ差分は一次元伝播問題と同様に数値分散性を有しており,成分波の波速{c_1}^」
(B・2)
で表わされることがわかる.ここに,んk_x,k_yはx,y各方向の波数であり,k^2=k_x^2+k_y^2である.式(B・2)から明らかなように,k_xまたはk_yが零の場合,数値分散が最も大きくなり,しかもその大きさは一次元伝播の結果と一致している.したがって,打ち切り誤差の評価としては二次元伝播問題による結果よりも一次元伝播結果を用いた方がより厳しいものになっているということができる.

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式(B・1〜2)

参考文献

1)Shuto,N.,Suzuki,T.,Hasegawa,K。and Inagaki,K. :A study of numeical technique on the tsunami propagation and run-up,International Tsunami Symposium, p.88,1985.
2)Goto,C.,Shuto,N。and Imamura,F.:Accuracy and speed of numerical simulation as a means of tsunami waring,International Tsunami Symposium,p.82,
1985.
3>O^」Brien,G.G.,Hyman,M.A.and Kaplan,S.:A study of numerical solution of partial differential equations,J.Math.Phys.,Vol.29,p.223,1951.
4)Lax,P.D.:Hyperbolic difference equatioas:A review of the Courant-Friedrichs-Lewy paper in the light of recent developments,I.B.M.J.of Res.and Development,Vol.11,p.235,1967.
5)たとえば,矢嶋信男・野木達夫:発展方程式の数値解析,応用数学叢書,岩波書店,1977.
6)久保成隆:各種の数値計算法の比較研究,農業土木学会論文集,Vo1.117,p.71,1985.
7)高梨和光・清川哲志:浅海長波方程式の有限要素法解析における問題点とその解決法,海岸工学講演会論文集,Vol.31,p.118,1984.
8)たとえば,一松 信・戸川隼人:数値計算における誤差,共立出版,1983.
9)力石国男・光易 恒:スペクトル計算法と有限フーリエ係数,九州大学応用力学研究所所報,Vol.39,1973.
10)Plafker,G.:Tectanics of the March 27,1964,Alaska earthquake,U,S.Geological Survey Professional Paper 543-I,Washington Goverment Printing Office,P.74, 1969.
11)相田勇:200m等深線上の津波波形と浸水高,東京大学地震研究所彙報,Vol.30,p.11,1977.
12)Mansinha,L.and Smylie,D.:The displacement field of inclined faults,Bull.Seismol.Soc.Amers.,Vol.61, p.1433,1971.
(1986.4.16・受付)

【土木学会論文集第 393号II-9 1988年5月】 津波予警報に対する数値シミュレーションの利用 USE OF NUMERICAL SIMULATION AS A MEANS OF TSUNAMI WARNING 首藤伸夫*・後藤智明**・今村文彦*** By Nobuo SHUTO,Chiaki GOTO and Fumihiko IMAMURA

Abstract

Possibility of quantitative forecasting of local tsunamis sufficiently before their arrivals,by use of a super computer,is examined.Provided that the initial tsunami profile can be determined within a few minutes after an earthqake by Such a metohd as proposed by Izutani and Hirasawa,the tsunami numerical simulation based upon the linear long wave theory can be finished with in two minutes and give practically accurate tsunami heights at every 200m along the castline of the Sanriku district extending from 41°30」N. to 36°20」N.
Keywords:tsunami warning,numerical simulation

1.はじめに

津波常襲地帯の1つである三陸沿岸を対象として,近海で発生した津波を数値計算し,沿岸各地の津波の高さを襲来前に量的に予報することの実現性を,予報精度と予報速度の関連において考察する.
三陸沿岸は有史以来,幾度となく津波による災害を体験している.近年では,明治29年(1896)と昭和8年(1933)に起こった三陸大津波が大きく,この2度の津波による犠牲者は30000余名を数える。
近年,沿岸各地に防潮堤や湾口防波堤など津波防災を目的とした施設が数多く建設されてきている。しかし,これらの施設は発生確率の高い中規模程度の津波を対象としているものであり,大津波を考えたものは数少ない.
巨大津波対策としては防災施設,防災地域計画,防災体制を含めた総合的な対策が取り上げられるようになりつつある.なかでも,津波予報は防災体制の重要な要素であり,正確で適切な予報ができ伝達手段が完備されているならば,人的損害の相当数を軽減できるものと期待されている.
現在,気象庁が津波の予警報を担当しているが,その根拠は震央距離,地震波の全振幅と津波の大きさとの間の統計的な資料である.日本沿岸を18海域に分類し予警報を発せられることとなっており,比較的広い範囲に関する平均的な情報を与えるものであるということができる.
津波予報が地元住民によって一応信頼されていることは事実であるが,その内情は必ずしも簡単ではない.避難などの最終的な判断は現地の責任者が下すのであるが,「現在の予報文ではいかに行動すべきか迷うことが多い.」,「頻繁に警報が出され,しかもこれまではたいした津波でなかったことが多いので,警戒心が緩みがちである.」といった反応が増えつつある.また,住民の一部には警報発令とともに避難とは逆に海岸へ見物に出かける者が増加している.この原因の1つに,ある程度の津波防災施設が完成し,安心感を与えていることが挙げられる.したがって,このままで推移すると,またしても多数の人的被害が生ずる可能性がある.これを防ぐためには,沿岸各地先での具体的な津波高さを伝えることが効果的な方法の1つであろう.これは津波数値予報で可能となる.
津波数値予報として本論文で提案するのは次のような方法である.すなわち,地震発生とともに地震波の情報から推定される断層モデルを用いて津波初期波形を与え,それに基づいて津波数値計算を実施し,予報に供するものである.この際,問題となるのは,1.津波初期波形の迅速な推定方法と,2.数値計算の高精度化・高速度化の2つである.前者に関しては,Kanamori・Given1)および泉谷・平澤2)〜5)の研究例がある.精度など今後の研究を待たなければならない事項が残されているものの,従来,余震域などから決められていた断層の寸法を,比較的容易にかつ短時間で決定することができる手法が確立されつつある.本研究で焦点を当てるのは後者である.特に,数値計算の精度と演算速度に関して詳細な検討を実施し,津波の予報を対象とした最適な数値計算法について考察する.
本論文の内容を簡単に述べると以下のとおりである.
まず,泉谷・平澤の津波初期波形の即時的推定法を前提とした津波の数値予報システムを提案する.次に,提案したシステムに用いる津波数値計算法の精度および演算速度についての詳細な検討を明治29年(1896)三陸大津波を例として実施する.最後に,1968年十勝沖地震津波を例として,泉谷・平澤の手法で決定された初期波形を使用し,津波数値計算を実施し,痕跡値と比較することによって,津波数値予報システムの実用性を検討する.この最後の検討は,現段階で使用できる手法の総合的な精度の検討であるといってよい.誤差は初期波形推定時にすでに生じており,それに続く津波計算でも発生するものである。これらすべてを含め,実用に耐える結果が得られるか否かの検討を行うものである.
なお,本研究は泉谷・平澤との合同研究の結果の一部である.著者らは津波の数値計算を担当した.津波の初期水位すなわち地震断層のパラメーターの推定方法の詳細は泉谷・平澤の研究成果2)剰を参照されたい.

*正会員 工博 東北大学教授 工学部土木工学科
(〒980仙台市荒巻字青葉)
**正会員 工博 運輸省港湾技術研究所海洋水理部
(〒239 横須賀市長瀬3-1-1>
***学生会員 工修 東北大学大学院工学研究科
(〒980 仙台市荒巻字青葉〉

2.対象海域と津波数値予報の方法

本研究で提案する津波数値予報システムの流れを図-1に示す.図-2は泉谷・平澤の即時的断層パラメーターの推定法に関するフローチャートである.断層パラメーターのうち断層の長さと破壊進行方向に関しては各観測点の記録から求めた強振動継続時間を用い,断層幅とすべり量は過去の地震から定めた経験式から,そして傾斜角およびすべり角はP波の初動から推定するのである.
津波初期波形はこのように定められた断層パラメーターを用いてMansinha-Smylie6)の方法で計算される.津波初期波形が定まると各沿岸での津波の水位は長波理論による数値計算により求められる.
三陸沿岸の津波の数値予報を目的とした数値計算法の一例を以下に示す.対象とした海域は,図-3に示す北海道根室半島沖から宮城県沿岸部までの北緯36°20」から43°00」,東経139°40」から145°20」までの範囲である.
この領域をAからDまでの4段階に分け,深海域では計算格子間隔を5.4km(1領域)とし,浅海域はしだいに格子を細かくし,1.8km(4領域),0.6km(5領域〉とし,最終的に0.2km(22領域)まで細分化している.
図中のA,B,Cはそれぞれ5.4km,1.8km,0.6kmの各領域を表わし,D領域は0.2kmを採用した22か所を示す.また,図には羽鳥7)により推定された歴史津波の波源域も同時に示している.
計算の支配方程式は線形長波理論
(1)
ここに,
x,y:空間座標, t:時間座標
\eta:津波の水位, h:静水深
M,N:x,y方向の線流量
g:重力加速度

であり,計算法としてはリープフロッグ差分法8)を用いている.また,計算の迅速性を考え津波の陸上遡上,構造物の効果を一切考えていない.さらに,津波以外の波は考慮しておらず,津波来襲時の天文潮位はT.P.Omとしている.以上のように,この計算法は,深海域から浅海域まで連続的に計算する方法が採用されている点を除くと数値予報を考えた新たな技巧などを考慮したものでもなく,また従来のものに比べ演算速度は速いものの若干精度が劣るものとなっているということができる.
したがって,津波の数値予報の精度を前提として計算の支配方程式,格子間隔,境界条件の設定法など個々の問題点を吟味する必要があり,以下に詳細な検討を行う.

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式(1)
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図-1 津波数値予報の流れ
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図-2 断層パラメーターの推定法
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図-3 計算対象領域

3、数値計算の精度と演算速度に関する検討

ここでは,2.で提案した計算法の支配方程式,格子間隔,境界条件に関する精度について,詳細な検討を行う.また,津波の数値予報では演算時間の高速化も重要な課題であり,両者の兼ね合いに関しても考察する.
なお,数値計算法の検定に用いた津波としては,比較的大規模なものとして1896年に発生した明治三陸大津波を選んでいる.ただし,初期波形には検潮記録と計算結果の比較から試行錯誤により求めた相田9)のモデルを用いている.当時は即時的に断層パラメーターを推定するための地震波データが完備されていなく,泉谷・平澤の方法を適用することができないからである.
(1)計算の支配方程式
前節では支配方程式として線形長波理論の採用を提案した.浅海では誤差が増えると予想されるので,簡単な一次元伝播問題を取り上げ,高次近似項である非線形項,分散項の重要性について以下に検討を行う.
図-4は500m以深の海域に関して線形長波理論と非線形項を考慮した浅水理論,さらに分散項を考えたPeregrineの式10)を用いた計算結果を比較したものの一例である.この計算結果は図-3に示した断面a-a^」に関するもので,津波発生後から100s間隔の津波波形を表わす.また,線形長波理論と浅水理論の計算にはリープフロッグ法,Peregrire式の計算には陰差分法が用いられており,計算格子間隔は計算誤差を小さく抑えるために津波の波長に比べ十分細かい1.35kmを採用している.図から,深海部の津波計算では線形長波理論計算と浅水理論計算の差は全く現われず,非線形項は無視できることがわかる.また,Peregrine式を用いたものは,分散項の効果が主峰の減衰や分散波列の発生となって現われ,多少の差がみられる.しかし,その差は小さく,やはり無視可能であることがわかる.
 同様の計算を500m以浅の浅海域に適用したものが図-5である.計算格子間隔としては0.2kmを採用している.図から,浅水理論による計算結果には線形長波理論に比べ波速の差による波形の違いが若干みられるものの無視できる程度であること,Peregrine式を用いたものは深海域の場合に比べ分散効果が大きく現われたものとなることなどがわかる.
図-6は以上の計算結果を最大水位に関して比較したものである.図は,当初3.2m程度の水位であった津波が左右に分かれ減衰することにより1.2m程度の水位となり,その後浅水変形のため増幅している様子を示す.この図からも線形長波理論と浅水理論計算の差は小さいこどおよびPeregrineの式を用いた計算は分散性のため最大水位が低くなることがわかる.なお伝播距離よる計算の方が幾分小さめな値となっているのは,移流項の計算精度が他の項に比べ低く,移流項の打ち切り誤差に起因する数値散逸性が起こるためである.また,演算時間の比較を表-1に示しているが,線形長波理論による計算に比べ浅水理論が1.6倍,Peregrineの式が17倍も必要であることがわかる.以上のことから,高速度の計算が要求される津波の数値予報には線形長波理論を用いることが適切であると判断できよう.
(2)計算格子間隔
a)深海部
ここでは深海部における二次元伝播計算を行い,計算格子間隔の違いによる計算結果の差および演算時間の差について検討する.計算の支配方程式は前節の結果から線形長波理論を用い,従来の三陸沿岸の津波の計算には普通5km程度の計算格子を用いている例が多いことから格子間隔として2.7km,5.4kmおよび10.8kmの3種類を比較の対象として選んでいる.
図-7に格子間隔2.7kmの計算結果の一例を示す。
図は津波発生後から6分ごとの三陸沿岸へ向かう津波の様子を描いたものである.図は鉛直方向に拡大され描かれているので注意が必要である.初期津波の最大水位は4.0m,短軸の水平距離は約50kmである.
図-8は計算格子の異なる3種類の水位の経時変化に関する比較を行ったものである.出力地点は浅海部計算への接続を考慮して水深1000mの等深線上に6点を選んでいる.図中の数字は格子間隔2.7kmの場合の最高水位および最低水位を表わす.各地点いずれも引き波で始まり津波発生後10分から15分後に最大水位を生じている.主峰の水位は計算格子間隔が細かいほど大きく,主峰背後の分散波列の周期も短いことがわかる.これは,数値計算の打ち切り誤差によるもので,ここで採用したリープフロッグ法は数値的な分散性をもち格子悶隔に比例してこの効果が大きくなるためである.
表-2は演算時間および図-8に示した水深1000mでの6地点の最大水位を比較したものである.いずれも格子間隔5.4kmの計算結果を基準とした比率で表わしている.この表から,格子間隔5.4kmの水位に関する結果は2.7kmのものに比べ若干小さくなるものの大差はなく,しかも演算時間が約1/7になることがわかる.
格子間隔10.8kmは演算時間に関しては格子間隔2.7kmに比べ約1/50程度となるが津波の最大水位の減衰が大きい.したがって,計算の精度および演算速度を考えると深海部の津波計算は先に提案した計算格子間隔5.4km程度が適しているものと結論してよい.
b)浅海部
津波計算は2.で説明したように深海部から浅海部まで連続的に実施きれる.しかし,浅くなるにつれ,誤差は深海の場合と異なった様相を示す.ここでは浅海域の結果について,計算格子問隔の差の効果について検討する.計算領域はAからDまでの4段階に分かれている.
深海部として取り扱ってもよいAからCまでの格子間隔をそれぞれ5.4km,1.8km,0.6kmに固定し,沿岸域のD領域のそれを0.2km,0.3kmおよび0.6kmの3種類に変化させ,計算精度や演算時間の差を比較する.
図-9は格子間隔の違いによる海岸線形状および計算結果の差を比較したものである.格子間隔0.2kmのものについては,領域分割および水深分布を同時に示している.図の左側部分をみると,格子間隔0.2km,0.3kmの場合は海岸線が比較的滑らかに近似されているが0.6kmでは格子が粗く階差状の形状となることがわかる.したがって,粗い格子間隔を用いると計算の打ち切り誤差のみならず海岸からの反射の誤差も大きくなることが予想される.図の右側部分は最大水位に関する格子間隔0.2kmの計算結果と痕跡記録11),12)および格子間隔0.2kmを基準とした0.3km,0.6kmの計算結果の比較を行ったものである.ただし,痕跡値には同地点であっても観測者の違いにより差があるものもあり,このようなものに関しては最大値と最小値を結んだ線分で表わし,痕跡値が1つしかない場合は白丸印を用いている.
格子間隔0.2kmの計算結果と痕跡値を比較すると,宮古以北では計算結果の方が若干小さく,宮古以南では大きくなる傾向がみられるが,平均的にはよく一致しているといえる.格子間隔0.2kmの計算結果に比べ,0.3kmおよび0.6kmのものは高水位出現地点で小さく,他の地点で大きくなる傾向がみられる.これは,先に述べた境界近似の精度の違いのほかに,津波水位が格子が代表する四辺形内の平均的な高さとして計算されることが影響している.格子間隔が粗くなると局所的な水位の高まりの表現の精度が悪くなるからである.
以上のように最大水位は計算格子間隔が粗いほど小さめな値となり,津波数値予報の精度を向上するには十分細かい格子間隔を採用する必要があることがわかる.しかし,格子間隔を細かくすると計算量が増加し,予報に間に合わなくなるおそれがある.表-3に示したように格子間隔を半分にすると演算時間は約12倍となることから判断し,現状では0.2km格子を用いるのが適切であると考えられる.これなら,後述するように全計算を所要時間以内に終了することが可能である.
(3)陸上遡上および構造物の効果
前節までの検討には陸上遡上や防波堤・防潮堤といった構造物の影響は考慮されていなかった.ここでは,これらを取り入れた詳細な数値計算を行い,それとの比較により,2.で提案した計算を沿岸で\Delta{x}=0.2kmとして実施することが津波数値予報として十分な精度を有するものであるか否かの検討を行う.
対象としたのは三陸沿岸のほぼ中央に位置する宮古湾である.計算の支配方程式には浅水理論を用い,格子間隔は0.05kmとし,陸上遡上,構造物を考慮した場合と考慮しない場合の2種類の計算を行った.これらの計算は計算機の記憶容量の関係で,外海計算と近海計算に分けて実施した.外海計算は本研究で提案した計算と同じものであり,宮古湾外の水深100mの所で近海計算のための境界入力値を出力し近海計算に結び付けている.なお,宮古湾内の構造物は昭和55年当時のものであり,津波来襲時の天文潮位をT.P.Omとしている.
また,遡上計算の境界条件の与え方としては岩崎ら13)の方法を用いている.
図-10は宮古湾の水深分布と水位の経時変化である.
0.05km格子の計算結果,および陸上遡上を全く許さず,防波堤なしとした0.2km格子の場合の結果をも併せて示している.図から,陸上遡上,構造物の有無は水位の経時変化に差を生じさせるが,最大水位に関しては差が小さいことがわかる.また,格子間隔0.2kmの結果は構造物の効果を考慮していない0.05kmの結果と比較的近いものとなっている.したがって,前節では0.2kmより細かい計算を検討していなかったが,0.2km程度の格子でも津波数値予報としては十分な精度の結果を得ることができるといえよう.
図-11は津波発生後40分の水位および流速分布に対する陸上遡上,構造物の影響を比較したものである.宮古湾中央部付近までのびている防波堤の前面および背後に渦を形成していること,防波堤,防潮堤の効果により津波の浸水が抑えられ陸上遡上域がかなり小さくなることなどがわかる.陸上遡上を考慮しているものは閉井川周辺,その河口部周辺の宮古港各埠頭近傍,津軽石川地区など遡上周辺部においてかなり流速分布の異なる結果となるが,遡上域を離れるとその差は大きくない.しかも,水位分布には遡上域周辺においても顕著な差がみられない.したがって,陸上遡上,構造物の効果は津波の流況を大きく変え,氾濫面積に大きな差をもたらすが,水位に関してはそれほど大きな影響を及ぼさないということができる.
以上のことから最大水位を対象とする津波数値予報では,陸上遡上,構造物の効果を考慮する必要がないとしてよい.また,格子間隔0.05kmと0.2kmの差も小さく,津波数値予報には2.で提案した計算法で十分な精度が得られるものと期待される.

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図-4 支配方程式の違いによる波形の比較(進海部500m以深)
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図-5 支配方程式の違いによる波形の比較(進海部500m以浅)
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図-6 支配方程式の違いによる最大水位の差
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表-1 演算時間の比較(一次元伝播計算)
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図-7 深海部における水位分布の計算例
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図-8 深海部における空間格子間隔の違いによる計算結果の差
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表-2 深海部計算の演算時間と最大水位に関する比較
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表-3 浅海部計算の演算時間に関する比較
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図-9 浅海部の海岸線近似と計算結果の比較
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図-10 宮古湾内の水深分布と計算結果の比較
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図-11 陸上遡上及び海岸構造物の効果(流速ベクトルと等水位線(数字付き)を示す.数字はm単位)

4.数値予報例

(1)予報計算例
泉谷・平澤は彼らの提案した即時的推定法を用いて1968年十勝沖地震の断層パラメーターの計算を行っている.表-4にその結果およびKanamori1)が推定した結果を示す.断層の長さが多少異なるものの両者の推定値は比較的近い.しかし,余震域など確実な資料を使用したKanamoriの値と差があることは無視できない.津波予報の立場からすると,初期条件にすでに誤差が存在し,そのため最終結果が信頼できないものとなる可能性がある.ここでは,こうした誤差を含んでいる泉谷・平澤の手法による断層パラメーターを初期値として採用し,2.,3.で検討した津波計算手法と組み合わせた場合,最終結果がはたして実用に耐え得る精度を有するか否かを検討する.
図-12に最大水位に関する予報計算の結果の一例を示す.図は三陸海岸中央の田老から綾里湾に関するもので,左側が計算の領域分割と津波の最大水位分布,右側が沿岸に沿った最大水位である.また,図には痕跡記録14)が同時に比較され,痕跡値は最大値と最小値を結ぶ線分で表わされている.計算結果と痕跡値は計算結果の方が多少小さめであるが比較的良好な一致を示している。
この予報計算の精度は相田15)の指標
logK=(1/n) (K^」=[痕跡高]/[計算高])
n:データ個数

を用いるとK=1.37,x=1.67となり,Kanamoriの推定値を用いたAida16)の結果K=1.31,x=1.37より若干劣るものとなっている.ただし,Aidaは6地点の痕跡記録との比較であるが,ここでは84地点を用いており,比較地点数が多いことを考えると,相田の結果と大差ないものが得られていると判断してよい.陸上遡上まで考慮し,しかも海底地盤変動を痕跡によく合うように修正しながら行う津波計算においてもK=0.8〜1.2の範囲の結果であることを考えると,K=1.37という結果は現在の津波計算の水準からして実用に供し得るものだと考えてよい.

 (2) 予報速度に関する考察
 この節では津波の数値予報を実現させるためのもう1つの問題すなわち予報速度に関する考察を行う.津波の数値予報は即時的断層パラメーターの推定と津波の数値計算の2種類の作業に分類できる.即時的断層パラメーター決定は本論文の目的ではないが,現実に東北大学理学部地震予知センターで実施した一例を表ー5に示す.
ただし,使用している計算機は汎用機以下の能力のものであり,高速機(スーパーコンピューター)を考えると予報速度はさらに向上され,約1/10程度以下となることが期待される.
 十勝沖地震津波の数値計算に要した演算時間は表ー6のとおりである.計算機としては汎用機(ACOS1000)と高速機(SX−1)の2種類に関して比較している.汎用機が仮想記憶法すなわちCPUと外部記憶装置との入出力を介して計算するのに比べ,高速機はベクトル演算機能に優れ,全データをCPU展開し計算するものであるため入出力に使われるロスタイムがない.津波発生後から90分間の計算に要した時間は汎用機が27分,高速機が1分程度である.
 以上のことから高速機を用いるとの条件で,三陸沖の津波の数値予報に必要な時間を推定したものが図ー13である.震央に一番近い観測点までの距離を200kmとするとP波走時は約33秒,S波走時は約55秒であり,震源決定に用いる観測点のうち最も遠いものまでの距離を400kmとするとP波が約60秒,S波が約100秒で到達する.また,断層の長さを200km程度と想定すれば,破壊継続時間は100秒程度である.したがって,地震波の読取りに3〜4分程度が必要となる.その後,データの処理が開始され,断層パラメーターが計算されるまでに5分半程度が必要となる.そして,津波の数値計算が行われ,これに必要な時間は多く見積もっても,1.5分程度である.このような作業のすべてが円滑に行われたものとすると,発震後7分で津波の数値計算まで終了する.三陸沿岸の津波は地震後25分から30分たって海岸に到達するから,地元住民への伝達にさらに10分程度必要としても,津波来襲までに8分以上の余裕を見込むことが可能である.したがって,高速機を用いる条件で津波の数値予報は予報速度の点からも実現可能であると結論できる.

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表-4 断層パラメーターの比較(1968年十勝沖地震津波)
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図ー12 予報計算結果と痕跡記録の比較(1968年十勝地震津波)
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表ー5 断層パラメータの推定に必要な時間
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表ー6 津波数値計算に必要な時間
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図ー13 津波数値予報システムの作業所要時間

5. 結 論

 三陸沿岸を対象とし,日本近海で発生する津波を数値計算により予報することの可能性を,予測精度と予測速度の両面から検討した.その結果,津波の最大水位に主眼をおく数値予報では,ここで提案した手法で十分な精度を有すること,また予報速度に関しても地震発生後7分程度で結果を得ることが可能であることが明らかとなった.ただし,現状の地震観測網ではデータが不足し,精度の高い波源推定値が必ずしも得られるとは保証されないなど,将来解決を要する問題点も数多く残されてはいる.

謝辞

 本研究を実施するにあたり東北大学理学部平澤朋郎教授,信州大学工学部泉谷恭男助手のご指導,ご助力を得た.ここに記して謝意を表す.なお,本研究の一部は文部省科学研究費および石原藤次郎研究奨学基金による.

参考文献

1) Kanamori, H. and Give, J.W. :Use of long-period seismic waves for rapld evaluation of tsunami potential of large earthquakes, Tsunamis-Their Science and Engineering, Terra Scientific Pub. Co., pp.37〜49,1983. 189
2) 泉谷恭男・平澤朋郎:強振動の継続時間と震源パラメー タ,第21回自然災害科学シンポジウム,1984.
3) 泉谷恭男・平澤朋郎:加速度記録を用いた断層パラメー タの即時的推定の試み,地震学会講演予稿集,1985.
4) 泉谷恭男・平澤朋郎:断層パラメタの即時的推定法,東 北大学津波実験所研究報告,第3号,pp.1-21,1986.
5) Izutani,Y.and Hirasawa, T. :Use of strong motion duration for rapid evaluation of fault parameters, J. Phys. of Earth (印刷中).
6) Manshinha, L. and Smylie, D. :The displacement fields of inclined faults, Bull. Seism. Soc. Amer., Vol.61, pp.1433〜1440,1971.
7) 羽鳥徳太郎:東北日本太平洋側における津波の波源,地震,第27号,1974.
8) 後藤智明・小川由信:Leap-frog法を用いた津波の数値計算法,東北大学工学部土木工学科河川研究室,52p.,1982.
9) 相田勇:200m等深線上の津波波形と浸水高,地震,第30号,pp.11〜23,1977.
10) Peregrine, D. H. : Long waves on a beach, J. F. M., Vol.27, part 4, pp.815〜827, 1967.
11) 伊木常誠:三陸地方津波実況取調報告,震災予防調査報告第11号,1896.
12) 松尾春雄:三陸津波調査報告,土木試験所報告,1933。
13) 岩崎敏夫・真野明:オイラー座標による二次元津波遡上の計算,第26回海講,pp.70〜74,1979.
14) 気象庁:1968年十勝沖地震調査報告,気象庁技術報告第68号,244p.,1969.
15) 相田勇:三陸沖の古い津波のシミュレーション,地震研究所彙報,第56号,pp.71〜101,1977.
16) A1da,I. :Reliability of a tsunami source model derived from fault parameters, J. Phys. Earth, Vol. 26, pp.57〜73, 1978.
(1987.9.4・受付)

波浪予測を目的とした物理因子重回帰モデル 後藤智明*・柴木秀之**・青野利夫***・ 片山忠****

Abstract

 波浪予測手法として用いられている波浪推算モデルと統計モデルは,それぞれ低波浪時の予測精度,波浪発達期の予測遅れの問題が残されてきた,これらの問題を解決する目的で物理因子重回帰モデルを開発した.モデルの予測式は,物理過程を記述した代数方程式で表され,予測結果を風波とうねりの各成分に分離することが可能である.また,本予測モデルは,現地波浪への適用性,予測精度ともに良好な手法である.
Key Words: wave forecast model, multiple regression method. physicl parameter

1. はじめに

 港湾建設の施工管理から船舶の航行,海洋性レクリェーションに至る幅広い海洋活動における安全性の確保には,的確な波浪予測情報の提供が不可欠である.
従来より,波浪予測を目的として用いられてきた手法に波浪推算モデル1)-3)がある.しかしながら,波浪推算モデルは,主に高波浪を対象として理論構成がなされていることから,低波浪の推算精度が高波浪と比較して相対的に低く,また波浪推算の外力条件となる風推算の精度も不十分な場合が多い.このような点から,波浪推算結果をそのまま予測値とすることには,波浪予測の精度上の問題があった.
 波浪推算モデルにかわる手法として,統計モデル(例えば重回帰波浪予測モデル)を用いた波浪予測手法4)-6)が提案された.統計モデルは,予測波浪に関係する因子として現時刻の観測波浪,風速,気圧を選択し,これらを説明変数とする回帰式を波浪予測の基礎式としたモデルである.この手法の利点は,専門知識を必要とすることなく,容易に波浪予測を実施できるところにある.しかしながら,予測式中の観測波浪に関する項の寄与率が高くなるため,予測値が観測値に強く依存し,観測値に引きずられる形で,予測波高の立ち上がりが遅れるという問題点があった.さらに,長期予測になるほど予測精度が低下するなどの難点もあり,実用化を考える上で多くの課題が残された手法であった.
本研究では,これらの問題を克服するための新たな手法として,波浪推算モデルと統計モデルのそれぞれの長所を組み合わせた物理因子重回帰モデルを提案し,その予測理論を述べるとともに,現地へ適用した結果と予測精度に関する考察を行う.
 物理因子重回帰モデルとして,観測波浪を説明変数として用いないモデルⅠと観測波浪を用いるモデルⅡの2種類を提案した.モデルⅠ,は,波浪の発達,伝播,減衰に関する物理的な理論に基礎を置いた波浪推算モデルに類似したモデルである.波浪推算モデルと異なる点は,波浪推算モデルの理論式が微分方程式で表されるのに対し,線形の代数方程式で表されるところにある.予測式を線形の代数方程式で表すことにより,風推算を含む予測誤差を小さくするように予測式中の係数を観測値と推算値との重回帰解析から決めることができる.
 モデルⅡは,モデルⅠで説明できない誤差が,時々刻々の推算値と観測値との差,推算エネルギーの増加量等に依存すると考え,これらの因子を用いて予測誤差を小さく抑えるように工夫したモデルである.
 なお,モデルⅠ,モデルⅡともに,重回帰モデルに比べると,説明変数の物理的な解釈が可能な方法である.
また,予測結果の出力諸元として,有義波高,有義波周期のみならず,波向別に計算されたエネルギー分布から推定される代表波向,さらには,風波とうねりそれぞれの相当有義波高と相当有義波周期,成分波向などが算出可能である.

*正会員 工博 運輸省港湾技術研究所海洋エネルギー利用
研究室長(〒239 横須賀市長瀬3-1-1)
**正会員 工修 運輸省港湾技術研究所海洋エネルギー利用
研究室 (研修生)
***正会員 工博 運輸省港湾技術研究所海洋エネルギー利用
研究室 (科学技術庁特別研究員)
****前運輸省第二港湾建設局横浜調査設計事務所長(現運輸省
第二港湾建設局東京空港工事事務所長)

2. 波浪予測理論

 (1) モデルの仮定
 物理因子重回帰モデルの構築を行うにあたり,波浪の発達,伝播,減衰に関して,次のような仮定を行った.
波浪の発達は,無次元波高と無次元フェッチの1/2乗則および無次元周期と無次元フェッチの1/3乗則7)で記述できるものと仮定する.さらに,図ー1に示すように,予測地点を中心とした16方向の波向線を放射状に設定し,それぞれの方向について波浪が独立に発達するものと仮定する.また,図の各波向線上に,100km間隔(図中\delta Fで表す)に計算格子点を設定し,この格子点において波の発達を計算する.
 波浪の伝播に関しては,次に示すような仮定を置いた.
本来,波浪の伝播速度は波浪の発達に伴い時間的に変化するものであるが,本モデルでは,波浪を風波とうねりの2成分に分離し,それぞれ成分について代表的な伝播速度を定め,しかもこの伝播速度を一定と仮定する.このことは,風波とうねりの伝播が,図ー2に示すような一定勾配の2本の伝播特性線で表せることに相当する.
図は,横軸に予測地点を原点とした空間座標をとり,縦軸に予測時刻を上端の点とした時間座標を採用したものであり,図ー1に示した任意方向の波向線における波浪の伝播を表したものである.風波とうねりの伝播特性線は勾配の異なる直線で表され,風波が6時間で100kmの伝播,うねりが6時間で200km伝播すると仮定した.
これは,外力条件となる海上風の推算値が6時間毎に与えられること,さらに波浪予測が高速な演算を要求されることから,伝播特性線が6時間毎に波向線上の計算格子点(格子間隔は100km)を通過するように設定したことを意味する.また,風波とうねりの伝播速度を相当する周期で表すと,風波で平均波周期5.9s(有義波周期に換算すると6.9s),うねりで平均波周期11.9s(有義波周期13.8s)となる.なお,図ー2の風波の伝播特性線上に示したE_s(3,J)は,予測時刻より12時間前の,予測地点から200km離れた洋上の格子点におけるJ方向の風波成分エネルギーを表し,うねりの伝播特性線上に示したE_s(5,J)は,予測時刻より12時間前の,予測地点から400km離れた洋上の格子点におけるJ方向のうねり成分エネルギーを表している.本モデルでは,最大2000kmの波向線を仮定するため,風波の伝播特性線が2000km離れた格子を通過する時刻は,予測時刻よリ120時間前となる.すなわち,波浪予測を行うためには,予測時刻より120時間前の海上風の情報が必要となる.
 波浪の減衰に関しては,ブレッドシュナイダーの式8)と類似なモデルを仮定した.すなわち,波浪が発達する風域内では,エネルギー平衡状態になるまで減衰は生じないものとし,波浪がその風域から離れた場合,または逆風域に入った場合に,波浪エネルギーは伝播距離に反比例して減衰し,周期は伝播距離に比例して長くなると仮定する.なお,本モデルにおいては,このような減衰過程にある波浪をうねりと定義する.

 (2) モデルI

 a) 有義波高に関する計算理論
 前節の仮定から,風波の発達に関する式は,次式に示す無次元波高と無次元フェッチの1/2乗則,
(1)
で表される.ここに,H_{1/3}は有義波高,Uは海面上10m高度の風速,Fは吹送距離,gは重力加速度である.
式(1)の両辺を2乗し,無次元エネルギーと無次元フェッチの関係で表すと,
(2)
となる.ここに,\epsilonは風波のエネルギーである.この風波のエネルギーの方向分布は常に相似形を保つと仮定すると,次式が成立する.
(3)
ここに,E(θ)は方向別エネルギー,\lambda(θ)は,
(4)
定義されるエネルギーの方向分布関数である.なお,\lambda_0は,
(5)
を満たす正規化係数である.
 式(2)を,式(3)を用いて書き換えると,風波の波向別工ネルギーが,
(6)
と表される.本モデルでは,この式(6)が風波エネルギーの発達の基本式となる.
 いま,任意方向に関して,風波の伝播特性線上の風エネルギーU^2\lambda(\theta)分布が,図ー3のように表されると仮定する.すなわち,任意の方向Jにおいて,特性線上の計算格子I=ⅠからI=Nのうち,I=1からI=N_Wまでの区間で風波が発達する場合,風波のエネルギーは式(6)から次のように表される.
 風波の境界点I=N_WにおけるJ方向の風波のエネルギーはE(N_W,J)=0であるため,I=N_W-1地点の風波エネルギーE(N_W-1,J)は,
(7)
と表される.ここに,\delta Fは格子点問の距離(風波の発達区間のフェッチ)である.同様に,I=N_W-1地点の風波のエネルギーは,
(8)
で表される.ここに,Frは,風エネルギーU(N_W-2,J)^2 \lambda(N_W-2,J)の条件下において,I=N_W-1地点の風波のエネルギーが,E(N_W-1,J)となるための等価フェッチを意味し,
(9)
と表される.この等価フェッチを式(8)に代入すると,
(10)
となる.同様な操作を,波浪予測地点であるI=1まで繰り返し行うと,J方向から来襲する風波のエネルギーは,
(11)
となり,各方向の総和は,
(12)
で表される.ここに,B_W=A\delta Fである.
 次に,うねりの伝播特性線上において,図ー4に示すような風のエネルギー分布を仮定する.この特性線上のI=N_SからI=N_Eまでの区間で発達した風波がうねりとして伝播してくる場合,うねりの初期エネルギーは,I=N_S地点の風波エネルギーとなり,
(13)
で表される.波浪の減衰に関する仮定より,うねりのエネルギーは伝播距離に反比例することから,波浪予測地点I=1に到達するうねりのJ方向のエネルギーは,
(14)
となる.ここに,係数A^」は,うねりのエネルギーの減衰に関係する係数である.これより,各方向から来襲するうねりのエネルギーの総和は,
(15)
と表される.ここに,B_S=A^」\delta Fである.
 式(12)と式(15)から,波浪予測地点における風波とうねりを合成した全推算波浪エネルギーは,
(16)
で表される.ここに,[\epsilon]_fは予測時刻の波浪エネルギーを意味する.係数B_WとB_Sは,それぞれ.A\delta FおよびA^」\delta Fを意味するが,最終的には推算波浪エネルギーと同時刻の観測波浪エネルギーとの重回帰解析により,両者の差を最小とする回帰係数として決められる.なお,波浪エネルギーから有義波高への換算は,
(17)
により行う.
 b) 有義波周期に関する計算理論
 有義波高と同様,波浪の発達に関する仮定より,風波の周期の発達は,次式で表される無次元周期と無次元フェッチの1/3乗則,
(18)
で表される.式(18)の両辺を3乗すると,
(19)
となる.ここに,\tauは有義波周期の3乗値を表し,ここでは周期特性量として定義する.また,有義波高と同様に,式(4)の方向分布関数\lambda(\theta)を導入する.これらの仮定より,式(19)は,
(20)
と表される.式(20)が方向別周期特性量の発達に関する基本式となる.
 有義波高の場合と同様な展開を行うと,風波の周期特性量の全方向の総和は,
(21)
となる.ここに,D_W=C\delta Fである。
 うねりの周期に関する式は,波浪の減衰に関する仮定より,伝播距離に比例して大きくなることから,
(22)
と表される.ここに,D_Sはうねりの周期特性量の係数である.
 式(21)と式(22)から,波浪予測地点における風波とうねりを合成した全推算周期特性量は,方向別エネルギーの重み付き平均値として,
(23)
で表される.ここに,[\tau]_fは,予測時刻の周期特性量を表す.D_WおよびD_Sは,有義波高の予測式(16)の係数と同様に,推算値と観測値との重回帰解析により求められる回帰係数である.なお,周期特性量から有義波周期への換算は,
(24)
により行う.

 (3) モデルII

 モデルIIは,モデルIの予測誤差が,完全にランダムではなく,何らかの物理量に関係していると考えたものである.いま,予測誤差に関係する因子として,現時刻の予測誤差,すなわち現時刻の推算波浪エネルギーと観測波浪エネルギーの差と,風波とうねりそれぞれの推算エネルギーの時間変化量を仮定すると,モデルⅠの予測誤差Erは,
(25)
と表される.ここに,E_W(J),E_S(J)は,予測時刻の風波とうねりの推算エネルギー,E_{Wh}(J),E_{Sb}(J)は,現時刻の風波とうねりの推算エネルギー,[\epsilon]_{Mb}は現時刻の観測波浪エネルギー,C_1からC_7は各項に係る係数,E^」rはこの考え方だけで表現できない誤差である.式(25)を式(16)に考慮し,予測時刻の波浪エネルギーに関して定式化すると,式(16)のモデルⅠに対応するモデルⅡの有義波高予測式として,
(26)
が得られる.式(26)の各係数は,モデルⅠと同様,重回帰解析により,推算値と観測値との差を最小とする回帰係数として求められる.
 同様に,有義波周期についても,モデルⅠの予測誤差に関係する因子として,現時刻の推算周期特性量と観測周期特性量の差と,風波とうねりそれぞれの推算周期特性量の時間変化量を用いると,有義波周期の予測式は,
(27)
で表される.ここに,T_W(J),7_S(J)は,予測時刻の風波とうねりの推算周期特性量,:T_{Wb}(J),T_{Sb}(J)は,現時刻の風波とうねりの推算周期特性量,[\tau]_{Mb}は現時刻の観測周期特性量であり,各係数は,推算値と観測値の重回帰解析より求められる回帰係数である.

 (4) 地形による遮蔽効果
 沿岸に位置する地点の波浪予測を行う場合に,周辺の陸地による遮蔽効果を考慮することが重要となる.地形による遮蔽効果は,方向毎に異なるのが一般的である.
しかし,提案した波浪予測式においては,各方向成分に関して,同一の回帰係数を用いているため,別の方法によって遮蔽効果を取り入れる必要がある.そこで,本モデルでは,風波の推算エネルギーE_W(J)とうねりの推算エネルギーE_S(J)に予測地点の各方向に応じた遮蔽率を乗じ,この値を予測式に代入する方法を採用している。さらに,陸側方向の波向においても波浪が発達することから,図ー1に示すように陸側方向にも計算格子を設け,フェッチが100km以下となる場合には,波浪推算地点の離岸距離に応じた補正率を乗じてエネルギーを計算している.

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図ー1 波浪予測地点と計算格子
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図ー2 波浪の伝播特性線
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式(1〜27)
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図ー3 風波の伝播特性線上の風エネルギー分布の模式図
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図ー4 うねりの伝播特性線上の風エネルギー分布の模式図

3. 波浪予測の試算

 (1) 波浪予測地点
 物理因子重回帰モデルを波浪予測に適用する地点は,回帰係数の同定を行う必要上,観測波浪が得られている地点でなければならない.本研究では,太平洋側の常陸那珂港(茨城県)とむつ小川原港(青森県),日本海側の深浦港(青森県)の3地点を波浪予測対象港湾とした。

 (2)重回帰解析の解析期間
 波浪予測式中の回帰係数の同定を行う解析期間は,1983年2月1日〜28日,5月1日〜31日,8月1日〜31日,11月1日〜30日と1989年1月17日〜2月28日,4月17日〜5月16日,8月1日〜31日,9月27日〜10月24日のそれぞれ四季を代表する計8ヶ月間,日数にして252日とした.

 (3) 海上風の推算
波浪エネルギー計算の入力データとなる海上風(海面上10m高度)は,前節の回帰係数の同定を行う全期間について計算する必要がある.本研究では,気象図から求まる気圧分布をもとに,傾度風・台風のハイブリッドモデルを用いて理想大気の風を推算し,これを,境界層モデルによって海上風に変換する方法9)採用した.なお,風推算に用いる気圧データはすべて地上天気図から得た.

 (4) 回帰係数の同定
 常陸那珂港,むつ小川原港,深浦港の3港湾を対象として,推算波浪エネルギーならびに周期特性量を計算し,有義波高と有義波周期の予測式に当てはめ,この推算値と観測値との重回帰解析を行った.この解析により,推算値と観測値の差を最小とする回帰係数が同定される.
回帰係数の同定は,1983年2月,5月,8月,11月と1989年1月〜2月,4月〜5月,8月,9月〜10月の1ヶ月間毎と,それぞれ1983年の4ヶ月間,1989年の4ヶ月間,さらに,1983年と1989年を合わせた全8ヶ月に分けて行い,11の異なる同定期間それぞれにおいて,11種類の異なる回帰係数を求めた.
 図ー5は,常陸那珂港における有義波高予測モデルⅠの風波とうねりエネルギーそれぞれに係る回帰係数の同定結果と,11の異なる係数同定期間との関係を示したものである.同定期間が1ヶ月間の場合,求められる回帰係数は期間の違いによりかなりの変動幅を持つが,同定期間が1983年と1989年のそれぞれ4ヶ月間の場合は,各年の1ヶ月間の係数の中間値となる.さらに,全8ヶ月の同定期間の場合は,1983年と1989年のそれぞれ4ヶ月間の係数のほぼ平均値となる.これより,同定期間が長いほど,回帰係数は期間平均値に近づく傾向がわかる.また,4ヶ月間の解析から求めた回帰係数と全8ヶ月間の解析から求めた回帰係数の差が小さいことから,さらに同定期間を長くしても,図ー5に示した8ヶ月間の値と大きな差はないものと予想される.従来の重回帰モデルが,係数の同定期間として3〜4年程度必要であるのに比べて,物理因子重回帰モデルの係数同定期間は,比較的短期間でもよいことがわかる.
 図ー6は,常陸那珂港における有義波高予測モデルⅡの5種類の回帰係数と,予測時間を6時間,12時間,24時間,36時間,48時間,72時間,120時間(5日),168時間(1週間)とした場合の関係を示したものである.回帰係数の同定期間は,すべて8ヶ月とした.短期予測において,現時刻の観測有義波高に係る係数は,0.6〜0.8程度の値となる。これは,予測波高の6割から8割程度が現時刻の有義波高に依存することを示している.また,予測時刻の風波とうねりの推算エネルギーに係る係数は正の値となり,現時刻の推算エネルギーに係る係数は,負の値となる.それに対し,予測時間が長期になるとともに,現時刻の観測波浪に係る係数値は減少し,逆に,予測時刻の風波とうねりに係る係数値が増加する。これは,短期予測における予測波高が,現時刻の観測波浪に強く依存するのに対し,長期予測において,現時刻の観測波浪への依存度は低下し,他の説明変数への依存度が強くなることを意味している.そして,予測時間を168時間とした場合,その回帰係数は,モデルⅠの係数に近い値となることが,図一5の同定期間8ヶ月の係数との比較からわかる.

 (5) 有義波の予測結果
 係数同定されたモデルⅠとモデルⅡの有義波高,有義波周期の予測式により,係数同定期間の有義波高と有義波周期の予測を行った.ここに,本研究では,予測モデルの特性を明らかにすることを目的としていることから,予測計算は係数同定を行った期間と同じ期間において行ったが,先に示したように,回帰係数がほぼ収束する傾向にあることから,同定期間以外について予測計算を行っても同程度の予測精度が得られるものと期待できる.また,海上風の推算は過去の確定した気象図により行い,予報気象図は用いていない.そのため,予測時刻の波浪エネルギーのみを必要とするモデル1の波浪予測は,予測時間の違いによる予測結果の違いはない.ここでは,モデルⅠの予測を仮に12時間予測として,以下に引用した.
 図ー7,図ー8および図ー9は,それぞれモデルⅠの12時間とモデルⅡの12時間,168時間の予測式を用いて,1983年2月の常陸那珂港の波浪を予測した結果である.予測結果として,予測波向,予測有義波高と観測値の経時変化の比較,予測有義波周期と観測値の経時変化の比較を示している.
 モデルⅠの予測有義波高と観測値とを比較すると,気象擾乱通過時に発生した高波浪のピーク値に多少の差異は見られるが,低波浪と高波浪ともに両者は良い一致を示す.また,予測有義波周期と観測値を比較すると,観測周期に現れる短期変動に対して,予測値は十分に追従しているとは言えないものの,長期的な変動に対しては良く追従している.モデルⅡの12時間予測では,モデルⅠの結果と比較して,短期の波高・周期の変動にも良く追従しており,高波浪のピーク値も良い一致を示している.また,モデルⅡの168時間予測は,モデルⅠの予測結果とよく似た結果となっている.すなわち,モデルⅡの予測結果は,予測時間が長くなるとともに,現時刻の観測波浪への依存度が低下し,その結果,モデルⅠの予測結果に近づいていく傾向があることを示している.
 モデルⅠ,Ⅱの予測結果と,従来の重回帰波浪予測モデルを比較するために,むつ小川原港における重回帰波浪予測の例を図ー10に示した.図は,12時間予測に関するものである.先に述べたように3月20日から21日にかけての波浪発達期の予測値は,観測値に比べて波高の立ち上がりが遅れており,この時間差は予測時間とほぼ一致したものとなっている.これに対して,図ー7から図ー9に示した物理因子重回帰モデルの予測値は,波浪が急激に増大する時期についても良い一致を示している.
 図ー11および図ー12は,モデルⅡの12時間予測式を用いて,1983年2月のむつ小川原港と深浦港の波浪を予測した結果を示したものである.それぞれ予測値と観測値とを比較すると,むつ小川原港の予測値は,常陸那珂港の例と同様に,観測値と良い一致を示しているが,深浦港に関しては幾分予測精度が低い結果となっている.深浦港の例は,日本海低気圧が周期的に多数通過する期問の予測結果であり,これは,冬季日本海沿岸の代表的な特性でもある.このような時期に出現する高波浪は,風波が主体となっている.本モデルの風波は,モデルの仮定から考えて,予測地点近傍の風場に強い影響を受ける.深浦港のような日本海沿岸の波浪予測精度をさらに向上させるためには,周期的に来襲する日本海低気圧に伴う風場の推算精度を改善することが必要である.
 図ー13,図ー14および図ー15は,モデルⅡの12時間予測式を用いて,常陸那珂港むつ小川原港,深浦港の低波浪期の予測を行った結果である.先に示した各地点の高波浪期の予測結果と同様に,予測値は観測値と良く一致している.高波浪期に予測精度が幾分低めであった深浦港も,良好な予測結果となっている.このように,物理因子重回帰波浪予測モデルは,高波浪期にも低波浪期にも共通して,良い予測値を得ることが可能な手法であることが確認できる.
 図ー16は,1983年2月の常陸那珂港における予測波浪について,風波とうねりの各成分をモデル上分離して出力した結果である.上から順に,風波とうねりの合成波の予測波向,予測有義波高と観測値の経時変化比較,予測有義波周期と観測値の経時変化比較,風波とうねりそれぞれの成分波波向,風波とうねりそれぞれの相当有義波高と相当有義波周期の経時変化である.現時点の既往研究成果では,観測波浪を風波とうねりに分離する手法が開発されていないことから,2成分の予測結果と観測値とを定量的に比較検討することはできない.ここでは定性的な評価にとどまるが,波向について見ると,波浪発達期に,合成波の波向は風波の波向と一致するのに対し,波浪減衰期に,合成波の波向はうねりの波向と一致する。また,風波とうねりそれぞれの相当有義波高を見ると,予測期間申,最大の高波浪が発達した2月17日は,風波成分が卓越するのに対し,20日〜21日にかけての波浪減衰期は,うねりが卓越している.さらに,風波とうねりそれぞれの相当有義波周期を見ると,期間を通じてうねりの周期が風波の周期よりも大きく,波浪の発達期に,両者はほぼ同じ周期となることがわかる.

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図ー5 有義波高予測モデルⅠの回帰係数と同定期間の関係(常陸那珂港)
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図ー6 有義波高予測モデルⅡの回帰係数と同定期間の関係(常陸那珂港)
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図ー7 モデルⅠによる常陸那珂港の12時間波浪予測結果
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図ー8 モデルⅡによる常陸那珂港の12時間波浪予測結果
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図ー9 モデルⅡによる常陸那珂港の168時間波浪予測結果
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図ー10 重回帰モデルによるむつ小川港の12時間波浪予測結果
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図ー11 モデルⅡによるむつ小川原港の12時間波浪予測結果
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図ー12 モデルⅡによる深浦港の12時間波浪予測結果
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図ー13 モデルⅡによる常陸那珂港の12時間波浪予測結果(低波浪期)
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図ー14 モデルⅡによるむつ小川原港の12時間波浪予測結果(低波浪期)
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図ー15 モデルⅡによる深浦港の12時間波浪予測結果(低波浪期)
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図ー16 風波とうねりの分離出力結果

 予測精度を定量的に評価する方法としては,種々の方法が考えられるが,本研究では次に示す方法を用いた.
有義波高に関しては,観測波高0.Om-1.Omの階級における予測値と観測値との許容誤差を±0.3mとし,それ以上の波高階級における許容誤差を,観測波高の±30%とする.予測値がこの許容誤差の範囲にある場合は,予測が的中したものと評価し,的中範囲に入る予測個数が,全予測個数の何%になるかを計算する.この比率を的中率と定義し,的中率が高いほど予測精度は良いと判断する.また,有義波周期は,全周期階級において,観測周期の±30%を許容誤差の範囲とし,この範囲に入る予測個数が,全予測個数の何%になるかを計算して的中率を求める.
 図ー17は,常陸那珂港,むつ小川原港,深浦港の3地点において,モデルⅠの有義波予測とモデルⅡの6時間から168時間までの8種類の有義波高予測を行い,それぞれの予測結果から計算される的中率をまとめたものである.地点間の的中率の差は,予測時間が長期になっても変化せず,短期予測精度の水準が高いほど,長期予測精度の水準は高い.また,各地点とも,モデルⅡの6時間予測から36時間予測にかけての的中率は,次第に低下する傾向にあるが,36時間予測より長期の場合には,図に破線で示した予測モデルⅠの的中率と同水準に収束している.同様に,図ー18は,有義波周期の予測的中率をまとめたものである.有義波高の予測結果と比較すると,的中率の水準は高く,モデルⅡの36時間より長期の予測的中率も,次第に低下する傾向にある.しかしながら,168時間予測の的中率が,モデルⅠの的中率と同水準に収束する傾向は見られる.
 このような予測精度の特性は,回帰係数同定の章にお.いても述べたように,予測時間が長くなるとともに,現時刻の観測波浪への依存度が減少し,モデルⅠの予測式に近づくことから説明できる.このことから,長期波浪予測の精度は,モデルⅠの予測精度に左右されるものと考えられ,モデルⅠの予測精度が改善されるとともに,モデルⅡの長期予測精度も向上するものと推察される.

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図ー17 物理因子重回帰モデルの有義波高予測の的中率
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図ー18 物理因子重回帰モデルの有義周期予測の的中率

5. おわりに

 本研究では,新たな波浪予測手法として,物理因子重回帰モデルを提案した.このモデルでは,波浪を風波とうねりに分離し,それぞれの成分の伝播速度を一定とすることにより,本来なら微分方程式で記述される波浪の発達,伝播,減衰を,代数方程式に書き換え,これを波浪予測式としている.この代数方程式の係数は,重回帰解析により,予測値と観測値との差を最小にする回帰係数として求められる.また,方向別の風波とうねりのエネルギーを説明変数としており,予測される諸元は,有義波高,有義波周期のみならず,波向,風波とうねりそれぞれの相当有義波高,相当有義波周期,成分波向である.
 以上のように物理因子重回帰モデルは,従来の波浪予測手法である波浪推算モデルと重回帰モデルの両者の長所を合わせ持ったモデルであり,予測精度,予測結果の出力諸元,実用性などに多くの優れた特徴を有するモデルである.以下に,主要な結論をまとめる.
 1. 常陸那珂港,むつ小川原港,深浦港の3地点を対象に,予測式中の回帰係数の同定を行い,係数の特性を検討した.予測モデルⅠの係数は,同定期間の違いにより変化するものの,期闘が長いほど次第に平均的な値になる傾向を有する.また,モデルⅡの短期予測式の5係数の中で,観測波浪に係る係数が大きく,予測値は観測波浪に強く依存する傾向を持つが,長期予測では,観測波浪に係る係数値が小さくなり,次第に観測波浪への依存度は低下する.
 2. 物理因子重回帰モデルは,波浪推算モデルや重回帰モデルに比べ良好な予測精度を有し,重回帰モデルの大きな欠点であった高波浪の立ち上がり時に現れる予測値の時間遅れの問題を解決している.長期予測についても,予測精度の低下は一定水準に抑えられ,重回帰モデルのように著しく予測精度が低下する問題もない.さらに,物理因子重回帰モデルは,有義波高,有義波周期の予測のみではなく,波向予測,さらに風波とうねりの分離出力まで行うことが可能である.
 なお,本論文における波浪予測特性の考察では,過去の確定した気圧情報を利用している.したがって,実用化を考える際には,予報気象情報を用いたモデル係数の同定を行わなければならない.また,予測精度に関しても再度検討する必要がある.

参考文献

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6) 駒口友章・進藤信博・川合紀章・木村克俊:海上工事の施工管理における波浪予測の運用について,第38回海岸工学講演会論文集,pp.961〜965,1991.
7) 後藤智明・末次広児・小舟浩治:海上風の抵抗則と風波の発達則,第37回海岸工学講演会論文集,pp.170〜174, 1990.
8) Bretschneider, C. L. : Decay of wind generated waves to ocean swell by significant wave method, Fundamental of Ocean Engineering, 8, Ocean Industry,1968.
9) 柴木秀之・後藤智萌:内湾海上風の地形依存性について,第39回海岸工学講演会論文集,pp.141〜145,1992.
(1992.9.22受付)

MULTIPLE REGRESSION MODELS DESCRIBED IN PHYSICAL PARAMETERS FOR THE PURPOSE OF WAVE FORECASTING Chiaki GOTO, Hidenori SHIBAKI, Toshio AONO and Tadashi KATAYAMA

As new models supersede the conventional wave forecast methods, the multiple regression wave forecast models described in physical parameters are developed. In the models, ocean wave separated into wind waves and swells, and assumed that propagation speed of each wave component is constant. From this assumption, the governing equations of the models are expressed as linear algebraic equations. For the verification of models, wave forecast is carried out.
It is clarified that the models show good accuracy and solve the difficulties of the existing wave forecasting models.

円錐形の島に捕捉された長波の特性 藤間功司*・後藤智明**

Abstract

 津波が島を襲うと,捕捉現象により波高が増幅する場合がある.そこで,島の有限な大きさと斜面による屈折の効果を考慮した円錐形の島による長波の捕捉に関する理論解を求めた.理論解に基づき,空間水位の変化特性,汀線に沿った遡上高の変化特性,最大遡上高の変化特性などを調べ,捕捉の影響が強く現れる条件を示した.本理論により隠岐や奥尻島の津波痕跡高が良好に説明できる。
Key Words : trapping, tsunami, refraction, Hokkaido-nansei-oki, earthquake

1. はじめに

 1993年7月に発生した北海道南西沖地震津波では,奥尻島の海岸に沿って,打ち上げ高の高い地域と低い地域が交互に観測された.このことから,奥尻島で津波が捕捉され,波高増編に寄与した可能性が指摘された(首藤,1993).
また,1983年日本海中部地震津波でも,奥尻島や隠岐で同様の特徴ある実測結果が得られており,その原因が島による捕捉であった可能性が指摘されていた(酒井ら,1984).
 津波のような長周期波が島によって捕捉されることは,これまでに,多くの研究により示されている.図級は,長波の捕捉に関し,理論解や数値解が得られている様々な島のモデルを示したものである.図中,hは水深,rは島の中心からの距離である.図のように様々なモデルが用いられているものの,これらのモデルのうち,津波の打ち上げ高分布の検討に使用できる現実的なモデルは(e)だけである.すなわち,(a)-(c)のモデルは水平床の組み合わせであり,斜面による屈折の効果を考慮していない.
(d)のモデルは小さな島を想定したものであり,有限の大きさを持った島には適用できない.また,(f)のモデルでは現地地形に適用すると汀線の水深が無視できず,屈折の効果を正確に取り入れたことにはならない, しかし,(e)のモデルでは支配方程式の特異点が増えるため,解析的な扱いが複雑になる.そのため,Lautenbacher(1970)はGreen関数を用いたシミュレーションにより島まわりの波高を求めた.また,清川ら(1982)は,固有関数展開を用いることにより,解析解を求めた.Green関数を用いた計算は,簡便な数値シミュレーションとして捕捉の研究に供し得る可能性があるが,Lautenbacherの計算ケースだけで捕捉の特性に関して十分な知見が得られたとは言い難い.また,清川らの解は分散性をも考慮した高次の解であるが,実際に理論解を計算するのは必ずしも簡単でない.捕捉に関する基礎的な特性を理解するためには,解を簡単に求められる,簡便な理論解析が必要であろう.
 そこでここでは,第1次近似として,複雑な地形の影響や非線形・分散性の効果などを無視し,線形長波理論を用いた(e)のモデルに対する簡便な理論解を求め,島による長周期波の捕捉の特性を明らかにする.
 なお,Euler座標を用いた本理論では,波先端の境界条件が完全には満足されず,厳密な遡上解は得られない。
しかし,線形理論の範囲ではLagrange座標を用いて得られる解とEuler座標の解は第1次近似で一致する.したがって,本理論を用いて津波の遡上高を議論しても差し支えないと考えられる.

*正会員 工博 防衛大学校講師 土木工学教室 (〒239神奈川梁横須賀市走水婦1-10-20)
**正会員 工博 東海大学教授 工学部土木工学科(元運輸省港湾技術研究所 海洋エネルギー利用研究室長)

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図ー1 円形島の様々なモデル

2. 理論解の誘導

 (1) 支配方程式
 海底形状は,同心円状の等水深線をもち,どの方向にも勾配が一定な円錐形と仮定する。ただし,島の大きさは有限とする.すなわち,水深hは,h=m(r-r_0)で表される.ただし,mは勾配(一定値),r_0は島の海岸線の半径である.また,r>r_1=r_0+r_2では水平床とする.水平床部分の水深をh_1(=mr_2)とする.このような地形の模式図を図ー2に示す.
 上記の海底地形をもつ島に,正弦波が入射したときの定常(周期)的な解を求める.基礎方程式は,以下の線形長波理論である.
(1)
(2)
(3)
 ここで,x,yは島の中心を原点とし,入射波の進行方向がx軸と一致するようにとった座標であり,u,vはx,y方向の断面平均流速,\etaは平均水面からの水位変動を表す.連続の式からu,vを消去すると次式を得る.
(4)
 入射する正弦波の角周波数を\sigma(=2\pi/T,Tは周期)とすると,現象は周期的と仮定したので,
(5)
とおける.したがって,式(4)は以下のように変形される.
(6)
上式を極座標に変換すると次式となる.ただし,水深hはrのみの関数としている.
(7)
また,\zetaは\thetaに関して2\piを周期とする周期関数とおくことができる.すなわち,
(8)
となり,n番目の成分R_nに対しての支配方程式として次式を得る.
(9)

 (2) 水平床上の解
 水平床部分(r>r_1=r_0+r_2)における解を求めるため,水深を一定(h=h_1)とおぐこのとき,上式は
(10)
となり,解の組合わせは次式で与えられる.
(11)
ただし,
(12)
であり,J_n,N_nはそれぞれn次の第1種,第2種Bessel関数を意味する.以上は,田中(1956)やLonguet-Higgins(1967)の取り扱いと同等である.

 (3) 斜面上の解
 a) 斜面上の領域における支配方程式
 次に,斜面部分(r>r_1=r_0+r_2)における解を求めるため,
(13)
を式(9)に代入する.これにより,次式が得られる.
(14)
 上式を解けばよいが,式(14)には2個の確定特異点(r=0,r_0)と1個の不確定特異点(r=∞)があり,解を初等関数で表すことは困難である.そこで,ここでは級数解を組み合わせる手法により解を求める.
 方程式の見通しをよくするために,さらに
(15)
とおいて,
(16)
によって座標変換しておく.後の考察で明らかにするが,\betaは島の大きさと汀線近傍における波長との比に関係したパラメタである.目安として,津波の周期Tを5分〜20分,勾配mを1/10〜1/100,島の海岸線の半径r_0を1km〜10krnとすると,\betaは0.3〜13程度の大きさになる.この変換により得られる次式が支配方程式となる.
(17)
上記の支配方程式の極端な場合として,\beta→∞の場合と\beta→0の場合には容易に理論解が求められる.まず,\beta→∞の場合,式(17)は次式で近似できる。
(18)
この解の組合せは,
(!9)
で表される.J_0,N_0は0次の第1種,第2種Bessel関数を表す,つまり,島の半径r_0が非常に大きいと,1次元伝播問題の斜面上の解の組合わせと一致する.
 次に,\beta→0の場合(島の半径r_0が非常に小さい,Wongらのモデルの場合),式(17)は以下のように近似される.
(20)
この解の組合わせは,
(21)
で与えられる.J_{\sqrt{1+4n^2}},N_{\sqrt{1+4n^2}}は\sqrt{1+4n^2}次の第1種,第2種Bessel関数を表す.なお,この近似は\xi≫\betaなら良好な精度を有するので,上記の解は,大きい\xiにおける式(17)の近似解として使える。

 b) 級数解法
 支配方程式(17)の解を求める手法は以下の通りである.まず,原点\xi=0のまわりで級数解を求あておく.
級数の収束半径は\xi<\betaである.決定方程式が重根(ゼロ)をもつので,解のひとつは通常のべき級数に展開され,\xi=0で有界になる.それと独立な,もうひとつの解はlog\xiなる関数形を含み,\xi=0で∞に発散する。
物理的には,\xi=0,すなわち汀線で水位が有限でなければならないので,ここでは前者の解のみ考えればよい.
なお,式(17)にはふたっのパラメタnと\betaが含まれているので,ここで求めるべき解を関数F_{n,\beta}(\xi)と書くことにする.関数F_{n,\beta}(\xi)の\xi=0周辺の級数解は以下のように表される.
(22)
係数a_kは,式(17)の第2項,第3項の係数をTaylor展開して,各項を比較することにより以下のように求められる.ただしa_0は最終的に境界条件によって決まるもので,基本解では自由に定義できる.F_{n,\beta}におけるa_0の定義は,後に述べる.
(23)
上式中の係数b_l,c_lは以下のように与えられる.
(24)
(25)
 同様に,任意の正則点ξぎのまわりの級数解が以下のように求められる.収束半径は|\xi-\xi_i|<\xi_iである.
(26)
ただし,係数d_kは,d_0,d_1が与えられたとして,
(27)
であり,係数e_l,f_l,g_lは以下のように与えられる。
(28)
(29)
(30)
 次に,変数\xiのとり得る[0,∞]の範囲を,[0,\xi_1],
[\xi_1,\xi_2],[\xi_i,\xi_{i+1}],…,[\xi_{M-1},\xi_M】,[\xi_M,∞]と(M+1)
個の区間に分割する.ただし,最後の区分点\xi_Mは,式(17)の近似解として式(21)が使用できるほど原点から離れているものとする.また,各区分点は,
(31)
を満たすものとする.これにより,[0,\xi_1]から[\xi_{M-1},\xi_M]までの各区間において,区間の始まりの点を中心とした級数解の収束性が保証される,
 すなわち,区間[0,\xi_1]の解として,\xi=0近傍の級数解が使えることになる。この際仮にa_0=1としておく.この解をF^{(1)}_{n,\beta}表すことにする.
 次に正則点\xi_1のまわりの級数解を求め,区間[\xi_1,\xi_2]における解F^{(2)}_{n,\beta}とする。ただし,式(26)の係数d_kのうち,最初の2項d_0,d_1は,
(32)
と与える.ここで,記号^」は\xiによる微分を表す.これにより,\xi_1においてF_{n,\beta}とF^」_{n,\beta}が連続に接続される.
同様に,次々とF^{(3)}_{n,\beta},F^{(4)}_{n,\beta},…と各区間に対する級数解を求めていくことができる.
 最後の区間では解(21)に接続する.すなわち,
(33)
において,定数p,qを次式から求める.
(34)
 最後に,nや\betaに関らず,大きな\xiにおけるF_{n,\beta}の大きさが同程度になるよう,各区間の解F^{(1)}_{n,\beta},…,F^{(M+1)}_{n,\beta}を2/\sqrt{p^2+q^2}倍して再定義する。以上の手順により式(17)の解F_{n,\beta}を求めることができる.
 実際に級数を何項まで考慮すべきかは,解の接続点6のとり方により異なる.一般的に,ある関数をベキ級数で近似する場合には級数の項数を増やすより区間分割数を増やすほうが経済的である,ここではM=200とし,以下に示すような等間隔の分割をした.
・2≦\beta<20では\xi_1=0.05\beta,…,\beta_M=10\beta(M=200)
・0.5≦\beta<2では\xi_1=0.1\beta,…,\betaM=20\beta(M=200)
・O.2≦\beta<0.5では\xi_1=02\beta,…,\betaM=40\beta(M=200)
本論文で使用したnと\betaの組み合わせの範囲(0.2<\beta<20,0≦n<[\beta]+4)の中では,この分割により各級数を10項まで考慮すれば十分な精度が得られた.ただし,[\beta]は\betaを超えない最大の整数を表す.
 なお,F_{n,\beta}(\xi)は,\xi=0付近の級数解により初期値を決め,Runge-Kutta法で数値的に求めることも可能である.上述の理論解とRunge-Kutta法による数値解は良好に一致する.しかし,本理論解を用いると,任意点におけるF_{n,\beta}の値を容易に求めることができ,捕捉の特性に関する様々な検討が可能になる.
 c) F^{(1)}_{n,\beta}(\xi)の性質
 関数F_{n,\beta}の例を図ー3,4に示す.図ー3は\beta=2の場合,図ー4は\beta=10の場合のグラフである.
 これらの図からF_{n,\beta}の関数形は,nが小さいと原点\xi=0に最大値をもつJ_0のような形であり,それに対しnが大きいと原点での値がゼロと見なせるJ_{1,2,…}に似た形であることがわかる.その境は,ほぼn=\beta程度である,例えば,\beta=2の場合,n=0,1ではJ_0のような形であり,n≧3ではJ_{1,2,…}のような形となる.\beta=10の場合,n≦9ではJ_0のような形で,n≧12ではJ_{1,2,…}に似た形となる.
 これから,n>\betaのモードは島の汀線近傍ではほとんど現れず,捕捉の汀線近傍での特性を調べるなら,n≦\betaのモードのみ考えればよいといえる.ただし,解がJ_0のような形からJ_{1,2,…}のような形に移行する遷移的な状態(\beta=2におけるn=2の場合や\beta=10におけるn=10,11の場合)では,解の形は複雑に変化する.そのため,関数形によっては,n≒\beta付近で現れる遷移的なモードが汀線における水位変化に寄与することがある.
 このように,本モデルの解F_{n,\beta}は,高次モード(n≦\beta程度のモードまで)でも原点で大きな値をとることに特徴がある.したがって,本モデルでは,捕捉による汀線における波高の不均一な分布を求めることが可能になる.
それに対し,水平床を仮定したLonguet-Higginsの解(r=0で有界な解はJ_n)や,r_0=0とした解(21)(r=0で有界な解は\xi^{-1}J_{\sqrt{1+4n^2}}(\xi))では,0次以外のモードにおいてr=0でR_n≒0になる.そのため,汀線における不均一な波高分布が得られない.
 さらに,図ー3,4から,F_{n,\beta}がJ_0のような関数形をとるとき(n≦beta),\xiが小さいところ(おおむね\xi<0.5\beta)では,F_{n,\beta}がnによってあまり変化しないことがわかる.この性質には,島周辺に捕捉された波の挙動を議論する際に触れる.

 (4) 水平床上の解と斜面上の解との接続
 前節までの理論展開から,同心円状の一様斜面上における解は以下のように表すことができる,
(35)
ただし,A_nは複素定数である.これから,\etaの1回微分は以下のように計算される,
(36)
ただし,記号」は,\xiによる微分を表す.
 一方,水平床上の散乱波の解は,
(37)
で与えられる.しかも,散乱波がr→∞に進行することを考えれば,C_nとD_nの組み合わせは,第1種ハンケル関数をつくる組み合わせでなければならない,すなわち,
(38)
である.B_nは複素定数である.また,入射波は,振幅を1とすると
(39)
と書けるので,結局,水平床上の解は,次式となる.
(40)
この1回微分は次式で与えられる.
(41)
ここで,記号」はJ_n(z),H^(1)_n(z)のzによる微分を表している.
 斜面上の解と水平床上の解を接続するには,r==r_1=r_0+r_2において,\eta,∂\eta/∂rが連続するようA_n,B_nを定めればよい.すなわち,次の連立1次方程式を解くことにより.A_n,B_nを計算する.
(42)
得られた.A_nを式(35)に代入して実数部をとれば,求めるべき解が以下のように得られる.
(43)
ただし,
(44)
である,ここで,A_n,B_nを求める式から,
(45)
であることが証明できるので,最終的に,斜面上の解は以下のように書ける.
(46)
 同様に水平床上の解は以下のように書ける.
(47)
ただし,P_n,Q_n,\epsilon_nはrの関数であり.以下の通りである.
(48)
(49)
(50)

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図ー2 地形の模式図
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式(1〜50)
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図ー3 F_{n,\beta}関数のグラフ(\beta=2)
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図ー4 F_{n,\beta}関数のグラフ(\beta=10)

3. 島による捕捉現象の特性

 (1) 捕捉条件から見た領域区分
 Longuet-Higgins(1967)によれば,水深hがrのみの関数であるとき,捕捉の起こる条件は次式で与えられる.
(51)
この条件を満たすと,ある円に接するように入射してきた波向き線は,円の内側に屈折していく.特に,等号が成り立つ場合には,波向き線はその円上に捕捉され,同じ円周上を回ることになる.
 一様勾配の斜面の場合,島の半径をゼロとしたh=mrでは,上の捕捉の条件は満たされない.しかし,島の半径を有限とした本モデルh=m(r−r_0)の場合,
(52)
なので,
(53)
となる、したがって,島が有限の大きさをもっていれば,汀線付近では必ず捕捉が生じることになる.
すなわち,屈折の結果r=2r_0の円より内側に入ってきた波向き線は最終的に汀線まで達し,r=2r_0の円に接するように入射してきた波向き線は,r=2r_0の円周上に捕捉される,r=2r_0の円内に到達しない波向き線は沖へ向かう。このような状況を図ー5に示す.
以上の議論から,r>2r_0の領域は屈折しながら入射してくる波と散乱波が重なりあった領域であり,r<2r_0は波が捕捉され,水位変化が重複波的な挙動を示す領域であると考えられる.

 (2) 空間水位分布と汀線水位分布
 式(46)により計算した空間水位分布の経時変化の例を図ー6〜図ー8に示す,図ー6〜図ー8は,それぞれ同じ地形に対して異なる周期の波が入射した場合の水位変化である.図中,実線は正の水位のコンター,点線は負の水位のコンターを示しており,各数字は入射波振幅との比である.また,図ー6〜図ー8の場合に対応した,汀線の水位分布の経時変化を図ー9〜図ー11に示す, 図ー6,9は周期が長く,捕捉による波高増幅機構があまり効かない場合である.汀線に沿って波が進行する様子が分かる.また,汀線水位変化は波の入射してくる方向(\theta=\pi)で大きく,島影(\theta=0)で小さい.この地形の場合,\betaが2以下ならこのような水位変化になる.
 図ー7,10は,捕捉のため島近傍で波高が大きく増幅した場合である.このとき,波高の高い地域と低い地域が複数箇所明確に現れていることが分かる,また汀線付近では,前項で推論した通り,波が汀線に沿って進行せず,重複波的に振る舞っている.島固有の捕捉周期と入射した波の周期が近いと,このように入射波が大きく増幅され,重複波的な挙動を示すと考えられる.
 図ー8,11は,周期が短い場合である.周期11分の場合ほどではないが波高は増幅されており,散乱波による縞模様が多数見られる.
 (3) 島近傍における現象
 ここでは,島の周囲に波高の高くなる地域が何箇所できるか考察する。まず,島の近くにおける波峰線の性質を議論しておく.波峰線の位置は,ある\xiとtを与えて,
(54)
を満たす\theta_cを求めることにより決められる,汀線付近では,多くの場合,n≦\betaのモードだけが有意であり,しかもその場合,\xi<0.5\betaではF_{n,\beta}はnによって値がそれ程変化しない.したがって,上式を解くことは,実質的に次式を解くことと同じである。
(55)
したがって,汀線の近くでは,波の峰をあらわす\theta_cは\xiに依らない,すなわち,波峰線は汀線から\xi<0.5\betaの範囲では放射線状になる.
 さて,r=2r_0上に捕捉される波の波長Lは
(56)
で表される.,したがって,r=2r_0上の波数は,
(57)
になる.実際には散乱波の成分も存在するので,r=2r_0上の波数が厳密に\betaであるとは言えないが,オーダー的にはほぼ\beta程度であり,\betaで特性づけられると考えられる.そして,波峰線は島付近では放射線状であるから,汀線における波数も\beta程度である.
 あるモードの波だけ考えれば,波数1に対し2つの(打ち上げ高の)ピークが現れる.したがって,結局,波高が高くなる場所数Nも,おおまかには\betaによって特性づけられると考えてよいであろう.
 実際にm,r_0,r_2,Tを変化させてNを数え,\betaに対してプロットした結果が図ー12である.図から,平均的に
(58)
がよい近似であることがわかる.

 (4) 周期による汀線最大水位の変化
 すでに述べたように,島の形状によって捕捉に関する固有周期のようなものがあり,入射波の周期と捕捉周期が一致すると入射波は著しく増幅されると考えられる.そこで,そのような捕捉の周波数特性を調べるため,m,r_0,r_2を一定として入射波の周期を2分から30分まで変化させ,汀線における水位の最大値R_{Hmax}を求める.R_{Hmax}は,r=r_0,0≦\theta<2\pi,0≦t<Tでの\etaの最大値を意味する.実際にR_{Hmax}を求め,\beta(∝1/T)に対してプロットした図が図ー13である.
 共振の条件はr_2にも依るので,r_2の入っていないパラメタ\betaだけでは厳密な議論ができないが,図から,\beta=3〜6付近と\beta=8〜12付近は,複数の共振周波数の密集した周波数帯であると言える.また,r_2が大きくなるほど,ピークが現れる周波数帯の\betaが小さくなる傾向が見られる.

 (5) 1次元伝播における打ち上げ高との比較
 ここでは,1次元伝播問題における一様斜面による打ち上げ高と比較することにより,どのような場合に,捕捉の影響が強く現れるか考察する.一様勾配斜面による打ち上げ高R_{H1-D}は,次式で表される(Shuto,1972).
(59)
 図ー14に,R_{Hmax}/R_{H1^D}=1,2の位置をプロットしている.ただし,島の場合は複数の共振周波数が存在するので,R_{Hmax}/R_{H1^D}のコンターは非常に複雑な形状になる,そこで,ピークが密集した共振周波数帯では,入り組んだコンターを包含する点をプロットしてある.図中の折れ線は,プロットされた点から描いた,捕捉特性を表す領域区分である.周期が長く(1/\betaが大きく),r_2/r_0が小さければ捕捉による顕著な波高増幅はない.反対に,黒丸で囲まれた領域では同一条件下で1次元問題の2倍以上の打ち上げが生じる可能性がある.

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式(51〜59)
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図ー5 波向き線のスケッチ
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図ー6 空間水位分布の経時変化(1)(r_0=7km,r_2=15km,m=1/50,T=25min,\beta=1.6)
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図ー7 空間水位分布の経時変化(2)(r_0=7km,r_2=15km, m=1/50,T=11min,\beta=3,6)
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図ー8 空間水位分布の経時変化(3)(r_0=7km,r_2=15km, m=1/50,T=4min,\beta=9,9)
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図ー9 汀線水位分布の経時変化(1)(r_0=7km,r_2=15km,m=1/50,T=25min,\beta=1.6)
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図ー10 汀線水位分布の経時変化(2)(r_0=7km,r_2=15km,m=1/50,T=11min,\beta=3.6)
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図ー11 汀線水位分布の経時変化(3)(r_0=7km,r_2=15km,m=1/50,T=4min,\beta=9.9)
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図ー12 波高が高くなる場所の数N
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図ー13 打ち上げ高の周波数特性
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図ー14 島による捕捉と1次元伝播の打ち上げ高の比較

4. 津波痕跡値との比較

 (1) 隠岐における日本海中部地震津波本理論の応用例として,日本海中部地震津波で隠岐(島後)で実測された打ち上げ高との比較を試みる.
 隠岐島後の海岸線の形は円形に近く,半径r_0=9km程度である(図ー15中の地図参照).海底勾配は方向によって異なるが,海図をもとに隠岐付近の水深分布を直線近似し,m=1/60とする.また,r_2=9kmとする.周期は,検潮記録から6〜7分程度と言われているので,6分とした.すなわち,\betaは8.2程度である.汀線における最大水位R_Hの分布を描いた図が図ー15である.図中の丸印は打ち上げ高の実測値である,ただし,入射方向は,酒井ら(1984)の検討結果から中村の方向とした.
入射波振幅は,理論値と痕跡高が平均的に一致するよう,0.3mとした.
 理論解は打ち上げ高の分布の傾向をよく表しており,日本海中部地震津波における隠岐での打ち上げ高は,島による捕捉によりほぼ説明できると言える.また,本理論は長波近似なので,周期が短く\betaが大きいと精度が悪くなると考えられるが,ここで適用した\beta=8程度なら十分実用に供し得ると言える.
 なお,上記の諸元を図ー14に当てはめると,隠岐における日本海中部地震津波を表す点は,1/\beta=0.12,r_2/r_0=1となり,2つの共振周波数帯に挟まれた位置にある.また,1次元問題の場合に比べ,増幅率が2倍近いことが分かる.

 (2) 奥尻島における北海道南西沖地震津波
 次に奥尻島で実測された北海道南西沖地震津波の打ち上げ高との比較を試みる,隠岐が本理論のモデル地形と比較的類似しているのに比べ,奥尻島周辺の地形は複雑で,本理論で仮定した単純な地形では近似することが難しい.しかし,平均的な値として,m=0.075,r_0=8km,r_2=20kmを与える.周期は8分とする.\betaは2.7である.
また,津波来襲方向が必ずしも明らかでないので,ここでは神威脇から青苗岬にかけての海岸で,痕跡高が10m以上の地域の中心点をとり,入射方向とした.入射波振幅は,理論値と痕跡高が平均的に一致するよう,1.3mとした.このようにして汀線における最大水位分布を求めた結果が図ー16である.
 理論解は,藻内付近から初松前までの地域を除けば,打ち上げ高の全体的な傾向をよく表している.すなわち,本理論は複雑な地形においても,島をめぐる打ち上げ高の傾向をかなり再現できると言える.藻内付近と初松前で大きな打ち上げ高がでている原因は,入射波形あるいは複雑な地形条件の影響が考えられる、 また,図ー14に当てはめると,1/\beta=0.37,r_2/r_0=2.5なので,日本海中部地震津波における隠岐の場合と同様,増幅率は1次元伝播の2倍近いことが分かる.

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図ー15
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図ー16 奥尻島における打ち上げ高分布(m=0.075,r_0=8km,r_2=20km,T=480s)

5. 結 論

 斜面の効果と島の有限な大きさを考慮し,円錐形の島による長周期波の捕捉理論の解を求めた.そして理論解に基づき,島による長波の捕捉の特性を調べた.さらに現地地形に適用し津波の打ち上げ高の観測値との比較を行なった.その結果,以下の結論を得た。
 1.島の大きさに比べて波長が長いときには捕捉の影響は顕著に現れず,波は汀線に沿って進行する.
 2.捕捉の影響が現れると,汀線に沿って遡上高の高い場所と低い場所が複数箇所現れる.また汀線付近で波は重複波的な挙動を示す,これは,r<2r_0の範囲において必ず波が捕捉されることに関係している.
 3.汀線に沿って遡上高が高くなる箇所は(1.5〜1.8)\beta程度である.
 4.島の形状によって,捕捉に関する固有周期があり,特定の条件下で波高が著しく増幅される。1次元伝播問題における一様勾配斜面による打ち上げ高との比較により,捕捉の影響が強く現れる条件を示した.
 5.隠岐における日本海中部地震津波の打ち上げ高は,本理論によってほぼ説明される.また,奥尻島における北海道南西沖地震津波の打ち上げ高は,藻内付近と初松前を除けば本理論でほぼ説明できる.藻内付近と初松前の打ち上げ高を説明するためには,本理論で考慮していない局所地形の影響などを考慮しなければならない。

参考文献

1) 首藤伸夫:北海道南西沖地震に伴う津波とその教訓,土木学会誌,第78巻,第9号,pp.2-17,1993.
2) 酒井哲郎・石突寿啓:島周辺における津波の挙動(日本海中部地震津波調査),第32回海岸工学講演会論文集,pp.242-246,1984.
3) 田申清:円形島による波浪の回折,第2回海岸工学講演会論文集,pp.33-35,1956.
4) 清川哲志・小林浩・臼野幹雄:軸対称構造物による波の散乱と波九土木学会論文報告集第321号,pp.103-112,1982.
5) Longuet-Higgins,M.S.: On the trapping of wave energy round islands, J.Fluid Mech., Vol.29, part 4, pp.781-821, 1967.
6) Summerfield,W. : Circular islands as resonators of longwave energy, Phil.Trans.Roy.Soc.London, pp.361-402,1972.
7) Wong,K.K., Ippen,A.T. and Harleman,D.R.F.: Interaction of tsunamis with oceanic islands and submarine topographies, M.I.T. Tech.Hydro.Lab. Rep.No.62, 86p.,1963.
8) Lautenbacher,C.C. : Gravity wave refraction by islands, J.Fluid Mech., vol.41, part 3, pp.655-672, 1970.
9) Jonsson,I.G., Skovgaard,O. and Brink- Kjaer,O.:Difraction and refraction calculations from waves incident on an island, J. Marine Research, Vol.34, No.3, 1976.
10) Shuto,N. : Standing Waves in Front of a Sloping Dike,Coastal Engineering in Japan, Vol.15, 1972.
(1994.1.19受付)

CHARACTERISTICS OF LONG WAVES TRAPPED BY CONICAL ISLANDS Koji FUJIMA and Chiaki GOTO

When tsunami attacks islands, there are some cases to damage the islands heavily by the trapping phenomena. Thus, a theoritical solution on the trapping of long waves by conical islands is obtained, which considers the effects of both infinite radius of islands and refraction by slopping beach. Characteristics on variation of spacial distribution of water elevation, characteristics on variation of runup height around coastal line, and characteristics on frequency response of maximum runup height are examined throughthe the oritical solution, then the condition in which the influence of trap is strongly appeared is demonstrated. The heights of tsunami traces in Oki-island and Okushiriisland can be explained satisfactorily by the present theory.

沿岸域の防災に関する 総合数値解析システムの開発 柴木秀之1・青野利夫2・見上敏文3・後藤智明4 1正会員 工修 (株)エコー(〒116東京都台東区北上野2-6-4) 2正会員 工博 東亜建設工業(株)技術研究所(〒230横浜市鶴見区安善町一丁目3) 3正会員 (株) アルファ水工コンサルタンツ(〒063札幌市西区発寒9-14-516-336) 4正会員 工博 東海大学教授工学部土木工学科(〒259-12平塚市北金:目1117)

Abstract

 海象災害に関する数値解析の流れを整理し,その解析方法をシステム化した沿岸防災に関する総合数値解析システム(INSPECT system)を新たに開発した,開発したシステムは,日本沿岸を対象に,高波・高潮・津波による突発災害の追算と災害予測を,効率的に処理することを目的にするものである.本論文では,数値解析システムの設計に当たっての基本方針と設計概要にっいて述べる.また,システムの根幹をなす数値シミュレーション理論と日本沿岸の外力解析への適用事例について述べる.
Key Words : INSPECT system, numerical research, coastal disaster, wave, storm surge, tsunami

1. はじめに

 わが国は,台風と地震の常襲地域に位置し,冬期に強い北西季節風が吹くという厳しい自然環境にある.
そのため,沿岸域は,海象災害により幾度となく甚大な被害を受けてきた,1959年の伊勢湾台風による高潮災害,翌1960年のチリ地震津波による災害はその代表的なものと言えよう.この2大災害を契機に,沿岸防災に関する研究が脚光を浴び,防災施設の建設も精力的に行われた.しかしながら,1994年北海道南西沖地震津波による奥尻島の甚大な被害例は,過去の被災を踏まえた防災施設の建設により,自然災害を完全に防ぐことに限界があるという貴重な教訓を我々に与えた.
そして,同時に,突発的な海象災害に迅速な対応が可能で,かつ目本沿岸の広範囲における適用が可能な沿岸防災の総合的な解析技術の必要性を痛感した.
 沿岸防災を解析する場合,まず始めに行われるのは,発生する災害を引き起こす現象の解明である.現象を科学的な手段を用いて再現し,さらに,将来の再発を予測するのである.このような災害現象の解明を行う場合に,数値シミュレーションは,今日のように電子計算機が発展・普及し,その機能が飛躍的に増大している点から判断すると,最適な手法であると言えよう,しかしながら,数値シミュレーションによる災害現象の解析は,高度な専門技術を必要とする.
 そこで,この問題を解決するために,防災に関する既往の数値解析の研究成果を有機的に結び付け,解析の処理方法をシステム化した沿岸防災に関する総合数値解析システム(INSPECT system)を新たに開発した.
開発したシステムは,日本沿岸を対象とし,突発災害の追算と災害予測を効率的に処理することを目的にするものである.また,高度な知識を必要とする従来の解析に比べ,データ作成から数値シミュレーション,結果の評価にいたる一連の処理を半自動化している.本論文では,解析システムを設計するに当たっての基本方針とその方針に沿い開発したシステムの設計概要について述べる.また,システムの根幹をなす高波・高潮・津波の数値シミュレーション理論の概要と日本沿岸の外力解析への適用事例について述べる.

2. 数値解析システムの設計方針

 (1)数値解析システムの設計方針
 沿岸防災総合数値解析システム(lntegrated Numerical reseach System for Prevention and Estimation of Coastal disaster : INSPECT system)は,日本沿岸に海象災害をもたらす代表的な現象である波浪・高潮・津波の数値シミュレーションとその一連の解析を,簡単な操作により処理することを碧的に開発された一種の防災数値解析のエキスパートシステムである。システムを設計するに当たり,基本とした方針は,煩雑な解析処理と高度な専門知識を必要とすることなく,専門技術者の処理と同等の成果が迅速に出力できるという点である.操作の簡便さを目標とするため,多種にわたる解析処理は対話形式を基本とし,簡単なデータ入力のみで一連の解析が可能なように配慮されている.

 (2) 解析システムの機器構成
 簡単な操作を基本とするため,当然ながら,使用する機器も操作が簡便なものを選択する必要がある.本数値解析システムは,図ー1に表すエンジニアリング・ワークステーション(EWS)とパーソナルコンピュータ(PC)とその周辺機器により構成され,各々の機器は,その特徴を生かして処理を分担している,これらの機器は,操作が容易でかつ経済的であることから,近年急速に普及している.
 システム内において,EWSが分担する機能は,システムの根幹となる波浪・高潮・津波の数値シミュレーションを行うことである.また,PCは,計算に必要な入カデータ作成,計算値と観測値の解析,計算結果の画面と紙面への出力を行う.EWSとPCの間は,ネッ
トワークにより接続され,入・出力情報が相互に伝達される。システムの周辺機器は,EWSとPC各々のハードディスク,PC側に,レーザープリンター・光ディスクユニット・デジタイザーが配備されている.周辺機器が分担する機能は,EWSのハードディスク(1GB)
が推算結果の一時保管,PCのハードディスク(300MB以上)が観測値データベースの保管,レーザープリンターが図表の紙面出力,光ディスクユニットが推算値・気象図・水深図データベース等大容量データの保管,デジタイザーが気象図・水深図アナログ情報のデジタル化である.また,計算結果を動画処理するために,専用のEWS,ビデオの編集・再生等の機器も用意されている.

 (3) システムの構成と解析処理
 解析システムのソフトウェアは,図ー2に表すように,波候統計解析・波浪推算・高潮計算・津波計算・計算支援の5つのメイン解析システムと支援データベースから構成されている.さらに,メイン解析システムと支援データベースは,各々複数のサブシステムとサブデータベースにより構成されている.
 5つのメイン解析システムのうち,波候統計解析は,日本全国の波浪観測値を統計処理するための波浪統計解析と,港湾等の設計波(確率波)を算定するための確率波統計解析の2つのサブシステムが準備されている.波浪推算は,傾度風・台風ハイブリッドモデルと境界層モデルを併用する海上風推算,平面出力型スペクトル法モデルによる日本沿岸を対象とする深海波浪推算,平面出力型パラメータ法モデルによる内湾波浪推算(短フェッチ海域),波の発達・減衰と浅海波浪変形を考慮した平面出力型スペクトル法モデルによる浅海波浪推算,物理因子重回帰モデルによる日本沿岸の波浪予測,単地点出力型スペクトル法モデルによる台風時の波浪予測の6つのサブシステムと,結果の出力システムが準備されている.高潮計算は,多層レベルモデルによる高潮計算,経験則・マスコンハイブリッド風推算モデルによる内湾海上風推算,波浪による水位上昇を考慮した高潮・波浪ハイブリッドモデルによる高潮計算と,結果の出カシステムが準備されている.津波計算は,日本近海の波源津波を対象とする近地津波計算,遠方の波源から大洋を伝播する津波を対象とする遠地津波計算と,結果の出カシステムが準備されている.
 計算支援システムは,波浪・高潮・津波計算に共通して用いられ,数値シミュレーションの入・出力を支援するものである.支援システムのうち,気象図処理は,天気図に描かれた気圧等のアナログ情報をデジタル化し,データベース化する.このデータベース化された気圧情報が,波浪・高潮の発達の外力となる海上風推算に利用される.水深図処理は,海底地形図・海図・地形図・深浅測量図等のアナログ情報をデジタル化し,データベース化する.この水深・標高のデジタル情報が,波浪・高潮・津波計算に使用する計算格子と格子点水深データを作成する基礎資料となる.浅海変形計算は,多方向・多周期の浅海域波浪変形計算を行い,任意地点における波向・周期別の屈折・浅水係数表をデータベース化する.本システムでは屈折・浅水係数を合わせて沿岸係数と呼び,この沿岸係数のデータベースは,深海波浪推算により計算される沖波の時系列情報を浅海情報に変換するのに用いられる.
動画処理は,波浪・高潮・津波の計算結果を動画処理し,現象の動的評価を行うことを目的とする.
 これらのサブシステムを支援するデータベースとしては,観測波浪・高潮偏差・津波痕跡高等の観測値データベース,気象図データベース,水深図データベース,沿岸係数データベース,台風・断層パラメータ・計算格子・格子点水深等の数値シミュレーシ3ンの入力値データベース,波浪・高潮・津波の推算値データベースの6種類がある.これらのデータベースを複合的に利用することにより,数値シミュレーションの入カデータ作成,観測値と推算値の比較等,解析処理を迅速に行うことが可能となる.

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図ー1 沿岸防災総合数値解析システムの機器構成
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図ー2 沿岸防災総合数値解析システムの構成

3. システムの解析理論

 (1) 波浪解析
a) 風解析
 数値解析システムの根幹をなすのは,波浪・高潮・津波現象の数値シミュレーションである.本システムで行う数値シミュレーションの計算理論は次のように概説される.はじめに,波浪発達の外力となる海上風と波浪の計算理論をモデル別に述べる.ここで,海上風とは海上10m高度の風向・風速で定義される.
 海上風は,前述した気象図データベースの気圧情報を利用して計算により求める.海上風推算は,傾度風モデルと台風モデルを併用したハイブリッドモデル1)による自由大気の風推算と境界層モデル2)による海上風への変換の過程を踏む.
 自由大気の風推算の1つである傾度風モデルの風推算は,自由大気において,気圧傾度力・コリオリカ・遠心力の力学バランスを仮定し,緯度・経度0.5°間隔の格子点気圧値から計算する.この格子点気圧値は,緯度・経度座標系に改めたスプライン平面補間法3)により,気象図データベースの気圧情報を空問補間して求める,台風モデルの風推算は,台風の中心位置・中心気圧と台風規模を表現するパラメータである台風半径から風を推算する.台風の気圧分布は,台風中心から圏外までの気圧を指数関数で近似するMyersモデルを用いる.このモデルで計算される気圧分布から,台風を中心とする対称風(傾度風),台風移動により発生する場の風と2っの合成風が計算きれる.台風モデルを用いる風推算は,場の風という気圧移動に伴う変圧効果を取り込んでいるため,台風影響圏内の風を良く再現することが知られている.
 2つのモデルを併用する傾度風・台風ハイブリッドモデルは,気圧分布の同心円近似が可能な台風影響圏内を台風モデルで風推算し,同心円での近似が不可能な気圧場を傾度風モデルで風推算する.そして,2つのモデルの推算風を経験的な関数により空間内挿し,台風影響圏内と傾度風適用範囲を滑らかに接続する.
これにより,推算風は,台風中心からの距離が増加するとともに,次第に傾度風速に漸近する.
 推算される自由大気の風を海上風へ変換するために用いる境界層モデルは,大気を自由大気と大気境界層の2層に分離し,自由大気は気圧傾度力とコリオリカ,大気境界層は気圧傾度力・コリオリカ・渦動粘性力がバランスすると仮定するモデルである。大気境界層の全てにおいて,3つのカがバランスし,高度とともに風向・風速は変化する.この力学バランスから,海上風鉛直分布の解析解が求められ,この解から,任意高度の風が高度と海面摩擦速度の関数として計算される.
なお,海面の摩擦速度は,海上風の速度と,本多・光易4)の海面抵抗係数から求める.ここで,境界層モデルの自由大気風に関する基礎式は,直交座標系のカのバランスを表す.これを,曲座標系に変換すれば,遠心力項が力のバランスに現れる.したがって,前述した傾度風・台風ハイブリッドモデルとは,扱う座標系が異なるものの,基礎式の内容は同じである.

b)スペクトル法深海波浪推算
 スペクトル法による深海波浪推算は,周波数と波向の関数として表される方向スペクトルの時間的変化を追跡する方法で,基礎式はエネルギー平衡方程式である。本システムでは,磯崎・宇治5)のMRI法を,波浪の発達・減衰のモデル化に利用している.このモデルは,気象庁の波浪予測業務,港湾施設の沖波設計波算定等に多くの実績を持つものである。深海波浪推算では,水深無限大と仮定し,エネルギー伝播速度を周波数のみの関数として定義している.そのため,計算される波浪は,浅海変形の影響を受けない沖波に相当するものとなる.

c)パラメータ法波浪推算
 スペクトル法が方向スペクトルを追跡するのに対し,パラメータ法波浪推算6)は,波浪を規定する1つのパラメータである風波のエネルギー変化を追跡するものである,この計算法の波浪発達式は,無次元フェッチと無次元エネルギーの1乗則,無次元波高と無次元周期の3/2乗則の2種類の風波に関する経験則を定式化したものである,風波を対象とする波浪推算法であるため,主に内湾のような短フェッチ海域に適用される、また,風波の経験則を採用していることから,風に対する高い応答性を必要とする低波高の風波の推算に適する特徴を有する.

d)スペクトル法浅海波浪推算
 深海波浪推算が浅海変形を受けない沖波を対象とする計算であるのに対し,スペクトル法浅海波浪推算7>は,波浪の発達・減衰と浅海変形を同時に考慮することが可能である.浅海波浪推算も,深海波浪推算と同様に,エネルギー平衡方程式を基礎式とする計算法である.そして,発達・減衰は深海波浪推算モデルと同様の計算を行い,浅海変形は,波浪エネルギーの伝播速度を周波数と水深(空間座標)の関数と定義することにより,屈折と浅水変形を計算する.発達量を無視できない長フェッチ浅海域や湾外からの侵入波が無視できない半閉鎖性内湾の波浪推算において適用する.
ただし,波浪変形を計算する上で,計算格子間隔を1㎞〜数10km程度にする必要があり,広範囲の計算に適用するとジ多大な計算時間を要する.そこで,計算時間を節約するために,外洋域を対象とする深海波浪推算モデルと併用する方法が効率的である.

e)波浪変形計算
 ここまでは波浪推算の理論について述べたが,港湾・海岸構造物の設計波を算定するためには,波浪推算だけでは不充分である.第一段階として求められる沖波値から構造物前面における波を推定するためには,浅海域で生ずる浅水・屈折・回折・反射・砕波の諸効果が重要となる。本システムでは,このような浅海効果を考慮した波を推定する方法として,伝播項のみで定式化されたエネルギー平衡方程式による波浪変形計算8)を用いる.

f)波浪予測
 次に,平面出力型波浪推算による波浪解析と同様に,沿岸波浪を予測することも,防災上の重要な課題である.波浪推算法は,発達過程にある波を推定することに重点を置いて基礎式が定められていることから,主に高波の推定に用いられるが,波浪予測は低波浪から高波浪までの全ての波高階級を対象とする.特に,施工管理等に波浪予測を利用する場合は,有義波高LOm以下の波高階級が計算対象となる.このような低波高階級も含めて,精度の高い波浪予測を行うために,本システムでは,物理因子重回帰モデル9)を用いる.
 物理因子重回帰モデルは,予測式を波浪の発達・伝播・減衰に関する線形回帰式で表し,風波とうねりの波浪エネルギーを説明変数に用いる.この波浪予測モデルは,予測地点のみにおける有義波諸元を計算することを目的とするため,始めに予測地点を中心とする16方向の波向線を放射状に設定し,各々の方向について波浪が独立に発達するものと仮定し,この波向線上で,波向別の成分波の発達量,伝播量を計算する.
そして,全波向から予測地点に伝播する成分波の波浪エネルギーを合成することにより,予測地点の波浪を推定する.
 一方,台風来襲時のみを対象とする場合には,波浪推算モデルを利用した波浪予測を行う.この波浪予測法は,予測地点を中心とする波向線上で波浪の方向スペクトルを追跡し,予測地点に到達する方向スペクトルの全成分を合成することにより波浪を推定する.予測の過程で行う計算は,台風モデルによる海上風推算,スペクトル法による波浪推算であり,結果の出力は予測地点のみとする.そのため,本システムでは,この予測方法を単地点出力型スペクトル法3)と呼ぶ.
(2)高潮解析

a)高潮の多層レベルモデル
 次に,高潮の計算理論について概説する.高潮による災害は,波浪災害よりも出現頻度は少ないが,一旦発生すると大規模なものとなる.この高潮現象の規模は,発生要因となる気象擾乱,すなわち台風の大きさとほぼ一致し,水深に比べてはるかに大きい.そのため,高潮は,後述する津波と同様に長波理論式で表される.高潮現象は,長波として扱われるが,その特徴は気圧変化による水面の昇降と,暴風による吹き寄せという継続的に作用する外力によりもたらされる強制的な水面変動という点にある.この点は,自由波として伝播・変形する津波と現象が大きく異なる.したがって,高潮の基本方程式は,津波計算の運動量方程式に,気圧勾配項と海面応力項を加えたものとなる.
 高潮現象のうち,吹き寄せによる水位上昇は,強風により発達する吹送流が,沿岸部に集中することから発生する.吹送流は,表面流速が最大で,水深が深くなるとともに流速が減少する鉛直分布構造を持つ.このため,吹送流を単層モデルにより近似すると,流れは全水深一様な断面平均流に置き変わり,流量を近似することが可能であるものの,上層流速を過小に評価し,下層流速を過大に評価する問題を含む.そこで,高潮計算では,多層レベルモデル10)を用いて,吹送流の近似精度を高める.さらに,本システムの高潮計算モデルは,海岸護岸の越流と陸域への浸水についても計算することが可能である.

b)内湾海上風の推算
 周囲を陸地で囲まれた内湾の海上風は,陸上地形の影響を受けて,外洋の海上風と異なる風場を形成する.この地形効果は,内湾の波浪・高潮の計算精度を大きく左右する.日本沿岸の大規模な高潮は,伊勢湾・大阪湾のような内湾で発達することから,内湾海上風の計算精度の向上は重要な問題となる.
 本システムでは,内湾海上風の推算に,経験則・マスコンハイブリッドモデル11)を用いる.経験則2)は,内湾海上風が,有効吹送距離に代表される地形的制約条件に関係する特性を,観測データをもとに定式化したものである.風計算では,陸上地形を3次元計算格子で近似し,地形の起伏を入カデータ化する.この後,初期条件として,各格子点に経験式から推定される海上風場を与え,3次元マスコンモデルを用いて,海上風の風場を求める.マスコンモデルは,質量保存則を束縛条件とする変分方程式を解くものであり,質量保存則を満たすように調整された風向・風速の収束解が求められる.

c)高潮・波浪ハイブリッドモデル
 外洋に面する地点で観測される高潮潮位には,波浪による水位上昇量も含まれていることが数多く報告されている12).理論解析13)によれば,海岸部の波浪による水位上昇量は,来襲波高の1割程度に達することが確認されている.このような現象を再現するために,前述した浅海波浪推算により計算される平面波浪場を利用して,Radiation応力を求め,この応力項を含む運動量方程式を基本式とする高潮計算を行う.ここで,平面波浪場は,気象擾乱の移動に伴い時間変化するものである.本システムでは,この計算法を,高潮・波浪ハイブリッドモデルと呼ぶ.ただし,このモデルの計算精度を高めるためには,海岸近傍を100m程度の格子間隔で近似することが必要となる.

(3)津波解析

a)断層モデル
 高潮と同様に,津波による災害も,一旦発生すると大規模なものとなる.この津波現象を再現する数値シミュレーションは,初期条件として,地震に伴い生ずる海底地盤変位と同等の海面水位変動を与える.この初期に与える水位は,地震断層モデルから計算される.断層モデルとは,断層面を矩形で近似し,地盤の運動を震源位置と断層の走向・長さ・幅・すべり量・すべり方向・傾斜角の6個のパラメータで幾何学的に表すものである.この断層パラメータを与えさえすれば,弾性理論により断層近傍の海底地盤の鉛直変位が計算で決められ,この鉛直変位分布が初期水位分布となる.

b)近地津波の数値計算
 断層モデルにより震源域の初期水位分布,すなわち初期平面波形が与えられると,周囲との水圧差により,水面波となって伝播していく.この波は津波と呼ばれ,波長が数10㎞以上に達するものとなるため,長波近似が可能となる.したがって,津波の現象は長波理論式で記述される.津波の数値シミュレーションとは,津波の水位と流速が,水深と海岸地形の空間的な変化のために,伝播過程で浅水・集中・共鳴効果を受けて変形する過程を数値的に追跡する手法である.この津波数値シミュレーションのうち,賃本近海で発生する津波を対象とする場合に,近地津波計算と呼ぶ14).
 本システムでは,既往の研究成果15)に基づいて,計算領域の最低水深に応じて,非線形長波理論と線形長波理論の2つの支配方程式を選択して適用する.選択の基準として,非線形項の大きさが線形項の大きさの10%を超える浅海域では,非線形長波理論(浅水長波理論)を適用する.沖側の境界では,進行性長波の特性曲線の関係をもとに,領域内の波を自由透過させる条件を用いる16).また,陸上への津波の遡上は,非線形長波理論式を用いる場合のみ考慮し,海域格子の水位と陸域格子の地盤高の差を基に,遡上計算の判定を行う.さらに,領域内の防波堤・堤防等について
は,前面水位がその天端高を越える場合に,越流公式
を用いて越流量を計算する.

c)遠地津波の数値計算
 日本近海で発生する伝播距離の短い津波に対して,チリ津波のように10,000㎞以上の距離を伝播する津波を遠地津波と呼ぶ17).この遠地津波の現象を扱う場合は,伝播距離の精度を高めるために,緯度・経度で表示される球面座標系を用いる必要がある.また,現象が大規模で,波数分散性を無視することができないため,支配方程式は,コリオリカを考慮した線形分散波理論を適用する.初期条件,沖側境界条件については,近地津波計算と同様である.しかし,海岸線境界では,陸上への遡上を考慮しない.

4.日本沿岸の外力解析への適用

(1)波浪解析と解析システム
a)設計波浪解析の流れと解析システム
 始めに,解析システムを利用する目本沿岸の外力解析のうち,波浪解析への適用例について述べる.波浪解析のなかで,重要かつ頻度の高い解析は,沿岸構造物の施設規模を左右する設計波諸元(波高・周期・波向)を決定することである.この設計波浪解析では,波浪災害の原因究明,確率波の算定が主な調査課題となる。図ー3は,港湾の設計沖波を算定する過程を取り上げ,解析手法と関係するシステムを整理したものである.設計沖波の算定は,気象擾乱の抽出,気象図データの作成気象擾乱時の波浪推算,沿岸係数の算定,推算値の検証,極値統計解析,モデル気象擾乱の想定,モデル気象擾乱の波浪推算,設計沖波の決定の順に行われる.関連する解析システムは,波候統計解析,波浪推算システムと支援システムの中の気象図処理,浅海変形計算のサブシステムである。設計波浪解析の手順に沿って,サブシステムは次のように利用される.
 気象擾乱の抽出では,対象地点に来襲する高波の発生要因となる気象擾乱を,長期間にわたり期間的な偏りなく決定する.この処理では,波浪統計解析サブシステムにより,年別高波一覧表・期間最大有義波分布等が出力される.これらの情報は,年最大波・極大波に相当する気象擾乱を抽出する場合の根拠となる.
図ー4は,1990年の日本沿岸における最大有義波高・有義波周期と最大波諸元を面的に出力したものである.気象擾乱が抽出されると,この気象擾乱期間の気象図データの作成を行う.気象図データは,風推算の基礎情報となるもので,気象図処理サブシステムにより作成される.図ー5は,気象図データベースに保管された極東天気図と,気圧情報から推算された海上風出力例である.気象図データが作成されると,風推算・波推算を行い,対象地点における高波発生時の有義波高・有義波周期・波向の時系列を計算する.波浪推算システムでは,領域と期間を指定し,EWSにより,連続的に気圧の格子点補間・風推算・波推算が行われる.
風推算は,波浪解析の理論でも述べたように,傾度風・台風ハイブリッドモデル,大気境界層モデルを用
いる.また,波推算は,海域に応じて,平面出力型のスペクトル法深海波浪推算・パラメータ法波浪推算・浅海波浪推算のいずれかを選択する.スペクトル法深海波浪推算は,主に外洋を対象とする広範囲の計算:領域で計算を行うため,地球面上の距離精度が確保される緯度・経度座標系を用いる.例えば,日本沿岸の主要港湾を対象とする場合18)には,風波の発達する広い領域を1/2°格子で近似し,対象港湾に近づくにつれ,陸地の遮蔽効果を表現するために,1/8°,1/24°格子で地形を近似する.一方,パラメータ法は,平面座標系を採用し,内湾のように比較的狭い海域に限定して計算を行う.内湾の地形は,1㎞〜数100m程度の計算格子で近似する.浅海波浪推算も,波浪変形が無視できない浅海域を主に対象として行うことから,パラメータ法と同程度の計算格子を用いる。さらに,浅海波浪推算では,外洋に及ぶ波浪の発達海域を計算領域内に含むことが必要であることから,外洋を対象とする深海波浪推算を併用する.これらの計算法から求められる結果は,全格子点において,擾乱毎に方向別最大有義波高・有義波周期の一覧表として整理され,波浪の推算値データベースに保管する.このデータベースと,次に述べる確率波浪解析システムを利用して,対象地点における設計波を算定する.
 確率波浪解析システムは,対象地点の計算値データの抽出,計算値と観測値の相関解析,極値統計解析などの確率波算定に必要な各種処理を行う.まず,長期間にわたる波浪の推算値データベースから,方向別の年最大有義波と極大波が年毎に抽出される,図ー6は,全方位を対象とする年最大有義波と極大波の経年変化を表すものであり,これが対象地点における設計波算定の基礎資料となる.
 今,深海波浪推算により計算される沖波相当の計算値が求められる場合について解説を進める.計算値と観測値の相関解析は,計算値の誤差を前提とし,より観測値に近い情報に変換する経験式(補正式)を求めるための処理である.これを迅速に行うために,計算値と同一気象擾乱時の観測値を,波浪の観測値データベースから検索,抽出する.ただし,観測波浪が浅海情報である場合には,沖波計算値を浅海情報に換算した後に,両者の比較を行う必要がある。この換算を行うために,波浪観測地点の沿岸係数を波向・周期別の一覧表の形式にまとめ,該当する波向・周期の係数を沖波値に乗ずる.任意地点の沿岸係数表を作成するために,波浪変形計算を行うのが,浅海変形計算サブシステムである.波浪変形計算を行うためには,計算格子と格子点水深が入カデータとして必要となる。これらのデータは,水深図データベースに保管される対象地点の海岸線・水深情報を利用して作成される. 図ー7は,デジタル化された水深図データベースと,多方向の波浪変形計算領域の範囲を表す.各波向の計算領域は,沖波が沖側境界から直角入射するように作成される.このサブシステムでは,全計算領域の入カデータ作成と全波向・周期の波浪変形計算を,簡単なコントロールデータのみで実行するよっに設計されている.
 このようにして,観測値に近い情報へと変換される計算値を利用して,波浪極値統計解析を行う,図ー8は,方向毎に算定された50年確率波高の分布例である.さらに,確率波高に相当する周期は,図に併記される波高・周期の相関図から,等波形勾配線を利用し
て決定する.確率波周期の算定は,発達期から最盛期にかけての波が,一定の波形勾配を有する特性に着目し,確率波高から推定する方法を採用する.
 このようにして,本システムを利用すると,日本沿岸の全てを対象とする波浪推算値データベースの蓄積と,これを利用する日本沿岸の波候統計解析19),沿岸確率波分布の作成等の種々の調査を容易に行うことが可能である.図ー9は,日本沿岸を対象とする深海波浪推算により計算された1990年8月8日から12日までの期間最大有義波高の分布である.この波浪推算では,日本沿岸を対象とする1/3°格子と,その外側の1格子で領域構成がされている.1。・格子の範囲は,北緯15°から48°,東経115°から170°であり,太平洋上で発達する波浪を十分に考慮するように設定されている.また,波浪の推算値データベースには,1/3°格子点全てについて,推算期間内の方向別最大有義波諸元が保管される. 次に,外洋と通じる内湾の設計波を算定するために,浅海変形を考慮する必要がある場合は,浅海波浪推算を利用することができる.図‐10は,浅海波浪推算により求められた伊勢湾台風時の最大有義波高の分布である.領域内の地形は,熊野灘から遠州灘にかけての沿岸を1.8㎞,伊勢湾を600m格子で近似している.
計算される平面波浪場を見ると,水深が150m以浅の海域において波浪変形が生じ,波高が減衰する.また,伊勢湾内の西部海域は,外洋からの侵入波の影響を受けていることが確認できる.なお,計算領域の沖側境界では,外洋を対象とする深海波浪推算を先行して行い,この計算から求められる境界格子の方向スペクトルが,計算時間間隔毎に境界条件として与えられる.

b)沿岸波浪予測
 波浪解析の中で,設計波浪解析とともに重要なものに,波浪予測がある.本システムの波浪予測法には,日本沿岸を対象に,低波浪期から高波浪期を通じて適用可能な物理因子重回帰モデルによる波浪予測と,台風期を対象とする単地点出力型の波浪予測モデルが挙げられる.
 物理因子重回帰モデルによる波浪予測は,予測する時刻と予測計算を行う現時刻の推算波浪エネルギーと,現時刻の観測波浪エネルギーを説明変数とする線形回帰式を波浪予測式として用いる.ここで,予測式中の各説明変数に係る回帰係数は,過去の予測値と観測値との重回帰解析からあらかじめ定めておくことになる.
予測計算においては,説明変数である推算波浪エネルギーを計算するために,現時刻と予測時刻の風推算が必要となる.そこで,現時刻の風推算は速報天気図,予測時刻の風推算は予報天気図から得られる気圧情報を利用して行う.推算海上風から計算される推算波浪エネルギーと観測波浪エネルギーを,波浪予測式に代入すると,瞬時に予測値が計算できる.
 図−11は,物理因子重回帰波浪予測モデルを用いた1983年2月の常陸那珂港における12時間後の波浪予測結果である.予測波浪は,風波とうねりの2成分に分離して出力される.上から順に,風波とうねりの合成波の予測波向,予測有義波高と観測値の経時変化,
予測有義波周期と観測値の経時変化,風波とうねりの成分波波向,風波とうねりの相当有義波高と相当有義波周期の各経時変化である.低波浪期,高波浪期とも波浪期,高波浪期ともに,観測値とよく合致する良好な予測結果である.ここで,予測結果を基に,波浪特性について考察を加える.
 まず,波浪発達期を見ると,合成波の波向は風波の波向と一致し,波浪減衰期を見ると,合成波の波向はうねりの波向と一致する.また,風波とうねり各々の成分有義波高を見ると,最大の高波が発達した17日は,風波成分が卓越し,20日〜21日にかけての波浪減衰期は,うねり成分が卓越する.周期についても,波浪の発達期は,風波成分と合成波の周期がほぼ同じとなる.ここに述べたように,本システムの波浪予測モデルは,有義波高予測のみならず,有義波周期,波向の予測,風波成分とうねり成分の分離が可能である。
さらに,この沖波予測値は,浅海域の複数地点において沿岸係数データベースを準備すれば,浅海波浪情報に変換することが可能である。すなわち,従来の沖波予測のみならず,港湾・海岸周辺の複数地点を対象とするきめ細かい波浪予測へ応用することが可能である.
 一方,台風来襲時のみの波浪予測を目的とする場合,より簡単な方法として単地点出力型の波浪予測モデルがある.図ー12は,高知沖を対象とする台風8219号の波浪追算結果を,PC画面に出力したものである,画面には,台風経路・台風規模・観測波浪の経時変化が表示され,計算の進行とともに有義波高・周期・波向に関する計算値が表示される.この結果は,既往台風の経路・規模等を入力値として与え,台風モデルによる風追算と波浪追算を行ったものであるが,台風の予測経路および規模等の情報を入力すると,台風時の波浪予測を行うことが可能である.なお,入力はマウス・キーボードで行い,予測計算も全てPCのみで行われる.試算の結果,5日間を対象とする波浪予測の所要時間は約1分である.

 (2) 設計潮位解析と解析システム
a)設計潮位解析の流れと解析システム
 波浪とともに,沿岸構造物の設計を行う場合に必要な外力解析に,設計潮位の解析が挙げられる.特に,沿岸防災を目的とする海岸保全施設等の設計では,設計潮位を定めることが重要な課題となり,設計潮位として高潮・津波により生ずる異常潮位が用いられる.ここでは,本システムを利用する設計潮位解析の流れを述べるとともに,海域別の設計潮位解析への適用事例を挙げる.
 設計潮位の算定ならびに防災構造物による潮位の低減効果等を調べるために,高潮・津波の数値シミュレーションがよく用いられる.図ー13は,数値シミュレーションを中心とする設計潮位解析と解析システムの関係を整理したものである.設計潮位は,通常,高潮・津波により生じた既往最大値を基本とする。そのため,始めに,設計潮位に該当する既往最大の高潮・津波水位を定める.そして,既往最大水位の要因となる現象が,高潮であれば台風を,津波であれば波源を選定し,この条件下で,高潮・津波の再現計算を行う.
数値シミュレーションを行うためには,計算範囲の決定と,計算格子・格子点水深による地形近似が必要となる,また,高潮計算であれば台風パラメータ,津波計算であれば断層パラメータ等の入カデータ作成が必要となる.
 一般に,高潮・津波の数値シミュレーションは,台風または波源を含む沖合海域から対象とする海岸・港湾区域にかけて,格子間隔の異なる領域を順次結合し,同時計算を行う.計算を短時間で効率的に行うためには,大きい計算格子間隔で地形近似を行えばよい.しかしながら,計算において,数値計算上で現れる離散化誤差と打ち切り誤差を小さく抑えるためには,波長の1/20から1/30以上の細かい格子間隔を適用する必要がある20)・21).高潮・津波の波長は,沖合の深海域で長く,水深が浅くなるとともに短くなる.そのため,計算誤差を小さく抑え,かつ計算を効率的に行うためには,波長が長い深海域で格子間隔を大きくし,波長が短い浅海域で格子間隔を小さくする格子配置計画が重要となる.ここで,本システムでは,沿岸格子を200mで地形近似することを基本としている.
 このようにして,既往最大の高潮・津波の再現計算を行った後,計画地形に関する予測計算を行うという段階を踏む.計算結果が得られると,結果の解析と設計潮位の検討が行われる。さらに,必要に応じて,モデル台風・モデル断層による予測計算を行う.
 本解析システムは,日本沿岸の海域を選択することで,図に示す一連の潮位解析に関する処理を行うことが可能な数値解析システムとして設計され,どの海域についても適用可能な汎用的システムである.
 解析システムの根幹をなす数値シミュレーションの最大の特徴は,決められた書式のコントロー一ルデータを編集するだけで,海域・外力別の計算プログラムを作成し,入カデータを入力値データベースから抽出するように設計されている点である.このコントロールデータの編集はPC画面による対話形式で行い,1つのデータにより,高潮・津波計算に必要な計算格子・格子点水深と,計算範囲・格子間隔・時間間隔・断層パラメータまたは台風定数等の入力情報とが連結し,すばやく計算準備が完了する.
 ここで,数値シミュレーションに使用する計算格子・格子点水深は,あらかじめ入力値データベースに登録する.計算格子・格子点水深データは,水深図処理サブシステムと水深図データベースを利用することにより,日本沿岸の海域・陸域の区別なく,任意の計算範囲,任意の格子間隔で作成することが可能である.
また,港湾・海岸等において詳細な地形近似を必要とする場合には,対象港湾・海岸の計画平面図や深浅測量図等をデータベース化すれば,詳細な格子情報が作成できる.
 先に,数値シミュレーションにおいて海域を選択すると述べたが,高潮・津波の計算システムは,日本沿岸を海域別に分割してシステム化することを基本としている14)・22).これは,日本沿岸の全てを詳細な地形近似で同時に計算することが効率的ではないことと,海域別に対象とする台風津波の波源が異なるためである.海域別のシステムは,それ自体で完成されたものであるが,海域内の新たな港湾・海岸を対象とする計算を行う必要が生じた場合には,対象とする港湾・海岸の計算格子等の入カデータを,入力値データベースに随時追加・拡張すれば良い.また,断層・台風の情報は,識別番号が割り当てられ,既往高潮の計算では,台風番号を選択して,台風データベースから入カデータを作成する方法を採用しており,既往津波の計算であれば,津波番号を選択することにより,断層パラメータデータベースから入カデータが作成される.
 このようにして実行される数値シミュレーションの計算結果は,高潮・津波の出カサブシステムにより画面または紙面に出力される.また,格子点毎の最大高潮偏差・最大津波高等の情報が,高潮・津波の推算値データベースに収録される.この計算値は,観測値デ一タベースに収録されている高潮偏差または津波痕跡高のデータと照合され,計算精度の検証ならびに計算値の補正を容易に行うことが可能となる.図-14は,大正12年関東地震津:波来襲時の南関東沿岸における津波痕跡高と最大津波高計算値の沿岸分布を比較したものであり,痕跡高と計算値の沿岸分布に良好な一致が見られる.

b)海域別高潮解析システム(伊勢湾)
 次に,海域別高潮・津波の解析システムの適用例として,過去最悪の高潮災害となった伊勢湾台風時の伊勢湾の高潮解析について述べる.伊勢湾の設計潮位の解析では,伊勢湾台風による高潮の平面分布が,そのまま設計潮位条件を決定するための基礎資料となる.この高潮解析の中心となる高潮数値シミュレーションを精度良く行う上で,計算範囲と計算領域内の地形近似の精度を決定することは,計算準備段階の重要な検討項目となる.
 高潮は,台風接近時刻に顕著となるが,台風が遠方に位置する場合も,台風圏内で発生した自由波が外洋を伝播し,湾内に侵入して水位を上昇させることがある.いわゆる高潮前駆波の1要因である.さらに,外洋で発生する吹送流が沿岸部に吹き寄せられ,湾口部から湾内全域の水位上昇に影響を及ぼすことも考えられる.このため,高潮計算の領域は,大陸棚と内湾を中心とする海域と台風の通過海域を含む広範囲の外洋域で構成する.
 一方,沿岸部は,港湾構造物等の微細な地形が高潮に与える影響を評価可能なように,数10km程度の格子近似は最低必要となる.また,水深の浅い内湾域では,天文潮位の影響を無視できない.特に,高潮に伴う陸上浸水量を計算する場合には,精度の高い天文潮
位の計算が必要となる.ただし,現在の潮汐計算の技術では,外洋の潮汐計算と内湾の高い精度を必要とする潮汐計算を同時に行うことは,外洋境界条件の情報不足もあり,適切な方法とは言えない.このような点を考慮し,高潮の計算システムでは,計算領域を,外洋領域と内湾領域に分離する方法を採用し,計算の効率化を図る.ここでは,伊勢湾を比較的粗い計算格子で地形近似した外洋領域の高潮計算の例を述べる.
 図ー15は,伊勢湾高潮解析システムを利用して計算された外洋領域における伊勢湾台風時の最大高潮偏差の分布である.太平洋を含む広範囲を対象とする外洋領域は,計算を効率的に行うために,8領域で構成し,3240m格子の外洋域から600m格子の伊勢湾を中心とする沿岸域へと,次第に小さい格子により地形を近似する.各々の領域は,1/2または1/3の比率で,段階的に格子結合がなされ,全領域で連続計算を行う.
 次に,流速に着目してみる.図ー16は,上層厚を30mとする2層モデルにより計算された伊勢湾台風時の沿岸域における上・下層の流速分布である.図を見ると,風向と同方向の強流速帯が上層に現れている.
一方,下層は反流が生じている.このように,多層化を行うことにより,上層の流速分布は現象により近いものとなる.
 さらに,高波が来襲する海岸における発生高潮の計算精度を高めるために,波浪による水位上昇量を考慮する.図ー17は,気圧・風効果のみを考慮したモデルと,波浪による水位上昇も考慮した波浪・高潮ハイブリッドモデルにより求められる伊勢湾台風時の最大高潮偏差の分布を比較したものである.左図の気圧・風効果のみを考慮した場合に,熊野灘で,伊勢湾台風の上陸時の中心気圧950hPaにほぼ該当する60cm程度の最大高潮偏差が計算される.しかし,この計算値は,観測された最大高潮偏差よりも1.Om程度過小となる.
 一方,右図に示す波浪効果も考慮した場合,熊野灘から遠州灘にかけての海岸部において,40〜50cm程度の波浪による水位上昇量が風・気圧効果の上に重なって計算される.この結果は,海岸部の地形近似を600m格子で行ったものであり,波浪による水位上昇を計算する上で粗い地形近似である.そのため,波浪による水位上昇は,依然過小と考えられるが,地形近似を10km格子程度で行うと,高潮の再現性はさらに向上する.
 ここで述べたように,高潮の設計条件を決定するに当たり,現象を的確に捉え,数値シミュレーションに反映することが重要な点となる.
 次に,伊勢湾奥を200m格子で地形近似する港湾内の高潮予測の事例について述べる.図-18は,伊勢湾奥の名古屋港周辺における昭和34年の伊勢湾台風来襲時と高潮防波堤(開口幅500m)設置時の仮想地形の最大高潮偏差の平面分布を表す.左図が再現値,右図
が予測値である.高潮防波堤による名古屋港内の高潮低減効果が予測されている.

c)海域別津波解析システム(三陸沿岸)
 次に,津波の海域別解析の事例として,三陸沿岸を対象とする津波解析について述べる.三陸沿岸は,日本の代表的な津波常襲地帯であり,過去に,幾度となく大規模な津波災害が発生している.
 図ー19は,三陸沿岸を対象とする津波数値シミュレーションを行う海域の領域区分の構成である14).
三陸沿岸の計算領域は,領域内の水深により,前述した計算誤差を抑えるための格子間隔の設定基準を用いて,33領域に分割している.計算領域は,格子間隔AからFまでの6段階に分けられ,近地津波の波源域を網羅するA領域は格子間隔5,400m,対象港湾である大船渡・釜石・久慈・八戸の4港湾の地形を近似する,F_1〜F_4領域は50m格子である.数値シミュレーションを行う既往の近地津波の断層パラメータは,入力値データベースに登録されている.
 一方,遠地津波であるチリ地震津波については,あらかじめ太平洋伝播計算を行い,三陸沿岸における津波入射波形を津波推算値データベースに登録する.そして,チリ津波の入射波形を格子間隔5400mで近似されたA領域の沖側境界において,入射波条件とし
て与え,三陸沿岸の津波数値シミュレーションを行う2段階の方法を用いる.
 図−20は,チリ地震津波の太平洋伝播計算から求められた津波の伝播図である.図の数字は,津波発生からの経過時間を表す.チリ地震津波の太平洋伝播計算の範囲は,太平洋全域を含む南緯60度から北緯60度,東経120度から西経70度,計算領域は1領域で,格子間隔は一律に緯度・経度で10分(赤道距離で約18.5㎞)を用い,総計算格子点数は約73万個に及ぶ.
 図‐21の上図は,三陸沿岸の津波計算によるチリ地震津波来襲時の大船渡湾の最大津波水位分布である.
図中の数値は,T.P.(m)を基準としている.また,図中に陸上浸水域を表す.大船渡湾のチリ地震津波は,湾口部で1.8m程度,湾奥部で4.5m程度の水位となり,湾全体でみると,湾口部から湾奥部に向かって水位が次第に高くなっている.湾の固有振動との共振による津波増幅と,市街地まで拡がった陸上浸水が再現されている.
 一方,下図は,大船渡湾に湾口防波堤が設置される地形を想定する場合に,予測されるチリ地震津波来襲時の最大水位分布である.図を見ると,津波の最大水位は,湾口部で1.2m程度,湾奥部で1.9m程度となり,湾内全体の津波水位は湾口防波堤により半減する.
それに伴い,浸水域も,海岸線に津波防潮堤がなく,かつ地盤高の低い区域に限られることが予想される.
 ここに述べた津波や,前述した高潮の数値シミュレーションにより明らかにされる水位・流速の平面情報が,港湾内の防災構造物の機能を定量的に把握し,かつ防災構造物の効果的な配置計画及び構造設計を行う上で有効となる.

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図ー3 設計波浪の解析手法とシステムとの関係
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図ー4 1990年の日本沿岸における最大有義波高・有義波周期の分布
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図ー5 データベース化された極東天気図と推算される海上風分布の出力例
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図ー6 統計期間の年最大波と極大波の経年分布
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図ー7 データベース化された海岸線・等深線と複数の主波向を対象とする波浪変形計算の領域区分
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図ー8 確率波高の方向分布と確率波高に相当する周期算定の相関図
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図ー9 日本沿岸を対象とする深海波浪推算により計算された最大有義波高の平面分布
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図ー10 浅海波浪推算により求められる伊勢湾台風時の最大有義波高の平面分布
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図ー11 物理因子重回帰波浪予測モデルによる常陸那珂港の12時間波浪予測結果及び風波とうねりの分離結果
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図ー12 単地点出力型波浪推算モデルによる台風時の高波予測の画面出力
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図ー13 設計潮位解析と解析システム
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図ー14 大正12年関東津波来襲時における南関東沿岸の津波痕跡高と計算値の分布比較
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図ー15 伊勢湾高潮計算における外洋領域と伊勢湾台風時の最大高潮偏差の分布
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図ー16 2層モデルで推算された熊野灘から伊勢湾・遠州灘にかけての上・下層の流速分布
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図ー17 気圧・風効果のみ考慮した場合と波浪効果も考慮した場合における伊勢湾台風時の最大高潮偏差の分布比較
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図ー18 伊勢湾奥における昭和34年当時と高潮防波堤仮想地形の伊勢湾台風時の最大高潮偏差分布
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図ー19 三陸沿岸海域の計算領域区分
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図ー20 チリ地震津波の太平洋伝播計算領域と伝播図
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図ー21 大船渡湾におけるチリ地震津波の最大水位分布(再現計算と湾口防波堤がある場合の予測計算)

5. おわりに

 本論文は,日本沿岸における波浪・高潮・津:波災害を対象とする防災関連調査の効率化を目的として,新たに開発した沿岸防災総合数値解析システム(INSPCT system)の設計概要と,システムの根幹をなす数値シミュレーションの計算理論,日本沿岸海域への適用事例について概説したものである.本システムの特徴を整理すると,以下のようにまとめられる.
 1.数値解析システムは,波浪・高潮・津波の数値解析に関する技術と解析方法を系統的に整理し,観測情報の整理,数値シミュレーションの入カデータ作成,数値シミュレーションの実施,結果の解析,評価までの一連の処理を効率的に行えるように開発したものである,システム設計の基本方針は,技術者が,煩雑な解析処理と高度な専門知識を必要とせず,対話形式による簡単な操作で,迅速に成果を出力することである.
 2.使用する機器は,操作が簡単で近年広く普及しているエンジニアリングワークステーションとパーソナルコンピュータ,ならびにその周辺機器で構成されている.解析の成果は,画面・紙面出力の2種類を選択することができる。
 3.システムは,波候統計解析・波浪推算・津波計算・高潮計算・計算支援の5つのメインシステムと観測値・気象図・水深図・沿岸係数・数値シミュレーションの入力値・推算値の6種類の支援データベースから構成されている.各々のメイン解析システムと支援データベースには,複数のサブシステム・サブデータベースが準備されており,多数のシステムとデータベースを複合的に利用して解析処理を行うように工夫されている.
 システムの根幹をなす数値シミュレーションは,海上風・波浪・高潮・津波個々の研究成果を踏まえた最新の数値計算技術に基づくものである、本論文では,システムを現地に適用した事例のうち,代表的なものを解析種類別にとりあげた.
 システム開発に当たり,最新の数値シミュレーション技術の導入を目標としたが,今後改良すべき課題も幾つかある.それは,新たに開発される最新の数値計算技術を段階的に取り込むことである.例えば,風推算では,移動性低気圧や前線に見られる変圧効果を盛り込んだモデルがあり,波浪変形計算では,広領域における回折効果を考慮したモデルと海岸近傍における強非線形・強分散性を考慮した平面型モデルとの併用がある.津波計算では,ソリトン分裂する津波を計算する平面型の非線形分散波方程式モデルが挙げられる.
また,高潮計算では,密度効果を考慮したモデル等が挙げられる。
 今後,これらの数値計算モデルの開発を継続的に行い,システムに組み込むことにより,システム全体の技術水準を向上させる予定である.一方,既に構築済みのものの中にも,例えば,外洋伝播計算システムは,短周期の津波伝播計算精度に依然問題が残されており,近地津波計算用の海域別システムも津波周期によって,地形近似精度に問題が残る.したがって,今後の計算機能力の向上に合わせて,海域別システムの継続的な地形近似精度の向上(高精度化)を行う必要がある.
 さらに,未整備の海域別システムの段階的な構築を行い,9本沿岸全域に適用事例を拡大しながら,システム全体の規模を拡張していく予定である.

謝辞

本研究は,著者らが運輸省港湾技術研究所に在籍していた時代,著者の一人が東京大学工学部土木工学科研究員として在籍していた時代を通じて,解析した結果を新たにとりまとめたものである.東北大学理学部鳥羽教授,東京大学工学部渡辺教授,磯部教授,運輸省港湾技術研究所野田所長,波浪研究室平石室長,京都大学防災研究所高山教授,神戸大学堀江教授から貴重な御指導,御助言を得た。また,港湾技術研究所海象調査研究室からは貴重なデータを提供して頂いた.
さらに,運輸省第二港湾建設局佐藤技官,技術研究所根岸元職員の助力を得た.ここに,記して譜憶を表す.なお,標高・海岸線データは,国土地理院国土数値情報を,水深データは,海上保安庁水路部水深統合データを利用した.

参考文献

1) 後藤智明,柴木秀之:海上風の特性と陸上地形の影響を考慮した海上風推算モデル,港湾技術研究所報告,Vo.33,No。3,1993,
2) 柴木秀之,後藤智明:内湾海上風の地形依存性について,第39回海岸工学論文集,pp.14H45,1992.
3) 後藤智明,青野利夫:単地点出力型スペクトル法による波浪推算システム,港湾技術研究所報告,Vo1.31,No.2,1992,
4) 本多忠夫,光易恒:水面に及ぼす風の作用に関する実験的研究,第27回海岸工学講演会論文集,pp.9(ト93,1980.
5) Isozaki, I, and Uji: Numerical prediction of ocean wind waves, Papers in Met. and Geophys., Vol.23(4),pp.347〜356,1973.
6) 後藤智明,小舟浩治:現地で簡単にできる波浪推算法について,第35回海岸工学講演会論文集,pp.222-226,1980.
7) 柴木秀之,渡辺晃,磯部雅彦:浅海波浪推算モデルとその応用に関する研究,第42回海岸工学論文集,pp.341-345,1995.
8) 永井康平,堀日孝男,高井俊朗:方向スペクトルを持つ沖波の浅海域における伝播の計算について,第21回海岸工学講演会論文集,pp.249-253,1974.
9) 後藤智明,柴木秀之,青野利夫,片山忠:波浪予測を目的とした物理因子重回帰モデル,土木学会論文集,Vol.473,pp.45-53,1993.
10) 後藤智明,柴木秀之:多層レベルモデルによる津波・高潮の数値計算法,東海大学工学部土木工学科研究室ノート,1994.
11) 柴木秀之,後藤智明:陸上地形の影響を考慮した内湾海上風の推算モデル,第40回海岸工学論文集,pp.166-170,1993.
12) 小西達男:外洋に面した港湾で生ずる高潮に対するWave setupの寄与について,海と空,第66巻4号,pp.45-57,1991.
13) 合田良実:浅海域における波浪の砕波変形,港湾技術研究所報告,Vol.14,No.3,pp.5g-106,1975,
14) 後藤智明,佐藤一央:三陸沿岸を対象とした津波数値計算システムの開発,港湾技術研究所報告,Vol.33,No.2,1993.
15) 首藤伸夫:津波の計算における非線形項と分散項の重要性,第23回海岸工学講i演会論文集,pp.432-436,1976.
16) 後藤智明,小川由信:Leap-frog法を用いた津波の数値計算法,東北大学土木工学科資料,1982.後藤智明:遠地津波の外洋伝播計算,港湾技術研究所報告,Vol.30,No.1,pp.3-19,1991.
17) 後藤智明,亀山豊,柴木秀之:日本沿岸波浪の推算システム,海洋開発論文集,Vol.8,1992.
18) 青野利夫,佐藤〜央,後藤智明,池田明弘,貝本沿岸の極大波浪の出現特性について,第40回海岸工学論文集,pp.111-115,1993,
19) 今村文彦,後藤智明:差分法による津波計算の打ち切り誤差,土木学会論文集,Vol.375,pp.241-250,1986.
20) 長谷川賢一,鈴木孝夫,稲垣和男,首藤伸夫:津波の数値計算における格子間隔と時間積分間隔に関する研究,土木学会論文集,Vol.381,pp.111-120,1987.
21) 柴木秀之,戸引勲,額照恭史,後藤智明:南関東津波計算システムの開発,海洋開発論文集,Vol.10,pp.265-270,1994.
(1997.11.7受付)

DEVELOPMENT OF INTEGRATED NUMERICAL RESEARCH SYSTEM FOR PREVENSION AND ESTIMATION OF COASTAL DISASTER Hidenori SHIBAKI, Toshio AONO, Toshifumi MIKAMI and Chiaki GOTO

This paper presented an outline of the design, basic theory of numerical research and applications of the Integrated Numerical Research System for Prevention and Estimation of Coastal disasTers ( INSPECT) system.
This system was developed to efficiently perform studies for preventing disasters on Japanese coasts due to wave, storm surge, and tsunami.

Leap-Frog法を用いた島周辺の津波数値計算における格子間隔選定基準 藤間功司1・正村憲史2・林建二郎3・重村利幸4・後藤智明5 1正会員 工博 防衛大学校助教授 土木工学教室(〒239-8686横須賀市走水1-10-20) 2正会員 修(工) 防衛大学校助手 土木工学教室 3正会員 Ph,D, 防衛大学校助教授 土木工学教室 4正会員 Dr.Eng, 防衛大学校教授 土木工学教室 5正会員 工博 東海大学教授 工学部土木工学科

Abstract

 汀線付近に鉛直壁を設置した円錐形の島モデルにおける線形長波理論の過渡波解を求めた.津波数値計算に広く使われている,Staggered格子を使用したLeap-Frog法により求めた数値解を理論解と比較し,格子間隔と津波数値計算の精度との関係を検討した。その結果,計算誤差を代表する相田のパラメタ\kappaの変化が,式(18)で示される簡単なパラメタで表されることが分かった.また,\kappaと最大津波高の誤差や島回りの津波高の最大誤差などとの関係を調べた.これにより,最大津波高などに関して必要な計算精度を仮定すれば,それを得るための格子間隔の基準を決定することが可能になる
Key Words : tsunami, conical island, trapping, tsunami numerical simulation, criterion for grid size

1. はじめに

 津波防災計画の策定にあたり,対象地域における歴史津波の再現や,想定地震により発生する津波の予測などに,staggered格子を使用したLeap-Frog法による数値計算が広く用いられている,その際,精度の高い数値計算結果を得るには,十分に細かな格子を用いる必要がある.しかし,今のところ,水平床1次元伝播問題1)と一様勾配斜面上での遡上問題2)に関する基準以外,適切な格子間隔選定基準が得られていない.そこで,屈折の効果が効く平面2次元問題において,精度の良い結果を得るためにどの程度の格子間隔を用いる必要があるか,検討する必要がある.
 屈折の効く場合に格子間隔選定基準が定められていない理由は,主として以下の2点であろう.
1.格子間隔選定基準を決定するには,同一の支配方程式と地形条件のもとで得られた数値解と理論解を比較する方法が一般的であるが,斜面を有する2次元問題では理論的に解を求めるのが容易でない.津波の屈折に着目した場合,線形理論で十分な精度を有すると考えられるが,現実には線形理論であっても,エッジ波や円錐形の島回りの解など,ごく限られた場合でしか厳密解が得られていない.
2.周期解を使用してこの種の検討を行うには定常状態に達するまで数値計算を実施しなければならず,かなりの計算時間が必要になる.また,長時間にわたって数値計算を実施するには,進行方向が一定でない散乱波を境界で自由透過させる必要があるが,このような境界条件は必ずしも確立されていない.
 ところが,最近,藤間ら3)は円錐形の島回りにおける線形長波理論の過渡波解を求めている.この解は,数値計算に使われる線形長波理論とまったく同じ支配方程式の解であり,また過渡波解であるため上記2.の問題も生じない.そのため,藤間らの解を使えば,島回りの格子間隔選定基準に関する厳密な議論が可能になる.
 ただし,藤間ら3)の過渡波解は静水深がゼロの汀線を有するモデル地形で求められているため,同じ地形条件で数値解を求めると解が不安定になる可能性がある.
そこで,藤間らの理論を若干修正し,汀線付近に鉛直壁を設置したモデルに対する理論解を求め,数値解と比較する.そして,理論解と数値解を比較し,鉛直壁に沿った島回りの津波高分布を精度よく再現するための格子間隔選定基準を決定する.

2. 理論解

(1) 周期波解
 モデル地形を図ー1に示す,島の海岸線の半径をr_0,勾配をmとする.島斜面上では,水深hはh=m(r-r_0)である.r>r_1=r_0+r_2では,水深h_1(=mr_2)の水平床とする.r=r_3=r_0+r_4に鉛直壁があり,鉛直壁における水深をh_3(=mr_4)とする.ただし,島の中心を原点とし,入射波の進行方向をx軸に取る.
 いま,津波の角振動数を\sigmaとし,次式で表わされる周期波解を考える.
(1)
線形長波理論を用いると,R_nの支配方程式として次式が得られる.
(2)
ただし,\xi,\betaは次式で表わされる.
(3)
ここで,gは重力加速度である.
 藤間・後藤4)は鉛直壁の存在しないモデルに対する解として,上式のr=r_0で発散しない基本解耳、F_{n,\beta}(\xi)を導いている.しかし,本モデルではF_{n,\beta}と独立なr=r_0で発散する基本解も考慮に入れる必要がある.
そこで,r=r_0で発散する基本解を求め(付録参照),G_{n,\beta}とする.すると,本モデルにおける島斜面上の解は次式で与えられる.
(4)
入射波の振幅を1とし,以下のように表す.
(5)
ただし,J_nはn次の第1種Bessel関数であり,波数k_1は次式で表わされる.
(6)
 このとき,水平床上の解は次式で与えられる.
(7)
ただし,H^(1)_nはn次の第1種Hankel関数である,複素定数、A_n,B_n,C_nはr=r_3でr方向流量がゼロになり,r=r_1で斜面上の解と水平床上の解による水位と流量が連続に接続するよう,以下の連立1次方程式を解くことにより得られる.
(8)
ただし,\xi_1,\xi_3は以下の通りである.
(9)

(2) 過渡波解
 過渡的な入射波の波形は,次式で表わすことができる、
(10)
ただし,\phiは各成分波の複素振幅である.
この入射波に対する島斜面上での解は次式で与えられる.数値積分は藤間ら3)と同じ手順で行えばよい.
(11)

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図ー1 モデル地形
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式(1〜11)

3. 格子間隔と数値計算の精度との関係

 検討を行ったケースを表ー1に示す.なお,表中のパラメタSは藤間ら3)が導入したパラメタである.S=1と書かれたケースでは,入射波が一谷一山のみ有する引き初動の単一正弦波で,3=2,4の場合は,入射波が2波,4波からなる引き初動の連続正弦波である.すべてのケースで振幅は1m,鉛直壁設置水深h_3は10mである.それぞれのケースに対し,格子間隔\delta xを変えて線形長波理論を用いた数値計算を5〜14通り行い,鉛直壁における水位経時変化の最大値(以後,津波高と呼ぶ)の分布を算出し,理論解と比較する.数値計算には,staggered格子を用いLeap-Frog法で差分化する一般的な津波数値計算手法を用いる.
 例として,Case18の数値計算結果と理論解の比較の一部を図ー2に示す,図から分かるように,格子間隔が非常に大きい\delta x=1800mの場合,計算値は全体的に過小評価になっている.この場合,\sqrt{gh_1}T/{\delta x}=20.4であり,水平床部分での数値誤差は無視できる1).しかし,Leap-Frog法には屈折効果を過小評価するという誤差特性があるため,屈折して島に到達すべき津波が島に到達せずに背後に伝わってしまい,結果として島に到達するエネルギー総量が過小評価になったものと考えられる.格子間隔がやや小さい\delta x=800mの場合,平均的な津波高はほぼ理論値と一致するようになるが,ばらつきが大きい.これは,津波を後ろに逸らしてしまうほどの誤差はないものの,到達場所まで正確に計算されていないものと解釈できる.また,円形の汀線(鉛直壁)を直交格子の境界で近似するために汀線で一種の散乱波が生じ,数値振動を引き起こしている,格子間隔がさらに小さく\delta x=200mになると,すべての場所で理論解と数値計算結果が一致するようになる.
これから,既往の数値計算モデルを使用しても,格子間隔を十分小さくすれば島回りの津波伝播を精度よく再現できることが確認できる.
津波数値計算の精度を評価する際,相田のパラメタ(対数を用いた幾何平均Kと標準偏差\kappa)がよく使われている,Kと\kappaはそれぞれ次式で表わされる.
(12)
(13)
ただし,R_{jt},R_{jc}はそれぞれ鉛直壁に面したj番目の格子における津波高の理論値と計算値で,N_dはR_{jt}R_{jc}を算出する格子数を表わす.
 さて,Case1〜9の比較から,入射波形のみS=1,2,4と変化させた場合,格子間隔が同じなら,ほとんどKと\kappaに変化がないことが分かった,したがって,計算誤差を議論する際にはSの影響は考慮せず,定常波理論のパラメタのみを考えればよいであろう.
 理論展開から明らかなように,周期解は\beta,r_2/r_0,r_4/r_0の3つのパラメタで記述される.そこで,数値計算:格子による島の分割数を表すr_1/\delta xと,\beta,r_2/r_0,r_4/r_0の4つのパラメタのべき乗の積で表される関数形を仮定し,Kと\kappaとの相関を調べたところ,r_4/r_0の影響は比較的小さく,以下のパラメタの組み合わせがKと\kappaの変化をよく表すことが分かった,
(14)
 上式のパラメタr_1/(\xi_1\deltax)でKと\kappaの変化をまとめた結果を図一3,4に示す.この2種類の図をもとに格子間隔選定基準を決定することが可能である.
 津波高の平均値のみを精度よく再現することが目的であれば,例えば計算誤差を10%以内に抑えたいなら,|K-1|<0.1になるよう\deltaxを決定すればよい.図一3から,この条件は次式により満たされる。
(15)
なお,このパラメタが5より大きいとKは1よりやや小さく(すなわち数値計算の津波高はやや過大評価),\delta xを小さくしていくとKは徐々に1に近づく.この傾向は,長谷川らが示した水平床1次元伝播問題におけるLeap-Frog法の誤差特性と同じである.
 津波高分布を正確に再現するためには,\kappaに基づく基準が必要である.しかし,\kappaはいわば計算誤差の標準偏差であり,\kappa<1.1であっても局所的に10%以上の誤差になるため,誤差の大きさを直感的に判断しづらい.そこで,以下の各種誤差と\kappaの関係を調べる.
・最大津波高の誤差E_1
(式)
・最大津波高に対する最大誤差E_2
(式)
・島正面における局所誤差E_3
(式)
・島背後における局所誤差E_4
(式)
・最大局所誤差E_5
(式)
ただし,.R_f,R_bはそれぞれ\theta=180°,0°における津波高である.max{Rj}は鉛直壁に沿った津波高の最大値で,本論文では最大津波高と呼ぶことにする.
 例として,図一5に\kappaと最大津波高の誤差E_1との関係を示す,図一2からも分かるように,ある地点での計算結果は,格子間隔が小さくなるにつれて過小評価になったり過大評価になったりしながら理論値に近づく.
したがって,全体としては精度が悪いにも関わらず,地点によって津波高に関する計算精度が高いこともあり得る.最大津波高に関しても同様である.図一5で,\kappaが大きくてもE_1が小さいケースがあるのはこのためである。しかし,\kappaは計算誤差の標準偏差だから,\kappaによって決まる計算誤差の事実上の上限値が存在する.図一5を見ると,図中の曲線より左側でデータがばらついた形になっており,曲線がκによって決まるE_1の上限値であると見なしてよいであろう.
 図一5と同様に,\kappaと各種誤差の上限値との関係を求めた結果を表一2に示す.表から,最大津波高の誤差を10%以内に抑えたいなら,\kappa<1.O3になるよう格子間隔を決定すればよいことが分かる.また,そのとき,任意地点における津波高の計算誤差は最大津波高の15%以内である, 図ー4を用いて\kappa<1.O3になるよう基準を決定すれば,島の遡上高分布を再現するための格子間隔選定基準として次式が得られる。
(16)
 ところで,上式のパラメタは以下のように変形できる.
(17)
実際の島では,r_2/r_0が0.5〜10程度の値を取ることが多い.このとき,(\sqrt{r_2/r_0}+\swrt{r_0/r_2})の値は2〜3,5の範囲であり,それほど大きく変化しない。したがって,r_2が含まれない簡単なパラメタ
(18)
を使用し,格子間隔選定基準(16)の簡便な近似式を作ることができる可能性がある.
 新しいパラメタ(18)と\kappaの関係を図ー6に示す.図から,\kappaが比較的大きい領域では先のパラメタに比べて相関がやや悪いが,\kappaが小さい領域では先のパラメタと同程度の相関があることが分かる.したがって,必要とする計算精度に\kappa=1.O3程度を想定するなら,より簡単な新しいパラメタを使うことに問題はないであろう,新しいパラメタを使うと,\kappa<1.03に対応した基準として次式が求められる.
(19)
この基準により,島の遡上高分布を精度よく再現するために必要な格子間隔を簡便に決定できる.
 なお,図ー6における\kappaの上限値は,ほぼ
(20)
で近似できる.上式と表ー2を使うことにより,最大津波高などに必要とされる計算精度を仮定すれば,それを満たすための格子間隔の基準が容易に決定できる.
奥尻島のように方向によって勾配が著しく異なる場合に本研究の結果をそのまま適用することには問題もあるが,例として奥尻島の平均的なパラメタとしてr_0=8km,m=0.075を使い,式(19)の基準を適用すると,北海道南西沖地震津波(T=480s)を計算する際に必要な格子間隔として,123mという基準が得られる.また,勾配として青苗海脚付近の1/120を使った場合同様に41mという基準が得られる.これは円錐形の単純なモデルを使用して得られた結果であり,詳細な地形を考慮すれば,より細かな格子を使用しなければならないこともあり得る,しかし,少なくとも,奥尻島での遡上高を再現するには,平均的に120m,青苗海脚で40mより細かい格子を採用する必要があると結論できる.

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表ー1 解析ケース
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図ー2 Case 18の津波高分布の比較
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式(12〜20)
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図ー3 格子間隔によるKの変化
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図ー4 格子間隔による\kappaの変化(1)
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図ー5 最大津波高の計算誤差と\kappaの関係
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表ー2 各種誤差の上限値と\kappaの関係
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誤差式
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図ー6 格子間隔による\kappaの変化(2)

4. パラメタ(18)の物理的意味

 前節では,次元解析的な手法により格子間隔選定基準(16)を決定し,近似式として式(19)を提案したが,ここでは式(19)中のパラメタ(18)の物理的意味を考察する.
 屈折の効果が効く場合,波向線の到達位置のずれをD,波長をLとすると,L/Dが数値計算の精度を代表するパラメタになり得るであろう,いま,波向線方程式に波速c=\sqrt{gh},h=m(r-r_0)を代入するとx軸に対する波向線の角度を\Thta,波向線に沿った座標をsとし,円錐島の斜面上での波向線の角度変化を表す次式が得られる.
(21)
すなわち,波向線の角度は\delta x間に最大で\delta x/{2(r-r_0)}変化する.佐山ら5)が行った一様勾配斜面上での津波伝播に関する検討によると,Leap-frog法による津波数値計算の結果から求めた波向線は,スネルの法則を用いて\delta x間隔で折れ線を連ねて求めた波向線とほぼ一致する.したがって,既往の津波数値計算手法では,近似的に\delta x間で波向が変化しないと見なしてよいであろう.そこで,波向線位置に関し,\delta x間に最大で\delta x^2/{4(r-r_0)}の計算誤差が生じる(図ー7参照).
したがって,波向線到達位置の誤差Dは
(式)
で特性付けられる。一方,波長は波が汀線に近づくと短くなり,汀線付近でのr方向波長L_{\tau}は
(式)
で表される.したがって,
(22)
と評価できる、津波が捕捉される領域4)の外縁r=2r_0での値を使うと,r=2r_0における\xiの値が\betaなので,上式は以下のように表される.
(23)
すなわち,パラメタ(18)は,波が捕捉される領域における,屈折に関する計算精度を代表していると言える.
 また,津波が捕捉される領域の外縁r=2r_0上での水深がmr_0なので,パラメタ(18)は,単純に捕捉領域外縁における波長の分割数と解釈することもできる.
 なお,式(23)において,r_0をr_1に,\beta(=\xi|_{r=2r_0})\xi_1(=\xi|_{r=r_1})にと,それぞれ島の斜面外縁での値に置き換えると,先に次元解析的に求めたパラメタ(14)が出てくる.このことから,新しいパラメタ(18)が,波が捕捉される領域での計算精度を記述するパラメタであるのに対し,先のパラメタ(14)は島全体での平均的な計算精度を記述するのに適したパラメタであると言えよう.新しい,簡単なパラメタ(18)を使っても,相田のパラメタ\kappaとの相関がそれほど悪くならないのは,汀線から離れた水深の大きな海域ではあまり計算誤差が生じず,捕捉が生じる領域での誤差が支配的であるためと考えられる.

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図ー7 波向線の誤差の評価
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式(21〜23)
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式(タイトルなし)

5. 結論

 藤間らが求めた円錐形の島回りの過渡波解を若干修
正し,汀線付近に鉛直壁を設置した島回りの過渡波解
を求めた。理論解との比較により,格子間隔による数値
計算の精度の変化を検討し,計算誤差が簡単なパラメ
タ(18)で表されることを示した.必要な計算精度を仮
定すれば,それを満たすための格子間隔の基準を決定
できる.島の最大津波高の誤差を10%以内に抑えるた
めの格子間隔の基準(19)を用いれば,奥尻島付近で北
海道南西沖地震津波を再現する格子間隔として,平均
的に120m,青苗海脚で40mという基準が求められる.

付録1 G_{n,\beta}の導出結果

 微分方程式(2)の解G_{n,\beta}はF_{n,\beta}と同様の手法によ
り求めることができる。\xi=0近傍での級数解を以下
に示す.ただし,a_k,b_l,c_l等は文献4)の定義に従う.
(1.1)
(1.2)
 これ以降文献4)と同じ操作を行うことにより解を
求めることができる.ただし,実際にG_{n,\beta}を計算する
際には,F_{n,\beta}に比べて級数の項数を増やすか,または
級数解を適用する区間を短く設定する必要があった.

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式(1,1〜1,2)

参考文献

1) 長谷川賢一,鈴木孝夫,稲垣和男,首藤伸夫:津波の数値実験における格子間隔と時間積分間隔に関する研究,土木学会論文集,No.381/2-7,pp.111-120,1987.
2) Goto,C.and Shuto, N. : Numerical Simulation of Tsunami Propagation and Runup, Tsunamis: Their Science and Engineering, pp.439-451,1983.
3) 藤間功司,Yuliadi,D., Briggs,M.J., 正村憲史,重村利幸,後藤智明、:過渡的な入射波形をもつ津波の島への遡上,土木学会論文集,No,586/2-42,pp.105-115,1998.
4) 藤間功司,後藤智明:円錐形の島に捕捉された長波の特性,土木学会論文集,No.497/2-28,pp.101-110,1994.
5) 佐山順二,後藤智明,首藤伸夫:屈折に関する津波数値計算の誤差,第33回海岸工学講演会論文集,pp.204-208,1986.
(1997.7.25受付)

CRITERION FOR GRID SIZE IN TSUNAMI NUMERICAL SIMULATION AROUND ISLAND USING A LEAP-FROG SCHEME Koji FUJIMA, Kenji MASAMURA, Kenjiro HAYASHI, Toshiyuki SHIGEMUR.A and Chiaki GOTO

Based on the linear long wave theory, theoretical solutions are obtained for the transientt tsunamis propagating into a conical island having a vertical wall around the shoreline. The solutions are compared with the numerical solutions obtained by the Leap-Frog finite difference method using a staggered grid system to examine the relationship between the grid size and accuracy of the numerical simulation. The comparison reveals that. the Aida’s parameter,which is a representative to evaluate the numerical error, is represented by the simple parameter of Eq.(18). The criterion for the grid size can be determined once the required numerical accuracy is set for the prediction of the maximum tsunami height, and so on.

非線形分散波理論を用いた実用的な津波計算モデル 岩瀬浩之1・見上敏文2・後藤智明3 1正会員 東海大学技術員 工学部土木工学科(〒259-1292神奈川県平塚市北金目1117) 2正会員 (株)アルファ水工コンサルタンツ(〒063-0827北灘道札幌市西区発寒9-14-516-336) 3正会員 工博 東海大学教授 工学部土木工学科(〒259-1292神奈川県平塚市北金目1117)

Abstract

 有限振輻性を考慮した分散関係および水理実験結果との比較を通し,津波計算に最適な分散項の検証を行った.さらに,領域結合や遡上計算が可能な非線形分散波理論による計算法(2段階混合差分法)を開発した.また,差分式の誤差解析から数値誤差抑舗項を加えた津波計算モデルを提案するとともに,1次元に関する伝播問題から計算精度を検証した,
Key Words : nonlinear dispersive long wave theory, dispersion relation, numerical simulation, tsunami

1. はじめに

 沿岸域で津波が増幅するメカニズムとしては,浅水,集中,共振,波形曲率の4つの効果が考えられる。しかしながら,現状の津波数値計算モデル1)〜3)は,線形長波理論や浅水理論(非線形長波理論)を計算の支配方程式としたモデルであり,浅水,集中,共振の3種類の効果が組み込まれているものの波形曲率効果が考慮できていない.
 1983年日本海中部地震津波では,15mを越える最大陸上遡上高が北秋田海岸で観測された.この現象は,波形曲率効果すなわちソリトン分裂による増幅機構を考慮しなければ説明がつかない.この様な,日本海中部地震津波の体験により,波形曲率効果を無視して解析することが津波対策を考える上で非常に危険であることが明かとなり,波形曲率効果を考慮した実用的かつ精度の高い津波数値計算モデル開発の機運が高まった.
 津波の波形曲率による増幅効果を考慮するためには,非線形分散波理論を支配方程式として用いればよい4).
しかし,実用的な津波数値計算に組み入れるためには,計算の安定性,計算領域の結合,そして陸上遡上の取扱いなど解決を有するいくつかの難点が存在する.
 本研究では,これらの難点が克服可能な計算スキームとして2段階混合差分法を提案する.すなわち,1段階目に運動方程式中の局所項,移流項,静水圧項を陽解法(Staggered Leap-frog法)で,そして2段階目で分散項を陰解法で計算する方法である.この方法を利用すると従来の手法で計算領域の結合や陸上遡上の取扱いが可能であるとともに分散項の計算に伴う計算の不安定性が回避できる.また,1段階目の計算で発生した数値誤差を2段階目の計算で抑制することにより,精度の高い計算を行うことができる。なお,本文は,分散関係と数値解析による検討を介した津波計算式の提案と計算方法および誤差抑制手法について説明したものである.

2. 有限振幅性を考慮した分散関係

(1) 支配方程式
 高階の微分を含む非線形分散波理論の数値計算には,計算上の種々の問題がある.そこで,考慮する分散項の形は,3階微分形までとする.また,津波の伝播を考える場合,波形曲率効果が問題となるのは,水平勾配が緩やかな場合が多く,分散項中の斜面勾配は無視できることが知られているため5),水平床近似を行った分散項とする.
 支配方程式は,浅水理論に高次の摂動展開6)によって導かれる以下の3ケースの分散項を加えた形を考察する.支配方程式は,
(1)
(2)
が候補となる。ここに,\etaは波高,hは静水深,Dは全水深,\bar{u},Mはそれぞれ平均断面流速,流量フラックスを表す.
 上記の3つの分散項を対象として,有限振幅性を考慮した分散関係および水理実験との比較から最良な分散項の考察を行う.

(2) 分散関係式
 支配方程式の分散項の考察にあたり,藤間ら7)によって導かれた5階微分項を含む高次非線形分散波理論に関する近似的な分散関係式を導出する,水平床近似の藤間らの方程式に,正弦波形を仮定すると,
(3)
なる分散関係式が得られる.ここで,
(4)
(5)
であり,
(式)
である.
なお,\etaは水位,Cは波速,kは波数,hは静水深,Dは全水深である.
 一方,方程式(1),(2)の分散関係は式(3)と同形で,
(6)
となり,分散項(A)〜(C)に対応する\betaは,
(7)
となる。

(3) 有限振幅を考慮した分散関係の比較
 図ー1は,式(3)を用いて波高水深比の違いによる波峰点の分散関係を比較したものである.縦軸は藤間らの式と支配方程式(1),(2)の無次元波速の差を示し,横軸は相対波数を示す.分散曲線が0軸に近いほど,理論分散に近く,0軸より上は候補とした方程式の波速が速く,下は遅いことを意味する。(A)〜(C)の3つの方程式で,(B)の分散項を含む方程式は,他の方程式に比べ比較的波速差が小さい曲線を描く.以上の考察から,最も波速の差が小さいものとして,(B)の分散項を含む方程式があげられる.

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式(1〜7)
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図ー1 波高水深比による波峰点の分散関係

3. 計算方法

(1) 2段階混合差分法
 次に,数値計算と水理実験の比較から,分散項(A)〜(C)の精度を考察する.計算法には,下記に示す2段階混合差分法を用いる.
 浅水理論を用いた津波計算では,領域結合および陸上遡上が陽的な差分式により可能となる,しかし,高階微分の分散項を含む非線形分散波理論による津波計算では,分散項を含むため陽解法を用いると安定した解を求めることが困難である.また,全領域を陰差分で解くことは可能であるが,領域の細分化に伴う計算量増加,陸上遡上での波先端の取り扱いが問題となる.
3行対角行列を効率良く計算するには1領域で計算が完結すること,遡上では中央差分を取らない陽差分式で行うことが望ましい.そのため,従来の領域結合と陸上遡上計算が適用でき,分散項も比較的安定に計算できる方法が必要となる.そこで,運動の式(2)を以下のように,2つの式に分割し,1段目を陽解法,2段目を陰解法で計算を行う2段階混合差分法を提案する, 支配方程式における運動の式(2)を,計算の中間値M^*_{1/2}によって2つに分割する.1段目の式では,領域結合2)と陸上遡上計算8),9)を考え,陽的差分式で計算を行う,すなわち,領域結合および陸上遡上に関しては,従来通り浅水理論によって計算を行い分散項は考慮しない.
〔1段目]
(8)
2段目では,計算の安定性を考慮して,分散項を陰的差分式で計算する.
[2段目]
(9)
なお,1段目と2段目を加えることにより,非線形分散波理論式となることが確認できる、ここに,|F.D.の記号は各微分項に対応する差分項を意味する.
 このように,陽解法,陰解法を使い分けることにより,1段目の陽解法で浅水理論としての計算と,領域結合・陸上遡上計算を扱い,2段目の陰解法では高階微分の分散項を安定に計算を行うことが可能となる.

(2) 実験比較と支配方程式
 水理実験では,図-2に示す水底模型を設置した水槽に,孤立波を伝播させた。観測点Aの波形データを数値計算の境界条件として与え,数値計算は,格子間隔を\delta x=0.02m,\delta t=0.005sとして計算を行った.
 図ー3は,観測点B,E,H,Kにおける計算値と実験値を比較したものである.分散項(A)では,実験値に比べ,計算値がやや速く伝播し,分散項(C)では,計算値がやや遅くなる.一方,分散項(B)では,波の先端部が実験値と比較的よく一致している.第1波の波峰点が多少過小評価となり,第2波がやや遅れる結果となるが全般的に実験値とよく一致する結果が得られる.これは,先述した分散関係の検討結果と同一の傾向である.

 以上の分散関係および実験値との比較検討より.支配方程式は分散項(B)を用いる.
(10)
(11)
の式形が適切であることがわかる.

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式(8〜11)
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図ー2 水理実験における水底勾配と観測点

4. 打ち切り誤差の考察

(1) 数値誤差の展開
 数値計算では,空間格子問隔が大きくなるにつれ,数値粘性と数値分散,いわゆる打ち切り誤差の影響により計算波高を過小評価とする傾向がある.したがって,数値計算にとって,誤差の考察は必要不可欠である10).本計算法でも,第1段階での計算による打ち切り誤差により,最終的な計算波高が過小評価となる傾向がある.
 ここでは,式(1)の差分式および1段目の式(8)からなる浅水理論計算を考察することにより,打ち切り誤差の第1次近似を差し引き,浅水理論による数値誤差を2段目の計算で抑える方法を検討する,式(1),(8)の移流項を除く差分式をテーラー展開により微分式にもどし,1次近似の打ち切り誤差項を残すと,連続の式(1)は,
(12)
運動の式(11)は,
(13)
となる.ここで,Kxは,Kx = √(gD)⊿t/⊿xで表されるクーラン数である.ここで,
(14)
とする,いま,
(15)
とおくと,線形長波理論より,第1次近似の打ち切り誤差項を含む支配方程式は,近似的に,
(16)
(17)
となる.式(17)の右辺の項は分散効果として働くため,数値分散と呼ばれている.
同様にして,差分式(8)の移流項を計算点(i+1/2,n+1/2)を中心にテーラー展開し,差分式にもどすと,M≧0のとき,
(18)
M≦0のとき,
(19)
となる.ここで,
(20)
であり,式(18),(19)の左辺の差分式は,後藤・小川1)が示すものと同様な風上差分を取る.式(18),(19)の右辺第2項は粘性作用として働くため,数値粘性(拡散)と呼ばれている.

(2) 誤差抑制項を加えた差分式
上記のように展開をした,数値誤差の第1次近似を考慮することにより,浅水理論における数値誤差(数値粘性・数値分散性)を極力抑えることが可能となる.
 2段目の差分式(9)に誤差抑制項を以下のように加える.
(21)
ここで,右辺第3項目の符号は,M≧0で負,M≦0で正となる.

(3) 実験との比較
 ここでは,誤差抑制した数値モデルと,水理実験との比較を行うことにより,数値誤差抑制項の妥当性を検証する.
 図ー4は観測点Kでの一定のクーラン数(K_x=0.45)における,空間格子間隔の違いによる計算結果と実験結果を示したものである.誤差抑制項を考慮しない差分式の計算結果(図ー4の上段)は,計算格子間隔が大きくなるにつれ,打ち切り誤差の影響により波高が低くなり,実験値との差が大きくなることが確認できる.一方,誤差抑制項を考慮した差分式による計算結果(図ー4の下段)は,計算格子間隔をある程度大きく取っても,実験値と良好な一致を示している.

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式(12〜21)
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図ー3 観測点B,E,H,Kにおける数値計算と水理実験の比較
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図ー4 K_x=0.45における打ち切り誤差の影響と抑制項の効果
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図ー5 陸上遡上を含めた1次元伝播計算例
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図ー6 陸上遡上を含めた2次元伝播計算例

5. 陸上遡上を考慮した計算例

(1) 1次元計算
 陸上遡上を考慮した1次元の非線形分散波理論による計算結果と従来の浅水理論による計算結果を図ー5に示す.計算は,水理実験と同様3/10の水底勾配に孤立波を入射条件として与えている.なお,計算格子間隔は,\delta t=0.02m,\delta t=0.001sであり,運動量の損失(底面摩擦・砕波等)は考慮していない.
 図ー5の(A)に示すように,浅水理論では計算困難であった津波によるソリトン分裂も本計算式・手法で計算を安定に行うことができる.図ー5の(C)に示す様に,浅水理論に比べ非線形分散波理論の遡上高の方が約1.5倍程度の高い計算結果となる.これは,ソリトン分裂によって波高が高くなり波峰へのエネルギーが集中し,遡上流を加速した結果と考えられる。

(2) 2次元計算例
 図ー6は,上述の1次元モデルを2次元へ拡張し,陸上遡上の計算を検証した計算結果である,計算格子間隔は,\delta x=2.5m,\delta t=0.05s,計算格子数は,沖側方向に202個,汀線方向に61個,波高2mの波を沖側より強制的に与えた例である.1次元同様,運動量の損失は考慮していない.2次元計算への遡上適応性を検証するために行った計算であるため,使用した地形は北秋田沿岸領域一部のみを使用した.図ー6の右側は最大遡上時のおける波形であり,従来の浅水理論計算と同様な遡上計算が可能であることが確かめられる.

6. おわりに

 本報では,実用性を重視した非線形および分散波効果を考慮した津波計算式と領域結合・陸上遡上の計算可能な差分計算法の提案を行った.主要な結論をまとめると下記のようになる.
(1) 分散関係および水理実験との比較を介し,実用的な津波計算に適した3階微分までの分散項を含む支配方程式を検証した.
(2) 浅水理論を陽解法,分散項を陰解法で計算する2段階混合差分法により,陸上遡上計算ができ,また安定した数値解を得ることができた.
(3) 打ち切り誤差を考察し,誤差抑制項を加えることによって精度の高い計算結果を得た.
なお,今後の課題としては,砕波,陸上遡上後の分散項の取り扱い,現地適用を目的とした2次元拡張に伴う分散効果特性の考察などがある。

謝辞

本研究を行うにあたり,東北大学首藤伸夫教授,東海大学濱野啓造教授,飯田邦彦助教授,青野利夫非常勤講師,(株)エコー柴木秀之氏から貴重な御助言を頂いた.また,水理実験において,東海大学大学院の原信彦・鈴木崇之両君の助力を得た。ここに記して謝意を表す,

参考文献

1) 後藤智明,小川由信:Leap-Frog法を用いた津波計算法, 東北大学土木工学科資料,p.52,1982.
2) 後藤智明,佐藤一央:三陸海岸を対象とした津波数値計算システムの開発,港湾技術研究報告,第32巻,第2号pp.3-44,1993,
3) 岩瀬浩之,柴木秀之,見上敏文,後藤智明:汎用津:波計算システムの開発,東海大学紀要工学部,Vol,36,No.2,pp.139-145,1996、
4) 佐藤慎司:波の分裂と砕波を考慮した津波の数値計算海岸工学講演会論文集,第42巻,pp.376-380,1995.
5) 長尾昌朋,後藤智明,首藤伸夫:非線形分散波の数値:計算,第32回海岸工学講演会論文集,pp.114-118,1985.
6) 後藤智明:アーセル数が大きい場合の非線形分散波の方程式,土木学会論文集,Vol.351,pp.193-201,1984.
7) 藤間功司,後藤智明,首藤伸夫:非線形分散式の精度の検討,土木学会論文集,Vol.396,pp,223-232,1986.
8) 岩崎敏夫,真野明:オイラー座標による二次元津波遡上の数値計算,第26回海岸工学講演会論文集,pp.70-74,1979.
9) 後藤智明,首藤伸夫:各種津波遡上計算法と波先端条件の比較,第27回海岸工学講演会論文集,pp.80-84,1980.
10) 今村文彦,後藤智明:差分法による津波数値計算の打ち切り誤差,土木学会論文集,Vol.375,pp.241-245,1986.
(1997.9.25受付)

PRACTICAL TSUNAMI NUMERICAL SIMULATION MODEL BY USE OF NON-LINEAR DISPERSIVE LONG WAVE THEORY Hiroyuki IWASE, Toshifumi MIKAMI and Chiaki GOTO

The most suitable dispersion terms for tsunami simulation were investigated through the analysis of the dispersion relation and the comparison with hydraulic experiments. A new computation algorithm, two-step mixed finite difference scheme, is also developed for the computation of run-up on land composite regions, and the model of tsunami simulation including correction terms to improve numerical results are introduced by analysis for errors of difference equations, and the calculation of accuracy confirmed by one-dimensional propagation.

陸棚で発生した津波に関する基礎的研究 藤間功司1・正村憲史2・堂薗良一3・重村利幸4・後藤智明5 1正会員 工博 防衛大学校助教授 土木工学教室(〒239-8686横須賀市走水1-10-20) 2正会員 修(工) 防衛大学校助手 土木工学教室 3学生会員 防衛大学校理工学研究科 4正会員 D,Eng. 防衛大学校教授 土木工学教室 5正会員 工博 東海大学教授 工学部土木工学科

Abstract

 線形長波理論に基づき,一様勾配斜面上に形成された波源からの津波伝播を表す理論解を求めた,陸棚で発生する津波は,波源の条件によって伝播形態が大きく異なり,特に,波源が汀線付近に存在する場合エッジ波が顕著に現れることを示した.また,波源の長軸・短軸の長さ,波源の位置,方向などのパラメータから,発生する津波の特性を予測する経験式を導いた.さらに,コリオリカの効果について考察した.
Key Words : tsunami, edge wave, trapping, tsunami source

1. はじめに

 沿岸近くで地震が発生すると,津波が陸棚に捕捉されエッジ波が発生する可能性がある,エッジ波が発生すると,防災対策上,以下のような注意が必要である.
 1.同じ様な周期の波が連続して来襲するたあ,エッジ波の周期と同じ固有周期を持つ湾では,共振現象により水位変動が大きくなる,
 2.津波の継続時間が長く,最大波が第1波と限らないため,通常の津波と比較して警戒時間を長くとる必要がある.
 3.遠距離においても水位変動の減衰が少なく,被害が広範囲におよぶ可能性がある.
 したがって,エッジ波の発生を予測することは,津波防災対策を考える上で重要なことである.しかし,今のところ,波源の規模や方向と発生するエッジ波の規模との関係は必ずしも明らかにされていない,現在,津波の予測には数値計算を用いるのが一般的である.しかし,エッジ波は反射や屈折を繰り返しながら伝播するたあ,数値計算で用いる格子間隔が大きいと高い精度でエッジ波を再現することができない可能性がある.しかも,どの程度の格子間隔を用いれば高い計算精度が得られるか分かっていない.したがって,波源の位置や方向により,励起されるエッジ波がどのように変化するかを数値計算によって検討することは必ずしも実用的とは言えない.
 一方,Carrier1)は,一様勾配斜面の直線海岸において指数関数と誤差関数を組み合わせた半無限の波源を考え,線形長波理論の初期値問題に対する解を導いている.理論解析では地形近似の上で制限があるものの,数値計算に比べ,広範囲かつ長時間にわたる津波特性を調べることが格段に容易である.したがって,Carrierの理論を拡張し,任意の初期水位分布に対する解が求められるようにできれば,波源の位置や方向と発生するエッジ波の関係についての基礎的資料を蓄積する有効な手段となり得る.
 そこで,本研究では,一様勾配斜面の直線海岸に形成された,任意初期水位分布をもつ有限波源からの津波伝播を表す理論解を求めた.求めた理論解により,波源の位置や方向,初期水位分布および海底勾配を様々に設定して理論解析を行い,そこで得られた解析データを整理することにより,波源のパラメータと発生する津波の定量的関係を表す経験式を作成した.

2. 解析方法

(1) 理論解の誘導
 海底形状は,図一1に示す一様勾配直線海岸とする.
ただし,海岸線をy軸に,x軸を沖方向に取る.基礎方程式は,以下の線形長波理論である.
(1)
(2)
(3)
ここでu,vはz,y方向の断面平均流速,hは水深,\etaは平均水面からの水位変動,tは時間,gは重力加速度,fはコリオリ因子を表す.式(1),(2)を利用して式(3)からu,vを消去すると次式を得る.
(4)
 いま,次式で表される2次元波動を考える.
(5)
ただし,\sigmaは角周波数,kはy方向の波数であり,k≠0とする.\zeta(x)の中には屈折によるx方向の振動成分が含まれている.なお,k=0の場合は1次元波動を表しており,ベッセル関数で表される解が得られる.
水深h=ax(aは勾配)とおけるから,式(4),(5)からζの支配方程式として次式を得る.
(6)
ただし,
(7)
である.ここで,
(8)
(9)
により変数変換を行うと,次式で表されるFに関する支配方程式を得る.
(10)
これはラゲールの微分方程式であり,左辺第3項の係数が非負整数のとき,すなわち,
(11)
のときのみ,z→∞で発散しない,物理的に意味のある解を持つ.このとき,基本解は次式で与えられる.
(12)
ただし,L_nはn次のラゲール関数を表す.以上はエッジ波の定常解を誘導する過程と同じである^2).
本研究では,以上のエッジ波に関する定常解をもとに,任意初期水位分布からの津波伝播を表す理論解を求める.まず,コリオリカを考慮しないf=0の場合の解を求ある.f=0のとき,式(11)は,
(13)
により満たされる。したがって,波数kをもつ波動\eta_kは以下のように表される.
(14)
さらに,\eta_kの複素振幅を\phi(k)とすると,一般解は以下のように表すことができる.
(15)
したがって,結局,一般解は次式のように書ける.
(16)
ただし,係数A_n,B_nは,式(14)のA」_n,B」_nに\phiを乗じたもので,kの関数である.
係数A_n,B_nは,以下の初期条件から決定する.
(17)
(18)
まず,式(16),(18)から,
(19)
である.すなわち,1次元水平床における初期値問題と同様,正方向・負方向へ伝播する成分の振幅は等しくなる.さらに,式(16),(17)から,次式が得られる.
(20)
さて,初期水位分布\nu_0(x,y)をy方向にフーリエ変換すると,
(21)
なるフーリエ係数c_k(x)が算出できる.式(20)と式(21)を比較すると,
(22)
であることが分かる.ここで,
(23)
なる関数を考えると,式(22)から次式が導かれる.
(24)
すなわち,A_nは関数b_k(\xi)のラゲール関数展開の展開係数と見なすことができる.したがって,A_nは次式から求められる.
(25)
上式の積分を数値的に求めることにより,任意の初期水位分布から.A_nが計算でき,支配方程式と初期条件を満足する解を求めることができる.コリオリカを考慮した解については後述する.
 なお,Greenの法則によれば,一様勾配斜面上での長波の浅水係数は(h/h_0)^{-1/4}=(x/x_0)^{-1/4}である(添字0はある基準点での値を示す).すなわち,波の入射地点x_0が同一なら,浅水係数は海底勾配と無関係に決まる.屈折係数に関しても同様である(式(34)参照)。
本理論展開においても,\eta_0(x,y)が同じなら,複素振幅A_nは海底勾配\alphaと無関係に決まる.すなわち,一様勾配斜面を仮定した本モデルでは,\eta_0(x,y)が同じなら,海底勾配は津波高に影響を与えない.ただし,角周波数\alpha_nが\sqrt{\alpha}に比例するため,津波の伝播速度は海底勾配の影響を受け,\sqrt{\alpha}に比例することになる.

(2) 理論解の計算方法
 実際の計算においては,有限フーリエ変換を使用し,式(16)を次式で表す.
(26)
ただし,
(27)
(28)
(29)
(30)
である.Kは初期水位の汀線方向のデータ数,\delta{y}は初期水位データの汀線方向サンプリング間隔を表す.また,式(27)は数値積分により計算する.
 ところで,\eta_0が実数関数なので,c_{-m}=\bar{c_m}であり,これにより.A_{n,-m}=\bar{A_{nm}}となる。さらに,n,mが十分大きければ|A_{nm}|は減衰するから,実用的には,n,mをそれぞれ十分大きな数N,Mまで考慮すればよい.また,有限波源を考え,かつy方向の領域を十分大きく取れば,本理論解で考慮していないk=0の成分c_0(x)が無視し得る大きさになる.すなわち,実用的には次式を用いて計算を実施できる.
(31)
 近似式(31)により理論式(16)を精度良く再現するためには,K,N,M,\delta{y}及び式(27)の数値積分間隔\delta{x}の設定を適切に行う必要がある.本研究では,以下の条件を満たすように計算を実施した.
(式)
以上の条件を用いれば,本研究における波源の形状,規模においては,誤差を概ね最高水位の5%以内に抑えることができる.

(3)理論解析例
1992年4月,アメリカ西海岸のMendocino岬付近で起こった地震により津波が発生した.図一2上段は,Melndocino岬地震の震源の位置とOppenheimer3)らによる津波の波源モデルである.Mendocino岬津波の水位経時変化に関し,本理論解による解析結果と観測データを比較し,図一2下段に示す,図中,理論値と観測値は50cmずらして描いている.また,理論計算において,初期水位分布は図一2上段のOppenheimerらのモデルを用いている.海底勾配は1/100とした.
 図一2から,波源に近いNorth Spitでは津波到着が早く入射波数が少ないが,波源から遠いPort OrfordやPoint Reyesでは津波到着が遅く入射波数が多いことなどがよく再現されていることが分かる.水位変化の大きさに関しても,Crescent City 以外では理論解と観測データは概ね一致している.なお,Mendocino岬津波の数値計算はGonzalez4)らが実施しているが,この計算でもCrescent Cityでの大きな水位変化を再現できていない.Gonzalezらは,エッジ波がCrescent City付近で局所的に共振し,大きな水位変化が発生したと推測している.理論解においては局所的な地形変化を考慮していないので,それが原因で起こる現象を再現することはできない.しかし,全般的に本理論解は広範囲・長時間にわたる観測データの傾向をよく表しており,本理論解により沿岸部で発生した津波の伝播特性を考察するのは有効であると言える.

(4)初期水位分布の設定
以下の理論解析では,津波の初期水位分布を次式により与えた.
(32)
ただし,
(式)
である(図一3参照).なお,波源中心とは初期水位\eta_0が\eta_{0max}となる地点を指す.
表一1は本研究での初期水位の各パラメータ及び海底勾配の範囲を示したもので,これまで日本近海で起こった津波を伴う地震のデータ^5)を参考にして決定した.
なお,本研究では解析対象を|y|≦700kmの範囲に限定した.しかし,この長さはほぼ千葉県と青森県の間の距離であり,日本の沿岸部で発生した津波の性質を考察するには十分な長さであろう.

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図ー1 海底形状
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式(1〜32)
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(式)
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表ー1 波減パラメータ等の範囲
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図ー3 初期水位分布

3. 津波の伝播形態

 本節では,波源の違いによる津波の伝播形態の違いを説明するため,初期水位分布が同じで波源の位置dおよび方向θが異なる3ケースの解析結果を示す.各ケースのd及びθの値を表一2に示す.各ケースともa=30km,b=60km,a_{50}/α=b_{50}/b=0.5である.
海底勾配aは1/100である.
(1) 水位経時変化及び水位空間分布
 図一4は各ケースの汀線上での水位経時変化の一例である.図は上段からCase1,2,3,左からy=0,200,600kmにおける波形を表している.図から,波源の位置及び方向の変化により津波伝播状況が大きく異なることが分かる.
 すなわち,Case1では,水位経時変化の中で規則的で滑らかな波が数波続いている.Case2では,険しく不規則な波列が観測される.また,波源からかなり離れたy=600km地点で初期最高水位と同程度の水位が観測されている.Case3はy=0km地点で高い水位が観測されるが,他の観測地点では高い水位は記録されず,また来襲する波数が少ない.
 図一5は,各ケースの水位空間分布の経時変化である.
Case1,2では,コンターが汀線に沿うようにy方向に移動している.津波が汀線付近に捕捉されたためである.一方,Case3では,捕捉現象は見られない.したがって,波源の位置が汀線に近いとエッジ波が発生しやすいと推測できる.ただし,Case1においては,津波が汀線に貼り付くように捕捉されているが,Case2では,それよりも沖合において津波が捕捉されている.
このような捕捉状況の違いがあり,Case1では規則的な波列が観測されるが,Case2では観測されないものと考えられる.

(2) 津波の伝播形態とA_nmの卓越モードの関係
 ここでは,津波の伝播形態と本理論解の各モードの振幅を表すA_nmとの関係を調べる.
 図一6は,各ケースごとの複素振幅A_nmの絶対値の分布である.ただし,▲印は|A_nm|のピークを表し,各コンターは|A_nm|の最大値の1/5〜4/5の値を表す.規則的なエッジ波が顕著に見られるCase1では,n=0に|A_nm|のピークが存在する.不規則で険しい波列が観測されるCase2では,n=1に|A_nm|のピークが存在する.エッジ波が現れないCase3ではn=3に|A_nm|のピークがある.したがって,津波の伝播形態の違いには.A_nmの卓越モードが影響していると考えられる.
 そこで,各モードの波がどのような伝播をしているか波向線を使って説明する。各モードの波(定常エッジ波)の汀線方向の波速C_nは,次式で表される.
(33)
ただし,Lは汀線方向に測った波長を表し,L=2π/|k|である.すなわち,同じ波長であれば,nが大きいほど速い速度で汀線方向に伝播することになる.
 波向線は,図一7のように,屈折と反射を繰り返し,全体として汀線方向に進行する.さて,y=0,x=x_0でxの負方向とのなす角が\theta_oの波向線が到達する汀線位置は,波向線方程式またはSnellの法則から,次式で与えられる6).
(34)
また,これに要する時間は次式で与えられる.
(35)
したがって,波向線が最も沖側に達したときの汀線からの距離x_Rと汀線に沿った反射の間隔L_Rの関係は,式(34)にx_0=x_R,\theta_0=\pi/2を代入して,2倍することにより,
(36)
と求められる.波向線がL_R移動するのに要する時間に関しても,同様に
(37)
と求められる.したがって,波向線の汀線方向への見かけの伝播速度C_Rは,次式で与えられる.
(38)
したがって,
(39)
であれば,C_RはC_nと一致する.また,そのとき,L_R=2(2n+1)Lである.
 モードn=0の場合,x_R=2L/\pi(≡x_{R0})の波向線を考えるとC_R=C_0となる.すなわち,x_oを通る波向線が0次モードの波を代表する波向線と言えるであろう.この波向線は,波長の長さの約0.6倍の位置が最沖部になる.すなわち,n=0のモードは汀線で細かい反射を繰り返し,汀線付近を伝播する成分である.
このため,A_nmの卓越モードがn=0の場合,波が汀線付近に捕捉され,規則的なエッジ波が卓越するような現象になるのであろう.
 n=1の場合,波向線は波長の長さの約1.9倍の位置を最沖部として伝播する.したがって,.A_nmの卓越モードがn=1の場合,波動運動の影響は沖側に及ぶことになる.
 一方,n>2の場合,波向線は汀線からはるかに離れてしまう.したがって,n≧2のモードが卓越し,n=0,1のモードにおける|A_nm|の値があまり大きくないような場合,エッジ波は卓越せず,直接入射波主体の伝播形態となると考えられる.
 ところで,0次モードが卓越した場合に生成される規則的なエッジ波の周期瑠は,図一3のL_eにより評価することができる.ただし,L_eは,波源を初期最高水位の1/10の高さで切断した際に得られる図形と波源中心を通りy軸に平行な直線の2交点間の距離である.図一8は,L_eを波長とする0次モードのエッジ波の理論周期(次式)と水位経時変化から得られる規則的なエッジ波の周期を比較したものである.
(40)
ただし,解析結果はd=0の場合の結果のみプロットしている.図から規則的なエッジ波の周期が式(40)によって概ね近似できることが分かる.このことからも,規則的なエッジ波の実体が0次モードのエッジ波であることが確認できる.

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表ー2 各ケース毎の波源の諸元
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図ー4 水位経時変化(Case1~3)
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図ー5 水位空間分布の経時変化(Case1~3)
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図ー6 |A_nm|の分布
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図ー7 津波の汀線方向への伝播
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式(33〜40)

4. 沿岸域で発生した津波の基本的特性

 ここでは,前節のCase1〜3の波源だけではなく,表一1に示される諸元の範囲で理論解析を実施し,沿岸域で発生した津波の特性について定量的に整理した.

(1)伝播形態の区分
 前節のように,津波は,波源の条件によって伝播形態が異なり,エッジ波の発生状況によって,以下の3つのタイプに区分できる.
1.タイプ1:0次モードが卓越し,規則的なエッジ波の発生が見られるもので,前節のCase1に代表される.
同じ様な周期の波が連続入射するため,湾水振動が励起される可能性があるタイプである.
2.タイプ2:1次モードが卓越し,険しく不規則な波群が形成される場合で,Case2に代表される.
3.タイプ3:2次以上のモードが卓越した場合で,直接入射波が主体の津波である.Case3がこれに当たる.
 図一9は,理論解析結果から得られた水位経時変化から以下の基準によって上記のどのタイプであるかを判断し,波源の位置によって津波の伝播形態を区分した結果である.
1.タイプ1:\eta/\eta_{0max}が0.1を越える規則的な波動が2波以上存在する場合.
2.タイプ2:タイプ1に該当する規則的なエッジ波は現れないが,不規則なエッジ波が卓越し,汀線上(0≦y≦700km)のどこかで,第1波よりも大きな第2波もしくは第3波が観測される場合.
3.タイプ3:汀線上(0≦y≦700km)のすべての地域で第1波が最大となる場合.
 ただし,図中,○,▲,×がそれぞれタイプ1,2,3を表す.ただし,r_xは波源を初期最高水位の1/10の高さで切断した際に得られる図形の最沖(岸)部と直線x=dの距離を表す(図一3).図一9から,波源が汀線付近に存在する場合,規則的なエッジ波が発生するタイプ1になると言える.また,波源が汀線から離れるにしたがって,発生する津波の形態がタイプ2,タイプ3と変わっていく.図中の実線がタイプ1の発生限界であり,次式で与えられる.
(41)
また,破線はタイプ2の発生限界であり,次式で与えられる.
(42)

(2)沿岸域で最大の津波高が観測される地点y_{MX} 本論文では,汀線における最高水位を津波高と呼ぶことにする.汀線に沿って津波高分布が最大値をとる地点(以後,y_{MX})が,波源の位置dによりどのように変化するか調べた結果が図一10である.\theta=0の場合y_{MX}=0となるが,\theta≠0の場合y_{MX}はdと共に増加している。また,\thetaによってその増加率が明確に異なる.図一10中の実線は次式をプロットしたものである.
(43)
上式は,式(34)において,x_0=d,\theta_0=\thetaとしたものであり,波源内の初期最高水位地点から波源の短軸方向に放射した波向線が屈折変化を経て到達する地点を表す.dが大きいとき,すなわち,タイプ2,タイプ3の場合,式(43)がy_{MX}を良好に近似している.
 しかし,タイプ1,特にd=0をはじめd≦60kmの場合,式(43)では過小評価となっているケースが多く見られる.タイプ1のy_{MX}のばらつきは,概ね以下の範囲内である.
(44)

(3) 沿岸域での最大津波高\eta_{MX}
 汀線に沿った津波高の最大値(y_{MX}での津波高で,以後\eta_{MX}とする)は,図一11のように波源の位置d/a,波源の方向\thetaおよび波源の長軸及び短軸の長さの比b/aにより変化する.
 すなわち,津波のエネルギーは主として波源の短軸方向に放射されるが,短軸方向に放射された津波は,d/aが大きいと浅水変形の効果により波高が増大し,\thetaが大きいと方向分散により波高が減少する.また,b/aが大きいと津波の短軸方向へのエネルギー集中度が大きくなるため\eta_{MX}はb/aの増加に伴って大きくなる.また,一般に,a_{50},b_{50}が大きくなると津波高も大きくなるが,その影響の度合いはタイプによって異なる,各パラメータから\eta_{MX}を評価する経験式を求めた結果以下のような式が得られた.
タイプ1(d=0):
(45a)
タイプ1(d≠0):
(45b)
タイプ2,3:
(45c)
 図一12は式(45)の評価式と\eta_{MX}の解析値の比較である.図から,評価式(45)が\eta_{MX}の解析値と概ね一致していると言える.
 式(45)に実際の数値を代入すると,通常,最大津波高\eta_{MX}はタイプ1が最も小さく,タイプ3が最も大きくなる.

(4) 津波高\eta_{max}の分布
 図ー13は,タイプ2及びタイプ3における津波高\eta_{max}の汀線上での分布を示したものである.ただし,y_Gは式(43)で与えられる.図一13中の+印は,第1波が最大波であるタイプ3を表す.それ以外の記号はタイブ2を表す.
 図一13から,タイプ3では,観測地点がy_{MX}から離れるにつれ\eta_{MX}が指数関数的に減衰している.平均的にはly-y_G|/d=1付近で\eta_{max}/\eta_{MX}=0.5程度,ly-y_G|/d=2付近で\eta_{max}/\eta_{MX}=0.2以下になる.
すなわち,タイプ3では,\eta_{MX}は他のタイプより大きくなる傾向があるものの,エネルギーはy_{MX}付近の狭い地域に集中し,y_{MX}から離れると津波高が急激に減衰すると言える.タイプ3における各観測地点毎の津波高の上限値を結んだ包絡線的な津波高分布評価式は次式で与えられる.
(46)
 一方,タイプ2では,y_Gから離れるにしたがい減衰傾向にあった\eta_{max}が途中から増加に転じている.これは,y_Gから離れた地域で不規則なエッジ波が成長し,第2波以後の波が最大波になるためである.これにより,津波高分布に複数の山・谷が形成され,y_{MX}からかなり離れた地域でも,高い津波高が観測される.すなわち,波源に近い場所で津波高が小さいのに,波源から離れた場所で大きな津波高が発生する可能性があることになり,警戒が必要である.タイプ2における\eta_{max}の評価式として次式が得られる.
(47)
 図一13中の実線が式(47)をプロットしたものである.
図から分かるように,式(47)では,詳細な\eta_{max}の分布を考慮せず包絡線的に式を決定している.
 なお,式(47)は,d=0を除くタイプ1においても概ね適用できる.すなわち,タイプ1では\eta_{MX}はそれほど大きくないが,y_{MX}から離れても津波高はそれほど減衰しないと言える.ただし,タイプ1でd=0の場合には,\eta_{max}の分布の評価式は以下のようになる.
(48)

(5) 各観測地点での第1波到達時刻t_{1\delta t}
 図一14は,Case1〜3での津波の第1波到達時刻t_{1\delta t}の汀線上での分布である.ただし,海底勾配\alphaは0.01,0.015,0.02の3通りである.上段は波源から比較的遠い地点のもの(|y-r_y|≧100km)で,下段は比較的波源に近い地点のものである.ただし,r_yは,波源を初期最高水位の1/10の高さで切断した際に得られる図形の汀線方向の長さの1/2である.第1波到達時刻t_{1\delta t}は,式(35)を利用して以下の手順で精度良く評価できる.1.波源の0.2mコンター上に多数の点波源を設定する,2.各点波源から各観測点に到達する波向線の初期入射角\theta_0を,観測点をy,入射開始地点の座標を(p_x,p_y)として,
(49)
を満足するように逆算する,3.各点波源毎に,式(35)により到達時刻を求める,4.各点波源に対応する到達時刻のうち最小のものを,波源全体を対象とした各観測点への予想される第1波到達時刻とする.
 図一14の実線が以上の方法により求めた第1波到達時刻を表しており,良好な精度でt_{1\delta t}を評価していると言える.このことは,複雑な地形においても,水深データが得られれば,同様の手順で津波の第1波到達時刻の算定が可能であることを示している.ただし,その場合,式(35)の代わりに波向線方程式を差分化した数値解法を用いる.
 観測点が|y-r_y|≧100kmの地域においては,上記1.のようにコンター上に多数の点波源を設定することなく,座標(d+r_x,r_y)に点波源を与え,2.3.のみにより,t_{1\delta t}を概ね評価できる.さらに,その結果は次式により近似することが可能である.
(50)
図一14の破線が近似式(50)を表しており,波源から離れた場所ではこの式により第1波到達時刻を近似できることが分かる.

(6) 各観測地点での最高水位出現時刻t_{emx}図一15は,横軸に第1波到達時刻,縦軸に最高水位出現時刻t_{emx}をとってプロットしたものである.タイプ3では第1波が最大波となるため,最高水位出現時刻と第1波到達時刻は,ほぼ一致する(厳密には波の立ち上がりと波頂の通過時刻の差だけ異なる).また,タイプ2では,直接波もしくはその後のエッジ波が最大波となり,第1波出現時刻の1〜2,5倍程度の時刻に最大波が出現する.タイプ1では,最大波は第1波出現時刻の1〜4倍程度の時刻に出現する.タイプ1,2では最高水位出現時間が遅く,長時間の警戒が必要であることが分かる.特にタイプ1では警戒時間を長くとる必要がある.

(7) コリオリカの効果
 コリオリカは,大規模な波動現象に対し大きな影響を与えるが,ここで,本研究で解析した規模におけるコリオリカの効果について述べる.
 コリオリカを考慮した場合,分散関係式(11)を以下の3通りの\sigmaが満たす.
(51)
(52)
(53)
ただし,Qと\betaは
(54)
(55)
を表す.f=0とすると,\sigma_1=\sigma_n,\sigma_2=\sigma_n,\sigma_3=0となる.本研究では,北緯30〜45度を解析対象とし,f=1×10^{-4}s^{-1}とする,また,波源の規模(10〜300km),海底勾配(10^{-2}〜2×10^{-2})を考慮すると,\sqrt{g\alphak}=1.4×10^{-3}s^{-1}~1.1×10^{-2}s^{-1}である.そこでg\alphak\{ll}f^2として式(51)〜式(53)を展開し,コリオリ力の効果を1次オーダーまで取り入れると,
(56)
(57)
(58)
を得る,ただし,
(59)
である.ここで,\sigma_1,\sigma_2,\sigma_3を改めて\sigma_{n1},\sigma_{n2},\sigma_{n3}
と書くと,\etaは以下のように表すことができる.
(60)
係数.A^{」」}_n,B^{」」}_n,C^{」」}_nは以下の条件から決定される.
(61)
なお,これはt=0において\eta,\partial{\eta}/\partial{t},\partial^2{\eta}/\partial{t}^2がコリオリ力を無視した場合と一致することを表している.式(61)から1次オーダーの精度で解を求めると,以下の結果が得られる.
(62)
(63)
(64)
ただし,
(65)
を表す.したがって,最終的に,コリオリ力を1次オーダーまで考慮した解として次式を得る.
(66)
 式(66)から,ニリオリカを考慮することで各成分の角周波数及び振幅が補正されることが分かる.コリオリカにより正の方向に進む波は周期が短くなり,振幅が小さくなる.逆に負の方向に進む波は周期が長くなり,振幅が大きくなる.なお,これらの各成分毎の補正は大きくても1%程度である.
 波源をx軸に対称になるよう設定した場合,コリオリカを考慮しなければ,津波はyの正負の方向に全く同じ様に伝播する.しかしながら,コリオリ力を考慮した場合,正方向と負方向で違いが現れる.
 図一16は,コリオリカを考慮した場合におけるyの正方向と負方向の伝播の違いを比較した結果である.なお,ここでは,タイプ1の波源(Case1)と,タイプ2の波源(Case2)を使用した解析結果をプロットしている.
 図から,正方向と負方向の\eta_{max}を比較すると,約10%程度異なる場合があることが分かる.しかし,分布形状には大きな違いが無く,防災対策に影響を与えるような違いとは言えない.したがって,波源から数100km程度の範囲においては基本的にコリオリ力の効果を無視しても重大な問題とはならないであろう.

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図ー8 規則的なエッジ波の周期の解析値と評価式の比較
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図ー9 津波の伝播形態の分類
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図ー10 波源の位置とy_{MX}の関係
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式(41〜66)
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図ー11 d/a,\theta,b/aによる\eta_{MX}の変化(a_{50}/a=b_{50}/b=0.5)
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図ー12 \eta_{MX}の解析値と評価式の比較
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図ー13 タイプ2,タイプ3における\eta_{max}の分布
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図ー14 第1波到達時刻の分布(Case1~3)
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図ー15 最高水位出現時刻と第1波到達時刻の関係
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図ー16 コリオリ力の効果

5.結論

 線形長波理論により,一様勾配直線海岸に形成された任意形状波源から生起される津波の理論解を求めた.
 エッジ波に注目すると,伝播形態は,1.タイプ1:0次モードが卓越し,規則的なエッジ波が発生する場合,2.タイプ2:1次モードが卓越し,不規則なエッジ波が発生する場合,3.タイプ3:高次モードが卓越し,直接入射波が主体となる場合,に分類できる.またその発生区分を求め,波源が汀線付近にあるとタイプ1になり,波源が汀線から離れるにしたがってタイプ2,タイプ3と変わっていくことを示した.
 また,波源のパラメータと発生する津波の特性との定量的関係を表す経験式を求めた.その結果,以下のことが分かった.
 タイプ1では一般に他のタイプに比べ最大津波高が小さいが,波源から離れても津波高はそれほど減衰しない.また津波継続時間が長く,警戒時間を長くとる必要がある.特に,同じ様な周期の波が連続入射するため,共振により局所的に大きな津波高が発生する可能性がある.タイプ2では同じ様な周期の波が連続入射するわけでないが,津波継続時間が長く,長時間の警戒が必要である.また津波高分布に複数の山・谷ができ,波源から遠く離れた場所でもかなり大きな津波高が発生する可能性があるため,注意が必要である.タイプ3の場合,津波高は狭い地域で非常に大きくなり,その地域から離れると津波高は急激に減衰する.またエッジ波は発生せず入射波数が少ない.
 最後に,コリオリ力の効果について検証した.波源から数百kmの範囲内では,コリオリカの影響は最大10%程度であり,それほど重要ではないことが分かった.

参考文献

1) Crrier, G.F. :On-self Tsunami Generation and Coastal Propagation, Tsunamis:Progress in Prediction, Disaster Prevention and Warning, pp.1-20,1995.
2) 富永政英:海洋波動ー基礎理論と観測成果ー,共立出版,591p, 1976.
3) Oppenheimer, D., Beroza, G., Carver, G., Dengler, L., Eaton, L., Gee, L., Gonzalez, F., Jayko, A., Li, W.H., Lisowski, M., Magee, M., Marshall, G., Murray, M., McPherson, R., Romanowicz, B., Stake, K.,
Simpson, R., Somerville, P., Stein, R. and Valentine, April 1992 :Subduction at the Triple Junction, Sience 261, pp.433-438, 1993.
4) Gonzalez F.I., Satake, K., Boss, E.F. and Mofjeld, H.O. :Edge Wave and Non-trapped Modes of the 25 April 1992 Cape Mendocino Tsunami, Pure and Applied Geophysics, Vol.144,No.3/4, pp.366-370, 1995
5) 見上敏文,後藤智明:日本周辺における津波初期波形の統計的性質,海岸工学論文集,Vol.42, pp.366-370, 1995.
6) 佐竹順二,後藤智明,首藤伸夫:屈折に関する津波数値計算の誤差,海岸工学論文集,Vol.33, pp.389-402, 1986.
(1998.7.2受付)

FUNDAMENTAL STUDY ON TSUNAMIS GENERATED ON A SHELF Koji FUJIMA, Kenji MASAMURA, Ryoichi DOZONO, Toshiyuki SHIGEMURA and Chiaki GOTO

Based on the linear long wave theory, theoretical solution is obtained for the tsunami which propagates from a tsunmi source generated on a straight beach with an uniform slope, The solution indicates that the behaviors of tsunami generated on a shelf is governed by the conditions of tsunami source and that edge wave is generated considerably in the case when the tsunami source locates near a coastline. The empirical formulas are derived which evaluate the characteristics of tsunami by those of tsunami source such as the lengths of long-axis and short-axis, the position and derection of tsunami source, and so on.
Further, effect of the Colioris is also discussed.

底面境界層の構造を考慮した長波理論解と海底摩擦による波高減衰に関する考察 正村憲史1・藤間功司2・後藤智明3・飯田邦彦4・重村利幸5 1正会員 修(工) 防衛大学校助手 建設環境工学科(〒239-8686横須賀市走水1-10-20) 2正会員 工博 防衛大学校助教授 建設環境工学科 3正会員 工博 東海大学教授 工学部土木工学科 4正会員 工修 東海大学助教授 工学部土木工学科 5正会員 Dr.Eng. 防衛大学校教授 建設環境工学科

Abstract

 海底から水面までせん断力が作用していると仮定し,地形や海底摩擦による波高変化を考慮した線形長波理論に関する層流解および乱流解を求めた.そして,層流解の波高減衰率などを層流境界層理論の結果と比較し,水深が浅く周期が長い場合には境界層近似が適用できないことを示した.また,乱流解を用いて反射率を評価したところ,斜面反射率がイリバーレン数だけでなく斜面上の波の数や粗度高さによって変化することが分かった.さらに,長波の数値計算で広く用いられているマニングの式による底面せん断力が本理論解の結果と平均的に等しくなるための粗度係数nを評価したところ,nはほぼ粗度高さのみによって決まることを示した.
Key Words : long wave, bottom friction, wave boundary layer, Manning’s law, reflection coefficient

1. はじめに

 浅海域の波浪変形や底質移動において,海底摩擦は非常に重要な役割を果たす.そのため,波動運動に伴う海底摩擦に関しては,これまでにも多くの研究が行われてきた.例えば,土屋・井上1),岩垣ら2),Kajiura3),野田4)は,境界層方程式に基づき,水平床上の波による海底摩擦について調べている.これらの研究では,ポテンシャル層と境界層の運動を分離し,ポテンシャル理論から求められる流速を境界層外縁流速として境界層方程式を解く.そして,境界層内のエネルギー散逸が波エネルギーの減衰に等しいと見なして波高減衰率を求める.すなわち,波動境界層が水深に比べて薄く,短時間・短区間におけるエネルギー損失は小さいが,長い距離を伝播するとエネルギー減衰が無視できなくなるという考えである,この仮定は,水深が比較的深く周期が短い波動に関しては妥当であり,得られた結果は良好な近似になり得る.しかし,水深が浅く周期が長くなり,境界層が水面付近まで発達する場合への適用性には問題がある.
 また,Kajiura5)は長周期波を対象に,静水面まで発達した水平床上の振動流境界層(代表流速が場所によって変化しない)を考え,静水面でせん断力がゼロになるという境界条件のもとで解を導いた.最近,田中ら6)も同様の考え方のもとで解を導いている.田中らの摩擦係数は,ある程度水深が深く周期が短いと水深に依らず周期によって決まり,境界層近似理論に近い結果を与える.また,水深が浅く周期が長いと摩擦係数が周期に依らず水深によって決まる,定常流に類似した性質を示す。すなわち,田中らの解は,境界層近似が適用できる通常の波動境界層から,定常流に近い準定常な波動境界層まで含む広い範囲に適用可能な有用な解であると解釈できる.しかし,境界層が水面まで達する場合,境:界層近似理論のような方法で波高減衰率を求めることが理論的に不合理であるため,海底摩擦がどの程度の波高減衰をもたらすかを考察することは必ずしも容易でない.
 このように多くの研究が行われているが,そのほとんどは水平床上の波を対象にしており,斜面のように,波高が変化する場合の海底摩擦について調べた研究は少ない.また,津波や高潮など長周期波に対しては,海底摩擦が特に重要であるにも関らず,海底摩擦と波高減衰の関係が十分に理解されているとは言えない.
 したがって,境界層が水面まで達していると仮定し,しかも水深変化や海底摩擦による波高変化を考慮し,それに見合う代表流速の変化を取り入れた理論解が得られれば,波高の変化する場での摩擦係数の設定方法や海底摩擦による波高減衰効果を考察する上で有用である.
 ここでは,長周期波を対象として,せん断力項を加えた線形長波理論を考える.そして,波の進行に伴い代表流速が変化することを考慮した理論展開を行い,水面でせん断力がゼロになるという境界条件のもとで解を導く,その結果,任意地形に対して相似形の解が存在し,田中らと同じ抵抗則が成立することが示される.
得られた解から流速分布,せん断力分布,海底摩擦係数,平均流速と海底摩擦の位相差,波高減衰率などが直接評価できる.
 次に,反射率を評価し,海底摩擦による反射率の変化について検討する.また,実用的な抵抗則としてマニング則を用いた場合に,底面せん断力の平均値が本理論の乱流解と等しくなるための粗度係数nを評価する.
 なお,本理論では線形の方程式を使っているため,非線形性の強い場合には,正確な解析ができない.しかし,本理論解を使用した考察により,これまで経験に頼ってきた浅海域での摩擦係数の設定などに,物理的根拠のある基準が得られると期待できる.

2. 理論解

(1) 支配方程式と変数分離
 非圧縮流体の二次元波動運動を考える.波高水深比と相対水深は小さいが,(渦)粘性項は無視できないと仮定すると,支配方程式は以下のように書ける.
(1)
(2)
ただし,静水面上にx軸,鉛直上向きにz軸をとっている.u(x,y,z)はx方向流速,h(x)は水深,\eta(x,t)は水位変動,gは重力加速度,\nu_e(x,z)は動粘性係数あるいは渦動粘性係数である.また,Z_0(x)は海底面上で流速がゼロになる高さを表し,層流ならゼロとする、式(1),(2)から\etaを消去すると次式を得る.
(3)
これが解くべき式で,境界条件は以下の通りである.
(4)
(5)
ここで,uとして以下の形の解を想定する.
(6)
ただし,\omegaは角周波数(=2\pi/T,T=周期)である.上式を式(3)に代入すると,以下のように変形できる.
(7)
右辺はxだけの関数だから,これを—A(x)とおく.

(2) Gの解
a) 層流の場合
 層流の場合,\nu_e=\nu(動粘性係数),Z_0=0とおく.このとき,Gの支配方程式は式(7)左辺から以下のように書ける.
(8)
上式の解は,境界条件(4),(5)のもとで
(9)
と求められる.ここで,p,p_hは次式で表される.
(10)

b)乱流の場合
 乱流の場合,Kajiura3),田中ら6)と同様,
(11)
とおく.ただし,\kappa=0.4である.u_*は摩擦速度,\tau_bは底面せん断力であり,記号^は最大値(絶対値)を意味する.\hat{u_*}はxの関数である.
 式(7)から,Gの支配方程式は以下のように書ける.
(12)
境界条件(4),(5)を満たす上式の解は
(13)
である.ただし,J_0,J_1,N_0,N_1はべッセル関数,q,q_h,q_0は以下の通りである.
(14)

(3) F_1の方程式と抵抗則
a)層流の場合
 次式によりF_2(x)を定義する.
(15)
すなわち,.F_2(x)e^{-i\omega t}が断面平均流速\bar{u}を表す.
 層流に対するG(x,z)は式(9)で与えられるから,
(16)
である.したがって,層流に対するF_1の支配方程式は,式(7)右辺から,以下のように表すことができる.
(17)
 さて,F_2の解はh(x)によって異なるが,得られたF_2を使い,流速を
(18)
(19)
と表すことができる.すなわち,せん断力分布は
(20)
となる.ここで,
(21)
と摩擦係数Cを定義すれば,
(22)
が得られる.ただし,\bar{u}は断面平均流速の最大値である.
b) 乱流の場合
 乱流に対するG(x,z)は式(13)で与えられるから,
(23)
(24)
である.層流のときと同様,F_2(x)を式(15)で定義すると,F_1に関する支配方程式は以下のように変形できる.
(25)
すなわち,層流の方程式でR_LをR_Tに置換えれば乱流の方程式になる.
 乱流においてもF_2の解はh(x)やZ_0(x)によって異なるが,得られたF_2を使い,流速を
(26)
と表すことができる.せん断力分布は次式で求められる.
(27)
ここで,底面せん断力と摩擦速度の関係デb=ρ確から
(28)
なる式が得られる.この式から,\omega,h,Z_0,\bar{u}から繰り返し計算により\bar{u_*}を求めることができる.層流と同じように式(21)で摩擦係数Cを定義すれば,式(28)から決まる\bar{u_*},を使い,Cが次式から求められる.
(29)
なお,式(29)に代わり,式(24),(29)から得られる次式によりCを求めてもよい.
(30)
 以上の議論から明らかなように,式(1),(2)のもとでは水深の変化と無関係に流速分布の相似解が存在し,抵抗則が海底形状の変化に依らない、また,本理論解で得られる流速の鉛直分布および抵抗則は,田中らの理論の結果と本質的に同じである.すなわち,水深が変化する場合でも,各場所・各瞬間において田中らの摩擦係数がそのまま使えると言える.

(4) 流速,せん断力および波形
a) 水平床層流の場合
 水平床ではR_Lが一定である.このとき,式(17)の解はe^{±iR_Lk_{0x}}の組み合わせで与えられる.ただし,k_0=\omega/\sqrt{gh}である.進行波を得るためにF_2=u_0e^{±iR_Lk_{0x}}を採用すると,断面平均流速および流速分布は,
(31)
(32)
と求められる.せん断力分布は次式で与えられる.
(33)
 波形は,式(1)から以下のように求められる.
(34)
すなわち,Re.[RL]はx方向の波数の変化率を表し,I_m.[RL]はx方向の波高減衰率を表す.

b) 斜面層流の場合
 斜面の場合,h=mxを式(17)に代入し,
(35)
と変数変換を行うと,以下の支配方程式が得られる.
(36)
ここで,水深の変化が緩やかでR_Lがほぼ一定と仮定できるなら,上式の解はJ_1(R_{L\chi})とN_1(R_{L\chi})の組み合わせで与えられる.F_3としてJ_1(R_{L\chi})を採用した場合,断面平均流速,流速分布,せん断力分布,波形はそれぞれ以下のようになる.
(37)
(38)
(39)
(40)

c) 水平床乱流の場合
 乱流の場合,水平床でも厳密には\bar{u_*},がxによって変化すると見なすべきである.しかし,近似的に\bar{u_*}が一定であると見なすと,R_Tが一定となり,式(25)の解はe^{±iR_Tk_{0x}}の組み合わせで与えられる.層流解と同様,F_2=u_0e^{±iR_Lk_{0x}}を採用すると,断面平均流速,流速分布,せん断力分布および波形は以下のようになる.
(41)
(42)
(43)
(44)
d) 斜面乱流の場合
 斜面層流と同様の変数変換を行うと,R_Tをほぼ一定と見なせる範囲内で,F_3の解としてJ_1(R_{T\chi})とN_1(R_{T\chi})が得られる.解としてJ_1(R_{T\chi})を採用すると,断面平均流速,流速分布,せん断力分布,底面せん断力,波形はそれぞれ以下のようになる。
(45)
(46)
(47)
(48)

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式(1〜48)

3. 理論解の基本的性質

 本理論の抵抗則は田中らの理論と本質的に同じであるが,本理論展開ではx方向に波形が変化する解が得られるため,波数変化率や波高減衰率の考察が容易である.水平床層流解における波数変化率Re.[R_L]と波高減衰率I_m.[R_L]を図一1に示す.\alpha h→∞のときR_L→1であり,本理論解は周期が短く水深が深い極限において摩擦を考慮しない線形長波理論の解と一致する.すなわち,周期が短く水深が深い場合は波高減衰や波数の変化が小さい.周期が長く水深が浅くなると,波高滅衰が大きくなり,また波長が短くなる.\alpha h→∞の極限では,R_L=\sqrt{3}(\alpha h)^-1 e^{-\epsilon ki}に漸近する.
 層流境界層近似では,波高をH=H_oe^{-\epsilon ki}と表すと,波高減衰率\epsilonは\epsilon=k\sqrt{2\nu/\omega}(sinh{2kh}+2kh)となる1).この式を長波近似すると,\epsilon=\sqrt2/4(\alpha h)^{-1}を得る.この関係を図一1中に破線で描いてある.周期が短く水深が深い\alpha h>100の場合,本理論解の波高減衰率は境界層近似理論とほぼ同じ結果を与える.しかし,周期が長く水深が浅くなり,\alpha h<10になると本理論解は境界層近似理論より大きな波高減衰率を与える.\alpha h→0の極限では,本理論解の波高減衰率は,最大で境界層近似理論の3倍以上である.
 次に,底面せん断力\tau_bや波形\etaを以下のように表す.
(49)
このとき,\psiは物理量Fと断面平均流速との位相差を表す.ただし,\bar{F}はFの最大値である,底面せん断力および波形と断面平均流速との位相差\psiを図一2に示す.
図から,周期が短く水深が深い場合には波形と断面平均流速がほぼ同位相で,断面平均流速と底面せん断力との間に\pi/4の位相差があることが分かる。これは境界層近似の結果と一致する.図から,やはり{\alpha h}>100では境界層理論は良好な近似になっている.一方,粘性の影響範囲が大きく,{\alpha h}く10になると位相差に関しても境界層理論との差が大きくなる.なお,{\alpha h}→0では断面平均流速と底面せん断力は同位相になり,断面平均流速と波形の間にπ/4の位相差が生じる.

 結局,境界層が薄い場合,境界層近似理論の結果は良好な近似となり得るが,周期が長くなり境界層が厚くなる場合,境界層近似理論は良好な近似とは言えず,波高減衰率を過小評価してしまうことが分かる.したがって,浅海域における長周期波の海底摩擦特性を検討するのに境界層近似を使うことは不合理であり,せん断力を水面まで考慮した本モデルを使う必要があると結論できる.

 次に,乱流解のパラメータR_Tを図一3に,底面せん断力や波形と断面平均流速との位相差を図一4に示す.基本的に層流の場合と同様な形の曲線が得られている.ただし,層流の場合,津波の周期を考えると水深が数cm程度でないと大きな減衰が起こらないが,乱流の場合には水深数mから数十mでも大きな波高減衰が起こり得る.したがって,実用的には乱流解が重要である.

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式(49〜)
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図ー1 層流解の波数変化率と波高減衰率
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図ー2 層流解の底面せん断力,波形と断面平均流速の位相差
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図ー3 乱流解の波高減衰率と波数の変化
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図ー4 乱流解の底面せん断力,波形と断面平均流速の位相差

4. 水深が変化する場合の理論解の例

 理論解析の例として,図一5に示す2通りの地形に対する乱流解を求める.図一5上段は沖側から波が入射し,岸側の浅瀬に乗り上げて進行していくステップ地形モデル,図一5下段は斜面上に鉛直壁が設置してあるモデルである.これらの地形に対しては,摩擦を考慮しない場合の理論解が容易に得られるため,摩擦の効果を考察するのに都合が良い.なお,摩擦を考慮しない理論解を求めるには,水平床上の解と斜面上の解を流量と水位が連続するように接続する方法と,以下に説明する本理論解析手法でR_T=1とおいて解を求める方法があり,両者が一致することを確かめている.
 本理論解析においては,式(25)の解を求める際に,
(50)
とおき,式(25)を以下の連立方程式と見なして,Runge-Kutta法で数値的に解を求める.
(51)
また,境界条件として,ステップ地形の場合は岸側の水平床で進行波解を,鉛直壁モデルの場合は鉛直壁で流速がゼロという条件を使い,沖側に向かって計算を進める.
 求めた解から,断面平均流速と波形が次式によって計算できる.
(52)
また,沖側水平床での解を入射波と反射波の和で表すと,その地点での入射波の流速振幅\hat{u_i}と反射波の流速振幅\hat{u_r}.が,次式で評価できる.
(53)
同時に,入射波振幅a_iと反射波振幅a_rがそれぞれ次式から求められる.
(54)
 さて,ステップ地形における解の例を,図一6に示す.
図は,T/8毎の波形変化を表している.図から,水深の深い場所では波高減衰が少なく部分重複波が形成されていること,斜面上で浅水変形し,波長が短くなり波高増幅していること,浅瀬で波高が急激に減衰していることなどが分かる.また,摩擦を考慮しない理論解との最大水位の比較を図一7,8に示す.図一7は沖側水深が深く斜面勾配が急なケースであり,斜面上の波の数が少ない.このケースでは斜面上でほとんど波高減衰していない.一方,図一8は沖側水深が浅く,斜面勾配が緩やかなケースで,斜面上の波の数が多い.この場合,斜面上で10%程度波高が減衰している.したがって,斜面勾配や斜面上の波の数などにより摩擦の影響の大きさが異なることが分かる.
 鉛直壁モデルにおける,鉛直壁付近の波形に関し,本理論解と摩擦を考慮しない理論解との比較例を図一9,10に示す.図一9はh_s=1m,図一10はh_s=0.3mとしたケースである.摩擦を考慮しない解では水位が上昇するときと下降するときの波形が同じだが,摩擦の影響を考慮した本理論解では水位上昇時と下降時で波形が異なる.すなわち,x=1〜5kmにある2番目の腹の部分に注目すると,波面が時間とともに前に出る,進行波的な様相を示す.また,x=0〜1kmにある1番目の腹に注目すると,x=0で位相が遅れ,水位上昇時に上に凸な波形,水位下降時に下に凸な波形が得られる.このような波形が得られるのが本理論の特徴である.特に図一10でその傾向が著しく,図一9では摩擦を考慮しない解との差が比較的小さい.
 なお,粗度要素が粒径一様な砂粒の場合,z_0=k/30(kは粗度高さ)程度と考えられる.したがって,この場合,z_0/hは大きくても0.01程度と考えるのが妥当である.一方,粗度要素が尖った形状であれば,z_0が大きくなり,k_s/k=10(k,は等価砂粒粗度)ほどにもなるから,z_0/h=0.1程度まで取り得る.図一10は,x=0でz_0/h=0.033だから,粗度要素がやや角張った場合への適応例と考えるべきであろう、また,図一9,10では,z=0で\hat{\eta}/hが約1/4である.したがって,x=0近傍では必ずしも非線形性が無視できるとは言えないが,\hat{\eta}/hが大きい領域はx=0近傍の,波長に比べて非常に短い領域に限られる.したがって,ここで示したような大きなスケールでの波形の特徴や,波高変化などを考慮するのであれば,線形理論を適用することに大きな問題はないと考えられる.
 長周期波における海底摩擦の影響を理論的に調べる方法として,運動の式に\hat{u_t}+g\eta_x=-f\bar{u}と流速の1乗に比例する線形抵抗を導入する方法があるが,このモデルでは深海域と浅海域で海底摩擦力の大きさがそれほど違わないため,精度に問題がある.ここに示した例から明らかなように,本理論解では海底摩擦の寄与が深海域で小さく,浅水域で大きい傾向が顕著に表れている。また,図一5のような問題に対して,理論解析を使わず,Leap-Frog法などを用いた数値計算を行う場合,沖側境界において入射波を入射させ,同時に斜面からの反射波を透過させる必要がある.本理論を使用すれば,そのような境界処理は不要であり,しかも正確な解を容易に得ることが可能である。したがって,本理論解は海底摩擦による浅海域での波高減衰を考察するのに有用であると言える.

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図ー5 地形モデル
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図ー6 ステップ地形での空間波形の例
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式(50〜54)
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図ー7 ステップ地形での最大水位の変化(1)
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図ー8 ステップ地形での最大水位の変化(2)
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図ー9 鉛直壁モデルでの先端波形の例(1)
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図ー10 鉛直壁モデルでの先端波形の例(2)

5. 反射率に関する考察

 摩擦を考慮しない線形長波の理論では,斜面においても反射率が1になる.しかし,本理論解では海底摩擦による波高減衰により,反射率が1より小さくなる、 まず,水平床端に鉛直壁が設置された場合を考える.
層流の場合,式(31),(34)が水平上の厳密な進行波解である.乱流の場合,式(41),(44)は近似解だが,周期やz_0等が現実的な値で,水平床上での1波長程度の伝播を考えるなら,式(25)の数値解と式(41),(44)の近似解は大差がないことが分かった.したがって,乱流の場合もe^{Im.[R_T]k_{0x}}で減衰する解をもとに反射率を議論してもよい.
 上記の解を用いると,壁からl離れた場所で測定する反射率K_Rは,鉛直壁で\bar{u}=0という条件から以下のように求められる.
(55)
ただし,層流ならR_TをR_Lに変えればよい.反射率の一例を図一11に示す.反射率をK_R=e^{\epsilon2k_0l}と表したときの\epsilonも描いてある.摩擦係数\hat{C}が小さいとK_R\approx1だが,\hat{C}が大きいとK_Rは小さくなる.また,\hat{C}が同じでも,層流解では乱流解に比べてK_Rがやや大きくなる.なお,乱流解では,\epsilonがz_0/hなどに依らず,ほぼ\hat{C}\hat{\bar{u}}/(\omega h)のみによって決まる.これは,式(30)から,R_TがほぼC\hat{\bar{u}}/(\omega h)の関数と見なすことができることからも容易に理解できる.
 次に,図一5下段のモデルに対する乱流解を使用し,斜面における反射率を評価する.z_0を0.1mmから3cm,h_sを10z_0から10m,h_dを10mから500m,x_dを1kmから50km,Tを5分から25分の範囲で変化させ,約200通りの解析を行い,x=x_dでのa_r/a_iを反射率K_Rとした.図一12は,z_0=0.01m,h_s≦1mの場合の解析結果である.図中のI_rは斜面の反射率を記述する際によく使われるイリバーレン数(m/\sqrt{H/L})であり,斜面方向の重力加速度と水粒子加速度の比に関連した量である.すなわち,水粒子の運動にとって,斜面勾配がどれだけ急であるかを表すパラメータと考えて良い.ただし,波形勾配はx=x_dでの入射波の値を使って評価した.また,\chi_d=2k_1\sqrt{h_d/m}である.斜面上の乱流解(48)から分かる通り,\chi=2k_1\sqrt{h/m}はx=-h_s/m(斜面の延長線と静水面の交点)からxまでの波の数に関係した量である.すなわち,\chi_dは波にとって斜面がどれだけ長いかを示すパラメータである.なお,x=-h_s/mからx=0までの波の数\chi_s=2k_1\sqrt{h_s/m}を\chi_dから引いた\chi_d-\chi_sが本来の斜面上での波の数を表す.しかし,図一12ではh_sが小さいケースを選んでいるので,\chi_dの大小が斜面上の波の数の大小を表すと考えて良い.
 図から,I_rが大きくなると反射率が増加し,\chi_dが大きくなると反射率が減少する明瞭な傾向が見られる.砕波によってエネルギーが失われる場合には反射率がI_rのみによって決まるが,海底摩擦によってエネルギーが失われる本理論では,斜面の長さを表すパラメータの影響が顕著に現れる.
 さらに,h_sが大きいと,図一9,10に示したように摩擦の影響が弱くなり,反射率が大きくなる.また,z_0を大きくすると斜面上での平均的な摩擦力が大きくなり1波長あたりの波高減衰率が増加するため,反射率が小さくなる.z_0の効果を表すパラメータとして,x=-h_s/mから1波長の場所でのz_0/hに関連した量を考えると,\chi_0=2k_1\sqrt[z_0/m}が得られる.
 そこで,I_r,\chi_d,\chi_s,\chi_0の簡単な組み合わせを試行z錯誤的に選んで検討したところ,図一13に示した経験的パラメータが,反射率の変化を比較的うまく表すことが分かった.図中の曲線は次式を表しており,ほぼ反射率の傾向を表していると言える.
(56)
(57)
上式の指数関数部分がz_0の効果とh_sの効果を表している.

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図ー11 鉛直壁の反射率
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図ー12 斜面の反射率(z_0=0.01m,h_s≦1mの場合)
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図ー13 斜面の反射率(乱流解)
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式(55〜57)

6. 海底摩擦係数に関する考察

 浅海域における実用的な抵抗則として,マニング則が広く使われている.その際,粗度係数を適当に与えれば良好な精度で津波の浸水域を予測できると言われている.しかし,粗度係数は経験的に決められているのが現状であり,粗度係数の設定が不適当だと物理的に不自然な計算結果が得られてしまうこともある、したがって,周期や水深,海底勾配,海底の粗度高さなどから適切な粗度係数を推定する手法があれば実用的に有用である。
 ここでは,実用的に重要な乱流解を使い,浅海域における海底摩擦係数について考察する.浅海域での長周期波を対象にするのであれば,\hat{\bar{u}}は数m/s程度,周期Tは十分から十時間程度と見なしてよいであろう.
z_0は海底の状態によって大きく異なると考えられるが,数mmから数cm程度のオーダーとすると,\hat{\bar{u}}/(\omegaz_0)はほぼ10^{4〜7}程度のオーダーになる.また水深hが数mから数十m程度の領域を考えると,z_0/h=10^{-(3~4)}程度である.
 式(29)から求めたCの絶対値である\bar{C}を図一14に示す.図から分かる通り,\hat{\bar{u}}/(\omegaz_0)=10^{4〜7},z_0/h=10^{-(2〜3)}程度では,\hat{\bar{u}}/(\omegaz_0)による\bar{C}の変化はほとんど無視できる.しかし,田中らが指摘している通り,長波だからといって,常に摩擦係数が周期に依らないとは限らない.実際,z_0/h=10^{-4}のときには,\hat{\bar{u}}/(\omegaz_0)=10^4〜2×10^5の範囲で摩擦係数\bar{C}が\hat{\bar{u}}/(\omegaz_0)によって変化している.したがって,\bar{C}がz_0/hだけで決まると見なした準定常抵抗則を使用したとき,それがどの程度の誤差になるかを考察しておく.
 式(2)を鉛直方向に積分し,運動方程式における摩擦項と局所項の大きさの比を取ると,
(58)
である.すなわち,\bar{C}がz_0/hのみで決まる領域での\hat{C}の値を\hat{C}_sとおくと,(\hat{C}一\hat{C}_s)\hat{\bar{u}}/(\omega h)が,\hat{C}=\hat{C}_sと見なしたときの摩擦項の誤差と局所項の大きさとの比を表す.図一15に,\hat{C}\hat{\bar{u}}/(\omega h)および\hat{C}一\hat{C}_s)\hat{\bar{u}}/(\omega h)を示す.なお,\hat{C}_sは理論的に次式で与えられる.
(59)
 図から,摩擦係数が\hat{\bar{u}}/(\omega z_0)によって変化する領域では運動方程式における摩擦項の役割が小さいため,摩擦係数を\hat{C}_sで近似しても,その誤差はz_0/h=10^{-2}の場合でも局所項の4%以下と,非常に小さいことが分かる.実現象のスケールにおいて\hat{C}が\hat{\bar{u}}/(\omega z_0)によって変化するz_0/h=10^{-4}の場合には,誤差は局所項の1%以下である.もちろん,瞬間的な誤差が1%程度であっても,その状態が非常に長く継続すれば,影響が無視できるとは限らない.しかし,一般論としては,摩擦係数\hat{C}がz_0/hだけで決まると見なし,\hat{C}_sで近似してもそれほど大きな問題にならないと結論できる.
 さて,\hat{C}_sとz_0/hの関係を描いた図が図一16である.
図中に破線で示したように,z_0/h=10^{-(2〜4)}の範囲で,\hat{C}_s,は簡単な次式でほぼ近似できる.
(60)
 実用的な摩擦係数としてマニング則を使うと,\tau_b/\rho=gn^2h^{-1/3]|\bar{u}|\bar{u}と表される.それに対し本理論では,\tau_b/\rho=\hat{C}\hat{\bar{u}}\bar{u}と表している.\bar{u}=\hat{\bar{u}}e^{-i\omega t}とおくと,それぞれの場合の\tau_bの半周期積分値がそれぞれ
(61)
と求められる.したがって,マニング則を使い,せん断力が平均的に本理論解と同じ値を与えるようにするためには,粗度係数を次式で与えればよい.
(62)
浅海域での\hat{C}として近似式(60)を上式に代入すると,nに対するhの寄与は無視できるほど小さく,nはほぼ次式で評価できることが分かる.
(63)
さらに式(63)において,底質の等価砂粒粗度k_s(z_0=k_s/30)を使用すると,より実用的な式
(64)
が得られる.この式を使うと,k_s=1mmでn=0.015,k_s=10cmでn=0.033という値が得られる.
 したがって,nの決定に周期や水深はほとんど影響しておらず,nを粗度高さに関連したパラメータz_0またはk_s、だけで決めることが可能である.マニング則には,管水路や開水路の定常流において,経験的な係数nが粗度高さのみによって決まるという優れた性質があることが知られている.長周期波に適用する場合でも同様の利点があることになる.しかも,式(64)はマニング・ストリックラーの式(n=0.13k_s^{1/6}/\sqrt{g})に非常に近いので,nの値そのものも定常流と同程度である.また,図一4を見ると,周期が長く水深が小さいときには流速と底面せん断力の位相差も小さいので,浅海域の長周期波に対して,マニング則は表現が簡単な割に精度もよく,実用性に優れていると言える, なお,本理論解は線形理論である.しかし,浅海域での長周期波の挙動には非線形性が無視できない.層流境界層における岩垣ら2)の検討では,非線形性を考慮すると波高減衰率が約10%増加する.したがって,実際の長波の数値計算では式(63),(64)のnよりやや大き囲の値を与えるべきであり,式(63),(64)は適当な粗度係数nの下限値を決めるものと解釈すべきであろう.

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図ー14 摩擦係数\hat{C}(乱流解)
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図ー15 摩擦項と局所項の大きさの比較(乱流解)
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図ー16
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式(58〜64)

7. 結論

 境界層近似を用いず,底面から水面までせん断力が作用していると仮定した長波理論解を求めた。得られた理論解は,周期が短く水深が深い場合には境界層近似した結果と大差ないが,周期が長く水深が浅い場合には境界層近似より大きな波高減衰が生じる.
 理論解を使用して,海底摩擦による反射率の変化を検討した.鉛直壁による反射率は海底摩擦係数が大きくなるに従って小さくなる.また斜面の場合,イリバーレン数だけでなく,斜面上の波の数や粗度などによっても反射率が変化することが分かった.また,様々なケースの反射率を表す経験式を作成した.
 実用的な摩擦係数としてマニング則を使うとき,底面せん断力が本理論解の値と平均的に等しくなるように粗度係数nを決定すると,nは海底勾配や水深周期の影響を受けず,粗度高さに関連したパラメータz_0またはk_sだけで決まる.流速と底面せん断力との位相差も小さく,マニング則は表現が簡単な割に精度が高く,実用的であることが示された.z_0またはk_sからマニングの粗度係数nを決定するには,式(63)または(64)を使えばよい.
 非線形性の影響を考慮すると,実際の長波の数値計算では式(63),(64)よりやや大き目の値を与えるべきだと思われるが,これまで経験に頼っていたnの設定方法に,物理的根拠のある基準を定めることができた.

謝辞

本研究を進めるに当たり,岩手県立大学首藤伸夫教授をはじめ東北水工研究会で有意義な助言をいただきました.ここに記して謝意を表します。

参考文献

1)土屋義人,井上雅夫:海底摩擦による波高減衰の基礎的研究(1),第8回海岸工学講演会講演集,pp.19-24,1961.
2)岩垣雄一,土屋義人,陳活雄:海底摩擦による波高減衰め基礎的研究(3)一層流境界層方程式の非線形項の影響について一,第12回海岸工学講演会講演集,pp.41-4g,1965.
3)Kajiura,K.:A Model of the Bottom Boundary Layer in Water Waves, Bull. Earthq. Res. Inst, VoL46,pp.75-123,1968.
4)野田英明:波動による乱流境界層の発達,第16回海岸工学講演会講演:集,pp23-27,1969,
5)Kajiura,K.:On the Bottom Friction in an Oscillatory Current, Bull. Earthq. Res. Inst., VoL42, pp.147-174,1964.
6)田中仁,アーマドサナ,川村育男:波動境界層の準定常性に関する理論および実験土木学会論文集,No.593/2.43,pp.155-164,1998.
(2000.1.11受付)

THEORETICAL SOLUTION OF LONG WAVE CONSIDERING THE STRUCTURE OF BOTTOM BOUNDARY LAYER AND EXAMINATIONS ON WAVE DECAY DUE TO SEA BOTTOM FRICTION Kenji MASAMURA, Koji FUJIMA, Chiaki GOTO, Kunihiko IIDA and Toshiyuki SHIGEMURA

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参考文献

2次元・3次元ハイブリツドモデルを用いた津波の数値解析 正村憲史1・藤間功司2・後藤智明3・飯田邦彦4・重村利幸5 1正会員 修(工) 防衛大学校助手 建設環境工学科(〒239-8686横須賀市走水140-20) 2正会員 工博 防衛大学校助教授 建設環境工学科 3正会員 工博 東海大学教授 工学部土木工学科 4正会員 工修 東海大学助教授 工学部土木工学科 5正会員 Dr.Eng. 防衛大学校教授 建設環境エ学科

Abstract

 広い海域では従来と同じ平面2次元モデルを使用し,構造物周辺など3次元性が無視できない領域では非静水圧3次元モデルを使用する.2次元・3次元ハイブリッドモデルを用いた津波数値解析法を開発した.全領域を非静水圧3次元モデルで計算した結果と本ハイブリッドモデルの結果を比較し,領域接続手法の妥当性を検討した.また,津波防波堤周辺の波の挙動に関する水理模型実験を実施し,その実験結果と本手法による津波数値計算結果とを比較することにより,本計算手法の有効性を検証した.本ハイブリッドモデルを用いることにより,防波堤閉口部周辺で発生するような3次元性の強い複雑な流況を計算でき,また全領域での3次元計算に比べて大幅に計算量への負荷を軽減できる.
Key Words : tsunami numerical simulation, 2D/3D hybrid numerical model, tsunami breakwater

1. はじめに

 現在の津波数値計算では,海域をいくつかの領域に分割し,深海域で線形長波理論,浅海域で非線形長波理論を用いた手法1),2)が広く使用されている.この計算方法は,広い海域を対象とした計算にも適用することが可能であり,最大遡上高に関して実用上ほぼ十分な精度で痕跡高を再現できる.また,岩瀬ら3)は,より高精度な方程式である非線形分散波理論を用いた計算手法を開発している.岩瀬らの手法により,構造物周辺や地形の急変部を除けば,かなり精密な波形や遡上高を得ることができると期待できる.
 しかし,これらの方法は,圧力分布が静水圧に近く,水平流速が鉛直方向にほぼ一様であるとの仮定のもとで誘導された支配方程式を用いている.したがって,構造物周辺など,その近似が成立しない場所への適用性に問題がある.しかし,津波防波堤開口部の潜堤の安定性や船体にかかる流体力,あるいは漂流物が構造物に衝突する際の流体力などを評価する場合,構造物周辺の流速を精度よく再現しなければならない.
 そこで,著者らは圧力の静水圧分布を仮定せずに運動方程式をそのまま用いる津波の3次元数値計算手法を開発した4).この計算手法では微分の階数を増やさず,強非線形性・強分散性を考慮できる.しかし,3次元解析法は,計算領域を平面の2次元だけでなく鉛直方向にも直方体格子に区切り,その格子ごとに支配方程式が満たされるよう繰り返し計算を行うため,計算時間及び計算容量が平面計算と比較して莫大なものとなる.これが非静水圧3次元モデルを実用化する上での問題点であった.
 ここでは,この問題を解消するため,3次元計算は構造物周辺など3次元性が問題になる領域だけに限定し,その外側の部分は静水圧近似を用いた平面計算を行う,実用的な3次元と2次元の混合計算法(ハイブリッドモデル)を開発する.すなわち,従来の計算法における浅海域での計算領域の中で,構造物周辺の領域だけを3次元領域とし,この領域で,精度のよい,多くの情報を得ようという考え方である.
 また,従来の非静水圧3次元モデル4)では,計算領域内に水がまったく入り込めない格子を配置することによって防波堤などの海岸構造物や地底形状を表していた.すなわち,斜面を階段状に近似していたことになる.もちろん,この方法でも格子間隔を小さくすることにより,地形近似誤差を少なくすることは可能であるが,計算時間や計算容量が増える。そこで,本モデルでは榊山・香山5),磯部ら6)が使用したポーラスメディア法を使用して計算格子内での斜面勾配を考慮する.これにより,計算格子が大きくても複雑な境界を実形状に近い形で計算に取り込むことが可能となり,より高精度な計算結果を得ることができる.
 ハイブリッドモデルを構築するためには,計算される物理量が異なる2次元領域と3次元領域で,相互に情報を伝達する境界接続法を開発する必要がある.この境界接続法の妥当性を検証するために,3次元領域の広さを変化させた数ケースのハイブリッドモデルによる計算結果と全領域で非静水圧3次元モデルを使用した計算結果を比較する.
 また,本計算法の適用性を検討するため,防波堤周辺における津波の挙動に関する水理模型実験を実施し,水理実験の結果と本計算手法による結果,および従来よく使用されている解析法である非線形長波理論を用いた解析結果とを比較検討する.

2. 水理模型実験

 まず,ハイブリッドモデルの適用性を検討するために行われた水理実験の概要について説明する.水理模型実験は,図一1に示す防衛大学校の7m×11mの平面水槽を用いて行った.水槽の左端にはピストン型の造波装置が設置してある.水槽の造波板境界以外の3方は直立壁である.
 水槽には中央に開口部を持つ津波防波堤の模型を設置した.模型断面を図一2に示す.この防波堤模型は,幅94cm,高さ12.5cmの台形のマウンド上に幅21cmの箱形ケーソンを設置したもので,高知県須崎港の津波防波堤の断面形状を参考として縮尺約1/200でモデル化したものである.
 実験および計算にあたり,防波堤開口部中央での静水面をデカルト座標系の原点とし,x軸は波の進行方向に,z軸は鉛直上向きにとる.また,x軸の負の方向(防波堤より造波板側)を沖側,正の方向を港側と呼ぶ.静水深は30cmである.入射波は波高約2cm,周期15sの正弦波である.模型縮尺1/200とし,フルードの相似則を使うと,これらの値は現地周期が3分30秒,現地波高が4,0mに相当する.
 実験では静穏な状態から造波し始め,造波開始より入射波:の2周期分である30秒間を測定時間間隔0.05秒で計測を行った.防波堤開口部周辺における水位を容量式波高計,また流速を電磁流速計にて測定している.
水位の計測範囲は,x方向に原点より土0.8m,y方向は原点から防波堤端部までの範囲で,5cm間隔の格子点上で測定した.また,y=0,一20,一40,一65cmのxーz
断面において,x方向に原点より土0.8m,鉛直方向に静水面下2.5cmから底面までの範囲で5cmの格子点上において流速(u,w)を計測した.流速・水位を計測するのと同時に造波板位置を記録することにより,各データの時間を同期した。
 また,流速・水位ともに同一点において,それぞれ5回から20回の計測を行った.図一3に5回の観測により得られたデータの例を示す.図では,乱流成分以外はほぼ良好な再現性が得られている.しかし,実験開始時に完全に静穏になっていなかった場合などは,大きく異なる結果が得られることがある.そこで,データから再現性を調べ,大きく異なる結果があった場合には測定をやり直した.実験データは0.5秒問で移動平均し,さらに同一点での計測の平均値をとり,実験値とした.

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図ー1 実験水槽
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図ー2 防波堤模型断面
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図ー3 5回の実験データの例(x=-20cm,y-0cm,z=-15cmのx方向流速)

3. 計算方法

(1) 3次元領域
a) 支配方程式
 本計算方法では計算領域を直方体の格子に細かく分割し,それぞれの格子において,図一4に示す通り流速(u,v,w)を格子の境界面に,圧力pを格子の中央に定義する.
 地形を表す方法として,榊山・香山5),磯部ら6)が用いたポーラスメディア法を使用する.本来,ポーラスメディア法では透水層とセル内の斜面勾配を計算に取り入れることが可能である.ここでは,透水層は考えないが,セルの中での斜面勾配を考慮する.すなわち,3次元計算領域では以下の支配方程式を使用する.
(1)
(2)
 ただし,x_iは座標x,y,zを,u_iは各方向流速u,v,wを表す.\rhoは密度,pは圧力,g_iは重力加速度の各方向成分,\nu_iは渦動粘性係数,e_{ij}は変形速度e{ij}=\partial{u_i}/\partial{x_j}+\partial{u_j}/\partial{x_i}である.\gamma_i,\gamma_vは海底地形や構造物の形状を表現するために導入する透過率・空隙率である.\gamma_iは,セルの四辺における不透過部分の位置から各直方体セルの壁面において流体が通過できる面積の割合(透過率)を計算して与える.例えば,\gamma_xは,図一5のように(3)
とする.
\gamma_vは,各セルにおいて流体が入り込める体積の割合(空隙率)を与える.すなわち,
(4)
である.\deltax,\deltay,\deltazは各方向の格子間隔である.セル中に斜面境界が存在しているとすると,セルの各壁面にかかる単位面積あたりの圧力はp\gamma_iである.したがって,例えばz方向の圧力勾配は一\partial(p\gamma_i)/\partial{x}になる.セル中も斜面からの反力がp\partial{\gamma_i}/\partial{x}とおけるから,その合計をpで割ると式(1)の右辺第1項で近似できる,すなわち,ポーラスメディア法により斜面勾配の効果を取り入れることができる.
 乱流モデルとしては様々なモデルが提案されており,工学的手法としてk一\epsilonモデルがよく使われる.しかし,津波の数値計算においてk一\epsilonモデルの乱流計算に必要な細かな計算格子を使うことは事実上不可能であり,ゼロ方程式モデルを使わざるを得ない.一方,格子平均モデル(LES)は本来kー\epsilonモデルよりさらに細かな格子を使うべき乱流モデルであるが,LESで用いられるSGS渦動粘性モデルを大格子の計算に適用しても,かなり妥当な計算結果が得られると報告されている7).
そこで,ここでは便宜的にSGS渦動粘性モデルを適用し,渦動粘性係数を次式で表す.
(5)
(6)
ここでcは定数であり,およそ0.2程度と言われている.本計算においても,c=0.2を用いる.ただし,大きな格子でSGSモデルを使えるという物理的根拠は無いから,本計算はLESではなく,計算格子の大きさに影響された単なるゼロ方程式モデルと解釈すべきである.

b) アルゴリズム
 流速を定義する時間と圧力,水表面位置を定義する時間には\deltat/2のずれがあるものとする.また,(n-1/2)ステップにおける流速,そして(n一1)ステップにおける圧力と水表面形状が全計算領域において決定されているとする.次ステップにおける値は以下の手順により計算する.
(a)nステップにおける水表面形を計算する.
(b)初期条件あるいは(nー1/2)ステップの流速と(n一1)ステップの圧力を使用し運動方程式を解き(n+1/2)ステップにおける流速の近似値v*とする.
(c)手順(b)で計算した流速v*を第1次近似値とし, 連続の式を満たすよう繰り返し計算により圧力を 修正する,また,圧力の補正値に応じて,流速値も修正する.
(d)移流項を計算する際の流速値にnステップでの値 v^n=(v*+v~{n-1/2}/2を使い,手順(b),(c)を繰り返す.
(e)最終的に運動方程式と連続の式が完全に満たされたら,新しい流速を(n+1/2)ステップでの値,圧力をnステップの値とする.
 手順(a)において,水表面位置の計算には,式(2)を水表面から底面まで積分した以下の式を使用する.
(7)
ただし,nは水位変動,hは静水深を表す.
 手順(b),(d)において,運動方程式によって流速を求める際,圧力項は2次精度の中央差分により近似する.移流項の近似では安定した計算を行うため2次精度の風上差分を用いる.ただし,境界および障害物に隣接し,2次精度の差分に必要な流速を得られない場合は1次精度とする.
 手順(c)において,すべてのセルで∂\gamma_iu_i/∂x_iをゼロにするためにpを次式により修正する.
(8)
この修正量をp_{i,j,k}に加えて修正することにより連続の式が成立する.ただし,隣接する格子の圧力を修正することにより,再び連続の式を満たさなくなる.そのために繰り返し計算が必要となる.
 また,時間発展に関しても差分を2次精度とするため,Crank Nicholson法を用いる.すなわち,手順(d)において繰り返し計算による圧力修正後,運動方程式の再計算する際に,v^n=(v*+v^{n-1/2}/2として移流項をnステップの流速値により計算している.流速と圧力が連動して変更され,最終的にn+1/2ステップでの流速値は,
(9)
を満たす.v^{n+1/2}_{i,j,k},w^{n+1/2}_{i,j,k}も同様に求められる.

(2) 2次元領域
2次元計算領域では以下の非線形長波理論を用いる。
(10)
(11)
(12)
 ここで,DはD=h+\etaで表される全水深,fは運動量損失係数,M,Nはx,y方向の流量フラックス,Q=\sqrt{M^2+N^2},\betaは運動量補正係数((3)接続条件を参照)である.
 運動量損失係数としては,通常,海底摩擦による損失を考える。マニング則を使うと,
(13)
である.ただしnはマニングの粗度係数で,本計算においてはn=0.015m^{-1/3}s(コンクリート)とする.
 防波堤開口部を非線形長波理論で計算する場合には,断面の急縮・急拡による運動量損失f_Dを考慮し,防波堤開口部でf=f_B+f_Dとするのが一般的である.後藤・佐藤1)は,釜石港に関する数値計算においてf_D=0.5を用いている.しかし,本計算では防波堤開口部は2次元計算領域ではないので,f_Dは不要である.
 なお,マニング則は2次元領域だけでなく3次元領域においても最下層の底面に面する格子だけに次式のように適用させる.
(14)
ただし,[]iはセル上壁面での値を示す.

(3) 接続条件
 図一6のように2次元領域の中に3次元領域を組み込む.2次元領域と3次元領域の境界面上の流量は2次元領域に属するものとする.図中の丸印は水位,三角は流量(流速)を示し,白抜きのマークは2次元領域において計算する値,黒塗りは3次元計算値である.なお,ここでは便宜上,y軸に平行な境界面での接続方法について説明する.x軸に平行な境界面でも同様の方法を用いる.
 接続部における水位・流速の共有および計算手順を以下に示す.ただし,境界面上での流量を.M_bと記す.
また,図一8は,以下の手順をt-x座標のみに簡単化して模式的に表したものである.
(a)nステップの水位を求める(2次元,3次元とも).
 その際,3次元領域の端点ではM_b^{n-1/2}(2次元領域に属する)を参照する.
(b)2次元領域において流量を求める.M_b^{n+1/2}を計算する際,3次元領域の水位・流量を参照する.
(c)3次元領域において流速を求める.その際,M_b^{n-1/2}を境界条件として使う.
 さて,上記(c)で3次元領域での流速を計算する際には,境界における流量だけでなく,流速分布が必要である.しかし,本来,2次元計算では流速鉛直分布に関する情報を与えない.したがって,2次元領域と3次元領域の接続部で,3次元領域における水平方向流速(u,v)が断面平均流速と差が無くなるような地点,すなわち,鉛直方向に分布を持たなくなるまで3次元領域を十分広く取り,境界条件として鉛直方向に一様な流速分布を与えることが最も望ましい.
 しかしながら,地形条件や計算機容量の制限などにより,3次元領域を十分に広くとれない場合がある.そのような場合,xy平面に平行な軸を持つ渦(ここでは水平渦と呼ぶ)が消散する前に境界面を通過する可能性があり,境界面において鉛直方向に流速分布を持つようになる.このような場台に流速の一様分布を境界条件として与えると,図一8(2)に示すように接続面に沿った流れが形成されてしまう.そこで,流量に関しては2次元領域と情報を共有し,なおかつ流速の鉛直分布が境界においても保持されるように,∂u^」/∂x=0なる条件を用いる.これによりu^」によるwの増加がゼロになり,接続面に沿った流れが形成されないようになる.ただし,u=\bar{u}+u^」で,\bar{u}が断面平均流速,u^」が平均流速からのずれを表す.\bar{u}は2次元計算で得られたM_bから計算される.また,y,z方向の運動方程式の移流項を計算するときに,3次元領域の外側でのv,wも必要になる.ここでは,vに関してはuと同様の処置を行い,wに関しては∂w_i/∂x=0とする.この条件により,図一8(3)の通り,水平渦が接続面を通過できるようになり,全領域を3次元で計算した場合と大差ない計算結果を得ることができるようになる.
 さて,境界面で流速の鉛直分布を考慮するということは,境界面を通したトータルの運動量輸送∫_{-h}^{\eta}u^2dzが,断面平均流速による運動量輪送M^2/Dより大きくなることを考慮するということである.このような,水平渦による余剰運動量輸送の影響を2次元領域においても考慮するために,断面平均流速とのずれを示すパラメーターである運動量補正係数\betaを用いる.ここで,自り方向の運動方程式に現れる\beta_{xx},\beta_{xy}は,
(15)
(16)
の形で書ける.\beta=1が鉛直方向に流速分布が一様な状態であり,\beta>1は鉛直方向に流速が分布を持つことを示す.すなわち,1以上の\betaを2次元領域で与えることは,3次元領域から水平渦の影響を引き継いでいることになる.
 さて,水平渦の影響を正しく評価するためには,2次元領域においても正確な\betaを与える必要がある.しかしながら,2次元領域で用いる非線形長波理論は,本来鉛直方向に流速分布が一様であると仮定した方程式であり,\betaの分布を正確に評価することは難しい.よって3次元領域で求めた\betaを用いて2次元領域の\betaを予測する必要がある.ただし,\betaを急激に変化させることは数値計算上問題がある.そこで,接続境界で得られた\betaを2次元領域において数メッシュかけて1になるよう線形的に\betaを与えることにする.本計算例においては,全領域を3次元モデルで計算した結果から得られた\betaをCase b(図一9参照)の領域と照らし合わせ,5メッシュで1になるように設定した.ただし,\betaを与える領域を5メッシュ以上としても,計算結果にほとんど違いは見られなかった.
 この\betaを支配方程式に取り入れることにより,3次元領域から2次元領域に移動する水平渦による運動量輸送を考慮できる.しかし,当然ながら2次元領域で消失せず再び3次元領域に移動する水平渦は再現できないから,3次元領域をあまりに小さく設定することは計算精度の点で望ましくない.
 なお,一般に水平渦による余剰運動量輸送を表す方法として,\betaを用いる方法と拡散項を用いる方法がある.\betaを用いる方法では,3次元領域での計算結果から\betaを評価するときに流量がゼロになる場所で計算が発散するおそれがあり,拡散項を用いる方法は同じく計算結果から拡散係数を評価するときに流量の最大値で発散するおそれがある.今回の計算では,流量が大きくなる場所で余剰運動量輸送も大きくなる可能性があるため,\betaを用いる方法を採用した.

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式(1〜16)
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図ー4 変数の定義
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図ー5 階段近似の概要
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図ー6 2次元計算領域と3次元計算領域の配置
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図ー7 領域接続部分の計算手順
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図ー8 接続部における処置(x-z平面の流速ベクトル図)
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図ー9 Case a~dにおける3次元領域の大きさ

4. 全領域を3次元モデルで計算した結果とハイブリッドモデルの計算結果の比較

 まず,2次元領域と3次元領域の接続方法の妥当性を検証する.ハイブリッドモデルにより,全領域で非静水圧3次元モデルを使用した計算結果と同じ結果が得られれば,接続方法が妥当であると判断できる。よって,本ハイプリッドモデルの計算結果と,全領域を3次元計算した結果との比較を示す.
 計算は水理模型実験の諸元をそのまま用いて行う.ただし,3次元計算領域で格子間隔および計算格子数を表一1の通りに設定し,Case a〜dの4通りの計算を行った。各ケースの3次元領域の広さを図一9に示す.Casea〜dとも3次元領域は正方形領域であり,その中心を開口部の中心すなわち座標の原点においている.また,Case aの3次元領域の長さはほぼ開口幅と,Case dでは,ほぼ水槽幅と同程度に設定した.Case b,cはその中間で,それぞれ開口幅の約2倍,3倍である.3次元領域の外側の水槽全体は2次元領域であり,Case a〜dとも格子数220×140で,格子間隔\delta x=\delta y=5cmである。計算時間間隔は\delta t=0.01秒である.また,造波板位置に関する実験データから造波板移動速度を計算し,2次元領域内の造波境界で流量を与えることにより波を入射させた.
 なお,x軸に平行な境界がマウンドと垂直に交差している.開口部から離れたマウンド上では,開口部の3次元的な流れの影響が殆どなく,マウンド斜面上においても水平方向流速が鉛直方向に一様である.すなわち,\betaが1であり2次元計算を行っても支障はない.よって,マウンド上であっても,開口部から離れた場所は2次元領域とする.
 図一10〜13に防波堤開口部近傍の断面平均流速\bar{u},\bar{v}の空間分布に関するハイブリッドモデル(Case b)と全領域3次元計算の結果の比較例を示す.図一10,12はハイブリッドモデルによる計算結果,図一11,13は全領域を3次元計算した結果である.図中の点線は2次元領域と3次元領域との境界を表し,図の右側が港側,左側が沖側である。図ー10,11は,第1波が防波堤開口部を通過しているところである.防波堤周辺の流況に関し,ハイブリッドモデルにより全領域3次元計算と同様の結果が得られていることが分かる.また,3次元領域から2次元領域に波が伝わる様子なども,うまく再現されている.また、図一12,13では第1波の引き波が防波堤開口部を通過している.2次元領域から3次元領域への流入,3次元領域から2次元領域への流入,防波堤開口部付近の局所的な流れや防波堤に沿った流れなど,いずれもハイブリッドモデルの結果は,全領域3次元計算の結果と良好に一致している.Case b以外のケースでも,ほぼ同じような良好な結果が得られた.
すなわち,2次元領域と3次元領域の境界を通して波が問題なく伝播しており,ハイブリッドモデルは断面平均流速に関して,妥当な結果を与えていると言える.
 図一14に防波堤開口部近傍のx一z断面における空間流速分布に関するハイブリッドモデル(Case a〜c)と全領域3次元計算の結果の比較例を示す。Case dの結果は,Case cの結果とほとんど同じだったので割愛した.ただし,図において,ハイブリッドモデルによる計算結果は,x=0から3次元領域と2次元領域との境界までを示し,全領域3次元計算のものは,一部分だけを抜き出して描いている.図は,水平渦が最も顕著に現れた時間と場所を選んだものだが,Case cのように渦の影響が境界まで及ばないような場合,全領域3次元計算の結果とハイブリッドモデルの結果にはほとんど差がない.また,Case bでは,水平渦が境界上に存在する。しかし,Case bの結果と全領域3次元計算の結果は,境界付近の流速ベクトルの方向にやや差が見られるもの,境界から離れた場所では良好に一致している.ただし,Case aでは,渦の形跡は消失し,本来であれば渦の影響があるところにも,その影響が現れていない.そのため3次元性が弱すぎる結果になっている.したがって,流速の鉛直分布に関しては,Case aでは3次元領域が狭すぎて精度のよい結果が得られていないようである.しかし,Case b程度に3次元領域を設定すれば,境界から離れた地点や防波堤マウンド上ではハイブリッドモデルと全領域3次元計算の結果にそれほど大きな差は無く,流速の鉛直分布に関してもハイブリッドモデルにより良好な結果を得ることが可能であると言える.すなわち,本計算で用いた2次元領域と3次元領域の接続法は概ね妥当であり,本接続手法を用いることによりハイプリッドモデルの計算が可能である.本計算手法は,境界面付近に水平渦がある場合,境界面付近の流速鉛直分布に関し誤差が現れるものの,境界から離れた場所では良好な精度を持っている.したがって,3次元的な流況を知りたい領域をやや大きめに囲む範囲を3次元領域に設定すれば,必要な知見が得られると期待できる.
 図一15は,3次元領域(Case c)における防波堤開口部付近の\beta_{xx}のコンターをハイブリッドモデルによる計算より示したものである.図中,\beta_{xx}=1.01と1.06のコンターを描いてある.また,描いている領域はCasecの3次元領域である.この図は,図一16と同じ時間であるので参考にすると,防波堤開口部端部の渦による乱れの激しい場所や,鉛直方向に水平方向流速分布が大きく変化しているマウンドの斜面上では\beta_{xx}が大きくなっている.また,鉛直渦の周辺でも\beta_{xx}が大きくなっている.ところが,Case aでは,\betaがかなり大きい領域が,3次元領域の外に出てしまう.したがって,Case aは\beta_{xx}分布から見ても3次元領域が狭すぎると言える.
 計算容量や計算時間に関して,ハイブリッドモデルと全領域3次元計算の結果とを比較する.計算容量は,3次元領域として確保した格子数に比例するから,3次元領域を狭く取れば取るほど節約可能である.計算時間は,表一1に示してある.ハイブリッドモデルを用いればかなりの時間の節約になっていることがわかる,Case aは再現性の面から問題があるが,Case bを用いれば,全領域を3次元計算した場合と流況などの再現結果がほぼ同じであるにも関わらず,計算時間は約1/16しか掛かっていない.また,Case dの結果はCasecの結果とほぼ同じだが,約3倍の計算時間が掛かっている。したがって,3次元計算領域を広く取るほど,高い精度を得ることは可能であるが,3次元領域をむやみに広く取ることは無駄であり,必要な結果や用途に合わせた領域の広さの選定をすべきである.

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表−1 格子間隔,計算格子数および計算時間
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図一10
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図一11
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図一12
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図一13
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図ー14 各ケースにおけるx-z平面の流速ベクトル(y=-40cm,t=26s)
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図ー15 \beta_{xx}の分布(Case c,t=17s)
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図ー16 x-z断面における空間流速分布の比較(t=16s)

5. 実験結果および非線形長波理論による計算結果との比較

 ここでは全領域において,従来からの津波の数値解析法である非線形長波理論に基づく平面2次元モデルによる解析を実施し,本計算手法による計算結果(Caseb)と比較する.また,同時に水理模型実験の結果とも比較し,本モデルの有効性を検討する.ただし,全領域2次元の計算では\beta=1,f_D=0とした.
 図一16,17にy=0,一20,一40,一65cmにおける防波堤開口部近傍の流速u,wの空間分布および水表面形に関するハイブリッドモデル(Case b,左側(a))と実験値(右側(b))の比較の例を示す.図一16(b)において,y=0,一20,一40cmでは防波堤マウンドによって流れが遮蔽され,マウンド横に水平渦が発生している.これは長波近似理論式を利用した数値計算では再現することが出来ないが,本手法(図一16(a))ではほぼ実験結果を再現している.y=一65cmの沖側の流れのパターンが実験と計算で一致していないが,これは防波堤端部から発生した鉛直渦の位置が正しく再現されていないからである.図一17(b)において,y=0cmではx=ー30cm付近,y=一20cmではx=一40cm付近を境に流れの向きが左右に分かれている.これは,第1波の引き波による鉛直渦が防波堤沖側に残る中,防波堤開口部では既に第2波の寄せ波による流れが発生していることを示している.また,y=一65cmの断面において,沖側では港側に向かう流速約20m/sの流れが発生しており,防波堤を越えたところで斜面に沿って下から吹きあがるような流れが発生している.また,さらに港側では約10m/sの湾内に進む流れに戻っている.この様な複雑な流況に関しても,本計算モデルは全体的に実験の傾向をよく再現していると言える.
 図一18〜21は,y=0,一20,一40,一65cmでの防波堤開口部近傍の水平方向流速uに関する本手法による計算値(Case b),実験値,および非線形長波理論に基づく計算結果の比較である.なお,ハイブリッドモデル(Case b)の2次元領域と3次元領域との境界はx=士125cmであるが,ここでは流れの3次元性が著しいx=ー80〜80cmでの比較を示す.図18はx=0cmの流速が沖向き最大になるとき,図一20はx=0cmの流速が港向き最大になるとき,図一19,21はその中間である.図一18〜21でほぼ約1周期分になる。丸印は実験値,実線は本手法(Case b)による計算値,破線は非線形長波理論の計算値を表す.
 図一18,19の港側全体,また図一20のx=80cmなど流速が鉛直方向にほぼ一様な場所では,本手法による計算値および非線形長波理論の計算値はいずれも実験結果とよく一致している.特に防波堤開口部(x=0)では,y=一65cmを除き,全ての時間で非線形長波理論による計算でも,ほぼ妥当な結果を与える.すなわち,従来の方法でも,港内に流入する流量はほぼ正確に評価できることになる。しかし,図一18のx=一40cm,y=一20cm,図一20のx=40cm,y=ー40cmなど,水表面付近で流速が大きく底面近くで小さいといった流速の鉛直分布を持つ場所がある。非線形長波理論では,このような3次元性を評価できないが,本モデルでは精度よく再現できている.また,図一21のy=0,一20cmにおける,x=60,80cmでは,流速分布が一様に近いにも関わらず,非線形長波理論は流速をかなり過小評価している.同じ時間のy=一40cmで水表面付近に逆向き流速が現れているなど,防波堤開口部で発生した渦が複雑な挙動を示しているが,この渦の存在によってy=0,一20cmでは縮流の効果により流速が大きくなっていると考えられる.非線形長波理論では,渦の複雑な挙動を再現できないから,y=0,一20cmのx=60,80crnでは流速が過小評価になっているのであろう.すなわち,流れの3次元性が強いと,非線形長波理論では断面平均流速に関しても精度が悪くなると言える.本モデルでは,このような現象も再現できる.すなわち,構造物周辺の,3次元的な流況の計算に,ハイブリッドモデルは有用であると分かる.しかしながら,図一18のy=一65cm,x=ー80,一60cmなど,実験結果では鉛直方向になだらかな分布になっているにもかかわらず,計算結果では流速が鉛直方向に変化しているところがある.これは,実験では鉛直方向に軸を持つ鉛直渦により流れがよく混合され,流速が鉛直方向にほぼ一様になっているが,計算では鉛直渦による混合が不十分で,流速が鉛直方向に一様になるのが実験に比べて1〜2s遅くなるためである.
 全体の時間を通して,開口部における流れの通過する主たる領域,すなわちy=一40cm以内の開口部中央部では,本モデルによる計算値は実験結果と良い一致を示す。津波防災の観点からは,津波防波堤による最大打ち上げ高の変化,津波防波堤開口部潜堤の安定性,あるいは木材など漂流物の挙動を予測することが特に重要であり,そのためには開口部中央付近の流況の再現が最も重要である.そのような意味で,本モデルは実用上十分な精度を持っている.一方,本モデルは防波堤端部から発生する渦の挙動に関しては十分な精度を持っていないことも分かった.防波堤端部付近のマウンド捨石の安定性や渦に巻き込まれた船舶の挙動を調べるには,将来この点の精度を向上させる必要がある.それには乱流モデルの見直しが必要だか,その場合も本モデルの考え方をプラットフォームとして利用することが可能である.

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図ー17 x-z断面における空間流速分布の比較(t=22s)
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図ー18 x-z断面における水平方向流速の比較(t=16s)
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図ー19 x-z断面における水平方向流速の比較(t=19s)
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図ー20 x-z断面における水平方向流速の比較(t=22s)
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図ー21 x-z断面における水平方向流速の比較(t=26s)

6. 結論

 本研究では,従来の計算方法である2次元モデルと,圧力の静水圧分布を仮定しない3次元モデルを組み合わせたハイブリッドモデルを開発した.本ハイブリッドモデルは,防波堤開口部周辺で発生するような3次元性の強い複雑な流況を精度よく計算でき,またその周りで2次元モデルを用いることにより効率よく計算できる手法である.
 本ハイブリッドモデルでは,2次元領域と3次元領域の境界接続法を開発した.この境界接続法では,流速の鉛直分布に情報を持たない平面2次元モデルから,3次元領域側に流量を伝える.3次元領域では,その情報を考慮し,なおかつ接続境界でも3次元領域と同様の流速分布がそのまま保持されるよう,境界条件を設定する.また,3次元側の水位,流量および流速分布の情報として運動量補正係数を2次元領域に与える.
この接続法を用いることにより,全領域3次元計算の結果と比較しても大差のない計算が可能となった.その際,3次元領域をCase b程度(開口部の約2倍)に取れば精度のよい結果が得られる.
 また,水理模型実験を実施し,その結果とハイブリッドモデルによる計算結果とを比較した.ハイブリッドモデルを使うことにより,マウンド斜面上など,鉛直方向に水平方向流速の分布が変化しているような複雑な流況も計算可能であることが分かった.全領域を3次元計算することに比べ,本手法は計算時間を大幅に短縮できるので,構造物周辺などの3次元的流況を調べるのに適していると言える、 本モデルは開口部中央部の広い範囲で実験値を精度良く再現しており,津波防災の観点から見ると,本モデルは津波の数値計算手法として実用上十分な精度を持っている.一方,鉛直渦による混合が十分速やかに行われず,防波堤潜堤付近で実験結果と相違する点が発生するなど,乱流モデルについて改良の余地がある点も明らかになった.より一層の精度向上のためには,今後,乱流モデルの見直しが必要ではあるが,領域接続法などに関しては今回用いたモデルの基本的な考え方を適用することが可能である.また,今回の計算では,2次元計算の基本方程式として非線形長波理論を用いたが,計算したい場所の水深や地形などに応じその他の長波理論と組み合わせることも可能である.より高次の微分項を持つ長波理論を使用すれば,目的に応じてより高精度な結果が得られるものと期待できる.

謝辞

本研究に実施にあたっては,内藤里美,小坂亜矢両君(防衛大学校本科4学年)の協力を得た.ここに記して謝意を表する.

参考文献

1)後藤智明,佐藤一央:三陸海岸を対象とした津波数値計算システムの開発,港湾技術研究所報告,第32巻,第2号,pp.3-44,1993.
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4)正村憲史,藤間功司,後藤智明,重村利幸:非静水圧3次元津波数値計算モデルの開発,海岸論文集,第43巻,pp.296-300,1996.
5)榊山勉,香山真裕:消波護岸の越波に関する数値シミュレーション,海岸論文集,第43巻,pp.696-700,1996.
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7)中辻啓二,狩野晋一,栗田秀明:SGS渦動粘性係数を用いた大阪湾潮流の有限要素解析,水工学論文集,第36巻,pp.693-696,1992.

(2000.2.15受付)

NUMERICAL ANALYSIS OF TSUNAMI BY USING 2D/3D HYBRID MODEL Kenji MASAMURA, Koji FUJIMA, Chiaki GOTO, Kunihiko IIDA and Toshiyuki SHIGEMURA

The 2D/3D hybrid tsunami numerical model is developed in which the conventional 2D model is adopted for the calculation in the wide region located far from the coastal structures although the 3D non-hydrostatic pressure numerical model is used in the limited region adjacent to the structures. Applicability of the domain connection technique is examined by comparing the numerical results obtained by the present hybrid model with those obtained by applying the 3D non-hydrostatic pressure numerical model for the whole domain. Further, the results of the model tests are compared with the numerical results obtained by both the present hybrid model and the 2D model, to examine the validity of the present model. It is shown that the present model reduces a calculation load significantly comparing to thecase adopting the 3D model for the whole domain and reproduces the characteristics of three-dimensional complicated flow around the opening of breakwater which cannot be reproduced by the 2D model.

深海域における波数分散効果が近地津波の伝播に及ぼす影響に関する考察 岩瀬浩之1・後藤智明2・藤間功司3・飯田邦彦4 1正会員 株式会社エコー 沿岸デザイン本部環境水工部 (〒=221-0052神奈川県横浜市神奈川区栄町10-35) 2正会員 工博 東海大学教授 工学部土木工学科 3正会員 工博 防衛大学校助教授 システム工学群建設環境学科 4正会員 工修 東海大学助教授 工学部土木工学科

Abstract

 代表的な既往津波を対象とした数値解析から,深海域の波数分散効果が近地津波の伝播に及ぼす影響について考察した.水深200m点の波形比較および初期水位分布に対するスペクトル解析から,近地津波であっても波数分散効果が無視できない津波があることを示した、さらに,波数分散効果の影響を定量的に表す指標値を定義し,数値解析において分散項の考慮が必要となる条件値を定めると共に,代表的な断層パラメータ諸量と波源の平均水深から指標値を簡便に算出できる評価式を導いた.また,海底地盤の変動時間が波数分散効果に及ぼす影響について検証し,その限界時間が約1分程度であるこ:とを示した.最後に,1983年日本海中部地震津波を対象とした実地形計算から深海域における分散効果が浅海域へ及ぼす影響について考察した.

Key words : near field tsunami, dispersion effect, index of dispersion effect

1. はじめに

 波数分散効果が津波の伝播に与える影響についての研究としては,1983年日本海中部地震津波を機に浅海域を対象としたソリトン分裂波に対する実験・研究が数多く行われている.しかし,深海域における波数分散効果の影響についての研究は少ない.その理由のひとつに,対象が深海域であるため有意な測定結果が皆無であることが挙げられる.
 理論的には,Kajiura1)が時間に関するグリーン関数を利用して津波第一波峰の波数分散効果による減衰特性に関して検討している.この理論によると近地で発生した津波の第一波峰の減衰は,2次元伝播問題で伝播時間の-1/6乗に関係し,大きな減衰とはならない.
また,首藤2)はKakutaniの式3)から波数分散効果の影響を定量的に評価し,伝播距離が短い近地津波ではその影響が小さく無視できることを示している.ただし,Kajiuraは一定水深と矩形波源を仮定し,首藤は正弦波を対象としたものであるため,これらの結果をそのまま現実の津波問題に当てはめることには多少の問題が残る.
 深海域における波数分散効果は,初期水位分布を構成するフーリエ成分波の相対的な大きさ(波数分布)によって左右される.したがって,被害をもたらすような津波は高角の逆断層タイプのものが多いことを勘案すると,たとえ近地津波であっても津波の波数分散効果を無視できるとは限らない.深海域における波数分散効果は,津波第1波の水位減衰,波長の伸長および分散波列の生成として表れる.これらの諸効果は,沿岸域における津波の増幅現象である共振特性のみならず浅海域における津波のソリトン分裂現象に決定的な影響を及ぼす.したがって,深海域における波数分散効果を無視できない近地津波が,どのような条件の津波なのかを把握し,その影響を正当に評価することは沿岸域の防災計画の策定上重要なことである.
 そこで,本研究では深海域における波数分散効果が近地津波の伝播に及ぼす影響について,過去に発生した近地津波を用いた数値解析から考察する.南海道沖,三陸沖,日本海における代表的な既往の近地津波5つを対象に,水深200m点の波形比較および初期水位に対するスペクトル解析から,たとえ近地津波であっても波数分散効果が無視できない津波があることを示す.
さらに,深海域における波数分散効果の影響を定量的に表す指標値を新たに定義し,数値解析において分散項の考慮が必要となる条件値を定めると共に,代表的な断層パラメータ諸量と波源の平均水深から簡便に算出できる評価式を導く。また,海底地盤の変動の継続時間の違いが波数分散効果に与える影響について検証する.最後に,1983年日本海中部地震津波を対象に深海域における波数分散効果が浅海域へ及ぼす影響について考察する.

2. 解析方法

(1) 代表津波の初期水位分布
 一般に,津波の初期水位分布は,静的断層パラメータからManshinha and Smylieの方法4)により求められた海底の地盤変位とする,本研究でも同様の方法で初期水位分布を求め,短軸方向に関する1次元伝播解析を利用して深海域における波数分散効果を考察する、その際断層パラメータにより様々な初期水位分布が考えられるが,特に重要視すべきは,沿岸域に甚大な被害をもたらした巨大津波であろう.津波防災対策の策定にあたり,それらの津波の断層パラメータを参考にすることが多いからである.そこで,ここでは南海道沖,三陸沖および日本海の3つの海域での代表的な5つの大規模津波に対して検討を行う.南海道沖としては1707年宝永地震津波5)および1946年南海道地震津波5),三陸沖として1896年明治三陸地震津波6)および1933年昭和三陸地震津波6),そして日本海として1983年日本海中部地震津波7)の合計5種類である.
 Fig.1はそれぞれの波源の水位鳥鰍図と波源短軸方向の水位断面図(三陸沖を除く津波に関しては,図中矢印の示す波源を対象)を示したものである.なお,主な断層パラメータ(断層深さd,断層面傾斜角\delta,すべり角\lambda,走行方向長L,傾斜方向長W,すべり量U)および波源域の平均水深\bar{h}をTable1に示す.特に,昭和三陸および日本海中部地震津波は比較的高角な断層モデルであり,昭和三陸津波は正断層モデルである.

(2) 支配方程式
 津波の波数分散効果を考慮するには,非線形分散波理論による支配方程式を使用すればよい.なお,今村8)は遠地津波の数値計算で,線形長波理論による支配方程式と空間格子および時間間隔の組み合わせによる数値分散性を利用して波数分散性の代替えとする方法を提案している.この方法を用いれば波数分散効果を含む津波の伝播が効率良く計算することが可能である.しかしながら,この方法では,方向的な分散特性を持つことが知られ,計算格子に対して45°方向の分散性の効果が弱く評価される9).通常,近地津波における計算格子は南北および東西方向の直交座標系によって定義されるが,日本海中部地震津波の様に津波の指向性の強い波源短軸方向が格子に対して45°方向に向く場合が存在する.よって,ここでは波数分散効果を正しく評価するため,一次近似の波数分散項を含むPeregrineの式10)を使用する.Peregrineの式(以下,本論文では非線形分散長波式と呼ぶ)の波数分散性は,高周波領域へ行くに従って微小振幅波理論に比べ強くなることが知られている11),比較的高周波帯まで微小振幅波理論と一致する分散項の型がMadisen and Sorensen12)によって提案されているが,津波計算にそのまま適用するには問題点が残っていることを見上ら13)が示唆している.
 鉛直方向に積分された連続式と波数分散項を含むPeregrine式は以下のように表される.
(1)
(2)
(3)
ここで,\etaは水位,hは静水深,Dは全水深,gは重力加速度,M,Nはそれぞれx,y方向の線流量を示す.
また,砕波,海底摩擦項および水平拡散項は対象が深海域を伝播する波であること,コリオリカは近地津波を対象としていることにより本計算モデルでは無視する。

(3)数値計算方法
 本数値計算では,上記の支配方程式を著者ら14)が提案した2段階混合差分法を用いて計算する.一般に,非線形項(移流項)を含む支配方程式を差分化する場合,計算の安定性から非線形項は1次精度の風上差分を採ることが多いが,原ら15)は非線形項および分散項を含む支配方程式で陰的解法を採用するときには,非線形項に2次精度の中央差分を採っても安定した計算が行えることを示している.よって,本計算でも非線形項に2次精度の中央差分を採用する.よって,連続の式の差分表示は以下の様になる.
(4)
一方運動の式は,x方向を示すと1段目はM*を計算分割値とした陽的差分式,
(5)
となる.2段目は以下に示す陰的差分式を使用する.
(6)
ここで,x方向の移流項には中央差分が採用されている.また,右辺の最後の2つの項は,1段目で生じる第一次近似の数値分散を抑制するために加えた誤差抑制項である.K_x,K_yは,クーラン数を表す.なお,y方向についても同様に差分化を行う.

(4) 波数分散効果の計算精度
 深海域における津波は,非線形性が無視可能なため微小振幅波理論で記述することができる。ここでは微小振幅波理論を真値とし,使用した支配方程式の深海域における波数分散効果の特性を1次元伝播解析から検証する.微小振幅波理論による計算には,高速フーリエ変換を利用した有限複素フーリエ解析を利用する,水平床における有限複素フーリエ解析による水面変動\eta(x,y)は,
(7)
と表される.ここで,Nは初期空間波形のデータ総数,nは成分モード,A_nは各成分モードに対する複素フーリエ係数である.また,c_nは各成分における微小振幅波理論の波速,
(8)
を表し,各成分の波数k_nは
(9)
であり,\deltaxはデータ間隔である.
 本研究で用いた非線形分散長波式の深海域における波数分散特性を確認するため,水深1000m毎に水平床伝播計算を実施し,微小振幅波理論との比較を行う.同時に波数分散効果を含まない非線形長波式の計算結果との比較も示す.比較計算に使用した津波初期波形は日本海中部地震津波である.これは,5つの代表津波の中でも最も波長の短い初期波形であり,,波数分散効果の影響が最も顕著に表れると予想されるためである.空間格子長は,5km程度までの後続する分散波列の波長が十分再現可能な様に空間格子を\delta x=100mとし,時間間隔を\delta t=0.05sとする.
 Fig.2は,近地津波における波源域から200m水深点までの平均的な距離を考え,津波が約50km伝播した時の空間波形を示したものである.図中の各表示は微小振幅波理論(白丸),分散項を含む非線形分散長波式(実線),分散項を含まない非線形長波式(破線)による計算結果を示す.
 第1波に限れば,いずれの水深においても水位の空間分布はよく一致している.一方,後続する分散波列に関しては,水深1000m,2000mのケースでは第2波以降の分散波列もよく一致している.しかしながら,3000m程度の水深では微小振幅波理論との分散関係に多少差が生じることから分散波列の再現精度が劣る.特に,第3波以降の分散波列は,波数分散効果が過大に見積もられる(すなわち,分散波の間隔が広がる)傾向にあり,4000m程度の水深では,第3波目の分散波が微小振幅波理論に比べ半波長程後退するなど,その影響が大きいと言える.これは本研究における非線形分散長波式では,波数分散性が強いこと,すなわち,各成分波の波速が過小評価で,しかも高周波成分ほど誤差が大きくなることに起因している、よって,今回用いた数値計算の分散項の形は,水深が3000m程度の海域を対象する場合には後続する分散波列の周期が過大に計算される特性を持つが,水深が2000m程度の水深では比較的良好な精度を有していると判断できる.
 一方,非線形長波式による計算結果では,波数分散効果による波高減衰を表現することはできず,特に水深が2000mを越える海域での津波は波数分散効果による波高の減衰や波長の伸長現象が著しい為,微小振幅波理論との差が大きくなる.ゆえに,日本海中部地震津波のように波源水深が2000mを越え,かつ比較的短い波長の津波に対しては,深海域における波数分散効果は無視できず.数値解析において分散項を考慮した計算が必要と考えられる.

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Fig.1 Initial tsunami profiles of 5 major tsunami-genic earthquakes and their cross sectional profile in the fault width derection
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Fig.2 Computed tsunami profiles generated by the 1983 Nihonkai-chubu earthqake by several constant water depth
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式(1〜9)
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Table 1 Fault parameters of 5 major tsunami-genic earthquakes and water depth

3. 深海域の波数分散効果

 上記の結果を踏まえ,先に示した代表的な津波5つの断面初期波形(Fig.1)を用い,沿岸津波高と相関性が比較的良いと考えられている200m水深地点16)での津波波高と周期の関係から深海域における波数分散効果の影響について考察を行う.海底地形はそれぞれの津波に関して波源領域から沿岸部を簡易的な地形に近似し,1次元伝播解析を行う.Fig.3は,左側に各代表津波の初期波形分布(数字は最大水位)および水深分布を,右側に水深200m地点における時間波形(数字は第1波の最大・最小水位)を示したものである.時間水位を示す図中で,太線は非線形分散波長波式,細線は非線形長波式による計算結果を示している.なお,計算条件は,空間格子を\deltax=100m,時間間隔を\delta t=0.05sとする.
 Fig.3より,波数分散効果による第1波の波高減衰,第1波の波長伸長,分散波列の形成などが確認できる,第1波の最高水位は,どの津波でも非線形長波式にくらべ約20%程度減衰しており,津波による大きな違いは見られない,しかし,第1波の波長伸長率や,第1波に対する後続の分散波の大きさに関しては,津波による違いが大きい.そこで,波谷から波谷(昭和三陸は波峰から波峰)までを周期と定義した場合の,各津波における周期伸張率および周期比について考察する.
 宝永および南海道地震津波のように波長が長く低角な断層タイプで比較的浅い水深で発生した津波では,非線形長波式に比べ,非線形分散長波式の第1波の周期伸張率(波数分散効果の考慮による周期伸張量)は,それぞれ6%および1%となる,一方,昭和三陸地震津波および日本海中部地震津波のように初期波形の波長が比較的短く波形勾配の大きな津波や平均的な波源水深が3000mを越える明治三陸津波に着目すると,宝永や南海道地震津波と比較して波数分散効果の影響が顕著に現れている.すなわち,明治三陸,昭和三陸および日本海中部地震津波における周期伸張率は,それぞれ19%,25%および17%となり,宝永や南海道地震津波に比べ,かなり大きな値となる.
 また,波数分散効果によって生じた分散波列の第1波の周期と第2波の周期比(第1波に対する第2波の大きさ)に着目すると,宝永および南海道地震津波では,それぞれ10%および9%であるのに対し,明治三陸,昭和三陸および日本海中部地震津波では,それぞれ,27%,34%および35%となる。これらの結果から,明治,昭和三陸および日本海中部地震津波は,波数分散効果の影響が大きな津波であると思われる.ただし,ここで使用した初期波形分布は,深海域において波数分散効果を考慮しないで決定したものであり,波形の精度としては多少の問題が残っている.しかしながら,各津波に対する波数分散効果の相対的な影響度合は同じである.よって,三陸地震津波や日本海中部地震津波の深海域における波数分散効果は無視することができない可能性があり,数値解析において波数分散項を考慮した計算が必要と考えられる.
(1) 初期水位スペクトルと波数分散効果
 以上の結果から,深海域における津波の波数分散特性は初期水位分布および津波が発生する平均的な水深に大きく左右されることが分かる.ここでは,初期水位分布の短軸方向における断面波形のスペクトル解析から,深海域における波数分散効果の影響を考察する.
Fig.(1)は,それぞれの代表津波における短軸方向の断面波形からフーリエ変換を用い,面積が1となるように規格化されたパワースペクトル.P*(k)を示したものである.また,Fig.(1)は,同パワースペクトルを各津波波源の平均的な水深を考慮し,横軸を相対水深k\bar{h}として採り直したものである(左軸と対応).また,同時に線形分散関係(●印・右軸と対応)を描いた.Fig.(1)から,宝永地震津波や南海道地震津波の持つエネルギーの波数分布は波数分散効果の影響が相対的に小さい場所,すなわち,線形長波理論の波速(Co=\sqrt{gh})と微小振幅波理論による波速(c_s=\sqrt{(g/k)tanh{kh}})の比(c_s/c_0)が1.0に近い領域に集中していることが分かる.
そのため,ほぼ線形長波理論に従って伝播し,Fig.3で示した様に波数分散効果の影響は少ない結果を得ることとなる.しかしながら,三陸地震や日本海中部地震では比較的広い波数帯にエネルギーが分散しているため,深海域における波数分散効果を無視することはできず,水位の大幅な減衰や波長の伸長,分散波列の生成が顕著に生じる.ゆえに,初期水位分布のスペクトル解析を行うことにより,その津波が持つ深海域における波数分散効果の影響度をフーリエ成分波の分布として把握することができる.

(2)波数分散効果指標1Dの定義
 1次元伝播計算およびスペクトル解析から,波源水深の深い明治三陸地震津波,波源水深が比較的深くかつ波形勾配の大きい昭和三陸地震津波や日本海中部地震津波の初期水位分布を有する津波では,深海域における波数分散効果が無視できない可能性があることが分かった.ここでは,初期波形分布のスペクトル解析から深海域における波数分散効果の影響度を定量的に与える指標値を定義する.
 津波の波数分散効果は初期水位分布と波源水深に大きく影響されることから,深海域での波数分散効果の大きさの目安となるような量として,波源短軸方向における1次元断面の波形パワースペクトルP*(k)と分散関係式による1次モーメントによって定義される量\deltaEを考える.すなわち,\deltaEを
(10)
と定義する.右辺第1項は規格化パワースペクトルの定義からその値は1であり,第2項の積分計算内のカッコ値は分散関係式を使うことができるので,式(10)は以下のように書き改められる.
(11)
ここで,\bar{h}は初期波源域の平均水深である.式(11)は,全ての成分波のエネルギーが線形長波式の波速(C_0)で進行すると仮定した場合の津波エネルギーフラックスと各成分波のエネルギーが微小振幅波理論の波速(c_s)に従って進行すると仮定した場合の津波エネルギーフラックスとの間の誤差に関連した量を示している.よって,式(11)を,深海域における波数分散効果の影響の大きさを表す指標値I_D(lndex of Dispersion effect)として以下のように定義する.
(12)
 以上の式を用いて5つの代表津波のI_Dの結果をTable2に示す.宝永地震津波や南海道津波地震の様に平均水深が浅く低角な断層モデルではI_Dの値は小さい.
一方,比較的に波源水深が大きい明治三陸地震津波や高角断層モデルである三陸地震津波や日本海中部地震津波では前者の津波にくらべ大きな値となる。なお,断層パラメータ自身が高々3桁程度の有効数字しかもたないと思われること,波源での平均的な水深を使っていることなどから,I_Dの有効桁数も2桁から3桁程度であると考えられる.そのため,Table2ではI_Dの値として小数点以下2位までを示した.

(3) I_Dと波数分散効果
 ここでは,深海域における津波に対する波数分散効果の考慮を判断できるようなI_Dの条件について考察する.
 Fig.6は,先に示した周期伸張率(R_T)とI_Dの関係を示したものである.ここで,日本海中部地震津波が三陸地震津波にくらべ,I_Dでは上回っているものの,周期誤差として下回っている原因としては,水深分布や伝播距離が考えられる.日本海中部地震津波の伝播距離は,Fig.3から明治三陸地震津波にくらべ約0.7倍であり,昭和三陸地震津波にくらべ約半分と短い.本研究で定義されたI_Dは,伝播距離が考慮されていないため,直接的にその影響を考慮することができない.そのため,I_Dの小さい三陸地震津波にくらべ,周期誤差が小さくなったものと考えられる.水深分布や伝播距離に関しては,問題が複雑になるため今回の研究では考慮していないが,第1波に対する非線形長波式と非線形分散長波式の周期伸張率が10%以上となるときを境に波数分散効果の考慮を判断すれば,I_Dの条件はおおむねI_D≧1となる.

(4) 断層パラメータとI_Dの関係
 初期波源に対するスペクトル解析や式(12)を介さず,断層パラメータや波源の平均的な水深から直接I_Dの値が算出できれば実用上大変便利である.そこで,既往津波波源の深海域における波数分散効果を簡便に算出できるよう,代表的な断層パラメータ諸量とI_Dとの関係を考察する,波源短軸方向の初期波形に大きく関与すると考えられる断層パラメータとして傾斜角\deltaと断層幅Wを選び,波源平均水深\bar{h}の変化に伴う初期波形のI_Dの計算を行う.もちろん,震源深さd,すべり量Uやすべり角\lambdaもI_Dに影響を及ぼすが,I_Dを決める大きな要因は波形勾配のような要素と波源平均水深であり傾斜角\deltaや断層幅Wに比べれば相対的に影響が小さい.また,多くのパラメータを考慮することは評価式を複雑化する.よって,I_Dが過小評価にならないよう断層深さはd=0kmとし,すべり角\lambdaの影響は傾斜方向成分のすべり量U_{\lambda}=Usin{\lambda}から対象とした津波の平均値U_{\lambda}=700cmを利用する.
 Fig.7は比較的高角な傾斜角\delta(°)として30,50,70を対象に,断層幅を20kmから120km,波源平均水深\bar{h}を1000mから3000mの範囲での\bar{h}/WとI_Dの値の関係示したものである、図中の直線は,\delta=30,50,70に対するものであり,
(13)
(14)
で定義される式である.ただし,I_D自体の有効桁数が高々3桁であることから,式(13)の\alpha,\betaの有効桁数もまた3桁であると解釈すべきである.したがって,式(14)における傾斜角\による小数点以下第3位の値に実用上の意味はなく,\deltaの作用は定数1.76および1.28の小数点以下第1位と第2位の値の補正に限られる。すなわち,傾斜角\deltaの数値のうち,10の位の変化のみが\alpha,\betaに反映される.以上の評価式を用いることにより,代表的な断層パラメータである傾斜角\delta,断層幅Wおよび波源平均水深汚から簡易的に既往津波の近似的なI_Dを算出することができる.得られた結果とI_D≧1の条件を使うことにより,深海域における波数分散効果を無視できず,支配方程式に分散項を考慮する必要があるか否かを判定することが可能となる.
(5) 海底地盤の変動時間と波数分散効果
 一般に,津波計算では地震による海底地盤の永久変位量をそのまま水位として与える方法で行う.実際の地盤運動では数秒から100秒程度の変動時間\tauを有することが知られているが,津波発生時の変動としては瞬時に海上面に変化が生じた場合と殆ど差がないことが確認されているためである17).但し,この結果は波数分散効果を考慮していない結果である.ここでは,深海域で波数分散効果が無視できないと判断された三陸および日本海中部地震津波の3つの初期波形を対象に,海底地盤の変動時間\tauと波数分散効果の関係を1次元伝播解析から検証する.なお,海底地盤の変位量は,変動時間に対して線形的に与える簡易的な方法を用い,海底地盤の変動時間は,1,2,3分とする.
 Fig.8は,Fig.3における水深200m地点の時間波形を\tauの違いによる非線形長波式と非線形分散長波式の結果を示したものである.図中細線は非線形長波式,太線は非線形分散長波式による結果を表している,同図から,\tauが大きくなるにつれて高周波成分の発生が抑えられるため,波数分散効果の影響は小さくなり,後続する分散波列の生成が抑えられる様子が確認できる.\tau=1分の場合,\tau=0分の時と比べ小さいものの,波高減衰や第1波の波長伸長および分散波列の形成など\tau=0と同様の波数分散効果が表れている。第1波周期の伸長率に関しては,\tau=0分の70から80%程度である.一方,\tau=2分,3分の場合は,I_D≧1でも波数分散効果の影響は小さくなり,第1波周期の伸長率は\tau=0分の10%以内と小さい.したがって,\tauが1分程度までの地震では,I_D≧1であれば波数分散効果を考慮すべきであると判定して良いと考えられる.逆に,\tauが2分以上になるような非常に変動時間が長い地震に関しては,I_D≧1であっても波数分散効果を考慮する必要はない.

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Fig.3 The initial tsunami profile (left) and computed time histories of tsunami height at the point of 200m depth (right)
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式(10〜12)
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Fig.4 Normalized power spectra of the cross sectianal tsunami profiles shown in Fig.1
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Fig.5 Normalized power spectra and the dispersion relation of the small amplitude surface wave theory
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Table 2 index of dispersion effect, I_D for each tsunami
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Fig.6 Comparison of the ratio of leading wave period computed by nonlinear long wave equation and nonlinear dispersive long wave equation at the point of 200m depth
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Fig.7 Relation between \bar{h}/W and I_D
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Fig.8 The effect of fault movement time \tau on the computed time histories of tsunami height of 1983 Meiji-Sanriku, 1933 Showa-Sanriku and 1983 Nihonkai一chubu earthquake tsunami at the point of 200m

4. 浅海域へ及ぼす波数分散効果

(1) 日本海中部地震津波の波数分散効果
 実地形による日本海中部地震津波を対象とした非線形長波式および非線形分散長波式による平面伝播解析から,水深200mおよび50m点の出力波形として深海域における波数分散効果が浅海域へ及ぼす影響ついて考察する.また,浅海域を伝播する津波を対象に,水深200m点から汀線までの代表的な直線距離を結んだ1次元伝播問題として非線形分散長波式による数値計算からソリトン分裂波の生成過程としての考察を行う.なお,平面伝播に関しては深海域が対象であり,1次元伝播に関してはソリトン分裂波の発生差異を対象とするため,砕波および陸上遡上は考慮しないものとする.
(2) 代表水深点での波形差異
 平面伝播解析の計算領域(水深分布,初期波源)および代表水深点の水位出力点位置をFig.9に示す.全ての計算領域に対して計算格子を\delta x=200mとし,時間間隔を\delta t=0.2sとする.また,図中●印は水深200m地点,■印は水深50m地点の時間水位出力地点を示しており,合計8つの代表水深点における時間波形の比較から深海域の波数分散効果の影響について考察を行う.
 Fig.10は代表水深点における時間的な水位変化を示したものである.水深200m地点の時間水位から,非線形分散長波式による計算結果(太線)は非線形長波式の計算結果(細線)に比べ波数分散効果の影響により後続する分散波列が表現され,津波第1波の水位は減衰し波:長が長くなる傾向が出ている.特に波源短軸方向にある200m水深点の点A,Bや50m水深点の点F,Eでは,他の点に比べその影響が顕著に現れた結果となる.この様子はFig.11に示す10分後の津波鳥敢図からも見られ,波源短軸方向で生成した分散波列が北秋田海岸南部へ向け伝播して行く様子が確認できる.
また,点Fでは第一波峰に比べ第二波峰の水位が高くなる.これは,後述する分散波列によって生じる第二波峰のソリトン分裂波の影響である.以上のことから北秋田海岸南部の沿岸域へ向かう津波は,深海域の波数分散効果の影響を大きく受けた津波が伝播したと考えられる。

(3) 第一波峰のソリトン分裂
 藤井ら18)は浅海域へ入射する津波波形によってソリトン分裂波の生成過程が大きく異なることを示している.そこで,浅海域へ入射する津波波形の違いによるソリトン分裂の発生差異を,平面伝播解析から得られた水深200m地点での水位出力を境界条件とした1次元伝播解析として考察する.対象とする1次元伝播の方向は深海域の波数分散効果が最も大きく作用する波源短軸方向の点Bと点Fを結ぶB-F方向(北秋田海岸南部ライン)および本津波において最大遡上高約15mを記録した点Cと点Hを結ぶC-H方向(北秋田海岸北部ライン)とする.Fig.12はB-FおよびC-Hから直線的に汀線までの断面水深分布を示したものである.
距離にして北秋田海岸南部ラインは北秋田海岸北部ラインに比べ約4km程短い,また,計算条件は,空間格子を\delta x=5.0m,時間間隔を\delta t=0.1sとする.
 また,既往波源を用いた数値解析では,深海域で波数分散効果を考慮することにより従来の非線形長波式による計算結果に比べ,沿岸域における津波高が過小評価される可能性がある.この場合,深海域にて波数分散効果を考慮した波源同定が必要となるが,実用的には困難である.そこで,最も簡単に津波高を上げる手法の一つとして,断層パラメータにおけるすべり量の修正が挙げられる.そこで,すべり量の傾斜方向成分碗を,点BおよびCの水位で非線形長波式による計算結果と同じになるように修正して得られた水位データも含め考察する.よって,200m水深点における入射波形の違いとしては,既往波源による平面伝播計算で非線形長波式を用いた場合(Case1),非線形分散長波式を用いた場合(Case2)および修正波源による平面伝播計算で非線形分散長波式を用いた場合(Case3)である。なお,入力波形の違いをFig.13に示す.

a) 既往波源によるソリトン分裂波
 北秋田海岸南部ライン(B-F)および北秋田海岸北部ライン(C-H)の汀線からの水深分布および距離と入射波形をCase1およびCase2とした場合の津波の空間波形をFig.14に示す図中,tは津波発生後の経過時間を示している.深海域で波数分散効果を受けるCase2は波高減衰が生じることから,波高減衰を受けないCase1よりもさらに浅い海域でソリトン分裂を生成する.そのためCase2を入射波形とした場合ではソリトン分裂波はCase1と比較して低い状態で陸上へ達し,遡上高も低く見積もられる可能性がある,また,北秋田海岸北部ライン(C-H)では,長谷川ら19)によって津波が集中することが示されている.したがって,1次元伝播計算では屈折による津波の集中は表現できないことから,実際の現象としては1次元伝播解析による結果よりも深い水深点でソリトン分裂波が生じることが予想される.

b) 修正波源によるソリトン分裂波
 同様に,Fig.14中にCase3を入力波形とした場合の結果を示す.Case3を入力波形とした場合では,Case1と入射最大波高で同等であるにも関わらずCase1よりも深い水深点でソリトン分裂が生じている.故に.Case3の増幅率はCase1に比べ大きく,遡上高も大きく見積もられる.これは,Case1に比べCase3の最大水位点が波形前方へ移動し,その分だけソリトン分裂を起こすタイミングが早まったためであると考えられる.すなわち,日本海中部地震津波では水深200mで非線形長波式による水位と同じであれば,深海域で波数分散効果受けた場合の方がソリトン分裂を起こしやすいと言える.なお,いずれも第1分裂波の波長は約50m程度であり,分裂波を再現するためには格子間隔を最低でも10m以下と設定することが望ましい.
 この様に,浅海域のソリトン分裂にとって入射波形は極めて重要な要素である.深海域の津波伝播を精度良く再現することは,ソリトン分裂を議論する上で必要不可欠であり,波数分散効果を含む波源同定や平面伝播計算を含め,さらなる検討が必要である。
(4) 分散波列によるソリトン分裂
 Fig.10における水深 50m点Fでの時間水位において,第一波峰の水位を大きく超える第二波峰が見られる.そこで,Case2を入力波形とした直線B-F上の分散波列の伝播の様子に着目した.Fig.15は分散波列の伝播計算の結果と水深分布を示したものであり,tは経過時間を示す.深海域の波数分散効果によって生じた分散波列は,第一波峰に比べ水深が70mと比較的深い地点から分裂を始め,水深50m地点では第一波峰の水位を大きく超えることが確認できる.もちろん,砕波による波高の減衰はあるが,波源短軸方向への津波伝播では深海域で発生した分散波列がソリトン分裂を生じ,第一波峰の水位を超える場合があり注意をしなければならない.
 以上のように,浅海域での津波の伝播を精度良く再現をするためには深海域からの津波入射波形に大きく依存をする.沿岸構造物への波力評価や土砂堆積問題を精度よく再現するためにはソリトン分裂波の波形再現も十分な精度を保たなければならない.またソリトン分裂を起こす津波では砕波を考慮する必要があり,砕波のタイミングを上手く計算上に表現するためにも深海域からの入射波形を正しく表現することは重要であり,日本海中部地震津波では深海域における波数分散効果を考慮した波源モデルの検討も必要である.

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Fig.9 Water depth contor and the initial tsunami profile and output points (right) for the numerical simulation of 1983 Nihonkai-chubu earthquake tsunami
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Fig.10 Time histories of simulated tsunami heights at the points A-D(200m depth) and E-F(50m depth)
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Fig.11 Computed tsunami profiles, by the non liear dispersive long wave equation (left) and the nonlinear long wave equation (right)
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Fig.12
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Fig.13
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Fig.14 Computed tsunami spacial profiles along the lines C-H (left) and B-F(right) for there cases (Case1: incident waves computed by nonlinear wave equation. Case2 : incident waves computed by noline
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Fig.15 Disintegrated waves of dispersion wave along the line B - F

5. おわりに

 深海域における波数分散効果が近地津波の伝播に及ぼす影響について,代表的な5つの近地津波を用いた数値解析から考察した.その結果,宝永・南海道地震津波を対象とする数値計算では深海域での波数分散項を無視することが可能であるが,三陸・日本海中部地震津波を対象とした数値計算では深海域でも分散項を考慮する必要があることを示した.また,深海域における波数分散効果の影響を定量的に表す指標値I_Dの定義から,ほぼI_D≧1であるような初期水位を有する津波を対象とする数値計算では深海域でも分散項を考慮する必要があることを示し,代表的な断層パラメータ諸量と波源平均水深から簡便にI_Dを算出できる評価式を導いた.さらに,海底地盤の変動時間が波数分散効果に及ぼす限界はおおよそ1分程度であることを示した.
日本海中部地震津波を対象とした伝播解析では,深海域の波数分散効果が浅海域へ入射する津波の伝播に与える影響は大きく,その影響がソリトン分裂波の生成に大きく関与すると共に,波源短軸方向では分散波列がソリトン分裂によって第一波峰の水位を超える場合があることを示した.もちろん,使用した波源モデルが波数分散効果を考慮していないことや,浅海域では1次元伝播解析に限定したことから,そのまま現地津波へ適用するには多くの悶題が残っており,津波伝播計算を精度良く再現するためにも非線形分散長波式を支配方程式とした現地津波計算に適応できる実用的な津波計算モデルの開発が望まれる.

謝辞

本研究を行うにあたり,岩手県立大学首藤伸夫教授から多くの貴重な御助言を頂いた,また,本研究は科学研究助成金(代表:後藤智明,課題番号:12650520)によって行われた.ここに記して謝意を表す.

参考文献

1)Kajiura,K.:The Leading Wave of a Tsunami, Bullentin of the Earthquake reserch Institude, Vol. 41, PP.535-571,1963.
2)首藤伸夫:津波の計算における非線形項と分散項の重要性,第23回海岸工学講演会論文集,pp.432-436,1976.
3)Kakutani,T : Effect of an uneven bottom of gravity waves, J.Phy.soc.Japan,Vol.30,No.1,PP.272-286,1967.
4)Manshinha, L. and Smylie, D. E. :The displacement fields of included faults, Bull. Seism. Soc. Am., Vol. 61, pp.1433-1440,1971
5)相田勇:南海道沖の津波の数値計算,東京大学地震研究所彙報,Vol,56,PP.713-730,1981.
6)相田勇:三陸沖の古い津波シミュレーション,東京大学地震研究所彙報,Vol.52,pp.71-101,1977.
7)相田勇:1983年日本海中部地震津波の波源数値モデル,東京大学地震研究所彙報,Vol.59,pp.93-104,1984.
8)今村文彦:数値計算による予警報の可能性に関する研究,東北大学博士論文,p.161,1989.
9)佐山順二,今村文彦,後藤智明,首藤伸夫:外海域における津波の高精度計算法に関する検討,第34回海岸工学講演会論文集,pp.177-181,1987.
10)Peregrine,D.H. : Long waves on a beach, J. F. M., Vol.27, Part 4, pp.815-827,1967,
11)立川敬士,後藤智明,服部昌太郎:非線形分散波理論を用いた数値解析の高精度化の検討,海岸工学論文集,第43巻,pp,1-5,1996
12)Madisen, P.A. and Sorensen, O.R.: A new form of the Boussinesq equations whith improved Iinear dispersion characteristics, Part 2, A slowly-varying bathymetry, Coastal Eng., Vol.18, pp.183-204,1992.
13)見上敏文,岩瀬浩之,藤間功司,後藤智明:ブシネスク方程式のソリトン解について,海岸工学講演会論文集,第47巻,pp351-355,2000.
14)岩瀬浩之,見上敏文,後藤智明:非線形分散波理論を用いた実用的な津波計算モデル,土木学会論文集,No.600/2-44, pp.119-124,1998.
15)原 信彦,岩瀬浩之,後藤智明:非線形分散波理論式に関する多段階混合差分スキームの提案,海岸工学講演会論文集,第45巻,pp.26-30,1998.
16)相田 勇:200m等深線上の津波波形と浸水高,地震第2輯,第30巻,第1号,pp.11-24,1977.
17)Aida,I. : Numerical Experiments of the Sea Bottom, Bull. Earthq. res. Dnst, Vol.47,pp. 849-862,1969.
18)藤井直樹,大森政則,高尾 誠,金山 進:津波の流速計算に関する研究,海岸工学講演会論文集,第44巻,pp.291-295,1997.
19)長谷川憲一,鈴木孝夫,稲垣和夫,首藤伸夫:津波の数値実験における格子間隔と時間積分間隔に関する研究,土木学会論文集,No.381/2-7, pp.111ー120, 1987.

(2000・10.18受付)

THE DISPERSION EFFECT ON THE PROPAGATION OF TSUNAMI IN DEEP SEA REGION Hiroyuki IWASE, Chiaki GOTO, Koji FUJIMA and Kunihiko IIDA

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参考文献

津波の伝播計算を対象とした非線形分散長波式の比較 岩瀬浩之1・見上敏文2・後藤智明3・藤間功司4 1正会員 株式会社エコー 沿岸デザイン本部環境水工部(〒221-0052神奈川県横浜市神奈川区栄町10-35) 2正会員 株式会社アルファ水工コンサルタンツ 技術部技術3課 課長 3正会員 工博 東海大学教授 工学部土木工学科 4正会員 工博 防衛大学校助教授 システム工学群建設環境工学科

Abstract

 いくつかの断面平均および断面積分形の非線形分散長波式から線形分散関係式および孤立波に関する第1次近似解を導いた.断面平均形の式の孤立波解は,KdV式の解に比べ急峻な波形になる,一方,断面積分形の式は,比較的幅広な波形となる.津波のソリトン分裂に関してこの相違は重要である.本研究では,線形分散特性および孤立波形の比較から,そして水理実験と数値解析の比較から津波の数値解析に適切な非線形分散長波式について考察した.その結果,断面積分形のPeregrine式またはMadson&Sorensen式が適切であるという結論を得た.
Key Words : nonlinear dispersive long wave equation, solitary-typed solution, tsunami

1. はじめに

 水面波の非線形性および分散性を考慮した波浪の伝播変形を解析する目的で非線形分散長波式が使われるようになってきた.これらの非線形分散長波式は,KdV1)式と異なり任意海底形状の2次元平面解析を対象としたものであり,1966年および1967年に発表されたMei&LeMehaute式2)やPeregrine式3)を基礎としたものである.近年になり,分散項に有限振幅性を考慮した式として後藤4)が,そして線形分散特性を改善した式がMadsen&Sorerlsen5),Nwogu6),Beji&Nadaoka7),Cruzeもal.8)などにより提案されており,沿岸波浪の変形などにこれらの修正式を利用した数値解析が多数実施されている.
 本研究では,津波の伝播・変形に適した非線形分散長波式を検討することを主たる目的として,現在まで種々の解析に利用されている非線形分散長波式の比較検討を行う.津波の伝播・変形において特徴的なことは,深海域でも波数分散現象が起こること,そして浅海域の最終的な変形過程において津波がソリトン分裂を起こしたり波状段波となることである.したがって,線形分散以外に非線形性と分散性の相互作用まで踏み込んだ考察が必要である.
 なお,弱非線形性そして弱分散性を仮定した非線形分散長波式は,波高水深比および相対水深がともに小さいとした摂動展開により導かれる,本研究で比較検討対象とした8種類の式群は,全てこの摂動展開の第2次近似の範囲で同一精度である.しかしながら,分散項と非線形項の大きさが拮抗してくるソリトン分裂現象では,分散項の形の違いにより波高や波形の急峻度が多少異なったものとなる.したがって,津波解析に適切な非線形分散長波式を採用しなければ,流体力や陸上遡上高といった被災のメカニズムに関する評価を正確に行うことができない.そこでまず,水平床の各非線形分散長波式から,深海域の津波伝播に重要な線形分散関係式を導く,次に,浅海域の津波伝播に重要な孤立波に関する解を導き,その波速や波形の急峻度から各非線形分散長波式の非線形項と分散項の特性を考察する.続いて,非線形性が無視可能な深海域における津波の波数分散現象に関して日本海中部地震津波を事例として複素フーリエ解析と実用レベルの平面伝播解析から検討を行う.最後に,ソリトン分裂現象に関する水理実験結果と数値解析結果の比較検討することにより,津波の数値計算に適切な非線形分散長波式を検討する.

2. 非線形分散長波式と線形分散特性

(1) 非線形砂散長波式
 代表的な非線形分散長波式としては,断面平均流速で記述するPeregrine式,Beji&Nadaoka式,Cruz式と水深方向に積分して流量フラックス(単位幅流量)で記述するMadsen&Sorensen式がある.これ以外にも底部流速、表面流速や任意水深流速で表したMei&LeMehaute式,Diugemans式9)やNwogu式がある.
しかしながら,津波計算で重要となる防波堤からの越流や陸上遡上に対し,代表点流速で記述された方程式を使うことは技術的に難しく,構造物や地形による急激な水深変化に伴う代表点流速と流量の換算に際し精度が低下する可能性がある、Kennedy et al 10)は,遡上域に細いスリットを仮定することによって,Nwogu タイプの式で遡上を計算可能にする方法を開発しているが,数値的取り扱いが煩雑であり,また,代表点流速から流量への変換に際し精度が低下する可能性も否定できない.いずれにしても,代表点流速を使用したNwoguタイプの式は,複雑な陸上遡上や構造物を考慮する必要がある津波数値計算には不向きであると言える.
 本研究において,検討の対象とした式は,断面平均流速あるいは流量フラックス表示のPeregrine式,Beji&Nadaoka式,Cruz式,Madsen&Sorensen式とその類似式である.水平床を仮定して,具体的に式形を示すと下記のようになる.すなわち,断面平均表示としては,連続式が
(1)
運動式は以下の3種類の非線形分散長波式である.
(2)
(3)
(4)
断面積分表示としては,連続式が
(5)
運動式は以下の5種類の非線形分散長波式である.
(6)
(7)
(8)
(9)
(10)
ここに,uは断面平均流速,Qは流量フラックス(=u(h+\eta)),\etaは水位、hは静水深,Dは全水深(=h+\eta),gは重力加速度である.なお,式(2)が本来のPeregrine式,式(4)がBeji&Nadaoka式とGruz式(水平床近似では同一となる),式(10)がMadsen&Sorensen式に該当する.また,式(6)は,岩瀬ら11)が津波解析に利用しているものであり,水深方向に積分したPeregrine式と名付けてもよい式である.式(7)は,式(6)の分散項中の静水深を全水深に置き換えたものである.さらに,式(8)は,有限振幅性を考慮した分散項で,後藤が誘導したアーセル数が大きい場合の非線形分散長波式の簡略式である.また,式(3)および(9)は,Boussinesqによって導かれた式12)を連続の式と運動の式に分割し,それぞれ断面平均流速および流量フラックスで表記したものである.
 理論方程式の性質を検討するには,線形分散関係式,波速,群速度,2次成分波の振幅などを比較する方法がある.ここでは,深海域の津波の挙動を再現するために重要な線形分散特性と,浅海域のソリトン分裂を再現するために重要な孤立波解とその波速を各理論方程式から導き,比較検討を行う.

(2) 線形分散特性
 検討対象とした連続式そして8種類の運動式の非線形項を無視し,波数分散性を考慮した波速cを用い,波高をH,波数をkとしてxの正の方向へ伝播する波を\eta=Hsink(x-ct)とおくと,∂/∂t=-c∂/∂xそして連続式からQ=hu=c\etaである.よって,比較的簡単に各式の分散関係が求まり,式(2),(6),(7),(8)に関して,
(11)
式(3),(9)に関して,
(12)
そして,式(4)および(10)に関して,
(13)
となる.ここに,C_0(=\sqrt{gh})は線形長波の波速であり,また\delta_0=(kh)^2である.なお,式(12)は\delta_0>3でcが虚数になり,時間に対して水位の振幅が指数関数的に増加する解になってしまう.また,式(13)は,\delta_0が大きくなると,\sqrt{1/6}に漸近するから,高周波成分の波速がC_0/\sqrt6以下にならないという性質がある、 各式の波数分散特性の違いを図一1に示す.図には,Kdv式
(14)
の分散関係式
(15)
および線形表面波の分散関係式
(16)
も示している.
 式(3),(9)は,kh=0,6以上で線形表面波の差は1%を越え分散効果が過大となる.また,式(2),(6),(7),(8)の分散関係は,kh=1.0程度までであれば線形表面波と差は1%に満たない.しかし,kh=1.0を越えると線形表面波の分散関係から外れ高周波成分の波速が遅くなり,分散効果が線形表面波に比べ相対的に大きく評価されている.一方,線形分散に適合するように改善された式(4),(10)は,線形表面波の分散効果に比べ過小評価となる傾向にあるが,kh=2.4程度までは線形表面波の差は1%未満となり良好な分散関係がみられる.よって,線形分散特性から判断すると,式(4),(10)が優れていると言える.また,式(3),(9)は,\delta_0>3で永年項が発生するため,高波数成分が卓越する場合,安定した解が得られない可能性があり,津波の数値計算への適用には問題がある.

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式(1〜16)
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図ー1 線形分散関係

3. 孤立波の第1次近似解

(1) 解法
 遠浅な浅海域を伝播する津波は,ときによってソリトン分裂を起こす場合がある.ソリトン分裂波の挙動は,支配方程式における非線形効果と波数分散効果の相対的なバランスが重要な役割となる、ここでは,各支配方程式における1次近似の孤立波解を導き,非線形項と波数分散項の相対的な大きさをKdV式との比較から検討を行う.
 Peregrrine式など断面平均流速で記述されている非線形分散長波式は,全水深Dをかけると下記のように流量フラックス表示の式へ書き換えることができる.
(17)
したがって,式(2),(3),(4)は,それぞれ
(18)
(19)
(20)
と変形できる.以上のことから,検討対象とする8種類の運動式の局所項,移流項(非線形項),静水圧力項は同一形となり,違いは分散項に限定され,本研究においては,この断面積分形の式を利用した解析を行う.
 いま,一例として最も簡単と思われる連続式(5)と運動式(6)からなる非線形分散長波式に関する孤立波の第1次近似解を導く.孤立波の波形として
(21)
を仮定すると,線形分散関係式の導出の場合と同様に∂/∂t=-c∂/∂xと連続式からQ=c\etaが成り立つことがわかる.ここで,\epsilon=\eta/h,\delta_0=(kh)^2とおくと,
(22)
(23)
(24)
(25)
となる,故に,非線形分散長波式(6)は,
(26)
と変形できる.したがって,定常的な孤立波の解が存在するためには,O(\epsilon_o)の範囲で
(27)
すなわち,
(28)
および
(29)
が恒等的に成立する必要がある.故に,
(30)
および
(31)
であり,波高水深比\epsilon_0が与えられれば,対応する孤立波の波形が定まったことになる.なお,式(18),(20)は,分散項の取り扱いが多少複雑となるが,
(32)
であることに留意すると上述の方法で孤立波の第1次近似解を求めることができる.

(2) 孤立波の解の比較
 運動式(6)以外の7種類の運動式に関して,上述と同様な解析によりO(\epsilon_o)の範囲でそれぞれの孤立波の第1次近似解を導き,相対水深と波速比の違いとして整理したものが表一1である.仮定した孤立波の解は,
(33)
であるので,\sigma_0が小さいほど幅広の孤立波形であり,大きいほど急峻な孤立波形であることを意味する.したがって,KdV式に比べ,式(6),(7),(8),(10)の孤立波の解が幅広であり,式(2),(4),(9)が急峻となる.
特に,断面平均表示の式(2)を利用した数値解析において,既往の研究11),13)により算出される波高が過大になりすぎることが指摘されており,このことは導出した孤立波の解の形とも符合する.なお,孤立波の波形は,分散項と非線形項の相対的な大きさを表していると考えることができる.すなわち,非線形項は波形を前傾化すなわち急峻にする方向に作用し,分散項は幅広の方向になるように作用する。したがって,急峻な解は,非線形項に比べ分散項が相対的に小さいことを意味し,逆に幅広の解は非線形項に比べ分散項が相対的に大きいことになる.
 また,KdV式の解には保存則が成立することが知られている.最低次の保存則は,波形の面積が一定に保たれることを意味する,検討対象とした非線形分散長波式群は,KdV式と等価でないため,この様な保存則が厳密に成立するかどうか分からないが,ここでは波形の面積が保存されると仮定して波形の急峻度を調べてみる.図一2は,波高水深比\epsilon_0=0.5のKdV式の孤立波解と等面積となる波形である.同図から,そして解の面積SがS=2Hh/\sigma^{1/2}_0と計算でき,波高HがH=S\sigma^{1/2}_0/{2h}で与えられることから判断できるように,相対水深\sigma_0が小さくなる運動式がより高いソリトン波高になることがわかる,また,Laitone14)の第2次近似ソリトン解がKdV式の解に比べ幅広となること,そしてKdV式の解でも水理実験結果と相当良好な一致を示すことがNagashima15)の研究により明らかにされていることなどを勘案すると,少なくともKdVの解を大きく上まわる波形には問題があると判断できる.各式の波高水深比による波速比の違いを図一3に示す。この図から,やはり過度に急峻なソリトン波形となる非線形分散波式は,KdV式の波速より大幅に過大となる, 以上の結果から,あくまでも孤立波の第1次近似解の特性という考察範囲であるが,津波の浅海域におけるソリトン分裂としての伝播・変形を取り扱うと,式(2),(4)そして(9)は過大評価,式(7),(8)は過小評価であると考えられる.故に,式(3),(6)そして(10)を用いることが望ましいと言える.

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式(17〜26)
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表ー1 孤立波解の比較
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図ー2
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図ー3
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図ー4

4. 数値解析による深海域の津波伝播

(1) フーリエ変換による数値解析
 線形分散特性の比較検討により,潮皮解析には深海域では式(4),(10)が適していることを示した・一般に,近地津波では波数分散効果が無視できるものと仮定しているが,近地津波であっても深海域の分散性が無視できない津波が存在するこを著者らは示している16).特に深海域では非線形性が無視できるため線形分散性によってのみ伝播変形の精度が決定される.そこで,深海域の津波の伝播に関して式(6)(=式(2),(7),(8))と式(10)(=式(4))の比較を行う,式(9)(=式(3))は,線形分散特性の精度が劣り,かつkh=\sqrt3以上で発散するため除外した,対象とする初期波形は,相田17)により推定された日本海中部地震津波の指向性の最も大きい方向に関する断面波形であり,非線形分散長波式の水深3000mの一定水深を15分間,約150km伝播させた場合の空間波形の比較を行う.なお,波形\etaは高速フーリエ変換により初期波形を複素フーリエ係数.A_nに分解し,
(34)
と計算している.ここに,k_nはn番目のフーリエモードに対応する波数そしてc_nは各式のフーリエモードに対応する波速である.
 図一4は,初期波形に対する各線形分散関係を考慮した高速フーリエ変換から得られた空間波形である.図から判断できるように,式(6)および(10)による計算値は,ともに比較的良好に線形表面波から算定した主峰と分散波列を近似している.特に,式(10)を利用した計算値の精度が良い.ただし,式(13)から明らかなようにkhすなわち\sigma_0が大きくなると線形表面波の分散関係から徐々に離れ,c/c_0=\sqrt{1/6}=0.408に漸近するという特性がある.通常の波浪のような水深が比較的浅く連続的な波を解析する場合には,このことをさほど重要視する必要がないと思われるが,深海域の津波のような一山一谷の波の伝播現象を取り扱う際には,ある程度以上の高波数成分がほぼ同一の伝播速度で進むため,図一4下のx=60km付近で見られるような分散波列の終端部にエネルギーの一部が集積して生成される終端波が生じる.浅海域においては,非線形性によりさらに高周波成分が生成されるため,場合によっては,このことが大きな問題となる可能性がある.

(2) 差分式による数値解析
 そこで,式(6)および(10)を2次元に拡張した支配方程式を用い,日本海中部地震津波を対象とした平面伝播計算から終端波の検討を行う.差分法における計算スキームとしては混合差分法10)を用いる.差分式の一例として,連続式(5)と運動式(6)に関するものを下記に示す.混合差分法は,陽的に取り扱う1段目の計算と陰的な2段目の計算に分けられ,1段目の連続式の計算が,
(35)
運動式の計算が
(36)
で表される.2段目は運動式の移流項および分散項に関する計算であり,
(37)
となる,ここに,j,nは差分格子番号を表し,時間そして空間の差分格子間隔を\delta t,\delta xとおくと時間および空間座標がそれぞれt=n\delta t,x=j\delta xで表される.差分式を見ると明らかなように混合差分スキームは,分散項を含め全ての項が時空間に対して対称な差分形となっている.また,移流項に関しては,時空間に中央差分として計算する形式となっている.このように,各種非線形分散長波式の比較に混合差分法を用いた理由としては,打ち切り誤差(数値分散)がADI法などのほかのスキームに比べ小さいことによる.なお,混合差分法の打ち切り誤差特性の詳細に関しては別の機会に報告する.
 図ー5は津波初期波形分布と200m深等深線を描いたものである.空間格子は実用的なレベルを考慮し,空間格子を\delta x=\delta x=400mの正方格子,時間ステップを\delta t=O.2sとする.図ー6は,図ー5に示す200m代表水深点(A〜D)における水位経時変化を示したものである.線形分散特性と同様,式(6)の結果は式(10)に比べ分散波列の位相が後退するものの,第1波,第2波には大きな差異は見られず,終端波の影響も確認できない.また,図一7は,10分後の津波波形を示したものである.水位比較と同様,この図からも同様に終端波の影響は確認できない.平面伝播では,運動の水平方向への広がりに加え,海底地形による反射・屈折および数値分散性の影響から高周波成が分抑えられたこともあり,今回設定した空間格子の大きさ(400m)では,式(10)を津波数値計算に適応することに問題はないと言える.一方,線形分散特性は,式(10)の方が式(6)より優れているが,図ー6の結果からは式(6)と式(10)の問に顕著な差が見られない。したがって,遠地津波の場合や,近地津波でも細かな格子を使った詳細な計算を行う場合には,式(10)の優位性が期待できるものの,近地津波に対して,現時点で実際に使用されている程度の格子間隔を用いる場合,両者の差はそれぼど大きくないと言える.

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式(34〜37)
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図ー5 1983年日本海中部地震津波初期分布と200m等深線
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図ー6 200m水深地点の水位経時変化
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図ー7 10分後の津波波形

5. 数値解析による浅海域の津波伝播

(1) ソリトン分裂としての数値解析
 ここでは,浅海域を伝播する津波を対象とし,水理実験と差分法による数値解析の比較を通じて,非線形効果と分散効果の相互干渉で起こるソリトン分裂現象に関する非線形分散長波式の特性について考察する.対象とする支配方程式は,式(2),(6),(8)および(10)である.式(4),(7)は孤立波の第1次近似解から判断して。
それぞれ式(2)および(8)と同様な特性があることがわかっているため割愛した.また,式(3)および(9)は,線形分散特性が劣り深海域から浅海域までの連続的な津波解析に不向ぎであることから除外した.平面解析同様,差分スキームは2段階混合差分法を利用する.

(2) 水理実験
水理実験には,図ー8に示す東海大学工学部土木工学科所有の全長221m,幅0.5m,高さ0.8mの両面ガラス張りの造波水槽を使用した。造波機はパソコン制御型のピストン平板タイプである.水底形状は,波形の前傾化を促すための勾配3/20の斜面部とソリトン分裂の様子を観測するための・様水深の水平床部を組み合わせたものである.ただし,実験装置の全長が22mと短いため,定常波形としての孤立波に関する観測が困難であり,比較検討はソリトン分裂の変形過程の一部に制限される.また,検討する支配方程式群は,水平床を仮定したものであるため分散項中の水深勾配項は考慮されていない.水理実験装置には勾配3/20の斜面部を有するが,式(6)の計算値と,式(6)で水深勾配を考慮した式の計算値(波高計Bの位置)との比較から,水位に大きな差が見られなかったことから,本実験装置程度の水深変化によるソリトン分裂への影響は小さいものと判断した.
 数値解析と比較する実験ケースは,計測範囲で砕波が起こらない事例(実験ケース1)と砕波が起こる事例(実験ケース2)の2種類である.すなわち,実験ケース1は,上部水深(水平床部水深)が0.106m,A点の波高が0.024m,水平床部の波高水深比の変化が0.26から0.45であり,実験ケース2は,上部水深(水平床部水深)が0,12m,A点の波高が0.047m,水平床部の波高水深比の変化が0.44から0.86である.なお,計測には,図中のAからKの記号で示す11本の容量式波高計を利用している、ただし,図に示しているのは,実験ケース1に関する波高計の配置であり,実験ケース2に関しては砕波位置を考慮して波高計の位置を変えている.なお,便宜上水平床開始する点(波高計B)を伝播距離の原点とする.

(3) 実験値との比較
 波高計A点で観測された水位時系列データを境界値とし,式(2),(6),(8>および(10)の運動式を用いて\delta t=0.005s,\delta x=0.02m(クーラン数は2ケースともに約0.5)として行った計算値と実験値を比較したものを図一9および図一10に示す.
 図一9は,それぞれ実験ケース1(左図)および実験ケース2(右図)に関する水位の空間分布および最大水位分布であり,白丸が実験値の最大水位,破線および実線が各方程式による計算値の最大水位,そして細破線が1s毎の運動式(6)および(10)の空間水位である.
なお,図の横軸は,波高計設置位置のA点を基準とする距離である.砕波が起こらない比較的波高水深比が小さな実験ケース1(図一9左)では,孤立波の第1次近似解の急峻度特性から推定できるように,ソリトン分裂が始まると式(2)の計算結果は,増幅率が過大評価となり実験値に比べ波高が高く,式(8)の計算結果は,増幅率が過小評価となり実験値に比べ波高が低くなる.
一方,式(6)および(10)の計算結果は,実験値とかなりの精度で実験値と一致する.砕波が起こる比較的波高水深比が大きな実験ケース2(図一9右)でも,各式による計算結果による波高増幅の傾向は同じである.特に,式(6)および(10)の計算結果は,両図から判断できるように,波高水深比0.65程度までは実験値と良く一致する.しかし,波高水深比が0.65以上となる範囲では増幅率が過小評価となり,実験値との差異が見られる.

 図一10は,計算値と実験値の水位水位の経時変化を表したものであり,図左は実験ケース1の6.00m地点,右図は実験ケース2の7.25m地点(砕波点〉のものである.波高水深比が小さい実験ケース1の場合には,波形の形状を含めた式(6)と(10)の計算値の精度が高いことが分かる。式(2)は波高が過大評価で波速も速すぎる.式(8)は波高が過小評価で波速も遅すぎる結果を与えている.式(6)と(10)の結果を比べると,波高に関してはほとんど差が無く,位相に関しては僅かに式(6)の方が実験値に近い結果を与えている.また,実験ケ〜ス2の場合,式(G)と(10)は,砕波直前の急激な波高の増幅効果を再現できない.これは,岩瀬らによる研究18)から,鉛直積分型の非線形分散長波式の限界であると考えられる.なお,図一10右上の図で,式(2)の第1波波高が実験値と一致しているが,式(2)は増幅率が過大評価のため,たまたま砕波波高と一致したものと考えられる.
 以上のように,実験値と計算値の比較から,砕波点近傍における波高増幅が過小評価になるものの,浅海域のソリトン分裂については式(6)および式(10)が優れていることが分かる.式(6)と(10)の結果に大きな差はないが,ソリトン分裂波の位相まで考慮すると,僅かながら式(6)の方が式(10)に比べて優れている.ただし,第2波目以降の分裂波形および砕波直前の急激な波高増幅に伴う実験値と計算値の差異に関しては,何らかの修正モデルを検討して行く必要があり,今後水理実験との詳細な比較を通じて検討を行う予定である.

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図ー8 実験装置
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図ー9 空間水位分布の比較
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図ー10 水位経時変化の比較(ケース1:6.00m地点,ケース2:7.25m地点)

6. おわりに

 非線形分散長波式は,O(\epsilon_0)=O(\sigma_0)≪1.すなわちアーセル数U_r=\epsilon_0)/\sigma_0がO(1)と仮定して摂動展開を利用して導かれる.摂動展開の2次近似では,検討対象とした8種類の運動式はすべて同じオーダーである.しかしながら,その孤立波の第1次近似解は大きく異なる.津波の伝播・変形を対象とする場合には深海域では線形分散特性が,また,浅海域のソリトン分裂では非線形性と分散性の相対的大きさを意味する孤立波の第1次近似解の急峻度が特に重要である.これら理論的な考察および水理実験を含む数値解析との比較から,深海域では式(10)が優れている。ただし,近地津波で実用的な大きさの格子を使っている範囲では式(6)とそれぼどの差はない.浅海域のソりトン分裂としては,式(6),(1のがほぼ同程度だが,式(ののノ∫が僅かに優れている.したがって,深海域から浅海域までの連続的な津波計算として,式(6),(10)は他の支配方程式に比べ優れており,式(6),(10)にはそれほど大きな差はないと言える.

謝辞

本研究をまとめるにあたり東海大学工学部土木工学科水工研究室の学部生および大学院生諸君の助力を得た.また,本研究は,文部科学省科学研究費(基盤研究(B)(1)代表:入江 功九州大学教授,基盤研究(C)(2)代表:後藤智明)を利用して実施した.ここに記して謝意を表す.

参考文献

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構と数:値解析の誤差特性に関する一考察,海岸工学論文
集, 第47巻,pp.21-25,2000.

(2001,2.19受付)

A COMPARATIVE STUDY OF NONLINEAR DISPERSIVE LONG WAVE EQUATIONS FOR NUMERICAL SIMULATION OF TSUNAMI Hiroyuki IWASE, Toshifumi MIKAMI, Chiaki GOTO and Koji FUJIMA

The dispersion relations and the approximate solutions of solitary-wave type are derived for several depth-averaged and depth-integrated nonlinear dispersive long wave equations. Solutions of depth-averaged equations for solitary wave tend to provide steep wave profile with narrow-width and high-wave hight compared with KdV solution. On the other hand, solutions of depth-integrated equations for solitary wave provide wide wave profile with wide-width and low-bight. On wave deformation and disintegration to the solitons, the difference is quite important. Not only theoretical examinations but also laboratory and numerical experiments show that depth-integrated Peregrine equation and Madsen & Sorensen equation are suitable for numerical analysis of tsunami.

遠地津波の数値計算に関する研究 その1 支配方程式と差分格子間隔 運輸省港湾技術研究所*1 後藤智明 東北大学工学部土木工学科*2 今村文彦・首藤伸夫 (昭和63年5月11日受付;昭和63年8月11日受理) Study on Numerical Simulation of the Transoceanic Propagation of Tsunami Part1:Governing Equation and Mesh Length Chiaki GOTO Port and Harbour Research institute, Ministry of Transport, Nagase3-1-1, Yokosuka-shi, Karnagawa-ken, 239 Fumihiko IMAMURA and Nobuo SHUTO Faculty of Engineering, Tohoku University, Aoba, Aramaki, Sendai-shi ,Miyagi-ken, 980 (Received May 11, 1988; Accepted August 11,1988) Numerical simulations of the trans-oceanic tsunami propagation require a well designed computation program.

Abstract

Numerical simulations of the trans-oceanic tsunami propagation require a well designed computation program. In order to obtain good, reliable results, spatial and temporal grid sizes should be carefully determined. The area included in and the time for the computation are so wide and long that a huge computer memory is inevitable. There are two major sources of error which are closely related with grid size. One is the dispersion, physical or numerical, and other is the accumulation of round-off errors.
After a comparison of the maginitude terms in the fundamental equations for long waves, it is concluded that the convection term can be negligible and that the linear Boussinesq equations including the Coriolis force, expressed in the longitude-latitude coordinates, should be used.
Effects of the grid size on the computed results is examined as the one-dimensional problem for four different grids assuming that leap-frog scheme is applied to the linear long wave and linear Boussinesq equations. For comparisons, the linear surface wave equation is considered as the best equation, because it fully includes the effects of dispersion. The linear Boussinesq give better results with finer grid size, while the linear long wave equations give the best result with grid size 10 km, with which the numerically introduced dispersion approximates well the physical dispersion.
Diagrams are provided to estimate errors in wave profile and wave length as a function of the grid size, travel distance and original wave length, for both the linear long wave and linear Boussinesq equations.
As an example of practical application, the Great Alaska Earthquake Tsunami of 1964 in the North Pacific Ocean is simulated with the linear long wave and linear Boussinesq equations.

§1.はじめに

わが国が遠地から襲来した津波により被害を受けた例としては,1960年のチリ沖地震津波が有名である。この津波による死傷者は,三陸地方を中心に1000名を越える.このような遠地津波の第一の特徴は,地震の規模が大きく波源が広いため,長周期の津波になることである.したがって,近地津:波の場合では湾の固有周期が異なり,波高の増幅がそれほど見られなかったところでも被害が大きくなる可能性がある.さらに,火力または原子力発電所の多くが沿岸域に設置されるようになり,通常の津波による破壊,浸水などの被災の他に,長時間にわたる水位低下による冷却取水の中断といった新たな問題が生ずると考えられる.以上のように,遠地津波は,近地津波と異なった防災上の問題が残されているのにもかかわらず,予測のための数値計算手法が十分確立されていないのが現状である.
 近地で発生する津波に比べ遠地津波の数値計算で問題となると考えられることは,対象とする領域が広いため多くの演算時間および記憶容量が必要となること,さらに長距離を伝播するため波数分散効果を考慮しなければならないことである.また,現象時間が長いため計算誤差の累積にも注意する必要がある.
 過去の遠地津波の計算例としてはUENO(1965),HWANGら(1972a,1972b)によるものがある.しかし,差分格子が粗く計算の支配方程式の精度が劣るといった理由により,彼らの計算結果の信頼性は低く,遠地津波の来襲を予測,再現する充分な方法とは考えられていない.
 以上のことから,本研究では1964年アラスカ地震津波を取り上げ,遠地津波の外洋伝播計算法に関する基礎的な検討を行なう.題材として選んだアラスカ地震津波は,地盤変位の測量結果などから波源の様子が精度よく求められており,また,計算結果と比較検討するための検潮記録が数多く残されているものである.
 本研究では,まず始めに,運動の式中の各項のオーダーを比較することにより遠地津波計算の支配方程式に関する検討を行う.次に,支配方程式および計算格子間隔の違いによる計算結果の差について検討し,適切な支配方程式と計算格子間隔について提案する、最後に,実用問題の例として北太平洋を対象領域にしたアラスカ地震津波の二次元伝播計算を行ない,遠地津波計算を実施する上で問題となる事項について考案を行なう.
 本論文で報告する計算は,すべてリープフロッグ形式の差分法に基づくものである.これは,演算時間,記憶容量の問題境界条件の設定の容易性および数値計算の誤差の性質などの理由による.また,実用計算は緯度,経度による球面座標系の式群を用いているが,数値計算の誤差解析は,簡単のためすべて平面座標系に関して実施している.表記法は異なるものの,本質的な現象は両者共に同じであるという判断による.

昭和61年10月9日発表
*1〒239横須賀市長瀬3丁目1番1号
*2〒980仙台市荒巻字青葉

§2.遠地津波の外洋伝播に関する支配方程式の検討

 一般に,津波の伝播は,波源の大きさに比べ水深が浅いため長波理論で取り扱われる.後藤(1984),藤間ら(1986)の展開によると,コリオリ項を考慮した二次元伝播に関する長波理論式は,(x,y)を静水面に採った空間座標,tを時間座標,(u,v)を(x,y)軸方向の断面平均流速,\etaを水位変動,hを静水深,gを重力加速度,fをコリオリ因子とすると
(1)
(2)
(3)
となる,ここで,M,NおよびF_1,F_2は次の諸式で与えられる.
(諸式)

この式は長波理論の第二次近似にあたり,Boussinesq,Korteweg-de Vrice, Mei-Le Mehaute, PeregrineおよびKakutaniによって導かれたものと等価な式である.
第三次近似以上の理論式も藤間・他(1986)により導かれているが,5階以上の微分項を含むなど数値計算に用いるのは難しい.したがって,式(1)ー(3)が現状の計算機および数値計算手法で扱い得る最も高次の長波の式と考えてもよい.
 遠地津波の計算は,対象とする領域が近地津波の場合に比べ格段に広いので式(1)ー(3)でも難しく,さらに伝播距離も長くなるので誤差の累積にも注意する必要がある.したがって,精度を落とさず式(1)一(3)をさらに簡単にすることを考えなくてはならない.以下,遠地津波の大まかなスケールを用いて運動の式の各項の重要性を調べ,数値計算に適した支配方程式について検討する.
 いま,津波の一次元伝播問題を取り上げ,水位変動\etaと水平流速uを最も簡単な線形長波の関係から
(4)
と与えるものとする.津波波形を無限に続く正弦波と考え,振幅aおよび波数kを津波初期波形の代表的な寸法で近似するといった現実におきる津波とややかけ離れた条件を仮定したが,大まかは津波の伝播状況のオーダー比較を考える場合には問題がないと思われる.
 移流項の大きさは局所項で正規化とする
(5)
となり,波高水深比のオーダーであることがわかる.静水圧力項に関しては線形の部分と有限振幅の効果の部分に分けると
(6)
および
(7)
となる.同様にして,コリオリ項および分散項のオーダーを求めると
(8)
(9)
となる.ただし,分散項は水平床近似に関するもので,分散項中の斜面勾配の効果を考慮していない.これは,長尾・他(1985)により比較的急勾配の斜面においても,分散項中の斜面勾配の効果は分散項全体の数%の程度の大きさであることが明らかにされているためである.
 運動量の式の各項の大きさを具体的に調べるために津波の波高を5mに仮定すると,式(5)一(9)から運動量の式(2)の各式の大きさはTable1のようになる.表中の数字は水深4kmの海域を伝播する津波に関して,局所項の大きさに対する各項の比を表している.また,津波の代表的な波長としては1OOOkm,100kmおよび10kmの3種類のものを仮定している.表から,移流項,静水圧力項中の有限振幅性の効果は10^{-3}のオーダーと小さく無視可能であることがわかる.分散項は,津波の代表スケールにより異なり,10^{-5}から10^{-1}のオーダーとなる.したがって,現実の津波は多くの波長成分の重ね合わせで表され,たとえ波源が大きい津波であっても波長の短い成分も考慮する必要があることを考え合わせると,分散項は無視できないものと判断される.また,コリオリ項は波長が長い成分ほど大きくなり,場合によっては10^{-1}以上のオーダーとなるため無視することができないこともわかる。
 以上の検討結果をまとめると,遠地津波の外洋伝播計算の支配方程式としてはコリオリ項を考慮した線形Boussinesq理論が適しており,式(1)一(3)に比べ簡単な
(10)
(11)
(12)
を用いればよいことになる.
 日本沿岸で発生する津波を考える場合では,せいぜい1,000km四方の海域を対象とするため式(10)ー(12)のような平面座標で扱うことが多い.しかし,アラスカまたはチリで発生した津波が我が国へ来襲するといった10,000km以上も伝播する現象を扱うには精度の点で問題があり,球面座標を用いる必要がある.いま,地球を半径Rの球体として考え,緯度,経度座標を(\lambda,\phi>とし,各方向の線流量を新たに(M,N)とすると,平面座標の式(10)ー(12)に相当する球面座標系の式は
(13)
(14)
(15)
となる.

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式(1〜15)
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Table 1. Relative magnitude of terms of the momentum equation (2) to the local acceleration term, in case of the tsunami height, 5m, and the water depth, 4km.

§3.計算の格子間隔に関する検討

 3.1 計算格子間隔の違いによる計算結果の変化
 
 数値計算では,計算格子間隔に比例して離散化誤差や打ち切り誤差が大きくなり,物理的な性質とは異なる分散効果が生じたり散逸効果が働くことが知られている〔今村・後藤(1986)].この種の誤差は対象とする津波波形により変化するため,ここでは比較的波源の精度が良いと考えられているアラスカ地震津波を例にとり検討する.
 計算は簡単のため一次元伝播とする.用いた理論は線形長波理論,線形Boussinesq理論および微小振幅表面波理論の3種類である.微小振幅表面理論を計算の対象に加えた理由は,非線形効果が無視できる遠地津波の外洋伝播計算において,微小振幅表面波理論の解が真値と考えられるためである,計算に用いた津波初期波形は,Fig.1に示すPLAFKER(1969)の推定したアラスカ地震津波の代表的な断面波形A-A^」であり,簡単のため水深4kmの水平床を仮定(アラスカ津波の波源は平均水深が0.91kmであるため,本計算ではGreenの法則から波長を2倍,波高を0.7倍している,)し,約6,000km(アラスカからメキシコまたは日本の三陸沿岸までに相当)の距離を伝播させている.計算の方法としては,線形長波理論がリープフロッグ法(陽解法)を,線形Boussinesq理論は計算点の配置をリープフロッグ法と同じにした陰差分法,そして微小振幅波理論がフーリエ変換による方法を用いている.
 Fig.2に,線形長波理論および線形Boussinesq理論を用いて計算した結果の一例を示す。図は空間水位に関するものであり,計算格子間隔(\delta x)を5,10,20,30kmの4種類について変化させて,微小振幅表面波の解と比較したものである.上段の図,すなわち線形長波理論による計算結果は,本来ならばFig.1に示す初期波形の半分の寸法のものが相似形を保って伝播しているものになるはずであるが,打ち切り誤差に起因する数値分散性のため,主峰が減衰し高波数成分が顕著に現れた結果になる.この数値分散効果は計算の格子間隔に関係し,格子間隔が小さいほど波長の短い分散波列が発生し,大きいものほど波長の長いものが起こる性質があることがわかる。また,真値と考えられる微小振幅表面波理論も水深に関係する分散性(以後,物理分散性と呼ぶ)が現われる.したがって,両者の効果がほぼ等しくなる場合もあり,この場合には\delta x=10km程度がその条件であることもわかる.過去のUENO(1965>およびHwang・他(1972a,1972b)の計算は線形長波理論を用い,それぞれ緯度,経度で5度,10分すなわち600km,20〜30kmの程度の比較的粗い差分格子を用いて実施されたものである.この程度の差分格子間隔では,図からも明らかにように真値との差が大きくなり,計算精度に関しては問題が残されていたこともよく理解できる.Fig.2の下段の図は,線形Boussinesq理論の場合にっいて同種の比較を行ったものである.線形長波理論の計算では\delta x=10km程度に最適な結果を与える条件があったが,線形Boussinesq理論の計算では格子間隔を細かくするほど精度がだんだん良くなる傾向があることが図から判断できる.線形Boussinesq理論では第一次近似ではあるものの物理分散効果が考慮されており,計算結果に現れる最終的な分散現象はこの物理的なものと打ち切り誤差に起因する数値的なものが合わさったものである.したがって,格子間隔を小さくするほど数値分散効果が小さくなり,本来の物理分散効果に近づくためである.

 3.2 誤差を考慮した支配方程式と格子間隔の選定
 前節において,物理的に精度が劣る線形長波理論を用いても計算条件によっては,線形Boussinesq理論を用いた結果と同程度の精度が得られる場合があることが明らかになった.本節では,この理由を数値計算の打ち切り誤差の理論解析から明らかにし,また,所要の精度を得るための計算の支配方程式と格子間隔について検討する.
 一般に,発展方程式の数値計算の打ち切り誤差としては数値散逸または数値分散効果が知られている.各効果は用いる計算手法により異なり,ここで用いているリープフロッグ差分法には数値分散効果があることが明らかにされている[たとえば,矢島・他(1977)].したがって,計算精度を量的に吟味するたあには,波速の誤差について調べればよい.
 水平床を仮定した線形長波理論のリープフロッグ差分計算上の波速に関する厳密解c_Lは,(\delta x,\delta y)を計算格子長,\delta tを時間間隔,(k_x,k_y)を(x,y)方向の波数とすると
(16)
で表される[佐山・他(1987)].ここで,S_L=[K^2_x sin^2{\omega_x}+K^2_y sin^2{\omega_y}^{1/2},\omega_x=k_x\delta x/2,\omega_y=k_y \delta y/2であり,K_x=c_0\delta t/\delta x,K_y=c_0\delta t/\delta yである.線形Boussinesq理論の計算上の波速c_0は
(17)
である[佐山・他(1987)].ここで,S_B=(S_1/S_2)^{1/2},S_1=K^2_x sin^2{\omega_x}+K^2_y sin^2{\omega_y},S_1=1+(4h^2/3\delta x^2)sin^2{\omega_x}+(4h^2/3\delta y^2)sin^2{\omega_y}である.一方,真値として考えられる微小振幅表面波の波速c_s,は
(18)
である.
 各計算上の波速の誤差を
(19)
で定義し,波速の差が5%以内となる津波の津長を調べてみた結果がFig。3およびFig.4である.
 Fig.3は平均的な太平洋の水深をh=4kmと仮定し,\delta x=2\delta y,K_x=0.2の条件で\delta xを3種類に変化させた場合である.\delta x=5,10,20kmは後に述べる球面座標系(緯度,経度座標系)においてそれぞれ2.5,5,10分格子に相当するものであり,\delta x=2\delta yとしたのは球面座標では高緯度になるほど経度方向の格子間隔が短くなることを考慮したことを意味する。また,図の縦軸L_x.横軸L_yはx,y方向の津波波形をフーリエ分解したときの成分波の波長を示し,各曲線より長い波長の成分が誤差が5%以内で計算できることを表している.この図から,線形Boussinesq計算は格子長を小さくするほど精度が良い計算が可能となることがわかる.また,線形長波計算は線形Boussinesq計算に比べ単純ではなく,\delta x=10kmが3種類の中では最も精度が良いことがわかる.
これは\delta x=5kmまたは20kmの場合の数値分散性は物理分散性に比べ小さすぎたり大きすぎたりするためであり,先に述べたように10km程度で物理分散効果と数値分散効果がほぼ等しくなることによるためであると考えられる.
 Fig。4は\delta x=2\delta y=10km,K_x=0.2の条件で水深を変化させた場合である.線形Boussinesqの計算の精度はほとんど変わらないが,線形長波計算は水深により大きく精度が異なることがわかる.ただし,遠地津波の外洋伝播を考える場合には,水深4km程度の海洋底が長く続き,水深10km程度の海溝部および水深2km以下の浅海部は比較的距離が短いため,全体を通すと大きな誤差を生ずる可能性は少ないと考えられる.
 以上の議論では,波速の誤差5%を一種の判定基準にとり計算誤差の説明をしているが,波速の誤差から最終的な津波波形の誤差に直接結び付けるのは難しい。津波波形の誤差を調べるには,具体的な初期波形を与える必要がある.そこで,初期波形の標準形として比較的精度が良いと考えられているアラスカ津波の波源と相似なものを選び,津波波形に関する誤差評価を行うことを考える.具体的な誤差評価としては,波速の誤差が明らかとなっている数値計算を用いて波速の誤差と津波波形の誤差の関係を調べる方法を用いている.計算は線形長波理論の一次元伝播問題とし,\delta x=2\delta y=10km,h=4km,K_x=0.2の条件で行っている.また,初期波形はアラスカ津波の断面波形であり,水平距離を3種類(0.5,1.0,2.0倍)に変化させて計算している.
 波速の誤差と波形の誤差の関係を計算結果から整理するとFig.5が求まる.図の縦軸は
(20)
で定義した津波波形の誤差,横軸は伝播距離そして内部パラメータはL^」/L_0である.ここで,L^」は波速の誤差が5%となる成分波の波長である.また,\eta_0は津波波形に関する数値計算結果,\eta_sは真値として考えられる微小振幅波理論の解,x_0は津波の先端の位置そしてL_0はzero-up-crossで定義した津波主峰部の波長である.この図から,所要の精度を得るための適切な支配方程式および計算格子を定めることができる.例えば,初期波形の寸法がL_0=1,000kmの津波で伝播距離が20,000kmとした場合,波形の精度を20%以内で計算しようとするL^」/L_0=1/10であるので,波長100km程度まで誤差5%以内で計算する必要がある.したがって,Fig.3から\delta x=20kmの線形長波理論または線形Boussinesqの式を用いればよいことがわかる.同様にして,波形の誤差10%であるなら\delta x=10kmの線形長波理論または線形Boussinesqの式,そして波形の誤差8%までなら\delta x=5kmの線形Boussinesq理論を選べればよいことになる.
 以上の計算誤差に関する検討では,K_xの値について詳しい議論をしていない.K_xの値による打ち切り誤差の変化は,K_x=0.1〜0.4の範囲で無視できる程度に小さく,あまり問題とはならない.ただし,安定条件の許す範囲でK_xの値を大きくすると,徐々に打ち切り誤差が小さくなる性質があるので,打ち切り誤差の性質を利用する線形長波理論を用いた計算では逆に注意が必要である.また,数値計算の誤差には,打ち切り誤差の他に離散化誤差が考えられる.これは,連続量を離散量で取り扱うことに起因するもので,フーリエ解析のエリアジングと同種の問題と考えてもよい.この誤差に関しては\delta x/L_0=1/30程度以下であればほとんど問題とならない.

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Fig.1. Distribution of the initial surface elevation of the 1964 Alaskan Tsunami (upper) and wave profile along the line A-A^」 (lower). The contour lines in upper figure show water height in 2m inter
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式(16〜20)
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Fig.2. Results of one-dirnensional computations of the 1964 Alakan Tsunami at 8hours after generation, with four different grid sizes (5,10,20 and 30km) for the linear wave (upper) and the linear Boss
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Fig.3
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Fig.4
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Fig. 5. Error of computed wave profile defined by Eq. (20) as a function of the travel distance and a wave length ratio L’/Lo where Lo is the initial wave length converted to that on water 4 km deep a

§4.二次元伝播計算に関する検討

 4.1 計算法
 前節までの結果から遠地津波の外洋伝播計算では,コリオリ項を考慮した線形Boussinesq理論を支配方程式とすればよいことが明らかになった.また,線形長波理論を用いても,\delta x=10kmの条件で計算するなら,比較的精度の良い結果を得ることができることを明らにした、ここでは,実用計算への応用としてアラスカ津波を対象とし,線形長波理論と線形Boussinesq理論を用いた計算を行なう。
 線形Boussinesq理論を用いた計算の差分式は,陽的なリープフロッグ法と同じ計算点の配置をすると
(21)
(22)
(23)
となる.ここに,
(諸式)
である.また,(j,m,n)は(\lambda,\phi,t)の軸方向の計算点を表し,(\delta\lambda,\delta\phi,\deltat)は格子間隔である。ただし,簡単のためここでは\delta\lambda=\delta\phiとしている.また,\gammaは地球の自転の角速度を意味する.差分式から判断してわかるように.この線形Boussinesq理論を用いた計算は陰解法により行われる.一方,線形長波理論の計算の差分式は式(22),(23)の中の分散項を無視したものであり,計算は陽解法である.
 線形Boussinesq理論に関する計算は緯度,経度各5分の1種類,線形長波理論計算は5,10,30分の3種類に関して実施している.前節の誤差解析では,アラスカ津波の代表断面の水深4km相当寸法が約900kmであるので,それぞれ10,20,40%の津波波形の誤差を許す計算をしていることになる。時閤間隔は,空間格子5分の場合が10秒,10分で20秒,30分で60秒としている.計算領域は,Fig.6に示すように日本近海から北アメリカ西海岸までの北太平洋全域としている.緯度,経度5分の計算格子で日本列島,ハワイ諸島を含みアメリカ西海岸に至るほぼ北太平洋全域を覆っている.総計算点数は約83万個である、また,本計算では潮汐などの津波以外の波は一切考慮していない.
 アラスカ津波の計算はかってHWANG-DIVOKY(1972a)とHwang-BUTLER-DIVOKY(1972b)によって研究されたことがある.前者では直交座標系で表された線形波理論による波源域付近の計算とRay-tracingによる伝播図の作成がなされている.後者では本計算とほぼ等しい範囲で緯度,経度座標を採用した外洋伝播計算を実施している,計算格子間隔は本計算に対して経度方向が3倍の15分,緯度方向が2倍の10分を用いている.また,これらの計算の初期条件には,地盤の立ち上がり速度と破壊進行速度が考慮されている.本計算では,AIDA(1969)の研究成果から判断し,アラスカ地震の場合波源域の平均水深が900mと浅いこと,立ち上がり時間および破壊進行時間が短いことから,これらの影響は小さいと考え無視している.

 4.2計算結果
 線形Boussinesq理論を用いた計算結果の一例をFig.7に示す.図は津波発生後2時間毎の空間水位分布である。波源域では10m近い波高を有していたが,伝播するにっれ波高が減衰し,アメリカ西海岸付近では30から70cm程度,日本に向かうものは10cm以下であることがわかる.実際アラスカ津波の検潮記録を調べて見るとアメリカ西海岸で0.6から3.Om,ハワイ州で0.4から2.Om,日本沿岸で0.05かや0.2mとなっており,この計算結果と定性的には良く一致している.
Fig.8は,線形Boussinesq計算と線形長波理論計算の4種類の津波発生3時間30分の空間水位分布に関する結果を比較したものである.線形長波計算のうち格子間隔10分と30分の結果は線形Boussinesq計算との差が大きいが,前節で予測したように5分の結果は非常に良い一致を示す.Fig.9はFig,6に示す3地点A,B,Cの水位の時間変化で比較したものである.線形長波理論計算の10分のものは比較的線形Boussinesq理論計算に近い結果となるが,分散効果の違いがあり主峰の減衰が多少大きいものとなる.30分の結果は非常に大きな差が見られ,同じ津波を対象として計算とは考えにくいほどのものとなる.5分の結果は高波数成分の位相に若干の差があるものの良好な一致を示している.
 Fig.10にWake島における水位経時変化に対する検潮記録[VAN DORN-WILLIAM(1965)]と線形Boussinesq理論計算による結果の比較を示す.図には同時にHWANG・他(1972b)の結果も参照のため示してるが,両者とも全体的に検潮記録とはよい対応を見せている.
検潮所が津波の進行方向に対して島の裏側に位置しており,計算格子に比べ島が小さく,計算では島の影響を考慮していないことなどを考え合わせると,HWANG・他の結果は一致し過ぎるきらいがある.
 最後に演算時間について述べる.計算機は東北大学計算機センターにあるスー一パーコンピューター(SX-1)を用いている.5分格子の線形長波理論による二次元伝播計算では7時間を再現するのに要した演算時間は3分5秒,線形Boussinesq理論では11分24秒であった.ベクトル演算機能およびプログラムのベクトル化率の向上により,従来の汎用大型計算機(ACOS1000)を用いた計算に比べ1/100程度に演算時間を短縮することができている.

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Fig.6. Region for the computation. Three points A, B and C are selected for comparison of wave profile.
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Fig.7. Numerical results of the 1964 Alaskan tsunami with the linear Bossinesq equations for spatial grid size, 5minutes(10km). Contour lines of tsunami height are drawn at O. 1m interval. the shaded
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Fig.8. Comparison of numerical results between different equations and defferent spatial grid sizes, at 3.5 hours after generation. For contour lines, shaded areas and numerals, refer Fig.7. (1) The
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Fig.9. Temporal variations of water level at three points, A, B and C, shown in Fig.6. (1) Comparison between the linear long wave (boldlines) and the linear Boussinesq equations (thin lines) in case
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Fig.10

§5.おわりに

 本研究では遠地津波の外洋伝播計算に関して基礎的な検討を行った.得られた結果は次の通りである.
 1.簡単な理論解析から,非線形項は無視できるが,分散項,コリオリ項は無視できないことを確認した.
 2.計算の打ち切り誤差に起因する数値分散効果と物理分散効果が同程度となる条件を用いれば,比較的簡単な計算ですむ線形長波理論を用いても実用上問題のない結果が得られることを明らかにした.
 3.所要の計算精度を得るための方程式および格子聞隔の選定法としてFig。3およびFig.5を用いる方法を示した.津波初期波形として,主断層と副断層運動が重なった比較的複雑なアラスカ津波の代表断面を用いているため,この選定法の有効範囲はかなり広いと思われる.
 4.コリオリカを考慮した線形長波理論と線形Boussinesq理論による二次元伝播計算を実施し,大領域,長時間にわたる計算でも安定かっ短時間に実施可能であることを示した.また,本研究で扱った数値計算を用いることにより遠地津波の外洋伝播計算が精度良く実施可能であることが明らかとなった.ただし,本計算では浅海域での津波の変形や局地特性を十分考慮することはできず,浅海計算への境界入力値を与えるものである.今後,浅海域と結合した計算を行い最終的な精度を検討する必要がある.

謝辞

 水深データをアメリカ合衆国テキサスA&M大学Prof.Reid and Dr.Whitekerから提供していただいた.
また,本研究の一部は文部省科学研究費による.ここに記して謝意を表す.

文献

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遠地津波の数値計算に関する研究 その2 太平洋を伝播する津波の挙動 東北大学工学部災害制御研究センター* 今村文彦・首藤伸夫 運輸省港湾技術研究所** 後藤智明 Study on Numerical Simulation of the Transoceanic Propagation of Tsunami Part2: Characteristics of Tsunami Propagating over the Pacifc Ocean Fumihiko IMAMURA, Nobuo SHUTO Faculty of Engineering, Tohoku University, Aoba, Sendai-shi, Miyagi-ken, 980, Japan and Chiaki GOTO Port and harbour Research Institute, Ministry of Transport, Nagase3-1-1,Yokosuka-shi,Kanagawa-ken,239,Japan (Received July 25, 1990; Accepted September 7, 1990)

Abstract

The linear Boussinesq equation should be used in numerical simulations for distant tsunamis in the Pacifc Ocean, because the dispersion effect is not negligible. Its difference equation which can not be expressed by an explicit scheme requires a long CPU time. One of the present authors has introduce a new technique, in which the first term of discretization error in the difference equation of the linear long wave theory was used and controlled to replace, the physical dispersion term. This method is applied in the present study. The effect of ocean current on the tsunami propagation is confirmed to be negligible in wave direction and wave height. The 1960 Chilean tsunami is simulated.
The Coriolis force has not only the effect on the propagation direction but also the dispersion effect, whlch is examined by comparing with the computed result with out the Coriolis force. Effect of the sea bottom topography is examined in detail in terms of wave energy. About 40% of initial wave energy remains on the continental shelf in the neighborhood of Chile, and the rest is radiated to the Ocean.
After scattered and trapped by islands and sea mounts, about 25% of the total energy arrives at Japan.
The computed results shows a fairly good agreement with tide records after making correction of the effect of the water depth. For further discussions of the tsunami in shallow seas, simulatlons should be performed using the shallow-water theory and detailed topography.

Keywords:Distant Tsunamis, Numerical simulation, Transoceanic propagation, Dispersion effect, Coriolis force.

§1.はじめに

 津波対策の見直し,及び国際的な太平洋津波警報組織設立への契機となったチリ津波が来襲してから30年が経過した.この間,わが国の津波対策は,主としてチリ津波の痕跡を対象とする防災構造物の建設を中心に実施されてきた.この時,津:波防波堤や大規模な埋め立てのように湾の振動形状況が大きく変わる場合には,痕跡に頼るだけでなく,湾内での津波の振動状況を検討する必要があった.その際入力すべき津波波形としては,単純な正弦波形を使用するか,あるいは宮城県女川地点で得られた深海での津波波形に近いとみなし得るものを対象地点と女川との距離とは無関係に代用するかの方法がとられてきた。これは,遠地津波の日本沿岸における挙動に関する信頼すべき資料がほとんどなく,従って,十分な理解が困難であったからである.
 本研究では,前報[後藤・他(1988)]での基礎検討をもとに,過去に生じた遠地津波の外洋伝播計算を実施する.その対象は,主に1960年チリ津波とする.この津波は,過去に太平洋で発生したものの中で最大規模であり,その影響範囲は太平洋全域に及んだ.
 まず,外洋伝播計算モデルの設定について考察する.
この時,大洋伝播過程で欠くことの出来ない物理分散性の代用として,数値分散性を利用した計算モデル[IMA-MURA and SHUTO(1989)]を導入する.これにより,低次近似の方程式によりながら高次近似と同等の解を,より少ない計算時間で得ることが出来る.また,津:波以外の流れの影響を評価し,数値モデルに考慮すべきか否かを検討する.
 次に,チリの波源から太平洋を伝播して日本沿岸に到達するまでの数値計算を実施し,外洋を伝わる津波の特徴を明らかにする.すなわち,海底地形の影響及びコリオリカの効果による伝播挙動の変化,海膨や海山の存在により変化する津波エネルギーの検討である.
 最後に,津波の到達時間・第一波波高・最高水位に関し,太平洋各地での観測データを本計算結果と比較し,外洋伝播計算モデルの有効性と問題点について考察する.

*〒980仙台市青葉区荒巻字青葉
**〒239横須賀市長瀬3丁目1番1号

§2.外洋伝播計算モデル

 2.1対象領域と支配方程式
 ここでは太平洋で発生した津波(主に1960年チリ津波)を扱うため,計算領域を南緯60°から北緯63°,東経120°から西経70°の範囲とする.一辺数千km以上にわたる広範囲の領域となるから,近地津波で通常用いられる直交座標系に代え,球面座標系を採用する必要がある.また,前報[後藤・他(1988),§2]の支配方程式の検討により,このような大領域で長距離伝播する津波には,線形圧力項の他に波数分散およびコリオリカが重要かつ不可欠であることが示されているので,これらの項を考慮しなくてはならない.以上のことから,数値モデルを作成するための基本となる支配方程式としては,(1)から(4)式に示すコリオリカを考慮した線形Bouss-inesq理論[BOUSSlNESQ(1872)]を用いることとなる.
連続の式
(1)
運動の式
(2)
(3)
ただし,
(4)
また,\lambda,\theta:経度,緯度,\eta:水位変動,.M,N:\lambda,\theta方向の線流量,h:静水深,g:重力加速度,f:コリオリ係数,R:地球の半径である.
 上式は前報とは緯度・経度の記号が異なるが,この表現の方が一般的であるので,ここで改めて記述する。式(2),(3)で表される運動量方程式中の右辺第2項が分散項である.数値計算を行うため,水位計算点と流量計算点を半メッシュずらしたスタッガードタイプのリープ・フロッグ法を用いて上式を差分化する.その際運動量方程式中には未知数が2つ以上含まれるため,陰解法により数値計算を行わなければならない.一般に,陰解法は安定条件の範囲が拡がる反面,計算回数や計算容量が増加する.本計算領域のように極めて広い範囲を対象とする場合には,この計算量や容量の増加は,実際に計算を行う時の大きな障害となる.

 2.2数値誤差の利用方法
 上記の問題を解決するため,差分近似により生じる数値誤差(ここでは数値分散性)の利用法を検討する。本来の物理的分散性と数値的分散性は,その発生原因に違いはあるが,波数に関係する分散効果があるという性質を共有している.前報[1988,§2]で,線形理論計算を行っても計算格子間隔として\deltax=1Okm程度を選ぶならば,物理的分散性を考慮にいれた理論解との誤差が小さいことを示した.これは,線形理論計算での数値的分散性と実際の物理的分散性がほぼ等しい大きさであることを意味している.ただし,それぞれの大きさは水深,計算の時間及び空間格子の大きさに依存しており,数値誤差の利用に際しては十分注意することが必要である.
 ここで,1次元の線形長波理論式を使いながら,数値分散性によって物理的分散性と同等の効果を得るための条件について説明する.線形長波理論の連続の式及び運動の式は次の(5)式である.
(5)
ここで,C_0:線形長波の波速(=\sqrt{gh}).あるいはまとめて,
(6)
と書かれる.(5)式をスタッガードタイプのり一プフロッグ法により差分化すると,
(7)
ここで,n,j;時間及び空間方向のステップ数,\deltat,\deltax;時間及び空閤格子間隔が得られる.この差分式をテーラー級数展開を用いて微分操作に置き換え,打ち切り誤差の第一項だけを考慮すると,
(8)
ここで,K=C_0/\deltaxが導かれる.(8)式の左辺第1項と第2項は線形の波動方程式を表し,本来の支配方程式である(6)式と同じである.一方,(8)式の第3項が差分化により発生した数値誤差である.この項は,次式に示す線形Boussinesqの式のものと係数は異なるが,同じ分散性を持つ.
(9)
そこで,(8),(9)式の分散項の係数の比の平方根をとれば,
(10)
ここで,h:平均静水深を得る.したがって,このR.D.値を1に近づけることにより,線形長波計算でも線形分散波理論計算と同等の結果を得られることになる.上記のR。D値は1次元伝播問題に対する結果であるが,そのまま2次元伝播問題に適用しても実用上問題ない.
 さて,線形長波理論を使用した数値計算では,計算格子条件1.:(10)式で表されるR.D.値を1.Oに近い値に選ぶ必要があるが,その他にも計算格子の満たすべき条件がある.すなわち,2.:差分式(7)式の安定条件であるC.F.L条件(K<1.O)を満足すること,及び3.:離散化誤差を小さくするための条件として一波長を最低20から30分割すること[長谷川ら(1987)],である.実際の数値計算では,以上の3っの条件を満足するような格子間隔を選定しなければならない.
 前報[後藤・他(1988)]においては1.の条件の有効性を検討する為の対象津波として,1964年アラスカ津波を選定した.この津波をもたらした地盤変動は,その一部が陸上に表れていたこともあって,詳しく調べられている.この津波初期波形としての特徴は,副断層によると思われる鋭い隆起部分が存在することである.現在広く使用されている断層運動による地盤変動量推定法[MANSlNHA and SMYLIE(1971)]では,主断層による変位しか求められず,このような鋭い隆起部分は得られないと言う欠陥がある.分散効果の違いは,鋭い隆起部分を持っ波形に対して特に顕著になる.従って,もし,R.D.=1.0と選んだ線形理論によるアラスカ津波の計算値が線形Boussinesq理論による高次近似の計算値とよい一致を示すならば,その他の津波,例えばチリ津波に対して同様な手法を適用することは容認できるであろう.
なぜなら,通常の津波初期波形では,1964年アラスカ津波程の短周期成分をも含めて決定することは出来ないからである.
 この計算結果の例をFig.1に示す.発生から3時間半後の水位空間分布の,線形長波計算(Fig.1上図)と線形Boussinesq式計算結果(Flg.1下図)の比較である。
線形長波計算において,R.D.値を1に近づけることにより,両者の差は殆ど無視できる程度に小さくなることが分かる.1.の条件下での線形長波計算は線形Boussin-esq計算に対して計算容量で1/2,CPU時間で1/4に減少できることが可能である.

 2.3 海流などの効果
 海洋には海流や潮汐流が存在し,津波の伝播方向や波高に変化を生じさせる可能性がある。その効果を簡単に評価するため,Fig.2に示されるような場合を考える.
いま,入射角\alphaで伝播する津波が流れUの存在する領域2に進入し,その方向が\betaとなると,\alpha,\betaの関係として次式が得られる.
(11)
 ここでC_1,C_2:伝播速度,また,線形長波であるから位相速度とエネルギー伝播速度は等しく,線分ABと線分CDに直角な方向の波エネルギー伝達率は変化していないため,波高H_1,H_2の関係は
(12)
となる.
 このように伝播方向および波高は,流れによって修正を受けることになる.その修正項の大きさは,屈折角,波高に対してはU/C_2(あるいはU/C_1)の大きさである。日本近海の海流は早い場所で数m/sのオーダー[渡辺(1989)]であり,津波の位相速度は水深を4000mとすると約200m/sであるから,流れによる修正項の大きさは1/100程度になり,外洋伝播計算では無視できるとして差し支えない.

 2.4数値分散性を利用した外洋伝播計算モデル
 以上の検討から,外洋伝播計算に適用する支配方程式,計算格子条件をまとめる.まず,支配方程式は(13)から(15)式に示す地球座標系の線形長波理論である.
連続の式
(13)
運動の式
(14)
(15)
次に,計算格子間隔は3つの条件を満足するように以下の手順により選定する.まず,対象計算領域での平均水深を求め,K値をある値(1.0以下)に仮定し,数値分散性の利用条件である1.よりR.D.値を1.Oとすると,\delta xが推定できる.例えば,太平洋を伝播するチリ津波を考えると,平均水深が4000mであり,平均水深のK値を0.4から0.9とすると,(10)式より\delta xは8.7kmから18.4kmとなる.ここで,K値に範囲を持たせたのは,緯度により\delta xが変動するためである.次に,この\delta xが3.の条件を満足するかを調べる.チリ津波波源の代表サイズは短軸方向で600km程度であるので,先の\delta xの値ならば3.の条件は満足する、最後に,\delta tは最深水深に対してK値がLO以下になるように選ぶ.最大水深は9000m程度であるから\delta t=20秒ならばKは0.32から0.68であり2.の安定条件を満たす.この時,領域全体でのR.D.値は0.80から2.18をとる.以上により,3っの条件を満足する計算格子間隔は\delta x=10’.\delta t=20秒が妥当である.ここで,海底地形の変化に影響されるR.D.値を計算領域全体の平均値で代表できたのは,太平洋がほぼ4000mから5000mの水平床に近似できるからであり,津波の各波向線でのR.D.値は計算領域での平均R.D.値と等しいたあである.

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式(1〜10)
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Fig.1. Comparison of the surface elevation contours of the 1964 Great Alaska tsunami at 3 hr. 30 min. after generation. The linear long wave theory with R.D.=1.1 (upper figure) gives almost the same r
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Fig.2. Refraction relationship due to current and topography. Effects of current on tsunami propagation direction and tsunami height is about 1%.

§3. 太平洋を伝播するチリ津波の再現

3.1 津波波源の設定
 1960年チリ津波の波源決定には,KANAMORIら[KANAMORI and CIPAR(1974),KANMORI and ANDERSON(1975)]が長周期地震動記録から推定した断層パラメータ(Table1)を使用し,MANSlNHA and SMYLIE(1971)の方法で地盤変動量の算出を行った.波源での水深が約1000mであるのに対し,地盤鉛直変位を起こした領域の長軸方向の長さは1000kmにも及び,しかも立ち上がり時間が36秒と比較的短いため,地盤変動をそのまま津波初期波形と見なすことができる.ところで,津波発生問題では,地盤変動の伝播速度の効果も無視できない場合があり,変動の伝播方向と津波伝播方向との関連により,到達時間や波形の差が生ずる[AIDA(1969)]。この変動伝播速度(V_h)の効果は津波伝播速度(\sqrt{gh})との\sqrt{gh}/V_hにより表され,この比が大きいほど無視出来なくなる.従って,浅海では省略できることが多いが,深海では注意が必要である.チリ津波では平均値で\sqrt{gh}/V_h=0.04となり10%程度の波高変化が予想されるが,実際の海底地形を用いた検討[今村・他(1987)]によると,波源域付近では位相の違いが無視できないものの,外洋に放射される成分に関しては位相および波高とも影響の小さいことが示されている,従って,ここでは変動速度を考慮しない.

3.2 海底地形の影響
津波先端(ここでは水位変動1cm以上と定義している)の位置を1時間毎に描いた伝播図がFig.3である.
あわせて,等深線を2000m毎に示している.津波先端の平面形状は水深分布に強く影響される.ポリネシア諸島到達以前の発生後4時間程度迄は,ほぼ同心円の形状を保持しているが,それ以降では水深の小さい諸島付近で伝播が遅れ,Fig.3に示したように折れ曲がって進行するようになる.この結果,津波の局所的なエネルギー集中が生じ,波高の増幅が見られることとなる.
 Fig.4に最高水位分布を示す.この図から海底地形と最高水位分布との対応は次のようであることが分かる.
チリ津波波源の短軸方向が太平洋の中央部に向っていることから,もともとこの方向へ伝播する津波エネルギーは大きいが,さらにいくっかの諸島・海膨の存在により波高の増幅が生じる,ポリネシアやハワイ諸島などの比較的裾の大きい海膨では,この傾向が顕著であるのに対し,天皇海山列などのように伝播方向と直角に細長く存在する場合には波高増加は見られない。
 津波のような長周期波は,外洋での諸島・海膨においてエネルギーの一部が捕捉され,伝播途中で先端津波エネルギーが減衰していくと言われる.この様子を調べるため,太平洋を水深4000mの水平床と仮定して計算した結果と実際の地形を考慮した結果との比較を行う.
Fig.5は水平床を仮定した場合の津波の最高水位分布である.Fig.5より,水平床の場合には伝播に伴い津波エネルギーが拡がり,徐々に最高水位が低下することが分かる.Fig.4と比較して水位分布が単純であり,途中での水位の増加などはほとんど見られない.伝播途中で津波エネルギーが散乱し,あるいは捕捉されることがないため,「大圏航路」に沿った各方向成分は太平洋に関して波源の対極へ向かって集中し,その結果,日本列島付近での波高が増大する.Fig.4の結果に対し2倍以上の値を示している.このように,島や海膨に捕捉されることによる津波エネルギーの伝播特性は見逃してならない現象の一つである.

 3.3 伝播に伴うエネルギーの変化
 太平洋を伝播する過程において陸棚上で捕捉されたり海膨や海山により散乱される津波エネルギーの割合を検討する.そのため,計算領域中での全津波エネルギーを第1波先端のエネルギー,及びその後方でのエネルギーとに分割する.ここで,第1波先端領域とは,ある時点での津波先端と,それより2時間前の津波先端とで囲まれた領域と定義する.この後方での値が陸棚上に捕捉されたり諸島に散乱された津波エネルギーに対応する.なお,計算領域の南側境界(60°Sの緯度線)から領域外へ放出されるエネルギーもあるが,初期の津波エネルギーに対して1%未満であるから,全エネルギーはほぼ保存されているとしてよい.
 Fig.6には,津波エネルギーの分割比率の経時変化を示している.津波は発生後約15時間でハワイを通過し,約21時間で日本に到達する.実線の下部が先端領域に存在するエネルギーの全体に対する比率を示す.発生後4時間に見られる後方領域でのエネルギーの急激な増加は,チリ近海に残された多くが陸棚上に捕捉された事を意味しており,この時点ですでに40%近い成分が大洋に向かわずに残留していることが分かる.その後,太平洋上にある海膨や海山により津波エネルギーが捕捉あるいは散乱され,後方に残るエネルギーは増加し,津波が日本列島に達する頃には全エネルギーの75%程度になる.したがって,全エネルギーの僅か25%程度が波源から対岸の地域へ到達することになるが,この25%により日本列島に5m以上にも及ぶ波高と大被害がもたらされたのである.
 次に,Fig.6の結果と,従来の理論から推定される値との比較を行う.チリ沿岸から放出されるエネルギーの割合に関して,三好(1968)は一定斜面上での点波源から出されるサイクロイド曲線を利用して,発生したエネルギーの1/3から1/4が沖側へ放出されるとしている.
実際には,波源は長楕円形状になるため,放出される割合はさらに大きくなるはずである.KAJIURA(1972)は陸棚付近での長方形近似の波源を仮定して,陸棚に滞留する成分と放出する成分のエネルギー比率を算定し,外海と陸棚での水深比や波源と陸棚の位置関係などの関数として示している.チリ沿岸での大陸棚は小さく,沿岸からすぐに海溝があり,その海溝を挟んで波源域は広がっている.したがって,波源が陸棚と外海の境界付近にあり陸棚水深が小さい場合に相当し,放出されるエネルギーは50%に及ぶ事になる.太平洋伝播中でのエネルギーの変化にっいては,都司(1977)がチり津波の散乱波にっいて,海山や海膨を正規分布曲線の回転体形に仮定して理論的に検討しており,太平洋に放出された津波エネルギーの約40%が散乱エネルギーになると推定している,本計算例では,全エネルギーの60%が太平洋に放出され,25%が日本付近に到達したので,散乱エネルギーは放出されたエネルギーの60%と推定される.この差は,本計算では津波の指向性や詳細な海底地形を考慮した結果であると考える.

 3.4 津波伝播に及ぼすコリオリカの効果
 地球の回転による慣性力であるコリオリカは,外洋伝播問題では無視することが出来ない影響を及ぼす.この力は波長が長い波ほど大きく作用するが,数値的にこの作用について検討したものはほとんどない.そこで,コリオリカの有無による計算結果の差を調べ,その効果について考察する.
 コリオリカが津波により生じた流れと垂直方向に働くことを考慮し,津波エネルギーの主伝播方向と直角な4断面(A-D)をFig.4に示したように選び,各断面内での最高水位分布をFig.7に示す.実線がコリオリカを考慮し,点線が考慮していない計算結果である.コリオリ力はコリオリ係数と流速の積で与えられ,この係数は北半球で正,南半球で負の値をとる.いま,Fig.8に示したように南半球から北半球へ斜めに移動する流れを考えると,コリオリカは流れ方向に対し,南半球では左向きに北半球では右向きに作用する.Fig.7を見ると,測線B,Cでそれぞれこの効果によると考えられる状況が与えられている.すなわち,測線Bでは,コリオリカを考慮すると中央付近の水位ピークがやや左寄り,測線Cでは逆に右寄りに移動している.ただし,この効果はある程度集積された後,目立ってくるもののようである、 次に,波高の全体的な分布にっいて見ると,コリオリカを含めた計算結果の方に,どの断面においても平均的な水位低下が生じている.これはFig.8に示された作用では説明できない.ある時刻での水位及び流速の空間的分布の差を,例えばFig.9に示す.これは津波発生7時間後のものである。上図はコリオリカを考慮中図はコリオリカを考慮しない結果,下図は前者から後者を差し引いた結果である.下図において,点線で与えられた等水位線は,コリオリカを考慮したことにより低い水位が得られたことを意味する.実線の等水位線はその逆である.コリオリカを考慮することにより,主峰付近では全体的に水位が低下し,逆にその後方で増加していることが分かる.水位のこうした傾向は,主峰付近での差の流速が後方に向かう事によっても理解できよう.
 先端領域での波高がコリオリカを考慮すると低下するひとつの原因は,コリオリカが長波を分散性の波にしていることであろう,すなわち,波速C及び群速度C_gは,
(16)
ここで,h:水深,\sigma:波数,f:コリオリ定数.
のように表され,成分波の周波数に依存するからである.上式より特に長周期成分ほどコリオリカの効果は大きく,波速は早くなることが分かる.このような分散効果が働くと,Fig.9に示されたように主峰が低くなり,それに続く後方の成分が大きくなることは理解できる.

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Table.1
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Fig.3 Sea bottom topography and positions of the tsunami front at every 1 hour in the case 1960 Chilean tsunami. Attached numerals are hours after generation.
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FIg.4. Distribution of maximum water surface elevation in meters computed with the actual depth data. In order to see effects of topograhy this figure may be compared with Fig.5. Concentartion of tsu
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Fig.5. Distribution of maximum waters srface elevation in meters computed with a constant water depth of 4,000m. With no scattering and no trapplng, tsnami energy travels over the great clrcle, and co
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Fig.6, Energy partition of advancing (below the solid line) an trapped (above the line) tsunami energy. A sudden decrease at 4 hours indicates that about 40% of initial energy remains on the continent
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Fig. 7. Comparison of the computed maximum water surface elevation with (solid lines) and without (dotted lines) the Coriolis force, along four sections taken nearly normally to the main path of the t
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Fig. 8. Tsunami propagation direction and the direction of the Coriolis force. Crossing the equator, the Coriolis force changes the direction of action.
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Fig. 9. (a) Water surface elevations and velocity vectors at 7 hours after tsunami generation computed with the Coriolis force. Contours gives by solid (dotted) lines show the rise (fall) of water sur
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Fig. 10. Comparison of the computed results (solid lines) and the tide records (dotted lines), for the arrival time (upper figure), height of the first wave (middle figure), and the maximum wave heigh
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Table.2
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Fig.11. Schematic classification of tide records. Type(A): The biggest first wave is followed by rapidly decreasing oscillation, typically observed at isolated island. Type(B): The third or fourth wa
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式(16)

§4. 数値モデルの再現性

4.1 検潮記録
 本モデルは外洋伝播を対象としたものあるから,沿岸域での詳細な地形形状やそれにもとつく津波の浅水変形は十分には取り入れられていない.ここでの計算結果を検討するには,沖合いでの観測データと比較することが望まれる.しかし,この種の記録はほとんどないたあ,沿岸での検潮記録と比較することで代用する.この場合,検潮記録には,沿岸地形や浅水変形の効果,あるいは局所的な振動特性の影響が強く反映されており,外洋伝播計算結果と異なるのが普通であることを考慮しておかなければならない.
 ここでは,U.S.Coast and Geodetic Survey のレポート[BERKMAN and SYMONS(1960)]による約120ヶ所での検潮記録を引用して,数値モデルの再現性を検討する.このレポートには,従来検討されることの少なかった南米やニュージーランド・オーストラリアでのデータが多く含まれている.

 4.2 到達時間・第1波の波高について
 Fig.10(a)およびFig.10(b)には,到達時間と第1波の波高についての比較を,Table2にはそれぞれに対する,地域別に求めた相田の指標[AIDA(1978)]を示す.
図中の数値計算による波高は,観測地点を含む空間格子での出力に対し,その空間格子の水深を使用してGreenの定理により水深100mでの値に修正している.
 まず,到達時間を見ると良好な結果であると言えるが,全体的に計算値の方が多少早い.このモデルでは最低水深を100mにしたため,実際より水深が深いことがあり,到達が早いことは避けられない.また,空間格子間隔が約20kmであり,水深を100rnとすると,一格子内を伝播するに要する時間は20,000m/\sqrt{100m×9.8m/s^2}=640秒となるから,観測地点の現実の位置如何によっては10分程度の差は生じ得る.以上のことを考慮すれば,南米を除く地域ではその差は小さく,実用的には十分満足な結果と言える.南米海岸へ向かう津波は沿岸域に沿って伝播する.この海岸沖には急勾配で落ち込むペルー・チリ海溝が存在するため,格子間隔が粗い場合には格子点上の平均水深が大きくなり,津波の到達時間が早くなる.格子が粗くなると,特に沿岸での実際の水深との違いが大きくなり,到達時間の差が生じる.
 第1波の波高に関しては,計算結果と観測値との違いは複雑である。計算値は観測値に対して,北米では過小,ハワイ・ポリネシア・フィリピン・日本では過大(ただし,ヒロだけは逆)となる.全体的な傾向としては,津波エネルギーが大きい太平洋中央部や日本付近において過大評価であり,その周辺で過小評価となる.ただし,Fig.10(b)に見られるように計算と観測による波高の全体的な分布形状はほぼ似通っており,また全体に対する相田のK値は0.929と良好な結果となる.

 4.3 最大波高について
 最大波高は,数値モデルの検討では,第1波とともに重要な項目である.最大波高の値だけでなく,その出現時間も問題となる.最大波出現時間は時間波形の特徴と密接な関係を持っ.太平洋を伝播する津波の時間波形には,Fig.11に示したようにいくっかの特徴が現れる.すなわち,(1)孤島などでは第1波が大きく,それ以降はすぐに減衰するもの(Aタイプ),(2)湾内固有振動が卓越し,第1波が進入後徐々に増幅し,第3,4波で最大値を示すもの(Bタイプ),(3)陸棚沿いに進行するいくつかの波群が存在し,最大波がかなり遅れるもの(Cタイプ),が主な波形としてある.その他,Aタイプに属するが第1波または第2波が大きく,それ以降の減衰があまり見られないもの(Dタイプ),第2,3波目が急激に大きく,その後減衰していくもの(Eタイプ)なども見られた.Fig.12及びTable3には観測と数値計算による波形を分類し,比較した結果を示す.これより,計算結果と検潮記録とで,こうした時間波形の特徴はほぼ一致していることが分かる.外洋伝播モデルでも定性的な波形の再現性は十分である.
 さらに,Fig.13〈a),(b)には津波波源からの距離に従い選んだ4つの検潮所での時間波形を比較する。(a)が観測値,(b)が計算値である.図より,伝播距離に従い,第1波の主峰が低くなり,後方の引き波及び第2波が増加していることが明瞭に見られ,、この傾向は観測値と計算値は一致する.この波形変化は波数分散効果によるものであり,(2),(3)式にある波形曲率による波数分散効果だけでなく(16)式に表されるコリオリカによる分散効果も影響しているものと思われる.
 しかし,定量的な評価となると,Fig.10(c)及びTable2に示すように,最大波高の値は中南米を除いて,ほとんどで計算結果が過大評価である。全体での平均としては相田のK値が0。778,同じく\kappa値が2.435となり,バラっきも大きい.特に,ハワイ・ポリネシア・オーストラリアでは過大評価の傾向が強い.また,北米およびアラスカにおいては,計算値が第1波で過小な結果であるのに対し,最大波高では過大な結果になる,津波の沿岸部での波高増幅機構が数値計算では過大にあらわれたためであり,このような傾向は日本でも見られる.これは,外洋伝播モデルだけでは最大波高の再現は難しく,浅海域の詳細な計算が必要であることを示している.

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Fig.12. Types of Time history type at tide gauge stations. Observed (upper figure) and computed (lower figure) time history types are compared. In the central Pacific ocean, all tide gauge records are
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Table.3
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Fig. 13

§5. おわりに

 1960年のチリ津波を例に,太平洋を伝播する津波のいくつかの特性を明らかにした.エネルギー伝播の中心付近に位置するポリネシアやハワイ諸島などでは最高水位の増加が見られ,散乱波として津波のエネルギーの一部がトラップされる.この散乱波は津波の伝播エネルギーを消費させ,日本へ到達するまでに外海へ放出されるエネルギー(波源での全エネルギーの半分)の60%にも及ぶ.コリオリカは従来言われるように,南半球では左に北半球では右に津波波高を押しやる作用があるが,さらに,分散効果により主峰を低下させる効果があることが示された.
 本計算結果と観測データとの比較を行った結果,第1波の到達時間や波高に関しては良好な一致が得られた.ただし,波源付近での到達時間が早く計算されること,太平洋中央部での波高が過大評価であることに注意を要する.最大波に関しては,平均的には20%程度の誤差に収まるがバラつきが大きく,沿岸域の地形を十分取り入れた浅海計算が必要である.北米,アラスカ,日本,オーストラリアの東海岸などの,波源から津波が直接伝播する地域では波高増幅が大きく,計算結果が過大になる傾向がある.この波高増幅の過大評価の原因は,浅海域でのエネルギー損失を考慮していないことであると考えられる.

謝 辞

National Geophysical Data Center の Dr. J.F.Lander 氏より遠地津波に関する資料を提供頂いた.ここに記して謝意を表わす.

文 献

AIDA, I., 1969, Numeircal experiments for tsunamis caused by moving deformations of the sea bottom, Bull. Earthq. Res. Inst., 47, 849-862.

AIDA, I., 1978, Reliability of a tsunami source model derived from fault parameters, J. Phys. Earth, 26, 57-73.

BERKMAN, S. C. and J. M. SYMONS, 1960, The tsunami of May 22, 1960 as recorded at tide stations, Report of Coast and Geodetic Survey.

BOUSSINESQ, J., 1872, Theorie des ondes et des remous qui se propagent le lomg d’un canal recxtangulaire horizontal, au communiquant an liquide contenue daus ce canal des vitesses sensiblement pareillews de la surface au fond, Loiuvilles, J. Math. 17, 55-108.
後藤智明・今村文彦・首藤伸夫,1988,遠地津:波の数値計算に関する研究その1支配方程式と差分格子間隔,地震2,41,515-526.

長谷川賢一・鈴木孝夫・稲垣和男・首藤伸夫,1987,津波の数値実験における格子間隔と時間積分間隔に関する研究,土木学会論文集,第381号/114,111-120.

今村文彦・永野修美・後藤智明・首藤伸夫,1987,1960年チリ沖津波に対する外洋伝播計算,第34回海岸工学講演会論文集,172-176.

IMAMURA, F. and N. SHUTO, 1989, Tsunami propagation simulation by use of numerical dispersion, acollection of technical papers, ISCFD NAGOYA,406-411.

KAJIURA, K., 1972, The directivity of energy radiation of the tsunami generated in the vicinity of a continental shelf, J. Oceanogr. Soc. Japan, 28, 260-277.

KANAMORI, H. and J. J. CIPAR, 1974, Focal process of the great Chilean earthquake May 22, 1960, Phys.
Earth Planet. Inter., 9, 128-136.

KANAMORI, H. and D.L. ANDERSON, 1975, Amplitude of the earth」s free oscillations and long-period characteristics of the earthquake source, J.Geoph.Res.,80 no.8, 1075-1078.

三好 寿,1968,津波の指向性についての再考察(1),地震2,21,121-138.

都司嘉宣,1977,水深が一定でない大洋を伝わる遠地津波の伝播,海洋科学,88 vo1,9,45-53.

渡辺偉夫,1989,日本の太平洋沿岸における津波の伝播に関する地域性,地震2,42,271-276.

津波の遡上に関する数値解析 首藤伸夫*・後藤智明**

1. 序

 津波や高潮は,我国の沿岸地方にしばしば災害をもたらすにもかかわらず,現状ではそのもっとも重要と思われる陸上へのうちあげを容易に計算することは困難である.これは,波の先端がかわいた陸上へおしあがるということ,そして波がひくとき海底があらわれることを容易に表現できないためである.
 そこで,筆者らは移動する水粒子に固定した物質座標による表現,つまりLagrange風に現象をみつめることによって考えることにする。
 このような津波の遡上の問題を物質座標系によって考える利点は,まず第一に,海底の露出や陸上地形の複雑さなどを容易に満足せしめうることである.静水時水底に存在した水粒子は,水底を離れることはないというのが水底での条件になり,陸上へのうちあげの最先端に存在する水粒子は,静水時汀線に存在した水粒子である.
 第二に,二次元問題への拡張が容易であることがあげられる.津波の遡上に関する問題においては,単に水路幅の変化に対応する項を基礎式に加えることにより,平面的広がりの効果を充分に計算できる地形は少なく,やはり普遍的には二次元問題として解く必要がある.この物質座標系で考えると平面的広がりのある複雑な陸上および海底の地形を水深という表現で安易に考慮できるのである。さらに津波の陸上へはいあがったときの樹木や家屋など地物の水流に対する抵抗,いわゆる津波の先端付近での抵抗の導入も可能と思われ,将来性のある方法であるということがいえるであろう.
 また,地形の形状が簡単な一次元問題の場合には,波動の細部の挙動は多少異なるかもしれないが,最大のうちあげ高については,物質座標による線型理論と空間座標による浅水理論とが同一の解を与えることがわかっているi).津波による災害においてもっとも重要と考えられているのは最大のうちあげ高であり,この物質座標による線型理論で解決できる問題は数多くあると思われる.
 まず,一次元問題として任意の海底形状における長波の第一次近似式を求める.水路幅の変化,海底摩擦を入れることも可能であるが,ここでは省略する.今回は,物質座標による長波近似式を数値計算する場合の安定性,収束性および境界条件を研究することを主潤的とするからである。したがって,波形変化に影響する地形の変化は,もっぱら水深の変化によるものだけである.また,海底摩擦を省略することは,現象を大きく見積ることになっている.
 数値計算法としては有限差分法を採用した。沖合の入力地点,すなわち沖の境界条件と汀線における境界条件を基本式から導き,理論解の存在する簡単な地形形状の場合について計算を実施した.
 この結果,理論値と非常に良い一致をすることがわかり,この数値計算が実用になることが明らかになった.
 最後に,実海岸の例として一次元計算がほぼ可能と思われる三陸地方普代海岸の現地地形を用いて計算を実施した.

*正会員工博東北大学教授土木工学科
**学生会員中央大学大学院理工学研究科

2. 物質座標による線型理論

 図一1に示すような水域において,(a,b)を物質座標とし,(x,y)をそれからの水粒子の変位を表わすものとする.図における丸印は仮想的な水粒子を意味する.
物質座標系による長波の第一次近似2)において連続の式は
(1)
運動の式は
(2)
(3)
である.ここで,pは圧力\rho,gはそれぞれ密度および重力加速度である.
 水底での条件は,図一1に示すように静水時水底つまり座標(a,-h(a))に存在した水粒子の変位およびその地点の水深を使って
(4)
表わされる.水表面での条件は
(5)
(6)
となる.ここで,\etaは静水時座標(a,0)に存在した水粒子の鉛直変位を表わし,空間座標系における波形に対応する.以下これを波形と呼ぷ。
 連続の式をbについて-h(a)からbまで積分し,水底の条件を適用すると,
(7)
鉛直方向の運動の式をbについて0からbまで積分し,表面の圧力条件を適用すると
(8)
となる.式(7),(8)から
(9)
となる.もしxがa,b,tの関数であったとしても,p/\rho+gyはa,tの関数である.(9)式を水平方向の運動の式に代入して
(10)
が成立するためには,xもa,tのみの関数でなければならない.したがって
(11)
となる.次に,式(7)に式(6)の条件を適用すると
(12)
が求まる.
 この2式が任意の海底形状における物質座標系による線型理論式であり,この2式を数値計算すればよいのである.

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式(1〜12)

3. 数値計算

(1) 数値計算式
 基本式である偏微分方程式の解法としては,高潮計算などによく使われる有限差分式を採用した.式(11),(12)の陽差分式は
(13)
および
(14)
となる.ここで\delta aおよび\delta tはそれぞれ計算の格子間隔そして時間聞隔である.
図ー2には,式(13)を使って計算する方向をしめしてある.時間ステップjまでの値からj+1ステップへの計算方向である.波形\etaは,式(14)を用いて各ステップで水平方向変位xを計算した後その値を使って計算すればよい.
 式(11)は,水深による変化はあっても基本的には双曲型である。したがうて,Courant-Friedrichs-Lewyの安定条件
(15)
で\delta a,\delta tを定めればよいことになる.ここで,h_{max}は計算領域における最大の水深である.

 (2) 計算領域
 計算領域については,斜面部における反射を考慮した波を沖の境界条件に与えることは困難であるため,反射の影響が沖の入力地点に到達するまでの時間と重複波によるうちあげを考え,汀線から水平距離20kmとしている.
 なお,沖水深は,実際の水深の如何にかかわらず,計算上は一様水深(ここでは40m)としてある.したがって,そこでの計算結果は,実際の外海における津波とただちに対応するものではない.

 (3) 初期条件・境界条件
 初期条件としては,時間の原点において静水面の条件を与える.つまり
(16)
として考える.
 波形を入力する沖合においては,先に述べたように水平底を仮定する.したがって,基本式は簡単に
(17)
(18)
となる.ここで,hは沖の水深を意味し一定値である.
いま速度\sqrt{gh}で水平軸の負の方向へ進行する波を考えると,式(17)の解はfを任意関数として
(式タイトルなし1)
で与えられる.これを式(17),(18)に代入することにより
(19)
なる関係が得られる.
 沖側の境界を表わす格子点をi=mで表わし式(19)を差分化すると
(20)
となる.初期条件からj=0まで静水状態であったとすとこの式は
(21)
と簡単に表わすことができる.したがって波形の時間的変化を定めると,式(21)を使って沖合の境界条件を与えることができる.
 また,波形を三角関数など容易に積分できるものに考えられるときは,式(19)を直接積分して境界条件を定めてもよい.

 (3) 仮想汀線境界条件
 図ー2にしめしてあるように,時間軸の方向へ計算を進める場合は汀線における境界条件が必要となる.もし汀線の境界条件がないときは,沖側の境界条件の方から汀線に向かって計算する方法が考えられる.しかし,先に述べたように沖の境界条件において反射の影響を考慮することが困難であり,進行波のみの条件にすると斜面において反射がまったく起こらず不都合な結果となる.
 差分式(14)は汀線において,静水時汀線を表わす格子点をi=0とすると
(22)
となる.これが汀線における条件である.静水時汀線に存在した水粒子は,地形の形状にそって地表上を移動することを意味している.
 いま,汀線から微小距離\delta aだけ離れた沖側および陸側の格子点をそれぞれi=1,i=-1であらわす.汀線とi=1の格子点の中間点i=1/2においては
(式タイトルなし2)
である.これをTaylor展開を使って汀線での値であらわすと
(式タイトルなし3)
となる.ここで汀線における条件式(22)を適用すると
(式タイトルなし4)
となる.同様にして汀線と炉一1の中間点∫=・一1/2について考えると
(式タイトルなし5)
となり,この両式から
(23)
が求まる。これが汀線における仮想条件である。

 (4) 計算結果
 このようにして簡単な地形形状について計算した波形の一例が図ー3である.縦横の縮尺比は1:2000と大きく歪ませてあり,斜面の勾配は1/50である.先端部と中央部に小さな振動がある.中央部の振動は斜面と水平底の結合部で発生しており水粒子の運動方向が急に変わるためであろうと考えられる.先端部については今後検討を必要とするが,図の歪みから考えて大した問題とは思われない.
 このような計算を数例実施したが,その結果を理論解a)と比較したものが図一4である.非常に良い一致を示している.このことから,差分式や格子間隔の妥当性,境界条件の設定が正しかったことが証明された.
 図ー5は陸地側の地形形状が水平部と1/50の斜面が組み合わされたものである.興味深い結果になった.

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式タイトルなし(1〜5)
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図ー1 座標系
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図ー2 計算方向
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図ー3 計算例その1
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図ー4 理論値との比較
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図ー5 計算例その2

4. 普代海岸の例

 普代海岸の形状をしらべると,水深約7m以深はほぼ1/40の勾配であり,汀線付近で1/7程度,陸上にあがってからは普代川の河道にそって平坦な流路が続く.この河道の両岸近くは急峻な山が迫っており・いくらか幅の変化があるにしても大きいものではない.このような地形に対しては,ほぼ一次元計算が可能であると考えられる.
 この地形について計算した例が図ー6である.沖波の条件としては,半波高1mおよび周期10分の正弦曲線を与えた.陸上の地形は河道にそって考えるのが本当であるが,河道についての資料が足りないため断面を平均してとってある.また,幅の効果はまったく考慮していない.

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図ー6 普代海岸の計算例

5. 結 論

 物質座標による線型理論式を用いて,津波の遡上に関する数値解析を研究したが,計算上の各種条件などが理論解との比較で正しいことがわかった.また,普代海岸のような地形の複雑な場合においても実用になることがわかった.
 残った問題は,二次元問題への拡張と海底および陸上における抵抗であるが,これらの解決の見通しはついている.
 なお,計算は,中央大学理工学部内FACOM 230-48および東京大学大型計算機センターHITAC 8800/8700を使用した.

謝辞

この研究を行なうにあたり,文部省から科学研究費(研究代表者 東北大学岩崎敏夫教授)による補助を受けた.また,計算・整理にあたって,学部学生である古内弘通,石田辰美,紺野泰正,種子充の諸君の熱心な助力をえた.ここに記して謝意を表する.

参考文献

1) Shuto,N.: Standing wave in front of a sloping dike, Proc. 13th Conf. on Coastal Eng., PP. 1629-1647,ASCE,1972.
2) 前出 1).
3) 前出 1).

物質座標系による非線型長波 後藤智明*

1. 序

 本研究は,物質座標系(Lagrangeの方法)の表現を用いた非線型長波の方程式を新たに導びくことにより,津波や高潮などの陸岸へのはいあがりの問題に対して,波の有限波高性を考慮した解析手法を容易ならしめようとしたものである.
 このような長波のはいあがりの問題を物質座標系で考える利点としては,特に実海岸のような複雑な陸岸地形に対しても適用可能であることがあげられる.
 従来,物質座標系の式群は外力項が非線型となるため取り扱いがぎわめて面倒となり,かえりみられることが少なかった.しかし,Miche1)は斜面上の短周期の波を記述するのにLagrangeの運動方程式を用いて成功したのであった.彼の特徴は水粒子の静水時位置からの変位が小さいと考えて摂動を行うにあった.実際,後述のように物質座標系の式群を変動量で表現すると外力に線型項が現われ比較的取り扱いが容易になる.
 首藤2),3)は,このMicheの物質座標系に対する考え方を長周期の波へ適用することにより,長波の陸岸へのはいあがりについての解を得ている.
 はじめに,この首藤の摂動法2)について考えてみる.
第一次近似は線型の方程式となる,第二次近似は永年項を含む結果,すなわち,時間の経過とともに振幅が増大しやがては第一次近似をうわまわるものとなる.摂動の際の条件は(第一次近似)〉(第二次近似)であったから,この関係が逆転するということは用いた摂動法がもはや適当なものではないことを意味している.したがって,高次近似の方程式を導びくためには摂動法を変えればよいのである.
 また,首藤の摂動法の考え方はMicheと同様に水粒子の静水時位置からの変位が小さいというものであった.連続体の変形に関する考え方では微小変位理論と呼ぽれる近似であろう.しかし,連続体のなかでも流体は大きな変形が許されるものであり,そのような近似を採用するのも有効であろう.
 以上の考察により,本研究においては有限変位近似としての摂動法を採用することにした.この結果,この有限変位を表わす項が物質座標系による長波の表現のうえで非線型項となり,また波の有限波高性を意味するものであることが明らかとなった.

*学生会員 工修 東北大学大学院 工学研究科

2. 変動量で表現された物質座標系の方程式

 二次元非回転運動を対象とする.粘性は考えない.静水時を時刻の原点に選び,静水時に(a,b)なる位置にあった水粒子は,任意の時刻には(\hat{x},\hat{y})に到達し,その水粒子の受けている圧力を\hat{p}とすると,連続および運動
の式は,
(2.1)
(2.2)
(2.3)
となる.非回転運動を表わす式(付記参照)は
(2.4)
である.
 いま,(\hat{x},\hat{y})を水粒子の変位量(x,y)で,圧力\hat{p}を静水圧-\rho gbとその変動量pを用いて
(2.5)
と表わすと,式(2.1)〜(2.4)は変動量x,y,zを用いて
(2.6)
(2.7)
(2.8)
(2.9)
と書くことができる.
 これらが変動量で表現された物質座標系の式群であり,式(2.1)〜(2.4)と比べ外力に線型項が現われ取り扱いが容易となる.たとえば,弱非線型の仮定が可能な場合,式(2.9)から連続の式がLaplaceの式を満足することや,式(2.7),(2.8)から圧力方程式として
(2.10)
が導びかれることがあげられる.ここで,x=∂\Phi/∂a,y=∂\phi/∂bである.
 この関係を用いて表面波に対し
(2.11)
という解の組み合わせを得ることも可能である.

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式(2.1〜2.11)

3. 水平床上の長波の方程式

 いま,水平方向にl,鉛直方向にdという特性長を考え,長波の運動はd^2/l^2\sigma≪1によって特徴づけられるものとする.ここで,A=a/l,B=b/d,X=x/l.Y=t/d,P=p/\rho gd,T=\sqrt{gd}*t/lなる無次元量を導入すると,式(2.6)〜(2.9)は
(3.1)
(3.2)
(3.3)
(3.4)
となる.
 また,ここで従属変数X,Y,Zを
(3.5)
と展開し,式(3.1)〜(3.4)に代入して最低次の項をあつめると,
(3.6)
(3.7)
(3.8)
(3.9)
がえられる.なお,式(3.9)において,ここでは周期的な波動運動を取り扱っているのであり,1+∂X_0/∂A≠0となり,結局
(3.9)’
である.したがって,この近似においては水粒子の運動は,式(3.8)から鉛直方向加速度が無視されており,また式(3.9)から水粒子の水平方向変位は鉛直方向には変化しないことがわかる.
 境界条件は,自由表面では最初水表面を形成していた水粒子は常に水表面に存在することであり,
(3.10)
水底では,最初水底にあった水粒子は水底を離れることがないというものであり,水平床を考えると
(3.11)
となる.
 連続の式(3.6)は式(3.9)」から鉛直方向に積分することが可能であり,境界条件(3.11)を用いると
(3.12)
となる。また,鉛直方向の運動の式(3.8)も同様に境界条件(3.10)を用いて
(3.13)
と書くことができる.この両式を水平方向の運動の式(3.7)に代入し整理すると,
(3.14)
が求まる.ここで,はじめ水表面に存在していた水粒子の鉛直変位を\zeta_0(=Y_0|_{B=0})とすると,式(3,12),(3.14)から
(3.15)
が求まる。これが物質座標系による長波の運動そして連続方程式である.
 また,この長波の方程式は次の二つの仮定が満たされるとき容易に物理的な考察からも導びくことができる.
(仮定) 1.水粒子の鉛直方向加速度が無視可能、
    2.最初鉛直断面を形成した水粒子は運動後も同一鉛直断面を形成する.
 いま静水時にMの位置にあった水粒子が,任意の時刻に灘だけ水平方向に変位し,M^」の位置に到達したものと考える.このときはじめ水表面に存在していた水粒子の鉛直変位を\etaとおく.
 質量の連続を考える.図ー1において両斜線部の面積が等しいことにより,
(式タイトルなし1)
よって,
(3.16)
次に,力のつり合いから
(式タイトルなし2)
したがって,
(3.17)
が求まる.この式と式(3.14),(3.15)とは次元を有するか有しないかの違いがあるにせよ本質的には同値である.
 以上の論議により,本研究で導出に成功した長波の方程式は1に比べ∂x/∂aが無視できない場合,すなわち水粒子の有限変位を考慮したものになっていることがわかる.この点が従来の線型のものとの違いである.
また,式(3.16),(3.17)から
(3.18)
となり,波速Cを
(3.19)
と書くことができる.したがって,先に述べた水粒子の有限変位を考慮することが,波の有限波高性を考えることにもなっていることがわかる.

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式(3.1〜3.19)
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式タイトルなし(1〜2)
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図ー1

4. 斜面上の長波の方程式

 図ー2に示すような水域を考える.任意の水底形状に対する境界条件は,
(4.1)
であるので,長波の方程式(3.16),(3.17)をこれを満足するように書き改めると,
(4.2)
となる.

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図ー2 座標系

5. 線型長波の式との比較

 水平床における線型と非線型の長波の特徴を比較したものが表ー1である.波速が少々異なるが,空間座標系の線型長波と浅水理論との関係に類似している.浅水理論における波速は\aqrt{gh}*(1+1/2 \eta/h)である.次に,数値計算によって比較を行う.計算法としてはExplicit Methodとし,初期および境界条件は線型のものと同じものとする.
 図ー3は沖波波高1m,周期5分,波形勾配1.8×10^{-4}の波が1/10勾配の斜面と水平床が組み合わされたような水域に進行して来た場合の空間波形である.実線が非線型,破線が線型の計算結果である.非線型の計算結果の方が前のめりになっていることがよくわかる.
 このような計算を数例実施したが,最大の遡上高について首藤の線型理論解(実線)と比較したものが図ー4である.線型の数値計算結果は理論解とよく一致する.
非線型の結果はl/L=0.2を境に理論解を上まわったり,下まわったりしている.計算の精度については,水理験結果と詳細に検討する必要があるが,このように長のはいあがり高に関して波の有限波高性を考慮した計が容易に可能であることがいえよう.
 以上の例はすべで波形勾配10^{-4}〜10^{-5}程度の計算ある.しかし,これ以上波形勾配の大きい波の場合については砕波(ここでは水粒子の追いつき,追い越しをさす)がおこると式(4.2)中の分母の項がゼロに近くなり計算が発散する.このように砕波をおこす場合の計算は今後何らかの方法を考える必要がある.

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表ー1 線型長波と非線型長波の比較
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図ー3 空間波形の例
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図ー4 長波の遡上高の計算結果

6. 結 論

 本研究は暗に津波の陸岸へのはいあがりに関する,波の有限波高性を考慮した計算手法を目的としていた.津波は一般に非砕波またはsurging型の砕波であることを考えると,本研究で導出した物質座標系による非線型長波の方程式で取り扱える例は数多くあると考えられる.
なお,計算は東北大学大型計算機センターACOS-6および東京大学大型計算機センターHITAC 8800/8700を使用した.

謝辞

この研究を行うにあたり,東北大学首藤伸夫教授には多くの助言を賜わった.ここに記して厚く謝意を表する.

参考文献

1) Miche,R.: Mouvements ondulatories de la mer en profondeur constante ou decroissante, Annales des Ponts et Chaussees, 114e, 1944.
2) 首藤伸夫: 長波のはいあがり高,第13回海講, 1967.
3) Shuto,N.: Standing waves in front of a sloping dike, Proc. 13th Conf. on Coastal Eng., ASCE, 1972.
4) 首藤伸夫・後藤智明: 津波の遡上に関する数値解析,第24回海講, 1977.

付. 物質座標系による非回転の表現

 (1) 空間座標系の表現からの変換空間座標系(Eulerの方法)の非回転の表現式は
(1)
であり,これを物質座標系への変換式,すなわち
(2)
で変換をすると
(3)
が得られる.またこの式を変形すると
(4)
とも書き改めることができる.

 (2) 流体要素の実質的な非回転ある流体要素が伸び縮みはするが実質的には非回転であるとした場合物質座標系の考え方では式(4)と異なる表現
になる.
 いま,時刻の原点に矩形(Q)(図ー5の(a))であった流体要素が任意の時刻に図ー5の(b)のごとく変化したとすると,流体要素の回転角\alpha,\betaは
(式)
であり,\alpha=\betaならば実質的に流体要素は非回転であるといえよう.したがって
(5)
となる.
 式(4)と(5)は同値ではない.この非回転の表現において両者の違う理由は不明である.しかし,本研究の近似においては,両者とも∂\x/∂b=0が導びかれる.

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式(1〜5)
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(式)
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図ー5 非回転の表現

非線型津波の二次元遡上計算 後藤智明*・首藤伸夫**

1. 序

 近年,津波の挙動を予測するのに,数値実験的手法がきわめて有効であることが認識されるようになった.しかしながら,特に陸岸付近の浅海や陸岸へ打ち上がった津波を考えるときには,解決を要する幾多の問題点が残されていることも事実である.それらの問題点のなかで最も重要と思われることは,どのような運動方程式系がより実用的であるかという問題であろう.
 本研究では,この運動方程式系の選択の問題に関する梶浦1)・首藤2)の研究を背景として,物質座標系の考え方で,深水域での線型方程式系から,浅海域での有限波高性を考慮した非線型方程式系につなぐ数値計算モデルについて検討を行なった.
 まずはじめに,平面二次元問題における有限波高性を考慮した非線型長波の式を新たに導いている.先に後藤3)が用いた展開を平面二次元問題に拡張したものでは,非回転の条件式が面倒となり,水深方向に積分可能という長波特有の条件の算出が困難なため,新たな展開を用いている.
 次に,非線型長波と線型のものとを比較するために,矩形湾湾奥の遡上高についての理論解を導いている.この矩形湾について線型および非線型の式を用いた数値計算を行なうことにより,数値計算法の検証および最大遡上高に関する比較を行なっている.
 最後に,三陸地方越喜来湾を対象として,明治29年三陸大津波を想定し,線型および非線型の式を用いた計算を行ない過去の痕跡高と比較している.

*正会員 工修 東北大学助手 工学部土木工学科
**正会員 工博 東北大学教授 工学部土木工学科

2. 長波の非線型方程式

 三次元非回転運動を対象とする.粘性は考えない.いま,静水時を時刻の原点に選び,座標(a,b,c)に存在した水粒子が任意の時刻(\hat{x},\hat{y},\hat{z})に到達し,その水粒子の受けている圧力を\hat{p}とする.連続および運動の式は,
(2-1)
(2-2)
である.ここで,\rhoは密度,gは重力加速度である.
非回転の条件式は(2-2)に対して回転をとることにより導かれ,
(2-3)
となる.
 いま,水平方向にl,鉛直方向にdという特性長を考え,長波の運動はd/l≪1によって特徴づけられるものとする.この特性長lおよびdを用いて,(2-1)〜(2-3)の変数を次のように無次元化する.
(2-4)
ついで,従属変数\hat{X},\hat{Y},\hat{Z},\hat{P}を次のように展開し,\sigmaに関して整理する.
(2-5)
たとえば,連続の式(2-1)に関して整理すると,
(2-6)
となる.
またここで,O(\sigma^1)とO(\sigma^2)の式を加えた式を作ると,(2-6)に対して,
(2-7)
となる.いま,
(2-8)
とおくと,(2-7)は
(2-9)
となる.
 他の式にも同様な操作をすると,
(2-10)
が導かれる.この(2-9),(2-10)がO(\sigma^2)の長波近似としての基礎方程式である。
 自由表面での境界条件は,最:初自由表面を形成していた水粒子は常に水表面に存在することである.水底での条件は,最初水底にあった水粒子が水底を離れることがないというものである.したがって,
(2-11)
で表わされる。ここで,Hは水深を意味する.
 以下,これらの条件を用いて水深方向に積分された長波の式を考える.まず,連続の式をCについて積分し境界条件を適用すると,
(2-12)
が求まる。同様に鉛直方向の運動の式を積分すると,
(2-13)
となり,この両式から,
(2-14)
である.この式を水平方向の運動の式に代入すると,
(2-15)
が導かれる.ここで,NはC=0のときのzの値であり,以下波形と呼ぶことにする.
 以上の論議で明らかなように,(2-14)が長波の連続の式であり,(2-15)が運動の式である.
 表ー1は,有次元表示で線型と非線型とを比較したものである.ただし,水平床の場合で,詔または写方向へ進行する波を対象としている.

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式(2.1〜2.15)
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表ー1 線型と非線型方程式の比較

3. 矩形湾の遡上高に関する理論解

 波の遡上に関する取り扱いにおいては,従来よく用いられて来た空間座標表示では,Carrier-GreenspanとかTuck-Hwang変換といった特殊な技巧を要する.しかし,物質座標で考えると,Ippen-Goda4)・酒井5)等が行なった方法で比較的容易に解を求めることができる.
 図ー1のような,湾内の水深が湾軸方向に一様に減少している矩形湾について考える.湾内では横振動を無視でき,一次元伝播として取り扱えるものと仮定する.海底摩擦は考えない.
 いま,Hを沖波重複波高,F(a,b)を空閤波形分布関数として,
(3-1)
とおくと,境界条件は
(3-2)
ここで,添字1は湾外,2は湾内での量を表わすものとする.\sigmaは角振動数,kは波数を意味し,aと\omegaは未知定数である.

 (1) 湾外の波の解
 Ippen-Godaの空間座標と本論文の物質座標との表現の違いがあるが,基本的にはHelmholtzの方程式
(3-3)
を解くことに帰着され,解は
(3-4)
となる.ここで,I_1,I_2は次式であらわされる.
(3-5)

 (2) 湾内の波の解
 湾内においては,先に仮定したとおり一次元伝播として取り扱うため,Besselの微分方程式
(3-6)
を解くことに帰着され,解は
(3-7)
となる.ここで,\sは海底匂配,Lは沖波波長を示す.

 (3) 未知係数aおよび\omegaの決定
 境界条件中,湾口水位連続条件F_1(O,b)=F_2(0)は湾口幅方向に平均して成立するものと考えると,
(3-8)
が常に成立する必要がある.故に,
(3-9)
(3-10)
が求まる.ここで\phi_{1}および\phi_{2}は次式であらわされる.
(3-11)

 (4) 湾奥での遡上高
 (3-1),(3-7)および(3-10)から矩形湾の遡上高Rは,梶浦のTuck-Hwang変換を用いた解1)と一致し,
(3-12)
となる.

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式(3.1〜3.12)
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図ー1 矩形湾(記号の説明)

4. 数値計算法

 計算は差分法とし,leap・frog法を採用している.計算点の配置を図ー2に示す.

 (1) 基本方程式
 非線型長波の式に海底摩擦の表現として,流速の2乗に比例する項を加え陽的な表現にすると,
(4-1)
(4-2)
(4-3)
となる.ここで,fは摩擦係数である.差分式は図ー2の配置に従って中央差分をとればよい.線型の式についても同じである.
 (2) 初期条件および境界条件
 初期条件は,時刻の原点で静水状態を考え,全計算領域に対し次のようにおく.
(4-4)
 波の入力条件としては,規則波に対し
(4-5)
なる関係6)で与えた.ただし,後述の越喜来湾の計算では波源域モデル(空間座標表示)による計算値u,vを物質座標系の変位量x,yに変換している.この変換は
(4-6)
で与えられ,空間座標表示の流速と物質座標表示の流速が等しいと考えたものである.両表示法の流速の差は長波の場合波高水深此に比例することから考え,海岸から充分離れた外洋で結合すれば問題はない.
 汀線における境界条件は,連続の式(4-1)を見ると明らかなように,静水時汀線に存在していた水粒子は地形形状に沿って地表上を移動することが保証されておりとりたてて必要ではない.

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式(4-1〜4-6)
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図ー2 計算点の配置

5. 矩形湾に関する数値計算

 図ー1に示す矩形湾を対象とする.格子近似のとり方は湾内および湾口から2kmのところまで100m正方格子としそれから沖は500m正方格子を用いている.
なお,海底摩擦は理論解と同様に無視している.
 図ー3は計算結果の一例であり,遡上高の時間変化を描いたものである.実線が線型,破線が非線型の結果である.第1波は波高が小さい過渡的な波を入力している.第2波は第1波の影響で若干大きな遡上高となり,第3波以降ほぼ定常に達していることが読みとれる.線型と非線型の結果を比べると,非線型の方が波の峰谷共に高くなっていること,時間がたつにつれ,徐々に峰が高くなり前傾する量が大きくなることがわかる.
 図ー4はd/l=0.1951に関して理論解と数値解とを比較したものである.黒丸印は線型,白丸印は非線型数値解を表わしている.両者とも第3波から第5波までの値を平均したものである.理論解と線型数値解の差は最大で10%程度であった.また,非線型数値解との差は最大20%前後に達する.

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図ー3 相対遡上高の時間波形(H/h=2×10^{-2})
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図ー4 理論解と数値解の比較

6. 越喜来湾に関する津波の遡上計算

 越喜来湾は三陸海岸南端近くに位置し,湾の形は湾口のせばまったほぼ楕円形をなしている.湾内には浦浜・泊・崎浜などの漁港が点在し,これらの地区は明治29年・昭和8年の三陸大津波によって顕著な浸水が認められる地区でもある.
 計算は北緯38°51’32"〜39°7’45",東経141°48’17"〜142°14’3"の地域を四つの領域に構成し,10/3km格子から湾に近づくに従がって順次格子を細かくし最終的に湾内で1/9kmで地形を表現している.また,外側の三領域は線型,湾内では非線型計算を行なった.
 入力波としては,明治29年に三陸大津波を想定した波源域モデルの計算結果を用いた.
 図ー5は湾奥の浦浜地区の流跡線を描いたものである.黒丸印は静水時の水粒子の位置を示す.水粒子の運動は複雑であり,各水粒子の最大遡上高が異なっている.
本計算は陸上側の地形の表現は計算格子と同じ1/9km格子で与えており,その間の地点は補間で定めていることを考えると妥当な計算ということができよう.残念なことは浦浜川に沿って遡上する計算点がなかったことである.

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図ー5 浦浜地区の計算結果

7. 結 論

 本研究においては,平面二次元問題に対する非線型長波の式を導き,その式を用いた数値計算について論議して来た.まず,理論解と線型計算解とを比較することにより計算法の妥当性について検証した.非線型計算では,線型に比べRun-upは大きく,Run-downは小さくなり最大20%程度の差が見られることがわかった.
しかし,定性的な論議をするためには数多くの計算をする必要があることは明らかである.最後に,複雑な地形を有する実海岸に関しても比較的容易に計算することが可能であり,過去の痕跡をよく説明することがわかった.

謝辞

本研究をすすめるにあたり,東北大学岩崎敏夫教授,真野明助手から三陸大津波のデータをいただいた.
計算整理にあたっては大学院生笹川稔郎君の助力を得た.本研究の一部は文部省科学研究費(代表者 東大地震研梶浦欣二郎教授)によって行われた.ここに記して厚く謝意を表する.

参考文献

1) Kajiura,K.: Local behaviors of tsunamis IUTAM symposium on "Surface gravity wave on water of varying depth" ,,1979.
2) 首藤伸夫: 津波の計算における非線型項と分散項の重要性,第23回海講,pp.432〜436, 1976.
3) 後藤智明: 物質座標系による非線型長波,第25回海講,pp.128〜131,1978.
4) Ippen, A. T. and Y. Goda: Wave induced oscillations in harbors: Soltion of a rectangular harbor conneced to the open sea, M.I.T. Hydrodynamics Lab., Report No.59,1963.
5) 酒井哲郎: 傾斜した海底を有する湾における長波の湾水振動,第22回海講,PP.279〜284,1975.
6) 首藤伸夫・後藤智明:津波の遡上に関する数値解析,第24回海講,pp.65〜68,1977.

各種津波遡上計算法と波先端条件の比較 後藤智明*・首藤伸夫**

1. 序

 近年,津波の挙動を予測するのに数値実験がきわめて有効であることが認識されるようになって来た.遡上計算についても例外にもれず,相田1),岩崎2),3),Houston4),Hubberd5),そして著者6),7)等が種々の計算法を提案している.
 しかし,各方法は波先端の条件の設定にいまだ問題が残されていることも事実である。さらに,浅海域の津波の変形に関する問題,すなわち,津波の段波性の波への変形そして波形曲率にもとずく分散性の数値計算上の取り扱いなどについても,いろいろな問題が残されている.
 本研究は,まずはじめに,代表的な計算法である相田1),岩崎3)そして著者6)・7)の各方法に焦点をあて,理論解8)・9)との比較を通じ各方法の波先端条件の違いによる計算精度について詳細に検討している.
 次に,津波の段波性の波への変形そして波形曲率の効果による分散項の導入について,津波等の問題で比較的便利なstaggered leap-forg法(以下S.L.F.法と記す)を用いた数値計算法を紹介する.

*正会員 工修 東北大学助手 工学部土木工学科
**正会員 工博 東北大学教授 工学部土木工学科

2. 各種津波遡上計算法の比較

 波の遡上計算は表ー1の6種に大別できる.表ー1では各方法について,方程式,計算法,波先端の条件そして遡上形態等について比較をしている..表中構造物とあるのは,防波堤や防潮堤などの構造物の効果を数値計算に取り入れる際の難度について調べたものである.
 一般的に津波の計算は比較的広範囲な平面地形を対象とした計算をする必要があり,比較的容易にしかも経済的に計算が可能となるものは表ー1のなかでも相田1),岩崎3)そして著者6),7)(線型)の3種である.ここではこの3種類の計算法を取り上げ解析解8)・9)との比較を通じ各方法の精度そして所定の精度を得るための条件について調べている.
 遡上高と入射波高の比すなわち相対遡上高R/Hに関する理論解8)・9)は,一様勾配斜面と水平床が組み合わされたような簡単な一次元水路の重複波型の解で
(1)
で与えられる.ここで,Lは入射波波長,lは静水時の汀線から斜面のり先までの水平距離であり,J_0,J_1は第一種のBessel関数である.
 計算は理論解と同じ一次元問題とし,相田1)(Fr=0.5),相田1)(Fr=2.0),岩崎8)そして著者6)・7)(線型)の4種について実施している.また,計算条件は, 格子長:25m50m,100mの3種
斜面勾配:1/10,1/25,1/50,1/100の4種:
入射波周期:300s,600sの2種
水平床水深:50mに固定
入射波振幅:1mに固定
とした.ここで,入射波周期は数値計算の現象の長さに比らべ格子長がより短い方が有利であるという性質からみて厳しい条件でもある.実際,周期の長い波の計算結果はどの方法でも理論解とよく合致し比較の対象とならない.
相対遡上高に関して,計算値と理論値の比を表ー2に示す.計算値はどれも8周期分の計算を行ない,最大遡上高として安定な値を採用している.表申*印のある計算は後述する数値ギブス振動が発生した結果を表わす.
 図ー1は各方法の最大遡上時および引き波時の波形を理論値と比較した例である.実線および点線はそれぞれ600s,300sの理論解を表わし,白丸および黒丸はそれぞれ600s,300sの計算結果を表わす.なお,格子長は50m,斜面勾配は1/50である.
 以上の結果をまとめると次のことがいえる.
 1.浅水理論を用いた相田および岩崎の方法は最:大遡上時の空間波形は物質座標系の線型理論の結果と大きな相違を生じない.しかし,引き波時の波形では浅水理論の結果の方が高い水位を示す.
 2.相田の方法で波先端のフルード数を0.5そして2.0とおいたものを比較すると,両者の最大遡上高は殆ど一致するとみなしてよい.
 3.斜面の長さが長くなる程また入射波周期が短かくなる程,浅水理論を用いた計算法は理論値をかなり下まわる解しか与えられないので物質座標のものより空間格子を細かく選ぶ必要が生ずる.
 4.格子長\delta x,入射波周期T,斜面勾配aからなる無次元パラメータ\delta x/agT^2の関数として精度を評価したものが図ー2である.精度は最大遡上高に関して数値解と理論解との比で表わしている.これを用いれぱ所要の精度に対する空間格子の寸法を定めることができる.
 5.たとえば,\delta x=50m,a=1/50,T=600sの場合,相田の方法を1として演算時間を比べると,(相田):(岩崎):(著者)=1:1.02:0.85となり大差はない.したがって,
 6.図ー2から適切な格子長を選ぶことにより,比較的面倒な物質座標による方法を用いずとも,浅水理論を使用した方法で充分な精度を持つ計算が可能である.

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式(1)
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表ー1 各種津波遡上計算法の比較
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表ー2 各種遡上計算と最大遡上高に関する理論解との比較
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図ー1 波形に関する比較
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図ー2 各種計算法の精度

3. 非線型性の強い津波の遡上計算

 (1) 段波津波の計算法
 短周期の津波が遠浅の海岸ぺ来襲するとき,津波の波頭が段波を呈することがある.このような津波をS.L.F.法で計算する場合問題となることは段波の不連続面前後から発生する数値ギブス振動である.
 図ー3にその一例を示す.CASE AおよびCASEBは格子長がそれぞれ12.5m,25mの例である.どちらも第1波の最大遡上時から第2波目が海岸に来襲する様子を描いている.どちらも第2波目の波頭で波長が格子長の2倍である数値ギブス振動が発生しているのがよくわかる.第1波の波頭も段波を呈するが,この場合は数値ギブス振動が発生しないかまた発生しても非常に小さいものである.なお,波先端の条件は岩崎3)の方法を用いている.
 この数値ギブス振動の発生の理由を調べるために,不連続な水位,流速をもつ理想段波について初期値問題をS.L.F.法で計算を行った.その例を図ー4に示す.理想段波のように圧縮性のあまり強くない衝撃波は,図ー4のように数値ギブス振動のない理論解に非常に近い結果を与える.なお,左側の図において,実線は理論解,黒丸は計算結果である.
 数値解では衝撃波面から上端に向かって伝i播する一種の反射波(誤差波)が発生する.この反射波の大きさはフルード数に比例して大きくなるがCASE Cの場合でも段波の波高の約1/10程度である.この反射波の伝播の様子を調べたものが図ー4の右側の図である.図中破線は衝撃波面の位置を表わす.
 以上の結果から,図ー3の計算で第1波のように静水中を進む段波あるいは図ー4の理想段波の計算のように衝撃波面において流れの圧縮性の弱い場合に比らべ,第2波の強いもどり流れのなかを進む,流れの圧縮性の強い衝撃波においてはこの強い圧縮性のため,衝撃波面から発生する反射波が伝播できず,その蓄積効果のために数値ギブス振動が発生すると思われる.
 したがって,数値ギブス振動を除去するためには,この振動が発生する箇所で反射波をむりやりにでも伝播させてやればよいのである.そこで,本研究においては浅水理論の連続方程式に,
(2)
の型で人為数値拡散項を導入することにした.ここで,\beta_1を
(3)
とおくと,\gammaなる定数をうまく選ぶことにより,数値ギブス振動の発生するところに強く作用し,他の箇所にはまったく作用しないものとなり,望むところでもある.
 図ー3のCASE Cにこの人為数値拡散項を導入した計算結果を示す.心配される拡散項の影響による波高の滅衰も見られず,しかも数値ギブス振動も完全に除去され,望ましい数値解となる.
 なお,この人為数値拡散項を導入した差分式の安定条件をVon Neumamの方法で調べると
(4)
となる.あまり厳しいものではない.
 もう少し,衝撃波のS.L.F.法による数値計算について考えてみる.最も簡単な定常の衝撃波すなわち跳水現象を取り上げる.
 この跳水現象の初期値問題についてS.L.F.法で計算したものが図ー5である.CASE Aは人為数値拡散項を用いなかった結果であり,CASE Bは用いたものである.CASE Aでは射流側に数値ギブス振動を生じている.この振動のため運動量もエネルギーも振動する解が得られる.拡散項を導入した方の結果は望ましいものとなる.
 しかし,ここであらたな問題が生ずる.すなわち,人為数値拡散項を導入した結果,解がなまり不連続区間が4\delta xから6\delta xへ1.5倍も長くなったことである.また,これは拡散項の導入に関する問題だけではなく,図ー4の理想段波の計算にみられたような不連続量の差が大きくなることによってもおこる.
 この解のなまりの問題に関しては,Von Neuman&Richtmyer10)に代表される人為粘性項に類似したものを考えるとよい.たとえば,この跳水の問題でエネルギー保存則に遷移領域でつり合う項
(式タイトルなし1)
を導入すると,エネルギー方程式は
(5)
となる.ここで,E=u^2/2+gDであり,β_2は定数である.
 式(5)を
(6)
の条件で解くと
(7)
なる遷移領域における解を得る.図ー6に示すとおり,式(7)の解は遷移区間をなめらかに連続_し,しかも遷移区間の長さはβ_2\delta xのオーダーとなり,β_2を適切に選ぶことにより,数値解のなまりをある程度おさえるごとができる.
 β_1=1.0,β_2=0.8とおいた計算例を図ー5 CASE Cに示す.CASE Bに比らべ遷移区間は4\delta xにおさえられている.
 
 (2) 波形曲率の効果による分散項の計算
 遠浅の海岸とか河川内を遡上する津波を考えるときは段波性の波の変形とともに波形曲率による分散効果が無視できなくなる.
 Boussinesqの式に代表される分散項を考慮した長波の式はその他にもK-dV,角谷,MehauteそしてPeregrineの各式が導かれているが,ここでは,斜面による反射の影響を考慮しているPeregrineの式11)を採用している.
津波のように波長の比較的長い波について考えるとき,いくら遠浅といっても斜面からの反射を無視するわけにはいかないであろうという判断による.
 Peregrineの式は,流速,波高,静水深をそれぞれu,\eta,hとおくとき
(8)
(9)
で表わされる.式(8),(9)をそのまま差分化すると分散項の形から想像して陰形式の差分式となるのは明らかであり,一次元伝播の計算ならともかく二次元伝播の計算では演算時間の問題で得策ではない.
 そこで,本研究では式(9)の分散項を書き改あることを考えた.すなわち,Peregrineの展開において第1近似は線形長波の式となることから,この関係を第2近似である分散項に代入するのである.この変換は,第2近似の式を考える上ではいたって問題はない.この方法を用いるとPeregrineの式は,線流量M,実水深D(=h+\eta)を用いて
(10)
(11)
と表わされる.式(11)の形であればS.L.F.スキームで表現することも可能である.
 ここで注意しなければならないことは,S.L.F.スキーム自体が数値分散性を有していることである.すなわち,S.L.F.スキームが持つ数値分散項が式(11)の分散項と同等以上の効果を有する場合は,式(11)の分散項を導入する意義がなくなる恐れがあるごとである.
 S.L.F.スキームの擬似徴分方程式において主たる分散項は
(式タイトルなし2)
で与えられる.簡単に水平床の場合を考え,式(11)の分散項との比をとると
(12)
となる.大括弧の中は差分式の安定条件が(|u|+\sqrt{gD})×(\delta t/\delta x)≦1であるので通常0.1〜0.2程度と考えてもさしつかえないので全体として1/10以下になると思われる.したがって,何も高近似のスキームを用いずとも通常のS.L.F.法で充分であると考えられる.
なお,Von Neumannによる安定条件を求めると通常のものより厳しくなり
(13)
かつ
(14)
となる.したがって,格子寸法の選び方によるが深海域で分散項を考慮すると不安定になるので,式(14)を満足する浅海域で分散項を考慮すると良い.たとえば,二次元伝播問題において電算機iの能力から判断し現在用いられる最も細かい格子寸法は25m程度であることを考えると,実水深Dが約28mより小さい所から分散項が考慮可能となる.ゆえに,津波のような比較的長周期性の波を考える場合式(14)の条件はあまり問題とはならない.
 Peregrineの式のS.L.F.法による計算例を図一7に示す。振幅1m半周期300秒の正弦波の水平床上の変形について計算している.図の水平軸は波先端の位置を表わし,2分ごとに描いている.
 このように,式(10),(11)をS.L.F.法で計算することによっても分散項の効果を計算することができる.また,従来の陰差分のものに比べ二次元問題も比較的容易に拡張でき将来性ある方法ということができよう.

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式(1〜14)
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式タイトルなし(1〜2)
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図ー3 段波津波の計算例
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図ー4 理想段波の計算例
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図ー5 跳水の計算例
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図ー6 遷移領域の連続解
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図ー7 分散項の計算例

4.結 論

 本研究はまずはじめに,代表的な種々の津波遡上計算法に焦点をあてその数値解の比較を通じて,S.L.F.スキームを用いた浅水理論の計算で,対象とする地形勾配および波の周期を考慮して適切な格子寸法を用いることにより充分な精度をもって遡上計算が可能であることを明らかにした.そして,非線型性の強い津波に関してもこのS.L.F.スキームを用いて段波津波への変形および高次非線形現象である波形曲率の効果による分散性を考慮した計算が可能である一方法を提案している.しかし,本研究で用いた手法,特にVon Neumann&&Richtmyer風の項が実際の物理現象とどのように対応しているか水理実験等を用い詳細に検討する必要があろう.

謝辞

この研究を行なうにあたり,文部省から科学研究費(研究代表者 東京大学梶浦欣二郎教授)による補助を受けた.また,計算・整理にあたり当時東北大学学部生であった中根亘君,大学院学生の諸君の熱心な助力を得た.ここに記して謝意を表する.

参考文献

1) 相田勇:陸上に温れる津波の数値実験,震研彙報,Vol.52,pp.441〜460,1977.
2) 岩崎敏夫・富樫宏由:遡上津波先端の条件と計算法,第16回海講,pp.359〜364,1969.
3) 岩崎敏夫・真野明:オイラー座標による二次元津波遡上の数値計算,第26回海講,pp.70〜74,1979.
4) Houston,J.R, and H,L.Butler: A numerical model for tsunami inundation, U.S. Army Engineer Waterways Experiment Station, Technical Report HL-79-2,1979.
5) Hubberd, S. and D.H.Peregrine: Surf and run-up on a beach; a uniform bore, J.F.M., Vol. 95, Part 2, pp. 323〜345,1979.
6) 首藤伸夫・後藤智明:津波の遡上に関する数値解析,第24回海講,pp.65〜68,1977.
7) 後藤智明・首藤伸夫:非線型津波の二次元遡上計算,第26回海講,pp.56〜60,1979.
8) Shuto, N: Standing wave in front of a sloping dike, Proc. 13th Conf. on Coastal Eng., pp. 1629〜1647,ASCE,1972.
9) Ke!ler,J.B. and H.B.Keller: Water wave run-up on a beach, Research Report No. NONR-3828(00), 0ffice of Naval Research, Rept. of Navy, 1964.
10) Von Neumann, J. and R.D.Richtmyer: A method for the numerical calculation of hydrodynamic shocks, J. of Applied Physics, Vo1. 21, No. 3, pp. 232〜238, 1950.
11) Peregrine,D.H.: Long wave on a beach, J. F.M., Vol. 27, Part 4, pp. 815〜827, 1967.

河川津波の遡上計算 後藤智明*・首藤伸夫**

1. 序

 河川を遡る津波は,河川固有流量を有していることおよび比較的浅い水域を伝播することにより,段波状の波頭になりやすい.また,蛇行彎曲部をもつ河口付近での段波状津波の数値計算には,非常な困難が伴うものと考えられる.
 河川内の段波に関する従来の数値計算は,河道を一次元水路とみなし,特性曲線法あるいはLax-Wendroff型の差分法を用いているものが多く,河川の彎曲部における段波の挙動といった.河道の二次元性を考慮したものは少ない.しかし,河川彎曲部においては,流線が曲げられること,河岸からの反射の効果等のため,定常流の場合に比べ一層大きな水面傾斜が発生することが水理実験により確められており1),河川を遡る津波による越流とそれにもとつく被害を推定するうえで見逃すことのできない重要な問題のひとつである.
 本研究では,河川内の段波の伝播を取り扱うのに最適な数値計算法について検討する.まず,ダム決壊による段波の発生の問題を例として,水理実験と比較することにより,各種数値計算法の比較検討を行う.次に,河川彎曲部の段波の伝播を精度良く取り扱い得る方法として,直交曲線座標系の方程式を用いた計算法を提案し,水理実験および従来の計算法と詳細に比較している.さらに,実際の河川を対象として計算を行うことにより,本研究で提案した手法の実用上の問題点についても検討している.

*正会員 工修 東北大学助手 工学部土木工学科
**正会員 工博 東北大学教授 工学部土木工学科

2. 段波の数値計算法の検討

 (1) 水理実験
 ダム決壊による段波の伝播に関する数値計算の精度を知る目的で,図ー1に示す鋼製矩形水路を用いて水理実験を行った,水路の上流には貯水槽を設け,段波の発生はゲートの急開による.水位の測定にはサーボ式水位計およびモータードライブカメラを用いた.
 図ー2に貯水槽水位19.Ocm,下流静水深9.5cmの水位記録を示す.この実験結果を各種数値計算法の比較のための例題波とする.

 (2) 各種数値計算法の比較
 現在まで提案されている代表的な計算法としては,特性曲線法,差分法,有限要素法およびセル撰点法がある.本研究では代表的な2種の差分法(two-step Lax-Wendroff法とleap-frog法)と有限要素法を取り上げる.特性曲線法はStoker2)によって解析的に取り扱われ,このダム決壊問題に関する解が得られている.また,セル撰点法はこの問題のような発展方程式系の計算に使用された例はなく今後の問題である.
 本研究では数値計算の支配方程式として鉛直方向に積分した浅水理論を用いる.摩擦はManningのnで表現し,n=0.013を採用している.
 差分法の計算は簡単なため一次元伝播とし,格子長命は5cmおよび10cmの2種類実施した.また,L-W法では数値粘性項3),L-F法では数値拡散項4)を導入した計算も行っている.
 有限要素法は時間積分をtwo-step Lax-Wendroff型5)で計算し,簡単のため一次式の形状関数を用いた.有限要素は短辺10cmの直角二等辺三角形を用い,有限要素法の特性から二次元伝播として取り扱った.
 段波の不連続面に関して水理実験と数値計算結果との比較を図ー3に示す.比較のため波先は一致させている.図ー3の数値計算結果には水理実験に比べ解がなまったりオーパーシュート気味になるものがある.数値計算の誤差をこのなまりとオーバーシュートで表わすと表ー1となる.表申なまり度とは段波前面における波形勾配,オーバーシュート度とは段波波高に対するオーバーシュート高の比で定義したものである.理論解はどちらも零となる.

 以上の結果をまとめると次のことがいえる.
 1.差分法による数値計算結果は水理実験結果に比べ多少オーバーシュート気味の解となる.特に,L-W法は比較的大きなものとなり,数値粘性項の導入によっても除去困難である.
 2.差分法の解のなまりは水理実験に比べ,さほど大きいものではない.しかし,\delta x格子長が長い程,解のなまりが大きくなる.
 3.一方,有限要素法は解のオーバーシュートはまったくみられないが,大きな解のなまりを呈する.
 4.以上の結果から,L-F法および有限要素法が段波の伝播に関し比較的良好な結果を与えることがわかるが有限要素法は大きな解のなまりを呈し,また複雑な演算を必要となることを考えると現況ではL-F法が最適であると結論できる.

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図ー1 実験水路(単位cm)
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図ー2 水位記録
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図ー3 水理実験と数値計算との比較

3. 曲線座標系による長波の方程式

 (1) 曲線座標
 蛇行河川を遡上する段波状津波を考えると,河川彎曲部の形状や流線の曲りによる遠心力の効果を直接評価するためには曲線座標を採用する方が良い.本研究では,水平方向に直交曲線座標,鉛直方向には直線座標を用いたKalkwijk等6)の座標系について検討する.
 図ー4のように,水面上に(\psi,\phi)なる直交曲線座標,鉛直方向には直線座標9軸を採用する.いま,微小円弧区間\delta \psi,\delta \phiに対応する長さを\delta s,\delta nとおくと両者の関係は
(1)
となる.ここで,l_s,l_nは測度係数と呼ばれるもので,直線座標であれば定数となるが,曲線座標系においては(\psi,\phi)の関数となる.また,
(2)
なる関係もある.したがって,この曲線座標は(\psi,\phi,z)系と(s,n,z)系のどちらの系を採用してもよい.また,この曲線座標系の局所的な曲率は,\psi軸,\phi軸に関するものをそれぞれ\kappa_s,\kappa_nとおくと
(3)
で与えられる.したがって,この座標系はその局所的な曲率を用い(s,n,z)系で取り扱った方が一般的に楽である.

 (2) 浅水理論
 (s,n,z)系の曲線座標系において長波の二次元伝播運動を考える.基本方程式群をJohnson風の展開を施すと次式で表わされる浅水理論式が導びかれる.
(4)
(5)
(6)
ここで,Q_s,Q_n:S軸,軸n方向の流量フラックス,
\eta:水位,
D:全水深,
9:重力加速度,
である.
 次に,曲線座標のひとつの軸が直線であるような場を考える.いま,\phi軸(n軸)が直線軸であるものとる.この場合は(\psi,\phi,z)系で取り扱った方が便利でり,浅水理論式は次式で表わされる.
(7)
(8)
(9)
ここで,J=1-\kappa_s\psiである.

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式(1〜9)
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表ー1 水理実験と数値計算との比較
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図ー4 直交曲線座標

4. 曲線水路中の段波の数値計算

 (1) 水理実験
 水理実験は図一1に示す曲率半径75cm,彎曲角90°の曲線水路で行った.実験方法は2.と同一である.
 図ー5に実験結果の一例を示す.水位の経時記録である.水位計No.4の記録中,A点は曲線水路外壁における段波波頭の増幅を示す.B点は水路末端からの反射波である。この実験結果を数値計算のための例題波とする.

 (2)数値計算
 ここでは,図ー5に示した段波の記録を題材として,従来の直線座標系による計算と3.で説明した直交曲線座標系を用いた計算を比較する。ここで問題とする水路は同一曲率の水路であり,曲線座標系の方程式としては(\psi,\phi,z)系の式(7)〜(9)が適している.数値計算法は2.で検討したとおりL-F法を用いた.計算の格子長は0.05mと0.03mを採用した.
 図ー6および図ー7に曲線座標を用いた計算結果の一例を示す.図ー6は水路外壁および内壁に沿った0.1sごとの空間水位である.図中の数字はゲート急開時刻からの経過時間である.図ー7は0.2sごとの曲線水路付近の空間水位分布である.両図共に,水路の曲線部外壁において段波波頭が直線部より増幅し,内壁側で低くなり,曲線部において水路横断方向に大きな水路傾斜が発生することがわかる.また,この水面傾斜に起因した横振動もみられる。
 一方,従来の直線座標を用いた計算の0,2s毎の空間水位分布を図ー8に示す.直線座標では計算の格子を碁盤の目のように組むため,水路の側壁は階差的な近似となる.
 最大水位分布に関して両者の計算結果を比較したものが図ー9である.曲線座標の計算結果は格子長の違いによる差はほとんど見られず,最大水位分布は,水路曲部の内壁から外壁方向に連続的に高くなる.一方,直線座標の計算結果は格子長の違いにより大きな差を呈する.
格子長の大きい方は水路曲線壁の近似が粗く階差的になるため,その複雑な反射によりところどころに水面の離散的な高まりが生ずる.格子長が小さい方は,この水位の離散的な高まりが比較的小さなものとなり,曲線座標の計算結果に近い結果を与える.
 以上の結果をまとめると次のことがいえる.
 1. 直交曲座標による浅水理論式はL-F法により安定な数値計算が可能である.
 2. 直交曲線座標を採用することにより,従来の直線座標では困難であった曲線水路の側壁の境界を正確に表現可能である,また,図ー5に示すように最大水位に関しては水理実験結果と非常に良い一致を示す.
 3. 従来の直線座標の計算では,格子長が大きい程曲線水路の側壁境界の近似度が悪くなるため不自然な計算結果となる.したがって,直線座標を用いるときは相当細かな格子長を選ぶ必要がある.
 4. 現況では,曲線水路内の段波の伝播に関する数値計算法には直交曲線座標系のL-F法が最適である.

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図ー5 水位記録(貯水槽水位21cm)
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図ー6 曲線座標による計算結果(空間水位)
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図ー7 曲線座標による計算結果(空間水位分布・単位m)
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図ー8 直線座標による計算結果(空間水位分布・単位m)
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図ー9 最大水位分布に関する比較(単位mm)

5. 実河川への応用

 ここでは本研究で提案した曲線座標を用いた数値計算の実河川への応用とそれに伴う問題点を論議する.対象とした河川は河口付近で大きく彎曲しており,本研究の試行には適したものと考えられた.ただし,計算に用いた形状は現況ではなく,計画断面である.
 計算に用いた方程式は,この川の曲率が複雑な分布をするため(s,n,z)系の式(4)〜(6)を用いた.段波は波高1mのtanh形で与えた.図ー10に格子分割図を示す.
 計算結果の例を図ー11に示す.図は各時刻の空間水位分布を表わす.格子を比較的大きくとったため,解のなまりは大きいが,河幅の変化による水位分布もみられ望ましい結果となった.このような計算は安定に行なわれ,曲線座標を用いた計算法は従来の直交座標の計算に比べ多少複雑な予備的な作業を必要とするが,河岸の近似等優れているところが数多くあると思われる.

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図ー10 格子分格
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図ー11 空間水位分布(単位m)

6. 結 言

 本研究では,河川内の段波性津:波の伝播に関して各種数値計算法を検討したが,現況では直交曲線座標を用いたleap-frog法が最適であることを明らかにした.また,この方法は河川だけではなく複雑な形の湾等の計算にも威力を発揮すると思われ将来性ある手法であるといえよう.

謝辞

この研究を行うにあたり,文部省から科学研究費(研究代表者東京大学堀川清司教授)による補助を受けた.また,計算・整理にあたり当時東北大学学部生であった馬上洋一君,大学院学生の諸君の熱心な助力を得た.ここに記して謝意を表する.

参考文献

1) 後藤智明・首藤伸夫:湾曲水路における急変不定流に関する実験,第34回年講,pp.757〜758,1979.
2) Stoker,J.J.:Water Waves, Imterscience Publishers, Inc., New York, pp.330〜341,1957.
3) Von Neumann, J. and R. D. Richtmyer: A method for the numerlcal calculation of hydrodynamic shocks, J. of Applied Physics, Vol.21, No.3, pp.232〜238, 1950.
4) 後藤智明・首藤伸夫:各種津波遡上計算法と波先端条件の比較,第27回海講,pp.80〜84,1981
5) 川原睦人・竹内則雄・首藤伸夫:2段階ラックス・ウエソドロフ有限要素法による潮汐流解析,第23回海講,pp. 498〜501,1976.
6) Kalkwijk, J. P. Th. and H. J. de Vriend: Computation of the flow in shallow river bands, J. of Hydraulic Research, Vol. 18, No.4, pp.327〜342,1980.

津波による木材の流動 後藤智明*・佐々木順次**・首藤伸夫***

1. はじめに

 津波の陸上への氾濫による被害のなかで,水面上の浮遊物,主として木材の構造物への衝突によるものが大きな割合を占めることがある.本研究では,このような流木の運動を記述する上で最も重要と思われる、流木の抵抗係数,付加質量係数および拡散係数について,水理模型実験および数値計算により調べている.さらに,水理実験等により定めた各係数を用いた流木の運動に関する数値シミュレーションを行ない実測値との比較も行っている.

*正会員 工修 東北大学助手 土木工学科
**正会員    青森県 八戸土木事務所
***正会員 工博 東北大学教授 土木工学科

2. 抵抗係数

 (1) 水理模型実験
 水理実験に使用した水路は幅0.8m,高さ0.5m,長さ15mの矩型水路である.模型は直径Dが1,1.5,1.8,2.4cmの4種類,長細比L/Dが6,8,10,12,15の5種類の合計20種類の円柱棒を用いた.円柱棒の比重は0.6〜0.8である.
 浮遊状態の模型に働く抗力の測定には,水路に固定したリン青銅板の下端と模型を50cmの糸で結び,糸を水平に保ちながら水面上で模型の受ける力をジン青銅板上の歪ゲージにより検出する方法を用いた.測定には流速10〜50cmの定常流を用い,その範囲はFr数0.1〜1.2,Re数2000〜12000であった.ただし,各数の特性長としては模型の代表寸法を用いている.なお,実験は流れ方向と模型の中心軸のなす角\psiが0,\pi/4,\pi/2の3ケースについて行っている.

 (2) 実験結果
 流木に働く流体抵抗Rは,一般に次式で表わされる.
(1)
ここで,C_D,C_wはそれぞれ形状抵抗係数,広義の造波抵抗係数であり,A_1,A_2は流木の接水投影面積,接水面積である.また,\rho_wは流体の密度,晩は流木と流体との相対速度である.
 流体抵抗には,この他にも摩擦抵抗が考えられるが,本研究の場合,流木の接水表面積と等価な平板の摩擦抵抗を考えると,R_D数R_D=u_0/D/\nuが10^3以上では全抵抗力の7%以下であり,無視することにした.
 完全に水没した円柱に関する形状抵抗係数は過去の研究により詳細に求められている.特に,今井1)は任意の断面形状をもつ柱状体に関し,
(2)
なる近似解を求めた.ここで,C_{D∞}はR_Dが数が大きいときの形状抵抗係数であり,kは物体の形状で定まる係数としている.ただし,今井の理論は層流理論を基にしているため乱流境界層の剥離による形状抵抗係数の降下は表現できない.実際,本研究で取り扱う津波による流木の運動では乱流境界層の剥離を呈する5×105以上のR刀数となるためには3m/s以上の流速差を必要とし,このような状況を呈することは少ないと考えられる.
 図一1に水理実験結果の一例を示す.\psi=0,L/D=10の場合で,F_L数(u_0/\sqrt{gL})を一定にし,R_D数(u_sD/\nu)を変化させた場合である.抵抗係数C*はR_D数に関しては式(2)で表わされるように,2×10^4以下のR_D数では.R_D数に反比例し,それ以上のR_D数に関してはR_Dに関係なく一定値となり,またF_L数に比例する傾向があることがわかる.
 従って,本研究では水表面上の円柱の抵抗則は角度\psiによりFr数の特性長のとり方は異なるが,(3)の型で整理可能であると推定できる.ここで,k_1〜k_3は円柱の形状で定まる係数である.
 次に図ー2に示すような,流れと円柱の中心軸との角度\phiがある場合を考える.図ー2に示す関係から,\phi=0と\pi/2の場合における値をそれぞれ添字p,vを用いて表わすと,流れ方向の抵抗力Rは
(4)
で表わされる.
 以上の考察により水理実験結果を整理する.\phi=0の場合,式(3)の型で回帰をとると,
(5)
\phi=\pi/2のとき,
(6)
となる.図ー3に回帰値と実霧剣直との比較の一例を示す.\phi=0および\pi/2の最大誤差はそれぞれ8および5%であった.なお,\phi=\pi/4の実験結果は式(4)〜(6)を用いて,15%以内の誤差で表現可能であった.

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式(1〜6)
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図ー1 抵抗係数に関する水理実験結果(\psi=0の場合)
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図ー2
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図ー3

3. 付加質量係数

 (1) ポテンシャル理論を用いた数値解静止した完全流体中の浮遊円柱の等速度運動を考える.円柱の比重を0,5とし,円柱はいかなる回転運動もしないものとする.円柱の運動に伴って発生する表面波は無視する.図ー4に示す,速度uで円柱と伴に移動する円柱座標(r,\theta,Z)を用いると,円柱まわりの流体のポテンシャル\Phiは
(7)
を満足する.ただし,式(7)はR=2r//D,Z=2z/L,\Phi=2\phi/DUと無次元化されており,\beta=(D/L)^2である.
境界条件はは\phi=0のとき
(式タイトルなし1)
\phi=\pi/2のとき,
(式タイトルなし2)
(式タイトルなし3)
で与えられる.
 一方,円柱の運動による流体の運動エネルギーから付加質量係数C_Mは
(8)
で計算できる.
 以上の考えにより,式(7)をS.0.R.法で解くことにより,L/D=4〜15の場合について,付加質量係数を求めた.計算は各L/Dに対し,\phi=0と\pi/2のケースについで実施し,任意の\phiの値に関しては両者のポテンシャル分布の重ね合せにより解を求めている.図ー5にポテンシャルは分布に関する計算結果の一例を示す.
図ー6に付加質量係数の計算結果を示す.付加質量係数はL/Dに比例して大きくなり,角度\phiによる変化は,L/Dにより多少異なるが,\phi=\pi/3付近で最大となる.
図ー7に数値解の近似曲線を示す.図中,丸印が数値解,実線が近似曲線式(9)である.
(9)

 (2) 水理実結果
 付加質量係数に関する水理実験は,定常流中に円柱を流がし,リン青銅板に衝突させ,その作用力積を歪ゲージで検出する方法を用いた.
 実験は\phi=0と\pi/2の2ケースについて行なわれ,数値解との比較を図ー8に示す.\phi=0のケースは比較的良好な一致を示す.\phi=\pi/2のケースは実測値にばらつきが大きく,約20%程度の誤差がみられる.

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図ー4 座標系
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図ー5 円柱周りのポテンシャル分布の計算例(\phi=0,L/D=10)
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図ー6 付加質量係数に関する計算結果
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図ー7 計算結果と回帰値との比較の一例
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図ー8 付加質量係数に関する計算結果と実測値との比較

4. 拡散係数

 (1) 水理実験
 流木の拡散に関する実験は,抵抗係数の測定に用いた幅0.8mの水路を用いた.流木の模型はD=2.4,1.8,L/D=8のものである.拡散係数の測定は,定常流を用
い,投入点(0,0)から流れ方向に50cm毎に模型の中心位置(x,y)を読みとり,その分散\bar{y^2}を計算する方法を用いた.投入時の模型と流れ方向のなす角\phiについては\phi=0および\pi/2を50回ずつで,合計100回の投入で1ケースとした.

 (2) 実験結果
 流木の拡散に関する測定結果の一例を図ー9に示す.
図は水路横断方向の通過確率密度を表わす.ヒストグラムは実測値,破線は実測した分散を用いた正規分布である.この結果から流木の拡りは正規分布で表わし得ることがわかる.
 流木の拡散係数\kappaは,u_sを流速とすると
(10)
で与えられる.図ー10に拡散係数の流下距離による変化の一例を示す.流下距
離が大きくなるとほぼ一定の拡散係数となることがわかる.
 以上の考察により,流木の拡散係数の測定値を整理したものが図ー11である.図中,縦軸は無次元拡散係数であり,u*は対数流速分布を仮定した摩擦速度である.本実験の範囲では無次元拡散係数はほぼ一定となり,
(11)
で表わされる.

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図ー9 流木の拡散に関する測定結果の一例
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図ー10 流下距離による拡散係数の変化 図ー11 拡散係数に関する測定結果

5. 流木の運動に関するシミュレーション

 (1) 支配方程式と計算法
 流木の拡散運動とBasset項など高次の項を無視すると流木の水平運動の方程式は,
(12)
で表わされる.ここで,C_x,C_yはそれぞれのおよび写方向の抵抗係数,A_x,A_yは接水投影面積,(u,v)は流木の速度,(u_s,v_s)は流体の速度である.また,\rho wは流体の密度,Mは流木の質量そしてC」_M=C_M-1である.
 流木の運動の計算は,次の2ステップをくりかえる方法を用いる.式(12)を差分化し,\delta t時間後の流木の平均的な位置を計算する.次に,流木の拡散を等方性を仮定し,\delta t時間後の流木の拡りを式(11)を満す分散の一様分布乱数を発生し,流木の位置を定める.同次に,流木の水平面内での回転運動も拡散運動と同じ分散の正規分布となるものと仮定し,これも乱数により回転角を定め,次のステップのための抵抗係数,付加質量係数を算定する.

 (2) 計算結果
 流木の運動に関するシミュレーショソとしては,まずはじめに,拡散係数を測定した実験例(図ー9)の再現計算を試みた.計算は実験と同様に100回実施し,水理実験との比較を行った.
 図ー12に確率密度分布に関する比較を示す.ヒストグラムは実測値,破線は実測の分散を用いた正規分布,実線は計算結果を表わす.計算結果の方が多少小さめな分散となるが良好な一致を示す.
 次に,波高水深比0.6の孤立波を用いた計算結果を図ー13に示す.図中,破線は流木の無次元速度,実線は流木の位置における水粒子速度である.黒丸印はビデオカメラを用いた流木の速度に関する実測値である.計算結果は実測に比べ多少小さめになるが,比較的良好な一致といえよう.

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図ー12 定常流による流木の運動による計算結果と実測値との比較
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図ー13 孤立波を用いた流木の運動に関する計算結果と実測値との比較

6. おわりに

 本研究では,流木の運動に関するシミュレーションのための各パラメータ,計算法を検討した.本研究で用いた流木は最大径2.4cmのもので,実在の流木のスケールが相当異なり,この点に実用上の問題点が残されるといえよう.

謝辞

本研究の一部は科研費(代表 東京大学教授堀川清司)によった.

参考文献

1) 今井功: 流体抵抗の理論,科学,Vol.28,No.3,1958.

津波による木材の流出に関する計算 後藤智明*

1. 序

 津波の来襲に伴う木材流出の記録としては,宮古湾の例が有名である.チリ:地震津波の時に,宮古港鍬ケ崎地区に集積されていた木材が流れ出し,船舶などに被害を与えた例や,十勝沖地震津波の時に,宮古港神林貯木場から3700本流出し,湾央から湾奥一帯に拡がった例である.
 先に著者等1)は,流木の運動を記述する上で最も重要と思われる流木の抵抗係数,付加質量係数および拡散係数を水理模型実験で調べ,これらの係数を用いた数値計算法を提案している.本研究では,この計算法を現地海岸へ適用することにより,実用上の問題点を検討している.

*正会員 工修 東北大学助手 工学郎土木工学科

2. 数値計算法

 (1) 運動の式
 流木の水平方向の運動は,慣性,水流の圧力勾配,付加質量,流水抵抗そして拡散により記述できる.計算は拡散を除く4種類の力の釣り合いを決定論的に扱い,拡散は,決定論的に定まる流木の位置からのずれと考え,確率論的に扱う.
 時刻t=0に座標X_0に存在していた流木がt時間後,座標Xに移動したものとする.決定論的な力の釣り合いは,u_t,uをそれぞれ流木および水粒子速度とすると,
(1)
で表わされる.ここで,\rho_t,\rhoはそれぞれ流木および水の密度,Vは流木の体積,Aは流木の接水投影面積である.また,C_M,C_Dはそれぞれ流木の付加質量係数および抵抗係数である.
 流木の拡散によるずれは,拡散係数\kappaを満たす散らばりとなるように(0,1)間の一様乱数\xiを用いて定める.
従って,流木の位置Xは
(2)
で計算できる。ここで,t=n\delta tである.
 計算は式(1),(2)を差分化して行う.式(1),(2)の差分式は,kを時間ステップ,jを木材につけた番号とすると,
(3)
(4)
となる.ここで,
(式タイトルなし)
である.

 (2) 流出開始条件・停止条件
 流出開始条件としては,貯木形式の違いにより,次の2種類のものを設定する.
 野積みの木材は津波の浸水深が木材の直径以上となれば流出が始まるものとする.
 水面貯木については,係留ワイヤーの強度以上に津波の掃流力が大きくなった時点とする.掃流力は式(1)から
(5)
で表される.
 木材の移動停止条件としては,野積みの木材の流出開始条件とは逆に,移動先の実水深が木材の直径以下となった時点とする.

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式(1〜5)
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(式タイトルなし)

3. 宮古湾に関する計算

 (1) 津波の計算
 津波の計算は電子計算機の記憶容量および演算:時間の制限のため,発生および外洋での伝播を扱う外海計算と,宮古湾内の流動を詳細に扱う近海計算の2種類に分離して行なう.まず,外海計算を行ない,近海計算のための境界値を出力する.近海計算ではこの境界値を外海境界条件とし,宮古湾内の津波の水位および流速分布を出力する.
 外海計算の計算領域は北緯38度20分から43度5分,東経140度30分から145度15分の範囲である.計算格子は5910m〜657mの3種類のものを用いている.対象とした津波は昭和43年十勝沖地震津波であり,金森2)の断層パラメーター,羽鳥3)の波源域を用いている.
 近海計算では,宮古湾の現況地形を対象とし,天文潮位T.P.Omの時に十勝沖地震津波と同じ津波が来襲した場合を考えている.図-2に宮古湾の現況地形と防波堤防潮堤の配置を示す.防波堤・防潮堤のT.P.0mから測った天端高を数字で示している.計算には,50m正方格子を用い,マニングの摩擦則(粗度係数は0.02)を考慮した浅水理論を用いている.

 (2) 木材の流出計算
 近海計算による水位および流速分布を用いて,木材の流出は差分式(3),(4)で計算を行なう.簡単のため,水流の乱れは斉等質であり,拡散係数は
(6)
で与えられるものとする.ここで,u*は水流速を対数分布と考えた場合の摩擦速度であり,hは全水深を意味する。また,流木の中心軸と流れ方向はたえず一致し,流木はいかなる回転運動もしないものと仮定する.さらに,流木の寸法としては宮古港に貯木されている南洋材を代表流木として選び,直径1m,長さ10mとする.
以上の仮定から,流木の抵抗係数,付加質量係数には,
(7)
(8)
を用いる.
 また,津波来襲時の宮古港には,出崎・藤原埠頭の野積みの木材,神林貯木場の水漬けの木材の合計6000本が貯木されていたものとする.

 (3) 計算結果
 外海計算結果と十勝沖地震津波の宮古港検潮記録とを比較すると,第1波および第2波は計算結果の方が低い水位となり,逆に第3波以降は計算結果の方が高い結果となった.そこで,近海計算との境界点で波を入財波成分と反射波成分に分離し,入射波成分を補正して近海計算へ入力することを考えた.補正には予備計算を数回繰り返すことにより各波峰・波谷ごとに倍率を定める方法を用いた.図ー1に計算結果と検潮記録との比較を示す.実線が計算結果,黒丸印は検潮記録である.検潮記録は天文潮位を差し引いたもので,津波による水位変動を表す.
 図ー2に宮古湾内の水深分布と湾内各地の津波水位に関する近海計算結果を示す.時刻の原点は津波発生時である.
 図ー3から図ー8に津波発生後40分以後の津波の空間水位分布,空間流速分布および木材の流出状況に関する計算結果を示す.津波の水流に関する図は,10cmごとの等水位線と流速ベクトルが描かれている.木材の流出に関しては,津波の近海計算と同じ50m正方格子で宮古湾を覆い,木材が1本以上存在する格子を丸印で表わしている.
 津波発生後40分で,第1波波峰が閉伊川右岸からのびた藤原地区防波堤付近に達している様子が図ー3に示されている。この時刻では,野積み・水漬けの木材共に流出は始まっていない.
 45分後の流況を示す図ー4を見ると,第1波波峰は高浜地区付近まで達していることがわかる.閉伊川河口付近り水位は河川内の水位より低くなるため,5分前とは逆に,河川から湾央に向う流れとなる.また,藤原地区防波堤背後には渦が見られる.木材の流出は,津波発生後43分頃始まる.出崎埠頭に野積みされていた木材は鍬ケ崎地区へ流される.藤原埠頭の木材は,物揚場を越えて流される水流に乗り,藤原地区防波堤の背後へ流出する.神林木材港の木材はごく少数が港外へ流出するが,多くは港内に止まっている.
 図ー5は,津波発生後50分の結果である.津波の第一波は湾奥の津軽石地区に達している.湾奥における等水位線が非常に密となっているのは,津波が段波状の波頭となっているためである.
 津波発生後55分では,津波は湾口から引き始めている.引波となると,図ー4とは逆に,藤原地区防波堤前面で渦が発生する.図ー7の津波発生後60分では一段と渦が強くなる.神林木材港の木材は55分頃の引波で多数が流出し湾申央部へ拡がる.
 図ー8に示す120分の結果によると,宮古湾のほぼ半分の広さにわたり,.木材が点在する状況となる.藤原地区防波堤前面の空白地域は,引波時に閉伊川から防波堤に沿う強い流れがおこるためである.
 図ー9,図ー10に津波の最大水位分布および最大流速分布を示す.実線は10cmごとの等水位線および1Ocm/sごとの等流速線を示す.数字はT.P.Omから測ったm単位の最大水位およびm/s単位の最大流速である.最大水位は津軽石地区でT.P.5.42mである.

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式(6〜8)
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図ー1 外海計算結果と検潮記録との比較
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図ー2 宮古湾の水深分布と津波水位の経時変化
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図ー3 津波の流況と木材の流出に関する計算結果(津波発生後40分)
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図ー4 津波の流況と木材の流出に関する計算結果(津波発生後45分)
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図ー5 津波の流況と木材の流出に関する計算結果(津波発生後50分)
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図ー6 津波の流況と木材の流出に関する計算結果(津波発生後55分)
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図ー7 津波の流況と木材の流出に関する計算結果(津波発生後60分)
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図ー8 津波の流況と木材の流出に関する計算結果(津波発生後120分)
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図ー9 最大水位分布 図ー10 最大流速分布

4. 結 言

 複雑な形状を有する宮古湾内の津波による木材の流出計算は,本研究で示した方法を用いれぽ比較的容易にかつ安定に行うことができる.残された問題は計算結果の精度に関することである.

謝辞

この研究を行うにあたり,東北大学工学部首藤伸夫教授には多くの助言を賜わった.ここに記して厚く謝意を表する.本研究の一部は文部省科研費(代表者東京大学工学部堀川清司教授)によって行われた.

参考文献

1) 後藤智明・首藤伸夫・佐々木順次:津波による木材の流動,第29回海岸工学講演会論文集,P82.
2) Kanamori, H.: Focal mechanism of Tokachl-oki Earthquakes of May 16, 1968, Cotortion of the lithospere at a junction of two trenches, Techtonophysics, Vol.12, 1971.
3) 羽鳥徳太郎:東北日本太平洋側における津波の波源,地震,Vol.27,1974.

非線形分散波理論の数値的な検討 藤間功司*・後藤智明**・首藤伸夫***

1. 序

 昭和58年5月に発生した日本海中部地震津波では,ソリトン分裂が起こり短周期の波列が来襲した様子がカメラやビデオに多く記録された.ソリトン分裂を説明するためには,Boussinesq1),Korteweg・De Vries2),MeiLeMehaute3),Peregrine4),角谷5)といった,いわゆる非線形分散波理論を用いる必要があるが,これらの各式はすべて波高水深比\epsilon(=\eta_0/H_0)と相対水深\sigma(=H^2_0/L^2_0)が,\epsilon〜\sigma≪1,すなわちU_r〜1の近似で導かれており,水平床では0(\epsilon^2)の精度で一致する.しかし,これら非線形分散波の式は数値計算の結果が水理実験に比べ波形分裂が早過ぎたり,浅水域への適用が困難であるといった問題点が指摘されている.本研究では,MAC法を用いてソリトン分裂のi数値計算を行ない,非線形分散波理論の精度を検討する.ただし,MAC法の計算にも当然誤差が含まれており,その結果が必ずしも正しいとは言えないが,それに代わる計算方法が無いので,MAC法の計算結果が正しいと見なすことにする.また,ソリトン分裂のメカ二ズムについても検討する.

*学生会員 東北大学大学院工学研究科
**正会員 工博 東北大学助手 工学部土木工学科
***正会員 工博 東北大学教授 工学部土木工学科

2. MAC法の計算方法

 本計算法は,MAC法の一種であるSOLA-VOF6)に,斜面の境界条件と水表面セルでの水の授受に関して著者らが工夫を加えたものである.

 (1) 差分式
 基本方程式は,式(1)〜(3)に示した連続の式,及びEulerの運動方程式である.
(1)
(2)
(3)
 計算領域をx方向とz方向に格子状に区切り,セルに対し図ー1(a)の場所でu,w,pを定義する.式(1)〜(3)を差分化し,式(4)〜(6)を得る.ただし移流項には風上差分を用いている.
(4)
(5)
(6)
ただし,DUL,DUR等は
(式)
などを表す.

(2)境界条件
 底面の境界条件は,法線方向流速をゼロとするものであるが,本計算では式(4)を用いる時に斜面セルにおいて,式(7)を用いることとし,連続の式に組み入れた形で用いている(図-1(b)参照).
(7)
 自由表面での境界条件は,水表面で圧力をゼロとするものであり,水表面セルでの圧力は隣接するセルから直線補問して求める.また,水表面セルでの水の授受に関しては,例えば図ー1(c)の斜線部の水が隣接するセルへ移動すると考える.

 (3) アルゴリズム
 計算は次の手順で行なう.t=n\delta t時のuとw,t=(n-1/2)\delta t時のpと波形が決っているとする.
i)u,wにより隣接するセル間で水を移動させ,t=(n+1/2)\delta t時の波形を決める.
ii)式(5),(6)からt=(n+1)\delta t時のu,wを求める.ただし,pはt=(n-1/2)時の値を用いる・ⅲ)この流速値は前ステップでのpの値を準用したものであり,式(4)を厳密には満たしていない.そこで,全てのセルで式(4)が収束条件を満たす様pの値変化させ繰返し計算を行ない,(n+1/2)\delta t時のpとt=(n+1)\delta t時のu,wを決める。もちろん,i)で決めた水表面を境界条件として用いる.

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式(1〜7)
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(式)
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図-1

3. 計算結果

 図ー2に示す計算条件により数値計算を行った.初期条件は,x/h=10.0に波頂が位置する孤立波の第2次近似解を与えた.初期波高水深比は0.12である.
底面形状はx/h=0〜20,30〜60が水平床,x/h=20〜30は勾配1/20の一様斜面である.計算は東北大学大型計算機センターACOS-1000システムにより,t/\sqrt{h/g}=41.4まで行ない,演算時間は約9時間30分であった.
 計算結果を図ー3(a)〜(c)に示す.
(a)は波形変化である.t=40まで,時間間隔2.5で書かれている.(b)は本計算と同じ問題をMadsen・Mei7)がMei-LeMehauteの式を特性曲線法を用いて数値計算を行った結果との比較である.
(c)は,本計算とStreetら8)の実験結果及び上述のMadsen-Meiの計算結果との比較である.A点,B点,C点(x/h=14.65,30.0,41.65)での波高経時変化で示してある.A点で実験値が本計算やMadse-Meiの計算に比べ険しい波形を示しているのは,実験では造波装置の制約で孤立波の理論波形よりも険しい初期波形を造っているためと考えられる.C点では実験値は両計算値より緩かな波形を示しており,また両計算値を比べると,MAC法の結果がMadsen・Meiの結果よりも緩かな波形となっている.(b)の結果とも考え合せ,本計算はMadsen・Meiの計算に比べて分裂が遅く,実験に比べれば分裂が早いことが分る.これは,MAC法では従来の方法に比べ実験に近い結果を得ることができるが,摩擦の影響を考慮していないため,完全には一致しない,と解釈できる.

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図ー2 計算条件
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図ー3 計算結果

4. 非線形分散波理論の精度の検討

(1) 検討の方法
 式(1)〜(3)を鉛直方向に積分し,波形連続条件と水底での条件を用いてまとめると,式(8)〜(10)を得る.
(8)
(9)
(10)
以下,簡単のため水平床において考えることとする.uの断面平均流速\bar{u}を導入し,
(式タイトルなし1)
と書くと,式(8)〜(10)は式(11)〜(13)と書ける.
(11)
(12)
(13)
式(12)の左辺(第2項+第3項)が移流項,第4項は静水圧の項(便宜上,線形項と呼ぶ),右辺は圧力の静水圧とのずれを表わす項である.右辺から分散項が生ずる(ここでは,右辺そのものも分散項と呼ぶことにする).
 Peregrineの式を式(11),(12)と同じ形で表わすと,連続の式は全く同じで,運動の式は次式となる.
(14)
ただし,\bar{w}は式(13)の右辺第1項を表わしている.式(14)の右辺を\bar{u}で表現すると,次式の分散項となる。
(式タイトルなし2)
 式(12),(14)の移流項・分散項をMAC法で計算されたu,w,p,\etaを用いて(式(14)では\bar{u}を求めて)各々評価し,両者の差を調べることにより非線形分散波理論式の精度を検討する.

 (2) 結果
 結果を図ー4(a)〜(c)に示す。(a)はt=2.5の時のもので,まだ斜面に乗り上げる前で孤立波の状態を保っている.(b)はt=30で,斜面を越えた後である.
(c)はt=40である.各々,上段に書かれているのが\eta,中段は式(12)の線形項・移流項・分散項をまとめて書いてある.下段は(12),(14)式の移流項・分散項の比較である.また,各図はそれぞれの図中の最大値を1として規格化して書いている.それぞれの最大値は,各図の縦軸の横に示した.
 下段の図に注目すると,t=2.5からt=40にかけて移流項も分散項も式(12)と(14)の差は増大する傾向がある.しかし,移流項の誤差は本計算範囲では高々2〜3%であり,式(14)は良好な近似と言える.分散項の誤差はt=40で最大約10%である.分散項を過少評価している量と線形項の最大値を比べると,t=2.5で1%未満,t=40では約3%となる.従って,非線形分散波理論の式の精度について,次の様にまとめられる.
i)移流項の近似誤差は,本計算範囲では高々2〜3%であった.
ii)分散項はt=40で最大時10%過少評価している.この時,分散項を過少評価した量は線形項の最大値に対して約3%に相当する.

 (3) ソリトン分裂の機構
 現在までのところ,ソリトン分裂の機構については明解な説明はなされていない様である.Peregrine9)は,波の峰と谷の圧力の静水圧との差に基いて簡単に説明したが,室田・岩田10)が指摘した通り,これは厳密には不合理である.また,室田・岩田の説明によれぽ,波は
(式タイトルなし3)
を満たしながら変形する.しかし,波峰の曲率が負の部分で,曲率が益々負の方向に大きくなる(すなわち,波高が増大する)様に変化する必然性は全くない.仮にその説明に従えば波峰は常に成長することになり,保存波は存在しないことになってしまう.
 分裂機構を,図ー4 中段の図から説明する.図は運動の式の各項を書いたもので,∂\eta/∂tについて書いたものではないが,Peregrineの式のオーダーでは,第2次近似にあたる移流項・分散項は
(式タイトルなし4)
と書き換えられるので,これを用いて∂[\bar{u}(h+\eta)]/∂tを連続の式に代入すれば,結局,図ー4の各項が∂\eta/∂tに対して作用すると考えても,ほぼ問違いではない.
 図ー4(a)の状態では,波頂で3項とも値がゼロであるので波頂では∂\eta/∂t=0で,波高は変わらない.また,移流項と分散項はほぼ完全にキャンセルし,波形そのものも変化しない.(b)は斜面の影響で波形が前傾し,分散項の位相がずれている.これは,波形前傾の影響により∂\eta/∂x=0なる点と∂^3\eta/∂x^3=0なる点がずれている,すなわち曲率の最大となる点が波頂より前に出ていることを示している.この分散項のゼロ点のずれにより,波頂での分散項は∂\eta/∂tを正にする値をとり,波高は増大する.また,本問題では,斜面通過直後,波頂背後の波形が直線に近いため,線形項と移流項は波頂背後の傾きをより緩かにする様に働くが,分散項は波頂付近で正に働いており,分散項がゼロから負に転じる付近では周囲よりも大きく波高が減少することになる.これが第2波目が形成される原因となる.一般に,この様な場所は波形が特別な場合を除いては存在すると考えられ,この様な場所を生じさせない場合は,波形が孤立波やクノイド波になっている場合であり,波頂背後の波形は変化せず,そのまま進行することになる.図ー4(b)〜(c)にかけて,同じ機構によりソリトン分裂が進行している.
結局,ソリトン分裂の機構は,次の様にまとめられる.
 i)第1波の波高増幅は,分散項の位相のずれに起因する.
 ii)第2波の形成は,波頂背後に移流項と分散項の和として,周囲よりも大きく波高が減少する場所が生ずるからである.本計算で扱った問題では,斜面を乗り越えた直後に,たまたま波頂背後の波形が直線に近かったので,その場所は分散項がゼロから負に転じる付近であった.

 (4) 非線形分散波理論が早い分裂を与える理由
 非線形分散波理論式を数値計算すると,実験値に比べ分裂が早い結果を与える傾向にあることは従来より指摘されている.その理由として,例えば『計算値において分散の効果がより著しく,これを抑制する非線形効果が小さく見込まれている11)』の様に言われていたが,4.(2)で述べた結果によれば実際にはその逆で,Peregrineなど非線形分散波理調の分散項は過少評価となっている.4.(3)で述べた通り,波高の増大する理由は,波頂で分散項が正の値をとることであるから,分散項を過少評価した方が波高が増大する結果を与える(実際には波頂付近の分散項の値は,ほとんど同じ)という事は一見矛盾している様に見えるが,そうではない.波頂で分散項が正となるのは,波形が前傾化しているからである.図ー3(b)からも分る様に分散項が過少評価だと波形は実際よりも前傾化する様に計算されてしまい,波が水平床に乗り上げた時には,Peregrineの式の方が分散項が大きくなる波形を作っていることになる.それに対し,実際にはPeregrineで作られた波形に比べ,分散項が小さくなる波形となっているため,トータルの波高増幅としてはPeregrineの方が大きくなるのであろう.
逆に,分散項を
(式タイトルなし5)
の様に評価すると,40%近くも過大評価となるが,斜面を乗り越えた後でも波形はあまり前傾化せず,分散項の効果が大きくならない波形に計算される.その様な波形であるにもかかわらず分散項を過大評価しているために結局,波高の増幅に関してのみ言えば,本計算で取り上げた問題では,むしろPeregrineの式よりもMAC法に近い結果となる(波速は多少遅れる).しかし,いずれにしても結果がMAC法に比べ異なるのは,分散項の近似の精度に問題がある.

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式(8〜14)
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式タイトルなし(1〜5)
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図ー4 分裂機構及び非線形分散波理論の精度

5. 結 論

 主要な結論を列拳する.
 (1)本研究で用いたMAC法は,従来のSOLA-VOF法に著者らが若干の工夫を加えたものであるが,これにより精度の良いソリトン分裂の計算ができる.
 (2)ソリトン分裂は次の様にして生ずる.第1波の波高増幅は分散項の位相のずれが原因である.第2波の形成は,第1波背後で移流項と分散項の和として周囲より波高が大きく減少する場所が生ずるからである.
(3)非線形分散波式の移流項の誤差は高々2〜3%であったが,分散項の誤差は最大10%に達する.
(4)従来の非線形分散波式で分裂が早過ぎるのは分散項を過少評価しているために実際よりも前傾化した波形が計算されるためである.

参考文献

1) Boussinesq, J.: Theorie des ondes et des remous qui se propagent le long d’un canal rectangulaire horizontal, en communiquant an liquide contenue dans ce canal de vitesses sensiblement pareilles de la surface au fond, Liouvilles J. Math. 17, pp. 55-108, 1872.
2) Korteweg, D. J. and G. De Vries: On the change of form of long waves advancing in a rectangular chanel and on a new type of long stationary waves, Phil. Mag. S. 5, Vol. 39, No. 240, 1895.
3) Mei, C. C. and B. Le Mehaute: Note on the equation of long waves over an uneven bottom, 3. Geophys. Res., Vol. 71, No. 2, pp. 393-400, 1966.
4) Peregrine, D. H.: Long waves on a beach, J. Fluid Mech., Vol. 27, part 4, pp. 815---827, 1967.
5) Kakutani, T.: Effect of an uneven bottom on gravity waves, J. Phs. Soc. in Japan, Vol. 30,1971.
6) Nichols, B. D., C. W. Hirt and R. S. Hotchkiss: SOLA-VOF: A Solution Algorithm for Transient Fluid Flow with Multiple Free Boundaries, Los Alamos Sci. Labo. Rep. LA-83355, 1980.
7) Madsen, 0. S. and C. C. Mei: The transformation of a solitary wave over an uneven bottom, J. Fluid Mech., vol. 39, part 4, pp. 781791, 1969.
8) Street, B. L., S. J. Burges and P. W. Whitford: Dept. Civ. Engng., Stanford Univ. Tech. Rep. No. 93, 1968.
9) Peregrine, D. H.: Calculations of the developement of an undular bore, J. Fluid Mech., Vol. 25, part 2, 1966.
10) 室田明・岩田好一朗:段波の変形に関する研究,土木学会論文集,第160号,pp.49〜58,1968.
11) 岩崎敏夫:ソリトン分裂ー分散波動論ー,1979年度(第15回)水工学に関する夏期研修会講義集,B-5,1979.

北秋田海岸における日本海中部地震津波の計算に関する検討 後藤智明*

1. 序

 東北日本海沿岸一帯に猛威を振った日本海中部地震津:波はなだらかな海岸線に面する秋田県峰浜村の海岸でT.P.14mを越す遡上高を示した1).この海岸は1/200程度の遠浅海岸であり,来襲した津波が比較的短周期であったため,ソリトン分裂あるいは波状段波として発達したことが従来の津波とは異った結果をもたらした.
 現在,波源域の津波を正確におさえることができると,数値計算法で沿岸域の津波の挙動をかなりの精度で再現できることが知られている.しかし,日本海申部地震津波のような短周期の津波の計算は難しい.これは,鉛直加速度を考えた運動の式(非線型分散波理論)の計算手法や砕波の計算モデルに問題が残されているためである.また,短周期の津波の計算には空間格子の寸法を充分に小さくとる必要があり,新たに使用する計算機の能力上の問題点もおこってくる.
 本研究では,相田2)の断層モデルを初期値とする計算を従来の浅水理論を用いた方法で行い,北秋田海岸の日本海中部地震津波へ応用する際の問題点およびその適用限界を検討する.同時に,非線型分散波理論を用いた計算結果と比較検討を行う.

*正会員 工博 東北大学助手 工学部土木工学科

2. 浅水理論を用いた計算

 (1) 計算法
 計算は北秋田海岸を含む約270km×200kmの領域を4種類に分け,リープフロッグ法で行っている.空間格子長は2.43,0.81,0.27,0.09kmである.図ー1に計算領域と水深分布を示す.水深分布は等水深線を用いて表されており,数字はkm単位のT.P.Omから測った水深である.外枠の座標は格子点の番号を表す。
 図ー2に初期波形を表す.図は空間水位分布に関するもので,実線が等水位線,小数点第一位の数字が等水位線の水位,小数点第二位の数字が水位の極大または極小値を表す.数字はすべてm単位である.極大・極小値の位置は小数点の位置である.この初期波形は相田2)の東傾斜低角段層Model 10のパラメータを用いた計算結果である.また,本計算では瞬時に断層運動が終了するものと仮定している.従って,地震と津波が同時に発生することになる.

 (2) 計算結果
 空間水位分布に関する計算結果を図一3から図一6に示す.図ー4,5,6は0.09km格子領域に関するものである.
 相田の波源モデルは2枚の断層面を持ち複雑であるが,北側の断層のくい違い量が南側のものに比べ小さいため津波発生後6分程度で完全に一山一谷の波になることがわかる.
 陸地に向う津波はコの字形に開いた北秋田海岸へその主峰が伝播する.日本海中部地震津波の被害が他の東北地方の海岸に比べ北秋田海岸が大きかったことがこの様子を見るだけでも想像できる.
 北秋田海岸に入射した津波の最大の峰は峰浜村の海岸入向う.ここでも基本的には一山一谷の波である.こめ海岸は遠浅であるため,進行と共に波が前傾化し,最終的には段波風の波頭をもつものになる.峰浜村の海岸前面の水深15m程度ゐ所で津波波高は約4.4mである.
 以上が従来の計算法による結果の簡単な説明である.
以下,現地の目撃談1)をふまえてこの計算法の問題点を列挙する.
 1. この方法ではビデオや目撃談で伝えられているようなソリトン分裂をおこす津波を計算で再現することはできない.ただし,計算結果を見ると水深30m程度までは波の前傾化が著しくなく,この浅水理論を用いた計算法で十分と思われる.
 2. 図ー5の若美町の沖合の波形を見ると,極大極小値が多数現われるのに気付く.これは北秋田海岸に入射して来た津波は一山一谷の波だけでなく,その背後に波長の短い急峻な波があり,この短波長の波が数値ギブス振動をおこすためである.この数値的な小振動を取り除くにはスムージングを用いれぽ良いが,むやみにかけると津波の主体である一山一谷の波高減衰をひきおこす可能性がある.
 3. この計算結果では,第1波峰が若美町の海岸へ到達するのが地震発生後28分頃である.目撃者の証言では地震発生後10数後であり,両者の聞には10分程度の差がある.この10分程度の差は八森町能代市の目撃談とも一致する.この証言が正しいものと考え,従来の断層の位に副次的な断層あるいは大陸棚斜面における崩壊れ等の存在というように波源をもう一度考え直してみる必要性もある.

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図ー1 計算領域と水深分布
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図ー2 初期波形
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図ー3 津波発生後6分
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図ー4 津波発生後15分
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図ー5 津波発生後21分
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図ー6 津波発生後26分

3. 非線型分散波理論を用いた計算

 (1) 計算法
 ここでは非線型分散波理論を用いた一次元伝播計算を行い,従来の浅水理論による計算結果と比較する.
 本研究で用いた非線型分散波理論はPeregrineの式3)と著者の提案した式4)である.両式共に斜面による反射を考慮したものである.
 水平方向の断面平均流速をu,静水面から水位変動を\eta,静水深をh,全水深をD,g重力加速度をgとおくとPeregrineの式は
(1)
(2)
で表される.ここで,Mは線流量を表し,M=uDである.
 著者の提案した式はPeregrineの式に比べ分散項に有限振幅性を考えたもので,
(3)
(4)
である.
(式)
 計算は陰差分法とし,計算点の配置はリープフロッグ法と同じにする.これは,津波の計算には従来よくリープフロッグ法が用いれらており,リープフロッグ法との互換性を考えたからである.与えられた波の変形に伴ない,線型,浅水理論そして非線型分散波理論と支配方程式をスムーズに変えていくことができる.
 計算は浅水理論を用いた二次元伝播計算から北秋田海岸の最大波峰の伝播経路を一次元水路と見なし,郡震発生後15分の結果を初期値として行っている.一次元伝播の計算と二次元伝播計算とを直接比較することはできないので,浅水理論を用いた一次元伝播計算も行っている.一次元伝播の空間格子長は30mである.

 (2) 計算結果
 図ー7にPeregrineの式を用いた計算結果と浅水理論の計算結果との比較を示す.実線がPeregrineの式による計算結果,丸印が浅水理論の結果である.波峰前面の波形がなだらかなうちは両者の差はほとんどみられない.波峰前面が急になるとPeregrineの式による計算結果は分裂をおとす.分裂をおこしはじめる点の水深は約25mである.
 図ー7の最終結果を拡大して描いたものが図一8である.計算の空間格子長が大きかったため,波形がノコギリ状となっている.分裂後の波長は100〜150m程度である.
 図ー9は著者の提案した式を用いた計算と浅水理論による計算との比較である.著者の提案した式の結果は図ー7のPeregrinの式によるものに此べ分裂波高が小さめのものとなる.
 以上の計算結果をまとめると次のようになる.
 1.浅水理論を用いた計算結果はPeregrineの式を用いたものに比べ波高で20%以上の過小評価となる.これは浅水理論では分裂およびその後の波峰増幅が再現されないことによる.ただし,分裂するのは波先の部分であり,分裂波峰が十分に発達する余裕がないことから判断すると,陸上遡上高だけを問題とするなら浅水理論による計算でも大きな誤りはないと思われる.
 2. 本計算では分裂後の波長は100〜150m程度である。従って,空間格子長としては10m以下のものを採用するのが望しい.従って,ここで行った計算は空間格子が粗く,波高減衰のあるものになっている可能性がある.
 3. Peregrineの式と著者の提案した式との差は分散項の評価に起因する.その結果,Peregrineの式を用いた計算結果の方が波高増幅の大きいものになる.どちらが良いかについては水理実験との比較により決定しなければならない.

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式(1〜4)
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(式)
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図ー7 Peregrineの式を用いた計算結果
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図ー8
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図ー9 非線型分散項を考慮した式による計算結果

4.結 び

 相田の断層モデルを初期値とする計算を行い,計算上の問題点について検討を行った.主要な結論としては,水深30m程度までは浅水理論で十分であること,30m以浅は10m以下の空間格子を用いた非線型分散理論を使う必要があることである.

謝辞

この研究を行うにあたり,東北大学工学部首藤伸夫教授には多くの助言を賜わった.ここに記して厚く謝意を表する.

参考文献

1) 首藤伸夫:秋田県北部海岸における日本海中部地震津波,第31回海岸工学講演会論文集,1984.
2) 相田勇: 1983年日本海中部地震津波の波源数値モデル,地震研究所彙報, Vol.59,1984.
3) Peregrine,D.H: Long waves on a beach, JFM, Vol.27,Part4,1967.1967.
4) 後藤智明: アーセル数の大きい場合の非線型分散波の方程式,土木学会論文集(投稿中〉.

ソリトン波列の砕波変形に関する実験 永富政司*・後藤智明**・真野明***

1. はじめに

 日本海中部地震津波ではソリトソ分裂をおこしたと思われる短周期波列が観測された.しかもこの短周期波列は打ち上げ直前に砕波し,重量4トンの消波ブロックを散乱させるといった巨大な流体力を秘めていることも明らかになった.したがって,このようなソリトン波列の砕波を含めた変形特性を調べることは防災対策の見地からも有意義なものと考えられる.
 ソリトン波列の変形に関しては,Zabusky1),室田ら2),岩崎ら3)をはじめとし数多くの基礎的研究が行なわれているが,その多くは分裂機構に焦点をあてたものであり砕波変形に関するものは少ない.
 本研究では,斜面上におけるソリトソ波列の砕波特性を調べる目的で水理実験を行なっている.実験の結果から,ソジトソ波列の第1波が砕波するとその乱れの影響で後続する第2波の波高増幅が小さくおさえられること,また第2波が砕れた第1波に追いつくことにより通常の砕波限界より波高水深比が大きい状態で存在しうるなど興味深い知見がえられたので,これらの現象を運動量,エネルギーの変化から検討した結果を報告する.あわせて,砕波後の陸上遡上高に関しても考察を行なう.

*正会員工修鹿島建設技術研究所
**正会員工博東北大学助手工学部土木工学科
***正会員工博:東北大学講師工学部土木工学科

2. 実験装置および実験方法

 実験には,図ー1に示す全長54m,幅1m,低水路高1m,高水路高O.5mの鉄筋コンクリート製の二次元水路を用いている.低水路部に設置された造波機により作られた一山の波は,45°の斜面部において波形の前傾化を促がされ水平床部で2〜3波のソリトン波列に分裂したのち,1/75斜面部へ伝播するようになっている.
 水理量の測定には,容量式水位計と超小型3mmプロペラ流速計を用いている.測定密度は水平方向に1m,鉛直方向に1〜2cm間隔である.計測結果は100Hzで離散化され水理量め計算に用いられている。 実験は表ー1に示す2種類のものに関して行なっている.両者は第1波の波高は同じであるが第2,3波の波高が異なるものである.

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図ー1
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表ー1

3.波高変化と流速分布

(1)波高変化
 図ー2に水位の経時変化を示す.斜面法先(X=0m)の第1波は背後の谷が静水面まで下がってはいないがほぼ孤立波と見なして良い,一方,第2,3波は同じ波高の孤立波に比べ波形が緩らかであり孤立波形に達する前に斜面部へ到達している.
 図ー3はソリトン波列の波高変化を示したものである。白印は砕波前,黒印は砕波後を表わす.
 第1波の砕波以前の波高変化は初期波高水深比が大きいため水深の-1乗に比例して増大する.第2,3波はほぼ-1/4乗に比例している.第1波の砕波点の波高水深比H_0/h_bは1.06であり,Streetら4)の実験式
(1)
に斜面勾配S=1/75を代入した値1.08にほぼ等しいものとなる.第2波の値はケース1で1.9,ケース2で1.6となりStreetらの実験式から求まるものに比べ大きなものとなる.これは,第1波が砕波し段波状の波形になったところへ第2波が追いつくことによる第1波のset-up効果であると考えることができる.実際,第2波の波先の全水深を用いて計算するとケース1で1.0,ケース2で0.85となりStreetらの値に近いものとなる.
 第1波の砕波後の波高変化は花安ら5)の緩勾配斜面上の孤立波の場合に近い結果となる.すなわち,図ー4に示した砕波後の波高と水深の関係でわかるように,砕波点(BP)かち段波形成点(BIP,花安らはbore inceptionpointと名付けている)までは急激に波高が減衰し,段波形成点からは減衰率が小さくなることである.また,花安らの実験結果と同様にBIP点以外に波高減衰直線の折れ曲り点があり,目視によるとこの点は砕波により混入した気泡が消滅する点(RP)であることがわかった.,図ー4の直線の勾配は右から2.8,1,0.25である。
特に,BIPからRPの間はH/h=0.78を満たすように波高が変化している.

 (2) 流速分布
 流速の測定結果の一例を図一5に示す.図はケース1の波峰直下の水平流速に関するものである.静水位より上の波峰部はプ鷺ペラ流速計の応答が悪く,測定が因難であるため計測値が少なくなっている.
 砕波点(X_b=4.8m)以前の流速分布は孤立波理論,特にMcCowan6)の値によく一致する.砕波点以後の第1波は砕波による乱れと流れへの移行のため静水位を境にして不連続流の様相を呈する.また,砕波による急激なエネルギー散逸のため汀線前で流速が小さくなっている.
 流速分布のひとつの指標として次式で定義される運動量補正係数\betaがある.
(2)
ここで,\bar{u}は断面平均流速である.図ー6はこの運動量補正係数の変化を調べたものである.砕波前の第1波の\betaは1.01から1.02程度変化するだけ’であるが,砕波後は流速分布の不連続性のため最大1.2まで大きくなる.その後,RP点すなわち砕波により混入した気泡が消減する地点で1.03と小さくなる.
 図ー7は第1波の質量輸送量の分布を示したものである.質量輸送量は流速を第1波の通過時間で積分して求めている.第1波は波峰部が弱く巻きこむもののspilling形の砕波をするので,波峰部が崩れて静水面上に質量輸送量の最大値が現われる.この最大値が現われる高さは砕波による表面渦の先端の位置に一致している.
 一方,第2波の流速分布は水底から波頂付近までそれ砥ど変化はないが,砕波後の第1波を取り込むことにより除々に流速が大きくなっている.第2波の砕波点はケース1の場合X_b=12mであるが,第1波とは異なり顕著な流速分布の不連続はおこらない.

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式(1〜2)
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図ー2 水位の経時変化
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図ー3 波高変化(その1)
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図ー4 波高変化(その2)
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図ー5 流速分布(ケース1)
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図ー6 運動量補正係数の変化(ケース1)
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図ー7 質量輸送量の変化(ケース1)

4. 運動量とエネルギーの変位

 (1) 波峰間距離の変化
 運動量とエネルギーに関する検討を行なう前に,波峰問距離に関して簡単な説明をする.
 図ー8は第1波と第2波の波峰到達時間の差毒の変化について調べたものである.この図からわかることは,第2波の波高に比べ第1波の波高が大きいため砕波前はもちろんのこと砕波後もBIP点付近まで第1波の波速が大きいことである.また,BIP点をすぎたあたりから第2波の波速の方が逆に大きくなり第2波が第1波に追いつくことになる.
 (2) 運動量の変化
 図ー9に各波ごとの運動量流束の衷化を示す。.ここで定義した運動量流束Mは密度を\rho,静水圧からの変動圧力をP_wとすると
(3)
で表わされるものである.ただし,P_wは測定された水位と流速を用いてアーセル数の大きい場合の非線形分散波理論により求めた.
 各分裂波は第1波の砕波点まで運動量がほぼ一定に保たれていると考えて良い.砕波後,第1波は砕波による乱れと第2波の追いつきのため運動量が急激に減少する.また,第2波も自らは砕波してはいないが第1波の砕波による乱れた場を伝播するため運動量は減衰する,ケース1の場合は第2波の波高が小さく顕著ではないが,BIP点をすぎたあたりから第1波に追いつくことにより運動量を獲得するため減衰率が少さくなる傾向がみられる.
 ケース2の第3波に関してはソリトンになりきれなかったさざなみの成分を含んだ形で運動量が計算されているため第1波のものより大きくなっている.

 (2) エネルギーの変化
 各分裂波ごとのエネルギー流束を
(4)
と定義する.ここで,wは鉛直方向流速,pは圧力である。
 図ー10にケース1の場合のエネルギー変化を示す.
斜面法先から第1波の砕波点までは運動量と同様にエネルギーも保存されている.運動エネルギーと位置エネルギーの比はほぼ1である.砕波後は運動,位置エネルギーは共に減少するが,特に波峰部が崩れるためか位置エネルギーの減少する割合が大きく,運動エネルギーと位置エネルギーの比は約1.3程度となる.
 図ー11は全エネルギーと水深との関係を調べたものである.波高変化ではBIP点及びRP点を境にして直線が折れ曲がったが,エネルギーに関してはRP点で分かれ2本の直線で表わされる.砕波点からRP点のエネルギー逸散は水深の1.7乗に比例している.
 第2波のエネルギーは運動量と同様に第1波の砕波点をすぎたあたりから波砕による乱れのため減少する.その後,第1波に追いつくことにより多少のエネルギー獲得がある.

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図ー8 波峰到達時間の差
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図ー9 運動量の変化
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図ー10 エネルギーの変化(その1)
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図ー11 エネルギーの変化(その2)

5. 陸上遡上高

 孤立波の陸上遡上高に関しては多くの実験が行なわれている.岸ら6)はそれらを整理して次式を提案している.
(5)
ここで,Rは遡上高,h_0は斜面法先水深,Hは入射波高,K(s),\alpha(\alpha)は斜面勾配Sの関数でグラフで与えられている.本実験の斜面勾配S=1/75に対して,K=0.36,\alpha=0.6が読みとれる.本実験でも孤立波一波が入射する場合には,式(5)で良く近似されるが,後続のソリトンが追いつく場合にはこれより高くなることがわかった.
 そこで,実験ケースを増やし遡上中の第1波に後続波が追い付く場合の陸上遡上高に関して検討を行なうことにした.その結果,第2波が追い付いて最高波になる場合には相対遡上高R/Hは一波だけのときの約1.7倍,また第3波が最高波となるときは約2.4倍と高くなることがわかった.そこで,第2波以後の入射波パラメタを含む予測式として,式(5)に似た(6)式を考え,図ー12に実験値との比較を示した.
(6)
ここで,Hiは斜面法先での第i番目のソリトン波高であり,N=1,2,3はおのおの第1,第2,第3波が最高波となることを示し,図中の黒丸,黒三角,黒四角印に対応している.予測値との相対誤差は10%以内におさまっている.式(6)は斜面法先に入射するソリトン波列の互々が単独に入射する場合の総和の形をとっているが,その物理的機構については今後の検討課題である.
 従来,波連が入射する場合に戻り流れの影響により遡上高が減少することはよく指摘されているが,波連の位相関係によっては遡上高が相加的に増大することがあることをここで指摘したい.

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式(5〜6)
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図ー12 ソリトン波列の遡上高

6. おわりに

 以上得られた主な結論を列挙すると次のとうりである.
 1) 第1波が砕波して段波状になった上を進む第2波は第1波のset-up効果により岸近くまで非砕波状態を保ち砕波時の波高水深比は大きくなる。
 2) 第1波の運動量は砕波前はほぼ一定に保たれるが,砕波後は急激に減少する.第2波に関しては,砕波前であっても第1波の乱れの場を進むため運動量は減少する.
 3) 第1波のエネルギーは砕波後,連行気泡の消滅点までは急激に減少するが,それより岸側では減少率は小さくなる.第2波に関しては砕波前であっても運動量と同様に第1波の砕波点をすぎたあたりから減少する.
 4) 陸上遡上中に後続波が追いつく本実験の場合,陸上遡上高は式(6)でよく近似され,相加的に遡上高は高くなる.

 本研究を行なうにあたり東北大学工学部岩崎敏夫名誉教授,首藤伸夫教授より多くの助言を賜わった、また,この研究の一部は文部省科学研究費(代表 首藤伸夫教授)によって行なわれた.ここに記して厚く謝意を表する.

参考文献

1) Zabusky,N.J.: Solitons and bounds stales of the time-independet Schr6dinger equation, Phy. Review, Vol. 168, 1969.
2) 室田明・岩田好一郎:段波の変形に関する研究,土木学会論文集,Vol.160,1968.
3) 岩崎敏夫・真野明・小杉達郎:孤立性段波のソリトン分裂に関する研究,第22回海岸工学講演会論文集,1975.
4) Camfield, F. E. and R. L. Street: Shoaling of solitary waves on small slopes, Proc. ASCE, WW1, 1969.
5) 花安繁郎・佐伯浩・星崎晃:斜面上における孤立波の変形に関する研究(1),第17回海岸工学講演会論文集,1970.
6) Kishi, T. and H. Saeki: The shoaling, breaking and run-up of the solitary wave on impermeable rough slopes, Proc. 10th Conf. Coastal Eng., 1966.

非線形分散波の数値計算 長尾昌朋*・後藤智明**・首藤伸夫***

1. 序

 現在,津波の初期波形を正確におさえることができれぽ線形長波理論,浅水理論を用いた数値計算法で沿岸の津波の挙動をかなりの精度で再現できることが知られている.しかし,日本海中部地震津波のように短周期成分の卓越したフ質ソトを持つ津波の再現には,鉛直方向の加速度を入れた運動の式(非線形分散波理論)を用いることが必要と思われるが,今のところ実用に供し得る方法は開発されていない.これは,非線形分散波理論の精度とその計算方法に問題が残されているからである.
 非線形分散理論としてはBoussinesq1),Korteweg-deVrles2),Mei-Mehaute3),Peregrine4)あるいは角谷5)が有名である.これらは波高水深比と相対水深がともに小さくアーセル数が1のオーダーであると仮定して導かれている.一方,著者の一人が提案したアーセル数が大きい場合の非線形分散波の方程式6)は波高水深比が1のオーダーで相対水深が小さくアーセル数が大きいと仮定して導かれている.
 本研究では,斜面からの反射を含む,一般的に使用しうるPeregrineの式と大アーセル数非線形分散波の方程式とを用いて数値計算を行ない,水理実験と比較することによって非線形分散波理論の基礎的な検討を行なう.

*学生会員 東北大学大学院工学研究科
**正会員 工博 東北大学助手 工学部土木工学科
***正会員 工博 東北大学教授 工学部土木工学科

2. 実験方法

 実験には図ー1に示す長さ10m,幅30cm,深さ45cmの両面ガラス張水路を用いた.一端にピストソ型造波装置を取り付け,孤立波を発生させた.造波板の速度を変えることによって任意の孤立波を発生できる.また,他端には勾配1/20の斜面を取り付け,ここで孤立波を変形させた。孤立波の空間波形の経時変化を測定するために水位の測定には2台の高速度サーボ式水位計(WG1,WG2)を用いた.WG1の位置は固定し,WG2の位置は5cm毎に動かして水位を測定した.
WG1の波形を基にして各測点での時間を調整した.
 実験は斜面法先での波高水深比\epsilon_0が0,11と0.44の2種類の場合を行なった.表ー1に実験データを示す.
砕波形態は2種類とも巻き波砕波である.また,波高が最大となる点を砕波点とした.

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図ー1 実験装置
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表ー1 実験データ

3. 数値計算

 (1)計算法
 最波を記述するパラメーターとしては,波高水深比ε(=H/h),相対水深\sigma(=(h/L)^2)およびこれらのパラメーターを結びつけたアーセル数U_r(=\epsilon/\sigma)が良く用いられる.
 Peregrineの式は,波高水深比と相対水深がともに小さくアーセル数が1のオーダーと仮定する。第二次近似により次式を得る6).
(1)
 ここで,\bar{u}は断面平均流速,\etaは静水面からの水位変動,hは静水深,D(=h+\eta)は全水深,gは重力加速度である.正確には,移流項に静水深を用いるぺきであるが従来全水深で計算されているので今回もそれに従った.
 大アーセル数非線形分散波の方程式は,波高水深比が1のオーダーで相対水深が小さくアーセル数が大きいと仮定する.第一次近似により次式を得る.
(3)
(4)
(5)
(6)
 計算は中央差分とし陰解法を使用する.計算点の配置はリープフロッグ法と同じように水位と流量を交互に配置した(図ー2)。津波の計算には従来よりリープフロッグ法が用いられており,これらとの互換性を考えたからである。これにより計算点をそのままにして水深変化に応じて線形長波理論,浅水理論,非線形分散波理論へと支配方程式を連続的に変えるプログラムの作成が可能となる.また,沖側の境界条件に実験値を用い,直接実験結果と数値計算結果とを比較できるようにした.計算点の格子間隔はケース1では\delta x=2.5cm,4\delta t=1/100sec,ケース2では\delta x=25cm,\delta t=1/200secである.\delta x,,\delta tは無次元化すると各々同じような値になる.なお,計算時間は,大アーセル数非線形分散波の方程式を用いると30分程度,Peregrineの式を用いると3分程度である.

 (2) 計算結果
 図ー3に波形に関する実験結果と数値計算結果を示す.実験結果の波形が滑らかでないのは5cm毎の測点での水位の経時変化を空問波形として示したからである.図ー3上段左に示すように線形長波理論では波形の変化が起こらず,波速も小さい.図ー3上段右に浅水理論の結果を示すが,計算した波は大きく前傾化し,波速も大きい.また,波先端に数値ギブス振動7)を生じやすい.図ー3中段および下段からわかるようにPeregrineの式では波高水深比が小さいと精度良く計算できるが,波高水深比が大きいと波高を過大評価する.また,波の分裂も早目に進行する.大アーセル数非線形分散波の方程式では波高水深比が大きくても精度良く計算できる.
波速に関しても非線形分散波理論を用いると多少の誤差はあるが良く実験値に一致している.
 図ー4,5は波高と波速に関する数値計算の精度を数値計算結果と実験結果との比をとって改ためて示したものである.値が1に近づく程精度が良い.上で述べた事が再確認される.
 図ー6に大アーセル数非線形分散波の方程式の運動量の式の各項の大きさを示す.各図とも各々最大値で基準化している.波高水深比が小さければ局所項と重力項が大きく,移流項と分散項は小さく無視できる.波高水深比が大きくなると移流項,分散項が大きくなり無視できなくなる.また,Peregrineの式の分散項は大アーセル数非線形分散波の方程式のそれに比べて小さいが,波高水深比が大きくなると特に差が大きくなる.これが,波高水深比が大きくなると波高を過大評価する原因であろう.
 式(4)の分散項では
(式タイトルなし1)
が大きく他の斜面の効果を含んだ項は勾配1/20程度の斜面では小さく無視できる.
 大アーセル数非線形分散波の方程式を水平床上で第二次近似まで計算すると式(4)に次の修正項が現われる.
図ー6にこれらの大きさをO(σ^2)として示している。移流項ではこの修正項は小さく無視できる.分散項では波高水深比が小さいと修正項は小さいが,波高水深比が大きくなると修正項も大きくなりその値は第一次近似までのものと同程度になる.このような領域では支配方程式をより高次近似にする必要性が考えられる.
 図ー3には表示していないが,数値計算では砕波を起こさず波形を計算しつづける.しかし,物理現象としてはこのようなことはありえない.従って,砕波に対する検討を行ない適用限界を決定する必要がある.波頂における水表面での流速が波速を上回った時を砕波と見なす.水表面での流速はアーセル数が大きい場合の非線形分散波理論により次式で与えられる.
(9)
一方,波速としては様々なものが考えられるがどの定義による波速を用いれば実際の砕波点を正しく表わせるかを調べたものが図ー7である.ただし,c_1は波頂の進行速度,c_2は波頂前面の静水面上の水の体積を同じにするような仮想の鉛直面の移動速度である.実験結果から数値計算での砕波条件を
(式タイトルなし2)
の範囲で定めれば良いと考えられる。c=\sqrt{g(h+\eta)}と定義した場合には,計算によって決定できる砕波点と実験の砕波点との差は水平距離にしてケース1で7.5cm,ケース2で20cmであった.今回は実験を2種しか行なえなかったのでこのことは今後の課題としたい.

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式(1〜9)
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式タイトルなし(1〜2)
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図ー2 計算点の配置
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図ー3 実験結果及び数値計算結果     上段:\epsilon_0=0.11,中段:\epsilon_0=0.11,下段:\epsilon_0=0.44
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図ー4 波高の精度    上段:\epsilon_0=0.11,上段:\epsilon_0=0.44
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図ー5 波高増幅に伴う波速の精度(\epsilon_0=0.44)
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図ー6 運動量の式の各項の比較    左:\epsilon_0=0.11 斜面法先付近(\epsilon=0.17)と砕波点付近(\epsilon=0.37)    右:\epsilon_0=0.44 斜面法先付近(\epsilon=0.51)と砕波点付近(\epsilon=0.93)
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図ー7 水表面流速と波速との比較 (左:\epsilon_0=0.11,右:\epsilon=0.44)

4. 結 び

 本計算法により孤立波の斜面上での変形を安定に計算できる.今回のように波頂曲率の大きな波の計算では非線形分散波理論を用いる必要がある。Peregrineの式では波高水深比が小さいと精度良く計算できるが,波高水探比が大きくなると波高を過大評価してしまう.また,波の分裂も早目に起こってしまう.大アーセル数非線形分散波の方程式では波高水深比が大きくても精度良く計算できる.この式の斜面の効果を含む項は勾配1/20程度の斜面では小さく無視できる.さらにこの式の第二次近似式を水平床において導いたが,砕波点付近のように波高水深比が非常に大きくなると第二次近似の分散項の修正項が第一次近似の分散項と同程度の大きさとなり砕波点付近ではさらに高次近似の式を用いる必要性が考えられる.
 波速として\sqrt{gh}〜\sqrt{g(h+\eta)}の間にあるものを選び,これと波頂での水粒子速度が等しいときが砕波であるとする方法により数値計算のための砕波点を決めることは現実的な計算手法である.ただし,具体的にcの形を決めるには,いま少し事例を増やす必要があるc=\sqrt{g(h+\eta)}とした時には実験との差は水平距離にして20cm以下の範囲におさまった.

謝辞

この実験を行なうにあたり,東北大学工学部山路弘人技官より多くの助力を得た。また,この研究の一部は文部省科学研究費(代表者首藤伸夫教授)によって行なわれた.ここに記して厚く謝意を表する。

参考文献

1) Boussinesq, M. J.: Essai sur la theorie des eaux counrantes, Hemo. Acad. Science, 2eme Ser, Tome 23, No.1,1877.
2) Korteweg, D. J and G. De Vries: On the change of form of long waves advancing in a rectagular canal. and on a new tyge of long stationary waves, Phil. Mag., Vol.39,1895.
3) Mei,C.C.and B. LeMehaute: Note on a equations of long waves over a nuneven bottom, J. Geophs. Res., Vol.71,1966.
4) Peregrine, D. H. : Long waves on a beach, J.F.M., Vol.27, Part4,1967.
5) Kakutani,T.: Effect of an uneven bottom on gravity waves, J. Phs. Soc. in Japan, Vol.30,1971.
6) 後藤智明:アーセル数が大きい場合の非線形分散波の方程式,土木学会論文集,第351号/2-2,1984.
7) Goto, C. and N. Shuto: Numerical simulation of Tsunami propagations and run-ups, Tsunamis: Their Science and Engineering, Terra Scientific Publishing Company,1981.

直線状海岸における多成分潮流の計算 今村文彦*・後藤智明**・首藤伸夫***

1. はじめに

 対象とする現象の時間スケールにもよるが,沿岸海域における温排水や濁質物の拡散予測には潮流と拡散を組み合わせた数値シミュレーショソがよく用いられる.しかし,その基本となる潮流計算を精度良く実施できるのは東京湾あるいは伊勢湾といった閉鎖性内湾の場合か開放性沿岸域で潮流が一方向入射の場合に限られていた.
これは,潮流計算の沖側境界条件の設定法,特に反射波の処理法に問題が残されていたためである.
 従来の潮流計算における境界条件を簡単に説明する.
 閉鎖性内湾を対称とした計算では,湾口の実測値を直接境界条件に適用するのが普通である1).
 開放性沿岸域を対象としたものでは,沿岸に平行な潮流が卓越するときに境界の両側セ位相差のある水位を与える方法2),沿岸に平行な潮流ではないが各分潮の入射方向がほぼ同じであるとき入射波条件を与え反射波を特性曲線法を用いて処理する方法3),計算領域内に数多くの実測値があるとき境界条件をこの実測値から補間などを行なって定める方法の3種類がある.しかしながら,これらの方法で取り扱い得るものはそれほど多くはない.通常の海域では境界値に利用できる実測値は少なく,多成分の潮流を考える必要があるからである.
 本研究では,開放性沿岸域の多成分潮流の計算を対象とした境界条件設定法(以下,仮想汀線法と呼ぶ)を新らたに提案する.汀線を直線に近似し,反射波を入射波の鏡像として定める方法である.これによれば,境界値の計算は非常に簡単なものとなるが,仮定した地形と現実の地形との違いにより誤差が発生する可能性があるので,この点の検討をも行なっている.最後に,福島県いわき市鮫川河口沿岸を対象とした潮流計算にこの方法を適用し,実用上の諸問題に関しても検討する.

*学生員 東北大学大学院工学研究科
**正会員 工博 東北大学助手 工学部土木工学科
***正会員 工博 東北大学教授 工学部土木工学科

2. 仮想汀線法とその誤差

 (1) 仮想汀線法
 一様水深で汀線が直線であるような理想的な海域を考える.この海域で潮流の実測値および各分潮ごとの潮流楕円が得られたものと仮定する.この潮流楕円から入射波の諸元を求める・すなわち・楕円の長軸・短軸の寸法から入射波の振幅と方向を定める.入射方向が求まると図ー1のように潮流計算の境界上の任意の点に到達する入射波と反射波の経路が定まる。図一1において\bar{ORP}を入射波の波峰線と平行な直線とすると,境界線上の任意の点Aへの入射波の経路は直線\bar{PA},反射波の経路は直線\bar{RQA}で表わされる.ここで,直線\bar{ORP}で位相角が零とおくと点Aの入射波,反射波の位相がそれぞれの経路の距離だけズレることを利用する。点Aの座標を(x,y)とおくと,直線\bar{ORP}からの入鮒波,反射波の伝播距離d_i,d_rはそれぞれ
(1)
で与えられ,このことから合成波の水位\etaは
(2)
となることがわかる.ここで,H,\sigma,\thetaは入射波の振幅,角周波数および入射角であり,gは重力加速度,hは水深である.また,Σは各分潮の和を意味する。
 潮流計算の境界条件の与え方は水位制御方式と流速制御方式の2種類があり,潮流に恒流成分が含まれる場合には流速制御方式を用いる必要があることを堀江ら4)が報告しているが,ここでも恒流成分がある場合には式(2)を書き換えなければならない.すなわち,恒流成分を(\bar{u},\bar{v})で表わすと,y軸と平行な境界線上では
(3)
x軸と平行な境界線では
(4)
である.また,潮流計算の初期条件としては静水面を与えるのが普通であり,この場合,反射波が境界線に到達する以前は反射波成分の値を零にする必要がある。

 (2) 仮想汀線法の誤差
 a)仮想汀線が任意の角度ズレている場合 ここでは,現実の汀線は直線であるが仮想汀線と微小角度\deltaだけズレている場合の誤差について検討する,他の条件は仮想汀線法と同一とする.
 仮想汀線がy=0であるのに比べ,現実のものがy=tan{\delta*x}の場合,入射波の経路は変わらないが反射波の経路は多少変化する。このとき,汀線y=tan{\delta*x}による反射波の伝播距離は式(2)に比べ
(5)
となる.したがって,この場合の合成波\eta」は
(6)
と表わされる.
 両者の誤差を分潮の最大水位\eta_{max},\eta」_{max}を用いて
(式)
と定義すると誤差の分布は図ー2および図ー3のようになる.図ー2はh=25m,tan\delta=0.04,\theta=0°入射波周期12時間の成分を考えた場合の誤差の平面分布を表わす.図ー3は図ー2に示した15×7.5kmの領域中の誤差の最大値を入射波周期と汀線の傾きに関して調べたものである。入射波が2時間以下のものに関しては,誤差が比較的大きいものになるが,潮流のように周期が12時間以上のものに関しては10^-3以下の誤差におさまっていることが分かる.
 b)汀線が放物線で表わされる場合
 ここでは汀線がy=xがの放物線を呈している場合との誤差を検討する.この場合もa)のときと同様に反射波の伝播距離d」」_rだけが変わり
(7)
となる.ここで,(x,y)は汀線すなわちy=x^2の曲線上の反射点の位置を,\betaはその点での接線の傾き角度を表わす.(x_0,y_0),(x,y),\betaの間には
(式)
の関係がある.
 h=25m,a=2/375km,\theta=0°,入射波周期12時間のときの誤差の空間分布を図ー4に示す.図ー5は誤差の最大値を入射波周期およびaに関して調べた結果である.
 この場合も周期12時間以上の潮流を考えるのであれぽ誤差は10^{-3}以下となり仮想汀線法を用いて境界条件を定めても良いことがわかる.

 c) 水底勾配の影響による誤差
 ここでは斜面勾配を考慮した場合の誤差を検討する.
汀線はy=0で表わされる直線とする。この場合は水平床を仮定した仮想汀線法に比べ,入射波および反射波の伝播経路は変わらないが,水深が変化するため伝播速度が変わり位相が両者共にズレてくる.水底形状を汀線でh_0それから沖に向かって勾配Sの一様な斜面を考えると,入射波の伝播経路に沿った平均水深\bar{h}_iは
(8)
となり,一方,反射波の伝播経路に沿った平均水深\bar{h}_iは
(9)
で表される.したがって,合成波高\eta」」は
(10)
となる.
 図ー6は先のものと同様にして,h_0=5m,S=2/75,\theta=0°入射波周期12時間の誤差の空間分布を表わしたものである.誤差は汀線から離れるにつれて大きくなるが,その極値は5.4×10{-4}程度である.したがって,仮想汀線法では考えた領域の平均水深を用いると,水底勾配の影響は無視できる大きさであることがわかる.

 d)撹乱波の影響
 沖側から岸に向かって進行する波は,汀線に河川や湾などの水路がなけれぽ,大部分汀線で反射し重複波を形成する.ところが,水路が存在すれば波の一部は汀線で反射せず水路内に透過するため,水路から蝿乱波が沿岸域に伝播し,重複波に重なる.したがって,河川や湾などを伴なった海域での重複波を考える場合,この掩乱波の大きさについて評価しなけれぽならない.合田5)はフーリエ変i換によってこの蝿乱波を求めている.水路が矩形の場合に,撹乱波の波高fは
(11)
で与えられる.ここで,Bは水路幅,Lは水路長さ,kは波数,\gammaはガンマ数である.撹乱波波高の入射波高Hに対する比の空間分布を図ー7に示す.水路口を中心に同心円状に広がっている.図ー8には水路口での撹乱波の大きさを周期に関して求めた.図中に示す矩形の水路と水路口が狭いものについて示す.1時間前後の周期でピークが形成され,この水路の固有周期に近いことを示す.周期が長くなるにつれ蝿乱波は小さくなり,潮流などの長い周期を持つ波に対しては影響が非常に小さい.

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図ー1 仮想汀線法概念図
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図ー2 誤差の空間分布(y=0とy=tan{\delta*x})
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図ー3 誤差値の変化(tan\deltaと周期に対する)
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図ー4 誤差の空間分布(y=0とy=ax^2)
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図ー5 誤差値の変化(aと周期に対する)
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図ー6 誤差の空間分布(水平床と一様勾配))
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図ー7 攪乱波の空間分布
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図ー8 攪乱波高の変化(周期に対する)

3. 数値計算例

 本研究で提案した仮想汀線法を福島県いわき市鮫川河口近海の潮流計算に応用することにより実用上の問題点を検討する.基礎式としては浅水理論を用い,リープ・フロッグ法により差分化を行なった、計算領域を図一9に示す.沿岸域をA領域(\delta x=150m),B領域(\delta x=50m)の二段階にし,河道部セこは感潮面積を考慮するために一次元不定流領域を設けた.境界条件としては沖側境界条件の他に鮫川の河川流量,発電所からの温排水がある.今回の計算では河川流量を6.4m^3/s,温排水量を65.6m^3/sと与えた.沖側境界条件設定に用いた潮流楕円を図ー10に示す.k_1潮が卓越しているものの他の3成分も無視することは出来ない.
 図ー11には鮫川河口部,発電所放水口前面に位置する開削部および沖側境界付近における水位経時変化を示す.実線が計算結果,黒丸印が昭和59年2月16,17日に行なった実測結果を示す.沖合での値は小名浜港での実測潮位を用いた。河口部で下げ潮時に若干実測値の方が高い値をとる他は良好な一致を示している.沖側境界で反射波の適切でないと計算領域内において,湾や湖などで生じる副振動と同じ現象が見られる.本計算領域は9.0×5.25kmの矩形であり,平均水深15mであるので約12.4分,7.2分の基本モードの周期を持つ固有振動が生じる.計算結果にはこのような振動は見られず安定した結果が得られている.
 図ー12,13には計算開始6,18時間後のB領域での流速ベクトル図を示す.図中には開削部での水位経時変化と沿岸域での潮流楕円を併わせて示す.図ー12は下げ潮時の流況である。河口部および開削部から強い噴流が海域に流れ込み,渦を形成している。また,汀線に沿って左から右へ向かう潮流が再現されている.図ー13は満潮時での流況である.開削部からは依然として発電所放流水が海域に流れ込んでいるが,河口部での流速はほとんど零に近い.この河口部では,上げ潮時に流向が逆転し河道内へ流れ込むが,図ー13の時点では満潮時のため流れは小さい。この後,流れはまた海;域に向かうものとなる.汀線に沿った潮流は流向を変え,右から左へ流れている.

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図ー9 計算対称領域
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図ー10 潮流楕円
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図ー11
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図ー12
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図ー13

4. おわりに

 本研究で得られた結果を以下まとめる.
 1. 沖側境界条件に本研究で提案した仮想汀線法を用いることにより,多成分潮からなる潮流の計算を安定に行うことができる.
 2. 仮想汀線法を比較的簡単な仮定を用いて決めたことによる誤差は,反射波の水位,伝播経路,伝播速度の違いで表現できる.この誤差はi)仮想汀線の形状ii)水底勾配ⅲ)撹乱波などの影響によるものである.
 i)〜ⅲ)の影響を検討した結果潮汐など非常に長い周期の流れに対しては誤差が小さいことがわかった.したがって,仮想汀線法で用いた仮定を行なっても十分所定の精度を得ることができる.
 3. 最後に,鮫川河口近海の潮流計算を行ない,安定な計算結果を得た.また,実線値との比較を行なった結果,良好な一致を得られ,十分実用に供し得るものと判断できる.

謝辞

本研究を進めるにあたって御協力をいただいた建設省土木研究所小川由信氏に謝意を表わす.また,本研究の一部は文部省科学研究費(代表:東北大・理学部票原康教授)によって行なわれたことを付記する.

参考文献

1) 市原正史・大村哲夫・福代倫男・野澤良一:東京湾の潮流観測とシミュレーション,第27回海岸工学講演会論文集,pp.448〜452,1980.
2) 和田明:沿岸海域における工業用水取排水間題のシミュレーション,第17回海岸工学講演会論文集,pp・373〜378,1970.
3) 岩崎敏夫・真野明・清水保:沿岸海域での物質移動に及ぼす移流と拡散の影響評価,第36回年次学術講演会講演概要集,pp.739〜740,1981.
4) 堀江毅・金子安雄・村上和男:潮流計算における水位制御と流速制御,第23圃海岸工学講演会講演会,pp.493〜497,1976.
5) Ippen, A. T. and Goda,Y.: Wave Induced Oscillations in Harbors, Report No.59, Hydrodynamics Lab.,M.I.T., 1963.

屈折に関する津波数値計算の誤差 佐山順二*・後藤智明**・首藤伸夫***

1. はじめに

 近年,津波の挙動を予想するのに数値実験的手法が,極めて有効であることが認識されるようになってきた.
事実,適切な差分格子を用いた場合には,津波の最大打ち上げ高さを,誤差15%以内で再現できるとまで言われている.しかしながら,現在の数値計算技術で如何にしても痕跡値を説明できない箇所がある.例えば,安政津波(1854)の下田港や御前崎,あるいは,三陸大津波(1933)の越喜来湾崎浜のよう.に,津波入射方向と海岸線が平行に沿うような場所である.差分格子が粗いと陸棚以浅の屈折を十分に表現できず,その結果津波の集中度を過少に評価する為であると考えられる.本研究では,屈折に関する津波数値計算の誤差を簡単に評価する方法を示し,所要の精度を得る条件を明らかにする.また,安政津波の下田港付近に適用し,現実問題における津波数値計算の誤差にし関ても検討する.

*学生員 東北大学大学院 工学研究科
**正会員 工博 運輸省港湾技術研究所 水工都
***正会員 工博 東北大学教授 工学部土木工学斜

2. 屈折における誤差の近似的評価

 2.1 理論解
 まず,一様勾配斜面上の長波の波向線をSnellの法則を用いて解析的に導く.長波の波速は水深をh,重力加速度をgとすると\sqrt{gh}で表されるのでSnellの法則は
(1)
となる.ここで,\theta_0,\thetaはそれぞれ入射角,屈折角である.水深が図ー1に示すようにh=h_0-\alpha Xで表される場合は式(1)は
(2)
となる.ー方,波向線の傾きはdX/dY=tan \thetaであるので,式(2)と組み合わせると波向線の座標(X,Y)は
(3)
と表されることになる.これを理論解と呼ぶ.ここで,\beta=\sqrt{1-\alpha X/h_0}である.

 2.2 長波計算における屈折量の近似的評価
 波向線を追跡しない数値計算では,波の屈折は陽的には扱われないが,波の伝播は計算格子間隔の影響下に決定される.
 いま,図ー1に示す座標系において汀線までN分割の格子網を用いて計算しているものとし,波向線について考える.最初の格子点Aでの屈折角\theta_tは局所的にSnellの法則が成立するものとすると
(4)
で表される。類似の屈折が各格子点で起こるから、Y=(Ln/N)tanθの関係を用いると、波向線の到達位置は
(5)
で表される.これを分割近似解と呼ぶ.ただし,この解はX,Y軸に平行で,かつ等深線に沿った計算格子網を想定して得られた解である.実際の計算にあたっては等深線と計算格子網の組み合せは一律ではないので,式(5)は数僅計算による屈折の近似的評価と考える必要がある,
 式(5)の検定の意味で,波向線を追跡しない普通の長波数値計算との比較を行った例を図ー2に示す.数値計算では,Leap-frog差分法を用い周期300秒,波高水深比0.01の規則波を与え、\alpha=0.01の一様勾配斜面に,入射角60°とした.波向線は,波フロントに直な線として求めた.図は計算格子間隔DX=2250m,750mの2種類に関するものである.図から数値計算結果とその近似解は良い一致を示すことがわかる.また,計算の格子間隔が小さい程数値計算結果は理論解(3)に近くなることもわかる.以上のことから,理論解(3)及び近似解(5)を用いて数値計算の屈折に関する誤差を評価しても良いと結論づけられる.
 2.3数値計算の屈折に関する誤差
 長波の波向線に関する理論解、式(3)と数値計算の近似解式(5)から汀線における津波の屈折量を求め,その差によって屈折誤差を評価する.すなわち,その比は近似解をY(N),理論解をYで表すと
(6)
となる.
 図ー3は,汀線における屈折誤差率を必要差分分割数と入射角から推定するためのものである.

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式(1〜6)
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図ー1 座標系
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図ー2 一様勾配斜面上の屈折に関する数値解および理論解の比較

3. 下田港における安政津波の数値計算

 3.1 数値計算法
 津波の伝播は線形長波理論,遡上計算は浅水理解により計算する.
 相田は石橋の提案した断層モデルのパラメータ(表ー1に示す)が安政津波の波源として適当であるとしている.今回の計算でも,この断層パラメータを用いた.図ー4が対応する地盤鉛直変動量の分布,すなわち,津波初期波形を示す.計算対象領域は,高知沖から房総半島に至るものとし沿岸に近づくに従い細かい格子間隔とした,図ー4および図ー5に本研究の計算領域を示す.
 3.2 現実問題における屈折誤差の評価例
 下田付近における安政津波に,2.の考え方を適用する。津波の屈折に関する波向線の誤差を評価するためには,津波の入射角,屈折開始点,および領域長(斜面長)を決める必要がある.津波の波向線に関する誤差は,入射角が大角度ほど大きいため,ここでは誤差が大きくなる所を選び評価する.図一5において,津波は矢印の方向より入射している.400mの仮定等深線を一点鎖線のように仮定し,この線上を屈折開始点とすると,入射角は85°となる.斜面長は屈折開始点より常に水深が減少するように取って行くと,a-hとなる.斜面長L_0=13800m,入射角θ_0=85°に対し図ー3を用いて屈折に関する波向線の誤差を評価すると。屈折誤差を5%にとどめるために必要な分割数はN=89で,差分格子幅(DX)は,
(式)
となる.これは,a-h間を一様勾配斜面と仮定した場合である.実際の等深線に沿うようにa-h間をいくつかの区間に分け,その区間内を一様勾配と仮定して式(3),(5)より屈折誤差を評価することもできる.ある程度等深線を考慮した場合と,a-h間を一様勾配と仮定した場合とを比較すると,表ー2のようになる.あまり大差はないので,図ー3で波向線の屈折誤差を簡単に評価できるとして良い.
 安政津波の数値計算を行い,波向線を描くと図ー5のようになる.各時間ステップにおける波峰線と直角を成すように波向線を描いてある.実線が差分格子幅100m,破線が800mのときである。図のように,差分格子幅が粗い程屈折しないことが分かる.
 3.3 数値計算
 安政津波の下田港付近の数値計算を行うことにより,波向線の誤差とそれに関連する数値計算の誤差とについて調ぺてみよう.
 津波数値計算は,外海計算域,近海計算域,遡上計算域の3領域に分けておこなう.図ー5に遡上計算域,近海計算域を示す.外海計算域は,近海計算域の外側であり,深い方からDX_s=6.4km,3.2km,1.6km,0.8mとする.屈折の影響は,津波の入射方向が等深線に対し大角度となっている近海計算域で大きいと考え,近海計算域での差分格子幅を3種類に変えること(DX_n=100m,400m,800m)により比較する.遡上計算域においては,屈折による誤差は小さいと考え,差分格子幅をDX_t=50mに一定とする.外海計算域においても屈折による誤差は小さいと考えている.
 用いた方程式は,外海計算,近海計算に線形長波理論,遡上計算に浅水理論である.
 痕跡遡上域は,羽鳥による浸水域の推定に,より決めた.また,相田によれば安政津波は満潮に近い時刻に襲来したので,海図の水深に0.5m加えてある.
 図ー6は第一波に対し,近海計算域の差分格子幅による遡上域,最大水位分布および汀線の最大水位の差を見たものである.破線は,遡上痕跡値を示し,斜線で囲まれた範囲が数値計算による遡上域である.(a)は近海計算域差分格子幅DX_n=800mで,遡上計算域との境界において,波高及び流速を線形補間している.(b)は400m,(c)は100mである.DX_nを小さくするほど,最大水位等高線の占める面積が大きくなる.たとえば,3.0mの等水位線で比較すれば明瞭である.これは,図ー4で格子幅が小さい程良く屈折することと対応していると考えられる.
 吉佐美地区遡上面積も格子幅が小さい程広くなる.また,汀線における最大水位の場所的変動は格子幅の小さい程大きい.ただし下田港の近辺に限るとDX_n=400mでの\eta_max=3.Omの線が一番広い面積をあたえる.
図一7(a),(b)にDX_n=100mを基準として,400m,800mの最大水位線,遡上域の比較を示す.
 図ー8(a),(b),(c)は第4波までのうち最大水位及び,遡上高を拾って図示したものである.
 図ー6の(a),(b),(c)と比ぺると,海上での等水位分布には大きな変化が生じていない.したがって,この沿岸領域に津波を向けさせる陸棚の効果としては,この場合第一波によって判定することができるものと考えられる.図ー6と8での遡上高さの差は陸棚の効果よりも,湾形の差と,ごく浅海における共振効果に原因するものとして良かろう.
 図ー8(a),(b),(c)を比較すると,DX_n=400mが下田を含んで痕跡値と最も良く一致するように見え,また,その他の地域ではDX_nの差による遡上域の差がでないように見える.しかし,図ー9に示す通り汀線での水位として表示すると大きな差がある.DX_nの小さいほど細かな変化があり一般に高い.吉佐美ではDX_n=100m,800mでは2m以上の差がある.地形が急峻なため遡上面積としては差が目立たなかったのである.
 下田に関してはDX_n=100mと400mでは高々50cm程度の差しかないのに遡上面積に大差が生じている.土地が低平だからである.下田以外では,全体にDX_n=100mの方が水位が高く細かな変動を与えている.

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(式)
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表ー1 安政地震の断層パラメータ
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図ー3 数値計算の屈折に関する誤差
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図ー4 安政地震による地盤鉛直変動量の分布
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図ー5 計算領域
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表ー2 屈折誤差比較
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図ー6 第一波における最大水位分布および遡上域の比較
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図ー7 第一波における最大水位分布および遡上域の比較詳細
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図ー8 第4波までの最大水位分布および遡上域の比較
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図ー9 第4波までの汀線最大水位分布比較

4. おわりに

 本研究では,屈折に関する津波数値計算り誤差を検討した.’その結果,近似解式(5)で波向線に.おける計算結果を予想することが出来,理論解式(3)との差を調ぺることにより所要の精度を得るための条件(式(6))を提案した.さらに,現実問題への適用として安政津波の下田近辺を取り上げ検討した.数値計算の打ち切り誤差の影響もあり正確ではないが,津波の屈折に関する波向線の誤差と波高の誤差とに当然ながら対応のあることが分かった.
 謝辞:(株)ユニックには数値計算等に関して協力していただいた.ここに記して謝意を表する.なお,この研究の一部は文部省科学研究費自然災害特別研究によって行われた.

謝辞

(株)ユニックには数値計算等に関して協力していただいた.ここに記して謝意を表する.なお,この研究の一部は文部省科学研究費自然災害特別研究によって行われた.

参考文献

1) 後藤智明・小川由信:Leap-flog法を用いた津波数値計算法,東北大学工学部土木工学科,1982.
2) 相田勇:東海道沖におこった歴史津波の数値実験,地震,56,1981.
3) 羽鳥徳太郎:歴史津波とその研究,東京大学地震研究所,1981.

1964年アラスカ津波の外洋伝播計算 今村文彦*・後藤智明**・首藤伸夫***

1. はじめに

 環太平洋地震帯では地盤活動が活発であるため地震の頻発しやすい状況にある.地震そのものはたとえ大規模なものであっても局地的な被害でおさまるが,地震によって発生した津波は長距離伝播し遠方各地を襲う場合がある.1960年チリ地震津波が日本に襲来した例や1946年アリュ一シャン地震津波のハワイへの例である.
 現在,電算機と数値計算法の発達により津波数値シミュレーションは有用性を増し,被害予測のみならず災害対策の分野に於いても重要な役割を果たしている.しかし,その適用範囲は近海で発生するものに限定されていると言っても過言ではない.これは,電算機の演算時間記憶容量および数値計算の精度について問題が残されているためである.特に,遠地から長距離伝播してくる津波の計算では打ち切り誤差に代表される計算誤差が累積され計算結果の精度が非常に悪くなることが考えられる,このような理由により,過去にも遠地津波を対象とした計算例が若干 1)あるが,その計算結果の信頼性は低く,対象領域も遠地津波の来襲を予測するには充分なものとは言えない.したがって,より広域な領域を対象とした精度の高い計算法を確立する必要性がある.
 そこで,本研究では1964年アラスカ地震津波を取り上げ遠地津波の基礎的な数値計算法に関する検討を行う.まず始めに,アラスカ津波の代表的な断面波形を用いて1次元伝播計算を行なうことにより支配方程式および計算格子間隔の違いによる計算結果の差について詳細に検討する.次に,実用問題の例として北太平洋を対象領域にした2次元計算を行ない遠地津波計算を突施する上で問題となる事項について考察を行なう。同時に,最近開発され実用に供されるようになって来たスーパー饗ソピュータの特徴のひとつであるベクトル演算機能を活用することにより遠地から伝播して来る津波に関しても比較的簡単に計算が可能であることを示す.

*学生員 工修 東北大学大学院 工学研究科
**正会貴 工博 運輸省港湾技術研究所 水工部
***正会員 工博 東北大学教授 工学部土木工学科

2. 1次元伝播計算による検討

 数値計算を行なう上で最も重要な問題は計算格子間隔と支配方程式を決定することである.前者は数値分散性や散逸性として現われる数値誤差の大きさに関するものであり,後者は高次の物理現象である非線形性や波数分散性の重要性に関する問題である.ここでは,両者について1次元伝播計算により考察する.
 2.1計算格子間隔の違いによる波形変化
 数値計算では計算格子間隔に比例して離散化誤差や打ち切り誤差が大きくなり,物理的な性質とは異なる波数分散が生じたり粘性効果が働くことにより、波高を低下させることが知られている.この誤差は対象とする初期波形や伝播距離により変わるため,ここでは現実問題であるアラスカ津波の代表的な断面波形を初期波形として用いた検討を行なっている.Plafker 2)により得られたアラスカ津波の初期波形を図ー1に示す.この波形は陸上部の地盤変化の測量結果を基にして作られたものであり津波波源としては精度がよいものとして考えられる.
1次元伝播計算に用いた波形は図ー1のA-A」断面に示したものである.計算では,簡単なため水深、4000mの水平床を仮定し,3600km(アラスカからハワイ諸島までに相当),5000km(メキシコまたは日本の三陸沿岸までに相当)の距離を伝播させている。津波波源での平均水深は約300mであるが,そこでの津波初期波長を用いて水深4000mの海域を伝播させた.周期が変わらなければ水深が深くなるにつれ波長は長くなる,この結果,本計算では計算誤差を厳しく評価していることになっている.
 線形長波理論をリープフロッグ法により差分化した計算結果を図一2に示す.この図では格子間隔2,5,10,20,50kmの種類について比較している、線形長波理論を計算の支配方程式に選んでいるのであるから本来ならば初期波形の半分の寸法のものが相似形を際って伝播するはずであるが,リープフロッグ差分の打ち切り誤差に起因する数値分散性のため図に示すような高波数成分が顕著に表われたものになる3).この数値分散性は差分格子間隔に比例して大きくなり,主峰の波高減衰を引き起こすものであることがわかる.この問題を回避するをこはでぎるだけ細かい差分格子間隔を採用すれば良いのであるが遠地津波の場合は広範囲な計算領域を対象とするため電算機容量,演算時間などの点で限りがある.したがって必要とする精度を満たす範囲で適正な格子間隔を定めることになる.例えば,誤差20%程度の精度を考えた場合には10km程度の格子間隔を採用すれば良いことになる.10km格子の場合,1波長当たりの分割数は約50個であり従来の研究結果で言われている20から30分割より細かいものとなっている.これは,図ー1に示したようにアラスカ津波は主断層と副断層の2重のものとなっており高波数成分を多く含む初期波形であるためである.
 2.2支配方程式の違いによる波形変化(水平床の場合) 津波の挙動を近似する理論としては線形長波理論,移流項を考えた浅水理論さらに分散項を考慮した非線形分散波理論が知られている.ここでは移流項と分散項重要性について検討する.特に,遠地津波を考える場合にはその伝播距離が長いため波数分散効果が重要となることが予想される.
 計算に用いた理論は線形長波理論,分散波理論である線形Boussinesqの式およびBoussinesqの式である.
線形Boussinesqの式はBoussinesqの式中の移流項を無視したものである.これら分散項を考慮した式の計算には陰解法による差分法を用いている、 図ー3に水平床上(水深4000m)での計算結果の一例を示す.図は計算誤差の影響を除くため,出来るだけ細かい格子間隔(DX=2.Okm)を用いて比較したものである.図から線形BoussinesqとBoussinesqの式を用いた計算の波形の差は小さく外洋伝播計算では移流項を無視してもかまわないことがわかる.しかし,予想したように波数分散の効果は重要であり無視することはでぎない.
 分散項の影響を詳しく調べるために主峰付近の波形を取り出し計算誤差が無視出来るところまで差分格子を細分化して計算を行なった結果を表一1に示す.この表は分割数と主峰の波高減衰の様子を表わしたものである.
線形長波理論では殆ど計箪誤差が表われない伝播距離でも分散波理論の波高は下がっており,この差は波数分散効果によるものであると考えられる.
 2.3 支配方程式の違いによる波形変化(海底地形の効果)
 図一4には分散項中の斜面の効果を調ぺるために,図中に示した簡単な台形の海底地形を持つ海洋を伝播する場合について分散項に斜面勾配の影響を考慮したPere-grineの式と考慮していないBoussinesqの式を用いた計算結果の比較を行なったものである.両者の差は小さく,分散項中の斜面の効果は無視出来ると結論づけられる.

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図ー1 アラスカ津波の波源域
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図ー2 格子間隔の違いによる波形変化(線形長波理論)
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図ー3 支配方程式の違いによる波形変化(DX=2km)
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表ー1 分割数による波高減衰
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図ー4 分散項中の斜面効果

3. 2次元伝播計算

 3.1 計算法
 前節の結果から遠地津波の計算には少なくとも線形Boussinesqの式を用いる必要があることが明かとなったが,ここでは2次元伝播計算の第一歩として線形長波理論を用いた計算を行なうことにより実用計算の問題点について考察する.
 計算に用いた方程式は,次式に示す緯度,経度座標で表わされたコリオリ項を含む線形長波理論である.
(1)
(2)
(3)
ここで,Rは地球の半径,(\phi,\lambda)は地球座標の緯度,経度,N,Mは各方向の線流量,\etaは水位,fはコリナリ因子を表わす.また,gは重力加速度であり,hは静水深である.
 差分法としてはリープフロッグ法を用い,格子間隔は緯度,経度各5分,時間間隔は10秒としている.計算領域は図ー5に示すように霞本近海からアリューシャン列島,ハワイ諸島を含みアメリカ西海岸に至るほぼ北太平洋沿岸全域としている.アラスカ津波の外洋伝播に関する計算はかつてHwang-Divoky4)によって行なわれたことがあるが彼らの計算と比較して本研究では2倍から4倍程度細かい格子間隔を用いていることになる.計算では天文潮位など津波以外の波動は一切考慮していない.また,地盤変動伝播速度の影響も考えていない.
 3.2計算結果
 計算結果の一例を図ー6に示す,図は津波発生後2時間と4時間の空間水位分布である.波源域では最高10m近い波高を有していたが外洋へ伝播していくと波高は低くなる.アメリカ西海岸に向かうものは30から70cm程度の波高となるが日本に向かうものは10cm以下である.実際にアラスカ津波の検潮記録を調べて見るとアメリカ西海岸で0.6から3.Om,ハワイ州で0.4から2.0m,日本沿岸で0,05から0.2mとなっており,この計算結果と定性的には一致している.図一7には先ほど示した空間水位分布を立体視化したものである.アメジカ西海岸での波高は高く,日本に向かうものは低い様子がよく分かる。
 図一8には津波発生後7時間までの津波伝播図を表わす.水深の違いにより場所的な伝播速度の違いが見られる.
Hwang-DivokyのRay-Tracing4)による結果(図ー9に示す)と比較すると,
津波は発生後5時間でハワイ島およびカリフォルニアに到達し7時間で日本の太
平洋沿岸に達しているといったように比較的良好な一致を示しているが,カムチャッカ半島やアリューシャン列島付近での伝播時間は本計算結果の方が30分程度遅れたものとなっている.
 本計算は外洋伝播を目的とした計算であるため,浅海域での変形や局地的な特性を考慮するには不十分である.したがって,検潮記録と直接比較し,厳密な定量的論議をすることは出来ないが,計算結果の定性的な妥当性は得られると考える.表ー2に到達時間および最大水位に関して計算結果と検潮記録5)との比較を『示す.ここでは,浅海域の最低水深を100mにおいているため,計算の到達時間は全般的にはやいものとなっている.
特に,アリューシャン列島やカナダのバソクーバー付近での差は大きい,これは水深分布の差や複雑な入江を持つフィヨルド地形によるものであろう.これらを除けば平均的な到達時間の差は28.9分(11.8%)であり,良好な計算結果であると考えることができる.
 最大水位に関しては全体的に計錦結果の方が低い値をとる,検潮記録を計算値で除することにより定義した誤差を各検潮所で求めると平均して1.41となる.
この値は予想していたものより小さく,本研究の外洋伝播の計算でもかなりの再現性を持つと思われる.ただし,アリューシャン列島や,ハワイ諸島(ヒロ,カウルイ)・などでは非常に値が高いものとなっている.アメリカ西海岸ではプラットウエルカー海領が続き比較的海底地形の変化が穏やかであるのに対してアリューシャンやハワイ付近では平均水深4000mから急激な勾配を持つことによると考える.そのため,この付近ではさらに.細かい計算間隔により津波の計算を行なう必要があると考える.

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式(1〜3)
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図ー5 計算対称領域の水深分布
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図ー6 空間水位分布
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図ー7 空間水位分布(立体視化)
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図ー8 津波伝播図(本計算結果)
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図ー9 津波伝播図(Hwang-Divokyによる)
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表ー3 検潮記録と計算結果の比較

4. おわりに

 本研究で提案した線形長波理論による2次元伝播計算では,7時間を再現するのに要した演算時間は約盆時間であった。今回用いた計算機(ACOS1000)はペクトル演算機能の点から見ると低級なものであるが,さらに効率のよい機械を使用すれば現在の1/10以下の演算時間で計算が可能である.
 津波の来襲前に波高を数値計算で予測することを考えるならば,遠地津波の場合には地震発生から沿岸に到達するまでにかなりの時問的余裕があるため数値予報の実現性はかなり高いと考えられる.一方,波高の精度について考えると,.伝播距離が長い遠地津波では波数分散効果が重要であり,今後この効果を考慮した2次元伝播計算を行なう必要があろう.

謝辞

水深データをアメリカ合衆国テキサスA&M大学Prof.Reld and Dr. Whitekerから提供して頂いた.ここに記して謝意を表わす.

参考文献

1) Ueno,Takeo: Numerical Computations for the Chilean Earthquake Tsunami, Oceanogr. Mag. Vol.17,Nos.1〜2,pp.86-94,1965.
2) Plafker,Georg: Tectonics of the March 27, 1964,Alaska Earthquake U.S. Geological Survey Professional Paper 543-1. Washington: Govemmeat Printing office.74 p,1969.
3) 今村文彦・後藤智明・首藤伸夫:リープフロッグ法による長波計算の誤差.地震学会講演会昭和60年春期大会, p.204,1985.
4) Hwng, Li-San and David Divoky: A Numerical Model of the Major Tsunami, The Great Alaska Earthquake of 1964, Oceanography and Coastal Engineering, National Academy of Sciences, Washington, D. C., pp.191〜210,1972.
5) Spaeth, M. G. and Berkeman, S. C.: The Tsunami of March 28, 1964, as Recorded at Tide Stations, ESSA Technical Report C&GS 33, Coast and Geodetic Survey Technical Bulletin No. 33, 1967.

1960年チリ沖津波に対する外洋伝播計算 今村文彦*・永野修美**・後藤智明***・首藤伸夫****

1.はじめに

 わが国は近海で発生した津波だけではなく,太平洋かなた遠くの地震に伴い生じた津波より被害を受けた経験を少なからず持つ.最も規模の大きいものとして,まず挙げられるのが1960年チリ沖地震津波であろう.過去の記録を整理すると,規模の差はあるにしろ太平洋では1.5年に1回の割合で,発生していることになる1).
この遠地津波に闘する研究は数多くなされているが,計算機能力や計算手法の問題から,太平洋全域を対象とする広域な数値計算例2)は極めて少なく,その精度についても疑問が残されている.
 本研究では,昨年のアラスカ津波に対する基礎検討結果3)を踏まえ,チリ沖地震津波の再現計算を行う.ここでは,2次元伝播問題において,地震初期伝播での断層運動の動的挙動の影響と,太平洋全域を含む外洋伝播計算による津波波形の再現性を調ぺる。特に,ハワイ諸島と並び被害の甚大であった日本沿岸での波形を出力し検潮記録値などと比較検討する事を通して,チリ津波の特性および遠地津波の数値計算を行う上での問題点を探る.このように,計算結果の有効性を調べる事により,本研究で提案する数値計算手法が,遠地津波に対する災害対策および災害予測の分野で重要な役割を果たすものと期待できる.また,地震波解析による断層パラメ一タを迅速かつ精度高く推定することが出来れば,来襲前に津波の高さを量的に予測することも訂能である.

*学生員 工修 東北大学大学院 工学研究科
**学生員   東北大学大学院 工学研究科
***正員 工博 運輸省港湾技術研究所 水工部
****正員 工博 東北大学教授 工学部土木工学科

2. チリ近海での挙動特性

 2.1 計算法
 著者ら3)はアラスカ津波を対象に,1次元伝播問題において遠地津波を数値計算する場合の,適正な支配方程式と空間格子間隔に関する検討を行った.その結果,支配方程式に関しては,移流項(非線形項)の効果は小さく波数分散項は重要である事,また分散項中の斜面の効果は無視できる事が分かった.さらに,水深が比較的深い外洋を対象とするため,摩擦項の影響も小さいと考えられる.従って,本数値計算では,次式に示す地球座標系の線形Boussinesqの式を用いる.また,2次元伝播での分散効果を調べるため,この運動の式中の右辺(分散項)を取り除いた線形長波理論の式による計算も実施することとする.
(式)
ここで,Rは地球の半径,(\phi,\lambda)は緯度,経度,N,Mは各方向の線流量,\etaは水位,fはコリオリ因子,hは水深,gは重力加速度である.

ただし,チリ近海での計算では,領域がそれ程広くなく,地球の曲率の影響が大きくない事から,直交座標系を採用している,次ぎに,空間格子間隔は緯度経度各方向10」を用いる.これはアラスカ津波における倍の間隔であるが,チリ沖津波波源の波長が長い事,チリ沖津波は1つの面での逆断層によるものであり,アラスカ津波に比較して高波数成分は少ない波源である事により,十分精度は得られると考える.
 波源の決定にはKanamoriら4),5)による長周期地震動記録から推定された断層パラメータを与え,海底地盤変動はMansinha-Smylie6)の理論を用いて算出している.
本数値計算では津波以外の波動成分は一切考慮していない.

 2.2 津波の指向性
 津波エネルギーの伝播には方向性があり,エネルギーの比較的強い所と弱い所が生じる.これが津波の指向性であり,津波の伝播特性を考える場合には重要な性質である.1960年チリ沖津波においては,波源の形状およびチリ沿岸での海底地形が,指向性を生じ易いものであったと言われる.波源形状が楕円形などで近似される場合,その短軸と長軸の比が大きく,また等深線が汀線に平行な海底地形に於ては指向性は大きくなる7),8).
 図ー1には津波発生50分後の数値計算による津波伝播の様子を立体視化させて示している.ちょうど,目本沿岸方向から津波発生50分後の様子を眺めていることに相当する.津波波源短軸方向に直な沿岸での波高が高い事,および図中白矢印の方向に進む約3m程度のピークを持つ波のエネルギーが卓越している事が分かる.津波がさらに広がった発生3時間後の空間水位分布を図ー2に示す.依然,チリ海岸に垂直な方向に,主要な成分が伝播し,その後方に静水位より低い部分が再現されている.

 2,3 立ち上がり時間・破壊進行速度の効果
 一般に,断層運動は瞬時に終了する訳ではなく,鉛直方向および水平方向にある有限な速度で破壊が債播する.鉛直方向の最終的な変位に到る所要時間を立ち上がり時間,水平方向の破壊速度を破壊進行速度と言う.日本近海で生じる中規模程度の津波では,この動的挙動の効果は小さく,変動が瞬時に終了するとしても大きな差は生じない.しかし,チリ沖津波の波源のように寸法が極めて大きい場合には津波の発生効率や津波波形に影響を持つであろうと予想される.この動的挙動の津波伝播に及ぼす影響について理論的解析7)や数値計算9)が行われているが,波源が理想的な形状であったり,海底地形が水平床や一様勾配であるとされ,実際の波源(断層モデルによるものである)や海底地形を用いた例は殆どない.
 ここでは,長周期地震動記録から推定された動的挙動を考慮した場合と,変動効果は入れず瞬時に断層が終了した場合の波形の差について調べる.チリ海岸の代表的な3点(図ー2に示すTalcahuano,Chiloe,Pto Alsen)に於て時間波形を出力し,比較検討する.断層運動はTalcahuano付近を震源とし,南西の方向に進行していつた.図ー3において,実線は動的挙動を考慮し,太い実線は考慮しない結果である.図から明らかな様に,震源に近いTalcahuanoでは波形の差は殆ど見られず,Chlloe, Pto Aisenと震源から遠ざかるにつれ,3分から5分程度の位相遅れが生じている.この遅れ時間は,破壊の到達時間より若干大きい値を持つ.一方,津波の振幅に関しての変化は小さい,従って,日本での影響を調べる場合には,津波の伝播時間が1日程度と非常に長いため,この数分でしかない動的挙動による差は無視できると考える.ただし,波源付近での挙動を調べるには,考慮すべきであろう.

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(式)
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図ー1 津波発生50分後の水位分布(線形長波理論)
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図ー2 発生2時間後の空間水位分布(線形Boussinesq)
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図ー3 動的挙動の影響

3. 太平洋全域における検討

 3.1 外洋伝播での結果
 外洋伝播計算には図ー4に示すようにほぼ太平洋全域を対象とし,支配方程式として線形長波理論と線形Boussineqの式を採用した. 
 図ー4は線形Boussinesqを用いた場合の計算結果であり,津波発生15時間後の空間水位分布である.また,図ー5は津波先端を1時間毎に描いた伝播図と各地の検潮所における最大振編(単位m)を示している.
 この津波先端の平面形状は,4時間程度まではほぼ同心円状に広がって行くが,その後カムチャッカ半島に向かう直線に近い形状となり,ハワイ諸島を越えた付近から反時計回りに少しずつ向きを変え,三陸海岸に平行となるようにして日本列島を目指す.この伝播特性は,主に水深分布に支配され,コリオリカの影響は小さいようである.太平洋全域として見ると,チリ海岸から日本列島に到る太平洋中央部付近で振幅は大きく,その周辺では1m以下になっている.また,チリ海岸の対岸であるアリューシャソ列島や臼本列島では2m以上の高い値を示している.これは,先ほど述べた指向性が大きく影響した結果である.
 次ぎに,長距離を伝播する場合の波形変化について詳しく調ぺるため,波源付近から目本近海までに到る測線上で,代表的な測点について時間波形を出力した.図ー6には,津波のピークが通過する測線上の4測点(図ー5中のA,B,C,D)での計算結果を示す.太い実線が線形長波理論,実線が線形Boussinesqの式によるものである.伝播に伴い,第1波の押し波の高さが低下し,その後方の引き波の大きさは増加して行く.この傾向は継続され,測点Dではさらに後方の第2波の押し波の高さが増幅している.この主たる原因は波動の分散性であり,長距離を伝播する過程で,短周期成分を遅らせ主要成分を長周期にする効果を持つ.また,太平洋各地に影響を及ぼすような津波は,地震の規模が大きく波源が広いために,発生する津波の基本的な周期が長い。こうした効果が重なった結果,近地での津波の周期は長くて20分程度であるのに対し,遠地の場合には短くて40分程度と,周期が非常に長いという遠地津波の特徴が現れるのである.
 さらに,図ー6中には最大振幅を数値と矢印で示している.測点AからBに齢いて振幅は減衰するが,測点C以降で逆に増加する.これは,ハワイ諸島付近で水深が浅いことによる凸レンズ効果が働き,波源から放射されたエネルギーがハワイ諸島を通過する辺りからまた集中され,振幅の増加に結び付いたという説を説明出来ると考える.
 さて,図ー6での線形長波理論と線形Bousslnesqの式による時間波形の差は小さく,この結果を眺めると分散項の効果はそれほど重要ではないと判断しかねない.しかし,線形長波理論による計算結果には,Leap-frog法による差分化に伴う打ち切り誤差によって数値的な分散性が導入されている.従って,数値的なものと物理的なものが同じ大きさの効果を持つ場合には,波形の差は小さく類似した結果となる.本計算例でも,線形長波の解に分散性があらわれて波形が変化するという図ー6の結果は,この数値分散性がたまたま線形Boussineqの式の物理的分散性と似た効果を有したからである.ただし,物理分散は水深に,数値分散は格子間隔に依存するという違いがあって,従って,平均的な効果を等しくする事は可能であるが,水深が変化する実際の地形では,全ゆる地点で両者の波形を一致させることは難しい.
 3.2 本計算モデルの再現性
 津波数値計算結果の再現性を検討するため,検潮記録や痕跡記録との比較が行われている。検潮記録値には検潮井戸の特性や局所的な地形効果が含まれていることに留意しておく必要がある.また,本計算では外洋伝播を対象としたモデルを用いており,細かい地形特性や浅水変形などの効果は十分考慮されてはいない.
 ここでは,まず検潮所に一番近い地点での波形を出力し,直接比較して見ることにする.空間格子間隔は10」(≒20km),水深100m程度の空間での平均的な波高と測定値の比較ということになる.表ー1には,到達時間および最大振幅の記録値10),11)および計算値を示す.
 まず,到達時間に関して,計箕値は10〜30分程度はやいが,ほぼ良好な一致を示している己津波先端での値が小さく到達の判断がしづらいために,1時間以上もズレている箇所もあるが,到達時間については十分な精度を持つと考えてよい.
 最大振幅の結果は複雑である.アラスカ津波では全般的に計算値の方が過小評価であったが,今回は記録値より大きい箇所や小さい箇所が存在する.また,地域による記録値との差は傾向を一つにしない.そこで,最大振幅に関して,津波数値計算における再現性の検討をよく用いられる相田12)の指標k,\kappaを算出してみよう.それぞれの指標は次式で与えられる.
(式)
kは全領域での平均的な計算値と記録値の比であり,\kappaはそのパラツキを表す.実際に表ー1から値を求めると,線形長波理論の場合k=1.121,\kappa=1.934,線形Boussinesqの場合k=1.141,\kappa=1.995となる.先ほど述べたように,記録値に対して計算値が過大,過小評価である箇所がほぼ同数であった事もあり,kの値は非常に1に近い値をとる良い結果となった.一方,\kappaは大きな値を示している.近地津波において比較的良好な計算例では\kappaは1.2から1.6程度の値である事を考えると,さらに浅海域での計算を行い精度を高めて比較することが必要である.

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図ー4 発生15時間後の空間水位分布(線形Boussinesq)
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図ー5 伝播図および各検潮所での最大振幅(線形Boussinesq)
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図ー6 外洋伝播における時間波形の変化
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(式)
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表ー1 計算結果と検潮記録の比較

4. 日本近海での検討

 日本近海の太平洋沿岸域における時間波形を出力し,図ー7に示すように,日本列島に沿った沖合いでの津波の最大振幅に関して計算値(実線)と記録値(点線)を比較した.ここで,記録値は検潮記録や痕跡記録で得られた高さを1/4倍して表現している,図から明らかなように,計算値は北海道および東北地方で比較的高く,東海地方以西では低いと言う傾向を呈しており,これは観測値の傾向と一致している.チリ沖津波は図ー5に示すように,ちょうど三陸沿岸に向かう形で来襲した.波高の地域的分布は,これに対応するものであろう.
 次ぎに,検潮記録との波形の比較を行う.3.2でも述べたように,水理フィルターの補正や浅海計算を行わずに,直接比較を行っても定量的な評価は出来ない.ただ第一段階として,計算モデルに対する定性的な是非の判断は出来るであろう.図ー8には,日本での代表的な検潮所に於ける計算結果と検潮記録を合わせて示している.なお,検潮記録は実際の観測値から潮位成分を除いていてある.尾鷲を除く4ケ所で,計算結果は比較的良好な一致を示す.計算による津波の到達時間が若干早いものの,主要な周期や第一波の押し波に続く引き波が大きく生じている特徴は,良好に再現されている.しかし,振幅の後方の波形に関しては,十分に表しきれていない箇所が多く,さらに検討が必要となろう.特に,検潮所周辺での地形特性を如何に取り入れるかが問題になると考える.
 このように,最大振幅や打ち上げ高さの場所的分布の傾向が比較的良く再現され,また波形も比較的良い一致を示すことが分かった.この外洋伝播の結果を入力として浅海計算を実施し,地形的要因をさらに詳しく詳細に取り入れるならば,チリ津波時の沿岸での実態を精度良く再現できることが期待される.

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図ー7 太平洋沿岸域での最大振幅
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図ー8 検潮記録との時間波形の比較

5. おわりに

 1960年チリ沖津波および1964年アラスカ津波の外洋伝播計算を実施したことにより得られた結論を以下にまとめる.支配方程式に関しては,線形Boussinesqの式またぱ線形長波理論が妥当なものである。ただし,線形長波理論における空間格子間隔の選定には十分注意が必要で,数値分散性が物理分散性と同程度になるように配慮しなくてはならない.空間格子間隔は,外洋伝播を対象とする限りにおいては,5」か10」で十分であり,計算の精度を高めるには沿岸域での浅海計算が不可欠となる.東北大計算機セソターNEC,SX-1を使用した計算時間は,実時間42時間分を再現するために,線形Boussinesqの式では45分36秒.線形長波理論で12分17秒を要した。従って,数値予報を考えた場合に,浅海域を接続して実行したとしても,津波来襲の以前に計算を終了出来る見込みがあり,十分実現性は高い.

参考文献

1) Berninghausen, W. H.: Tsunamis reported from the West coast of South American, 1562-1960, Bull. Seism. Soc. Amer., Vol. 52 No. 4, pp. 915921, 1962.
2) Ueno, T.: Numerical computations for the Chilean earthquake tsunami, Oceanogr. Mag., Vol. 17 Nos. 1〜2, pp. 87-94, 1965.
3) 今村文彦・後藤智明・首藤伸夫: 1964年アラスカ津波の外洋伝播計算,第33回海岸工学講演会, pp. 209- 213, 1986.
4) Kanamori, H. and J. J. Cipar: Focal process of the great Chilean earthquake May 22, 1960, Phy. Earth Planet. Interiors, Vol. 9, pp. 128---136, 1974.
5) Kanamori, H. and D. L. Anderson: Amplitude of the earth’s free oscillations and long-period characteristics of the earthquake source, J. Geophy. Res., Vol. 80 No. 8, pp. 10751078, 1975.
6) Mansinha, L. and D. Smylie: The displacement fields of inclined fualts, Bull. Seism, Soc. Amer., Vol. 61, pp. 14331440, 1971.
7) Kajiura, K.: Tsunami sauce, energy and the directivity of wave radiation, Bull. Earthq. Res. Inst., Vol. 48, pp. 835.--869, 1970.
8)三好寿:津波の指向性についての再考察(1),地震II第21巻,pp.121〜138,1968.
9) Aida, I.: Numercal experiments for tsunamis caused by moving deformations of the sea bottom, Bull. Earthq. Res. Inst., Vol. 47, pp. 849-862, 1969.
10) Takahashi, R. and T. Hatori: A summary report on the Chilean tsunami of May 1960, Report on the Chilean tsunami Field Investigation Committee for Chilean Tsunami. Dec. 1961, pp. 23〜34, 1961.
11) Symons, J. M. and B. D. Zetler: The tsunami of May 22, 1960 as recorded at tide stations, Preliminary Report, U.S. Dept. of Commerce, Coast and Geodetic Survey.
12) Aida, I.: Reliability of a tsunami source model derived from fault parameters, J. Phys. Earth, Vol. 26, pp. 57-73, 1978.

外海域における津波の高精度計算法に関する検討 佐山順二*・今村文彦**・後藤智明***・首藤伸夫****

1. はじめに

 津波の数値計算は,ここ10年間で飛躍的発展を遂げ,最大水位のみを対象とするなら誤差15%以内で計算できる.しかし,水位の経時変化や流況は,被害予測上重要であるにもかかわらず,最大水位ほどの精度が得られていない.この主な原因として考えられるのは,津波初期波形の精度,計算の支配方程式の精度および数値計算上の誤差,などである.
 津波初期波形決定は伝播計箕とは一見別間題のように思われるが,そうではない.すなわち,地震波からは波源の位置,広がり,水位に関する大まかな推定値のみが得られ,詳細な津波初期波形は,相田1)〜3)の一連の研究のように検潮記録と数値計算の比較から試行錯誤的に定められるからである.佐竹4)は検潮記録から津波初期波形を一意的に定めるイソバージョン法について研究している.いずれにせよ津波伝播計算を用いるため,伝播計算の精度が最終結果を大きく左右する.
 従来の津波数値計算の一例5)を図ー1に示す.これは昭和43年十勝沖地震津波の外海域に関するものである.
計算の支配方程式は線形長波理論で,リープフロッグ差分法を用いて3種類の差分格子で計算した結果を水深1000mの3地点の水位の経時変化で比較している.津波初期波形としては相田1)のモデルを用いている.図から判断できることは,主峰の水位に関しては大きな差が現れないが,主峰背後の分裂波列は差分格子の違いにより大きく異なったものとなることである.特に,主峰背後の分裂波列の波長には差分格子長に関係するという特徴がある.以上のことから,現状の津波数値計算は最大水位に関しては比較的精度の良い計算が可能であると考えられるが水位の経時変化については精度が劣るものと判断できる.
 本研究では,このような数値計算誤差の原因と考えられる数値計算の打ち切り誤差について検討を行う.そして打ち切り誤差が物理的な波数分散効果と同じ性質があることを利用した高精度計算法について提案する.
 まず,従来の外海域の津波計算に用いられてきたリープフロッグ法による線形長波計算に関する誤差解析を行い,計算の打ち切り誤差が数値的な分散性を有し,この打ち切り誤差を時空間の3階微分(∂^3/∂t∂x^2,∂^3/∂t∂y^2など)で近似的に表し得ることを示す.次に,この微分近似と物理的な分散項とが,係数は異なるものの微分の形は同じである事を利用して,物理的な分散効果を含みかつ数値的な分散効果を小さく抑えることのできる計算法を提案する.最後に,十勝沖地震津波を例にして従来の計算法による結果と本研究で提案する高精度法による結果を比較検討する.
 本研究で取り扱うのは非線形性が無視できる深海域の津波の伝播であり,微小振幅表面波の分散関係を真値としてよい場合である.

*学生員 東北大学大学院 工学研究科
**学生員 工修 東北大学大学院 工学研究科
***正員 工薄 運輸省港湾技術研究所 水工部
****正員 工博 東北大学教授 工学部土木工学科

2. 線形長波理論を用いた数値計算の誤差

 (1) 第一微分方程式近似
 先に,著者の一部6)は津波の一次元伝播問題における数値計算の打ち切り誤差に関する検討を行った.ここではこの誤差解析を二次元伝播問題に拡張する.
 従来の外海域の津波数値計算では以下に示す線形長波理論を用いている.
(式1)
(1)
ここに,(x,y)は水平座標,tは時間座標,\etaは水位,(M,N)は(x,y)の方向の線流量,C_0は線形長波の波速(\sqrt{gh}),gは重力加速度,hは静水深である.式(1)をリープフロッグ差分式にすると,
(2)
となる.ここに,(\delta x,\delta y)は(x,y)の方向の差分格子長,\delta tは時間差分格子長である.また,(j,l,n)は差分格子点番号を意味する.
 差分式(2)の第一微分方程式近似は差分式の各項をテーラー展開することにより導かれ,
(3)
で表される.ここで,式(1)に対し新たに加わった項は計算の打ち切り誤差の第1次近似を表すものである.
 第一微分方程式近似式(3)のt=0で\phi(x,y),∂\eta/∂t=0なる初期値の問題は,
(式2)
で表される.ここで,\delta x=\delta yで水平床の場合,波速Coは,
(式3)
となる.ここで,(k_x,k_y)は(x,y)方向の波数であり,k^2=k^2_x+k^2_y,K_x=C_0 \delta t/\delta yである.したがって,計算の支配方程式である線形長波の速度に比べ差分格子長に関係した波数分散性を有することがわかる.図ー1で示した計算結果の分散波列は以上のことから近似的ではあるが説明される.厳密には次のフーリエ級数解を用いる必要がある.

(2) 打ち切リ誤差解析
 ここでは水平床上の津波に関する差分式(2)のフーリエ級数展開による厳密解を考える.水位,線流量は格子点上で定義された離散的なものであるから,
(4)
なる展開を考えればよい。ここで,\bar{\eta}^n_{\alpha,\beta},\bar{M}^n_{\alpha,\beta},\bar{N}^n_{\alpha,\beta}は有限フーリエ係数であり,時間だけの関数である.また,J,Lは各方向の格子点数を意味する.式(4)を式(2)に代入しbar{M},\bar{N}を消去すると,
(5)
が導かれる.ここで,\omega_x=k_x\delta x/2,\omega_y=k_y\delta y/2である.
この式は,
(6)
で表される.したがって,差分式(2)の解は,
(7)
(8)
(9)  
で表される.ここに,C_Lは差分計算上の波速を表し,第一微分方程式近似のものと多少異なるが,やはり差分格子長に関係する波数分散効果を表すものである.
 図ー2はk/\delta x=h/\delta y=0.5,1,2の3種類に関して式(8)で表される波数と波速の関係を描いた一例である.
左図は線形長波の波速で無次元化された波速と差分格子長で無次元化された波数との関係を示している.\omega_x,\omega_y\pi/2が差分計算のナイキスト波数に相当する.
 右図は微小振幅表面波の波速C_sを真値と見なした場合の(C_s-C_L)/C_sで定義される誤差について調べたものである.h/\delta xが小さい場合には分散性も小さく線形長波の数値解は良好な結果が期待できることがわかる.一方,h/\delta xが大きくなると計算の精度が悪くなる.
 図ー3はh/\delta xを固定してK_x,K_yすなわち,\delta x,\delta yを変化させた場合について調べたものである,微小振幅表面波の分散関係は,伝播方向によらず一定で,無次元波数と無次元波速は同心円を描くはずであるが,数値計算では\delta x=\delta yの場合は軸と45°方向に分散性が弱いという性質があり,\delta x,\delta yが異なる場合はその比により分散性が弱くなる方向が変化する.軸方向の分散性は最も強く,他の方向は弱いという傾向を有する.この性質は図ー1の計算結果にも表れている.この計算では南北,東西方向の座標軸を採用しているが,地点1および3では分散性が弱く,軸方向である地点2では強いという結果になっている.

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式(1〜9)
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(式1,2,3)
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図ー1 差分格子の差による波形の違い5)
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図ー2 波数分散性(1)
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図ー3 波数分散性(2)

3. 高精度計算法の検討

 (1) 計算法
 線形長波理論のリープフロッグ差分に関する第一微分方程式近似(3)を線形長波の関係に比べ誤差を表す項が小さいものと仮定して書き換えると,
(10)
となり,物理的な分散項を含む線形Boussinesの式
(11)
に似た形となる。したがって,新たに次に示す式を計算の支配方程式に選べぽ,数値計算の打ち切り誤差を打ち消し,物理分散効果を考慮することができる.
(12)
ここで,
(13)
 以上の解析では,分散項中の斜面勾配の効果は無視できるものと仮定されている.長尾ら7)の計算結果から判断すると,斜面勾配1/20の場合,分散項中斜面勾配の影響は本来の分散項の5%以下である.
 式(12)をリープフロッグ形式に差分化すると,
(式1)
(14)
となる.この差分式を解くためには陰解法が必要とな
る.
 水平床上の初期値問題の場合,差分式(14)のフーリ
エ級数解は,先の線形長波の場合と同様に導くことがで
き,C_Hを波速とすると,
(15)
(16)
 ここで,C_Hは波速,その他は,以下の通りである.
(17)
図ー4はK_x=K_y=0.5の場合について無次元波数と無次元波速の関係を調べたものである.線形長波計算,線形分散波計算そして高精度計算の比較である.微小振幅表面波の波速を真値と見なしたときの誤差についても示してある.h/\delta xが小さい場合は線形長波計算でも精度が良く大きな差はみられない.h/\delta xが大きい時には高精度計算の方が精度が向上している.また,線形長波計算には先に述べたように方向特性が強く残っているが,高精度計算ではこの問題に関しても改善されている.線形分散波計算は高精度計算の分散項の係数を,
(18)
と置いたものに相当する.線形分散波計算は高精度計箪に比べあまり精度が劣るものではないが,係数が多少異なるものの分散項の形は同じであり,これも陰解法を必要とするのであるから,単に式(18)で表される係数を用いるより式(13)の高精度計算の係数を用いた計算の方が良いと思われる.図ー5は3種類の計算法の波速Cに関する誤差を,
(19)
の形で平均化して見たものである.斜線の部分は計算の不安定領域を示す。安定領域は,
(20)
で判断できる.

 (2) 計算例
 まず,一次元伝播問題に関して高精度計算の精度の検討を行う.図ー6は水深5000mの水平床上の長波の伝播を例にして微小振幅表面波理論解,線形長波計算,高精度計算の結果を比較したものである.初期波形には十勝沖地震津波の代表的な一次元断面波形を採用した.差分格子は5.4kmである.線形長波計算の主峰は真の解とほぼ一致するが,主峰背後の分裂波列は真値と見なしうる微小振頓表面波の解之位相がずれている。一方,高精度計算は微小振幅表面波の結果と良く一致している.
 次に,二次元伝播計算結果を示す.図ー7および図ー8は十勝沖地震津波を対象として計算した例である。
図ー7は水深5000mの水平床を仮定したもので,図ー1に示す3地点での水位の経時変化である.図(a)が線形長波計算,(b)が高精度計算の結果である,差分格子長としては5.4kmと10.8kmの2種類で計算している,線形長波計算では差分格子長の違いで水位の経時変化に差が見られるが,高精度計算の方は差が少ない.
 図ー8は実地形に関する高精度計算結果の一例である.実水深では水平床を仮定した場合に比べると差分格子長の違いによる差が大きくなる.これは,本研究で検討した高精度計算法では分散項中の斜面勾配の影響をまったく考慮していなかったこと,浅水変形により波長が短くなり相対的に誤差が大きくなったことが理由として考えられる.
 東北大学大型計算機センターのスーパーコンピュータSX-1を用いた計算時間は,差分格子数90×130,時間ステップ数400で,線形長波計算の場合15sec,高精度計算の場合49secであった.

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式(10〜20)
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(式1)
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図ー4 波数分散性(3)
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図ー5 波数分散性(4)
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図ー6 理論値との比較
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図ー7(a) 線形長波計算結果(水平床)
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図ー7(b) 高精度計算結果(水平床)
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図ー8 高精度計算結果(実地形)

4. おわりに

 得られた主要な結論は以下のとおりである。
(1) 従来の線形長波の式を用いた計算は,数値的な分散性を有し,計算上の波速は式(8)で表される.
(2) 物理分散性を含みしかも数値分散性を小さく抑えた高精度計算法の支配方程式は式(12),その差分式は式(14)である.また,計算上の波速は式(16)で表される.
(3) 水深数千メートル程度の深海域において,高精度計算の波速は従来の線形長波計算のものに比べ真値(微小振幅表面波の解)に近い.この計算によれば津波伝播計算の縞度向上が見込まれるこ,とがわかる.
(4) 本研究で提案した高精度計算法は津波の分散性を精度良く表現できるひとつの手法である.詳しい被害予測や津波初期波形を求めるインバージョン法など,伝播の精度を必要とする諸問題に対して,有効な手段といえる.

謝辞

本研究の一部は文部省科学研究費(自然災害特別研究代表東北大学工学部教授首藤伸夫)によった.

参考文献

1) Alda,I.: Reliability of a tsunami source model derived from fault parameters, J. Phys. Earth, Vol.26, pp.57〜73,1978.
2) 相田勇:1944年東南海地震津波の波源モデル,地震研究所彙報,Vol.54,pp.329〜341,1979.
3) 相田勇:1983年日本海中部地震津波の波源数値モデル,地震研究所彙報, Vo1.59,pp.93〜104,1984,
4) 佐竹健治:日本海洋学会春期大会講演要皆集,p.376,1986.
5) 佐山順二・後藤智明・首藤伸夫:外海域における津波高精度計算法,東北支部年講,pp,54-55,1986.
6) 今村文彦・後藤智明:差分法による津波数値計算の打ち切り誤差,土木学会論文集,第375号/II-6,pp.241〜250,1986.
7) 長尾昌朋・後藤智明・首藤伸夫:非線形分散波の数値計算,第32回海岸工学講演会論文集,pp.114-118,1985.

現地で簡単にできる波浪推算法について 後藤智明*・小舟浩治**

1. はじめに

 現在,波浪推算は,波浪による港湾災害の究明および港湾構造物の設計波浪の算定などの目的で行なわれている.その他に,波浪推算が適用可能なものとしては,港湾工事の工程管理のための波浪予測や波浪観測結果の補完などが考えられる.このような波浪予測,観測値の補完を目的とした推算では,精度の向上のため観測値で推算値を補正しつつ計算を実施していくことを考えなけれぽならない.したがって,現場または観測点ごとに異なった計算を実施する必要がある.しかしながら,現状では,比較的容易に計算できる手法が開発されておらず,従来の推算システムを用いると経費が多くかかるなどの問題が残されていた.そこで著者らは,工事現場または観測担当事務所等で比較的簡便に波浪の推算が可能なシステムについて研究している.
 本論文では,一連の研究の手始めとして,パーソナルコンピューター程度の計算機を対象とした波浪推算法について検討した結果を報告する.
 ここで提案する推算手法は,スペクトル法とパラメタ法の2種類である.波浪の発達・伝播過程のモデル化としては,スペクトル法が磯崎・宇治1)が開発したMRI法を修正したものであり,パラメタ法がWilsonの発達式をエネルギー平衡方程式に組み入れたものである.両者ともに,山口ら2)が一点法と名付けている方法,すなわち計算対象地点に到達する各成分波の波向線上における計算を通し対象地点の波浪の経時変化を求める形式を採用している.また,計算の高速化をはかるための方法としては,計算に必要な種々の関数をあらかじめ数表として計算機に記憶する方法を用いている.
 計算精度に関する検討では,強風域が推算地点上を通過する場合および100km程度東西にずれる場合の3種類の台風による波浪について,実測値と計算値の比較を行なっている.

*正会員 工博 運輸省港湾技術研究所海洋水理部主任研究官
**正会員 工修 運輸省港湾技術研究所海洋水理部海象調査研究室長

2. 波浪推算法

 (1)スペクトル法
 現在,提案されているスペクトル法による波浪推算モデルとしては,わが国で開発されたものに限定しても,井上,MRI,MRI-ⅠⅠ,山口・土屋,東北の合計5種類のモデルがある.本研究では,気象庁の波浪予測業務または港湾施設の設計波の算定に長年利用されてきたという実績があるという理由からMRI法を選び,山口らの言う一点型のモデルに修正する.
 図ー1に示したように任意の一地点へ襲来する波浪の波向線に一致する座標系を採ると,波浪スペクトルSの発達・減衰・伝播を表す方程式は
(1)
で表される.ここに,C_gは群速度を意味し,Fは外力項である.外力項は,波向と風向のなす角\thetaと平衡スペクトルS_{PM}との関係から
(2)
と記述される.ここに,A,Bは井上3)の定式化した発達係数,Dは減衰係数,fは成分波の周波数,\lambda(\theta)は方向分布関数である.また,平衡スペクトルS_{PM}としてはPierson-Moskowitzスペクトルを仮定している.
 式(1)に基づく伝播計算には,演算速度が速いことおよび方向・周波数の離散化が比較的粗いときに高精度なスキームを用いるとエネルギーの集中化をもたらす場合がある4)ことから風上差分を用いている.
 以上の説明で明らかなように,外力項の定式化は従来のMRI法と同じであり,特にパーソナルコンピュータの利用を前提とした顕著な修正を行なっていない.ただし,後述のように従来のものに比べ大幅に演算時間を短縮できた理由は,一点法を採用することにより計算点数を少なくしたことと,発達・減衰の過程の計算に必要な種々の関数を全て離散化し,データ化して取り扱う手法を採用したことによる。
 (2) パラメタ法
 スペクトル法に比べ演算時間が短いと思われるひとつの方法にパラメタ法がある.通常のパラメタ法は風波のスペクトル形に関して何らかの相似性を仮定し,その少数のパラメタの発達・減衰を追跡するものである.
 ここでは,先に述べた一点型のMRI法に比べうねりに関する計算精度が劣るものの演算速度が速いパラメタ法による新しい推算法について述べる.この推算法は,Wilsonの式を変形したものをエネルギー平衡方程式の外力項として用いていたものであり,井島,堀川らにより開発された有義波法に近い計算手法である.
 波浪の発達に関するWilsonの式は,無次元波高,無次元群速度,無次元フェッチをそれぞれH_*,C_*,F_*とおくと,
(3)
(4)
と表される.ここに,H_{1/3},C_g,Fをそれぞれ有義波高,有義波周期に対応する群速度,風速,フェッチとし,重力加速度を9とすると,H_*=gH_{1/3}/U^2,C_*=C_g/U,F_*=gF/U^2である.
 いま,波浪の無次元エネルギーをE_*=H_*^2/16(E=H_{1/3}^2/16)と定義し,さらに風向きによる波浪の発達状況を規定するものとして方向分布関数\lambda(\theta)を導入し,式(3)をフェッチの変化による波浪エネルギーの増分を表するみのに書き換えると
(5)
となる.一方,群速度に関しては,風向きによらず発達するものと仮定して,同様な書き換えをすると
(6)
となる.ここに,a_1=1.80×10^{-7},a_2=5.85×10^{-7},\bar{E}_*=[177,8E_*/lambda(\theta)]1/2,\bar{C}_*=1.46C_*である.
 さらに,式(5),(6)にd/dt=dF/dF/dt d/dFの関係を用いると,Wilsonの発達式は次式で表される.
(7)
(8)
この式(7),(8)がパラメタ法の基礎式となる.
 風波の発達の限界は,E_*,またはC_*,が1以上になった時点,すなわちF_*が有限値とならない時で,この場合は全てのエネルギーが風波からうねりへ移行するものと考える.うねりになった波浪は次式で減衰するものとする.
(9)
(10)
ここに,D」およびD」」は係数でBretschneiderのうねりの減衰式に見合うようにそれぞれ0.9×10^{-2}および0.8×10^{-2}と定めている.
 以上のように計算されるパラメタ法は,周波数を20成分程度分割し計算するスペクトル法に比べ,2個のパラメタの変化を追跡するため,原理的には1/10程度の時間で計算が可能であると推定できる.

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式(1〜10)
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図ー1 計算格子

3. 推算結果

 (1)計算法の違いによる推算結果の差
 ここでは,台風8013号の襲来に伴う高知沖の推算例を用いて計算法の違いによる推算結果の差を調べる.図ー2に示した経路図で明らかなように,この例は,推算地点の真上を台風の強風域が通過している場合である.
 検討した推算ケースを表ー1に示す.表には,計算条件および最大有義波出現時の推算波高と周期について実測値との比で定義した推算精度が記載されている.また,ケース1〜5に関して推算有義波の経時変化を実測値と比較したものが図ー3である.
 表ー1に示した推算ケースのうちケース1〜4は,格子幅43,周波数分割幅\delta f,方向分割幅\delta\thetaをそれぞれ100km,0.01Hz,22.5°に固定して,推算モデルを変えた場合の例である.波モデルのSMRIおよびSLTPは,本論文で提案した一点型のスペクトル法およびパラメタ法をそれぞれ意味する.また,方向分布関数の違いによる推算結果の差についても検討しており,方向分布関数形としてcos^2\theta則およびcos^4\theta則の2種類を比較している.なお,風モデルとしては,藤田の台風モデルを用いている.
 ケース5のMRIは,面的に推算する従来型の推算であり,この場合の風推算モデルはCardonの方法を用いたものである.
 表および図から,SMRI法,SLTP法ともに,面的に波浪を推算するMRI法に比べ遜色ない結果が得られ,かつ実測値と比較的良好な一致を示すことがわかる.ただし,有義波の立ち上がりの部分の周期はSLTP法の結果が実測値に比ぺて著しく小さく,うねりの取り扱いに関しては何らかの修正が必要とする.また,方向分布関数としてcos^4\theta則を選ぶとcos^2\theta則に比べ有義波高がSMRI法,SLTP法ともに多少大きめの結果となる傾向も読み取れる.
 最大有義波高出現時の周波数スペクトル形について,実測値とSMRI法の推算値を比較したものが図ー4である.推算値が実測値に比べ低周波側に多少ずれるが,良好な一致を示していると考えられる.図ー5は最大有義波高出現時の波浪エネルギーの方向別割合についてSMRI法とSLTP法の2種類の推算結果を比較したものである.若千の差があるが良好な一致がみられる.
 ケース6〜11は,台風8013号の高知沖の推算に関して,方向分布関数をSMRI法がcos^2\theta則とし,SLTP法がcos^4\theta則に固定して\delta s,\delta f,\delta \thetaを変化させた場合の比較である.SMRI法では,\delta fを細かくした方が大きめの推算値となり,\delta \thetaを細かくすると逆に小さめの結果となることがわかる.\delta \thetaを細かくすると推算結果が小さくなることは,一見奇異に思われるが,これは\delta \thetaが細かくなると推算点に向かう計算rayと方向が一致する場合が少なくなり,MRI法では,風向きが変化すると元の風向き成分の波浪エネルギーが急に小さく評価されるからである。\delta sの変化に関しては,\delta s=100kmのケース1が50kmおよび200kmに比べ良好な結果となる.これは,格子を細かくすると計算の安定性から時間間隔を同時に細かくする必要があり,時間間隔を細かくすると最大風速の作用時間を短く評価することになったり,また格子が粗いと最大風速出現地点を取りこぼすことが大きな理由である.SLTP法についてもSMRI法と同様なことが言える.ただし,\delta \thetaを細かくした場合は,SMRI法の結果と逆に大きめの推算結果となる、これは,先に述べたMRI法に比べ風向きの変化が急に推算結果に作用しない方法が採られているためである.
 以上の推算ケースの中で代表的な,ケース1,4,5について演算速度の比較したものが表ー2である.使用した計算機は,パーソナルコンピュータのNEC PC9801VXと東芝J3100SGTおよび汎用大型計算機NECACOS1000である.NEC PC9801VXは日本全国に普及している16ビットの計算機で,東芝J3100SGTは最近開発されたラップトップ型の32ビットのものである.
演算時間の比較は,風計算を含め約5日分(時間ステップ126)の計算を実施した場合である.通常の16ピットの計算機を用いても,ここで提案した一点型の2種類の推算法はSMRI法で約7分,SLTP法で1分強と非常に短時間で実施でき,先に述ぺた波浪予測または観測結果の補完のための道具としては将来性のある手法であると考えることができる.また,表では,ケース12としてSMRI法で計算に用いる各種関数をデータ化せず,推算計算の各段階でその都度計算する手法を採った場合のものとの比較もなされている.この場合は,ケース1に比べ推算結果が1〜2%程度大きめになるが,演算時間は約6倍となる.
 (2)他地点への適用例
 台風8712号,8719号の来襲に伴う油津の波浪推算を実施し,有義波の経時変化について実測値と比較したものが図ー6である.台風8712号の強風域は図ー2の経路図で明らかなように推算地点の西方を通過し,台風8719号は東方を通過している.どちらの台風も波向は異なるが,うねりが推算点に到達し,その後風波が来襲した例である.
 計算法としては,SMRI法が\delta s=100km,\delta f=0.01,\delta \theta=22.5°,cos^2\theta則を用い,SLTP法が同じ、離散幅のcos^4\theta則である.風計算には,Myersの方法を採用している.
 図から,SMRI法による結果は周期的に多少難があるものの波高の再現精度がよく,現場で簡単にできる推算手法としては比較的良好な精度を有するものと考えられる.一方,STLP法については,うねり性の波浪の周期を非常に小さく評価した結果となっている.先に述べたように,今後何らかの修正が必要である.

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図ー2 台風の経路
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図ー3 計算例(その1,台風8013号,高知沖)
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図ー4 周波数スペクトルに関する比較
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表ー1 推算ケース(台風8013号,高知沖)
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図ー5 方向別波浪エネルギーに関する比較
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図ー6 計算例(その2,台風8712,8719号,油津)
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表ー2 演算時間の比較

4. 結 論

 本研究では,パーソナルコンピェータを対象とした2種類の推算法を提案し,推算精度の検討を行なった,得られた主要な結論を挙げると以下のようになる.
1. 磯崎・宇治が開発したスペクトル法による波浪推算手法を一点法に容易に修正ができる.
2. 新たに提案したパラメタ法の計算は,発達式にWilson式,うねりにBretschneider式を用いているため,有義波法に近い計算結果を与える.ただし,有義波法はLagrange風に波浪を追跡するのに比べ,この方法は波向線に沿った波浪を追跡するため波向別の波浪エネルギーを計算できるという特徴を有する.
3. 計算の高速化に関しては,計算に必要な種々の関数をあらかじめ数表として計算機に記憶する方法を採用すると演算時問を大幅に短縮することができる.
4. パーソナルコソピューター(NEC PC9801VX)を用いて試算した結果,5日分の計算を台風モデルによる風場計算を合わせてスペクトル法が450秒,パラメタ法が80秒で計算が終了した,したがって,本研究で提案した2種類の波浪推算法は現地で比較的容易に演算可能な方法ということができる.
5. スペクトル法およびパラメタ法を用いた計算結果は,うねり性の波浪に関しては精度が劣るものの,波高は実測値によく合致し,従来の面的に計算するものに比べ実用上遜色のない計算が可能であることが明らかとなった.

謝辞

本研究を実施するにあたり,港湾技術研究所海象調査研究室末次広児研究員,気象協会関西本部森田務氏および沿岸海洋株式会社青木克己氏の助力を得た.ここに記して謝意を表す.

参考文献

1) Isozaki,I.and T. Uji: Nurnerical prediction of ocean wind waves, Papers in Met. and Geophys.,Vol.23(4),pp.347〜359,1973.
2) 山口正隆・畑田佳男・宇都宮好博:一地点を対象とした浅海波浪推算モデルとその適用性,土木学会論文集,第381号/ⅠⅠ-7,pp.151〜160,1987.
3) Inoue, T.: On the generation of the spectrum of a wind generated sea according to a modifed Mlies-Phillips mechanisms and it appllcation to wave forecasting, Dept. of Met. and Oceanogr., New York Univ.,TR-67-5,74p.,1967.
4) 後藤智明・小舟浩治・佐藤勝弘:波浪スペクトルの伝播に関する計算誤差の検討,土木学会論文集(印刷中)

日本沿岸の波候特性について 小舟浩治*・菅原一晃**・後藤智明**

1. はじめに

 わが国沿岸の波浪特性を把握する目的で,運輸省港湾局関係機関は,昭和45年から統一的技術基準に則した集中処理による沿岸波浪観測を継続的に実施している。
 本研究では,昭和45年から昭和59年の15年間に取得された実測データをもとに処理・解析を行い,日本沿岸の波候特性をとりまとめた結果を報告する.研究の具体的な内容は,沖波としての種々の波浪特性を全国沿岸分布図の形にとりまとめることにより,わが国の沿岸波浪の各種統計量の把握および海域別の波浪出現特性の相違を明らかにすることである.
 同種の研究としては,高橋・広瀬ら1)・2)により10年間の波浪観測結果に基づく成果がある.しかしながら,当時は,観測地点数,データの蓄積量が少なく,波高計の機種の差や観測水深の違いが考慮されていないという問題点が残されていた。本研究の特徴は,その後5年間を加えてより長期の観測データを用いていることと,大水深でかつ表面波を直接測定した観測データを使用することにより,精度を均質にした波浪特性を沿岸全域について統計解析している点にある.

*正会員 運輸省港湾技術研究所海洋水理部 海象調査研究室長
**正会員 運輸省港湾技術研究所海洋水理部 主任研究官

2. 波浪観測結果の整理事

 沿岸波浪の観測地点は昭和59年時点で40か所にのぼるが,’観測の経緯があって,それぞれの観測地点では機種,水深,位置などの変更があり,また局所的な海岸地形が大きく影響する地点も含まれている.そこで本研究では,表面波を直接測定する水深40m以上の観測地点でしかも外海に面している15地点を選び解析した。
 解析内容としては,種々の波浪特性に関する全国沿岸分布図を作成することにより,平均有義波の月別変動,波高・周期の結合分布,未超過出現率,および気象擾乱別の最大有義波について観測地点ごとの類似性または違いを明らかにし,わが国に来襲した波浪の海域別特性の検討である.
 本論文では紙面の関係で割愛した資料が多く,説明が十分にゆきとどかない事項もある.詳しい統計資料は,沿岸波浪15か年統計資料3)を参照願いたい.

3. 波浪特性に関する沿岸分布図

 (1)月別平均有義波
 毎偶数時(1観測20分間)ごとに得られた有義波高および周期を月別に平均し沿岸分布図としてとりまとめたものを図ー1に示す.測得データ年数は,各地点まちまちであり,最も短い高知沖が約4年で,最も長い苫小牧が14年である.ここで測得データ年数とは,測得された回数を年間の規定観測回数で除したものを指している.
 日本海沿岸の平均有義波の月別変動は,冬期が高く夏期が低い形になり,変動が比較的小さい太平洋沿岸に比べ,著しく異なることがわかる.太平洋沿岸南西部は春期・秋期に高くなる傾向があり,これは低気圧および台風の通過頻度が多くなるためと思われる.房総半島を境とした太平洋沿岸北東部は,南西部ほどの変動がなく,年を通じほぼ一定の波高・周期となる.東シナ海に面した名瀬・那覇は,目本海沿岸の月別変動に比べ夏期と冬期の差が小さくなり,日本海沿岸と太平洋沿岸の中間の性質があることがわかる.紋別の月別変動は,日本海沿岸に比較的近いが,春期から夏期にかけて多少大きくなる傾向がある.ただし,オホーツク海沿岸は1月から3月が流氷の漂着期間である.
 具体的な数字としては,日本海沿岸の冬期が波高2拠前後,夏期が0.5m程度で,年平均値が1m強となる.周期は,冬期が7s前後,夏期が5s前後であり,年平均値が5〜6s程度となる.太平洋沿岸は南西部に比ぺて北東部の周期が多少小さめであるが,平均すると年をとうして7〜8s程度と日本海沿岸より長い.波高は冬期が1m弱,夏期が1〜1.5m程度となる.東シナ海沿岸は,日本海沿岸と傾向が似ているが,冬期が1〜1.5m,6〜7s,夏期は1m弱,5〜6s程度である.
 (2)波高と周期の結合分布
 全観測期間の有義波高と周期の結合分布形状を描いたものが図ー2である,この図から,先に区分したそれぞれの海域の特性を比較することにする.
 最も顕著な特徴を有する分布形は,日本海沿岸でみられ,波高と周期の相関が高く,波高が増大するにつれて周期も長くなる傾向を示す.ただし,日本海沿岸北部あるいは浸本海沿岸南西部については,北あるいは南にゆくに従って,波高が小さくても周期の長い波が出現しており,だんだん直角三角形に近い形状になる.一方,太平洋沿岸は波高と周期の相関が小さく,円形に近い分布形状となる.特に,太平洋沿岸南西部はこの傾向が強く現われている.オホーツク海沿岸は太平洋沿岸に,東シナ海沿岸は臼本海沿岸の特性に近い分布を示している.
 図ー2に示した結合分布図には,波形勾配(H_0/L_0)が0.01,0.02,……,0.05となる場合の波高と周期の関係を点線により描いてあるが,日本海沿岸では波高が大きくなるにつれて,H_0/L_0=03〜0.04に近づいてゆくようである.一方,太平洋沿岸はうねりを含む波浪が多いため,このような顕箸な傾向は見られない.

 (3) 有義波の未超過出現率
 有義波高および周期の出現分布を近似するため,ワイブル分布あるいは対数正規分布へのあてはめがよく行なわれる.ここでは,ワイブル分布への適合度に関して海域ごとの違いの有無を調べるため,図ー3に示す有義波高および周期の未超過出現率の沿岸分布を取り上げる.
 日本海沿岸および東シナ海沿岸の波高に関しては,、確率紙上に直線状に分布する傾向がありゴワイブル分布への適合性がよいと言うことができる.太平洋沿岸に関しては,波高が大きくなるにつれ,曲線の勾配が小さくなり適合性があまりよいとは言えない.周期についても波高の場合と同様な傾向が見られるが,波高ほど顕著な傾向は見られない.
 また,海域別の未超過出現率に関しては,以下のことがわかる.すなわち,波高1m未満の出現率は,日本海沿岸,東シナ海沿岸で約60%,太平洋沿岸では波浮の30%を除くと70〜85%程度,オホーツク海沿岸では70%程度となる.また,0.25m未満の静穏と考えられる波高の出現率は太平洋沿岸で3%未満の地点が多く,太平洋沿岸にはうねり性の波が比較的高い頻度で来襲していることを示唆している.
 (4) 気象擾乱別最大有義波
 日本沿岸に高波をもたらす気象擾乱としては,台風,日本海低気圧,冬期気圧配置,南岸低気圧,二つ玉低気圧,前線性低気圧などが考えられる.これらの気象擾乱をA:台風B:日本海低気圧および冬型そしてC:南岸低気圧および二つ玉低気圧の3種類に大きく分け,図ー4に示す擾乱別の既往最大有義波高および周期の沿岸分布から海域別の特徴を整理する.
 各地点の最大有義波は,太平洋沿岸南西部で最も大きく,波高が8〜10m程度,周期が13〜15sである.いずれも台風による高波であり,他の擾乱時より顕著に大きい.東シナ海沿岸も台風による高波が最大となっているが,太平洋沿岸南西部に比ぺて小さく,波高7m,周期10s程度である.日本海沿岸は,3種類の波高,周期にあまり差はないが,日本海低気圧の通過あるいは冬型気圧配置による高波が大きく,波高7m,周期10s程度となる.太平洋沿岸北東部は,二つ玉低気圧による高波が最大となっており,波高が6m程度である。オホーツク海沿岸は,目本海沿岸と同様に冬型気圧配置で波高7mが起こっているが,日本海沿岸に比べ周期が13sと長い.

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図ー1 月別平均有義波および年平均有義波
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図ー2 有義波高と周期の結合分布(通年)
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図ー3 有義波高と周期の未超過出現率
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図ー4 気象撹乱別の既往最大有義波

4.結 語

 本論文では,沿岸波浪観測結果から4種類の統計解析資料を用いて,全国沿岸を網羅するようにして15地点を選び,わが国沿岸に来襲する波浪の海域分類および海域別特性の把握を試みた.得られた主要な結論としては,以下の事項が挙げられる.
 1. 各種波浪特性の統計解析から判断すると,わが国沿岸は日本海沿岸,東シナ海沿岸,太平洋沿岸南西部,太平洋沿岸北東部そしてオホー一ツク海沿岸の5種類の海域に分類することができる.
 2. 月別有義波の変動の形は,日本海沿岸は冬期に高く夏期に低いU宇型,太平洋南西部は春期・秋期に小さなピークを持つM字型,北東部は年を通じ変動の少ない一定型,オホーツク海沿岸は冬期および初夏に大きいW字型そして東シナ海沿岸は日本海沿岸と太平洋沿岸南西部の性質が合わさった分布となる.
 3. 累年平均有義波の波高・周期は,日本海沿岸では1m強,5〜6秒とほぼ一様である.一方,太平洋沿岸南西部では,波高は0.5〜1.5mの範囲にあり,太平洋沿岸北東部で多少小さめである.また,周期は7〜8秒で,日本海沿岸より長い.
 4. わが国沿岸に高波を発生させる気象擾乱を整理した結果,台風による波高が最大となる海域は太平洋沿岸南西部および東シナ海沿岸,冬型の気圧配置はナホーツク海沿岸および碍本海沿岸,二つ玉低気圧は太平洋沿岸北東部である.
 5. 10年間の統計資料1),2)との比較では,月および年平均有義波は波高・周期ともほとんど差が見られない.
既往最大有義波では,10年間の最大値を大幅に更新したのは波浮を含む太平洋南西部の地点である.
最後に,本論文において用いた波浪観測資料は,港湾局,第一〜第五港湾建設局,北海道開発局,沖縄総合事務局および港湾技術研究所の長年にわたる協力により得られた成果である.関係各局に対して深謝する.

参考文献

1) 高橋智晴・広瀬宗一・菅原一晃・橋本典明: 波浪に関する拠点観測10か年統計(昭和45〜昭和54年),港湾技研資料,No.401,711p.,1981.
2) たとえば,広瀬宗一・高橋智晴: 観測結果に基づく沿岸波浪の出現特性,昭和57年度港湾技術研究所講演会講演集,pp.1〜55,1982.
3) 菅原一晃・小舟浩治・佐々木弘・橋本典明・亀山豊・成田明: 沿岸波浪15か年統計(昭和45〜昭和59年),港湾技研資料,No.554,872p.,1986.

大阪湾の風と風波の関係 後藤智明*・末次広児**・小舟浩治***

1. はじめに

 スペクトル法による波浪推算モデルは,波浪の発達・減衰に関してより詳細にモデル化できる可能性があること,またうねりの取り扱いが比較的容易であることなどから,数多くの研究がなされ種々のモデルが報告されている(SWAMP group,1985).しかしながら,推算モデルの基本となる波浪の発達・減衰に関する力学的機構は未だ十分に解明されておらず,これらの推算手法はすべて実測値に基づいた定式化がなされていることも事実である.また,現状の推算モデルの多くは,北大西洋の波浪観測結果に基づくものであり,台風や強い季節風を主要因とする我が国沿岸の波浪特性に合致するものであるかどうかわからない.したがって,風と波の間の力学的機構を完全に理解することが難しい現段階においては,少なくとも我が国沿岸で観測された資料により推算モデルを検証すべきであり,また我が国特有の波浪特性を組み入れたものに修正していくことが必要であると思われる.
 また最近,波浪の発達に関しても非線形性が重要であることが認識され,風波とうねりを分離しそれぞれパラメータおよびスペクトルで扱うハイブリッドパラメータ波浪推算モデルが各国で研究されるようになってきている(SWAMP group,1985).この背景のひとつに発達,非線形相互作用,砕波による減衰を個別に扱うスペクトル法による波浪推算モデルを検証するためにはより精密な波浪観測が必要不可欠であるという問題があるためと思われる.少なくとも風波に関しては現状のパラメータ法でもスペクトル法と同程度の精度を有すると考えられており,実務に利用される頻度も高い.したがって,モデルの構築・検証が比較的簡単なパラメータモデルを観測資料で高精度のものに順次改良していくことが工学的により重要であると思われる.
 以上のような理由により本研究では,我が国の波浪特性に合致するハイブリッドパラメータ波浪推算モデルの開発研究の第一段階として,大阪湾で観測された資料により風と風波の関係を調べている.さらに,得られた知見を用いてパラメータ波浪推算手法について検討している.

*正会員 運輸省港湾技術研究所水工部 海洋エネルギー利用研究室長
**    運輸省港湾技術研究所海洋水理部 海象調査研究室
***正会員 運輸省港湾技徳研究駈海洋水理部 海象調査研究室長

2. 風波の有義波高と周期

 ここでは,1984年から1987年の4年間に大阪湾で観測された風と波のデータを用いて風波に関する推算式の検討を行う.無次元化のために用いる風速としては,10m高度の風速U_{10}および摩擦速度U_*の2種類があり,本論文では無次元化された波高・周期・エネルギー・フエッチを下記のように表す.
(1)
ここに,H_{1/3}およびT_{1/3}はそれぞれ有義波高および有義波周期,Eは(=H_{1/3}/3.83)^2で定義されたエネルギー,gは重力加速度である.また,摩擦速度の算定法としてはMitsuyasuら(1985)が博多湾の観測結果から導いた
(2)
を用いている.

 (1) 無次元波高と無次元周期の関係
 従来から無次元波高と無次元周期の間には3/2乗の関係があることが知られている.Wilson(1985)の推算式からは,フェッチにわずかに依存するが平均的に
(3)
の関係が導かれている.また,Toba(1972)は全く別の観点から独立に
(4)
を提案している.無次元波高と無次元周期の関係は,式(4)を書き換えると
(5)
となることから明らかなように,波形勾配と波齢の関係を表すものと解釈できる.ここに,L_{1/3}およびC_{1/3}は有義波周期に対応する波長および波速である.
 図ー1に観測値から風波であるという条件でデータを抽出し,年別に無次元波高H_*と無次元周期T_*の関係を描いたものの一例を示す.ここに,風波の条件としては,1.波高,周期とも発達段階にあること.2.風向と波向が一致し,2時間以上風向・波向が変化しないこと.
3.風速が2m/s以上であること.4.周期が4.5s以下でること(沖波と見なすことができること)を採用した.
図から,大阪湾の風波に関しても無次元波高と周期の間に3/2乗の関係が精度よく成り立つことがよくわかる.
ただし,その係数は4年間の平均で0.067となり鳥羽の提案した値0.062より若千大きめなものとなる。図ー2は図ー1と同じ条件で抽出したデータを波形勾配と波齢に関してプロットしたものである.
 最近,この無次元波高と無次元周期の関係を用いて海上風を波浪データから推算する方法が研究されている(Toba,1972),すなわち,式(4)を
(6)
と書き換え,摩擦速度を逆算するのである.図ー3(a),(b)は1984年の1月と7月について波浪データから推算した風速と実測風速を比較したものである。図から1月に関しては逆算風速と実測風速が非常によい一致を示すことがわかる.これは,大阪湾の冬季は,西系の風が支配的であり外洋からのうねりの侵入が少なく,風波という条件が満たされるためと考えられる.一方,夏季の場合は大阪湾にうねりが来襲することと海陸風が顕著になるため波浪データから海上風の逆算精度が悪くなる.以上のことから,風波であるならば波浪データから海上風を推算する手法として無次元波高と無次元周期の関係を利用できる可能性があり,波浪推算で最も重要な問題として残されている気象データからの求めた推算風を補正する手法として利用したり,この3/2乗則を組み込んだ波浪推算モデルを開発することにより点で観測した波浪を面的に精度よく補間する手法が確立できる可能性もある。
 (2) 無次元フェッチと無次元波高・周期・エネルギーの関係
 風波の有義波諸元の発達特性を記述する経験式を通常推算式と呼んでいる.特に,時間的に定常に達し,風下方向に発達しているfetch-limitedの風波の推算式は,Severdrup-Munkの以後数多くの研究が行われ,改良が加えられている.現在最もよく利用されるのはWilson(1965)が提案したWilsonIV式と言われるものである.
大阪湾で観測されたデータは風向・風速の変動が大きくfetch-limitedの状態に達しているか否かを容易に判定することが難しいため,風波であるという条件を課して波の伝播方向の無次元フェッチと無次元波高・周期の関係をプロットすることにした。風波の条件としては,図ー1を描くのに課したものより厳しい条件,すなわち1.波高,周期とも発達段階にあり,式(4)(ただし,B=0.067)から誤差5%以内のもの,2.風向と波向が一致すし,4時間以上風向・波向が変化しないこと.3.風速が2m/s以上であること.4.周期が4.5s以下であること(沖波と見なすことができること).とした.図ー4は無次元フェッチと無次元波高・周期の関係を描いたものである.図には比較のためWilsonの推算式が実線で描かれている.抽出条件から判断できるようにプロットされたデータは完全にfetch-limitedに達した風波に関するものぼかりでないため,データの法絡線がfetch-limitedに達した状態に対応するものと考えることができる.図から,Wilson式は無次元周期が過小評価気味であるものの無次元波高については比較的よい精度があることがわかる.なお,プロットしたデータのうち無次元フェッチが大きいものはWilson式からはずれる傾向があるが,これらのデータはすべて風速が小さいものであるためデータの信頼性に欠けると考えてもよい.
 図ー5は同様な条件で,摩擦速度で無次元化されたフェッチとエネルギーの関係をプロットしたものである.図中の線は後述する波浪推算を用いて実測波浪と推算波浪が合致するように試行錯誤で求めた推算式である.無次元フェッチが10^7程度で折れ曲がっているのは波浪推算する上での平衡状態を仮定していることになる.
 以上のことから,大阪湾の風波の無次元フェッチと無次元・波高・周期エネルギーの関係は,従来の経験則でよく説明できることがわかる。したがって,パラメータ型の波浪推算には従来の経験則をそのまま用いてもかまわない。ただし,無次元フェッチとの関係が線形で表される無次元エネルギーの関係を用いた方がより簡単と思われる.

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式(1〜6)
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図ー1 無次元波高と無次元周期
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図ー2 波形勾配と波齢
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図ー3 波浪データによる海上風の推算例
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図ー4 無次元フェッチと無次元波高・周期
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図ー5 無次元フェッチと無次元エネルギー(摩擦速度による無次元化)

3. 波浪スペクトル

 ここでは,1980年から1982年の3年間に観測された波浪データからスペクトルを計算し,そのパラメータ等を検討した結果を報告する.波浪スペクトルに関しても2.(1)に示した風波であるという条件を課している.
 (1) 周波数スペクトルの積分値と有義波諸元
 周波数スペクトルの積分値と有義波諸元の関係は種々の機会に取り扱われており,Mitsuyasuら(1968)は,
(7)
などを提案している.紙面の関係で相関図を割愛するが大阪湾のデータでも,Mitsuyasuらの結果とよい一致を示し
(8)
となる.なお,平均周期\bar{T}と有義波周期の間には
(9)
の関係がある.
 (2)周波数スペクトル形
 単純な水域に一定の風が吹き続いた場合に発生する風波のスペクトルが,安定した相似形を保つことは多くの研究者により報告されている.大阪湾の風波スペクトルを規格化し,相似則について検討した一例が図ー6である.図中の実線は,peak enphancement factorを\gamma=2.5,\sigma_1=0.12,\sigma_2=0.15としたJONSWAPスペクトル(Hasselmannら,1973)である.データが多少バラつくもののJONSWAPスペクトルに極めてよい一致を示すことがわかる.
 図ー7はJONSWAPスペクトルで大阪湾の風波スペクトルを近似した場合のスペクトルパラメータに関して整理したものである.パラメータ\alphaと無次元ピーク周波数は無次元エネルギーと良好な相関が見られるが,peakenphancement factorはデータのバラツキが大きく相関式にまとめることが難しく,図にはpeak enphancementfactorのうち\gammaについてのみ示している.peak en-phancement factorの平均値は図ー6に示した\gamma=2.5,\sigma_1=0.12,\sigma_2=0.15となりJONSWAPで求められたものと多少異なる.

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式(7〜9)
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図ー6 周波数スペクトルの相似則
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図ー7 無次元エネルギーとスペクトルパラメータ

4. 波向線型パラメータ波浪推算モデル

 (1) モデルの定式化
 上述の風波の推算式に関する検討結果をふまえ,新たに波向線型パラメータ波浪推算モデルにっいて検討した.波向線型波浪推算モデルの概要にっいては推算式が異なるものの山口ら(1988)および著者ら(後藤・小舟,1988)によりすでに報告されているため,ここでは使用した推算式の説明にとどめる.
 モデルの推算式としては3.で得られた2種類の経験則を用いている.ひとつは,無次元波高と無次元周期の間の3/2乗則
(1O)
であり,他のひとつは無次元フェッチと無次元エネルギーの関係
(11)
である.両式を仮定すると一次元の波浪の発達が
(12)
と記述できることから,波向線法のパラメータ波浪推算モデルは
(13)
と記述することができる.ここに,
(14)
であり,\lambda(\theta)は方向分布関数を意味し,
(15)
である.
 (2)試算結果 
 大阪湾は30kmから40㎞程度の海域であるため,波浪観測地点で観測された実測値を大阪湾全域にそののの適用しても大きな誤りがないと考えられる,そこで,風の条件としては観測風の経時変化をそのまま大阪湾全域に与え,推算の格子間隔を\delta x=1km,\delta t=120s,\delta \theta=\pi/8とした.
 図ー8は1984年1月1日から31日の31日間に関して試算した結果である.この試算結果は風波のみを対象としているため風が弱くなりうねり性の波浪と考えられる低波高の部分は波高・周期ともに推算値が実測値に比べ小さくなるが,風波と考えられる期間に関しては実測値と推算値が非常によい一致を示すことがわかる.したがって,うねりの取り扱いなど今後検討を要することが残されているが本研究で提示した比較的単純な方法でも良好な波浪推算ができることがわかる.

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式(10〜15)
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図ー8 実測波浪と波浪推算結果の比較

5. おわりに

 本研究では大阪湾の気象および海象データを用いて風波の経験則とパラメータ波浪推算モデルについて検討を行った.得られた主要な結論は以下の通りである.
 1.風波の局所平衡下の無次元波高と無次元周期の関係(鳥羽の3/2乗則)は大阪湾に関しても精度よく成り立つ.ただし,係数は鳥羽の提案したものより若干大きめである.また,推算風の補正手法として鳥羽の3/2乗則を利用できる可能性がある.
 2.無次元フェッチと無次元波高・周期の関係はWilsonの提案したものに近い.ただし,周期は多少大きめである.無次元フェッチと無次元エネルギーの関係は摩擦速度で無次元化した方が線形の式に近い。
 3.以上の検討結果によりパラメータ波浪推算モデルを検討し,実測風速を用いて推算した結果,推算波浪が実測波浪と非常によい一致を示すことがわかった.今後,うねりの取り扱いを含め我が国沿岸波浪観測データを用いてより精度の高いものを開発していく必要がある.

謝辞

本論文で用いた観測データは運輸省第三港湾建設局および関西国際空港株式会社の好意によるものである.関係各位に謝意を表すとともに,今後さらに御協力をお願いする.

参考文献

後藤智明・小舟浩治(1988):現地で観測にできる波浪推算法について,第35回海岸工学講演会論文集,PP.222〜226.山口正隆・畑田佳男・鼠野幹雄・早川淳(1988):波の方向性を考慮した新しいパラメータ波浪推算モデルの適用性,第35回海岸工学講演会論文集,PP.227〜231。
Hasselmann, K. et al. (1973): Measurements of wind wave growth and swll decay during the Joint North Sea Wave Project (JONSWAP), Deutsches Rydr.Zeit., Reihe A, No.12.
Mitsuyasu,H.(1968): On the growth of the spectrum of wind generated waves (1), Rep. Res. Inst. Mech., Kyushu Univ., Vol. 16, pp. 459〜482.
Mitsuyasu, H. and T. Kusaba (1985): Drag Coefficient over water surface under the action of strong wind, Natural Diaster Science, Vol. 6,pp. 43〜50,SWAMP group (1985): Ocean wave Modeling, Plenum Press, 256p.
Toba, Y. (1972): Local balance in the air-sea boundary process, 1. On the growth process of wind waves, J. Oceanogr. Soc. Japan. Vol.28,pp.109〜120.Wilson,B.W.(1965): Numerical prediction of ocean waves in the North Atlantic for December,1959, Deut.Hydr. Zeit., No.18, pp.114〜130.

海上風の抵抗則と風波の発達則 後藤智明*・末次広児**・小舟浩治***

1. はじめに

 海上風と風波の関係を明らかにすることは,大気と海洋の運動量交換のメカニズムを理解するばかりでなく,港湾構造物の設計および波浪予測のための波浪推算モデルの改良・開発に重要なことである, 風と風波の関係について調べた従来の研究は,Wilson(1965),Mitsuyasuら(1968),Hasselmannら(1973)
の報告のように10m高度の風で風波の発達則を定式化しているものが多い.最近,より適切であると考えられる風の摩擦速度を用いた整理法が着目され,Mitsuyasuら(1984),Charnock(1955),Wu(1980),Toba・Koga(1986),Masuda・Kusaba(1987),Tobaら(1990)などにより種々の検討結果が報告されている.しかしながら,これらの研究の多くはスケールが大きく異なる風洞水槽実験によるものであり,現地の観測データによる検討例が少ないという問題点が残されていた.
 本文では,大阪湾における観測データを用いて海上風の抵抗則と風波の発達則に関する従来の経験則の検討を行い,パラメータ型波浪推算モデルを開発するにあたり最も適切な海上風の抵抗則と風波の発達則の組み合せについて考察した結果を報告する.

*正員 工博 運輸省港湾技術研究所水工部 海洋エネルギー利用研究室長
**正員   前運輸省港湾技術研究所海洋水理部 海象調査研究室(運輸省第四港湾建設局北力州港工事箏務所 第二工事課)
***正員 工博 運輸省港湾技術研究所海洋水理部 海象調査研究室長

2. 解析データ

 解析に利用したデータは,1984年から1987年の4年間に大阪湾泉州海岸から東方6.5kmにある海上観測局の超音波式波高計および1Om高度のプロペラ型風向・風速計で観測したものである.海上局の観測は関西国際空港の建設のため昭和53年から経常的に実施されているもので,観測記録は毎正時の13分間観測値を波高,周期,風向,風速などの各諸元に整理され保存されている.

3. 代表風速と検証のための波浪推算モデル

 (1)代表風速
 一般に,風波の発達特性を記述する風速としては,10m高度風速U_{10}と摩擦速度U*がある.10m高度風速と摩擦速度との関係は,対数分布則
(1)
を仮定する方法と抵抗係数C_Dにより
(2)
と記述するものがある,ここに,U_zは高度zの風速を意味し,\kappaはカルマン定数z_0は水面粗度である.
 対数分布則を適用する方法では,水面粗度を決めるものとしてWu(1980),Toba(1986),Masuda・Kusaba(1987),Toba(1990)が経験式を提案している.
 本研究で検討対象とした抵抗則は,z_0則としてWu(1980),Toba(1986),Masuda・Kusaba(1987),Toba(1990)の式,C_D則の代表的なものとしてMitsuyasu(1984)の式である.なお,Wu(1980)のz_0則は,
(3)
Toba(1987)のz_0則は,
(4)
Masuda-Kusaba(1987)のz_0は,
(5)
Toba(1990)のz_0則は,
(6)
Mitsuyasu(1984)のC_D則は
(7)
で表される.ここに,\sigma_pはスペクトルのピーク周波数を表し,本研究では\sigma_P=2\pi/1.05 T_{1/3}と算出している.
 (2) 1地点出カパラメータ型波浪推算モダル
 次章の抵抗則と発達則の検証方法としてパラメータ型波浪推算モデル(後藤ら,1989)を利用している.パラメータ型波浪推算モデルとは,無次元波高と無次元周期の3/2乗則および無次元エネルギーと無次元フェッチの1乗則を利用して風波を対象としてその発達・減衰をエネルギー平衡方程式を用いて追跡する方法である.なお,1地点出力というのは出力地点を1地点に絞りその対象地点に到達する各波向成分を波向線上の発達・減衰計算を通じ対象地点の波浪の経時変化を算出する方法である.
 いま,無次元波高と無次元周期の3/2乗則および無次元エネルギーと無次元フェッチの1乗則をそれぞれ
(8)
および
(9)
とおくと,エネルギー平衡方程式は
(10)
で表される.ここに,C=3.83(=H_{1/3}/\sqrt E)であり,E(\theta)は波向別のエネルギー,\lambda(\theta)は方向分布関数を意味し,
(11)
である.数値計算にあたっては,格子間隔を、\delta x=1km,\delta t=120s,\delta \theta=\pi/\thetaとしている。また,風は大阪湾の広さが40k漁程度であるため海上局で観測した風向・風速が大阪湾全域にそのまま適用できるものとしている.

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式(1〜11)

4. 無次元波高と無次元周期の3/2乗則

 局所平衡下の風波に関しては,無次元波高と無次元周期の3/2乗則が成立することが知られている.U_{10}を用いるWilson式からフェッチにわずかに依存するが,
(12)
が導かれ,Toba(1985)は全く別の観点から独立に
(13)
を提案している.
 大阪湾海上局の観測データから,風波の条件を課してデータを抽出し,無次元波高と無次元周期の関係を種々の代表風速でブロットした一例が図ー1である.図中の実線は最小自乗法で定めた回帰直線であり,良好な精度で無次元波高と無次元周期の3/2乗則を満足することがわかる.ただし,表ー1に示した比較から明らかなように風速の取り方により係数Bの違いが大きい.同表の右欄はそれぞれ既往の係数を記載してあるが,大阪湾の観測値は抵抗則1および抵抗則6をよく支持する結果となる.抵抗則3に関しては既往の提案値に比べ小さめに抵抗則5は大きめになる.特に,抵抗則5のMasuda・Kusabaのz_0則に関しては現地波浪と差異が大きく,これは既往の係数が水理実験データのみで決められているためであると考えられる.

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式(12〜13)
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図ー1 無次元波高と無次元周期
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表ー1 代表風速の違いによる係数の差異

5. 抵抗則と発達則の検証

 (1) 10m高度風速
 大阪湾で観測されたデータは,風向・風速の変動が大きく,fetch-limitedの状態に達しているか否かを実易に判定することが難しいため,風波であるという条件を課して発達則の検討した.図ー2は無次元波高・周期と無次元フェッチの関係を描いたものである.プロットされたデータは風波であるが完全にfetch-limitedの状態に達しているものぼかりでない.したがって,データの法絡線がfetch-limitedの状態に対応しているものと考えられる.図にはSMB,Wilson(1965),Mitsuyasu(1968),Hasselma㎜(1973)の各提案式を実線で描いている,無次元波高に関して1データの法絡線と各提案式を比べると,SMBおよびWilsonの式は精度が良いこと,光易の式は多少大きめであること,そしてHasselmannらの式は小さめであることがわかる.
一方,無次元周期に関しては,光易とHasselmamらの式が大きめであり,SMBとWilsonの式が若干小さめであることがわかる.以上のことから,光易およびHasselmannらの式に比べ図式解法または有義波法に利用されているSMBおよびWilsonの式が良好な精度を有することがわかる.
 図ー3はWilsonの式を先に述べた推算モデルの発達式として用いた場合の推算例である.推算したものは1984年1月3日から6日までの擾乱で,風速21m/s程度と15m/s程度の2つの擾乱が続けて来襲した例である.推算手法が風波を対象としたパラメータモデルであるため,3日13時以前,4日15時から23時そして6日4時以降の風が弱くなった時刻に関しては波高,周期ともに推算値と実測値に差が見られるが,風速が大きくなると良好な一致を示すことがわかる,ただし,風速20m/s程度以上に関しては実測値に比べ推算値が小さくなっている.

(2)Toba則
 無次元波高と無次元周期の3/2乗則の検証から,大阪湾の風波データは1990年にTobaにより提案されたz_0則を満たすことが明らかになった.ここでは,逆に3/2乗則の係数が0.062であると仮定した場合のTobaの物則の適合度を調べることにした.図ー4がその結果であり,丸印が大阪湾の観測データを表す.図には,比較のため水理実験結果,白浜およびBass海峡の観測値の分布を同時に示してある,大阪湾の観測データはバラツキが大きいものの,その平均値は白浜の観測値と同様にTobaのz_0則(−1/2乗則)を満たしていることがわかる.
 Tobaのz_0則(−1/2乗則)を用いて算定した摩擦速度を用いて無次元ユネルギーと無次元フェッチの関係を描いたものが図ー5である。先に述べたようにデータの包絡線がfetch-limitedの状態を意味するため,図の実線
(14)
が発達式となる.ただし,無次元フェッチが10^7程度で発達式を表す線が折れ曲がっているのは,波浪推算上の平衡状態を仮定しているためである.なお,摩擦速度を算出する際に用いたTobaのz_0則(−1/2乗則)が波浪諸元に関係するため,本来ならばこのような相関をとることには問題があるが,後に述べるように波諸元による摩擦速度の変化量が小さいため発達式が特別おかしなものとはなっていない.
Tobaのz_0則(−1/2乗則)による摩擦速度による無次元波高と無次元周期の3/2乗則および無次元エネルギーと無次元フェッチの1乗則を用いて波浪推算した結果を図ー6に示す.図ー3に示したWilson式の場合と同様に風速15m/s程度までの推算値は実測値とよく一致するが,風速20m/sを超えるとやはり精度が悪くなっている,したがって,Tobaのz_0則(−1/2乗則)による摩擦速度を用いても従来のWilson式より精度の良い推算結果が得られないようである.

 (3)Mitsuyasu則
 前節と同様に3/2乗則の係数を0.067に固定してCか値を逆算したものを描いたものが図ー7である.MitsuyasuのC_D則の適合性については,図ー4と同様にデータのパラツキが大きく確たることは言えない.しかし,局所平衡化の風波に3/2乗則が成立するならば波諸元に関係しない摩擦抵抗則を用いても大ぎな問題は無いと思われる.また,図ー8はTobaのz_0則(−1乗則)から求まるC_D値とMitsuyasuのC_D則を比較したものである。Tobaのz_0則から算出したC_D値は周期により異なるが,周期2sと12sでもその差は約30%程度である.したがって,摩擦速度の違いにすると10%程度以下であり,波諸元の影響をことさら海上風の抵抗則に取り入れる必要がないと思われる.
 図ー9はMitsuyasuのC_D則による摩擦速度を用いて無次元エネルギーと無次元フェッチの関係を描いたものである.風波の発達式は
(15)
で表される.
図ー10は図ー3,図ー6と同じ擾乱に関してMitsuyasuのC_D則による摩擦速度を用いた発達式による推算結果である.Wilsonの式,Tobaの式の場合と同様に風速15m/sまでは実測値と推算値に良好な一致が見られる.しかしながら,20m/s程度以上では,やはり推算精度が劣っている.
 推算値の補正法のひとつとして,MitsuyasuのC_D則を修正する方法が考えられる.ただし,補正をするにあたり大阪湾の観測値には風速が20m/sを超えるものが少ないため,高風速の観測値で比較的精度が良いと思われるBass海峡のデータを用いることにした.Bass海峡の観測値は風速25m/s程度の風が長時間吹き続けたものであり,Toba(1990)の解析および図ー4,図ー8を見ると明らかなように個々のデータが多少バラツクものの,平均的には風速25m/sでC_D値が0,04程度となる,したがって,MitsuyasuのC_D則をBass海峡のデータで修正することによりが求まる.この修正C_D則を用いた推算結果を図ー11に示している.高風速時の推算値が改善され,全般的に実測値と良好な一致を示す

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式(14〜15)
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図ー2 無次元波高・周期と無次元フェッチ
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図ー3 Wilson式による推算結果
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図ー4 無次元粗度と無次元ピーク周波数
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図ー5 無次元エネルギーと無次元フェッチ
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図ー6 Tobaのz_0則による推算結果
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図ー7 抵抗係数と10m高度風速
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図ー8 Tobaのz_0則とMitsuyasuのC_D則の比較
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図ー9 無次元エネルギーと無次元フェッチ
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図ー10
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図ー11

6. おわりに

 本研究で得られた主要な結論は以下のとうりである.
1.観測風速(10m高度の海上風)を用いて無次元波高と無次元周期を整理すると浪好な精度で3/2乗則が成立する.また,SMB,Wilsonの発達式に観測データはよく適合する.ただし,このような10m高度の海上風により定式化した発達則を用いた波浪推算結果は,風速15m/s程度以下であると観測値とよく一致するが,風速20m/s以上の場合に適合度が悪くなる.
2.大阪湾の観測データはToba(−1乗則)およびMasuda・Kusabaの抵抗則との適合性はあまりよくなく,Toba(−1/2乗則)に近い.Toba(−1/2乗則)の抵抗則を用いた波浪推算結果は,1.の場台と同様に風速15m/s程度以下であると観測値とよく一致するが,風速20m/s以上の場合に適台度が悪くなる.
3.Mitsuyasuの抵抗則を用いた推算値もWilsonおよびToba海峡のデータを用いて修正したMltsuyasuの抵抗則を用いると風速20m/s以上に関しても実測値とよく合致する推算結果が得られる.

謝辞

本論文で用いた観測データは運輸省第三港湾建設局および関西国際空港株式会社の好意によるものである.また,本研究を行うにあたり,東北大学工学部首藤仲夫教授および理学都鳥羽良明教授から御指導,御助言を得た.ここに記して謝意を表す.

参考文献

後藤智明・末次広児・小舟浩治(1989):大阪湾の風と風波の関係,海岸工学論文集,第36巻,pp.168〜172.
Charnock, H. (1955) : Wind stresson a waser surface, Quart. J. Roy. Meteor. Soc., Vol. 81. pp. 639〜640.
Hasselmann, K. et. al. (1973) : Measurements of wind-wave growth and swell decay during the Joint North Sea Wave Project (JONSWAP), Deut. Hydrgr. Z., Suppl. 8, pp. 1-95.
Masuda, A. and T. Kusaba (1987) : On the local equilibrium of winds and wind-waves in relation to surface drag, J.Oceanogr. Soc. Japan, Vol. 43. pp. 28〜36.
Mitsuyasu, H. (1968) : On she growth of the spectrum of wind generated wavcs (1), Rep. Ints. Mech. Kyushu Univ., Vol. 16, pp. 459〜482.
Mitsuyasu, H. and T. Kusaba (1984) : Drag coefficient over water surface under the action of strong wind, J. Natural Dias. Sci., Vol. 6, No. 2, pp. 410-50.
Mitsuyasu, H., R. Nakamura and T. Komori (1971) : Observation of the wind and waves in Hakata Bay, Rep. Inst. Appl. Mech. Kyushu Univ., Vol. 19, pp. 37-74.
Toba, Y. (1985) : Wind weves and turbulence, In 「Recent Studies of Turbulent Phenomena」, eds. T. Tatsumi, H.Maruo and H. Takami, Assoc. for Sci. Doc., Tokyo, pp.277〜296.
Toba, Y. and M. Koga (1986): A parameter describing overall conditions of wave breaking, whitecapping, seaspray production and wind stress, In 「Oceanic Witecaps」eds. F. C. Monahan, G. Mac Niocaill and D. Reidal, pp. 37-47.
Toba, Y., N. lida and las S. F. Jones (1.990) : The wave dependence of sea-surface wind stress, J. Phys. Oceanogr Roc.Japan, in press.
Wilson, B. W. (1965) : Numerical prediction of ocean waves in the North Atlantic for December, Deut. Hydrgr., Vol. 18, pp. 114-130.
Wu, J. (1950) : Wind-stress coefficients over sea surface near neutral conditions-a revisit, J. Phys. Oceanogr., Vol. 10, pp. 727-740.

大水深波浪観測データによる波浪推算法の検証 永井紀彦*・冷水康悦**・後藤智明***

1. はじめに

 波浪推算は,港湾・海洋構造物の設計波の算定にあたって不可欠なものとなっている.このため,推算結果の信頼性を現地観測データと比較検証することは,極めて重要である.しかしながら,従来の波浪観測は,浅水変形を受けた後の比較酌浅い水深における観測地点のものが多く,また,波高観測だけが行われているものが多かった.したがって,波浪推算結果の検証資料として利用できる大水深海域で観測された波浪の周波数および方向スペクトルのデータは,ほとんどないのが実状であった.本報告は,運輸省第二港湾建設局によって取得されたいわき沖154m水深における波浪データおよび周波数,方向スペクトルを用いて,波浪推算モデルを検証したものである.

*正員     前運輪省第二港湾建設局横浜調査設計事務所次長(運給省港湾技術研究所海洋水理部主任研究官)
**正員 工修 運輸省第二港湾建設局横浜調査設計窮務所調査課
***正員 工博 運輪省港湾技術研究所水工部海洋エネルギー利用研究室長

2. いわき沖波浪観測システムの概要

 図ー1は,いわき沖波浪観測システムの位置を示したものである.天然ガス開発用のプラットフォームの脚を利用した4台のステップ式波高計と,超音波式流速計(水平方向2成分)および水圧式波高計,あわせて7CHの波浪データが同時記録され,方向スペクトル解析が可能なシステムとなっている.データは,無線テレメータにより42km離れた広野中継局に送信され,そこから有線テレメータにより,第二港湾建設局小名浜港工事事務所内の監視局に送られる.観測は2時間毎に行われ,0.5s間隔で20分間の各チャンネルのデータをA/D変換し,事務所内のミニコソおよび港湾技術研究所の大型計算機でデータ解析を行っている.

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図ー1 いわき沖位置図

3.波浪推算モデル

 実用的な波浪推算モデルは,有義波法とスペクトル法に,大きく区分される.スペクトル法は,さらに成分波法(DP)およびハリプリッドバラメータ法(CH)に区分される.DP法としては,井上モデル(1967),MRIモデル(Isozaki,1973),山口・土屋モデル(1979)などがある.C耳法としては,TOHOKUモデル(Joseph,1981),MRI-2モデル(Uji,1984),ドルフィソモデル(山口,1986)などが提案されている.
 波浪推算の結果は,波推算モデル以上に,その前提となる風の計算結果によって大きく異なったものとなることが知られている.従来の風の計算は傾度風モデルによることが多かったが,大気の安定度の影響を考え鉛直方向の風速変化を考慮したCardoneモデル(Cardone,1969;磯崎,1974),さらに台風の影響を別に考慮し計算精度向上をねらったハイブリヅドモデル(日本気象協会,1987,1988)などといった新しいモデルも開発されている.
 本報告では,波推算モデルとしては有義波法(井島,1967)とスベクトル法(緯度経度座標を用いた改良MRIモデル)の2種類を,風推算モデルとしては傾度風モデ
ル,Cardoneモデルおよびハリブリッドモデルの3種類の比較検討をおこなった.

4. 検討対象とした気象擾乱

波浪推算モデルの検証に用いた2種類の擾乱に関する気象概要を図一2に示す.(1)の擾乱は,1987年6月19日から2蝦にかけて前線を伴う低気圧が本州東岸を通過したものである.(2)の擾乱は,1987年9月16日から18目にかけて台風13号および15号が通過したものである.

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図ー2 検討対象とした気象撹乱

5. 計算条件

 波浪推算は,気象図(気圧,気温,水温)の線情報への数値化,線惰報から格子情報への空間的補間,6時間毎(水温は10日毎)のデータの時間内挿(ここでは1時間間隔とした),風の場の計算,波の場の計算といったステップを経て行われる.
 気象図の数値化にあたってはデジタイザーを用い,等圧線と等温線の読み取りは,それぞれ2-4mb,2-4℃間隔で緯度経度座標に数値化した.格子点値への空間的補間にあたっては,最小エネルギーの原理に基づくスプライン補間を用いた.図ー3に示すように,北緯15度から65度,東経110度から175度の範囲を1度メッシュの格子に分割し,格子点の気圧と温度を求めた、データの時間内挿は,線型補間法を用いた.
 表ー1は計算ケースを示したものである。風推算と波推算はそれぞれ独立であるため他の組合せも可能であるが,ここでは風推算各モデルの比較および有義波法とスペクトル法との比較に主眼をおいてケースを選定した.

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図ー3 波浪推算計算格子図
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表ー1 計算ケース

6.前線を伴った低気圧に関する波浪推算

(1) 有義波法とスペクトル法の比較
 表ー2は,表ー1に示すケース1から3までの推算結果と実測値を比較したものであり,各ケースとも有義波高が最大となる時刻の風速,風向,有義波高H_{1/3},有義波周期丁塒および発生時刻を示している.表中の実測風は,いわき沖ブラットフォ一ム上(D.L.42m)で測定されたものである.
図ー4は,H_{1/3}とT_{1/3}の経時変化について実測値と比較したものである。傾度風モデルで風を推算したケース2とCardoneモデルで風を推算したケース3の計算結果は,表ー2に示したように近い結果を得たため,図中には,スベクトル法の値としてケース3の値だけを示している.
 実測H_{1/3}は,6月21日8:00に5.35mを示しているが推算結果は各ケースに共通して実測結果より小さめの値となっている.特に,ケース1の有義波法によるH_{1/3}の推算値は3.17mとかなり小さい値となっていることが注目されるが,これは,有義波法ではうねりを精度よく表現することができないためであると考えられる.ケース1と2の風推算は共通であるが,表中の値が異なっているのは,発生時刻の違いによるものである.
 (2)周波数と方向スペクトルの比較
 図ー5は,ピーク波高時の周波数スペクトル(ケース3)を実測値と比較したものである。棒グラフが推算値を示している(推算における周波数成分は,0.04Hzから0.25Hzまでの周波数帯を0.01Hz毎に分割している.)が,実測値と推算値は比較的よい一致を示している.なお,実測値の0.20Hz付近に小さなピークが見られるが,観測精度上の問題なのか,実態的なピークであるのかは,不明である.
 図ー6は,方向分布形の比較である.細線の実測値はEMLM法によって計算された値であり,EMLM法は一般に方向集中度を小さめに評価することが知られているので,実線でその修正値を示している.すなわち,もっともエネルギーの小さい方向の値がゼロになるように細線のグラフを下にシフトさせ,全面積が等しくなるように一定の補正係数を全体に乗じた.それでも,推算値は実測値よりも方向集中度が大きくなっていることがわかる.

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表ー2 有義波最大時の風速・波浪
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図ー4 有義波高・周期の経時変化(6月)
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図ー5 周波数スペクトル
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図ー6 方向分布形

7. 台風の通過に関する波浪推算

 (1) 風計算モデルの比較
 図ー7(1),(2),(3)は,風計算結果を比較したものである.傾度風モデルとCardoneモデルの計算結果は,よく似た結果となっている.一方,ハイブリッドモデルでは,台風の中心付近で若干風速が大きくなっているようである.
 (2) 有義波法とスペクトル法の比較
 表ー3は,表ー2と同様に,表ー1に示すケース4-7の結果を取りまとめたものであり,図ー8は,図ー4と同様にH_{1/3}とT_{1/3}の経時変化を示したものである.実測H_{1/3}は,9月13日8=00に8.28mを示しているが,推算結果はケース7を除いては,実測値よりも小さくなっている.特に,ケース4の有義波法では,H_{1/3}が4.41mしか出ておらず,実測値の半分程度の値に留まっている.スペクトル法では,有義波法よりはH_{1/3}は大きくなっているものの,ケース5と6では,実測値よりも1.5m程度小さい値となり,実測値との差は表ー2よりも大きくなっている.Cardoneモデルで計算された風速は,傾度風モデルよりわずかに小さい値を示し,そのため推算波高も若干小さめになる傾向は,表ー2と共通している.ハイブリッドモデルでは,台風の影響が別に評価されているため,実測に近いH_{1/3}が計算されているが,T_{1/3}3は若干長くなっている.なお,実測T_{1/3}は9.30sと推算値よりも極端に短くなっているが,これは,ノイズによる可能性も高いので注意を要する.
 (3) 周波数・方向スベクトルの比較図ー9および10は,実測値と推算値(ケース7)の方向スベクトルを比較したものである.図ー9は9月17日10時の結果であり,図ー10は9月17日14時の結果である.それぞれ,左が推算値を,右が実測値を示しており,横軸に方向を,縦軸に周波数を示している.
 図ー9の推算値と実測値を比較すると,どちらもSから10°程度E方向にずれたところにピークが見られ,ENE方向にも弱いピークがあり,両者はよく一致していることがわかる.ただし,ピーク周波数は,実測値の方が若千大きいようである.
 一方,図ー10の推算値は,図ー9と比較してピークがE方向におよび高周波側にシフトしているが,これは台風の移動に対応したものと思われる.実測値でも,推算値ほどは顕著でないものの,やはりピークのシフトが読み取れる.
 図ー11および図ー12は,それぞれ図ー9と10に対応しており,方向と周波数それぞれに関して積分した結果を示している、いずれの図も,図ー8に対応した全エネルギーレペルの相違はあるものの,実測値(折れ線)と推算値(棒)の分布形はよい一致を示している.
図ー11と図ー12を比較すると,やはり,台風の進行と共に,エネルギーのピークがS方向からLENE方向へ,低周波側から高周波側へと,シフトしていることがわかる.
 図ー13は,方向別エネルギーの経時変化を示したものである,参考として,風速および風向の経時変化(推算値ケース7),H_{1/3}の経時変化(実測値および推算値)を示している.方向別のエネルギーは,3成分(S-E,E-N,N-W-S)に分割し,それぞれの方向から来襲するエネルギーの積分値を,それぞれ実線,点線,一点鎖線で表示している.
 実測値のグラフで,S-E方向とE-N方向を比較すると9月.17日14:00までは,S-E方向のエネルギーが相対的に大きかったが,以後は,E-N方向のエネルギーが大きくなっている。これは台風の移動によるものと考えられる.このことは推算値でも同様にあらわれている.推算値ではN-W-S方向からの波エネルギーが実測値に比ぺて小さくなっているが,西すなわち陸からの波エネルギーは小さいと考えられるので,これは,むしろ実測値の方に問題があると思われる.

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図ー7 風推算結果の比較(9月17日)
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表ー3 有義波最大時の風速・波浪
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図ー8 有義波高・周期の経時変化(9月)
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図ー9 方向スペクトル比較図(9月17日10時)
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図ー10 方向スペクトル比較図(9月17日14時)
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図ー11 周波数スペクトルと方向分布形(9月17日10時)
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図ー12 周波数スペクトルと方向分布形(9月17日14時)
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図ー13 方向別エネルギーの経時変化

8. おわりに

 以上のことから,現状の波浪推算においては,スペクトル法が有義波法に比べて精度が優れていること,台風時における風計算モデルとしてはハイブリッドモデルがよいことなどが明かになった.ただし,スペクトル法に.おいては,発達式の定式化,特に方向分布形に検討の余地があるごと,また,風計算モデルにおいては,気圧場の時間的変化を考慮した方法の採用など種々の課題が残されている.

謝辞

本報告のとりまとめにあたっては,第二港湾建設局の小名浜港工事:事務所と横浜調査設計事務所,および港湾技術研究所海洋水理部海象調査研究室のそれぞれの御担当の皆様に御指導・御協力いただいた.また,㈱ゼックスの皆様には,データ整理や図表の作成等御助力いただいた.ここに謝意を表する.

参考文献

井島武士・副島毅・松尾隆彦(1967): 数値計算による台風域内の波の分布について一海洋上における台風の場合一,第14回海岸工学講演会講演集,pp.29〜38.磯崎一郎・宇治豪(1974):海上風数値モデルの波浪予測への応用,.気象硯究所報告25,pp.197〜23L
目本気象’協会(1987):沿岸波浪予測プログラムの研究開発報告書,波浪推算のためのデータベースの整備と活用法の研究,開発(その3),87P.
日本気象協会(1988)=内湾の海上風と波浪の推算に関する研究,海上風の実用推算モデルの開発,90p.
橋本典明・小舟浩二・亀山:豊(1988):現地観測データを用いた方向スペクトル推定法に関する検討,港湾技術研究所報告,第27巻,第2号,pp.59〜94.
山口正隆・土屋義人(1979):有限風域場における波浪の数値予知法,第26回海岸工学講演会論文集,pp.96〜100.
山口正隆・畑田圭男・目野幹雄(1986):波浪推算に基づく佐渡島の波浪遮蔽効果の検討,土木学会論文集,第369号2-5,pp.195〜202.
山口正隆・畑田圭男・紹野幹雄・早川淳(1988):波の方向健を考慮した新しいパラメータ波浪推算モデルの適用性,第35回海岸工学講演会論文集,pp.227〜231.
Cardone V. J. (1969) : Specification of the wind distribution in the marine boundary layer for wave forecasting, New York Univ. School of Eng. and Sci., Rept. GSL-TR69-1,131 p.
Inoue T. (1967) : On the growth of the spectrum of wind generated sea according to a modified Miles-Phillips mechanism and its application to forecasting, Geophys. Sci. Lab. Tr-67-5, New York Univ., 74 p.
Isazaki I. and T. Uji (1973) : Numerical prediction of ocean waves, Papers in Met. and Geophys. 24 (2), pp. 207-232.
Joseph P. S., S. Kawai and Y. Toba (1981) : Ocean wave prediction by. a hybrid model combination of single parameterized wind waves with spectrally treated swells, The Science Reports of the Tohoku University Series 5, Geophysics Vol. 28, No. 1, 45 p.
Uji T. (1984) : A coupled discrete wave model MRI-2, Oceanogr., Soc. Japan 40, pp. 303〜313.

東京港の波浪特性と閉鎖海域の波浪推算手法 後藤智明*・小舟浩治**・菊地政信*** 早川完治****・手島道人****

1. はじめに

 最近波浪の発達に関しても非線形性が重要であることが認識され,成分波スベクトル推算モデルにかわるハイブリッド・パラメータ推鋒モデルが各国で研究されている,後藤ら(1989,1990)はこのような見地から,我が国の波浪特性に合致するハイブリッド・パラメータモデルの開発のため大阪湾の風と風波の関係を調べている.本研究では,東京湾の風と風波に関して同種の検討を行い,閉鎖海域に適する波浪推算手法について検討した結果を報告する.

*正員 工博 運輸省港湾技衛硫究所水工藻海洋エネルギー利用研究室長
**正員 工博 同上海洋水理部海象調査研究室長
***     東京都港湾局建設部技徳管理課畏
****     同上技術管理課

2. 東京港の風と風波の関係

 東京港では,港湾開発,施工管理のための情報収集を目的として,昭和44年から写真ー1に示す東京灯標において気象・海象観測を経常的に実施している.東京灯標は,羽田の東方約6kmの沖合に位置し,水深が16mの地点にある.図ー1に示すように東京灯標に関するフェッチは西から北方向で短く,南から東にかけて長い,また,最:長距離はSSW方向の34kmである.
 東京灯標における観測は,超音波式波高計とプ導ペラ式風向風速計により2時間毎に10分間の記録が収録され,有義波諸元・風向・平均風速・最大風速などの演算処理がなされ,台帳形式に整理されている.なお,本研究で対象としたのは,昭和68年から昭和63年までの6年間に測得された波浪と風のデータである.
 (1) 気象・海象の出現特性
 昭和68年から昭和63年までの出現波浪の99%は,有義波高1.00m以下,有義波周期4.Os以下である.また,最多出現波浪は有義波高0.26m,周期3,0s以下である.一方,風については,冬期は北北東からの強い季節風が多く,夏季は南南西の強風が卓越する.東京港に高波をもたらす擾乱の多くは,フェッチの長い南系統の強風によるしのである.なお,東京湾を通過した台風8606においては,38m/sの風速が観測され,有義波高3.90m,周期4.2sが記録されている.
 (2) 観測風の補正
 東京灯標における風向・風速のデータは,写真ー1のように,風向風速計がドーム状の屋根の上に設置され,しかも,北北東方向に燈台があるため,海上風を表しているとは考えにくい.また,風向風速計の設置高度はA.P+23mであるが,従来の風と風波の関係に関する経験則の多くが,海上10m高度の風速値を用いているため,東京灯標の観測値も10m高度の海上風に修正し,波浪の発達に関する検討を行った方がよいと判断される.以上の理由により,ここでは観測風の補正について検討する.
 観測風の補正に用いた方法は,東京港の正確な10m高度の海上風データがないため,WilsonIⅤ式を用いて海上風の推定値を算出し,観測風との相関式から補正係数を算定するものである、Wilson式から無次元フェッチを消去すると近似的に無次元波高と無次元周期の3/2乗則の関係式
(1)
と表すことができる.したがって,観測風速と波浪諸元を式(1)と同様な
(2)
にあてはめ,係数Bを求めることにより,観測風の補正係数すなわち観測風U_{23}と10m高度風速U_{10}の比率\muを
(3)
として算定することができる.
 図ー2は東京灯標の観測波浪諸元と観測風を用いて,補正係数\muを風向別に示したものである.補正係数は0.6から0.8の範囲に分布している.しかし,23mと10mの高度差に風速の比は,対数則あるいは1/7乗則で見積っても0.9程度であることから,東京灯標の観測風速は,全方位にわたり構造物の影響をかなり受けているものと考えられる.また,風向別に\muの値が大きく違うのは,それぞれの方位のフェッチ,また,対岸にある構造物の違いから,風速の鉛直分布に差のあることに起因すると考えられる.
 次に,図ー3は,式(1)に波浪諸元を与えることにより逆に推算した海上10m高度の風速と観測風速の関係をプロットした一例である.図中の直実線は風向別の補正線である.データは平均的にこの実線のまわりにプロットされているが,風速の階級により分布状況が変動している.そこで,さらに精度を上げるためには,風速階級別に補正係数を変える必要がある.風速階級別の補正を1次式で評価すると図中の折れ線のようになる.したがって,東京灯標の観測風速の補正は風向別の補正と風速階級別の補正の二段階補正法を採用したことになる.
 補正手法の検証の一例として,波浪諸元から式(2),(3)を用いてU_{23}を推算し観測風速と比較したものを図一4に示す.上図が一次補正結果,下図が二次補正結果との比較である.一次補正でも比較的良好な精度で観測風速を再現しているが,ピーク付近で差が大きい.しかし,二次補正では,低風速の部分で多少合わないものの,ピーク付近でかなりの精度を有していることがわかる.
 (3) 風波の有義波高と周期
 局所平衡化の風波には,無次元波高と無次元周期の問には3/2乗則の関係があることが知られている.例えぽ,U_{10}により無次元化された波高,周期は前述した式(2)の関係にある,また,無次元化に摩擦速度U_*を用いた場合にも,Toba(1985)により3/2乗則が成り立つことが報告されており,後藤ら(1989)もMitsuyasuのCp則を用いて大阪湾の観測データから
(4)
を導いている.
 図一5は観測データから2.(2)と同様な風波の条件を課してMitsuyasuのC_D則による無次元波高と無次元周期の関係を描いたものである.図からは東京港の風波に関しても無次元波高と無次元周期の間に,3/2乗の関係が精度よく成り立つことがわかる、そして,その係数は著者らが大阪湾の風波の検討で得た0.067をよく支持している.
 (4) 無次元フェッチと無次元エネルギーの関係
 図一6は無次元フェッチと無次元エネルギーの関係を示したものである.データ描出の風波の条件は,前節で課したものより厳しく,すなわち1.波高,周期とも発達段階にあるもの.2.4時間以上風向が変化しないもの,3.風速が2m/s以上であること.4.周期が4.6s以下であること(沖波とみなすことができること)である.
図中の線は大阪湾の検討で得た風波の発達式
(5)
であり,東京灯標の波浪データは大阪湾に比べ多少発達率が大きいようである.

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式(1〜5)
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写真 写真ー1 東京灯標全影
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図ー1 フェッチ図
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図ー2 方位別風速比
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図ー3 観測風と海上風
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図ー4 観測風と観測波浪から推算された風の比較
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図ー5 無次元周期と無次元波高
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図ー6 無次元フェッチと無次元エネルギー

3. 波浪スペクトル

 ここでは,昭和68年から昭和63年までの6年間の中から東京港に高波をもたらした10擾乱を選び,約400ケースの周波数スペクトルを解析した.そして,周波数スペクトルの演算結果からJONSWAPスペクトルのパラメータとスペクトルの相似則について検討した.
 (1) スペクトルパラメータ
 JONSWAPスペクトルは発達過程にある風波の標準スペクトル形として提案され,次式で表される.
(6)
東京灯標のデータから,peak enphancement factor \gammaおよび\sigma_1,\sigma_2はパラツキが大きくものの平均的な値として\gamma=2.0,\sigma_1=0.08,\sigma_2=0.10であり,スケールパラメータ\alphaは無次元エネルギーと負の相関関係にあり,その形は次式となる.
(7)
また,無次元ピーク周波数f_m*(=f_mU_*/g)は,図一7に示してあるように,-1/3乗の勾配をもつベキ関数
(8)
で表される.しかし,両者は無次元エネルギーが2000を越えると,式(7),式(8)の関係から外れる傾向を示す.これは,風速が弱くなりもはや風波として存在できなくなり,ピーク周波数が低周波側に移行するためと考えられる.
 (2)スペクトルの相似則
 風域内で発達過程にある風波のスペクトルが相似形を保つことは多くの研究者により報告されている.ここでは,東京港の波浪スペクトルに関して相似則を検証した結果を述べる.図一8は波浪の発達,最盛期,減衰,減衰期終盤におけるスペクトルを描いた一例である.各スペクトルの図は規格化して示しており,また,実線は先に求めたJONSWAPスペクトルである.図からわかるように,発達,最盛期にはスペクトルの相似性は非常に良好な精度で成り立ち,JONSWAPスペクトルで相似形が表される.減衰期中盤においても比較的相似性はよく保たれている.しかし,減衰の終盤ではスペクトル形はニヵ所のピークをもつ,いわゆる二山形となり,相似形は成り立たない.

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式(6〜8)
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図ー7 ピーク周波数と無次元エネルギー
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図ー8 スペクトル相似則

4. 一点出力型による推算手法の比較

 ここでは,一地点出力型パラメータ法による波浪推算モデルとこれを改良したハイブリッド・パラメータ法波浪推算モデルについて検討する。また,有義波法およびスペクトル法についても比較検討のために試算を行っており同時に報告する.なお,一地点出力型パラメータ法(後藤ら,1989,1990)とスペクトル法および有義波法モデル(後藤ら,1988)については,既に著者らが報告しているため,ここではハイブリッド・パラメータ法の概要だけを述べる.
 (1) ハイブリッド・パラメータ法
 ハイブリッド・パラメータ波浪推算モデルは,パラメータモデルにうねりの効果を組み入れた波浪推算手法である.モデルの基本概念は,風波のスペクトルに相似則が成り立ち,一つのパラメータを追跡することによりその経時的変化を推定することが可能であると仮定したものである.
 風波の周波数スペクトルS(f)に相似則が成り立つと仮定すれば,周決数スペクトル形は次式から求めることができる.
(9)
ここで,Eはエネルギー,S_f(f)はJONSWAPスペクトル,f_mはピーク周波数である.このような考え方により,ハイブリッド・パラメータ波浪推算モデルは以下のように定式化される.すなわち,1.(g^2E/U_*^4)<2000場合は,風波であるとし,無次元波高と無次元周期の3/2乗則と無次元エネルギーと無次元フェッチの1乗則から,エネルギー平衡方程式
(10)
で方向別のエネルギーの変化を計算する.ここに,\bar{C}_gは平均周期に対応する群速度,Aは無次元エネルギーと無次元フェッチの1乗則の係数(1.8×10^{-4}),Bは無次元波高と無次元周期の3/2乗則(0.067),Cは3.83(=H_{1/3}/\sqrt{E}),\lambda(\theta)は方向分布関係を意味し,
(11)
である.
2.(g^2E/U_*^4)>2000場合は,風波からうねりに変化したとみなし,式(13)のスペクトルの相似則を用いて風波からうねりへのエネルギーの移行量を算定する.うねりとなったエネルギーはスペクトル成分S(f,\theta)で表し,
(12)
で伝播し,減衰するものとする.ここに,Dは減衰係数を意味する.
 なお,パラメータ法およびハイブリッド・パラメータ法の波浪推算では,後藤ら(1990)の検討成果をふまえて修正MitsuyasuのC_D則
(13)
を用いて摩擦速度を算定している。
 (2) 試算結果
 試算結果の一例として,解析データの中で最高波高を記録した昭和60年の台風8506号によるものを報告する.
与える風データは全計算点とも,東京灯標で観測された風向とU_{23}から前節による補正方法により求めたU_{10}である.また,各モデルとも方向分割幅,計算時間間隔,格子幅はそれぞれ22.6°,4分,2kmとし,スペクトルハイブリッド・パラメータモデルでは周波数分割数は0.01Hz,に固定した。
 図一9は上から風向・U_{10},推算波向,観測波高と推算波高,観測周期と推算周期を示したものである.図から,パラメータ法およびハイブリッド・パラメータ法の波高に関する推算値は実測値と良好な一致を示すことがわかる.一方,有i義波法は風速20m/s程度以上を越えると,実測値に比べ小さめな推算値となる.また,スペクトル法は短フェッチ海域の平衡スペクトル形の問題のため推算値はかなり低いものとなっている.なお,ハイブリッド・パラメータ法においてもピーク波高時の周期が実測値に比べ大きくなっており,また減衰時は逆に小さめとなっている.したがって,今後の課題として周期の推算精度の向上を検討する必要がある.

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式(9〜13)
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図ー9 波浪推算法の比較

5. おわりに

 得られた主要な結果は以下の通りである.
1.Wilson式を用いて波浪諸元から逆に海上風を推算することにより,設置条件の悪い風速データを海上風に近似することが可能な方法を提案した.
2.東京港の風波に関しても無次元波高と無次元周期の3/2乗則は精度よく成立する.また,係数は大阪湾で導かれた値を支持する.
3.風波のスペクトルには強い相似性があることが検証された.また,その特性は減衰期においてもある程度まで保たれている。

謝辞

本研究を遂行するにあたり,日本大学寺中啓一郎教授,中央大学服部昌太郎教授をはじめとする東京港気象海象特性調査検討会のメンバーに御指導・御助言を頂いた.ここに記して謝意を表す.

参考文献

後藤智明・小舟浩治(1988):現:地で簡単にできる波浪推算法について,第35回海岸工学講演会論文集,pp。222〜226.
後藤智明・末次広児・小舟浩治(1989):大阪湾の風と風波の関係,第36回海岸工学講演会論文集,pp.168〜172.
後藤智明・末次広児・小舟浩治(199◎):海上風の抵抗則と風波の発達則,海岸工学論文集,第37巻,PP.170〜174.
Toba,Y.(1985):Wind waves and turbulence, In「Recent Studies of Turbulent Phenomena」,eds.T.Tatumi, H.Maruo and H.Takami,Assoc.for Sci,Doc.,Tokyo,pp.277〜296.

湾口防波堤による津波波高の低減効果 後藤智明*・吉田行秀**・山木滋***

1. はじめに

 三陸沿岸は,過去に幾度となく津波の来襲を受けている地域である.最近の100年間においても,明治29年(1986年)および昭和8年(1933年)の三陸大津波といった高さ30mに達する巨大な津波,さらに南米からわが国まで太平洋を伝播してきた昭和35年(1960年)のチリ地震津波により大きな被害を被っている.
 三陸沿岸においては,津波対策事業のひとつとして湾口防波堤の建設が計画されてきた.最初の事業としては,チリ地震津波で被災した大船渡湾が選ぼれ,昭和43年に延長736mの湾口防波堤が竣工している.現在,釜石湾において計画延長1,660mの防波堤を施工中であり,さらに久慈湾においても計画策定されている.
湾口防波堤の津波に対する効果については,伊藤ら(1964),中村・林(1978)などに報告されているように,各々の港湾において計画された時点での適切な手法として数値計算・模型実験などを用いて検討されてきた.しかし,当時の検討手法においては,津波初期波形の研究が十分でなかったことや,実験の相似率,あるいは計算機の能力と計算技術などに課題が残されていた.
 現在では,津波初期波形として地震断層モデルを用いる手法,および,陸域への遡上を含む計算技術が確立され,痕跡記録などとの比較により,近地津波の打ち上げ高を精度良く再現できることが数多くの例により示されている.さらに,遠地津波に対しても,今村ら(1987),永野ら(1989)により太平洋を伝播する計算手法が用いられるようになり,日本沿岸における計算と接続することにより,その精度の検討が行われている.
 以上の背景を踏まえて,本研究では,遠地津波を含む上記の3津波・3地点を対象とし,最新の津波数値シミェレーション手法を用いて,既往津波の再現性を検討するとともに,湾口防波堤の津波低減効果を統一的に把握し,考察を行った.

*正会員 工博 運輸省港湾技術研究所水工部海洋エネルギー利用研究室長
**正会員    運輸省第二港湾建設局横浜調査設計事務所
***正会員 理修 (株)アイ・エヌ・エー新土木研究所

2. 計算方法

 2.1 太平洋伝播計算
 チリ地震津波の計算は,チリ沖から日本沿岸までの太平洋伝播計算と三陸沿岸における近海域計算の2種類に分けて行った.太平洋伝播計算は,今村ら(1987)の手法と同様に,コリオリカと波数分散性を考慮した線形Boussinesq理論を,球面座標系により表した次の支配方程式を用いた(後藤,1991).
(1)
(2)
(3)
(式)
ここに,Rは地球の半径,(\lambda,\psi)は緯度・経度座標,M,Nは各方向の線流量,\etaは水位変動,hは静水深,9は重力加速度,fはコリオリ因子である.
計算範囲は,太平洋全域を含むように南緯60°〜北緯60°,東経120°〜西経70°の範囲である.空間格子間隔は緯度・経度ともに10」(赤道距離で18km)である.地震断層モデルによよる鉛直変位を初期水位として太平洋全体の伝播計算を行い,次に述べる近海域計算では,ここで得られた水位を強制入力波として用いた.
 2.2 近海域計算
 近地津波およびチリ地震津波の近海域計算は,図一1に示す範囲で行った。空間格子長は,沖側から順に5.4km,1.8km,600m,2001n,100m,50mのように細分化し,全ての領域を同時に計算した。50m格子は湾口防波堤を含む湾内領域をカバーするように設定した.
格子長が200mよりも小さい領域では底面摩擦を考慮した次式で表される浅水理論を用いた(後藤・小川,1982).
(4)
(5)
(6)
ここに,nはマニングの粗度係数(=0.025),(M,N)は各々(x,y)方向の線流量,Q=\sqrt{M^2+N^2}である.また,格子長が200mよりも大きな領域では(5),(6)式から非線形項と摩擦項を除いた線形長波理論式を用いた.
 陸域への遡上は,格子長50mの領域でのみ考慮し,境界条件は岩崎・真野(1979)の方法を用いている.湾口防波堤の港口部においては流れの急縮・急拡に伴うエネルギー損失が考えられるが,ここでは考慮していない.
近地津波の初期水位は,相田(1977)により検討された断層モデルにより計算される鉛直変位を与えた.
 2.3計算ケース
 対象地点は,久慈・釜石・大船渡の3湾,対象津波は明治29年,昭和8年の三陸津波およびチリ地震津波の3津波とした.各々の津波来襲当時に相当する湾口防波堤のない地形条件と湾口防波堤が建設された地形条件の2種類について,計18ケースの数値シミュレーションを実施した.

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式(1〜6)
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(式)
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図ー1 近海計算領域

3. 最高水位の再現性

 3.1チリ地震津波の再現性
 計算例として,大船渡湾におけるチリ地震津波の再現計算の結果を図一2に示す.計算により得られた格子点の最高水位の分布を等水位線および代表的な地点での数値により示したものである.()内の数値は痕跡高である.また,計算による浸水域を併せて示した.湾口部では2m程度の水位が湾奥部で4m程度となる様子がわかる.
 図一3は,チリ地震津波に関して対象3湾の痕跡高と再現計算水位の比較を示したものである.大船渡湾では良好に一致:していることがわかる.しかし,若干ではあるが痕跡高の高いところで計算値が小さく,一方,痕跡高が低いところでは計算値が大きくなる傾向が見られる.痕跡高が大きい地点が湾奥部であることから,入射津波の周期特性が実際とやや異なったため共振の効果が十分に現れなかった可能性があると考えられる.また,湾の中央部および湾口部の大きな痕跡高に対しては,痕跡高の測定精度,痕跡高として周囲に比べて高い値を測定する傾向があること,等の問題とともに,計算水位は50m格子の平均的な値であるため,津波の局所的な挙動を再現できないこと,なども考えられる.
 一方,釜石湾では全比較地点で計算値がかなり大きい結果となった.久慈湾では痕跡高が湾内各地でほぼ一定であるのに対して計算値は4〜6mとかなりの幅があり,ぼらつきが大きい.久慈と釜石では湾の固有周期が大船渡湾に比べて短いことから,入射津波波形に含まれる比較的短周期の成分が太平洋伝播計算の過程で実際のものとずれてしまった可能性が考えられる.
 3.2再現性の評価
 計算の再現性を量的に評価するために,Aida(1978)により提案されている指標K,\kappa
(7)
(8)
を算出し,表一1および図一4に示した.ただし,通常とは逆に魚=(計算水位/痕跡高)とした.Kは痕跡高に対する計算水位の平均的な比率(幾何平均)であり,\kappaはそのばらつぎ(対数で表した標準偏差に相当)を表す.
 釜石湾における昭和8年津波,チリ地震津波を除くと,ほぼ20%程度の誤差範囲で再現性が評価できる.特に,大船渡湾はいずれの津波でも10%程度の誤差範囲で良好な再現性が得られた.釜石湾ではいずれの津波でも計算値が大きく,初期波形の問題よりは,沖側海底地形の精度の影響が大きいと考えられる。
 なお,再現精度に問題がある地点では,K値が1に近くなるように入射津波の振幅を補正した計算も考えられるが,ここでは湾口防波堤の効果の把握を主眼とするため,このような補正は行わなかった。

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式(7〜8)
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図ー2 最高水位分布(大船渡湾,再現計算)
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図ー3 痕跡高と計算水位の比較
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図ー4 既往津波の再現性
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表ー1 再現計算結果によるK,\kappa

4. 湾口防波堤の効果

 4.1 大船渡湾におけるチリ地震津波
 湾口防波堤が設置された条件のもとでの大船渡湾におけるチリ地震津波の結果を図一5に示す.また,図一6には,湾口防波堤の有無で比較した主な地点での最高水位を示す.
 湾口防波堤により津波の高さはほぼ半減し,最大で2m程度の高さとなる.浸水域は地盤高の極めて低い地域に限られる.また,先の図一2と比較すると,湾口防波堤背後に1.3mの等水位線に表される水位の谷が生じているとともに,湾中央部から湾奥にかけての水位上昇の様子が湾口防波堤のない場合とやや異なっている.
 図一7には湾奥部地点における水位時間波形の比較を示す.第1波のピークは変わらないが後続のピークは湾口防波堤により大きく減少している.また,湾口防波堤がある場合には時間の経過とともに短周期の成分が生じていることがわかる.
 これらの結果から,大船渡における湾口防波堤が,湾の共振特性を変化させることによりチリ地震津波の波高を減少させる効果が確認できた.さらに湾口防波堤外の隣接地点においても,最高水位が1.84mから1.58rnと減少しており,防波堤による共振特性の変化が堤外にも効果をもたらしていることがわかる.
 4.2波高低減効果
 このような湾口防波堤の有無により津波高低減効果を,防波堤内の代表的な地点(30点程度)での水位の比をとり,(7),(8)式と同様の指標で整理した.先の扇をここでは(湾口防波堤ありの水位/なしの水位)として用い,このときのK,\kappaを各々A,\alphaと表記する.Aは湾口防波堤による津波波高の低減率,\alphaは地点による低減率のばらつきを表す指標となる.結果を表一2および図一8に示す.
 大船渡湾における近地津波の場合を除くといずれの港湾でも津波による水位上昇をほぼ半減する効果(A=0.5〜0.6)がある.チリ地震津波の場合には,地点によるばらつきも小さく,防波堤内水位がほぼ一様に減少することがわかる.一方,近地津波の場合には,津波の周期が短いため湾内の小規模地形あるいは防波堤・埋立などにより局所的な水位が大きくなる場合があり,地点により効果のぼらつきが生じている.久慈湾でばらつきが大きいのは,各津波の来襲当時に比べて,防波堤・埋立・掘削などにより海岸地形が大きく変化していることが一因である.
 4.3湾口防波堤による周辺への影響
 湾口防波堤を設置した場合には,隣接した海岸への影響が懸念されるが,本計算結果により得られた主な影響としては次の点が挙げられる.
1.近地津波の場合には,湾口防波堤の外海側基部で反射波の影響により局所的に水位が大きくなるケースが見られた.
2.湾口防波堤からやや離れて隣接した海岸では,防波堤からの反射などの影響で水位が上昇する場合があるが,ほとんどのケースでは数10cm程度の水位上昇であり,特に顕著な影響は見られなかった.逆に,先の大船渡の事例のように,湾口防波堤により周辺海域を含めた振動特性が変化したため,堤外隣接湾においても水位が顕著に低減するケースも見られた.

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図ー5 最高水位分布(大船渡湾,現況計算)
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図ー6 湾口防波堤の有無による最高水位の比較
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図ー7 水位時間波形の比較
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図ー8 湾口防波堤による津波波高低減率
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表ー2 波高低減効果に関する指標A,\alpha

5. おわりに

 津波シミュレーションにより得られた結果を基に,最高水位等について解析し,既往津波の再現性および湾口防波堤の効果に関して考察した.主要な結論として以下の事項が得られた。
1. 3港湾における3津波は,ほぼ20%程度の誤差範囲内で再現された.特に,大船渡湾においては,近地・遠地,いずれの津波でも10%程度の誤差範囲で良好な再現性が得られた。
2. 湾口防波堤は,大船渡湾における近地津波の場合を除くといずれの湾でも津波による水位上昇量をほぼ半減する効果があることが確認された。ただし,周期が短い近地津波では,湾内の小規模地形あるいは防波堤・埋立などにより局所的に水位が大きくなる場合があり,注意が必要である.

参考文献

相田勇(1977):三陸沖の古い津:波のシミュレーション,地震研究所彙報,52巻,pp,71-101.
伊藤書行・土岐祥介・森平倫生(1964):長周期波に対する防波堤の効果に関する計算(第2報),港研報告,3巻,7号,pp.1-123.
今村文彦・永野修美・後藤智明・首藤伸夫(1987):1960年チリ沖津波に対する外洋伝播計算,第34回海岸工学講演会論文集,pp.172-176,
岩崎敏夫・真野明(1979):オイラー座標による二次元津波遡上の数値計算,第26回海岸工学講演会論文集,pp.70-74.
後藤智明(1991):遠地津:波の外洋伝播計算に関する検討,港研報告,30巻,1号,印捌中.
後藤智明・小摺由信(1982):Leap-frog法を用いた津:波の数値:計算法,東北大学工学部土木工学科,pp.1-26.
永野修美・今村文彦・首藤伸夫(1989):数値計算による沿岸域でのチリ津波の再現性,海岸工学論文集,36巻,pp,183-187.
中村龍二・林直樹(1978):釜石湾口防波堤による津波防止計画,第25回海岸工学講演会論文集,pp.585-588.
Aida,I.(1978): Reliability of a tsunami source model derived from fault parameters, J. Phys. Earth, Vol. 26, pp.57-73.

内湾海上風の地形依存性について 柴木秀之*・後藤智明**

1. はじめに

 風の推定法としては,各種風推算法,観測データの補間法,マスコンモデルによる方法などがあるが,いずれも摩擦を考慮した海上風への補正に問題が残されてきた.
 本研究では,外洋海上風を対象とした大気境界層理論に基づく海上風の推算手法について検討し,海上風観測データとの相関解析より手法の検証を行う.次に,陸地の影響を強く受けた内湾の海上風に焦点を当て,その特性,すなわち,地形の影響度を海上風観測データの解析により検討する.さらに,解析成果を踏まえ,気象図または1地点の海上風観測データから内湾全体の海上風分布を推定する手法について報告する.

*正員 工修 運輸省港湾技術研究所水工部海洋エネルギー利用研究室(研修生)
**正員 工博 運輸省港湾技術研究所水工部海洋エネルギー利用研究室長

2. 外洋の海上風

 (1)海上風の境界層理論
 自由大気から海面近傍までの大気は,気圧傾度力・コリオリカ・摩擦力がバランスし,高度とともに風向・風速は変化する.カルドンモデル(1969)では,境界層を渦動粘性係数一定としたエクマン境界層とコリオリカを無視し鉛直方向に風の対数分布を仮定した接地境界層に分離した.ここでは,従来モデルをさらに進め,境界層全てにおいて,前述した力学バランスを仮定した海上風の鉛直分布の解析解を求めた.この海上風モデルを,「境界層モデル」と呼ぶ.境界層モデルは,大気を自由大気と大気境界層の2層に分離し,自由大気は気圧傾度力とコリオリカ,大気境界層は気圧傾度力・コリオリカ・渦動粘性力がバランスする層とし,以下の仮定を置いた.
1. 大気は中立状態である.(水温・気温差は無視する.)
2. 渦動粘性係数は鉛直上方に直線的に増加する.
3. 大気境界層は,海面上約1000mとする.
 自由大気の力学バランスは地衡風平衡が近似的に成立し,複素速度を用いて表すと,
(1)
となる.ここに,w_g=u_g+iv_g,u_g,v_gは地衡風速のx,y成分,fはコリオリ係数,\rho_dは空気密度,Pは大気圧である.等圧線が曲率を持つと式(1)に遠心力項が加わり,傾度風の基礎式は,円筒座標表示で,
(2)
に書き換えられる.曲率半径rが非常に大きいときには,式(1)の地衡風となり,式(1),(2)ともに緯度と気圧分布が与えられると自由大気の風が計算可能となる.
一方,大気境界層の力学バランスは,式(1)に渦動粘性力の項を加え,
(3)
で表される.ここに,w=u+ivであり,u,vは海上風速のx,y成分,K_sは鉛直渦動粘性係数で鉛直上方に直線的に増加すると仮定し,カルマン定数\kappa=0.4,摩擦速度u*を用いて表すと,K_x=\kappa u*zとなる.
式(1),(3)から,気圧傾度力項を消去し,鉛直方向の風速差W=w-w_gを用い,さらに,
(式1)
とおくと,
(4)
が成立する.式(4)の解は,Bessel関数J_0(y),N_0(y)を用いて,
(5)
となる.今,境界条件として,
(式2)
が成立することから,式(5)は,
(6)
となる.式(6)が,境界層モデルの解であり,自由大気の風速w_gが与えられれぽ任意高度z(式(6)中のyに変換する場合,摩擦速度u*を与える必要がある.)における風速wが計算可能となる.海面の摩擦速度u*は,海上風w_{10}(海面上10m高度の風速),海面抵抗係数C_Dを用いて,u*=\sqrt{C_D}w_{10}で表される.C_D値は種々の提案式があるが,境界層モデルでは,Mitsuyasu(1984)のC_D則
(7)
を用いた.
 (2) 外洋海上風の特性
 緯度と傾度風速w_gが与えられると,式(7)より海上風の風速と偏向角(低圧部への吹き込み角)が導かれる.
 図一1は,北緯20度から50度まで10度間隔に,傾度風速と海上風の偏向角・風速との関係を示したものであり,高緯度ほど偏向角は小さく,風速比は増加する.
また,傾度風速の増加とともに,偏向角は大きく,風速比は低下する.なお,式(6)は,複素Bessel関数を含み取扱いが面倒なため,実用上の簡便式(風速比)として,図一1の関係より緯度別にベキ乗型近似解,
(8)
を求めた.ここに,a,bは係数であり,北緯35度では,a=1.69,b=0.735となる.
 (3) 海上風観測データと推算海上風の相関
 境界層モデルにより明かとなった海上風特性が,観測風において成立することを検証するために,外洋において風観測が実施されているブイのデータを用いて,気圧図から算定した傾度風と観測風の相関解析を行い,その結果と解析解との比較を行った.解析に用いた観測風は,21002ブイと21004ブイの観測風である.
図一2は,2地点の傾度風と海上観測風の風速相関を示したもので,実線はベキ乗型の回帰式,破線は境界層モデルによる緯度別のベキ乗型近似解である.近似解は,回帰式とほぼ一致し,外洋の海上風を十分推定できる.

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図ー1 緯度別の傾度風と海上風の関係
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図ー2 海上ブイの観測風風速と傾度風風速(推算風)との相関図と境界層モデルのべき乗型近似解

3. 内湾の海上風

 (1) 内湾海上風の地形依存性
 内湾は,周囲が複雑な陸上地形に囲まれ,この影響を受けて,複雑な風向・風速分布をしているが,次のように簡単なモデルを考えた.
 湾内一様に風が吹くと仮定すると,陸上は海上と比較して底面粗度が大きいため,風速が相対的に弱く,海上は風速が強い。風が陸上から海上へと吹く場合,底面粗度の減少に伴い,風の鉛直分布は次第に変化し,風速は徐々に増大する.もし,十分な吹送距離があると,海上風は外洋海上風の鉛直分布構造に漸近する.一方,陸上の起伏は,地形背後に風の極端に弱い領域を形成し,この背後から離れるとともに次第に風速は回復する.この現象は模式的に図一3のように描かれ,内湾海上風は吹送距離(F)と陸上地形の起伏の標高(H)ならびに起伏からの距離に関係することが推定される.この内湾海上風の地形依存性に関する考えを,東京湾・伊勢湾・大阪湾の海上風観測データの解析より検討した.
 (2) 内湾の海上風観測データ
 東京湾の海上風観測点は,東京灯標と第二海墾,伊勢湾は伊勢湾シーバース,大阪湾はMT局とし,解析に用いた海上風データは,東京灯標と第二海墾が1974年から1989年まで,伊勢湾シーバースが1984年から1989年まで,MT局が1984年から1987年までの毎時10分間平均風速とした.観測点によりデータ数は異なるが,いずれも高風速を記録した全97個の気象擾乱時(最大風速発生時刻の前後2,3日間)の測得記録とした.4地点の位置と16方位のフェッチ(有効吹送距離)を図一4に示した.
 海上風観測点のうち,東京湾は2地点あることから,海上風観測データを用いて,湾内の海上風分布を検討することができる.東京灯標と第二海墾の同時刻の風速相関を方位別に行うと,東京灯標の風速を基準とした2地点の風速比が直線回帰式の勾配から求められる.方位別の風速比は,図一5に示すように方位毎に差がある。図に合わせて,第二海塗と東京灯標の方位別のフェッチ比を示したが,風速比とフェッチ比はほぼ同じ変化傾向となり,フェッチが長いほど風速が大きくなることが明かとなった.
 (3) 東京湾・伊勢湾・大阪湾の海上風特性
 ここでは,傾度風モデルより計算した摩擦の影響を受けない自由大気の推算風と観測風との相関解析を行い,底面摩擦と陸上地形の影響を検討した.風推算点は,東京灯標,第二海墾,伊勢湾シーバース,MT局の4地点とし,解析データは前述した気象擾乱時のものとした.
風向相関は,傾度風速の10m/s間隔の階級別に傾度風向と同時刻の観測風向問で行い,全方位を対象とした一次回帰式\theta_{10}=\theta_g-\theta_aを求めた.\theta_{10}は海上風風向.
\theta_gは傾度風向,\theta_aは偏向角である.図一6は,4地点の傾度風速階級別偏向角を表したものであるが,大阪湾の高風速階級を除けぽ,理論解である境界層モデルの計算結果と同様に,風速の増加とともに大きくなり,理論解よりもかなり大きい偏向角となった.これは,内湾の底面粗度が外洋よりも大きいことに起因すると考えられる。方位別に見ると,同じ風速階級でも偏向角は幅を持つことから,東京湾の海域延長距離が最も長い方向を湾軸と定義し,10m/s以上の傾度風を対象に,湾軸と方位別の平均偏向角との関係について調べた。図一7は東京湾の2地点における湾軸(N-S)と方位題偏向角の関係を表した図であるが,湾軸と角度を有する方位ほど偏向角は大きくなる傾向が示された.これは,他の3つの湾でも同様であった.
 次に,観測風の風向を基準に方位別に風速の相関解析を行った.回帰式は,境界層モデルの近似解として用いたべキ乗型w_{10}=aw^b_gとした.w_{10}は海上風の風速,w_gは傾度風速,a,bは回帰係数である.境界層モデルの近似解より,3つの湾の代表緯度35度では係数b=0.735となることが示されたことから,ここでは比例定数aのみを求めた.なお,傾度風向は1方位程度の誤差が含まれるものと判断し,対象とする方位の±1方位を合わせた3方位のデータを用い,方位別に相関解析を行った.図一8は結果の1例であり,実線の回帰式は傾度風速10m/s階級毎のデータ重心点を結んだ破線よりも高風速に相当するデータ群より求めた.これは,各階級内の観測風の上限により適合した回帰式を求めるための処理である.方位別風速相関解析より,東京灯標の方位別回帰係数aとフェッチの関係は,図一9のように表される.係数aとフェッチの変化傾向は良く一致し,フェッチが長いほど係数は大きくなる.すなわち,海上風速は増大する.この傾向は,他の3地点でも同様であった.
 (4) 内湾海上風の地形依存性の定式化
 相関解析より明かとなった回帰係数aとフェッチFの関係が,内湾で普遍的に成立することを確認するために,4地点の方位別回帰係数とフェッチとの関係を検討した.回帰係数aとフェッチFとの相関で求まる回帰式を第一次近似とすると,相関データ群の数点は,回帰式から離れて分布する.そこで,さらに陸上地形の影響について検討を行った.陸上地形は標高Hと風観測点までの距離Xによって特徴付けられるため,無次元長さX/Hを導入し,この値から陸上地形の影響を検討した.
 各相関データと第一次近似式のフェッチ軸方向の差\delta Fと方位別のX/Hとを比較した結果,X/Hが小さいほど,\delta Fは正の方向に増加する傾向があった.これは,陸上の起伏によりその背後に風が弱い領域が形成され,背後のフェッチが相対的に減少することを表している.
これより,フェッチから\delta Fを差し引いた仮想フェッチF」を新たに定義した.F」と回帰係数との関係は図一10のように表され,データ群の特性は実線の回帰式で良く近似された.図に実線で示した特性線は,フェッチの増加とともに回帰係数が増加し,フェッチ無限大で大気境界層理論より計算された緯度35度の係数に漸近することを示している.この特性線を,第二次近似とし,海上風と傾度風との関係を,
(9)
で表した.ここに,F」は仮想フェッチ(F-\deltaF),w_gは傾度風速,w_{10}は海上風の風速である.式(9)は,傾度風速から海上風を推定する経験式である.このように,陸上地形を仮想フェッチとして組み込むことで,内湾に共通の海上風推定式が求められた.

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式(9〜)
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図ー3 内湾海上風の地形依存性に関する模式図
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図ー4 東京灯標と第二海墾,伊勢湾シーバース,MT局の16方向フェッチ
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図ー5 東京灯標と第二海墾の方位別風速比とフェッチ比の関係
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図ー6 傾度風速階級別の海上風向の偏向角
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図ー7 方位別海上風向偏向角と湾軸との関係
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図ー8 東京灯標の傾度風と海上風の風速相関図
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図ー9 東京灯標における方位別の海上風の風速回帰係数とフェッチの関係
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図ー10 内湾海上風を推定する回帰係数の特性線

4. 内湾海上風分布の推定手法

 自由大気の風と海上風の風向が湾内で一様と仮定すると,内湾各地点のフェッチFと無次元長さX/Hがあらかじめ方位別に求められれば,内湾海上風の経験式(第二次近似)に,1地点の自由大気の推算風を代入し,内湾の任意地点における海上風を推定することができる.海上風の風向も,風速階級別または風向別の偏向角(図一6または図一7)から推定でき,また,湾内に海上風観測データがある場合には,観測点と内湾各点の方位別風速比が経験式から計算できるため,これを用いて面的な海上風分布を推定できる,東京湾にこの手法を適用した例を,図一11に示した.図は,東京灯標の海上風観測風速を1.Oとした場合のNE方向の海上風速分布である。さらに,内湾各地点の自由大気の推算風を詳細に計算することにより,推算風の風向偏向角を風速階級別または風向別に決定し,方位別の経験式に代入すれぽ,気象擾乱の空間スケールも考慮した内湾海上風の風向・風速分布も推定可能である.

図ー11 東京灯標の観測風を基準にした東京湾の海上風分布例
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figure

5. おわりに

 本研究で得られた成果は,以下のとおりである.
1. ブイデータを用いて大気境界層モデルの理論解を検証した結果,傾度風(自由大気の推算風)を外洋海上風へ補正する手法として利用できることが明かとなった.
2. 東京湾の2観測点の海上風観測データの方位別相関解析から,海上風にフェッチへの依存性があることが示された.大阪湾・伊勢湾の海上風観測データの解析からも同様な傾向が示された.これは陸上と海上の底面粗度の違いにより,風の鉛直分布構造が変化するためである.
3. 傾度風と海上風観測データの相関解析から,内湾海上風とフェッチに関する経験式(第1次近似)を導き,さらに,陸上地形の効果を組み込んだ仮想フェッチを導入し,内湾海上風を一括して取り扱うことが可能な経験式(第2次近似)を得た,
4. 傾度風と海上風観測データの相関解析から,海上風は,傾度風速増加とともに低圧部への偏向角が大きくなり,かつ風向は湾軸に沿う方向に偏向する特性があることが明かとなった.
5. 経験式を用いることにより,自由大気の推算風または1地点の海上風観測データから,内湾全体の海上風分布を推定する手法について提案した.

謝辞

本研究で用いた観測データは,東京都港湾局(東京灯標),運輸省第二港湾建設局(第二海量),運輸省第五港湾建設局(伊勢湾シーバース),運輸省第三港湾建設局(大阪湾MT局)の好意により提供されたものである.また,本研究を行うにあたり,愛媛大学工学部柳哲雄教授から御指導,御助言を,運輸省港湾技術研究所海洋エネルギー利用研究室青野利夫氏から有意義な討論を得た.ここに,記して謝意を表す.

参考文献

Cardone,V.J.(1969): Specification of the wind distribution in marine boundary layer for wave forecasting, New York Univ. School of Eng. and Sci., Rept, GSL-TR69-1,131P.
Mitsuyasu,H.andT.Kusaba(1984):Drag coefficient over water surface under the action of strong wind,J.Natural Dias.Sci.,Vol.6,No.2,pp.43-50.

日本沿岸の極大波浪の出現特性について 青野利夫*・佐藤一央**・後藤智明***・池田明弘****

1. まえがき

 港湾施設の設計波あるいは確率波を算定するためには,港湾施設の耐用期間内に遭遇する極大波浪の大きさ,およびその長期的な出現特性を把握することが極めて重要である.また,気象および波浪の出現特性を明らかにすることは,海面上昇などの近年関心を集めている地球温暖化問題の基礎資料を与えるという意味でも価値がある.
 一般に,波浪の極値統計においては,極大波高をランダムに出現する値と考える.しかし,極大波高の出現傾向に長期的なトレンドや何らかの周期性が含まれると極値がランダムに出現するという統計解析上の仮定が満たされなくなり,トレンドや周期性を除去した確率波高の算定が必要となる.気候学では各種の気象要素に準2年周期(QBO),エル・ニーニョ現象とそれに伴う南方振動(ENSO),惑星の会合同期に由来する4年,5年,10年の周期,濠た太陽黒点の活動周期に対応する11年,22年,80年の周期特性の存在が確認されている(河村ら,1986).このような周期特性が全て,極大波の出現特性に含まれているとは限らないが,いずれにしても極大波にこのような周期成分やトレンドが含まれているのならばその特性を明らかにする必要がある.
 本研究では,日本沿岸における年最大波浪の長期的な出現特性を波浪推算値から検討する.さらに,年最大風速,年最大台風太平洋の平均海面水温についても年最大波浪と同一の解析対象期間について資料を収集し,これらの相関解析を行うことにより年最大波浪の海域特性,経年変化特性,周期性について考察する.また,年最大波の出現特性に基づいた確率波算定に関する考察結果についても合わせて報告する.

*正会員 工博 運輸省港湾技術研究所 水工部 海洋エネルギー利用研究室
**       運輸省港湾技術研究所 水工部 海洋エネルギー利用研究室
**正会員 工博 運輸省港湾技術研究所 水工部 海洋エネルギー利用研究室室長
****      新日本気象海洋株式会社 沿岸技術部

2. 解析データおよび解析方法

 (1) 年最大波浪
 まず,年最大波浪を算定する地点として,日本沿岸における代表的な16箇所の波浪観測点を小舟ら(1988)の解析結果に基づいて選択した.年最大波を抽出する期間についてはできるだけ長期間であることが望ましいが,本研究では波浪推算を実施するための天気図データが整備されている1955年から1991年までの37年問を年最大波浪解析期間とした.
 現在,各港湾局で実施されている波浪観測はデータの蓄積が進んでおり,最長で20年間分の観測波浪データが蓄積されている.しかしながら観測値だけでは解析対象期間を全て網羅することができないため,本研究では期間内に起きた顕著な擾乱600ケースについて波浪推算を実施した.用いた波浪推算モデルはスペクトル法で,気象庁の波浪予測業務や港湾構造物の被災時の波浪算定などに利用され実績のあるMRI法である.計算領域は図一1に示すように日本沿岸全域を網羅するように設定されている.また,計算格子は緯度・経度座標を用いており格子サイズは1度(約85kmから111km)としている,さらに沿岸に近づくにつれて陸地の遮蔽効果を精度よく表現するため1/3度格子(約28kmから37km)を用いている.波浪推算手法の詳細については後藤ら(1992)を参照されたい.
 図一2は,推算波高と観測波高を比較した結果の一例である.多少ばらつきはあるものの推算値と観測値との相関は良好で,本研究で選択した16地点の波浪観測点で同様の相関関係が得られている.本来,観測波浪を用いた解析が最も精度的には高いと思われるが,波浪観測地点毎の観測年数の違いが大きく,地点毎の重みづけも困難であることから,本研究では,各年毎の推算波高値の中で各年の最大波高値を年最大波とした.したがって,ここで取り扱われる年最大波浪は極値統計でいう期間最大値資料の部分極値資料に相当する.またデータの等質性の問題から台風と低気圧は異なる母集団に属すると考えられるが,本研究ではデータ数その他の制限からこのような区別を行わなかった.
 (2) 年最大風速,平均水温および年最大台風
 本研究では,極大波浪の出現特性と相関があると考えられる気象要素として風速,海面水温,台風を取り上げる.以下にその概要を示す.
 年最大風速に関しては,波浪観測地点に最も近傍の気象台または測候所の台帳データから37年間分の風速値を読み取り,.解析データとして抽出した.風速は,高波浪をもたらす擾乱の強さを表す指標となるが,今回は風向別の集計を行っておらず,また風速も陸上風であることから,厳密な意味で必ずしも極大波浪と物理的な対応関係があるわけではない.
 本研究では,大気・海洋系のエネルギーの経年変化特性を表す指標として太平洋全域の年平均海面水温を取り上げた.平均的な海面水温の変動は,大気の対流活動を促し気候システムの形成に強い影響iを与えることが知られている.エル・ニー二滋で知られている東部赤道太平洋の海面温度と極東地域の天候変動の高い相関特性はその典型的な例である.海面温度の変化が気象擾乱の発生に影響を与え,年最大波浪の出現特性と関係する可能性がある.
 本研究で用いる台風データは,対象期間内に発生した全ての台風の経路と中心気圧を,気象庁発行の気象要覧から読み取りデータベース化したものである.台風の長期統計量として発生個数があるが,個数については多くの研究例があり海面水温との関係やその周期性についても議論されている.しかしながら,日本沿岸で発生する高波浪との相関は殆どなく,むしろ台風との距離および風速との相関関係が考えられる.そこで本研究では,各波浪観測点毎に有効台風係数(ETC)を定義して,その年最大値を年最大台風諸元の代表値とした.有効台風係数は,式(1)に示すように台風が対象地点に最も近づいた時の距離の逆数に,そのときの中心示度を乗じたものである.
(1)
ここで,R:対象地点に最も近づいた時の距離,P_c:その時の中心示度である.また有効台風係数の単位はhPa/kmとなる.本来ならば,風の効果を取り入れるためには台風常数が必要となるが,全ての台風で台風常数が算定されていないため,ここでは中心示度で風の効果を代表させている.
 極大波の出現特性に影響を与えるものとして,この他にも低気圧,季節風が上げられるが,今回の解析には用いていない.ただし,平均海面水温によってその影響を間接的には考慮していると思われる.

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図ー1 波浪推算用格子図
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式(1)
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図ー2 推算波高と観測波高との相関

3. 解析結果と考察

 (1) 年最大波,年最大風速と平均水温の経年変化
 年最大波高の経年出現特性をより明確化するため,対象期間の平均値からの偏差を算定し,5年間の移動平均によって平滑化を行い,短期間の変動成分を取り除いた経年変化量を求めた.図一3と図一4は,年最大波高(\delta H_m),年最大風速(\delta U_m),平均水温(\delta \theta_m)と有効台風係数(\delta ETC_m)のそれぞれの偏差の経年変化を,日本沿岸の12地点について示したものである.また,各図の横軸は西暦年の下2桁である.年最大波浪の経年変化特性は,地点毎に異なっているが長期のトレンドと比較的長周期の変動特性が含まれているようである.年最大波高,年最大風速および平均水温の経年変化特性は,以下のようである.
 1.太平洋側では,年最大波の変動が大きく単一のピーク値をもつ地点と周期的な変動を示す地点がある.また,全期間では減少傾向にあるのが認められる.
 2. 日本海側では,例外はあるものの周期的な変動が強い.
また,長期的な変動は少なく安定した傾向を示している.
 3. 年最大風速は,全体的に低下傾向にあるが1985年前後から増大する傾向が認められる.また,地点的には東北・北海道では周期変動成分が減少する傾向にある.
太平洋の平均海面水温は,1960年頃から1975年頃まで降温,その後昇温となる.
 4. 有効台風係数については,年最大風速とほぼ同様の傾向を示し,年最大風速には台風の影響が強く現れていると考えられる.
 (2) 年最大波浪の周期性
 年最大波浪の出現特性には,長期のトレンドや周期性が見られるため,スペクトル解析によって周期特性を検討する.ここでは,データ数が37と小さいためパルススペクトル解析(筒井ら,1992)によってスペクトルを算定した.図一5は,スペクトル解析結果の一例で,横軸は年を表している.この図では,26,19,15,14,10,9年の周期成分の存在が認められる.図一6は,各地点毎のスペクトル解析結果から得られた周期成分を示したもので,図中の黒ぬき記号はスペクトル密度が最も高い周期を意味する.図から明らかなように,極大波高には多くの周期成分が含まれており10年(惑星の会合同期),11年(太陽黒点の周期)から最大で28年までの周期成分が存在する.また,卓越した周期成分は,日本海側では16年〜19年と比較的類似した周期であるのに対し,太平洋側では13年〜28年と大きく変動しているのが認められる.
 (3) 相関解析による年最大波の特性
 対象地点間の年最大波の経年変化について相関値を算定し,年最大波高に関する相関マトリックスを求めた.相関値の高い地点をまとめて海域区分を行うと大まかではあるが,オホーツク海沿岸,三陸・東北沿岸,関東東部沿岸,本州南岸から四国・九州の太平洋沿岸,南西諸島沿岸,日本海側の南部・中部沿岸および日本海側の北部沿岸の7海域に分類できる.この区分は,年平均波浪に関する小舟ら(1988)による区分と一一致する.
 年最大波高の経年変化に対して,気象要因である年最大風速,平均海面水温,有効台風係数の変化がどの程度寄与しているかを明らかにするため,各地点毎に重相関解析を試みた.図一7は,各地点における各気象要素の寄与率の変化を示したもので,平均海面温度の寄与率は太平洋側で高く,日本海側で低い特性を示している.年最大風速は,むつ小川原と伊王農で高い寄与率を示し,有効台風係数は,四国・九州の太平洋沿岸で比較的高い寄与率を与えている.このことは,太平洋沿岸での海面水温の変動によって引き起こされる気象擾乱が,年最大波の変動に強い影響を与えることを示唆している.

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図一3 極大波高と平均海面水温の経年変化
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図一4 極大風速と有効台風係数の経年変化
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図ー5 スペクトル解析結果例
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図ー6 各地点毎の周期成分
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図ー7 各地点での極大波高に対する寄与率

4. 年最大波浪の出現特性と確率波

 前節までで検討した年最大波高の経年変化特性は,多方面において有用な情報を与えると考えられるが,ここでは年最大波浪の出現特性が確率波の算定に及ぼす影響について考察する.
 図一8は年最大波浪の出現特性が大きく異なる日本海側の輪島と太平洋側の油津の2地点について1991年から遡って1年単位で解析期間を長くしていった場合の50年確率波高の変化が示されている.ここで,縦軸は確率波高を極大波高の平均値で無次元化したもの,横軸は解析期間である.輪島のように極大波浪の出現分布が周期的と考えられる場合は,1周期以上の高波浪期間が入る程度の短い解析対象期間で確率波高を求めても大きな誤りがないと推定できる.一方,油津のような孤立的な極大波高出現期間がある場合は,その期間を組み入れた解析が不可欠となる.したがって,確率波の算定においてこのような極大波の出現特性を予め把i握していないと,設計波を過大や過小に評価することになる.

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図ー8 50年確率波の解析期間による変化

5. まとめ

 37年間にわたる日本沿岸の年最大波浪を,波浪推算結果から算定し,その経年変化特性について検討した.さらに,年最大風速,太平洋の平均海面水温,有効台風係数といった気象要素との関係についても議論した.得られた結論は,以下のとおりである.
 1. 年最大波浪の経年変化は地点毎に異なった特性を示し,長期のトレンドおよび10年から28年の周期変動成分を有する.
 2. 年最大風速は,1985年まで低下する傾向にあったがそれ以後上昇する傾向がみられる.また,有効台風係数とは類似の傾向にある.平均海面水温は,1975年から昇温傾向にある.
 3. 太平洋側では,年最大波高に対する平均海面水温の寄与率が高く,このことは海面水温の変動が気象の変動を誘発し,年最大波の変動を引き起こすことを示唆している.
 4. 年最大波の出現特性の形式によって,確率波解析の解析対象期間の変化が確率波に与える影響が示された.

謝辞

本研究を行うにあたって,運輸省港湾技術研究所水工部海洋エネルギー利用研究室研修生柴木秀之氏から貴重な助言を受けた.ここに謝意を表する.

参考文献

河村武編(1986): 気候変動の周期性と地域性,古今書院,pp.304.
小舟浩治・菅原一晃・後藤智明(1988):日本沿岸の波候特性について,第35回海岸工学講演会論文集,土木学会,pp.232-236.
後藤智明・亀山豊・柴木秀之(1992):日本沿岸波浪の推算システム,海洋開発論文集Vol.8,土木学会,pp.47-52.
筒井茂明(1992):沖縄における台風災害の周期性と防災力,第47回土木学会年次学術講演会,第2部門,土木学会,pp.
  1036-1037.

沿岸波浪観測値を利用した重回帰波浪予測 青野利夫*・後藤智明**・佐藤典之***

1. はじめに

 港湾構造物の施工・維持管理あるいは航路の安全確保を考慮する上で,的確な波浪予測情報が必要不可欠である.代表的な波浪予測モデルとしては,有義波法やスペクトル法などの波浪推算モデル,重回帰モデルなどの統計モデル,また波浪推算モデルと統計モデルを組み合わせた物理因子重回帰モデルなどがある.なかでも,観測波浪値,観測風速値,気圧分布値を説明変数とする重回帰モデル[須田・湯沢(1983),小舟ら(1987)]は,現地で比較的簡便に運用できるシステムとして用いられている.しかしながら,気圧分布データの作成に人手がかかることや,予測地点の現時刻の波高を説明変数としているため高波浪の立ち上がりが真値である観測波浪に対して遅れるといった問題があった.物理因子重回帰モデルは,この問題を解決しているが,気象データの作成と入力にかかる労力が重回帰モデルよりも大きく,現地で簡便に行うにはまだ問題がある.
 本研究では,これらの課題を克服するための初歩的な研究として,予測対象地点を除いた日本沿岸において取得された観測波浪データだけを説明変数とする重回帰波浪予測モデルに関して検討じた.これは,日本近傍で通常見られるような大気現象の南西から北東方向への移動と類似の傾向が波浪についても想定できるという考えが基礎となっている.したがって,各観測地点の波高値の経時変化から地点間の平均的な出現時刻のずれ(出現時間差)がわかれば,この出現時間差を重回帰モデルに取り入れることにより,気象データを用いずに比較的良好な波浪予測が可能であると考えられる.また,このモデルを用いることにより,天気図から気圧値を読みとる作業がなくなり,全国の波浪データを集中管理するシステムを構築すれぼ,半自動的な波浪予測システムの運用が可能となる.

*正会員 工博 運輸省港湾技術研究所 水工部 海洋エネルギー利用研究室
**正会員 工博 運輸省港湾技術研究所 水工部 海洋エネルギー利用研究室長
***正会員 工修 東亜建設工業(株〉土木本部 設計部

2. 沿岸観測波浪の相互相関解析

 高波浪の出現特性が,大気現象の南西から北東方向への移動と類似した傾向にあれば,太平洋側と日本海側でそれぞれ波浪観測地点間相互の波高変化に相関が存在する.したがって,沿岸波浪の出現時間差が算定できれば,この出現時間差を重回帰モデルに取り入れることにより予測精度を向上させることができる.そこで,有義波高について波浪観測地点間で相互相関解析を行い,地点間の出現時間差を求めることにした.
 (1) 相互相関解析方法
 日本沿岸の34地点で2時間ごとに観測された有義波高を用い,相互相関解析を行った.解析対象地点を図一1に,各地点の波浪データの得られている期間を表一1に示す.解析対象期間は,全地点でほぼ共通にデータが得られている1981年〜1990年の10年間とした.なお,高波浪の出現時間差を的確にとらえるため,解析には,各観測地点の有義波高データのうち10年間の平均値より大きい高波浪時のデータを用いた.
 相互相関解析は,2地点間の時間差を0時間から2時間ごとに順に増やし,おのおのの時間差に対応する相関係数を計算することにより行った.この方法によれば,最大値が1となる正規化された相互相関係数が求められ,対象地点間での相関の比較も可能となる.
 (2) 相互相関解析結果
 相互相関解析は,34地点全てを対象とし2地点間の総当たりで月ごとに行った.このうち,深浦と日本海側の地点との4月の相互相関を図一2に,むつ小川原と太平洋側の地点との4月の相互相関を図一3に示す.図の横軸が対象地点と比較地点との時間差,縦軸が相関係数を表す.なお,日本海側の地点と太平洋側の地点との相互相関解析も行ったが,ほとんど相関が認められなかったためここには掲載していない。図一2を見ると,明確な相関係数のピークが現れており,平均的にみるとある出現時間差を持って波浪が伝達していることがわかる。しかも,南西から北東に向かって出現時間差が小さくなっており,高波浪の出現が大気現象と同様に南西から北東に向かって移動していくことが確認できる.一方,図一3では明確なピークが現れていない。これは,日本海側の海岸が南西から北東への大気現象の移動方向に面しているのに比べ,太平洋側の海岸が移動方向の反対側に面しているため,南西から北東へ連続的に移動するような高波浪のケースが少ないためである。
全地点の相互相関解析結果をもとに,沼本沿岸での平均的な波浪の移動速度を1月・4月・7月・10月について求めたものを図一4〜図一7に示す。図中の数字は,日本海側,太平洋側それぞれについて±0を基準とした波浪の出現時間差を時間単位で示したものである。日本海側の時間差は九州から北海道までがほぼ1日で,冬期が長く,春期・夏期が短いのに対し,太平洋側では夏期を除いて1日半程度とほぼ同じである。なお,太平洋側の夏期に関しては,地点間の相関が小さく,出現時間差の精度が他のものに比べ多少劣っている可能性がある.

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図ー1 波浪観測地点
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表ー1 波浪観測地点と観測期間
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図ー2 深浦と日本海側の波浪観測地点との4地点の相互関係
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図ー3 むつ小川原と太平洋側の波浪観測地点との4月の相互関係
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図—4 1月の波浪出現時間差
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図—5 4月の波浪出現時間差
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図—6 7月の波浪出現時間差
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図—7 10月の波浪出現時間差

3.重回帰波浪予測モデルの構築

 (1) 重回帰波浪予測モデルの構築方法地点間の出現時間差を考慮した重回帰式は次式で表される.
(1)
ここに,H(t)はt時刻の予測波高(目的変数),H_i(t-\delta t_i)は’時刻より\delta t_i時間前のi地点の波高(説明変数),a_0,a_1は重回帰係数,\epsilon(t)は残差,nは説明変数の数である.(1)式中の重回帰係数は,連立1次方程式
(2)
の解として得られる.ここに,Nはデータ数である.
 重回帰モデルの場合には,モデルの予測精度は的確な説明変数の選択に左右されるが,説明変数の数とその組み合わせによって様々なモデルが考えられるため,一意的に決めることは難しい.説明変数の選択にはいくつかの方法があるが,一般には,AIC最小化法が用いられる場合が多い.AIC最小化法を用いれば,客観的な変数選択が可能になるが,今回説明変数として用いる波浪データには欠測が多く,組み合わせによってデータ数Nが大きく変動するため,説明変数として同一サンプル数のデータが必要となるAICによる変数選択は困難である.そこで,予測対象地点に近い地点の方が出現時間差が小さく相関が高いことは相互相関解析からも明らかであるので,本研究では,予測時間以上の出現時間差を持つ地点のうち相関係数の高い地点から順に数点を選ぶ方法を採用した。説明変数の数は,必要以上に用いるとモデルの安定性を欠くことから,1ないし2とした.
 図一8〜図一10は,深浦の1986年1月の有義波高の観測値(細線)と,1986年を除く1981年〜1990年の9年分の1月のデータで作成した3種類の重回帰モデルによる6時間後予測値(太線)との比較である。ここで,予測値の推定精度を判定するためには何らかの基準が必要となる.そこで,予測値が,
観測値−0.3m≦予測値≦観測値+0.3m
(観測値≦1mの場合)
観測値×0.7≦予測値≦観測値×1.3
(観測値>1mの場合)
の範囲にある場合を的中とし,予測値に占める的中の割合(的中率)を計算して推定精度の基準とした。各図の右側の図が予測値と観測値の対応を示しており,破線の内部が的中範囲を示す.
 図一8は,出現時間差を無視し,相関係数の最も高い秋田と酒田の2地点を説明変数として用いた場合の予測結果である.的中率と相関係数は高いが,2地点の本来の出現時間差はともに0であるので,高波浪の立ち上がりが真値である観測波高に比べちょうど6時間だけずれているのがわかる.これに対し,図一9は,出現時間差が6時間である輪島と金沢を説明変数とした場合の予測結果である.図一8と比べて,的中率は下がるものの高波浪の立ち上がりのずれは生じていない.
以上,2つのモデルによる予測結果をふまえ,本研究では,以下に示す2段階の予測を行うこととした。まず,予測時間以上の出現時間差を持つ地点のうち相関係数の高い順に1ないし2地点を選び,(1)式に示す重回帰モデルを作成する(第1段階).次に,(1)式中の残差\epsilon(t)を目的変数とし,予測時間より出現時間差の少ない地点を説明変数として,(3)式により重回帰モデルを作成する(第2段階).
(3)

ここに,b_0,b_jは重回帰係数,\delta(t)は残差,mは説明変数の数である.第2段階における変数選択には,予測時間より出現時間差の少ない地点の中から相関係数の低い順に1ないし2地点を順にモデルに組み込み,高波浪の立ち上がりのずれがなく的中率が最も高くなる地点を取る方法を採用した.2段階予測モデルによる予測結果を図一10に示す.他の2つの予測モデルと比べると,的中率が最も高く,立ち上がりのずれもほとんど生じていない.
 (2) 2段階重回帰波浪予測モデルによる予測結果
 2段階重回帰波浪予測モデルにより,深浦・むつ小川原の2地点の波浪予測を行い,モデルの評価を行った.
重回帰係数の算定に用いた波浪データは,1981年〜1990年の10年分のデータのうち,予測結果を評価する年度を除いた9年分である.予測モデルは,1地点につき,1月・4月・7月・10月それぞれに対し6・12・24・48時間後予測の計16ケースを作成した.全ケースの的中率を示したものが表一2と表一3である.深浦では,7月の的中率が高く10月が低い.これに対し,むつ小川原ではどの月もほぼ同じ的中率である.これは,波高の平均値が日本海側では夏が低く冬が高いという季節変動が明確に現れるのに対し,太平洋側では明確に現れないことによるものと思われる.
 予測結果のうち,1月の有義波高の予測結果を図一11〜図一18に,予測に用いた目的変数と重回帰係数を表一4と表一5に示す.2地点とも,予測時間に相当する出現時間差を持った波浪観測地点があるため,24時間後までの予測では立ち上がりのずれがなく,実用上問題のない予測精度を確保できていることがわかる.しかし,予測時間が長くなるに従って目的変数と説明変数の相関が低くなるため,予測精度は低下している.特に,48時間後予測は,予測対象地点と48時間の出現時間差を持った波浪観測地点が無いため,予測が困難である.
 なお,本論文には掲載していないが,有義周期についても同様に予測を行っており,有義波高と同程度以上の精度の予測が可能であることを確認している.

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式(1〜3)
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図—8 有義波高予測結果(1月,1986年)
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図—9 有義波高予測結果(1月,1986年)
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図—10 2段階予測による有義波高予測結果(1月,1986年)
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図ー11 深浦の6時間後の有義波高予測結果(1月,1986年)
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図ー12 深浦の12時間後の有義波高予測結果(1月,1986年)
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図ー13 深浦の24時間後の有義波高予測結果(1月,1986年)
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図ー14 深浦の48時間後の有義波高予測結果(1月,1986年)
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図ー15 むつ小川原の6時間後の有義波高予測結果(1月,1989年)
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図ー16 むつ小川原の12時間後の有義波高予測結果(1月,1989年)
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図ー17 むつ小川原の24時間後の有義波高予測結果(1月,1989年)
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図ー18 むつ小川原の48時間後の有義波高予測結果(1月,1989年)
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表一2 深浦の予測波高の的中率
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表一3 むつ小川原の予測波高の的中率
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表ー4 深浦の1月の重回帰係数
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表ー5 むつ小川原の1月の重回帰係数

4. おわりに

 従来の重回帰波浪予測モデルのようにデータ入力に手間のかかる気圧や風速のデータを用いずに,予測対象地点を除いた観測波浪データだけを説明変数として,24時間先までの予測が可能な重回帰波浪予測モデルを開発した.本モデルは,地点間の高波浪の出現時間差を考慮して説明変数の選択を行っているので,従来の重回帰波浪予測モデルで問題となっていた高波浪の立ち上がりのずれの問題を解消している.さらに,第2段階で,出現時間差の小さい地点を説明変数として観測値と予測値の間の残差を予測しているので,全体としての予測の精度が向上している.
 一方,説明変数の出現時間差が大きくなるに従って目的変数と説明変数の相関が低くなるため,長期に予測では予測精度が低下する.また,当然ながら南西に位置する地点の予測を行う場合には有意な出現時間差を持った波浪観測地点がないため,本方法での波浪予測が難しい.

参考文献

小舟浩治・橋本典明・亀山豊・久高将信(1987):重回帰式を用いた波浪予測手法の適用について,第34回海岸工学講演会論文集,pp.167-171.
坂本慶行・石黒真木夫・北川源四郎(1983):情報量統計学,共立出版株式会社,pp.138-142.
須田熈・湯沢昭(1983):波浪予測に基づく外海シーバースの待ち行列に関する基礎的研究,土木学会論文集,第339号
  ,pp.177-185.

陸上地形の影響を考慮した内湾海上風の推算モデル 柴木秀之*・後藤智明**

1. はじめに

 近年空港島の建設,港湾施設の拡充,海洋性レクレーション基地の開発などに見られるように内湾海域が高密度に利用されるようになり,内湾海域の円滑な利用と防災対策のための気象・海象予測が重要な課題となってきた.内湾の気象・海象は,周辺を囲む陸上地形から大きな影響を受けているが,陸上地形が複雑であるため,海上風は空間的に大きく変動し,従来の風推算モデルでは十分な予測を行うことが困難であった.本論文では,著者ら(1992)が提示した海上風の陸上地形への依存性を定式化した内湾海上風の経験則を利用する内湾海上風推算モデルを新たに提案する.推算モデルは,経験則から求められる風場を初期条件として与える経験則・マスコンハイブリッドモデルであり,このモデルを伊勢湾に来襲した代表的な気象擾乱に適用する.観測風と推算値とを比較することからモデルの現地適用性を検証するとともに,台風モデルによる風推算結果との精度比較を行う.
また,提案した内湾海上風モデルが,波浪推算・高潮推算等においてしばしば用いられるモデル気象擾乱の風場についても応用が可能な手法であることを報告する.
 さらに,3次元粘性流体の基本式を解く気流数値計算モデル(3次元SOLAモデル)の適用性ならびに将来性についても言及する.

*正員 工修 運輸省港湾技術研究所水工部 海洋エネルギー利用研究室(研修生)
*正員 工博 運輸省港湾技術研究所水工部 海洋エネルギー利用研究室長

2. 内湾海上風推算モデル

 (1) 3次元マスコンモデル
 3次元マスコンモデルは,研究例も多く,陸上地形の影響を受けた風場を再現可能な手法として期待されている(日本気象協会,1988).モデルの基本方程式は質量保存則を束縛条件とする変分式で記述される.
 今,大気を非圧縮性と見なすと,質量保存則は連続式で表される.
(1)
ここで,x,y,zは直交座標系における水平及び鉛直座標,u,v,wは風のx,y,z成分である。従来の方法では,観測風の内挿値または傾度風の海上補正風等を初期の風場条件として風ベクトルの空間分布を作成し,この分布を質量保存則を満足するように調節する。初期に与える風場は真値に近いと考えられることから,調節をできる限り小さくとどめることが望ましい.このため,調整値(補正値-初期値),すなわち真値からの誤差の2乗和を最小とするように補正風場を計算する方法がとられる.調整値の誤差を変分方程式で表すと,
(2)
ここで,u,v,wは質量保存則を満たすように調整された風速成分,u_0,v_0,w_0は初期風速成分,\lambdaはラグランジュの未定乗数,a_1,a_2はガウスの精度係数であり,
(3)
により決定される.ここで,\sigma_iは観測値が含む誤差の重みであり,調整した風速成分からの初期値の偏りを表す.
a_1,a_2の比は調整した風速の水平成分と鉛直成分の相対的な大きさを定める係数となる.
 式(1)の最小解を持つオイラーラグランジェ方程式は,
(4)
であり,これらの方程式は次の境界条件,
x方向の境界 n_x\lambda\delta(u)=0
y方向の境界 n_y\lambda\delta(v)=0
z方向の境界 n_z\lambda\delta(w)=0
を満足しなければならない.ここに,\delta()は括弧内の量の第1変分,n_x,n_y,n_zはそれぞれx,y,z方向の外向きを正にとった単位法線ベクトルである.式(4)をそれぞれx,y,zで微分し,変分方程式に代入するとポアソン型微分方程式,
(5)
が得られる.この式より\lambdaを求め,これを式(4)に代入すると,質量保存則を満たすように調整されたu,vwが得られる.なお,底面・側面境界条件は,∂\lambda/∂n=0である.
 (2) 境界層上端の境界条件
 境界層上端の自由大気の風は,傾度風・台風(Myersモデル)ハイブリッド風推算モデルにより計算され,台風圏内では台風モデルの風,台風の影響範囲外では気象図の気圧分布から計算される傾度風モデルの風となるように空間的な補間操作を行う.ただし,本研究で対象とした範囲が内湾に限定され,台風が湾に接近した強風時を推算期間とすることから,台風モデルのみにより風推算を行う.
 台風モデル(Myersモデル)の気圧分布は,
(6)
で表される。ここで,rは台風中心からの距離,P(r)はr地点における気圧,P_cは台風中心の気圧,、\delta Pは台風の中心示度,r_0は台風半径である.傾度風速は,式(6)の気圧分布より,
(7)
で求められる.ここで,fはコリオリ係数である.また,台風の移動に伴って生じる場の風は,式(7)の傾度風速と台風の進行速度Vに比例するものと仮定し,
(8)
で与えられる.台風モデルによる海面摩擦の影響を受けない自由大気の風は,式(7)で求められる傾度風速と式(8)で求められる場の風をベクトル合成することにより求められる.
 (3) 経験則・マスコンハイブリッド風推算モデル 著者ら(1992)により,東京湾・大阪湾・伊勢湾の観測海上風と傾度風(推算風)の相関解析が行なわれた.
その結果から,内湾海上風速(w)は,傾度風速(w_g)ならびに陸上地形特性を代表する有効吹送距離と陸上地形標高から求められる仮想フェッチ(F」)の2つのパラメータを用いた次式で表される簡単な経験則,
(9)
で近似されることを提示した.また,内湾海上風の風向偏向角が,傾度風速に依存することも明らかにした.これら観測データから得られた内湾海上風の特性を風推算モデルにおいて生かすために,経験則から求められる風場を最下層の初期条件としたマスコンモデルによる風推算を行う.従来のマスコンモデルは,観測値等を内挿するか,傾度風モデルにより推算される風を初期条件として与えている.マスコンモデルの特性として初期条件を真値とみなし,初期値からの誤差を最小とする風場を質量保存則を満たすように全格子点で求めるため,調整された解が初期値に強く依存することが問題となる.また,観測風速として陸上風を用いる場合に,海上への換算を行うことが必要となる.そのため,適切な情報を初期値として与えることに注意する必要がある.
 この初期条件を,観測海上風から求めた経験則を生かして設定することが改良モデルの特徴である.また,風の鉛直分布は種々の設定方法(例えば,対数分布を仮定したもの等)があるが,本計算では,境界層上端において与えた自由大気の風と最下層で与えた経験則に基づく初期風を線形内挿して与えることとする.
 (4) 気流数値計算モデル
 気流数値計算モデル(3次元SOLAモデル)は,3次元の粘性流体の連続式と運動方程式を直接的に解く方法であり,構造物背後に生じる渦の再現等,小スケールの風場推算について適用されている例が多い.
 この計算は,初期条件に影響されることなく収束解を求めることが可能である.このモデルの問題点は,海面及び陸上面の境界条件をどのように設定するかにあるが,本研究では摩擦なしの条件により計算結果の特性を検討する.

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式(1〜9)

3. 伊勢湾海上風への適用性に関する検討

 (1) 計算に用いた伊勢湾の地形
 図一1に示す伊勢湾を中心とする周辺の陸上部を含む領域を風推算の対象範囲とする.マスコンモデルの計算格子は,水平方向を2.Okm×2.Okm格子で近似し,鉛直方向は,海上近傍の推算精度を向上させるために最下層から層厚20mを50層,層厚50mを10層の60層に分割した.ここに,最下層を20mとするのは,最下層の中央値が海面上10mの風(海上風の代表高度)に相当するためである.図一1に,最下層が海域となる計算格子の配置と陸上部の等高線ならびに風の観測地点を示す.
 伊勢湾は,南北方向に海域が広がり,陸上は海抜Om地帯が北側に広がり標高は低いが,湾の東西方向は500mを超える山岳地帯に囲まれている.
 (2) 対象気象擾乱及び推算対象期間
 風推算を行う気象擾乱は,伊勢湾に来襲した代表的な台風である伊勢湾台風(5915号)とする.この台風は,伊勢湾の東側を通過したため,湾内全域において35m/sを超える風速が記録された.推算対象期間は,1959年9月26日12:00〜27日3:00とする.
(3)風推算精度の検討
図一2は,従来の高潮・波浪推算で広く用いられている台風モデルにより推算された1959年9月26日21:30(伊勢湾台風最接近時)の風速分布である.推算条件としては,風の低減率0.66,風の偏向角30°と仮定している.伊勢湾内全域において,SW方向にほぼ一様な風が吹く結果となった.これに対し,図一3は,提案した内湾海上風モデルにより推算された同時刻の風速分布である.
風速の出力は,最下層の中央値(海面上10m)を抽出したものであり,海上風の代表高度に相当する.
 内湾海上風モデルによる推算結果は,陸上地形を考慮していない台風モデルの推算結果に比べて,伊勢湾,三河湾,衣ケ浦湾のそれぞれの湾軸に沿った方向に風向が変化している.また,半島等,局所的な陸上地形の起伏の影響を受けて風向が偏向しており,伊勢湾の定性的な風速・風向出現特性と一致する.さらに,湾の南から西側は相対的に風が弱く,海域を吹送するとともに次第に風速が増大しており,内湾海上風の特性が良く表現されている.
 次に,伊勢湾を代表する風観測地点として図一1に黒丸で示した津・名古屋・伊良湖を選び,観測風と推算風との経時変化の比較を行う.図一4は,津における風速と風向の比較結果を示したものであり,黒丸が観測風,点線がモデル台風による推算風,実線が内湾モデルによる推算風である.伊勢湾台風が最接近した9月26日21:30以降,観測風は急激に風速が減少するのに対して,台風モデルの推算値は逆に再び強まる傾向が見られる.一方,内湾モデルの推算値は急激に風速が弱まり,観測風と良い一致を示している.図一5は名古屋における比較結果であるが,最大風速発生時前後の変化を比較すると,台風モデルは強めの推算値となるのに対して,内湾モデルは観測風と同程度の風速が再現されている.また,観測風の風向は21:00以降S系であるが,台風モデルの推算風向はSからWSWへと偏向する.これに対し,内湾モデルの推算風向は伊勢湾湾軸方向であるSを維持し,観測風向と同様の傾向を示している.図一6に示す伊良湖も同様に,内湾モデルの推算結果は観測風と良い一致を示している.以上のことから,本研究で提案した内湾モデルの推算風は陸上地形の影響を強く受けて複雑な変化を示す内湾の風向・風速の傾向を良く再現していることがわかる.
 (4) 初期風場の推算結果への影響に関する検討
 本研究で提案した内湾海上風モデルは,傾度風を上空の境界条件とし,陸上地形効果を組み入れた内湾海上風の経験則を初期条件の設定に利用する改良型マスコンモデルである.従来のマスコンモデルは,観測風を除けば,陸上地形の効果を含まない外洋風推算モデルの結果を初期条件として与えている.マスコンモデルが初期条件に強く依存する特性を有する点から考えると,初期条件の設定方法に問題があった.一方,著者らの経験則は陸上地形による大局的な海上風の変動を考慮できるが,局所的な気流の集中・発散等を見積もることが難しかった.
このような問題を内湾海上風の経験則とマスコンモデルを組み合わせることにより,解決できるものと考えた.
 図一7は,台風モデルにより推算された海上10m高度の風を最下層の初期風場として与えるマスコンモデルの推算結果である.湾軸に風向が偏向する傾向は推算されているが,海域の風速はほぼ一様であり,吹送距離に依存する傾向は見られない.図一4から図一6に破線(TEST風と表示)で示した代表点の推算風経時変化から見ると,モデル台風の推算結果と傾向が似ている.このように,初期条件の設定如何で,マスコンモデルによる推算結果は違いが生じる.
 (5) 3次元気流数値計算モデルによる試算
 粘性流体の連続式と運動方程式を直接的に解く,3次元気流数値計算モデルにより,伊勢湾を対象とした試算を行う.図一8は,初期風速を30m/s,風向をWとする場合の1時間経過後の風速分布である.特に,陸上近傍の風は,マスコンモデルよりも滑らかに計算されており,一部の区域では逆風が計算されている.
 この計算法の問題点は,1時間分の計算を行うのに要するCPU時間がEWSで約10時間程度となり,膨大な計算時間を要する点である.また,今回の計算では考慮しなかった地表・海面の抵抗の組み込み方法である.さらに,気温・水温の効果も低風速時には考慮する必要がある.課題の多い手法であるが,風場の直接解法であることから,将来有力な推算手法になるものと考えられる.

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図ー1 伊勢湾の最下層計算格子及び陸上部の等高線
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図ー2 台風モデルにより推算された風速分布(伊勢湾台風:1959年9月26日21:30)
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図ー3 内湾海上風モデルにより推算された風速分布(伊勢湾台風:1959年9月26日21:30)
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図ー4 津の観測風と推算結果の風向・風速比較
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図ー5 名古屋の観測風と推算結果の風向・風速比較
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図ー6 伊良湖の観測風と推算結果の風向・風速比較
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図ー7 台風モデルの風を初期値とした場合の推算風の風速分布(伊勢湾台風:1959年9月26日21:30)
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図ー8 3次元気流数値計算モデルによる伊勢湾の風場計算結果(初期風速30m/s,風向W)

4. モデル気象擾乱の推算手法に関する考察

 陸上地形の影響を受けた風場の推定手法のうち,実測風内挿法は観測データを用いることから,実際の風場に比較的近いものを再現するには優位な手法と言える.ただし,陸上風を海上に換算する必要があること,ならびに港湾構造物の設計等に用いるモデル気象擾乱の風場に適用できないこと等が問題点として挙げられる.本研究で提案したモデルは,自由大気の傾度風(気象図から計算するか,台風モデルにより計算する)を上層境界条件とし,内湾海上風の経験則を初期風場の設定に利用していることから,このような問題点にも対応可能なモデルである.
 マスコンモデルによる伊勢湾の風計算は,波浪・高潮推算の外力場計算として同時に計算することが可能であるが,EWSで約1.0時間から2.0時間を要する.このため,波浪・高潮推算等に適用する場合の計算効率を良くするために,あらかじめ風向別,風速階級別の風推算を実施し,全計算格子点について上空傾度風の海面への補正係数を設定しておくことがより実用的な方法として考えられる.モデル気象擾乱の計算についても,上空の境界条件である傾度風を入力することにより,海上10m高度の風速に瞬時に変換可能である.

5. おわりに

 周辺地形の影響を強く受ける内湾海上風の推算を効率良く実施する手法を提案し,現地への適用性について検証した.以下に主要な成果をまとめる.
 1. 伊勢湾における台風5915号(伊勢湾台風)来襲時を対象として内湾海上風推算モデルの適用性を調べた.
代表点における観測風と推算風の経時変化を比較した結果,提案した内湾モデルの結果は観測風と良好な一致を示すことが明らかとなった.特に,内湾海上風モデルは,陸上地形を考慮していない台風モデルに比べ,湾軸に沿う方向に風向が変化している様子が再現できる.
 2. 本研究で提案した内湾海上風推算モデルは,傾度風推算結果を上層境界条件とし,先に著者らが提案した陸上地形効果を組み入れた内湾海上風の経験則による風を初期条件とする改良型マスコンモデルである.マスコンモデルは,初期条件に強く依存することから,陸上地形の効果を含まない外洋風推算モデルの結果を初期条件にすると,適切な風場が得られない等の問題があった.
内湾海上風の経験則とマスコンモデルを組み合わせることにより,この問題点が改善された.
 3. 将来的に実用化されると考えられる3次元SOLAモデルを用いて現地地形下で風場計算を行った.
このモデルは,最下層の抵抗を適切に与えることが困難であること,膨大な計算時間を要すること等から,実用段階に至っていない.しかしながら,局所的な風場が滑らかに計算できること,陸上地形により遮蔽された区域における逆風の再現等,他の手法に比べて定性的に妥当な結果が得られることが確認できた.
 4. 提案した内湾海上風推算モデルは,上空の傾度風の推算値を境界条件として用いることから,波浪推算・高潮推算に適用されるモデル気象擾乱を対象とする風推算にも応用が可能である.

謝辞

本研究を行うにあたり,愛媛大学工学部柳哲雄教授から御助言を,運輸省港湾技術研究所海洋エネルギー利用研究室青野利夫氏から有意義な討論を得た.ここに,記して謝意を表す.

参考文献

柴木秀之・後藤智明(1992):内湾海上風の地形依存性について,
  第39回海岸工学論文集,第39巻,pp,141-145.
日本気象協会(1988):内湾の海上風と波浪の推算に関する研究,pp.1-90,

カテゴリカルモデルを利用した波浪予測の適用性 駒口友章*・佐藤勝弘**・後藤智明***・青野利夫****

1.緒 言

 波浪予測に適用可能な統計モデルとしては,重回帰モデル,判別型モデル,自己回帰モデルなどの様々なモデルが提案されている.このうち,重回帰モデルの適用性や予測精度については,既に基本的な検討が行われており,適用対象や利用目的によってはかなり有効な情報を与えることが確認されている(小舟ら,1987).しかしながら,重回帰式中の観測波浪の項の寄与率が大きく,これによって予測精度が決定されると共に,予測波高が実測波高よりも遅れて発達する傾向がある.このため,現地で実際にこのモデルによって施工管理を行う場合には,予測実行時の直前の波浪観測値を用いて予測値を補正して利用する(駒口ら,1991,1992)などの工夫が行われている.また,波浪予測の利用面からみると,必ずしも予測値が連続量として利用されるわけではなく,海象が急変する時期を除き,工種毎に設定された基準波高に対して,作業開始時の予測波高が大きいか小さいかを施工可否の判断材料に用いる場合も多い.一方,判別型モデルは,まず,気圧配置パターンの変化に対応する波浪の変化を調べ,その結果を利用して予め決められた基準波高(例えば作業限界波高)に対する将来の波浪の大小変化を簡便に判別することを目的としており,気圧値の変動情報を有効に取り込むことによって,波浪観測値が無い場合にも,実用的な精度の良い波浪の判別予測を行うことが可能と考えられる.
 本研究では,1.過去の地上天気図上の気圧配置を,日本を含む広範囲を覆う32個の代表点の気圧値でデジタル化した後,対応する時期の波浪観測値を判別型モデルで解析し,気圧配置の変化に対する日本沿岸の波浪の変化を調べる.
 2.さらに,上記の解析結果を利用して,波浪の判別予測を実施し,予測地点ごとの判別型モデルによる波浪予測の適用性を検討する.

*正会員 工博 日本テトラポッド(株) 応用水理研究所
**正会員 工修 日本テトラポッド(株) 応用水理研究所
***正会員 工博 東海大学教授 工学部土木王学科(前運輸省港湾技術研究所海洋エネルギー利用研究室室長)
****正会員 工博 東亜建設(株)技術研究所(前運輸省港湾技術研究所海洋エネルギー利用研究室)

2. カテゴリカルモデルによる波浪の判別解析

 (1) カテゴリカルモデルの適用方法
 本研究では,1987年〜1991年の5年間の連続した気象庁の地上天気図から,図一1に示す32個の代表点の気圧値の変化を読み取り,これと対応する時期について日本沿岸の4地点(むつ小川原,常陸那珂,深浦,石狩湾新港)の波浪の変化を,判別型モデルを用いて調べる.このとき,32個の代表点の気圧値の集合は,気圧配置パターンを近似的に表しているものと仮定する.
 波浪の判別解析では,AIC(赤池情報量規準)の最小化と要因増加法を組み合せた坂元の判別型モデル(坂元,1985)を適用する.このモデルは,式(1)で計算されるAICを最小とする説明変数を分割表の比較によって逐次選択すると共に,説明変数のカテゴリーの区分を自動的に行い,最適な判別モデルを得ることが可能である.
(1)
目的変数I_0に対してk個の説明変数の候補が考えられる場合に,説明変数の集合(I_1,,…,I_k)をI,その任意の部分集合をJとおき,IとJのとる値をそれぞれi,jとおくと,判別モデルのAICは次式となる.
(2)
ここに,n(i_0,J):変数I_0,Jのとる値(i_0,J)に関する同時観測度数,n:サンプルのサイズ,n(J):変数Jに関する周辺度数,C_0,C_j:変数I_0,Jの総カテゴリー数である.
 要因増加法は,目的変数と説明変数の中の1つの組み合せの中から,AICが最小となる説明変数を選択した後,残りの説明変数の中からさらにAICが小さくなる説明変数を逐次選択していく方法である。この結果,AICが最小となる組み合せを最適変数とする.本研究では判別型モデルの適用において,目的変数は予測対象地点の10時と16時の波高とし,説明変数は毎日9時と21時の連続した地上天気図から読み取った32点の気圧値とする.
 (2) 波浪の判別解析の結果
 図一2に,むつ小川原および石狩の波高の判別予測に対して最も有効な情報量を与える代表点の位置を示す.これらの図によれば,選択された代表点はいずれの場合も2,3個であり,予測地点は選択された代表点を結んだ重心点付近に位置する。また,表一1に各予測対象地点について,判別型モデルによって選択された説明変数の組み合せを期間別に示す.表中の記号Pがは代表点であり,i=3,4,5はそれぞれ予想時刻,12時間前,24時間前の地上天気図の気圧値であることを示し,j=1〜32は代表点の位置を表している.また,各季節は3〜5月を春季,6〜8月を夏季,9〜11月を秋季,1〜2月および12月を冬季と定義した.
 この表から,いずれの場合も選択された説明変数の数は少なく,最大でも深浦(春季)の4個である.また,いずれの地点でも日本列島を挾んで北東のゾーン(北海道北東沖)と南西のゾーン(九州南西沖)の代表点が選択される傾向がみられるが,日本海沿岸の両地点では,大陸側の代表点が選択される場合が多くなっている.この結果は,日本海沿岸では選択された代表点が主に西高東低の季節風時の気圧配置パターンに対応することを示すものと考えられる.
(3)分割表に基づく波浪予測の方法
 表一2,3にむつ小川原の春季の波浪の判別解析の結果を示す、表中の説明変数X(2),X(3)は,各々代表点No.5とNo,18における24時間前の気圧値であり,最適なカテゴリー数は6x2個である.また,目的変数X(1)は10時と16時のむつ小川原の波高であり,カテゴリー数は4個である.これらの表から,例えばNo.5の気圧値が階級5,No.18の気圧値が階級1に属する場合(気圧階級51)には,波高階級4となる確率は88.5%であり,気圧配置がこの階級区分となる場合には,1m以上の高波浪が来襲する可能性が高い.一方,気圧階級61に属する場合にも高波浪となる確率が大きいが,この場合はその階級区分に属する波浪の観測度数が少ない.このため,波浪予測の方法は各階級中の波高の出現度数に対して出現頻度を乗じた数を出現強度と定義し,その大きさを判定基準として波高の判別予測を行う方法とする.

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式(1〜2)
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図ー1 気圧配置を代表する測点網と予測対象地点
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表一1 要因増加法とAIC最小化によって選択された説明変数の組み合せ
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図ー2 判別型モデルによって選択された代表点の位置(図中の黒丸)
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表ー2 階級別の波高の出現頻度
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表ー3 各変数の意味と各々の階級の内容

3. 波浪の判別予測の結果および考察

 図一3は,判別型モデルの適用期間を通年および季節別に分けた場合の波浪の判別予測の適中率を示す.それぞれの基準波高としては,作業限界波高1mを採用(波高階級4に対応)し,実測波高が1m以下で予測結果が作業可能と判別された場合,および実測波高が1m以上で予測結果が作業不可能と判別された場合を予測適中とする.また,適中率は全予測数に対する予測適中の占める割合を求める.
 まず,通年の波浪の解析結果を利用した場合では,むつ小川原の適中率が,年間を通じて60%程度以上であるが,それ以外の地点ではいずれも40%前後となっている.この結果は,解析対象となる波浪データ量が多くなっている反面,季節風時に特有な気圧配置パターンが十分に認識できなくなるものと考えられる.これに対して,季節別の波浪の解析結果を利用した場合は,むつ小川原および常陸那珂の波高の判別予測の適中率は,春季には各々74.1%および70.7%に上昇したが,その他の季節の適中率はいずれもたかだか50%程度であった.さらに,1m以上の高波浪が来襲した場合の適中率を調べると,春季には80%以上となったが,その他の季節は低い適中率にとどまった.この結果は,太平洋沿岸の地点では,春一番による高波浪のような比較的明確な気象パターンの変化には,判別予測が有効であり,作業不可能に対する危険リスクも小さくなるが,夏季から秋季にかけての台風のように,気圧配置の変化が急速で,かつ高波浪時の欠測が多いような場合には,判別予測の適中率が低下するものと考えられる.一方,日本海沿岸の石狩湾新港および春季を除く深浦の適中率は全般的に良好であり,海象条件が急変し易い秋季に対しても70%程度以上であった.この結果は,日本海沿岸のように主に季節風によって発生・発達した波浪が来襲する地点では,気象パターンの認識による波浪の判別予測が有効であることを示している.
 以上のように,判別型モデルによる波浪解析の結果を適切に用いれば,数地点の気圧値の変化に着目するだけでも,実用的な波浪の判別予測が可能である.また,太平洋沿岸における春季や日本海沿岸における秋季のように,特に季節風の影響による波浪が卓越して来襲する時期には,判別予測の精度が十分であることがわかった.

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図ー3 波浪の判別予測の適中率

4. 判別型モデルによる波浪予測の適用性

 気象パターンの変化を認識することによる波浪の判別予測は,波浪特性が気圧配置の変化等の気象パターンによって明確に区分できることを前提としている.また,波浪予測の精度は,判別型モデルを適用するデータの量や質によって大きく依存することは避けられない.このため,前述したように,気象パターンが明確であり,かつデータの量も豊富な季節風時の高波浪を予測する場合には,判別モデルによる波浪予測は十分な予測精度が期待できるが,夏季から冬季にかけての台風の影響が卓越する高波浪を予測することは困難である.
 図一4は,著者の一人(駒口,1993)が日本海沿岸各地に高波浪をもたらした低気圧による擾乱を抽出し,それぞれの高波が出現する直前の大陸の高気圧およびこれに対応する低気圧の中心の位置を調べた結果である.この図からわかるように,日本海に高波浪をもたらす低気圧は,東経140°E〜160°Eおよび北緯40°N〜50°Nの範囲に位置していることが多く,一方,大陸の高気圧は東経120°E〜130°Eおよび北緯30°N〜40°Nの範囲内に位置する.
本研究において判別型モデルによって得られた季節風時の解析結果は,このような傾向を支持しており,特に日本海沿岸では高波浪をもたらす特有の気圧配置パターンが存在することを示している.
 また,本研究で用いた判別型モデルは与えられた説明変数の集合から,情報量が最大となる組み合せと最適なカテゴリーの区分を選択するものであり,目的変数の性質を表わすための最適な説明変数が存在しない場合でも判別モデルを得ることがある.表−4,5に深浦の春季の波浪の判別解析の結果を示す.表中,選択された説明変数は4個であり,X(2)およびX(4)は代表点No.5およびNo.3における12時間前の気圧値,X(3)はNo.27における24時間前の気圧値,X(5)はNo.6における予想時刻の気圧値である。また,各々の説明変数の最適なカテゴリー数は総て2個である。この表によれば,選択された説明変数がいずれも気圧階級1に属する場合には,予測波高が波高階級2および3(波高1m以下),波高階級4(波高1m以上)となる可能性は同程度となる.さらに,X(2)の気圧値が階級2に変化する場合については,波高階級4の出現度数が30であるのに対して,それ以外の波高階級の出現度数の総和は32であり,このような場合には出現強度の大きさによる波浪の判別予測が困難になることがわかる.したがって,このような場合には得られた判別モデルは,安定した最適モデルではない可能性があるので,利用には十分な注意が必要である.
 以上に示したように,判別型モデルは必ずしも最適モデルが得られるとは限らないが,この結果を適切に用いれば,適用海域や適用期間によっては,他の統計モデルと同程度以上の十分な波浪予測精度が期待できる.特に季節風による波浪のように,気圧配置の変化パターンが安定している場合には,実用的な判別予測が可能である.
しかしながら,特異気象による波浪の場合には,解析対象となるデータ量が非常に少なくなることもあって波浪予測の精度はあまり期待することはできない.

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図一4 日本海に高波浪が発生する直前の高気圧および低気圧の中心の位置
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表ー4 階級別の波高の出現頻度
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表ー5 各変数の意味と各々の階級の内容

5. 結 言

 本研究では,地上天気図上の気圧配置パターンを代表点の気圧値で近似的に表わし,気圧配置の変化に対応する沿岸波浪の変化を判別型モデルを用いて解析した.さらに,波浪の判別解析結果を利用して波浪予測を実施し,予測対象地点ごとの波浪予測の適用性を検討した.本研究で得られた主要な成果を要約すれば,以下の通りである.
 1. 判別型モデルを利用することにより,日本沿岸4地点の波浪観測値を目的変数として判別解析を行った.
その結果,波浪の変化を判別予測する為に選ばれた最適な説明変数は,いずれも2,3個であり,予測対象地点は選択された代表点を結ぶ重心点付近に位置することがわかった.
 2. 波浪の判別解析の結果を利用して波浪予測を実施した.その結果,太平洋沿岸および日本海沿岸のいずれの地点でも,特に季節風時の気圧配置パターンに対応する波浪の判別予測の適中率は非常に良好であったが,太平洋沿岸の台風による波浪が来襲する時期などの適中率は低めとなった.
 3. 判別型モデルによって必ずしも最適な判別モデルが得られるとは限らないが,解析結果を適切に用いれば,適用海域や適用期間によっては他の統計モデルと同程度以上の波浪予測精度が期待できる.
 なお,今後の課題としては,観測例の少ない特異な気象パターンによる波浪を対象とする場合について,判別予測の方法をさらに検討する必要がある.また,予測の対象となる事象がカテゴリカルであり,その解析対象となるデータ量が豊富であれば,基本的に判別型モデルの適用が可能なことから,簡便な波向予測への応用(駒口ら,1994)なども考えられる.

 最後に,波浪観測データを快く提供して頂いた運輸省港湾技術研究所海洋水理部海象調査研究室および北海道開発局小樽開発建設部小樽港湾建設事務所の関係各位に対して厚く謝意を表明します.

参考文献

小舟浩治・橋本典明・亀山豊・久高将信(1987):重回帰式を用いた波浪予測手法の適用について,第34回海岸工学講演会論文集,pp.167-171.
駒口友章(1993):わが国沿岸における異當波浪とその予知に関する研:究,京都大学学位論文,211p.
駒口友章・佐藤勝弘・進藤信博・窪内篤(1994):類似気象パターン認識による波向予測の試行,土木学会第49回年次学術講演会講演集,pp.676-677.
駒口友章・進藤信博・河合紀章・木村克俊(1991):海上工事の施工管理における波浪予測の運用について,第38回海岸工学論文集,pp.961-965.
駒口友章・松岡道男・進藤信博・木村克俊・窪内篤(1992):浜益漁港における波浪予測の運用について,第39回海岸工学論文集,pp.1056-1060.
坂元慶行(1985):・カテゴリカルデータのモデル分析,共立出版,221p.

北海道南西沖地震津波の伝播特性について 柴木秀之*・見上敏文**・後藤智明***

1. はじめに

 1993年7月12日22時17分に発生した北海道南西沖地震津波は,死者・行方不明者が200名を超える大災害をもたらした.この津波の研究上特筆すべき点は,日本海沿岸の沖合波浪観測点で,津波の波形と流速が観測されたことである.これらの記録は強い浅水変形の影響を受けず,振幅も50cm程度であった.観測された津波の規模とデータ量は,過去に例を見ないものである.
 現在実用化されている津波数値計算の精度検証は,ほとんどが計算値と痕跡高・検潮記録との照合のみである.痕跡高から得る情報は,津波の時空間規模から考えると,瞬間的でかつ局所性が強い.また,検潮記録は津波の波形を正確に表さないことが,Satake et al.(1988)により指摘されている。したがって,直接観測された津波波形による数値モデルの精度検証は,新しい視点による試みであり,より現象に忠実な計算が要求される.
 本論文では,今回の津波観測記録を利用すべく,日本海を伝播する津波に関する数値計算を行い,観測値と計算値との波形比較を行う。この比較結果から,計算モデルの伝播計算精度について考察する.さらに,計算によって拡張される時空間情報を用いて,日本海を伝播する津波の特性と陸棚上の応答特性について解析する.

*正会員 工修 (株)エコー 第一技術部 解析調査課
**正会員    (株)アルファ水工コンサルタンツ 技術開発部
***正会員 工博 東海大学教授 工学部土木工学科 (前運輸省港湾技術研究所 水工部 海洋工ネルギー利用研究室長)

2. 日本海全域を対象とする津波数値計算モデル

 (1) 津波の基本方程式と計算モデル
 津波の運動は,流速を海底から水面まで鉛直積分した非線形長波の式(1)(2)(3)で記述される.
(1)
(2)
(3)
ここで,(x,y)は静水面にとった空間座標,tは時間,\etaは水位変動,Dは(D=h+\eta)で表される全水深,hは静水深,(M,N)は各々(x,y)方向の流量フラックス,Q=\sqrt{M^2+N^2},gは重力加速度,Fは底面摩擦係数,fはコリオリ係数,A_nは水平渦動粘性係数である.渦動粘性項は従来の実用的な津波モデルでは考慮されていない.津波の支配方程式と数値解法の理論は,後藤・佐藤(1993)に詳しいので参考にされたい.
 (2) モデルの計算領域と計算条件
 津波の伝播計算を行う領域は日本海全域とする.図一1は,計算領域と等深線を表し,北海道から九州にかけての日本沿岸と大陸側の海岸線を含む南北1,620km,東西1,296kmの範囲である.格子間隔は全域1.8km,時間間隔は4秒とする.津波の追算期間は,地震が発生した図一2北海道南西沖地震津波の初期水位分布(東北大学波源モデルDCRC一一17)1993年7月12日22時17分から,8時間後の13日6時17分までとする.これは,津波が日本海全域に伝播し,陸棚上で応答する所要時間を追算するためである.
 初期水位分布を与える波源モデルは,東北大学工学部災害制御研究センターで検討された研究段階のモデルDCRC-17を採用する.波源モデルDCRC-17の初期水位分布は,図一2のように表される.図に示す正の値は海面上昇を,負の値は低下を表す.断層は,北側・中央・南側の3断層である.
 開境界からの津波の放射条件は,進行性長波の特性曲線をもとに自由透過させる方法を用いる.また,海岸線の境界は汀線を鉛直壁と考えて岸に直角な流量を0とし,陸上への遡上現象は取り扱わない.

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式(1〜3)
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図ー1 日本海を対象とする津波数値計算の計算範囲と等深線
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図ー2 北海道南西沖地震津波の初期水位分布(東北大学波源モデルDCRC-17)

3. 観測データと計算値の比較

 (1) 津波の最大水位と伝播時間の計算精度
 津波の痕跡調査は,秋田大学・東北大学と運輸省港湾技術研究所・北海道開発局開発土木研究所により実施された.図一3は,計算から得た最大津波水位の平面分布と,日本沿岸と大陸沿岸に沿って最大水位の計算値を抽出し,調査された痕跡高と比較した最大水位の沿岸分布を表す.最大水位平面分布の等値線は0.1m間隔である.最大水位の沿岸分布図は,m単位で,実線が計算値の分布を,黒丸が痕跡高を表す.同じ地点で痕跡高が複数ある場合は,最大・最小の幅を棒線で,平均値を黒丸で表した.
 今回の津波は,奥尻島(沿岸分布図の青苗)で10mを越す痕跡高を,北海道南西岸(余市〜静浦)で7.9m(大成町)を記録した.また,青森県から能登半島にかけて,2.Omに及ぶ高い痕跡高を記録した.
 図一3によれば,計算最大水位の沿岸分布は,痕跡高よりも0.5m〜数m程度低い値であった.この要因の1つに,1.8km格子による海岸線の近似では局所的な津波の増幅まで再現できなかったことが挙げられる.しかしながら,痕跡高の沿岸分布の特徴はよく再現している.
 高い水位が計算された箇所は,波源域に近い奥尻島,北海道西岸と大陸側のロシア沿海州が挙げられ,津波の東西への強い指向性が確認できる.他に,津軽半島・新潟県沿岸・能登半島北岸で水位が高い.また,平面分布によれぼ,奥尻島・佐渡等の島や大和碓等,周辺より浅い海域でも高い水位が計算された.
 次に,津波到達時刻に関する情報として,日本海沿岸の検潮記録から,第1波到達時刻が解析された(永井ら,1993).図一3には,日本沿岸と大陸沿岸の津波先端の到達時刻(±0.1cmの水位変動を検出した時刻)の計算値を抽出し,潮位記録から求めた時刻と比較した到達時刻の沿岸分布も示されている.比較図は津波発生後の経過時間を表し,実線が計算値を,黒丸が観測値を表す.
 計算値は観測値よりも10〜15分程度早いが,両者の沿岸分布の傾向は良く一致している.計算によれば,新潟県沿岸(新潟西港)の到達時刻が60〜70分後であるのに対し,波源の遠方に位置する富山湾(新湊)が約60分後,能登半島北岸(輪島)が70分後とほぼ同時刻である点が特徴的である.また,石狩湾沿岸のように半島で遮蔽される沿岸も,回折波として伝播するため到達時間が遅くなる.
 (2)波高計・流速計の直接観測記録との比較
 運輸省港湾局の全国波浪観測網により,日本海沿岸の複数点で水位と流速が観測された.観測の詳細は永井らの報告を参考にされたい.このうち,輪島港沖(水深50m)で観測された23時50分から20分間の水位・流速の記録は,津波の第1波をとらえたと推定される.また,秋田県港湾課と同県能代港港湾事務所は,能代港沖の水深25.5m地点において,津波到達直前の22時56分から翌朝に至るまで波高の連続観測を行い,完全な津波波形記録を観測した.
 図一4は,能代港沖の津波波形の連続記録と計算値を比較したものである.上から観測値,線形計算,非線形計算で水平渦動粘性係数A_Nを1.O×10^6cm^2/s,5.0×10^6cm^2/sとした場合の追算結果である.
 観測された第1波の到達時刻は23時頃で,6〜8分周期の水位変動が津波到達後3時間程度まで明瞭に見られる.2時間経過する頃から60〜80分程度の長周期の変動が顕著に現れ,3時間経過すると6〜8分の短周期変動は次第に減衰する.計算値も同様の周期の変動が重なって現れている.しかしながら,線形計算は時間が経過しても短周期変動は減衰することなく継続する.非線形計算では,A_n=1.0×10^6cm^2/sの場合に短周期変動の減衰は少なく,、A_n=5.0×10^6cm^2/sの場合に急激な減衰をする.すなわち,A_nを大きくすると,短周期変動の減衰は顕著になる.追算結果から判断すると,A_n=1.O×10^6cm^2/Sよりも幾分大きめの場合に,計算値と観測記録は一致すると推定される.
 この結果は次のように説明される.短周期の水位変動は水深100m以浅の沿岸に捕捉された振動によるものと考えられ,振動が発生する海域の水深は浅い.そのため,振動により発生する流速も比較的速くなる.流速が速くなると乱れによる粘性効果の寄与が大きくなる.すなわち,渦動粘性項が計算結果を左右することになる.
一方,長周期の水位変動は,水深400m以深の陸棚外縁が振動の節になり,海岸が腹になる陸棚上の第1モードの振動に一致する.この振動が発生する海域の水深は数100mに及ぶ。そのため,乱れによる粘性効果は無視できるほど小さくなり,振動は長時間にわたり継続する.なお,以降の追算では,非線形計算で.A_n=1.0×10^6cm^2/sの条件を用いた.
 図一5は,輪島における津波到達直後の水位・流速の観測記録と計算値を比較したものである.図の上から水位・流向・合成流速・N成分流速(ほぼ岸沖方向)・E成分流速(ほぼ沿岸方向)を表わす.観測値は,周期6〜8分の振動に,3〜4分の短周期振動が重合している.また,第1波の振動は,水位と流速の極大発生時刻が一致する進行波型の波であるのに対し,その後の振動は,水位と流速の位相関係が明瞭でない。これは,第1波の入射波が沿岸に捕捉され,海岸からの反射波と重複して,複数の周期が共存する振動場が形成されたためと推定される.輪島の第1波の計算水位は,観測値の0.45mと良く一致している.しかし,その後続く短周期振動は,振幅・位相ともに大きくずれる.この傾向は能代についても同様である.
 (3) 津波の周波数スペクトルの比較
 図一6は,能代沖の水位連続記録と計算値の時系列から求まる周波数スペクトルを比較したものである.太線が観測スペクトルを,細線が計算値を表す.観測スペクトルから求められる津波の卓越周期は,陸棚上の基本振動周期と推定される68分,津波の周期7.4分と,沿岸の応答から生ずる10.5分と3.9分である.計算スペクトルの卓越周期は,観測値に一致するものと違う周期のものとがあるが,ほぼ周波数分布の傾向は再現している.しかし卓越周期のエネルギーは,計算値と観測値で差がある.
 このように,津波の数値モデルは,陸棚上の応答により発生する卓越周期を再現することが可能で,定性的には現象を再現しうる水準にある.しかしながら,各々の振動のエネルギーレベルや波形のような定量的な再現が可能な水準には至っていない.本研究で導入した渦動粘性項は,短周期振動の振幅(エネルギーレベル)やその減衰傾向を再現する上で重要であるが,同時に最大水位を低下させる傾向もある.防災学的な観点から考えると危険性を含んでいる.モデル改良において,乱れの効果をどの程度導入するか,今後の課題である.

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図一3 北海道南西沖地震津波の最大水位の平面分布および現地データから明らかにされた痕跡高・第1波到達時刻の沿岸分布と計算値との比較
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図一4 秋田県能代港沖で観測された津波波形の連続観測記録と計算値との比較

4. 津波の日本海伝播特性と陸棚上の応答特性

 (1)日本海を伝播する津波の特性
 図一3に示した津波の最大水位の平面分布と到達時刻ならびに最大水位の沿岸分布から,日本海を伝播する津波の特性について考察を行う.
 津波発生後5分以内に,波源域に位置する奥尻島へ第1波が到達し,5〜10分後に北海道南西岸へ到達した.その後,本州北部(20分),佐渡(50分),山形県沿岸(55分),新潟県沿岸(60分)に到達する.そして,富山湾(60分),能登半島の輪島(70分),島根県沿岸(90分),山口県沿岸(120分),対馬海峡(180分)に伝播する.山形県沿岸は佐渡よりも波源に近いが,津:波の到達時間は遅い.
また,新潟県沿岸と富山湾沿岸はほぼ同時刻に津波が到達する.このような到達時間の逆転現象は,深海域を伝播する津波の方が,陸棚上をゆっくり伝播する津波よりも先に到達することにより生ずる.特に,新潟県沿岸は遠浅な海岸であり,佐渡により遮蔽されているため,津波の伝播に時間を要する.
 津波の伝播過程で,北海道西岸・新潟県沿岸・能登半島北岸で高い水位が発生する.この要因は場所により異なるが,屈折による集申,浅水変形,陸棚上における津波の捕捉等が考えられる。特に,陸棚上に津波が捕捉されると,複数の時空間スケールの振動が共存する場が形成される.このような振動は,能代や輪島の水位変動にも顕著に現れており,日本沿岸と大陸沿岸の陸棚上の随所で見られる.また,奥尻島・佐渡のような島回りや大和碓等の浅い海域でも,津波エネルギーの一部が捕捉され水位は高くなる.
 (2) 陸棚上の津波の応答特性
 水位変動に現れる卓越周期の振動が,どのような空間分布かを明らかにすることは,陸棚の津波の応答を理解するために意義がある.今,輪島港沖の陸棚海域を対象に,海域内の全格子点における水位の時系列データについて周波数スペクトルを求め,海域内の卓越周波数のエネルギーを各格子点で抽出し,エネルギーの平面分布を描いた.輪島の観測点において周波数スペクトルを求めた結果,周期22.8分,9.3分,7.1分が卓越していた.このうち周期22.8分と9.3分の2種類の卓越する振動について,振動の空間分布を明らかにする.
 図一7は周期22.8分のエネルギー分布を,図一8は周期9.3分の分布を表す.各々の図は,海域内における対象周期の最大エネルギーで正規化し,百分率で表したエネルギー比率の分布である.
 周期22.8分のエネルギー比率の分布では,輪島港沖にエネルギーが集中し,輪島港周辺海岸で際立って高く,輪島港沖合(水深50m以浅の浅瀬が存在する)で相対的に高くなっている.この振動系は,輪島港周辺海岸と沖側の浅瀬に腹を持ち,浅瀬外縁(100m等深線に相当する)に沿って節を持つ単純な系となる.
 一方,周期9.3分の振動系は,エネルギー比率の分布に表すように複雑な系となる.能登半島の海岸沿いに数個の腹が存在し,輪島沖の浅瀬に沿っても腹が複数個存在する.これらの腹の位置では収束・発散が繰り返され,隣接する腹同士は180°の位相差を持ち,腹と腹の間が節となる.すなわち,隣接する腹のなす距離が振動の1/2波長に相当する.個々の波の波長と振幅は,波が存在する海域の水深によって変化するため,波長の異なる波により構成された複雑な系が形成される.
 これらの陸棚上で発生する振動系は,津波の周期や海岸地形・水深により,その卓越周期と波長が決定されると考えられる.このような陸棚上の応答と,津波の入射条件,海岸地形・水深との関係を明らかにすることは,現象を理解する上で重要な研究課題になる.

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図一5 輪島における津波到達直後の水位・流速の観測記録と計算値との比較
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図一6能代沖における観測値と計算値の周波数スペクトルの比較
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図一7 輪島港沖陸棚海域における周期22.8分の振動のエネルギー比率の分布
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図一8 輪島港沖陸棚海域における周期9.3分の振動のエネルギー比率の分布

5. おわりに

 本論文の成果は,次のようにまとめられる.
 1. 日本海沿岸で測定された痕跡高と潮位記録から求めた津波の第1波到達時刻を,計算値と比較した.最大水位の計算値は0.5m〜数m程度低い値となり,到達時刻の計算値は10〜15分程度早めとなった.しかし,水位・時刻とも沿岸分布傾向はよく一致した.
 2. 観測された津波波形と計算値を比較した.本研究では,数分周期の波形の再現のために,渦動粘性項を新たに導入した.ただし,最大津波水位を低下させる傾向もあり,導入する渦動粘性係数値(10^6cm^2/s以上)は検討を要する.
 3. 計算値と観測値の第1波の極大値はほぼ一致したが,その後の波形は振編・位相ともに差が見られた.スペクトルの比較から,計算値は卓越する振動をほぼ再現した.しかし,波形やエネルギーレベルのような量的再現まで可能な水準には至っていない.
 4. 波源からの距離と津波の到達時刻とは比例しない場合が多々ある.また,津波の伝播過程で,陸棚・沿岸・島・浅瀬等において変形・捕捉され,水位が増幅する.
 5. 陸棚上では複数周期の振動系が形成され,振動の空間スケールは海岸地形と水深により変化する.輪島沖の陸棚上における振動系の分布解析によれば,長周期の振動系は単純な分布になり,短周期は複雑な分布になる.

謝辞

本研究を行うにあたり,東亜建設工業(株)青野利夫氏から有意義な討論を得た.また,運輸省港湾技術研究所 永井紀彦氏,橋本典明氏,細山田得享氏より貴重な観測データを,東北大学工学部 高橋智幸氏より断層モデルの情報を提供していただいた.ここに,記して謝意を表す.

参考文献

後藤智明・佐藤一央(1993):三陸沿岸を対象とした津波数値計算システムの開発,港湾技術研究所報告,Vol.33,No.2,pp.3-44,
永井紀彦・橋本典明・浅井正(1993):平成5年北海道南酉沖地震津波波形記録解析速報,港湾技術研究所報告,Vo1.32,No.4,pp.49-95.
Satake,K,M.Okada and K.Abe(1988): Tide gauge response to tsunamis measurements at 40 tide gauge stations in Japan, Oceanogr. Mag.,46,pp.557-571.

日本周辺における津波初期波形の統計的性質 見上敏文*・後藤智明**

1. はじめに

 近年,日本列島周辺では連続的な大地震の発生により甚大な被害を被っている.地震や津波等の低発生確率激甚災害は時間および空間的に予測が非常に困難であることがその特徴であり,津波を対象とした沿岸防災施設の設計においても既往最大値が設計外力として従来から用いられてきた.しかしながら,津波の沿岸水位分布は波源域との相対的な位置によって大きく異なる事が知られており,北海道南西沖地震津波の際にはこの手法で沿岸防災施設整備を行った地域でも大きな津波の被害にあった.この経験は,将来の津波を予測した沿岸防災施設の必要性を改めて認識させる結果となった.
 将来の津波を予測する第一段階は震源断層モデルの想定であるが,著者らは震源断層諸元の相似性に着目し,既往地震の震源断層モデルの統計解析を行った.その結果,地震規模から震源断層モデルの推定が可能であることが確認された.そして,この方法により地震発生域と地震規模の想定から津波の初期波形を推定し,津波数値解析等によって沿岸津波高の予測が可能となった.

*正会員    (株)アルファ水工コンサルタンツ
**正会員 工博 東海大学教授 工学部土木工学科

2. 既往地震の震源断層特性

 (1) 日本周辺のプレート境界
 プレートテクトニクス理論によれば,日本列島は図一1に示すように4枚のプレート上に位置すると考えられている.すなわち,北米プレート,太平洋プレート,フィリピン海プレートおよびユーラシアプレートの各々のプレートが日本周辺で接している.各々のプレートは相対的に運動しているが,何れのプレート境界も互いに接近する収束型の境界で,一方のプレートが他方のプレートの下にもぐり込む,沈み込み帯がほとんどである.
 プレート境界付近ではプレート同士の相対運動により地殻内に応力が蓄積され,いずれは弱面において破壊が起こり地震が発生する.図一1に丸印で示すように大津波を伴った地震は大部分がプレート境界付近に集中しており,津波防災を検討する上ではこのようなプレート境界型地震を想定する必要性がある.
 (2) 震源断層諸元の相似則
 地震の震源断層モデルは,図一2に示す断層長さL,断層幅W,傾斜角\delta,すべり角\lambda,すべり量Dおよび走向角\psiの6つの物理量と断層面上縁の深さdで定義されるが,これらの震源断層パラメータの内,断層長さ,断層幅およびすべり量と,地震マグニチュードMおよび地震モーメントM_0との間に相似性があることがGeller(1976)によって指摘されている.
 著者らはこの相似性について,各々のプレート境界でプレート同士の相対運動速度が異なるため,地震断層の特性も各々のプレート境界で異なるものと推測し,三陸,相模,東南海および日本海東縁部の4つのプレート境界について個別に統計解析を行った.
 検討対象とした震源断層モデルは過去に観測された地震の内,佐藤(1989)によって整理されている1498年東海地震から1987年千葉県東方沖地震までの92個の主要な地震に1971年サハリン沖地震と1993年北海道南西沖地震を加えたものである.
 これらの提案されている震源断層モデルには,1枚断層モデルと複数断層モデルとがあるが,本研究では簡単のため,すべて1枚断層モデルでの検討を行うこととして,複数断層モデルについては地震モーメントと断層面積S(=L×W))が等価となるように1枚断層モデルへ換算を行った.これは,今後発生するであろう地震について複数断層モデルとして想定を行った場合,同規模の地震で多数の組合わせが存在するが,それらの検討を行うためには既往の地震観測データが充分ではないとの判断によるものである.
図一3は各プレート境界付近で発生した地震について,地震モーメントと断層面積の関係を示したものである.この結果によると,両者の関係は三陸および相模プレート境界で,M_0=4.1×10^{22}S^{3/2},東南海プレート境界で,M_0=1.3×10^{22}S{3/2},そして,日本海東縁部プレート境界で,M_0=2.1×10^{22}S^{3/2}となっており比較的良好な相関関係となっている.
 同様に断層長さと断層幅の関係および断層長さとすべり量の関係をそれぞれ示したものが図一4および図一5であるが,各々の関係は三陸プレート境界で,L=2.4W,D=3.5W,相模プレート境界で,L=2.7W,D=4.8W,東南海プレート境界で,L=3.OW,D=1.8W,そして,日本海東縁部のプレート境界で,L=2.6W,D=4.0Wの関係で比較的良好な相関を示す.
 これら結果から,各プレート境界で過去に発生した地震の震源断層モデルには,各々のプレート境界において断層長さ,断層幅およびすべり量と,地震モーメントとの間に相似則が成立するとの結論を得た.
 また,これ以外の断層パラメータである,傾斜角,すべり角および断層上縁の深さについては,地震規模が小さいもの(断層長さが短い)と特異的な値を除けば,概ね平均的な値が存在している。これより,各プレート境界における断層パラメータ間の回帰式を係数をAとして求めた結果が表一1である.
 この結果から,地震モーメントが想定されれば,震源断層モデルを推定することが可能となるが,地震モーメントと地震マグニチュードの関係は,各プレート境界に共通して図一6に示すような良好な相関関係があり,回帰式は(1)式で示される.
(1)
 以上の統計解析結果から,震源断層パラメータの相似則が各プレート境界別の特性値として存在することが明らかとなった.そして,これらの相似則から,地震マグニチュードの想定により震源断層モデルの推定が可能であることが結論として導かれる.

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図一1 日本周辺のプレート境界
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図ー2 断層パラメータ
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図一3 断層面積と地震モーメントの関係
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式(1)
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図一4 断層長さと断層幅の関係
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図ー5 断層長さとすべり量の関係
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表ー1 断層パラメータ推定の回帰式
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図一6 地震マグニチュードと地震モーメントの関係

3. 津波初期波形

 震源断層パラメータが定まれば,Mansinha and Smyle(1971)の方法によって弾性論的に求まる海底地盤変動量から津波初期波形の推定が可能である.
 図一7は,地震マグニチュードをM=8.0とした場合の各プレート境界における津波初期波形である.この結果から,同じ地震マグニチュードでも各プレート境界で発生する地震断層のすべり量やすべり角が異なるため,それぞれ大きく異なった津波初期水位分布となることがわかる.中でも,日本海東縁部では断層のすべり角が90°(縦ずれ断層運動)であるため,他のプレート境界で発生する地震と比較して初期水位が高くなる傾向がみられ

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図一7 各プレート境界での津波初期波形(M=8.0)

4. おわりに

 本研究では,震源断層モデルの相似則から,地震マグニチュードの想定によって津波初期波形の推定が可能であるとの結論を得たが,将来の津波の予測を行うためには,地震の発生域と地震規模の想定が必要となる.
 今後は,地震空白域に関する検討と地震の経年的出現特性についての検討を行い,日本沿岸における沿岸防災施設の計画外力となりうる想定津波の検討を行うと共に,各沿岸における津波危険度の評価を行う予定である.

参考文献

佐藤良輔(1989):日本の地震断層パラメター・ハンドブック,鹿島出版会,390p.
Geller,R.J.(1976): Scaling relations for earthquake source parameters and magnitudes, Seismol. Soc. Amer., Vol.66, pp.1501-1523.
Mansinha,L. and D.Smyle(1971): The displacement fields of inclined faults, Seismol .Soc. Amer., Vol.61,pp.1433-1971.

伊豆・小笠原諸島の津波増幅特性 藤間功司*・後藤智明**・林建二郎*** 重村利幸****・首藤伸夫*****

1. はじめに

 従来,津波の設計外力の算定には既往最大値が用いられてきた.しかし,北海道南西沖地震では既往最大値を上回る津波が発生し,奥尻島などに大きな被害をもたらした.島が津波に対して弱い地形であることが確認された.
 島における津波の特徴として,捕捉現象の存在が挙げられる.島に津波が捕捉されると,著しく津波が増幅されることがあり,しかも島内の一部に被害が集中する.
島における津波設計外力の算定には,この条件を考慮しなければならない.
 伊豆・小笠原諸島においても,大正関東や安政東海などの歴史大津波を含め,様々な津波に対する危険性を検討する必要がある.しかし,伊豆・小笠原諸島には津波痕跡値が少なく,また島のように屈折の効果が効く場合,既往の数値計算手法では津波水位予測の精度が低下する可能性がある.
 そこで,まず水理実験との比較により島回りの津波に関する数値解と理論解の精度を検討する.次に理論解を用いて,個々の島の津波に対する危険度を評価する.

*正会員 工博 防衛大学校助教授 土木工学教室
**正会員 工博 東海大学教授 工学部土木工学科
***正会員 Ph.D. 防衛大学校助教授 土木工学教室
****正会員 Dr.Eng. 防衛大学校教授 土木工学教室
*****正会員 工博 東北大学教授 工学部附属災害制御研究センター

2. 数値解と理論解の精度の検討

 水理実験は図一1に示す平面水槽を用いて行なった.
水槽中央部に勾配m=約1/4の円錐形の島模型が設置してある.島模型に正弦波を入射させ,入射波高,入射波周期,そして島模型における遡上高分布を測定した.
実験条件は表一1に示す通りである.表において,\betaは島の大きさと汀線近傍における波長との比に関係したパラメタであり,\beta=2\sqrt{\sigma^2r_c/(gm)},\sigma=角周波数,r_c=島の海岸線の半径,m=島の斜面勾配である.入射波高,入射波周期は,図一1中に示した沖側計測点において容量線式波高形で計測した波形データから,有義波高,有義波周期として計算した.ただし,ゼロアップクロス法で定義した各波の波高,周期にばらつきはほとんどなかった.
遡上高は,島模型の中心から22.5°間隔で斜面上に目盛りを書き,目視により遡上地点の座標を読み取り,高さに換算することにより求めた.
 数値計算には,支配方程式に非線形長波理論を用い,リープフロッグ法により差分して解く,標準的な長波の計算手法を用いた.空間格子間隔は,\delta x=10cm,\delta y=10cm,計算時間間隔は\delta t=0.01sとした.境界条件は,造波板側では表一1に示した入射波諸元を用いた強制入力とし,その他の壁面では自由透過とした.計算は静水時から開始し,定常状態になるまで継続した.
 理論解析には,藤間・後藤(1994)の解法を用いた.
すなわち,円錐形の島回りにおける線形長波理論の厳密解を用い,水平床上の解と接続する方法である.得られた汀線水位の時間最大値により遡上高を評価する.この方法により,隠岐や奥尻島の津波痕跡高が良好に再現されることが示されている.
 汀線に沿った遡上高分布に関し,水理実験結果と数値計算結果,および理論解析結果の比較を図一2に示す.図中,遡上高は入射波振幅A(=H/2)で無次元化されている.また,\thetaは波の進行方向をゼロとし,反時計回りに測った角度である.図一2(a),(b)は\betaが比較的小さい場合の結果で,数値解と理論解の両者とも実験結果をほぼ再現している.
 しかし,\betaが大きいケースにおいて,既往の数値計算手法では複雑な遡上高分布を再現できず,津波水位を過小評価してしまうことが分かる.この傾向はLiuら(1994)の計算結果にも見られる.これは,佐山ら(1986)が示しているように,従来の津波数値計算手法で屈折の効果を十分に表現することが難しいためと考えられる.一般的に,格子間隔を小さくすれば数値解の精度は向上するが,捕捉された波の挙動を精度よく再現するには,かなりの格子数が必要になるであろう.それに対し,理論解はほぼ実験結果と一致しており,非線形性の影響が顕著にならない限り,精度よく島回りの津波の挙動を再現できると言える.
 したがって,島回りのように屈折の効果が効く場合には,設計外力を数値計算結果のみから評価することは危険であり,理論解析を併用する必要があると結論できる.
理論解析では,局所地形の影響が取り込めない等の欠点もあるが,全体的な津波増幅率を簡単に算出できる.そこで,理論解析により,様々な津波周期に対する個々の島の波高増幅率や遡上高分布を算出し,どのような周期の津波が危険であるかを調べる.

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図ー1 実験装置
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表ー1 実験条件
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図一2 数値計算の精度の検討

3. 津波増幅特性の検討

 まず,伊豆・小笠原諸島の各島に対し,海底地形図をもとに海岸線の半径r_c,平均勾配m,水平床部分の水深h_dを求める.本論文で用いた各島のパラメタを表一2に示す.また図一3に,大島から三宅島までの海底地形図と,今回用いたモデルとの対比を示す.図中,点線がモデル化された海岸線を表す.
 各島に対し理論解を適用し,周期T=5〜40分の津波に対する遡上高分布を求める.さらに汀線に沿った遡上高の最大値を最大遡上高R_{max}とする.R_{max}と周期の関係を図一4に示す.図から,伊豆・小笠原諸島の最大遡上高の周期特性は以下の3つのパターンに分類される.
 第1のグループは新島・神津島・八丈島・父島である.この4島では周期が短くなるにしたがってR_{max}が大きくなり,周期5〜10分に共振周期が存在する.例として,神津島における周期5分,10分,20分の津波に対する遡上高分布を図一5に示す.周期20分の場合,波長が島よりもはるかに長く,島の前面と背面でほとんど遡上高が変わらない.周期10分では,遡上高が周期20分の場合の2倍以上に増幅している.周期5分の場合,島と津波の共振現象により周期20分に比べ6倍以上の遡上高となる地域が出現する.図一6は神津島に対し,共振周期に近い周期5.5分の津波が入射したときの空間最大水位分布図である.図中のコンターの値は入射波振幅で無次元化してあり,点線のコンターが0.5,実線のコンターが1,2,4,6,…を表す.共振時には,海岸線に沿った方向にも,岸沖方向にも水位勾配が急で,数値計算でこの様子を再現するには非常に細かい格子を用いなければならないことが予測される.
 第2のグループは大島・三宅島・母島である.この3島では周期20分までは第1グループと同様,R_{max}が増大する.しかし周期10〜20分でR_{max}はほぼ横ぼいとなり,周期が10分より短くなると再び増大を始める.第2のグループも周期5〜10分の間に共振周期をもつが,そのR_{max}は第1グループほど大きくない.例として,大島における周期5分,10分,20分の津波に対する遡上高分布を図一7に示す.周期10分と周期20分の遡上高分布はほとんど同じであるが,周期5分で神津島と同じ様な分布形が現れる.ただし,波高増幅率は神津島より小さい.図一8は大島に対し周期5分の津波が来襲したときの最大水位の空間分布である.
 第3グループは御蔵島で,R_{max}は第1,第2グループに比べて小さく,周期5〜40分の間に共振周期をもたない.御蔵島の周期5分,10分,20分の津波に対する遡上高分布を図一9に示す.周期が短くなるほど遡上高が高くなる傾向は認められるが,分布形はそれほど複雑ではなく,捕捉の影響を顕著に受けていない.一般的に,r_cが大きく,mが小さいほど捕捉が起こりやすい.神津島と御蔵島ではr_cが同じだが,急勾配の御蔵島で波高の増幅が顕著でなく,緩勾配の神津島で捕捉による波高増幅が著しい.
 次に,伊豆・小笠原諸島の津波増幅特性を示すため,津波の周期を5〜10分,10〜20分,20〜40分に区分する.地震津波の場合,津波の波高と周期は地震の断層運動によって決まり,波高が大きければ周期も長くなる.
周期20〜40分は大正関東や安政東海など大津波の周期帯で,周期5〜10分は中小規模の津波の周期帯と言うことができる.
 それぞれの周期帯におけるR_{max}/AおよびR_{max}/R_1の最大値を津波増幅率と定義する.R_1はmとh_dが同じ一様勾配斜面の遡上高である.R_{max}/Aは津波増幅率そのものを表し,R_{max}/R_1は津波増幅率のうち,捕捉の効果の大きさに対応すると考えてよい.ただし,海底摩擦や局所地形の影響により,共振時の鋭いピークはかなり低減されると考えられるので,図一4に示した周期特性図からピーク部分をカットして津波増幅率を推定した.津波増幅率を求めた結果を表一3,4に示す.()内に書かれた数値は,上記の理由によりカットした共振時のピーク値である.
 図一4および表一3,4から,以下の事項が分かる.
 (1) 伊豆・小笠原諸島では,周期20分以上の大津波に対して捕捉による顕著な共振現象が起こらない.
 (2) 御蔵島では,周期5分程度でも捕捉による共振現象が起きず,津波が大きく増幅される可能性が低い.
 (3) 大島・新島・神津島・三宅島・八丈島・父島・母島では,周期5〜10分の中小規模の津波が捕捉され,波高が増幅する.
 (4) 特に新島・神津島・八丈島・父島では,周期5〜10分の津波が共振現象により著しく増幅され,周期20〜40分の津波に比べて5倍以上の増幅率となる可能性がある.
 したがって,周期の短い中小規模の津波であっても,大津波以上の被害を伊豆・小笠原諸島にもたらす危険性がある.津波防災の観点から,大正関東や安政東海などの大津波以外に,周期5分から10分程度の中小津波に対しても十分注意を払う必要がある.なお,伊豆・小笠原諸島のように島が近接している場合は,波向きによって隣の島に遮蔽され水位が増幅しないこともあるが,逆に,隣の島との干渉により波高が増幅される場合もあると予測されるため,設計外力の算定には注意を要する.

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図一3 伊豆諸島の等水深線図
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表一2 伊豆・小笠原諸島のパラメタ
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図一4 最大遡上高の周期特性
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図ー5 神津島の遡上高分布
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図ー6 神津島の空間最大水位分布(T=5.5分)
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図ー7 大島の遡上高分布
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図ー8 大島の空間最大水位分布(T=5分)
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図ー9 御蔵島の遡上高分布
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表ー3 伊豆・小笠原諸島の津波増幅率(R_{max}/A)
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表ー4 伊豆・小笠原諸島の津波増幅率(R_{max}/R_1)

4. 結 論

 既往の津波数値計算方法では,島に捕捉された津波の
挙動を精度よく再現することが難しい.しかし,伊豆・
小笠原諸島では,共振周期が10分以下であるため,周期
20分以上の大津波との顕著な共振が起きない.したがっ
て,巨大地震に対しては数値計算による検討が効果的で
ある.
 一方,周期10分以下の中小規模の津波に対しては,共
振現象により著しい波高増幅が起こる可能性がある.特
に新島・神津島・八丈島・父島などでは,周期5〜10分
の津波が著しく増幅され,周期20〜40分の津波に比べて
5倍以上の増幅率となる可能性がある.中小津波に対し
ても十分注意を払う必要があるであろう.
 なお,本研究を遂行するに当たり,防衛大学校理工学
研究科デデ・ユリアディ君(現インドネシア海軍)の助
力を得た.また本研究の一部は文部省科学研究費総合研
究A(代表者:首藤伸夫)により行なわれた.ここに記
して謝意を表する.

参考文献

佐山順二・後藤智明・首藤伸夫(1986):屈折に関する津波数値  計算の誤差,第33回海岸工学講演会論文集,pp.204-208.
藤間功司・後藤智明(1994):円錐形の島に捕捉された長波の特性,土木学会論文集,No.497/II-28,pp.101-110.
Liu, P. L-F., Y.-S. Cho and K. Fujima(1994): Numerical solutions of three-dimensional run-up on a circular island, Proc. of the International Symposium on Waves-Physical and Numerical Modelling, pp.1031-1040.

人工リーフ上の波と流れの現地観測 青野利夫*・Eric.C.Cruz*・大中晋**・後藤智明***

1. まえがき

 人工リーフは,離岸堤等に比較して景観を悪化させることなく波浪低減効果が得られるため,近年その建設は増加する傾向にある.
 人工リーフを構成する材料は,種々のものが用いられているが,外洋に面した海域では被覆ブロックの重量が大きくなることから捨石堤を人工の被覆ブロックで覆う形式が主流となっている.この安定重量を算定する上で,リーフ上の波浪場と流速場の算定は必要不可欠である.
人工リーフの被覆材に関する検討は,宇多ら(1988,1990),浅川ち(1992),水谷ら(1994),渡辺ら(1993)など多く行われており,重量算定公式なども建設省(1992)によって取りまとめられている.ただし,これらの研究は,いずれも実験的な検討が主であり,現地での検証についてはまだ十分とは言えない.特に,人工リーフでは天端上での砕波乱れの発生,水深の急激な減少による底面粗度の影響増大,透水層での乱流抵抗等の検討を現地スケールで行う必要があるが,実際にはほとんど行われていない.
 本研究では,人工リーフ周辺の局所的な波浪および流れの解明を目的として現地観測を行い,基本的なリーフ上の岸向流速の特性,リーフ上の平面的波浪特性等について検討した結果について報告する.

*正会員 工博 東亜建設工業(株) 技術研究所 数値解析研究室
**正会員 工修 東亜建設工業(株) 東京支店
***正会員 工博 東海大学工学部土木工学科 教授

2. 現地観測の概要

 2.1 人工リーフ
 神奈川県湯河原海岸では,図一1に示すように埋立護岸前面約100m地点に2基の人工リーフが築造されている.設置水深は約9.3mで,堤長は170m,また天端幅が70mである.沖側と岸側の法勾配はそれぞれ1:3と1:2である.リーフの天端高は,TP-1.84mでH.W.L.およびL.W.L.はそれぞれTP+0.64m,TP-0.84mとなっている.
 人工リーフの被覆材は,リーフの沖側から天端上の32m地点までX型ブロック(10t)が用いられ,それより岸側では2t内外の被覆石が用いられている.また,背後の護岸部は前面水深が4mで,16tおよび8tのテトラポッドで被覆されており,その被覆幅は約14mである.
 2.2 観測期間および観灘機器
 観測は,1994年2月1日から3月31日の冬季の2ヶ月間について行った.
 各観測地点は,図一1に示すようにリーフ中央部に7地点,リーフ端部に2地点の合計9地点とし,人工リーフ周辺の波浪の岸沖特性および端部を含んだ面的特性が検討できるように配置した.リーフ沖合約600mの水深22m地点(St.0)には,入射波観測を目的として超音波式波高計,水圧センサー付電磁流速計を設置した.また,他地点については砕波が発生しやすいことを考慮して全て水圧式波高計と電磁流速計をペアとして設置した. リ一フ端部のSt.8地点では,波高計と流速計に加えて被覆ブロックの傾斜あるいは振動状況を観測するため傾斜計を設置した.ただし,今回の観測では傾斜計の出力に有意な傾向が認められなかったため,検討は行っていない.
 各データの計測は,毎偶数時の2時間毎に20分間行い,サンプリング間隔は0.5秒とした.得られた時系列データから有義波諸元と波向きを算定した.なお波の定義はゼロダウンクロス法を用いている.
 2.3 観測期間中の気象および入射波浪
 観測期間中の気象特性は,2月1日から2日および9日と13日に弱い低気圧が太平洋沿岸を通過し,21日から22日にかけて非常に規模の大きな低気圧の通過があった.この低気圧は,最終的に中心気圧が948hPaにまで達し台風なみの規模を有する擾乱となった.また,3月は8日から9日にかけて太平洋沿岸で前線の通過があり,23日から24日にかけて規模の大きな低気圧の通過が見られた.
 図一2は,St.0で得られた入射波の有義波諸元の経時変化を観測期間について示したものである.入射波浪は,低気圧および前線の通過に対応した変化を示し,波高・周期共に各擾乱時に増大する.観測期間内の代表的な高波浪時の波浪諸元を取り出したものが表一1である.また,全観測期間を通して入射波の波向きは,人工リーフに対してほぼ直角(SE方向)に入射する波が卓越していた.

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図ー1 人工リーフの概要と観測地点
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図一2 観測期間中の入射波有義波諸元の経時変化
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表一1 代表的な擾乱による波浪諸元

3. 観測結果

 3.1 人工リーフ周辺の波高変化
 図一3は,リーフ中央部であるSt.0からSt.6までの各地点の代表的な有義波高変化を低波浪時から高波浪時について示したものである.高波浪時における波高変化は,法肩付近での強制砕波による急激な波高減衰が卓越しピーク値の4割から5割に減衰する,この状況はほとんどのケースで認められる.また,低波浪時では,底面の粗度および透水層による抵抗によって減衰する傾向が認められ,入射波の周期によって異なるが5〜6割程度に減衰する.また,リーフ沖側の法面における波高のピーク値は,急激に大きくなり最大で3mを越す波高値も見られる.
 3.2 人工リーフ上の流速場
 リーフ上における流速場は,人工リーフを構成する材料を決定する上で非常に重要な項目であり,特に岸向最大流速が人工リーフの安定性を支配する因子として重要であることが宇多ら(1990)によって指摘されている.
ここでは,リーフ天端上の観測点であるSt.3とSt.4およびSt.5の3地点で得られた流速データを元にリーフ上の流速場について検討する.
 図一4は,人工リーフ天端上の各観測点における岸向き最大流速U_{max}の空間変化を示したもので横軸の原点は,リーフの岸側法肩である.全体の変化特性は,リーフ沖側法肩部からリーフ中心部にかけて急激に減衰し,それ以降ほとんど変化しない傾向が認められる.また,岸向き最大流速は最大で4m/sから5m/sの間にあり非常に早い流速が発生しているのが認められる.
 リーフ天端上の岸向き最大流速は,長波理論が成立する範囲にあるので,無次元岸向き最大流速U_{max}/\sqrt{gR}(R:リーフ天端の水深)が定義されている.また,相対天端水深R/H_0と岸向き最大流速との相関関係が建設省土木研究所において指摘されており,ブロックの移動との関係が示されている.図一5は,U_{max}/\sqrt{gR}の空間分布を示したもので図中の記号は無次元相対水深R/H^」_0(H^」_0:換算有義沖波波高)を示している.図一5から無次元岸向き最大流速は,相対天端水深に応じて変化する傾向が認められるがデータのばらつきが非常に大きい.
 図一6は,線形長波理論の最大水粒子速度U_{max}を用いて無次元流速とした場合の空間分布で,無次元岸向き最大流速は,沖側法肩部では長波水粒子速度の2倍から3倍となっているのに対しリーフ中央部から岸側法肩部でほぼ1程度となっており,線形長波理論に近い結果となっている.
 次に,各観測点における流速値といくつかの無次元パラメータとの比較から流速値の減衰特性を検討する.
 図一7は,沖側法肩部(St.3)とリーフ岸側端部(St.5)の流速値の比と相対天端幅(B/L_0)との関係を示したものである.パラメータとして相対天端水深を用いている.
この図から,相対天端幅が0.4前後で急激に減衰する傾向が認められる.
 (1) 岸向き最大流速の経験式との比較
 人工リーフの表面を被覆する被覆材の所要重量に関しては,岸向き最大流速の経験式に基づいて定める方法が建設省土木研究所において提案されている(建設省,1992).
 図一8は,無次元岸向き最大流速(f_u=U_{max}/\sqrt{gR})の観測値と経験式との比較結果である.図一8から,観測値は最大で計算値の2倍程度となっているのが認められる.ただし,定性的な傾向は観測値と経験式が一致していることから,経験式は以下のように補正できる.
 現地の不規則波浪において,最大の流速を発生させる波浪が最大波となることを考慮し,経験式に与える沖波波高として合田式からの類推から,H_0=1.8H_{1/3}として算定し観測値と比較した結果が図一9である.まだ,誤差はあるものの,図一8の関係に比較して相関が高くなっているのが確認できる.

 3.3 人工リーフ端部における波浪特性
 現地での人工リーフの形状は当然ながら3次元的であり,海岸線方向に端部を有する.そのため,リーフ端部では波の屈折・回折等の効果が現れ,中心部に比較してより高波浪を受ける可能性がある.ただし,人工リーフの平面的な検討は現在ほとんど行われておらず,実際にどのような現象が発生しているのか良くわかっていないのが現状である.
 ここでは,リーフ端部に近い観測点であるSt.7とSt.8およびそれら平行な位置にある中央部のSt.3との比較から海岸線方向のリーフ天端上に発生する波浪特性の違いを検討する.
 a) 波高変化特性
 図一10は,横軸に中央部(St.3)の有義波高値,縦軸に端部(St.7)の有義波高値を示したもので,図から1m程度までは両者の相関はかなり高いが,波高値が高くなるに従ってリーフ端部付近が中央部より高くなる傾向が認められる.その関係は,ばらつきはあるものの最大で中央部の5割増程度となっている.
 b) 流速値と波向の特性
 図一11は,St.3とSt.7の岸向き最大流速の比較をそれぞれ行ったものである.これらの図の結果を見ると両者は高い相関を示し,’波高値の比較で見られた高波浪時の端部付近での波高増大効果のような傾向は認められない.この原因は,中央部と端部における波向が異なっているためと考えられる.表一2は各地点の波向別の波高頻度分布をリーフ中央部(St.3),端部(St.7,St.8)について示したものである.図中の数値は,上段が出現頻度で下段が出現率(%)である.表一2から明らかなように,中央部の波向がSEからSSEであるのに対し,端部ではSt.3と水平な位置にあるSt.7はSSEが卓越し,岸側に設置されているSt.8ではSSEからSとなっている.このことは,端部の波向は局所的な屈折により斜め入射となることを示している.

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図一3 リーフ上の有義波高変化
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図ー4 岸向最大流速の分布
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図ー5 無次元岸向最大流速の分布
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図ー6 U_{max}/U_{long}の分布
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図ー7 岸向き最大流速の減衰特性
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図ー8 無次元岸向最大流速の観測値と経験式の相関
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図ー9 補正後の相関
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図ー10 リーフ中央部と端部の波高値の相関
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図ー11 リーフ中央部と端部の岸向最大流速の相関
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表ー2 リーフ中央および端部の波向別波高出現頻度

4. 結 論

 本研究から得られた結論は,以下の通りである.
 1. 岸向き最大流速は,天端法肩付近で最大となり,線形長波理論式の2から3倍程度になる.そして,リーフ天端上を進行するに従って線形長波理論とほぼ同程度の流速値に変化する.
 2. リーフ上の無次元岸向き最大流速に関する観測結果と経験式(宇多ら,1990)との関係は,沖波換算値をそのまま用いると大きく異なる.しかし,観測有義波高の沖波換算値を1.8倍したものを用いることにより,経験式の現地適応がある程度可能となることが示された.
 3. リーフ端部では沖から入射する波浪と沿岸方向から急激に屈折してくる波浪との重合によって中央部より大きな波高値を示している.この傾向は,高波浪時により顕著に表れ,最大で中央部の波高値に対して5割程度大きくなる.このことは,リーフ端部における被災が多い原因となっていると考えられ,端部における被覆ブロックの重量算定についても別に考慮する必要があることを示している.
 4. リーフ上での波高は大きく変化し,砕波が発生するような高波浪の場合,砕波減衰と透水層の抵抗とによって最大で6割程度減衰する.波高の減衰特性は,砕波形式と砕波位置に関係しリーフの沖側法肩部で砕波する場合の減衰が最も大きい.

謝辞

本研究は,神奈川県小田原土木事務所の協力の下で行われたものである.ここに謝意を表する.また,観測および解析を実施するに当たって東亜建設工業小田原作業所の田中所長以下全所員の協力を得たことに謝意を表する.

参考文献

浅川勉・佐藤弘和・ロノ町誠・野口正昭(1992):人工リーフ被覆材の安定性に関する実験的研究,海岸工学論文集,第39巻雪pp.656-660.
宇多高明・小俣篤・横山揚久(1988):人工リーフの機能と設計法,土木研究所資料,第2696号,71p.宇多高明・小俣篤・斉藤友信(1990):人工リーフ被覆材の所要重量算定法,土木研究所資料,第2893号,48p.
建設省河川局海岸課監修(1992):人工リーフの設計の手引き,(社)全国海岸協会,94p.
水谷法美・岩田好一朗・Teofilo M. Rufin Jr.・戸塚奈津子・倉田克彦(1994): 幅広潜堤の被覆捨石の安定重量の算定法に関する実験的研究,海岸工学論文集,第41巻,pp.781-785.
渡辺増美・河島宏治・佐藤公己・喜岡渉(1993): 移動限界波高および移動限界流速による潜堤被覆材の安定性評価,海岸工学論文集,第40巻,pp.786-790.

非線形分散波理論を用いた数値解析の高精度化の検討 立川敬士*・後藤智明**・服部昌太郎***

1. 序 論

 波浪変形・津波などの数値計算をおこなう場合,大水深域を伝播する外洋津波が線形長波理論で近似できることは,これまでの数多くの研究によりすでに明らかである.しかし,津波の河川遡上などのように,水深が浅くなり,波長が短くなると,波の非線形性や分散性を考慮しなければならない.そのため,この様な場合には,非線形性と分散性を同時に考慮できる非線形分散波理論などを用いることも多くなった.非線形分散波動理論式としては,Boussinesqの式,K-dVの式,Mei-LeMehauteの式,Peregrineの式などが有名であるが,非線形性の強い波が高周波数変動成分を含むことや,分散項が高次の微分を含むことから,線形長波理論の適用水域よりも計算格子間隔を小さくしなければならないという問題がある.しかし,現実問題として,計算機の能力の限界もあり,一次元伝播問題に対しての計算例がほとんどであり,2次元平面についての計算例は少ない.非線形分散波理論式は現在使用頻度が高いにも関わらず,分散性の精度が悪いという問題もある.支配方程式の理論分散性についての研究は行われてはいるものの,数値分散性の精度をあげる研究例は,まだ少ない.ただし,近年灘岡(1995)が複数の方程式を,条件によって使い分ける方法で理論分散性の精度を向上させることに成功しているが,断面流速分布を初めから固定して計算をさせるため,潜堤背後の流速場のような乱れた分布を持つ領域への拡張が困難である.佐山ら(1987)は線形長波方程式に数値分散効果を取り入れた高精度計算法を提案しており,有効性を確かめている.しかし,物理的な分散効果の問題などもあり,未だ検討の必要性を残している.
 本研究では,非線形分散波に含まれる波数分散項に計算手法の数値分散性の効果を加えることにより計算結果の数値分散性を小さく抑え,既存の支配方程式よりも精度が高く,適用範囲も広い,非線形分散波動理論式の高精度化について検討するとともに,Stokesの分散関係を満たす数値計算モデルを開発することを目的とする.

*正会員 工修 (株)日本工営
**正会員 工博 東海大学教授 工学部土木工学科
***正会員 工博 中央大学教授 理工学部土木工学科

2. 支配方程式の理論分散性

 2.1 既存の方程式の理論分散性
 現在広く使用されている非線形分散波動理論式として,K-dV,Boussinesq,Peregrine,Mel-LeMehauteの式などがある.それぞれの方程式の理論分散性を再確認するため,それぞれの方程式の線形化された方程式の,見かけの分散関係について検討する.
 1)線形K-dV式
(1)
ここで\eta:水位,h:静水深,c_0:線形長波の波速である.
式(1)に\eta=sink(x-ct)を代入し,Taylor展開すると式(2)が導かれる.
 2)線形Boussinesqの式
(3)
1)と同様に式(3)を誘導すると,式(4)が導かれる.
(4)
 3)線形Peregrineの式
(5)
(5)に\eta=sink(x-ct),u=u_0sink(x-ct)を代入すると,(6)が導かれる.
(6)
4)線形Mei-LeMehauteの式
(7)
3)と同様に(7)を誘導すると(8)が導かれる.
(8)
これらの式の分散性を定量的に評価するためにStokesの分散関係式
(9)
と比較した結果を図一1に示す.
 図一1より,他の方程式よりも使用頻度が高いにも関わらず,線形Peregrineの式の理論分散性が他の方程式の理論分散性に比べて大きいことが確認できる.しかも実際に数値計算をおこなうと,数値計算結果にはさらに,計算手法の数値分散性も含まれるため,誤差としてはさらに大きいものとなる.したがって,この程度の誤差であっても無視することはできず,検討を必要とする.そこで本研究では,Peregrineの式を基礎方程式とし,以下のように検討をおこなう.
 2.2 方程式の理論分散性
 ADI法の数値分散性は,クーラン数に依存することは著者の一入の研究(1986)によりすでに確認されている.したがって,クーラン数の影響を含む数値分散項の効果を支配方程式の波数分散項に取り入れることによって,計算手法に含まれる誤差を小さく抑えることができ,その結果として,計算結果の誤差は小さくなることが推測できる.
 佐山ら(1987)は,Leap-Frog差分式の第一微分方程式近似が,Leap-Frog法を用いた線形長波方程式の数値計算の打ち切り誤差の第1次近似を表すことを用いて,高精度計算法を提案している.本研究の対象手法はADI法であるが,ADI法とLeap-Frog法とは同様の数値分散傾向を示すことはすでに確認できている(図一2).図一2は伝播方向における数値分散性を示したもので,軸はw_x=k_x\delta x/2,w_y=k_y\delta y/2であり,k_x,k_yは記,y方向の波数,\delta x,\delta yはx,y方向の空間格子点間隔である.また,図中の数字が小さいほど数値分散性が小さいことを示している.
 したがって,佐山らと同様に,ADI差分式の第一微分方程式近似の項を方程式に取り入れる方法について検討する.さらにその式に含まれる係数を変化させることによって,計算手法の数値分散性を最も小さく抑え,数値計算結果の精度向上のための最適値を決定する.
 その高精度計算を定式化したものが,式(10)〜(12)である.
(10)
(11)
(12)
連続式: (10),x方向の運動方程式: (11),y方向の
運動方程式: (12)
ここで,M,N: x,y方向の線流量,D(=h+\eta):全水深,\delta x,\delta y:x,y方向の空間格子点間隔,K_x(=c_0\delta t/\delta x)K_y(=c_0\delta t/\delta x):x,y方向のクーラン数,a,b,c,d,e,f,i,jは係数である.
 式(10)〜(12)の理論分散性を検討するため,線形化し,一次元伝播問題について,第1節と同様にTaylor展開により誘導し,波速について整理すると,式(13)のような関係式が導かれる.
(13)
式(13)で,b=0とすると,計算手法の数値分散性の影響は考慮されなくなり,波数分散項の影響のみとなる.
ここでa=1/3とすると,線形Peregrineの方程式の理論分散性に帰着する.
 Peregrineの式の理論分散性は波数分散項によるものであり,分散性の大きさはその係数によるものであるから,ここで再度Peregrineの式の波数分散項の係数(1/3)の正当性について検討する必要性がある.
 この式(13)の係数a,bを変化させたことによる理論分散性の違いを図一3に示す.
 図一3より,理論分散性は数値分散項の係数よりも波数分散項の係数aに強く依存し,Peregrineの式の波数分散項の係数を小さくすると,理論分散性は小さくなることが分かる.

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図ー1 線形分散波の理論分散性
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図一2 ADI法(太字)とLeap-Frog法(細字)の数値分散性の比較
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図一3 係数変化による理論分散性の違い

3. 数値解析の数値分散性

 数値計算手法の数値分散性はフーリエ級数を利用した厳密解を用いる方法と,差分方程式をTaylor級数展開することにより得られる疑似差分方程式から求められる近似解を用いる方法で評価できる.厳密解を用いる方法は,非線形問題への拡張は困難であるが,解析解を導く過程で近似を一切使用しないため,数学的には厳密な議論が可能となる.一方,近似解を用いる方法は物理的なイメージを持ちやすく非線形問題への応用が容易であるが,あくまでも近似的なものとなる.
 本研究では,式(10)〜(12)の数値分散性を厳密に評価するために,線形化してフーリエ級数解を求める.
 水位η\eta,線流量M,Nの差分解は格子点上だけで定義されている有限かつ離散的なものである.したがってそのフーリエ級数展開としては,式(14)を考えればよい.
(14)
ここで,j=0,1,2,…,J/2,l=o,1,2,…,L/2である.
 右辺のM,N,\etaは有限フーリエ係数であり,時間のみの関数である.また,f,Lはx,y方向の格子点総数を意味する.
 式(14)を差分式に代入して整理すると.
(15)
なる時間の常差分方程式が得られる.
ここで
(式1)
 である.さらに波速について整理すると,式(16)を得る.
(16)
ここで,
(式2)
式(16)において,a=c=e=i=1/3,b=d=f=j=0とすると,線形Peregrineの方程式の数値計算結果そのものに帰着する.
 ここで,係数の値を変化させ,その影響について検討する.その結果の一例を図一4に示す.図一4の軸は図一2と同じである.この図より,係数を変化させることにより,明らかに数値分散性が抑えられることが確認できる.
また,数値分散性は水深よりもクーラン数に強く依存している.これらの結果より,分散項の係数を変化させることにより,物理的な意味あいを失うことなく計算手法の数値分散性を打ち消すことが可能であることが確認できる.

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式(14〜16)
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(式1,2)
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図ー4 係数変化による数値分散性の違い

4. 既存の方程式との比較

 第2章,第3章の結果より,理論分散性は水深に,数値分散性はクーラン数に強く依存することが確認できる.計算結果には,理論分散性,数値分散性がともに含まれる。したがって,計算結果をストークスの分散関係に近づけるためには両方の分散性の影響を考慮して係数を決定していく必要がある.
 図一5は係数を変化させた結果のうち現段階で最適値と考えられる例(a=1/4)(以後式Aとする)と,Peregrineの式の分散性の比較を,ストークス波の分散関係式を基準として表したものである.
式Aの方が,Peregrineの方程式よりも明らかに分散性が小さくなり,ストークス波の分散関係式に近づいていることが分かる.
 図一6はPeregrineの式と,ケースAの式を用いた場合のADI差分の計算結果を比較したものである.この結果より明らかに,式Aを用いた数値計算結果の方がPeregrineの式を用いた計算結果よりも理論値(ストークス波)に近い波形,及び最大水位を示していることが確認できる.
 式Aの計算結果は,主峰背後に多少の分散波の存在が認められるが,津波計算で最も必要とされている最大水位については,理論値の96%程度も評価しており,既存の非線形分散波のうち最も使用頻度が高いと考えられるPeregriηeの式が,最大波高の88%程度しか評価できていないことからも,十分有意義な結果を得ることができたといえる.
 図一6はPeregrineの式と,ケースAの式を用いた場合のADI差分の計算結果を比較したものである.この結果より明らかに,式Aを用いた数値計算結果の方がPer-egrineの式を用いた計算結果よりも理論値(ストークス波)に近い波形,及び最大水位を示していることが確認できる.
 式Aの計算結果は,主峰背後に多少の分散波の存在が認められるが,津波計算で最も必要とされている最大水位については,理論値の96%程度も評価しており,既存の非線形分散波のうち最も使用頻度が高いと考えられるPeregrineの式が,最大波高の88%程度しか評価できていないことからも,十分有意義な結果を得ることができたといえる.

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図ー5 式AとPeregrineの式の分散性の比較
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図一6 式AとPeregrineの式の計算結果の比較

5. 本研究で得られた主な結論

 本研究で得られた主要な結果を以下に示す.
1. 支配方程式の理論分散性は水深に強く依存し,計算手法の数纏分散性はクーラン数に強く依存する.
2. 既存の支配方程式の波数分散項に数値分散効果を考慮することにより,物理的な意味あいを失うことなく,既存の支配方程式よりもストークスの分散関係式により近い計算結果を得ることができた.

謝辞

本研究でのデータ整理等において,当時東海大学工学部土木工学科の学生であった原,安田両君と,中央大学理工学部土木工学科の学生であった山田君の協力にここで謝意を表す.

参考文献

今村文彦,後藤智明(1986): 差分法による津波数値計算の打ち切り誤差,土木学会論文集,第375号/ⅠⅠ‐6.後藤智明(1985):非線形分散波の数値計算,海岸工学講演会論文集.
佐山順二,今村文彦,後藤智明,首籐伸夫(1987):外洋域における津波の高精度計算法に関する検討,海岸工学講演会.
灘岡和夫(1995):最近の非線形分散波動理論の新展開,水工学に関する夏期研修会講義集Bコース,B−3.
Bousslnesq, M. J. (1877): Essai Sur la theorie des eaux counrantes, Hemo, Acad. Science, 2eme Ser, Tome 23,No.1.
Korteweg,D.j. and G. De Vries(1895): On the change of form of long waves advancing in a rectangular canal, and on a new type of long stationary waves, Phil.Mag.,Vol.39.
Mei,c.c. and B.LeMehaute(1966): Note on a equations of long waves over a nuneven bottom, J, Geophs. Res.,VoL71.
Peregrlne,D.H.(1967): Long waves on a beach,J. F. M., Vol. 27, Part4.

非静水圧3次元津波数値計算モデルの開発 正村憲史*・藤間功司**・林建二郎*** 重村利幸****・後藤智明*****

1. はじめに

 現在の津波数値計算では,主として非線形長波理論に基づく平面2次元モデルが使用されている(後藤ら,1982).この数値計算手法は,最大遡上高に関して実用上十分な精度で痕跡高を再現できる.一方,静水圧近似に基づく理論方程式を用いているために,構造物の周辺や地形変化が大きな場所など,流速分布が一様でなく鉛直方向加速度が無視できない場合に精度が悪くなるという問題点がある(例えば土木学会,1994).しかし,津波防波堤開口部潜堤の安定性や船体に係る流体力,あるいは漂流物が構造物に衝突する際の流体力などを評価する場合,構造物周辺の流速を精度よく再現しなければならない.
 3次元の数値計算モデルとして,静水圧を仮定した多層モデルが考えられている(山下ら,1993).しかし,潮流や高潮と異なり,津波では静水圧近似が成立しないことがあり,鉛直方向加速度が無視できない場合に精度が悪くなるという問題点は解決されない.静水圧分布からの圧力のずれを考慮した非線形分散波理論を支配方程式として選ぶ手法も考えられるが(藤間ら,1984,1985),その導出過程から見ても非線形分散波理論の適用性には限界があり,また高階微分を含むため,数値的処理も容易でない.このため,長波近似の理論方程式を用いない新たな数値計算モデルが求められている.そこで本研究は,圧力の静水圧分布を仮定しない3次元津波数値計算モデルを開発する.本計算手法では微分の階数を増やさず,強非線形性,強分散性を考慮できる.また,津波の防波堤周辺における挙動に関する水理模型実験の結果および非線形長波理論を用いた平面2次元モデルの計算結果を,開発した計算方法による結果と比較することによって,本計算手法の適用性について検討する.

*正会員      防衛大学校 土木工学教室
**正会員 工博   防衛大学校助教授 土木工学教室
***正会員 Ph.D.  防衛大学校助教授 土木工学教室
****正会員 Dr.Eng. 防衛大学校教授 土木工学教室
*****正会員 工博 東海大学教授 工学部土木工学科

2. 数値計算方法

 本計算では非圧縮性流体を扱う.基本方程式として,3次元のEulerの運動方程式と連続の式を使用する.また,非砕波を仮定し,水表面位置は,\z=\eta(x,y,t)で表せるものとする.底面も(x,y)の一価関数で,z=-h(x,y)で表されるものとする.ただし,(x,y,z)はデカルト座標である.z座標は,z=0を初期水表面位置とし,鉛直上向きにとる.また,ここでは底面摩擦の影響は無視し得るものと仮定する.
 本計算手法では,計算領域を直方体の格子に細かく分割する.それぞれの格子において,図一1に示す通り流速v=(u,v,w)は格子の境界面に,圧力pは格子の中央に定義する.ただし,流速を定義する時間と圧力,水表面位置を定義する時間には\delta t/2のずれがある.
 ここで,(n-(1/2))ステップにおける流速,(n-1)ステップにおける圧力,水表面形状が全計算領域において決定されているとする.次ステップにおける値は以下の手順により計算する.
1. nステップにおける水表面形を計算する.
2. 初期条件あるいは(n-(1/2))ステップの流速と(n-1)ステップの圧力を使用し運動方程式を解き(n+(1/2))ステップにおける流速の近似値u*とする.
3. 手順2で計算した流速u*を第1次近似値とし,連続の式を満たすよう繰り返し計算により圧力を修正する.また,圧力の補正値に応じて,流速値も修正する.
4. 移流項を計算する際の流速値にnステップでの値v^n=(v*+v^{n-(1/2)})/2を使い,手順2,3を繰り返す.
 5. 最終的に運動方程式と連続の式が完全に満たされたら,新しい流速を(n+(1/2))ステップでの値,圧力をnステップの値とする.
 手順1において,水表面の移動には,水表面から底面まで積分された以下の連続の式を使用し評価する.
(1)
手順2,4において,運動方程式によって流速を求める際,圧力項は2次精度の中央差分により近似する.移流項の近似では安定した計算を行うため2次精度の風上差分を用いる.ただし,境界および障害物に隣接し,2次精度の差分に必要な流速を得られない場合は1次精度とする.また,時間発展に関しても差分を2次精度とするため,Crank Nicholson法を用いるものとする.すなわち,繰り返し計算による圧力修正後,運動方程式の再計算(手順4)する際には,v^n=(v*+v^{n-(1/2)})/2として移流項をnステップの流速値により計算する.流速と圧力が連動して変更され,最終的に(n+(1/2))ステップでの流速値は,
(2)
を満たす.v^{n+(1/2)}_{i,j,k},w^{n+(1/2)}_{i,j,k}も同様に求められる.
 手順3において,(∇・v)_{i,j,k}をゼロにするためにp_{i,j,k}を次式により修正する.
(3)
ここで,(∇・v)_{i,j,k}は(i,j,k)格子における流速の発散を表す.この修正量をp_{i,j,k}に加えて修正することにより連続の式が成立する.ただし,隣接する格子の圧力を修正することにより,再び連続の式を満たさなくなる.そのために繰り返し計算が必要となる.
 本論文における計算例では遡上は扱わないが,遡上先端部分の処理を従来の津波数値計算方法と同じにすることにより遡上計算も可能である(Masarnuraら,1996).

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式(1〜3)
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図ー1 変数の定義

3. 水理模型実験の概要

水理実験は図一2に示す平面水槽を用いて行なった(松井ら,1993).平面水槽内の中央付近に防波堤模型が設置されている.防波堤の模型の中央部に開口部が設けられている.
防波堤の模型は,捨石マウンドの上にケーソンが設置されている状態をモデル化している.模型の下部は底辺95cm,上辺25cmの台形状であり,その上に幅15cmのケーソン模型を設置している.また,防波堤中央部の開口部は幅140cmとしている.開口部には,マウンド上に高さ4cm,幅7cmの潜堤が設置されている.
 (x,y)の原点を防波堤開口部の中心と,して,水位とz=-2.5cmでの灘方向流速の時間変化,また,x方向流速の鉛直分布,防波堤先端部周辺のz=-2.5cmでのx,y方向流速分布が実測されている.
 実験は,静穏な状態から,波高H=1.9cm,周期T=10.Osの正弦波を2周期分(20s)造波して行った.一様水深部の水深は30cmとした.

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図一2 実験装置

4. 数値解析

 模型実験は,y=0に対して対称形であるので,数値計算では片側半分の領域だけ実施した.ただし,y=0の境界は直立壁としている.格子間隔は,図一3および表一1のように設定する.流体運動の激しい防波堤の周辺において小さく,その周りの動きの緩やかな所では大きくとっている.ただし格子間隔が急に変化しないように徐々に変化させている.また,本手法において,防波堤などの障害物は流体の入り込めない直方体の格子を積み重ねることにより表現している.そのため斜面は階段状に近似される.図一4は,x-y断面のメッシュの様子である.図では都合上,マウンド上にケーソンと潜堤を同時に示してある.
図一5に水位時間変化の計測結果と本モデルの計算結果の比較を,また,図一6に静水面下2.5cmにおける流速uの時間変化に関する実験値と計算値の比較を示す.
図中,従来の津波の数値計算方法である非線形長波理論による数値計算結果も描かれている.この数値計算は,格子間隔は本モデルによる計算において最小である1,25cm均一とし,防波堤開口部の運動損失係数f_Dを0.5として計算したものである.
図一5,6から,本モデルを用いると水位だけでなく流速の時間変化もほぼ再現できるこ:とがわかる.非線形長波理論を用いた従来の津波数値計算手法では,t=10sまでは良好な結果を与えるが,それ以降,水位・流速とも実測値との差が大きくなり,大幅な過大評価になる.ただし,x=42.5cmにある3つの観測点(y=10,40,70cm)における水位・流速の時間変化に関しては,実験結果よりもやや過大評価になっている.
 図一7に防波堤先端付近の水槽中央x-z断面における流速分布に関する計算結果を示す.図一8に水槽中央x-z鉛直断面における本計算手法による計算結果,非線形長波理論による計算結果,実験結果の3者のx方向流速分布の比較を示す.
水理実験では,防波堤開口部潜堤端部から水平方向に軸を持った渦が発生し,水表面付近と底面付近で流速の方向が異なるという現象が生じる.図一8に示す通り,本計算モデルにより,このような水平方向に軸を持つ渦の発生をほぼ再現できる.従来のモデルでは,底面から水表面までの断面平均流速を用いているため,このような現象が再現できない.ただし,t=8sおよび9sにおいては,渦の強さが過大評価され,x=23.8cmで比較的誤差が大きくなっている.これは本モデルが乱流粘性を考慮していないためと考えられる.
図一9に防波堤先端付近の流速u,vの空間分布を示す.ただし,z=-2.5cmでの流速値である.図の左側が計算結果,右側が実験値を示す.
図一9に示す通り,本計算モデルでは防波堤端部から発生する鉛直方向に軸を持った渦もほぼ適切に再現されている.

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表一1 格子間隔
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図一3 格子間隔
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図一4 x-y断面のメッシュの様子
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図一5 水位変化の比較
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図一6 流速uの時間変化の比較
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図一7 本モデルによるx-z断面における流速分布
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図一8 x-z断面における流速分布の比較
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図一9 x-y断面における水表面流速分布

5. 結 論

本研究では,圧力の静水圧分布を仮定せず,Eulerの運動方程式と連続の式を支配方程式とする3次元モデルによる新しい津波数値計算モデルを開発した.本計算モデルを用いることにより,防波堤開口部潜堤端部から水平方向に軸を持った渦が発生し,水表面付近と底面付近で流速の方向が異なるといった従来の津波数値計算手法で再現できない現象や,構造物周辺の流況などを精度よく再現することが可能になる.
ただし,渦の強さが過大評価された点など,改良の必要な点も明らかにされた.特に,乱流の取り扱いは,計算精度向上のため重要である.
本計算では,非線形長波理論を用いる計算方法に比べ,約7倍の計算時間を要したが,計算点の時間的・空間的配置が従来のモデルと同じであるため,構造物周辺の領域だけ本モデルを従来モデルに組み合わせることが可能である.また,乱流粘性を取り込むことにより,さらに精度を向上させることができると考えられる.

参考文献

後藤智明・小川由信(1982):Leap-frog法を用いた津波の数値計算法,東北大学土木工学科資料,52p.
土木学会海岸工学委員会研究現況レビュー小委員会(1994):「海岸波動一波・構造物・地盤の相互作用の解析法」,土木学会,pp.223-251.
藤間功司・後藤智明・首藤伸夫(1985):非線形分散波式の精度の検討,土木学会論文集,第369号/II-5,pp.223-232.
藤間功司・後藤智明・首藤伸夫(1984):非線形分散波理論の数値的な検討,第31回海岸工学講演会論文集,pp.93-97.
松井健一・藤間功司・林建二郎・重村利幸(1993):津波防波堤の効果に関する基礎的研究,第48回年講概要集,pp.804-805.
山下隆男・土屋義人・吉岡洋・吉野俊成(1993):準3次元高潮数値モデルとその適用性,海岸工学論文集,第40巻,pp.211-215.
K.Masamura and K.Fujima(1996): Three-dimensional analysis of long wave runup on a conical island by using the MAC method, Proc. Intemational Workshop on Long Wave Runup Models,(印刷中)

海氷存在時における風波の周波数スペクトル特性 笹島隆彦*・早川哲也**・吉野真史***・後藤智明****

1.まえがき

 冬季から春季にかけてのオホーツク海沿岸は,海域が海氷で覆われる.波浪が海氷下を伝播する場合,波高が著しく減衰することが知られている(例えば水野ら,1991).また,海域がほぼ完全に海氷で覆われている場合,海上風により波浪が大きく発達することはない.紋別港の波浪観測の1例では,風速10mの風が,岸方向に半日以上吹いていても,有義波高は0.8m程度にしか発達しない.
 しかし,近年,この沿岸の冬季の気温は,年々上昇傾向にあり,海氷量も減少傾向にあることがAotaら(1993)により報告されている.これにより,海氷が海上風による波浪の発達を抑える効果や海氷による波浪の減衰効果の低下が顕著となることが考えられる.また,近年,冬季に港湾施設が被災する例も多く,従来にはない高波浪がオホーツク海沿岸に来襲していることが考えられる.このため,オホーツク海沿岸に港湾構造物を設計する上では,海氷が存在する場合においても,波浪を的確に予測することが重要となる.
 海氷が存在しない海域においては,様々な波浪推算モデルが開発されており,波浪を予測することが可能となっている.しかし,海氷が存在する海域においては,風波,海上風及び海氷の相互の関係については十分な知見がなく,これを解明すれば,海氷が存在する海域においても波浪推算が可能となることが期待される.
 本報告では,海氷が存在する海域における波浪推算を行うための基礎的な調査として,紋別港における波浪観測データの周波数スペクトル解析を行い,海氷が存在する海域における発達段階の風波の周波数スペクトルについて検討した.

*正会員 北海道開発局 農業水産部 水産課
**正会員 北海道開発局 開発土木研究所 港湾研究室
***   (株)アルファ水工コンサルタンツ
****正会員 工博 東海大学 工学部 土木工学科

2. 解析方法

 解析に使用したのは,冬季に流氷が来襲する紋別港の1985〜1994年の波浪観測データである.観測は紋別港の沖合水深52mの地点で,2時間毎の20分間,超音波式波高計により,サンプリング周波数2Hzで行われている.このうち海氷存在時の発達段階における風波を以下の条件により抽出した.
1.有義波高の経時変化から,波浪が発達段階であること.
2.有義波高の経時変化から,その最大値が2.Om以上となる擾乱期間であること.
3.波向が沖合いから岸方向に向うものであること.
4.風波とうねりが明らかに共存していない単峰型のスペクトルであること.
5.JONSWAPスペクトルのパラメータである\gammaが1以上であること.
 この条件により抽出した海氷存在時の20擾乱,海氷が存在しない場合の4擾乱について,その周波数スペクトル解析を行い,海氷存在時の周波数スペクトルの形状について検討する.
 また,周波数スペクトルに対する海氷の影響を考慮するため,スペクトル形状と海氷の密接度C_vとの関係について検討している.ここで,海氷の密接度とは,ある海域の海氷の分布状況が,ばらばらになっているか,つまっているかという密集程度を10分位法で表したものであり,海域がすべて海氷で覆われている場合の密接度は10である.海氷の密接度の算定には,第一管区海上保安本部から出されている海氷分布資料を用いて,波浪観測地点から風向方向に20◎kmの直線を引き,20km毎の密接度を読みとり,その平均をC_vとしている.

3. 観測された周波数スペクトル

 (1) 海氷が存在しない場合の風波の周波数スペクトル
 ある期間一定の風向,風速で発達した風波の周波数スペクトル形には,相似性があることが多くの研究者により指摘されており,この相似性に基づいて経験的に求められた周波数スペクトルの標準形が,いくつか提案されている.一般に,発達段階の風波のスペクトル形としては,JONSWAPスペクトルが実測値との適合性が高いとされている.JONSWAPスペクトルは,十分に発達した風波のスペクトル形であるPierson・Moskowitzスペクトルに集中化係数\gammaを掛けた式形で提案され,発達過程にあるエネルギー集中度が高い風波のスペクトルを表現する標準形といえる.
 後藤・青野(1993)は,任意のスペクトル勾配に適用できるよう拡張したJONSWAPスペクトルの式に,観測データから得られた値や関係式を代入することにより,有義波諸元のみから求められる風波の周波数スペクトルの標準形を提案している.この算定式を式(1)に示す.
(1)
 ここで,m:スペクトル勾配,\gamma:集中化係数,\alpha:エネルギーに対する比例係数,\sigma_1,\sigma_2:ピーク周波数付近の低周波,高周波側のバンド幅f_{m*}:無次元ピーク周波数,f_m:ピーク周波数:u_*:摩擦速度,H_{1/3}:有義波高,T_{1/3}:有義波周期である.
海氷が存在しない場合では,観測スペクトルと式(1)により算定される標準スペクトルは,全データにおいて良く一致する傾向にあった.
(2) 海氷存在時の周波数スペクトル特性
図一1は,海氷存在時の観測スペクトルの一例とその時の波浪諸元から式(1)により算定された標準スペクトルを示している.横軸は周波数fをピーク周波数f_mにより無次元化した無次元周波数f/f_m,縦軸はスペクトル密度S(f)をf_mとスペクトルの全エネルギーEにより無次元化した無次元スペクトル密度関数S(f)f_m/Eである.海氷存在時の周波数スペクトル形状については,海氷が存在しない場合と比較すると高周波側のエネルギー密度の減衰が大きいこと,ピーク周波数付近が鋭く尖った形状になることが,宮部(1987)により指摘されている.本研究の解析結果においてもこれと同様であり,標準スペクトルとは一致しない傾向にある.

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式(1)
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図一1 海氷存在時の周波数スペクトル

4. 海氷存在時の周波数スペクトルの標準形

ここでは,前掲図一1に示したような海氷存在時の周波数スペクトルについて検討し,周波数スペクトルの標準形の提案を試みる.このスペクトルの標準形の検討については,後藤・青野(1993)と同様な方法をとり,任意のスペクトル勾配に適用できるよう拡張したJON-SWAPスペクトルの式に,海氷存在時の観測データから得られた値や関係式を代入することにより各パラメータを算定した.
しかし,海氷存在時において,摩擦速度u*を代表風速とした海上風と波浪諸元の相関を見たが,鳥羽(1978)により提案された3/2乗則は成立しなかった.このため,本研究では,式(2)に示すように式(1)の周波数fを含まない係数部分に,新しいスペクトルパラメータAを導入し,観測値および海氷分布資料から標準形を検討する.ただし,ピーク周波数付近のバンド幅を表す\sigmaについては,抽出した擾乱数が少ないため,今回は検討していない.
(2)

(1) ピーク周波数f_mの特性
図一2は,観測された有義波周期T_{1/3}とスペクトルのピーク周波数f_mとの関係を示したものである.また,図中の黒丸が有義波周期階級別のf_mに関する平均値,縦線がその平均値に対する誤差の標準偏差を示す.実線の曲線は,最小自乗法によりf_mをT_{1/3}により表した回帰曲線であり,式(3)に示す.
(3)
一方,図中の点線の曲線は,式(1)におけるT_{1/3}とf_mの関係式であるが,式(3)とほぼ同様な傾向を示しており,海氷の存在による特徴的な傾向は見られない.こうしたことから,海氷の存在はスペクトルピーク周波数に影響を与えないと考えられる.ここでは,式(3)を有義波周期T_{1/3}とピーク周波数f_mの関係として用いることにする.
(2) スペクトル勾配mの特性
高周波のエネルギー密度S(f)の減衰特性を表すスペクトル勾配mの算定には,後藤・青野(1993)と同様な方法をとり,観測された周波数スペクトルのピーク周波数の1.5倍から3.0倍の区間に対して最小自乗法により算定した.海氷が存在しない場合では,後藤・青野(1993)の現地観測結果と同様に,平均的な風波の高周波特性は-4乗則(スペクトル勾配m=4)で表現できることが認められた.しかし,海氷存在時では,海氷の分布状況により,高周波のエネルギー密度の減衰特性が変化し,固定した値による-m乗則で表現できないことが明らかとなった.
図一3は,スペクトル勾配mと海氷密接度C_vの関係を示している.mとC_vの関係を見ると,海氷密接度の増大とともにスペクトル勾配も増大する傾向にあり,海域が海氷で覆う面積が大きくなるほど,高周波側のエネルギー密度の減衰が大きいことを示している.最小自乗法によりスペクトル勾配mを海氷密接度C_vにより近似すると式(4)となる.
(4)
ただし,波浪観測が2時間毎に行われているのに対して,海氷分布資料は1日毎のデータである.また,海氷の氷厚の影響を考慮しておらず,使用した資料の海氷密接度のデータにも幅があり,式(4)は十分にmに対するC_vの影響を表しているとは言えない.しかし,現段階では10年間で抽出したケース数と流氷の分布状況を把握する資料の制限から,スペクトル勾配mを式(4)で表すこととする.
(3) 集中化係数\gammaの特性
JONSWAPスペクトルのパラメータである\gammaは,集中化係数と呼ばれ,ピーク周波数付近のエネルギーの増幅率を表すパラメータである.\gamma=1の場合は,完全に発達し砕波などにより平衡状態に達した風波を,\gamma>1の場合は,ピーク周波数付近にエネルギーが集中したスペクトル形を表す.式(1)から算定される標準スペクトルでは,摩擦速度u*等から\gammaを求めているが,海氷存在時では3/2乗則が成立しないため,この方法は使用できない.
図一4は,観測された集中化係数\gammaと波形勾配H_{1/3}/L_{1/3}の関係を示したものである.ここで,H_{1/3}/L_{1/3}は有義波高H_{1/3},を有義波周期T_{1/3}から求めた波長L_{1/3}により除したものである.\gammaは波形勾配に対してほぼloglinerの関係にあり,H_{1/3}/L_{1/3}が大きくなるとると\gammaは小さくなる傾向にある.つまり,H_{1/3}/L_{1/3}が小さい場合のスペクトル形は,f_m付近にエネルギーが集中した形状となる.これは,波浪が海氷下を伝播する際に,高周波成分が減衰するためと考えられる.波の高周波成分が減衰すると,H_{1/3}が小さくなり,T_{1/3}が大きくなるので,H_{1/3}/L_{1/3}は小さくなる.これに対して,スペクトルの形状としては,波の高周波側のエネルギーが減少した分ピーク周波数付近にエネルギーが集中したものとなる.最小自乗法により\gammaをH_{1/3}/L_{1/3}で近似すると(5)式となる.
(5)
(4) スペクトルパラメータAの特性
式(2)に示したように,摩擦速度u*に代わるパラメータとしてAを導入した.このスペクトルパラメータは物理的な意味を持っていないが,次のように波浪諸元からAを算定できるようにする.
式(3)の両辺を積分することによりスペクトルの全エネルギーEを求める.
(6)
式(6)で,f」=f/f_mと置いてAについて解くと
(7)
有義波高H_{1/3}はスペクトルの全エネルギーEの平方根に比例することが知られており,海氷存在時においてもこの相関は良好であった.ここで,最小自乗法によりH_{1/3}をEで表わし,Eについて解くと式(8)となる.
(8)
また,式(6)におけるM_0は,スペクトルモーメントであり,解析的な積分は行えないが,スペクトル勾配m=5の場合はMitsuyasu(1980)らによって,\gammaの1/3乗に比例することが指摘されている.前掲図一3に示すように海氷存在時におけるスペクトル勾配mは,4〜7程度である.ここで,m=4〜7でM_0を数値積分により求めると,mが大きくなる場合,誤差は多少大きくなるが,M_0はほぼ\gammaの1/3乗に比例した.ここで,最小自乗法により,M_0をmと\gammaにより近似すると式(9)のようになる.
(9)

(5) 海氷存在時の標準スペクトル
前項までの各スペクトルパラメータの検討から,海氷存在時の標準スペクトルについてまとめると式(10)のようになる.ただし,\sigmaについては,後藤・青野(1993)による観測値の平均値を用いている.
図一5は,紋別港の波浪観測から得られた有義波高,有義波周期の経時変化と,観測スペクトルの1例であり,同時に式(1)による後藤・青野(1993)のスペクトル(A-G)と式(11)による提案スペクトル(proposed)を示している.本研究で,提案したスペクトルの算定式は,特に波浪の発達段階に郭いて,従来のものよりも,ピーク周波数付近にエネルギーが集中し,高周波側の減衰率が大きい,海永存在時の周波数スペクトル形を良く表していると言える.
(10)

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式(2〜10)
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図一2 T_{1/3}とf_mの関係
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図一3 C_Dとmの関係
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図一4 H_{1/3}/L_{1/3}と\gammaの関係
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図ー5 紋別港における観測スペクトルと提案スペクトル(1994年2月1日〜1994年2月5日)

5. まとめ

本研究では,紋別港の波浪観測データから,海氷存在時における風波の周波数スペクトルについて検討した.
このスペクトル形は,有義波諸元と海氷密接度により算定が可能であり,密接度が大きいほど高周波のスペクトル密度の減衰率が大きく,波形勾配が小さいほどピーク周波数付近にエネルギーが集中した形状となるものである.また,従来の標準スペクトルよりも観測値との一致は良好である.
今後は,波浪観測の継続と分析及び海氷データの充実を行うなどして,海氷が存在する海域における波浪推算手法を検討する予定である.

謝辞

本研究を実施するにあたり,港湾技術研究所海象調査研究室のご協力を頂いた.ここに記して謝意を表す.

参考文献

後藤智明・青野利夫(1993);沿岸域における風波の周波数スペクトルと無次元パラメータの特性,港研報告,32巻,1号, pp.53-99.
第一管区海上保安本部編(1985〜1993):海洋概報・北海道周辺の海氷状況.
鳥羽良明(1978):第2章海面付近の力学,気象研究ノート,135号,pp.65-96.
水野雄三・谷野賢二・平沢充成・高橋哲美・長内戦治(1991):海氷による波浪の減衰に関する一考察,海洋開発論文集,Vol.7,PP.7-11.
宮部秀一(1987);紋別海域の波浪特性,北海道開発局技術研究発表会概要集,31回(4),pp.893-896.
Aota,M.,M.Ishikawa,K:.Murai and T.Hirata(1993): Long Term Variation in the Sea Ice Concentration along the Okhotsk Sea Coast of Hokkaido, Proc. Intemational Symposium on Ocean Energy Development,pp.3-8.
Mitsuyasu,H.(1980): Observation of the power spectrum of ocean waves using a cloverleaf buoy, Jour. Physlcal Oceanography,Vol.10,pp.286-296.

物理因子重回帰モデルを利用した波浪追算について 吉野真史*・後藤智明**

1. はじめに

 港湾構造物の設計波算出,波浪災害の原因究明,沿岸波浪変形等数値シミュレーションの外力,などを目的として様々な波浪推算モデルが提案されてきている.利用実績がある既存の波浪推算モデルとしては,有義波法とスペクトル法が挙げられる.有義波法は海の波を有義波という単一の波で代表させ,その時間変化を追跡していく方法である.スペクトル法は,不規則波を周波数成分と方向成分に分割し,各々成分スペクトルの伝播をエネルギー平衡方程式に基づいて計算する方法である.しかしながら,これらの波浪推算手法はいずれも風から波へのエネルギー供給を高波浪を対象とした経験式で記述している.よって,常時波浪の推算精度が高波浪のそれと比較して著しく低いという欠点を持つ.設計波算出のような極大波高の算出を目的とするならば既存の推算手法でも問題はない。しかし,港湾の施工管理,船舶の航行,海洋性レジャーなど幅広い海洋活動における安全性の確保に対応し,かつ漂砂移動など沿岸の時系列過程を記述する外力として利用するには,常時波浪を的確に算出する新たな波浪推算手法を開発する必要がある.
 この様な状況に鑑み,従来の波浪推算モデルにかわる手法として,著者のひとりは物理因子重回帰モデルを開発している(後藤ら,1993).この手法は,推算点を中心とした放射状の計算格子を作成し,波浪を一定周期(沖波を仮定するので一定波速となる)の風波とうねりに代表させ,放射状格子を伝播し,推算点に至る風波とうねりのエネルギーを説明変数,観測波浪から算出されるエネルギーを目的変数として重回帰分析をおこない,波高と周期を算出する手法である.いわば波浪推算モデルと統計モデルの長所を組み合わせたモデルといえる.本研究においてはその手法を更に押し進め,常時波浪から高波浪までを精度良く追算できる手法を開発することを目的とする.

*正会員 (株)アルファ水工コンサルタンツ
**正会員 工博 東海大学教授 工学部土木工学科

2. 推算理論

 (1) 検討対象地点
 本研究における検討対象地点は,海上観測局である大阪湾関西空港MT局とする.図一1にMT局の位置と後述する有効フェッチを示す.ここでは,気温・水温・気圧・風・波・潮位・潮流の多岐にわたって観測が行われている.波高計の設置水深は平均水面から17.5mであり,出現波浪のうち周期4.8s程度以下の波浪は深海波と考えられる.風向・風速観測は海面上約10mにて行われており,この値をそのまま10m高度風速として使用する.
 解析に利用したデータは1984年から1987年の4年間の観測値である.

 (2) モデルの仮定
 物理因子重回帰モデルの構築を行うにあたって,波浪の発達,伝播,減衰について以下のような仮定を行う.
 a) 波浪の発達
 波浪の発達は,無次元波高と無次元フェッチの1/2乗則と無次元周期と無次元フェッチの1/3乗則で記述できるとする.有効フェッチは16方位毎にSavilleの方法を用いて求める.16方位毎の有効フェッチは図一1に示したとおりである.図一2に無次元波高と無次元フェッチの1/2乗との関係を,図一3に無次元フェッチの1/3乗との関係をそれぞれ示す.図は観測値から風波であるという条件でデータを抽出したものである.風波の条件は,1.波高・周期ともに発達段階である,2.風向と波向が一致し,2時間以上変化しない,3.風速が2m/s以上である,4.周期が4,8s以下であること(沖波であること),である.図中の実線は最小自乗法による回帰直線であり,両図ともに良好な相関を示す.よって,波浪の発達は無次元波高と無次元フェッチの1/2乗則および無次元周期と無次元フェッチの1/3乗則で記述できるとする仮定は妥当性を有すると考えられる.
また,図一4に示すよう計算格子を推算地点を中心として16方位に波向線を放射状に設定し,それぞれの方向に波浪が独立に発達すると仮定する.各波向線にて3km間隔に計算格子点を設定し,この格子点において波の発達を計算する.

b) 波浪の伝播
波浪の伝播に関しては次に示す仮定を導入する.波浪の伝播速度は波浪の発達にともない時間的に変化するものであるが,本モデルでは波浪を風波とうねりの2成分に分割し,それぞれの成分について代表的な伝播速度を定め,それらを一定と仮定する.本検討においては前述したとおり,波向線上の格子間隔は3kmであり,この間隔を風波は20分,うねりは10分の一定波速で伝播すると仮定する.波浪のエネルギーは群速度で表現されることを考慮して,風波とうねりの波速を有義波周期で表現すると,風波は3.7s,うねりは7.4sとなる.波浪の伝播速度が一定であるため,波向線上で発達した後伝播し,推算地点に至る波浪のエネルギーは,格子点毎に算出したエネルギー群の和となる。すなわち,波浪の伝播は偏微分方程式ではなく単純な代数方程式で記述されることになる.
c) 波浪の減衰
波浪の減衰に関しては,波浪が発達する風域内ではエネルギー平衡状態になるまで減衰は生じないとし,波浪がその風域から離れた場合,または逆風域に入った場合に,波浪エネルギーは伝播距離に比例して減衰し,周期は伝播距離に比例して長くなると仮定する.
 (3) 推算理論
前節までに行った仮定を基に,物理因子重回帰モデルの理論について以下に述べる.
a) 有義波高
風波の発達は次式に示す無次元波高と無次元フェッチの1/2乗則で示される.
(1)
ここで,gは重力加速度,H_{1/3}は有義波高,Uは海面上10mでの風速,aは比例係数,Fは有効フェッチである.
式(1)を変形し,波高の2乗に比例するエネルギーを求める式に書き換えると,次式のようになる.
(2)
ここで,\lambdaは方向分布関数でコサイン4乗則を仮定している.\thetaは波向線と風向のなす角度である.この式(2)が波浪の発達の基礎式となり,これを格子点毎に算出し,式(3)に示すように波向線方向に和することによって推算地点に到達する風波のエネルギー量を求める.
(3)
ここで,IとJは図一4に示したように波向線方向と周方向の格子点の番号である.\deltaFは格子間距離(風波の発達区聞のフェッチ)である.
うねりについては,波向線上の外縁から中心へ向かってN_EからN_Sの区間で発達した風波がうねりとして伝播し,伝播距離に反比例してエネルギーが減衰すると考える.うねりの初期エネルギーはI=N_Eにおける風波のエネルギーとなる。式(4)に示すとおり,うねりの初期エネルギーを伝播距離で除することによって推算地点へ至るうねりのエネルギーが求められる.A」は減衰に関する比例係数である.
(4)
式(3)と式(4)を周方向に積分して加えることによって,推算地点へ至る全エネルギーが求められる.これを式(5)に示す.
(5)
[\epsilon]_Wと[\epsilon]_Sはそれぞれ風波とうねりの全エネルギーである.係数裁Bw(J)とBs(J)は方向毎の回帰係数で,それぞれA\delta F,A」\delta Fを意味するが,最終的には推算波浪エネルギーと,同時刻の観測波浪エネルギーとの重回帰分析により求められる.風波とうねりについて,それぞれ16方位毎の回帰係数,すなわち32個の回帰係数を求めることになる.なお,波浪エネルギーから有義波高への換算は,
(6)
により行う.なお,最もエネルギーの大きい波向線方向を有義波の波向と定義する.
b) 有義波周期
有義波高と同様に,波浪の発達に関する仮定より,風波の周期の発達は式(7)に示す無次元周期と無次元フェッチの1/3乗則で表される.
(7)
ここで,周期の3乗値を周期特性量として定義し,式(7)を,これを求める式に変形すると式(8)になる.
(8)
これが,方向別周期特性量の発達を記述する基礎式となる.有義波高の場合と同様な展開を行うと,風波の周期特性量の全波向の総和は,
(9)
となる.ここに,Dw(J)=C\delta Fであり,風波に関する回帰係数である.
うねりの周期に関する式は,波浪の減衰に関する仮定より,伝播距離に比例して大きくなることから,
(10)
となる.ここに,Ds(J)はうねりに関する回帰係数である.式(9)と式(10)から,波浪推算地点における全推算周期特性量は方向別エネルギーの重み付き平均値として,
(11)
で表される.ここに,[\tau]は,推算時刻の周期特性量を表す.Dw(J),Ds(J)は有義波高の推算式の係数と同様に,推算値と観測値との重回帰分析により求められる回帰係数である.周期特性量から有義波周期への換算は,
(12)
により行う.

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式(1〜12)
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図一1 MT局の位置と有効フェッチ
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図一2 無次元波高と無次元フェッチの関係
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図一3 無次元周期と無次元フェッチの関係
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図一4 計算格子の概念図

3. 波浪追算の試算

(1) 解析期間
物理因子重回帰モデルの回帰係数を算出する期間は,1984年1月1日〜1986年12月31日とする.この期間で求めた回帰係数を用いて1987年の波浪の追算が可能であるかを検討する.
(2) 海上風
前に述べたとおり,波浪を算出するには格子点毎の海上風値が必要となる.大阪湾は小さな内湾であり,湾内はほぼ一定の風向風速であると仮定して差し支えないものと考えられる.また,MT局では海面上約10m地点にて風向風速値が観測されている.よって,MT局で観測された風向風速値をそのまま全ての格子点において用いることとする.
(3) 有義波の追算結果
追算結果の例を図一5に示す.図は1987年1月の追算結果であり,冬期高波浪時の典型的な例である.波高・周期ともに非常に高精度で追算できている.また,図一6に観測波高と追算波高の比較図を示す.図から,両者が良好な相関関係を持つことがわかる.
ただし,周期については追算値が低くばらつく場合がある.これは,風速が5m/s程度未満と非常に小さく,風向が時計回りにENE〜SSWであり有効吹送距離が約10km以下と短い場合に生じる.すなわち,風速が小さい陸風時には追算結果の精度が劣る結果となる.この理由としては,湾内の風向が同一と仮定しているため,波向線先端付近で発達し,うねりとして推算点へ至るエネルギーを正しく評価できないためと考えられる.この傾向は特に夏期に顕著である.図一7に1987年7月の追算結果を示す.風速が大きい時点では高い精度を示すが,全体として非常に風速が小さいため,波高・周期ともに精度が低くばらついている.対策としては,複数の風観測施設の結果から湾内の風速値を補間する手法を開発するなど,面上の風向風速分布をより実状況に近く再現する手法を開発する必要がある.
 以上から,物理因子重回帰モデルによる波浪追算は高波浪,常時波浪ともに高い推算精度を持つが,より精度を高めるには風推算の手法も検討する必要がある.

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図一5 追算結果(1987年1月)
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図一6 追算波高と観測波高の比較(1987年1月)
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図一7 追算結果(1987年7月)

4. 結 論

 本研究では新しい波浪追算手法として物理因子重回帰モデルを提案し,その精度の検討を行った.得られた主要な結論を以下に示す.
1. 波浪推算モデルに変わる新しい波浪算出手法として物理因子重回帰モデルを開発した.この手法は,風速を外力として推算点へ至る波向毎の波浪エネルギーを算出し,それと観測波高から得られる観測エネルギーとの重回帰分析から波浪を算出する,いわば物理モデルと統計モデルの長所を組み合わせた手法といえる.
2. 本モデルを利用した波浪追算を試行した結果,高波浪・常時波浪ともに高い精度をもって追算できる.
3. 外力となる風速が小さく,かつ風向が陸から海へ至る,いわゆる陸風の場合は精度が落ちる.これは,計算格子上の風向を全て観測値と同一としているため,計算格子先端で発達し,うねりとして伝播する波浪を正しく評価できないためと考えられる.対応策としては,計算格子上の風向風速分布をより実状況に近く再現する手法を開発する必要がある.

参考文献

後藤智明・柴木秀之・青野利夫・片山忠(1993):波浪予測を目的とした物理因子重回帰モデル,土木学会論文集,第473号/ⅠⅠ-24,pp.45-53.
後藤智明・青野利夫(1992):単地点出力型スペクトル法による波浪推算システム,港研報告,第31巻,2号,pp.55-73.
後藤智明・宋次広児・永井紀彦(1990):短フェッチ海域の波浪推算モデル,港研報告,第29巻,3号,pp.3-26.
井島武士・副島毅・松尾隆彦(1967):数値計算による台風域内の波の分布について,第14回海岸工学講演会論文集,pp. 29-38.
Isozaki,I.and T. Uji(1973): Numerical prediction of ocean wind waves, Papers in Met and Geophys. Vol. 23(4),pp. 347-359.

南海トラフにおける津波特性に関する考察 津久井啓介*・藤澤康雄**・後藤智明***

1. 緒言

 日本近海は世界有数の地震活動地帯であり,地震に伴う津波の発生件数は非常に多い.わが国に甚大な被害をもたらした津波の大部分は太平洋側で発生している.津波災害史で最初に記録された津波は,684年(天武13年)に四国沖で発生した南海道津波であった.684年から現在まで約1300年間に,南海トラフに発生したM8以上の巨大地震は8回ほどあり,津波は九州の太平洋沿岸部から紀伊半島沿岸部にいたる広範囲に大被害をもたらした.特に,1707年(宝永4年),1854年(安政元年),1946年(昭和21年)の南海道津波の被害が甚大であった.このように四国,紀伊半島の南海トラフにおいては,100年から150年程度の周期で海溝型の巨大地震が起こり,大津波が発生することが分かっている.したがって,今後の南海道沿岸の津波対策には,既往最大津波という従来の設計津波の考え方の妥当性を含めて,津波のエネルギー集中度および津波に対する脆弱度特性をべ一スとした詳細な検討が必要である.
 四国・紀伊半島沿岸における津波の危険度の評価に関しては,河田・小池(1995)が危機管理の立場から津波減災の方法を提案し,南海トラフ沿いに津波波源を移動させた仮想津波の結果を基に津波の危険度を評価している.また,村上ら(1995)は,津波波源の位置と津波高および到達時間の相互関係より,地域津波防災を考えた堤防高や避難体制の確立を目指している.これらの研究では,津波波源の位置変化による津波の評価を行っている.しかしながら,津波対策を考える場合,津波波源の位置のみならず地震断層諸元が変化した場合,特に地震断層幅が変化し津波の周期特性を考慮した津波の評価も必要である.
 本報では,その基礎的な検討として,1707年宝永地震津波,1854年安政地震津波,1946年昭和南海地震津波を対象に,津波防災対策を想定する設計津波として既往最大津波という従来の設計津波の考え方を含め,対象沿岸域にとって最も危険側の地震断層位置および地震断層幅が変化した場合の津波の数値シミュレーションを行い,津波のエネルギー集中度特性や津波の周期特性に関して検討した結果を報告する.

*正会員 (株)大林組 技術研究所 
**正会員 工博 (株)大林組 技術研究所主任研究員
***正会員 工博 東海大学教授 工学部土木工学科

2. 断層モデルについて

 2.1 断層モデル
 津波の初期波源は,断層運動の海底鉛直変位を津波初期波形として与える.この断層運動は図一1に示すように6つの断層パラメータすなわち走向\theta,傾斜角\delta,すべりの方向と断層の走向方向とのなす角\lambda,断層の長さL,断層の幅W,すべり量Uで規定する.これら断層パラメータを決定すると断層運動による地盤の鉛直変位は弾性理論により,Mansinha and Smyiie(1971)の方法で求めることができる.
数値計算で用いた3つの既往地震断層モデルは,全て相田(1981)が示した断層モデルを用いた.その各モデルの断層パラメータを表一1に示す.
2.2 地震断層の移動と断層幅の変化
図一2に過去の震源位置と断層の仮想移動位置を示す.過去に南海トラフで発生した海溝型地震の震源位置を結び,そのライン(Ⅰ列)を基準として沖側35kmの位置に基準ラインと平行に仮想のライン(II列)を設定した.ラインⅠ,II列ともにプレート境界より内側である.また,各ラインを11分割し2系列22個の仮想断層位置を設定した.
 さらに,津波の周期特性を考慮するために,昭和南海地震断層をべ一スとしてその地震断層幅を2/4,3/4,4/4,5/4の4種類に変化させた.その際,各オリジナルの断層モデルの最大鉛直変位と同じ値となるように各断層幅を変えた場合の最大鉛直変位の値を合わせている.

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図ー1 断層モデル図
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表一1 断層パラメータ(相田,1981)
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図一2 断層移動位置図(●:既往地震の年代)

3. 数値計算法

現在用いられている津波の数値計算法は,大きく2つに別れる.太平洋の深海域を伝播する津波と沿岸部の比較的浅水域を伝播する津波の計算法である.前者は津波の波高に対して水深が大きい場合で,非線形効果が小さく微小振幅長波理論(線形長波理論)が成立する.また,後者は,水深に対する相対波高が大きくなり非線形効果や海底摩擦さらに,波の分散効果等が無視できなくなる.
 本研究では,沿岸部における津波の危険度を評価することが主目的であり,断層位置や断層幅をパラメータとして多ケースの解析を行い津波の最大水位を求めるもので,数値計算法としては微小振幅長波理論を用いた.さらに,微小振幅長波理論は現在の津波計算法から見れば計算時間も早いが,計算領域の多領域接合,開境界処理等,多量の計算では時間がかかりすぎるため,微小振幅長波理論を基に配列,境界処理などに工夫をし短時間に精度良く演算できる高速演算型津波計算法を開発した.
 ここでは,津波の数値計算法の概要として基本である線形長波理論に基づく計算法について述べる.
(1)
(2)
(3)
ここに,\etaは津波の水位,M,Nは水平方向x,yの流量フラックス,gは重力加速度,hは静水深を示す.上式にコリオリカを考慮する場合もあるが,日本近海で発生する津波の場合は比較的伝播距離も短いためその効果が小さいので省略する.この支配方程式をスタッガードリープフロッグ差分法を用いて計算する.
3.1 計算領域と計算格子
計算領域は,図一3に示したように領域ⅠからⅠVまでを多領域接合し,領域Ⅰの計算格子間隔を3,600m,領域ⅠⅠを1,800m,領域ⅠⅠⅠを600m,領域ⅠⅤを200mとして計算した.陸域との境界条件は,鉛直壁条件とした.
 3.2 数値計算の再現性の検討
 津波の数値シミュレーションの計算結果の再現性(計算精度)を評価するために,相田(1977)により提案された評価指標K(幾何平均)および\kappa(幾何分散)を用いた.この方法はある地点の津波高の観測値と同地点での計算値を比較するもので,K値は全体として計算値をK倍すれば観測値に一致するという指標であり,1に近いほど良好な結果である.また,\kappa値は計算値ばらつき度を示すもので,対数f直で表した標準偏差に相当する量である.今回の数値計算結果は,K値1.26,\kappa値1.31であり数値計算の再現性が確認された.

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式(1〜3)
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図一3 計算領域図

4. 結果および考察

 4.1 全体の津波集中度
 沿岸部に来襲する津波の大きさは,津波波源の相対的な位置関係,津波波形の持つ全エネルギーとその地域的分布,津波伝播中の海底地形影響等があり,沿岸部の津波波高を単純に重ねて表示してもそれぞれの地域での津波の評価にはならない.そこで高橋ら(1995)が提案している津波のエネルギー集中度を表す指標を用いて評価した.来襲する全津波エネルギーの大小によらず,その場所的な集中度を表すのが津波集中度(TCD:TsunamiConcentration Degree)である.全来襲津波エネルギーEtは以下のように表すことができる.
(4)
ここでsは対象とする海岸線に沿った軸であり,H(s)は最大津波波高である.またNは長さ\delta sの部分区間で全海岸線を分割した場合の総数であり,s=n\delta sと表す.
またある部分区間への来襲津波エネルギーE(s)は以下のように表すことが出来る.
(5)
従って(4)式と(5)式の比率,
(6)
が津波の集中度TCDとなる.
 図一4に解析領域における津波集中度を示す.四国沿岸部の足摺岬の土佐清水と弁天岬,および室戸岬に顕著な津波エネルギー集中が見られ,その値は全津波エネルギーの0.20%〜0.27%である.また図一5は既往の津波3ケース(1707年宝永南海地震,1854年安政南海地震,1946年昭和南海地震)から求めた津波集中度である.これを見ると,土佐清水や室戸岬の集中度が弁天岬を上回っており,室戸近くで2ヶ所の集中がみられるが,概ね傾向は定量的にも全ケースのTCDと変わらない.津波の地域的危険度は津波の種類によらず,また地震断層の移動および断層幅の変化にもかかわらず同じような傾向を示すことが分かる.
 4.2 断層幅による津波集中度
 4.1で述べたTCDを各断層幅ごとに整理したものが図一6である。これを見ると,ピークを示す弁天岬と室戸岬付近では幅による違いはそれほど見られないが,土佐清水では断層幅が大きくなるにしたがって集中度も大きくなっている.しかし,例えば御坊町などを見ると断層幅が2/4のときに最大の集中度を見せている.
 これらはいずれもその地点の地形的影響があると考えられる.さらに湾あるいは港湾での共振や岬周りでの回り込みなどの影響が強く出る場所では,津波防災上の設計津波の考え方は断層の位置のみならず,断層幅の変化,すなわち津波の周期特性まで考慮して考える必要がある.
 4.3 主な地点での津波高
 断層モデルの位置および断層幅の違いによる津波の最大水位がどのような傾向にあるのか,紀伊水道の沿岸域の主な地点について求めた.
 全体的な傾向としては当然ながら断層位置が紀伊水道に近づくに従い津波水位は大きくなり,本来の昭和南海地震断層位置よりも東側で地震が起きると最大水位はほとんどの沿岸域でより大きくなることが分かった.
 そこで沿岸域の代表例として,徳島県海部町那佐港,徳島県由岐町鹿ノ首岬,和歌山県和歌山本港,和歌山県海南港の断層位置と幅の違いによる津波の最大水位を示す.図一7,8はⅠ列断層位置及びII列断層位置に関する那佐港の最大水位図である.同じく図一9,10は鹿ノ首岬,図一11,12は和歌山本港,図一13,14は海南港の最大水位図である.
 どの例からも前述の通り断層位置が異なると大きく沿岸津波高が異なることが分かる.また断層の長手主方向の向きのため四国側では全体的に紀伊半島側より津波高は高めである.
Ⅰ列目とⅡ列目を比較すると,Ⅱ列目は震源が35kmほど沖側になるにも関わらず同じような津波高を示し,大まかな傾向も同じであることが分かる.トラフ上ということもありⅡ列目の方が平均で1,500mほど水深が深くなっており,単純にグリーンの法則によれば,II列目の津波高はⅠ列目の津波高より大きくなるはずである.しかし距離減衰などの効果もあり同じような津波高になったものと考えられる.さらに地形影響などによって複雑に伝播するので,距離が違う場合全く同じ傾向にはならず.細かく見ると各ケースで様々な応答を示しているのが分かる.
 Ⅰ列目ではそのピークがたいてい断層位置10にあるが,Ⅱ列目では位置11にピークがある.これはⅠ列目とⅡ列目では緯度方向のみにずらしたため,海岸線に沿って考えると1列目では位置10が最もこの紀伊水道沿岸に近づき,Ⅱ列目では位置11が最も近づくためである.
 さて図一7では,断層位置10で断層幅が3/4の方が断層幅4/4より沿岸津波高が著しく大きくなっている.地震断層の相似則に従うと設定地震マグニチュードが大きいほど断層幅が広く推定される傾向があるが,必ずしも地震マグニチュードが大きい方が津波対策を考える上で安全側であるとは言い切れない.また図一8では本来の昭和南海地震津波時に一番近い断層位置(位置9)での最大水位に対して,東側にずれた場合(位置11)は最大水位が約2倍となる.これから津波防災上設定断層位置の選定には十分留意しなければならないことが分かる.
 また図一9においては全般的に断層幅2/4が最大を示しており,4/4と5/4がどの位置でも低い.とくに位置9と11では2/4が5/4より30%以上大きくなっている.Ⅱ列目の図一10を見ると2/4の断層幅の場合が更に他より大きめに出ており,3/4の場合も王列目と比べて他より大きく出ている.
 図一11においては断層位置によってどの断層幅が最大値を取るか異なっている.例えば位置6などでは5/4が最大であるが,位置8では3/4が最大となっている.図一12では1列囲ほどの断層幅による違いは出ていない.
 図一13では他のケースほど断層幅の変化による最大津波高の違いは見られない.傾向的には和歌山本港と同じといえる.これは図一14においても同様である. 以上の結果から,従来の既往最大津波高で津波防災を考えると場合によっては防災対策の観点から見て危険側となり,津波防災上は断層の位置および断層幅の変化にまで考慮した設計津波の考え方が必要であることが分かる.

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式(4〜6)
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図一4 津波集中度(全ケース)
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図一5 既往津波の集中度
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図一6 各断層幅でのTCD
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図ー7 最大津波高(海部町那佐港,Ⅰ列目)
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図ー8 最大津波高(海部町那佐港,ⅠⅠ列目)
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図ー9 最大津波高(由岐町鹿ノ首岬,Ⅰ列目)
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図ー10 最大津波高(由岐町鹿ノ首岬,ⅠⅠ列目)
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図ー11 最大津波高(和歌山本港,Ⅰ列目)
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図ー12 最大津波高(和歌山本港,ⅠⅠ列目)
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図ー13 最大津波高(海南港,Ⅰ列目)
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図ー14 最大津波高(海南港,ⅠⅠ列目)

5. 結言

 昭和南海地震の断層モデルを南海トラフに沿って移動させ,同時に断層幅を変えながら津波の数値シミュレーションを行った.その結果次のような結論を得た.
 (1) 足摺岬,弁天岬,室戸岬付近で津波エネルギーの集中が見られた.また,断層位置の違いに関しては,対象とする沿岸に断層位置が近づくに従い,沿岸津波高が大きくなる傾向がある.また,既往の断層位置よりも東側で地震が発生すると全体的に最大津波高が大きくなる.
 (2) 地震断層の相似則に従うと設定地震マグニチュードが大きいほど断層幅が広く推定される傾向があるが,必ずしも地震マグニチュードが大きい方が津波対策を考える上で安全側であるとは言い切れない.
 (3) 津波防災対策を策定するための設計津波としては,既往最大津波を含め,対象海岸にとって最も危険側の断層位置・断層幅を考慮して定める必要がある.

参考文献

相田勇(1977):三陸沖の古い津波のシミュレーション,東京大学地震研究所彙報,Vol.52,pp.71-101.
相田勇(1981):南海道沖の津波の数値実験,東京大学地震研究所彙報,Vol.56,pp.713-730.
河田恵昭・小池信昭(1995):危機管理と津波避難マニュアル, 京都大学防災研究年報,第38号,B-2,pp.157-211.
佐藤良輔(1989):日本の地震断層パラメータハンドブック,鹿島出版会,390p.
高橋智幸・首藤伸夫・越村俊一(1995):北海道東方沖で発生する地震津波の災害アセスメント,海岸工学論文集,第42巻, pp.356-360.
村上仁士・伊藤禎彦・山本尚明・佐藤広章(1995):四国沿岸域の津波危険度に関する一考察,海岸工学論文集,第42巻,pp. 361-365.
Manshinha,L,andD.E.Smylie(1971): The displacement field of inclned faults,Bull. Seism. Soc. Amer., Vol61.,No.5, pp.1433-1440.
Tsukui, K., Y. Fulisawa and C. Goto (1997):Tsunami Concentration Degree in Tonankai Plate Boundary, roc. 16th lnt. Conf. on OMAE, Vo1.1-B,pp,47-54,

非線形分散波理論式に関する多段階混合差分スキームの提案 原信彦*・岩瀬浩之**・後藤智明***

1. はじめに

 1983年日本海中部地震津波では,津波のソリトン分裂が観測された.このように浅海域でソリトン分裂を起こしたり,また波状段波へと変形する津波は,非線形効果と波数分散効果を考慮した支配方程式で解析する必要がある.本研究では,誤差解析および,数値計算結果と水理実験結果の比較から数値誤差を最小限にするような計算点配置を求めた上で,非線形分散波理論を支配方程式とする津波数値計算手法として,分散項を安定に計算することができ,かつ陸上遡上および領域結合の取り扱いの容易な多段階混合差分法を新たに提案する.

*正会員 工修 (株)エコー
**正会員    東海大学 工学部土木工学科
***正会員 工博 東海大学教授 工学部土木工学科

2. 非線形分散波理論

 非線形分散波理論としては様々な提案式があるが,ここでは,津波数値計算に適合すると考えられるPeregrineの式,
(1)
(2)
(3)
を数値計算の支配方程式とする.ここで,分散項としては岩瀬ら(1998)が有限振幅性を考慮した分散関係から求めた最良な分散項を用いている.M,Nは水平方向の流量フラックス,\etaは水位,hは静水深,Dは全水深(D=h+\eta),gは重力加速度である.

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式(1〜3)

3. 第1微分方程式近似を利用した誤差解析に基づく最適な計算点格子に関する考察

(1) 非線形分散波の変形に関する水理実験 検証する数値計算モデルの精度は水理実験との比較によって検討する.水理実験で使用した実験装置を図一1に示す.長さ20m,幅0.5m,高さ0.8mの水槽に勾配3/20の斜面を設置し,実験を行った.波高計は,容量式波高計を用い,斜面下端から1m手前に設置し,その記録を計算の境界値として与えた.その他の波高計は,斜面上端から1m間隔で設置した.また,遡上に関する実験は,斜面上端7mの地点から勾配1/8の斜面を設置し,最大遡上高はビデオ撮影によって測定した.孤立波の伝播・変形に関する実験条件は上部水深を0.1mとし,遡上実験に関しては,上部水深を0.15mとした.
 (2) 検討差分式とその第1微分方程式近似を利用した誤差解析
 計算点格子の配置の違いにより数値計算誤差は大きく変わってくることが知られている.そこで,最適な計算点配置を調べるために,第1微分方程式近似を利用した誤差解析を行う.ここでは,支配方程式は1次元伝播の非線形長波理論式(1)〜(3)を使用する.
 非線形長波理論式をZabusky型差分化にする.
(4)
(5)
である.ここで,係数\alphaは,移流項の空間差分配置を表
す係数であり,\alpha=1ならば前進差分,\alpha=0ならば中央差
分,\alpha=-1ならば後退差分を意味する.係数\beta_1は,移流
項の時間差分配置を表す係数であり,\beta_1=1ならば未知
の流量フラックスを使用,\beta_1=Oならば未知と既知の流
量フラックスを使用,\beta_1=-1ならば既知の流量フラッ
クスを使用することになる.係数\beta_2は,圧力項の時間的
な係数であり,\beta_2=1ならば未知と既知の波高を使用し,
\beta_1=0ならば既知の波高を使用する.係数\beta_3は連続の式
第2項の時間差分配置を表す係数であり,\beta_3=1ならば
未知と既知の流量フラックスを使用,\beta_3=0ならば既知
の流量フラックスを使用する.
 次に式(4)を差分の中心である(i+1/2,n+1/2)
でテーラー展開を3階微分まで行う.ただし,移流項は
他の項に比べ小さいので2階微分までとする.
(6)
同様に,式(5)を差分の中心である(i,n+1/2)でテー
ラー展開を行う.
(7)
ここで,
(8)
とおき,式(8)を式(6)の局所項に代入すると,
第1微分方程式近似は,運動の式は,
(9)
となり,連続の式は,
(10)
となる.ここで,運動の式(9)の右辺の各項が誤差項
となり,右辺の第1〜5項が数値粘性誤差,第6項が数
値分散誤差を表す.
 したがって,第1微分方程式近似を用いて誤差解析を
行った結果,誤差を最小にする係数は,\alpha=0,\beta_1=0,\beta_2=
1,\beta_3=1が望ましいことがわかる.すなわち,支配方
程式のすべての項を時間的にも空間的にも対称形の中央差
分形式が適切であることを意味する.
 (3) 最適な計算点配置
 (2)では,検討差分式を用い,非線形長波理論におけ
る数値誤差を最小にするような計算点配置を第1微分方
程式近似から求めた.ここでは,検討差分式に分散項を
取り入れ,非線形分散波理論として係数(\alpha,\beta_1,\beta_2,\beta_3)
の異なる全36ケースの数値計算を行い,水理実験結果と
の比較を通して,第1微分方程式近似から得られた誤差
特性と数値計算結果を考察する.また,この数値計算に
おいて分散項を考慮する場合,移流項を中央差分として
も安定に計算できることを示す.
 図一2は水位の時系変化に関する数値実験結果と水理
実験結果の比較を示したものである。図はすべて斜面上
端から8mの点での水位の時系変化を比較したもので
ある.図一2(a)は,係数\beta_1,\beta_2,\beta_3を一定とし係数\alphaの
違いによる誤差特性を示したものである.\alpha=1のときは
水理実験結果に比べ波形変化が大きく負の数値拡散が生
じて,発散する可能性がある.\alpha=-1のときは波形変化
が小さく,最適な係数ではないと考えられる.よって,
係数\alphaは第1微分方程式近似から得た結果と同様に数
値計算結果でも\alpha=0のとき誤差が小さく,適合度も良
好である.次に,図一2(b)で係数\beta_1について比較検討す
る.\beta_1=0のとき水理実験結果との誤差が最小となり,第
1微分方程式近似の誤差特性と同様の結果を得た.そし
て,係数\beta_2,\beta_3も,共に1のときに精度の良い結果を得
た.以上の結果から,第1微分方程式近似の誤差特性と
数値実験結果の両方の結果が一致していることが分か
る.また,非線形分散波理論を計算の支配方程式とする
ならば移流項を中央差分としても安定に計算することが
可能であり,かつ精度の良い結果を得ることが確認でき
る.したがって,最適な計算点配置は,非線形分散波理
論を計算の支配方程式とするならば,時間,空間格子と
もに中央差分をとることが望ましい.

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式(4〜10)
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図一1 実験装置

4. 多段階混合差分スキーム

 (1) 多段階混合差分スキーム
 多段階混合差分法は,2段階混合差分法(原ら,1998)をもとに改良したものである.改良点は,検討差分式の第1微分方程式近似から,すべて中央差分が望ましいという結果を得た.よって,2段階混合差分法で風上差分を用いる移流項を時間的にも空間的にも中央差分に取り,分散項を含めた陰差分計算を行う.また,2次元計算への拡張に伴う方向分散性を抑えるため,運動の式を3段階に分け,1段目では線形長波理論を計算し,2,3段目で移流項と分散項の計算を行う.
 ここで,多段階混合差分法の計算の流れを説明する.
1段目では,運動の式の線形項(局所項・圧力項)を陽差分で計算し,計算上の中間値M^{(1)},N^{(1)}を算出する.次に,2段目では,トーマスアルゴリズムを利用した陰解法で,移流項と分散項を計算,中間値M^{(2)},N^{(2)}を算出する.ただし,x方向の運動の式であれば,xで微分されている移流項とxの2階微分の分散項を計算する.最後に,3段目では,残りの移流項と分散項を用いて計算する.ここでの計算法は,x方向の運動の式であれば,y方向でのトーマスアルゴリズムを利用した陰解法を用いる.また,連続の式は,陽解法で計算する.
 以下に,計算法の式を示す.運動の式は,
(11)
(12)
であり,連続の式は,
(13)
となる.差分式は,1段目が,
(14)
(15)
で表され,2段目が,
(16)
(17)
そして,3段目が,
(18)
(19)
と表される.なお,連続の式は,1段階の計算で済み,
(20)
で表される.ここで,|_{F.D.}の記号は各微分項に対応する差分項を意味する.
 (2) 計算結果と水理実験結果の比較
 多段階混合差分法の精度を検討するために,Zabusky,2段階混合差分法,ADI法による数値計算と,水理実験結果を用いて比較する.ここで,ZabuskyとADI法は,非線形分散波理論を計算の支配方程式とするので移流項を中央差分と風上差分の両方で計算した.
 図一3(a)〜(f)は,それぞれZabusky,Zabusky(up-wind),ADI法,ADI法(up-wind),2段階混合差分法,多段階混合差分法の,空間波形の図であり,クーラン数を一定とし,時間,空間格子を変えたものである.どの計算法を用いても格子を小さくしなければ精度の良い計算をすることができないことがわかる.次に,移流項を風上差分で計算している計算法と中央差分で計算している計算法を比較すると,中央差分で計算を行ったものはすべて水理実験結果とほぼ同じような波高増幅となり,適合度も良好であるのに対し,風上差分では移流項における数値粘性の影響が計算に表れ,水位の過小評価となる.また,移流項を中央差分で行う各計算法はいずれも良く水理実験値と一致し差はほとんどないことがわかる.したがって,非線形分散波理論を計算の支配方程式とするならば,移流項を中央差分で計算しなければ精度の良い計算をすることができない.

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式(11〜17)
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図一2 計算差分点の違いによる計算結果の差違
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図一3 数値計算結果と水理実験結果

5. 陸上遡上計算

 多段階混合差分法の特徴は,Zabusky,ADI法と異なり連続の式と運動の式の1段目においては,陽差分法を用いて計算を行っているため,容易に陸上遡上計算を行うことが可能である.ただし,遡上の先端部分は移流項を中央差分で計算することが難しいので遡上領域では風上差分を用いて計算を行った.図一4は,非線形長波理論と非線形分散波理論を用いた数値計算結果を比較したものである.この図から,非線形長波理論に比べ非線形分散波理論を用いた遡上計算の方が遡上高が高くなり水理実験結果の遡上高に近い結果となっている.ここで,遡上時の底面摩擦はManningの粗度係数を0.03として計算したものである.

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図一4 多段階混合差分スキームによる遡上計算

6. 結論

 本研究では,検討差分式を用いて,打ち切り誤差解析および水理実験結果との比較検討から誤差を最小にするような移流項および静水圧項の計算点配置は時間的にも空間的にも対称形の中央差分の形式が望ましいことを確認した.また,非線形長波理論を計算の支配方程式とした場合,移流項を風上差分で計算しなければ打ち切り誤差に基づく分散性との干渉により数値ギブス振動を発生させるが,非線形分散波理論を計算の支配方程式とした場合は,移流項を中央差分で計算が可能であることを明らかにした.そして,移流項を中央差分で計算することにより,風上差分を用いた計算よりも精度の良い計算をすることができる.
 今回提案した多段階混合差分法は,上述の結果を考慮し2段階混合差分法における移流項の陰的差分法への適用を考え改良したものである.また,津波数値計算で重要と思われる,陸上遡上計算に対しても,1段目で陽差分を使用しているので考慮可能である.ただし,遡上計算において非線形長波理論式に比べ非線形分散波理論式を支配方程式として用いた方が水理実験結果との適合度は良好だが底面摩擦に関しては,これから研究を進めていく必要がある.

謝辞

本研究を実施するにあたり,熱心なご指導を賜りました東海大学工学部土木工学科濱野啓造教授,飯田邦彦助教授に深く感謝いたします.また,(株)大林組技術研究所藤澤康雄氏,(株)エコー柴木秀之氏,五洋建設(株)技術研究所金山進氏そして(株〉アルファ水工コンサルタンツ見上敏文氏の助力を得た.ここに記して謝意を表す.

参考文献

岩瀬浩之・見上敏文・後藤智明(1998):非線形分散波理論を用いた実用的な津波計算法モデル,土木学会論文集,(印刷中).
原信彦・後藤智明(1997):2段階混合差分法による非線形分散波の数値計算,東海大学紀要工学部,Vol.37,No.2,pp.101-107.
Perrline,D.H.(1967): Long waves on a beach J.F.M,Vol. 27,Part4,pp.815-827.
Zabusky,N.J.(1968): Solitons and bound states of tlme-independant Schrodinger equation. Physicalreview. Vol.168.

ソリトン分裂波の増幅機構と 数値計算の誤差特性に関する一考察 岩瀬浩之*・竹田勝博**・後藤智明***

1. はじめに

 津波が遠浅な浅海域を伝播する場合,水深変化に伴う波の非線形項と波数分散項の位相のズレからソリトン分裂を起こすことが知られている.浅海域でソリトン分裂をした津波は,波長が極端に短くなり,波形曲率効果の影響によって波高が著しく増幅する.1983年の日本海中部地震津波では,北秋田県沿岸の浅海域で発生したソリトン分裂波が4トンの波消ブロックを散乱させる程の流体力を秘めていることが確認された.海岸構造物の防災対策にとってソリトン分裂の増幅過程を精度よく再現することは,その波力を評価することに直接関与するため重要な課題である。また,同津波では,秋田県の米代川や新潟県の石川を津波が波状段波として遡上し,停泊中の漁船へ被害を与える等,津波災害が沿岸部だけでなく河川上流域まで及ぼすことを示した.
 津波がソリトン分裂波として河川流の様な逆流場を伝播する場合,逆流速の影響により通常の伝播距離に比べ相対的に短い伝播距離で分裂を起こし,急激に水位が増幅することが考えられる.また,ソリトン分裂波の生成および増幅過程を水位の変化のみならず波形形状の変化も精度よく捉えることが重要となる(岩崎ら,1975,1977).しかしながら,河川を遡上するような逆流場中を伝播する場合のソリトン分裂波生成および増幅機構に関する詳細な研究はほとんど行われていないのが現状である.そこで本研究は,河川を遡上(逆流場中を伝播)するソリトン分裂波を対象としてその増幅機構の特性と数値計算による計算精度に関して考察を行った.ソリトン分裂波の水位変化だけでなく,波形形状の変化も捉えることを目的として,形状波数という水理量を新たに導入し,水理実験からソリトン分裂波の増幅特性を調べた.
また,第1次近似の非線形分散波理論を支配方程式とした数値計算におけるソリトン分裂波の増幅に伴う水位および波形形状の計算精度を検証し,ソリトン分裂波の波高水深比に対する精度限界を見いだした.

*正会員    東海大学技術員 工学部土木工学科
**       富山県庁
***正会員 工博 東海大学教授 工学部土木工学科

2. 水理実験

(1) 実験概要と条件

 水理実験では,図一1に示す様に,ソリトン分裂波(以下分裂波とする)生成の促進と増幅過程の波形を観測し易くするために,3/20の斜面と水平床から成る水底を有した幅0.5m,高さ0.8m,全長22mのピストン式造波水槽を使用した.また,同造波水槽はポンプを用いた水流の循環装置と電磁流量計を有しており,孤立波の伝播方向とは逆方向へ一定流量を作り出すことによって逆流場(疑似河川流)を再現した.以下,逆流場の強さは流速と水深に関するフルード数F.として示す.各測定点での時間的波高は容量式波高計を用いた.波高計Aを数値計算用の入射波形記録用とし,水平床部開始地点から1m離れた場所に波高計Bを設置し,波高計B以降は1m間隔に設置,合計9本を用いて記録した.
 実験条件は,表一1に示すように2ケースの入射波高(波高計A)に対し,水平床水深h_0,フルード数Frを変えて計35ケースを行った.なお,フルード数Frについては0.05間隔で変化させた.
 (2) 波数と波長の定義
 分裂波の水位の増幅変化だけでなく,波形形状の空間的な変化も捉えることを目的に波数と波長の定義および導入を行う.
 いま,KdVの式における第1次近似定常解,
(1)
より,正弦波との比較から,
(2)
(3)
とし,それぞれ理論波数\beta,および理論波長L_{\beta}とする.ここで,Hは波高,hは静水深,gは重力加速度であり,
cは,
(4)
である.
 一方,実験で得られた各点における時間波形については,第1分裂波形の波蜂より前面部に対し,
(5)
による孤立波形を,SDFP(Scaled Davidon FletcherPowell)法を用いた同定法によってあてはめ得られたものである.波速この精度の問題等,厳密的な同定は困難であるが,近似値としての\betaを求めることができ,これを本研究では観測波形に対する形状波数\betaとして定義する.一例として,h_0=10.Ocm,H_0=4.9cm,Fr=0.00の形状波形および理論波形を,図一2に示す.図中,(●)は観測波形であり,太線が形状波形,細線が理論波形を意味する.
 また,形状波数\betaの導入により,孤立(分裂)波の見かけ上の波長L_0を以下のように比較的簡単に定義することが可能となる.いま,図一3のように水位Hの\alpha倍となる区間をL_{\alpha}とする.図一4は,式(5)における形状波数\betaと\alpha=1/100,1/1000,1/10000とした場合の見かけ上の波長L_{\alpha}との関係を描いたものである.同図より,\alpha=1/100で定義した波長を考えると,形状波数\betaから見かけ上の波長L_{1/100}への変換が比較的簡単な関係式で結ばれる.よって,孤立波の見かけ上の波長L_{1/100}は,形状波数\betaを用いて,
(6)
と表すことができる.またこれは,正弦波における波数の定義(2\pi/L)に近い形となっている.

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式(1〜6)
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表一1 実験条件
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図一1 水理験装置
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図一2 理論波形と形状波形
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図一3 弧立波見かけ上の波長
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図一4 形状波数と見かけ上の波長の関係

3. ソリトン分裂波の増幅機構

 (1) えりわけ距離と波数変化
 ここでは,第薫分裂波を対象に,分裂波の伝播に伴う増幅過程の形状波数\betaと理論波数\beta_sの関係を考察した.
但し,フルード数Frの影響による相対的な伝播距離に伴う増幅変化も考慮する必要性がある.そこで,すべての実験ケースを同じ空間スケールで比較できるように,伝播距離の無次元化を行う.波高計Bの観測波形による形状波数\beta_0を用い,分裂波の伝播距離を基準となる形状波数\beta_0に関連するえりわけ距離(岩崎ら,1978)とし無次元化を行った.\beta_0として波高計Bにおける形状波数を採用した理由は,本実験において便宜上水平床水底の原点として採用しているためである.
 逆流場を含む全ての実験ケースに対して,えりわけ距離\beta面と波数比の変化\beta/\beta_sの関係をまとめたものが図一5である.同図が示す様に増幅過程にある分裂波は,フルード数Fr(逆流場の影響)に依らず\beta_0xと\beta/\beta_sに比較的良好な相関関係がみられ,平均的に,
(7)
に沿ってKdV式の定常解の波形まで増幅する.なお,式(7)の係数は上述による基準となる形状波数\beta_0の定義によって異なる.しかしながら,分裂波の増幅過程は\beta/\beta_s→1,すなわち,形状波数\betaが理論波数\beta_sに近づくように分裂波は増幅を行う特性を持ち,しかもそれはフルード数Frの影響を受けない.
 (2) 無次元諸量
 増幅する分裂波の空間的な特徴を具体的に捉えることを目的に,分裂波形の波形勾配(H/L_{\beta})による増幅特性をまとめた.図一6は,波形勾配と波高水深比(H/h)の関係を描いたものである.同図から,波高水深比と波形勾配の間には,
(8)
すなわち,
(9)
となるような相関関係があり,その関係を保ちつつ分裂波は増幅する特性を有する.また,波形勾配と相対水深(h/L_{\beta})の関係は,図一7より,
(10)
となる.これは,式(9)からの書き換えとしても確認できる.同様に,波形勾配とアーセル数U_rの関係は,図一8より多少相関関係が劣るが,
(11)
の関係となる.式(9)に比べ相関性が劣る原因としては,3乗表現の関係式となるためであると考えられる.
 したがって以上の結果から,分裂波の増幅過程ではフルード数の影響に依らず,式(9)の関係を保ちながら増幅する特徴があると言える.
 また,第1分裂波の波峰部前面に対する面積Sは,近似的に式(5)より,
(12)
となる.ここで,式(9)を考慮することによって,
(13)
か導かれる.故に,分裂波の増幅過程において,波峰部前面の波の面積SはS=h^2の関係を満たしている.

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式(7〜13)
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図一5 えりわけ距離と波数比の変化
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図一7 波形勾配と相対水深
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図一6 波形勾配と波高水深比
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図一8 波形勾配とアーセル数

4. 数値計算の誤差特性

 (1) 計算方法
 ここでは,数値計算の立場から分裂波の波高水深比に関する実験値と計算値の水位および波形勾配の誤差を考察した.全ての実験ケースに対し,分裂波が砕波する直前までの増幅過程にあるデータを議論の対象とする.
 数値計算で使用した支配方程式は,津波計算において利用される長波近似により導かれた第1次近似としての非線形分散波理論式,
(14)
(15)
を用いた(岩瀬ら,1998).ここで,Mは流量フラックス,Dは全水深である.なお,実験対象が砕波を起こす前の増幅過程に限定していることから,砕波計算は考慮していない.計算法は,原ら(1998)同様に移流項を中央差分し,運動の式を2つに分けて計算を行う2段階の混合差分法を利用した.以下に運動の式における差分表示を示す.
[1段目]
(16)
[2段目]
(17)
(18)
 また,時間・空間間隔はそれぞれ,\delta t=0.005s,\delta x=0.02mとし,波高計Aの波形記録を境界値として入力した.
 (2) 水位に関する計算精度
 図一9は,分裂波の第1波峰および第2波峰を対象に,波高水深比における実験値(H)と計算値(H_c)水位の精度(H-Hc)/Hをまとめたものである.第1波峰に関しては,第1分裂波の波高水深比が平均的に見るとH_c/h<0.5では計算値が過大評価となるが,H_c/h=0.5付近を境にH_c/h>0.5で計算値は実験値に比べ過小評価となる.本実験における砕波近傍(H_c/h>6.0)では,急激な水位増幅を精度良く計算できないが,H_c/h<6.0の範囲では計算精度10%以内で水位の計算が再現できる.一方,第2波峰に関しては,第1波峰に比べ計算精度が劣り,全体的に計算値が実験値にくらべ過大評価となり,フルード数Frが大きい程精度が低下する傾向にあるが,計算精度20%以内で再現が可能である.
 (3)波形形状に関する計算精度
 分裂波の水位としてだけでなく空間的な波形形状としての計算精度を評価するために,第1分裂波に対する形状波数および波形勾配による精度の考察も行った.
 図一10は第1波峰に対し,実験値(\beta)および計算値(\beta_c)の形状波数の関係を示したものである.同図より,\beta_c=2.5付近より次第に計算結果が過小評価となり,\beta_c=4.0以上の範囲ではより実験値と計算値に大きな差が出てくる.また,波形勾配に関する実験値(H/L_{\beta})と計算値(H_c/L_{\beta c})の比較(図一11)では,H_c/L_{\beta c}>0.2付近より次第に計算値が実験値に比べ過小評価となり,H_c/L_{\beta c}>0,3以上では波数同様に大きな差が生じる.
 また,分裂波の波高水深比に対する波形勾配の計算誤差(H_c/L_{\beta}-H_c/L_{\beta c})/(H/L_{\beta})に着目すれば,図一12のようになり,H_c/L_{\beta c}く0.5であれぼ水位の精度に比べ劣るものの,誤差20%以内で再現計算が可能ある.

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図一9 水位に関する計算精度
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図一10 形状波数に関する比較
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図一11 波形勾配に関する比較
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図一12 波高水深比による波形勾配の精度

5. おわりに

 逆流場中を遡上するソリトン分裂波の増幅機構を水理実験から考察し,使用した支配方程式の誤差特性を見いだした.ソリトン分裂波は,フルード数(逆流場)の影響に依らず,式(9)あるいは第1分裂波峰前面部の面積が,式(12)の関係を満たしながら,KdVの式の定常解へと平均的に式(7)に沿って収束する様に増幅変形を行う.また,式(14)〜式(15)を支配方程式とする数値計算の精度は,第1ソリトン分裂波の水位の誤差として,波高水深比猛侮が0.6以下の範囲であれば10%,第2分裂波としては全体的に計算値が過大評価となるが20%以内の計算精度で再現が可能である.一方,波形形状としての計算精度は,形状波数\beta_cで\beta_c=2.5,波形勾配でH_c/L_{\beta c}=0.3までが限界であり,波形勾配の精度としては,波高水深比H_c/hが0.5以下の範囲であれば20%以内の計算精度でソリトン分裂波を再現できる.

謝辞

数値計算データをまとめるにあたり,卒研究生諸君の助力を得た.また,本研究の一部は文部省科学研究補助金基盤研究(C)(代表:後藤智明,課題番号:12650520)により行われた.ここに記して謝意を表す.

参考文献

岩崎敏夫・真野明・小杉達郎(1975):孤立性段波のソリトン分裂に関する研究,第22回海岸工学講演会論文集,pp.47-51.
岩崎敏夫・鈴木義和(1977):孤立性段波のソリトンの変形と砕波に関する研究,第24回海岸工学講演会論文集,pp.45-49.
岩崎敏夫・首藤伸夫・鈴木義和・栗田悟(1978):孤立性段波のえりわけ距離に関する研究,第25回海岸工学講演会論文集,pp.132-136.
岩瀬浩之・見上敏文・後藤智明(1998):非線形分散波理論を用いた実用的な津波計算モデル,土木学会論文集,No.600/Ⅱ-44,pp.119-124.
原信彦・岩瀬浩之・後藤智明(1998):非線形分散波理論式に関する多段階混合差分スキームの提案,海岸工学論文集,第45巻,pp.26-30.

ブシネスク方程式のソリトン解について 見上敏文*・岩瀬浩之**・後藤智明***・藤間功司****

1. 緒言

 水面波の非線形性および分散性を考慮した波浪の伝播・変形を解析する目的で非線形分散長波式が使われるようになってきた。これらの非線形分散長波式は,KdV式と異なり任意海底形状の2次元平面解析を対象としたもので,Mei-LeMehauteの式(1966)やPeregrineの式(1967)を基礎としたものである.近年になり,後藤(1984)が分散項に有限振幅性を考慮した式を,Cruzら(1997),Madsen-Sφrensen(1992),Nwogu(1993)およびBeji-Nadaoka(1996)が線形分散特性を改善した式を提案しており,浅海波浪変形などを対象にこれら修正式を利用した数値解析が多数実施されている.
 本研究では,津波の伝播・変形現象に適した非線形分散長波式を選定することを目的として,現在まで種々の解析に利用されている非線形分散長波式について比較検討を行う.津波の伝播・変形において特徴的なことは,深海域で波数分散現象が起こること,そして浅海域の最終的な変形過程において津波がソリトン分裂を起こしたり波状段波となることである.したがって,線形分散以外に非線形性と分散性の相互作用まで踏み込んだ考察が必要である.そこでまず非線形性が無視可能な深海域における津波の波数分散現象に関して,日本海中部地震津波を事例として複素フーリエ解析法を利用して比較検討する.次に第1次近似であるが水平床の各非線形分散長波式の孤立波に関する解を導き,その波速や波形の急峻度から各非線形分散長波式の非線形項と分散項の特性を考察する.
 なお,弱非線形性そして弱分散性を仮定した非線形分散長波式は波高水深比および相対水深がともに小さいとした摂動展開により導かれる.本研究で比較検討対象とした8種類の式群は,すべてこの摂動展開の第2次近似の範囲で同一精度と考えられるものである.しかしながら分散項と非線形項の大きさが拮抗してくるソリトン分裂現象では,分散項の形め違いにより波高や波形の急峻度が多少異なったものとなる.したがって津波解析に適切な非線形分散長波式を採用しなければ,流体力や陸上遡上高といった被災のメカニズムに関する評価を正確に行うことができない.

*正会員 株式会社アルファ水工コンサルタンツ 技術部
**正会員 東海大学技術職員 工学部土木工学科
***正会員 工博 東海大学教授 工学部土木工学科
****正会員 工博 防衛大学校助教授 土木工学教室

2. 非線形分散長波式と線形分散特性

 (1) 非線形分散長波式
 代表的な非線形分散長波式としては,断面平均流速で記述するPeregrine式,Beji-Nadaoka式,Cruz式や,水深方向に積分し,流量フラックス(単位幅流量)で記述するMadsen-Sφrensen式がある.これ以外にも,底部流速や任意水深流速で表したMei-LeMehaute式やNwogu式があるが,これらの式は陸上遡上や防波堤からの越流などが重要となる津波の解析には不向きである.
本研究において検討の対象とした式は断面平均流速あるいは流量フラックス表示であるPeregrine式,Beji-Nadaoka式,Cruz式,およびMadsen-Sφrellsen式とその類似式である.水平床を仮定して,具体的に式形を示すと下記のようになる.すなわち,断面平均表示としては連続式が,
(1)
運動式が,
(2)
(3)
(4)
の3種類の非線形分散長波式である.断面積分表示としては,連続式が,
(5)
運動式が,
(6)
(7)
(8)
(9)
(10)
の5種類の非線形分散長波式である.ここに,uは断面平均流速,Qは流量フラックス(=u(h+\eta)),\etaは水位,hは静水深,Dは全水深(h+\eta),gは重力加速度である.なお,式(2)が本来のPeregrine式,式(4)がBeji-Nadaoka式とCruz式(水平床近似では同一となる),式(10)がMadsen-Sφrensen式に該当する.また,式(6)は,岩瀬ら(1998)が津波解析に利用しているものであり,水深方向に積分したPeregriae式と名付けてもよい式である.さらに,式(8)は,有限振幅性を考慮した分散項であり,後藤が誘導したアーセル数が大きい場合の非線形分散長波式の簡略式である.
(2) 線形分散特性
検討対象とした連続式および8種類の運動式の非線形項を無視し,波数分散性を考慮した波速cを用いて波高をH,波数をkとしてxの正の方向へ伝播する波を\eta=Hsink(x-ct)とおくと,∂/∂t=-c∂/∂x,そして連続式からQ=hu=c\etaであるので,比較的簡単に,各式の分散関係が求まり,式(2),(6),(7),(8)に関して,
(11)
式(3),(9)に関して,
(12)
そして,式(4)および(10)に関して
(13)
となる.ここに,c_0(=\sqrt{gh})は線形長波の波速であり,また\sigma_0=(kh)^2である.
 各式の波数分散特性の違いを図一1に示す.図には,KdV式
(14)
の分散関係式
(15)
および線形表面波(Exact linear)の分散関係式
(16)
も示している.式(2),(6),(7),(8)の分散関係は,kh=0.7程度まで線形表面波と一致する.また,kh=0.7以上に大きくなると波速が遅くなり,分散項が相対的に大きく評価されていることになる.式(3),(9)は,kh=0.5以上で分散効果が過大となる.一方,線形分散に適合するように改善された式(4),(10)は,kh=2.0程度まで良好な分散関係がみられる.
図一2は,深海域の津波の伝播に関して式(2),(6),(7),(8)と式(4),(10)の比較を行ったものである.初期波形は相田(1984)により推定された日本海中部地震津波に関する指向方向の断面波形であり,各非線形分散長波式について一定水深(水深3,000m)を15分間,約150km伝播させた場合の空間波形の比較である.この波形\etaは,高速フーリエ変換により初期波形を複素フーリエ振幅C_nと位相\theta_nに分解し,
(17)
と計算している。ここに,nはフーリエモードであり,k_nはフーリエモードに対応する波数,そしてc_nは各式のフーリエモードに対応する波速である.図から判断できるように,両者は比較的良好に微小振幅表面波から算定した主峰と分散波列を近似している.特に,式(4),(10)を利用した計算値の精度が良い.ただし,式(13)から明らかなようにkhすなわち\sigma_0が大きくなると線形表面波の分散関係から徐々に離れ,c/c_0=\sqrt{1/6}=0.408に漸近するという特性がある.通常の波浪のような水深が比較的浅く連続的な波を解析する場合には,このことをさほど重要視する必要がないと思われるが,深海域の津波のような一山一谷の波の伝播現象を取り扱う際には,ある程度以上の高波数成分がほほ伺一の伝播速度で進むため,図一2上のx=60km付近で見られるような分散波列の終端部にエネルギーの一部が集積する.浅海域においては非線形性によりさらに高周波成分が生成されるため,場合によっては,このことが大きな問題となる可能性がある.したがって,津波の解析に式(4),(10)をそのまま利用することには多少の危惧があり,場合によっては高波数成分を適切に減衰させることができる人為的粘性項などを考慮する必要があると思われる.

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式(1〜17)
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図一1 線形分散関係
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図一2 深海域における津波の伝播特性

3. 孤立波の第1次近似解

 (1) 解法
 Peregrine式など断面平均流速で記述されている非線形分散長波式は,全水深Dをかけると下記のように流量フラックス表示の式へ書き換えることができる.
(18)
したがって,式(2),(3),(4)は,それぞれ,
(19)
(20)
(21)
と変形できる.以上のことから,検討対象とする8種類の運動式の局所項,移流項(非線形項),静水圧力項は同一形となり,違いは分散項に限定される.本研究においてはこの断面積分形の式を利用した解析を行う.
 いま,一例として最も簡単と思われる連続式(5)と運動式(6)からなる非線形分散長波式に関する孤立波の第1次近似解を導く.孤立波の波形として,
(22)
を仮定すると,線形分散関係式の導出の場合と同様に∂/∂t=-c∂/∂xと連続式からQ=c\etaが成り立つことがわかる.したがって,\epsilpn=\eta/h,\epsilon_0=H/h,\sigma_0=(kh)^2とおくと,
(23)
(24)
(25)
(26)
となる.したがって,非線形分散長波式(6)は,
(27)
と変形できる.定常的な孤立波の解が存在するためには,0(\epsilon_0)の範囲で,
(28)
すなわち,
(29)
および,
(30)
が恒等的に成立する必要がある.故に,
(31)
および,
(32)
であり,波高水深比\epsilon_0が与えられれば,対応する孤立波の波形が定まったことになる.なお,式(19),(21)は,分散項の取り扱いが多少複雑となるが,
(33)
であることに留意すると上述の方法で孤立波の第1次近似解を求めることができる.
(2) 孤立波の解の比較
運動式(6)以外の7種類の運動式に関して,上述と同様な解析により0(\epsilon_0)の範囲でそれぞれの孤立波の第1次近似解を導き,相対水深と波速比の違いとして整理したものが表一1である.仮定した孤立波の解は
(34)
であるので,\sigma_0が小さいほど幅広の孤立波形であり,大きいほど急峻な孤立波形であることを意味する.したがって,KdV式に比べ,式(6),(7),(8),(10)の孤立波の解が幅広であり,式(2),(4),(9)が急峻となる.特に,断面平均表示の式(2)を利用した数値解析において波高が過大になりすぎることが長尾ら(1985),岩瀬らにより指摘されており,このことは導出した孤立波の解の形とも符合する.なお,孤立波の波形は分散項と非線形項の相対的な大きさを表していると考えることができる.すなわち,非線形項は波形を前傾化すなわち急峻にする方向に作用し,分散項は幅広の方向になるように作用する.したがって,急峻な解は非線形項に比べ分散項が相対的に小さいことを意味し,逆に幅広の解は非線形項に比べ分散項が相対的に大きいことになる.
また,KdV式の解には保存則が成立することが知られている.最低次の保存則は波形の面積が一定に保たれることを意味する.検討対象とした非線形分散長波式群はKdV式と等価でないため,この様な保存則が厳密に成立するかどうか分からないが,ここでは波形の面積が保存されると仮定して波形の急峻度を調べてみる.図一3は,波高水深比\epsilon_0=0.5のKdV式の孤立波解と等面積となる波形である.図から,そして解の面積がS=2Hh/\sigma_0^{1/2}と計算でき,波高がH=S\sigma_0^{1/2}/2hで与えられることから判断できるように,相対水深\sigma_0が小さくなる運動式がより高いソリトン波高になることがわかる.また,Laitone(1960)の第2次近似ソリトン解がKdV式の解に比べ幅広となること,そしてKdV式の解でも水理実験結果と相当良好な一致を示すことがNagashima(1977)の研究により明らかにされていることなどを勘案すると,少なくともKdVの解を大きく上まわる波形には問題があると判断できる.
図一4に各式の波高水深比による波速比の違いを示す.この図から,やはり過度に急峻なソリトン波形となる非線形分散波式は,KdV式の波速より大幅に過大となり,Nagashimaの実験結果から得られる知見と大きく異なる.あくまでも孤立波の第1次近似解の特性という考察範囲であるが,津波の伝播・変形を取り扱うには,式(6),(10)そして(3)が適切であると判断できる.さらに言うと,線形分散特性が良く,また保存則形の式群となる式(6)および(10)がより適していると考えられる.

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式(18〜34)
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表一1 孤立波解の比較
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図一3 孤立波解の比較
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図一4孤立波の波速に関する比較

4. 結言

非線形分散長波式は,O(\epsilon_0)=O(\sigma_0)《1,すなわちアーセル数U_r=\epsilon_0/\sigma_0が0(1)と仮定して摂動展開を利用して導かれる.摂動展開の2次近似では,検討対象とした8種類の運動式はすべて同じオーダーである.しかしながら,その孤立波の第1次近似解は大きく異なる.津波の伝播・変形を対象とする場合には,非線形性と分散性の相対的大きさを意味する孤立波の第1次近似解の急峻度が特に重要であり,検討結果から岩瀬らの式(断面積分形のPeregrine式)あるいはMadsen-Sφrensen式が適切であるものと判断できる.

謝辞

本研究をまとめるにあたり東海大学工学部土木工学科水工研究室の学部生および大学院生諸君の助力を得た.また,本研究は文部省科学研究費(基盤研究(B)(1)代表入江功九州大学教授)と㈱大林組技術研究所からの研究助成を利用した.ここに記して謝意を表す.

参考文献

相田勇(1984):1983年日本海中部地震津波の波源数値モデル,東京大学地震研究所彙報,59号,pp.93-104.
岩瀬浩之・見上敏文・後藤智明(1998):非線形分散波理論を用いた実用的な津波計算モデル,土木学会論文集,第600号,pp.119-124,
Cruz,EC,石倉正英,青野利夫(1997):非線形分散モデルを用いた開境界処理に関する研究,海岸工学論文集,第44巻,pp.46-50.
後藤智明(1984):アーセル数が大きい場合の非線形分散波の方程式,土木学会論文集,第351号,pp.193-201.
長尾昌朋,後藤智明,首藤伸夫(1985):非線形分散波の数値計算,第32回海岸工学講演会論文集,pp.114-118.
Beji, S. and K. Nadaoka (1996): A formal derivation and numerical modelling of the imporoved Boussinesq equations for varying depth, Ocean Eng., Vol.23, pp. 691-704.
Korteweg, D. J. and G. DeVries (1895) : On the change of form of long waves advancing in a rectangular canal and on a new type of long stationary waves, Phil. S 5, Vol. 39, No. 240, pp. 422-443.
Laitone, E. V. (1960) : The second approximation to cnoidal and solitary waves, J. F. M, Vol. 9, Part 3.
Madsen, P. A. and O. R. Sorensen (1992): A new form of the Boussinesq equations with improved linear dispersion characteristics, Part 2, A slowly-varying bathymetry, Coastal Eng., Vol. 18, pp. 183-204.
Mei, C. C. and B. LeMehaute (1966): Note on a equations of long waves over an uneven bottom, J. Geophs. Res., Vol. 71, pp. 393-400.
Nagashima, H. (1977) : Deformation of nonlinear shallow water waves, Scientific Paper, Inst. of Physical and Chemical Res., Vol. 71, pp.13-44.
Nwogu, O. (1993): An alternative form of the Boussinesq equations for nearshore wave propagation, J. Waterway, Port, Coastal and Ocean Eng., Vol. 119, No. 6, pp. 618-638.
Peregrine, D. H. (1967) : Long waves on a beach, J. F. M., Vol. 27, Part 4, pp. 815-827.

ソリトン分裂波の砕波変形に関する水理実験と数値計算 岩瀬浩之*・深澤雅人**・後藤智明***

1. はじめに

 浅海域でソリトン分裂をおこす津波の数値計算には,波の非線形性と分散性を考慮した非線形分散長波式(Boussinesq式)を用いる必要がある.しかしながら,同方程式では直接砕波等による運動量逸散を表現することができず,砕波による波高減衰が計算できないという問題点がある.しかしながら,ソリトン分裂波の砕波変形を精度良く再現することは,津波の流体力や流れの影響に直接関与することから,沿岸構造物への防災策定には非常に重要な要因である.
 津波の分裂や砕波を考慮した既往のモデルとしては,佐藤(1995)や藤井ら(1998)のモデルがある.これらは,渦動粘性係数を導入した拡散モデルにより砕波による運動量逸散の再現を行ったものであるが,ソリトン分裂波を対象とした実験値との検討は十分に行われてはいない.また,積分表示の非線形分散長波式では,波高水深比が0.60を越えると実験値に比べ水位が過小評価となり,砕波直前の急激な波高増幅を表現できないことを岩瀬ら(2000)は示している.
 そこで本研究では,水理実験との比較を通じ水平床を伝播するソリトン分裂波を対象とした砕波条件を明らかにする.また,波高水深比が0.60以上となる砕波直前の急激な波高増幅と砕波以後の波高減衰を考慮した砕波変形モデルとその計算方法を提案し,水理実験結果との適合性について検証する.

*正会員 東海大学技術員 研究推進部技術支援課
**学生会員 東海大学大学院 工学研究科土木工学専攻
***正会員 工博 東海大学教授 工学部土木工学科

2. 水理実験

 (1) 実験装置および条件
 実験には,図一1に示す高さ0.8m,幅0.5m,全長22m,水底にはソリトン分裂を促進する勾配3/20の斜面と水平床からなるピストン式造波水路を用いる。造波はパソコンにより制御され,任意波高の孤立波を生成することが可能である.造波された孤立波は,斜面により前傾化が促され水平床にて分裂,増幅,砕波へと一連の変形を起こす.変形に伴う水位の測定には容量式波高計を11本利用し,砕波点および砕波終了点における波高測定にはビデオカメラを用いる.各波高計の配置は,斜面手前1mの位置に数値計算の境界値記録用(波高計A)を配置し,残りは水平床開始点(波高計B,水平距離原点x=0と設定)から1m間隔で設置する.
 水理実験では,水平床部の静水深と入射孤立波波高を様々に変化させ行う(全19ケース).水平床部にて砕波を起こす実験条件(11ケース)とその観測諸量をまとめたものが表一1である.表中,hは水平床部の静水深,H_0は水平床開始点(波高計B)で観測された波高,H_bは砕波点の波高である.
 (2) 砕波点および砕波終了点の波高水深比
 図一2は,砕波を起した実験ケースを対象に,砕波点における波高H_bと静水深hの関係をまとめたものである.多少のばらつきは見られるが,砕波点における波高水深比(H_b/h)は同図から平均的に,
(1)
となる値を得る.この値は,Longet-Higgins et al.(1974)が示す砕波条件とほぼ一致している.
 また,水平床におけるソリトン分裂波は,伝播に伴い運動量逸散は次第に小さくなり砕波が終了する点が存在する.図一3は砕波を起した実験ケースを対象に,砕波が終了した地点における静水深と波高の関係をまとめたものである.同図から,水平床を伝播するソリトン分裂波の砕波終了となる波高水深比(H,/勿は同図から平均的に,
(2)
となる値を得ることができる.
以上の結果から,水平床を伝播するソリトン分裂波に対する砕波減衰の範囲は,波高水深比で0.83〜0.55の間であると言える.

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式(1〜2)
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図一1 実験装置
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表一1 砕波を起こす実験条件
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図一2 砕波点波高と静水深の関係
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図一3 砕波終了点波高と静水深の関係

3. 数値計算

 (1) 支配方程式
 本研究では,下記に示す積分表示のMadsen-Sφrensenの式(Madsen et al.,1992)に砕波前の急激な波高増幅をもたらす「人為的増幅モデル」と砕波による運動量逸散をあらわす「砕波減衰モデル」を佐藤(1995)にならい加えた支配方程式とする.
(3)
(4)
ここに,\etaは水位,Mは流量フラックス,hは静水深,0(=h+\eta)は全水深,\nu_aは人為増幅項の渦動粘性係数,\nu_{\beta}は砕波減衰項の渦動粘性係数である.
 (2) 計算方法
 計算方法は,スタッガード格子による二段階混合差分法(岩瀬ら,1998)を用いる.なお,移流項は,原ら(1998)にならい2次精度の中央差分とし差分化を行う.差分式は以下の通りである.
[1段目]
(5)
[2段目]
(6)
ここで,
(7)
(8)
(9)
であり,kは時間格子番号,iは空間格子番号を表す.なお,計算条件は,空間格子間隔を\delta x=0.02mとし,時間間隔を\delta t=0.005sとする.
 (3) 人為増幅モデル
 人為増幅項は,非線形分散長波式を支配方程式とした数値計算において,波高水深比が0.60を越える範囲で急激な波高増幅が再現されず,数値計算による波高が実験値にくらべ過小評価されるために導入するモデルである.負の拡散モデルとして,流量フラックスを集中させ波高の急激な増幅を表現する.人為増幅項の渦動粘性係数\nu_{\alpha}は,空間波形から波高水深比が0.60を越えた波の波峰点を中心に,前後の波谷までの範囲を対象に以下の式を用いて空間分布的に与える.
(10)
ここに,\alphaは係数であり,水理実験結果と数値計算結果の比較を通じ定めるが,\nu_{\alpha}の分布には以下のように注意をする必要がある.
 図一4は,実験Case8に対し,波高水深比が0.60を越えた人為増幅過程にある計算値の空間波形と\nu_{\alpha}の空間分布を描いたものである.増幅過程にある波形は,ソリトン分裂直後であるため,後部の波谷が静水面になるとは限らず,\nu_{\alpha}の空間分布が波谷にて不連続(同図中破線)となり不要な反射波が発生する恐れがある.そこで,本計算では波峰点から\nu_{\alpha}が不連続のなる分布の範囲に対し,補正量を加える.波峰点の座標をx_p,不連続点の座標をx_{\alpha},不連続点における\nu_{\alpha}の値を\nu_{\alpha},補正範囲をL(=|x_p-x_{\alpha}|)とし,以下のような補正量C(x)を定義する.
(11)
以上の手法で計算された補正量を加え修正を行った\nu_{\alpha}の分布は同図の実線のようになり,波谷における\nu_{\alpha}の不連続性に伴う反射波を抑えることが可能である.
以上の注意を踏まえ,すべての実験ケースの人為増幅過程における実験値(H)と計算値(H_c)の水位差の比較から係数\alphaを決定する.
図一5は,\alphaと実験値と計算値の水位分散値の関係を示したものである(Nは対象実験総数).同図より,実験値と計算値の水位分散値が最小となる\alpha=0.10を係数とする.
(4) 砕波減衰モデル
砕波に伴う運動量逸散は,人為増幅項と同様に以下の渦動粘性係数\nu_{\beta}を用いて計算を行う.
(12)
ここに,\betaは係数であり,人為増幅項における係数\alphaと同様に水理実験と数値計算(人為増幅モデルを含む)の比較を通じ定める.
数値計算における砕波判定には,流速波速比を用いる.
本数値計算における流速u_sは,以下の式で与えられる水表面における水粒子の速度とする.
(13)
ここで,\bar{u}(=M/D)は断面平均流速を表す.また,波速Cは,孤立波の波速として以下の式で与えられる.
(14)
数値計算上の波高水深比(H_c/h)と流速波速比(u_s/C)の間には,図一6に示すような関係がある.よって,水理実験から得られた砕波点の波高水深比0.83を考慮することにより,流速波速比による砕波条件は,
(15)
となる.ただし,ここで示した波高水深比と流速波速比の関係は,水平床を伝播するソリトン分裂波であり,斜面上を伝播する場合には今後詳細な検討が必要とされる.
係数\betaは,以上のように定められた流速波速比による砕波条件と水理実験から得られた砕波終了点の波高水深比を考慮し,人為増幅モデルを考慮した数値計算と水理実験の結果から決定する.砕波領域における\nu_{\beta}与え方は,人為増幅項と同様,流速波速比が0.59を越えた波峰点を中心に前後の波谷に対して与え,\nu_{\beta}の不連続点には\nu_{\alpha}と同様の手法によって修正を加える.図一7は,砕波を起こす実験ケースを対象に,係数\betaに対する実験値の砕波減衰距離(d)と計算値の砕波減衰距離(d_c)の分散値を示したものである(Nは対象実験総数).同図より,本研究では砕波減衰距離の分散値が最小となる\beta=0,23を係数とする.
以上,人為増幅および砕波減衰の過動粘性係数とその計算条件をまとめたものを図一8に示す.

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式(3〜15)
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図一4 人為増幅過程の空間波形と\nu_{\alpha}の分布
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図一6 数値計算における波高水深比と流速波速比
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図一5 人為増幅域の\alphaと水位分散値の関係
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図一7 \betaと砕波減衰距離分散値の関係
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図一8 各過動粘性係数と計算条件

4. 水理実験値との比較

水理実験にて砕波を起こすCase3,Case9およびCasel1を対象に,水理実験結果と計算結果の比較を図一9に示す.図中,白丸(○)は水理実験における波高計の最大水位を示し,黒丸(●)はビデオカメラによって得られた砕波点の波高を示したものである.また,細線は数値計算による空間波形(1.O秒間隔),太線は同計算結果の波峰点を結んだものである.同左図から,非線形分散長波式を支配方程式とした場合,水平床開始点から第1ソリトン分裂波が孤立波の状態になるまで緩やかに増幅し,孤立波の状態後はほぼ一定の波高を保ち伝播を行う.そのため,波高水深比が0,60を越える辺りから砕波直前までの急激な水位上昇や,砕波減衰に伴う水位減少は表現されない.一方,同右図より,非線形分散波式に人為増幅・砕波減衰モデルを考慮した計算結果は,砕波直前の水位増幅や砕波点および砕波減衰に至るまで,実験ケースで水理実験値と良好に一致しており,他の砕波を起こす実験ケースに関しても同様の結果を得ることができる.
図一10は,全ケースの水理実験結果を対象に,計算値における波高水深比に対し実験値(H)と計算値(H_c)の水位誤差を示したのもである.同図より,人為増幅モデルおよび砕波減衰モデルを考慮した計算結果は,人為増幅モデルおよび砕波減衰モデルを考慮しない計算結果に対し,20%の計算精度内でソリトン分裂から増幅,砕波に至る一連の変形を再現することが可能である.

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図一9 水理実験と数値計算の比較
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図一10 波高水深比に伴う水位誤差

5. おわりに

静水深,入射波高が異なる19ケースの孤立波による水理実験から,水平床を伝播するソリトン分裂波に対する砕波領域が波高水深比で0.83〜0,55の範囲であることが分かった.また,非線形分散長波式に人為増幅モデルと砕波減衰モデルを考慮した数値計算法を提案し,各モデルの過動粘性係数と計算条件を水理実験から決定した.提案した計算モデルは,実験条件が異なる全ての実験ケースにおいて,ソリトン分裂波の増幅から砕波変形に至る一連の変形を精度良く再現することが可能である.今後は,ソリトン分裂波の空間波形の精度を踏まえ,斜面上を伝播する場合や陸上遡上に伴う砕波変形を精度良く再現できる計算モデルの開発を行うことが課題となる.

謝辞

本研究の一部は科学研究補助金基盤研究(C)(2)(代表:後藤智明,課題番号:12650520)により行われた.ここに記して謝意を表す.

参考文献

岩瀬浩之・見上敏文・後藤智明(1998):非線形分散波理論を用いた実驚的な津波計算モデル,土木学会論文集,No.600/II-44,pp.119-124.
岩瀬浩之・竹田勝博・後藤智明(2000):ソリトン分裂波の増幅機構と数値計算の誤差特性に関する一考察,海岸工学論文集,第47巻,pp.21-35.
佐藤槙司(1995):波の分裂と砕波を考慮した津波の数値計算,海岸工学論文集,第42巻,pp.376-380.
原信彦・岩瀬浩之・後藤智明(1998):非線形分散波理論式に関する多段階混合差分スキームの提案,海岸工学論文集,第45巻,pp.26-30.
藤井直樹・大森政則・高尾誠・金山進(1996):津波の流速計算に関する研究,海岸工学論文集,第43巻,pp.291-295.
Longuet-Higglns, M. S. and Fenton, J.D(1974): On the mass, momentum, energy and criculation of a solitary wave, Proc. Royal Soc. london, A333, pp.1-13.
Madsen, P. A. and Sφrensen O. R. (1992): A new form of the Boussinesq equations with improved linear dispersion characteristics, Part2, A slowly-varying bathymetry, Coastal Eng., Vol. 18, pp.183-204.

日本海中部地震津波の分裂に関する数値計算 岩瀬浩之*・見上敏文**・後藤智明***

1. はじめに

 1983年5月26日正午,北秋田県沖マグニチュード7.7の地震に伴って発生した日本海中部地震津波は日本海北部一帯の沿岸域に甚大な被害を及ぼした.この津波の大きな特徴の1つに浅海域で観測されたソリトン分裂波が挙げられる.峰浜村沿岸域では4トンもの波消ブロックを散乱させるなど,ソリトン分裂波には秘めたる流体力の存在を示している.津波伝播に伴うソリトン分裂は浅海域における非線形性と波数分散性の相互作用によって発生し,その伝播変形は深海域からの入射条件によって大きく異なることが知られている(藤井ら,1996;岩瀬ら,2001a).したがって,津波の波源域から沿岸域まで一貫して波数分散効果を考慮できる計算モデルが必要とされ,数値計算モデルの支配方程式に非線形分散長波式(Boussinesq式)を利用することが求められる.
 非線形分散長波式を津波の平面伝播解析に適用した既往の計算モデルとして,佐藤(1995)は1993年北海道南西沖地震津波を対象に,ごく限られた単一領域に関して実施した例があるのみで実用性のある計算モデルが存在しているとは言えない.また,数値計算の効率を考えれば領域結合型の計算モデルが望ましい.しかしながら,高階の微分項を含む支配方程式では計算の安定化を図るために陰差分式を解く必要があり,計算領域境界上の未知数の取り扱いが問題とされている.この問題に対する1つの解決方法として岩瀬ら(1998a)は,2段階混合差分法を提案している.
 そこで,本研究では2段階混合差分法を計算方法とし,非線形分散長波式を支配方程式とする多領域結合型の津波数値計算モデルの開発を行い,日本海中部地震津波を対象とした平面伝播解析の結果から開発された計算モデルの妥当性を検証する.また,非線形長波式(浅水方程式)の計算結果との比較を通じ,本地震津波の波数分散効果の影響について考察する.

*正会員    東海大学技術員 研究推進部技術支援課
**正会員    (株〉アルファ水工コンサルタンツ 課長
***正会員 工博 東海大学教授 工学部土木工学科

2. 数値計算方法

 (1) 支配方程式
 使用する支配方程式群は,積分表示によるMadsenSφrensenの式(Madsen et,al,1992)を基本とする.分散関係が広い周波数帯で微小振幅波理論に良く一致しており,深海域における津波伝播を精度良く再現できるためである(見上ら,2000).また,浅海域の砕波に伴う運動量散逸効果を計算する砕波減衰は,佐藤(1995)の砕波モデルにならって加味する.よって,本研究で使用する支配方程式は以下のようになる.
(1)
(2)
(3)
ここで,\etaは水位,M,Nはそれぞれ必およびy方向の流量フラックス,hは静水深,D(=h+\eta)は全水深,gは重力加速度,\nu_{\beta}β(=0.23\sqrt{gD}\eta)は渦動粘性係数,n(=0.025m^{-1/3}s)はマニングの粗度係数である.
 (2) 計算方法
 計算はスタッガード格子による2段階混合差分法を用い,陸上への津波遡上計算は行わない.計算領域境界に隣接する計算格子や,分散項の計算に必要な計算諸量のが確保できない計算格子の流量フラックスは分散項を除く非線形長波式で計算を行う.移流項の差分は風上差分を基本とするが,分散項が計算可能な場合は,各方向の微分演算子で記述される移流項のみを対象に中央差分化して2段目に組み込む.
 分散項の計算が可能な場合のx方向を例とした差分式表示を示すと以下の通りになる.
[1段目]
(4)
[2段目]
(5)
ここで,|_{F.D.}は既知量による差分式を表し,
(6)
である.式(5)は,M^{k+3/2}に関する3行対角行列の陰差分式となり,トーマスアルゴリズムによる高速な演算が可能である.
 砕波減衰項の渦動粘性係数\nu_{\beta}は,岩瀬ら(2001b)の方法に従い,x,y方向のそれぞれに対して流速波速比が0.59を越える波峰点から前後の波谷までの範囲に空間分布として与える.

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式(1〜6)

3. 日本海中部地震の数値計算

 (1) 再現計算の領域と条件
 開発した計算モデル(以下本モデル)の検証を目的に,日本海中部地震を対象とした再現計算を行う.図一1は,計算対象領域の水深分布と結合領域の位置を示したものである.同地震津波では,深海域における波数分散効果も無視できないことを岩瀬ら(1998b)は示している.そこで,津波の波源を含む外洋計算格子(領域R1)は,波数分散効果による分散波を再現できるように計算格子サイズを400mとし,同地震津波で最大遡上高を記録した秋田県北部の峰浜村沿岸部まで7つの領域(領域R1以下それぞれR2:200m,R3:100m,R4:50m,R5:25m,R6:12.5m,R7:6.25m)に分割して各計算格子を1/2間隔で結合する.また,同図中の点A(領域R2:100m水深)および点B(領域R7=6m水深)は,時間水位の出力点を示す.なお,計算における時間間隔は,領域R7の格子間隔と最大水深による安定条件から、\delta t=0.2sとする.また,沖側境界は特性曲線法による自由透過処理を行い,水深が5m以下の水深領域は全て水深を5mと設定する.
図一2は,津波初期水位分布を示したものである.初期水位は,相田(1984)による断層パラメータ(Alda 1OModel)から得られた海底地盤変位量をそのまま水位量として与える方法を用いる.ただし,同波源モデルでは深海域の波数分散効果や浅海域のソリトン分裂による水位の増幅および砕波は考慮されていない.そのため,本モデルに対し同波源モデルを適用することには多少の問題が残るが,本研究では非線形分散長波式との比較を通じて波数分散効果による津波伝播への影響を考察する.
 (2) 深海域での津波伝播
 図一3および図一4は,それぞれ本モデルと非線形長波式による津波水位分布の計算結果を示したものである.
波数分散効果による分散波の生成が確認し易いように,50cm間隔の等水位線で描いている.深海域における波数分散効果は波源短軸方向で強く作用し,生成された分散波は男鹿半島に向かい伝播する様子が確認できる.また,同図より各領域境界上における水位・流量フラックスの連続性にも大きな支障は見られず,非線形分散長波式を支配方程式としても領域結合が問題なく可能であることが確認できる.
 図一5は,同地震津波の指向性が最も大きい方向に位置する男鹿半島先端付近,R2領域の水深100m地点に位置する出力点A(図一1参照)における本モデルと非線形長波式による計算結果の時間水位を比較したものである.波数分散効果により,本モデルにおける津波第1波の水位は非線形長波式による計算結果にくらべ減衰し,波長は伸長した結果となる.しかしながら,非線形長波式の計算結果では津波波峰が1っであるのに対し,本モデルの計算結果では,深海域における波数分散効果の影響から第1波に後続する分散波列によって複数の波峰が確認できる.特に,第2波目の水位は第1波目の水位をほぼ同じ大きさとなり,深海域における波数分散効果の影響は,同津波地震津波の伝播において重要であり無視できない要因であると言える.
 (3) 浅海域での津波伝播
 図一6および図一7は,計算領域R4以下における本モデルと非線形長波式による計算結果を示したものである.地形のレンズ効果によって津波は峰浜村沿岸域へ集中する(長谷川ら,1986).深海域で波数分散効果による波高減衰のため,本モデルの水位は非線形長波式の結果に比べ,全体的に低い水位分布となる.また,八龍町付近の沿岸域に,深海域で発生した分散波列が伝播する様子が確認できる.
 本計算結果では,水深約8m付近から津波が分裂を起こす.図一8は,峰浜村沿岸部付近,R7領域の水深6mに位置する出力点B(図一1参照)における時間水位を比
較したものである.本モデルによる計算結果(実線)では,ソリトン分裂が生じ,非線形長波式の計算結果(破線)にくらべ分裂の影響により高い水位が再現される.
また,本モデルの砕波による波高の減衰が再現されていることが,同図中に示した砕波を考慮しない計算結果(白丸)との比較から確認できる.
 また,図一9は,領域R7の一部(1875m×1875m)を拡大して描いた本モデルおよび非線形長波式による津波水位の鳥轍図の示したものである.図中に示した時間は,津波発生後の経過時間を示している.同図から,浅海域においてソリトン分裂波が再現され,本モデルの妥当性が示されたとともに,複数の分裂波と砕波を伴って沿岸部へ伝播する様子が計算可能である.

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図一1 計算領域と水深分布
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図一2 初期水位分布
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図一3 非線形分散長波式による深海域の津波伝播
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図一4 非線形長波式による深海域の津波伝播
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図一5 点A(100m水深)における時間水位の比較
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図一6 非線形分散長波式による浅海域の津波伝播
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図一7 非線形長波による浅海域の津波伝播
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図一8 点B(6m水深)における時間水位の比較
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図一9 領域R7における水位鳥轍図の比較

4. おわりに

 非線形分散長波式を支配方程式とする多領域結合型の津波数値計算モデルを開発した.日本海中部地震津波の再現計算を行い浅海域でのソリトン分裂波を再現することができ,本計算モデルの妥当性を示されるた.よって,津波の波源域から沿岸域までの一貫した津波伝播を非線形分散長波式を支配方程式とする多領域結合型モデルで計算することが可能となった.
 また,非線形長波式による計算結果との比較から,日本海中部地震津波を対象とする津波の伝播解析では深海域および浅海域で波数分散効果の重要性が再確認された.今後は陸上遡上まで計算可能なモデルの開発および,波数分散効果を考慮した津波波源の検討を行ってゆく予定である.

謝辞

本研究を行うにあたり,岩手県立大学の首藤伸夫教授から多くの助言を頂いた.また,本研究の一部は科学研究補助金基盤研究(C)(2)(代表:後藤智明,課題番号:12650520)により行われた.ここに記して謝意を表する.

参考文献

相田勇(1983):1983年日本海中部地震津:波の波源数値モデル,地震研究所彙報,Vol.59,pp.93-104.
岩瀬浩之・見上敏文・後藤智明(1998a):非線形分散波理論を用いた実用的な津波計算モデル,土木学会論文集,No.600/II-44,pp.119-124.
岩瀬浩之・後藤智明(1998b):津波の波数分散効果に関する考察,月刊海洋,Vo1.15,海洋出版社,pp.99-104.
岩瀬浩之・後藤智明・藤間功司・飯田邦彦(2001a):深海域における波数分散効果が近地津波の伝播に及ぼす影響に関する考察,土木学会論文集(投稿中).
岩瀬浩之・深澤雅人・後藤智明(2001b):ソリトン分裂の砕波変形に関する水理実験と数値計算,海岸工学論文集,第48巻,pp.306-310.
佐藤槙司(1995):波の分裂と砕波を考慮した津波の数値計算,海岸工学論文集,第42巻,pp.376-380.
長谷川賢一・鈴木孝夫・稲垣和夫・首藤伸夫(1987):津波の数値実験における格子間隔と時間積分間隔に関する研究,土木学会論文集,No.381/II-7,pp.111-120.
藤井直樹・大森政則・高尾誠・金山進(1996):津波の流速計算に関する研究,海岸工学論文集,第43巻,pp.291-295.
見上敏文・岩瀬浩之・藤間功二・後藤智明(2000):ブシネスク方程式のソリトン解について,第47巻,pp.21-35.
Madsen,P.A. and Sφrensen O.R.(1992): A new form of the Boussinesq equations with improved linear dispersion characteristics, Part 2, A slowly-varying bathymetry, Coastal Eng., Vol. 18,pp. 183-204.

波数分散効果を考慮した日本海中部地震津波の遡上計算 岩瀬浩之*・藤間功司**・見上敏文***柴木秀之****・後藤智明*****

Abstract

 津波の波数分散効果を考慮した津波解析モデルを開発した.開発した津波計算モデルは,積分型の非線形分散波式を支配方程式とした,いわゆるBoussinesqタイプの津波解析モデルであり,2段階混合差分法により比較的容易に津波の解析に波数分散効果を考慮することが可能である.波数分散効果による津波挙動の特徴である深海域での波数分散効果や浅海域でのソリトン分裂波および砕波減衰のような伝播変形を再現することが可能である.本研究では,1983年の日本海中部地震津波の再現計算を通じて,従来モデルによる解析結果と痕跡値との比較を通じて計算方法の妥当性について検証する.

1. はじめに

 津波防災の策定に数値解析は必要不可欠な存在となり,沿岸域へ来襲する津波の伝播形態や陸上への遡上高および浸水予測は工学的にも重要な意味を持っている.津波解析に使用される支配方程式は,計算機の進歩とともに線形長波式から非線形長波式へと発展し,現在では非線形分散波式による平面解析(佐藤,1995;岩瀬ら,2001a),や鉛直方向の流速分布を考慮した3次元解析(正村ら,1996,2001)も行われるようになってきた.しかしながら,津波解析の全体に対して非線形分散波式を適用するにはいくつか問題点があり,適切な処理方法の開発が望まれている.特に,浅海域で波数分散効果が無視できない場合には,津波のソリトン分裂,波形曲率効果による波高増幅や砕波に伴う波高減衰といった諸現象は,津波防災の策定に必要な沿岸構造物への津波の流体力や流れを評価するために必要であり,非線形長波式による解析モデル(以下従来の解析モデル)では再現することが困難である.
 広領域を対象とする津波の非線形分散波式による数値解析では,できるだけ効率的な計算手法を適用することが実用的に望ましい.そのためには,津波の伝播特徴によって使用する支配方程式を適切に選択することが必要となる.岩瀬ら(1998)は,計算領域の接続と陸上遡上計算が可能な非線形分散長波式を支配方程式とした解析モデルとして2段階混合差分法を利用した計算手法を提案し,その解析手法の妥当性を示している.この解析モデルの特徴は,比較的容易に波数分散効果を考慮でき,従来の解析モデルで利用した既存データ(水深や構造物情報等)をそのまま利用することが可能である.ただし,遡上計算に関しては,1次元計算や簡単な平面計算のみの適用に留まり,現地スケールでの平面解析へ適用されていない.
 そこで,本研究では,浅海域でソリトン分裂波が観測された1983年の日本海中部地震津波の陸上遡上を含めた再現計算を行い,従来モデルによる解析結果との比較を通じ,新たに開発した津波数値解析モデル(以下本解析モデル)の有効性と課題点について検証する.

*正会員   (株)エコー環境水工部
**正会員 工博 防衛大学校助教授 建設環境工学科
***正会員    (株)アルファ水土コンサルタンツ技術部
****正会員 工修 (株)エコー環境水工部
*****正会員 工博 東海大学教授 土木工学科

2. 数値解析モデル

 (1) 日本海中部地震津波の波数分散効果 1983年5月26日,マグニチュード7,7の地震に伴って発生した津波は,後に日本海中部地震津波と呼ばれ,死者の9割近くが津波によるものであった.浅海域でのソリトン分裂波の様子が初めて映像によって記録され,浅海域の波数分散効果が無視できない津波の一つとして位置づけられている.
 一方,近地津波の深海域における波数分散効果については,初期波源のオーダーに比べ津波の伝播する距離が短かく波数分散効果の影響は小さく無視できるものと考えられていた.岩瀬ら(2002a)は,近地津波に対する深海域での波数分散効果の影響を表す指標値I_Dを初期波形スペクトルと波数分散特性から定義し,I_Dが1を越える場合は近地津波であっても深海域で波数分散効果が無視できないことを示している.日本海中部地震津波指標値は2.15となり,震源域で波数分散効果が無視できない津波である.そのため,同津波を対象とする数値解析には,深海域から浅海域まで波数分散効果を考慮した支配方程式を適応することが必要となる.
 長尾ら(1985)は,水理実験と数値解析の結果から,水深の斜面勾配が1/20以下であれば波数分散項中の斜面効果が波形及ぼす影響は無視できるとしている.しかし,この結果は,比較的浅い水深を伝播する孤立波から得られた結果であり,深海域での影響については言及していない.そこで,1次元伝播解析であるが,日本海中部地震津波の短軸方向の波形分布と現地水深分布から求めた2ケースの簡易水深分布(図一1)を利用し,運動の式における各項のオーダー比較と200m水深点における水位の経時比較から深海域における分散項中の斜面効果の影響について考察する.使用する支配方程式は,線形分散特性に修正を加えた鉛直積分型のMadsen・Sφren-senの式(1992)とし,1次元では以下のようになる.
(1)
(2)
(3)
ここで,\etaは水位,Mはx方向の流量フラックス,hは静水深,D(=\eta+h)は全水深,gは重力加速度であり,分散項(B)は水深における斜面効果の影響を考慮したものである.
 図一2は,それぞれの簡易水深の斜面部を伝播する津波波形,簡易水深および運動の式における各項の大きさ(最大値にて規格化)を示したものである.分散項(A)の大きさは,波源域で局所項と同程度,静水圧項の半分程度になるため無視することはできない.一方,斜面効果を含む分散項(B)の大きさは他の項に比べ小さい.図一3は,斜面効果による水深200m地点における波形出力の差異を示したものである.同図より,斜面効果を受けた津波波形は,位相の変化は見られないが,波高減衰をすることが確認できる.これは,分散項(B)は空間分布が拡散的な働きを行い,結果的に水位の減衰を起こしたものと考えられる.しかしながら,第1波に関しては,斜面効果の影響は無視できる程小さい.今回対象とした日本海中部地震津波は,比較的平坦な海底上に波源があり,波数分散効果の影響の多くは波源域で大きく作用し,深海域における1/10程度の斜面効果は無視できるものと考えられる.ただし,津波波源が水底斜面上に位置する場合はこの限りでなく,詳細な検討が必要となる.
 (2) 支配方程式
 上記の結果を踏まえ,本研究の平面解析で利用する支配方程式は,分散項(B)を除く式(1)〜(2)を平面拡張し,砕波減衰項と水底摩擦項を考慮したた以下の式を使用する.
(4)
(5)
(6)
ここで,\etaは水位,M,Nはそれぞれxおよびy方向の流量フラックス,hは静水深,D(=\eta+h)は全水深,gは重力加速度,\nu_{\beta}は渦動粘性係数,n(=0.025m^{-1/3}s)はマニングの粗度係数である.
 (3) 解析手法
 数値解析としては,陽的な差分と陰的な差分を組み合わせた2段階混合差分法を用い,分散項の計算が可能な場合は,非線形項を中央差分式で計算する(原ら,1998).また,外洋境界と領域結合境界では波数分散効果を除く非線形長波式を陽差分として計算し,非線形項は風上差分式で計算を行う.
 図一4に計算領域と津波の初期波形分布(相田,1983)を示す.計算領域は波源を含む400m間隔の計算格子から峰浜村沿岸部6.25m間隔の計算格子の7つの領域から成る.陸上遡上は第2〜第7領域の標高20m以下で行う.また,本研究では着目する津波を第1波とし,検討対の象とする領域は,峰浜村の水沢川河口部と塙川河口部を含む第7領域である(図一5).なお,時間ステップは\delta t=0.2sとし,津波第1波が来襲し陸上遡上するまでの30分の再現計算を行う.
 a) 砕波減衰モデル
 式(4)〜(6)は断面積分形の支配方程式であり,砕波に伴う波高減衰を直接表現することができない.対象とした日本海中部地震津波の浅海域は比較的緩やかな水深勾配であることを踏まえ,岩瀬ら(2001b)によって提案された水平床を伝播するソリトン分裂波に対する砕波減衰モデルを考慮する.砕波の表現は,拡散項と渦動粘性係数\nu_{\beta}により運動量の散逸として表現し,砕波判定はx方向,y方向に関して各々の波峰点における水表面流速U_sと波速Cの流速波速比U_s/Cを算出する.そして,その値が0.59を越える波峰点から前後の波谷までの範囲に対して,
(7)
の渦動粘性係数\nu_{\beta}の空間分布を与える.ここで,U_sおよびCは,それぞれ,
(8)
(9)
であり,\bar{u}は断面平均流速(=M/D)である.また,砕波判定を受けた波峰点は,流速波速比U_s/Cが0.55以下で砕波終了と判断する.
 b) 陸上遡上計算
 遡上計算における津波先端処理は,陸上地形を階段状に近似する岩崎・真野(1979)の方法に従う.ただし,式(4)〜(6)は分散項中に静水深hが含まれることから,陸上領域での計算にそのまま適応することはできない.深澤ら(2002)は,水理実験と数値解析との比較を通じ遡上計算での波数分散項の取り扱いを検討しているが,現地の複雑な水深分布を考慮し,本研究では水深1m以浅の海域と陸域では強制的に波数分散項を除く非線形長波式を支配方程式として計算を行う.また,津波の遡下に伴う海底露出を考慮し,水深2〜10mの間では津波先端位置と波数分散効項に必要な計算点を確認し,波数分散項を考慮するか否かを判断し,考慮できない場合は非線形長波式として計算を行う.

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式(1〜5)
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図一1 初期波形と水深分布
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図一2 運動の式における各項の大きさと水深200m点の波形出力の比較
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図一3 水深200m地点における波形出力
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図ー4 計算領域と初期波形
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図一5 峰浜村付近の水深と標高分布(格子間隔:6.25m)

3. 解析結果

(1) 津波の伝播波形
図一6は,本解析モデルによる浅海域および陸上域を伝播する津波の様子を示している.図中に記載された時間は,地震発生後,すなわち,計算開始からの経過時間を示している.日本海中部地震津波の第1波は峰浜村沿岸域の水深約8mからソリトン分裂し,水深6〜4mで砕波を起こす.波頭部は複:数の分裂波となり沿岸部へ伝播する.途中,波形曲率効果によって波高増幅したソリトン分裂波は,砕波により波高減衰するものの,汀線付近では後続する分散波列が次第に先行する分散波列に追いつき,沿岸部では波高が増幅する.水沢川および塙川河口部より進入した津波は,地盤高の低い両河川域沿って遡上する.
 (2) 海岸線上の最高水位分布と痕跡高
 図一7は,峰浜村海岸線上(第7領域)の津波第1波の最高水位分布示したものである.実線は本解析モデルによる結果を示し,破線は従来モデルの解析結果である.同図中には参考とし,首藤・卯花(1984)による峰浜村沿岸部の津波痕跡高の値を白丸にて示した.全海岸線において,本解析モデルによる結果は,従来のモデルに比べ約2m程高い値を示し,観測された痕跡高に近い分布となる.
 (3) 陸上域の最大津波高分布
 図一8は,津波第1波による峰=浜村内陸部の最大津波高分布を示したものである.従来の解析モデルに比べ,本解析モデルの最大津波高分布(浸水域)は大きく広がる.小笠原ら(1984)が示した水沢川,塙川における最大遡上距離は老れそれ850mおよび970mである(図中白丸付近).特に塙川では,本解析モデルは約1km内陸まで遡上し,観測された最大遡上距離に近い値を示した.

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図一6 津波第1波の伝播と陸上遡上(峰浜村付近)
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図一7 峰浜村海岸線での最高水位分布
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図一8 峰浜村内陸部における最大津波高分布

4. おわりに

 2段階混合差分法による非線形分散波式を支配方程式とした津波の数値解析モデルの陸上遡上計算を行った.本解析モデルは,波源域から陸上遡上までの一貫した津波解析モデルであり,浅海域におけるソリトン分裂波や砕波による波高減衰も再現することが可能なモデルである.日本海中部地震津波を通じて峰浜村沿岸付近の陸上浸水域および遡上高は,従来の解析モデルの結果に比べ,浸水域は広くなり遡上高は高い値を示した.ただし,今回対象とした陸上領域は,峰浜村の一部の局所的な領域であることと,波源モデルが従来の波数分散効果を考慮していない解析モデルで最適化されているため,本解析モデルから得られた結果をそのまま信用するには多少の疑問が残る.また,現地スケールにおける砕波現象,汀線付近の波数分散項の取り扱い,そして第2波の波形精度といった課題点が残っているため,今後も本解析モデルの修正と検討を行っていく必要がある.

謝辞

本研究の遂行において,科学研究補助金(基盤研究(C)(2),代表後藤i智明,課題番号:12650520)の補助を受けた.ここに記して謝意を表す.

参考文献

相田勇(1983):1983年日本海中部地震津波の波源数値モデル,地震研究所彙報,Vol.59,pp.93-104.
岩崎敏夫・真野明(1979):オイラー座標による二次元津波遡上の数値計算,第26回海岸工学講演会論文集,pp.70-74.
岩瀬浩之・見上敏文・後藤智明(1998):非線形分散波理論を用いた実用的な津波計算モデル,土木学会論文集,No.600/II-44,pp.119-124.
岩瀬浩之・竹田勝博・後藤智明(2000):ソリトン分裂波の増幅機構と数値計算の誤差特性に関する一考察,海岸工学論文集,第47巻,pp.21-35.
岩瀬浩之・見上敏文・後藤智明(2001a):日本海中部地震津波の分裂に関する数値計算,海岸工学論文集,第48巻,pp.361-365.
岩瀬浩之・深澤雅人・後藤智明(2001b):ソリトン分裂波の砕波に関する水理実験と数値計算,海岸工学論文集,第48巻,pp.306-310.
岩瀬浩之・後藤智明・藤間功司・飯田邦彦(2002a):深海域における波数分散効果が近地津波の伝播に及ぼす影響に関する考察,土木学会論文集,No.705/II-59,pp.101-114.
岩瀬浩之・見上敏文・後藤智明・藤間功司(2002b):津波の伝播計算を対象とした非線形分散長波式の比較,土木学会論文集,No.705/Ⅱ-59,pp.129-138.
小笠原道夫・宇多高明・川村徹(1984):日本海中部地震津波による河口及び家屋密集地域の浸水被害,第31回海岸工学講演会論文集,pp.226-266.
佐藤瞑司(1995):波の分裂と砕波を考慮した津波の数値計算,海岸工学論文集,第42巻,pp.376-380.
首藤伸夫・卯花政孝(1984):1983年日本海中部地震津波の痕跡高,東北大学工学部津波防災実験所研究報告第1号,pp.88-267.
原信彦・岩瀬浩之・後藤智明(1998):非線形分散波理論式に関する多段階混合差分スキームの提案,海岸工学論文集,第45巻,pp.26-30.
深澤雅人・岩瀬浩之・藤間功司・青野利夫・後藤智明(2002):ソリトン分裂波の陸上遡上に関する数随計算,海岸工学論文集,第49巻,pp.271-275.
正村憲史・藤闘功司・林建二郎・重村利幸・後藤智明(1996):非静水圧3次元津波数瞳計算モデルの開発,海岸工学論文集,第43巻,pp.296-300.
正村憲史・藤間功司・後藤智明・飯田邦彦・重村利幸(2001):2次元・3次元ハイブリッドモデルを用いた津波の数値解析,土木学会論文集,No,670/Ⅱ一54,pp.49-61.
Madsen,P.A. and Sφrensen O.R.(1992): A new form of the Boussinesq equations with improved linear dispersion characteristics, Part 2, A slowly-varying bathymetry, Coastal Eng., Vol.18, pp.183-204.

ソリトン分裂波の陸上遡上に関する数値計算 深澤雅人*・岩瀬浩之**・藤間功司*** 青野利夫****・後藤智明*****

Abstract

 本研究では,ソリトン分裂波を対象とし,非線形分散長波式を支配方程式とした2段階混合差分法による陸上遡上の計算方法について検討した.津波の数値計算で使われている波数分散項は静水深を含み,津波の遡上計算でそのまま適用することはできない.2段階混合差分法では,陸上計算は波数分散項を除く非線型長波式を用いて計算を行うことを基本とするが,ここでは遡上域での波数分散項を取り除く2つの手法と,静水深を全水深へと変移させる手法について,ソリトン分裂波を対象とした水理実験を通じ,遡上計算における波数分散項の取り扱いについて検討したものである.

1. はじめに

 津波に対する海岸保全調査に用いられる数値解析モデルには,沿岸域へ来襲する津波の波高や波形を精度良く再現することが求められている.現在実用化されている津波の数値解析モデルは,線形長波式や非線形効果を考慮した非線型長波式を支配方程式としたものであり,沿岸域での津波高に関して言えば約80%の精度で再現することが可能となっている.一般に,日本近海で発生する近地津波では,津波伝播距離が比較的短く波数分散効果を考慮しない場合が多いが,1983年の日本海中部地震津波では,浅海域にて津波がソリトン分裂を起こす様子が記録された.津波のソリトン分裂は,非線形効果と波数分散効果による相互干渉によって生じるものであり,波数分散効果を考慮した非線形分散波式を支配方程式としなければならい.
 津波の数値解析で非線形分散波式を支配方程式とする場合,計算の安定性と効率化を考慮した,3重対角行列の陰差分式を,トーマス・アルゴリズムを用いて解く必要があり,計算領域の境界値が既知量でなければならない.しかしながら,津波の数値解析で必要となる大小の計算領域を結合する境界点や,陸上域における津波先端の移動境界点は未知量であり,トーマス・アルゴリズムを適用することができない.岩瀬ら(1998,2001)は,これらの問題点を解決する一つの方法として2段階混合差分法を提案し,日本海中部地震津波への適用計算を行いその妥当性を示しているが,使用する支配方程式の分散項に静水深を含むことから,陸上遡上の計算法に課題を残していた.
 そこで,本研究では,いくつか方法によって支配方程式における波数:分散項の取り扱い方を行い,水理実験との比較を通じてその計算方法を検証したものである.

*正会員 修(工) 国際航業(株)
**正会員    (株)エコー環境水工部
***正会員 工博 防衛大学校助教授 建設環境工学科
****正会員 工博 東亜建設工業(株)設計部課長
*****正会員 工博 東海大学教授 工学部土木工学科

2. 水理実験の概要

 本研究では図一1に示すように,ソリトン分裂波の生成の促進を行うための3/20勾配の斜面と5mの水平床および1/15勾配の斜面を持つ水底模型を設置した幅0.5m,高さ0.8m,全長22mのピストン型造波水路を使用した。波高の測定には10本の容量式波高計を用い,便宜上,水平床開始点を原点とする.波高計の設置は,−3mの位置(A点)に数値計算の入射境界波高の記録用として1本を設置し,残りは1/15斜面開始点から25cm間隔で設置する.遡上中の空間波形についてはビデオカメラを用いて測定を行い,波高計のデータと時間を一致させるために,乾電池,豆電球,スイッチを用いた簡単なトリガ信号回路を作成した.
 本研究では,静水深h,造波波高H_0を変化させた,全6ケースの水理実験を行った.表一1は,各ケースの造波条件,砕波位置および砕波形式についてまとめたものである.全6ケース中,水平床上でSpilling砕波が確認されたのはNo.2,No.5の2ケース,1/15斜面上でSpilling砕波が確認されたのはNo.1,No.4の2ケース,1/15斜面上でPlunging砕波が確認されたのはNo.3,No.6の2ケースであった.

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図一1 実験装置
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表一1 実験条件

3. 非線形分散長波理論による陸上遡上計算

 3.1 支配方程式と砕波モデル
 岩瀬ら(2002)は,沿岸波浪や津波の解析に用いられている種々の非線形分散長式に対する第一次近似孤立波解を導くと共に,水理実験との比較から浅海域におけるソリトン分裂波としての津波解析に適した非線形分散長波式として断面積分形のPeregrine式(1967)とMad-sen・Sφrensen式(1992)を示した.本研究では,ソリトン分裂波の第2波の位相が若干良いとされる断面積分型のPeregeine式を支配方程式とした.
 ソリトン分裂を起こした津波は,波形曲率効果により,波高が著しく増幅し砕波を起こす.しかし,本支配方程式では砕波現象を再現することはできない.そこで,本研究では,岩瀬ら(2001)による水平床上を伝播するソリトン分裂波に対する砕波モデルと砕波直前の急激な水位増幅を再現する人為増幅モデルを導入した.支配方程式を以下に示す.
(1)
(2)
ここに,\etaは水位,hは静水深,Qは流量フラックス,Dは全水深,gは重力加速度,nはマンニングの粗度係数(n=0.01m^{-1/3}s),\nu_{\alpha}は人為増幅項の渦動粘性係数,\nu_{\beta}は砕波減衰項の渦動粘性係数である.
 人為増幅項の渦動粘性係数については,
(3)
で与えた.ここに,\alphaは定数であり0.10を与えた.人為増幅項はソリトン分裂波列の波峰点の流速波速比u_s/Cが0.45を越えた時,その波峰点から前後の波谷までの部分に対し,式(3)の空間分布を与える.ここに,u_sおよびCは,それぞれ,
(4)
(5)
であり,\bar{u}は断面平均流速(=M/D)である.同様に,砕波減衰項の渦動粘性係数についても,
(6)
で与えた.ここに,\betaは定数であり0.23である.砕波条件は,流速波速比が0.59を越える波峰点に対して人為増幅モデルと同様の方法で与えた.なお,これら砕波モデルは,断面積分型のMadsen・Sφrensen式を支配方程式として求められたものであるが,本件で使用するPere-grine式を支配方程式にした場合の計算結果と比較したところ,砕波点に関しては多少の差異が見られるものの砕波後の波高,波形,ソリトン分裂第一波の位相に関しては大きな違いが見られなかった.
 3.2 計算方法
 計算方法は,運動の式を陽的な差分式と陰的な差分式に分けて計算を行う二段階混合差分法を利用する.運動の式の1段目は連続式からもとめられた水位\eta^{n+1/2}を用い,運動式の局所項と圧力項に対して陽解法を適用し,水位及び流量フラックスの中間値Q*を求める.
(7)
(8)
ここで,nは時間格子番号,jは空間格子番号を表す.
2段目では流量フラックスの中間値Q*を用いて中央差分化された移流項と分散項に対して陰差分を適用し,流量フラックスの最終値Q^{n+1}を求める.
(9)
式(9)の流量フラックスQに関する陰差分式による連立方程式は3重対角行列式となり,トーマス・アルゴリズムを利用して高速演算が可能である。なお.底面摩擦項は1/2の重みをつけ,1段目,2段目に組み入れた.
 3.3 遡上計算における波数分散項の取り扱い
 使用する支配方程式の波数分散項には静水深hが含まれるため,静水深hが負値となる陸上域ではそのままの形式で計算することはできない.そこで,本研究では汀線付近における分散項の取り扱いについて,以下の3つの計算方法を検討した.
 a) 計算方法1.
 静水深hがある水深h_sよりも小さい領域では,強制的に波数分散項を除く非線型長波式で遡上を含め計算を行う.ここでは水平床の水深h_0を基準に,h_s=h_0,h_0/4,h_0/2,3h_0/4およびh_s=0の5つのケースを対象とする.
 b) 計算方法2.
 ある水深h_s,から汀線で波数分散項中のhがスムーズに0になるように緩衝関数\epsilonを導入する.具体的には,tanhの関数形を適用し,h_sで\epsilon=1,汀線で\epsilon=0となる式(10)のような緩衝関数\epsilonを用いた.
(10)
ここで,h=h_sとなる点のx座標をx_sとし,汀線におけるx座標x_aとし,s_l=x_a-x_sである.計算方法1.と同様,水平床の水深h_0を基準に,h_s=h_0,h_0/4,h_0/2および3h_0/4の4つのケースを対象とする.なお,h_s0の場合は計算方法1.と同じになるため省略する.
 c)計算方法3.
 ある水深h_sから汀線で波数分散項中の静水深hがスムーズに全水深Dになるように計算方法2と同様の緩衝関数\epsilonを導入する.具体的には,静水深hをh+\epsilon\etaと置き換える.すなわち,沖側でアーセル数が1のオーダーの場合の波数分散項を使用し,汀線側でアーセル数が大きい場合の波数分散項(後藤,1985)を使うことになり,理論的に説明がつきやすい。緩衝関数\epsilonは式(10)と同様,次式を用いる.
(11)
対象ケースは,水平床の水深h_0を基準に,h_s=h_0,h_0/4,h_0/2,3h_0/4およびh_s=0の5つである.
 以上のように,本研究では全15ケースの計算を行う.それぞれの計算方法の要点をまとめたものを表一2に示す.なお,Caes4として従来モデルである非線形長波式の計算を行った.

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式(1〜11)
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表一2 計算手法のケース

4. 水理実験結果との比較

 4.1 時間波形
 図一2は,実験:No.4を対象とした,非線形長波式と非線形分散長波式による点D,F,Iにおける計算結果と水理実験結果の比較を示したものである.なお,ここで示した非線形分散長波式の計算結果は,波数分散項の取り扱いに関しCaes2-2を採用したものである.同図より,非線形長波式では,ソリトン分裂が再現されておらず,波形・波高とも全く実験値と一致していない.一方,非線形分散波式では,ソリトン分裂が再現されており,2波目以降の位相にずれがあるものの,ほぼ実験結果の波形を再現している.
 4.2 最大遡上高
 全計算ケースの遡上高の精度についてまとめたものを図一3に示す.図中,縦軸は実験遡上高R_Lに対する計算遡上高R_Cの誤差の割合を表しており,全実験ケースの平均値を取ったものである.同図より,遡上高に関しては提案したどの方法を用いても誤差10%程度で再現可能である.また,非線形長波式による遡上高(Caes4)を見ると誤差1%未満であり,ソリトン分裂波をまったく再現していないにもかかわらず,本研究で対象とした水理実験では,遡上高に関する限り非線形長波式でも十分な精度が得られていると言える.なお,分散項の取り扱い方に関して見ると,スキーム変更点h_sが小さいと遡上高が高くなる傾向があることがわかる.また,計算方法2.は全体的に遡上高が高く計算される.
 4.3 最大水位分布
 図一4に実験No.4に対する全ケースの計算結果を示す.なお,同図上段は計算方法1.(Caes1-1,Caes1-2,Caes1-3,CaesI-4,Caes1-5),同図中段は計算方法2.(Caes2-1,Caes2-2,Caes2-3,Caes2-4),同図下段は計算方法3.(Caes3-1,Caes3-2,Caes3-3,Caes3-4,Caes3-5)の計算結果をまとめたものである.図中の黒丸(●)は実験値を表し,5mから6mの間の斜面上で砕波している。一方,全ての計算ケースにおいて,計算値の砕波点が実験値の砕波点に比べやや早く,その影響により計算値の最大波高は実験値に比べ小さい値となっている.これは,本計算で導入した砕波モデルが水平床上の砕波モデルであることが原因と考えられる.同図上段の5m以降,スキーム変更点付近で急激な水位減少が見られる.緩衝関数法を用いた計算結果である同図中段と同図下段では,スキーム変更による水位減少は確認されない.
 図一3から,遡上高に関して比較的精度の良かったCaes1-4,Caes2-2およびCaes3-3に関して最大波高分布を比較したものを図一5に示す.Caes1-4,Caes2-2に関しては,いずれも実験結果と良好な一致を示しており,Caes1-4の遡上高はCaes2-2に比べやや高い値を示した.Caes3-3では汀線より陸側の部分でも分散項が効くため,全体的に波高が高く計算される傾向にある.
 4.4 遡上域での空間波形
 Caes1-4,Caes2-2,Caes3-3,Caes4に対する遡上域での計算結果と実験結果の空間波形の比較を図一6に示す.非線形長波式によるCaes4の計算については全く波形が一致しない.また,Caes3-3では,第1波だけでなく第2波も汀線より陸側の部分で波高が過増幅している.これは,分散項によって波高が増幅しているにもかかわらず,陸上部分で適切に砕波していないことが原因であると考えられる。特に,現在のモデルでは第1波の遡下による逆流中での第2波の砕波が再現できない.したがって,計算方法3.は理論的にはすぐれているが,計算方法3.を使用する場合は,汀線近傍から陸上域での新たな砕波モデルを構築する必要があると言える.

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図一2 代表点の時間波形
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図一3 数値計算と水理実験の遡上高精度
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図一4 最大水位の空間分布(全ケース) 図一5 最大水位の空間分布(Case1-4,Case2-2,Case3-3,Case4)
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図一6 遡上域における空間波形の比較(Case1-4,Case2-2,Case3-3,Case4)

5. おわりに

 本研究では,非線形分散長波式による数値計算で陸上遡上計算において波数分散項を取り扱う方法を検討した.水理実験結果との比較を通じ,検討したそれぞれの計算方法の特徴をまとめたものである.今回対象とした水理実験では,伝播する波形についてはその形態が異なるものの,最大遡上高に関しては非線型長波式による計算結果でも十分な精度が得られることが分かった.また,最大水位の空間分布,遡上中の波形について実験と計算の比較を行ったところ,計算方法2.のCaes2-2による波数分散項の取り扱い方が最も水理実験と一致した結果となった.ただし,陸上遡上の再現精度を上げるには,遡上直前の砕波現象を精度良く再現する必要性があり,今回考慮した砕波モデルでは適用の限界が感じられた.今後は,斜面上でもソリトン分裂波の砕波は精度良く再現可能な砕波モデルを検討することともに,陸上での分散項の取り扱いに関して他の緩衝関数形および導入範囲について検討していく必要がある.

謝辞

本研究の一部は科学研究補助金(基盤研究(C)(2),代表後藤智明,課題番号:12650520)の援助を受けた.ここに記して謝意を表す.

参考文献

岩瀬浩之・見上敏文・後藤智明(1998):非線形分散長波理論を用いた実用的な津波計算モデル,土木学会論文集,No.60O/II-44,pp.119-124.
岩瀬浩之・深澤雅人・後藤智明(2001):ソリトン分裂波の砕波変形に関する水理実験と数値計算,海岸工学論文集,第48巻,pp.306-310.
岩瀬浩之・見上敏文・後藤智明・藤間功司(2002):津波の伝播計算を対象とした非線形分散長波式の比較,土木学会論文集,No.705/Ⅱ-59(印刷中).
後藤智明(1985):アーセル数が大きい場合の非線形分散波式,土木学会論文集,pp.193-201.
Madsen,P.A. and Sφrensen O.R.(1992): A new form of the Boussinesq equations with improved linear dispersion characteristics, Part 2, A slowly-varying bathymetry, Coastal Eng., Vol.18, pp.183-204.
Peregrine,D.H.(1967): Long waves on the beach, J. F.M., Vol.27,Part4,pp.815-827.

相模湾沿岸海岸のアメニティーに関する研究 鈴木大助*・岩瀬浩之**・藤間功司*** 青野利夫****・後藤智明*****

Abstract

 平成11年5月に海岸法の改正が行われ,海岸のアメニティーに関する様々な研究が行われて来ている.しかし,アメニティー評価方法自体が確立されているとは言い難いのが現状である.そこで,本研究は,相模湾沿岸の主要な海岸を対象として,現地調査および写真によるアンケート調査を行い,相模湾で重要視される海岸のアメニティー評価項目を明らかにするとともに,相模湾の海岸に対するアメユティー評価を行った.またアンケート調査法を確立するため,最低限必要な設問の数を明らかにした.

1. はじめに

 昭和31年に海岸防護を主目的として制定された海岸法は,その後,利用,景観,生態系などの観点から多くの要請が寄せられるようになり,海岸事業の在り方も変化を余儀なくされてきた.これを受けて平成11年に海岸法の改正が行われ,従来の防護を目的とした海岸整備から利用や環境についても考慮した海岸整備を進める事になった。また,近年は海岸整備を進めるに当たり,最終的な利用者となる市民の意見を取り入れて行こうとしている.しかし,市民の意見を取り入れながら海岸の様々な環境を定量的に評価する方法が確立しているとは言い難いのが現状である.そこで,入江ら(2000)は九州地区の大学間で協力して,九州全域にある海岸のアメニティー評価(小島ら,1997;三村ら,1997;小島ら,2000;藍谷ら,2000;入江ら,2001)を行っているが,その他の地域の海岸については未だ調査されていない.
 そこで,本研究は,相模湾沿岸海岸を対象として,九州地区と同様の調査を行い,海岸アメニティーとして相模湾沿岸でどのような項目が重視されるかを明らかにするとともに,相模湾沿岸の海岸アメニティーについて取りまとめる.
 なお,アメニティーとは,「人間居住に必要な環境資源が適正に,保全,整備されその結果として人間が快適な生活を送れるような状態」を意味する.本研究ではアメニティーを「海岸における快適環境」と限定し,これについて人々が抱くイメージを明らかにすることを目指す.また,アンケート調査法自体を確立するために,適切なアンケート結果を得るために最低限必要な設問数を検討した.

* 修(工) 北海道庁
**正会員 (株)エコー 環境水工部
***正会員 工博 防衛大学校助教授 建設環境工学科
****学生正員 工博 東亜建設工業(株) 設計部 課長
*****正会員 工博 東海大学教授 工学部土木工学科

2. 調査の概要

2.1 調査地点
 本研究では過去にアメニティーに関する調査が行われていない相模湾沿岸海岸を対象に表一1に示す34海岸についてアンケート調査を行った.調査地点には三浦市,横須賀市,葉山町,逗子市,鎌倉市,藤沢市,茅ヶ崎市,平塚市および大磯町が含まれる.なお,調査地点の位置を図一1に示す.今回の研究では図一1に示された34海岸について調i査を行った.
 2.2 調査内容
 本研究は,現地において設問マークシート方式によるアンケート調査を行うことにより海岸のアメニティーを調査していく.アンケートは九州地区で使用したものと同じ45設問からなり(後述),海岸の外観や周囲の景観,海浜のアクセス方法,使用目的,防災といった海全体のイメージなどを問う内容になっている.そして,調査海岸の類似性と,それに関係する海岸環境の特徴を決定する成分を抽出するために,クラスター分析(ロメスバーグ,1980),主成分分析(長谷川,1998)を行った.
 ただし,現地調査に加え,現地で撮影した写真をもとに研究室の学生に対し写真による調査も行った.しかし,入江ら(2001)は現地調査結果と写真調査結果にそれほど違いがないことを示しており,本調査でも同様の結果が得られたため,統計解析では両者を区別せず,両者のデータを使用した統計解析を行った.

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表ー1 調査対象の海岸名
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図ー1 調査対象開眼の位置

3. 統計解析

 調査海岸の類似性と,それに関する海岸環境の特徴を決定する成分を抽出するため,クラスター分析,主成分分析を行った.ここでは,まず相模湾沿岸のアメニティー特性を把握するため,現地調査と写真調査を含めたすべてのアンケート調査から得られた各設問の評価平均値を用い,統計解析を行う.
 3.1 クラスター分析
 クラスター分析ではアンケート設問(45問),調査対象海岸(34問)それぞれに対してグループ分けを行う.図一2に34海岸についてクラスター分析を行った結果を示す.なお,この図の中で隣接している海岸ほど類似した評価だったことを意味する.この図の下に記した1〜34の数字は図一1に記した測点番号と一致する.今回の解析ではグループ分けを決定する線を図の位置に引き,34海岸を4つのグループに分類した.
 図一3に45設問についてクラスター分析を行った結果を表す.隣接した設問ほど回答が類似していることを意味する.設問は大きく5つのグループに分けられる.
 図一3で得られたグループごとに設問を分類し,表一2に示す.グループ1には,「散歩ができる海岸か」「波の音は心地よいか」といった設問が含まれており,全体として親水性やゆとり・開放感といったイメージに関連した設問が集まっている。なお,入江らの九州地区の調査では「散歩ができる海岸か」「水際にいつでも近づけるか」は「親水性」グループ,「波の音は心地よいか」「水平線がよく見えるか」などは「海岸環境と防災」グループと,別のグループに分類されていた.
 グループ2は,九州地区の調査では「海岸の魅力」「海域利用」などに属していたものだが,相模湾では,その中からレジャーに直結した設問だけでひとつのグループを形成したようである.グループ3も九州地区で「海岸の魅力」「利便性」「親水性」に分散していた設問のうち,レジャーに結びついた設問を集めたような内容になっている.すなわち,本調査のグループ2とグループ3はともにレジャーに関連した評価であると言える.このようにレジャーに対する意識が強いのが相模湾の特徴と言えるだろう.なお,グループ2には具体的なレジャー適性を問う設問が,グループ3はレジャーに利用する際の利便性を問う内容が比較的多く含まれているため,グループ2は「遊び」,グループ3は「利便性」というキーワードでまとめた.
 グループ4とグループ5は,九州地区では「自然環境」「海岸環境と防災」を中心に様々なグループに属していたものである.グループ4と5はいずれも環境に関する設問だが,強いて分類すれば,グループ4は「自然環境」,グループ5は「周辺環境」と言えるだろう.
 なお,九州地区の調査では防災に関する設問の多くが「海岸環境と防災」グループに属していたが,本調査では防災関連の設問はいろいろなグループに分散してしまった.これは,例えば「海浜の後背地の地盤は高いか」という設問が「砂浜に自生植物はあるか」という設問と類似した回答を得ていることからも分かるように,地盤の高さに対する設問が,防災というイメージでなく,自然環境というイメージで捉えられたことを意味する.これは,防災に対する意識の低さを示していると言えよう.
 以上の結果から,相模湾での海岸イメージには以下のような特徴がある.
 1. レジャーに対する設問の回答に強い関連性があり,海岸評価に対するレジャーの重みが大きい.
 2. 防災に関する設問は,様々なグループに分散してしまい,防災に対する意識が低い.
 3.2 主成分分析
 前項で行ったクラスター分析によって海岸別,設問別のグループ分けを行った.そこで主成分分析を行うことにより,グループ分けされた各グループにどの様な特徴があるのかを分析する.
 まず,前項で示したように,対象海岸を4つのグループに分類し,それら4グループのアメニティー評価値の序列を調べた.図一4に34海岸について主成分分析を行った結果を示す.
 図一4の主成分分析より得られた固有ベクトルは表一2に示されている.ここで,V1を第1固有ベクトル,V2を第2固有ベクトルとする.第1主成分の固有ベクトルの大きさを見るとグループ3の設問項目が高い値を示すことから第1主成分は主として「(レジャーに対する)利便性」の影響を受けていると言える.すなわち,図一4で第1主成分が大きいと,「(レジャーに対する)利便性」の評価が高いことを意味する.第2主成分は,第5グループが高い値(ただし負値)であることから,主たるアメニティ評価値は「周辺環境」であると言える.すなわち,図一4の第2主成分が小さいと「周辺環境」に対し,高い評価を受けていることになる.例えば,平塚や大磯などグループ2は,「周辺環境」が高い評価を得ているグループで,由比ヶ浜などグループ3は,「周辺環境」は良くないが,「利便性」に高い評価を受けている.

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図一2 クラスター分析による樹形図(海岸)
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図一3 クラスター分析による樹形図(項目)
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表一2 設問項目の分類と主成分の固有ベクトル
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図一4 34海岸に対する主成分分析

4. アンケート設問(調査内容)の最小数

 現地調査,解析をアンケート設問45問で行ってきたが,一般市民の意見を反映させるために行うアンケート調査では,ここで用いたような45問という多くの設問を尋ねることは困難である.そこで,ここではアンケート設問の最小数を求める.なお,設問削除の過程では,海岸別クラスター分析によって得られたグループ1〜4のグループが変わらないように注意する.設問数を減らす方法としては,表一2で求めた海岸のアメニティー評価値を利用して減らしていく.また,削除の基準としては以下に示す3点を考慮する、1.クラスター分析樹形図を見て,設問間が小さい距離(ユークリット距離)で結合している片方を削除する.2.設問別主成分分析により求めた設問ごとの第1,第2固有ベクトル値が小さい設問を削除する.3.分散値の大きい設問を削除する.
 こうしてアンケート設問を削除した結果,表一3に示した20設問が残った。5つのアメニティー評価につき3〜5つの設問によって代表されていることが分かる.また,この20設問を用いてクラスター分析を行った結果を図一5に示す。図一2と図一5のクラスター分析樹形図の形を比べてみるとグループ内の変動はあるものの,海岸別クラスター分析によって得られたグループ1〜4は変わってないことが見て取れる.したがって,45の設問は20まで減らすことができ,設問を20個にしても,ほぼ同様の調査結果が得られると言える.
 なお,現地調査と写真調査で,主成分分析散布図上にプロットされる位置がどの程度変わるかを図一6に示す.入江ら(2001)はほとんどの海岸でR(主成分分析散布図上にプロットされた位置間の距離)が3未満になると報告している.本調査でも同様の結果が得られており,写真によって調査を行うことは可能だと言える.

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図一5 設問削除後のクラスター分析(海岸)
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表一3 設問削除後に残った20設問
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図一6 主成分分析散布図の間距離

5. おわりに

 本研究により次のことを明らかにした.
 1) 相模湾沿岸海岸を対象として自然環境,利用,防災などに関する設問45項闘に対してクラスター分析と主成分分析を行い,アメニティー評価項目として,「開放感」,「遊び」,「利便性」,「自然環境」,「周辺環境」の5つの評価項目を抽出することができた.また,5つの評価項目ごとに類似性の高い設問間の距離や成分因子の固有ベクトルの大きさなどにより設問数を半分程度に減らすことが可能である.
 2) 相模相模湾沿岸海岸は4つのグループに分類することができる.この分類に寄与するアメニティー評価項目としては,「利便1生」および「周辺環境」が挙げられる.
 3) 今回の調査から,グループ2に属する海岸のように,充実した利便施設と適度に自然があり,アクセスがしやすい海岸が高い評価を得た.そして,それらの海岸は平塚や大磯に代表されるように,海水浴場として人気がある海岸であり,人工的に整備されている海岸が多かった.逆に,評価が低かった海岸はグループ4に属する海岸である.このグループに属する海岸は腰越や秋谷のように,生活環境に適した自然が僅かしかなく,海浜利用の整備も殆どされていなかった.今後の海岸整備・開発の方向として,これらの事を踏まえる必要があると思われる.

謝辞

本研究の遂行にあたり,現地調査には東海大学土木工学科水工研究室の学生に協力を頂いた.また,本研究の一部は文部省科学研究費(基盤研究(B)(1),代表入江巧,課題番号10450184)の補助を受けた.ここに記して謝意を表す.

参考文献

薩谷譲・小野信幸・入江功・申承鍋・小島治幸(2000): 画縁空間への探訪による海岸環境の評価,海岸工学論文集,第47巻,pp.1281-1285.
入江功(2000):九州沿岸域における環境ポテンシャル評価とハザードマップ形式に関する研究,科学研究費補助金研究成果報告書.
入江功・小野信幸・加藤章子・森本剣太郎・小島治幸(2001):人々の総意に基づく海岸環境の評価手法に関する研究,海岸工学論文集,第48巻,pp.1336-1340.
小島治幸・武若聡・入江功・片岡治・島田浩・筒井久喜(1997):砂浜海岸における霞然環境の保護・保全に関する基礎的研究,海岸工学論文集,第44巻,pp1186-1190.
小島治幸・片平誠一郎・入江功・小野信幸(2000): 海岸の環境ポテンシャルに関するアンケート調査法,海岸工学論文集,第47巻,pp.1296-1300.
三村信男・小島治幸・川森昇・喜岡渉・五明美智男・和田清・横木裕宗(1997):わが国沿岸域の特性評価,海岸工学論文集,第44巻,pp.1256-1260.
長谷川勝也(1998):ホントにわかる多変量解析,共立出版,186p,
H.C.ロメスバーグ(1980):実例クラスター分析,内田老鶴圃,424P.

日本沿岸波浪の推算システム A Wave llindcasti.ng System for the Coast of Japan 後藤智明*・亀山豊**・柴木秀之*** Chiaki. Goto, Yutaka. Kameyama and Hidenori. Sibaki

Abstract

In order to survey the problems related to wave hindcast, a wave prediction system is developed for the coast of Japan imagined use of personal and EWS computer. The system is constituted seven analysis sub-systems hindcast and five data-bases. In tile paper, an outline of the system and the accuracy of wave hindcast are reported. And it is concluded that the system is much avail to practical wave hindcast and forcast.

Key Words: Wave hindcast system, Spectral Method, Data Base

1. はじめに

 ここ数年間は,比較的規模の大きい気象擾乱が襲来し,日本沿岸の港湾施設に大きな被害をもたらした.このような突発的な波浪災害に迅速な対応が可能で,かつ日本沿岸の広範囲において適用できる波浪推算システムの必要性が高まってきている.そこで,波浪推算に関する既往の研究成果を有機的に結び付け,また,課題として残されてきた問題の処理方法を研究・開発することにより,海洋開発に必要不可欠と思われる波浪推算システムを新たに作成した.
 本研究で開発した波浪推算解析システムの特徴は,日本沿岸を対象とした突発災害時の波浪追算の迅速処理と,過去数十年間を対象とした多気象擾乱の波浪追算の効率的処理である.、また,比較的高度な知識を必要とした従来の波浪推算に比べ推算結果の検証を含め半自動化した一種の波浪推算処理のエキスパートシステムとも言うことができる.このため,波浪推算システム本体以外に単地点波浪推算,沿岸係数算定,波浪統計解析,確率沖波解析,推算結果動画出力の6つの解析システムと観測波浪,台風定数,気象図データ,沿岸係数,推算値の5つのデータベースが支援システムとして組み込まれている.ハード構成としては,パーソナルコンピュータ,科学技術計算用ワークステーション(EWS),動画データ収録装置からなる.なお,本報告においては,各解析システムとデータベースの構成,解析結果の概要について述べる.

*正会員 運輸省港湾技術研究所 水工部 海洋エネルギー利用研究室 (〒239 横須賀市長瀬3−1−1)
**     運輸省第二港湾建設局横浜調査設計事務所技術開発課
***正会員 運輸省港湾技術研究所 水工部 海洋エネルギー利用研究室 (研修生)

2, 波浪推算解析システム

 本波浪推算解析システムの機器構成を図一1に示す.波浪推算,浅水変形計算,動画処理を行うワークステーションと推算結果出力,単地点出力波浪推算,極値統計解析,波浪統計解析を行うパーソナルコンピュータ,そして動画収録装置である.周辺機器としては,外付けのハードディスク,デジタイザー,レーザーショットプリンター,光ディスクユニットであり,それぞれ5種類のデータベースの収録,気象図の読み取り,図表の紙面出力,気象図の保管を目的としている.
 また,システムは,図に示すように波浪,台風,沿岸係数,気象図,推算値,推算格子の5つのデータベースと気象図処理,波浪推算,単地点出力型波浪推算,沿岸係数算定,極値統計解析,波浪統計解析の6つの解析システムから構成されている.
 気象図処理・波浪推算・単地点出力型波浪推算システムでは,気象図の読み取りから波浪推算までの一連の作業を行うプログラムが用意されており,波浪災害原因究明調査,設計波浪調査および台風による高波の予測などに利用することができる.沿岸係数算定システムでは,対象港湾の水深データの読み取り,水深データ編集,周期・方位別の沿岸係数算定および沿岸係数表編集に関するプログラムが用意されており,観測値と波浪推算値の比較などが可能である,極値統計解析システムでは,観測波浪の検索・抽出,推算値と観測値の相関解析・極値統計などの確率沖波の算定に必要な各種プログラムが用意されている.また,波浪統計解析システムでは,波浪推算関連調査に必要な沿岸波浪観測地点ごとの有義波台帳,有義波年表,経時変化図,結合頻度分布図,高波一覧表など波浪統計の基本的な解析結果の出力が可能である.また,期間最大有義波分布,月別平均有義波分布など沿岸波浪観測の波浪統計結果を面的に出力することも可能である.なお,波浪推算解析システムの利用目的の例として設計沖波調査を取り上げ,調査手順と関係する支援システムを整理したものが表一1である。一般に,設計沖波調査は,気象擾乱の抽出,気象図データの作成,波浪推算,沿岸係数算定,推算値の検証,極値統計解析,モデル気象擾乱の想定,モデル気象擾乱の推算,設計沖波の検討の手順で行われるが,波浪推算システムおよび各支援システムは,これらの一連の解析を行うとともに紙面へ解析結果を出力するものである.

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図一1 波浪推算解析システムの機器構成
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表一1 設計沖波算定調査手順とシステム

3. 波浪推算システム

 本システムにおいて波浪推算は,計算領域と推算期間を指定すると自動的に,格子点補間,風推算,波推算の手順で行われる.格子点補間においては,安中ら2)のスプライン補間法を緯度・経度座標に改めた方法を採用している,風推算に関しては,理想大気の風推算と摩擦を考慮した海上風推算に分離し,前者に傾度風と台風のハイブリッドモデル2),後者に大気境界層モデルによる海上風補正2)を利用している.傾度風と台風のハイブリッドモデルは,台風以外の風に傾度風モデル,台風に藤田3)・宮崎4)モデルを利用した風推算モデルであり,両者の推算風を経験的な関数形で連続的に結びつけたものである.また,大気境界層モデルは,大気の接地境界層が気圧傾度力,コリオリカおよび渦粘性力の3者の釣り合いで近似できるものとして半解析的に導かれた海上風への補正のための理論である.波推算に関しては,気象庁の波浪予測および港湾局の設計波調査に実績のある方法として磯賄・宇治6)の開発したMRIモデル(スペクトル成分波法)を周いている.ただし,緯度・経度座標系を利用しているため伝播スキームなどに変更を加えている.
 推算領域の一例を図一2に示す.図は日本海沿岸のうち運輸省第一港湾建設局の担当沿岸を対象としたものである.日本海全体を緯度・経度に関して1/2°格子で表し,対象沿岸に近づくにつれ陸地の遮蔽効果を正確に表現するため1/8°,1/24°格子で表現している.
図一3は,1990年11月7日から12日の気象擾乱に関する佐渡島領域の最大有義波高および波向分布である.図一3(a)の数字は10cm単位の有義波高,図一3(b)は16方位別の波向である.1/24°格子という細かい格子で表現しているため佐渡島による遮蔽効果が読み取れる.図一4は同擾乱に関する福井港の推算値の経時変化である.多少の位相のずれがあるものの推算値は観測値と良好な一致を示していることがわかる.

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図ー2 推算領域の一例
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図一3 佐渡島領域の最大有義波高分布と波向分布
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図一4 福井港の経時変化

4. 単地点波浪推算システム

 単地点波浪推算システム6)は,上述の波浪推算システムを1地点出力方式としたものであり,推算格子点が少なくなるためパーソナルコンピュータを利用しても迅速に推算できる特徴がある.本システムは,風推算の方法により台風モデルと傾度風モデルの2種類で構成されている.
台風モデルを利用した推算では,過去の台風を想定した追第計算および台風の規模・経路を任意に与えた予測計算が可能である.また,傾度風モデルを利用する方法では,天気図の読み取り結果を入力することにより自動的に海上風,波浪を一貫して推算することができる.演算速度の面では,台風モデルを用いた波浪推算であると,32ビットのパーソナルコンピュータを用いて5日間の擾乱を約2分で推算することが可能であり,現地の港湾事務所などで高波浪の概算的な波浪追算などに利用できるシステムである.
 写真一1は,高知沖に関して台風8213号の波浪推算した場合のパーソナルコンピュータ画面を表す,画面には,まず,緯度・経度座標,日本の海岸線,台風経路,台風規模,観測波浪の経時変化が表示され,計算の進行とともに有義波高,周期,波向に関する推算値および観測値が表示される.台風の高波予測は,台風諸元として予想経路および規模をマウスまたはキーボード人力した値を利用して波浪推算するものである.台風の予想経路および規模を人力すると自動的に推算が行われる.写真一1と同様な画面出力が現れる.なお,台風の規模に関しては,藤田の台風モデルにもとつくパラメータ,または気象庁により予想された台風の暴風圏に関する情報が利用でき,後者を利用すると台風モデルに関する知識を必要としないで現地港湾事務所において簡便に台風による高波の予測が可能となる.

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写真 写真一1 既往台風推算のパーソナルコンピュータ画面出力

5. 波浪推算の精度

 波浪推算システムおよび単地点出力型波浪推算システムの推算精度を調べる目的で,波浪推算を実施した.図一5および図一6は,それぞれ波浪推算システムおよび単地点出力型波浪推算システム(台風モデル推算)に関して最大観測有義波高と最大推算有義波高の相関を調べたものである,どの地点も比較的深い地点に観測機器が設置されており,観測波浪は大きな浅海変形を受けていない沖波として考えられる.
 図から,両システム推算ともに多少相関データがばらつくものの,平均的には45°の線に乗っており本システムから得られた推算値は比較的良好な精度を有することがわかる.ただし,台風モデル推算が低波浪・高波浪に関わらず一定の精度があると考えられるが,波浪推算システムの方は多少観測値に比べ推算値が小さくなるケースが見られる.これは,台風モデルにおいては場の風という形で気圧場の時間変化の効果を考慮しているのに比べ,傾度風モデル推算では定常の気圧場を仮定して風を計算していることに起因していると考えられる.どちらにしても,波浪推算には数多くの問題が残されているため,推算結果の利用にあたっでは,観測波浪との照合が必要である.
とした波浪推算システムを開発した.また,台風などの来襲に伴う高波の予測に関しても,パソナルコンピュタを利用した簡易波浪推算サブシステムが利用できる.
2.波浪推算解析システムには,沿岸係数解析,観測波浪統計解析,確率沖波解析,推算結果動画出力のサブシステムと観測波浪,台風定数,気象図,沿岸係数,推算値,推算格子の6つのデータベースが支援ツールとして組み込まれているため最小限の計算機操作により波浪推算処理以外に設計沖波,推算結果アニメーションなど出力が可能である.

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図一5 観測最大有義波高と推算最大有義波高の相関(波浪推算システム)
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図一6 観測最大有義波高と推算最大有義波高の相関(単地点波浪推算システム)

6. おわりに

 本報告においては,各種波浪推算調査に利用する目的で開発した波浪推算解析システムの概要を述べた.主要な結諭は以下のとおりである.
1.気象データの処理,波浪推算,統計処理など一連の波浪推錦関連業務を迅達に処理可能な日本沿岸波浪を対象

謝辞

波浪推算解析システムの開発にあたり,港研海洋水理部海象調査研究室,第一港湾建設局新潟調査設計事
務所および(株)エコー第一技術部小沢保臣氏の協力を得たここに記して謝意を表す.

参考文献

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3)Fujita,T. :Pressure distribution within typhoon, Geo. Mag. 23, 00. 437-451, 1952.
4)気象庁海洋気象部・東京都港湾局:東京湾高潮総合報告,1962.
5)Isozaki, I. and Uji: Numerical prediction of ocean wind waves, Papers in Met. and GeoPhys., Vol, 23(4),pp.347〜356,1973.
6)後藤智明・青野利夫:単地点出力型スペクトル法による波浪推算システム,港湾技術研究所報告,1992.(印刷中)

北海道南西沖地震津波の二・三の特徴について Some characteristics of Hokkaido Nansei-Oki Earthquake Tsunami 見上敏文*・柴木秀之**・後藤智明*** Toshifumi.Mikami Hidenori.Shibaki and Chiaki.Goto

Abstract

The tsunami caused by the Hokkaido Nansei-Oki Earthquake (M=7.8) on July 12, 1993 brought severe damages over wide area along the Japan sea. The topical points of the Hokkaido Nansei-Oki Earthquake tsunami are : (1) This tsunami was generated at a location where earthquakes have not been observed before. (2) The runup of this tsunami records maximum height in the recent years. (3) Effects of trapping produced serious devastations at Okushiri Island.
This paper aims to present some characteristics of this tsunami with the analysis of field survey, theoretical analysis and the numerical simulation.

KeyWords : tsunami, Hokkaido Nansei-Oki Earthquake, field survey, theoretical analysis, numerical simulation

1. はじめに

 平成5年7月12日22時17分,マグニチュード7.8の地震で発生した北海道南西沖地震津波は,奥尻島を中心とした日本海沿岸に甚大なる被害をもたらした.このように被害が大きくなった理由としては,地震の規模が1983年の日本海中部地震を上回るほど大きく,震源域が奥尻島の直下に近かったことによるものと推測される.
 北海道南西沖地震津波に関しては,地震予知,警報体制,災害対策などの視点から以下の項目が活発に議論されている.すなわち,1.地震の空白域で発生した津波であること(震源域と波源域の問題),2.近年の最大遡上高を記録したこと(沿岸の津波高の問題),3.奥尻島の周辺に津波がトラップされ被害を大きくしたこと(島による津波増幅の問題)が挙げられる.
 本報告は,主としてこれら3項目に着目し,この北海道南西沖地震津波について,現地資料解析,数値シミュレーション解析,理論解析結果を用いて現象の特徴を明らかにする.

*正会員 (株)アルファ水工コンサルタンツ 技術開発部 (063 札幌市西区発寒9-14-516-336)前運輸省港湾技術研究所 水工部 海洋エネルギー利用研究室 (研修生)
**正会員 (株)エコー 第一技術部解析調査課 前運輸省港湾技術研究所 水工部 海洋エネルギー利用研究室 (研修生)
***正会員 東海大学工学部土木工学科 前運輸省港湾技術研究所 水工部 海洋エネルギー利用研究室

2. 震源域と波源域

 プレートテクトニクス理論によると,日本列島は,図一1に示すような4枚のプレートの上に乗っていると考えられている.北海道南西沖地震津波は,ユーラシアプレートが東方向に北米プレートに潜り込む境界線上で発生した地震によるものと判断できる.潜り込み境界線付近で発生した近年の地震としては,1741年の渡島大島地震(M6.9),1964年の新潟地震(M7.5),1940年の積丹半島沖地震(M7.5)と1983年の日本海中部地震(M7.7)があり,今回の津波はこれらの地震でエネルギーの開放がなされなかった空白域で発生したものと考えられている。(なお,1741年の渡島大島地震は,火山噴火に伴う地震であったという学説もある.)
 津波の波源域に関しては,東北大学工学部災害制御研究センターにおいて,奥尻島の地殻変動,津波の痕跡記録や津波の到達時間などの情報および,数値シミュレーションによる現象の再現性の検討から,暫定的に表一1に示す断層パラメータおよび,図一2に示すような波源域の推定が行われている1).この結果によれば,地震断層面は,図一2の中で中破線で示したように,北側および,南側の2つの断層面で構成されている.この断層モデルを用いて弾性論で近似的に求めた海底地盤変動量の分布は2),前述の図一2に,海底地盤変動量が正,すなわち海底および陸地が隆起した部分の等高線を0.5m間隔に細い実線で,海底地盤変動量が負,すなわち海底および陸地が沈降した部分の等高線を0.1m間隔に細い破線で示している.この分布をみると,北側の断層では西下がりの逆断層となっているため,海底地盤の隆起部分の西側に海底地盤の沈降する部分が存在している.海底地盤の隆起および沈降量は,断層面の傾きが緩やかで鉛直方向の変位量も比較的少ないため,隆起部分で最高1.Om程度,沈降部分で0.2m程度の変動量となっている.これに対して,南側の断層では東下がりの逆断層となっているため,海底地盤の沈降部分は隆起部分の東側に存在している.海底地盤の隆起および沈降量は,断層面の傾斜が急で鉛直方向の変位量が大きいため,隆起部分で最
高4.Om程度,沈降部分で0.5m程度と大きな変動量となっている.
 また,波源域全体では南北方向に長い楕円形の形状を成しており,津波初期波形の水面勾配は東西方向に急で,南北方向では緩やかである.これより,波源域から伝播する津波エネルギーは東西方向に多く放出され,南北方向に放出さ
れる津波エネルギーは比較的少ない.日本海沿岸で被害が大きかった理由の一つはこの津波が持つ指向性によるものである.この特徴は,日本海沿岸に位置する断層プレートの境界面が南北方向に延長を持つためで,日本海で発生する津波の波源域は南北方向に長軸を持つ楕円形になることが多い.故に,日本海で発生する津波の指向性は東西方向に強く,南北方向に長い日本海沿岸の海岸線は地理的に津波の被害が大きくなりやすい.

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図一1 日本列島付近の地殻プレート
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図一2 津波の波源域(東北大学DCRC-4モデル)
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表一1 断層パラメータ(東北大学DCRC-4モデル)

3. 沿岸の津波高

 北海道南西沖地震津波の発生を受けて港湾技術研究所は,北海道開発局開発土木研究所と協力して北海道南西海岸から石川県海岸までの津波現地調査を実施した.図一3に奥尻島および北海道渡島半島沿岸の津波痕跡高を示す.津波の最大遡上高を記録したのは,奥尻島の藻内地区北側であり,30mを越えている(東北大学調査).津波による被害が大きかった奥尻島の青苗地区から初松前の海岸でも10mを越える高さが観測されている.北海道渡島半島沿岸では,島牧村から大成町の海岸で5mを越える遡上高となっており今回の津波の規模が大きかったことが分かる.
 一方,青森県から南の沿岸では,新潟県北部海岸と佐渡島で3m程度と若干高いものの他の海域は1〜2m程度の津波高さとなっている.このように波源から南の沿岸の津波高が小さいのは,今回の津波の波源域が比較的狭いことと東西方向に指向性が強い初期水位分布であったことによる.なお,以上のことは以下に示す津波数値計算結果からも推定できる.
 津波数値計算は日本海における津波伝播過程を計算の対象としていることから,線形長波理論式に基づく津波数値計算モデルを使用した.計算領域は,ロシア・中国大陸沿岸を含む範囲とし,計算格子間隔は3.6Km,計算時間間隔は6.0秒として計算を行っている.
 図一4は数値計算による津波先端の到達時刻を示したものである.この結果によると津波の先端は波源より同心円を描くように伝播しているが,沿岸部では水深が浅くなるために伝播速度も遅くなることが分かる.この特徴は特に本州北部の沿岸で顕著に現れており新潟県北部の海岸は水深は比較的浅いため,津波先端の到達は周囲の海岸と比較すると遅くなっている.逆に富山湾では新潟県北部沿岸と比較すると波源からは遠方であるが平均水深が深いため津波の到達時刻は早い.また,日本海中央部に位置する大和碓付近でも水深の影響により津波の伝播が遅くなる.
 このようにして津波先端は日本海を伝播し北側のサハリン西部には1時間程度で到達し,南側の九州北部へは対馬海峡の水深が比較的浅いため約3時間程度の時間を要する.
 図一5は最大水位分布図,津波第1波到達時刻および最大水位沿岸方向分布の計算値と観測値の比較を示したものである.最大水位の沿岸分布では,波源からの距離が短い奥尻島および北海道沿岸で高くなっているほかに,佐渡島および能登半島先端部において周囲に比較して水位が高く算出されており島および,半島地形が津波をトラップした結果,津波を増幅させていたことが数値計算によっても確認することができる.
 計算値と観測値の比較においては,第1波の到達時刻は計算値が観測値よりも10〜15分程度早く算出されているが到達時刻の沿岸方向分布の傾向は一致している.また,最大水位については,全体の傾向は計算値と観測値でほぼ一致しているが,計算値の方が観測値よりも幾分低い値となっている.この結果は,沿岸地形の近似精度の低さに起因しているものと考えられる.
これについては今後,沿岸地形の近似精度を向上させるため沿岸部ではさらに格子間隔を小さくして多領域の接続計算を行い,非線形長波理論式に基ずく計算を行うことで解決されるものと考える.

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図一3 津波痕跡値(港湾技術研究所・北海道開発局・東北大学調査)
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図一4 津波先端の到達時間
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図一5 最大水位,津波先端到達時刻・最大水位沿岸方向分布の計算値・観測値の比較

4. 島による津波増幅

 奥尻島の津波被害が最も大きかった理由としては,津波の波源域に位置したことと奥尻島に津波がトラップされたことによる.このトラップ現象については,波源から遠く離れた佐渡島や隠岐でも漁船が流される等の被害があり,島が津波に弱い地形であることが今回改めて確認された.
 円形島まわりの津波高に関して,長波が島に捕捉された場合の島周囲における波高分布理論解と奥尻島における津波痕跡値の比較結果3)を図一6に示す.奥尻島を図一6(a)の点線で示すような円形島(半径8㎞,斜面勾配0.075)で近似した場合,図一6(b)に比較されるように実線(理論解)と丸印(痕跡値)は,島のまわりに沿って津波高の高い地点と低い地点が交互に現れることなど定性的に良好な一致を示す.なお,藻内地区から初松前地区にかけて理論解より痕跡値が大きくなるのは,理論解析で考慮できない局所地形の効果が原因と考えられる.
 島に来襲する津波に関して特に防災対策上問題となるのは,トラップされることにより津波が増幅することである.図一7は1次元伝播としての斜面上の津波遡上高を基準とした場合の島にトラップされる津波の増幅特性(島の半径・周期等と増幅率の関係)を示したものである.図中の白丸は増幅率:R_{Hmax}/R_{H1-D}=1.0の点をプロットしたもので,黒丸はR_{Hmax}/R_{H1-D}=2.0の点をプロットしたものである.同図が示すように島の場合は複数の共振周波数が存在するため任意の増幅率を示すコンターは非常に複雑な形状となる.図中の折れ線は捕捉特性を示すもので,増幅率が1倍以下,1〜2倍および2倍以上の領域を示すものである.これより,周期が長く(1/\betaが大きく),r_2/r_0が小さけれ,ばトラップによる顕著な波高増幅はなく.反対に黒丸でプロットされた点付近では2倍程度の増幅が生じる可能性があることを示す.北海道南西沖地震津波における奥尻島での場合を同図に当てはめると,1/\beta=0,37,r_2/r_0=2.5となり,2倍程度の増幅率となることが分かる.しかしながら,島の半径と周期の組み合わせによっては3〜5倍の増幅率となる可能性もあり,島における防災対策では十分な注意が必要である.

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図一6(a) 奥尻島の円形島近似
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図一6(b) 奥尻島の津波高に関する理論解と痕跡値の比較
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図一7 円形島における津波の増幅特性(m:斜面勾配,r_0:島半径,h_1:水深,T:津波の周期)

5. おわりに

 本報告では,北海道南西沖地震津波について,現地資料解析,数値シミュレーション解析,理論解析を行い.現象の特徴について述べた.主要な結論は以下のとおりである.
1.津波の波源域は奥尻島を含む形で南北に長い形状をしており,津波エネルギーが放出する指向性は東西方向に強い.このため奥尻島および日本海沿岸での被害が大きくなった.
2.津波痕跡値の現地資料および,数値シミュレーション結果から津波の規模が非常に大きなものであったこと,奥尻島,佐渡島,能登半島などにおいては地形により津波がトラップされていることが確認された.
また,数値シミュレーション結果と津波到達時刻,痕跡値の観測値は定性的に一致する.
3.長波が円形島に捕捉された場合の波高分布理論解と奥尻島における津波痕跡高は定性的に良い一致を示す.
 以上のように,本報告では北海道南西沖地震に関する特徴を概略的に述べたが,今後は詳細な数値シミュレーションの実施や,運輸省港湾局において実施されている波浪観測システム(NOWPHAS system)で観測された津波波形との比較等から,現象の詳細な解明を行う予定である.

謝辞

本報告のとりまとめにあたっては,防衛大学校藤間功司講師,運輸省港湾技術研究所水工部海洋エネルギー利用研究室青野利夫氏(科学技術庁特別研究員,現東亜建設工業)の助言を得た.ここに記して謝意を表す.

参考文献

1)高橋智幸,M.Ortiz,高橋武之,首藤伸夫:津波を説明するための北海道南西沖地震津波初期波形,日本地震学会講演予稿集,1994年度春期大会
2)Mansinha, L. and Smylie :The displacement fields of inlined faults, Bull.,Seismol. Soc. Am.,Vol61, p.1433,1971
3)藤間功司,後藤智明:円錐形の島に捕捉された長波の特性,土木学会論文集(投稿中)

南関東津波計算システムの開発 Development of Tsunami Simulation System for the Coast of South Kanto 柴木秀之*・戸引勲**・額田恭史***・後藤智明**** Hidenori. Shibaki, Isao. Tobiki, Kyoshi. yukada and Chiaki. Goto

Abstract

In order to investigate hindcasting and forecasting of tsunami, a numerical simulation system is developed. This system is constitute three subsystem and data-bases for supporting analysis with the aid of Engineering Work Station and Personal Computer. Basic consept of system is creating of hight quality information with easy operation. With the application of this system to hindcating the Kanto Great Earthquake Tsunami, reliable information can be used to design of maritime construction.

Keywords: Tsunami simulation system, South Kanto coast, the Kanto Great Earthquake Tsunami

1. はじめに

 1993年7月12日に発生した北海道南西沖地震による津波は,波源域に位置する奥尻島を中心に死者・行方不明者190名に及ぷ大災害をもたらした.1983年に発生した日本海中部地震津波からわずか10年後の悲劇である.今回の津波で防災上重要な点は,奥尻島の防災施設の設計外力が,既往最大の津波水位を記録した日本海中部地震津波により決められたことである.すなわち,過去最大規模の津波を設計目標値とする従来の設計思想に基づけば,安全と考えられた地域に,それをしのぐ規模の津波が来襲したのである.我々は,改めて自然災害を完全に防ぐ防災施設を建設することが不可能に近いことを,貴重な教訓として得た.
 この突発的な津波災害を経験した我々は,防災計画ならびに災害予知に対する迅速な対応が可能な津波数値計算システムの開発の必要牲を痛切に感じた.とりわけ,東京湾は,東京港・京浜港・千葉港等の特定重要港湾を中心に,日本の経済・流通施設の中枢が集中している,また,首都圏の水際線として,新たな臨海開発が急速に進んでいる,それに伴い,沿岸部の防災上の重要度が増すとともに,その脆弱さも懸念される.もし,我々の経験を越える大規模な津波が来襲した場合,未曾有の大災害が発生し,その影響は全国に波及する危険性をはらんでいる.
 そこで,東京湾沿岸を中心に南関東沿岸を対象とする津波数値計算システム(『南関東津波計算システム』)を新たに開発した,開発したシステムの設計思想ならびに解析手法は,日本沿岸全てを対象とすることが可能な汎用性のあるもので,その適用事例として南関東海域を取り扱うものである,このシステムは,突発的な津波災害の追算と災害予測を効率的に処理することを目的として開発され,データ作成,数値シミュレーション,結果の評価にいたる一連の処理を,簡単な操作のみで可能なように殼計されている.そして,煩雑な解析処理と高度な知識を必要とすることなく,専門技術者と同等の成果を迅速に出力することを基本にしている.
 本論文では,津波計算システムの使用機器,システム構成等の設計概要と,大正12年関東地震津波の追算を扱った南関東海域への適用事例および今後のシステムの展開と改良の方向性について述べる.

*正会員 株式会社エコー 第一技術部解析調査課(〒116 東京都荒川区南千住1-59-7)(前運輸省港湾技術研究所 水工部 海洋エネルギー利用研究室(研修生))
**   運輸省第二港湾建設局 横浜調査設計事務所調査課
***   株式会社エコー 第一技術部解析調査課
****正会員 東海大学工学部土木工学科(前運輪寄港湾技術研究所 水工部 海洋エネルー利用研究室)

2. システムの設計概要

 『南関東津波計算システム』は,図一1に示す機器構成ならびにシステム構成でまとめられる総合的な津波計算システムである,使用機器は,エンジニアリング・ワークステーション(EWS)とパーソナルコンピュータ(PC)とその周辺機器により構成される.EWSは,津波の数値シミュレーションを行う.ただしlEWSの主記憶容量(例えば64MB)を越える計算を行う場合には,スーパーコンピュータ等の大型機を必要とする・PCは計算に必要な入力データ作成,観測値と計算1直の解析,計算結果の画面と紙面への出力を行う.EWS(または大型機)とPCの間は,ネットワークにより接続され,入・出力情報が相互に伝達される.システムの周辺機器は,EWSとPC各々のハードディスク,PC側に,レーザープリンター,光ディスクユニット,ディジタイザーが配備されている.周辺機器が分担する機能は,EWSのハードディスク(1GB)が計算値の一時保管,PCのハードディスク(300MB)が津波痕跡値等データベースの保管,レーザープリンターが図表の紙面出力,光ディスクユニットが水深図および計算値データベース等の大容量データの保管,デジタイザーが水深図アナログ情報のデジタル化である.
 システムは,1.地形・水深データ作成システム,2.数値計算システム,3.計算結果図化システムの3つのサブシステムと,5つの支援データベース(水深,計算格子・格子点水深,断層パラメータ,津波痕跡値,計算値)により構成されている.
 地形・水深データ作成システムは,水深図データベースに登録されている海図・海底地形図等のアナログ情報をデジタイザーで数値化した情報,既に数値化されている水深・海岸線・標高等の数値情報を用いて,津波計算の入カデータとなる計算格子・格子点水深データを作成するものである.作成されるデータは,陸域と海域の区別がなく,任意の範囲と格子間隔で半自動的に作成される.ここで,半自動的と述べたのは,データベースの識別番号,計算範囲,格子間隔等の最小眼の情報は入力する必要があるためである.港湾・海岸等の詳細な地形を必要とする場合には,港湾の計画平面図ならびに深浅測量図等をデータベース化すれば,同様な格子情報が作成できる.このシステムで作成されるデータは,計算格子・格子点水深データベースに保管され,津波計算に限らず波浪変形等の他の数値計算にも利用可能となる.後述する結果の図化システムも含めて,処理はコントロールデー夕を画面対話形式で入力すれば実行可能である.また,処理の効率化を図るために,結果の出力は紙面のみならず画面で行うことができる.
 津波の数値計算システムは,多領域同時計算が可能な多層レベルモデルが組み込まれており,線形長波・非線形長波・非線形長波遡上計算の3種類の方法を選択することが可能である.また,南関東海域以外の使用プログラムの作成に伴う過ちを防ぐために,コントロールデータ入力のみで,プログラムを自動作成する機能を備えている。最高水位・時系列等の計算値は,計算値データベースに保管され,解析の反復実行を可能にしている.
 計算結果図化システムは,解析結果を画面と紙面で出力することが可能なものである,計算の進捗過程の確認や有為性を迅速に判断する上で,画面出力は有効である,また,計算値の検証等の処理は,津波痕跡値データベースと計算値データベースを利用すれば,簡単に両者の比較を行うことが可能である.
 このように,システム全体は,津波計算に関する一連の解析処理を系統的に整理し,簡単な入力操作のみで実行可能なように設計されている.同時に,熟練者以外でも処理できるように,画面による対話形式の入力と出力をシステム設計の基本としている.なお,この津波計算システムは,南関東沿岸に限らず日本沿岸を海域別にシステム化することを前提に設計されている.
 図一2は,設計潮位解析の流れと開発した計算システムの関係を整理したものである.この図に従って,システムの利用方法をまとめる.
 設計潮位は,通當,既往最大値を基本にする.そのため,始めに,設計潮位に該当する既往最大の水位を定める.そして,要因となる外力として,津波であれば波源を選定する.選定された津波の波源を初期条件として,対象津波の追算を行う.数値計算を行うためには,計算範囲の決定と,計算格子・格子点水深・断層パラメータ等の入カデータの作成が必要となる.津波の数値計算は,波源を含む沖合海域から対象とする海岸・港湾区域にかけて,格子間隔の異なる領域を順次結合して計算する.これは,数値計算上で現れる離散化誤差と打ち切り誤差を小さく抑えながら,効率的に計算を行うためである,通常は,津波の波長の1/20から1/30以上細かい格子間隔を適用する1),2).既往最大の津波追算を行った後,計画断面に関して予測計算を行う.計算結果が得られると,結果の解析と設計潮位の検討が行われる,さらに,必要に応じて,モデル断層による予測計算を行う.開発した津波計算システムは,図一2に示す一連の潮位解析に関する処理の省力化を図り,それぞれの処理段階において,簡単な入力のみで成果を得るように工夫されている.

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図一1 津波計算システムの機器構成とシステム構成
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図一2 設計潮位解析処理の流れと津波計箕システムの閣係

3. システムの計算理論とデータベース

 津波のように波長の長い波の運動は浅水理論によって表される.浅水理論は,波高Hと波長Lの比H/Lおよび水深hと波長の比h/Lがいずれも小さいものとして,近似的に導かれる.この近似では,圧力は静水圧分布となり,水平流速は鉛直方向に一様な分布となる,津波の数値計算は,海底から水面までを鉛直方向に積分した非線形長波の連続式と運動方程式で行う.
 本計算システムの数値モデルは,空間差分にスタッカード格子を,時間差分にリープ・フロッグ法を用いる.
津波数値計算は,海底の断層運動に伴い海面に生ずる水位分布を初期条件として与え,その後の津波の挙動を追跡する手法である,初期の海面水位分布は,断層パラメータを用いる。断層変位モデルにより計算された海底面の鉛直変位分布から推定される,断層パラメータは,断層面の開始位置(緯度・経度)・走向・傾斜角・すべり方向・すべり量・長さ・幅・上縁の深さがデータベースに保管されている.
 本計算システムで用いるプログラムは,決められた書式のコントロールデータを編集するだけで,自動的に作成され,入力データも同時に作成される.
すなわち,編集された1つのコントロールデータから,計算に必要なプログラムと,計算格子・格子点水深データ,計算範囲・格子間隔・時間間隔・断層パラメータなどの入力情報が自動的に連結し,計算準備が完了する.使用する計算格子・格子点水深は,前述した専用データベースに収録されている.既往津波の計算では,津波番号を指定すれば,断層パラメータデータベースから入力データ化される.メインプログラムの作成は,計算の流れに沿って種々のサブプログラムを連結する方式が採用されており,多領域の同時接続計算を行う場合は,領域数分だけサブプログラムが列挙される.このため,領域結合に合わせてメインプログラムを作成する必要がある.
 図一3は,南関東海域を対象とする津波数値計算のメインプログラム作成のためのコントロールデータの例である,コントロールデータにより与える情報は,計算層数,層厚(各層の下端の水深で上層から順に与える.単層または最下層の水深は,1.O×10^{10}mとする.),計算領域条件(計算基準点の緯度.経度,領域数,各領域のx,y方向の格子数,格子間隔,領域左下の計算基準点からのx,y距離,領域の最低水深),計算方法(線形,非線形,非線形+遡上),領域結合条件(結合領域数,結合する領域の番号),計算時間条件(終了時間,時間間隔,結果の出力間隔,代表地点の出力間隔),対象津波条件(地震断層パラメータのデータベース登録番号・大正12年関東地震津波は,19230101),入力ファイル名(水深データ,格子データでデータベースの登録名を与える.),出カファイル名(代表地点経時変化,水位分布,流速分布,第一波の到達時刻,最高水位,初期水位,地盤変位後の水深)である.
 図ー4は,計算対象とする南関東沿岸の計算格子と格子点水深から描いた等深線を表し,東京湾内については拡大して表した.格子間隔は,最大3.6kmで,沿岸部に近づくとともに200mにまで地形近似精度を上げている,また,東京湾内と陸域は,50m格子で地形近似を行っている.

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図一3 数値計算プログラムを自動生成するコントロールデータ
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図一4 計算領域の構成と水深データ(右上図は南関東外洋領域,右下図は南関東沿岸領域,左図は東京湾領域)

4. 津波数値計算の計算精度(再現計算)

 大正12年関東地震は,震源が小田原市付近で,関東平野を中心に死者99,331人,行方不明者43,476人という大規模な災害をもたらし,関東大震災として有名なものである.
この地震は,2次災害の火災に注目が集まり,地震に伴い発生した津波への関心は,小規模な被害のために薄かった.
しかしながら,津波高さは,熱海で12m,房総半島先端の相浜で9m,伊豆半島岡田で12mとなり,相模湾沿岸や房総半島先端で局所的にはかなり高い痕跡値が記録されている.3)
 図一5は,南関東海域を対象に,大正12年関東地震津波発生時の最高水位の分布を計算した結果である.計算は,地震発生後2時間まで行た.発生した津波高さが高い地域は,伊豆半島から相模湾沿岸と房総半島先端部に集中し,東京湾内は1.Om以下となっている,東京湾内での興味深い点は,湾の長軸を振動方向とする周期70〜80分程度の副振動と・湾口に近い海域の短軸を振動方向とする周期15〜20分程度の副振動が生じている点である.一般に,東京湾のような閉鎖性水域は,津波の第一波よりも,その後に発生する複数の周期の湾内振動の重ね合わせによって最高水位が発生するため,その発生起時と最大値の分布は複雑になる.
 図一6は,大正12年関東地震津渡発生後に各地で測定された津波痕跡高の記録と,計算から求められた最嵩水位とを比較し,追算精度を検証したものである,比較地点は,伊豆半島下田から相模湾沿岸・三浦部三島・東京湾・房総半島先端の相浜を経て,房総半島東岸の小湊に至るまでの沿岸である.黒丸は実測痕跡高を表している.
ただし,同じ測定地点でも,測定者と測定箇所の違いにより痕跡高が幅を持つため,縦棒で痕跡高の最高値と最低値,黒丸でその平均値を表す表現法を採用している.計算は,Scholz & Kato(1978)により提案されている断層モデル4)をそのまま使用した場合と,より痕跡高を整合するように修正を加えた場合と行った,断層モデルの修正は,断層の走行・長さ・幅は同じで,ずれ角を30°から45°に変化させてScholz & Kato(1978)モデルより縦ずれ量を大ぎくしたものである.図一6から判断すると,修正モデルによる計算結果は,伊豆半島から相模湾西側における津波高さの再現性が向上している.

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図一5 大正12年関東地震津波の最高水位の空間分布(再現計算)
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図一6 現地調査による痕跡高と計算値との比較

5. 南関東における津波の挙動(予測計算)

 津波現象におひて防災上重要な点は,最高水位と第一波の到達時刻である.北海道南西沖地震津波の場合は,波源域に奥尻島が位置していたために,5分以内で第一波の最高値が島に来襲し,十分な避難活動を行うことすらできなかった.大正12年関東地震津波の場合に当てはめると,やはり同様なことが言える.相模湾一帯と東京湾南部海域は波源域におおわれ,地震発生直後から既に水位がかなりの高さとなっている.
図一7は,津波第一波の最高水位発生縛潮であるが,伊豆半鳥,房総半島で地震発生後約5分以内,東京湾湾口で約5〜10分となり,地震発生後まもなく危険な状況が生ずることが推定される.防災計画上,留意すべき事項となるであろう.
 図ー8は,津波において浸水が想定される箇所の一例を表したものである.浸水区域は,伊豆半島,相模湾の一部,浦賀水道沿岸,房総半島先端の最高水位が高い区域に限定されており,東京湾内では浸水は発生していない.
 東京湾の設計津波が,大正12年関東地震津波の規模である限り,湾内の被害はそれほど大きくはならないであろう.しかしながら,次に東京湾に来襲する津波が,全く同じものである保証はない.設計津波として,いかなる断層モデルを設定するかは,今後の防災計画上,困難ではあるが重要な研究課題になる.

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図一7 大正12年関東地震津波発生時の津波第一波の最高水位発生時刻の空間分布(予測計算)
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図一8 大正12年関東地震津波発生時に想定される浸水区域の例(予測計算)

6. おわりに

 本研究においては,東京湾を中心とする南関東沿岸の津波防災計画の基礎資料作成を目的として,新たに開発した津波計算システムの概要を述べた.主要な結論は以下のとおりである.

 1.従来,膨大な労力と時間を要した津波数値計算における入カデータ作成から数値計算・結果の解析に至る一連の処理を,迅速に行うことが可能な総合的な数値計算システムを開発した.
 2.南関東津波計算システムは,東京湾・南関東沿岸を対象として開発されたものである,しかしながら,システムを構成するサブシステムとデータベースは汎用性の高いものであり,日本全国の沿岸に適用可能である.
 3.適用事例として,大正12年関東地震津波発生時の追算を行った.最高水位分布等の情報は,東京湾の設計潮位ならびに防災計画を検討する上の基礎資料となる.

 2.の結論で述べたように,今回開発した津波計算システムは,計算格子・格子点水深データベースの整備を行うこにより,全国沿岸に適用することが可能なものである,今後,津波の危険区域として想定される地域について,地区別システムの開発を精力的に行うことが必要である.また,今回の南関東における適用事例は,既往最大に相当する大正12年関東地震津波であった.今後は,災害予測の利用価値を高める上でも,設計津波を対象とする計算を行い,より積極的な防災計画の基礎情報を作成することが望まれる.そのためには,設計津波(設計波源モデル)の設定方法に関する研究とモデル断層パラメータのデータ整備を行う必要がある.
 近い将来,開発した津波計算システムを用いて,日本全国の津波被害区域と被害規模の分布が防災計画立案における情報として役立つことを願うものである.

謝辞

南関東津波計算システムの開発にあたり,運輸省港湾技術研究所波浪研究室の平石主任研究官より津波計算における丁寧な指導と貴重な助言を頂いた.運輸省第二港湾建設局横浜調査設計事務所の関係各位には,データ収集の便宜を図って頂いた.また,(株)エコー第一技術部の小沢保臣氏の協力を得た.ここに記して謝意を表す.なお,水深・地形等のデータベースは,海上保安庁水路部の数値情報(JBRD)と国土地理院国土数値情報を利用した.

参考文献

1)今村文彦・後藤智明:差分法による津波計算の打ち切り誤差,土木学会論文集,vol.375,pp241-250,1986.
2)長谷川賢一・鈴木孝夫・稲垣和男・首藤伸夫:津波の数値計算における格子間隔と時間積分間隔に関する研究,土木学会論文集,Vo1.381,pp,111-120,1987,
3)渡辺偉夫:日本被害津波総覧,東京大学出版会,1985.
4)佐藤良輔編:日本の地震断層パラメータ・ハンドブック,鹿島出版会、pp.146,1989.

第25回水理講演会論文集 1981年2月 陸上大障害物群の津波氾濫時における抵抗 Effects of large obstacles on tsunami inundation 東北大学 工学部 正会員 ○後藤智明 東北大学 工学部 正会員  首藤伸夫 東北電力 土木部 正会員  笹川稔郎

1. 序

 陸上に打ち上った津波の挙動については,洋上の津波の伝播と同様に,かなり信頼に足る計算手法が開発され,また使用されている。しかし,防波堤や防潮堤からの津波の越流や,市街地の家屋密集地帯を通過する津波に関しては,障害物付近における津波の水位上昇とか流速分布の検証が困難なこともあって,未だいろいろな問題点が残されていることも事実である。
 このような障害物を通過する津波を調べるためには,まずはじめに障害物の流水抵抗を明らかにする必要がある。本研究では,陸上での障害物として市街地の家屋群と防潮堤を取り上げ,これらの流水抵抗を詳細に調べることにした。
 陸上に打ち上った津波の流れは非定常性の強い流れであり、上記障害物の抵抗則は,非定常流を用いた水理実験により定めるべきであろう。しかし,非定常流の実験では,測定精度や解析の困難さなどに解決しがたい問題がある。そこで本研究では,まず定常流による水理実験により流水抵抗法則を明らかにし,これを数値計算に組み込むのに便利な形にまとめることを第一の目的とする。次に数値計算を用いて,この抵抗則の非定常性への適用性に関して検討する。

2. 家屋等大障害物群の流水抵抗

 (1) 水理実験
 実験には長さ16m,高さ0,6m,幅0.8mの両面ガラス張りの二次元水路を用いた。大障害物群の模型は9cm×9㎝×75㎝と18㎝×18㎝×75㎝の2種類の角材を用い,チリ地震津波来襲時の宮城県石巻市市街地の家屋面積占有率とほぼ同率となるように水路に配列した。模型の配列は流れ方向に規則的なものとし,その面積占有率を表一1に示す。石巻市の家屋面積占有率は30,6%である。
 実験では模型の流れ方向設置列数を2列から5列の4種類,流量を4種類として,都合64ケース実施した。水位は主に,ポイントゲージを用いて測定した。流量が大きくなると,水路内に横振動が発生する例もあり,このような場合にはサーボ式水位計を用いた。流量は水路末端の三角堰を使用して計測した。
 (2) 結果と考察
 このような津波の大障害物群間の流況について,最近,細井・坪田2)により石油タンク群を通過する段波状津波の模型実験結果が報告されている。彼らの取り扱いの特徴は,障害物群を一体なものとみなしていることと,段波状津波の通過による障害物群前後の水位のピークはほぼ同時刻に起こることから定常流解析を行なっていることである。この結果,問題はD’AubulssonやKindsvater・Carter3)の単一障害物のエネルギー損失の評価と類似したものとなる。すなわち,縮流を考慮した連続の式とベルヌーイの式から流量係数あるいは障害物の抵抗係数を求めるのである。
 先に,著者ら4}もこの方法で大障害物群を一体と考えた場合の流量係数Cを求めたが,その一例を図一1に示す。この取扱いでは流量係数Cは障害物群の縮流比,\beta=b/B,障害物の列数流れのフルード数などに関係があることがわかるが,ばらつきが大きく流量係数を一律に定めることは難しい。
 そこで,著者らは流況が図一2のようになることから判断し,流れを大きく3つの領域に区分して考えることにした。領域1は障害物群の最前列で,縮流による損失が卓越している所である。領域3は障害物群の最後列で急拡幅による損失が大きい所である。領域1と領域3の間を領域2とする。この領域では主流はジェット状に流れ,障害物間に存在する渦領域との接触面を通じて行なわれる運動量交換が主たるエネルギー損失の元となる所である。この領域2では他の領域に比べ損失水頭は小さい。
 領域1は先に述べたD’Aubuisson風の取扱いが可能である。
図一2に示す記号を用いて連続およびベルヌーイの式は,
(1)
となる。ここでC_cは縮流係数,\delta E_1は障害物によるエネルギー損失を表わす。いま,このエネルギー損失を\delta E_1=K_e V^2_0/2gで表わすと,流量係数Cは式(1)から
(2)
と導びかれる。ここで\beta=b/B,r_0=H_1/H_。,F_{r_0}^2=V^2_0/gH_0である。式(2)を用いて実験値を整理したものが図一3aおよび図一3bである。流量係数は,矩形状に関してD’Aubuisson3)が求めたC=0.8に近い値となっているが,縮流比\betaとフルード数F_{r_0}に関係することがよくわかる。実験値をF_{r_0}/\betaなるパラメータで整理すると図一3bとなり,領域1に関する抵抗則は,
(3)
で表わすことができる。
 領域2のエネルギー損失は主流のジェットと渦領域間の運動量交換が主たる原因と考えられるが,粗面乱流との類似により,摩擦損失型の取り扱いをすることができよう。図一2の記号を用いると,連続およびベルヌーイの式は,
(4)
となる。エネルギー損失をE_2=K_2(l/H)(V_1^2/2g)で定義すると,式(4)から抵抗係数K_2は,
(5)
で表わされる。ここで,\gamma_1=H_2/H_1.F_{r_1^2}=V_1^2/gH_1である。
式(5)を用いて実験値を整理したものが図一4である。領域2はジェット流と渦領域間の運動量交換に基づく損失であるので,渦領域の大きさを表わす\beta=m/Bや\delta=S/Bにも関係すると思われるが,図からはその相違が判断できない。故に,本研究の範囲においてはフルード数F_{r_1}との相関から,
(6)
(ただし,測定範囲は0,32〈F_{r_1}<0.81)なる抵抗則を採用することにした。
 領域3は主として急拡幅による損失であり,図一2の記号を用いると,連続およびベルヌーイの式は,
(7)
とおける。いま損失を\deltaE_3=K_pV_2^2/2gとおくと,抵抗係数K_pは式(7)から,
(8)
で表わされる。実験結果を式(8)で整理すると,図一5aおよび図一5bとなる。図一5aから判断すると領域3の抵抗係数K_pは縮流比\betaと流れのフルード数F_{r_2}に主として関係することがわかる。パラメータ\beta^2F_{r_2}を新しく採用すると実験結果は図一5bとなり,領域3の抵抗則は,
(9)
で表わされる。

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式(1〜9)
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表ー1 実験諸元
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図−1 障害物群を一体として考えたときの流量係数
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図ー2 流況図
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図ー3 領域1の流量係数
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図一4 領域2の抵抗係数
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図一5 領域3の抵抗係数

3. 防潮堤の流水抵抗と越波係数

(1) 水理実験
 水理実験には長さ7m,高さ0.5m,幅0.3mの両面ガラス張りの二次元水路を用いた。水路の末端には流量を測定するため量水槽を設けている。防潮堤の模型には高さが10,15,20,25㎝の4種類,堤長が2,5.5㎝の2種類の合計8種類の長方形断面の堰を用いた。実験は各模型について単位幅当りの流量が50cm^2/sから250cm^2/sの5種類とした。越流水深はポイントゲージを用いて,堤前面から1,10,100㎝の3ケ所で測定した。越流後の流動に関しては,図一6に示す水クッションに関係するH_s,H_dそしてL_dを測定している。
2. 結果と考察
従来,越流堰の研究は,開水路の流量測定が主目的であったため,ほとんどのものが上流部の静隠な地点での水位すなわち越流水深と流量を結びつけていた。その代表的な例は本間の式5)である。しかし.数値計算を前堤に考えると,堰から上流の水面は低下背水曲線形になり,越流水深の定義が難しい。非定常流の場合は更に一層複雑となろう。
 そこで本研究では,この防潮堤からの越波の問題を一種の抵抗則として表現する方法と越流水深のかわりに比エネルギーを用いた越流公式による方法の2種類の取り扱い方について検討することにした。そして,簡単なため完全越流だけを扱う。
 越流水深hと単位幅流量qに関する実験結果の一例を図一7に示す。図中実線は本間公式であり,本間公式の適用範囲h/l<0.5以外でも良好な近似を表わすことがわかる。
本実験結果と本間公式との最大相対誤差は25%であった。
 まずはじめに,堰の流水抵抗について考える。ここでは,完全越流を考えているので,堰上のどこかで限界水深が生ずる。いま図一6に示すように堰より上波側の2点A,Bと限界水深となる点Cに連続の式とベルヌーイの式を適用する。ここで,B点はA点に近い一地点で,この地点で流れは堰頂より上側の部分に全流量が集中するものと仮定する。この結果
(10)
となる。ここで,H_A=H_B+H_wであり,\deltaE」はB点で堰頂から下は死水域などとなり堰頂より上の水深で全流量が流れると仮定した場合のエネルギー上昇を意味する。\deltaE_Wは堰の流水抵抗である。いま,\deltaE」+\deltaE_wをK_dV_c^2/2gと仮定すると,式(10)から流量係数C_wが
(11)
と求めることができ,仮想のB点の値を用いることにより,堰の高さは流水抵抗に考慮する必要がなくなる。
ここで,\gamma_B=H_C/H_B,F_{r^2B}=V_B^2/gH_Bである。式(11)で実験結果をまとめると図一8のようになる。堰の流水抵抗係数K_wはB点のフルード数F_{rB}と良い相関があることがわかる。図中星印は本間の式5)に相当する値である。抵抗則は
(12)
となる。
 次に,比エネルギーを用いた越流公式について考える。先に述べたように数値計算に越流公式を組み込むことを考えると,従来の越流公式では越流水深をどの地点で採用するかが問題となる。しかし,比エネルギーを用いた越流公式であれば,接近流速水頭を考慮していることになり,このような問題は回避できる。いま,単位幅流量qと比エネルギーE=V_A^2/2g+H_Aとの関係が越流係数Kを用いて
(13)
で表わされるものとする。越流係数Kについて先に定義したフルード数F_{rB}で実験値を整理すると図一9となる。図によると,越流係数は堰の高さ,堤長,測定点などには一切関係せず,F_{rB}だけで表わされることがわかる。しかも,越流係数は
(14)
となる。
 最後に,越流後の水の流れについて検討する。完全越流の流れでは自由落下する水脈が水路床に衝突して,水脈は上下流へ分流する。このため図一6のように水脈落下点の上流側と堰との間に水クッションが形成される。この水クッションによる水脈の拡散のため,下流に流出する流れは流速が大幅に低減されエネルギー損失がおこる。本研究では,この越流後の水クッション形成に伴なうエネルギー損失に関しても一種の抵抗則を用いて評価することを考えた。
 限界水深となるC点と水脈落下点直後のD点について連続の式とベルヌーイの式を適用する。すなわち
(15)
である。ここで,\deltaE_Dは水クッションによるエネルギー損失を意味し,\delta E^」_Dは堰頂から水路床までの水流の自由落下に伴なう位置エネルギーの損失で\delta E^」_D=H_w+H_C-H_Dで表わされる。いま,\delta E_D=K_D V^2_D/2gとおくと,抵抗係数K_Dは
(16)
となり,簡単な形で表わされる。このような落下水流に関してRand6)は落下指数D(q^2/gH_w^3)を用いて
(17)
なる実験式を導びいている。式(17)の適用範囲は下流水深H_EとH_Dの路水の対応水深H_JによりH_E<H_Jで与えられる。このRandの式と本実験結果とを比較したものを図一10に示す。本実験の結果は多少ぱらつきがあるが式(17)で近似的に表現可能である。
 残された問題は,落下水の飛距離L_Dと水クッションの水深H_sであるが,これについてもRandが
(18)
なる実験式を導びいている。このRandの式と本実験を比べたものも図一10に示している。なお,H_sに関しては安芸7)の実験結果とも比較している。本実験結果はH_sに関してはBandの式よりも大きめな値となり,L_Dに関しては小さめな結果となっているが,測定精度などの問題もありここではRandの式をそのまま採用する。

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式(10〜18)
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図一6 流況図
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図一7 越流水深と越流量との関係
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図一8 越流に関する抵抗係数
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図一9 比エネルギーを用いた越流係数
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図ー10 越流後の水理量

4. 抵抗則の非定常流の応用

 (1)数値計算法
 数値計算の支配方程式は開水路の不定流の方程式とする。計算はleap-frog法による。一欠元漸変流に関する連続および運動量の式はManningの抵抗則を導入すると
(19)
で表わされる。ここで,Aは水深Hに対応する断面積であり,nはManningの粗度係数である。
2.3.で求めた抵抗則はそれぞれ異った形にまとめられているので,ここでは各抵抗則をManningの粗度係数の形に書きなおすことを考える。すなわち,等価粗度を用いるのである。
 大障害物群の流水抵抗を例にとって考えてみる。式(19)の運動量方程式において抵抗頂は,I_eをエネルギー勾配と考えると,gAl_eの形になっている。従って,大障害物群の領域1の流水抵抗によるエネルギー勾配は,領域1の長さをl_1とおくとI_e=\delta E_1/l_1であるので,等価粗度n_eは
(20)
となる。
 (2) 家屋等大障害物群の非定常計算
 非定常流を用いた大障害物群の流水抵抗に関する水理実験は長さ100m,幅1m,高さ0.5mの鉄筋コンクリート製波動水槽を用いた。模型の配置は定常流と同じ規則的なものとし,流れ方向に3列とした。B=33㎝,b=15㎝,m=18㎝,s=15㎝であ
る。実験では,静水時の水深を20㎝とし,水位はすべて抵抗線波高形を用いて測定している。
 数値計算は,水路の断面を幅33mの矩形断面とし大障害物間では幅を15㎝とした。大障害物間では,各領域に関して式(20)のような等価粗度を考えて計算した。
 このような非定常流を用いた水理実験と数値計算との比較を数例実施したが,その一例を図一11aから図11-gに示す。この計算例は数値計算のメッシュ間隔\delta xを6㎝にとったものである。図a、bは大障害物前後の波形および流速分布を示す。また,図Cは大障害物前方2mの地点での波形記録で数値計算の境界条件としたものである。図bから図gは各領域における波形記録の比較をしたものである。
実線は実測値,一点鎖線は抵抗則を用いた数値計算結果である。なお,破線は大障害物の形状を考慮した平面二次元計算を試行した結果である。大障害物群の流水抵抗は一種の形状抵抗であるので,比較的細かなメッシュを用いた平面工次元計算を実施すれば,大障害物による形状抵抗は向も考える必要がない。この計算例はメッシュを3㎝の正方形にとっている。
 実測値と抵抗則を組み込んだ一次元計算とを比較すると,計算値の方が多少波高が小さくなっており最高水位に関して多少位相がつれているが,総じて比較的良好な一致を示している。二次元計算は一次元計算結果より小さめな水位上昇となり,障害物の形状抵抗を表現するためにはより細かなメッシュを採用する必要がある。なお,二次元計算は一次元計算に比べ,この例で60倍の演算時間を要した。
 (3) 防潮堤の非定常越流計算
 非定常流を用いた越流に関する水理実験は定常流の越流の実験に用いた水路を使用した。造波は上流端バルブの急開,急閉による。実験は堰上流2mの地点と堰前面および堰背後の水クッション高を測定している。
 堰の流水抵抗は特殊な方法で定めたので,数値計算法についてもそれなりの工夫を要する。leap-frog法の特徴を生かし,堰上の限界水流となる地点に流量計算点を配置し,その1ステップ上流側の流量計算点との間で水理実験で定めた抵抗則を用いるのである。この場合,上流側の計算点での流水断面積Aは堰頂より上部の水深に対応するものとする。抵抗則は大障害物の計算と同様にして等価粗度を用いる。運動量方程式の水面勾配の頂は,堰頂付近で背水低下曲線のように大きな曲率となることから考え,2次曲線近次の計算を採用した。
 比エネルギーを用いた越流公式を用いる方法は,堰に流量計算点を配置し,それより1ステップ上流の計算点での比エネルギーを計算し,越流式(14),(15)を用いて計算する方法を用いた。
 越流後の計算については,H_E<H_Jの範囲でRandの式を用いて水脈の飛距離L_DとH_Dを定め,L_Dに対応する計算点で式(17)から定まる等価抵抗を用いて計算を行なった。
 非定常越流に関する水理実験と数値計算との比較の一例を図一12に示す。図aは計算に用いた境界条件を示す。
図bは堰直前の波形変化を表わす。実験値との対応は各方法良好な一致を示す。図Cは水クッションの水深に関して比較したものである。実験値に比べ多少低い水深となっている。なお,越流量は実験値を1とすると,抵抗則による方法が1.2,比エネルギーを用いた越流式による方法が1.1,本間の式による方法では1.3となった。差は大きいものではない。

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式(19〜20)
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図一11 大障害物の非定常計算例
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図一12 越流の非定常計算例

5. 結論

 本研究では,大障害物群の流水抵抗に関して,水理実験と数値計算を通じ検討を実施したが,主要な結論は以下のとうりである。
 1.市街地などの大障害物群の流水抵抗は,最前列,中間,最後列の3つの領域に分類すると,縮流比やフルード数を用いて整理でき,また簡単な式で表わすことができ,この抵抗則を数値計算に組み込むことにより,非定常流に関しても比較的精度の良い計算が可能である。
 2.防潮堤からの越流に関しては,従来よく用いられて来た本間の式よりも比エネルギーを用いた越流式を用いた方が,精度もよい。また,越流後の水クッション形成に伴なうエネルギーの損失も,本研究で示した抵抗則を用いた方法によると,計算が可能である。
 本研究の一部は文部省科研費(代表東京大学教授堀川清司)による。

参考文献

1)後藤智明・首藤伸夫:各種津波遡上計算法と波先端条件の比較,第27回海講,pp.80〜84,1980.
2)細井正延・坪田幸雄:陸岸に遡上した津波の障害物付近の流況,第27回海講,pp.85〜89,1980.
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6)Rarld, W:Flow geometry at straight drop spillways, Proc. ASCE, Vol 81,1955.
7)安芸周一:アーチダム中央越流型洪水吐水たたきのデフレクター効果に関する研究,電力中研技報,Vol 13,1963.

水工学論文集,第45巻,2001年2月 高速演算性と精緻性を有する 浸水域予測計算システムの開発 DEVELOPMENT OF PREDICTION SYSTEM OF FLOODING WITH HIGH-SPEED AND ACCRACY 安田浩保1・白土正美2・後藤智明3・山田正4 Hiroyasu YASUDA, Masami SHIRATO, Chiaki GOTO and Tadashi YAMADA 1学生会員 東海大学大学院 工学研究科土木工学専攻 (〒259-1292 神奈川県平塚市北金目1117) 2建設省関東地方建設局常陸工事事務所調査第1課長(〒313-8555 茨城県常陸太田市木崎一町700-1) 3正会員 工博 東海大学教授 工学部土木工学科(〒259−1292 神奈川県平塚市北金目1117) 4正会員 工博 中央大学教授 理工学部土木工学科(〒112-8511 東京都文京区春日1-3-27)

Abstract

Accurate data of the ground elevations is required in the analysis of inundation flows. In order to represent accurate topography, we have to use fine grid. But the fine numerical grid increases in the number of the grids. So, high-speed calculation is difficult. In this paper, we developed the new approximation method of ground elevation, which is called 「Adaptive grid for the topography」. The method has flexible expression to approximate to the ground elevations, and decrease the number of the grids.
Next, we developed the application system for the calculation results. The system is used by geographic information system, provides the many functions. The functions are viewer of the calculation results, summing up the square of the flooded area and flooded house, and finding the route of refuge.

Key words: numerical forecast model, flood-inundation flows, Geographic Information System, adaptive grid for the topography

1.はじめに

 我が国の都市部の多くは沖積平野に存在するため,洪水氾濫による甚大な被害を受ける危険性に絶えず晒されており,特にここ数年,各地で洪水氾濫による被害が頻発している.
 洪水氾濫による被害を防御あるいは最小限に抑制するために,築堤などのハード的な洪水防御対策が進められているが,いまだ十分とは言えない.それらの対策を補完するために近年では,洪水氾濫が発生した場合でも被害を最小限にとどめられるように,ソフト的な対策を同時に進めるケースが増えているようである.その一例として洪水ハザードマップの作成があり,これは平常時より流域住民の水害意識を啓発することと災害時の円滑な避難・水防活動支援を目的としている.これらの災害ポテンシャルを把握するための資料作成には,数値シミュレーションを用いた洪水氾濫現象の挙動解析に関するこれまでの研究成果などが利用される.
 既往研究は精緻性に着目した例が多く,前述のように利用されることが多い,しかし,洪水時に浸水域予測を行うことを目的とした実用性や即時性を重視する計算モデルの研究は,著者らが知る限りほとんど行われていないようである.
このようなモデルでは,洪水予警報の発令と同時に確度の高い予測情報の下で予測計算が行え,被害低減に関する種々の対策に資すると考えられる.そこで,著者らは洪水時に浸水域予測計算が可能な実用性に着目したすなわち高速演算性,精緻性をともに有する計算モデルの開発を行ってきた1).
 著者らが提案するモデルでは,適切な境界条件や細分化された計算格子を設定することで,高速演算性,精緻性を両立した計算を可能とした.しかしながら,より精度の良い氾濫流の伝播予測を行うためには,
 1.地形形状の近似方法
 2.線状境界の考慮
 3.用排水路網の考慮
の3つの課題について解決策を検討する必要性があった.
本研究では,これらの課題のうち地形近似の方法と線状境界の考慮の方法について次のように考えた.
 地形形状の近似度は,氾濫流の伝播予測を行う場合,計算精度に大きく影響する.このため,解析対象となる地形の特徴を適切に考慮できるような十分に細分化された計算格子を用いることが望ましい.しかし,一般に高密度な標高情報の入手が困難なこと,あるいは緻密な標高情報を利用した計算格子の構築が可能であっても計算時間や計算機容量の都合などで,必ずしも計算対象に対して適切な計算格子が用いられるとは限らない.これら制約条件のもとで,前述モデルでは計算格子の間隔を既往研究や業務などで用いられてきた数百メートルより細分化することにより,地形形状の近似度の向上を試みた.
 しかし,上述のような矩形格子では,解析上無視することの出来ない微細な地形形状を考慮する場合,対象領域全体の格子長はその微細な地形形状が考慮可能な格子長に束縛されることとなる.その結果,計算格子数が膨大となるため,高速演算は困難となる.このように,矩形格子では複雑な地形形状の近似を効率的でかつ精度良く行うことは難しい.これらの理由から,精度の良い浸水域の予測計算を行うためには,地形形状の有効な近似方法について検討が必要である.
 これら氾濫流伝播の予測計算における地形近似の問題を解決するために本研究では,"地形適合格子"を導入した.
地形適合格子は,従来までの矩形の一様格子と異なり,地形形状に合わせて自由に計算格子の構成を可能とする新しい離散手法である.地形適合格子のデータ構造は図一1に示すように,標高値を格子辺で囲まれた範囲(以下セルと呼ぶ)の代表標高と,各格子頂点では道路や盛土などの線状境界の標高値をそれぞれ保持できるように定義した.これにより洪水氾濫の伝播に影響を及ぼすと考えられる道路アゼなどの線状境界を格子辺に考慮できる.
 地形適合格子による地形形状の離散化では,対象領域内に耕作地や市街地など異なる土地利用が混在している場合でも,それぞれに適切な形状の計算格子を適用することが可能である.言い換えれば,耕作地などの無境界でかつ標高変化の小さい地形にはある程度大きな格子を適用し,市街地などのように複雑な地形区分がなされている場合では小さな格子を適用できるということである.このように同じ計算領域内において異なる格子長および形状による格子分割が可能であるということは,地形形状の近似度を格段に向上させるだけでなく,ある程度細分化された矩形格子を用いた場合よりも効率的な格子分割となり,格子数を大幅に減少させられることを意味する.そして,この格子数の減少は計算時間の短縮に大きく寄与する.
 つぎに,河川水位が護岸高に及ばないにもかかわらず,用排水路網が氾濫水の伝播媒体となり浸水被害を引き起こすことがあると考え,本研究では,用排水路網を高速演算に適合した計算方法により考慮した.前述モデルでは,用排水路網が考慮されていないことから,用排水路網の影響を大きく受ける領域では,痕跡記録に比べ計算結果が過小に評価される傾向にあった.
 また,本研究では,モデル妥当性の検討のために前述までの計算モデルを実流域へ適用した.そして最後に,GISを用いたシステム化を行い,計算モデルから得られる予測計算結果の高度利活用に関する検討を行った.

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図一1 地形適合格子の標高データ構造

2. 数値モデル

(1)河川流計算
 河川水位の予測計算を精度良く行う場合,不定流モデルが用いられることが多い.著者らは不定流不等流いずれのモデルを用いた場合でも,洪水氾濫に関わる高水位帯の計算では,その計算結果の差異は小さいことを示した1).
 これに従い,本研究では式(1)に示す不等流モデルを適用し,その計算時間の間隔は1時間とした.

 ここに,\eta:水位(m),s:河川縦断方向の水平座標(m),u:河道平均流速(m/s),g:重力加速度(m/s^2),n:Manningの粗度係数(m^{-1/3}s),R:径深(m)である.

(2)氾濫流計算
 本研究では,式(2)〜(4>で記述される線型長波理論によって氾濫流の伝播予測を行った,

 ここに,\eta:水位(m),t:時間(s),x,y:空間座標(m)h:水深(m),M,N:x,y方向の流量フラックス(m^2/s),g:重力加速度(m/s^2),n:Manning(m^{-1/3}s)の粗度係数である.
 既往研究では,線形長波理論に移流項を加えた非線形長波理論(浅水理論)を適用した例が多い.しかし,対象地形の勾配が緩やか場合や,氾濫流の到達時間を厳密に議論しない場合,そして,緩慢な挙動を示し波高水深比が小さいと推測される氾濫流の解析においては,移流項が計算結果におよぼす影響は大きくないと考えられることから,本研究では線型長波理論を適用した.
 また,移流項を無視することで計算時間を短縮することが可能となり,本研究の目的の一つである高速演算性を満たす.ここで,線型長波理論を本研究で提案する"地形適合格子"に適用が可能なように式(2)〜(4)を拡張する.
 まず,連続の式は,隣接セルおよびセル内の排水路との流入出量の総和は水位の時間的変化が等しいと考え,式(5)のように記述する.ただし,ここでは流入を正値と定義する.そして,運動の式は,式(6)と記述できる.

 ここに,\eta:水位(m),t:時間(s),A:セル面積(m^2),\lambda:隣接セルからの流出流量フラックス(m^2/s),l:セル辺長(m),Q:隣接セルからの流出流量(m^3/s),s:空間座標(隣接セルの重心間距離)(m),h:水深(m),g:重力加速度(m/s^2),n:Manningの粗度係数(m^{-1/3}/s)である.
 本研究では,式(5>,(6)の差分式を下記の式(7)〜(9)の通りとした.差分スキームにはleap-Frog法を用いたが,運動式に含まれる摩擦項(式(9))については,計算の安定性を考慮し陰的に解いた.
(7)
(8)
(9)
ここに,\delta t:時間差分間隔,\delta s:空間差分間隔である.
 なお,道路などの線状境界は,それを挟むセル重心で規定される水位と線状境界の高さ関係を図一4,表一1のように考え,式(8)中でその効果を考慮した.

(3)排水路網計算
 高橋らによる等流の式と越流公式を組み合わせた排水路考慮の洪水氾濫解析を行った例2)もあるが,本研究では以下に示す計算法により排水略網の影響を考慮した.
 洪水現象は数十時間に及ぶ長周期現象であり,1時間単位程度の短時間では中小河川を除けば,その水位の時間的変化量は小さいと考えられる。そして,排水路網は河川接続点より河川水位の影響を受け,洪水時に水門樋門などによる河川水の遮断対策を行わない限り,排水路網は氾濫水の伝播媒体となり,堤内地は浸水被害を被る.本研究ではこれらの挙動を,河川水位と排水路水位は連動していると仮定した.すなわち排水路水位(\eta_c)が水路護岸高(Z_d,Z_{\sigma})のいずれかより大きく,かつ排水路水位(\eta_c)がセル水位(\eta)より大きい場合,セル水位(\eta)と排水路水位(\eta_c)が一致し排水路網の影響がセルに及ぶと考え,この条件が成立する場合には式(11)により用排水路網の影響を考慮した,
(11)
 ここに,\eta_c:水路水位(m)を表す.また,水路断面とその断面を包含するセルとの高さ関係を図一5のように定義した.
ただし,セル水位(\eta)が水路護岸高(Z_d,Z_{\sigma})の何れかより大きい場合のセルから排水路への流入は,最大浸水域予測への影響は小さいと考え無視した.

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式(1〜11)
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図一2 連続式の変数定義
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図一3 運動式の変数定義
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図一4 線状境界の取り扱い方法
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図一5 水路断面の高さ関連図
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表一1 線状境界の越流条件

3. 実流域への適用

(1)適用流域の概要
前章で提案した計算モデルを,図一6に示す栃木県北西部に源流を発し茨城県大洗町より太平洋に注ぐ那珂川河口部から10㎞とその支川である澗沼川(那珂川の河口部から0.5㎞付近で合流)の河口部から8.0㎞に適用した.この流域は近年では,1986年,1998年,1999年と洪水に見舞われており,その際の洪水痕跡記録などを再現計算の検証資料とした.図一7は対象領域に地形適合格子を利用し離散化したものである.この格子には,予測計算やその他の目的で利用が可能(例えば4(3)参照)なように表一2に示すとおり格子辺に種別分類のための属性が与えられている.格子数は,著者らが既往報告1)において50m直交格子で那珂川本川流域の計算格子を作成した場合と比べ,約80%もの減少となった.
 図一8は,計算に考慮した水路幅30cm以上の排水路網図である.本計算で考慮した断面総数は1478断面である.

(2)河川流計算
 河道データには,500m間隔で取得される定期横断データを内挿分割して利用した.また,粗度係数は,計画粗度係数を利用し,既往洪水の河岸痕跡が再現可能なように試行錯誤のうえ,9.5〜12.0㎞断面で計画値より若干大きな粗度係数を設定した.また,著者ら1)の示した下流端境界条件の設定法により,洪水時河口部における密度差による水位上昇現象を考慮した.図一9は,1986年洪水の河岸痕跡と計算結果の比較図である.
(3)氾濫流計算
 前述した既往3洪水(1986年,1998年,1999年)に対して再現計算を行った.図一11〜13は1986年,1998年,1999年洪水の再現計算と洪水痕跡との比較図である.いずれの規模の洪水に対しても全域においてかなり精度良く一致していると言える.すなわち十分な精度で予測計算も可能であると思われる.一部,痕跡値では浸水域となっているものの予測計算では非浸水域となることがあった.これは特に1986年洪水の再現計算でみられたもので,地形改変が大きな原因と考えられる.
なお,再現計算を行った既往3洪水が要したCPU時間は,表一3に示す通りである.

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表一2 格子辺の属性分類
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図一6 流域図
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図一7 格子構成図(標高表示)
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図一8 排水路網図
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図一9 再現計算結果(1986洪水)
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図一10 計算結果(浸水深分布図-1986洪水-)
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図一11 計算結果(洪水痕跡・計算値の比較-1986洪水-)
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図一12 計算結果(洪水痕跡・計算値の比較-1998洪水-)
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図一13 計算結果(洪水痕跡・計算値の比較-1999洪水-)
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表一3 計算時間

4. GISを利用した表示・集計システム

(1)予測結果の表示機能
予測計算の終了と同時に予測結果の閲覧を可能とする表示機能を備えた.この機能では,最大浸水域の表示と,1時間刻み(氾濫流の伝播速度は緩やかであることから表示間隔を決定)で予測結果を表示することが可能である.

(2)集計機能
現在表示中の浸水域の総面積と,この浸水域に含まれる浸水建物の戸数集計機能を備えた,このうち,浸水建物の戸数集計機能は,本システムで利用の背景図(河川基盤地図1/2,500準拠ディジタルマップデータ)が地物単位にデータを格納していることを利用したものである.これら建物情報に一戸ごとの床高さ情報を付加する加工を行えば,それぞれの建物の浸水状況(床上/床下/浸水なし)を加味した集計を行うことも可能である.

(3)避難経路の検索
予測計算で得られる浸水域を回避した避難経路検索とその経路距離の算出を行う機能を備えた.図一14はその経路検索例であり,図中の太線が検索結果,中太線が避難経路に利用可能な道路である.
この機能に利用した道路ネットワークデータは,表一2に示した属性のうち幹線道路と道路に属する線分より構築した.このデータは道路の規模による分類がなされているため,それを考慮したより高度な経路検索を行うことも可能である.

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図一14 避難経路の検索例

5. おわりに

本研究で提案する数値モデルを那珂川下流域に適用し,既往3洪水に対して再現計算を行った.その結果いずれの規模の洪水の最大浸水域到達線に関しても精度良く再現され,本研究の目的である高速性と精緻性は満足することができたと考えている.現在のところ浸水域に関する記録は,建設省が行う洪水痕跡調査により取得される最大浸水区域図のみのため,防災計画の策定上で重要となる洪水の到達時間や浸水深についての現地スケールでの検証資料は存在せず,その真値は不明である.今後,氾濫原浸水深データ,洪水到達時間データが取得されることがあれば,これらを検証資料として現モデルにおける問題点の抽出を行い,それらを改善したより高精度な予測モデルの開発を行いたいと考えている.
 また,道路などの線状境界を本研究では,格子辺上に考慮した.しかし,ひとたび氾濫水が堤内地に侵入してくれば,道路は流路と化し,氾濫水の伝播媒体としての役割を担うことになる.本研究のような最大浸水域の予測を目的とする場合では大きな問題とならないが,氾濫水の到達時間などの詳細な議論を行う場合では,ある程度の幅員の道路は,計算格子として考慮する必要があると考えている.このほか,密集市街地に本モデルを適用する場合では,下水道網の考慮も不可欠であると考えている.

謝辞

対象流域の空間データ作成にあたっては,国際航業
(株)空間情報事業部に多大な協力を頂いた.また,東海大学
大学院深澤雅人君,井上直行君には尽力をいただいた.
ここに記して感謝の意を表する.

参考文献

1)安田浩保,後藤智明,山田正;那珂川下流域を対象とした高速洪水氾濫予測モデルの開発河川技術に関する論文集第6巻,pp.309-314,2000
2)高橋保,中川一,篁崇弘;排水路網を考慮した洪水氾濫解析,京都大学防災研究所年報,第31号,B-2,1988
3)建設省関東地方建設局常陸工事事務所;平成10年度8月洪水出水検討業務報告書,1998

(2000.10.2受付)

水工学論文集第45巻2001年2月 2D/3Dハイブリッドモデルによる 構造物に作用する流体力の検討 EXAMINATIONS OF FLUID FORCES ON THE STRUCTURE BY USING 2D/3D HYBRID MODEL 正村憲史1・藤間功司2・後藤智明3・重村利幸4 Kenji MASAMURA, Koji FUJIMA, Chiaki GOTO and Toshiyuki SHIGEMURA 1正会員 修(工) 防衛大学校助手 建設環境工学科(〒239-8686 神奈川県横須賀市走水1-1O-20) 2正会員 工博 防衛大学校助教授 建設環境工学科(〒239-8686 神奈川県横須賀市走水1-1O-20)  正会員 工博 東海大学教授 工学部土木工学科(〒259-1207 神奈川県平塚市北金目1117) 4正会員 Dr.Eng 防衛大学校教授 建設環境工学科(〒239-8686 神奈川県横須賀市走水1-1O-20)

Abstract

The fluid forces acting on the structures are examined by using 2D/3D hybrid model in which the conventional 2D model is adopted for the calculation in the wide region located far from the structures. The 3D non-hydrostatic pressure numerical model is used in the limited region adjacent to the coastal structures where the three-dimensional motion could not be neglected anymore. The results of the model tests are compared with the numerical results obtained by both the present hybrid model and the conventional 2D model, to examine the validity of the present model. As a result, it is verified that the present hybrid model reduces a calculation load significantly comparing to the calculation load by using 3D model for the whole domain. Though this model reproduces the characteristics of the three-dimensional complicated flow around the opening of breakwater that cannot be reproduced by the conventional 2D model. The usual method cannot give sufficiently accurate results for a flow around structures.

Key Words : Numerical simulation, 2D13D hybrid numerical model, Breakwater, Fluid forces

1. はじめに

 現在,津波対策として各地で潮皮防波堤が建設されている.津波防波堤は,通常の波浪とともに津波から湾内を防護することを目的としており,防波堤により湾口部を締め切ることで,湾内への津波の流入を軽減させている.さらに開口部に潜堤を設置することにより締め切り効果を高めている.しかし,津波の来襲時においてその開口部は著しい狭窄部となり,昭和8年の三陸津波と同程度の津波では8m/sの強い流れの発生が予想され1),通常の波浪よりもはるかに大きな流体力がかかる.よって防波堤建設の際にはマウンド捨石や開口部潜堤の流れに対する安定性などを検討する必要がある.そのためには防波堤周辺の複雑な流況を把握しなければならない.従来から用いられている津波の数値計算モデルは平面2次元モデルであり,圧力分布が静水圧に近く,水平流速が鉛直方向にほぼ一様であるとの仮定のもとで誘導された支配方程式を用いている.したがって,構造物周辺など,その近似が成立しない場所への適用性に問題があり,開口部周辺のような3次元的な複雑な流況を計算できない.そこで,著者らは圧力の静水圧分布を仮定せずに運動方程式をそのまま用いる津波の3次元数値計算手法を開発した2).この計算手法では微分の階数を増やさず,強非線形性・強分散性を考慮できる。しかし,3次元解析法では,計算時間及び計算容量が平面計算と比較して莫大なものとなることが,実用化する上での問題点であった.この問題を解消するため,3次元計算は構造物周辺など3次元性が問題になる領域だけに限定し,その外側の部分は静水圧近似を用いた平面計算を行う,実用的な3次元と2次元の混合計算法(2D/3Dハイブリッドモデル)を用いる.この計算より流れの3次元性を考慮し,防波堤に作用する流体力の影響や防波堤の効果について調べる.また,本計算法の適用性を検討するため,防波堤周辺における津披の挙動に関する水理模型実験を実施し,水理実験の結果と本計算手法による結果,および従来よく使用されている解析法である非線形長波理論を用いた解析結果とを比較検討する.

2.水理模型実験

 まず,ハイブリッドモデルの適用性を検討するために行われた水理実験の概要について説明する.
 水理模型実験は,図一1に示す防衛大学校の7m×11mの平面水槽を用いて行った.水槽の左端にはピストン型の造波装置が設置してある.水槽の造波板境界以外の3方は直立壁である。水槽には中央に開口部を持つ津波防波堤の模型を設置した.また,開口部に潜堤を設置した場合と設置しない場合の2通りの実験を実施した.模型断面(潜堤あり)を図一2に示す.この防波堤模型は,幅94cm,高さ12.5cmの台形のマウンド上に幅21cmの箱形ケーソンを設置したものである.
 実験および計算にあたり,防波堤開口部中央での静水面をデカルト座標系の原点とし,x軸は波の進行方向に,z軸は鉛直上向きにとる.また,x軸の負の方向(防波堤より造波板側)を沖側,正の方向を港側と呼ぶ.静水深は30cmである.入射波は波高約2cm,周期15sの正弦波である、模型縮尺1/200とし,フルードの相似則を使うと,これらの値は現地周期が3分30秒,現地波高が4.0mに相当する.
 実験では静穏な状態から造波し始め,造波開始より入射波の2周期分である30秒間を測定時間間隔0.05秒で計測を行った,防波堤開口部周辺における水位を容量式波高計,また流速を電磁流速計にて測定している.水位の計測範囲は,x方向に原点より±0.8m,y方向は原点から防波堤端部までの範囲で,5cm間隔の格子点上で測定した.また,y=0,-20,-20,-65cmのx-z断面において,x方向に原点より±0.8m,鉛直方向に静水面下2.5cmから底面までの範囲で5cmの格子点上において流速(u,w)を計測した.流速・水位を計測するのと同時に造波板位置を記録することにより,各データの時間を同期した.
 また,流速・水位ともに同一点において,それぞれ5回から20回の計測を行った,実験データは0.5秒間で移動平均し,さらに同一点での計測の平均値をとり,実験値とした.

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図一1 実験水槽
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図一2 防波堤模型断面(潜堤あり)

3.計算方法

(1)3次元領域
 本計算方法では計算領域を直方体の格子に細かく分割し,それぞれの格子において,流速(u,v,w)を格子の境界面に,圧力pを格子の中央に定義する.
 地形を表す方法として,榊山ら3),磯部ら4)が用いたポーラスメディア法を使用する.本来,ポーラスメディア法では透水層とセル内の斜面勾配を計算に取り入れることが可能である.ここでは,透水層は考えないが,セルの中での斜面勾配を考慮する.
 すなわち,3次元計算領域では以下の支配方程式を使用する.
(1)
(2)
ただし,x_iは座標x,y,zを,u_iは各方向流速u,v,wを表す.\rhoは密度,pは圧力,g_iは重力加速度の各方向成分,e_{ij}は変形速度(式)\nu_iは渦動粘性係数である.\gamma_i,\gamma_v.は海底地形や構造物の形状を表現するために導入する透過率・空隙率である.\gamma_iは,セルの四辺における不透過部分の位置から各直方体セルの壁面において流体が通過できる面積の割合(透過率)を計算して与える.例えば,\gamma_x,は,
(3)
とする.\gamma_vは,各セルにおいて流体が入り込める体積の割合(空隙率)を与える.すなわち,
(4)
である.\delta x,\delta y,\delta zは各方向の格子間隔である.
 乱流モデルとしては様々なモデルが提案されており,工学的手法としてk-\epsilonモデルがよく使われる.しかし,津波の数値計算においてk^\epsilonモデルの乱流計算に必要な細かな計算格子を使うことは事実上不可能であり,ゼ
ロ方程式モデルを使わざるを得ない.
 一方,格子平均モデル(LES)は本来k-\epsilonモデルよりさらに細かな格子を使うべきモデルであるが,LESで用いられるSGS渦動粘性モデルを大格子の計算に適用しても,かなり妥当な計算結果が得られると報告されている5).
そこで,ここでは便宜的にSGS渦動粘性モデルを適用し,渦動粘性係数を次式で表す.
(5)
(6)
ここでcは定数であり,およそ0.2程度と言われている.本計算においても,c=0.2を用いる.ただし,大きな格子でSGSモデルを使えるという物理的根拠は無いから,本計算はLESではなく,渦動粘性係数が計算格子の大きさに関係づけられた単なるゼロ方程式モデルと解釈すべきである.
水表面位置の計算には,式(2)を水表面から底面まで積分した連続の式を使用する.また,運動方程式によって流速を求める際圧力項は2次精度の中央差分により近似する.移流項の近似では安定した計算を行うため2次精度の風上差分を用いる.ただし,境界および障害物に隣接し,2次精度の差分に必要な流速を得られない場合は1次精度とする.時間発展に関しても差分を2次精度とするため,Crank Nicholson法を用いる.

(2)2次元領域
2次元計算領域では以下の非線形長理論をいる.
(7)
(8)
(9)
ここで,\etaは水位変動,hは静水深,DはD=h-\etaで表される全水深,fは運動量損失係数M,Nはx,y方向の流量フラックスである.運動量損失係数としては,通常,海底摩擦による損失を考える.マニング則を使うと,
(10)
である.ただしnはマニングの粗度係数で,本計算においてはn=0.015m^{-1/3}s(コンクリート)とする.なお,マニング則は2次元領域だけでなく3次元領域においても最下層の底面に面する格子だけに適用させる.また\betaは運動量補正係数であり,水平渦による余剰運動量輸送の影響を2次元領域においても考慮するための断面平均流速とのずれを示すパラメーターである.
(11)
ただし,u=\bar{u}+u」で,\bar{u}が断面平均流,u」が平均流速からのずれを表す.\beta=1が鉛直方向に流速分布が一様な状態であり,\beta>1は鉛直方向に流速が分布を持つことを示す.すなわち,1以上の\betaを2次元領域で与えることは,3次元領域から水平渦の影響を引き継いでいることになる.

(3)計算条件
 計算時間間隔は0.01sである.格子間隔は,\delta x=\deltay=5cm,\delta z=2.5cmとし,2次元計算領域の格子数は220×140であり,その中に3次元計算領域,格子数90×90×14の領域を図一3のように組み込む.2次元領域と3次元領域の境界面上の流量は2次元領域に属するものとする.図中の丸印は水位,三角は流量(流速)を示し,白抜きのマークは2次元領域において計算する値,黒塗りは3次元計算値である.なお,ここでは便宜上,y軸に平行な境界面での接続方法について説明する.x軸に平行な境界面でも同様の方法を用いる.
 接続部における水位・流速の共有および計算手順を以下に示すただし,境界面上での流量を磁と記す図一4は,以下の手順を模式的に表したものである.
(a)nステップの水位を求める(2次元,3次元とも).
その際3次元領域の端点ではM_b^{n-1/2}(2次元領域に属する)を参照する.
(b)2次元領域において流量を求める.M_b^{n+1/2}を計算する際3次元領域の水位・流量を参照する.
(c)3次元領域において流速を求める.その際M_b^{n+1/2}を境界条件として使う.
さて,上記(c)で3次元領域での流速を計算する際には,境界における流量だけでなく,流速分布が必要である,しかし,本来,2次元計算では流速鉛直分布に関する情報を与えない.したがって,2次元領域と3次元領域の接続部で,水平方向流速(u,v)が鉛直方向に分布を持たなくなるまで3次元領域を十分広く取り,境界条件として鉛直方向に一様な流速分布を与えることが最も望ましい.

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式(1〜4)
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図一3 2次元計算領域と3次元計算領域の配置
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図一4 領域接続部分の計算手順

6.計算結果

図一5,6は,開口部中央から防波堤端部までの4箇所の断面での水平方向流速分布を示す.この図では,本ハイブリッドモデルによる計算結果,平面2次元モデルによる計算結果,および実験結果とを比較している.図一5は潜堤を設置しない場合,図一6は潜堤を設置した場合である.潜堤の有無に関わらず水平方向流速が鉛直方向に分布を持っていることが実験から示された.特に図一6では,潜堤による縮流の効果により開口部の流速が早くなるのと同時に,x=20cmにおいて潜堤頂部より発生した剥離渦がマウンドにかかり,流速の向きが水表面と底面では逆になる現象も現れている.平面2次元モデルでは,このような3次元性を評価できないが,本モデルではかなりうまく再現できている.
図一7は,水表面形の鳥瞰図であり,湾内側上空から湾ロ側を望んだ図である.潜堤が無い場合,防波堤端部近くでは流れが速く水位が低下する.また防波堤端部から発生した鉛直方向に軸を持つ渦(図中では周囲より水位が下がり凹部となっているところ)が現れている様子がわかる.一方,潜堤を設置した場合,潜堤上で堰を越える流れのようになっており,鉛直方向に軸を持つ渦の中心と周囲との水位差は潜堤がない場合のものより小さくなっている.その代わりに図一6にも現れていたような潜堤頂部より発生している剥離による渦が発達してい
る.
 図一8は,防波堤開口部を通過する流量の防波堤の有無潜堤の有無による比較である.防波堤や潜堤による津波のピークカット効果が確認された.しかしながら,潜堤の有無によるピーク流量比は開口部面積比より小さく一致しない.これは,潜堤を設置したことにより流速が増加したことを意味する.ただし,図には示さないが湾内への流入流量は従来の平面2次元モデルでもほぼ正確に計算できる.
 図一9,10は,底面にかかるせん断力\tauの最大値の分布を示す.海底せん断力は,潜堤の有無の違いによって大きく異なる.潜堤の無い場合は開口部を中心する広範囲にせん断力の強い場所が分布する。しかし,潜堤がある場合,潜堤頂部のせん断力は大きいが,全体としてせん断力は小さくなる.しかし潜堤頂部にかかる摩擦抵抗は周辺と比較し大きい.開口部を除く3次元領域内全体における底面せん断力の最大値の平均は,潜堤がない場合に比べ,約40%となる.すなわち,開ロ部を潜堤構造にすることは,津波のピークカットやマウンド捨石の安定性向上に効果があると言える.ただし,潜堤がある場合,潜堤による縮流効果のため水表面付近の流速はむしろ大きくなる.水面流速が大きくなることは,港内の操船をより困難にし,漂流物が防波堤に衝突したときの波力を増大させるため注意が必要である.2次元モデルでは,底面流速と比較し断面平均流速は大きく,すなわち底面せん断力を過大評価し,逆に水表面付近では流速を過小評価してしまう.
 図一11は防波堤潜堤にかかる圧力の時間変化を示す.
ここで,潜堤前面とは潜堤の沖側の断面であり,後面とは湾内側の断面である.この図は静水状態の圧力をゼロとし,圧力の変動を示したものである.よって平面2次元モデル,ここでは非線形長波理論による計算は水位変動による静水圧の変化を示していることとなる.なお,平面2次元モデルとハイブリッドモデルによる計算結果では水位変動にそれほどの差は見られないから,図一11での値の差は動圧を示している.t=14秒付近の後面,22秒付近の前面は流れの正面にあたり,かつ流速も極大近くとなり動圧が大きくなる.よって水平方向流速が鉛直方向に分布を持つような長波近似が成り立たない場所で構造物に掛かる圧力を検討する場合,断面平均流速との差が大きくなり動圧が無視できない。水位変動による静水圧だけでなく動圧も考慮しなければならない.数値計算により潜堤の安定性や防波堤ケーソンにかかる圧力を論じる場合,平面2次元モデルでは不十分であり,動圧を考慮できる3次元モデルを使用する必要がある.図一7の潜堤がある場合において,潜堤頂部において水面勾配は最も急になる.すなわち潜堤の前後面との水位差が大きく,静水圧の差が激しくなる.このことは図一11の14秒付近の様子にも現れている.

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図一5 水平方向断面流速の比較(潜堤なし) 図一6 水平方向断面流速の比較(潜堤あり)
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図一7 水表面形の鳥瞰図
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図一8 防波堤開口部を通過する流量
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図一9 底面にかかる\tauの最大値の分布(潜堤あり) 図一10 底面にかかる\tauの最大値の分布(潜堤なし)
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図一11 防波堤潜堤にかかる圧力の時間変化

7,結論

 本研究は,従来の計算方法である2次元モデルと,圧力の静水圧分布を仮定しない3次元モデルを組み合わせたハイブリッドモデルを用いて防波堤周辺の流況を再現し,構造物(マウンド及び潜堤)のかかる流体力に関し検討した.防波堤近傍のような3次元的に複雑な流況を検討するには,静水圧近似であり断面平均流速を用いる平面2次元モデルは不十分であり,3次元モデルを用いる必要があることがわかる.また,ハイブリッドモデルを用いることにより,効率的な再現計算が可能である.
 このモデルを用いて防波堤周辺の流況の再現計算を行った.その結果,潜堤による締め切りによるピークカット効果が確認された.またマウンドの洗掘や捨て石の安定性に影響を持つ底面せん断力は潜堤の有無により大きな違いがあり,潜堤の設置によりせん断力は軽減され有効に機能していることがわかる.しかしながら,潜堤頂部の流速は増し潜堤にかかる流体力は大きい.
 また,潜堤の前後面にかかる圧力差すなわち形状抵抗が計算され,この値は,底面せん断力である摩擦抵抗よりもはるかに大きい.

参考文献

参考文献
1) 谷本勝利,木村克俊,宮崎啓司:津波防波堤開ロ部の安定性に関する実験的研究.港湾技術研究所報告 第27巻,第4号,pp.93-121,1988,
2) 正村憲史,藤間功司,後藤智明,重村利幸:非静水圧3次元津波数値計算モデルの開発,海岸論文集,第43巻pp.296-300,1996.
3) 榊山勉,香山真裕:消波護岸の越波に関する数値シミュレーション,海岸論文集第43巻,pα696-700,1997.
4) 磯部雅彦ら:数値波動水路の耐波設計への適用に関する研究一VOF法基本プログラムの作成一,海洋開発論文集,第15巻,pp.321-326,1999.
5) 中辻啓二,狩野晋一,栗田秀明:SGS渦動粘性係数を用いた大阪湾潮流の有限要素解析,水工学論文集,第36巻,pp.693-696,1992.

 (2000.10,2受付)

河川技術に関する論文集,第6巻,2000年6月 論文 那珂川下流部を対象とした 高速洪水氾濫予測モデルの開発 DEVELOPMENT OF HIGH SPEED CALCULATION FORECAST MODEL OF FLOOD-INUNDATON FLOWS FOR LOWER AREA OF NAKAGAWA BASIN 安田浩保1・後藤智明2・山田正3HiroyasuYASUDA,ChiakiGOTOandTadashiYAMADA 1学生会員 東海大学大学院 工学研究科土木工学専攻(〒259-1292 神奈川県平塚市北金目1117) 2正会員 工博 東海大学教授 工学部土木工学科(〒259-1292 神奈川県平塚市北金目1117) 3正会員 工博 中央大学教授 理工学部土木工学科(〒112-8511東京都文京区春日1-13-27)

Abstract

Numerical forecast model of flood-inundation flows usually composes the analysis model of flood flows and the analysis model of inundation flows. That analysis models is often used by high approximate equations, and the calculation time is comparatively long. As calculation mesh of the inundation flows model is not enough to approximate ground elevations, Computation accuracy is fell.
In this paper, we developed the practicable forecast model of flood inundation flows, the model is keeping the computation accuracy and possible to high speed calculation. In the first, model equations of flood flows and inundation flows was selected by theoretical consideration. In the second, calculation mesh of the inundation flows model divided five compared with conventional mesh interval. In the third, flood flows analysis model is included effects density at river mouth.

Key words: Numerical forecast model, Flood-inundation flows

1. はじめに

 これまで洪水氾濫流に関する多くの研究が行われ,解析あるいは予測モデルがいくつか提案されている.それらのモデルのほとんどは,河川流解析モデルと氾濫流解析モデルから構成されている.岩佐ら2)は,河川流解析モデルに1次元の不定流モデル,氾濫流解析モデルに直交座標系の2次元非線形長波を適用し,氾濫源を250m程度の計算格子により近似し,さらに氾濫水の挙動に影響を与えると考えられる排水路や道路の線状構造物を考慮した計算を行った.福岡ら3),4)は,家屋群から流れが受ける流体力を考慮した上で市街地の複雑な道路網と地物配置を精度良く近似する一般曲線座標系の非線形長波理論を適用した密集市街地の洪水氾濫解析モデルを提案した.栗城ら5)は,予測結果の活用目的に相応しいモデル式や計算格子長の選定方法を整理し,建物密度の粗度係数への反映方法について述べた.
 また,洪水氾濫解析では氾濫原の計算格子は250m程度に近似2),5)されることが多い.この程度の格子間隔による予測計算では地形近似の精度が十分でないことが要因となり,解析精度が低下する.
 前述までの研究例による解析モデルは,高近似方程式を適用した精度の良い予測モデルの構築を目的としている.
これらモデル式の解は,有限差分法や有限要素法などの数値解法により求めることとなるが,演算時間は電子計算機の容量や処理能力が発達した今日においても洪水時に浸水域の予測計算を数分で行えるとは考え難い.このため計算結果の用途は,数ケースの想定洪水に対し予測計算を行いその洪水による対象流域の氾濫状況の傾向を把握するだけに留まざるを得ないと考えられる.言い換えれば,既往の研究は,モデルの精緻性やパラメータ設定法の一般性を求めたものが多く,高速演算という実用性に着目した予測モデルの研究は少ないと言える.精緻性モデルによる解析・予測結果が洪水ハザードマップや防災計画などに反映されることは治水対策のソフト面において大変有意義であるが,一方,即時性モデルによる解析・予測結果もまた実洪水時においては水防活動や避難活動上極めて有効な情報源となり得る.
 そこで著者らは,パーソナルコンピュータを利用した場合でも予測精度を犠牲にすることなく数十秒〜数分の高速演算が可能な,最大浸水域の即時予測に着目した予測モデルの構築を行った.高速演算が可能なように河川流解析モデル,氾濫流解析モデルに対してそれぞれ理論的な検討を行いモデル式を選定した.また,精度の良い予測が可能なように適切な境界条件の設定と,氾濫原の格子長を従来の研究で設定されているよりも細分化した.

2. 解析対象範囲と代表洪水

 本研究では,河口より10㎞ポスト付近までの那珂川下流域を解析対象範囲とした.那珂川は,源流を栃木県の那須岳山中に発し,茨城県大洗町より太平洋に注ぐ,全長150㎞,流域面積3,270㎞^2,主な支川に澗沼川,桜川,藤井川,箒川,荒川,余笹川などを有する一級河川である.解析対象範囲のうち河口から9㎞1付近までの区間は現在築堤計画が進められているものの無堤区間である.なお,本研究では澗沼川や桜川などの支川は考慮していない.
 近年の大規模洪水としては,1986年8月4日から6日にかけて発生した事例があり,那珂川流域に未曾有の被害をもたす洪水となった.この洪水では河口より12.3㎞付近に位置する水府橋が9.13mの観測史上最高水位を記録し,浸水面積は41.17㎞^2におよび茨城県内を中心に那珂川全流域で甚大な被害を受けた.その他の代表洪水とその被害については,Table.1の通りである.

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Fig.1 Lower area of NAKAGAWA basin
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Table.1 Recorded flood of NAKAGAWA

3.河川流解析モデル

(1)支配方程式
本研究では即時性の高い洪水氾濫の予測モデルの開発を目的としているから,河川流解析モデルとして高速演算が可能なモデル式を適用する必要があり,その候補として不定流モデルと不等流モデルのいずれかが考えられる.それぞれのモデルの計算上の特性について概観する.
一般に洪水流下の解析2),5),6),7)に対して1次元あるいは2次元の不定流モデルが採用されることが多い.しかし,不定流モデルは時間発展型の方程式で,安定した計算を行うためには計算時間間隔\delta tに関する制約条件に拘束され,高速演算を行うことは難しい.また,下流端において洪水波の自由透過の条件などを考慮しなければならないため,後述(3.(6)節)の流量の増加,と海水との密度差に伴う河口水位の上昇効果を計算に組み入れるのが難しい.
一方,不等流モデルは不定流モデルから非定常効果を無視したモデルと考えられるから,任意時間ピッチの分割計算と線形内挿計算を組み合わせた高速演算が可能である.また,流量の増加に伴う河口水位の上昇効果を定式化により計算に精度良く考慮することができるため,十分な精度を有する解析が可能である.
ここで,不定流モデルを不等流モデルと波動成分から成ると便宜的に仮定し,波動成分の大きさから不等流計算の近似的な誤差を検討した.
まず,後出のFig.3に示すように洪水波形の時間的な変化はつり鐘型を成し,下記のガウス分布関数で近似できる.
(1)
ここにH_P:洪水ピーク水位(m),t:時間座標,t_P:洪水ピークの出現時刻(s),H(t):河川水位(m),である.従って,波動成分による水位差\delta H,すなわち不等流モデルによって考慮できない水位は,
(2)
で表される.ここに\delta Hは波動成分による水位(m),dH/dxは水位勾配,lは対象区間(m)である.
Fig.2に式(2)で表される,水府橋における種々の水位出現時における水位差および誤差すなわち不等流モデルの精度を示した.この図から,水府橋水位(図中H_s)が高いときは水位差(誤差)が小さく,水府橋水位が小さいときに水位差(誤差)が大きくなることが読みとれる,那珂川下流域に氾濫現象が起こるのは,水府橋水位が約5.5mを越える範囲である.従って,氾濫に影響を及ぼすという観点から判断すると,不等流モデルと不定流モデルの平均的な差違は,最大に見積もった場合でも水位差0.023m,誤差0.4%程度であると推定できる.つまり,Fig.2から,洪水の氾濫域や氾濫浸水深を規定するピーク水位付近は,水位差・誤差共に無視できる程度に小さいと言える.
 そこで本研究では河川流解析モデルに,高速演算に適している上,比較的短い解析区間においては十分な解析精度を得られることが確認された不等流モデルを採用する.
基礎式は,
(3)
である.ここに,x:河川縦断方向の水平座標(m),Q:河川流量(m^3/s),\eta:河川不等流水位(m),n:Manningの粗度係数(m^{1/3}/s),R:径深(m),g:重力加速度(m/s^2)である.

(2)境界条件
実用性の高いモデルとするためには,初期条件が簡便でかつ適切に与えられる必要がある.不等流モデルの境界条件として,上流端:境界条件には,洪水時に水位予測が行われていることから水府橋水位を与えることにした.初期条件として水位ハイドログラフを与える作業は煩雑にであるから,予測計算を行う想定洪水の任意ピーク水位とその時刻から水位経時変化が推定される形式が相応しい.そこで,ピーク水位と洪水波形の経時変化の関係を明らかし,水府橋におけるハイドログラフの相似則を3.(3)節において規定する.
また,下流端境界条件には,解析対象日時を与えることで推算が可能な潮位を与え,後述の3.(6)節に示す流量の増加に伴う水位上昇効果を経験的に付け加えた.
(3)水位ハイドログラフの相似則
水府橋の水位観測記録の中から顕著な洪水6例を用いて水位経時変化の特性を調べた.Fig.3にピーク水位前後に欠測がない6洪水の水位経時変化を示す.

1998年8月洪水は双峰性のピーク特性があり特殊であるが,この洪水波形の第1峰を含め5種類の洪水波形は,ガウス分布に近い形状をなしていることが分かる.そこで,洪水と関連のが考えられるピーク水位の3/4水位の出現時間間隔を調べ,その結果を図化したものがFig.4である.

すなわち3/4水位時間間隔は,ピーク水位と良好な相関があり,
(4)
なる関係で表される.ここに,T_{3/4}:3/4ピーク水位時間間隔(hr),H_x:水府橋ピーク水位(m)である.従って,水府橋の水位ハイドログラフ(水位経時変化)は式(1)のガウス分布関数で表されると仮定すると,3/4ピーク水位時間間隔と時間的な変化量を表すパラメータT_{3/4}の間に,
(5)
の関係があることがわかる.前述のガウス分布関数により規定された相似則を用いて表された水位ハイドログラフと水府橋の観測水位値を比較したものがFig.5である.水位が低い部分で差違は大きくなるが,洪水氾濫で重要なピーク前後では良好な精度で推定値と観測値が一致することがわかる.

(4)河道内粗度分布
1986年8月洪水,1998年8月洪水の2例を利用して,これらの洪水が適切に再現できように試行錯誤を繰り返して河道内の粗度分布をFig.6に示すとおり定めた.ただし,建設省の計画粗度11)に比べ河口から9㎞付近より上流部分では多少大きな値となっている.
また,ここで規定した河道内粗度分布を利用し,1986年8月洪水,1998年8月洪水,1999年7月洪水の水府橋ピーク水位時における不等流計算を行ったものがFig7である.洪水時の河口部付近は,流量の増加と密度差による水位上昇が考えられるため,河口部付近の適切な痕跡値などを利用して解析している.また,詳細は割愛するがピーク水位付近では3.(1)節の誤差解析で述べたように不等流モデルと不定流モデルの計算値の差異は小さい.

Fig.7 Comparison between flood marks and computed Water level

(5)水位と流量の関係
不等流モデルを利用して,水府橋における水位と流量の関係を調べた.計算は,下流端水位-0.3〜1.8mを0.3m間隔で8ケース,流量は50m^3/s〜5,000m^3/sを50m^3/s間隔で100ケースの都合800ケースの不等流計算を実施した.Fig.8に河口水位と水府橋の水位・流量の関係を示す.

Fig.8 water level and discharge at Suifu-bashi

その結果,河口水位による影響は水府橋水位8.0m程度まで及ぶことが明らかとなり,このことは河口水位の特性の検討の必要性を示唆する.

(6)河口部水位
1998年8月洪水の水位観測記録11)を利用して,河口水位の補正方法について検討した.いま,不等流計算の適切な境界値H_Bをとし,河口水位H_Bが
(6)
で表されるものと仮定する.ここに,H_T:推算潮位,\delta H_B:補正量である.4時刻分の満潮時データと7時刻分の干潮時データを利用して水府橋水位と湊大橋水位(1.73㎞)が再現できるように試行錯誤の計算を利用して干潮時(式(7))と満潮時(式(8))を区別して,それぞれ,
(7)
(8)
と定めた.ここにH_S:水府橋水位である.この補正方法により適切な境界水位が推定でき,Fig.9に示すとおり水府橋と湊大橋の水位も良く再現できている.

Fig.9 Computed and observed water level at river mouth,
Minato-ohashi and Suifu-bashi

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式(1〜8)
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Fig.2 Accuracy of Non-uniform flow model
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Fig.3 Water level in the past floods at Suifu-bashi
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FIg.4 The relationship between water level and duration for water level of 3/4 Peak
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Fig.5 The similarity law of water level at Suifu-bashi
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Fig.6 The distribution of Manning roughness coefficient
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Fig.7 Comparison between flood marks and computed Water level
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Fig.8 water level and discharge at Suifu-bashi
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Fig.9 Computed and observed water level at river mouth, Minato-ohashi and Suifu-bashi

4. 氾濫流解析モデル

氾濫流の解析法として,Musingum法,貯留関数法や長波近似方程式による手法など,様々な解析法が研究されている1),5),7).本研究では,氾濫流の挙動を物理的に明確に表しうる長波系近似方程式を用いた解析法を採用する.
氾濫流解析モデルとして適切な長波系近似方程式は,線形長波理論,非線形長波理論のいずれかであると考えられる.非線形効果の性質(5.(2)節で詳述)と演算時間から判断して,本研究では線形長波理論を採用する。方程式群は,
(9)
(10)
(11)
である.ここに,x,y:氾濫原の水平座標,M,N:流量フラックス(m^2/s),\eta:氾濫水位(m),n:Manningの粗度係数(m^{1/3}/s),h:氾濫浸水深(m),g:重力加速度(m/s^2)である.
適用座標系であるが,複雑な地形形状を精度良く近似する一般曲線座標系を用いた解析法3),4)についても研究されいるが,本研究では最大浸水域の即時予測を目的としており,解析精度に精緻1生を求めないこと,格子間の粗密により保存則が十分に満足されないことが懸念されることや演算時間を考慮し,直交座標系を用ることとした.
また,氾濫流解析では,地形近似の精度が十分でないことが解析精度の低下に繋がるから,氾濫原の計算格子の分割間隔は適用される座標系に依らずある程度細分化する必要がある。そこで,従来の研究で用いられることの多かった250m程度に比べ,より細分化された50m間隔の計算格子に設定し,粗度係数はn=0.025m^{1/3}sと設定した.そして,数値解析法にはLeap-Frog法を用いた.
なお,氾濫流モデルと河川流モデルの引き継ぎ,すなわち河川からの越流量の推定には,本間公式を適用した.

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式(9〜11)

5. 予測モデルの適用と適用性の検討

(1)予測モデルの既往洪水への適用
本研究で提案する予測モデルを那珂川下流域へ適用した.大規模洪水である1986年8月洪水,中規模洪水である1998年8月洪水,そして小規模洪水である1999年7月洪水に対して再現計算を行い,それぞれの洪水痕跡値を用いて精度検証を行った。Fig.11.1〜Fig.11.3に水府橋が最高水位時の河道水位(上段)と最大浸水域図(下段)を示す.何れの規模の洪水に対しても,良好な精度を得ることができた.また,演算時間は,対象領域約3Q㎞^2の48時間予測計算にパーソナルコンピュタ(CPU;PentiumⅢ 500MHz,RAM;128MB)を利用した場合,2分程度であった.従って十分に実用的な活用が可能な予測モデルであると言える.

(2)予測モデルの適用性の注意
本研究では高速演算が可能な洪水氾濫予測モデルを河川流解析モデルとして不等流モデル,氾濫流解析モデルとして線型長波理論を適用し構築した.
まず,河川流解析モデルについてであるが,不定流を適用した場合との誤差は,3.(1)で述べたとおり見込まれる.
従って許容の誤差を5%程度とするならば約100㎞までの範囲に適用が可能であると考えられる.
つぎに,氾濫流解析モデルであるが,線形長波理論と非線形長波理論の差異は移流項の有無である.移流項の非線形効果により波高水深比が大きいところほど流れは速く伝播する.すなわち氾濫の発生原因が越流による場合で,かつ氾濫原の勾配が緩く,氾濫流に慣性が大きく作用しない場合においては,移流項の効果が顕著でないと考えられる.急勾配な丘陵地形が見られない那珂川下流域のような地域においては,氾濫流の非線形効果は限定された現象と考えることができる.
 また,非線形効果により氾濫流の伝播速度が線形長波理論に比べ増すことが考えられるため,洪水流の到達時間に多少の差異が見られる可能性があるものの,本研究で目的としている最大浸水域の即時予測への影響は大きくないものと考えられる.

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Fig.11 Calculation results(1986 Flood)
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Fig.11.2 Calculation results(1998 Flood)
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Fig.11.3 Calculation results(1999 Flood)

6. おわりに

 洪水氾濫予測モデルの構築に必要なモデル式に対し理論的な検討を行い,高速演算が可能な洪水氾濫予測モデルを構築した.大・中・小規模の洪水に対し再現計算を行い,何れの規模の洪水においても精度の良い解析が可能なことを確認した.このことは高速演算が可能なモデル式すなわち近似度の高くないモデル式による解析においても,適切な境界条件を設定することで精度の良い解析ができることを示していると言える.
 本研究で構築した予測モデルでは,氾濫原の地形形状を正方格子による標高値のみで近似したが,より精度の良い解析や予測を行うためには,氾濫原の地形形状の近似手法と,排水路や道路などの氾濫水の挙動に対して影響を与えると考えられる線状構造物の効果をモデルに導入する必要があると考えられる.また,本研究では,洪水により河川の水位上昇が発生し洪水流が堤防を越流する場合に起こる越流型の洪水氾濫のみを対象としたが,今後は破堤を起因とする破堤型の洪水氾濫についても対応を検討する必要があると考えられる.

謝辞

本研究を行うにあたり,建設省関東地方建設局常陸工事事務所調査第1課より有用なデータを多数提供して頂いた.また,計算対象流域の空間データ作成にあたっては,国際航業㈱空間情報事業部に多大な協力を頂いた.ここに記して感謝の意を表する.

参考文献

1)Xanthopoulos,T,Koutitas,C;Numerical Simulation of a two dimensional flood wave propagation due to dam failure, Jour. of Hydraulic Research, Vol.14,No2,pp321-331,1976
2)岩佐義朗,井上和也,水鳥雅文;氾濫水の水理の数値解析法,京都大学防災研究所年報,第23号B-2,pp305-317,1980
3)福岡捷二,川島幹雄,松永宣夫,前内永敏;密集市街地の氾濫流に関する研究,土木学会論文集,No491/Ⅱ-27,PP51-60,1994
4)福岡捷二,川島幹雄,横由洋,水口雅教;密集市街地の氾濫シミュレーションモデルの開発と洪水被害軽減対策に関する研究,土木学会論文集,No.600/Ⅱ44,pp.23-36,1998
5)栗城稔,末次忠司,海野仁,田中義人,小林裕明;氾濫シミュレーション・マニュアル(案)一シミュレーションの手引き及び新モデルの検証一土木研究所資料,第3400号,1996
6)建設省河川局;治水経済調査マニュアル(案),1998
7)土木学会;水理公式集[平成11年版],土木学会,1999
8)椿東一郎;水理学1,Ⅱ,森北出版,1974
9)岩佐義朗;数値水理学,丸善,1995
10)建設省関東地方建設局常陸工事事務所;平成10年度8月洪水出水検討業務報告書,1998

(2000,4.17受付)

津波数値計算 後藤智明

1.序言

 津波の数値計算は1960年代から始まると考えて良い。詳しいことを著者は知らないが,IsozakiUnoki3)の東京湾を対象とした計算,Ueno4)のチリ津波外洋伝播計算がおそらく最初であろう。その後,相田8),岩崎ら11)により本格的に始められ,現在までに数多くの研究成果1)-69)が報告されている。当初,電算機の記憶容量及び演算時間の制約のため湾内で3kmという非常に粗い差分格子が用いられていたが,現在では30〜50m程度の格子が採用され,しかも津波の陸上遡上や海岸構造物の効果などを取り込むことも可能となるといった高精度計算が行なわれるようになって来ている。
 津波数値計算の手法としては,従来よりリープ・フロッグ差分法が用いられて来ている。その他にリープ・フロッグ法と2ステップ・ラックス・ウェンドロフ法を組み合せたもの39),有限要素法33)などで計算を行なった例もあるが,境界条件の設定法,計算誤差及び演算時間などの問題から多用されていない。また,MAC法を用いた例43),70)もあるが現実問題への応用までは至っていない。
 ここでは,津波数値計算と題して,計算に利用する長波理論,計算法及び計算結果の概説を行なっている。数値計算法の詳細を述べることはできないが,津波数値計算に関する知識をいろいろな角度からながめて見ることにより現在の津波計算の様子を説明したつもりである。
 完全とは言えないが,さらに詳しい勉強をされる研究者に対して文末に津波数値計算に関する文献リストを載せている。

2. 長波理論

2.1 積分された基礎方程式70),71)
 長波を記述するパラメタとしては,波高水深比\epsilon,相対水深\sigma及びこのパラメタを結びつけたアーセル数U_r,(=\epsilon/\sigma)がよく用いられる。波高水深比は波の非線形性の強さ,相対水深は水粒子の鉛直方向加速度(分散性)の重要性の目安を与えるものと考えて良い。
従来,長波理論の誘導にはこれらのパラメタを用いた摂動法による展開が用いられている。\epsilon〜\sigma≪1すなわちU_r〜1と仮定する線形長波理論そしてBoussinesq72),Kortewegde-deVries73),MeiLe-Mehaute74),Peregrine75),Kakutani?6)の各式に代表される非線形分散波理論への展開及び\epsilon〜1,\digma≪1すなわちU_r≫1と仮定する浅水理論そして非線形の分散効果を考えた理論への展開という大きく2つの流れがある。
 ここでは,従来の摂動法とは異なる積分された基礎方程式を用いた展開法で長波理論を説明する。線形長波理論や浅水理論までの展開では問題とならないが,これらの第2波近似にあたる非線形分散波理論の誘導には面倒な演算を必要としたのに比べ,この手法を用いると比較的簡単な計算ですみ,また,物理的考察を加えるにも良い方法である。
 非圧縮性流体の2次元非回転運動を考える。静水面上にx軸,鉛直上向にz軸を採用する。(x,z)軸方向の流速を(u,w),水位変動を\eta,圧力をp,静水深をg,重力加速度をg,密度を\rhoとおき,
(1)
で表される無次元化を行なう。ここで,l_O,h_0はそれぞれ水平,鉛直方向の特性長,\eta_0は波高に相当する波運動の大きさを表すものである。
この結果,積分された基礎方程式は
(2)
(3)
(4)
(5)
で表される。ここで,\epsilon=\eta_0/h_0,\sigma=(h_0/l_0)^2はそれぞれ波高水深比,相対水深を意味するパラメタである。また,
(6)
である。
 ここで取り扱う現象,すなわち津波は波長が長く\sigma≪1なる近似が許されるものと考える。水平方向流速Uを断面平均流速\bar{U}(X,T)とそれからのズレU」(X,Z,T)に分けると,無次元化された非回転の条件から,
(7)
であるので,U」は\sigmaのオーダーの量であると考えて良いことがわかる。従って,以下の展開をU=\bar{U}+\sigmaU」の仮定から進めることができる。これを式(2),(3),(5)に代入すると,
(8)
(9)
(10)
となる。この式群が以下の展開の基礎式となる。
2.2各種長波理論
まず,U_r〜1の場合を考える。\epsilon=\sigmaとおくと連続の式は,
(11)
となり,運動量の式は
(12)
となる。従って,0(\epsilon)の近似では
(13)
なる線形長波理論,0(\epsilon^2)までの近似からは
(14)
なる非線形分散波理論(積分されたPeregrineの式)が導かれる。ここで,D=H+\zetaを意味する。
このPeregrineの式と他の非線形分散波理論との関係を調べると,第2次近似の量までは完全に一致することがわかっている。たとえば,Mei-LeMehauteの式は水底流速U_{\beta}で表現したものであり,水底流速と断面平均流速の関係は
(15)
で与えられる。他の非線型分散波理論との関係は岩崎77)の説明が詳しい。
次に,U_r≫1の場合の展開を行なう。\epsilon=1とおき,展開のパラメタとして\sigmaを採用する。連続の式はオーダーに関係なく
(16)
となる。運動量の式は
(17)
である。ここで,
(式1)
である。従って,0(\sigma^0)で
(18)
なる浅水理論,0(\sigma)までの近似からは
(19)
なる分散項に非線形性を考慮した非線形分散波理論が導かれる。
以上の長波理論を取りまとめたものが表1である。理論式,波速及び圧力分布に関する比較をしている。表はすべて有次元表示がなされており,線形長波理論はM=h\bar{u},その他の理論は.M=D\bar{u}で定義された線流量を用いている。図1に数値計算による比較の一例78)を示す。図は初期波高水深比\epsilon_0=0.11の孤立波の斜面(勾配1/20)での変形に関するものである。このように分散項が大きく作用する問題では,線形長波理論による計算は水理実験値に比べ変形,波速共に相当量遅れた結果となり,浅水理論は逆に波速が大きく前傾化した波形となり最終的には図に見られるような数値的な振動を起こすものとなる。一方,分散項を考慮した計算は実験値とよく一致するものとなっている。ただし,U_r〜1の近似の非線形分散波理の方は波高水深比が小さい間は比較的精度の良い結果となるが,波高水深比が大きくなると波高を過大に評価したり分裂現象が早目に起るなどの欠点がある78)。
2.3非線形項及び分散項の重悪性79)
波源域の津波は,波高が数mのオーダーであり,波長が少なくとも数1Okm〜100km程度であるから,線形長波理論の適用範囲であると考えて良い。しかし,海岸近くに到達すると津波の波高はかなり大きくなるため,線形長波理論で考えることが必ずしも適当でない場合が多い。
 津波を計算する際,長波理論のどの式を用いるかは重要な問題である。もちろん,高次近似まで入るにこしたことはないが,考慮すべき項が増えると数値計算は質,量共に困難さを増してくると思われる。また一方,項の省略をしすぎると計算結果の精度の点で問題が生ずることになる。
 ここでは,こうした長波理論の非線形項,分散項の重要性について量的に評価する簡便な方法としてKakutaniの式を用いた首藤の研究結果を説明する。
 まず,非線形項の重要性を考える。線形近似が許されるところではKakutaniの式は
(20)
と簡単になる。境界条件x=0でh=h_0,\eta=f(t)を満たす式(20)の解は\eta=(h_0/h)^{1/4}f(-\xi)で与えられる。ここで,\xiはf(gh)^{-1/2}dx-tと定義される移動座標である。この波形を使って非線形項の効果の重要性を評価する。\etaの大きさを表す測度を|\eta|と表し,非線形項\eta∂\eta/∂xの大きさが線形項∂\eta/∂xのq%となる条件を求めると
(21)
となる。具体的に計算するためf(t)=(A/2)sin(2\pi t/T)とおき,海底勾配∂h/∂x=m_sを一定とすれば式(21)は
(22)
となる。ここで,Aは波高,Tは周期を意味する。式(22)から水深h_0の地点で波高,周期が与えられると非線形項の大きさが線形項のq%となる水深が計算できる。
例としてm_s=1/500m,h_0=500m,A=1mの場合に関して計算したものが表2である。実際の津波の周期としては15分程度のものが多く,この場合水深40m程度の地点で非線形項の大きさが線形項の10%以上の大きさとなりそれ以浅では非線形項は無視できないことがわかる。
 次に,分散項について考える。これも先と同様に近似度がひとつ低い浅水理論のオーダーで得られた結果を利用する。その結果,分散項が非線形項のq%となる水深を計算する式として
(23)
が導かれる。ここで,H*=(h_0/h)^{3/4}である。
 表3はm_s=1/50,h_0=500m,H=1mとしたときの計算結果である。周期15分に対して分散項の大きさが非線形項の10%程度となるのは水深0.5mと相当浅くなってからのことであることがわかる。
 1983年日本海中部地震津波では分散項が大きく関与したと思われるソリトン波列が観測された。この津波に関して適用した結果が表4である。北秋田海岸の平均的な海底勾配は約1/200であり,h_0=80mでA=3mとしている。この津波の周期は約5分であるので水深23m付近,すなわち汀線から5km程度の地点から分散項の大きさが非線形項の10%を越えるものとなる。

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式(1〜23)
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(式1)
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表1 長波理論の比較
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図1 斜面上の孤立波の変形に関する    数値計算例78)
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表2 線形項と非線形項の比較    (m_s=1/50,h_0=500m,A=1m) 79)
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表3 非線形項と分散項の比較(m_s=1/50,h_0=500m,A=1m) 79)
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表4 非線形項と分散項の比較(m_s=1/200,h_0=80m,A=3m)

3. 数値計算法及びその結果

3.1 代表的な計算法80)
 電算機の飛躍的な発達により,広範囲でかつ詳細な津波の数値計算が可能となって来た。現在までに差分法,有限要素法などを用いた数多くの計算例が発生され実用に供されている。ここでは最も良く使用される計算法を紹介する。
(1) 深海域の計算
 波源域から陸上遡上までを連続的に計算しても良いのであるが,電算機の記憶容量の制約や計算の支配方程式系の変更などの理由から,津波の数値計算は深海域と浅海域に分離して行なうのが普通である。
 深海域の計算では,海岸線を鉛直壁とみなし,波源域を比較的粗い差分格子網で覆う。波源の大きさによっても異なるが差分格子間隔は数km程度にとり,浅くなるに従って格子間隔を次第に小さくする。
図2にその一例81)を示す。これは三陸沿岸を対象としたものであり,領域A,B,C,Dの順に5.4kmから1/3つつ細分化したものである。斜線の部分が0.2km領域を表している。
 使用する方程式は線形長波理論で,2次元的な拡がりを考えるので
(24)
で表される。ここで,(M,N)は水平面(x,y)方向の線流:量を意味する。この他に海底摩擦力やコリオリカを考慮する場合もあるが,水深が大きいことと伝播距離が短いためその効果は小さいのが普通である。
 深海域の計算における問題点は津波の初期波形に関してである。今回の研修会で相田勇博士から詳しい説明があると思われ,ここでは簡単に説明する。即ち,地震波の特徴から地盤の破壊が生じた深さ,破壊面の大きさその傾き,地盤のズレの大きさなどの断層パラメタが求められると,海底面の地盤変動量は弾性論82)を利用して計算するのである。水表面の変化はこの地盤の変動と同じとする。また,海底地盤の変化の生ずる速さは,波源域の拡がりに比べ変位量は小さいため,実用上は瞬時に変化が生ずるとしても良い。
 もう一つの問題点は境界条件に関してである。
電算機の記憶容量などの制限を受けるため,海域全体を計算に取り入れることは不可能である。そこで,洋上の地点で条件を設定する。この条件は津波が計算領域から自由に透過して行くというもので,線形長波理論の単一方向への進行波に関する水位と流量の関係から
(25)
とおく。ここでC_0は線形長波理論の波速\sqrt{gh}であり,\thetaは波の進行方向とx軸のなす角であり1時間ステップ前の計算値から定めたものである。
沿岸における境界条件は汀線を鉛直壁と見なし完全反射の条件
(26)
を設定する。
以上のように行なわれる深海域の計算は,広い海域を扱うため差分格子が粗くなり,汀線を鉛直壁で近似するため沿岸近くの津波の挙動を精度良く表現することは難しい。従って,この計算は浅海域計算に引き継ぐことを主目的に行なわれ,その適用範囲は水深200m程度の地点までであると考えた方が良い。
(2) 浅海域の計算
浅海域の計算では陸上遡上を含む津波の沿岸近くでの挙動を再現するために行なわれる。従って,用いる差分格子は100m以下の場合が多い。計算に用いる方程式は海底摩擦を考慮した浅水理論
(27)
である。ここで,n*はマニングの粗度係数であり,普通0.025程度の値がよく用いられる。時には海底や海岸で0.024,河沿いの氾濫原や樹木の多いところで0.055,開発の進んでいるところではO.035などと粗度係数を使い分けている計算も行なわれている40)。図3は運動量方程式中の各項の大きさを調べたものの一例である81)。各項の大きさは局所項の大きさで無次元化されたものである。格子点番号20が汀線に相当するが,移流項の大きさは水深50m付近の地点から5%以上の大きさとなり陸上遡上時は50%程度になることがわかる。摩擦項(n*=0.025を採用)も陸上遡上時は大きくなり無視できない。
浅海域計算の沖側境界条件には,深海域の計算結果を代入する。陸上遡上の境界条件設定法としては今のところ次の2種類の方法が考えられている。ひとつは堰越流公式からの類推で津波先端部の流速を水位によって
(28)
とおくものである24),28)。係数\alphaは普通0.5〜2.0の値が用いられている。ふたつめは,津波先端付近の海底地形を差分格子に合わせて階差的に近似し,水位と地盤高の関係から計算するものである36)。
差分格子を全水深によりD>0のとき水没している格子,D≦0のとき露出している格子に分け,波先端を水没格子と露出格子の中間にあるものと考え,両格子間の線流量を露出格子の地盤高よりも水没格子の水位が高いときのみ運動量方程式で計算しその他の場合は零とおく方法である。
 両計算法共に物理的には多少疑問が残るものであるが,津波の最大打ち上げ高さを重視するのであれば陸上部での最も緩やかな斜面勾配をm_s,入射津波の周期をTとするとき,どちらの方法でも
(29)
が満足されるように差分格子を定めることにより比較的精度の良い結果を得ることが知られている41)。
ただし,波力などの算定のため津波先端波形の詳細を問題とする際には,これらの方法は慎重に考え直さなくてはならない。この問題に関しては松冨の研究例83)がある。
3.2計算の打ち切り誤差84)
現実の現象と数値計算との差すなわち誤差は以下のようにまとめられる。まず,誤差には計算に用いる支配方程式の精度に関するものが考えられる。方程式を導く際に設けた仮定あるいは近似が実際の現象とどの程度近いかが問題となる。長波理論は先に説明したように大きく4種類の理論に分かれており,その性質も異なる。この誤差を推定するひとつの方法として2.3で説明した首藤の方法があるが,詳しくは水理実験と比較する必要がある。方程式が定まると,次は,その方程式を数値計算する際に発生する誤差が考えられる。この誤差は初期値・境界値の精度によるものと計算自体の誤差に分けられる。初期値・境界値誤差は初期波形,水深分布,陸上遡上条件などの精度と考えても良い。計算自体の誤差は電算機の有限桁性に由来する丸め誤差と差分化するときのテーラー級数の有限項打ち切りに起因する打ち切り誤差に分けられる。津波数値計算:の丸め誤差の大きさは使用する電算機の有効桁数により多少異なるが10^{-2}%程度であることが知られている。一方,打ち切り誤差は比較的大きく条件によっては数10%にもなる。
 ここでは津波数値計算の主要な計算誤差として打ち切り誤差を取り上げ,その発生原因,伝播特性について若干の説明を行なう。また,打ち切り誤差の評価を通し津波数値計算において信頼性の高い結果を得るための条件についても考察する。
 簡単なため線型長波の水平床一次元伝播問題を考える。このとき線形長波理論は
(30)
で表される。この式のリープ・フロッグ差分形は
(31)
である。
まず,計算の支配方程式(30)とその差分式(31)の差を考えてみる。式(31)の第1項をテーラー級数展開し微分形にもどすと
(32)
となる。同様な操作を他の項についても旋すと,式(31)は
(33)
となる。この式は擬似微分方程式と呼ばれ85),差分式(31)と等価なものである。本来の解くべき式(30)に比べ,第3項が新らたに加わったものとなっており,この項の存在が打ち切り誤差の発生を意味する。従って,数値計算では線形長波理論(30)を解くつもりが実際には打ち切り誤差を含む擬似微分方程式(33)を解いていることになるのである。
式(33)は時間に関する高階の微分項が含まれておりこのまま解くことは難しいため,次の線形長波理論からの近似
(34)
を用い,線流量Mを消去する。その結果,式(33)は
(35)
なる2階の波動方程式で近似できる。式く35)の性質を具体的に調べるためt=0で\eta=\psi(x),∂\eta/∂t=0なる初期値問題を考える。解としてxの正の方向へ伝播するものを考えると
(36)
が導かれる。ここで,
(37)
である。従って,解はフーリェ変換により分解された各波数成分の合成として表され,各成分波は波数に関係した位相速度で伝播するといった波数分散現象を呈するものとなる。この波数分散性は式(33)あるいは(35)の第3項で表される打ち切り誤差により発生したもので,式(37)からも明らかなように差分格子間隔に関係した数値的なものであり物理的なものと性質を異にしている。
 また,以上のような打ち切り誤差の解析は直接差分式(31)の解を導くことによっても評価できる。
その解は
(38)
となる。ここで,Nは差分格子点数を意味し,
(39)
である。この解法は差分式をフーリェ級数展開することにより求めた厳密なものであるが,非線形問題への拡張が難しいという欠点がある。
図4はリープ・フロッグ差分の数値分散性について厳密解と近似解を比較したものである。横軸の\delta x/Lはk_m\delta xに相当するもので1波長当りの差分分割数の逆数を意味する。Kの値は0.5である。図から,擬似微分方程式による近似解は非常に良い精度で厳密解の代用となり得ること及び近似解の第1項(式(37)で総和をとる項でm=1のみ)でも良好な近似となることがわかる。従って,非線形問題に関しても擬似微分方程式による近似評価が有力な手段となることが予想される。また,図には0(\delta x^4)の差分を用いた場合の数値分散性についても同時に示されている。通常の差分式は0(\delta x^2)のものであるが,0(\delta x^2)の誤差を打ち消すように人為的に新らな項を加えたものを意味する。この場合,0(\delta x^2)の結果より精度が良くなることが期待されるが,高波数成分の波速が本来の線形長波理論のものより速くなるためいろいろな不都合が生ずることが予想されあまり利点があるものではないと思われる。
図5はKの違いによる数値分散性の差について調べたものである。Kが小さい程誤差が木きくなることを示している。K=1のときC_1/C_0=1となるが,これはリープ・フロッグ差分法の弱安定条件の限界値である。通常は任意の海底形状を対象とするのであるからK値は1以下となる。従って,計算の安定条件を満たす範囲でK値を大きく採ることが打ち切り誤差を小さくするひとつの方法で
あることがわかる。
以上のような打ち切り誤差の解析を通して現実の津波計算において所要の精度を得る条件について調べたものが図6である。図は代表的な津波として1964年アラスカ津波と1896年三陸大津波を選んだものである。アラスカ津波の波形は主断層と副断層が組み合された複雑な形状をなすものであり86),三陸大津波は相田の定めた主断層一面で計算されたものである24)。
打ち切り誤差の大きさは初期波のスペクトル形状及び差分格子間隔により異なるため図に示すような差がでるのである。
3。3 計算結果の一例
ここでは,津波の数値計算結果について紹介する。図7は1896年三陸大津波の深海域計算結果である81)。津波波源は相田のモデル24)を用い,差分格子間隔は外洋で2.7kmである。初期の津波は北西方向にやや傾いた矩形を呈し,西側では水面が沈降し東側では隆起している形状をなしている。地震発生後数分には津波の主要部が大きく2つに分かれ,三陸沿岸へ向うものと外洋へ向うものが生じている。図は水平縮尺と鉛直縮尺が異なるので注意が必要である。初期津波の最大水位は4m,水平方向の拡がりは約100kmである。
図8は浅海域計算の例を示したものである81)。想定した津波は前と同じ三陸大津波であり,三陸地方のほぼ中央に位置する宮古湾を対象としたものである。差分格子間隔は50mである。図は津波発生後40分のものであり,陸上遡上及び海岸構造物を考慮したものとしないものとの比較がなされている。
3種類の結果の比較から,海岸構造物の効果として陸上遡上域がかなり小さくなること及び防波堤前面に渦が形成されるように流速分布が大きく異なることがわかる。
1983年日本海中部地震津波の計算例を図9に示す87)。相田の波源モデル58)を用いたもので,最小の差分格子間隔は30mである。図は北秋田海岸の八森から能代海岸の津波の最大打ち上げ高さ及び浸水域分布に関するもので,計算結果と痕跡記録との比較を行なったものである。棒グラフが痕跡高であり,折れ線が計算結果である。計算には浅水理論を用いているためビデオなどに記録されたソリトン波列状の波形を再現することはできないが,陸上遡上高のみを対象とするならこの種の計算で充分な精度を有するものを得ることができることがわかる。相田44)は計算結果の精度を表すひとつの指標として痕跡高x_iと計算値との比x_i/y_iをK_iとし,データ個数Nの幾何平均値
(40)
及びKの各点間のバラッキを表わすものとして
(41)
を提案している。この日本海中部地震津波の計算結果はK=0.991,\kappa=1.276となる。
最後に,遠地津波の計算例を紹介する。図11は1964年アラスカ津波の外洋伝播計算結果の一例である88)。差分格子間隔は緯度・経度座標で5分,支配方程式はコリオリカを考慮した線形長波理論である。図は地震発生後4時間の空間水位分布を示している。本来なら,外洋を長時間伝播する現象であるのでコリオリ力以外に分散項を考える必要があるが,現在のところ電算機の容量などの制約のため難しく将来に残された問題のひとつである。

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式(24〜41)
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図2 領域分割の例 81)
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図3 運動量方程式の各項の大きさ81)
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図4 リープ・フロッゲ差分法の数値分散性に関する厳密解と近似解の比較84)
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図5 K値による数値分散性の変化84)
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図6 所要の精度を得るための条件 84)
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図7 深海域計算結果の一例(1896年三陸大津波) 81)
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図8 浅海域計算結果の一例(1896年三陸大津波,宮古湾)81)
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図9 1983年日本海中部地震津波の計算例87)
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図10 1964年アラスカ津波の外洋伝播計算結果(津波発生後4時間)88)

4.津波の2次災害に関する計算55)・66)

最近,津波そのものの挙動以外にも津波に関連する現象を計算できるようになって来た。津波の2次災害に関する数値計算がそれである。ここでは,2次災害の主要なものとして木材及び石油の流出に関する計算例を説明する。
津波の来襲に伴う木材の流出の記録としては,宮古湾の例が有名である。1960年チリ津波の時に宮古湾鍬ケ崎地区に集積されていた木材が流れ出し船舶などに被害を与えた例や,1968年十勝沖津波の時に神林貯木場から3,700本流出し湾央から湾奥一体に拡がったものである。図11に計算結果の一例を示す。計算は,十勝沖津波の宮古湾に関するもので,流木の運動を支配する力のうち慣性,水流の圧力勾配・抵抗,付加質量によるものを決定論的に,流木の拡散は確率論的に取り扱ったものである。
一方,石油の流出の例としては十勝沖津波の八戸港の例がある。港内に停泊していたタンカーの油槽が破損し油が港内に拡がったのである。その他,1964年新潟地震津波では流出した油が発火し津波浸水域に火災をひろめている。図12に石油の拡がりに関する計算結果の一例を示す。計算には石油の運動に関するものと津波水流のものとを連立して解く方法が用いられ,十勝沖地震津波の宮古湾を対象として行なわれている。図中の斜線域が石油の拡がり面積を表す。

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図11 木材の流出に関する計算例55)
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図12 石油の拡がりに関する計算例66)

5.結言

津波数値計算と題して計算の支配方程式,計算法及び計算結果の一例を紹介したが,著者の興味に重点をおきすぎていた感がする。実用的な計算手法の紹介としては安定条件,計算領域の結合の問題など数多くの事項が残されており不充分な解説となったことを反省している。
津波の数値計算はすでに実用の段階に入り新しい研究テーマとしてはあまり見当らないが,
1.津波波源の精度
2.陸上遡上時の津波先端における抵抗則とサージング波形
3.津波による砂礫の移動
4.ソリトン分裂及び砕波する津波の再現計算
5.廻し津波など特殊な挙動をする津波の計算
6.遠地津波計算
などが残された課題であると著者は考えている。

津波計算文献リスト(年代順)

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72)Boussinesq,M.J.:Essais sur la theorie des eaux covnrantes, Memo. Acad. Science, 2 eme Ser,Tome 23,No.1,1877.
73)Korteweg,D.J.and De Vries, G.:On the change of form of long waves advancing in a recangular canal, and on a new type of long stationary waves, Phil. Mag., Vol.39, 1985.
74)Mei,C.C. and LeMehaute, B.: Note on a equation of long waves over an uneven bottom,J.Geophs.Res.,Vol.71,1966.
75)Peregrine,D.H.:Long waves on a beach,J.EM.,Vol.27,Part.4,1967.
76)Kakutani,T.:Effects of an uneven bottom on gravity waves,J.Phys.Soc.Japan,Vol. 30,1971.
77)岩崎敏夫ソリトン分裂一非線形波動論一,1979年度水工学に関する夏期研修会講義集,B一 5,1979.
78)長尾昌明・後藤智明・首藤伸夫非線形分散波の数値計算,海講論文集,Vo1.32,p.114, 1985.
79)首藤伸夫津波計算における非線形項と分散項の重要性,海講論文集,Vo1.23,p.432,1976.
80)後藤智明・小川由信Leap-frog法を用いた津波の数値計算法,東北大学工学部土木工学科, 1982.
81)今村文彦・後藤智明・首藤伸夫:津波数値予報の可能性に関する研究’一津波数値シミュレーションの精度ー,土木学会論文集(投稿中).
82)Mansinha,L.and Smylie,D.:The displacement fields of inclined faults, Bull.Seismol.Soc.Am.,VoL61,p.1433,1971.
83)松冨英夫陸上遡上津波の先端条件と先端部の抵抗係数,海講論文集,Vo1.28,p.74,1981.
84)今村文彦・後藤智明差分法による津波数値計算の打ち切り誤差,土木学会論文集(投稿中).
85)たとえば矢嶋信男・野木達夫発展方程式の数値解析,応用数学叢書,岩波書店,1977.
86)Plafker,G.:Tectonics of the March 27,1964,Alaska earthquake,U.S. Geological Survay Professional Paper,543-1,Wash.Gover.Printing Office, p.74,1969.
87)長谷川賢一・稲垣和男日本海中部地震津波の再現計算,㈱ユニック社内報告,1984.
88)今村文彦・後藤智明・首藤伸夫1964年アラスカ津波の外洋伝播計算,海講論文集(投稿中).

津波の線形,非線形および波数分散現象 Tsunami Behavior Caused by Linear, Nonlinear and, Dispersion Effects 後藤智明 ChiakiGOTO

1.はじめに

 コンピュータの急速な発展により,容易にしかも精緻な数値シュミレーションが可能となってきた.1960年代から始まった当初の津波の計到ま,線形長波理論を用い,沿岸域でも㎞単位の計算格子を利用するものであったが1),2),現在では,計算の支配方程式が非線形理論や非線形分散波理論に変わり,50m程度以下の細かい計算格子まで採用されるに至っている3),4),5).以上の説明でわかるように,津波の伝播・変形に関する研究は,数値解析が主流となってきた.今後,この様な傾向がさらに強まると考えられるが,数値解析には少なからず数値誤差や人間の錯誤の問題があること,また数値解析をブラックボックス化しないためにも基礎的な理論に関する知識が必要不可欠であると考える.
そこで,本文では,津波の線形,非線形および波数分散現象と題し,古典的であるが各種長波理論式の誘導とその基本的な理論解について概説する.特に,線形理論で説明可能な津波の現象,そして非線形性および波数分散性を考慮しなければ説明できない現象について記述する.最後に,最新の話題として,非線形分散波理論を用いた平面2次元津波計算そして乱流モデルを利用した3次元津波計算の例について述べる.

2.長波理論式

2.1線形長波理論式とその基本的な解
長波理論とは,波長水深比が小さく,重力加速度に比べ水粒子の鉛直加速度が小さい場合に適用される水面波の理論の総称である.一般的には,線形長波理論非線形長波理論(浅水理論)そして非線形分散波理論に分類され,それぞれ波長水深比が小さいと近似した摂動法により導かれる.したがって,波長水深比が必ずしも小さくないが有限振幅性が小さいと考える微小振幅波やStokes波といった表面波に関する理論と多少異なる.
まず,線形長波理論式の誘導のため,簡単な2次元非圧縮性流体の非回転運動を考える.図一1に示す座標系を採用すると質量保存則(連続の式)が,
(1)
運動量保存則(運動の式・Eulerの式)が
(2)
(3)
と表される.ここに,(u,w)は(x,z)方向の流速,pは圧力,\rhoは密度である。非回転の条件式
は,
(4)
境界条件は,
(5)
(6)
(7)
である.
 いま,対象とする波運動が,波長が長く重力加速度に比べ水粒子の鉛直加速度が無視できる程度に小さく(圧力が静水圧分布と近似可能),また水深に比べ波の振幅が小さい(弱非線形)ものとする.この近似の下で上記の方程式と境界条件は,
(8)
(9)
と簡単になる.式(8)の連続の式を水底から水表面まで積分して,また,水表面の圧力条件を加味して式(8)の運動の式から圧力pを消去すると
(10)
なる線形長波理論式が得られる.この式を水平床近似し,uを消去すると,
(11)
なる2階の波動方程式が得られ,初期条件\eta(x,0)=f(x),∂\eta(x,0)/∂t=\phi(x)を満たす解としてまた,初期波形f(x)をフーリエ級数表示したときの成分波を表す解
(13)
が得られる.ここに,\eta_0は成分波の振幅,kは波数(波長をl_0とすると2\pi/l_0)である.一方\etaとuの関係は,式(9)の運動の式に\eta=\eta_0sink(x土c_0 t)を代入すると,
(14)
となる.

2.2摂動展開による非線形長波理論式および非線形分散波理論式の誘導
(1)基礎式の無次元化
非線形長波理論式および非線形分散波理論式を誘導するには,適切なスケーリング(無次元化)と摂動法を利用する.いま,図一2左に示した海域の波動現象を図一2右に示すような水平・鉛直方向の寸法が1である現象へのスケーリングを考える.すなわち,時空間のスケールそして水理量(流速,水位など)の大きさを同一のオーダーにして基礎方程式および境界条件の各項の大きさを比較するのである.このスケーリングを行う際には,先に説明した線形長波理論の解に関する予備的な知識すなわち,
(式1)
なる解を知っている必要がある.たとえば,この解から,
(式2)
であるから,∂/∂xなる演算が1/l_0の大きさ(∂/∂x=O(1/l_0))となることがわかり,
(式3)
から,∂/∂t=O(c_0/l_0)であることがわかる.
以上のような基本的な考察から,対象とする波動現象の代表的な長さを水平方向にl_0(波長),鉛直方向にh_0(水深)とし,代表的な速度をc_0(線形長波の波速)とするど微分演算の大きさは,それぞれ
(式4)
であり,これらを0(1)にするためには
(15)
なる無次元座標(X,Z,T)を導入すればよいことがわかる.一方流遠波形,圧力などの水理量に関しては,
(式5)
であるから,
(16)
なる無次元波形N,無次元水深H,無次元流速(U,W),無次元圧力Pを導入すればよいことがわかる, 基礎方程式(1)から式(7)に,式(15)および式(16)の無次元座標および無次元量を考慮すると,
(17)
(18)
(19)
(20)
(21)
(22)
(23)
なる無次元化された基礎方程式群を得る.ここに,無次元パラメータ\epsilonおよび\sigmaは,\epsilon=\eta_0/h_0(波高水深比)であり,\sigma=(h_0/l_0)^2(h_0/l_0は水深波長比・相対水深)である.
長波理論式の展開には,大きく分けて2種類があり,無次元パラメータ\epsilonおよび\sigmaを組み合わせたアーセル数U_r=\epsilon/\sigma=\eta_0l^2/h_0^3の大きさにより,U_r=O(1)(すなわち\epsilon=\sigma<1)と考えた線形長波理論式(1次近似)および非線型分散波理論(2次近似)の誘導,そしてU_r>0(1)(すなわち\epsilon=0(1)〉\sigma)と考えた非線形長波理論式(1次近似)の誘導がある.以下,式(17)から式(23)の無次元化された基礎方程式および境界条件を利用して,U_r=O(1)およびU_r>O(1)に関する摂動展開について説明する.この他に水深方向に積分した基礎方程式を用いた摂動展開法もあるが,引用文献6),7)に譲る.

(2)U_r=0(1)に関する摂動展開
まず,波高水深比\epsilon,相対水深\sigmaが共に小さく,\epsilon=\sigma<<1と近似できる場合を考え,基礎方程式群の従属変数を
(24)
と展開する.すると,基礎方程式群から
(式6)
を得る.したがって,この式群の0(\epsilon^1)の近似で,
(25)
なる無次元化された線形長波理論式を得る.なお,式(15)および式(16)を用いて,有次元式に書き改めると,
(25)」
となる.また,0(\epsilon^2)までの近似から
(式7)
が得られ,\hat{N}=N_0+\epsilonN_1とし,また断面平均流速\bar{U}を利用して式を書き改めると
(式8)
であるので,
(26)
なる非線形分散波理論式(Peregrine式8))を得る.なお,式(26)を有次元に書き改めると,
(26)」
となる.

(3)U_r>O(1)の場合の摂動展開
相対水深は小さいが,波高水深比が必ずしも小さいと近似できない場合は,\epsilon=1,\sigma<<1,すなわち,U_r>O(1)としての摂動展開となる、無次元化された式(17)から式(23)において,\epsilon=1とおき,従属変数を
(27)
と展開する.すると,無次元化された基礎方程式群は,
(式9)
(式10)
となる.したがって,0(\sigma^2)の近似から,
(28)
なる非線形長波理論式(浅水理論式)が得られる.なお,式(28)を有次元の形に書き改めると,
(28)」
である.

2.3 非線形分散波理論と等価な1階の波動方程式
 数学的には問題があるが,非線形分散波理論式(26)」を各項の大きさがわかりやすいように摂動展開のパラ
メータを付けて
(29)
(30)
と表す.ただし,ここでは水平床を仮定している.いま,x軸の正の方向へ伝播する波を考え,
(31)
とおく.ここに,u」は線形理論から導かれるu=(c_0/h)\etaなる関係を補正する量であり,非線形項およ分
散項に関係する未知のものである。式(31)を式(29)および式(30)に代入し,整理すると,
(32)
(33)
となり,式(32)と式(33)から,
(34)
が求まり,これ(32)に入て整理すると,0(\epsilon^3)までの近似から
(35)
で表されるK-dV式9)が得られる.式(35>において,左辺第2項が非線形項(有限振幅の効果),第4項が
分散項(波形曲率の効果)である.なお,式(35)は,
(36)
と書き改めることができ,K-dV式の波速は,
(37)
となる,なお,式(37)で表される波速式において,波の峰近くでは,\eta>0かつ∂^2\eta/∂x^2であるから,非線形効果により波速が増大し,分散効果により波速が減少する,このため,両者が相殺し,一定な波速で伝播する孤立波の解,
(38)
と周期的なクノイド波の解が存在する.
なお,非線形分散波理論と等価な2階の波動方程式としてBoussinesq式10)がある.このBoussinesq式も上述の様な方法を利用してPeregrine式から誘導が可能である.

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(式1〜10)
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図一1 座標系
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図一2 座標系と長波理論のスケーリング

3.線形長波理論で記述できる津波の諸現象

3,1津波の伝播と変形の概要
 海底地盤変位にともなう津波の初期波形は,海水を非圧縮と考え地盤変位と同じ形であると考えるのが普通である.このようにしてできる津波の初期波形は,断面が一山一谷の形状で,平面形状としては長軸が100から200km,短軸が50から100km程度の楕円形が多い.太平洋で生じた最大なものは,1960年のチリ地震津波を起こしたものであると考えられており,長軸は800km程度である.水位は数m程度の大きさが普通であり,最大値はチリ地震津波での21mであると考えられている.なお,発生時に一山一谷であった津波は,外洋を伝播するにともない,海底地形の変化による浅水変形,反射,屈折,大陸棚による陸棚セイシュやエッジ波の発生,島や岬による回折,港湾の湾水振動などにより変形する.そして,沿岸部で観測される津波は複数個の山谷をもつ波列からなる複雑な波形となる.なお,ここでは,浅海域における津波の変形に焦点をあて,線形長波理論で記述できる現象のいくつかの例を説明する.

3.2津波の浅水変形
 津波の先端が沿岸近くに来ると,水深が浅くなるために速度が落ちる.後方はまだ深い位置にあるので早く追いついてくる.したがって,相対的に波長は短くなり,水面はだんだん上昇し,波高が大きくなる.これを浅水変形と呼んでいる.また,湾に侵入した津波は,狭い湾奥ヘエネルギーが集中して行く.似たような現象は津波が屈折することによっても生ずる,いずれにせよ,津波が集中するためにおこるのであるから,集中効果と呼んでいる.入口が広く,奥へ行くほど狭くなるV字形状の湾では,この2種類の原因で津波が大きくなる.三陸地方には,V字形状のリアス式海岸が多く,津波の打ち上げ高さが30mを越えた場所もある.
 斜面を伝播する津波の変形に関しては,式(10)で表される水平床近似の線形長波理論式を
(39)
と書き改めると解析できる.いま,図一3に示すような座標系を採用し,水深をh=mx(mは海底勾配)とおき,上式からuを消去すると
(40)
なる2階の波動方程式が得られる,この方程式の解は,進行波に関して
(41)
重複波に関して,
(42)
で表される.ここに.J_0,N_0は0次のBessel関数であり,\omegaは角周波数である。なお,式(41)で表される進行波の解に関しては,xの比較的大きいところで波高がx^{-1/4}すなわちh^{-1/4}に比例して増幅するといったGreenの定理と一致する。また,式(42)で表される重複波の解を利用すると,一様水深h_0から一様傾斜(勾配m)の斜面上への打ち上げ高に関する理論解11),12)が得られ,
(43)
となる.ここで,Rは打ち上げ高,Hは一様水深の津波波高,J_1は1次のBessel関数である.
平面2次元的な津波の集中効果に関しては,図一4のような座標系を採用し,かつ水深と幅の効果を断面積の変化として取り扱い,
(44)
と線形長波理論式を変形し,
(45)
なる波動方程式に関して理論解を導出する方法がとられる.この式(45)の解法については,引用文献13)を参照願いたい.

3.3 港湾における津波の共振
湾内での津波を大きくする原因の他のひとつに共振効果がある.湾内の水は外力が与えられない限り静水状態であるが,力が作用すると振動する.こうした振動系には,それ特有の固有振動があり,来襲した津波が湾の固有振動に近いもの,すなわち,湾奥から反射してきた津波と続いて入射してくる津波の出会いの条件が整えば,共振が生じ,湾奥へ行くほど津波振幅は大きくなる.津波の場合,連続して3波来襲すると共振は完成すると考えてもよい.
港湾の共振に関しては,古典的であるが線形長波理論式を利用したIppen-Goda14)15)の理論解が有名である.図一5に示している平面2次元的な湾に対して線形長波理論式は,水平床であるならば,
(46)
である.いま,波形\etaが空間だけの関数と時間だけの関数に変数分離することが許されるものとし,
(47)
とする.ここに,\omegaは角周波数である.式(46)からu,vを消去し,式(47)を代入すると
(48)
なるHelmholts型の方程式が導ける.
この式(48)を適切な境界条件の下で解くと,湾奥における津波の増幅率を導出
することができ,図一5に示すような相対湾長kl=c_0\omega lと振幅の増幅率に関する理論解を得ることができる.なお,同様な湾の共振を取り扱った理論的な研究としては,Mano16)などの研究がある.

3.3 島による津波の捕捉
津波の伝播経路に島があると,屈折,回折そして共振の重畳現象により,津
波水位が異常に高くなる場合がある.この現象を島による津波の捕捉(Trapping)とよぶ.藤間ら17)は,図一6に示す極座標系を利用して島による津波の捕捉現象に関する理論解を導出した.
藤間らの理論の出発点は,式(42)に水深変化を考慮した,
(49)
である.Ippen-Godaと同様に波形\etaを変数分離して,式(47)とおくと
(50)
となる.さらに,島の円形境界に適合するように極座標系を導入し,
(51)
とおくと,式(49)は,n番目の成分に対して,
(52)
なるBessel型の方程式を得る.式(52)はdh/dr=0であるならn次のBessel関数が解となるが,dh/dr≠0の場合はBessel関数と異なる級数解となる.藤間らは,水平部と島の斜面部に関してそれぞれ解を導き,そして両者の解が連続するように最終的な島周りの理論解を導出するのに成功した.図一7は,津波の打ち上げ高と\beta=2\sqrt{\omega^2 r_0/gm}(mは海底勾配)の関係を描いたものである.この図から湾における津波の共振と同様な特性が見られることがわかる,また,1983年日本海中部地震における隠岐(島後)と奥尻島の痕跡値と理論値の比較を図一8に示す.図から,隠岐,奥尻島ともに島周りに沿って津波高の高い地点と低い地点が交互に現れ,痕跡高と理論高が良好な一致を示し.理論解の妥当性がわかる.

3.4 その他の線形長波理論式を利用した解析解
 上記以外の著名な理論解としては,陸棚波エッジ波そして境界波に関するものがある,古くは,Ogawa18),Kajiura19),最近では,藤間ら20),越村ら21)の研究である.これらは,線形長波理論式を基礎式として津波の初期波形と境界形状(水深分布)が多少異なる問題をそれぞれ取り扱っている.特に,水深形状が異なることにより,数学的な取り扱いがGreen関数,Laguerreの微分方程式そして合流型幾何微分方程式を利用した解法に変化していると解釈してよい.

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式(39〜52)
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図一3 一様勾配に関する解析の座標系
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図一4 湾による増幅に関する解析の座標系13)
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図一5 港湾の共振現象
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図一6 円錐島に関する座標系
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図一7 島による津波の捕捉効果
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図一8 隠岐,奥尻島に関する痕跡高と理論高の比較

4. 非線形または分散波理論で考察する必要がある現象

(1) 津波の非線形効果
 非線形長波理論の特徴は,式(37)から分散項の効果を取り除いた波速,
(53)
となることである.したがって,津波の水位が高いところでは波速が大きくなり,また水位が低いところでは波速が小さくなる.これを波の変形で考えれば,水平床であっても波の前面が徐々に急勾配になる(波の前傾化)ことを意味する.
 一般に,非線形方程式の解析解を得るのは難し
い.Carrier・Greenspan22)は,一様斜面上の津波の打ち上げに関して巧みな変換を施すことにより,非線形長波理論による解析解を導くのに成功した.
 Carrier-Greenspanの方法は下記のとおりである.すなわち,C=\sqrt{g(h+\eta)}とおき・式(28)」を変形すると
(54)
なる非線形長波理論式の特性曲線表示式を得る,ただし,m=∂h/∂xである.さらに,\alpha=2(u一gmt),\beta=4Cで定義される新変数を導入すると,式(54)が,
(55)
なる線形方程式に変形できるのである.式(55)の解を図一9に示す.非線形長波理論の打ち上げそして打ち下げ波形は,図に示すように上下非対称の形となる.

(2)津波の波数分散効果
 深海域における津波の波数分散効果に関しては,有意な観測結果が無く,詳しいことが未だよく分かっていない.理論的には,Kajiura23)がGreen関数を利用して津波第一波の波数分散効果による減衰特性に関して検討している.この理論によると近地で発生した津波の第一波の減衰は,2次元伝播問題で伝播時間の-1/6乗に関係し,大きな減衰量とならない.ただし,Kajiuraが取り扱ったのは一定水位を仮定した初期波源であり,そのまま現実問題にあてはめることはできない.
ここでは,深海域における非線形分散波理論の波数分散効果に関して考察した岩瀬ら24)25)の研究成果に関して概説する.図一10は,日本近海で発生した既往の津波初期波形(短軸方向断面)の波数スペクトル形と非線形分散波理論(Peregrine式)と微小振幅表面波理論の分散関係式を示したものである.
波数スペクトルは面積で正規化されており,参考のため波高3m,周期15sの風波に関するスペクトル形も示している.この図から,当然のことであるが津波と波浪ではスペクトルの波数バンドが相当異なり,分散関係においても津波の全エネルギーの80%から90%が線形長波理論の波速で伝播することがわかる.線形長波理論の波速で近似できない残りの10%から20%も非線形分散波理論(Peregrine式)の分散関係で比比較的精度良く表現できることが予想できる.
 図一11は1983年日本海中部地震津波に関して相田26)により提案された初期波形である.図一12は,指向性の最も大きい方向(図一11のA-A’断面)に関して,一定水深(1000m,3000m,5000m,7000m)を仮定した微小振幅表面波理論線形長波理論そして非線形分散波理論(Peregrineの式)の1次元伝播計算結果である.相田により想定された1983年日本海中部地震津波の波源は高角断層タイプであり,高波数成分が相対的に多く含まれるため,波数分散効果が顕著に現れる結果となっている.図から判断できるように水深5000m程度までは,非線形分散波理論の計算結果が真値と考えられる微小振幅表面波理論の結果によく合致し,非線形分散波理論で深海域の津波の波数分散効果を表現しても良いことがわかる.
 なお,図一13は,既往の津波波源26),27),28)を利用して深海域における津波の波数分散効果の重要度を調べたものである.海底の地盤立ち上がり時間\tauを考慮した非線形分散波理論と線形長波理論による1次元伝播を行い,沿岸津波高と相関が良いと考えられている200m水深地点における津波波形の比較している.1933年三陸地震津波や1983年日本海中部地震津波のように初期波形がシャープな山型を有する地震津波では,初期伝播過程の波数分散効果の影響は大きく表れていることが確認でき,波数分散効果が無視できないことがわかる.一方,地盤の立ち上がり時間が長くなると,高周波成分の発生が抑えられるため,いずれの地震津波に関しても波数分散効果は小さく抑えられ,線形長波理論と非線形分散波理論の差違が小さいことが確認できる.

(3)津波のソリトン分裂
浅海域における津波の波数分散効果に関しては,1983年日本海中部地震津波により,その重要性が再確認されている29).津波が浅海域に達すると徐々に非線形効果が大きくなり,非線形変調によりスペクトルの高波数成分が相対的に増していく,そして,遠浅の海岸のように海岸線へ到達するまで十分な時間があると非線形効果と分散効果により,津波の波峰が複数の孤立波に分かれていくことがある.これを津波のソリトン分裂という.なお,津波のソリトン分裂は下記のように説明することができる.
K-dV式(35)を波の伝播と共に移動する座標系に関するものに変形する.新たな座標系を(X,T)とし,
(56)
なる変換をするとK-dV式は,
(57)
となる.この変換により,線形項が無くなり,波形の時間的な変化∂eta/∂Tが非線形項と分散項の大小関係で表現できる.図一14に孤立波のソリトン分裂のメカニズムの説明を示す.右対称の孤立波であれば,非線形項と分散項は波の前後で逆符号の値となり,∂eta/∂T=0すなわち波形が変化しない.孤立波が前傾化すると非線形項と分散項が0となる点が異なり,同符号となる部分が現れ,∂eta/∂T>0の部分では水位が上昇し,∂eta/∂T<0なる部分で水位が減少する。このように波の前傾化がきっかけで1波峰が多数のソリトン(孤立波)に分かれていく.
 図一15は,非線形分散波理論を用いて行った孤立波の変形と遡上に関する数値計算例30)である.孤立波がソリトン分裂し,砕波後に陸上遡上する過程が精度良く計算できている様子がよくわかる.なお,この数値解析では,3種類の砕波減衰モデルが利用されている.砕波モデルに関しては,今後詳細な検討を必要とする課題であり,詳しいことを割愛する.

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式(53〜57)
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図ー9 非線形長波理論による遡上
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図ー10
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図一10 津波の波数スペクトルと分散性
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図一11 1983年日本海中部地震の初期波形
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図一12 深海域の分散性に関する微小振幅波理論線形長波理論そして非線形分散波理論の比較
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図一13 既往津波の深海域における波数分散性
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図一14 ソリトン分裂のメカニズム
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図一15 ソリトン分裂と遡上に関する計算結果と実験結果の比較

5.最新の津波数値計算モデル

(1)非線形分散波理論による平面2次元津波計算
津波の数値計算モデルは,1960年代の線形長波理論モデル,1980年代の非線形長波理論式モデルそして1990年代の非線形分散波理論式モデル31),32),33)と発達してきた.ここでは,1980年日本海中部地震津波を対象とし,非線形分散波理論式モデルを利用した数値計算例を紹介する.
計算に利用している支配方程式は,非線形分散理論式(Peregrine式)に海底摩擦項を考慮した
(58)
(59)
(60)
である.ここに,(Q_x,Q_y)は(x,y)方向の単位幅流量(流量フラックス),Dは全水深(D=h+\eta),nはManningの粗度係数である.数値計算法としては,陽的な差分法と陰的な差分法を組み合わせたMulti-step差分スキーム34)を利用している.対象とした計算領域は波源を含む北秋田海岸を中心とする範囲であり,300m格子を基準に北秋田海岸で12.5m格子まで水深分布を考慮して細かくしている.図一16および図一17に計算結果の一例を示す.図一16は,深海域における津波の伝播の様子を鳥緻図として表したものであり,既往の非線形長波モデルによる計算結果と比較したものである、図一17は浅海域(北秋田海岸の峰浜村沿岸)に関するものであり,これも非線形長波モデルの結果と比較している,以上の図から,非線形分散波モデルは,深海域,浅海域ともに従来の非線形長波モデルと大きく異なり,波数分散およびソリトン分裂する結果となることがわかる.しかも,ソリトン分裂の効果は打ち上げ高と流体力の評価に大きな影響を及ぼすものであり,今後,非線形分散波モデルは,精力的に研究・モデル開発を行わなければならない重要な課題であることがよくわかる.

(2)乱流モデルを利用した2-D・3-Dハイブリッド津波計算
津波防波堤周辺の津波の挙動に関する平面2次元と3次元の混合計算例を最新の津波計算の一例として紹介する.なお,既往の3次元津波計算の例としては,Raad35)の研究レビューを参照されたい.
2-D・3-Dハイブリッド津波計算の対象領域を図一18に示す.計算は,図に示すような平面水槽に防波堤の模型を設置し,規則波を与えて防波堤およびそのマウンドによる流れの挙動を計算したものである.領域全体を3次元で取り扱うのが理想であるが,計算のCPUの問題を考慮し,領域の一部を3次元計算とし他を平面2次元計算としている.計算の支配方程式は,3次元領域において連続の式とNavior-Stokes式,
(61)
(62)
である。ここに,u_iは空間の各座標軸方向の流速,vは渦動粘性係数e_{ij}は変形速度テンソルである.また,平面2次元領域は,式(58)から式(60)から分散項を取り除いた非線形長波理論式をもちいている,なお,3次元計算における渦動粘性係数は,格子平均モデル(LES,Large eddy simulation)を利用し,
(63)
で計算している,ここに,\alphaは経験的粘性係数(\delta x,\delta y,\delta z)は空間の各座標軸方向の計算格子長であり,(2.5,2.5,1.25)cmである。図一19および図一20に計算結果の一例を示す.図一19は,水深方向に平均した流速ベクトルを図化したものであり,防波堤前後に生成される渦が計算されていることがわかる.また,図一20は,防波堤開口部中央の流速ベクトルを示している.両図から,防波堤開口部付近では,3次元的な渦構造となっていることがわかる.したがって,この様な現象を水深方向に積分された平面2次元モデルで表現するのが困難であり,CPUの問題があるものの,非線形分散波理論モデルによる津波計算と同様に,今後取り組んで行かなければならない重要な課題のひとつであると思える.

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式(58〜63)
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図一16 1983年日本海中部地震津波に関する非線形分散波モデルと非線形長波モデルの比較
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図一17 浅海域における非線形分散モデルと非線形長波モデルによる計算結果の比較
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図一18 計算領域
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図一19 防波堤前後の水平流速(水深方向の平均流速)ベクトル分布
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図一20 防波堤開口部中央の鉛直流速ベクトル分布

6.おわりに

土木学会から執筆依頼がきた当初に著者は,最近はやりの非線形分散波理論式を用いた津波の数値計算に関して書くことを考えていた.しかし,この研修会の対象が大学院生および若い技術者であること,そして津波という現象を初めて学習する人がいることを考え,津波に関する理論的な取り扱いも簡単であるが記述することにした.図や文間から想像してもらえたと思うが,極端な見方をすると津波の現象は全て地形との応答・共振現象であると考えてもよい.これは,津波の空間的な拡がりのスケールが大陸棚そして沿岸地形のスケールと同じオーダーであることによる.したがって,新たな理論解を導く場合にも,数値解析を行う場合でも津波の初期波形と地形の表現法そしてそれの精度が最終的な結果を大きく左右させる.また,津波の伝播変形に比べ地震学との学際分野である津波の波源の問題に関してはよくわかっていない事柄が多い.新進の研究者にチャレンジしてもらいたい重要な研究課題のひとつである.

引用文献

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25)岩瀬浩之・後藤智明:津波の波数分散効果に関する考察:,月刊海洋,海洋出版,号外No.5,pp.99・104 1998.
26)相田勇:1983年日本海中部地震津波の波源数値モデル,東京大学地震研究所彙,59号,1974.
27)相田勇:三陸沖の古い津波のシミュレーション,東京大学地震研究所彙報,52号,pp.71・100,1977
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29)首藤伸夫:秋田県北部海岸における日本海中部地震津波,海岸工学論文集,土木学会,Vol.31,pp、247-251 1984.
30)鈴木崇之:ソリトン分裂波を対象とした砕波と陸上遡上に関する基礎的研究,東海大学大学院1998年度修士論文,37p,1998.
31)佐藤愼司:波の分裂と砕波を考慮した津波の数値計算海岸工学論文集,土木学会,Vol.42,pp.376-380, 1995.
32)藤井直樹・大森政則・高尾誠・金山進:津波の流速計算に関する研究海岸工学論文集,土木学会,Vol.43,PP291・295,1996.
33)岩瀬浩之・見上敏文・後藤智明:非線形分散波理論を用いた実用的な津波計算モデル,土木学会論文集,No.600,pp.119・124,1998.
34)原信彦・岩瀬浩之・後藤智明:非線形分散波理論式に関する多段階混合差分スキームの提案,海岸工学論文集土木学会,Vbl,45,pp、26-30,1998.
35)Raad, P. E. : Modeling Tsunamis with Marker and Cell Methods, Long-wave runup models, World Scientific, pp.181-203, 1995.

津波の波数分散効果に関する考察 岩瀬浩之 いわせひろゆき 後藤智明 ごとうちあき 編集部 筆者:東海大学工学部 東海大学工学部教授

Abstract

 遠地津波に比べ日本近海で発生する津波は,伝播距離が短いため浅海域の一部を除き波数分散効果はあまり重要でないと考えられていた.本文では,非線形分散波理論を利用した津波数値計算の妥当性を検証するとともに伝播距離が短くても波数分散効果が必ずしも無視できない津波があることを示す.

1.はじめに

 津波の数値計算は計算機の高速化や計算手法の発展に伴い,精度の高い結果が得られるようになってきた.しかしながら,数値計算の支配方程式としては,線形長波理論や非線形性を考慮した浅水理論(非線形長波理論)が主流である.日本近海で発生する近地津波においては,波源域から沿岸域までの伝播距離が遠地津波に比べ短く,津波の波数分散性は浅海域の一部を除き無視できると考えられていたためである.
 浅海域における津波の波数分散効果に関しては,1983年日本海中部地震津波によりその重要性が再確認されている.すなわち,北秋田海岸において非線形性と波数分散性の相互干渉によって引き起こさる津波のソリトン分裂が観測されたのである.
 一方,深海域における津波の波数分散効果に関しては,有意な観測結果が皆無であり,詳しいことが未だ分かっていない.理論的には,Kaiura(1)が時間に関係するグリーン関数を利用して津波第一波の波数分散効果による減衰特性に関して検討している.この理論によると近地で発生した津波の第一波の減衰は,2次元伝播問題で伝播時間の-1/6乗に関係し,大きな減衰量とならない.
ただし,Kajiuraが取り扱ったのは一定水位を仮定した初期波源であり,この結果をそのまま現実問題に当てはめることはできない.
そこで,本文では,非線形分散波理論を用いた津波の数値計算モデルの妥当性を検証するとともに深海域と浅海域のそれぞれに関して数値計算を利用した津波の波数分散効果の重要性について検討した結果を報告する.

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表紙

2.非線形分散波理論を用いた津波数値計算法

 波の非線形性と分散性を考慮した方程式としては,KdV方程式がよく知られているが,平面的な広がりと海底地形による反射を考慮する津波の様な海の波を対象とするため,式(1)のような非線形分散波理論を用いる.ここに,\etaは波高,M,Nは,x,y方向の線流量,h,D,gはそれぞれ静水深,全水深,重力加速度,A_Hは水平渦動粘性係数,nはマニングの粗度係数を示す.
本計算では,上記の支配方程式をスタッガード格子により差分化を行い,運動の式中の局所項,静水圧項(陽差分)と非線形項,波数分散項(陰差分)を分割して解く,多段:階混合差分スキーム(2)を使用する.

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式(1)

3.深海域における非線形分散波理論の妥当性

深海域における津波は,非線形性が無視できるため微小振幅波理論で記述することができる.この微小振幅波理論を真値と考え非線形分散波理論の妥当性について考察する.検討対象とした津波の初期波形は,1983年日本海中部地震津波の初期波源である.1983年日本海中部地震i津波を検討の対象とした理由は,高角断層タイプの地震によって発生した津波であり,高波数成分の波が含まれるため,波数分散性が顕著に現れる可能性があるためである.
図1は,1983年日本海中部地震津波に関する相田(3)により提案された初期波形を水位鳥鰍図,平面水位分布図,断面水位分布図により示したものである.計算は,一定水深1,000m,3,000m,5,000mそして7,000mに関する1次元伝播を対象とし,指向性の最も大きい方向(図1のA-A’断面)に対して実施している、計算の空間格子は100m,時間ステップは0.05sである.図2は,線形長波理論および非線形分散波理論を用いた計算結果を微小振幅理論による計算結果と比較したものである.図から,非線形分散波理論は,微小振幅波理論とかなりの精度で一致することが分かる.特に,水深3,000m以下では,分散波列もよく一致する.
水深が7,000m程度と深くなると分散波列の精度が多少劣るが,第一波に限ると十分な精度を有することが分かる.一方,線形長波理論は,分散波列が表現できく,また第一波の水位も大きく異なる結果となる.
 以上のことから,1983年日本海中部地震津波の相田モデルのような高角タイプの断層では津波初期波形に高波数成分の波が含まれるため波数分散性が必ずしも無視できないことが分かる.また,非線形分散波理論を用いた計算は,水深5,000m程度以浅で比較的良好な精度を有していることも分かる.

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図1 津波初期波形(1983年日本海中部地震).
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図2 水平床における微少振幅波理論との比較

4. 深海域における波数分散効果

 先に述べたように,日本近海で発生する近地津波は,陸上までの伝播距離が短いため波数分散効果が表れる前に沿岸に到達することが多く,その影響は非常に小さく殆ど無視できると考えられてきた.そのため,計算効率を考え線形長波理論や浅水理論を用いることが多かった.しかしながら,先に示した様に高角断層タイプの地震によって発生した津波では,高波数成分の波が含まれるため,波数分散性が顕著に現れる可能性がある.
 図3は,1983年日本海中部地震津波に関して線形長波理論と非線形分散波理論を用いて2種類の2次元伝播数値計算を行った例である.図は,津波発生後8分の水位鳥緻図および断面水位分布図である.この計算は,簡単なため一定水深2,500mの海域に関して空間格子500搬,時間ステップ0.50sで行っている、図から,非線形分散波理論による計算では波数分散性に伴う分散波列が生成され,線形長波理論による結果に比べ空間水位分布の様相が大きく異なることが分かる.なお,この結果は,伝播距離が100km程度に関するものであり,近海で発生した津波に関しても波数分散性が無視できない場合があることを示唆する.
 以上の結果ことを踏まえ,我が国の近海で過去に発生した代表的な津波を例にとり,1次元伝播問題として,沿岸津波高と相関が良いと考えられている200m水深地点における波高と周期に関する検討を行う。さらに,鉛直方向の海底の地盤立ち上がり時間が波数分散効果に及ぼす影響について検証も行う.対象とした地震津波は1707年宝永地震津波(4) ,1933年三陸地震津波(5),そして1983年日本海中部地震津波である.海底地形はそれぞれの津波に関して発生領域から沿岸部を簡易的な地形に近似し,海底の地盤変位は立ち上がり時間\tauに対し線形的に変化させている.図4はこの結果をまとめたものである.1983年日本海中部地震津波のように,初期波形がシャープな山型を有する地震津波では,初期伝播過程の波数分散効果の影響は大きく表れていることが確認でき,波数分散効果が無視できないことが分かる.1707年宝永地震津波の中央部のように比較的なだらかな初期波形を有する地震津波は,線形長波理論とほぼ一致した結果が得られる.
一方,地盤の立ち上がり時間が長くなると,高周波成分の発生が抑えられるため,いずれの地震津波に関しても波数分散効果は小さくとどまり,線形長波理論と非線形分散波理論の差違が小さいことが確認できる.

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図3 津波発生8分後の伝播の様子.
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図4 地盤の立ち上がり時間を考慮した水深200m地点の時間波形

5. 浅海域における波数分散効果

浅海領域を伝播する津波は,有限振幅性による非線形効果を無視することはできなくなる.特に遠浅海域のように水深が比較的浅い領域を長い距離を播する津波では,非線形性と波数分散性の相互干渉の影響でソリトン分裂波を生成する.分裂した津波は,波長が短くなり波高が波形曲率効果によって著しく上昇する.ここでは,日本海中部地震津波の初期波形(図1)を用た浅水理論と非線形分散波理論による1次元伝播計算による浅海領域の津波波高の差違について,波数分散効果が計算結果に及ぼす影響を示す.計算で用いた海底地形は,現地地形の水深200m地点より浅い海域を近似し,前節で得られた時間波形(図4)を計算の境界条件として与えた.図5はソリトン分裂を生成し始める領域での伝播の様子を示したもので,横軸上下の数字はそれぞれ水深200m地点からの距離と水深を示し,時間ステップ0.01s,空間格子は上から5m,10m,20mとした場合の結果である.非線形分散波理論による計算ではソリトン分裂が生成され,波形曲率効果の影響により浅水理論の結果に比べ波高の上昇が確認できる.また,非線形分散波理論では空間格子によって数値誤差が浅水理論に比べ伝播挙動に大きく影響を及ぼすため,格子が大きくなると波高減衰が生じるため十分な格子間隔を必要とする.遠浅な沿岸域での津波挙動を精度良く再現するためには,波数分散効果を考慮した非線形分散波理論を用いた津波数値計算が必要であると言える.

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図5 浅海領域における津波のソリトン分裂の様子.

6.おわりに

津波における波数分散効果に関して検討をおこなった.その結果,近地で発生した津波においても波数分散性が無視できない場合があることを確認した.また,微少振幅波理論との比較により,水深5,000m程度までは非線形分散波理論で精度良く計算が可能であることを明らかにした.なお,現地地形を対象とする2次元伝播計算については,未だ幾つかの問題点があるが,津波の河川遡上を含め今後の課題として検討していきたい.

参考文献

[1]Kajiufa,K.:The leading Wave of a Tsunami,B.E.R.I,41(3),pp.535-571(1963).
[2]原信彦,岩瀬浩之,後藤智明:非線形分散波理論式に関する多段階混合差分スキームの提案,海岸工学論文集,1998(印刷中).
[3]相田勇:1983年日本海中部地震津波の波源数値モデル,東京大学地震研究所彙,59号,pp.93-104(1974).
[4]相田勇:南海道沖の津波の数値実験,東京大学地震研究所彙報56号,713-730(1981).
[5]相田勇:三陸沖の古い津波のシミュレーション,東京大学地震研究所彙報52号,71400(1977).

Leap-frog法を用いた津波の数値計算法 1982年7月 東北大学工学部土木工学科 後藤智明・小川由信

目次

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目次

第1章 数値計算法

1-1 支配方程式と差分スキーム
(1) 浅水理論
 水理学的な観点からすれば、水の波は非常に多くの種類に分けることができる。ここで考える波は地震によって海底地形が変動することによって発生する波であり、津波と呼ばれるものである。水の波の分類では長波に属している。長波の理論は相対水深(水深と波長の比)が小さいとき用いられる近似である。相対水深が小さいときは、重力に比べ水粒子の鉛直方向の加速度を無視することが可能であり、また流れの道すじの曲率は小さい。従って、運動の鉛直成分は圧力分布に影響を及ぼさず、圧力は静水圧分布と仮定される。さらに、鉛直線に沿った水平方向の流速の分布は一様と仮定される。
 このような近似の下で、長波の運動は
(1)
(2)
(3)
で表わされ、浅水理論と呼ばれている。ここで、
(式1)
である。
 海底摩擦力は、等流からの類推から、全水深D(=h+\eta)を用い、
(式2)
で評価される。ここで、fは摩擦係数である。摩擦係数に関する詳細な論議はここでは省略するが、一般にはこのfの形で海底摩擦力を評価することは不便であるため、fのかわりにManningの相当粗度nを使用する。fとnとの関係は
(式3)
であるので、海底摩擦力は結局、
(4)
と表わされる。
次に、(x,y)方向の流量flux(M,N)を導入する。M,Nをu,vで表わすと
(5)
である。式の(1)〜(3)を海底から水表面まで積分し、この流量flux(M,N)を用いると、
鉛直方向に積分された浅水理論として
(6)
(7)
(8)
が導びかれる。この式(6)〜(8)が数値計算の支配方程式となる。
数値計算の支配方程式としては、積分する前の式(1)〜(3)を用いることも考えられるが、式(1)〜(3)は差分化すると保存則が成り立たなくなることに注意すべきである。保存則が成り立たないということは案外見すごされがちではあるが、場合によっては非常に大きな計算誤差をもたらすことがある。一方、式(6)〜(8)は、運動の式に関してもある種の保存形を満している。
 (2) 差分スキームとその安定性
 Leap〜frog法は中央差分を用いた2次の精度の差分法である。いま、図1-1に示すように、関数F(x)を\deltaxの間隔で離散化し、
(式4)
で表わす。F_{i-1}、,F_{i+!}をTaylor級数で表わすと、
(式5)
であるので、両者の差をとることにより、
(9)
が導びかれる。この式(9)が1階の微分の中央差分近似である。
式(6)〜(8)のleap-frog法による差分化を考える。1eap-frog法では、境界条件の設定の容易性の為、図1-2に示すように,\eta,M,Nの計算点をずらして設置する。図中(x,y,t)に対応する離散化量を表わす添字としては(i,j,k)を用いている。
連続の式(6)の差分化を考える。図から中央差分を用いると、
(式6)
であるので、k++1/2時間ステップまでの値が既知とすると、未知である\eta^{k+1}_{i,j}は,
(10)
となる。
 次に、運動方程式の差分化を考える。まず、x方向の式とし、線形項だけを考える。
x方向の運動の式(7)の線形部は、
(11)
である(i+1/2,j,k)まわりの中央差分を考え、未知量をM^{k+1/2}_{i+1/2,j}とおくと、式(11)の差分式は、
(12)
となる。ここで、D^{k}_{i+1/2,j}は、\eta^{k}_{i+1,j}および\eta^{k}_{i,j}から
(13)
である。y方向の運動の式は
(14)
(15)
となる。式(10)、(12)、(14)を連立して解くことにより、線形長波の計算が可能となる。ただし、本来の線形長波の式は式(12)、(14)においてDをhとおきかえたものである。hが\etaに比べ大きい場合は、線形計算は式(12)、(14)を用いて行ってもよいが、hが\etaに比べ小さい場合は発散する可能性が大きくなることに注意を要する。
移流項の取り扱いは、leap-frog法では計算の安定の為風上差分を用いている。これは次のように簡単に説明することができる。例として、次の移流方程式を考える。
(16)
ここで、Cは伝達速度で定数とする。この式をleap-frog法で差分すると・計算点の配置から∂F/∂tには前進差分を用いる必要がある(図1-3参照)。従って、差分化すると、
(式7)
C∂F/∂xの中央差分をとると
(式8)
となる。従って未知数F^{k+1}_{i+1/2}は
(17)
となる。逆に言えば、この差分式を解くことは、\delta t^2+\delta x^2のオーダーで、我々が暗に
(18)
を解くことに相当している。ここで、
(式9)
であるので、式(18)を解くことは
(19)
という負の拡散係数を有する移流拡散方程式を解くことに相当する。このような負の拡散は誤差を集めて増大させる働きがあるため、式(17)は不安定な差分式であるといえる。
そこで、C∂F/∂xの差分についても前進あるいは後退差分を採用することを考える。
前進差分では
(式10)
後退差分では
(式11)
で表わされる。この場合もdelta x^2+\delta t^2のオーダーで考えた場合、前進差分では
(20)
後退差分では
(21)
を解くことに相当する。従って、正の拡散作用を受けるためには、
C>0のとき 後退差分、C<0のとき 前進差分
を採用し、しかも\deltax/\deltat≧Cである必要がある。
 従って、移流項の差分は流れ方向にとった差分(この理由で風上差分と呼んでいる。)
を用いなければならない。Ieap-frog法は2次の精度の差分式といわれているが、こ
の風上差分を用していることにより、移流項は1次の精度になっていることに注意を要
する。
 式(7)、(8)の移流項の差分は、この風上差分を用いると、
(式12)
(22)
となる。ただし、
(23)
である。
 次に摩擦項の取り扱いにっいて述べる。摩擦項は一種の常数項に似たものとなるが、この常数項も陽的な差分を施すと不安定の原因となる。そこで調算では摩擦項を陰的な差分で表わすことを考えた。すなわち、
(24)
とおくのである。
以上のことから、差分式は
(25)
(26)
(27)
となる。ここで、
(28)
(29)
(30)
(31)
(32)
(33)
である。また、\lambda、\nuは式(23)に従うものとする。

1-2初期条件・境界条件
(1) 初期条件
本計算では、対象とする波は津波だけとし、風波・潮汐の運動は考えない。
潮汐は津波の計算内では変動しないものとし、計算では静水位を潮位とする。従って時刻k-1/2まではいかなる運動もないものとし、
(34)
とする。また、陸上部は遡上計算のため、水位\eta^{k-1}_{i,j}はその地点の地盤高h_{i,j}を用い
(35)
とおく。ここで、h_{i,j}は陸上では負値となることに注意を要する。
(2) 規則波を用いた沖側境界条件
ここでは、沖側境界でsin形で表わされた進行波の入力法について記述する。
沖測境界で強制的にsin波を入力した場合、反射波が沖側境界を通過することができなくなるため、入力とは別のモードの振動が新らたに現われるという問題がおこる。ここでは、この反射波を通過させうる方法について述べる。模型の特性曲線法を用いればこの問題は容易に解決され得る。
水平床の線型長波を考える。線、型長波の式は、一次元伝播の場合
(36)
(37)
で表わされる。式(36)を変形すると
(36’)」
(37)を変形すると
(37’)
となる。両式の和および差をとると
(38)
を得る。式(38)の物理的な意味は、dx/dt=±\sqrt{gh}という特性線上でu±\sqrt{g/h}\etaというリーマン特性量をもつことであるので、この関係から、
(39)
が導びかれる。
 いま、図1-4に示すように、x=x_0を境界点とおき、x軸の負の方向に進行するsin波が入射するものとする。図1-4から特性関係は正の特性線に沿って
(40)
負の特性線に沿って
(41)
である。負の特性線に沿う特性量は進行波としてのものであるので、u_0と\eta_0との間には
(42)
が成り立つ。従って、この関係を用いると、式(41)は
(41’)
となる。式(40)、(41)」から\eta_2を消去すると、
(43)
が導びかれる。故に、入射波を
(式13)
とおくと(k_0は波数)
(44)
であることを考えると、結局境界値u_2は
(45)
となる。
式(45)を本計算法に合致するように書き改ためると
(46)
となる。ここで、M_1,\eta_1は次式のように計算される。
(47)
(48)
 次に、二次元伝播の場合を考える。二次元伝播の場合は特性関係が特性曲面上で成り立つことになるのが一般的であるが、ここでは一次元伝播の結果を拡張し用いることにする。一次元伝播と大きく異なる点は波の進行方向に関してである。一般的に波の入射方向は一定であるので、負の特性線は一定な方向となるが、反射波を表わす正の特性線は入射方向と異なることがある。故に、正、負の両方の特性線の方向を考え、一次元伝播と同防法で計算すれば問題はない。本計算法では反射波の特性線はM^{k-1/2}_{i,j},N^{k-1/2}_{i,j}の合方向から定めればよい。

 (3) 強制入力としての沖側境界条件
 先に述べた規則波の入力とは異なり、反射波の成分をも含んだ境界値を入力値として用いる場合は、反射波成分を自由透過させるといった面倒な操作をする必要はない。そのまま、沖側の入力境界値とすればよい。線形計算への入力なら水位又は流量fluxの片方のデータだけでよい。
 (4) 自由透過としての沖側境界条件
 ここでは、(2)、(3)で述べた沖側境界条件と異なり、計算領域内の波を境界から自由に透過させる境界条件について説明する。(2)で述べた特性関係を用いる。(2)の説明で用いた図3-4において、境界x=x_0で自由透過させる方法を考える。特性関係は、u_0=\eta_0、u_1=+\sqrt{g/h}\eta_1であることを考えると簡単となり、
(49)
が境界条件となる。(2)の場合と同様に二次元伝播に関しては、流向を考慮した境界条件が必要となる。
 (5) 遡上境界条件
 波の遡上は非線形計算の場合許すものとし、線形計算では考えないものとする。陸上のメッシュと水没しているメッシュとの差は全水深Dによって判断する。
D=h+\eta>0のとき水没しているメッシュ
≦0のとき陸上のメッシュ
と分類する。従って、波先端は陸上のメッシュと水没のメッシュの中間にあるものと考える。このメッシュ間の境界の流量fluxの計算は、陸上のメッシュの地盤高よりも水没側の水位が高い場合に行うものとする。その他の場合は流量fluxを零とおく。
 (6) 越流境界条件
 計算領域内に防波堤・防潮堤が存在する場合、水位がその天端高を越えた場合次の本間公式を用いて計算する。天端高を基準とした堤前後の水深をh_1,h_2(h_1>h_2)とした時に、流量fluxQを
(50)
とおくのである。ここで、\mu=0.35,\mu」=26\muである。
1-3領域の接続
 津波・高潮などのいわゆる長波の数値計算では、境界条件を正確に与える必要上、境界を水深が十分に深い外洋上に設ける必要がある。しかしながら、計算時間の節約上、線形計算・非線形計算の使い分けの他に、外洋上では空間メッシュを粗くし、沿岸部あるいは湾の入口に近づくにつれてこれを細かくしていく方法を採った方が有利である。また、時間メッシュ\delta tについては、空聞メッシュ\delta xとの間に、基本方程式系に対応した計算の安定条件、例えば、C.F.L.条件、
(51)
を満たす必要がある。一般には、沿岸域でh_{max}が小さくなるため、それに対応して\delta xを変化させれば\delta tを変える必要がないように考えられる。しかし、例えば工学上問題となる、津波の陸上への遡上を含む計算では、安定条件がかなり厳しくなるため、時間メッシュを場所的に変化させた方が良い場合も生ずる。そこで、本節では、これらの空間メッシュ\delta xおよび時間メッシュ\delta tの異なる領域間で計算を連続的に進めるための、水位および流量の接続方法について述べる。

 (1) 空間領域における領域の接続方法
 いま、二次元計算を対象としているので、領域の接続を論ずる場合空問座標x-yおよび時間座標tの3つの座標を用いて三次元的に考えるのが一般的である。しかし、このように考えるのは繁雑であるから、以下では、まず始めに一次元伝播を例にとって時間的な計算過程の中で領域接続という手続きがどのような位置を占めるかを説明し、そののちに、物理平面(x-y平面)での接続方法について述べる。なお、1-3.(1)では空間領域のみの接続を扱い、時間メッシュ\delta tは一定とする。
(a) 時間的な過程の中での領域接続の位置づけ
図1-5は、一次元伝播の場合のx-t平面での計算過程を描いたものである。図中実線は流量計算網、破線は水位計算網を表わし、t軸の数字1、1」などは、流量、水位の計算の時間ステップを示している。また、着目するメッシュの流量は、xの正の側の壁を通過する値であると約束する。
 図1-5(A)は、全領域で空間メッシュ\delta xが同一の場合である。
計算の前提としては、図中二重丸で示した値、すなわち時間0」、0ステップでの水位Z、流量M(初期条件)およびx=0、n・\delta xでの流量ないしは水位(境界条件)が既知であることが必要である。これら既知量を用いて、連続の式により第1」ステップの水位Z_1を求め、次に運動の式により第1ステップのM_1が求まる。この過程を繰返すことにより、時間的なZ、Mの変化が計算されることになる。
 次に、図1-5(B)は、b−b」を領域の境界とし、これよりも左側の領域S
(small)で空間メッシュが\delta x、右側の領域L(large)でk\delta x(k>1)となっている場合である。計算手順は上記(A)の場合と同じであるが、それぞれの領域で別々に計算が行なわれるため、2つの領域間で水位、流量の受渡しを行なわないと、図のように計算しうる範囲が時間とともに狭くなってしまう。計算がx-t平面の全範囲で行なわれるためには、まず境界上での流量を知る必要がある。この流量の計算は、領域S,Lいずれで計算してもかまわないが、いま、領域Lで計算すると仮定すると、境界b-b」よりも領域S側に1つメッシュを多くとり、b-b」に関してZ_{L1}計算点と対称な点におけるZ_{L1」}を知っておく必要がある。また、このZ_{L1」}を内挿などせずに容易に求めるためには、空間メッシュの倍率kを奇数に選ぶのが得策であろう。そこで、以下の計算では、領域S,Lに関して以下のような約束をする。
 1. 領域S,Lの空間メッシュの比率を3とする。
 2. 領域Lは水位の結合上、境界b一b」よりも領域S側にメッシュを1つ多く取らなくてはならない。
 3. 図1-5(B)の例の場合には必要ないが、例えばx軸を逆向きにとると、流量Mの計算点がメッシュの左側になるため、領域Sの境界上のMが定義されなくなる。従って、領域Sのメッシュもまた、境界よりも領域Lの方に1つ多く取らなくてはならない。
 以上述べたことから、領域接続を含む計算手順は図1-6のようになる。
(b) 物理平面(x-y平面)での領域接続
以上述べたことから、水位および流量の領域接続について、
ⅰ) 境界付近の水位はメッシュの小さな領域から大きな領域に受渡される。
ⅱ) 境界付近の流量は、メッシュの大きな領域から小さな領域に受渡される。
ということがわかった。そこで、次に具体的な受渡し方法について、図1-7に示すx-y平面で考えてみる。図中、丸印はメッシュ中点の水位計算点、矢印は流量を模式的に表わしている。
 まず、水位については、大領域の一番端のメッシュの中心点に一致する、小領域のメッシュの中心点があるので、そこでの水位をそのまま受渡すか、あるいは、領域Lの1メッシュに含まれる9つの領域Sの水位め平均値を受渡すかのいずれかの方法をとればよい。算術代入文で表わすと、
(式14)
または、
(式15)
となる。
 次に、流量の接続に関しては、水位の接続とは異なり、内挿あるいは外挿計算が必要である。図1-7で、I」=I」〜1」+10の流量を接続する場合は以下のようにすればよい。
 1. (I」+2)から(I」+8)までは、㌍挿により受渡しをすればよい。例えば、算術代入文で、
(式16)
 2. 上記の外側の領域については、領域Lがさらに外側に続く場合は内挿計算し、それ以上外側に続かない場合は外挿により計算する。例えば、図1-7では、
(式17)
となる。
(2) 時間領域における領域の接続方法
 空間メッシュの異なる2領域間の水位・流量の接続に引き続いて、時間メッシュの異なる2領域間の水位・流量の接続方法について述べる。
 \delta tが1:3の割合で2段階に変化する場合について図1-7と同様にx-t平面で計算過程を描いたのが図1-8である。
 まず、水位の接続にっいては、先にも述べたように、小領域Sから大領域Lに対して値を受渡すので、図中⇒で示した時間ステップで接続すればよいことがわかる。
 しかしながら、流量の接続については領域Lから領域Sに対して値を受渡すので、小領域Sの計算ステップ(図1-8でK,K+1,K+2,……)での領域Lにおける流量の値M_1,M_2,を求めておくことが必要となる。結論から言うと、M_1についてはM_LおよびM_{L」}を用いた外挿計算によって求め、M_2については、M_LおよびM_{L」」}を用いた内挿計算によって求める。もちろんM_2も外挿計算により求めることはできるが、誤差がなるべく生じないためには内挿計算の方が良い。ところが、この内挿計算では、時問ステップが(K+2)の段階でM_{L」」}が求まっていなければならない。この過程をわかり易くするために、図1-7と同様な計算手順を図1-9に示す。なお、時間的な領域の接続は、必ずしも空間的な領域の接続と同じ地点でやらなくても良いことを付け加えておく。

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(式1〜17)
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図1-1 中央差分の説明
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図1-2 leap-frog法の計算点の配置
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図1-3 移流項の計算法の説明
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図1-4 沖側入力境界の説明
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図1-5
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図1-6
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図1-7
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図1-8
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図1-9

第2章 代表的なプログラム

 以下に、代表的な津波の計算プログラムを示すが、その前に計算に関する前提を述べておく。
(1) 計算時間内の天交潮の変化を考慮していない。従って、計算のゼロ点は、計算開始時刻の潮位と考えればよい。
(2) 領域のとり方は、空間メッシュの比が1:3:9……、計算時間聞隔が1:3:9
……の場合に限る。
(3) 線形計算では遡上計算ができないため、0.1m以下の水深では計算は行なわず、鉛直壁があるものとして取扱う。

2-1 メインプログラムの構成
 プログラムを作成するに当り、メィンプログラムは計算の流れがよくわかるように、ほぼサブルーチンの呼び出しのみで構成されるものとした。計算の流れの概略は図1-9に示したとうりであるから、ここでは具体的な例を用いて説明する。図2-1に、計算領域を、表2-1にメインプログラムおよびプログラム中の文字の説明を示す。
計算領域は、両側の鉛直壁で囲まれた水深の一様な領域であり、小さな湾を有している。領域はA,B,Cの3つに分かれており、それぞれの領域では空間メッシュ間隔、計算時間間隔ともに9:3:1の比率で減少している。以下に、メインプログラムの構成順に説明およびプログラム作成上の注意点を述べる。
(1) 宣言文・REAI M,Nを忘れてはならない。
・Z,M,N,DZ,DM,DN,(三次元配列),HZ,HM,HN,IR,IB(二次元配列)は、各領域について配列を宣言する。BT(10)も必ず宣書する(後述)。空間的なディメンジョンは、図2-1にも示したように計算対象領域の外側に1つ多くとる。
これは、I,J軸のとり方により、対象領域の境界上の流量あるいは、IBマップ、IRマップ(後述)が定義されなくなることがあるためである。また、時間的なディメンジョンは、値の入れかえ(サブルーチンGHANGE)を行なうので2つでよい。
(2)設定値の入力
・各領域ごとに、DX,DT,R(=DT/DX)の値を必ず定めなくてはならない。
(3)初期値の設定
(ⅰ) CALL DEPTHO
 ここでは,各領域ごとに、水深データ(HZ)、IBマップ、IRマップの読み込み
を行なっている。これはデータ入力のためのサブルーチンなので、以下に述べることに注意して必要に応じたプログラムを作ればよい。
・水深データ
 海図から拾った水深データを、静水面から下向きを正とした値に直し、これをHZとする。
・IBマップ(二次元配列)
 IBマップは、計算の方法澄よび鉛直壁の有無を表わすものであり、以下のサブルーチンでは、次の規則に従って、各領域の各メッシュに2桁または1桁の正整数データとして入力しておく。

(図1)

例えば、図2-1ですべて線形計算の場合には、IB(I,J)の値は次のようになる。
(領域A)
1. I=1,I=31でJ=1〜16までは 10 (鉛直壁)
2. J-1で、1=2〜31までは  20 (鉛直壁)
3. I=12〜20かつJ=1〜5までは40 (領域Bで計算されるので領域
Aで計算しなくてもよい)
4. その他では 0
・IRマップ(二次元配列)
 IRマップは、防潮堤に代表される有限な高さを有する構造物の有無を表わしたものであり、以下のサブルーチンでは、次の規則に従ってIBマップ同様、各領域の各メッシュに、2桁または1桁の正整数データとして入力しておく。

(図2)

 例えば、図2-2(a)に示す領域で防潮堤が設置された場合、IRマップは(b)のようになる。このとき、BT(1)には防潮堤の高さのデータが入っていなくてはならない。この防潮堤の高さは、HZ,HM,HNと異なり、静水面から上向きを正として測った値とする。
(ii)CALL DEPTH
 流量計算点での水深HM,HNを計算する。領域の個数だけCALL文が並ぶ。
(iii)CALL SETZRO
 Z,M,N,DZの初期条件(値はゼロ)を設定する。領域の個数だけCALL文が並ぶ。
(4)時間的に繰返される計算
(i)CALL CONTIN
 連続の式により次のステップの水位Zを計算する。領域の個数だけCALL文が並ぶ。
(ii)CALL JOINTZ
空間メッシュまたは時間間隔の異なる領域問での水位の接続を行なう。接合ラインの本数だけ(図2-1の例では、領域A;B間で3本、領域B;C問で3本の計6本)CALL文が並ぶ。
(iii)CALL MOTION
運動の式により、次のステップのM,Nを計算する。防潮堤の越流計算は本間の式により計算する。領域の個数だけCALL文が並ぶ。
(iv)CALL BOUND
海側の境界値を入力する。対象とする津波により入力データが異なるので第1章1-2を参照して必要に応じたプ環グラムを作ればよい。
(v)CALL JOINTQ
空間メッシュまたは、時間間隔の異なる領域間の流量の接続を行なう。接合ラインの本数だけCALL文が並ぶ。
(vi)CALL OUTPUT
データ出力のためのサブルーチン。必要に応じたものを作ればよい。
(vii)CALL CHANGE
データの入れかえ(時間のディメンジョンが2のものを1にする)を行なう。
領域の個数だけCALL文がならぶ。

・時間ステップインデックスについて
図1-8に見られるように、計算の時間間隔△tが場所的に変化する場合、\delta tが一番小さい領域以外の領域では、必ずしもすべての時間ステップで上記(i)〜(vii)の計算が行なわれるわけではない。そこで、計算が行なわれる時間ステップを制御するための示標が必要となるわけであるが、ここでは、この示標を「時間ステップインデックス」と呼ぶ。これらの値は、図1-9および後に掲げるサブルーチンを見れば、図2-1の例の場合、以下のようになることがわかる。

CONTIN,MOTION,GHANGEのKT
 ……領域G,B,Aの順に1,3,9
JOINTZのKT
 ……領域GとBの接続なら3、領域BとAの接続なら9
JOINTQのKT1,KT2
 ……領域Gと8の接続なら1と3、領域BとAの接続なら3と9

C
C MAIN PROGRAM
C
REAL MA, NA, MB, NB, MC, NC
DIMENSION ZA(32,17,2),MAI.32,17,2),NA(32,17,2),DZA(32,17,2),
   & DMA(32, 17,2),DNA(32,17,2),H.ZA(32,17) ,HMA(32, 17),HNA(32,17)
DIMENSION ZB(32,17,2),MB(32,17,2),NB(32,17,2),DZB(32,17,2),
   & DMB(32,17 2) ,DRIB(32,17,2),HZB(32,17),HMB(3.2,17),HNB(32,17)
DIMENSION ZC(32,17,2),MC(32,17,2),NC(32,17,2),DZC(32,17,2),
   & DMC(32,17,2),DNC(32,17,2),H.ZC(32,17),HMC(32,17),HNCI32,17)
DIMENSION IRA(32,17), IRB(32,17),IRC(32,17)
DIMENSION IBA(32,17),IBB132,17),IBC(32,17)
DIMENSION BT(10)
C 
C READ(5,*) DXC,DTC,WP,WD,KOUT
DXC = 50.0
DTC = 1.0
WP = 600.0
W D = 50.0
KOUT = 5
DXB=3.0*DXC
DXA=3.0*D.XB
DTB=3.0*DTC
DTA=3.0*DTB
RA=DTA/DXA
RB=DTB/DXB
RC=DTC/DXC
GG=9.8
PP=6.283185
KE=IFIX(2.0*WP/DTC)
DO 20 1=1,10
BT(I)=0.0
   20 CONTINUE
C
CALL DEPTHO(32,17,HZA,IRA,IBA,WD,1)
CALL DEPTHO(32,17,HZB,IRB,IBB,WO,2)
CALL DEPTHO(32,17,HZC,IRC,I3C,WO,3)
C
CALL DEPTH(32,17,HZA,HMA,HNA,BT,IRA)
CALL DEPTH(32,17,HZB,HMB,HNB,BT,IRB)
CALL DEPTH(32,17,HZC,HMC,HNC,BT,IRC)
C
CALL SETLRO(32,17,ZA,MA,NA,DLA,HZA)
CALL SETZRO(32,17,ZB,MB,NB,OZB,HZB)
CALL SETZRD(32,17,ZC,MC,NC,DZC,HZC)
LL=1
LX=0
C
D0 10 K=1,KE
K1=K
CALL CONTIN(32,17,2,31,2,15,ZA,MA,NA,DZA,HZA,RA,IBA,K1,9)
CALL CONTIN(32,17,2,31,2,16,ZB,MB,NB,DZB,HLB,RB,1BB,K1,3)
CALL CONTIN(32,17,2,31,2,16,ZC,MC,NC,DZC,HZC,RC,IBC,K1,1)
C
CALL JOINTZ(32,17,32,17,ZB,ZA,D2 ,OZA,12,12,2,6,3,3,K1,9,DXA,DXB)
CALL JOINTZ(32,17,32,17,ZB,ZA,DZB,DZA,12,21,6,6,3,15,K1,9,DXA,DXB)
CALL JUINTZ(32,17,32,17,ZB,LA,DL3,DZA,21,21,2,6,30,3,K1,9,DXA,DXB)
C
CALL JOINTZ(32,17,32,17,ZC,L3,OZC,DZB,12,12,2,4,3,9,K1,3,DXB,DXC)
CALL JCINTZ(32,17,32,17,ZC,LB,DZC,DZB,12,21,4,4,3,15,K1,3,DXB,DXC)
CALL JOINTZ(32,17,32,17,ZC,LB,DZC,DZB,21,21,2,4,30,9,K1,3,DXB,DXC)
C
CALL MOTION(32,17,2,31,2,l6,LA,MBA,CNA,DZA,DMA,DNA,HZA,HMA,HNA,IRA,
   & IBA,RA,{0.0,DTA,K1,9)
CALL MOTION(32,17,2,31,2,16,LB,MB,NB,DZB,DMB,DNB,HLB,HMB,HNB,IRB,
   & IBB,RB,0.0,DTB,Kl,3)
CALL MOTION(32,17,2,3.1,2,16,ZC,MC,NC,DZC,DMC,DNC,HZC,HMC,HNC,IRC,
   & IBC,RC,0.0,DTC,K1,1)

CALL BOUND(32,17,2,31,NA,ZA,D,WP,DTA,DXA,K1,9)

CALL JOINTQ(32,17,32,17,NA, B,NA,NB,I11,2,16, 11,2,0,1,0,2,
   & K1,3,9,DXA,DXB)
CALL JOINTQI32,17,32,I7,MA,MB,NA,N3,2,31,16,16,12,6,0,2,0,2,
   & K1,3,9,DXA,DXB)
CALL JOINTQ(32,17,32,17,MA,MB,NA,NB,31,31,2,16,21,2,0,1,0,2,
   & Kl,3,9,DXA,DXB)
CALL JOINTQ(32,17,3.2,17,MB,MC,N8,NC,1,l,8,l6,ll,2,0,1,0,2,
   & K1,1,3,DXB,DXC)
CALL JOINTQ(32,17,32,17,MB,MC,N8,NC,2,31,16,16,12,4,0,2,0,2,
   & K1,1,3,DXB,DXC)
CALL JOINTQ(32, 17, 32, 17, MB,MC,NB,NC,31,31,8,16,21,2,O,1,0,2,
   & K1,1,3,DXB,DXC)
IF(MOD(K1,9).EQ.5) LL=LL+1
IF(MOD(LL,KCUT).NE.0) CO TO 30
IF(LL.EQ.LX) CC TO 30
C
CALL OUTPUT(32,17,ZA,DZA,Kl)
CALL OUTPUT(32,17,ZB,OZB,K1)
CALL OUJTPUT(32,17,ZC,DZC,K1)
WRITE(60,1000) K
1000 FORMAT(10X,’K=’,15)
30 CONTINUE
LX=LL
C
CALL CHANCE(32,17,ZA,MA,NA,DZA,K1,9)
CALL CHANGE(32,17,ZB,MB,NB,DLB,K1,3)
CALL CHANCE(32,17,ZC,MC,NC,DZC,Kl,1)
C
10 CONTINUE
STOP
END
SUBROUTINE BOUND(IG,JU,-IS,IE,N,Z,7D,WP,DT,DX,KK,KT)
REAL N
DIMENSION N(I G,JG, 2),Z.(IG,JG, 2)
GG=9.8
PP=6.283135
I F (KT. EQ.1) GO TO 200
IF(MODiKK,KT).NE.KT/2+1) RETURN
200 CONTINUE
=DO 10 I=1S, IE
CC=SQ T (CG*WD )
XMM=tCC*DT*N(.I,15,1)+(DX--CC* T)*N(I,1b,1))/DX
ZZ2=(Z(I,15,2)+Z(I,15,1))*0.5
ZZ1=1Z(I, 16,2)+Z(I,16,1))*O.5
ZZ=t (CC*DT-0.5*DX)*ZZ2+(1.5*DX-CC*DT)*ZZI)/DX
EZ=-2.0*SINIPP*FLOAT(KK)*D-T/(WP*FLOAT(KT)))
N(I,16,2)=CC*EZ+0.5*(XMM+CC*ZZ)
10 CONTINUE
RETURN
END
SUBROUTINE DEPTHO(IG,JG,HZ,IR, IB,WD,IND)
C
DIMENSION HZ( IG,JG),IR(IG,JG),I3(IG,JG)
DO 10 I=1,IG
DO 10 J=1,JG
HZ(I,J)=W D
IB(I,J)=O
IR,(I,J)=0
10 CONTINUE
IF(INO.GT..1) GO TO 40
DO 20 J=1,JG
1B(1,J)=13
IB(31,J)=10
20 CONTINUE
DC 30 I=1,IG
1B(I,1)=20
30 CONTINUE
DO 35 J=2,5
DO 35 1=12,20
IB(1,JI=40
35 CONTINUE
RETURN
40 IF(IND.GT.2.) GO TO 6J
DO 50 1=1,10
IB(I,1)=20
90 CONTINUE
DO 55 J=2,3
DO 55 I=12,20
IB(I,J)=40
55 CONTINUE
RETURN
60 CONTINUE
DO 70 I=1,10
DO 70 J=1,7
HZ(I,J)=WD
70 CONTINUE
DO 80 J=.1,7
IB(1,J)=10
IB(31,J)=10
80 CONTINUE
DC 90 I=1,IG
IB(I,1)=20
90 CONTINUE
RETURN
END
SUBROUTINE OUTPUT (IG,JG,Z,DZ,KK)
C
DIMENSION LW( 20),Z( IG,JG,2),OL( IG,JG,2)
WRITE(6,100) KK,IJ,J=2,16)
100 FORMAT(IH ,2X,’K=’,I4,/,6X,1514)
IG1=1G-1
JGI=JG-1
DO 10 1=2,IG1
DO 11 J=2,JGI
LW (J)= 0
IF(DZ(I,J,2).GT.1.0E-4) LW(J)=IFIX(100,0*Z(I,J,2.)+0.5)
11 CONTINUE
WRITE(6,1O1) I,(LWLJI,J=2,16)
101 FORMAT(1H,15,1514)
10 CONTINUE
RETURN
END

2-2サブルーチンの説明
 以下に、主なサブルーチンの内容とその使い方を示す。
(1) DEPTH (流量計算点の水深の計算)
目的
 水深データ(水位計算点の静水深)と、防波堤マップから、構造物の有無も含めた、流量計算点の静水深を計算する。
使用法
(1) 接続方法
 CALL DEPTH (IG,JG,HZ,HM,HN,BT,IR)

(表1)

SUBROUTINE DEPTH (IG,JG,HZ,HMl,HN,BT, IR)
DIMENSION HZI IG,JG) ,HMI IG,JG),HN(IG,JG)
DIMENSION IRI IG,JG),BT(10)
DO 10 I=1,IG
DO 10 J=1,JG
IF (I.EQ.IG) GO TO 11
HM(I,J)=O.5*(HZ(I,J)+HZ(I*l,J) )
GO TO 12
11 HM(I,J)=HZ(I,J)
12 IF(J.EQ.JG) GO TO 13
HN(I:J)=0.5*(HZ(i,J)+HZ(I,Ji-1) )
GO TO 10
13 HN(I,J)=HZI I,J)
10 CONTINUE
DO 14 1=1,IG
DO 14 J=1,IG
IRR=MOO(IRI I,J) ,l0)
IRM=IR(I,J)/10
IF(IRM.EQ.0) GO TO 14
IF(IRM.EQ.2) GO TO 15
HM(I,J)=-BT(IRR)
IF (IRM. EQ.1) GO TO 14
15 HN{I,J)=-BT(IRR)
14 CONTINUE
RETURN
END

(2) SETZRO(初期条件の設定)
目的
 水位・流量・水位計算点の全水深の初期値の設定を行なう。
使用法
(1) 接続方法
 CALL SETZRO(IG,JG,Z,M,N,DZ,H:Z)

(表2)

SUBROUTINE SETZRO IIG,JG,Z,M,N,DZ,HZ)
REAL N, N
DIMENSION Z(IG,JG,2),MIIG,JG,2),N(IG,JG,2)
DIMENSION DZ(IG,JG,2),HZ(IG,JG)
DO 10 K=1,2
DO 10 I=1,IG
DO 10 J=1,JG
M( I,J,K)=O.O
N(I,J,K)=0.0
DZ(I,J,K)=HZ(I,J)
IF(HZ(I,J).LT.1.OE-5) DZ(I,J.K)=O.O
Z(I,J,K)=DZ(I,J,K)-HZ(I,J)
10 CONTINUE
RETURN
END

(3)CONTIN (連続の式の計算)
目的
連続の式により、次の時間ステップの水位および全水深を計算する。
使用法
(1)接続方法
CALL GONTIN(IG,JG,IS,IE,JS,JE,Z,M,N,DZ,HZ,R,IB,KK,KT)

(表3)

SUBROUTINE CONTIN (IG,JG,IS,IE,JS,JE,Z,M,N,DL,HL,R,IB,
   & KK,KT)
C
REAL MIN
DIMENSION Z(IG,JG,2),M( IG,JG,2),N(IG,JG,2),HZ( IG,JG)
DIMENSION DZ(IG,JG,2), IB(IG,JG)
DATA GX/1.0E-5/
IF(KT.EQ.1) GO TO 200
IF(MOD (KK, KT).NE.1)
RETURN
200 CONTINUE
DD 10 I=IS,IE
DO 10 J=.J S, JE
IF(IB(I,J).EQ..40) GO TO 11
XM=O.0
XN=0.0
IF(I.NE.I)XM=N(I-I,J,2)
IF(J.NE.1)XN=N(I,J-I,2)
ZZ=Z(I,J,1)-R*(M(I ,J,2)-XM+N(I,J,2)-XN)
IF (ABS(ZL).ET.1.OE-10) ZZ=0.0
DD=ZZ+HZ (I,J)
IF(DD.LT.GX) GO TO 11
DZ(I,J,2)=DD
Z(I,J,2)=ZZ
GO TO 10
11 DD = 0.0
DZ(I,J,2)=DD
Z(I,J,2)=OD-HZ(I,J)
10 CONTINUE
RETURN
END

(4)JOINTZ (空間的・時間的な水位の接続)
目的
 空間メッシュ\delta xまたは時間間隔\delta tの変化する2つの領域間での水位の接続を行なう。
使用法
(1)接続方法
CALL JOINTZ(IG1,JGLIG2,JG2,Z1,Z2,DZ1,DZ2,IS,IE,JS,JE,ISS,JSS,KK,KT,DX1,DX2)

(表4)

SUBROUTINE JOINTZ (IG1,JGl,IG2,JG2,Z1,Z2,DZI,DZ2,IS,IE,JS,JE,
& ISS,JSS,KK,KT,DX1,DX2)
DIMENSION ZI(IGI,JG1,2),Z2(IG2,JG2,2)
DIMENSION DZl(IGl,JG1,2),DZ2(IG2,JG2,2)
IF(KT.EQ.1) GO TO 200
IF(MOD(KK,KT).NE.KT/2+1)RETURN
200 CONTINUE
DO 10 I=IS,IE
DO 10 J=JS,JE
IF(DX2-DX1) 20,21,20
20 II=ISS+3*(i-IS)
JJ=JSS+3*(J-JS)
GO TO 22
21 II=ISS+(I-IS)
JJ=JSS+(J-JS)
22 Z2(I,J,2)=ZI(I1,JJ,2)
DZ2(I,J,2)=DZI(II,JJ,2)
10 CONTINUE
RETURN
END

(5)MOTION(運動の式の計算)
目的
 運動の式により、次の時間ステップの流量を計算する。
使用法
(1)接続方法
CALL MOTION(IG,JG,Z,M,N,DZ,DM,DN,HZ,HM,HN,IR,IB,R,FM,DT,KK,KT)

(表5)

(表6)

SUBROUTINE MOTION (IG,JG, IS,IE,JS,JE,Z,M,N,DZ,DM,DN,HZ,HM,HN,
   & IR, IB,R,FM,DT,KK,KT)
REAL M,N
DIMENSION Z(IG,JG,2),MI IG,JG,2),N(IG,JG,2)
DIMENSION DL(IG,JG,2),DMIIG,JG,2),DN(IG,JG,2)
DIMENSION HZ(IG,JG) ,HM(IG,JG),HN(IG,JG)
DIMENSION IR(IG,JG),IB(IG,JG)
DATA GG,GX/9.8,Z.OE-5/
IF(KT.EQ.1) GO TO 200
IF(MOD(KK,)CT).NE.KT/2+I )RETURN
200 CONTINUE
DO 10 I =IS, IE
DO 10 J=JS,JE
DMI=0.25*(Z(I,J,1)+Z(I,J,2)+Z(I+1,J,1)+ZI I+1,J,2))+HM(I,J)
DM2=O.5*(Z(I,J,2)+Z(I+l,J,2))+HM(I,J)
DN1=0.25*(Z(I,J,1)*-Z(I,J,2)+LI I,J+1,1)+Z(I,J+1,2))+HN(I,J)
DN2=0..5*I Z(I,J,2)+Z(I,J+1,2))+HN(I,J)
IF(DMl.LT.GX) DM1=0.0
IF(DM2.LT.GX) DM2=0.0
IF(DNI.LT.GX) DN1=0.0
IF(DN2.LT.GX) DN2=0.0
DM(I,J,1)=DM1
DM(I,J,2)=DN2
DN(I,J,1)=DN1
DN(I,J,2)=DN2
10 CONTINUE
FN=0.5*DT*GG*FM**2
DO 20 I=I S, IE
DO 20 J=JS,JE
IBB=IB(I,J)/10
IBR=M0D(IB(I,J),10)
IF(IB3.EQ.4)GO TO 20
IF(IBB.EQ.I.OR.IBB.EQ.3)G0 TO 30
IF(I.EQ.IG) GD TO 30
IRR=IR(I,J)/10
IF(IRR.EQ.1.OR.IRR.EQ.3)GO TO 60
IF(IBR.EQ.O)GC TO 33
IF(DZ(I,J,2))31,31,32 31
31 IF(DZ(I+I,J,2))30,30,34
32 IF(OZ(I+1,J,2))35,35,36
34 IF(Z(I+1,J,2)+HZ(I,J))30,30,37
35 IF(Z(I,J,2)+HZ(I+1,J))33,30,38
36 DD=DM(I,J,2)
GO TO 39
37 DD=0.5*(Z(I,J,2)+Z(I+1,J,2))+HZ(i,J)
GO TO 39
38 D3=0.5*(Z(I,J,2I+Z(I+I,J,2))+HZ(I+1,J)
GO TO 39

33 DD=HM(I,J)
IF(DD.LT.0.1)GG TO 30
39 XNN=0.25*IN(I,J,1)+N(I+l,J,1)+N(I,J-1,l)+NI I+l,J-l,I))
DF=DD
IF(DF.LT.1.OE-2) DF=1.OE-2
FF=FN*SQRTIM(1,J,I)**2+XNN**2)/DF**(TT.3I3..3)
IF(DD.LT.GX)GC TO 30
XM=t1.0-FF)*M(I,J,I)-GG*R*DD*(Z(I+1,J,2)-Ztf,J,2))
IF(IBR.EQ.0)GC TO 40
IF(DM(I,J,I).LT.GX)GO TO 40
IF(M(I,J,1))41,41,42
41 IF(DM(I+1,J,I)..LT.GX)GC TO 40
XM=XM-R*(MI I+I,J, l)**2/DM(I+1,J, I)-M( I, J, I) **2/DMI .I ,J, I) )
GO TO 43
42 IF(OM(I-L,J,I).LT.GX)GO TO 40
XM=XM-R*(M(I, J,1) **2/DM(I,J, I) -M(I-l, J, I) **2/DM(I-1,J, 1) )
43 IF(XNN) 44,44,45
44 XNE=0.25*(N(I,J+1, 1)+N(I+I,J+i,1)+N(I,J, l)+N(I+1,J,I) )
IFIDM(i,J+1,1 ).LT.GX)GIJ TO 40
XM1=XM-R*(MI I, J+1, 1)*XNE/DM(I,J+1, I)
& -M (I J , I)*XNN/DMI I, J, 1) )
GO TO 40
45 XNE=0.2.5*(N(I,J-I,1)+N(I+I,J-1,1)+NII,J-2,1)+N(I+1,J--2,1))
IF(DM(I,J-L,l).GT.GX)GO TC 43
XM=XM--R*(M(I,J,1)*XNN/OM(L,J,I)
   & -M(I,J-I,1)*X NE/DM(I,J--1,l) )
40 XM=XM/(1.O+FF )
IF (ABS(XM ). LT.l.0E-IO)XM=0.0
M(I,J,2)=XM
GO TO 100
30 MII,J,2)=0.0
GO TO 100
60 IRR=MO0(IRI I,J),10)
ZI=Z(I,J,2)+HM(I,J)
Z2=Zt1+1,J,2)+HM(I,J)
ZZ=Z1
ZX=Z 2
IF(Zl.GT.Z2)GC TO 61
ZZ=Z2
ZX=Z1
61 IF(ZZ.LT.GX)GC TO 30
IF(ZL*O.66667.LT.ZX)G0 TO 62
XM= 1. 55*ZZ**l .5
GO TO 63
62 XM=4.029*ZX*SQRT(ZZ-ZX)
63 IF (Z2.GT.Z1)XM=-XM
M( I,J,2)=XM
100 CONTINUE

IF(IBB.GE.2)GO TO 130
IF(J.EQ.JG)GC TO 130
IRR=IR(I,J)/10
IF(IRR.GE.2)GO TO 160
IF(IBR.EQ.O)GC TO 133
IF(DZ(I,J,2))131,131,132
131 IF(DZ(I,J+1,2)) 130,130,134
132 IF(DZ( I,J+1,2))135,135,136
134 IFIZII,J+1,2)+N.Z(I,J) )130,130, 137
135 IFIZ(I,J,2)+HZ(I,J+1))130,130,138
136 DD=DN(I,J,2)
GO TO 139
137 DD=0.5*(Z(I,J,2)+1(I,J+1,2))+HZ(I,J)
GD TO 139
138 DD=0.5*(.I(I,J,2)+Z(I,J+1,2)1+HZ(I,J+1)
GO TO 139
133 DD=HN(I,J)
IF(DD.LT.O.l)GC TO 130
139 XMM=0.25*(M(I,J,1)+M(I,J+1,1)+Mtl-1,0,11+M(1-1,J+1,1))
DF=DD
IF(DF.LT.1.OE-2)DF=1.0E-2
FF=FN*SQRT(N(I,J, 1)**2+XMM**2) IDF**(7.0/3.0)
IF(DD.LT.GX)GC TO 130
XN=t1.O-FF)*N(I,J,1)-GG*R*DD*(Z(I,J+1,2)-Z(I,J,2))
IF(IBR. EQ.0) GC TO 140
IF(DN(I,J,1).LT.GX)GD TO 140
IF(N(I,J,1)) 141,141,142
141 IF(DN(I,J+1,1).LT.GX) GO TO 140
XN=XN-R*(N(I,J+1.1)* 2/DN(I,J+1,l)-N(I,J,1)* 2/DN(I,J,I) )
GO TO 143
142 IF(DN(I,J-1,1 ).LT.GX)GO TO 140
XN=XN-R*(N(I, J, I )**2/DN(I,J, 1)-N(I, J-1, 1) **2/DN(I ,J-1, 1 ))
143 IF(XMM) 144,144,145
XME=0.25*(M(I+1,J,1)+MtI+1,J+1,1)+M(I,J,1)+MtU,J+1,1))
IF(DN(I+I,J,1).LT.GX)GG TO 140
XN=XN-R*IN(If1,J,1)*Xt’IEZDN(I+I,J, L)
& -N(I,J,I)*XMM/DN(I,J,1))
GO TO 140
  145 XME=0.25*(M(I-1,J,1)+M(I-1,Ji-1,1)+M(I-2,J,1)+M(I-2,J+1,1))
IF(DN(I-1,J,1).LT.GX)GO TO 140
XN=XN-R*{N(I,J, 1)*XMM/DN(I,J, 1)
& -N (I-1 ,J ,1)*XME/DN (I-1 , J,1) )
  140 XN=XN/( 1.O+FF)
IF(ABS(XN).LT.1.0E-10)XN=0.0
N(I,J,2)=XN
GO TO 20
130 N( I,J,2)=0.0
GO TO 20

160 IR=MOD(IR(I,J),10)
ZI=Z(1,J,2)+HN(I,J)
Z2=Z(I,J+1,2)+HN(I,J)
ZZ=Z1
ZX=Z2
IF(Z1.GT.Z2)GC TO 161
ZZ=Z2
ZX=Z1
151 IF(ZZ.LT.GX)GC TO 130
IF(ZZ*0.66667.LT.ZX)GO TO 162
XN=1.55*Z:Z**1.5
GO TO 163
162 XN=4.029*ZX*SQRT(ZZ--ZX )
163 IF (Z2.GT.Z1)XN=-XN
N(I,J,2)=XN
20 CONTINUE
RETURN
END

(6)JOINTQ(空間的・時間的な流量の接続)
目的
 空間メッシュ\delta xまた時間間隔\delta tの変化する2つの領域間での流量の接続を行なう。
使用法
(1)接続方法
 CALL JOINTQ(IG1,JG1,IG2,JG2,M1,M2,N1,N2,IS,IE,JS,JE,ISS,JSS,NDS,INS,NDE,INE,KK,KT1,KT2,DX1,DX2)

(表7)

(2)注意事項
 NDS,NDEの意味は下図に示すとうりである。

(図3)

SUBROUTINE JOINTQ( IGI,JGL,IG2,JG2,Ml,M2,Nl,N2, IS, IE,
&JS, JE, ISS,JSS,NDS, INS, NEE, INE,KK,KTl,KT2,DX1, DX2)
REAL Ml,NI, M2,N2
DIMENSION M1(IG1,JGI,2) ,X12(IG2,JG2,2) ,NL(IG I,JGl, 2) ,N2(IG2,JG2,2)
KY=KTI/2+1
IFIKTI.EQ.1) GO TO 100
IF(MOD(KK,KTI).NE.KY) RETURN
100 IF(IS.NE.IE) GO TO 200
J3=NDS+1
J4=NDE+1
JJS=JS+J3
JJE=JE-J4
JEE=JSS+(JJE-JJS)/3
DO 10 J=JS,JE
IF(D.XI-0X2) 51,50,51
51 IF(J.GE.JJS.AND.J.LE.JJE) GO TO 20
IF(J.LT.JJS) GO TO 30
IF(J.GT.JJE) GO TO 40
20 JF=JSS+(J-JJS)/3
F=FLOAT(3-MOD(J-JJS,3))
GO TO 60
30 IF(INS.EQ.2) GO TO 35
JF=JSS
F=3.0+FLOAT (JJS-J)
GO TO 60
35 JF=JSS-1
F=FLOAT(JJS-J)
GO TO 60
40 IF(INE.EQ.2) GO TO 45
JF=JEE-1
F=FLOAT (JJE-J)
GO TO 60
45 JF=JEE
F=FLOAT (3--(J-JJE) )
GO TO 60
50 JF=J-(JS-,JSS+NDS )
F=3.0
60 XM2=(F*M1(ISS,JF,2)+(3.0-F)*M1(ISS,JF+1,2))/3.0
XMI=IF*M1(ISS,JF,I)+(3.0-F)*M1(ISS,JF+1,l))/3.0
IF(KT1.EQ.KT2) GO TO 101
KX=MODIKK,KT2)
IF (KT1.EQ.1) GC TO 103
IF (KX.EQ.KY) GO TO 102
IF(KX.EQ.KY+.2*KTI) GO TO 101
GO TO 104
103 IF (KX.EQ.0) GO TO 101
IFIKX.EQ.1) GO TO 102
104 M2(IS,J,2)=(2.0*XM2+XM1 )/3.0

GO TO 10
101 M2(IS,J,2)=XM2
GO TO 10
102 M2(IS,J,2)=(4.0*XM2-XMI)/.3.0
10 CONTINUE
RETURN
200 13=NDS+1
I4=NOE+1
IIS=IS+I3
IIE=IE-I4
IEE=ISS+(IIE-IIS)/3
DO 70 I=IS,IE
IFIDXI-DX2) 151,150,151
151 IF(I.GE.IIS.AND.I.LE.IIE) GO TO 120
IF(I.LT.IIS) GO TO 130
IF(I.GT.IIE) GO TO 140
120 IF=ISS+(I-IIS)/3
F=FLOAT(3-MOD(I-IIS,3))
GO TO 160
130 IF(INS. EQ.2) GO TO 135
IF=ISS
F=3.0+FLOAT (I I S-I )
GO TO 160
135 IF=ISS-1
F=FLOAT (ITS-1 )
GO TO 160
140 IF(INE.EQ.2) GO TO 145
IF=.IEE-1
F=FLOAT(IIE-I)
GO TO 160
145 IF=IEE
F=FLOAT (3-(1-IIE))
GO TO 160
150 IF=I-(IS-ISS+NDS)
F=3.O
160 XN2=(F*NI(IF,JSS,2)*(3.0-F)*NI(IF+1,JSS,2))/3.0
XN1=(F*N1(IF,JSS,1)+(3.0-F)*NI(IF+1,JSS,1))/3.0
IF(KTI.EQ.KT2) GO TO 201
KX=MUD (KK , KT2 )
IF(KTI.EQ.1) GO TO 203
IF(KX.EQ.KY) GO TO 202
IF(KX.EQ.KY+2*KT1) GO TO 201
GO TO 204
203 IF(KX.EQ.0) GO TO 201
IF(KX.EQ.1) GO TO 202
204 N2(I,JS,2)=(2.0*XN2+XN1)/3.0
GO TO 70
201 N2(I,JS,2)=XN2
GO TO 70
202 N2(I,JS,2)=(4.0*XN2-XN1)/3.0
70 CONTINUE
RETURN
END

(7)GHANGE(データの入れかえ)
目的
 計算が1ステップ進むごとに、時間のデイメンジヨンが2のものを1に直す。
使用法
(1)接続方法
CALL GHANGE (IG,JG,Z,M,N,DZ,KK,KT)

(表8)

SUBROUTINE CHANGE (IG,JG,Z,M,N,DZ,KK,KT)
REAL M, N
DIMENSION Z(IG,J0,2),M(IO,J0,2),N(IG,JG,2),DZ(IG,JG,2)
LL=MOD(KK,KT)
LX=KT/2
IF(LL.NE.O.AND.LL-LX.NE.O)RETURN
DO 10 I=1,IG
DO 10 J=1,JG
IF(LL.NE.O)GO TO 11
Z(I,J,I)=Z(I,J,2)
DZ( I,J,1)=DZ(I,J,2)
11 IF(LL-LX.NE.O) GO TO 10
M(l,J,l)=M(I,J,2)
N(I,J,1)=N(I,J,2)
10 CONTINUE
RETURN
END

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(図1〜3)
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図2-1
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図2-2 IRマップの例
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表2-1 メインプログラムの文字の説明 註)・添字A,B,Gは領域を表わす。   ・()はこのプログラムに特有の交字。
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(表1〜8)

Intergovernmental Oceanographic Commission Manuals and Guides

表紙

IUGG/IOC TIME PROJECT

NUMERICAL METHOD
OF TSUNAMI SIMULATION
WITH THE LEAP-FROG SCHEME

PART 1 SHALLOW WATER THEORY
AND ITS DIFFERENCE SCHEME

PART 2 PROPAGATION IN THE OCEAN IN THE SPHERICAL
CO-ORDINATES TSUNAMI-F1 AND ITS PROGRAMME LIST

by C. Goto and Y. Ogawa
Department of Civil Engineering
Faculty of Engineering
Tohoku University
Sendai 980-77 - Japan

Translated and prepared for the TIME PROJECT
by N. Shuto
Disaster Control Research Center
Faculty of Engineering
Tohoku University
Sendai 980-77 - Japan

PART 3 PROGRAMME LISTS FOR NEAR-FIELD TSUNAMI
PART 4 PROGRAMME LIST FOR FAR-FIELD TSUNAMI

by F. Imamura
Tohoku University
Sendai*980-77 - Japan

1997 UNESCO

SC-97/WS-37

The designations employed and the presentation of the
material in this publication do not imply the expression
of any opinion whatsoever on the part of the Secretariats
of UNESCO and IOC concerning the legal status of any
country, territory, or its authorities, or concerning the
delimitations of the frontiers of any country or territory.

For bibliographic purposes
this document should be cited as follows:

IUGG/IOC Time Project
IOC Manuals and Guides No. 35. UNESCO 1997
(English)

Published in 1997
by the United. Nations Educational,
Scientific and Cultural Organization
7, place de Fontenoy, 75352 Paris 07 SP, France

Printed in UNESCO’s Workshops
C UNESCO 1997
Printed in France

IUGG/IOC TIME PROJECT

PART 1: SHALLOW WATER THEORY AND ITS DIFFERENCE SCHEME

CHAPTER 1: METHOD OF NUMERICAL SIMULATION
CHAPTER 2: TYPICAL PROGRAMMES

CONTENTS

CHAPTER 1:METHOD OF NUMERICAL SIMULATION
Page1
1.1 EQUATIONS AND DIFFERENCE SCHEMES 1
(1) Shallow Water Theory 1
(2) Difference Scheme and Stability 2

1.2 INITIAL CONDITIONS AND BOUNDARY CONDITIONS 9
(1) Initial Conditions 9
(2) Conditions for a Simple Harmonic Wave Train at an Offshore Open Boundary 12
(3) Open Boundary Conditions for Forced Inputs 12
(4) Open Boundary Conditions for Free Transmission 12
(5) Boundary Conditions at Run up Front 12
(6) Boundary Conditions at Water Overflows Structures 12

1.3 CONTINUATION OF REGIONS 12
(1) Necessity of Continuation of Regions in Numerical Computation 12
(2) Continuation of Regions of Different \delta x 13
(3) Continuation of Regions of Different \delta t 14

CHAPTER 2: TYPICAL PROGRAMMES
2.1 ASSUMPTIONS 1

2.2 CONSTRUCTION OF MAIN PROGRAMMES 1
(1) Specification Statement 1
(2) Input of Setting Value 3
(3) Setting of Initial Value 3
(4) Computation Repeated with Respect to Time 4

2.3 EXPLANATION OF SUB-ROUTINES 10
(1) DEPTH (Computation of Water Depth at Points for Discharge) 10
(2) SETZRO (Setting of Initial Conditions) 11
(3) CONTIN (Computation of the Equation of Continuity) 12
(4) JOINTZ (Connection of the Water Level in Space and Time) 14
(5) MOTION (Computation of the Equation of Motion) 16
(6) JOINTQ (Connection of the Water Discharge in Space and Time) 20
(7) CHANGE (Change of Data) 23

CHAPTER 1. METHOD OF NUMERICAL SIMULATION

1.1 EQUATIONS AND DIFFERENCE SCHEMES

(1) Shallow Water Theory

Water waves are classified into many types from a hydraulic point of view. This paper considers tsunamis, which are generated by the movement of sea bottom due to earthquakes. Tsunamis belong to long waves.

The theory of long waves is an approximate theory applicable to waves of small relative depth (the ratio of water depth to wave length), for which the vertical acceleration of water particles is negligible compared to the gravitational acceleration and the curvature of trajectories of water particles is sufficiently small. Consequently, the vertical motion of water particles has no effect on the pressure distribution. It is a good approximation that the pressure is hydrostatic. In addition, the horizontal velocity of water particles are vertically uniform.

Based upon these approximations, the motion of long waves is well expressed by the following shallow water theory.
(式1)
(式2)
(式3)
where x and y are horizontal coordinates, t time, \eta the still water depth, T1 the vertical displacement of water surface above still water level, u and v water particle velocities in the x- and y-directions, g the gravitational acceleration, and \tau_x/\rho and \tau_y/\rho bottom frictions in the x- and y-directions.

The bottom friction is expressed as follows, in an analogy to the uniform flow.
(式4)
where D is the total water depth given by h + \eta and f is the friction coefficient. Without any detailed discussion of the value of the authors prefer to use Manning’s roughness n which are familiar among civil engineers.

The friction coefficient f and Manning’s roughness n are related by
(式5)
and, the bottom frictions are finally expressed by
(式6)
throughout the present paper.

The next step is the introduction of discharge fluxes (M, N) in the x- and y-directions. M and N are related to u and v by the following expressions.
(式7)
Integrating Eqs.(1) through (3) from sea bottom to water surface, the following shallow water theory is obtained for discharge fluxes M and N.
(式8)
(式9)
(式10)
These equations are the fundamental equations used in the present paper.

The authors would not like to recommend the use of Egs.(1) through (3) but the use of Eqs.(6) through (8). When discretized, the former set of equations sometimes does not satisfy the conservation of mass. This fact which is often disregarded becomes the source of large computation errors. On the other hand, the latter set of equations, Eqs.(6) through (8), has no defect in the conservation of mass, and it also satisfies the conservation of momentum fairly well.

(2) Difference Scheme and Stability

The leap-frog scheme used in the present paper is a central difference scheme with the truncation error of the second order.

Values of F(x) at discrete points with an spatial interval Ax are expressed as follows, on referring Figure 1.

The Taylor series expressions for If-1 and if+1 are
(式11)
(式12)
and the difference between the two Taylor series expressions yield a central difference of the first-order derivative as Eq.(9).
(式13)
Apply the above difference scheme to Eqs.(6) through (8). In order to make it easy to set the boundary conditions, the leap-frog scheme assumes that the computation point for \eta does not coincide with the computation point for M and N, as shown in Figure-2. In Figure 1-2, suffixes (I, j, k) are used to express the spatial position (x, y) and the time t.

First, the equation of the continuity is approximated by a difference equation. With the central difference scheme, three terms in Eq.(6) are given by
(式14)

On assuming that values at k and k+1/2 time steps are known, the only unknown \eta(I, j, k+l) is solved
(式15)

by

Second, the equation of motion is- approximated. Explanation consists of three parts; approximation of linear terms, approximation and stability of convection terms, and approximation of friction terms.

The linear equation of motion of in the x-direction is written as

(式16)

A central difference at the point (I+1/2, j, k) yields the following equation for an unknownM(I+1/2, j, k-1/2)
(式17)
where the total water depth D(I+l/2, j, k)is expressed by
(式18)
The similar manipulation yields the following difference equation for the linear equation of motion in the y-direction

(式19)
(式20)

It is now possible to solve Egs.(10), (12) and (14) simultaneously and obtain the solution of linear long waves. A comment is necessary to explain a difference between the original equations and Eqs.(12) and (14). The original equations of linear long waves uses h (still water depth), but Eqs.(12) and (14) use D (total water depth).
If h is sufficiently larger then \eta, a linear computation with Eqs.(12) and (14) can yield reliable results, It should be kept in mind that this linear computation may become unstable if h is smaller than \eta.

In the leap-frog scheme, an upwind scheme is applied to the convection terms in order to make the computation stable. The reason why this scheme ensures the stability of computation is briefly explained by taking a simple convection equation in the following.

(式21)
Here, the coefficient C is the propagation velocity and is assumed constant. The arrangement of computation points in the leap-frog scheme requires the forward difference scheme for the first-order time derivative (see Figure-3). This yields

(式22)

The central difference is applied to the space derivative.

(式23)

As a result, the unknown F(I+l/2,k+l/2) is given by Eq.(17)

(式24)

Or, inversely speaking, the solution of Eq.(17) is implicitly equivalent the solution of Eq.(18) with an truncation error of (\delta x^2+\delta y^2)

(式25)

If the second-order derivative with respect to time is rewritten by using the following relationship,

(式26)

the solution of Eq.(18) is the same as the solution of the following diffusion equation in which the diffusion coefficient is negative.
(式27)
(式28)
(式29)

As a summary of the present section, the set of differential equations is given by
(式30)
(式31)
(式32)

with \lambda and v given by Eq.(23).

1.2 INITIAL CONDITIONS AND BOUNDARY CONDITIONS
(1) Initial Conditions
The present programme is only for tsunamis. No wind waves and tides are included. The still water level is given by tides and is assumed constant during the computation of tsunamis. This means that no motion is assumed up to the time k-1 /2. Therefore, we set the initial conditions in sea as,
(式33)

For Run up computation on land, the initial water level \eta(I, j, k-1) is equal to ground height h_{i,j}.

(式34)

It should be kept in mind that values of h take negative sign on land.

(2) Conditions for a Simple Harmonic Waves Train at an Offshore Open Boundary

In the following, a method of input at an offshore boundary is given for a progressive sine wave train.

Actual motion of the water at the offshore boundary is not given by the sine wave but by a resultant of the advancing and receding sine wave trains. If the sine motion is given at the boundary, no reflected wave can pass through the boundary, and a forced oscillation is inevitably introduced. At the open boundary, it is necessary to allow the reflected wave freely pass the boundary and go out of the region of computation. This is easily solved if the method of characteristics is used at the boundary.
Consider first a one-dimensional case. The equations for linear long waves in a channel of constant depth are,
(式35)
(式36)
Equation (36) is reduced to
(式37)
and Eq.(37) is reduced to
(式38)
Addition and subtraction of the two equations yield
(式39)
This leads to
(式40)

Assume a simple harmonic wave train advancing in the negative x-direction having its front at x=x_0 at t=0.On referring Figure-4, equation (39) gives
(式41)
along a positive characteristics, and
(式42)
along a negative characteristics. The given wave train is propagating in the negative x-direction. It satisfies the following relationship between the horizontal water particle velocity u_0 and the water surface elevation \eta_0.
(式43)
With this relationship substituted, Eq.(41) is reduced to
(式44)
and from Egs.(40) and (41」), we have
(式45)
If we assume the incident wave train \eta_0 is given by
(式46)
where k_0 is the wave number, then the corresponding water particle velocity is expressed by
(式47)
Consequently,, the value of u_2 at the boundary is composed of two parts as follows,
(式48)
where the first term on the right-hand side corresponds to the given incident wave train and the second term corresponds to the receding wave trains.
(式49)
If Eq.(45) is rewritten in terms of water discharge, we have
(式50)
where M,and \eta_1 are calculated by
(式51)
(式52)
Second, we considerr a.two-dimensional case in which the relationship of characteristics is, in principle, given on characteristic surface. In the present text, however, an extension of the one-dimensional case mentioned above is used. Different from a one-dimensional problem, the direction of wave propagation should be determined carefully. In general, the propagation direction of the incident waves is given. and constant, and therefore negative characteristics have a constant direction. On the other hand, the direction of positive characteristics corresponding to the reflected waves may be different from that of the incident waves. The direction of positive characteristics is determined as the direction of he the resultant of M(I, j, k- 1/2) and N(I, j, k-1/2).In this way, negative and positive characteristics should be computed with the same method as in the one-dimensional problem, on taking their propagation direction into consideration.

(3) Open Boundary Conditions for Forced Inputs

When the boundary condition itself is already composed of progressive and reflected waves, it is given with no modification at the boundary. There is no need to follow the method developed in the precedent subsection.
No consideration is required to make the reflected wave freely pass the boundary. In case of a linear problem, either the displacement of water surface or discharge flux is used as the input at the boundary.

(4) Open Boundary Conditions for Free Transmission

A method is given to make waves in the computation region go outward freely passing through an open boundary. The characteristics relationship in (2) above is used. On referring Figure 3-4, at the boundary x=x_0 , the relationships are
(式53)
This yields
(式54)
In case of two-dimensional propagation, the boundary condition should be set in the same way as discussed above in (2).

(5) Boundary Conditions at Run up Fronts

Run up is taken into consideration only in nonlinear computations but not in linear computations.

Whether a computation cell is dry or submerged is judged in terms of the total water depth, as follows.
(式55)
   A wave front is located between the dry and submerged cells. The discharge across the boundary between the two cells is computed if the ground height level in the dry cellis lower than the water level in the submerged cell. In other cases, discharge is considered zero.

(6) Boundary Conditions When Water Overflows Structures

The Horn-ma formula is used when water overflows breakwaters and sea walls in the computation region.
Discharge overflowing a structures is given by

(式56)
(式57)

where h_1 and h_2 are the water depths in front of and behind structure measured above the top of structure, and coefficients \mu=0.35 and \mu」=2.6

1.3 CONTINUATION OF REGIONS
(1) Necessity of Continuation of Regions in Numerical Computation

In the design of numerical computations for long waves such as storm surges and tsunamis, it is recommended to set an open sea boundary in the deep ocean where the boundary conditions can be accurately and easily given. In addition, in order to save the CPU time, also recommended are the proper use of linear and nonlinear theories according to the degree of non-linearity of the phenomena, and (2) coarse grids in the deep sea and fine grids in the near shore zone. These selection and use require the continuation of computation at the boundary of regions of different grid length.

Our equations belong to the wave equation, for which the CFL condition should be satisfied for stability of numerical computation.
(式58)
where \delta t and \delta x are the temporal and spatial grid lengths, and h_{max} is the maximum still water depth in a computation region. Approaching the shore, h_{max} becomes smaller, then a smaller \delta x is selected to satisfy the CFL condition on keeping \delta t constant. This is an ordinary way of how to select the temporal and spatial grids, if Run up is not included in simulations. If Run up is included, it is sometimes very hard to satisfy the. CFL condition by changing only the spatial grid length. In this case, not only \delta x but also \delta t are changed in different computation regions.

Methods are given, in the following, to connect water level and discharge flux between regions of different temporal and spatial grid lengths, in order to carry out a computation continuously.

(2) Continuation of Regions of Different \delta x

In a problem which is two-dimensional in space, three independent variables, x, y and t, should be taken into consideration. In the following, it is assumed that \delta t is constant in any regions of different spatial grid length.

In section (a), a method of continuation and its importance is explained by taking a one-dimensional cases as an example. In section (b), a method of continuation is given for the spatially two-dimensional problem.

(a) Continuation of Regions in the x-t plane

Figure 1-5 shows the process of computation in the x-t plane in a one-dimensional case. Arrows given by solid lines are for the computation of the discharge, and those by broken lines are for the computation of the water level. Numerals without prime on the t-axis correspond to the time step when the discharge is computed. Numerals with prime is for the computation of the water level. The discharge M^k is defined as the discharge at the positive x side of the computation cell(i,k).

Figure 1-5(A) is the mesh when \delta x is constant in the whole region of computation. In order to begin the computation, values at points of double circles on boundaries should be known; they are, the water level Z at t=0 and the discharge M at t=0 as the initial condition, and either the discharge M at t=0 as the initial condition, and either the discharge or water level along x = 0 and x = n\delta x as the boundary condition. If they are given, the water level Z_1 at t = 1」 is calculated with the equation of continuity, then the discharge M at t = 1 is obtained with the equation of motion. The same procedure is repeated to determine Z and M in the direction of time.

Figure 1-5(B) is a case of continuation of regions of different grid length. In the region S (of small grid length) to the left of the line b-b」, the spatial grid length is \delta x, and in the right region L (of larger grid length) the spatial grid length is larger and is equal to k\delta x (k>1). The computation procedure in each region is the same as in the former case. However, if values are not calculated and not connected along the line, the region where the solution is given becomes narrower with the lapse of time as shown in Figure-5(B).

In order to obtain the solution in the whole x-t plane, the discharge should be known on the boundary b-b」 first. This value of discharge can be calculated either in the region S or in the region L. Assume now that the discharge is calculated in the computation for the region L. In order to calculate the discharge at t = 1 on the line b-b」, we need the value of the water level Z_{L1} at a point in the region S, the position of which is symmetric to the point for Z_{LI} in the region L with respect to the line b-b」. An interpolation may be used to determine Z_{LL}, from values obtained in the region S. However, in place of interpolation, the present authors recommend to set k be an odd number then the necessary value is already calculated in the computation in the region S.

In the authors」 programme, they take the foflowing assumptions are made.

(i) The ratio k is 3 ;
(ii) For connection of water level, the region L needs an extra cell in the region S beyond the line b-b」;
 (iii) In more general case than Figure-5(b), the region S needs an extra cell in the region L beyond the line b-b’.

Otherwise, when the direction of the x-axis is taken inversely to the case in Figure-5(B), values of discharge on the right boundary in the region S can not be calculated, because the point of computation for discharge is located on the left side of the computation cell.

In conclusion, the computation procedure for the continuation of region is summarized as shown in Figure-6 for one-dimensional case.

(b) Continuation of Region in the x, y-t Space
Discussion in the preceding section give the way of connection of values when a difference equation is solved across the boundary between two regions of different grid length.

(i) The water level in the region S in the neighborhood of the line b-b」 is used in the computation in the region L.
(ii) The water discharge in the region L in the neighborhood of the line b-b」 is used in the computation in the region S.

The method is explained for a two-dimensional case, on referring Figure-7 where circles are computation points for-water level and arrows are those for discharge.

As for the water level, two methods are possible. Since k is taken equal to 3, when the region L is extended by an extra cell into the region S, this extra cell is composed of 9 small cells of the region S. The central point (marked by double circles in Figure-7) of the 9 cells is located at the central point of the extra cell.

Therefore, we set
(式59)

or,taking the mean value averaged over 9 cells, we have

(式60)
Different from the water level, the connection of the water discharge requires either interpolation or extrapolation. Along the boundary between the regions L and S, discharges area connected as follows, on referring Figure-7.


(i) At points from (I」+2) to (I」+8) along the boundary, discharges are calculated by an interpolation. For example,

(式61)

(ii) At other points, an interpolation is used if the region L still exists, For example, the discharge at the point (1」+ 10) on the boundary is given by,

(式62)

   If the region L does not exist as the point I」, an extrapolation is used. Then, we have

(式63)

(3)Continuation of Regions of Different \delta t

Assume that the time grid changes from 3\delta t to \delta t. Figure 1-8 shows the computation procedure in the x-t plane.

As for the water level, values in the region S is used in the computation in the region L. This means that values are connected at the time step shown by an arrow in Figure 1-8; i.e., at the middle of 3 cells in the region S.

As for the discharge, values in the region L is used in the computation in the region S. Therefore, at each time step in the region S (at K, K+1,K+2, and so on), values of discharge such as M_1 and M_2 should be given.

Let M_L at time K and M_L」at time (K-3) be known. Then, Ml is calculated by an extrapolation.

The same extrapolation is applicable to M_2. However, an interpolation is preferable for M_2 in order to reduce numerical errors. For this interpolation, value of M_L』 should be known beforehand at time (K+2).

Figure 1-9 shows the way of computation in detail.

A comment is added here that the position of time-region continuation is not necessarily the same as the position of space-region continuation.

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式(1〜63)
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Figure 1-1. Central difference
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Figure 1-2. Arrangement of points for computation in the leap-frog method.
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Figure 1-3.Arrangement of points for convection terms.
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Figure 4. An offshore open boundary and characteristics when a simple harmonic wave train is propagating in the negative x direction.
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Figure1-5.Computation procedure in the x-t plane, (A) if the spatial grid length is constant in the whole region, and (B) if two regions of different grid length are connected at the boundary b-b」.
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Figure 1-6(a). Details of computation continuation in the x-t plane in case of k =3 and \delta t =const. Open (filled) circles are points where the water level (discharge) is computed.
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Figure 1-6(b). With the equation of continuity, Z_S(I,K」) and Z_L(I」,K」) are computed. Suffixes s and L denote values in the region S of \delta x and in the region L of 3\delta x
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Figure 1-6(c). The water leve1 Z_L(IE,K」) is set equal to Z_s(IS+』,K」)
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Figure 1-6(d).With the equation of motion, M_s(I,K) and M_L(I」,K) are computed.
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Figure 1-6(e).The water discharge M_s(IS,K) is set to M_L(IE-1,K)
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Figure 1-7. Continuation between two regions S and L in the (x,y-t) space, where k = 3 and \delta t = const.
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Figure 1-8. Computation continuation between two regions S and L in the x-t plane when \delta t varies at the ration of 1:3.
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Figure 1-9(a).Details of computation continuation in the x-t plane,when \delta t varies at the ratio of 1:3. Computation of the water level Z in the regions S and L, with the equation of continuity
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Figure 1-9(b).Computation of the water discharge M in the region S, with the equation of motion. An extrapolation in the region L to determine value of M at the boundary. Connection of the water disch
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Figure 1-9(c).Computation of the water level Z in the region S,with the equation of continuity.Connection of the water level from the region S to the region L.
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Figure 1-9(d).Computation of the water discharge M in the region S and L, with the equation of motion. An interpolation in the region L to determine values of M at the boundary. Connection of the wate
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Figure 1-9(e).Computation of the water level Z in the region S with the equation of continuity
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Figure 1-9(f).Computation of the water discharge M in the region S with the equation of motion.

CHAPTER 2. TYPICAL PROGRAMMES

2.1 ASSUMPTIONS

The following three assumptions are made.

(1)The astronomical tide does not vary with respect to time throughout the tsunami computation. The still water level in the computation is set equal to the water level at the beginning of computation.

(2)Both the spatial and temporal grid lengths vary only at the ratio of 1:3:9: and so on,if the change of them is necessary.

(3)In the linear computation, no run up can be included, and therefore the computation is not carried out for the water depth shallower than 0.1cm, and vertical walls are set in place of the actual slope.

2.2 CONSTRUCTION OF MAIN PROGRAMMES

In order to make it easy to understand the flow of computation, the main programme is composed of calls of sub-programmes. For simplicity of explanation, we take a region of computation shown in Figure 2-1 as an example. The region is of a constant water depth, surrounded by vertical walls (shown by hatches) and has a small bay also bounded by vertical walls. The region is divided into three subregions, A, B and C, the spatial and temporal grid lengths of which vary as 9:3:1. In Table 2-1, letters used in the main and subroutines are summarized and explained. The main programme is given after Table 2-1 from page 30 to page 34. In the following, explanations and hints in programming are given, in the order of the flow in the main programme.

(1)Specification Statement
・REAL M and N should be stated.
・Declare, in each domains, three-dimensional arrays for Z, M, N, DZ, DM, and DN, and two-dimensional arrays for HZ, HM, HN, IR and IB. Declaration of BT(10) should not be missed (This will be explained later). Dimensions for space should be increased by one in order to include an extra row or column outside the domain under consideration, as shown in Figure 2-1. Otherwise,_ discharge on the boundary, or IB and IR maps (both of them will be explained later) are sometimes not definable, according to the way of selection of the I and J axes. Dimensions for time are always taken to be 2, because values are changed by a subroutine CHANGE.

(2) Input of Setting Values

・Values of DX, DT AND R(=DT/DX) should be input in every domains.

(3) Setting of Initial Value

(i) CALL DEPTHO

With this command, data of water depth HZ, IB and IR map are input in every domain. To build this subroutine for data input, the following points should be taken into consideration.

・Water depth
Read water depths HZ on hydrographic charts with the z-axis positive downwards.
・IB map (a two-dimensional array)

An IB map gives the method of computation and the existence of vertical walls. According to the. following rule, positive integers of one or two figures are allotted to and input into every grid point in every domain.

The unit digit = 0, the computation is with the linear theory without the convection term.
The unit digit = 1, the computation is with the nonlinear theory with the convection term included.
The tenth digit = 1, the discharge flux M in the I-direction is zero, owing to the existence of a vertical wall.
The tenth digit = 2, the discharge flux N in the J-direction is zero, owing to the existence of a vertical wall.
The tenth digit = 3, the discharge fluxes M and N in the I and J-directions are zero, owing to the existence
of a vertical wall.
The tenth digit = 4, no computation.

For example ( See Figure 2-1), if the computation in the domain A is carried out with the linear theory, the IB(I,J) is set as follows.

IB(I,J) = 10, for 1 ≦ I ≦ 31 and 1 ≦ J ≦ 16, because of the vertical wall.
IB(I,J) = 20, for 2 ≦ I ≦ 31 and J = 1, because of the vertical wall.
IB(I,J) = 40, for 12 ≦ I ≦ 20 and 1 ≦ J ≦ 5, the computation in the domain A is not necessary because it is carried out in the domain B.
IB(I,J) = 0, for other combination of I and J.

・IR map (a two-dimensional array)

This map shows the existence of such structures as sea walls of finite crown height. According to the following rule, positive integers of one or two figures are allotted to and input into every grid point in every domain.

The unit digit -------- assign the address I (=1-9) of BT(I), data of the crown height of sea walls.
No tenth digit -------- no sea wall.
The tenth digit = 1, there is a sea wall on the computation line of discharge M in the I-direction.
The tenth digit = 2, there is a sea wall on the computation line of discharge N in the J-direction.
The tenth digit = 3, there is a sea wall both on the computation lines of discharge M and N in the I- and J - directions.

An example of IR map is shown in Figure 2.2 The thick line in Figure 2.2(a) is the axis of the sea wall.
Figure.2.2(b) is the corresponding IR map. In BT(1), stored is the crown height of sea wall measured positive upward above still water level. Attention should be paid on the fact that the positive direction for the crown height is different from that for HZ, HM and HN.

(ii) CALL DEPTH

Water depths HM and HN at the point where the discharge is computed are calculated. A call statement is necessary for a computation domain.

(iii) CALL SETZRO

Initial values are set for Z, M, N and DZ, all of which are set equal to zero. A call statement is necessary for a computation domain.

(4) Computation Repeated with Respect to Time

(i) CALL CONTIN

The water depth Z at the next time step is computed with the equation of continuity. A call statement is necessary for a computation domain.

(ii) CALL JOINTZ

The water depth is connected between domains of different time and space grid lengths. A. call statement is necessary for a line of connection. In Figure 2-1, six call statements are required in total :three call statements between the domain A and the domain B, and other three call statements between the domain B and the domain C.

(iii) CALL MOTION

The discharges M and N at the next time step is computed. with the equation of motion. Discharges over sea walls is evaluated with the Hom-ma formula. A call statement is necessaryy for a commutation domain.

(iv) CALL BOUND

The conditions are input at the seaside boundary. Input data of a tsunami should be prepared, on referring Chapter 1, Section 1.-1.

(v) CALL JOINTQ

The discharge is connected between domains of different time and space grid lengths. A call statement is necessary for a line of connection.

(vi) CALL OUTPUT

A subroutine is added at need, to output the computed results.
(vii) CALL CHANGE

Old data one time step before are changed with new data. For example, newly obtained Z(I, J, 2) replaces old data and become Z(I, J, 1) which is used in the next computation.

・Time Step Index

If the time step i t varies from a domain to another, the computation procedures from (i) to (vii) mentioned above is not always carried out at every time step except in the domain of the smallest \delta t. The time step at which the computation is carried out in the other domains should be controlled by introducing the 『time step index』. On referring Figure 1-9 and the subroutine given later in 2.3, the time step index is as follows in case of Figure 2-1.

KT in CONTIN, MOTION, CHANGE 1, 3, 9 in domains C, B and A, respectively.
KT in JOINTZ 3 in connection of domains C and B.
9 i n connection of domains B and A.
KT1 and KT2 in JOINTQ 1 and 3 in connection of domains C and B.
3 and 9 in connection of domains B and A.

Note: Suffixes A,B and C denotes domains. Notations in parentheses are used only in this programme

C
C MAIN PROGRAMME
C
REAL MA,NA,MB,NB,MC,NC
DIMENSION ZA(32,17,2),MA(32,17,2),NA(32,17,2),DZA(32,17,2), &
DMA(32,17,2),DNA(32,17,2),HZA(32,17),HMA(32,17),HNA(32,17) DIMENSION
ZB(32, 17,2),MB(32, 17,2),NB(32, 17,2),DZB(32, 17,2), &
DMB(32,17,2),DNB(32,17,2),HZB(32,17),HMB(32,17),HNB(32,17) DIMENSION
ZC(32, 17,2),MC(32, 17,2),NC(32, 17,2),DZC(32, 17, 2), &
DMC(3 2,17,2),DNC(32,17,2),HZC(32,17),HMC(32,17),HNC(32,17) DIMENSION
IRA(32,17),IRB(32,17),IRC(32,17) DIMENSION IBA(32,17),IBB(32,17),IBC(32,17) DIMENSION
BT(10)
C
C READ(5,*), DXC,DTC,WP,WD,KOUT
DXC = 50.0
DTC = 1.0
WP = 600.0
WD = 50.0
KOUT = 5
DXB=3.0*DXC
DXA=3.0*DXB
DTB=3.0*DTC
OTA=3.0*DTB
RA=DTA/DXA
RB=DTB/DXB
RC=DTC/DXC
GG=9.8
PP=6.283185
KE=IFIX(2.0 * WP/DTC)
DO 20 I=1,10
BT(I)=0.0
20 CONTINUE
C
CALL DEPTHO(32,17,HZA,IRA,IBA,WD,1)
CALL DEPTHO(32,17,HZB,IRB,IBB,WD,2)
CALL DEPTHO(32,17,HZC,IRC,IBC,WD,3)
C
CALL DEPTH(32,17,HZA,HMA,HNA,BT,IRA)
CALL DEPTH(32,17,HZB,HMB,HNB,BT,IRB)
CALL DEPTH(32,17,HZC,HMC,HNC,BT,IRC)

CALL SETZRO(32,17,ZA,MA,NA,DZA,HZA)
CALL SETZRO(32,17,ZB,MB,NB,DZB,HZB)
CALL SETZRO(32,17,ZC,MC,NC,DZC,HZC)
LL=1
LX=O
C
DO 10 K=1,KE
K1=K
CALL CONTIN(32,17,2,31,2,16,ZA,MA,NA,DZA,HZA,RA,IBA,K1,9)
CALL CONTIN(32,17,2;31,2,16,ZB,MB,NB,DZB,HZB,RB,IBB,K1,3)
CALL CONTIN(32,17,2,31,2,16,ZC,MC,NC,DZC,HZC,RC,IBC,K1,1)
C
CALL JOINTZ(32,17,32,17,ZB,ZA,DZB,DZA,12,12,2,6,3,3,K1,9,DXA,DXB)
CALL JOINTZ(32,17,32,17,ZB,ZA,DZB,DZA, 12,21,6,6,3,15,K1,9,DXA,DXB)
CALL JOINTZ(32,17,32,17,ZB,ZA,DZB,DZA;21,21,2,6,30,3,K1,9,DXA,DXB)
C
CALL JOINTZ(32,17,32,17,ZC,ZB,DZC,DZB,12,12,2,4,3,9,K1,3,DXB,DXC)
CALL JOINTZ(32,17,32,17,ZC,ZB,DZC,DZB,12,21,4,4,3,15,K1,3,DXB,DXC)
CALL JOINTZ(32,17,32,17,ZC,ZB,DZC,DZB,21,21,2,4,30,9,K1,3,DXB,DXC)

C
CALL MOTION(32,17,2,31,2,16,ZA,MA,NA,DZA,DMA,DNA,HZA,HMA,HNA,IRA, &
IBA,RA,0.0,DTA,K l ,9)
CALL MOTION(32,17,2,31,2,16,ZB,MB,NB,DZB,DMB,DNB,HZB,HMB,HNB,IRB, &
IBB,RB,0.0,DTB,K1,3)
CALL MOTION(32,17,2,31,2,16,ZC,MC,NC,DZC,DMC,DNC,HZC,HMC,HNC,IRC, &
IBC,RC,0.0,DTC,K1,1)
C
CALL BOUND(32,17,2,31,NA,ZA,WD,WP,DTA,DXA,K1,9)
C
CALL JOINTQ(32,17,32,17,MA,MB,NA,NB,1,1,2,16,11,2,0,1,0,2, & K1,3,9,DXA,DXB)
CALL JOINTQ(32,17,32,17,MA,MB,NA,NB,2,31,16,16,12,6,0,2,0,2, & K1,3,9,DXA,DXB)
CALL JOINTQ(32,17,32,17,MA,MB,NA,NB,31,31,2,16,21,2,0,1,0,2, & K1,3,9,DXA,DXB)
CALL JOINTQ(32,17,32,17,MB,MC,NB,NC,1,1,8,16,11,2,0,1,0,2, & K1,1,3,DXB,DXC)
CALL JOINTQ(32,17,32,17,MB,MC,NB,NC,2,31,16,16,12,4,0,2,0,2, & K1,1,3,DXB,DXC)
CALL JOINTQ(32,17,32,17,MB,MC,NB,NC,31,31,8,16,21,2,0,1,0,2, & K1,1,3,DXB,DXC)
C
IF(MOD(K1,9).EQ.5) LL=LL+1
IF(MOD(LL,KOUT).NE.0) GO TO 30
IF(LL.EQ.LX) GO TO 30
C
CALL OUTPUT(32,17,ZA,DZA,K 1)
CALL OUTPUT(32,17,ZB,DZB,K 1)
CALL OUTPUT(32,17,ZC,DZC,K 1)
WRITE(60,1000) K
1000 FORMAT(10X,’K=’,I5)
30 CONTINUE
LX=LL
C
CALL CHANGE(32,17,ZA,MA,NA,DZA,K1,9)
CALL CHANGE(32,17,ZB,MB,NB,DZB,K1,3)
CALL CHANGE(32,17,ZC,MC,NC,DZC,K1,1)
C
10 CONTINUE
C
STOP
END

SUBROUTINE BOUND(IG,JG,IS,IE,N,Z,WD,WP,DT,DX,KK,KT)
REAL N
DIMENSION N(IG,JG,2),Z(IG,JG,2)
GG=9.8
PP=6.283185
IF(KT.EQ.1) GO TO 200
IF(MOD(KK,KT).NE.KT/2+1) RETURN
200 CONTINUE
DO 10 I=IS,IE
CC=SQRT(GG*WD)
XMM=(CC*DT*N(I,15,1)+(DX-CC*DT)*N(1,16,1))/DX
ZZ2=(Z(I,15,2)+Z(I,15,1))*0.5
ZZ1=(Z(I,16,2)+Z(I,16,1))*0.5
ZZ=((CC*DT-0.5 *DX) *ZZ2+(1.5 *DX-CC*DT) *ZZ 1)/DX
EZ=-2.0 * SIN(PP *FLOAT(KK) *DT/(WP * FLOAT(KT)))
N(1,16,2)=CC*EZ+0.5*(XMM+CC*ZZ)
10 CONTINUE
RETURN
END

SUBROUTINE DEPTH (IG,JG,HZ,HM,HN,BT,IR)
DIMENSION HZ(IG,JG),HM(IG,JG),HN(IG,JG)
DIMENSION IR(IG,JG),BT(10)
DO 10 I=1,IG
DO 10 J=1,JG
IF(I.EQ.IG) GO TO 11
HM(I,J)=0.5 *(HZ(I,J)+HZ(I+l ,J))
GO TO 12
11 HM(I,J)=HZ(I,J)
12 IF(J.EQ.JG) GO TO 13
HM(I,J)=0.5 *(HZ(I,J)+HZ(I,J+I))
GO TO 10
13 HN(I,J)=HZ(I,J)
10 CONTINUE
DO 14 I=1,IG
DO 14 J=1,JG
IRR=MOD(IR(I,J),10)
IRM=IR(I,J)/10
IF(IRM.EQ.O) GO TO 14
IF(IRM.EQ.2) GO TO 15
HM(I,J)=-BT(IRR)
IF(IRM.EQ.1) GO TO 14
15 HM(I,J)=-BT(IRR)
14 CONTINUE
RETURN
END

SUBROUTINE OUTPUT(IG,JG,Z,DZ,KK)
C
DIMENSION LW(20),Z(IG,JG,2),DZ(1G,JG,2)
WRITE(6,100) KK,(J,J=2,16)
100 FORMAT(1H,2X,’K=’,I4,/,6X,15I4)
IG1=IG-1
JG1=JG-1
DO 10 I=2,IG 1
DO 11 J=2,JG1
LW(J)=0
IF(DZ(I,J,2).GT.1.OE-4) LW(J)=IFIX(100.0*Z(I,J,2)+0.5)
11 CONTINUE
WRITE(6,101) I,(LW(J).J=2,16)
101 FORMAT(1H ,I5,15I4)
10 CONTINUE
RETURN
END

2.3 Explanation of Subroutines

(1) DEPTH (Computation of the water depth at points for discharge)

Objective

The still water depth at points for discharge is calculated, based upon the still water depth at point for water depth. Information of the existence of structures from the map of breakwaters is also input.

Method of Connection

CALL DEPTH (IG, JG, HZ, HM, HN, BT, IR)

(表1)

SUBROUTINE DEPTH (IG,JG,HZ,HM,I N,BT,IR)
DIMENSION HZ(IG,JG),HM(IG,JG),HN(IG,JG)
DIMENSION IR(IG,JG),BT(10)
DO 10 I=1,IG
DO 10 J=1,JG
IF(LEQ.IG) GO TO 11
HM(I, J)=0.5 * (HZ(I,J)+HZ(I+ 1,J))
GO TO 12
11 HM(I,J)=HZ(I,J)
12 IF(J.EQ.JG) GO TO 13
HN(I,J)=0.5 * (HZ(I,J)+HZ(I,J+1) )
GO TO 10
13 HN(I,J)=HZ(I,J)
10 CONTINUE
DO 14 I=l,IG
DO 14 J=1,JG
IRR=MOD(IR(I,J),10)
IRM=IR(I,J)/10
IF(IRM.EQ.0) GO TO 14
IF(IRM.EQ.2) GO TO 15
HM(I,J)=-BT(IRR)
IF(IRM.EQ.1) GO TO 14
15 HN(I,J)=-BT(IRR)
14 CONTINUE
RETURN
END

(2) SETZRO (Setting of initial condition)

Objective

Input of initial values of water level, water discharge, and total water depth at points for water level.

Method of Connection

CALL SETZRO (IG, JG, Z, M, N, DZ, HZ)

(表2)

SUBROUTINE SETZRO (IG,JG,Z,M,N,DZ,HZ)
REAL M,N
DIMENSION Z(IG,JG,2),M(IG,JG,2),N(IG,JG,2)
DIMENSION DZ(IG,JG,2),HZ(IG,JG)
DO 10 K=1,2
DO 10 I=1,IG
DO 10 J=1,JG
M(I,J,K)=0.0
N(I,J,K)=0.0
DZ(I,J,K)=HZ(I,J)
IF(HZ(I,J).LT.1.0E-5) DZ(I,J,K)=0.0
Z(I,J,K)=DZ(I,J,K)-HZ(I,J)
10 CONTINUE
RETURN
END


(3) CONTIN (Computation of the equation of continuity)

Objective

Cotation of the water level and total water depth at the next time step with the equation of continuity.

Method of Connection

CALL CONTIN (IG, JG, IS, IE, JS, JE, Z, M, N, DZ, HZ, R, IB, KK, KT)

(表3)

SUBROUTINE CONTIN (IG,JG,IS,IE,JS,JE,Z,M,N,DZ,HZ,R,IB, & KK,KT)
C
REAL M,N
DIMENSION Z(IG,JG,2),M(IG,JG,2),N(IG,JG,2),HZ(IG,JG)
DIMENSION DZ(IG,JG,2),IB(IG,JG)
DATA GX/1.OE-5/
IF(KT.EQ.1)GO TO 200
IF(MOD(KK,KT).NE.1)RETURN
200 CONTINUE
DO 10 I=IS,IE
DO 10 J=JS,JE
IF(IB(I,J).EQ.40) GO TO 11
XM=0.0
XN=0.0
IF(LNE.1)XM=M(I-1,J,2)
IF(J.NE.1)XN=N(I,J-1,2)
ZZ=Z(I,J,1)-R*(M(I,J,2)-XM+N(I,J,2)-XN)
IF(ABS(ZZ).LT.1.OE-1 O)ZZ=O.0
DD=ZZ+HZ(I,J)
IF(DD.LT.GX) GO TO 11
DZ(I,J,2)=DD
Z(I,J,2)=ZZ
GO TO 10
11 DD = 0.0
DZ(I,J,2)=DD
Z(1,J,2)=DD-HZ(I,J)
10 CONTINUE
RETURN
END


(4) JOINTZ (Connection of the water level in space and time)
Objective

Connection of the water level between computation domains of different \delta x and \delta t.

Method of Connection

CALL JOINTZ (IG1, JG1, IG2, JG2, Z1, Z2, DZ1, DZ2, IS, IE, JS, JE, ISS, JSS, KK, KT, DX1, DX2)

(表4)

SUBROUTINE JOINTZ (IG1,JG1,IG2,JG2,Zl,Z2,DZ1,DZ2,IS,IE,JS,JE, &
ISS,JSS,KK,KT,DX1,DX2)
DIMENSION ZI(IGI,JG1,2),Z2(IG2,JG2,2)
DIMENSION DZI(IG1,JG1,2),DZ2(IG2,JG2,2)
IF(KT.EQ.1) GO TO 200
IF(MOD(KK,KT).NE.KT/2+1)RETURN
200 CONTINUE
DO 10 I=IS,IE
DO 10 J=JS,JE
IF(DX2-DX1) 20,21,20
20 II=ISS+3 *(I-IS)
JJ=JSS+3*(J-JS)
GO TO 22
21 II=ISS+(I-IS)
JJ=JSS+(J-JS)
22 Z2(I,J,2)=Z1(II,JJ,2)
DZ2(I,J,2)=DZ1(II,JJ,2)
10 CONTINUE
RETURN
END

(5) MOTION (Computation of the equation of motion)

Objective

Computation of the water discharge at the next time step with the equation of motion.

Method of Connection

CALL MOTION (IG, JG, Z, M, N, DZ, DM, DN, HZ, HM, HN, IR, IB, R, FM, DT, KK, KT)

(表5)

ROUTINEMOTION (IG,JG,IS,IE,JS,JE,Z,M,N,DZ,DM,DN,HZ,HM,HN, & IR.,IB,R,FM,DT,KK,KT)
REAL M,N
DIMENSION Z(IG,JG,2),M(IG,JG,2),N(IG,JG,2)
DIMENSION DZ(IG,JG,2),DM(IG,JG,2),DN(IG,JG,2)
DIMENSION HZ(IG,JG),HM(IG,JG),HN(IG,JG)
DIMENSION IR(IG,JC),IB(IG,JG)
DATA GG,GX/9.8, I.OE-5/
IF(KT.EQ.1)GO TO 200
IF(MOD(KK,KT).NE.KT/2+1)RETURN
200 CONTINUE
DO 10 I=IS,IE
DO 10 J=JS,JE
DMI=0.25 *(Z(I,J,1)+Z(I,J,2)+Z(I+1,J,1)+Z(I+1,J,2))+HM(I,J)
DM2=0.5 *(Z(I,J,2)+Z(I+1,J,2))+HM(I,J)
DN1=0.25 *(Z(I,J, I)+Z(I,J,2)+Z(I,J+1, I)+Z(I,J+1,2))+HM(I,J)
DN2=0.5 * (Z(I,J,2)+Z(I,J+ 1,2))+HN(I,J)
IF(DM I .LT.GX)DM 1=0.0
IF(DM2.LT.GX)DM2=0.0
IF(DN 1.LT.GX)DN 1=0.0
IF(DN2.LT.GX)DN2=0.0
DM(I,J,1)=DM1
DM(I,J,2)=DM2
DN(I,J,1)=DNI
DN(I;J,2)=DN2
10 CONTINUE
FN=0.5*DT*GG*FM**2
DO 20 I=IS,IE
DO 20 J=JS,JE
IBB=IB(I,J)/10
IBR=MOD(IB(I,J),10)
IF(IBB.EQ.4)GO TO 20
IF(IBB.EQ.1.OR.IBB.EQ.3)GO TO 30
IF(I.EQ.IG)GO TO 30IRR=IR(I,J)/10
IF(IRR.EQ.1.OR.IRR.EQ.3)GO TO 60
IF(IBR.EQ.O)GO TO 33
IF(DZ(I.J.2))31,31,32
31 IF(DZ(I+1,J,2))30,30,34
32 IF(DZ(I+1,J,2))35,35,36
34 IF(Z(I+1,J,2)+HZ(I,J))30,30,37
35 IF(Z(I,J,2)+HZ(I+1,J))30,30,38
36 DD=DM(I,J,2)
GO TO 39
37 DD=0.5 * (Z(I,J,2)+Z(I+1,J,2))+HZ(I,J)
GO TO 39
38 DD=0.5*(Z(I,J,2)+Z(I+l,J,2))+HZ(I+1,J)
GO TO 39
33 DD=HM(I,J)
IF(DD.LT.0.1)GO TO 30
39 XNN=0.25 *(N(I,J,1)+N(I+1,J,1)+N(I,J-1,1)+N(I+I,J-1,1))
DF=DD
IF(DF.LT.1.OE-2)DF=1.0E-2
FF=FN* SQRT(M(I,J,1)* *2+XNN* *2)/DF** (7.0/3.0)
IF(DD.LT.GX)GO TO 30
XM=(1.0-FF)*M(I,J,1)-GG*R*DD*(Z(I+1,J,2)-Z(I,J,2))
IF(IBR.EQ.O)GO TO 40
IF(DM(I,J,1).LT.GX)GO TO 40
IF(M(I,J,1)41,41,42
41 IF(DM(I+1,J,1).LT.GX)GO TO 40
XM=XM-R*(M(I+1,J,1)**2/DM(1+1,J,1)-M(I,J,1)**2/DM(I,J,1))
GO TO 43
42 IF(DM(I-1,J,1).LT.GX)CO TO 40
XM=XM-R*(M(I,J, 1)* *2/DM(I,J,1)-M(I-1,J,1) * *2/DM(I-1,J,1))
43 IF(XNN)44,44,45
44 XNE=0.25*(N(I,J+1,1)+N(I+1,J+1,1)+N(I,J,1)+N(I+1,J,1))
IF(DM(I,J+1,1).LT.GX)GO TO 40
XM=XM-R*(M(I,J+1,1)*XNE/DM(I,J+1,1) & -M(I,J,1)*XNN/DM(I,J;1))
GO TO 40
45 XNE=0.25*(N(I,J-1,1)+N(I+1,J-1,1)+N(I,J-2,1)+N(I+1,J-2,1)).
IF(DM(I,J-1,1).GT.GX)GO TO 40
XM=XM-R*(M(I,J, 1)*XNN/DM(I,J, 1) & -M(I,J- 1, 1)*XNE/DM(I,J- 1, 1))
40 XM=XM/(1.0+FF)
IF(ABS(XM).LT.1.OE-10)XM=0.0
M(I,J,2)=XM
GO TO 100
30 M(I,J,2)=0.0
GO TO 100
60 IRR=MOD(IR(I,J),10)
Z1=Z(I,J,2)+HM(I,J)
Z2=Z(I+1,J,2)+HM(I,J)
ZZ=Z1
ZX=Z2
IF(ZI.GT.Z2)GO TO 61
ZZ=Z2
ZX=Z1
61 IF(ZZ.LT.GX)GO TO 30
IF(ZZ*0.66667.LT.ZX)GO TO 62
XM=1.55*ZZ**1.5
GO TO 63
62 XM=4.029*ZX*SQRT(ZZ-ZX)
63 IF(Z2.GT.Z1)XM=-XM
M(I,J,2)=XM
100 CONTINUE
IF(IBB.GE.2)GO TO 130
IF(J.EQ.JG)GO TO 130
IRR=IR(I,J)/10
IF(IRR.GE.2)GO TO 160
IF(IBR.EQ.O)GO TO 133
IF(DZ(I,J,2))131,131,132
131 IF(DZ(I,J+1,2))130,130,134
132 IF(DZ(I,J+1,2))135,135,136
134 IF(Z(I,J+1,2)+HZ(I,J))130,130,137
135 IF(Z(I,J,2)+HZ(I,J+1))130,130,138
136 DD=DN(I,J,2)
GO TO 139
137 DD=0.5*(Z(I,J,2)+Z(I,J+ 1,2))+HZ(I,J)
GO TO 139
138 DD=0.5 *(Z(I,J,2)+Z(I,J+1,2))+HZ(I,J+1)
GO TO 139
133 DD=HN(I,J)
IF(DD.LT.0.1)GO TO 130
139 XMM=0.25 *(M(I,J,1)+M(I,J+1,1)+M(I-1,J,1)+M(I-1,J+1,1))
DF=DD
IF(DF.LT.1.OE-2)DF=1.0E-2
FF=FN* SQRT(N(I,J,1)* *2+XMM* *2)/DF* * (7.0/3.0)
IF(DD.LT.GX)GO TO 130
XN=(1.0-FF)*N(I,J,1)-GG*R*DD*(Z(I,J+1,2)-Z(I,J,2))
IF(IBR.EQ.O)GO TO 140
IF(DN(I,J,1).LT.GX)GO TO 140
IF(N(I,J,1))141,141,142
141 IF(DN(I,J+1,1).LT.GX)GO TO 140
XN=XN-R*(N(I,J+1, 1)**2/DN(I,J+l, l)-N(I,J,1)**2IDN(I,J,1))
GO TO 143
142 IF(DN(I,J-1,1).LT.GX)GO TO 140
XN=XN-R*(N(I,J,1)* * 2/DN(I,J,1)-N(I,J-1,1)**2/DN(I,J- l,1))
143 IF(XMM) 144,144,145
144 XME=0.25*(M(I+1,J,1)+M(I+1,J+1, 1)+M(I,J,1)+M(I,J+1, 1))
IF(DN(I+l,J,l).LT.GX)GO TO 140
XN=XN-R*(N(I+1,J,1)*XME/DN(I+1,J,1) & -N(I,J,1)*XMM/DN(I,J,1))
GO TO 140
145 XME=0.25*(M(I-1,J,l)+M(I-l,J+l,1)+M(I-2,J,1)+M(I-2,J+1, 1))
IF(DN(I-1,J,1).LT.GX)GO TO 140
XN=XN-R*(N(I,J, 1)*XMM/DN(I,J, 1) & -N(I-I,J,1)*XME/DN(I-1,J,1))
140 XN=XN/(1.0+FF)
IF(AB S(XN). LT.1.OE-10)XN=0.0
N(I,J,2)=XN
GO TO 20
130 N(I,J,2)=0.0
GO TO 20
160 IRR=MOD(IR(I,J),10)
Z1=Z(I,J,2)+HN(I,J)
Z2=Z(I,J+1,2)+HN(I,J)
ZZ=Z1
ZX=Z2
IF(ZI.GT.Z2)GO TO 161
ZZ=Z2
ZX=Z1
161 IF(ZZ.LT.GX)GO TO 130
IF(ZZ*0.66667.LT.ZX)GO TO 162
XN=1.55*ZZ** 1.5
GO TO 163
162 XN=4.029*ZX*SQRT(ZZ-ZX)
163 IF(Z2. GT.Z 1)XN=-XN
N(I,J,2)=XN
20 CONTINUE
RETURN
END

(6)JOINTQ (Connection of the water discharge in space and time)

Objective

Connection of the water level between computation domains of different \delta x and \delta t.

Method of Connection

CALL JOINTQ (IG1, JG1, IG2, JG2, Ml, M2, N1, N2, IS, IE, JS, JE, ISS, JSS, NDS, INS, NDE, INE, KK,KT1, KT2, DX1, DX2)

(表6)
Note:For the meanings of NDS and NDE, refer the following figure.

(図1)

SUBROUTINE JOINTQ(IG1,JG1,IG2,JG2,M1,M2,Nl,N2,IS,IE, & JS, JE, ISS, JSS, NDS, INS,
NDE, INE, KK, KT 1, KT2, DX1, DX2)
REAL M 1,N l ,M2,N2
DIMENSION
M1(IG 1,JG 1, 2),M2(IG2,JG2,2),N 1(IG 1,JG 1,2),N2(IG2,JG2,2)
KY=KTI/2+1
IF(KT1.EQ.1) GO TO 100
IF(MOD(KK,KT1).NE.KY) RETURN
100 IF(IS.NE.IE) GO TO 200
J3=NDS+1
J4=NDE+1
JJS=JS+J3
JJE=JE-J4
JEE=JSS+(JJE-JJS)/3
DO 10 J=JS,JE
IF(DX1-DX2) 51,50,51
51 IF(J.GE.JJS.AND.J.LE.JJE) GO TO 20
IF(J.LT.JJS) GO TO 30
IF(J.GT.JJE) GO TO 40
20 JF=JSS+(J-JJS)/3
F=FLOAT(3-MOD(J-JJS,3))
GO TO 60
30 IF(INS.EQ.2) GO TO 35
JF=JSS
F=3.0+FLOAT(JJS-J)
GO TO 60
35 JF=JSS-1
F=FLOAT(JJS-J)
GO TO 60
40 IF(INE.EQ.2) GO TO 45
JF=JEE-1
F=FLOAT(JJE-J)
GO TO 60
45 JF=JEE
F=FLOAT(3-(J-JJE))
GO TO 60
50 JF=J-(JS-JSS+NDS)
F=3.0
60 XM2=(F*Ml(ISS,JF,2)+(3.0-F)*M1(ISS,JF+1,2))/3.0
XM1=(F*M 1(ISS,JF,1)+(3.0-F)*M 1(ISS,JF+1,1))/3.0
IF(KT1.EQ.KT2) GO TO 101
KX=MOD(KK,KT2)
IF(KT1.EQ.1) GO TO 103
IF(KX.EQ.KY) GO TO 102
IF(KX.EQ.KY+2*KT1) GO TO 101
GO TO 104
103 IF(KX.EQ.0) GO TO 101
IF(KX.EQ.1) GO TO 102
104 M2(IS,J,2)=(2.0*XM2+XM1)/3.0
GO TO 10
101 M2(IS,J,2)=XM2
GO TO 10
102 M2(IS,J,2)=(4.0 *XM2-XM 1)/3.0
10 CONTINUE
RETURN
200 13=NDS+1
I4=NDE+1
IIS=IS+13
IIE=IE-14
IEE=ISS+(IIE-IIS)/3

DO 70 I=IS,IE
IF(DX1-DX2) 151,150,151
151 IF(LGE.IIS.AND.I.LE.IIE) GO TO 120
IF(LLT.IIS) GO TO 130
IF(LGT.IIE) CO TO 140
120 IF=ISS+(I-IIS)/3
F=FLOAT(3-MOD(I-IIS,3))
GO TO 160
130 IF(INS.EQ.2) GO TO 135
IF=ISS
F=3.0+FLOAT(IIS-I)
GO TO 160
135 IF=ISS-I
F=FLOAT(IIS-I)
GO TO 160
140 IF(INE.EQ.2) GO TO 145
IF=IEE-I
F=FLOAT(IIE-I)
GO TO 160
145 IF=IEE
F=FLOAT(3-(I-IIE))
GO TO 160
150 IF=I-(IS-ISS+ND S)
F=3.0
160 XN2=(F*NI (IF,JSS,2)+(3.0-F)*N 1(IF+1,JSS,2))/3.0
XN1=(F*NI (IF,JSS,1)+(3.0-F)*N 1(IF+1,JSS,1))/3.0
IF(KT1.EQ.KT2) GO TO 201
KX=MOD(KK,KT2)
IF(KT1.EQ.1) GO TO 203
IF(K)LEQ.KY) GO TO 202
IF(KX.EQ.KY+2*KT1) GO TO 201
GO TO 204
203 IF(KX.EQ.0) GO TO 201
IF(KX.EQ.1) GO TO 202
204 N2(I,JS,2)=(2.0*XN2+XN1)/3.0
GO TO 70
201 N2(I,JS,2)=XN2
GO TO 70
202 N2(I,JS,2)=(4.0*XN2-XNl)/3.0
70 CONTINUE
RETURN
END


(7) CHANGE (Change of dat)

Objective

Change the index of time index from 2 to 1, at every time step of computation.

Method of Connection

CALL CHANGE (IG, JG, Z, M, N, DZ, KK, KT).

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Figure 2-1: A model basin for explanation of the programme
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Figure 2-2: An example of the IR map.
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Table 2-1:Notations in the Main Programme
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(表1〜6)
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(図1)

CONTENTS

1.INTRODUCTION 1
2.METHODS OF COMPUTATION 1

2.1 CO-ORDINATES AND AREA FOR COMPUTATION 1
2.2 GOVERNING EQUATIONS AND GRID LENGTH 2
2.3 INITIAL AND BOUNDARY CONDITIONS 4

3.TSUNAMI SIMULATION PROGRAMMES 5

3.1 AN EXAMPLE OF PROGRAMME 5
3.2 VARIABLES AND CONSTANTS IN TSUNAMI SIMULATION 6
3.3 SUBROUTINES IN TSUNAMI SIMULATION 6
3.4 VARIABLES AND CONSTANTS IN INITIAL PROFILE COMPUTATION 7

4.CONCLUDING REMARKS 8

1.INTRODUCTION

Numerical simulations of far-field tsunamis require longer CPU time and larger memory capacity than those
of near-field tsunamis, because the computation covers wide areas. The long travel distance may yield dispersion
of wave components, and therefore the physical dispersion term should be included; i.e. the equations of higher order
approximation should be used. The long travel time yields an inevitable accumulation of numerical error. These
factors suggest that the computation programme should be carefully designed.

In the present text, a method of simulation is explained. The linear long wave theory is expressed in the
latitude-longitude co-ordinates. The equations are different. A method of setting initial and boundary conditions is
stated. A process of computation is explained by an example. A method of output is given. In addition, variables,
constants and subroutines are explained. This model is TUNAMI-F 1 (Tohoku University」s Numerical Analysis
Model for Investigation of Far-field Tsunamis, 1).

When the linear theory is used, it is also easy to attain a high rate of vectorization even with the ordinary
programming method. The present programme for transoceanic propagation is composed to fully utilize the
vectorization ability of super computer. The rate of vectorization of higher than 99% is a result of elimination of both
the IF-sentences in DO-groups and the division operation.

2.METHOD OF COMPUTATION

2.1CO-ORDINATES AND AREA FOR COMPUTATION

For near field tsunamis, the Cartesian co-ordinate system is used, because areas included in simulations are not wide. On the other hand, in numerical simulations of far-field tsunamis which travel more than 1,000 km over the ocean, the polar co-ordinates should be used. As shown in Figure 1, the earth is considered as a sphere of radius R, covered by the latitude and longitude (\theta,\lambda ).

The area in computation is taken wide enough to simulate the whole process of the transoceanic propagation of such tsunamis as the 1960 Chilean tsunami and the 1964 Alaska tsunami. Figure 2 shows the area used in the present example. Since the figure is drawn in Mercator」s projection, the length at high latitude in this map is different from the actual length. The map covers the area from S60° to N63°and from E 120°to W70°. The water depth is given at every 5」 in longitude and latitude. The space grid length of 10」 is used in the computation. The total number of grids amounts to 1,020 x 738 = 752,760.

2.2 GOVERNING EQUATIONS AND GRID LENGTH

In computation of a far-field tsunami, the dispersion term becomes important because the long travel distance acts to disperse wave components. The linear Boussinesq equation which includes the physical dispersion term is considered appropriate to express this effect. In the following, another simple method is explained to replace the physical dispersion term by the numerical dispersion term which is inevitably resulted as the truncation error of a numerical scheme. This replacement is possible, if the grid length is appropriately selected. Then, the linear long wave theory of lower order of approximation becomes almost equivalent to the linear Boussinesq equation of higher order of approximation. In addition, due to this replacement, the CPU time and the computer memory are much saved.

The linear long wave theory is given by the following expression in the latitude-longitude co-ordinates.

(1)
(2)
(3)

where \eta is the water level, M and N are discharge fluxes in the \lambda (along a parallel of latitude) and \theta (along a circle of longitude) directions, g is the gravitational acceleration, and f ( 2\omega sin\theta) is the Coriolis coefficient.

The leap-frog scheme is applied to obtain difference expressions of Eqs.(l) through (3). Then, we have

(4)
(5)
(6)
where
(7)
The unkowns, \eta, M and N, are given by the following explicit expressions.
(8)
(9)
(10)

where R」_s a re given as follows.
(11)

A point of computation is numbered as (j, m, n) in the (\theta, \lambda, t) directions. The grid lengths are (\delta \theta,\delta \lambda \delta t) In the present computation grid lengths in the latitude and longitude directions are taken equal: i.e. \delta s =\delta\theta= \delta \lambda. The angular velocity of earth rotation is given by \omega.

The spatial grid length is taken to be 10」, and the time step interval is taken to be 20 seconds. This spatial grid length is selected to satisfy the condition that the Imamura number Im given below is nearly equal to unity, or in other words, the numerical and physical dispersion effects are nearly the same.
(12)
where K is the Courant number (=(gh)^{1/2}\delta t/\delta x.) and h the mean water depth in the ocean under consideration. The time step interval is determined to satisfy the C.F.L. condition for the spatial grid length thus determined.

2.3 INITIAL AND BOUNDARY CONDITIONS

The initial condition, the vertical displacement of water surface is usually considered the same as the vertical displacement of sea bottom which is calculated with the Mansinha and Smylie method (1972), if fault parameters are given. When the actual vertical displacement of ground is available even though it is very rare, as in case of the 1964 Great Alaska earthquake, the better is to use this actual displacement. In case of a huge earthquake, other effects of dynamic fault motion such as the rise time and the rupture velocity may not be negligible. However, when the effect of a tsunami at a very remote place is studied, these dynamic factors are not influential.

The boundary condition on land is the perfect reflection. The velocity component (or, discharge flux component) normal to the land boundary is made equal to zero.

At the open sea boundary, the boundary condition is the free transmission. In terms of u the linear free transmission condition is,
(13)
where \eta is the water level and u the velocity. In terms of water discharge Q, the condition is given as follows, on assuming that \eta << h.
(14)
Here, two judgements are necessary One is the evaluation of the discharge flux Q. Another is the judgement of the direction of wave propagation. On referring Figure 4, the resultant discharge flux is simply determined by
(15)
wave propagation direction can be judged by the sign of N_2 in relation to the alignment of the open sea boundary.

2.4 FLOW CHART
In Figure 5, the flow of computation is shown with the names of subroutines, the details of which are described in Section 3.

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式(1〜11)
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Figure 1. Spherical Co-ordinates
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Figure2. Area for Computation, and Propagation of the Chilean tsunami
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Figure 3. Computation Points for Water Level and Discharge
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Figure 4. Distinction of Advancing and Receding Waves by the sign of N_2
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Figure 5. Flow Chart of the Computation

3. TSUNAMI SIMULATION PROGRAMMES

3.1 AN EXAMPLE OF PROGRAMME

Attached are the programme sheets of TUNAMI-F 1 applied to the 1990 Mariana tsunami, with brief explanations and comments. Pages 1 to 10 of the programme sheets are the tsunami simulation with the method describe above. Pages 11 to 13 are for the computation to determine the initial tsunami profile with the method given in the following subsection.

3.2 VARIABLES AND CONSTANTS IN TSUNAMI SIMULATION

Variables in the programme are;

Z: Water level.
M,N: Discharge flux.
H: Still water depth.
PZ: Time history of water level.
IP,JP: Co-ordinates of points for output of the history of water level.
Vl,V2,V3,V4,V5,V6,V7: Working arrays for vector operation.

Coefficients are;

ZM: Highest water level.
ZN: Lowest water level.
LF: Arrival time in hour.
Rl,R2,R3,R4,R5,R6: Coefficients given by Eq.(1 1), and R6 = cos \theta_{m+1/2}
C1= \theta_{m+1/2} in radian.
C2= \theta_m in radian.
C3= \theta_{m-1/2} in radian.
C4= h : Water depth.

Constants are;

GG: Gravitational acceleration.
PP: Circular constant \pi (= 3.1415926).
R: Radius of the Earth.

The computation is controlled by the following conditions.

IG,JG: Size of the area for computation in longitude and latitude.
FL: Latitude of the southernmost end of the area for computation.
IS,JS,IE,JE: Area where the tsunami exists and the computation is carried out.
DS,DT: Grid length in minute, and time step length in second.
KS,KE: Time steps of beginning and end of the computation.NG: Number of spatial points where the time history of water level is output.
KC: Time step length in outputting the time history of water level.
KD: Time step length to output spatial wave profiles.

3.3 SUBROUTINES IN TSUNAMI SIMULATION

Subroutines indicated in Figure 5 are as follows.

RDEPTH: Data input of water depth.
PARAME: Setting of parameters required in vectorized computation.
INITIA: Input of the initial condition and the initial profile.
ALIMIT: Making the area of computation be within the area under consideration.
BLIMINT: Enlargement of the area of computation as the tsunami propagates.
OUTPUT: Output and display of the spatial distribution of water level at an instant.
CLOCK: Time from the beginning of the computation, special for a NEC SX-1.
MASS: Computation of the equation of continuity.
GBOUND: Open sea, boundary condition.
MOMENT: Computation of the equation of motion.
MAX: Check of the highest and lowest water level.
POINT: Output of the time history of water level at the point (IP, JP).
PROPA: Output of the tsunami arrival time in hour.
OUTDT: Output of the highest and lowest water levels, and the arrival time.
FILEOT: Output of the water level and the discharge flux.

3.4 VARIABLES AND CONSTANTS IN INITIAL PROFILE COMPUTATION

The vertical displacement of sea bottom is calculated with the Mansinha and Smylie method (1972), and is assumed equal to the tsunami initial profile with no modification of hydraulic effect because the horizontal size of the initial profile is sufficiently large compared to the water depth at the tsunami-source.

In the attached programme sheets, the subroutine DEFORM is used to calculate the initial tsunami profile from the given fault parameters.

Variables in the programme are, on referring Figs. 7 through 9;

DX: Grid length in meter for the Cartesian co-ordinates.
DR: Grid length in degree for the spherical co-ordinates.
H: Depth of a corner of the fault plane in meter.
D: Dislocation of the upper plane (u) in meter.
DL: Dip angle (8) in degree
TH: Strike angle (0) in degree measured clockwise from north.
RD: Direction of dislocation (A) in degree.
L: Length of fault plane in meter.
W: Width of fault plane in meter.
YO, XO: Co-ordinate of the origin in the area for tsunami computation.
YO, XO: Co-ordinate of the origin of the fault plane.

Constants are;

A: Circular constant n (= 3.1415926).
RR: Radius of the earth (= 6.37E + 6 (m)).
E: =1.7453E - 3(m).

3.5 SUBROUTINES IN INITIAL PROFILE COMPUTATION

Subroutines are;
DEFORM: Computation of the initial profile.
USCAL: Computation of the vertical displacement due to the strike slip component.
UDCAL: Computation of the vertical displacement due to the dip slip component.

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Figure 6. Co-ordinates in the Areas for Computation of Tsunami and Initial Profile
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Figure 7. Fault Parameter
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Figure 8 Plan of Fault Plane
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Figure 9. Fault Plane in Three Dimensions

4. CONCLUDING REMARKS

In addition to TUNAMI-F1, the Disaster Control Research Center, Tohoku University provides four programs.

TUNAMI-F2 is for the simulation of a far-field tsunami, combining the transoceanic propagation and the detailed simulation in coastal water with the linear long wave equations.

For a near-field tsunami, there are three programs.

The first is TUNAMI-Nl, with the linear theory with constant spatial grid length. The authors recommend to begin with this programme, because it is easy to understand programs. Reader may refer 「NUMERICAL METHOD OF TSUNAMI SIMULATION WITH THE LEAP-FROG SCHEME」 written by Goto and Ogawa, and translated by Shuto.

The second is TUNAIvl-N2, with the linear theory in deep sea and with the shallow water theory in shallow sea and on land with constant grid length in the whole region. The run up can be computed with this programme.

The third is TUNAMII-N3, in which the spatial grid length varies from coarse grids in deep sea to fine grids in shallow sea. The linear long wave theory is used.

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(プログラム TSUNAMI-F1 0010-0590)
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(プログラム TSUNAMI-F1 0600-1100)
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(プログラム TSUNAMI-F1 1110-1700)
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(プログラム TSUNAMI-F1 2080-2510)
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(プログラム TSUNAMI-F1 1710-2070)
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(プログラム TSUNAMI-F1 2520-3140)
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(プログラム TSUNAMI-F1 3660-4220)
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(プログラム TSUNAMI-F1 5020-5380)
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(プログラム TSUNAMI-F1 5390-5730)
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(プログラム TSUNAMI-F1 5740-6170)

Coastal Engineering in japan,vol. 21,1978 NUMERICAL SIMULATION OF TSUNAMI RUN-UP Nobuo Shuto* Tomoaki Goto**

SYNOPSIS

A linear set of equations of long waves in the Lagrangian description is solved numerically to obtain run-up heights on lands of arbitrary shape. As the water depth and the land elevation vary from place to place, the resulted equations have coefficients which vary depending upon topography. However, it is shown that the CFL criterion provides a stability condition. A false coundary is introduced to complete the computational molecule at the wave front. Numerical results are compared with theoretical ones in case of a simple topography and the agreement is quite satisfactory. Although only the one-dimensional problems are treated in the paper, extension to the two-dimensional case has no difficulty in principle.

*Professor, Department of Civil Engineering, Tohoku Univerisity.
**Graduate student, Department of Civil Engineering, Tohoku University.

INTRODUCTION

Although the areal distribution of run-up heights of a tsunami is .an indispensable basis for the planning of sea defence works, it has been almost impossible to obtain it through a numerical simulation. The difficulty arises from the boundary condition at the wave front which runs up onto the dry land, wetting it, and runs down along it, leaving the dried sea bed.
The authors solve the problem by adopting the Lagrangian description of water flow. In this system, the boundary condition can be easily satisfied, for the water particles lying on the sea bottom do not leave the bottom during the subsequent motion. The particle at the wave front is the one which is at the shoreline at the initial instant.
In addition, another advantage of this system is that it is easily extended to be applied to the two-dimensional problem, i.e., the areal distribution of a tsunami run-up, which is the final goal of the numerical computation of the problem.
In the present paper, a linear set of the equations is used to solve the one-dimensional problem. It has been shown by one of the authors 1) that the shallow-water theory in the Eulerian description gives the maximum run-up heights same as the linear theory in the Lagrangian description, while as for the detailed wave profile, the two theories give slightly different results. Since the most important value is the maximum run-up height, the present method may claim its effectiveness. A nonlinear theory in the Lagrangian description has been derived and solved by one of the authors 3), but the results is not referred to here.
One-dimensional problems are treated numerically to test the validity of the expression of the boundary condition at the wave front and to examine the conditions of stability and convergence of the computation scheme. The topographical effect involved in the computation is that of water depth.
In the numerical analysis, the finite difference method is employed. A false boundary, is introduced at the landwardmost point to complete the computation molecule at the wave front.
The computation is first carried out for the case that a slope of uniform inclination is connected to a channel of constant depth. Numerical results are compared with theoretical values and the agreement is quite satisfactory. The second example is a topography composed of two flat beds, one on land and the other in sea, being connected with a uniform slope. The last example corresponds to an actual sea profile in the Sanriku Coast in Japan, where two rows of almost parallel hills run towards the sea so that the one-dimensional theory may approximate tsunami run-up in the valley between them.

LINEAR THEORY IN THE LAGRANGIAN DESCRIPTION

Let us consider the long wave motion in the Lagrangian coordinates. The displacement of a water particle from its initial position (a, b) is (x, y) at time t. The deviation of pressure acting on the water particle from its initial static value is denoted by p. The still water surface is taken as the a-axis and the b-axis is taken vertically upwards as shown in Fig. 1.

To the first approximation, the equations of continuity and motion are :
(1)
(2)
(3)
where \rho denotes the density of water and g the acceleration of gravity.
The condition to be satisfied by the water particles at the free surface is the dynamic condition of
(4)
As the bottom condition is such that a water particle being on the sea bottom at the initial instant is permitted to move along the sea bottom, we have to following expression with the initial depth h(a) and the depth h(a+x) where the water particle arrives at :

(5)

Integration of Eq. (1) with respect to b yields

(6)

and the use of the boundary condition (5) leads to

(7)

Similarly, integration of Eq. (3) with respect to b and the boundary condition (4) result in

(8)

Combining these two equations (7) and (8), we have

(9)

The dependent variable x is a function of a, b and t. However, after integration, the left-hand side of Eq. (9) becomes a function of a and t.
Substitution of Eq. (9) into Eq. (2) yields

(10)

Therefore, x is also a function of a and t, and Eq. (10) is reduced to

(11)

We introduce a dependent variable \eta, which represents the instantaneous vertical displacement of the water particles lying on the free surface. By substituting b=0, Eq. (7) yields

(12)

These two equations, (11) and (12), compose the linear long wave theory in the Lagrangian description for sea bottom (or land) topography of arbitrary shape.
Equation (11) is the equation of motion and Eq. (12) the equation of continuity.

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式(1〜12)
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Fig.1 Definition sketch

METHOD OF NUMERICAL COMPUTATION

(1) Numerical scheme
The explicit schemes of Eqs. (11) and (12) with the central difference are :

(13)
(14)

where \delta a denotes the size of space division and \delta t the size of the time step. The term x_{i,j} denotes the horizontal displacement of a water particle at time t=j\delta t, the initial position of which is a=i\delta a.
Since Eq. (13) is, in principle, a hyperbolic partial differential equation even though the water depth varies, the stability condition follows the CFL criterion,
(15)
where h_{max} is the maximum water depth.

(2) Topography for computation
In the first numerical example of the one-dimensional problem, the channel is composed of two parts : a uniform slope and a channel of constant depth connected to the slope. The incident waves are given at the farthest end of the channel, the length of which is taken long enough to contain several waves. The computation is stopped before the reflected waves return to the farthest end from the slope.
The depth of flat channel is assumed 40 m deep in the present study. Therefore, the numerical results cannot be of any actual tsunamis.

(3) Initial condition
We assume that at the initial instant the water particles show no movement and the water surface is flat everywhere in the channel. Therefore, the initial condition is,
(16)

(4) Offshore boundary condition
We assume a progressive wave train at the farthest end of the channel.
In a channel of constant depth, the equations of long waves are :
(17)
(18)
where h denotes the constant water depth.
Let f be a function representing the wave profile at time t=0. The solution of Eq. (17) is, for the progressive waves with the celerity \sqrt{gh} moving in the negative a-direction,
(19)
Substituting this solution into Eqs. (17) and (18), we have the relationship
(20)
At i=m (a=m\delta a), i.e., at the farthest end of the channel, Eq. (20) is reduced to, by use of the central difference,
(21)
For j ≦0, we have no movement at i=m. Then, Eq. (21) is expressed as
(22)
The above equation provides the boundary condition for x at the end of the channel when we know the wave profile as a function of time.
When a sinusoidal wave train is considered as an input, a direct integration of Eq. (20) gives the boundary condition.

(5) False boundary at the front
Let x_{0,j} be the horizontal displacement of the water particle which was located at the initial shoreline. We use the central difference in Eq. (13). An introduction of a false boundary is necessary to complete the computational molecule at the shoreline.
Let x_{-1,j} be the horizontal displacement of an auxiliary point introduced in the landward side of the initial shoreline.
From Eq. (14), the condition at the front is
(23)
where \eta_{0,j} is the vertical displacement of the water particle at the wave front.
Every point on the free surface must satisfy the following relationship :
(24)
Take a point which lies between i=0 and j= l . The finite difference expression for this water particle is
(25)
and a Taylor’s series expansion reduces the equation to
(26)
Substituting the condition (23) into the above equation, we have
(27)
A similar manipulation is applied to the point between i=0 and i=1, and then we have
(28)
By equating the right-hand sides of Eqs. (27) and (28) and considering that ∂h(0)/∂a is normally of finite value, we have the following boundary condition at the wave front
(29)

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式(13〜26)

RESULTS OF COMPUTATION

First, the results of computation are compared with the analytical one obtained by one of the authors 3) and Keller & Keller.4) The analytical solution is for the case of a uniform slope connected to a channel of constant depth. For this simple topography, we have computed several cases. Figure 2 shows the comparison. The curve is the result given by the theory, while closed circles are the numerical results. The agreement is found quite satisfactory.
In Fig. 3, examples of the computed wave profile in space are shown for different time. The slope is 1/50, but the vertical and horizontal scales are distorted by the factor of 2000. The solid line shows the wave profile when the wave front just arrives at the shoreline, the dash-dot line is for the time of the maximum run-up, and the dotted line is for the time when the sea bed is most dried up.
In the wave profiles thus computed, two small oscillations are notice : one near the junction of the slope and the flat channel and the other at the wave front. The former might be a result of the sudden change in the direction of motion of water particles at the junction. The latter may affect the run-up height and need a further clarification. However, since the vertical coordinate in the figure is extremely exaggerated, these oscillations are not considered to cause any fatal error at least in the present cases.
It is thus concluded that the numerical scheme, the difference interval, and the criterion of stability and convergence are satisfactory.
We proceed to the second example : a uniform slope between the horizontal land and the horizontal sea. Three curves in Fig. 4 show the wave profiles at the times of wave front arrival, maximum run-up, and maximum draw-down as in the case of Fig. 3. The computation was also found to be stable.
Finally, the method is applied to a beach in the Sanriku Coast, northeastern
Japan, where a small shallow river flows into the sea. Nearly vertical cliffs run parallel to the river on both sides and the valley is considered to form a one-dimensional channel.
As shown in Fig. 5, the bottom is composed of a slope of 1/40 in the water deeper than 7 m, a slope of 1/7 near the shoreline and a nearly flat land.
The solid line in the figure shows the wave profile at the arrival of the wave front at the shoreline, the dash-dot line is for the instant when the wave overflows the small natural sand banks, and the dashed line is for the instant when the maximum run-up appears. The height of the incident wave is 2 m in the water 40 m deep and its wave period is 10 min.

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Fig. 2 Comparison between theoretical and numerical results (Case 1).
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Fig. 3 Example of wave profiles (Case 1) .
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Fig. 4 Example of wave profiles (Case 2).
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Fig. 5 Numerical simulation of tsunami run-up on a beach.

CONCLUSIONS

Linear long wave theory in the Lagrangian description is proved to be applicable to the analysis of tsunami run-up. Computation schemes and stability criterion are examined and established in one-dimensional cases. The present method can be applied without difficulty to the actual topography of complicated geometry.
Extension to the two-dimensional problem is easy; an example is given by the authors.5)

ACKNOWLEDGEMENTS

A part of the study was supported by a grant from the Ministry of Education.

REFERENCES

1)Shuto, N.: Run-up of long waves on a sloping beach, Coastal Engineering in Japan, Vol. 10, pp. 23-38, 1967.
2)Goto, T.: Nonlinear long waves in the Lagrangian description, Proc. of the 25th Conf. on Coastal Engineering in Japan, pp. 128-131, 1978 (in Japanese).
3)Shuto, N.: Standing waves in front of a sloping dike, Proc. of the 13th Conf. on Coastal Engineering, pp. 1629-1647, 1971. Coastal Engineering in Japan, Vol. 15, pp. 13-23, 1972.
4)Keller, J. B. and H. B. Keller: Water wave run-up on a beach, Research Report No. NONR-3828 (00), Office of Naval Research, Dept. of Navy, 1964.
5)Shuto, N. and T. Goto : Tsunami run-up in the Okkirai Bay, Proc. of the 15th Symposium on Natural Disaster, pp. 579-580, 1978 (in Japanese).

Coastal Engineering in Japan, Vol. 22, 1979 NONLINEAR EQUATION OF LONG WAVES IN THE LAGRANGIAN DESCRIPTION Claiaki Goto*

ABSTRACT

A nonlinear set of equations of long waves in the Lagrangian description is derived and solved numerically. Equations are derived by introducing a new method of perturbation in which the finite displacement of water particles from their initial position is allowed. Consequently, the equations contain nonlinear terms, and the effect of the finite displacement is equivalent to that of the finite amplitude in the ordinary water wave equations.
As numerical examples, wave run-up on a uniform slope connected to the channel of constant depth are solved and compared with the analytical solution of the linear theory. It is found that the nonlinear effect yields the difference of 10,20% from the analytical results.

* Instructor, Department of Civil Engineering, Tohoku University

INTRODUCTION

The two-dimensional equations expressed in the Lagrangian description are used to investigate the wave motion of an ideal fluid. This expression has some advantages, for example, in the problems of tsunami run-up. One of the most difficult problems in the numerical simulation of tsunami run-up lies in the fact that it is not easy to introduce the boundary condition at the wave front, although the boundary condition should precisely reflect the topography of the land where the tsunami arrives at. In this expression, the boundary condition at the wave front can be easily satisfied; that is, the water particles lying wave front always consist of the particles which are at the shoreline at the initial instant.
A few investigations have been carried out by using the equations in the Lagrangian description. Michell used the equations and solved successfully the motion of surface waves on a sloping beach. His method of perturbation was based on the assumption that the displacement of the water particles from their initial positions were small. Shuto2l," applied the same assumption to the motion of long waves on a sloping beach and obtained a set of linear equations.
If we follow the method of perturbation by Shuto, it is apparently not difficult to proceed to the higher order approximations. All of them are linear equations.
However, as a solution to the second order approximation, we may have a secular term which is proportional to time. Therefore, with the lapse of time, the magnitude of the second order term becomes bigger than that of the first order term, thus resulting break of the method of perturbation.
The present author takes another method of perturbation, in which he assumes that the displacement of water particle is not small but finite. The equations are nonlinear. In the case of the channel of constant depth, the theoretical results are compared between linear and nonlinear theories. It is shown that the relationships between them are similar to those in the Eulerian description.
Numerical analyses are carried out for the case of a uniform slope connected to the channel of constant depth using an explicit finite difference method. Numerical resuls are compared with the analytical solution of the linear theory. Effects of nonlinearity are shown as for the maximum run-up height and spatial wave profile.

EQUATIONS IN TERMS OF FLUCTUATION

Consider the irrotational two-dimensional motion of an incompressible fluid.
The position of the water particle, which is at the initial point (a, b), is (\hat{x},\hat{y}) at the time t=t_0. The pressure acting on this water particle is denoted by \hat{p}. The still water surface is taken as the a-axis and the b-axis is taken vertically upwards.
The equations of continuity and motion are
(1)
(2)
(3)
where \rho denotes the density of water and g the acceleration of gravity. And the equation which expresses irrotational motion is
(4)
We introduce the horizontal and vertical displacements (x, y) of the water particle from the initial position (a, b). It is also assumed that the pressure consists of the static and fluctuating parts.
The relationships between new quantities and the original Lagrangian coordinate are expressed as
(5)
Substituting these relationships into Eqs. (1) to (4), we have a new set of equations as follows ;
(6)
(7)
(8)
(9)
These equations are the expressions in terms of the fluctuation in the Lagrangian coordinate. Compared with Eqs. (1) to (4), the new equations are more easily treated, because linear and nonlinear terms are clearly divided.
If the nonlinear terms are negligible in these equations, we have equations for linear surface waves. With the linearized expression of Eq. (9), which allows the introduction of a potential function \Phi, the equation of continuity becomes Laplace」s equation,
(10)
where x=∂\Phi/∂a and y=∂\Phi/∂b. Then, the pressure equation, from Eqs. (7) and (8),
becomes
(11)
A solution of surface waves in water of constant depth is
(12)
where \eta_0 denotes the wave amplitude, \sigma the frequency and k the wave number.

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式(1〜12)

NONLINEAR LONG WAVES IN WATER OF CONSTANT DEPTH

Now, we introduce dimensionless variables through the use of two lengths d and l, with d intended to represent a typical depth and l a typical horizontal length.
The new independent variables are
(13)
while the new dimensionless dependent variables are
(14)
In addition, we introduce the important parameter
(15)
in terms of which all quantities will be developed. When this parameter is small, the water is considered to be shallow.
With the substitution of these dimensionless variables, Eqs. (6) to (9) yield
(16)
(17)
(18)
(19)
The next procedure is to assume the following power series for the dependent
variables X. Y and P ;
(20)
and substitute them in Eqs. (16) to (17). Then, by equating coefficients of like powers of \kappa, equations for the successive coefficients in the series are obtained.
The term of the lowest order yields the equations ;
(21)
(22)
(23)
(24)
From Eqs. (3) and (12), we have
(25)
The former relationship means that the displacement X_0 varys linearly with respect to A. However, since the magnitude of displacement X_0 should be limited for all spatial position, this equation is abandoned. Therefore, the latter equation should be satisfied for the present problem. Integration of the latter equation with respect to T yields
(26)
where F(A, B) is an arbitrary function, which represents the vorticity at the initial instant. Since we assume that the fluid motion is irrotational for all the time, the function is equal to zero. Finally, therefore, we have the equation
(27)
These equations, (21), (22), (23) and (24), imply that the vertical acceleration is negligible and the horizontal displacement is uniform, in a section, with respect to the vertical material coordinate B to the lowest order approximation.
The water particles which is on the free surface at the initial instant remain on the free surface throughout the succeeding motion. The water pressrue acting on these particle is taken equal to the atmospheric pressure;
(28)
The water particles initially on the bottom cannot leave from the bottom. The vertical displacements of these particles should satisfy the following condition
(29)
which yields
(30)
The lowest order equations will be obtained and solved as follows. With the condition to be satisfied on the bottom, Eq. (21) is reduced to
(31)
and with the condition at the free surface, Eq. (23) is reduced to
(32)
From these equations, we have
(33)
and
(34)
Substitution of Eqs. (33) and (34) into Eq. (22) yields the momentum equation,
(35)
Now, we introduce the elevation, N_0, of the water particles from the initial position above the still water level. By setting B=0, Eq. (31) becomes
(36)
Therefore, nonlinear equations of long waves in the Lagrangian description are, without dimension
(37)
and with dimension
(38)

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式(13〜38)

NONLINEAR LONG WAVES ON A SLOPING BEACH

Without dimension, the bottom is expressed by B=-H(A) as shown in Fig. 1.
The coordinates of water particles resting on the bottom must satisfy the relationship B+Y=-H(A+X) during the wave motion, which reduced to at the initial instant.
Thus, the bottom condition is
(39)
Using the power series development Eq. (20), we have the bottom condition to the lowest order, as follows ;
(40)
The vertical displacement Y_0, therefore, satisfies the following equation obtained from Eqs. (21) and (40) :
(41)
Manipulations similar to the case of the constant depth lead to the nonlinear equations of long waves on a sloping beach. Without dimension, they are
(42)
and with dimension,
(43)

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式(39〜43)
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Fig. 1

COMPARISON BETWEEN LINEAR AND NONLINEAR THEORIES

For the waves in water of constant depth, comparison between linear and nonlinear theories are shown in Table 1. Relationships between them are similar to those expressed in the Eulerian description.

Table 1

As for the waves on a sloping beach, we carried out numerical experiments.
A simple topography, a uniform slope connected to the channel of constant depth, is adopted. An explicit finite difference method is used. The initial condition is that the water particles show no movement and the water surface is flat everywhere in the channel. The offshore boundary condition is that a sinusoidal progressive wave train enters from the farthest end of the channel of constant depth. For the present topography, the maximum run-up height was theoretically conjectured by Keller and Keller 4) and theoretically justified by Shuto 3) in the case of linear long waves.
(44)
where L is the wave length in water of constant depth, l the horizontal length between the toe of the slope and the shoreline and J_n the n-th Bessel Function of the first kind.
Numerical results by linear and nonlinear theories are compared with the analytical ones. Fig. 2 shows the comparison. The curve in the figure is the analytical results, while solid (linear theory) and open (nonlinear theory) circles are the numerical ones.
For linear case, the theoretical and numerical results show a good agreement, thus, at the same time, confirming the validity of the finite difference scheme used. Nonlinear effect yields the difference of 10〜20% from the linear analytical results.
As an example, a comparison of the computed wave profiles in space is shown in Fig. 3. The slope is 1/50, and the vertical and horizontal scales are distorted by a factor of 100. The solid line shows the wave profile of nonlinear wave, and the dotted line that of linear wave.

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式(44〜)
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Table 1
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Fig.2
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Fig.3

CONCLUSIONS

A nonlinear long wave theory in the Lagrangian description is developed and is proved to be applicable to the analysis of the run-up of long waves. The present method can be applied without difficulty to the actual topography of complicated geometry.
As extension to a two-dimensional problem is easy; an example will be given in another publication by the author.

ACKNOWLEDGMENTS

The author wishes to express his gratitude to Dr. N. Shuto, Professor of Civil Engineering, Tohoku University, for his helpful discussions and encouragements.

REFERENCES

1) Miche, R.: Movements ondulatorires de la mer en profonder constante ou decroissante, Annales des Ponts et Chaussees, 114e, 1944.
2)Shuto, N.: Run-up of long waves on a sloping beach, Coastal Engineering in Japan, Vol. 10, pp. 23-38, 1967.
3)Shuto, N.: Standing waves in front of a sloping dike, Proc. the 13th Con. on Coastal Engineering, pp. 1629-1647, 1971.
4)Keller, J. B. and H. B. Keller: Water wave run-up on a beach, Research Report No.
nonr-3828 (00), Office of Naval Research, Dept. of Navy, 1964.

Coastal Engineering in Japan,Vol.28, 1985 ACCURACY OF NONLINEAR DISPERSIVE LONG WAVE EQUATIONS Koji Fujinia* Ciiaki Goto** Nobuo Shuto***

ABSTRACT

In order to derive higher order approximations, the authors use a new technique of perturbation, in which the water surface elevation is not expressed in a power serie sexpansion. Six equations are obtained under the assumptions that the Ursell parameter is equal to and much larger than unity.
For the case of a solitary wave in a canal which is composed of two horizontal beds and a slope in-between, accuracy of the equations of different order of approximation is numerically discussed. A true value for comparison is provided by the MAC method with modifications on boundary conditions introduced by the authors.
The perturbation with respect to square of the small relative depth, \sigma, is more advantageous than another one with respect to both \sigma and \epsilon, the small ratio of wave height to depth. An equation of O(\sigma^2) gives the best fit not only to the wave profile but also to the vertical distribution of the horizontal water perticle velocity.
Even if we start with a solitary wave on a horizontal bed for which the dispersion terms distribute symmetrically with respect to the wave crest, the shoaling on a slope steepens the fore surface of the wave and breaks the symmetric distribution of the dispersion terms. A forward shift thus introduced acts to keep a situation favorable for fission through the distribution of local phase velocity, while change in values of dispersion terms acts directry to amplify the wave profile. Considering these facts, the reason is explained why the existing theories such as the Peregrine equation and so on give a faster soliton fission than hydraulic experiments.

* M. of Eng., Graduate Student, Dept. of Civil Eng., Tohoku Univ.
**Dr. of Eng., Lecturer, Dept. of Civil Eng., Tohoku Univ.
***Dr. of Eng., Professor, Dept. of Civil Eng., Tohoku Univ.

I. INTRODUCTION

There are two groups in the nonlinear dispersive long wave equations with which phenomena like soliton fission can be treated. The first group assumes that the Ursell parameter U_r is of the order of unity. The KdV equation 1), Boussinesq equation 2) and Peregrine equation3) are examples of the first group. The second group corresponds to a large Ursell parameter. An equation recently derived by one of the authors 4) belongs to this group.
The equations for U_r≒1 can be derived as higher order approximations of the linear long wave equation, while the equations for U_r>> 1 as those of the shallow water theory.
As for the accuracy of nonlinear dispersive long wave equations, the following facts have been already known. Numerical simulations using the equations for U_r≒1 show a faster fission into solitons as well as an over-amplification of wave height compared with hydraulic experiments 5). An equation for U_r≫1 gives more reasonable results at least in the case of transformation of a long wave over a sloping bottoms 6).
Until now, accuracy of these equations has not been discussed in details. The equations are approximate equations, and discrepancy between numerical and experimental results is inevitable. It is necessary to understand the characteristics of the equations and to determine the degree of error of the equations. From a viewpoint of numerical simulations of tsunamis, an equation which can be applicable up to the breaking point is strongly required.
In the present paper, several higher order approximate equations are derived for both cases, U_r≒1 and U_r≫1, by the use of a new technique of expansion. Then, accuracy of existing and newly derived equations is numerically examined in case of soliton fission, compared with the MAC method. Finally the effect of the numerical errors on the mechanism of amplification is discussed.

II. METHOD OF EXPANSION

Two-dimensional and irrotational motion of an inviscid and incompressible fluid is considered. Characteristic lengths, H_0, L_0 and h_0, are introduced for wave height, wave length and water depth, respectively. The ratio of wave height to depth \epsilon=H_0/ h_0 and the relative depth ,\sqrt{\sigma}=h_0/L_0 are defined and the Ursell parameter is given by U_r=\epsilon/\sigma. The z」-axis is taken positive vertically upwards. The still water level is z」= 0 and the bottom is z」= -h」 (x」) . The velocities in the x」-and z」-directions are denoted by u」 and w」, respectively, the water pressure by p」, the elevation of water surface above still water level by \eta」, the density of water by p and the gravitational acceleration by g.
Dimensionless variables are defined as follows and equations and conditions are expressed in terms of these dimensionless variables :
(1)
Primes in the above equations denote variables with dimension. This scaling is essentially the same as that Peregrine has given.
Equations of continuity and motion are integrated vertically once, considering the conditions at water surface and at bottom. The basic equations consist of following equations resulting from this procedure. Equation (6) is the condition of irrotational motion.
In Eq. (3), the first term on the left-hand side is the local acceleration, the second the convection, the third the hydrostatic pressure which results from the first term on the right-hand side in Eq. (4), and the terms on the right-hand side the excess pressure gradients due to vertical acceleration of water particle. Hereafter, we call these last terms the dispersion term for convenience.
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
If one wishes to return to dimensional expression, multiply g to the third term on the left-hand side in Eq. (3) as well as the first term on the right-hand side in Eq. (4), and at the same time multiply 1/\rho to all the terms on the left-hand side in Eq. (4).
The method of expansion used here is different from the ordinary method of per- turbation. The water surface elevation \eta is not expanded in terms of any small parameter but is considered to be uniquely given by the physically possible water surface elevation itself with no approximation and no perturbation, although its order of magnitude will be evaluated and sometimes \eta will be assumed to be small in comparison with the water depth. Water particle velocities are expressed in power series expansions. The first order term in the expansion of the horizontal velocity \bar{u} is given by the mean velocity averaged vertically from the bottom to the water surface.
For example, in order to obtain an equation for U_r≒1, it is assumed that \epsilon〜\sigma≪1, and it and w are expanded as follows :
(7)
After being expressed in terms of \eta and \bar{u},w_0,u_1,w_1 and so on are substituted into Eqs.
(2) and (3) to yield a set of equations for \eta and \bar{u}. It should be noted that w_0, u_1 and others are functions of (x, z, t) although \bar{u} is a function of (x, t).
In the case of U_r≫ 1, the small parameter for expansion is \sigma because \epsilon≒1 and \sigma≪1.
In order to express higher order terms by using \eta and \bar{u}, the following procedure is used, beginning with an expression for w_0,
(8)
where the integration constants of u_1, u_2 and others are determined so as not to contradict the definition of the average velocity \bar{u}, Eq. (9).
(9)
Therefore, the integration constants in case of U_r≒1 are determined by
(10)
and in case of U_r≫1, they are
(11)

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式(1〜11)

III. HIGHER ORDER APPROXIMATE EQUATIONS FOR U_r≒1

Now it is assumed that \epsilon≒\sigma≪1. Equations up to O(\epsilon^3) are obtained as follows.
(12)
(13)
Define an equation including all the terms up to the order \epsilon^n as the equation of the order \epsilon^n. The equation of the order e obtained from Eqs. (12) and (13) gives the theory of linear long waves and the equation of the order \epsilon^2 an integrated Peregrine equation.
In the manipulation above, u_1, w_0 and w_1 are expressed as follows.
(14)
(15)
(16)
Terms in the expression for pressure, p=p_1+\epsilon p_1+\epsilon^2 p_2+…, are given through Eq. (4) as follows.
(17)
(18)
(19)
(20)
In a simple case that the bottom is assumed horizontal, equations of the order \epsilon^4 are ;
(21)
(22)
(23)
(24)
(25)
Equations of the orders \epsilon or \epsilon^3 can be obtained if higher order terms are eliminated from Eqs. (21) and (22).
For a progressive wave on a water of constant depth, \bar{u} can be eliminated and the following equation for \eta alone is obtained as a higher order approximation to the KdV equation.
(26)
If we take terms up to \epsilon^2, the KdV equation is derived.

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式(12〜26)

IV. HIGHER ORDER APPROXIMATE EQUATIONS FOR U_r≫1.

Equations for U_r≫1 are obtained as follows, on putting \epsilon≒1 and \sigma≪ 1.
(27)
(28)
where
(式1)
Equations of O(\sigma^0) and O(\sigma^1) are the same as the shallow water theory and a nonlinear dispersive long wave equation derived by one of the authors, respectively.
Terms u_1, w_1, p_1 and so on are written as :
(29)
(30)
(31)
(32)
(33)
(34)
Similarly to the case of U_r≒1, \bar{u} can be eliminated to yield an equation for the water surface elevation \eta, assuming a progressive wave on a water of constant depth.
The following equation for the order \sigma is obtained.
(35)
The equation of O(\sigma^0) is the same as that of the shallow water theory. The KdV equation is obtained if the phase velocity [3(1+\eta)^{1/2}-2] is approximated as (1+3\eta/2) and if only a linear term is taken among terms of 0(\sigma). Even though it is possible to obtain an equation of the order \sigma^2 for \eta if eliminating \bar{u}, the result is too complicated and not easy to be handled.

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式(27〜35)
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(式1)

V. NUMERICAL INVESTIGATION ON THE ACCURACY OF THE EQUATIONS

On the basis of the numerical results of soliton fission obtained by the MAC method, convection and dispersion terms of the equations derived in the preceding sections are evaluated, in order to examine their accuracy.
The MAC method uses the fundamental equations with no approximations such as taking an average over a vertical section and/or expanding dependent variables into a power series of a small parameter. Since Eulerian equations of motion include differentiation of first order only, it is possible to reduce numerical errors. However, a fact that there are three independent variables, x, z and t, in the MAC method increases computation time considerably compared with the case of two independent variables.

5.1 Computation procedure by the MAC method
The method used here 7) is one of the MAC methods, SOLA-VOF 8), for which the authors improve the boundary condition at the sloping bottom as well as the movement of water in the surface cell.
The region for computation is covered by rectangular cells. Values of u, w and p are defined at points on a cell as shown in Fig. (a). Finite difference schemes for equations of continuity and motions are obtained as Eqs. (36)-(38), where the upwind difference is used for convection terms.
(36)
(37)
(38)
where DUL, DUR, DUB and DUT mean the followings.
(式1)
The bottom condition that the velocity normal to the sloping bottom is zero is
expressed by Eq. (39), which is used in the bottom cells as the equation of continuity in place of Eq. (36).
(39)
The dynamic condition at the free surface, zero pressure, is satisfied by extrapolating the water pressure from a neighbouring cell fully occupied by water to the surface cell under consideration. As for the movement of water in the kinematic condition at the free surface, it is treated as an example shown in Fig. 1-(c) that the water given by the hatched area moves into the neighbouring cell.
The computation algorithm is as follows.
Assume that u and w at t=n\delta t as well aspP and wave profile at t=(n-l/2)\delta t are given.
i) Move water with u and w between the neighbouring cells. Obtain the wave profile at t=(n+1/2)\delta t.
ii) Find values of u and w at t=(n+1)\delta t with Eqs. (37) and (38), where values of p at t=(n-1/2)\delta t are used.
iii) Values of u and w thus obtained do not strictly satisfy Eq. (36), because they are calculated with p one time step before. Change values of p and compute corresponding values of u and w repeatedly until the left-hand side of Eq. (36) becomes smaller than a given value in every cells. During this procedure, the wave profile determined in i) above is fixed. The results are considered to give u and w at t=(n+1)\delta t and p at t=(n+1/2)\delta t.

5.2 Computed results by the MAC method
Numerical simulations with dimensionless variables were carried out under the conditions shown in Fig. 2. As the initial condition, a solitary wave having the second order approximation is given with a peak at x=10.0. Initial ratio of wave height to water depth is 0.12. Bottom configuration is composed of two horizontal beds (x=0- 20 and x=30-60) and a uniform slope of 1/20 in-between (x=20-30). Mesh size are \delta x=0.1, \delta z=0.025 and \delta t=0.05. Computation was carried out until t=41.4 in the dimensionless time. The C.P.U. time required for this computation was about nine hours and a half by a computer ACOS-1000 of the Tohoku University.
Numerical results are shown in Figs. 3 (a)-(c). Figure 3 (a) shows transformation of wave profile with a time interval of 2.5 until t=40. Figure 3 (b) gives a comparison between the present results and numerical results of Madsen-Mei 5)9) who solved the same problem by the method of characteristics. In Fig. 3 (c), results of the present study and those of Madsen-Mei are compared with the results of hydraulic experiments by Street et al. 10) Changes in water surface elevation at three points, A (x=14.65), B (x=30.0) and C (x=41.65), are given.
At the point A, hydraulic experiments give a steeper wave profile than the two numerical simulations. This may be due to a fact that initial profiles produced in the hydraulic experiments were steeper than a theoretical solitary wave partly due to the characteristics of the wave generator.
On the other hand, both of the numerical results show steeper wave profiles than those of hydraulic experiments at the point C. Taking the results in Fig. 3 (b) into consideration, it is concluded that the MAC method gives slower fission than MadsenMei」s and more rapid fission than the hydraulic experiments. Compared with the existing methods, the MAC method gives better results, although perfect agreement is not expected because of elimination of bottom friction in basic equations and because of numerical errors inevitably contained in simulations.

5.3 Evaluation of accuracy
On the basis of the numerical results obtained by the MAC method, convection and dispersion terms of the equations derived in Sections 3 and 4 are compared for t= 25-40 in Figs. 4 (a)-(b). The upper figure shows the wave profile. The middle figure shows hydrostatic presure, convection and dispersion terms by the MAC method which is assumed to give the true values. The lower figure shows convection and dispersion terms of the equations discussed .in this study with numerical results of the MAC method for \bsr{u} and \eta. In the middle and lower figures, ordinates are normallized by the corresponding maximum value and the sign is taken positive when the terms act to increase the discharge (h+\eta)\bar{u}. The spatial mesh size in the MAC method is relatively large to save computing time. Therefore, it is difficult to carry out directly higher order differentiation with the necessary accuracy. Instead, values of u calculated by the MAC method are decomposed into the Fourier components first and differentiation is carried out after eliminating high frequency components.
Hereafter, assuming that the results of the MAC method is true, accuracy of the equations is discussed.
All the equations except for one of O(\epsilon^2) give almost the same convection term as that of the MAC method. It is concluded that sufficient accuracy can be obtained if the convection term is given by ∂((h+\eta)\bar{u}^2)/∂x, which appears in equations of O(\epsilon^3) and O(\sigma). This expression has been used in numerical simulations of tsunamis and storm surges.
On the other hand, as to the dispersion term, different equations give different values. Deviation from the true values increases with a lapse of time. In order to discuss the errors in dispersion terms, a relative error is defined as the ratio of the deviation from a true value to the hydrostatic pressure given by the MAC method.
(40)
D_{mn} : maximum value of the dispersion term in each equation
D_m : maximum value of the dispersion term of the MAC method
S_m : maximum value of the hydrostatic pressur term of the MAC method

Figure 5 shows variation of the relative error as the wave propagates and transforms.
In Fig. 5 (a) and (b), it is given as functions of local values of \epsilon and \sigma, respectively, which are calculated on the basis of local representative lengths H and L as is shown in Fig. 6.
(41)
If a theoretical solitary wave is considered, \epsilon and \sigma defined by Eq. (41) are related as \sigma=0.1\epsilon. An apparent Ursell parameter corresponding to this definition is 10 in place of the true Ursell parameter of unity.
In the present computation, \sigma is equal to 0.1\epsilon before the wave runs onto the sloping beach. Then, on the slope, \epsilon increases faster than \sigma. After the wave comes over the shallow horizontal bed, fission into solitons occurs to recover the relationship \sigma≒0.1\epsilon.
Figure 7 shows the history of \epsilon and \sigma for the present computation.
Although the apparent Ursell parameter U_r」 is less than twice the value of U_r」 for a solitary wave, the present situation is not always described well by the perturbation expansion in power of \epsilon for U_r≒1. From Fig. 5, it is found that accuracy is improved in the following order; O(\sigma), O(\epsilon^2), O(\epsilon^3), O(\epsilon^4) and O(\sigma^2), where the dispersion terms are overestimated except for the case of O(\epsilon^2). The perturbation expansion in power of \epsilon on the assumption of U_r≒1 improves the results very slowly as the order of approximation increases, while another perturbation expansion in power of \sigma for U_r≫ 1 approaches the true values more rapidly.
Table 1 is obtained, if the limit of application is defined by the condition that the relative error becomes 5%.
In addition to the magnitude of dispersion terms, different equations yield differences in the position of the maximal value of dispersion term. The peak of O(\epsilon^2) appears more closely to the wave crest than that of the MAC method while that of O(\sigma^2) does more distantly.
Vertical distributions of velocity and pressure are given in Fig. 8 in comparison with the results of the MAC method. They correspond to the wave crest at t=40.
The best agreement with the MAC method is obtained by the equation of O(\sigma^2).
However, it is difficult to reproduce the velocity distribution accurately up to the free surface, where the MAC method gives a highly curved profile. As for pressure distributions, the equations of O(\sigma^2) and O(\epsilon^4) give better results.

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式(36〜41)
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(式1)
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Fig. 1 Method of calculation.
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Fig. 2 Initial and boundary conditions.
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Fig. 3 Numerical results.
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Fig. 4 Accuracy of equations.
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Fig. 5 Variation of errors in dispersion terms with the wave transformation.
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Fig. 6 Difinition of H and L.
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Fig. 7 Locus of \epsilon and \sigma.
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Table 1 Application limit of equations.
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Fig. 8 Approximation of velocity and pressure distributions.

VI. OVER-AMPLIFICATION PRODUCED BY THE EQUATION OF 4(62)

Though the existing equations are not given in an integrated form as it is in the present paper, they are O(\epsilon^2) as a whole with some exception that the convection terms in them are often O(\epsilon^3).
Equations of O(\epsilon^2) have been used in numerical simulations of nonlinear long waves when the dispersion effect should be taken into consideration. It is said that the equations give faster evolution of soliton fission as well as larger amplification than hydraulic experiments 5).
In order to clarify the reason, mechanism of the growth and fission of the first wave is discussed on and after the time when a solitary wave enters the shallower horizontal canal at t=25.
Consider the change in wave profile by using terms of the equation of motion shown in Fig. 4. Since \eta and \bar{u} are of the same phase within a range of linear theory, it is qualitatively possible to discuss wave profile transformation with the aid of the equation of motion alone. As was mentioned before, signs of the terms are defined positive when the terms act to increase the discharge (h+\eta)\bar{u}.
Even if we start with a solitary wave for which the wave profile as well as the dispersion effect are symmetric with respect to the wave crest, the slope acts to change these symmetries. At t=25 in Fig. 4 (a), the null-point of the dispersion term near wave crest does not coincide with those of the hydrostatic pressure and convetion terms, although they coincide with each other for a solitary wave. The former corresponds to the point of the maximum curvature in wave profile and the latters give the wave crest. This difference is resulted because the null-point of the dispersion term shifts forward when the wave enters the slope and increases the steepness of its frontal surface. As a result, the dispersion term has a positive finite value at the wave crest and acts to amplify the wave height through increasing the discharge there. The distance between the two points becomes smaller as time passes from Fig. 4 (a) to (d).
There are two other null-points of the dispersion terms, one in front of and the other behind the wave crest, point C and point A in Fig. 9, respectively. The steepening of the frontal surface makes the null-point on the back locate more closely to the wave crest than the other on the fore. In addition, the dispersion term is negligibly small further behind the point A, because of the flat wave profile as shown in Fig. 9.
Considering these facts, the reason of fission is discussed as follows. The hydrostatic pressure has no contribution to wave transformation. Convection terms change the local phase velocity through a relationship depending only on the water surface elevation. Therefore, when the local phase velocity is compared between two points of the same height, it is sufficient to examine the effect of the dispersion term. The dispersion term acts to increase the local phase velocity in front of the point C, to decrease it between the two points, C and A, and has negligible effect on it behind the point A. Divide the back surface behind a point close to the point A into two regions with a boundary at the point D which is of the same height as the point C, as is shown in Fig. 9. In the region I, wave profile retards compared with that in front of the point C while it advances in the Region II. This situation is more clearly and quantitatively shown in Fig. 10. Ordinate gives the ratio of the sum of hydrostatic pressure, convection and dispersion terms to the hydrostatic pressure term. This corresponds to square of the local phase velocity normalized by a standard velocity \sqrt{gh}, which is the phase velocity when only the hydrostatic pressure acts. The local phase velocity is faster between x=31-34 and slower behind x=31 compared with the corresponding frontal wave surface of the .same height. Wave profile in the Region II moves faster to separate the first wave and that in the Region I retards to form the second wave. It is concluded that the difference in distance between the wave crest and the two null-points have an important role to the initiation of fission.
In summary, the steepening of the frontal surface produces amplification through positive dispersion terms near the crest and introduces fission through the distribution of values of dispersion terms, especially through the forward shift of the null-points in dispersion terms.
If one wishes to know what kind of wave transformation is resulted with a nonlinear dispersive equation, it is necessary to consider effects of its approximation error.
Their effects are classified into two. One is the direct effect which influences the instantaneous dispersive motion. Another is, as discussed above, the indirect on production and dissoluation of the favorable situation for fission. Since the two effects work oppositely to each other, it is difficult to predict the result of computation for an arbitrary initial wave profile on an arbitrary sea bottom, without actually carrying out the computation.
However, as is in the case discussed in the present paper that soliton fission occures after a long travel, the indirect effect through the shift of dispersion term may be dominant.
In the existing theories of O(\epsilon^2), the dispersion terms are underestimated. In addition to this, the convection terms in them are calculated as terms of O(\epsilon^3) which are too accurate. Due to these facts, an equation for nonlinear dispersive long waves gives a wave profile with a steeper frontal surface and of a faster local phase velocity.
Consequently, overestimated shifts of the dispersion terms yield favorable situations for fission, waves experience a larger amplification, then fission appears earlier.
As for an equation of O(\sigma), dispersion terms is overestimated, the local phase velocity becomes smaller, the steepening of the frontal surface retards and, therefore, wave amplification is considered to be evaluated smaller compared with the true phenomena.
It is not always clearly explained the reason why an equation of O(\sigma) agrees very well with hydraulic experiments in case of the transformation of a solitary wave on a uniform slope. This transformation is a process to shift the null-point of the dispersion terms more and more through the steepening of wave profile. On the other hand, a soliton fission acts to resolve the shifts but with a slower speed. As a result, even if the dispersion term is overestimated, the shifts are not completely resolved as in the case of a wave on a water of constant depth, still increase with respect to time. The indirect effect of a shift smaller than the true value is supplemented by direct effect of overestimated dispersion terms, to give a good agreement with hydraulic experiments.

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Fig. 9 Shift in dispersion tern.
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Fig. 10 Local phase velocity.

VII. CONCLUSIONS

Major conclusions are obtained as follows.
1) A new technique of perturbation yields equations more accurate than the existing equations for nonlinear dispersive long waves.
2) If applying higher order approximations, accuracy of equations is improved. However, equations of O(\epsilon^4) with an assumption of U_r≒1 do not give satisfactory results.
Among the equations derived in the present paper, the best fit not only to the values of terms but also to the distribution of velocity is obtained by the equation of O(\epsilon^2) with an assumption of U_r≫1.
3) The condition that error in dispersion terms becomes 5% of the hydrostatic pressure term gives the limit of application of equations as is given in Table 1.
4) The MAC method with an improvement by the authors can compute soliton fission with a sufficient accuracy.
5) The shift of the null-point of the dispersion terms occurring as a result of the steepening of the frontal surface have an important role in soliton fission.
6) Existing theories such as the Peregrine equation give an overestimated wave amplitude, because underestimated dispersion terms make the frontal surface steeper, thus making the shift in dispersion terms bigger.

ACKNOWLEDGEMENTS

A part of the study reported herein was supported by a grant from the Ministry of Education, Science and Culture.

REFERENCES

1) Korteweg, D. J. and G. De Vries: On the change of form of long waves advancing in a rectangular canal and on a new type of long stationary waves, Phil. Mag., S5, Vol. 39, No. 240, 1895.
2) Boussinesq, J.: Theorie des ondes remous qui se propagent le long d」un canal rectangulaire horizontal, au communiquant an liquide contenue dans ce canal de vitesses sensiblement pareilles de la surface au fond, Liousilles J. Math. 17, pp. 55-108, 1872.
3) Peregrine, D. H.: Long waves on a beach, J. Fluid Mech., Vol. 27, part 4, pp. 815827, 1967.
4) Goto, C.: Equations of nonlinear dispersive long waves for a large Ursell number, Proc. JSCE, No. 351, pp. 193-201, 1984 (in Japanese).
5) Madsen, O. S. and C. C. Mei : The transformation of a solitary wave over an uneven bottom, J. Fluid. Mech., Vol. 39, part 4, pp. 781-791, 1969.
6) Nagao, M., C. Goto and N. Shuto : Numerical simulations of nonlinear dispersive long waves, Proc. 32nd Japanese Conf. on Coastal Eng., pp. 114-118, 1985 (in Japanese).
7) Fujima, K., C. Goto and N. Shuto: Numerical investigation on the validity of the equations for nonlinear dispersive waves, Proc. 31st Japanese Conf. on Coastal Eng., pp. 93-97, 1984 (in Japanese).
8) Nichols, B. D., C. W. Hirt and R. S. Hotchikiss : SOLA-VOF : A solution algorithm for transient fluid flow with multiple free boundaries, Los Alamos Sci. Labo. Rep. LA-83355, 1980.
9) Mei C. C. and B. LeMehaute : Note on the equation of long waves over an uneven bottom, J. Geophys. Res., Vol. 71, No. 2, pp. 393-400, 1966.
10) Street, B. L., S. J. Burges and P. W. Whitford : Dept. Civ. Engng., Stanford Univ. Tech. Rep. No. 93, 1968.

Coastal Engineering in Japan, Vol. 29, 1986 BOUNDARY CONDITION IN THE COMPUTATION OF TIDES ON A BEACH OF STRAIGHT SHORELINE Fumihiko Inamura* Chiaki Goto** Nobuo Shuto***

ABSTRACT

A method for building the offshore boundary condition is proposed for case of a tide composed of several components of different incident angles and different amplitudes. An actual shoreline is approximated by a straight line. The reflected wave is considered as a mirror image of the incident wave with respect to this imaginary boundary. The simple assumption causes some errors due to the difference of an actual shoreline from the imaginary one, the complex topography of a sea bottom and scattered waves. These errors are investigated by numerical experiments. The present method is applied to a field situation. The result shows a good agreement with records.

* M. of Eng., Graduate student, Dept. Civil Engng., Tohoku,Univ.
** Dr. of Eng., Senior research engineer, Port & Harbour Res. Inst. Ministry of Transport
*** Dr. of Eng., Professor, Dept. Civil Engng., Tohoku Univ.

I. INTRODUCTION

In recent years, many thermal power plants have been built along coasts. Numerical simulations to estimate the diffusion of cooling water are carried out for assessment of environmental thermal pollution. However, there are still several problems to be solved in the techniques of simulation when one wishes to obtain a reasonable result. One of them is the boundary condition at the offshore. The computed flow pattern may be greatly affected by the boundary condition after a long run, because the region for computation is taken to be finite. If the given boundary condition is not a proper one, we may have an unreal oscillation of water in the computed results.
In case of tidal computation for a bay with a narrow mouth, measured variations of water surface elevation are normally given at the bay mouth.
In case of tidal computation for a shore open to the sea, two simple cases are known. One of them is the tidal current flowing parallel to the shoreline. Water surface elevation at the open boundaries is easily provided by taking the phase velocity of tidal waves into consideration. Second one is the case in which only one tidal component exists. Use of the method of characteristics is made to solve the problem.
However, these methods are not always applicable to actual situations because a tidal current usually has several components. In this paper, we introduce a new method of setting the boundary condition in case of a tide composed of several components of different incident angles and amplitudes. It is called the imaginary shoreline method.
The angle of incidence can be determined if the measured tidal current over 25 hours is available and is expressed in terms of tidal ellipse. A tidal ellipse of a component tide is a result of superposition of incident and reflected waves. It is assumed, in the present method, that waves are reflected at an imaginary straight shoreline in an imaginary sea of horizontal bottom.
This simple assumption is applied to every components. The summation of them can construct the open boundary condition at the offshore boundary in case of a tide composed of several components. However, an actual coast is not of a straight shoreline but is of complicated shape. The sea bottom is not horizontal but has a complex topography. Accuracy of the assumption is examined by numerical experiments.
A numerical model with this boundary condition is applied to the computation for tidal current near the Same River on the Pacific coast in Japan.

II. IMAGINARY SHORELINE METHOD

A tide in an ideal imaginary region with a straight shoreline and a flat bottom is discussed, under the condition that a tidal ellipse is available at a point in this region.
Characteristics of the incident wave, such an amplitude and incident angle, are determined from the length of the long and short axes of the ellipse. With the direction of propagation of the incident wave thus determined, path of the reflected wave can be drawn as is shown in Fig. 1.
At point A (x, y) in Fig. 1, we have both incident and reflected waves, phase difference between which is a result of the different travel courses. Lengths d_i and d_r measured from a straight line \bar{ORP}, which is a wave crest line at an arbitrary time, are given by
(1)
where \theta is the angle of incidence obtained from the tidal ellipse. Water surface elevation is given by the summation of the incident and reflected waves for different tidal components as follows :
(2)
where H is the amplitude, \sigma the angular frequency, \theta the angle of incidence, g the acceleration of gravity and h the water depth. Symbol \Sigma means the summation taken over tidal wave components.
There are two kinds of boundary conditions in tidal computation. One is to give water surface elevation at the boundary and the other, current velocity. Equation (2)
is used for the former case. Horie et al.1) stated that current velocity should be given in case of a tide with non-negligible constant current. In this case, including constant current component (\bar{u},\bar{v}), velocities are expressed by
(3)
and
(4)
Along the open boundaries parallel to the y-axis, Eq. (3) provides the boundary condition, and along those parallel to the x-axis, Eq. (4) is used.
In case of a usual initial condition that the water surface is everywhere flat without waves at the beginning of the computation, the reflected waves are taken to be zero until they arrive at the open boundaries.

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式(1〜4)
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Fig. 1 A skecth of the imaginary shoreline method.

III. ACCURACY OF THE IMAGINARY SHORELINE METHOD

3.1 Error due to a slight angle difference of the imaginary shoreline
Suppose there is an actual shore which has the same geometry as the imaginary shore assumed above, except for a slight difference between the directions of two shorelines.
Let the imaginary shoreline be expressed by y = 0 and the actual one by y = x tan \delta.
For the latter, the length of path of reflected waves changes, while that of incident waves show no change, compared with that for the imaginary shoreline. The path length of waves reflected from the actual shore, d_r」, is given by
(5)
As a result, the composed water surface elevation, \eta」, becomes
(6)
Error due to this angle difference is defined as
(式1)
where \eta_{max} and \eta」_{max} are the maximum water surface elevation of each tidal compoments for the imaginary and actual shorelines, respectively.
Figure 2 shows an example of the spatial distribution of error for h=25m, tan \delta = 0.04, \theta=0° and incident wave period T=12hr. Figure 3 shows the maximum error in the computation region 10.0 km long and 5.0 km wide, as a function of T and \delta.
For an incident wave shorter than T=2hr, this kind of error is of non-negligible magnitude. However, error is less than 10^{-3} for waves longer than T=12hr such as tidal components.
3.2 Error in case of an actual shoreline expressed by a parabola, y = ax^2
The length of path of reflected waves, d_r」, is given by the following relation.
(7)
where (x_0, y_0) are coordinates of the reflection point on the parabolic shoreline and \beta is the angle of the tangent at (x_0, y_0), measured from the x-axis which is, of course, the imaginary straight shoreline. Quantities (x_0, y_0) and \beta satisfy the followings
(8)
Figure 4 shows an example of spatial distribution of error in case of h=25m, a= 2/375 km, \theta=0° and T=12hr. Figure 5 is a relationship of the maximum error to T and a. It is again shown that the maximum error is less than 10^{-3} for waves longer than T=12hr.

3.3 Error due to bottom slope
Assume a straight shoreline with a uniformly sloping bottom. Error is resulted not from the difference in path of reflected waves but also from that in phase velocity due to varying depth. For a beach of a uniform slope, S, and the water depth, h_0, at shoreline, the average depth along the path of incident waves, h_i, is calculated as
(9)
while the average depth for reflected waves, h_r, is
(10)
Therefore, water surface elevation, \eta」, is given by
(11)
Figure 6 shows the spatial distribution of error in case of h_0=5 m, S=2/75, \theta=0° and T=12hr. Though error increases with the distance from the shoreline, it decreases from the point which is about 4 km distance. Since the maximum error is less than 5.4×10^{-4}, the effect of bottom slope is negligible if the mean depth over the whole region is used as the water depth for the imaginary shoreline method.

3.4 Error due to scattered waves
Incident waves are simply reflected from the shoreline, if there is neither river nor bay mouth, through which they still continue their propagation as the incident waves.
Scattered waves are expected to arise at river or bay mouths and are superposed on the reflected waves from the shoreline. Therefore, it is necessary to evaluate the magnitude of the scattered waves if there is a river mouth which is ignored in building the imaginary straight shoreline.
Goda 2) obtained the scattered waves by means of Fourier transform. Wave height of the scattered waves, f, in case of a rectangular bay connected to a semi-infinitely wide sea is given by
(12)
where B is the width of bay, L the length of bay, k the wave number and \gamma=0.5772… the Euler constant.
The spatial distribution of the ratio of scattered wave height to incident wave height is shown in Fig. 7. The contour lines form concentric circles with the origin at the mouth of bay.
Figure 8 shows the scattered wave height at the mouth of bay as a function of wave period for two different shape of bays. Near T=1hr, peaks due to resonance are obtained. As the period becomes longer, the scattered wave height becomes smaller.
For tidal waves, the effect of scattering can be neglected in building offshore boundary conditions.

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式(5〜12)
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(式1)
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Fig. 2 The spatial distribution of error(y=0 and y=tan \delta).
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Fig. 3 Maximum error as a function of T and \delta.
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Fig. 4 The spatial distribution of error (y=0 and y=ax^2).
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Fig. 5 Maximum error as a function of T and a.
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Fig. 6 The spatial distribution of error (a flat and a uniformly slope bottoms).
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Fig. 7 The ratio of scattered wave height to incident wave height.
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Fig.8 The scattered wave height at the mouth of day.

IV. NUMERICAL SIMULATION

A numerical model with shallow water theory is applied to simulate the flow field near the Same River, Fukushima Prefecture, Japan, on the Pacific Coast. A Leap-frog scheme is used.
The region for computation is divided into three as shown in Fig. 9. In Region A which covers the outer sea, the spatial grid size is 150 m. In Region B in nearshore zone, it is 50 m. Region C is attached to adjust the tidal prism in the channel of the Same River. One-dimensional unsteady flow is given in Region C.
The open boundary condition in Region A is determined by using of the imaginary shoreline method. This region has a shoreline approximated by a parabola, y=ax^2 (a= 2/375 km), and a uniformly sloping bottom (S=1/40). On referring the central curve in Fig. 5 and the results shown in Fig. 6, it can be said that errors are less than 1.0×10^{-3} even if the present method is applied.
In addition to the boundary conditions at the offshore open boundaries, river discharge, 6.4 m^3/s, and cooling water discharge, 65.6 m^3/s, from a thermal power plant near the river mouth are taken into consideration.
Figure 10 shows the tidal ellipses of M_2, S_2, K_1 and O_1 components.
Figure 11 shows the variations of water surface elevation in time at three points ; the river mouth, the outlet channel of cooling water in front of the thermal power plant and a point on the offshore open boundary. Solid curves denote computed results and dots denote measured data on 16th and 17th, February, 1984. At the point on the offshore open boundary, tidal record obtained at the Onahama Harbor 2.6 km north of the site was input. Agreement is fairly good in general, except for a fact that the measured ebb tide is slightly higher than the computed ebb tide at the river mouth.
It is well known that oscillations inherent to the shape and size of the computation region appear if the reflected waves are inappropriately treated at the offshore boundary. The region in the present analysis is nearly a rectangle, 5.0 km x 10.0 km wide. Its average depth is 15 m. Period of fundamental mode of free oscillation is 12.4 min and 7.2 min. No such oscillation appeared in the computed result. This is another support to the present method.
Figures 12 and 13 show velocity vectors in Region B at 8 hr and 18 hr after the beginning of computation. Water level variations at the outlet channel are given in the same figures. Arrows in water level variations show the time when the velocity vector distributions are drawn. Tidal ellipses are also drawn for a point at the middle of Region B, marked by a open circle at the tip of arrow.
Figure 12 shows the current of ebb tide. From river and outlet channel, strong jet-like flows enter the sea and form eddies. In a macroscopic view, tidal currents flow from left (north-eastern) to right (south-western) along the shoreline.
Figure 13 shows the current of high tide. At the river mouth, current velocity nearly vanishes whereas cooling water discharge is still flowing into the sea. At flood tide prior to Fig. 13, sea water flowed upstream with small velocity in the river and tidal currents in the nearshore zone flow from south to north, parallel to the shoreline.
Figure 14 shows a comparison of the velocity vectors between computed and measured results together with the computed water surface elevation at the point shown in Fig. 12. The measured data were obtained every ten minutes for fifteen days with a Bergen current meter. The direction and phase of computed results are generally in good agreement with measured data except for those at beginning of calculation, because the flow field in computation is initially set at rest. The amplitude of computed velocity is considerably larger than that of measured data. The maximum velocity obtained in computation is more than twice the measured one. This difference may be partly due to the current driven by the north-western wind during the field measurement, and partly due to the effect of the ocean current 「Kuroshio」 its branch which passes the vicinity of this coast.

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Fig.9 Region for computation.
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Fig.10 The tidal ellipse.
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Fig.11 Comparisons of the water surface elevation between computed results and measured data.
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Fig. 12 Velocity vector at Region B (t=8 hr).
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Fig. 13 Velocity vector at Region B (t=18 hr).
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Fig. 14 Comparison of the velocity vector between computed results and measured data.

V. CONCLUSIONS

1.It is possible to compute the tidal current composed of several components by using the imaginary shoreline method.
2.Errors in this simple assumption are evaluated by the following quantities such as the path of propagation, the water surface elevation, and the phase velocity of reflected waves. The errors are due to 1) the shape of actual shoreline, 2) the slope of the bottom and 3) scattered waves. Numerical experiments show that the errors can be ignored as long as the period of wave is longer than 12 hours.
3.The proposed imaginary shoreline method is successfully applied to a site. A numerical simulation is stably carried out. The results show a good agreement with measured data.

REFERENCE

1) Horie, T., Y. Kaneko and K. Murakami : Elevation- and velocity-controls in tidal simulation, Proc. 23th Japanese Conf. on Coastal Eng., 1976, pp. 493-497.
2) Ippen, A. T. and Goda, Y.: Wave induced oscillations in harbors, Report No. 59, Hydrodynamics Lab., M.I.T., 1963.

Coastal Engineering in Japan, Vol. 31, No. 2, 1988 TRUNCATION ERROR IN NUMERICAL TSUNAMI SIMULATION BY THE FINITE DIFFERENCE METHOD Fumihiko Imamura 1 Chiaki Goto 2

ABSTRACT

It is well known that the truncation error in long wave simulations by the numerical scheme appears as the artificial dispersion or dissipation effects and causes the phase shift or the numerical damping of wave height. The truncation error in numerical simulation of tsunami is investigated by using exact and approximate solutions of discretized equations. From the analysis of one-dimensional initial value problem, it is indicated that numerical error caused by the discretization depends on the Fourier spectrum of the initial wave profile, the travel distance from the origin and the Courant number K=\sqrt{gh}\delta t/\delta x. The applicability of the one-dimensional analysis to the two-dimensional problem is also examined.

1 M. Eng., Graduate Student, Dept. of Civil Eng., Tohoku Univ., Aoba, Sendai 980, Japan.
2 D. Eng., Senior Research Engineer, Port and Harbour Res. Inst., Ministry of Transport, Kurihama, Yokosuka 239, Japan.

I. INTRODUCTION

The finite difference and the finite element methods have been developed for reproducing the tsunami propagation with the long wave theories. It is, however, authors」 experiences that, even when the computations are stably carried out, the computed results often behave against what is expected from the equations used. These errors are introduced by the numerical schemes and result in the damping of wave height or numerical oscillations behind the main wave.
The truncation errors of wave amplitude and phase in simulating nearly horizontal flows with St. Venant equation were examined by using modified differential equations [ Kubo, 1985]. By the use of Fourier analysis, Gray & Lynch (1984) investigated the effect of the time stepping procedure in solving the linearized shallow water equations expressed in FEM.
However no reasonable procedure has yet been proposed to estimate the magnitude of the truncation error in practical problems, because its magnitude depends not only on the dispersion and dissipation effects but also on aliasing effect. The present paper aims at providing a viable approach and giving useful guidance in evaluating such truncation errors. In section II, equations of linearized long waves are discretized with three kinds of schemes; the staggered leap-frog, Crank-Nicolson and two-step Lax-Wendroff schemes. In order to obtain exact and approximate solutions of the discretized equations, the Fourier and Taylor series expansions are used. With these expressions, it becomes possible to evaluate the truncation error in the one-dimensional propagation of linear tsunamis. In section III, the truncation error is evaluated and discussed in connection with difference between the Fourier and Taylor series analyses, dispersion and dissipation effects, and aliasing effect. The directional properties of the artificial dispersion introduced by the leap-frog scheme is discussed for the case of a two-dimensional propagation in section 3.4. Finally, the method with the Fourier analysis is applied to the estimation of the truncation error in actual problems, i.e., the 1964 Great Alaska Earthquake Tsunami and the 1896 Meiji Great Sanriku Tsunami.

II. DISCRETIZED EQUATIONS AND THEIR SOLUTIONS

2.1 Numerical Scheme
Basic equations used are the linearized and vertically averaged equations for long waves.
In the large part of the present paper, one-dimensional propagation of tsunami on a flat bottom is considered for the simplicity of discussion. If a two-dimensional propagation is considered, the property of the truncation error is slightly dependent on the orientation of the computational grids to the direction of wave propagation. This effect will be discussed seperately in section 3.4.
The governing equations are
(1)
where, \eta is the water surface elevation, M the water discharge, C_0(=\sqrt{gh}) the propagation velocity of the linear long waves, g the acceleration of gravity and h the water depth.
The discretized equations are obtained as follows if three different numerical schemes which are widely used for simulations of long waves are appllied to Eq. (1): Staggered leap-frog scheme
(2)
Crank-Nicholson scheme
(3)
Two-step Lax-Wendroff scheme
(4)
For dealing with discrete values in numerical computations, \eta(x,t) and M(x,t) and expressed for the case of the leap-frog scheme as
(5)
where \delta x and \delta t are the grid sizes in the directions of x and t. The point schematics for the numerical scheme are illustrated in Fig. 1.

2.2 Taylor Series Analysis
Hirt (1968) and Warning & Hyett (1974) introduced the methods of the modified differential equations, to approximate the discretized equations, using the Taylor series expansion in the problem with one dependent variable. In the following, their methods are extended to the problem with two dependent variables in the coupled equations.
As an example, consider the leap-frog algorithm. The first term in Eq. (2) can be rewritten by the Taylor series about the point ((j+1/2)\delta x, n\delta t) as follows:
(6)
It is assumed here that \eta has continuous infinite derivatives. Applying this operation also to the other terms, Eq. (2) can now be expressed as
(7)
It is clear that the third terms in Eq. (7) result from the discretization and are appended to the original equations of linear long waves. In other words, the third terms are the source of the truncation error in this scheme. In order to examine Eq. (7), the following approximation given from the relationship for linear long wave theory is used:
(8)
If the propagation in the positive x-direction is considered, Eq. (8) is given as
(9)
This relationship is applicable to the term associated with M. Thus, the higher order derivatives with respect to t is replaced by those with respect to x as follows:
(10)
Substitution of Eq. (10) into higher order derivative terms in Eq. (7) and elimination of M yield the following differential equation with a single dependent variable, \eta:
(11)
where K is the Courant number defined as K=C_O(\delta t/\delta x). The third term in Eq. (11), an additional term to the original linear long wave equations, consists of even derivatives only, which have the dispersion effect.
In order to show the properties of Eq. (11), a simple initial condition is assumed as
(12)
Suppose that the wave propagates only in the positive x-direction, the solution of Eq. (11) can be obtained as
(13)
where
(14)
It should be noted that the propagation velocity is dependent on the wave number k, when k is not equal to zero. This is called the dispersion effect. Aside from the physical dispersion, the artificial dispersion thus introduced in Eq. (14) depends on the grid size \delta x selected in numerical computations.
In the same way, the discretized equations for other schemes can be solved, and only the results are described below.
Crank-Nicholson scheme
(15)
where
(16)
Two-step Lax-Wendroff scheme
(17)
where
(18)
2.3 Fourier Series Analysis
The Fourier series analysis introduced by Leendertse (1967) is followed here to obtain the solution of discretized equations. By this method it becomes possible to obtain an exact solution of differential or discretized equations because no assumptions is made in the process of development. It is, however, difficult to apply this method to nonlinear problems [Canuto at el., 1987].
Since the water surface elevation \eta and the water discharge M are with discrete values defined only at the grid points, they should be expressed by the discrete Fourier transform rather than by the Fourier transform, i.e.,
(19)
where \tilde{\eta_m} and \tilde{M_m} are the m-th Fourier coefficients which are functions of time, and N is the total number of spatial grids. Substituting the Fourier series, Eq. (19), into Eq. (2), we obtain the coupled discretized equations as
(20)
Considering only one component in Eq. (20), elimination of \tilde{M_m} from Eq. (20) yields
(21)
If the wave propagation is assumed only in the positive x-direction, Eq. (21) with the initial condition, Eq. (12), is solved as follows:
(22)
where
(23)
(24)
Thus, summation of all components of the Fourier series yields the solution for the leap-frog scheme in the following form:
Leap-frog scheme
(25)
In the same way, the discretized equations and the corresponding solutions for other schemes are obtained as follows:
Crank-Nicholson scheme
(26)
where
(式1)
The solution of Eq. (26) is given by
(27)
where
(28)
2-step Lax-Wendroff scheme
(29)
where
(式2)
The solution of Eq. (29) is given by
(30)
where
(31)
(32)
It is clear from the above discussions that there exist a difference between the natures of dispersive and dissipative errors in the leap-frog and Crank-Nicholson schemes and the twostep Lax-Wendroff scheme. The first two schemes have only the artificial dispersion effect which affects the phase shift, whereas the third has, in addition, the artificial dissipation effect which causes the decay of amplitude as suggested by the factor exp (-\Gamma・n) in Eq. (30).

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Fig. 1 Point schematics for one time step of numerical computation.

III. PROPERTY OF TRUNCATION ERRORS

3.1 Accuracy of the Series Expansion Methods
The purpose of the Taylor series (T. S.) and Fourier series (F. S.) analyses is to give insight into the properties of truncation errors introduced in the numerical simulations by referring to the analytical solutions. To this end, it is necessary to know the detailed properties of the analytical solutions. The F. S. analysis gives the exact solution of the discretized equations in case of linear equations, but it is difficult to apply the method to non-liner equations. On the other hand, the T. S. analysis is applicable to non-linear equations, although it is an approximate method. Prior to the discussion of the truncation error in numerical simulations, the difference in solutions obtained through the T. S. and F. S. analyses is briefly described.
Figure 2 shows, for the case of the leap-frog scheme, the dependence of the wave propagation velocity obtained in the numerical computation on the grid size. The ordinate is the ratio of the computed wave propagation velocity C to the physical wave propagation velocity C_0 and the abscissa is the product of wave number km and grid size \delta x. The monotonous decay of the ratio means that higher frequency wave components propagate slower. It follows that higher frequency oscillation may appear behind the main wave in numerical computations.
It is also noted that the solution given by the first component of the T.S. expansion indicated by the broken line agrees reasonably well with the solution by the F. S. analysis, so that the T. S. analysis only with the first component can be used as a good approximation. This provides a useful information regarding possible application of the T. S. analysis to the non-linear equations.
Figure 3 provides comparisons among the analytical solution of the original equations for linear long waves, the exact solutions of the discretized equations (results of the F. S. analysis), the approximate solution of the discretized equations (results of the T. S. analysis), and the results of numerical computation. Since the last three results well coincide with each other, it is confirmed that the resuts of the F. S. analysis can be used in place of numerical simulation and that the T. S. analysis is also a good tool to examine the discretized equations.
This suggests that the round-off error in the numerical simulation of linear long waves is negligible compared with the truncation error.
The high frequency oscillations behind the main wave are clearly seen in Fig. 3 as mentioned earlier. This is due to the fact that a higher frequency component propagates slowly in numerical computation. The analytical solution based on the linear long wave theory indicates that the wave propagates without profile change over a flat bottom, because every parts of wave profile or every wave components should propagate without dispersion effect in the wave propagation velocity.

3.2 Dispersion and Dissipation Effects
Artificial dispersion and dissipation effects depend on the numerical scheme, the Courant number K and the dimensionless wave number k_m \delta x/2.
Figure 4 shows the dependence of the dispersion effect on the Courant number for the case of the leap-frog scheme. The Courant number should not exceed unity in order to maintain the computation stable. This is called C.F.L. condition (Courant, Friedrichs & Lewy, 1928).
As can be seen from the figure, the dispersion effect is more significant for a smaller Courant number. The same tendency is observed for the other two schemes.
Figure 5 compares the dispersion effect associated with three different schemes for K=0.5.
The leap-frog scheme appears to be the best among three schemes, producing the smallest dispersion effect. The reason is that the other two schemes require twice as many spatial steps for one time step. This will be clearly seen if the discretized equations are rewritten solely for \eta by eliminating M.
It has been shown in the foregoing discussion that the two-step Lax-Wendroff scheme differs from the other schemes in its inherent artificial dissipation. Figure 6 gives the ratio of amplitude decay during a time step as a function of the nondimensional wave number with the Courant number as a parameter. The smaller Courant number yields the greater effect of dissipation. The two-step Lax-Wendroff scheme and the Crank-Nicholson scheme produce a similar dispersion effect, although the former gives waves with smaller amplitude behind the main wave as shown in Fig. 3. This is due to the dissipation effect involved in the two-step Lax-Wendroff scheme. The artificial dissipation tends to reduce the non-physical oscillation occurring at the discontinuity, the effect depending on the wave number and the Courant number.

3.3 Aliasing
If a wave profile is expressed by the discrete Fourier transform with a finite number of terms, the power of higher-frequency components is folded at the Nyquist frequency and is superposed on the lower-frequency components. As an example, for the case of a solitary wave with the initial wave height-water depth ratio eta/h=0.02, the amplitude of spectral components is plotted against their normalized frequencies in Fig. 7. As is known well, if a wave length is divided into N segments, the highest frequency taken into consideration is the N/2th mode. In the figure, the abscissa is adjusted in such a way that 0.5\pi corresponds to the Nyquist wave number. The result indicates that the spectral components near the Nyquist frequency are subject to considerable effect of the aliasing.
Suppose that the amplitude of high frequency components is overestimated because of the aliasing depending on the spatial grid sizse elected, then the dispersion effect retards these high-frequency components and produces the waves behind the main wave. Both these effects are combined to disturb the solution. The spatial grid size, therefore, should be selected carefully not to introduce significant errors due to aliasing. In other words, the spatial grid size should be taken as fine as possible to cover all the spectral components with non-negligible power.

3.4 Dispersion in Two-Dimensional Problem
In practical application, the propagation of tsunamis is treated as a two-dimensional phenomena. It is, therefore, necessary to examine the applicability of the above discussion to the two-dimensional propagation of tsunamis.
If the grids in the x- and y-directions are selected to have the same size, the modified differential equation for the leap-frog scheme is given by the T. S. analysis, corresponding to Eq. (11) in the one-dimensional analysis, as
(33)
where only the first term of the artificially introduced dispersion is included, since the analysis in Section 3.1 has shown that the contribution of the first term governs the dispersion effect.
The ratio of the numerical to the physical wave propagation velocity is given by
(34)
where k_x and k_y are wave numbers in the x- and y-directions. This relationship is shown in Fig. 8 in comparison with the results of one-dimensional analysis. The ratio given by Eq. (34) coincides with that for one-dimensional waves along the x- and y-axes and the maximum apertures appear in the diagonal direction. This implies that the artificial dispersion is most serious along the x- and y-axes. It is, therefore, concluded that the criteria for the onedimensional problem is applicable in rigorous sense for designing numerical schemes.

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Fig. 2 Comparison of the solutions by F. S. (Fourier Series) and T. S. (Taylor Series) analyses for the leap-frog scheme with K = 0.5, where C/C_0 is the ratio of the numerical wave velocity to the ph
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Fig. 3 Comparison of wave profiles: the numerical solution, solutions by the T. S. & F. S. analyses and the analytical solution of linear long wave equations.
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Fig. 4 Variation in dispersion effect for the leap-frog scheme with the Courant number K (=C_0 \delta t/\delta x) as a parameter.
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Fig. 5 Dispersion effect associated with three numerical schemes for K=0.5.
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Fig. 6 Dissipation effect associated with the 2-step Lax-Wendroff scheme.
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Fig. 7 Variation in the amplitudes of Fourier components due to aliasing, where 0.5\pi in the abscissa corresponds to the critical Nyquist component and N denotes the number of spatial grids per wave
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Fig. 8 Two dimensional dispersion effect for the leap-frog scheme. Dotted lines represent the corresponding results of the one-dimensional analysis.

IV. APPLICATION TO ACTUAL PROBLEMS

4.1 Initial Profile and Truncation Error
In the preceding discussions, it was shown for simple wave profiles such as a solitary wave that the truncation error in numerical simulations depends upon the Courant number and the number of spatial grids per wave length. In this section, we examine the dependence of truncation error on the initial profile and the travel distance. In studying wave deformation due to the truncation error, the other physical factors influencing the wave deformation such as two-dimensional spreading, topography change and bottom friction have to be eliminated.
The analysis is thus for the one-dimensional propagation along the short axis of the wave source on a flat bottom, and the water depth is considered as the mean depth averaged over the actual region for computation.
Two tsunamis selected here are the Great Alaska Earthquake Tsunami of 1964 and the Meiji Great Sanriku Tsumani of 1896.
For the former tsunami, the vertical displacement of sea bottom was determined in detail as a continuation of the land displacement due to the earthquake (Plafker, 1969). It was reported that the Great Alaska Tsunami belongs to the very rare case in which the existence of a secondary fault was confirmed and it caused a sharp rise in the initial profile of the tsunami, as shown at n=150 or x=300 km in Fig. 9(a). This tsunami provides an accurate initial profile for numerical study including the high frequency components due to the secondary fault.
For the latter tsunami, the initial wave profile was determined (Aida, 1977) with the normal procedure using the faults parameters and the Mansinha & Smylie (1971) method. As shown in Fig. 9(a), the sectional profile is gentler, indicating that the main fault produced a single crest and trough.
The power spectra of these tsunamis are presented in Fig. 9(b). It is evident that the 1964 tsunami has 100 times larger high frequency components than the 1896 tsunami.
Figure 10 provides comparisons of analytical solutions (thin lines), results of computations (circles) and exact solutions of the discretized equations (thick lines). The analytical solution was obtained from Eq. (25) by replacing the numerical wave velocity C_1 by the physically correct velocity C_0. A distance of travel is taken in the abscissa and the wave propagates in its positive direction. For the computation of the 1964 tsunami, \delta x is taken at 2 km. The uppermost figure gives the tsunami profile after the wave traveled over 400 km.
Although there is no significant difference among the results as for the main peak, perturbed oscillations is already created owing to artificial dispersion. Numerical results coincide well with the solutions given by the Fourier series analyses. After further propagation, the main peak of the computed tsunami becomes lower and the perturbed oscillations behind the main peak become more pronounced. This tendency is notable in this case because of the high frequency components produced by the secondary fault. On the other hand, three results coincide quite well for the case of the 1896 tsunami without apparent high-frequency components.

4.2 Estimation of Truncation Error
The height of the main wave is the most important quantity from the engineering point of view, being related to possible damages or design condition for countermeasures. The relative error in computed wave heights may be defined for the waves traveling over one wave length as follows:
(35)
figure 11 shows the error against the number of spatial grids per wavelength, where the Courant number K=0.9 and 0.5. To reduce the error, the larger Courant number is desirable.
If K=0.9 is selected , in order to suppress the error within 10 %, the 1964 tsunami should be divided into more than 150 segments and the 1896 tsunami into more thanl5 segments. It is noted that the result for the 1964 tsunami described here does not agree with that obtained by Shuto etal. (1986). They suggested that 20 to 30 divisions are necessary, provided that the initial tsunami profile is of a simple sinusoidal curve with a single crest and trough. The present study emphasizes that the required number of division (or the size of spatial grid) depends on the magnitude of high frequency components in the initial tsunami profile.

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Fig. 9 Initial profiles and power spectrum of two great tsunamis.
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Fig. 10 Comparison of analytical solution, computed results and exact solutions of the discretized equations for actual problems.
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式(35)
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Fig. 11 Error in computed wave heights against the spatial grid size.

ACKNOWLEDGMENTS

The authors wish to express their thanks to Dr. N. Shuto, Professor of Tohoku University, for his valuable advices and discussions. Thanks are also due to the reviewers and editors for their helpful comments.

REFERENCES

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Canuto, C., M. Y. Hussaini, A. Quarterni and T. A. Zang (1987): Spectral Methods in Fluid Dynamics, Springer Series in Computational Physics, Springer-Verlag, pp. 32-52.
Courant, R., K. 0. Friedrichs and H. Lewy (1928): Uber die partiellen differenzen gleichungen der mathematischen physik, Math. Ann., Vol. 100, p. 32.
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Mansinha, L. and D. Smylie (1971): The displacement field of inclined faults, Bull. Seismol. Soc. Amer., Vol. 61, pp. 1433-1440.
Plafker, G. (1969): Tectonics of the March 27, 1964, Alaska Earthquake, U.S. Geological Survey Professional Paper 543-I, Washington Government Printing Office, p. 74.
Shuto, N., T. Suzuki, K. Hasegawa and K. Inagaki (1986): A study of numerical techniques on the tsunami propagation and run up, Science of Tsunami, Vol. 4, No. 2, Int. J. of the Tsunami Society, pp. 111-124.
Warning, R. F. and B. J. Hyett (1974): The modified equation approach to the stability and accuracy analysis of finite-difference methods, J. comp. Phys., Vol. 14, pp. 159-179. Fig-1 Point schematics for one time step of numerical computation.

(Received May 26, 1988; revised Aug. 31, 1988)

Coastal Engineering in Japan, Vol. 33, No. 2, 1990 NUMERICAL SIMULATION AS A MEANS OF WARNING FOR NEAR-FIELD TSUNAMIS Nobuo Shuto 1 Chiaki Goto 2 Fumihiko Imamura 3

ABSTRACT

The feasibility of quantitatively forecasting a near-field tsunami prior to its arrival is examined, provided that the initial tsunami profile can be determined from fault parameters calculated using a method similar to that of Izutani and Hirasawa.
Examination of basic equations, boundary conditions and grid lengths has led to the conclusion that the following combination is the best to perform rapid, accurate, and detailed numerical forecasting; the linear long wave theory discretized with the staggered leap-frog scheme, perfect reflection at the land boundary, and a grid length varying from 5.4 km out at deep sea to 0.2 km at the shoreline. With the aid of a super computer, tsunami heights along every 200 m of Japan」s Sanriku coast (250 km long) can be obtained within 7 minutes after the occurrence of an earthquake. This method gives enough time for warning transmission and for evacuation of residents because the standard arrival time of tsunamis in this district is 25 to 30 minutes.

1 D. Eng., Professor, Dept. of Civil Eng., Tohoku Univ., Aoba, Sendai 980, Japan.
2 Chief, Ocean Energy Utilization Lab., Port and Harbor Res. Inst., Min. of Transport, Nagase 3-1-1, Yokosuka 239, Japan.
3 Research Assistant, Dept. of Civil Eng., Tohoku Univ., Aoba, Sendai 980, Japan.

I. INTRODUCTION

Modern tsunami prevention works in Japan started just after the Chilean tsunami of 1960, which had a maximum run-up height of the order of 5 m. In the following five years, sea walls 5-6 m high were built along coasts of the Sanriku district severely damaged by the tsunami. Additionally, along other coasts, structures of a similar height were constructed to prevent storm surge inundation and beach erosion. As a result, most of Japan」s coastline is now protected against medium magnitude tsunamis by coastal structures. However, in order to deal with huge tsunamis, other methods, which include early warning methods and moving buildings to higher elevations, must be taken into consideration.
Since 1952 the Japan Meteorological Agency (JMA) has been responsible for tsunami forecasting. This agency utilizes a diagramatic forecasting model which is based on an empirical relationship between the magnitude of the tsunami, the distance to the epicenter (or equivalently the time difference in arrivals of P- and S-waves), and the amplitude of seismic waves recorded at a given distance from the epicenter. The magnitude of tsunami is divided into four classes: major tsunami, tsunami, tsunami alert, and no tsunami. The sentences of the alert messages are officially prefixed, and when a major tsunami is expected, its corresponding alert message indicates only that a tsunami higher than 3 m will strike.
In 1968 when the Tokachi-oki earthquake tsunami hit, the tsunami defense structures which had been designed using the 1960 Chilean tsunami as a basis for crown height had already been built. This tsunami was of medium magnitude and was almost completely stopped by the coastal structures. As a consequence of this event, younger coastal residents who have never experienced any huge tsunamis have come to fully rely upon the tsunami defense structures. Although older residents are sure that a huge tsunami can easily exceed the height of existing structures, it is now very difficult to decide for local residents in general whether or not these 6 m high sea walls can stop a major tsunami forecasted by the JMA. Either from the reliance on the existing coastal structures or from the difficulty in deciding, coastal residents are changing their mind not to take immediate actions for evacuation when a tsunami is forecasted. It is believed that if this trend is continued, many lives will be lost when the next huge tsunami hits the Sanriku coast.
One method that can be used to improve the present situation is to make accurate numerical forecasting, and to warn the population with detailed information. This method, however, may not be rapid enough to provide an advance warning, which is a necessary factor in tsunami forecasting. For the case of a near-field tsunami in the Sanriku coast, only 25 to 30 minutes will be available between an earthquake generation and the tsunami attack. If it is assumed that at least 15 minutes is required to transmit the information and evacuate the residents, then the computer numerical simulation and the human decisions must be done in less than 10 minutes.
During this limited time two major steps must be carried out, i, e., a rapid estimation of fault parameters of the earthquake, and the quick completion of the tsunami numerical simulation. Information concerning earthquake fault parameters can be found in Kanamori and Given (1983), Okal and Talandier (1986), and Izutani and Hirasawa (1987a, b). The present paper is concerned only with the problem of making computer numerical simulations that satisfy optimum conditions of rapidity, accuracy, and detail. This problem is called the 「RAD optimum problem」 in the present paper.
In Section 2 discussions concern the forecasting method and the area where the forecasting is conducted. The Izutani-Hirasawa method is employed to rapidly estimate fault parameters.
In Section 3 the 「RAD optimum problem」 is solved by a super computer using several equations, boundary conditions and grid lengths. The Meiji Great Sanriku tsunami of 1896 is used as an example. The time duration of the numerical forecasting is measured from the generation of an earthquake to the completion of the numerical simulation.
In Section 4 the solution (an optimum set of equations, boundary conditions, and grid lengths) is applied to the 1968 Tokachi-oki earthquake tsunami as a performance test.
In Section 5 the required time is summerized to forecast tsunami heights.

II. NUMERICAL TSUNAMI FORECASTING METHODS AND APPLICATION AREA

Figure 1 shows the major steps in the forecasting procedure, beginning from the generation of an earthquake and ending at the issue of a warning.
Figure 2 shows the determination process of fault parameters necessary to estimate the initial tsunami profile. The angle of inclination and slip of the fault are determined from the initial P-wave using the conventional method. The most difficult parameters to estimate are the length and width of the fault plane, which are usually determined from the extension of the aftershock area. If the conventional method is used, the dimensions of the fault plane can not be estimated before the arrival of the tsunami. Izutani and Hirasawa (1987a) proposed a new method to rapidly estimate these parameters, where the fault length and the direction of rupture propagation are determined using the observed duration of strong motion. The width and dip slip of the fault can be estimated with empirical relationships (e.g., Abe, 1975). The earthquake magnitude is then determined from the arrival time and maximum amplitudes of the P- and S-waves. If the travel time of seismic waves and the duration of strong motion are included, the parameters can be determined within 5 minutes after the generation of an earthquake.
With the parameters thus determined, the Mansinha-Smylie method (1971) can be used to calculate the vertical displacement of the sea bottom, which is considered equal to the initial tsunami profile. Following this step the tsunami numerical simulation is conducted.
In the present study the forecasting area is Japan」s Sanriku coast, (250 km long), shown by the hatched area in Fig. 3. The simulation is made in the area from 36°20′N to 43°00′N and from 139°40′E to 145°20′E.

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Fig. 1 Flow chart of the proposed tsunami warning system.
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Fig. 2 Process to determine fault parameters (L: fault length, W: fault width, u: amount of slip, \alpha: station azimuth at the epicenter, \delta: dip angle, \lambda: slip angle, M_0: seismic moment,
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Fig. 3 Computation regions and estimated source areas of past tsunamis with attached numerals giving year of occurrence.

III. A SOLUTION OF THE RAD OPTIMUM PROBLEM

3.1 Selected Tsunami
Japan」s Sanriku coast (the Pacific Ocean side of the Tohoku district) has historically been suffering relatively frequent tsunami attacks. The ellipses in Fig. 3 show estimated source areas of previous major tsunamis, with the attached numerals indicating their years of generation. Many tsunamis were generated along the Japan Trench, with the largest being the tsunami of 1611, although only a few accurate historical records of this tsunami exist. The second largest was the Meiji Great Sanriku tsunami of 1896, which claimed more than 21,000 lives and had a maximum run-up height of more than 30 m above the mean sea water level. Using this tsunami, the Imamura-lida scale of the tsunami magnitude m = 4 was established. The third largest was the Shouwa Great Sanriku tsunami of 1933, which had a maximum runup height of more than 25 m and claimed over 3,000 lives. The tsunami magnitude m = 3 in the Imamura-lida scale was determined as corresponding to this tsunami.
The Meiji Great Sanriku tsunami was selected to solve the 「RAD optimum problem」 for the Sanriku district. The fact that this tsunami with its large run-up height would surely overtop the existing sea walls made it an adequate tsunami to examine the assumption on land boundary conditions. An additional advantage of using this tsunami is that a sufficient number of tsunami traces had been recorded and their elevations had been measured. The initial profile of this tsunami can not be determined using the Izutani-Hirasawa method because no seismic wave data was available.
Instead the initial profile determined by Aida (1977) was employed. He performed tsunami numerical simulations for four assumed initial profiles, assuming that the earthquake mechanism was similar to the 1968 Tokachi-oki earthquake tsunami. He determined the best initial profile by comparing both the computed inundation heights with the measured tsunami trace heights, and the computed arrival time with two available tide records.

3.2 Governing Equations
In numerical simulations of hindcasting the run-up heights of near-field tsunamis, two types of governing equations are generally used. In seas deeper than 50 m the linear long wave theory is generally considered accurate enough for practical purposes.
In seas shallower than 50 m the shallow-water theory which includes bottom friction is usually used. However, when the 1983 Nihonkai-Chubu earthquake tsunami hit the Japan Sea coast, the development of a train of short waves emanating at the tsunami front was observed, thus suggesting that dispersion effects are also important.
Taking the above mentioned facts into consideration, three types of equations are compared with each other in the present paper; the linear long wave theory, the shallow-water theory with bottom friction, and the Peregrine equation. For the sake of simplicity, one-dimensional computations were carried out along the line a-a」 in Fig. 3, drawn through the neighborhood of the center of the source area of the Meiji Great Sanriku tsunami.
Figure 4 compares the tsunami profiles computed with the three methods in seas deeper than 500 m at the time intervals of 100 seconds. The linear and shallowwater equations were computed using an explicit scheme, the staggered leap-frog scheme, while the Peregrine equation was computed using an implicit scheme. In order to suppress numerical errors a spatial grid 1.35 km wide was used, which was smaller than the usual size of 3 km to 5 km. The selection of this small grid size was made so that more than 20 grid points in one wave length will be available throughout the computation area, and in order that no numerical decay of the major wave component of the tsunami will take place before its arrival at the coast (Shuto et al., 1986). Figure 4 shows no differences between the tsunami profiles by the linear theory and by the shallow-water theory. The Peregrine equation gives only slightly different results owing to the dispersion effect which reduces the major wave crest and generates a wave train behind it. However, the difference in height of the major crest is negligibly small from the practical point of view for tsunami forecasting. Therefore it is concluded that the linear theory gives satisfactory tsunami prediction results in seas deeper than 500 m.
In seas shallower than 500 m, the grid length should be made finer since the wave length becomes shorter. Results computed using a grid length of 0.2 km are shown in Fig. 5. The linear theory gives the same result as the shallow-water theory. The Peregrine equation shows a similar tendency to the results determined in seas deeper than 500 m.
Figure 6 shows spatial distributions of the highest water levels. The x-coordinate is the travel distance from the generating area: the point 0 km is the initial position of the major wave crest, the point 100 km corresponds to the boundary between the deep and shallow regions, and 150 km is located at the shoreline. A sudden drop of the maximum water level from 3.5 m to 1.2 m around the 30 km point is caused by the splitting of the major crest into two waves, one propagating shoreward and the other seaward. Beyond the 30 km point, the tsunami height increases owing to shoaling. There are no significant differences between the linear and shallow-water theories, except in the very shallow regions where the truncation error, caused by the convection term, introduces numerical dissipation into the shallow water theory. The Peregrine equation gives a slightly lower tsunami height because the dissipation effect acts to split the major wave of the initial profile, but does not yet increase the height by the water surface curvature effect which is dominant in a very shallow region.
Table 1 gives the resulting CPU time for the three methods. The shallow-water and Peregrine equations respectively require 1.6 and 17 times longer time than the linear theory.
The above results show little differences among tsunami heights in spite of large differences in the CPU time, indicating that the linear long wave theory is best for tsunami numerical forecasting from the point of view of accuracy and computation speed, not only in the deep but also in the shallow sea.

3.3 Spatial Grid Lengths
(1) Deep region
Supported by the results in the preceding section, the linear long wave theory was used to examine the effects of the grid length on accuracy and rapidity for the case of a two-dimensional problem. Three grid lengths of 2.7, 5.4, and 10.8 km were selected, by taking into consideration that grid lengths on the order of 5 km have often been used in tsunami simulations.
Figure 7 is a three dimensional example of the results using a grid of 2.7 km at 6-minute intervals. The upper figure is the initial profile of the Meiji Great Sanriku tsunami, having a maximum water surface elevation of 4.0 m. The major and minor axes of the tsunami source are approximately 200 km and 50 km long.
Figure 8 compares the time histories of water surface elevations for the three grid lengths at 6 points along the 1000 m water depth contour. The numerals indicate the maximum water surface elevations obtained using the 2.7 km grid. Among three grid lengths, the shorter grid lengths yield the higher maximum water surface elevations and a shorter wave period behind the major wave crest. This is an expected result of numerical dispersion which is inherent in the staggered leap-frog scheme of the present simulation.
The reason why a water depth of 1,000 m was selected for comparison is as follows. When the computer capacity is not large enough compared to the number of grid points and the time required for a full computation, the normal technique is to divide the computation into an offshore and an inshore computation. In the offshore computation the entire region is covered with a net of coarse grids, whereas in the inshore computation a net of fine grids was used to allow observation of more limited areas, including areas of special concern. At the inshore computation」s open boundary which is usually set in the neighborhood of the 1,000 m contour, the outputs of the offshore computation are used as the boundary condition.
Table 2 summarizes the resulting relative CPU times and the maximum water surface elevations when a grid length 5.4 km was used as the standard. The CPU times for the 2.7, 5.4, and 10.8 km grids are in the ratio of 7 : 1 : 1/7, while the maximum water surface elevations form the ratio of 1.06 : 1 : 0.82. If the grid length is reduced from 5.4 km to 2.7 km, the accuracy is improved by 6% at a cost of increasing the CPU time by a factor of seven. If the CPU time is reduced by seven times using a grid length of 10.4 km, the largest error becomes 18%. This error is not considered acceptable, both from the standpoint of numerical forecasting, and also from the present practice of tsunami hindcasting.
Therefore the largest grid length was set equal to 5.4 km in the region A of Fig. 3.
Closer to the shore, the grid length was further reduced to 1.8 km for the regions B1-B4, and to 0.6 km for the regions C1-C5, so as to prevent a deterioration in final results.
(2) Shallow region
The present tsunami simulation proceeded continuously from the deep to the shallow region and then to land, i. e., from coarser grids in the regions A, B, and C to even finer grids in region D. Three gird lengths of 0.2, 0.3, and 0.6 km were selected in region D for comparison.
The three figures in Fig. 9(a) show the coastline expressed with the three different grid lengths. For the 0.2 km grid, contours of the sea bottom and the sub-regions D_1 to D_{22} are also shown.
Figure 9(b) compares the computed maximum water surface elevations in the case of 0.2 km grid lengths with the observed records. At a location where only one recorded data point was available, the data is shown with a circle. At a location where several different values were obtained, a bar connecting the upper and lower values is drawn. In the area north of Miyako, located near the center of the considered coastline, the computed results are smaller than the observed data, whereas the computation yields lager heights than the observation in the south of Miyako. On the average, however, the computed results agree fairly well with the observed data.
Figure 9(c) shows relative percentage differences of the results for \delta x = 0.3 km and \delta x = 0.6 km, when compared with the results for \delta x = 0.2 km. At places where the computed tsunami height was large, the results for the 0.3 km and 0.6 km grids were often lower than the results for the 0.2 km grid. This is partly due to the deterioration caused by expressing the topography using coarse grids, and partly due to the spatial grid averaging effects for the tsunami wave characteristics. A computed water surface elevation at a grid point means the value that is spatially averaged in the mesh represented by this grid point. When a coarse grid length is used, the detailed distribution of water surface elevation disappears owing to the averaging effect. Therefore, in order to predict the detailed local behavior of the tsunami, a fine grid length is preferable.
Table 3 shows the grid length, the time interval, the total number of grid points, and the ratio of the CPU time required to reproduce the 90-minute time history of the Meiji Great Sanriku tsunami. If the grid length is reduced by half, the CPU time, increases by factor of two.
Using these results, it is concluded that a shoreline grid length of 0.2 km is the best choice for the present study, because the computer simulation can be finished within a time frame that allows for a suitable warning time.

3.4 Shoreline Boundary Conditions
Throughout the preceding discussions, the actual situations along the shoreline were neglected under the assumption of perfect reflection at the land boundary, i,e., no overtopping of breakwaters and sea walls, and no run-up or no inundation on land.
If a sea wall is overtopped by a tsunami, the perfect reflection assumption no longer holds true and only partial reflection occurs. If the inundation on land is considered, the water surface elevation may become lower than that obtained using the assumption that vertical, infinitely high sea walls completely prevent inundation because water can then spread over a wider area. In addition, the volume of inundating water depends upon the predicted wave profiles and current velocities which are different for different theories. The method considered best in Section 3.3 may yield inaccurate results near the shoreline and on land, because it uses the linear theory with a 0.2 km grid.
Effects of the land boundary conditions, as well as the selection of equations, must be closely examined in detail. The area to be examined is Miyako Bay which is near the center of the Sanriku coast. This bay is typical of the bays located on the Ria type coast. At the middle of its northern shore there is a long breakwater extending almost to the line of the central axis of the bay, and sea walls with a crest height 5 to 6 m were built along the entire bay shoreline.
In order to examine the accuracy of the linear theory using a 0.2 km grid, true values are needed for comparison. Recorded data is not satisfactory for this purpose because it is neither sufficient in number, nor does it reflect the effects of coastal structures recently built. Two numerical simulations were therefore carried out, using the the shallow-water theory with a fine 0.05 km grid, to provide the 「true values」.
One simulation considered the case with no structures, i, e., similar to the bay and coast when the Meiji Great Sanriku tsunami hit in 1986. The computed results were compared with the recorded data and the simulation method was confirmed to be reliable. The second simulation was carried out for the case with the existing 1980 sea walls and breakwaters. Because many grid points were included in the two computations, each computation was divided into an offshore and an inshore computation. The offshore computations were done as discussed in Section 3.3, and the inshore computations were made in the areas shallower than 100 m. The tidal level was set equal to Tokyo Post (T.P.) 0 m, being nearly equal to the mean sea water level.
Figure 10 compares time histories of water surface elevations obtained with three methods at six points in Miyako Bay. Solid lines are the shallow-water theory with the existing sea walls and breakwater (1980), dashed lines are the shallow-water theory without any structures (1896), and dotted lines are the linear theory with perfect reflection. The attached numerals are the maximum water surface elevations obtained by the shallow-water theory. As far as the maximum water surface elevation is concerned, there are only slight differences in the three methods, although the wave profiles do show some differences. Thus the the linear theory, using perfect reflection and a 0.2 km grid, gives satisfactory forecasting estimates.
Figure 11 shows more clearly the resulting differences in the three methods. The contours of water surface elevation are shown by solid lines (the attached numerals show values in m), and also shown are the water current velocity vectors at the time 40 minutes after the earthquake. Notice in Fig. 11(a) that a large swirling motion is formed around the breakwater. Even though the tsunami height exceeds the existing sea walls, the inundated area is narrower than that in Fig. 11(b). The inundated area of Fig. 11(b) is the largest among the three methods, and velocity patterns and strengths seems to be different from Fig. 11(a), especially in the inundated area and around the structures. This difference, however, occurs only locally, and it does not affect other parts of the bay, whereas the water surface elevations do not show any difference. Velocity patterns and strengths in Fig. 11(c) are noticeably different from Fig. 11(a) which is considered to be 「true value」 results, whereas the water surface elevation show negligible differences.
It is concluded that the linear long wave theory, using perfect reflection and a 0.2 km grid, can predict with negligible errors the most important property of the tsunami forecasting, i. e., the maximum water surface elevation.

3.5 The Solution of the 「RAD Optimum Problem」
The best combination of equations, boundary conditions, and grid lengths are summarized as follows.
The following linear long wave equations are used:
(1)
where \eta is the water surface elevation, h is the still water depth, M and N are discharges per unit width in the x- and y-directions, t is time, and g is the gravitational acceleration.
The equations are discretized using the staggered leap-frog scheme. The area in the present study is divided into regions of four classes as shown in Fig. 3. Region A is the deep sea where 5.4 km grids are used. In the shallow sea a finer grid is used, i. e., 1.8 km grids in the region B (4 sub-regions), 0.6 km grids in the region C (5 sub-regions), and 0.2 km grids in the region D (22 sub-regions).
The shoreline boundary condition assumes perfect reflection, i. e., vertical sea walls are assumed to completely stop inundation. No structures such as breakwaters are taken into the simulation.

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Fig. 4 Comparison of calculated wave profiles in seas deeper than 500 m.
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Fig. 5 Comparison of calculated wave profiles in seas shallower than 500 m.
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Fig. 6 Comparison ofcalculated wave heights.
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Table 1 Required CPU time for the one-dimensional problem.
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Fig.7 Three dimensional expressions of the Meiji Great Sanriku tsunami computed using a 2.7 km grid.
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Fig. 8 Comparison of time histories of water surface elevations in a water depth of 1,000 m.
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Table 2 Comparison of the CPU time and the maximum water surface elevation in deep seas, using a 5.4 km grid as a standard.
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Fig. 9 Water levels along Sanriku coast. (a) Coast line digitized with different grids. (b) Comparison of measurement data with computation using a 0.2 km grid. (c) Comparison of results of computatio
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Table 3 Comparison of the CPU time in shallow seas, using a 0.2 km grid as a standard.
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Fig.10 Comparison of water surface elevations in Miyako Bay.
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Fig.11 Differences due to boundary conditions and grid lengths.
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式(1)

IV. APPLICATION EXAMPLE

4.1 Test Tsunami Case
The 1968 Tokachi-oki earthquake tsunami of 1968 was selected as a test case. This tsunami was nearly completely stopped by sea walls, and records concerning data about this tsunami are abundant and accurate enough to be used for comparison.
Fault parameters of the earthquake were given by Kanamori (1971) and by Izutani and Hirasawa (1987), and are summarized in Table 4. The former used more accurate information such as the aftershock area, while the latter used their own method which was utilized in the present study.

4.2 Prediction Accuracy
The Izutani-Hirasawa method determines fault parameters immediately after strong seismic motion is recorded, but some estimation errors do occur. These errors affect the initial profile of a tsunami and their effects propagate with the computed tsunami.
Thus they may deteriorate the accuracy of the final results.
By using the Izutani-Hirasawa method to determine fault parameters, and by computing the initial profile with the Mansinha-Smylie method, the present method is applied to evaluate whether it can produce reliable information used to forecast tsunamis. Figure 12 shows the computed result of tsunami height along the central part of the Sanriku coast. Figure 12(a) shows the computation sub-regions and the maximum water surface elevation contours. Figure 12(b) shows the maximum water surface elevations along the shoreline. The bars indicate measured tsunami trace heights, and show maximum and minimum values.
If the accuracy is measured in terms of Aida」s K (geometric mean of the ratio of the measured to computed height) and \kappa (geometric variance) values, then in this case K = 1.37 and \kappa = 1.67. These values are not as good as those of K = 1.31 and \kappa = 1.37 obtained by Aida (1978), who made computations using the fault parameters of Kanamori (1971). However, because Aida used measured data at only six points, as compared with the present study」s 84 points, the present results are considered acceptable. Additionally because the K value ranges from 0.8 to 1.2 in a usual tsunami hindcasting in which the initial tsunami profile is adjusted by a trialand-error method to yield the best fit, the value K = 1.37 is practically acceptable.
The times required to determine fault parameters are shown in Table 5, obtained in the Observation Center for Earthquake Prediction, Faculty of Science, Tohoku University, with total of 754 seconds being required. However, if a super computer is used, this time can be shortened to less than one tenth this value.
The CPU time necessary for the present simulation is given in Table 6. Using a general purpose computer, e.g., NEC ACOS 1000 (9.2 MFLOPS), the computation is performed with a virtual memory system that requires input-output operations in and from external memories. If a super computer is used, e.g., NEC SX-1 (750 MFLOPS) that has excellent vector operation functions, no time is lost when performing inputoutput operations, and only 1 minute is required to reproduce 90 minutes of a real time tsunami.

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Table 4 Fault parameters for the 1968 Tokachi-oki earthquake.
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Table 5 CPU time required for determination of fault parameters.
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Table 6 CPU time reguired for tsunami simulation.
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Fig.12 Comparison between the measured data and the predicted results for the case of the 1968 Tokachi-oki earthquake tsunami.

V. EVALUATION OF FUTURE TSUNAMI WARNING SCHEME

Figure 13 shows the required time to issue a tsunami warning, using a super computer to estimate fault parameters and to simulate the tsunami.
It is assumed that a network of seismographs to gather the data is well distributed with the distance from an epicenter to the seismic station in the range of about 200 km at the nearest to about 400 km at the furthest.
The travel times of P- and S-waves to the nearest station are respectively 33 sec and 55 sec, and to the furthest 60 sec and 100 sec. If the fault length is 200 km, then the corresponding rupture time is about 100 sec, and therefore 3 to 4 minutes are required for data acquisition. Fault parameters are then calculated within 1.5 min., with the tsunami simulation being finished in another 1.5 min. Thus ideally, accurate and detailed results can be completed in just 7 minutes.
Now assuming that 10 minutes are needed for information transmission, 8 to 13 minutes are still available for coastal residents to evacuate. The above estimates use a 25 to 30 minute standard arrival time for tsunamis hitting the Sanriku coast, based on the fact that the source area for a major tsunami is located along the Japan Trench.

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Fig 13 Event, procedure, and required time for tsunami forecasting and warning using the present method.

VI. CONCLUDING REMARKS

Accuracy and speed of the tsunami numerical forecasting are examined for tsunamis in the Sanriku coast. The present method is a feasible means of quantitative tsunami forecasting if the maximum tsunami heights are the required information. In order to use this method in the practical forecasting, however, there are several problems to be examined and solved. For example, the present observation network of seismographs should be improved to be suitable for the determination of tsunami sources.

ACKNOWLEDGEMENTS

The study was partially supported by Grant-in-Aids for Scientific Research from the Ministry of Education, Science and Culture. The publication of the present paper is financially supported by the Ogawa Commemoration Fund.

REFERENCES

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(Received Oct. 4, 1989; Revised Sep. 28,1990)

Coastal Engineering in Japan, Vol. 38, No. 2, 1995 CHARACTERISTICS OF LONG WAVES TRAPPED BY CONICAL ISLAND Koji Fujima 1 Dede Yuliadi 2 Chiaki Goto 3 Kenjiro Hayashi 4 Toshiyuki Shigemura 5

ABSTRACT

When a tsunami attacks an island, heavy damage can be caused by a trapping effect. A theoretical solution was obtained for such trapping of long waves using a conical island model. The effects of both the finite radius of the island and the refraction over a sloping beach were taken into account. Characteristic distributions of water surface elevation, runup height, and their frequency responses were studied through the theoretical solution, and the conditions pertaining to strong trapping were examined. The heights recorded in Oki and Okushiri Islands can be explained satisfactorily using the theory as verified through hydraulic experiments.
Keywords: tsunami trapping, tsunami refraction, Hokkaido Nansei-Oki earthquake

1 D. Eng., Associate Professor, Dept. of Civil Eng., National Defense Academy, 1-10-20 Hashirimizu, Yokosuka 239, Japan.
2 M. Eng., Indonesian Naval Hydro-Oceanogr. Service.
3 D. Eng., Professor, Dept. of Civil Eng., Tokai Univ.
4 Ph. D., Associate Professor, Dept. of Civil Eng., National Defense Academy.
5 D. Eng., Professor, ditto.

I. INTRODUCTION

The Hokkaido Nansei-Oki earthquake occurred on July, 1993. The field survey of traces of tsunami caused by the earthquake revealed high and low tsunami runup heights alternately observed along the coastline of Okushiri Island. It proved through observation that the tsunami waves were somehow trapped by Okushiri Island (Shuto, 1993). Similar distinct distributions of tsunami runup heights were observed around Oki Island after the Japan Sea Earthquake tsunami hit the island in May, 1983. Sakai et al. (1984) also suggested the possibility of tsunami trapping by the island on that occasion.
Trapping of long waves, such as tsunamis, by an island has been the subject of study for a long time. Figure 1 shows the various island models ever used to examine trapping of long waves either through theoretical or numerical analysis. In the figure, h is the water depth and r is the distance from the center of the island. Of these models, only (e) proved useful in the quantitative examination of the distribution of tsunami runup height. Since none of island models (a) through (c) have a sloping beach, the effect of refraction could not be investigated. Model (d) has a sloping beach, but the radius of the island is too small. Model (f) represents a case with a vertical wall standing along the shoreline of the island.
In Model (e), however, the analytical procedure required becomes complex. Lautenbacher (1970) obtained the wave height distribution around an island by numerical analysis using the Green function. Although this method is applicable to the various problems related to trapped waves, it is difficult to understand the characteristics of the wave trapping from a limited computations by Lautenbacher. Kiyokawa et al.
(1982) obtained an analytical solution by using the eigen-function expansion method.
The solution is surely a higher order solution including the effect of dispersion. The procedure of calculation, however, is rather complicated. To understand the fundamental mechanism of wave trapping, it is desirable to obtain a solution through a simpler procedure.
In the present study, the linear long wave theory is applied to Model (e) to obtain a theoretical solution for the first approximation, where the effects of complicated local topography, nonlinearity and dispersion are ignored. The mechanism of wave trapping is then discussed on the basis of the linear solution. Although the boundary condition at the wave tip is not completely satisfied in this theory adopting the Eulerian coordinates, the linear solution agrees with that in the Lagrangian framework for the first approximation.

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Fig. 1 Various models of islands.

II. DERIVATION OF THEORETICAL SOLUTION

2.1 Governing Equations
On the slope of a conical island, the water depth h is given by h = m(r - r_0), where m is the constant slope, r_0 is the radius of coastline, and r is the radial distance from the axis of the conical island. In the region of r > r_1 = r_0 + r_2, the bottom is considered to be flat with the water depth h_1(=mr_2), where r_1 is the radius of the island base and r_2 is the horizontal distance between from the coastline to the toe of the island. The geometry of the model is shown in Fig. 2. Incident waves are assumed to be sinusoidal to produce periodic phenomena.
Fundamental equations for the linear long wave are written as follows:
(1)
(2)
(3)
where (x, y) is the spatial coordinates with the x-axis taken in the direction of the incident waves and with the origin at the center of the island, (u, v) is the velocity vector, and \eta is the sea surface elevation above its mean level. By eliminating u and v from the continuity equation, the following equation is obtained:
(4)
Since the phenomenon is periodic, \eta can be written as
(5)
where \sigma (= 2\pi/T, T= the period) is the angular frequency of the sinusoidal waves.
Substitution of the above equation into Eq. (4) leads to the following equation:
(6)
Since the water depth h is a function of r only, the above equation can be converted as follows in terms of the polar coordinates:
(7)
\zeta, being a periodic function of \theta with the period of 2\pi, is written in the form of
(8)
Therefore, the governing equation for the n-th component R_n is
(9)

2.2 Solution for Waves over the Horizontal Bottom
To obtain a solution for waves over the horizontal bottom (r>r_1 =r_0+r_2), we substitute h_1 into h in Eq. (9) as
(10)
The general solution of the above equation is given by the combination of the following solutions:
(11)
where H_n^{(1)} and H_n^{(2)} are the Hankel functions of the n-th order, and k_1 is the wave number expressed as
(12)
Note that the solution for scattered waves is given by H_n^{(1)} because of the radiation condition. Tanaka (1956) and Longuet-Higgins (1967) derived similar solutions.

2.3 Solution for Waves on the Slope of Conical Island
(1) Governing Equation and Fundamental Solutions
The water depth on the slope of the island (r < r_1=r_0+r_2) is given by
(13)
By substituting the above expression into Eq. (9), we obtain
(14)
The above equation has two regular singular points (r=0,r_0) and one irregular singular point (r=∞), and it is difficult to express its solution with elementary functions. A technique of combining series solutions will be employed here.
The following parameters are introduced:
(15)
and the coordinate is transformed as
(16)
Now the governing equation is
(17)
Parameter \beta is related to the ratio of the island dimension to the wave length near the coastline, as will be discussed in the next section. Suppose that the tsunami period is 5 to 20 minutes, the slope is 1/10 to 1/100, and the radius of the island」s coastline is 1 to 10 km. In the case the magnitude of \beta becomes about 0.3 to 13.
For two extreme cases of \beta → ∞ and \beta → 0, the above equation can easily be solved. First, in the case of \beta → ∞, the fundamental solutions for Eq. (17) are given by the Bessel and Neumann functions of the zero-th order. When the radius of the island is very large, the solutions therefore agree with those for one-dimensional wave propagation on a slope.
In the case of \beta → 0 (a very small island model as in Wong」s model), Eq. (17) is approximated by
(18)
so that the fundamental solutions are
(19)
where J_{\sqrt{1+4n^2}} and N_{\sqrt{1+4n^2}} are the Bessel and Neumann functions of the \{1+4n^2}th order. This solution may be used as an approximate solution of Eq. (17) for large \xi, because the above approximation would be accurate enough for \xi≫\beta.

(2) Series Solution
The procedures for solving Eq. (17) are as follows. First, a series solution around the origin \xi = 0 is obtained. Since the indicial equation has a unique solution of zero, one of the solutions is expanded to an ordinary power series which is finite at \xi = 0. The other solution, which is independent of the former solution and contains log \xi, diverges to ∞ at \xi = 0. Since the water level at the coastline \xi = 0 must be finite, only the former solution has a physical significance. Equation (17) contains two parameters, n and \beta, and the solution is therefore written as a function of F_{n,\beta}(\xi).
Series expression of the function around \xi = 0 is given as (20) which converges when \xi < \beta. After expanding the second and third terms of Eq. (17) into a Taylor series, coefficients of the power series are compared to determine a_k, a_0 is left undetermined in a fundamental solution until it is given a value from the boundary condition at the final stage, as will be stated later. Coefficients a_k are then
(21)
where
(22)
(23)
Similarly, a series solution around the regular point \xi_i is given as
(24)
which converges when |\xi - \xi_i| < \xi_i. Of coefficients d_k, d_0 and d_1 remain arbitrary and
(25)
where
(26)
(27)
(28)
Next, the whole domain [0,∞] of the variable \xi is divided into (M + 1) subdomains of [0, \xi_1],[\xi_1,\xi_2],・・・,[\xi_i,\xi_{i+1}],・・・,[\xi_{M-1},\xi_M]and [\xi_M,∞]. The last dividing point \xi_M should be far from the origin where Eq. (19) is accurate enough. Furthermore, dividing points should be arranged so as to satisfy the following relations:
(29)
In every region, from [0, ~1] through [~M_1, em], the initial point of the region is takenas the center of series solution. Thus this series solution always converges. Now the solution for region [0, ~1] is the series solution around ~ = 0. A temporaryvalue of unity is assigned to a0, the temporal solution for the region [0, C1] being F( 1. Next, a series solution around a regular point ~1 is considered. The temporalsolution for the region [1, C2] is F( Q, in which the first two coefficients d0 and d1 aregiven as
(30) where ’ denotes the differentiation with respect to C. Through this procedure, Fn,pand F," A are combined so as to satisfy the continuity at ~1. Similarly, F~, F~, ...are obtained as series solutions for succeeding regions. For the last region, the solution of Eq. (19) is written as follows:
(31)
where the constants p and q are determine from the following matching conditions: (32)
Finally, every solution F() F( M+1) is multiplied by 2/ \/p2 + q2. The finalsolution of Fn, ,o is
(33)
From this procedure, Fn,Q (C) will be in the same order of magnitude for largeregardless of n and ,3. The number of terms of the power series solution depends on how ~2 is determined.Usually, increasing the number of divisions is more convenient than increasing thedegrees of the power series function. In this study, the following criteria are providedto set the divisions:・~1 = 0.05,03, ・, CM = 10(3 (M = 200) for 2 < /3 < 20 e 6 = 0.1,3, ・・, ~Nr = 20/3 (M = 200) for 0.5 <,3 < 2
・\xi_1=0.2\beta,…,\xi_M=40\beta (M=200) for 0.2 ≦\beta≦0.5
A polynomial of 10 degrees is used to get an accurate computation of each series within the range of 0.2<\beta<20 and 0≦n≦[\beta]+4, where [\beta] is the largest integer not exceeding \beta.
F_{n,\beta}(\xi) can be numerically estimated by employing the Runge-Kutta-Gill method, in which the series solution around \xi=0 may be used as their initial values. The numerical solution thus obtained well agrees with the theoretical solution described above. The present theoretical solution, however, easily provides the value of F_{n,\beta} at an arbitrary point, allowing various examinations of wave trapping characteristics.

(3) Characteristics of the Function F_{n,\beta}(\xi)
For example, the values of F_{n,\beta} calculated for \beta=2 and \beta=10 are shown in Fig.
3. It can be clearly seen from these figures that F_{n,\beta} behaves similarly to J_0, taking the maximum value at the origin \xi=0 when n is small. F_{n,\beta} is similar to J_{1,2,…} whose values can be regarded as zero at the origin \xi=0 for large n. n =\beta seems to be a critical condition for separating the characteristics of the function F_{n,\beta} into two types mentioned above. When \beta=2 and n≦1, the behavior F_{n,\beta} is quite similar to J_0. F_{n,\beta}, however, becomes close to J_{1,2,…} if n≧3. Similarly, when \beta=10, F_{n,\beta} is J_0-like for n≦9, but is J_{1,2,…}-like for n≧12.
Therefore, motion with mode n>\beta does not appear around the coastline of the island although motion with n≦\beta may appear. However the form of solution for n 〜\beta (for example, \beta=2, n=2 and \beta=10, n=10,11) becomes complicated.
This may indicate that the solution of mode n 〜\beta possibly contributes largely to the water level oscillation around the coastal area.
In Longuet-Higgins」 solution for Model (b) and Wong」s solution for Model (d) in Fig. 1, R_n becomes zero at r=0 except for n=0. Wavy distribution of wave height at the coastline could not be found in these solutions, whereas the present solution provides it, having a non-zero value at \xi=0 for the higher mode.
Furthermore, when F_{n,\beta} is J_0-like, i.e, n≦\beta, n does not change the value of F_{n,\beta} for small \xi (about \xi<0.5\beta) as shown in Fig. 3. These characteristics will be rediscussed in the next section.

2.4 Matching of the Solution
On the basis of the above discussions, the solution for a uniform slope of a conical island is expressed as
(34)
where A_n are unknown complex coefficients. Differentiation of \eta with respect to r yields
(35)
where 」 denotes the differentiation with respect to \xi.
On the other hand, the solution for scattered waves on a flat bed is given by the Hankel function of the first kind, that is,
(36)
where B_n are unknown complex coefficients. For a unit amplitude of an incident wave,
(37)
Finally, the solution for the flat bed is written as
(38)
Differentiation of the above equation with respect to r leads to
(39)
In order to keep the continuity of water surface elevation \eta and discharge rate proportional to ∂\eta/∂r at the boundary r=r_1, the unknown coefficients A_n and B_n have to be determined from the following set of equations:
(40)
which yields
(41)
(42)
Substituting the above expression of A_n into Eq. (34), we obtain the water surface elevation on a slope of conical island. Since A_n=A_{-n}, the solution is
(43)
where,
(44)
Similarly, the solution for scattered waves on the flat bed is written as follows:
(45)
where P_n,Q_n and \epsilon_n are the function of r written as
(46)
(47)
(48)

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式(1〜48)
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Fig. 2 Geometry of the model island.
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Fig. 3 Graph of the function F_{n,\beta}.

III. CHARACTERISTICS OF WAVE TRAPPING PHENOMENA AROUND AN ISLAND

3.1 Division of Region to Study the Wave Trapping Condition
Provided that the water depth h is a function of r only, Longuet-Higgins (1967) found that trapping would occur under the condition of
(49)
If this condition is satisfied, an incident wave ray with a direction parallel to the \theta- direction would be refracted inward. If the term on the left side in the above equation is equal to zero, the waves trapped on the circle move along its circumference.
When the island is a submerged cone whose top is exactly at the water surface, the water depth along the slope is expressed by h = mr. In this case, the criterion for the wave being trapped cannot be satisfied throughout the region. In the present model, in which the island has a finite radius, the water depth is expressed by h=m(r-r_0).
Then,
(50)
which indicates that trapping occurs around the coastline.
A wave ray turning inside a circle with radius r=2r_0 is refracted and would reach the coastline, while a wave ray turning in the tangential direction to the circle with radius r=2r_0 would be trapped in the circumference of the circle. If a wave ray did not arrive at the circle with radius r=2r_0, then the wave ray would propagate back to the open sea. This situation is shown in Fig. 4. The refracted and scattered waves overlap each other in the region of r>2r_0, but the waves are trapped and form a field of standing waves in the region of r<2r_0.

3.2 Time Course Variation of Water Level Distribution
Figure 5 shows examples of the spatial distribution of water level for cases in which waves with different periods are incident to an island with the same topography. In these examples, the solid and dotted lines show the contours of the positive and negative water level, respectively. The amplitude of the incident waves is assumed to be unity, so that the figures denote the relative local water level deviation. Figure 6 shows the corresponding time variations of water level distribution along the coastline at intervals of T/10.
Figures 5(a) and 6(a) show the case of rather long wave period with slight ampli- fication due to trapping. It can be seen that the wave propagates along the coastline and the larger variation of water level appears on the fore side of the island (\theta=\pi) than on the lee side (\theta=0).
Figures 5(b) and 6(b) are for the case in which the wave trapped around the island is significantly amplified. These figures indicate that the regions of distinctly high and low wave heights appear at several locations, and that the wave does not propagate along the coastline but forms a field of standing waves. These facts may imply that the island has a resonant period for significant amplification of the standing wave height.
Figures 5(c) and 6(c) show the case of the short incident wave period. The rate of wave amplification is smaller than in the case of T=11min and many fringe patterns caused by scattered waves are observed.

3.3 Wave Behavior near Coastline
Let us first discuss the characteristics of the wave crestline near the island. The location of wave crest \theta_c, can be determined by solving the following equation for given \xi and t:
(51)
Around the coastline, only the modes of n≦\beta are significant in most cases, and F_{n,\beta} is not significantly influenced by the value of n if \xi<0.5\beta. Therefore, the above equation is practically equivalent to the following equation:
(52)
so that \theta_c does not depend on \xi, the crestline being orthogonal to the coastline in the region of \xi<0.5\beta.
Next, let us consider the number of regions where the wave height is amplified.
The length of the trapped waves, L, on the circumference with radius r=2r_0 can be rexpressed as
(53)
The number of waves trapped on the circumference is
(54)
Although the number of waves on the circumference may not be exactly \beta because of scatted waves also found on the circumference, it may still be characterized by \beta.
Since the wave crest is orthogonal to the coastline, the number of location, N, where the wave is amplified is also considered to be characterized by \beta.
The relationship between N and \beta is shown in Fig. 7, where N was counted from the wave height distributions obtained for various values of m, r_0, r_2 and T. The figure indicates quite a high correlation, N mostly falling within an area bounded by the lines corresponding to
(55)

3.4 Frequency Response of the Maximum Runup Height
As mentioned above, the wave height is considerably amplified if the incident wave period is close to the resonant period of the island. In order to investigate the frequency response of the maximum runup height, the maximum water level at the coastline is estimated for various incident wave periods from 2 to 30 minutes. The amplitude of incident wave is assumed to be unity. The maximum value of \eta at r=r_0 (0≦t≦T) is denoted by R_H which is a function of \theta. Since the present theory adopts Eulerian coordinates, the boundary condition at the wave tip is not completely satisfied. As mentioned before, however, the linear solution agrees with that in the Lagrangian framework for the first approximation. The maximum water level at the coastline in one cycle, R_H, may be regarded here as the runup height.
The maximum value of R_H for 0≦6≦2\pi is denoted by R_{Hmax} which is regarded as the maximum runup height along the coastline.
Figure 8 shows R_{Hmax} estimated, where \beta is proportional to 1/T. It is impossible to discuss this phenomena by using parameter \beta only, because the resonance condition also depends on r_2/r_0. It is, however, clearly seen in this figure that two frequency bands including several resonant peaks appear, i. e., \beta=3 to 6 and 8 to 12. The resonant frequencies in these two bands are close to each other. The figure also indicates that the values of \beta corresponding to the resonant peaks are smaller for larger r_2/r_0.

3.5 Comparison with the Runup Height in One-dimensional Propagation
In this section, the condition under which remarkable trapping effect appears on the runup height is examined through comparing the maximum runup height along the coastline of a conical island with that in the case of one-dimensional wave propagation.
The wave runup height on the uniformly sloping beach, R_{H1-D} is estimated by using the following equation (Shuto, 1972):
(56)
Figure 9 shows the contours of R_{Hmax}/R_{H1-D}=1 and 2 for various combinations of r_2/r_0 and 1/\beta, where r_2/r_0 is the parameter depending on the bottom topography only and 1/\beta is proportional to T. Since several resonant frequencies appear in the variation of R_{Hmax}, the contours of R_{Hmax}/R_{Hl-D} show quite complicated patterns.
The envelope of the tangled plots is therefore shown for resonant frequency bands including several peak frequencies. It can be seen from this figure that the wave height along the coastline may not be significantly amplified due to the trapping effect if the incident wave period is long (i. e., 1/\beta is large ) and r_2/r_0 is small. On the contrary, in the upper region surrounded by the complicated line connecting the black circles in Fig. 9, the wave height is possibly amplified twice as compared with that in the case of one-dimensional propagation. It is concluded that, if the incident wave period is so long that the combination of r_2/r_0 and 1/\beta falls in the region surrounded by the white circles, the amplification due to trapping is not significant. However, if the incident wave period is short enough for the combination to fall in the black circle region, the amplification mechanism works quite significantly.

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式(49〜56)
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Fig. 4 Wave ray distribution around a conical island.
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Fig.5 Spatial distribution of water level (r_0=7km,r_2=15km, m=1/50, h_1=300m).
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Fig. 6 Distribution of water level along the coastline (r_0=7km, r_2=15km, m=1/50, h_1=300 m).
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Fig. 7 Number of regions where wave is amplified.
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Fig. 8 Frequency response to the maximum runup height.
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Fig. 9 Comparison of the maximum runup height of a trapped wave with that on a uniform slope.

IV. COMPARISONS WITH TSUNAMI TRACE HEIGHTS

4.1 Japan Sea Earthquake Tsunami in Oki Island
The present theory was applied to hindcast the distribution of runup height of Japan Sea Earthquake tsunami in 1983 along the coastline of Oki Island, and the values obtained were compared with the results of survey (Sakai et al., 1984).
The shape of Oki Island is nearly circular with a radius r_0 of roughly 9 km (see Fig. 10). Although the shore slope m is not uniform around the island, it was assumed to be 1/60 after the straight line approximation. r_2 was estimated at 9 km and h_1 at 150 m by referring to nautical charts. It is known from the tidal record that the period of the tsunami was roughly 6 to 7 minutes. The value of 6 minutes was chosen here as the wave period, and \beta then became about 8.2. It was further assumed that the incident wave came directly to Nakamura after the discussion of Sakai et al. (1984).
The incident wave height H_0 was set at 0.6 m so that the estimated height would agree with the measured height in average along the coasts of Oki island.
Distribution of the maximum water level RH along the coastline is shown in Fig. 10, in which the white circles represent the surveyed runup heights. The figure clearly indicates that the present theory well explain the tendency in the runup height distribution. The indication is that the run-Lip heights of the Japan Sea Earthquake tsunami along the coasts of Oki Island can be explained by the trapping effect of the island. The accuracy of the present theory, based on the long wave approximation, may decrease as \beta becomes larger. Despite this, it is concluded that the theory is applicable as long as the value of \beta is less than roughly 8.
The above case of 1/\beta=0.12 and r_2/r_0=1 corresponds to the region between the two resonant frequency bands shown in Fig. 9, and the runup height after wave amplification is about twice of the height of one-dimensional runup.

4.2 Hokkaido Nansei-Oki Earthquake Tsunami in Okushiri Island
Next, the distribution of runup heights of the Hokkaido Nansei-Oki Earthquake tsunami (Shuto, 1993) observed along the coast of Okushiri Island are compared with the hindcasted heights. The topography around the island is very complicated, and it is difficult to simply model the ambient bottom topography. However, the values of m=0.075, r_0=8km, r_2=20km, h_1=1500m and T=8min were used for
application of the theory. The value of \beta is 2.7 in this case. The direction of tsunami incidence is not clear, but the traces of tsunami indicated that the runup height exceeded 10 m in an area between Kamuiwaki and Cape Aonae. It was therefore assumed that the tsunami propagated directly toward the center of this area. The incident wave height was set at 2.6 m to produce a reasonable agreement between estimated and measured runup heights along the coast.
Figure 11 shows the results of the runup height distribution along the coastline of Okushiri Island. In spite of the complicated topography, the present theory quite satisfactorily reproduces the runup height distribution except for the area from Monai to Hatsumatsumae. The discrepancy might be due to the simplification of incident wave and/or topographic conditions.
It is seen from Fig. 9 that the conditions of 1/\beta=0.37 and r_2/r_0=2.5 lead to the similar rate of wave amplification to that in the previous section.

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Fig.10 Comparison of surveyed and hindcasted runup heights along the coastline of Oki (Togo) Island (m=1/60, r_0=9 km, r_2=20km, h_1=150m, T=360s, H_0=0.6m).
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Fig.11 Comparison of surveyed and hindcasted runup heights along the coastline of Okushiri Island (m=0.075, r_0=8km, r_2=20km, h_1=1500 m, T=-480s, H_0=2.6m)

V. HYDRAULIC EXPERIMENTS

5.1 Experimental Setup and Conditions
To examine the validity of the present theory, hydraulic experiments were conducted using a wave tank, 11 m long, 7 m wide and 1.3 m deep. A concrete-made conical island model was placed at the center of the wave tank as shown in Fig. 12.
The island model has the height of 0.4 m and radius of 1.65 m, the slope being 0.246.
On the white-painted surface of the model, 16 radial lines were drawn at angular intervals of 22.5 degrees. Every line was marked with a 1 cm scale to facilitate the measurement of wave runup height.
The position of wave tip on the slope of the island model was visually observed to obtain data on runup height R_u and rundown height R_d. The significant height and period of incident waves were evaluated by analyzing the wave records at an offshore point. The distribution of wave height in the r-direction was also measured with wave gauges.
The experimental conditions are summarized in Table 1. The ratio of wave height to water depth ranges from 0.017 to 0.029. These values are larger than in the actual tsunami (H_0/h_1 used in section 4.1 and 4.2 were 0.004 and 0.0017 respectively).

5.2 Results of Experiment
Figure 13 shows comparisons of the measured and calculated runup/rundown heights along the coastline. In these figures, the white circles represent the measured values and the solid lines show the calculated water level distribution along the coastline at intervals of T/10. Envelopes of these curves give theoretical distributions of the maximum runup and rundown. Except for a few points in Case 2, measured runup/rundown heights agree fairly well with those calculated from the present theory.
Distributions of wave heights H in the r-direction were measured along the lines of \theta=0, \theta=\pi/2 and \theta=\pi. Figure 14 shows comparisons of the measured and calculated heights, which are in good agreement in general. It is thereby concluded that the present theory can predict the behavior of waves around the island as well as the runup/rundown heights. The partial discrepancy between the measurement and calculation may be ascribed to the effect of reflected waves from the surrounding vertical walls of the wave tank.

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Fig. 12 Experimental setup.
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Table 1 Experimental conditions.
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Fig. 13 Comparison of the measured and calculated runup/rundown heights (o : measured in experiments; - : calculated water level distributions along the coastline drawn at time intervals of T/10; enve
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Fig. 14 Comparison of the measured and calculated wave heights in the r-direction (o : measured in experiments; - : calculated from the theory). (a) Case 1 (b) Case 2 (c) Case 3

VI. CONCLUSIONS

A new theory on the trapping of a long wave by a conical island was derived, where the effects of the slope and finite dimension of the island was taken into account. The theory was successfully applied to the investigation of the wave trapping effect. It was also applied to actual tsunamis to prove good agreements between hindcasted and observed distributions of runup height. Hydraulic experiments were conducted for further verification of the theory. Conclusions reached are summarized as follows:
1. When an incident wave period is long enough, the wave amplification due to trapping is not notable, the wave propagating along the coastline of the island.

2. When the period of the incident wave is short, the significant effect of wave trapping appears in the distribution of runup height. The regions of high and low wave heights appear at several locations along the coastline. The quantitative criteria for the trapping effect on the maximum runup height is given in Fig. 9 in terms of the parameters r_2/r_0 and \beta.

3. An island has several resonant frequencies. When the incident wave period is close to a resonant period, the wave amplification becomes considerable. Under such a condition, the wave does not propagate along the coastline but forms a field of standing waves.

4. Near the coastline of the island, the wave crest becomes orthogonal to the coastline, and the number of locations of wave amplification is in the range of (1.5 to 1.8)\beta.

5. The present theory well explained the runup heights of tsunamis along the coastlines of Oki and Okushiri Islands.

6. Hydraulic experiments proved that the present theory can reasonably reproduce the behavior of waves around an island.

REFERENCES

Jonsson, I. G., O. Skovgaard and O. Brink-Kjaer (1976): Diffraction and refraction calculations from waves incident on an island, Jour. Marine Res., Vol. 34, No. 3, pp. 469-496.
Kiyokawa, T., H. Kobayashi and M. Hino (1982): Scattering of water waves due to vertical axisymmetric bodies and induced forces, Proc. of JSCE, No. 321, pp. 103-112. (in Japanese)
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Sakai, T. and H. Ishizuki (1984): Behavior of tsunami around an island (Survey of tsunami caused by Japan sea earthquake), Proc. of 31st Japan. Conf. on Coastal Eng., pp. 242-246. (in Japanese)
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Wong, K. K., A. T. Ippen and D. R. F. Harleman (1963): Interaction of tsunamis with oceanic islands and submarine topographies, M.I.T. Hydr. Lab., Tech. Rep. No. 62, 86p.
(Received Oct. 2, 1995)

Coastal Engineering Journal, Vol. 44, No. 3 (2002) 217-245 (c)World Scientific Publishing Company and Japan Society of Civil Engineers THEORETICAL EXAMINATIONS ON LONG-WAVE DAMPING BY SEA BOTTOM FRICTION KOJI FUJIMA Department of Civil and Environmental Engineering, National Defense Academy, 1-10-20 Hashirimizu, Yokosuka, 239-8686 Japan fujima@cc.nda.ac.jp KENJI MASAMURA Department of Civil and Environmental Engineering, National Defense Academy, Presently, Central Air Civil Engineering Group, Japan Air Self-Defense Force, 2-3 Inariyama, Sayama, 350-1324 Japan CHIAKI GOTO Department of Civil Engineering, Tokai University, 1117 Kitakaname, Hiratsuka, 259-1292 Japan Received 25 January 2002 Revised 20 May 2002

ABSTRACT

A periodical solution of linear long wave was obtained when considering the laminar or turbulent shear stress in the entire flow depth. The solution provides the variation of wave height due to bottom topography and bottom friction. The decay modulus of wave height and the phase differences between velocity, shear stress and water elevation obtained by the laminar flow solution are compared with those predicted by the laminar boundary layer theory. It is shown that the boundary layer approximation cannot be applied to the case where the water depth is small and the wave period is long. Using the turbulent flow solution, the variation of reflection coefficient due to bottom friction is examined. The reflection coefficient depends not only on the Iribarren number but also on the number of waves on a sloping beach and the bottom roughness. An empirical roughness coefficient n is obtained by equating the bottom shear stress evaluated by Manning」s friction formula to that evaluated by the present theory. The proper value of n can be determined by considering bottom roughness only.

Keywords: Long wave; bottom friction; wave boundary layer; Manning」s law; reflection coefficient.

1. Introduction

Sea bottom friction plays an important role on wave transformation and sediment transport in shallow water region. Thus, many investigations have been conducted to understand the characteristics of bottom friction associated with wave motions.
For example, Eagleson (1962), Iwagaki and Tsuchiya (1966), Kajiura (1968) and Noda (1969) examined bottom friction based on the wave boundary layer on a flat bottom. In their works, the boundary-layer thickness was assumed to be thin in comparison to the water depth, and the boundary-layer equation was solved for the condition that the velocity approached the one evaluated by the potential wave theory away from the bottom. (In this paper, this analytical method is called 「boundary-layer approximation」 technique.) The decay modulus was obtained by equating the energy dissipation rate in wave boundary layer to the damping rate of wave energy. Namely, those analyses were based on the idea that the energy loss in a short distance is small although it cannot be ignored when the wave propagates over a long distance. This assumption is valid for the case where wave period is short and water depth is large. However, it is not appropriate for the case when wave period is long and water depth is shallow, since the wave boundary layer would saturate the entire flow depth.
For an oscillatory current on a flat bottom with a constant velocity amplitude, Kajiura (1964) considered the fully-developed boundary layer whose thickness was equal to the water depth, and a solution was derived with the condition that the shear stress vanished at the still water surface. Recently, Tanaka et al. (1999) obtained a solution for the similar condition. Tanaka et al. determined the friction coefficient, which was approximated by a function of wave period, but not water depth, when the depth was large and the wave period was short. The resulting coefficient coincides with that of the boundary layer approximation quantitatively. On the other hand, for the case where water depth was small and wave period was long, the friction coefficient of Tanaka et al. was determined by the water depth but not by the wave period, which was similar to the characteristics of steady flow. Thus, the solution of Tanaka et al. (1999) appears to be useful because it covers a wide range of wave conditions, i.e. from the ordinary thin wave boundary layer to the quasisteady boundary layer. However, in the case that the entire flow depth is saturated with the boundary layer, it is not reasonable to evaluate the decay modulus with the same method as the thin boundary-layer approximation. It is also unreasonable to examine the frictional damping for shallow-water wave with the model for an oscillatory flow with a constant wave amplitude.
Many investigations have already been conducted, although most of them were restricted to the case of flat bottom. There were few studies on bottom friction for the case of non-uniform wave height. In addition, the bottom friction is important particularly for long-period waves such as tsunamis or storm surges, although the relation between bottom friction and long-wave damping is not sufficiently understood. Thus, in this paper, a theoretical solution is obtained for the fully-developed boundary layer, including the variations of wave height due to water depth and bottom friction. Then, we examine the wave damping effects by bottom friction and determine the friction coefficient in a non-uniform wave field.
The linearized long-wave theory including shear stress is used for the analyses.
The solution is derived for the conditions that the velocity amplitude varies with wave propagation and that the shear stress vanishes at the still free surface. It will be shown that the 「self-similar」 solution exists for an arbitrary bottom topography, and the local friction formula becomes equivalent to that of Tanaka et al. (1999).
The vertical profiles of velocity and shear stress, the bottom friction coefficient, the phase difference between the mean velocity and the bottom shear stress, the wave decay modulus are evaluated directly from the solution. In addition, the variation of reflection coefficient that is caused by the sea bottom friction is examined. An empirical roughness coefficient n is obtained by equating the bottom shear stress evaluated by Manning」s friction formula to that evaluated by the present theory.
Because the linearized water-wave theory is used in this study, the analytical results become inaccurate when the nonlinearity becomes important. However, the present results would provide a criterion for the friction coefficient based on the physical considerations. Note that, at present, the value of friction coefficient is based totally on the empirical judgment.

2. Theoretical Solution

2.1. Linear long-wave theory with shear stress

Two-dimensional motion of incompressible fluid in a vertical plane is considered. If eddy viscosity is used to model turbulent shear stress, the equation of continuity and the conservation of momentum are written as
(1)
(2)
(3)
where the x-axis is taken on the still water level, while the z-axis points vertically upwards; u denotes the horizontal velocity and w the vertical velocity, p the pressure, t the time, g the gravitational acceleration, \nu_e the effective viscosity (summation of kinematic viscosity and eddy viscosity). Non-dimensional forms of the equations are convenient to discuss the order of magnitude of each term. Then, the following scaling variables are introduced:
(4)
The notation 」 denotes the non-dimensional form of the variable; U,N,H,L and T are the scaling parameters of velocity, effective viscosity, water depth, wavelength and wave period, respectively. Non-dimensional equations are obtained by substituting Eq. (4) into the governing equations. Taking U=CA/H, L=CT, C=\sqrt{gH}, where A and C are the representative wave amplitude and celerity,respectively, the non-dimensional equations for Eqs. (l)-(3) are:
(5)
(6)
(7)
where A/H is the ratio of wave amplitude to water depth, H/L is the relative depth, and CL/N is the wave Reynolds number. For the case of long wave and large wave Reynolds number, i.e. H^2/L^2 →0 and N/(CL) → 0, Eq.(7) shows that the pressure distribution is hydrostatic. Further, using the dynamic boundary condition at the free surface, p」= A/H \eta」-z」 is obtained, where \eta(x,t) is the water surface elevation from the still water level and non-dimensionalized as \eta=A\eta」.Thus, Eq. (6) is approximated as
(8)
Let us consider the situation that A/H is small and N/{CL}(L/H)^2 (=NT/{H^2}) is O(1), in other words, CL/N(H/L)^2 A/H(={AH}/{NT}) is small. Then, the above equation reduces to
(9)
This is the equation of motion of linearized long-wave theory with shear stress. The validity of Eq. (9.) will be discussed in Sec. 3.2.
By integrating the continuity Eq. (5) vertically and considering the kinematic condition at the free surface and the non-slip condition at the bottom, the following equation is obtained under the assumption A/H ≪O(1):
(10)
where h(x) is the local water depth and non-dimensionalized as h=Hh」.
The basic equations are expressed in dimensional form as:
(11)
(12)
where h(x) is replaced by h(x)-z_0(x); in the case of rough sea bottom, it is convenient to introduce the elevation z_0(x) where the velocity is zero.

2.2. Separation of variables

By eliminating \eta from Eqs. (11) and (12), the following equation is obtained:
(13)
The above equation should be solved with the following boundary conditions:
(14)
(15)
Equation (14) shows the shear-free condition at the free surface and Eq. (15) the non-slip condition at the bottom.
Now, for a periodic motion, u can be expressed by
(16)
where w denotes the angular frequency (=2\pi/T, T = wave period), and i =\sqrt{-1}.
Further, \nu_e is assumed to be a function of only x and z, but independent of t. By substituting the above equation into Eq. (13), the following equation is obtained:
(17)
Because the R.H.S. of Eq. (17) depends only on x, it is written as -A(x). Thus,
Eq. (17) is rewritten as the following two equations:
(18)
(19)

2.3. Solution of G

2.3.1. Laminar flow case

For the case of laminar flow, we use \nu_e =\nu(kinematic viscosity) and z_0=0. Then, Eq. (18) is reduced to
(20)
The solution of the above equation under the boundary conditions of Eqs. (14) and
(15) is
(21)
where
(22)

2.3.2. Turbulent flow case

For the case of turbulent flow, the following assumption is used:
(23)
where \kappa denotes von Karman」s constant (=0.4), u_* the friction velocity, \tau_b the bottom shear stress, and the symbol ^ denotes the maximum (absolute) value. Note that \hat{u}_* is a function of x. The linear function of z for \nu_e was also used by Kajiura (1968) and Tanaka et al. (1999).
Through Eq. (18), the governing equation of G is written as
(24)
The solution of the above equation satisfying the boundary conditions is
(25)
where J_O, J_1, N_0, N_1 are the Bessel functions of the first kind and the second kind, respectively, and Q, Q_h and Q_0 are expressed by
(26)

2.4. Equation of F_1 and friction formula

2.4.1. Laminar flow case

The function F_2 (x) defined by
(27)
is introduced. It should be noted that F_2(x)e^{-iwt} represents the vertically averaged velocity \bar{u}.
Because G(x,z) for laminar flow is given by Eq. (21), the integration of G is obtained as
(28)
Thus, Eq. (19), the governing equation for F_1, is reduced to
(29)
This equation describes the variation of representative velocity with wave
propagation.
The solution of F_2 depends on h(x), \omega and \nu; however, through Eqs. (16), (21) and (28), the velocity profile is universally expressed as
(30)
Thus, the shear stress is given by
(31)
Now if the bottom shear stress is expressed as
(32)
then the friction coefficient C is found to be
(33)
where \hat{\bar{u}} is the amplitude of the mean velocity.
2.4.2. Turbulent flow case

Because the solution of G(x, z) for the case of turbulent flow is given by Eq. (25), thus,
(34)
Similar to the laminar flow case, F_2(x) defined by Eq. (27) is introduced. Then the governing equation for F_1 is transformed to
(35)
The above equation is identical to that for the laminar flow case except replacing R_L with R_T.
The solution of F_2 for the turbulent flow case depends on h(x), z_0(x) and so on, and the velocity profile is given by
(36)
The shear stress profile is expressed as
(37)
Then, through the relationship between the bottom shear stress and the friction velocity, \hat{\tau}_b = \rho\hat{u}^2_*, the following equation is obtained:
(38)
Through a simple iterative computation of the above equation, \hat{u}_* is estimated from the given values of \omega, h, z_0 and \hat{\bar{u}}. R_T is also determined simultaneously. If the friction coefficient C is defined by Eq. (32), C is evaluated by the following equation with the use of \hat{u}_* determined by Eq. (38):
(39)
Further, using Eqs. (34) and (39), the following relation is obtained
(40)
The above equation is available to compute C in place of Eq. (39).
As demonstrated in Eqs. (30) and (36), there exists the 「self-similar」 solution of velocity profile for arbitrary bottom topography. In addition, the velocity profile and the friction formula obtained by the present theory are essentially the same as those for uniform depth given by Tanaka et al. (1999). Namely, the friction coefficient of Tanaka et al. is locally valid even where the water depth varies.

2.5. Velocity, shear stress and wave profile

2.5.1. Laminar flow solution on a flat bottom

For the case of flat bottom, R_L is constant. Then, the solution of Eq. (29) is given by the combination of e^{±iR_Lk_0x}, where k_0=\omega/\sqrt{gh}. Here, F_2=u_0e^{iR_Lk_0x} is selected to obtain a progressive wave solution. Then the mean velocity and the velocity profile are given, respectively, by
(41)
(42)
The shear stress distribution is
(43)
From Eq. (11), the following equation is obtained:
(44)
Hence, the wave profile for laminar flow on a flat bottom is evaluated as
(45)
Note that the term e^{-Im.[R_L]k_0x} shows the damping of wave amplitude and Re.[R_L] k_0
represents the wavenumber including the modification due to friction effect.

2.5.2. Laminar flow solution on a uniformly sloping bottom

In the case of uniformly sloping bottom, h=mx(m=slope), the transformations
(46)
in Eq. (29) yields
(47)
If the variation of water depth is gentle and R_L is almost constant, the solution of Eq. (47) is given by the combination of J_1(R_{LX}) and N_1(R_{LX}). If J_1(R_{LX}) is selected for F_3, the mean velocity, the velocity distribution, the shear stress distribution and the wave profile are obtained, respectively, as
(48)
(49)
(50)
(51)

2.5.3. Turbulent flow solution on a flat bottom

For turbulent flow, \hat{u}_* varies with x even for the case of flat bottom. However, if \hat{u}_* can be approximated to be constant, R_T becomes constant; then the solution of Eq. (35) is given by the combination of e^{±iR_Tk_Ox}. Taking F_2=u_0e^{±iR_Tk_Ox}, the mean velocity, the velocity distribution, the shear stress distribution and the wave profile are
(52)
(53)
(54)
(55)

2.5.4. Turbulent flow solution on a uniformly sloping bottom

Using the transformation similar to that of the laminar flow case [see Eq. (46)], and assuming that R_T is constant, J_1(R_{TX}) and N_1(R_{TX}) are obtained as the solutions of F_3. When J_1(R_{TX}) is selected as a solution, the mean velocity, the velocity distribution, the shear stress distribution and the wave profile are obtained as
(56)
(57)
(58)
(59)

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式(1〜59)

3. Fundamental Characteristics of Theoretical Solution and Validity of Assumptions

3.1. Characteristics of solution

The friction formula obtained by the present theory is essentially equivalent to that of Tanaka et al. (1999), although the modification of wavenumber and the damping of wave amplitude can be examined easily by the present theory, because the present theory can provide the spatial and temporal wave profiles directly. Figure 1 shows the modulus of wavenumber modification, Re.[R_L], and the decay modulus of wave amplitude, Im. [R_L], for laminar flow on a flat bottom. For the boundary layer thickness being infinitesimal, ah → ∞, the limit of R_L is 1; thus both the wave amplitude and the wavelength are constant. It demonstrates that the effect of friction force is small where the water depth is large. On the other hand, when the wave period becomes long and the water depth becomes small, ah → 0, R_L approaches R_L=\sqrt{3}(ah)^{-1} e^{i\pi/4}; namely, the wave amplitude is damped and the wavelength is shortened.
In the laminar boundary-layer approximation, the wave height is expressed as H=H_0 e^{-\epsilon kx}, and the nondimensional decay modulus \epsilon is evaluated as \epsilon= k\sqrt{2\nu/\omega}/(sinh 2kh + 2kh) (Eagleson, 1962). For long wave approximation, it yields \epsilon=\sqrt{2}/4(ah)^{-1}. This relation is plotted as the dotted line in Fig. 1. For ah > 100, the decay modulus of wave amplitude of the present theory approaches to that of the boundary layer approximation. However, for ah < 10, the present theory provides larger decay modulus than that of the boundary layer approximation. As ah → 0, the decay modulus of wave amplitude evaluated by the present theory exceeds three times that of the boundary layer approximation.
The bottom shear stress \tau_b, the wave profile \eta and some other variables can be expressed as
(60)
where \phi is the phase difference between the variable F and the mean velocity. \hat{F} is the maximum value of F. Figure 2 shows the phase variation of the bottom shear stress \phi_{\tau_b} and the wave profile \phi_{\eta}. When the wave period is short and the water depth is large, the wave profile is in phase with the mean velocity, and the bottom shear stress is out of phase with the mean velocity by \pi/4; such results are consistent with the boundary layer approximations. Figure 2 indicates that the boundary layer theory provides the good approximation when ah > 100. On the other hand, when ah < 10, the phase difference deviates from the boundary layer theory. As ah → 0, the phase of bottom shear stress becomes the same as the mean velocity, and the phase of the wave profile is shifted by \pi/4 from the mean velocity.
Figures 3 and 4 show the temporal variations of velocity and shear-stress profiles for the cases of ah = 100 and 10, respectively. It is evident that the boundary layer thickness is small in comparison to the water depth for the case of ah = 100.
However, for the case of ah = 10, the boundary layer reaches approximately half of the water depth.
As a result, when the boundary layer is thin, the boundary layer theory provides a good approximation; however, when the wave period becomes long and the boundary layer thickness is large, the boundary layer theory does not provide accurate results, and tends to underestimate the wave decay modulus. Thus, the boundary layer approximation is not applicable to examine the effects of bottom friction on transformation of long-period wave. The present model, on the other hand, should be applicable since the shear stress is considered up to the water surface.
The parameter of turbulent flow solution, R_T, is shown in Fig. 5 and the phase variations of the bottom shear stress and the wave profile are in Fig. 6. Even in the turbulent flow solution, as the wave period becomes short and the water depth becomes deep, R_T approaches 1, i.e. the effect of shear stress vanishes. When the wave period is large and the water depth is small, R_T in Eq. (34) approaches the following equation:
(61)
The curves in Figs. 5 and 6 are similar to those of the laminar solution. However, in the laminar flow case, waves with the period of the order of 10 minutes, such as tsunamis, are damped significantly only if the water depth is small, severalcentimeters to several-l0-centimeters. For example, assuming \nu = 10^{-6}m^2/s, T = 600 s and h = 10 cm (then ah ≒ 10), Fig. 1 demonstrates Im. [R_L] ≒ 0.04, which yields the significant wave-height damping of about 20% in one wavelength. However, assuming h = 1 m (ah ≒ 100), Im. [R_L] becomes about 0.003, then the wave height damping in one wavelength is about 2%, which is negligible; hence, the friction effect in the laminar flows is important only in a very narrow area close to shoreline. On the other hand, in the turbulent flow case, assuming T = 600 s, \hat{\bar{u}} = 1m/s, z_0 = 1 cm and h = 10 m (then z_0/h = 10^{-3} and \omega z_0/\hat{\bar{u}} = 10^{-4}), Im.[R_L] ≒ 0.03. Thus, significant damping in wave height can occur even if the water depth is severalmeters to several-l0-meters. Figure 7 shows the profiles of velocity and shear stress for the turbulent flow case. The shear stress distribution is almost straight in all phases, and the boundary layer reaches the free surface. Thus, the friction force is important in the turbulent flows.

3.2. Validity o f assumptions

It may be noteworthy to examine the validity of the assumptions made for the present theory. As stated in Sec. 2.1, the ratio of wave amplitude to water depth, A/H, the relative depth, H/L, and the reciprocal of the wave Reynolds number, N/(CL), are assumed to be small but the shear stress term in Eq. (8) is not to be negligible. Table 1 shows order-of-magnitude estimates for the parameters. For simplification, the water depth, H = 10 m, and the wave amplitude, A = 1 m, are fixed and the wave period T is varied for four cases. As discussed in Sec. 2.1, the scales U and L are evaluated as U = \sqrt{gH}A/H and L = \sqrt{gH}T, respectively.
The eddy viscosity was modeled as \nu_e = \kappa \hat{u}_*(z + h) [see Eq. (23)]. Then, the eddy viscosity at the outer edge of the boundary layer is is \kappa \hat{u}_* \delta and hence the averaged value of \nu_e in the boundary layer is \kappa \hat{u}_* \delta/2, where \delta denotes the boundary layer thickness. Here, the eddy-viscosity scale N is taken as N = \kappa \hat{u}_* \delta/2. Both \hat{u}_* and \delta are estimated by the present theory with the assumption z_0 = 1 cm. \delta is not obtained directly, but it can be judged from the velocity and shear stress distribution similar to Figs. 3, 4 and 7.
As shown in Table 1, the shear stress term, that is represented by NT /H^2, is not important for the waves with the period of 10 s such as wind waves. However, for the waves with the period longer than 10 minutes, the shear stress term cannot be neglected. For tsunamis with the period of the order of 10 minutes, the shear stress term is not negligible, although the estimated orders of magnitude of A/H and NT/H^2 are comparable. Thus, actually, both nonlinear advective terms and shear stress term should be taken into account in the analyses. Nevertheless, the present linear theory is useful for understanding the effect of bottom friction on tsunami transformation. Further, at the opening of breakwater, tsunami may induce strong current, even though the wave amplitude is not large. In such cases, the present theory is valid and directly applicable to estimate the bottom friction force. For the waves with the period longer than 1 hour, such as storm surges and tidal currents, the assumptions in the present theory are realistic.

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式(60〜61)
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Fig. 1. Modulus of wavenumber modification and decay modulus of wave amplitude in laminar flow solution.
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Fig. 2. Phase differences of bottom shear stress and wave profile from mean velocity in laminar flow solution.
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Fig. 3. Distributions of velocity and shear stress for ah = 100 (laminar flow solution).
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Fig. 4. Distributions of velocity and shear stress for ah = 10 (laminar flow solution).
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Fig. 5. Modulus of wavenumber modification and decay modulus of wave amplitude in turbulent flow solution.
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Fig. 6. Phase differences of bottom shear stress and wave profile from mean velocity in turbulent flow solution.
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Fig. 7. Distributions of velocity and shear stress for \omega z_0/\hat{\bar{u}} = 10^{-4} and z_0/h,= 10^{-2} (turbulent flow solution).
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Table 1. Estimation of the parameters.

4. Examples of Theoretical Solution for the Case with Variation of Water Depth

The turbulent flow solutions for two model topographies are examined in this section.
The upper model in Fig. 8 is a step-type topography where a part of incident wave is reflected from the slope but the rest propagates onto the shallow flat bottom as a transmitted wave. The lower model in Fig. 8 is a wall-type topography where the vertical wall is set on the slope. It is easy to evaluate the theoretical solutions for these topographies without considering the friction force. Comparison with the nonfriction solutions will identify the effect of friction evaluated by the present theory.
(There are two ways to obtain the solutions without considering the friction. One is to use the analytical solutions for a flat bottom and for a slope. Those solutions are connected to keep their continuities of water elevation and discharge rate. The other is the present theoretical analysis with R_T = 1 as will be discussed later. Both methods yield the same results.)
In the present theoretical analyses, the following variables are used in Eq. (35):
(62)
Then Eq. (35) can be expressed as the following simultaneous differential equations, which are easy to compute for the accurate solution numerically by the Runge-Kutta method:
(63)
A progressive wave solution on a flat bottom is used as the boundary condition at x = 0 for step-type model. For wall-type model, the boundary condition is that the velocity is zero at the vertical wall, x = 0. In both models, the computations start at x = 0 and proceed towards offshore direction.
Through the obtained solution, the mean velocity and the wave profile are evaluated by
(64)
If the solution on the offshore flat bottom is expressed as the summation of incident and reflected waves, the velocity amplitude of incident wave, ice, and that of reflected wave, \hat{u}_r, are estimated by
(65)
Then, the incident wave amplitude, a_i, and the reflected one, a_r, are
(66)
Figure 9 shows the solution for the step-type topography. The curves in this figure are the wave profiles with time interval T/8. The value of incident wave amplitude, a_i, written in the figure is evaluated at x = x_d. (The a_i values in the following figures are also evaluated at x = x_d.) The figure indicates that the wave damping is small and the partial standing waves are formed on the offshore region, the waves are transformed by the shoaling effect on the slope, and the wave height is rapidly decreased in the shallow water region. Figures 10 and 11 show the comparisons of the loci of maximum water elevation with and without the friction force. Figure 10 shows the results for the case where the offshore water depth is large and the slope is steep, consequently the number of waves on the slope is small. In this case, the friction effect is practically negligible on the slope. Figure 11 shows the results for the case where the offshore water depth is small and the slope is gentle, then the number of waves on the slope is large. In this case, the wave height on the slope is decreased by approximately 10 percent. Thus, the slope gradient and the number of waves on the slope appear to affect on the wave damping.
Figures 12 and 13 show the comparisons of wave profiles evaluated by the present model and those without considering the friction force for the wall-type topography.
Figures 12 and 13 show the cases with h_s = 1 m and h_s = 0.3 m, respectively. In the solution without friction, the wave profiles in its rising and falling phases are the same. On the other hand, in the present solution including friction, the wave profile in the rising phase is different from that in the falling phase. Examining the second anti-node between x = 1 km and 5 km, the water surface appears to go forward just like a progressive wave. Around the first anti-node ranging x = 0-1 km, the motion at x = 0 exhibits a phase lag; then the wave profile in rising phase opens downwards and that in falling phase opens upwards. This characteristic appears more distinctly in Fig. 13, and the difference from the solution without friction is relatively small in Fig. 12.
When roughness elements are uniform sand grains, it is reasonable to consider z_0 = k/30 (k is the height of the roughness). In this case, z_0/h(= 1/{30} k/h) may be 0.01 at most, considering the general condition of roughness height. However, when the roughness element has sharp edges, z_0 increases even if k is the same. Because it is possible that k_s/k exceeds 10 (k_s is the equivalent sand-grain roughness), z_0/h(= 1/{30} k/h) can increase up to 0.1 (e.g. Adachi, 1964). In Fig. 13, z_0/h = 0.033 at x= 0, thus this example should be considered to be the case using the roughness elements with edges. In addition, the value of \hat{\eta}/h is about 1/4 at x = 0 for both cases in Figs. 12 and 13; thus the nonlinearity is not negligible near x = 0. However, the region where \hat{\eta}/h is large is limited within the narrow region near x = 0 in comparison to the wavelength. Therefore, the present linear theory is valid to examine the characteristics of the large-scale wave profile as shown here.
Introducing the linear friction term to the equation of motion as \bar{u}_t + g\eta_x = -f\bar{u} is one of the methods to model the effects of bottom friction on long-period waves. The coefficient f is usually set to be constant. However, this model provides the results where the damping in shallow water is not so different from that in deep water, which is evidently incorrect. On the other hand, the present model yields distinct tendency; the contribution of bottom friction is very small in deep water but large in shallow water. In addition, if the numerical simulation (e.g. Leap-Frog method) is applied to solve the problem of Fig. 8(a) or (b), the incident wave should be set at the offshore boundary of the computational domain and the reflected wave from the slope must be transmitted out at the boundary. The present analytical model is not required to use such special procedures at the boundary.

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式(62〜66)
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Fig. 8. Model topography. (a) step-type model and (b) wall-type model.
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Fig. 9. Example of spatial wave profile on step-type model topography.
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Fig. 10. Variation of maximum water elevation on step-type model topography (1).
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Fig. 11. Variation of maximum water elevation on step-type model topography (2).
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Fig. 12. Example of wave profile on wall-type model topography (1).
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Fig. 13. Example of wave profile on wall-type model topography (2).

5. Examinations on Reflection Coefficient

For linear long wave theory without friction, the value of reflection coefficient from the closed end is always unity. However, in the present theory, sea bottom friction effect dissipates the wave energy. Hence, the reflection coefficient is less than 1.
Let us first consider the case of a flat bottom with a vertical wall at one end.
For a laminar flow, Eqs. (41) and (45) are the exact solution for a progressive long wave. For a turbulent flow, Eqs. (52) and (55) are the approximate solution. By using these solutions and the condition \bar{u} = 0 at the wall, the reflection coefficient K_R measured at the distance l from the wall is obtained as:
(67)
where R_T should be replaced by R_L for a laminar flow. Examples of reflection coefficient are shown in Fig. 14. The decay modulus, \epsilon(= Im. [R_T] or Im. [R_L]), are also shown in the figure. When the friction coefficient \hat{C} is small, K_R ≒ 1; however, when \hat{C} is large, K_R becomes small. The value of K_R for laminar flow is larger than that of turbulent flow for a given \hat{C}. Note that \epsilon for the turbulent flow solution depends on z_0/h and \hat{C}\hat{\bar{u}}/(wh) [see Eq. (40)]; however, the effect of z_0/h in Eq. (40) is negligible because z_0/h is generally small, say, less than 0.1.
Next, the reflection coefficient with a sloping bottom, as shown in Fig. 8(b), is evaluated through the turbulent flow solution. By using z_0 ranging 0.1 mm to 3 cm, h_s from 10z_0 to 10 m, h_d from 10 m to 500 m, x_d from 1 km to 50 km, and T from 5 minutes to 25 minutes, approximately 200 cases were computed for K_R = a_r/a_i at x = x_d. In Fig. 15, the results for z_0 = 0.01 m and h_s ≦ 1 m were plotted with the Iribarren number I_r (= m/\sqrt{H/L}), which is popularly used to describe the wave condition on a sloping beach. The Iribarren number represents the ratio of the gravitational acceleration to the water particle acceleration along the slope. In Fig. 15, wave steepness (H/L) in the Iribarren number is evaluated with the values of incident wave at x = x_d. In addition, \chi_d in Fig. 15 denotes 2k_1\sqrt{h_d/m}. As shown in Eq. (59), \chi = 2k_1\sqrt{h/m} represents the number of waves between x = -h_s/M (point of the intersection of the extending line of the slope and the still water surface) and the wave condition on a sloping beach. The Iribarren number represents the ratio of the gravitational acceleration to the water particle acceleration along the slope. In Fig. 15, wave steepness (H/L) in the Iribarren number is evaluated with the values of incident wave at x = x_d. In addition, \chi_d in Fig. 15 denotes 2k_1\sqrt{h_d/m}. As shown in Eq. (59), \chi = 2k_1\sqrt{h/m} represents the number of waves between x = -h_s/M (point of the intersection of the extending line of the slope and the still water surface) and x. Namely, \chi_d is a parameter indicating the length of bottom slope for the wave motion. More precisely, the number of waves on a slope is represented by \chi_d - \chi_s, where \chi_s = 2k_1 \sqrt{h_s/m} is the number of waves between x = -h_s/m and x = 0.
Figure 15 appears to indicate that the reflection coefficient increases as I_r increases and decreases as \chi_d increases. It is well known that the reflection coefficient can be determined reasonably by only I_r when the wave energy is dissipated mainly by wave breaking (Battjes, 1974). However, in the present friction model, the length of the sloping bed is also important for K_R.
Note that when h_s is large in comparison to z_0, the effect of friction force is small as shown in Figs. 12 and 13, then the reflection coefficient K_R ≒ 1. However, as z_0 increases, the friction force increases, then the wave damping increases; consequently the reflection coefficient decreases. To take the zo dependency into account, the parameter \chi_0 = 2k_1 \sqrt{z_0/m} is introduced. After trial-and-error procedures, the reflection coefficient K_R was found to be expressed by a single parameter B as shown in Fig. 16. The curve fit to the plots in Fig. 16 yields
(68)
where
(69)
The curve in the figure approximates the variation of reflection coefficients for all 200 cases evaluated herein.

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式(68〜69)
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Fig. 14. Reflection coefficients from a vertical wall.
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Fig. 15. Reflection coefficients from a slope for z_0 = 0.01 m and h_s ≦ 1 m.
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Fig. 16. Reflection coefficients from a slope (turbulent flow solution).

6. Examinations on Friction Coefficient

In the numerical simulations of tsunamis and storm surges, friction effects are of computed using the friction coefficient such as Manning」s friction formula, and roughness coefficient is determined empirically. In this section, friction coefficie for the practical applications are evaluated based on the present theory.
For long-period waves in shallow water, it is reasonable to consider that \hat{\bar{u}} several m/s, and wave period T is 10 minutes to 10 hours. Although the value of z_0 depends on the sea bottom, it is assumed to be several-mm to several-cm.
Consequently, the parameter \hat{\bar{u}}/(wz_0) is of the order of 10^4-10^7. In addition, if water depth h is considered to be several-m to several-10m, z_0/h is 10^{-2}-10^{-4}.
Figure 17 shows \hat{C}, which is the absolute value of friction coefficient defined by Eq. (39) for turbulent flow. This figure indicates that \hat{C} is independent of \hat{\bar{u}}/(wz_0) in the range of \hat{\bar{u}}/(wz_0) > 10^4 for z_0/h = 10^{-2}-10^{-3}. However, Tanaka et al. (1999) pointed out that the friction coefficient was not necessarily independent of wave period even for long waves. In fact, for z_0/h = 10^{-4}, Fig. 17 shows that the friction coefficient \hat{C} varies with \hat{\bar{u}}/(wz_0) in the range of 10^4 < \hat{\bar{u}}/(wz_0) < 2 x 10^5. Thus, we first examine the error associated with the common practice, that is the use of quasi-steady friction formula depending on only z_0/h but ignoring the effect of \hat{\bar{u}}/(wz_0).
The vertically integrated equations of motion are generally used in the numerical simulations of tsunamis and storm surges. Integrating Eq. (12) vertically, the ratio of the magnitude of friction term to that of acceleration term is
(70)
If \hat{C} in the region where \hat{C} depends on only z_0/h is denoted by \hat{C}_s, (\hat{C} - \hat{C}_s)\hat{\bar{u}}/(wh) represents the magnitude of error in the friction term by neglecting the effect of \hat{\bar{u}}/(wz_0). Taking \beta → 0 in Eq. (39), \hat{C}_s can be expressed, after some manipulations, as
(71)
Figure 18 shows both \hat{C}\hat{\bar{u}}/(wh) and \hat{C}_s, (\hat{C} - \hat{C}_s)\hat{\bar{u}}/(wh). Because the magnitude of friction term in the equation of motion is small in the region where \hat{C} varies with \hat{\bar{u}}/(wz_0), the error caused by assuming \hat{C} = \hat{C}_s is very small, less than 4% of the acceleration term even for the case of z_0/h = 10^{-2}. For the case of z_0/h = 10^{-4}, where \hat{C} varies with \hat{\bar{u}}/(wz_0) for actual phenomenon, the error is less than 1 % of the acceleration term. Even if the instantaneous error is about 1%, its effect can be important for the case where such condition is kept for a long-distance wave propagation. Nevertheless, in general, the friction coefficient \hat{C} can be approximated by \hat{C}_s, which is determined only by z_0/h.
Figure 19 shows the variation of \hat{C}_s with z_0/h. \hatC_s is well approximated by
(72)
in the range of z_0/h = 10^{-2}-10^{-4}.
When Manning」s law is adopted for a friction formula, the bottom shear stress is expressed as \tau_b / \rho = gn^2 h^{-1/3}|\bar{u}|\bar{u}. In the present theory, that is \tau_b / \rho = C\hat{\bar{u}}\bar{u}.
By using the expression \bar{u} = \hat{\bar{u}}e^{-iwt}, the integration of \tau_b in a half-period for each expression leads to
(73)
By equating the averaged shear stress evaluated by Manning」s law to the one by the present theory, the roughness coefficient is found to be
(74)
By substituting the approximate equation for the shallow water region, Eq. (72), into \hat{C} in Eq. (74), n can be estimated as
(75)
In addition, if the equivalent sand-grain roughness k_s (z_0 = k_s/30) is used in Eq. (75), n can be written as
(76)
For example, Eq. (76) provides the result n = 0.015 for k_s = 1 mm and n = 0.032 for k_s = 10 cm.
Thus, the wave period and the water depth do not practically affect the determination of the roughness coefficient n, and n can be determined by z_0 or k_s, both are the parameters relating to the height of roughness element. For a stationary flo in open channel or pipe, it is well known that the empirical roughness coefficient is determined by the roughness condition; that is the great advantage of Manninr formula. This study suggests that there is the similar advantage for the use of M ning」s formula for long-period wave. It is noted that Eq. (76) is quite similar to Manning-Strickler equation (n = 0.13k^{1/6}_s / \sqrt{g}), thus the value of n for long-pe wave is close to the one for stationary flow.
The present theory is based on the linear long wave equations. However, the nonlinearity may not be neglected to examine the behavior of long-period wave in very shallow water region. Iwagaki and Tsuchiya (1966) showed that the laminar decay modulus increased about 10% by considering the nonlinear term. Based on that laminar flow results, Eqs. (75) and (76) might provide the lower limit of the actual value of n.

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式(70〜76)
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Fig. 17. Friction coefficient \hat{C} (turbulent flow solution).
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Fig. 18. Ratio of magnitude of friction term to that of acceleration term (turbulent flow solution).
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Fig. 19. Friction coefficient in shallow water region, \hat{C}_s(turbulent flow solution).

7. Conclusions

In this paper, the theoretical solutions of linear long-wave theory with shear stress are obtained without adopting the boundary-layer approximation technique. When the wave period is short and the water depth is large, the present theory provides the similar results to those evaluated by the boundary layer approximation. However, when the wave period is long and the water depth is small, the present theory yields larger wave damping than the prediction by the boundary layer approximation.
The effects of bottom friction on the reflection coefficient were examined with the present theory. The reflection coefficient from a vertical wall decreases as the friction coefficient increases. The reflection coefficient from a sloping beach depends not only on the Iribarren number but also the number of waves on the slope and the roughness condition; and an empirical equation is formulated to estimate the reflection coefficient from a sloping bed for various cases.
Manning」s roughness coefficient n is determined to equate the averaged bottom shear stress evaluated by Manning」s law to that evaluated by the present theory.
It is shown that n is not affected by the bottom slope, water depth and wave period in the shallow water region, and can be estimated with only z_0 or k_s which are the parameters relating to the roughness height. Moreover, the phase difference between the mean velocity and the bottom shear stress is small. Thus, Manning」s law is unexpectedly accurate, considering how simple its expression is. To estimate the coefficient n by z_0 or k_s, Eqs. (75) and (76) are available. Although the present theory is based on linear long wave equations, the criterion of friction coefficient in a shallow water region is successfully determined based on the physical examinations.

Acknowledgments

The authors would like to express the deep appreciations to Prof. Nobuo Shuto, Iwate Prefectural University, Japan, and Prof. Harry Yeh, University of Washington, USA, for their helpful comments on this paper. The authors also thank Prof.
Toshiyuki Shigemura, National Defense Academy, Japan, and Prof. Kunihiko lida, Tokai University, Japan, for their substantial discussions.

References

Adachi, S. (1964). Experimental study on artificial roughness, Trans. JSCE, 104, pp. 33-44 (in Japanese).
Battjes, J. A. (1974). Surf similarity, Proc. 14th Conf. Coastal Eng., ASCE, pp. 466-480.
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Kajiura, K. (1964). On the bottom friction in an oscillatory current, Bull. Earthq. Res. Inst. 42: 147-174.
Kajiura, K. (1968). A model of the bottom boundary layer in water waves, Bull. Earthq. Res. Inst. 46: 75-123.
Noda, H. (1969). Developement of turbulent boundary layer in waves, Proc. 16th Conf. Coastal Eng., JSCE, pp. 23-27 (in Japanese).
Tanaka, H., Sana, A, Kawamura, I. and Yamaji, H. (1999). Depth-limited oscillatory boundary layers on a rough bottom, Coastal Eng. J., JSCE 41, 1, pp. 85-105.

Tsunamis-Their Science and Engineering, edited by K. Iida and T. Iwasaki, 439-451. Copyright (c) 1983 by Terra Scientific Publishing Company (TERRAPUB), Tokyo. Numerical Simulation of Tsunami Propagations and Run-up Chiaki GoTo and Nobuo SHUTO Department of Civil Engineering, Tohoku University, Sendai, Japan (Received August 31, 1981; Revised December 22, 1981)

ABSTRACT

Three problems are discussed in relation to the required accuracy in a numerical simulation of tsunamis. The spatial mesh size in the computation should be selected in relation not only to the hydraulic characteristics of the tsunami and the topographical properties of the site, but also to the boundary condition at the wave front used in the computation. With a steep surface at the wave front, oscillations coherent only with the numerical computation appear and become a hindrance in the simulation. An artificial diffusion term is introduced to suppress this oscillation. Finally, the relative importance of terms in the fundamental equations are examined in an example of a practical application, after problems in the numerical computation have thus been solved.

1. Introduction

In recent years, numerical simulations have been developed and used to compute the behaviour of tsunamis in shallow water and on land. The results of these numerical computations are often referred to in practical designs of defense works against tsunamis. However, several problems remain to be solved before the accuracy of the numerical results can be improved.
In a numerical simulation in which a tsunami is followed from its source to the final run-up, the spatial mesh sizes are varied from coarse in the open sea to fine on land. The run-up height of the tsunami depends to some extent on the mesh size on land. Therefore, to obtain a correct result, a condition must be taken into account for the selection of an adequately sized spatial mesh, in addition to the CFL condition.
This additional condition is established in the present paper by a comparison of the numerical results obtained with different expressions of the boundary condition at the wave front to an analytical solution.
If a wave front becomes nearly vertical, another problem occurs. With a sudden change in wave charactaeristics at the front, oscillations appear with a wave-length strongly dependent on the spatial mesh size, and increase in amplitude so as to lead to a break-down of the computation. This is found only in numerical computations and not in hydraulic experiments. A well-designed artificial diffusion term will successfully suppress this oscillation. At the same time, however, the slope of the wave front is made slightly gentler than that expected. To correct this weakness, a dispersion term is artificially introduced. With these diffusion and dispersion terms, both of which are only artificially introduced and are made effective only in the neighborhood of the wave front, numerical computations can be continued to yield the expected results. The CFL condition is modified by the introduction of these terms.
In shallow water and on land, nonlinear equations should be used in the computation whereas linear equations are accurate enough in the deep sea. In order to understand what the necessary terms are in shallow sea and on land, a tsunami in Ofunato Bay, Iwate Prefecture, Japan is computed.

2. Effect of Spatial Mesh Size on Run-up Height

One of the problems in tsunami computations on land is the boundary condition at the wave front. Water runs up on dry land and runs down to leave a dry bed. Even when there is no breaking at the wave front, the movement of water on the slope can not be easily expressed. There are several methods to overcome this difficulty. Among them, three methods are selected and compared in the present paper, and their applicability to a two-dimensional problem of practical importance is considered.
AIDA (1977) assumes that the Froude number at the wave front takes a constant value of 0.5. HOUSTON and BUTLER (1979) assume a weir formula. In both assumptions, the water particle velocity at the wave front is uniquely correlated with the water depth there. In the condition of Houston and Butler, the Froude number is not always equal to 0.5. In the present work, two values of the Froude number, 0.5 and 2.0, are assumed and called Aida」s condition I and II respectively.
IWASAKI and MANO (1979) use a different method. A continuous topography is approximated by a series of discontinuous, horizontal steps. The velocity of water particles flowing on to a dry step is evaluated from the hydraulic characteristics one step behind the wave front.
Both Aida and Iwasaki and Mano use equations in the Eulerian description, which is based upon information obtained at spatially fixed points.
The present authors, GOTO and SHUTO (1977, 1979) have developed another method expressed in the Lagrangian description, by which the boundary condition at the wave front is easily satisfied with no special assumption. The equations themselves are constructed for water particles. Therefore, if we follow the movement of the water particles which constitute the shoreline at the initial instant, then the wave front is automatically determined.
In order to examine and compare the three methods, we consider a simple onedimensional topography of a uniform slope connected with a horizontal channel of constant water depth. The theoretical run-up height of a sinusoidal wave train has been obtained (J. B. KELLER and H. B. KELLER, 1964; SHUTO, 1972) provided that perfect standing waves are formed without breaking. The ratio of the run-up height, R, measured above the still water level to the incident wave height, H, is given by
(1)
where L is the wave length of incident waves, 1 the horizontal distance between the toe of the slope and the shoreline, and J_O and J_1 the Bessel functions of the first kind of order 0 and 1.
The second, third and fourth columns in Table 1 show the length of spatial meshes, slopes and wave periods used in the computation for the comparison. The water depth is 50 m and wave height is 1 m. With longer wave periods, all the numerical results coincide with the theoretical result regardless of the boundary condition. Shallow water theory in the Eulerian description is used, combined with Aida」s and Iwasaki and Mano」s conditions. Linear theory in the Lagrangian description is used for the present work. If the maximum run-up height alone is of concern, no significant difference is found between linear and nonlinear theories.
The sixth, seventh, eighth and ninth columns in Table 1 give the computed maximum run-up height divided by the theoretical results, obtained by Aida I (Fr = 0.5), Aida II (Fr = 2.0), Iwasaki and Mano and the authors. The computation in each case was continued over eight wave periods and the stationary values attained are tabulated. Values marked by an asterisk correspond to cases in which numericallyinduced Gibbs oscillations were observed.
Figures 1(a), (b), and (c) compare wave profiles of numerical results with those of theoretical ones for the maximum run-up and run-down. The slope is 1/50 and the spatial mesh size is 50 m. The solid and dotted lines are the results obtained with linear theory in the Lagrangian description for wave period of 600 s and 300 s, respectively, while the white and black circles are the numerical results.
Shallow water theory combined with Aida」s and Iwasaki and Mano」s wave front conditions yields wave profiles with almost the same results as those obtained by the linear theory in the Lagrangian description for the maximum run-up. However, when the maximum run-down occurs, shallow water theory gives higher water surface. As far as the maximum run-up height is concerned, no difference results from assuming, in Aida」s method, that Fr is either 0.5 or 2.0.
For a gentler slope and a wave train of shorter period, the numerical results obtained with shallow water theory are worse. A finer spatial mesh can improve the situation. Accordingly, the accuracy of the numerical computations may be judged from the slope \alpha, wave period T, and mesh size \delta x. Figure 2 shows the results. Ratios of computed values to theoretical ones are plotted against a dimensionless parameter, \delta x/\alpha g T^2. Although the method proposed by the authors gives the best result, it is not convenient in practical applications. Convergence or divergence of water particles on land inevitably occurs in two-dimensional computations. Then, no run-up height can be predicted at places where no water particle arrives. On the other hand, if the equations are taken in the Eulerian description and used with any of the conditions proposed by Aida or Iwasaki and Mano, the run-up height may easily be computed with a possible error of less than 5% at any designated point, provided that the spatial mesh size is selected to satisfy \delta x/\alpha g T^2 < 4.0 x 10^{-4}.

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式(1)
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Table 1. Comparison of numerical results obtained with different methods to the analytical results.
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Fig. 1. Comparison of wave profiles.
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Fig. 2. Dependence of the numerical results on the size of spatial mesh.

3. Numerical Scheme at a Nearly Vertical Wave Front

As is shown in Table 1, tsunamis of short wave period have a bore-like wave front on gently sloping land. If the leap-frog scheme is applied to the computations of the tsunamis, Gibbs oscillations generated at the sharply discontinuous front will constitute problems difficult to handle.
Figure 3 shows examples of these oscillations. The bottom slope is 1/200 and the period of the incoming waves is 300 s. The spatial mesh size is 12.5 m in Case A and 25 m in Case B. Iwasaki and Mano」s front condition is used. Both figures give three consecutive wave profiles, beginning with the profile at t = 1,000s when the maximum run-up of the first wave occurs. It is clearly noticed that oscillations have a wave length twice the size of the spatial mesh. In the computations, either no such oscillation was obtained at the wave front of the first incoming wave, or else it was negligibly small.
In order to clarify the cause of the oscillations, numerical experiments were carried out for a simple bore on a horizontal bed, by changing the flow conditions ahead of and behind the vertical wave front. Figures 4(a), (b), and (c) show the results. In each figure, two values of the Froude number are given. The first one is for the flow behind the wave front and the other for the flow in front of it.
On the left-hand side of the figures, thick lines give the analytical results which show no deformation with time while thin lines connecting small black circles are the conputed results. Oscillations always occur near the wave front, but they are small. If enlarged, they are given in the right-hand side of Fig. 4 with the broken lines showing the path of the bore front. They propagate downstream (upstream) if the Froude number behind the wave front is smaller (larger) than unity. In these examples, the maximum wave height of the oscillation is, at maximum, less than one-tenth of the original bore height in Case C.
It is deduced that if the water particle velocity behind the wave front is sufficiently strong, and that ahead of the wave front is also sufficiently strong but in the reverse direction, small oscillations which inevitably occur due to the digitized numerical procedure are accumulated near the front and increase in amplitude even if they are very small at their initiation.
Elimination of these undesirable oscillations will be accomplished by the introduction of a diffusion term which forces the oscillations to propagate so as to become of no significant magnitude. The diffusion term proposed here is
(2)
where \beta_1 is given by
(3)
If we select an adequate value for \nu, the diffusion term has a strong effect only in the area where the oscillations are apt to be generated and has no contribution at all otherwise.
In Fig. 3(c), an example of the computation with the diffusion term is shown.
Oscillations are completely suppressed and at the same time no significant reduction in the bore height results. However, the effects of the diffusion term need to be checked in more detail. With the diffusion term, the stability condition of the FDM is modified to
(4)
Another effect expected is 「over-smoothing」 which makes the slope of the water surface at the wave front gentler. In Fig. 3(c), the wave profile for t = 1,160 s seems to suggest this effect. In order to examine this effect due to the diffusion term, a hydraulic jump is computed and compared in Figs. 5(a), (b), and (c). Figure 5(a) shows the results without the diffusion term. Oscillations exist in profiles of water surface elevation, momentum and energy. The transition from shallow water to deep water occurs within a length of 4\delta x. In Case B, the included diffusion term suppresses the oscillations but the zone of transition is broadened from 4\delta x to 6\delta x.
In order to reduce the length of the transition zone, an artificial viscosity similar to that introduced by VON NEUMANN and RICHTMYER (1950) is effective. The equation of conservation of energy in the transition zone is expressed by
(5)
where E is given by u^2/2 + gD, and \beta_2 is a constant. The right-hand side is the term introduced and its effect in reducing the length of transition zone can be understood from an analytical solution. Solving Eq. (5) with the boundary conditions,
(6)
then the solution is given by
(7)
and is also shown in Fig. 6. The solution connects two regions continuously and the length of the transition zone is of the order of /324x. Therefore, with an adequately selected value of \beta_2, this term is easily controlled to reduce the 「over-smoothing」 introduced by the diffusion term.
Figure 5(c) shows an example computed for the hydraulic jump by setting \beta_1 = 1.0 and \beta_2 = 0.8. The transition zone is improved so as to be of the order of 4\delta x.

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式(2〜7)
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Fig. 3. Oscillations induced by numerical computations, (A) with \delta x = 12.5 m, (B) with \delta x = 25.0 m, and (C) wave profiles without oscillations obtained with the artificial diffusion term.
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Fig. 4. Numerical examples of a bore on a horizontal bed, computed with the S.L.F. scheme for different Froude numbers.
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Fig. 5. Numerical examples of a hydraulic jump; (A) with no artificial terms, (B) with the diffusion term and (C) with the diffusion and viscosity terms.
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Fig. 6. Continuous profile in the transition zone, obtained with Eq. (7).

4. Magnitude of Terms in Tsunami Computations

A set of nonlinear equations is used in the followings to clarify the relative importance of the pressure, convection, bottom friction and dispersion terms.
Conditions and artificial terms discussed in the preceding sections are included in the numerical scheme.
The equations are
(8)
where M and N are the discharges in the x- and y-directions, g the gravity acceleration, D the total water depth and \eta the water surface elevation above the still water level. A leap-frog method is used with mesh intervals, \delta x = \delta y = 50m and \delta t = 1.5s. The stability condition for Eq. (8) which includes the dispersion term is slightly more restricted than usual and is given by
(9)
According to this condition the dispersion term is taken into the computations only in the area where D < 30m is satisfied. In what follows, Manning」s roughness is equal to 0.025 everywhere, and Iwasaki and Mano」s front condition is used.
The Meiji Great Sanriku Tsunami in 1896 is computed for Ofunato Bay, Iwate Prefecture, Japan. Input wave profiles at the seaward boundary of the computation are given by
(10)
which is determined by considering AIDA」S (1977) results, and T is 600s.
Figure 7 shows the contours in meters of Ofunato Bay. The thick line indicates the shoreline and the thin smooth curves are isodepths. Thin stepped lines bound the dry land included in the computation.
Figure 8 shows the distribution of the highest water surface elevation. Ofunato Bay is L-shaped. A tsunami turns to the right by an angle of nearly 90° after entering the bay. The wave period of the tsunami in the computation is 600s. It is shorter than the period of natural frequency of the bay which is about 40 min. The maximum height in the bay is 5.02m and appears at Point A which faces directly to the open ocean. At Point B, the head of the bay, the run-up height is about 2m.
Figure 9 shows the distribution of the highest water particle velocity. At narrow portions of the bay and on land, the velocity becomes higher. It rises to more than 5.0 m/s when the tsunami reduces.
Figures 10 through 13 compare the convection, pressure, friction and dispersion terms with the non-steady acceleration term. Maximums of the resultant values are computed and compared at every point. The pressure term is of the same order of magnitude as the non-steady acceleration term almost everywhere in the bay. At narrow portions of the bay and at the area where the tsunami runs up high, the convection term becomes very significant. This is typically noticed at Point A where the run-up is highest. The magnitude of the convection term at Point A is more than twice the non-steady acceleration term. Judging from this fact, the convection term is very important in the computation of tsunami run-up. The magnitude of the friction term is not very great but is not negligible. The dispersion term has a negligible contribution.

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式(8〜10)
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Fig. 7. Contours in Ofunato Bay.
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Fig. 8. Distribution of the highest water surface elevation.
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Fig. 9. Distribution of the highest water particle velocity.
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Fig. 10. Distribution of the ratio of the magnitude of the convection term to that of the non-steady acceleration term.
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Fig. 11. Distribution of the ratio of the magnitude of the pressure term to that of the non-steady acceleration term.
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Fig. 12. Distribution of the ratio of the magnitude of the friction term to that of the non-steady acceleration term.
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Fig. 13. Distribution of the ratio of the magnitude of the dispersion term to that of the non-steady acceleration term.

5. Conclusions

The FDM applied to shallow water theory including bottom friction gives satisfactory results for the run-up of tsunamis. The leap-frog method is normally used.
Even when there are no breaking waves, the boundary condition at the wave front has an important influence on the accuracy of the numerical results. Although equations described in the Lagrangian description give accurate results with no ambiguity of the boundary condition, they are not convenient in practical applications.
Aida」s and/or Iwasaki and Mano」s conditions which are vague from a physical point of view are successfully applied to the problem, provided that the size of spatial mesh be determined to satisfy \delta x/\alpha g T^2 < 4.0 x 10^{-4}.
When waves break at their front, oscillations of wave length twice the spatial mesh size often appear and lead to a break down of the numerical scheme. In order to suppress these oscillations, a diffusion term is introduced, with two adjustable constants, \beta_1 and \nu. The constant \beta_1 determines the strength of the diffusion term while \nu determines the region where the diffusion term works. The diffusion term is shown to function very well but at the same time it induces 「over-smoothing」 of the wave front.
An artificial viscosity is introduced to counteract the 「over-smoothing」. It contains a constant \beta_2, by which we can freely control the length of the transition zone.
With all these considerations taken into account, a computation is carried out for a tsunami in Ofunato Bay. It is concluded that dispersion is not important in this case.
No dispersion may be required except in the case of tsunamis in gently sloping shallow water or in rivers.

The present report was partially supported by a research grant from the Ministry of Education.

REFERENCES

AIDA, I., Numerical experiments for inundation of tsunamis, Bull. Earthq. Res. Inst., 53, 441-460, 1977 (in Japanese).
GoTO, C. and N. SHUTO, Numerical simulation of tsunami run-ups, Coastal Eng. in Japan, JSCE, Vol. 21, pp. 13-20, 1978.
GoTO, C. and N. SHUTO, Two-dimensional numerical computation of nonlinear tsunami run-ups, Proc. of 26th Conf. on Coastal Eng., JSCE, pp. 56-60, 1979 (in Japanese).
HOUSTON, J. R. and H. L. BUTLER, A numerical model for tsunami inundation, U. S. Army Engineer Waterways Experiment Station, Tech. Report HL-79-2, 1979.
I WASAKI, T. and A. MANO, Two-dimensional numerical computation of tsunami run-ups in the Eulerian description, Proc. of 26th Conf. on Coastal Eng., JSCE, pp. 70-74, 1979 (in Japanese).
KELLER, J. B. and H. B. KELLER, Water wave run-up on a beach, Res. Report No. NONR-3828(00), Office of Naval Res., Rept. of Navy, 1964.
SHUTO, N., Standing wave in front of a sloping dike, Proc. 13th Conf. on Coastal Eng., pp. 1629-1647, ASCE, 1972.
VON NEUMANN, J. and R. D. RICHTMYER, A method for the numerical calculation of hydrodynamic shocks, J. Appi. Phys. 21, 232-238, 1950.

Tsunamis-Their Science and Engineering, edited by K. Iida and T. Iwasaki, 511-525. Copyright (c) 1983 by Terra Scientific Publishing Company (TERRAPUB), Tokyo. Effects of Large Obstacles on Tsunami Inundations Chiaki GoTo and Nobuo SHUTO Department of Civil Engineering, Tohoku University, Sendai, Japan (Received August 31, 1981; Revised December 22, 1981)

ABSTRACT

Buildings sufficiently solid not to be washed away may reduce tsunami inundation. Low sea walls, by reflecting part of incoming tsunamis, are also effective. A method is proposed to include both these effects in numerical computations. Modified empirical formulas from steady flow hydraulic experiments are employed. Numerical results obtained for unsteady flow agree fairly well with the hydraulic experiments.

1. Introduction

Several numerical techniques have been developed to analyze the run-up of tsunamis and applied with sufficient accuracy to practical problems. In the computation, however, it is normally assumed either that there are no solid structures capable of withstanding the tsunami, or that the effect of a solid structure can be expressed in terms of a roughness coefficient, such as Manning」s n, the value of which is selected without due consideration of the hydraulic characteristics.
The Japanese Sanriku coast, where tsunami defense works have been constructed since 1960, exhibits sea walls along the shoreline high enough to have offered protection against the Chilean Tsunami of 1960 although not against larger tsunamis such as occured in 1896 and 1933. Records show that when the Chilean Tsunami hit Kushiro city, Hokkaido, Japan in 1960 the horizontal distance of tsunami inundation was only 20 m in areas dense with residential structures, but more than 100 m along wide boulevards (FUKUSHIMA, 1961). Since the sizes of these obstacles are of the same order of magnitude as the thickness of tsunamis in shallow water and on land, it is necessary to determine their hydraulic effects more precisely to provide detailed information on the behavior of tsunamis passing through them.
The purpose of the present paper is to include, in numerical computation, the effect of low sea walls and solid buildings capable of resisting tsunamis without being washed away, after establishing the laws of resistance through hydraulic experiments.
Although tsunamis are highly unsteady, the laws of resistance were determined by using steady flow, because it is not considered possible to carry out hydraulic experiments with unsteady flow with the required accuracy. Once the empirical laws were established, they were modified into a form convenient for numerical computation. Deformations of tsunami profiles due to solid structures were measured in the laboratory using unsteady flow and compared with the numerical results to ascertain the applicability of the numerical scheme established above.

2. Hydraulic Characteristics of Residential Buildings

2.1 Experimental set-up and procedure
A flume 16 m lcag, 0.6 m high, and 0.8 m wide was used in the experiments.
Buildings were modelled by two kinds of square-sectioned wooden pillars, 75 cm high, 9 cm x 9 cm and 18 cm x 18 cm. Pillars were installed regularly as is shown in Fig. 1. Ratios of areas occupied by the wooden pillars to the total area are given in Table 1. This ratio in Ishinomaki city, Miyagi Prefecture, is 30.6% for the area which was inundated by the Chilean Tsunami in 1960.
The distance, B, between two columns of pillars measured laterally to the flow is given in Table 1, as well as the distance between rows of pillars measured in the longitudinal direction. The number of rows of pillars in the experiments was two, three, four and five.
The discharge was varied from 10.0 x 10^3 cm^3/s to 40.0 x 10^3 cm^3/s and was measured with a triangular weir installed downstream. Water levels were usually measured with point gauges and sometimes with servo-type wave gauges when lateral oscillations were induced by a large dischange.

2.2 Division into three regions
The present problem was at first sight considered quite similar to the resistance of piers in rivers. D」AUBUlSSON (1840) proposed a method to evaluate the loss of energy head due to piers, assuming a discharge coefficient which depends on the plan shape of the piers. Figure 2 shows the discharge coefficient obtained in a similar way to D」Aubuisson for our experiments. The discharge coefficient has no unique value but varies with the ratio of contraction, number of rows of pillars and the Froude number of the flow. The major difference is that piers are arranged in only one row whereas in the present case more than two rows of obstacles are considered.
The authors therefore abandoned the attempt to express the effects of the pillars as a whole. Instead, we divided the whole region into three subregions, according to the major hydraulic phenomena which govern each subregion. The first region is the entry region including the first row of pillars, where the head loss is mainly caused by a sudden contraction. The third region is the rearmost region, which includes the last row of pillars, where a sudden expansion is of greatest importance. The second region lies between the above two regions. Here, the water flows as if through a narrow channel of roughened walls. The major hydraulic phenomenon in the second region can be expressed in terms of a friction coefficient. The contribution of the second region to the total head loss is, as shown below, fortunately negligibly small in comparison with that of the first region.

2.3 Region I
In this region, the predominant phenomenon is the contraction of the water flow at the entrance, as considered by D」Aubuisson. The continuity equation and the energy equation with a loss term, \delta E_1, are
(1)
where C_c is the coefficient of contraction. Let \delta E_1 be K_e V^2_0/2g. Then the discharge coefficient can be calculated by
(2)
where \beta is the ratio of contraction b/B, \nu_o is the ratio of water depth H_1/H_0, and F_{r0} is the Froude number defined by V_0/\sqrt{gH_O}.
Figure 3 gives the experimental data of the discharge coefficient. Although the average value of the discharge coefficient is nearly equal to the value of 0.8 given by D」Aubuisson in case of piers of a rectangular plan form, it can clearly be recognized that the discharge coefficient is a function of \beta and F_{r0}.
Figure 4 shows that the following formula
(3)
is sufficiently accurate for practical purposes.

2.4 Region II
The continuity and energy equations are
(4)
The energy loss in this region can be expressed in analogy to head loss in rough-walled pipes or channel. Therefore, according to the usual expression, the energy loss, \delta E_2, is given by
(5)
Substitution of Eq. (5) into Eq. (4) yields the following formula for the friction coefficient,
(6)
where \nu_i = H_2/H_1 and F_{r1}, = V_1/ \sqrt{gH_1}.
The size of the pillars relative to the flow width or their spacing may affect the values of the friction coefficient as in the case of rough-walled pipes or channels.
However, as far as our experimental results are concerned, no dependence on these parameters was recognized. An empirical formula
(7)
was established as shown in Fig. 5.

2.5 Region III
Sudden expansion is of great importance in this region. After region III there occures a hydraulic jump in the case of steady flow, the loss due to which can be evaluated by a familiar formula found in any text book of hydraulics. The hydraulic jump is not included in our consideration.
The equations are
(8)
It is assumed that \delta E_3 can be expressed by K_p V^2_2/2g as a fraction of the velocity head before the expansion. Then, K_p is calculated with
(9)
by using experimental results. The results are plotted in Fig. 6, and a dependance on \beta is seen. Finally, the following formura is given for the coefficient of expansion as plotted in Fig. 7.
(10)

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式(1〜10)
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Table 1
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Fig. 1. Schematic diagram of wooden pillars in steady flow and classification of regions.
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Fig. 2. Discharge coefficient of a group of pillars.
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Fig. 3. Discharge coefficient in region I with a parameter \beta.
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Fig. 4. Discharge coefficient in region I as a function of F_{r0} and \beta.
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Fig. 5. Friction coefficient in region II.
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Fig. 6. Coefficient of expansion in region III with a parameter \beta.
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Fig. 7. Coefficient of expansion in region III as a function of F_{r2} and \beta.

3. Overflow at Low Sea Walls

3.1 Experimental procedure
A channel 7 m long, 0.5 m high, and 0.3 m wide was used in the experiments.
Model sea walls were 10 cm, 15 cm, 20 cm, and 25 cm high, and 2cm and 5.5 cm thick.
Discharges per unit width of the channel varied from 50 cm^2/s to 250 cm^2/s. Water levels were measured at 1 cm, 10 cm, and 100 cm upstream from the models. Values of H_d, H_s, and L_s, the definitions of which are given in Fig. 8, were also measured.

3.2 Discharge formula in terms of the energy per unit mass
A low sea wall, if overtopped by a steady flow, is identical to the situation at a weir.
An example of the comparison of our experimental results with a formula given by HOM-MA (1940) is shown in Fig. 9. The agreement is fairly good. The difference is 25% at the greatest.
However, if the Hom-ma formula or another weir formula is applied to unsteady overflow, a serious unresolved problem remains. In these formulas, the discharge is given in terms of a head measured upstream from the weir at a distance sufficient to eliminate surface contraction. In steady flow, this head can be easily defined while in unsteady flow it is neither defined nor measurable due to the time-dependent motion of the water surface.
In place of this head, the authors suggest that the energy per unit mass, defined as
(11)
should be taken. The discharge per unit width of the channel is related to the energy per unit mass by the following formula with a discharge coefficient
(12)
After several trials, it was found that the discharge coefficient could be expressed as a function of F_{rB}. The Froude number F_{rB} used in Fig. 10 is calculated with a hypothetical water depth, H_B, and velocity, V_B. It is assumed that the water flow concentrates within a layer, the thickness of which is H_B, above the weir crest and that the equation of continuity is given by q = H_B V_B. The discharge coefficient is experimentally found to be
(13)

3.3 Downstream of a sea wall
If a sea wall is sufficiently high and the water depth after the point of water fall sufficienty shallow, water falls freely, hits the channel bottom and a part of the discharge flows downstream while the rest remains and forms a water cushion near the sea wall. The total head loss is composed of the loss of potential energy due to the fall of water, \delta E_D, and the loss due to the turbulent motion in the water cushion, \delta E_D.
The continuity and energy equations are established between the point where the critical depth appears and the point D where the falling water hits the channel. These are
(14)
where \delta E_D = H_W + H_c - H_D, and \delta E_D = K_D V^2_D/2g. The coefficient of loss of energy is calculated with
(15)
In order to evaluate the water depth at the point of water fall impact, RAND」s formulas (1955) are selected from available empirical formulas, because they are formally simple. Rand gave expressions for the water depth, H_D, at the point of water fall, the water depth, H_S, in the water cushion and the horizontal distance, L_S, to the point of water fall. These are given in terms of a dimensionless parameter
(16)
where H_W is the height of the weir. Rand」s formulas are
(17)
Figure 11 shows the comparison between experimental results and Eq. (17).

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式(11〜17)
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Fig. 8 Schematic diagram and definition sketch of low sea wall.
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Fig. 9. Comparison between experimental results and Hom-ma」s formula.
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Fig. 10. Discharge coefficient over a weir in terms of energy per unit mass.

4. Numerical Simulation and Comparison with Hydraulic Experiments

4.1 Effect of buildings
For simplicity in the numerical simulation, it was proposed that the effects of buildings and other residential-type structures should be taken into computations through an equivalent roughness. In order to examine the validity and accuracy of the introduction of an equivalent roughness, numerical computations were carried out and the results were compared with the experimental results for unsteady flow.
Equations used in the analysis are the equations for one-dimensional, gradually varied unsteady flow.
(18)
where Q is the discharge flux. A the sectional area and n the Manning」s roughness. The last term in Eq. (18) is equal to gA I_1 where I_1 is the friction slope. We assume that the instantaneous friction slope in unsteady flow can be approximated by the empirical
formulas given in proceeding sections. Then, for example, for region I, I_1 is set equal to
\delta E_1/l_1. Therefore, introducing an equivalent roughness n_e, we have
(19)
The equivalent roughness is given by
(20)
In a similar way, the equivalent roughness is obtained for regions II and III. Numerical
computations can be continued with Eq. (18), by changing the values of n_e from region to
region and from time to time.
Hydraulic experiments for unsteady flow were carried out in a channel 100 m long,
0.5 m high, and 1 m wide. Three rows of pillars were installed with B = 33 cm, b
= 15 cm, m = 18 cm, and s = 15 cm. The still water depth in the experiments was
20 cm. The water surface elevation was measured with resistance-type wave gauges. In
the numerical computations, the leap-frog scheme was used. The spatial mesh size was
6 cm.
Figure 12 shows an example of instantaneous wave profiles and velocity
distributions obtained in the hydraulic experiments. Figure 13(a) shows the time
history of the water surface measured at a point 2 m upstream of the obstacles. This is
used as an input wave for the computation.
Figure 13(b) through (e) are comparisons between hydraulic and numerical experiments at several points indicated in Fig. 12. The solid lines are results from the hydraulic experiments and the chain lines are results of the numerical computations for one-dimensional, gradually varied unsteady flow introduced in the present paper.
For comparison, two-dimensional computations were also carried out, in which no dissipation due to the pillars was taken into consideration but no velocity component normal to the surface of the pillars was allowed. Results of the twodimensional computations with 3 cm spatial mesh size are shown by dotted lines in Fig.
13(b) through (e). The one-dimensional computations give fairly good agreement, with a small reduction in wave height and a slight time-lag of the maximum water level. The two-dimensional computations give poorer results, although a finer spatial mesh was used. The two-dimensional computation required a computation time 60 times longer than one-dimensional case.

4.2 Effect of a low sea wall
Hydraulic experiments for unsteady flow were carried out in the same channel used for those with steady flow. Unsteady flows were generated by sudden openings and closings of a valve installed at the upstream end of the channel. Water surface elevations were measured at points 2 m upstream and just upstream of the sea wall as well as at the water cushion downstream. Equation (18) was used in the computation with a modification at the sea wall. In the leap-frog scheme, points where the discharge is computed are different from points where the water surface elevation is computed.
Discharge points were arranged at the sea wall. Values obtained at a point upstream of the sea wall by one spatial mesh are used to compute the energy per unit mass, by which the discharge over the sea wall is determined with Eqs. (12) and (13).
In order to continue the computation further downstream, Rand」s empirical formulas are used to compute H_D and L_S. At the point of water fall impact, the horizontal position of which is fixed by L_S, the height H_D is combined with discharge q to give the velocity V_D. Then, these values are used to evaluate the head loss, \delta E_D, or the coefficient K_D, which is taken into the computation after being reduced to an equivalent roughness.
Figure 14(a) is the input wave profile obtained at a point 2 m unstream. In Fig. 14(b), wave profiles just upstream of the sea wall are compared. The solid line corresponds to the hydraulic experiment and the chain line represents the result given by the method described above. The dotted line is obtained by the use of Homma」s weir formula instead of Eq. (12). The present method produces a satisfactory result.
Figure 14(c) compares the water surface elevation in the water cushion. The solid line is for the hydraulic experiment and the dotted line shows the present numerical result. Except for small oscillations which are inevitably generated by the water fall, the agreement is satisfactory.

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式(18〜20)
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Fig. 11. Comparison with Rand」s formula.
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Fig. 12. Wave profiles and velocity distribution in a hydraulic experiment for unsteady flow.
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Fig. 13. Comparison between hydraulic and numerical experiments.
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Fig. 14. Comparison between hydraulic and numerical experiments.

5. Conclusions

Large obstacles such as grouped houses or low sea walls are expected to be effective to some extent in reducing the inundation of tsunamis. A method is proposed and examined to reproduce their effects in numerical simulations. The basis of the method is the use of empirical formulas of the discharge and friction coefficients for steady flow in numerical computation of unsteady flow.
In the case of grouped houses, the houses are classified into three subregions ; the region of entry, the intermediate region and the last region. The discharge and friction coefficients of each region are expressed in terms of the Froude numbers or the ratio of contraction. Comparisons with hydraulic experiments for unsteady flow reveal that the coefficients can be easily taken into the numerical computations for unsteady flow through an equivalent roughness to yield good agreement.
In the case of low sea walls, a weir formula, modified by introduction of the energy per unit mass, improves the accuracy of the numerical computations for unsteady flow. Rand」s formulas are used to continue the computations further downstream.
In both cases, it is concluded that the present method is applicable to practical problems with satisfactory accuracy.

A part of the research reported herein was supported by a grant from the Ministry of Education.

REFERENCES

D」AUBUISSON de Voisins, J. F., Traite d」hvdraulique, 2d ed., Pitois, Levrant Cie, Paris, 1840.
FUKUSHIMA, M., Tsunami inundation at Kushiro Harbour and in Kushiro River, Tech. Report of the Japan Meteo. Agency, 8, 62-68, 1961 (in Japanese).
HOM-MA, M., Discharge coefficient of low dams, Proc. JSCE, 6, 9, 1940 (in Japanese).
RAND, W., Flow geometry at straight drop spillways, Proc. ASCE, 81, Paper 791, 1955.

Numerical Computation of Borelike Tsunamis in a Curved River by Chiaki Goto* and Nobuo Shuto**

ABSTRACT

Numerical simulation of bores in a curved river is investigated, by introducing a cuvilinear coordinate system. It is obviously to use this system which follows the alinment of the curved river. We compare the numerical results with the experimental results of bore propagations in a curved channel in laboratory. Agreement is quite satisfactory.
The present method can be applied without difficulty to the actual topography of complicated geometry.

* Instructor, Department of Civil Engineering, Tohoku University, Sendai, Japan.
** Professor, Department of Civil Engineering, Tohoku University, Sendai, Japan.

1. INTRODUCTION

Tsunamis in a river have a tendancy to transform a bore because the wave becomes very high and the ground has a very gentle slope. This phenomenon was recorded in several rivers in northeastern Janan when The Great Sanriku Tsunami occure d in 1933.
Difficulties in the computation of bore propagation in an actual river often arise because of the complexity of the flow around a curved bank. The streamline of the bore flow are not only curvilinear but also interwoven forming cross waves. Furthermore, the centrifugal force acting on the flow around a bend produces a unique feature known as superelevation, that is, a rise in the water surface at the outer bank with an accompanying lowering at the inner bank. Up to now, numerical calculations for propagation of bores in a river have been normally carried out with the method of charactaristics or a Lax-Wendroff method, treated as the one-dimensional propagation-problem.
In these methods, we could not get the solutions of superelevation in a curved river

In this paper, we investigate the most suitable-numerical computation method for the two-dimensional propagation of borelike tsunamis in a curved river. The work is divided into two parts. The one is to seek for the most adequate numerical scheme, and the other is to seek for the most suitable governing equations for the curved alinment of a river.

We compare verious numerical computation methods with hydraulic experiment for the case of dam-breaking problem. The numerical results often show an over-smoothing or an over-shooting at the bore front. We discuss first these phenomena which have no physical origin but are resulted only through the numerical procedure.

We introduce a new governing equations using a curvilinear coordinate system. In this system, the axis of the banks are taken as one of the curvilinear coordinates. Therefore, compared to the usually-used Cartesian coordinates, satisfys more easily the condition at the banks and yields less reflection from the bank which is the result only due to the digitization of the topography. Numerical results obtained with the new equations are compared with the hydraulic experiments for bore propagations in a curved channel.

As an example of practical application, the computation is carried out for a river in Japan. We also discuss the difficulties and problems in the practical application of the present method.

2. ACCURACY OF NUMERICAL SOLUTIONS OF BORE PROPAGATIONS

(1) Hydraulic Experiments

In the present section, we compare the results of the numerical solutions of bore propagations in case of an idealized dam-breaking problem with those of hydraulic experiments.

Hydraulic experiments were carried out in a channel o.3 m wide, 0.5 m deep and 10.8 m long with a curved flume and a tank at each end of the channel, as shown in Fig. 1. Bores were produced by a sudden release of water which was stored behind a gate separating the flume and the tank. The water depth in the flume was kept constant with still water before the gate was open.

The bore height was measured with sarvomechanism-type wave gages and a mortor-driven camera. Positions od wave gages are shown in Fig. 1.
Examples of the time history of water level recorded at the points 1 and 2 are shown in Fig. 2. These are the case of 19.0 cm depth in the tank and 9.5 cm depth in the channel.

(2) Comparison Between Numerical Results and Experimental Ones

In order to solve the present problem, several numerical methods such as the finite difference method, finite element method method, cell collocation method and the method of charactaristics might be available.

It is well known that the method of charactaristics was successfally used by Stoker(1957) in the dam-breaking problem. An analytical solution can be obtained by this method. Therefore, we did not carry out numerical computation by the method of charactaristics.

In the present problem, we use equations of the shallow water theory once integrated vertically.
(1)
(2)
where \eta indicates the water surface elevation above the still water surface, M the discharge flux in the x-direction, g the gravity acceleration and D the total water depth. The bottom friction term in Eq. (2) is expressed in Manning」s n, the value of which was taken equal to 0.013.

In the numerical computation by the finite difference methods, spatial mesh intervals are taken to be 5 cm and 10 cm.

In the leap-flog scheme, we introduce an artificial diffusion term into the equation of continuity,
(3)
At the steep frontal slope as that of bore, over-shootings or small oscillations with the wave length twice the spatial interval of computation often arise in the numerical computation. In order to eliminate these oscillations which are coherent only to the numerical computation-but not to the actual phenomena, this artificial diffusion term is introduced. The constant \beta in Eq. (3) is determined by the following considerations.
(4)
With an adjustable constant \nu, one can designate the range where he makes thr artificial diffusion term effective to eliminate the small oscillations.

Similarly, we introduce the artificial disspasion term in the computation by two-step Lax-Wendroff scheme.
In the finite element method, we use the argorithum that integrations with respect to time are carried out by the two-step Lax Wendroff scheme.
The channel is covered by a net.of the isosceles, right-angled triangles, the catheti of which is 10 cm long. Owing to a charactaristic of the finite element method, we treat as a two-dimensional propagation.

Comparison between the numerical results and the experimental ones in the discontinuous frontal region of bores are shown in Fig. 3. There are an over-smoothing and an over-shooting in the numerical results but not in the experimental ones. As measures of numerical errors, the over-smoothing and over-shooting are calculated by the following definitions and are listed in Table 1. The value of over-smoothing is defined by the ratio of the bore height to the horizontal length of the discontinuous region at the bore front, while the value of the over-shooting is the ratio of the height of over-shooting to the bore height.

The followings are concluded from the results.

1. The numerical results by the finite difference methods, easily yield the over-shooting. Especially, the over-shooting of the two-step Lax-Wendroff scheme is comparably large and it is very difficult to eliminate it even if we introduce the artificial disspation. On the other hand, in the leapfrog scheme with the introduced artificial diffusion, we can get the result without the over-shooting.

2. In the finite element method, the result without the over-shooting is obtained. However, the over-smoothing becomes large and the frontal surface of,the bores tend to flatten.

3. Consequently, we can consider that the leap-frog method with the introduction of the artificial diffusion is-the most suitable method for the computation of bores

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式(1〜4)
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Fig.1 Outline of the channel
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Fig.2 An experimantal result of time history of water level.
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Fig. 3 Comparison between experimental result and numerical ones at the frontal surface of bore.
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Table 1 Comparison to the frontal surface of bore between experimental result and numerical ones.

3. SHALLOW WATER THEORY IN THE CURVILINEAR COORDINATES

(1) Coordinate System

Since the river to be considered has a bend, it is advisable to use a curvilinear system which follows the alignment of the river. The basic idea used here is similar to that of Valkwijk and de Vriend (1980) who only considered steady flows.

The shallow water equations are formulated by the case of a coordinate system (\psi,\phi,z), where \psi and \phi are orthogonal curvilinear coordinates in the horizontal plane and z-axis is taken positive upward as shown in Fig. 4.

The distances measured along the cordinate curves \psi = constant and \phi = constant are given by s and m, respectively. The infinitesimal curvilinear (\delta, \psi) and the length of infinitesimal arcs (\delta s,\delta m) are corelated by
(5)
where f_s(\delta, \psi) and f_m(\delta, \psi) are called the metric functions, which are constants when we consider the Cartesian Coordinates.

Correspondingly, the spatial derivatives are expressed by
(6)
We can adopt either the (\delta, \psi,z) system or the (s,m,z) system. If the local curvature of s-line is taken positive (nagative) when the n-line diverge (converge), these curvetures (k_s, k_m) are given by
(7)

(2) Shallow Water Theory
Since the curvilinear of a bend in acutual rivers is in general very complicated, it is defficult to obtain the metric functions. Therefore, we had beter take the (s,m,z) system.

The wave propagates in a shallow water. We assume that the vertical acceleration of water particle is neglective compared with the gravitational acceleration and horizontal velocities are uniform in a vertical plane. And introducing the discharge fluxes M and N and integrating vertically once, we obtain the equations in shallow water in the curvilinear coordinate as following.
(8)
where D denotes the total depth and 1l the elevation of water surface above
the still water level.

Now, we consider a spatial case in which the m-coordinate is a straight line and the s-coordinate is a curve. Since the metric functions are easily obtained in this case, we take the (\psi, \phi, z) system. The equations become
(9)
where J = 1 - k_s\phi.

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式(5〜9)
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Fig. 4 Curvilinear coordinates.

4. NUMERICAL COMPUTATION OF BORES IN A CURVED CHANNEL

(1) Hydraulic Experiment

Experiments were carried out in a curved flume with the outer radius of curvature of 75 cm and the angle of antrature of 90 degree as shown in Fig. 1.
The methods of experiment are the same as stated in Section 2.

An example is shown in Fig. 5. In the record of Point 4, the point A is the maximum height owing to the superelevation at the outer side of the carved flume and the point B indicates the peak produced by the superposition of the wave reflected from the end of the channel. Let us compare and discuss in more details by this example.

(2) Numerical Techniques and Results

For the numerical computation, the leap-frog scheme is. used since we concluded in Section 2 that method was the best. The curved flume in question has a constant curvature. We take the governing equations in the (\psi, \phi, z) system..The spatial mesh intervals are taken equal to 3 cm and 5 cm in the numerical computation.

Examples of the result of computation in the curvilinear coordinates are shown in Figs. 6 and 7. Figure 6 shows the wave profiles at every 0.1 sec along the inner and outer sides of the curved flume. The number in this figure are the time after the gate of tank is open to introduce the wave into the flume.
Figure 7 shows the distribution of the height of water surface in mm above the still water level. These figures tell that the bore front becomes higher at the outer bank, whereas at the inner bank it loses the height, thus making the laterral slope of the water surface becomes steeper as the bore proceeds around the bend. In addition, oscillations in the lateral direction are produced due to the development of this lateral inclination.

The numerical computations in the Cartesian coordinates are also carried out and the results are compared with the results above. In Fig. 8, the distributions of the height of water surface every 0.2 sec are shown. In the Cartesian coordinates, rectangular grids approximate the curved boundary by a steplike line but not a smooth curve.

In regard to the dictribution of the maximum water level, comparisons are shown in Fig. 9. In the results by the curvilinear coordinates, no difference is recognized for the different lengths of mesh interval. The maximum height becomes higher smoothly from the inner to the outer sides.

On the other hand, the results by the Cartesian coordinates are greatly affected bt the size of mesh intervals used in the computation. With the bigger mesh intervals, the curved boundaries are approximated the worse. There are many isolated peaks which are generated by the complicated reflections from the body approximated steplike boundaries. In the results with the smaller mesh intervals, these discontinuous distributions of water elevation become less recognizable, and the. results become more and more similar to that by the curvilinear coordinates.

The followings are concluded.

1. The leap-frog scheme with the artificial diffusion can be successfully applied to the shallow water theory even in the case of a bore and curvilinear coordinates.

2. If we take the curvilinear coordinates, the boundaries of a bend are approximated with good accuracy.

3. Comparisons between the experimental results and the numerical ones obtained by use of the curvilinear coordinates are shown in Fig. 5, in sudden release of the water in a channel of a constant depth with a bend. Agreement is quite satisfactory.

4. In the Cartesian coordinates, the better is the results with the smaller mesh intervals. This is due to how accurately the curved boundaries are approximated.

5. The best numerical computational method for the two-dimensional propagation of bores in the curved river is the use of the shallow water theory expressed in the curvilinear coordinates combined withleap-frog scheme.

5. APPLICATION TO AN ACTUAL RIVER

As an example of the practical application by the curvilinear coordinates is carried out for a river in northen Japan. Difficulties and problems to be solved in the practical application are discussed in the follwings.

The present method is applied to the river because the river has a curved plan form near the river mouth.

The governing equations for the numerical computation are Eqs. (8) in the (s,m,z) system. In this case, we have to finish the caiculation of local curvatures before the numerical integration starts. The local curvatures of the segment arcs are calculated and are stored beforehand. Grids for the numerical computation are shown in Fig. 10, where the point A is the river mouth and the point B is the end of the river where there is a water gate separating the river from the lake behind it.

For the numerical computation, we take a bore of

\eta = H tanh (\sigma t)

with H = 1 m as the input at the outer boundary, point A.

The results of the computation are shown in Fig. 11. Numbers in this figure are the height of water surface 7 min, 18 min and 26 min since the wave arrives at the point A.

Although we selected comparably large mesh intervals which may results a larger over-smoothing, the numerical computation was carried out satisfactorily and was stable. There is no difficulty in the numerical computation by the use of the curvilinear coordinates.

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Fig. 5 An experimental result. of time history of water level at the point 3 and 4.
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Fig. 6 Wave profiles around the curved flume at every 0.1 sec.
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Fig.7 Numerical results of the distribution of wave height by use of the curvilinear coordinates.
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Fig. 8 Numerical resultsuse of the distribution of wave height by of the Cartesian coordinates.
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Fig. 9 Comparison to the maximum water height between numerical results by the curvilinear coordinates and those by the Cartesian coordinates.
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Fig. 10 Numerical grids.
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Fig. 11 Numerical results of the distribution of wave height by use of the curvilinear coordinates.

6. CONCLUSION

In this paper, we discuss the numerical computational method of borelike tsunamis in a curved river. Several results are stated at the ends of each sections. As a result, it is found that the best method is the leap-frog scheme applied with the curvilinear coordinates.

ACKNOWLEDGEMENT

A part of the study was supported by a grant from the Ministry of
Education, Japan

REFERENCES

Stoker, J. J.: Water Waves, In terscience Publishers, Inc., New York, pp. 330-341, 1957.
Kalkwijk, J. P. Th. and H. J. de Vriend : Computation of the flow in shallow river bends, J. of Hydraulic Research, Vol 18, No. 4, pp. 327-342, 1980.

彎曲河川中海嘯之数値計算 後藤智明*首藤伸夫**

摘 要

 以直交曲線座標系樹彎曲河川中發生之海嘯作藪値計算的結果・得知此座標系可正確地將河川彎曲部之形状導入騨計算・興水工實験之比較・可知此直交曲線座標系較直交摩標系渚計算精案爲佳。
 又此法射形状複雑之河川較便於鷹用・且可得安定之計測。

*東北大學助手・工學部土木エ學科 仙台・日本
**東北大學教授・エ學部土木工學科 仙台・日本

5th Congress Asian and Pacific Regional Division International Association for Hydraulic Research Seoul, Republic of Korea 18-20, August, 1986 TIDAL COMPUTATION IN THE NEARSHORE ZONE FUMIHIKO IMAMURA Graduate Student, Dept. Civil Engng., Tohoku Univ., Sendai, Japan CHIAKI GOTO Senior Research Engineer, Port & Harbour Res. Inst., Ministry of Transport, Yokosuka, Japan, NOBUOSHUTO Professor, Dept. Civil Engng., Tohoku Univ., Sendai, Japan

SUMMARY

A method of how to set the offshore boundary condition is proposed in case of a tide composed of several components of different incident angle and different amplitude. An actual shoreline is approximated by a straight line.
The reflected wave is evaluated as a mirror image of the incident wave with respect to this imaginary boundary. The present method is applied to an actual shore and shows a good agreement with records.

INTRODUCTION

In recent years, many thermal power plants have been built along coasts.
Numerical simulations to estimate the diffusion of cooling water are carried out for assessment of environmental thermal pollution. Even at perent, there are still several problems to be solved in the techniques of simulation if one wishes to obtain a good result. One of them is the boundary conndition at the offshore boundary. The computed flow pattern may be greatly affected by the boundary condition after a long run, because the region for computation is taken to be finite. If the given boundary condition is not an adequate one, we may have an unreal oscillation of water in the computed results.
In case of tidal computation for a bay having a narrow mouth, it is not difficult to give the boundary condition. Usually, measured variations of water surface elevation are given at the bay mouth.
In case of tidal computation for a shore open to the sea, two easy cases are known. One is the tidal current parallel to the shoreline. Water surface elevations at the open boundaries can be easily provided by taking the phase velocity of tidal waves into consideration. Second is the computation for only one tidal component. Use of the method of characteristics can solve the problem.
However, these methods are not always applied to actual situations because a tidal current usually has several components. In this paper, the authors introduce a new method of setting the boundary condition in case of a tide composed of several components of different incident angle and amplitude.
It is called the imaginary shoreline method. The angle of incidence can be determined if the measured tidal current over 25 hours is available and is expressed in terms of tidal ellipse. A tidal ellipse of a component tide is a result of superposition of incident and reflected waves, the latter of which is assumed , in the present method, to be a reflection from the shore of an imaginary straight shoreline in an imaginary sea of horizontal bottom.
This simple assumption is applied to every components and the summation of them makes it easy to construct the open boundary condition at the offshore boundary. However, an actual coast is not of a straight shoreline but is of complicated shape. The sea bottom is not horizontal but has a complex topography . Accuracy of the assumption is examined by numerical experiments.
A numerical model with this boundary condition is applied to the computation for tidal current near the Same River on the Pacific coast in Japan.

IMAGINARY SHORELINE METHOD

A tide in an ideal imaginary region with a straight shoreline and a flat bottom is discussed , provided that a tidal ellipse is available at a point in this region. Characteristics of the incident wave, amplitude and incident angle , are determined from the length of the long and short axes of the ellipse. With the direction of propagation of the incident wave thus determined, path of the reflected wave can be drawn as is shown in Fig. 1 .
At point A (x,y) in Fig. 1 , we have incident and reflected waves, phase difference between which is a result of the different travel courses. Lengths d_i and d_r measured from a straight line \bar{ORP}, which is a wave crest line at an arbitrary time, are’given by
(1)
where \theta is the angle of incidence obtained from the tidal ellipse. Water surface elevation is given by the summation of the incident and reflected waves for different tidal components as follows.
(2)
where H is the amplitude, \sigma the angular frequency , \theta the angle of incidence .
g the acceleration of gravity and h the water depth. Symbol \Sigma means the summation taken over tidal wave components.
There are two kinds of boundary conditions in tidal computation. One is to give water surface elevation and the other , current velocity. Equation (2) is used for the former case. Horie 1) et al. reported that current velocity should be given in case of a tide with non-negligible constant current. In order to extend Eq. (2) to this more general case, including constant current component (u,v), velocities are expressed by
(3)
and
(4)
Along the open boundaries parallel to the y-axis, Eq. (3) provides the boundary condition, and along those parallel to the x-axis, Eq. (4) is used.
In case of a usual initial condition that the water surface is everywhere flat without waves at the beginning of the computation, the reflected waves included in the equations are taken to be zero until they arrive at the open boundaties.

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式(1〜4)
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Fig.1 A skecth of the imaginary shoreline method

ACCURACY OF THE IMAGINARY SHORELINE METHOD

a) \underbar{Error due to a slight angle difference of the imaginary shoreline} Suppose there is an actual shore which has the same geometry as the imaginary shore assumed above, except for a slight difference between the direction of two shorelines.
Let the. imaginary shoreline be expressed by y=0 and an actual one by y=xtan \delta. For the latter, the length of path of reflected waves changes , while that of incident waves show no change, compared with the imaginary shoreline.
The path length of waves reflected from the actual shore, d_r」 , is given by
(5)
As a result,the composed water surface elevation, \eta」 , becomes
(6)
Error due to this angle difference is defined as
(式1)
where \eta_{max} and \eta_{max}」 are the maximum water surface elevation of each tidal components for the imaginary and actual shorelines, respectively.
Figure 2 shows an example of the spatial distribution of error for h= 25 m, tan\delta=0.04 ,\theta= 0°and incident wave period T= 12 hr. Figure 3 shows the maximum error in the computation region 10.5 km long and 7.5 km wide as a function of T and \delta.For an incident wave shorter than T=2 hr,this kind of error is of non-negligible magnitude.However,error is less than lO^-3 for waves longer than T=12 hr such as tidal components.
b)Error in case of an actual shoreline expressed by a parabola,y=ax^2 The length of path of reflected waves,d_r」,is,given by the following relation.
(7)
where (x_0,y_0) are coordinates of the reflection point on the parabolic shoreline and \beta is the angle of the tangent at(x_0,y_0,measured from the x-axis which is of course,the imaginary straight shoreline.Quantities(x_0,y_0) and \beta satisfy the followings
(8)
Figure 4 shows an example of spatial distribution of error in case of h= 25m,a=2/375km,\theta=0^0 and T=12 hr.Figure 5 is a relationship of the maximum error to T and a。It is again shown that the maximum error is less then 10^-3 for waves longer than T=12 hr.
c)Error due to bottom slope Assume a straight shoreline and a uniformly sloped bottom.Error is resulted not from the diffence in path of reflected waves but from that in phase velocity due to variable depth.Considering a uniform slope,S,and the water depth at shoreline,h_0,the averaged depth along the path of incident waves,h_i,is calculated as
(9)
while the averaged depth for reflected waves,h_r,is by
(10)
Therefore,water surface elevattion,\eta^」,is given by
(11)
Figure 6 shows the spatial distribution of error in case of h_0=5 m,S= O2/75,\theta=0° and T=12 hr,Error increases as the distance from the shoreline increases.Since the maximum error is less than 5.4×10^-4,effect of the bottom slope is negligible if the mean depth averaged over the whole region is used as the water depth for the imaginary shoreline method.
d)Error due to scattered waves Incident waves are simply reflected from the shoreline,if there is neither river nor bay mouths,through which they still continue their propagation as the incident waves.Scattered waves are expected to arise at river or bay mouths and are superposed on the reflected waves from the shoreline.Therefore,it is necessary to evaluate the magnitude of the scattered waves if there is a river mouth which is ignored in building the imaginay straight shoreline.
Goda2) obtained the scattered waves by means of Fourier transorm.Wave height of the scattered waves,f,in case of a rectangular bay connected to a semi-infinitely wide sea is given by
(12)
where B is the width of bay,L the length of bay,k the wave number and Y=0.5772....the Euler constant.
The spatial distribution of the ratio of scattered wave height to incident wave height is shown in Fig.7.It is similar to concentric circles with the origin at the mouth of bay.
Figure 8 shows the scattered wave height at the mouth of bay as a function of wave period and shape of bay.Near T=1 hr,peaks due to resonance are obtained.As the period becomes longer,the scattered wave height becomes smaller.For tidal waves,effect of scattering can be neglected in building offshore boundary conditions.

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式(5〜12)
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(式1)
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Fig.2 The spatial distribution of error(y=0 and y=xtan\delta)
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Fig.3 Maximum error as a function of T and \delta
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Fig.4 The spatial distribution of error(y=0 and y=ax^2)
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Fig.5 Maximum error as a function of T and a
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Fig.6 The spatial distribution of error (a flat and a uniformly slope bottoms)
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Fig.7 The ratio lf scattered wave height to incident wave height
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Fig.8 The scattered wave height at the mouth of bay

NUMERICAL SIMULATION

A numerical model with shallow water theory is applied to simulate the flow.field near the Same River,Fukushima Prefecture,Japan,on the Pacific Coast.A Leap-frog scheme is used.
The region for computation is divided into three as shown in Fig.91.In Region A which covers the outer sea,the spatial grid size is l50m.In Region B in nearshore zone,it is 50m・Region C is attached to adjust the tidal prisme in the channel of the Same River. One-dimensional unsteady flow is given in Region C.
In addition to the boundary conditions at the offshore open boundaries, river discharge,6.4m^3/s,and cooling water discharge,65.6m^3/s,from a thermal power plant near the river mouth are taken into consideration.
Figure 10 shows the tidal ellipses of M_2,S_2,k_1 and O_1 components.
Figure 11 shows the variations of water surface elevation in time at the river mouth,at the outlet channel of cooling water bbuilt through a sand bar lying in front of the thermal power plant and at a point on the offshore open boundary.Curves are computed results and black circles are mesured data on 16th and 17th,February,1984.At the point on the offshore open boundary, tidal record obtained at the Onahama Harbor 2.6 km north of the site was input.Agreement is fairly good in general,except for a fact that the measured ebb tide is slightly higher than the computed ebb tide at the river mouth.
It is well known that oscillations inherent to the shape and size of the computation region appear if the reflected waves are inappropriately treated at the offshore boundary.The region in the present analysis is nearly a rectangle,7.5km × 10.5km wide.Its average depth is 15m.Period of fundamental mode of free oscillation is 7.2 min. No such oscillation appeared in and disturbed the computed result.This is another support to the present method.
Figure 12 and 13 show velocity vectors in Region B at 6 hr and 18 hr after the beginning of computation.Water level variations at the outlet channel are given in the same figures・Arrows in water level variations show the time when the velocity vector distributions are drawn.Tidal ellipses are also depicted for a point at the middle of Region B,marked by a white circle at the tip of arrow.
Figure 12 shows ebb tide.From river and outlet channel,strong jet-1ike flows enter the sea and form eddies.On an average,tidal currents flow from left(north) to right(south) along the shoreline.
Figure 13 shows high tide.At the river mouth,current velocity nearly vanishes whereas cooling water discharge is still flowing into the sea.At flood tide prior to Fig 13 sea water flowed upstream with small velocity in the river,Tidal currents in the nearshore zone flow from south to north, parallelly to the shoreline.

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Fig.9 Region for computation
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Fig.10 The tidal ellipse
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Fig.11 Comparisons of the water surface elevation between numerical results and measured data
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Fig.12 Velocity vector at Region B(t=8 hr)
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Fig.13 Velocity vector at Region B(t=16 hr)

CONCLUSIONS

1.It is possible to compute the tidal current composed of several componenets by using the imaginary shoreline method.
2・Error owing to the simple assumption are evaluated by the following factor such as the path of propagation,the water surface elevation,and the phase velocity of reflected waves.The errors are due to 1) the shape of actual shoreline,2) the slope of the bottom and 3) scattered waves.Numerical examinations show that the errors can be ignored as long as the period of wave is longer than 12 hours.
3.The proposed imaginary shoreline method is successfully applied to a site. A numerical simulation is stably carried out.Its results show a good agreement with measured data.

REFERENCE

l)Horie,T.,Y.Kaneko and K.Murakami;Elevation-and Velocity-Controls in Tidal Simulation,Proc.23th JapaneseConf.on Coastal Eng.,493-497, 1976(in Japanese)
2)Ippen,A.T,and Goda,Y.Wave Induced Oscillations in Harbors,Report No.59,Hydrodynamics Lab.,M.I.T.,1963

6th Congress Asian and Pacific Regional Division International Association for Hydraulic Reserch Kyoto,Japan 20-22,July,1988 Errors Induced by Refraction in Tsunami Numerical Simulation J.Sayama,Graduate Student and N.Shuto,Professor Deparetment of Civil Eng.,Tohoku Univ.,Sendai 980,Japan and C.Goto,Senior Researcher Port and Harbour Research Institute,Yokosuka239,Japan

ABSTRACT

Discretization inevitably deteriorates reproduction of refraction, because actual topography can not be perfectly expressed in numerical simulations. The coarser the spatial grid is, the less affected the direction of tsunami propagations is. As a result, convergence and divergence of tsunami energy in numerical simulations may become different from real situations. Based upon Snell’s law, a criterion is proposed to ensure the accuracy of simulated tsunamis in this respect. The criterion is confirmed by numerical results for a simple topography. It is also applied to numerical simulations of the AnseiTokai earthquake tsunami in 1854.
KEYWORDS: Tsunami numerical simulation, Refraction of long waves, Spatial grid size.

1.INTRODUCTION

Numerical simulations have been becoming a powerful means in the planning of tsunami defence works. It is widely believed that the spatial distribution of maximum run-up height can be hindcasted within errors of less than 15% for a historical tsunami, if the space and time grid sizes are adequately designed.
However, there are special topographies where even the recent numerical technique can not reproduce the trace, of tsunami run-up at all. Examples are found at Shimoda and Omaezaki in case of the 1854 Ansei-Tokai earthquake tsunami, and at Sakihama in Okkirai Bay in case of the 1933 Showa Great Sanriku tsunami. Omaezaki is sheltered by a long sand spit and the other two places have the bay mouth open normally to the main route of the tsunamis. After having run almost parallelly to water depth contourlines, the tsunamis are refracted and attack these places.
Criteria used at present to design the space grid size include no consideration on exact reproduction of refraction [Goto & Shuto,1982; Shuto et al.,1985]. The aim of the present study is to establish a relationship between the space grid size and the possible errors in numerical tsunami simulations in case that the refraction is a dominant phenomena. The result is applied to the computation of the 1854 Ansei-Tokai earthquake tsunami in and around Shimoda Bay.

2. AN APPROXIMATE EVALUATION METHOD OF ERROR DUE TO REFRACTION

2.1 Analytical Solution
Snell’s law well known in geometrical optics is applied to analytically obtain a wave ray on a uniformly sloping beach. With the phase velocity of linear long waves (gh)^O.5,Snell’s law is written as (1)
where h is the water depth, g the acceleration of gravity,\theta_0 the incident angle and \theta the refraction angle.
In case of a beach of uniform slope a as shown in Fig.1, the water depth is given by h = h_0 - ax and Eq.(1) is reduced to
(2)
The coordinates (X,Y) of a wave ray is given by the following equation, if Eq.(2) is combined with the tangent of the wave ray dX/dY = tan\theta .
(3)
where \beta = (1 - ax/h_0)^0.5 . This is called hereafter the analytical solution.
2.2 Approximately Evaluated Refraction for Linear Long Waves Although no wave rays are explicitly pursuited in numerical simulation of tsunamis, the spatial grid size has a strong influence on the propagation direction of the tsunamis.
Referring Fig.1, let us assume that the horizontal distance from the beginning of a slope to the shoreline is divided into N segments of the same length. In each segment, the water depth is assumed constant; that is, the water depth is assumed to change abruptly at the boundary of the two neibouring segments. Snell’s law, if, applied to the first grid point A, yields
(4)
Similar refraction relationships are expected to occur at every grid boundaries until the wave ray arrives at the shoreline. Then, the y-coordinate of the wave ray at the shore line is given by Eq.(5), with the origin taken at the point of incidence on the top of the slope.
(5)
This is called hereafter the discretized approximate solution.
It should be noted that Eq.(5) only provides an approximate evaluation of refraction in numerical simulations, because under an actual situation the shape of water depth contours as well as the relationship between the depth contours and the spatial grids are seldom so simple as assumed in the derivation above.
Applicability of Eq.(5) is examined, compared with numerical results for linear long waves. Figure 2 shows examples. The leap-frog scheme is used in the simulation. Sinsoidal waves of the wave period, 300 s, and of the wave-height-to-depth ratio, 0.01, are assumed to enter, at an angle of incidence 600 , into the beach of a uniform slope a. Wave rays are obtained by building normal lines- to the front of the first wave. Figures 2(a) and 2(b) show results for DX = 2250m and 750m. Numerical results coincide very well with the results estimated with the discretized approximate solution. It is also noted that the smaller the grid size is, the smaller the difference between the numerical results and analytical solutions. It is, therefore, concluded that the analytical and discretized approximate solutions can be used to establish a practical relationship to estimate errors due to refraction which depend upon the selection of the space grid size in numerical simulations.
2.3 Error Due to Refraction in Numerical Simulations The refraction error is defined as the ratio of the difference between the analytical and discretized approximate solutions to the analytical solution, as follows.
(6)
Figure 3 is drawn,based on Eq.(6),for a quick estimation of the refraction errors in terms of the incident angle and the numbers of divided segments.
3. NUMERICAL SIMULATION OF THE 1854 ANSEI-TOKAI EARTHQUAKE TSUNAMI IN AND AROUND SHIMODA BAY
3.1 Method of Numerical Simulation
Propagation of the tsunami in deep sea is computed with the linear long wave theory. Transformation in shallow sea and run-up on land are computed with the shallow water theory.
As the initial condition, a source model proposed by Ishibashi and supported by Aida [Aida, 1981] is used in the present simulation. Table 1 shows the fault parameter of the source model. Figure 4 shows the distribution of the vertical displacement of sea bottom which is used as the initial rise of the water surface without any modification. Numbers in the figure are the vertical displacement in m and lines are corresponding contours.
In Figs.4 and 5, areas included in the present simulation are shown. Grid sizes are taken wide in deep sea and made smaller toward shore.

3.2 An Application of Fig.3 to a Practical Case
In order to determine the size of space grid in a simulation of the AnseiTokai earthquake tsunami around Shimoda, possible errors are estimated by the use of Fig.3. For this purpose, the incident angle, the starting point of refraction and the length of slope (or the area where the refraction is dominant) should be given, taking the following fact into consideration that the larger the incident angle is, the larger the error becomes.
As a simple method, the grid size is determined as follows. Refer Fig.3, where a big arrow shows the direction of the tsunami propagation obtained from the numerical tsunami simulation in deep sea. A chain line drawn in Fig.3 is a smoothed contour of the water depth, 400m, which is twice the water depth where a tsunami begins to feel the sea bottom effectively. The starting point of refraction is taken on this smoothed contour and the incident angle is determined as 85°. The length of slope is measured as is shown by the dotted line in Fig.5 and is 13,800m. Corresponding to these values, the numbers of segment necessary to limit errors within 5 % are found to be 89, or the length of a spatial grid is 13,800/89 = 172m. In this simple method, the slope is assumed uniform along the whole dotted line in Fig.5.
 There is, of course, another more exact method. The dotted line in Fig.5 can be divided into sub-intervals of different uniform slopes. Then, Eqs.(3) & (5) are repeatedly applied. Table 2 provides a comparison between the simple and the more exact methods. Difference between the two methods is small. The simple method is satisfactory for practical purposes.
Figure 5 also shows numerically obtained wave rays, drawn nomally to the wave front at each time steps. Full lines are for the grid 100m wide, while dotted lines for the grid 800m wide. The coarser the spatial grid is, the less effective the refraction is.

3.3 Conditions of Numerical Simulation in Detail
Errors in wave rays and related errors are examined, by numerically simulating the Ansei-Tokai earthquake tsunami around Shimoda.
 The area considered in the simulation is divided into three subregions, deep-sea region, near-sea region and run-up-computed region, according to water depth and accuracy required. The last two regions are shown in Fig.5.
In the deep-sea region which covers the sea shown in Fig.4, the grid size varies as 6.4km, 3.2km, 1.6km and 0.8 km, from the deeper part to the shallower part, as is usually selected in tsunami smulations, corresponding to local water depth. It is usually assumed that the refraction is not a dominant phenomena in the deep-sea region.
In the near-sea region in this case, the direction of tsunami incidence and the water depth contours are nearly parallel and therefore the refraction is important to determine the accuracy of the final result. In order to compare the influence of the grid size, three differnt grid sizes, 100m, 400m and 800m, are used.
 In the run-up-computed region which consists of nearshore zone and land, a tsunami behaves not like a wave but a water flow. Although no refraction , is important, the spatial grid size has an important effect on the reproduction of water flow. A grid size, 50 m, is used everywhere in this region.
 The linear long wave thory is applied in the deep-sea and near-sea regions.
The shallow water theory is used in the run-up-computed region.
For comparison, areas actually flooded by the Ansei-Tokai earthquake tsunami is estimated by using the results of old documents [Hatori,T., 1977].
 The tsunami occurred, at the high tide [Aida,I., 1981]. Therefore, water depths on marine charts are adjusted by adding 0.5 m.
3.4 Numerical Results for the First Wave
Figures 6(a),6(b) and 6(c),the grid sizes for which are 800m, 400m and 100m in the near-sea region respectively, provide comparisons of flooded areas, twodimensional distributions of the maximum water level and the maximum water levels along the shoreline, due to the first wave.
Dotted lines enclose the actual flooded areas determined from old documents.
Shadowed areas are computed results. At Shimoda, the computed flooded areas are always smaller than the actual flooded areas. This suggests that the first wave might not produce the maximum run-up. On the other hand, the flooded area at Kisami is well reproduced with the smaller grid size.
Distributions of the maximum water level at the shoreline are shown on the left side of each figure. For the smaller grid size, the maximum water level shows the larger spatial variation. This is of no wonder, because with the wider grid size, the motion of water as well as topography are the more averaged and vice versa.
The area enclosed by one of the contourlines of maximum water level becomes the wider for the finer grid size. This is evidently noticed if the contourline of 3m is compared. In general, with the decrease in grid size, wave rays tend to converge more effectively, the more wave energy is transported into the region under consideration and, as a result, the water level becomes higher.
However, if the discussion is limited to the neighbourhood of Shimoda Harbour, the situation is slightly different. The contourline of 3m encloses the widest area in case of \Delta{x} = 400m, although the case of \Delta{x} = loom gives almost similar results.
3.5 Numerical Results for the First Four Waves A tsunami is a transient long wave. It is not a wrong assumption that a tsunami has one wave crest and one trough at the instant of generation.
During the travel to the shore, the number of wave crest and trough increases due to the two-dimensional effect, due to trapping on and reflection from the continental shelf and shore, and due to other topographical effects. When the tsunami arrives at the shore, it usually consists of several waves in sequence.
Reflected waves and incident waves may be resonant with each other, if the frequency of the main component of the tsunami nearly coindides with the natural frequency of the bay. The maximum run-up height is often resulted from this resonance, for the completion of which three consecutive waves are necessary and enough [Kajiura, 1963]. Taking this result into consideration, the present numerical simulation was carried out until the fourth wave runs up onto and down from land.
Figures 7(a),7(b) and 7(c) show the maximum water levels and run-ups thus obtained. Compared with Fig.6, the flooded areas show a big change while a slight change is resulted to the two-dimensional distribution of the maximum water level. The flooded areas are determined, being mostly affected by the effects of local topography and resonance in the shallow sea, where the length of the tsunami is short. Therefore, the flooded areas, the size of which is of the same order as the wave length, are much affected by the repetition of wave incidence. On the continental shelf where the wave length is long, the situation is different. Even if resonance or trapping occurs, its effect modifies the two-dimensional distribution of the maximum water level rather moderately. In addition, the height of the first wave is the biggest among the incident four consecutive waves. As the result, the two-dimensional distribution of the maximum water level shows only a slight difference between Figs.6 and 7. In other words, refraction on the shelf can be evaluated by the behaviour of the first wave.
As for the flooded areas, Fig.7(b) in which \Delta{x} = 400m gives the best agreement, at every places including Shimoda, with the actual run-up determined from old documents. Figure 8 compares the maximum water level along the shoreline.
With the finer grid size, the larger is the variation due to topography and the higher the water level except for at Shimoda. Compare the results at Kisami and Shimoda. The difference in the water level at Kisami is more than 2m between \Delta{x} = 100m and \Delta{x} =800m, the former giving the higher value. Due to the steep topography, however, no difference in the flooded areas is obtained.
\Delta{t} Shimoda, \Delta{x} = 400m gives the highest water level and widest flooded area.
However, two facts should be taken into consideration. At the mouth of Shimoda Harbour, much higher water level is obtained for \Delta{x} = 100m, more than 2m higher than Ax = 400m. Figure 8 suggests the local resonance around Shimoda is more satisfactorily reproduced in case of \Delta{x} = 100m. The water level at Shimoda in case of Ax = 100m happens to be lower by less than 0.5m. This fact results in the big difference in the flooded area because of the flat topography.

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式(1〜6)
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Table 1 Parameters of fault model for the 1854 Ansei-Tokai tsunami
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Table 2 Errors induced by refraction, estimated with the simple and the more exact methods
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Fig.1 Coordinate System
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Fig.2 Comparison between analytical solutions for reflection on a uniform slope.
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Fig.3 Variation of errors induced by refraction.
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Fig. 4 Distribution o f the initial displacement of the 1854 Ansei-Tokai earthquake. Shaded region is for the near-sea computation.
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Fig. 5 Comparison of the wave ray for different grid sizes and computational region in near-sea.
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Fig. 6 Distribution of maximum water levels for the first wave measured and computed.
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Fig. 6 Distribution of maximum water levels for the first wave measured and computed. (b)\Delta{x}=400m (c)\Delta{x}=100m
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Fig. 7 Distribution of maximum water levels for the first fore wave measardd and computed. (a)\Delta{x}=800m (b)\Delta{x}=400m (c)\Delta{x}=100m
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Fig. 8 Variations of maximum water levels along the shoreline due to the different grid sizes.

4.CONCLUSIONS

A criterion is proposed to design the grid size in numerical tsunami simulations, in order to accurately reproduce the effect of refraction on the continental shelf. Refraction is one of the most important factors when the propagation direction of a tsunami is nearly parallel to the coastline, because the tsunami will be directed toward land as a result of refraction. Equation 6 gives the possible errors and Fig. 3 is drawn for the case of a uniformly sloped beach.
This criterion is applied to the 1854 Ansei-Tokai earthquake tsunami around Shimoda. The results are satisfactory. However, evaluation of the results needs a careful examination, because topography is closely connected with the results. Not a snigle output but plural outputs are required to judge which grid size gives the best result.

ACKNOWLEDGEMENTS

A part of the present study was supported by the Scientific Research Grant from the Ministry of Education,Science and Culture.The authors wish to express their gratitude to the UNIC coorporation for its assisance in numerical simulations.

REFERENCES

1.Aida,I.[1981],「Numerical Experiments the Tsunami Generated off the Coast of the Toukaido District」,Bull. Earthq. Res. Inst.. Vol.58, pp.667-681 (In Japanese).
2.Goto,C. and N. Shuto.[1982],「Numerical Simulation of Tsunami Propagations and Run-up」,Tsunamis:Their Science and Engineering,AEPS,Terra Sci. Pub. & D. Reidel Pub.,pp.439-451.
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4.Kajiura,K.[1963],「Effects of a Breakwater on the Oscillations of Bay Water」, Bull.Earthq. Res. Inst..Vol.41,pp.403-418 (In Japanese).
5.Shuto,N. et al.[1985],「A Study of Numerical Technique on the Tsunami Propaga tion and Run-up」,Science of Tsunami Hazards,Int.J.Tsunami Soc., Vol.4 pp.111-124.

6th Congress Asian and Pacific Regional Division International Association for Hydraulic Research Kyoto, Japan 20-22, July, 1988 Numerical Simulations of the Transoceanic Propagation of Tsunamis F. IMAMURA, Graduate Student and N. SHUTO, Professor Department of Civil Enging., Tohoku Univ., Sendai 980, Japan and C. GOTO, Senior Researcher Port and Harbour Research Institute, Yokosuka 239, Japan

ABSTRACT

A condition necessary for correct reproductions of distant tsunamis is discussed. The dispersion terms plays an important role in propagating over the ocean. The leap-frog scheme applied to the linear wave equations inevitably introduces an artificial dispersion term, due to discretization. If the R.D.value, the ratio of the artificial dispersion to the physical dispersion, is well designed, this FDM can give similar results to those obtained by the linear Boussinesq equation. Numerical computations thus designed simulate well the two major tsunamis.
KEYWORDS: Artificial dispersion, Numerical simulation, Distant tsunami.

1. INTRODUCTION

Along the fringe of the Pacific Ocean, there is a seismic belt where the active crustal movement frequently generates earthquakes and tsunamis. A huge tsunami yields not only local damages but also damages in the very far region from the origin. For example, the Hawaiian Islands have been suffering from this kind of distant tsunamis. Japan is not an exception. Many research attempts have been made on the propagation of distant tsunamis over the Pacific Ocean. However, there are only a few examples of numerical computation (T.Ueno, 1965 and L.S.Hwang & D.Divoky, 1972). Main reason is the limited capacity in the computor memory. In such a simulation, very wide area should be included. With a coarse spatial grid, numbers of grid are kept small enough for an ordinary computor but the computation gives inaccurate results.
Introduction of a super computor solves this difficulty.
The present study discusses the conditions to ensure the accuracy of the numerical results and shows the reproduction of two tsunamis, the Chilean tsunami in 1960 and the Great Alaska earthquake tsunami in 1964.

2. EQUATIONS AND NUMERICAL TECHNIQUE

In order to obtain good results in numerical simulations, there are two major questions to be answered. One is what kind of equations should be used and another is how wide the spatial grid size should be taken.
2.1 MAGNITUDE OF TERMS
The importance of terms in the momentum equation for long waves will be simply discussed by the following equation,
(1)
where, \eta: water level, M,N: discharge fluxes, h: water depth, f: Coriolis」 parameter, n: Manning」s roughness, g: acceleration of gravity.
Normalized by the local acceleration term, an example of comparison of terms is found in Table 1, for the wave height, 4m ; water depth, 4000m and Manning’s roughness, 0.01 which are typical values for a tsunami in deep ocean. It is clear that three terms, i.e., the convection, nonlinear effect on hydrostatic pressure and bottom friction, are very small compared with the local acceleration term. They can be, therefore, ignored in the numerical model of the transoceanic propagation of tsunamis. On the other hand, the dispersion term varies from the order of 10^+0 to 10^-4. Consequently, the linear Boussinesq equation including the dispersion term is recommended.
2.2 ARTIFICIAL DISPERSION AND GRID SIZE
It is well known that the shape of computed tsunamis may become quite different from the actual tsunamis, because errors which are dependent on the grid size originate from the numerical scheme and are accumulated during the travel over the ocean.
The surface elevation contours with the linear long wave equation for three different grid sizes are shown in Fig.l. The contours for dx=10’ are similar to those for Ax=5’. However, the results for ゥx=30’ show a different pattern.
This is due to the artificial dispersion term introduced by the finite difference scheme. If the linear long wave equation is expressed by the leapfrog scheme, the artificial dispersion term is given as the last term in the following equation.
(2)
This dispersion term is the first order approximation of the discretization error. On the other hand, the physically correct dispersion term in the linear Boussinesq equation is the last term in Eq.(3).
(3)
If the magnitude of the dispersion term in Eq.(2) is set equal to that in eq.(3), the leap-frog scheme applied to the linear long wave equations can yield the result equivalent to the linear Boussinesq equation, the numerical scheme for which is more complicated and time-consuming. The relative magnitude between the two dispersion terms is defined as the R.D.value, as follows.
(4)
Figure 2 shows differences in numerical results for different R.D.values.
This figure supports that the R.D.value is a good parameter for evaluation of the magnitude of numerical dispersion term, introduced by the leap-frog scheme, into the linear long wave equations.
2.3 GOVERNING EQUATIONS AND INITIAL CONDITIONS
For a tsunami in the Pacific Ocean, the linear long wave equation with the Coriolis」 force, expressed in the spherical coordinate system, is applied.
(5)
where, M,N: discharge fluxes in the \Phi and \lambda directions, R: radius of earth \Phi,\lambda: latitude and longitude.
This set of equations is solved by the leap-frog scheme. On taking the results in section 2.2 into consideration, the spatial grid size is determined to be 10」 (R.D.=1.56, h=5000m) with the corresponding time step, 20 seconds. The computational region shown in Fig.3 covers almost whole the Pacific Ocean.
 Faults parameters for two tsunamis are shown in Table 2. For the 1960 Chilean tsunami, the vertical displacement of sea bottom is calculated with these parameters and used as the initial condition. For the 1964 Alaskan tsunami, the initial wave profile is determined from the results of the ground displacement survey (Plafker, 1969).
The fact that a fault starts from the epicenter to its environs is not taken into consideration of the initial condition, because this effect becomes negligible as the tsunami travels far away.

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式(1〜5)
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Table 1 Order of terms in comparison with the local acceleration term
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Fig.1 Comparison of the surface elevation contour at 3hr.30min. computed by the linear long wave equation for the Alaskan tsunami
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Fig.2 Variation of water level at 3 points shown in Fig.1, for three different grid sizes with the linear long wave equation Dashed lines show the results by the linear Boussinesq equation. R.D.values
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Table 2 Parameters of fault models for the 1960 Chilean tsunami (upper) and the 1964 Alaskan tsunami (lower)(H.Kanamori& J.J.Cipar, 1974 and W.Stauder& G.A.Bollinger, 1966)

3. The 1960 CHILEAN TSUNAMI

Figure 3 shows positions of the tsunami front with a time interval of one hour. At the beginning, the tsunami spreads circularly. Near the Hawaiian Islands, northern parts of the tsunami front are slightly changed its direction toward Japan and the Kamchatka Peninsula.
Numbered points marked by * in Fig.3 are the tide gauge stations for the comparison with the computed results.
As for the arrival time, the arrival time of the first wave 「crest」 is compared, because it is difficult to distinguish the start of rise in water level in tide records. The arrival times obtained in the numerical simulation are in good agreements with measured data.
Figure 4 shows the distribution of the highest water level. As for the concentration of tsunami energy to the Hawaiian Islands, there may be two reasons. The first reason is that the Hawaiian Islands are located in the direction of the short axis of the the earthquake fault. It is well known that tsunami energy radiated in the direction of the short axis is much bigger than that in the direction of the long axis, especially in such a case that the long axis is very long compared to the short axis. The second reason is the refraction due to the sea bottom topography. As a result, the tsunami energy was focused toward Japan, which is located at a position just opposite to the tsunami source, with respect to the earth.
Figure 5 shows a comparison between the computed maximum wave heights. For this comparison, the computed results are modified to the values at 100m water depth, by using Green’s law. Both of computed and measured results (R.Takahashi& T.Hatori, 1961) show a tendency that high wave height appears in Japan, the Aleutian Islands and Hilo in the Hawaiian Islands. While, the computed results are more than twice the measured at Midway Island and Johnston Island which are located in the direction of the major energy radiation.

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Fig.3 Propagation pattern of the wave front of the Chilean tsunami * marks show the position of the tide gauge stations.
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Fig.4 Distribution of the highest water level (m) of the 1960 Chilean tsunami
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Fig.5 Comparison of the maximum wave height between computed results and tidal records for the 1960 Chilean tsunami

4. The 1964 ALASKAN TSUNAMI

Figure 6 shows the propagation pattern of the 1964 Alaskan tsunami. The wave front propagates, keeping a form of ellipses. It takes 4 hours to attack the Hawaiian Islands and 7 hours to arrive at Japan. In this case too, the computed arrival times show good agreements with records.
The main wave propagates toward south-east, in the direction of the short axis of the wave source (Fig.7). High wave heights appear along the west coast of North America. On the other hand, wave height of the tsunami toward Japan is less than 10cm. This pattern corresponds with the observations.
Comparison of the maximum wave height with tidal records (M.G.Spaeth & S.C.Berkman,1967) is shown in Fig.8. The computed results show good agreements with records except for the wave height at Hilo, the Island of Hawaii. The simulation model introduced in the present paper could satisfactorily reproduce the tsunami in Alaska and Canada.
One question arises here why there is a disagreement between the computed and measured results at Hilo in case of the 1964 Alaskan tsunami, although they agree well in case of the 1960 Chilean tsunami. There are two major reasons. The first reason is that the present similation was carried out with a wide grid size which can not express the topography in detail. As is shown in Fig.9, the topography around Hilo is complicated. Therefore, the more detailed computation with the fine grid size by use of the shallow water theory is required to reproduce tsunamis at Hilo. In this respect, the agreement in case of the 1960 Chilean tsunami is a mere good luck. The second reason is the way of selection of the representative run-up value. As is shown in Fig.10, run-up heights in and around Hilo vary from 0.9m to 3.0m. In Fig.9, the tide record is compared. However, it is doubtful whether the tide record provides a really representative value for Hilo.

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Fig.6 Propagation pattern of the wave front of the Alaskan tsunami * marks show the position of the tide gauge stations.
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Fig.7 Distribution of highest water level(m) of the 1964 Alaskan tsunami
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Fig.8 Comparison of the maximum wave height between computed results and tidal records for the 1964 Akaskan tsunami
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Fig.9 Map of the Island of Hawaii showing run-up height(m) of the 1960 tsunami and the 1964 tsunami
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Fig.10 Run-up height of the 1964 tsunami at Hilo(H.G.Loomis,1972)

5. DISCUSSION AND CONCLUSION

(1) In order to ensure the good results in the numerical simulations for a distant tsunami in deep sea, the dispersion term is important compared with the nonlinear effect and bottom friction. The linear Boussinesq equation is a suitable foundamental equation for the simulations.
(2) If the spatial grid size is properly selected, the artificial dispersion introduced by the leap-frog scheme for the linear long wave equation has the similar effect to the physically correct dispersion. The condition that the linear long wave equation can give the same wave profile computed with the linear Boussinesq equation requires the R.D.value equal to unity. The present simulation model with the linear long wave equation has other advantages of saving computer memory and CPU time.
(3) Two tsunamis computed here radiate their major energy in the direction along the short axis of the initial profile. Then, high wave heights appear along the western coast in USA and Canada in case of the 1964 Alaskan tsunami while in Japan coast and the Aleutian Islands in case of the 1960 Chilean tsunami.
(4) Computed results are compared with tidal records. Overall agreement of the computation is evaluated in terms of Aida’s K and K values (Aida,1978).
For the 1960 Chilean tsunami K=1.141 and K=1.995 while K=1.337 and K=2.105 for the 1964 Alaskan tsunami. Although the simulation requires improvement because no computation in shallow sea is included in the present computation, the agreement is satisfactory, judging from our accumulated experiences. The CPU time to reproduce 30 real hours is 8 min. for the linear long wave equation with the aid of NEC SX-1.

REFERENCES

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Spaeth,M.G. and Berkman,SC.(1967)「The tsunami of March 28,1964,as recorded at tide stations」,ESSA Technical Report C&GS No.33. Coast and Geodetic Sutvey Technical Bulletin no.33.
Stauder,W. and Bollinger,G.A.(1966)「The focal mechanism of the Alaskaearthquake of March 28,1964 and of its aftershock sequence」,J.Geophy.
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Tsunami Concentration Degree in Tonankai Plate Boundary Keisuke Tsukui Technical Research Institute Obayashi Corporation Tokyo, Japan Yasuo Fu jisawa Technical Research Institute Obayashi Corporation Tokyo, Japan Chiaki Goto Civil Engineering Department Tokai University Kanagawa, Japan

Abstract

Presently, it is predicted that some day a large earthquake may strike the Nankai area, the coastal zone between Kii peninsula and Kyushu island in Japan. Consequently the earthquake observation network has beenestablished to measure policies against earthquakes. However in case the Nankai earthquake occurs, it is expected that the coastal cities will be not only damaged by the earthquake but also deadly damaged by tsunami. In this study, the authors numerically analyze tsunamis which attack at the Nankai area with assumption the fault (tsunami source) parameters from the view-point of the tsunami engineering and the tsunami concentration.degree for the area. The tsunami concentration degree is obtained for Nankai.

1. Introduction

The sea near the Japanese shore is seismicity zone eminent world, and there is a great deal of the incidence number of tsunamis caused by earthquakes. The greaterpart of tsunamis which brought Japan serious damage, occur in Pacific coast side. In the history of tsunami disasters;the first one.was the Nankai tsunami in occurred in the offingof Shikoku in 684. There were eight huge earthquakes more than M8 which appeared on Nankai trough in 1300 years since 684. The tsunamis brought serious damages in the wide area from-Pacific Kyushu coast to Kii peninsula coast.
Nankai tsunamis caused serious damages particularly in 1707 (Hoei tsunami), 1854 (Ansei tsunami) and 1946 (Showa Nankai tsunami).
In this study,we focused on Showa Nankai earthquake tsunami occurred on Decemher 21, 1946, by changing location and width of the fault model based on the Showa Nankai earthquakeis fault place in the:range of 132E to 13 7E along Nankai trough. The maximum water level of tsunamis from Pacific Kyushu coast to Kii peninsula coast is obtained with numerical calculations of tsunamis occurring in Nankai trough. The tsunami. concentration degree of each coast is investigated by estimating the energy of tsunamis and the amplification factor of the tsunami maximum water level.

2. Numerical Calculation Method for Tsunami

Current numerical calculation methods for tsunamis canbe divided by two types. One is for tsunamip ropagations in the deep sea area of Pacific. Another one is in the shallow water area of coasts. The former uyses the small amplitude long wave theory (linear long wave theory) because the water depth is large in comparison with the wave height of tsunamis and non-linear effects are small. The latter uses the shallow water long wave theory because relative wave height is large in comparison with the water depth and the non-linear effects, sea bottom frictions and wave dispersion effects can not be ignored.
In this study, the calculation concentration degree of tsunamis is evaluated by obtaining the maximum water level of tsunamis using the small amplitude long wave theory. The calculation time of the small amplitude long wave theory is relatively short in the current tsunami calculation method. However if there are. many calculationregions and the boundary processing, e.t.c., it will take too much time. Therefore the authors developed the highly precise high-speed operation type tsunami calculation method, with the one dimensional model and the boundary processing based on.the small -amplitude long wave theory.
The calculation method is described as a scheme of numerical calculation method of tsunamis based on the small amplitude long wave theory.
(1)
(2)
(3)
Where,\eta is the setup of water surface above the still water level, g is the gravitational acceleration, h is the still water depth.M and N are line discharge flux, and they are defined as follows.
(4)
(5)
Where,u is the velocity of fluid in x directions and v is the velocity of fluid inyy direction. Linearise the above equations with \eta<<h, the following equations are obtained.
(6)
(7)
According the conditions, Coriolis force can be considered in the above equation.In this study, the propagation distance of tsunamis is short near Japanese shore and the Coriolis effect is small, so Coriolis force is omitted here. The staggered leap-frog method is applied in the governing equations.
The calculation grid shown in figure-1 is applied to the finite difference, method of the equations (1) to (3).
Calculation points of water levels and calculation points of flux. are 1/2 mesh shifted in both the space direction and the time direction. The water level. in the calculation grid (i, j, k) is defined as \eta^k_i,j ,the flux in x direction in the grid(i+1/2j, k+1/2) as M^k+1/2_i+1/2,j and the flux in y direction inthe grid (i, j+1/2, k+l/2) as N^k+1/2_i,j+1/2. So, the difference equation of the small amplitude long wave theory can be expressed as follows.
(8)
(9)
(10)
Where,\Delta{s} is the difference interval of space direction,and \Delta{t} is the difference interval of time direction. h_i+1/2,j and h_i,j+1/2 are still water levels in each calculation grids (i+1/ 2,j, k) and (i, j+ 1/2, k). When the value of water levels and flux to the time step k+1/2 are obtained, the water levels of the time step k+l can be calculated with equation (8) and the flux of the time step k+3/2 can be calculated with equations (9) and (10). Furthermore, the values of the former time step can be obtained similarly by equations (8) to (10) in turn.
In case of combining with the different regions of grid spacings, interpolating is processed as the following.
The flux .is calculated with the large grid regions and given to the small grid regions. In the water level which is calculated with the small grid regions, the value at the position that is equivalent to the center position of large grid regions is just given to large grid regions. The grid points which are given to the interpolation value between the large grid region and the small grid region-is decided as the small grid.region sticked one grid out to the large gird region in figure-2.

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式(1〜10)
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Figure-1 Grids fpr differences
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Figure-2 Grid combining

3. Fault model and calculation condition

3.1 Fault model
An initial wave of tsunamis is given by a seabed vertical displacement in accordance with fault motions. This fault motion is prescribed with six fault parameterswhich are direction of fault q,dip angle d,slip angle l,fault length L,fault width W and dislocation U,as shownin figure-3.When these fault motions are got with crustal disturbance by fault motions are got with Mansinha-Smylie method1) using by an elastic theory.
The fault parameters used with this study are shown in the model of Showa Nankai earthquake in 1946 by Aida2).The fault parameters are shown in table-1.
3.2 Calculation condition
The calculation is carried out in thirty cases of data based on the fault place ofAida model with changing location of the above faultmodel from 132E to 137E in the computation region, as shown in figure-4. ThE fault width is set at 2/4, 3/4, 4/4 and 5/4 of the Aida model The parameters are determined in this way that the maximun vertical displacements of each faults become same, even the width is changed. As the result, 120 numerical calculations are carried out. The calculation region is connected from region I to III as shown in figure-5. The grid spacings are 3,600m,1,800m and 600min the region I, II, and III respectively. The vertical wall condition is used to the boundary between land area and sea area and the time step is 1 second. The computation region and the grip spacing are shown in figure-5, and the water depth in computation region is shown in figure-6.

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Figure-3 Difinition of fault parameters
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Figure-4 Range for computation model of Showa Nankai earthquake fault
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Figure-5 Computation region and grid spacing
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Table-1 The fault parameters of Showa Nankai earthquake by Aida
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Figure-6 Counter line of water depth

4. Consideration on tsunami concentration degree

4.1 Definition of tsunami concentration degree The tsunami concentration degree (TCD), proposed by Takahashi, Shuto and Koshimura3), is used to evaluate risk degrees. The tsunami concentration degree is a character to examine concentration degree of the tsunami energy of correspondence coast.
Tsunami concentration degrees are obtained as follows. The s-axis is set along a target shoreline, the total tsunami energy Et is defined as the sum of square of the tsunami maximum water level H(s) along all shorelines.
(11)
Where, N is the sum of all shoreline elements with the spatial intervals \Delta{s}. The square of the tsunami maximum water level on a segment is defined as the tsunami energy E(s) which attacksthe coast.
(12)
The ratio of those is defined as the tsunami concentration degree of that coast.
(13)
Besides, the character which is in dimensionless of the tsunami maximum water level averaged of correspondence coast with divided by the maximum vertical displacement of the seabed ground got from fault motion (tsunami initial wave) is defined as the wave height :amplification- rate of tsunamis. in .this study.
4.2 Tsunami concentration degree by the historical tsunami on Tonankai plate
The tsunami concentration degree of the historical tsunamis which brought serious damages in Nankai area in the past in 1707, 1854 and 1946 is shown in figure-7. Aida model is applied to the past three fault parameters and places. These three faults are destroyed almost at the same place, so each tsunami concentration degree is large in Shikoku coast and small in Kyushu and Kii peninsula coasts.
Within Shikoku coast, the energy concentration is about 2% in Tosashimizu- (Ashizuri cape) and Muroto cape. The energy concentration is found in Tosashimizu, and about 5.3% in Muroto cape. Therefore the tsunami energy is easy to concentrate on Shimanto river mouth of Tosa Bay coast, Saga, Kochi (Katsurahama) and Aki .
4.3 Tsunami concentration degree of all tsunami cases Figure-8 and figure-9 show the tsunami concentration degree and the tsunami wave heightmagnification of the 120 cases with various parameters of initial fault place and fault width. The figures show the tsunami concentration degree and the wave height magnification in the respectively vertical axes and locations along the shore (Pacific side coastal place facing Nankai trough) in the horizontal axis. As these figures, the concentration. degree of the tsunami energy is remarkable in Shikoku coast especially the tsunami concentration.
degree at Ashizuri cape.and Muroto cape is up. to 2%. The wave height magnification also overwhelms other coastsi with 2.4 times at these areas. The seabed topography of both capes outskirts affects the above phenomenon highly.
In particular, the water depth in the cape circumference is deepened abruptly and it continues to Nankai trough. Also it can be considered that the fault place is. near to the both capes and faces the fault major axis directionwhere-tsunami energy is strong. In case tsunamis attack, tsunamis are refracted and diffracted in the cape circumference. So the seabed of both capes is the topography where tsunamis are easy to concentrate. Same as the tsunami concentration degree of the historical tsunamis, it was understood that tsunami energies were easy to concentrate on the Shimanto river mouth of Tosa Bay coast, Saga, Kochi (Katsurahama) and Aki.
In Kyushu-coast, the tsunami concentration degree is high in Nobeoka and it is low in Bungo channel because tsunamis are hard to enter there. At Kitan straits, the straits gate shows high value of the tsunami concentration degree and the back side area of straits shows low value. In Kii peninsula coast, Kushimoto located at peninsula nose shows high value. Also the wave height amplification factor of tsunamis is similar to the tsunami concentration degree.
The tsunami concentration degree calculated by changing the fault place and width shows a tendency same as the historical tsunamis.
Figure-10 shows the tsunami concentration degree by changing the fault -width of Showa Nankai Changing the fault width-means changing the period of tsunamis.
The response characteristic of tsunamis and the tsunami energy concentration degree depend on water depth and topography shapes. In case of Ashizuri cape and Muroto Cape where the tsunami concentration degree shows a peak, the tsunami concentration degree increases with increasing of the fault width in Ashizuri cape side. On the other hand, the tsunami energy concentration degree shows the highest value when the fault width is a half of the Showa Nankai in Muroto cape, because tsunami concentration degree became large by a resonance phenomenon.

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式(11〜13)
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Figure-7 TCD of historical tsunamis
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Figure-8 TCD of all tsunami cases
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Figure-9 Wave height amplification factor of all tsunami cases
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Figure-l0 TCD of changing fault-width of Showa Nankai

5. Conclusions

The tsunami concentration degree caused by earthquakes in Tonankai plate boundary was investigated and it is concluded as follows.
(1) Either the historical tsunami or Showa Nankai model tsunami.,most of tsunamis occurring on Tonankai plate boundary attack to the coast facing Pacific. In particular tsunamis are easy to concentrate on Pacific coast of Shikoku, and the concentration of tsunamis appears conspicuously on both outskirts of Ashizuri cape and Muroto cape.
(2) The concentration degree of tsunami energy is large at Ashizuri cape and Muroto cape outskirts. The former is about 2%, and the latter is about 1.8% energy concentration.(3) By changing the fault width, the resonance phenomenon, is found with the influence of seabed topography, water depth, the harbor and land topography. The tsunami concentration degree becomes large with resonance even though the fault width is small.

Reference

1) L.Mansinha, D.E.S.mylie: iThe Displacement Field of Incined Faultsi, Bulletin. of Seismological Society of America, 61, 1971.
2) R.Sato: Seismic Fault Parameter Handbook of Japan Kajima publication, 1989 (Japanese)
3) T.Takahashi, N.Shuto and T.Koshimura: iEstimate of Tsunami Risk Degree in Southeast Hokkaido by TCDi, Bulletin of The Seismological Society of Japan, p.B38, 1995 (Japanese)

CHAPTER 43 Run-up of Tsunamis by Linearand Nonlinear Theories Chiaki Goto Instructor of Civil Engineering Tohoku University,Sendai, Japan and Nobuo Shuto Professor of Civil Engineering Tohoku University,Sendai, Japan

ABSTRACT

Linear and nonlinear sets of equations of long waves in the Lagrangian description are solved numerically to obtain run-up heights. Numerical results are compared with theoretical ones in case of simple topographies and the agreement is quite satisfactory. As a practical application, the computation is carried out for the Okkirai Bay in Japan. The computed run-up heighs agree fairly well with the recorded ones.

1.INTRODUCTION

One of the most difficult problems in the numerical simulation of tsunami run-ups lies in the fact that it is not easy to introduce the boundary condition which should precisely reflect the topography of the land where the tsunami arrives at.
In the present paper, one- and two-dimensional problems are treated numerically by adopting both linear and nonlinear sets of equations described in the Lagrangian coordinates. In this system, the boundary condition can be easily satisfied. The water particles lying on the sea bottom at the beginning of the motion do not leave the bottom during the subsequent motion.
The water particle at the wave front is the one which is at the shoreline at the initial instant.
For the analysis, an explicit finite difference method is used. The computation is first carried out for simple topographies, for which the linear equation gives analytical solutions. The numerical results of the linear theory are compared with the theoretical values and agreement is quite satisfactory.
Then, the nonlinear computation is carried out. The difference between linear and nonlinear theories amounts 20% at most.
As an example of practical application, The computation is carried For the Okkirai Bay on the South Sanriku Coast in Japan, which suffered by the attacks of tsunamis in the past.

BASIC EQUATIONS AND NUMERICAL TECHNIQUES

Let us consider the irrotational, three-dimensional motion of an apressible fluid. The displacements of the water particle which is at point (a,b,c) at the initial instant is (a+x,b+y,c+z) at the time t.
still water surface is taken as the a-b plane, and the c-axis is taken ically positive upward. Linear and nonlinear equations of long waves ie Lagrangian coordinates have been derived by authors (Shuto, 1967; ,979; Goto and Shuto, 1979).
The linear theory is written:
(1)
(2)
the nonlinear one is g denotes the acceleration of gravity, h(a,b) the still water depth the water particle existed at the initial instant and h(a+x,b+y) also L water depth where the water particle arrives at. The relationships en these theory is similar to that between linear long wave and Low water theories in the Eulerian coordinates.
These equations are expressed in terms of the displacQments (x,y,n) of free surface from the original position. In the present analysis, the angian velosities (u=xt,v=yt,nt) are introduced in place of them. The om friction expressed in Manning’s n and proportional to the square of velocity is also introdeced. This change of variables makes the rical computation more stable and easier.
Therefore, the equations are, for linear waves,
(5)
(6)
and,for nonlinear waves,
(7)
(8)
Where D denotes the total water depth.
For the water particle at the initial instant, the still water depth h is equal to zero. Therefore, in these equations of continuity of long waves, the value (\eta_t + uh_a+x + vh_b+y ) is equal to zero provides the boundary condition at the wave front.
For the numerical computation, an explicit finite difference method similar to the staggered leap-frog scheme is used. For example, the difference equations of the linear theory are expressed as
(9)
(10)
(11)
a \lambda=\Delta{t}/\Delta{s}; \Delta{s} and \Delta{t} denote zontal and time mesh size, ectively, and
(式1)
ions h_x and h_y denote the L slopes, in the x- and y-tion where the water particle es at, so we calculate and them beforehand.
In Fig. 1, the numerical tation mesh is shown. The sity are calculated for, the where arrows are shown and ical displacement at the point Fig. 1 Numerical mesh.
black circles are shown.
We need the velocities for joints of the black circles, we estimate them by a linear interpolation.
the points along the initial shoreline, we estimate the velosities by a r extraporation.
The same procedure was also adopted in case of nonlinear theory.

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式(1〜11)
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(式1)

RESULTS OF COJ UTATION

Comparisons with the analytical solutions.
F irst, we examine the accuracy of the numerical scheme for onecsional cases. A simple topography, a uniform slope connected to the gel of constant depth, is used. In this topography, the maximum run-up it R was theoretically presumed by Keller and Keller (1964) and confirmed auto (1972), by using the linear theory.
(12)
L is the wave length in water of constant depth, H the incident wave t, 1 the horizontal length between the toe of the slope and the shoreand J_n the n-th Bessel Function of the first kind.
For the simple topography, we have computed several cases with no ion effect. Figure 2 shows the comparison. The curve is the result by the analytical solution, while black circles are the numerical results. Examples of wave profile are shown in Fig. 3. They are for maximum run-up and run-down for wave periods of 300 sec and 600 sec by linear theory. The lines are the analytical solution and the circles the numerical results. We consider the agreement is satisfactory.
Though examination of the numerical results obtained for different conditions, we find that the accuracy of the numerical results depends upon three factors, the spatial mesh size As, the slope of topography a and the wave length L. In order to see this, the ratio of the computed maximum run-up height to the analytical one is shown in Fig. 4 as a function of a parameter made of the three factors. With the bigger value of the parameter, the accuracy becomes worse.-The reason is considered due rioration of the etraporation used wave front, with slopes, longerze and shorter ngth. condly, it is how big the effect inearity is. The tion is carried the same topography. lts are compared alytical results of ar theory. In computation.
ar computations, a e with the higher l displacement ith the higher velocity. Therefore, in some cases, a particle the wave front overtakes the wave front. We consider that this ces the breaking and it is necessary to make an adjustment. We estriction that the particles behind should not get ahead of the as in front of them. White circles in Fig. 5 show the results of putation with ustment and the 10 nes those without ustment. This non becomes t with the wave steepness. In putation of tsunamis, the na is almost ble, because of mall steepness.
amples of wave with the ent are shown in The wave fronts: analytical and the numerical, due to the small de, difference between the nonlinear results and the linear ones is ge.
irdly, the accuracy of our numerical scheme for the two-dimensional re examined. We employ the case of a rectangular b ay’with the of a uniform slope. In-this simple topography, an analytical n of maximum run-up height are obtained by use of the linear theory Lagrangian coordinates as follows,
(13)
where
(式1)
and where 2d denotes the width of the bay and k the wave number.
Tsunami in a bay may increase their heights due to resonance, and then the effects of nonlinearity may become unnegligible. Figure 7 shows the comparison of the analytical results of the linear theory and the numerical results. White circles are of nonlinear theory and black circles are of linear theory.
As the results of these preliminary examinations, we get the following conclusions.
1. Our numerical scheme is stable and satisfactory with respect to the accuracy of the results, for both one- and twodimensional cases.
2. The nonlinear effects can increase the linear results by amount of 20% at most.
(2) An application to the Okkirai Bay.
The method with the nonlinear and bottom friction (n = 0.029) effects is applied to a bay on the Sanriku Coast, in Japan-. This area been frequently attacked by tsunamis. In the Okkirai Bay, there five fishing ports with flats behind them. Along the other part of coast, we find the almost vertical cliffs and no village. Therefore, main interests are upon the five places.
The tsunami selected as the input is the Great Meiji Sanriku Tsunami 896. Due to this tsunami, more than 27,000 persons were dead and t 10,000 houses were destroyed and lost. The source of the earthquake ted at about 100km off the Sanriku Coast. Figure 8 shows the area of source of the tsunami the movement o f the bottom which estimated atori (1976). The ar in the figure is vertical displacement he sea bottom. We me that the displaceoccured instantly the water surface ad the same movements he sea bottom.
In order to economize Soucse area in 1896 computation time, the a region is devided four sub-regions of erent mesh size. The mum mesh size is 1/9km.
re 9 shows the smallest on in the Okkirai Bay. The origin of time. is a at the time when the quake occured. At t 17 minutes after the quake, the water level as to recede. Then, it 37 ows a slight ebb of r level. Figure 10 shows time history of water ace elevation at the in 1896..
ance of the bay.
An example of the numerical results is given in Figs. 11 to 15. igs. 11 and 12, which correspond to the time 2100 s and 2280 s, s show the horizontal velosities, lines the contour lines of the r surface and numbers attached the height in meters above still water L. Then, the first maximum run-UP`occurres at the bottom of the bay. now the details in Figs. 13 to 15. The solid line is the network acting the initial positions of water particles when we have no tsunami. iotted line denotes the deformation of the network at each time. The s shown in the center of the dotted mesh is the mean value of the cal displacement, averaged from the value at four corners.
Figure*15 corresponds to the maximum run-up. The chain line in this e shows the recorded inundation heights in 1896. There is a small in this village. The record shows the run-up height of 10.3 m along river (point A). The numerical simulation gives 10.2 m. Due to the e grid cell, the computed point can not exactly coincide with-the ded point. At the point B, the record shows 13.3 m. The numerical is 11.5 m. Although the difference is rather big, the inundation of the recorded and the numerical ones coincide well, because the here is almost vertical. At the point C, the record is 11.2 m and omputed one is 11.4 m. At the point D, 11.8 m and 12.5 m,respectively.
As the result, it is considered that the agreement is satisfactory an nethod employed here is effective to simulate the run-up of a tsunami.

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Fig. 2 The comparison between the analytical and the numerical (linear) results.
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Fig. 3 The comparision of wave profile .
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Fig.4 The accuracy of the numerical computation
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Fig.5 The comparision between the analytical and the numerical(non-linear)results.
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Fig.6 Example of wave profile for the nonlinear theory.
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Fig. 7 The comparison between the analytical and the numerical results for a rectangular bay.
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Fig.8 The area of the source of the Tsunami in 1896
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Fig.9 The region of the smallest mesh in the numerical simulation.
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Fig.10 The water level at the entrance of the bay.
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Fig.15 The comparison between the recorded and the numerical maximum run-up height for the Great Meiji Sanriku Tsunami in 1896.

4.CONCLUSION

Linear and nonlinear long wave theories in the Lagrangian description are proved to be applicable to the analysis of tsunami run-up. Computation schemes are examined and established in both one- and two-dimensional cases. The present method can be also applied without difficulty to the actual topography of complicated geometry.

ACKNOWWLEDGEMENT

The authors withed to express their gratitude to Dr. T. Iwasaki and Dr. A. Mano, Professors of Civil Engineering, Tohoku University, for their discussions and co-operation .
A part of the study was supported by a grant from the Ministry of Education.

REFERENCES

1) Shuto, N. : Run-up of long waves on a sloping beach, Coastal Engineering in Japan, Vol. 10, pp. 23-38, 1967.
2) Goto, C. : Nonlinear equation of long waves in the Lagrangian description, Coastal Engineering in Japan, Vol. 22, pp. 1-9, 1980.
3) Goto, C. and N. Shuto : Two-dimensional run-up of tsunami bynonlinear theory, Proc. of the 26th Conf. on Coastal Engineering in Japan,Vol. 26, pp56-60, 1979(In Japanese).
4) Keller J. B. and H. B. Keller : Water wave run-up on a beach, Research Report No. NONR-3828(00), Office of Navel Reasearch, Dept. of Navy, 1964.
5) Hatori, T. : Tsunami magnitude and wave source regions of historical Sanriku Tsunamis in Northest Japan, Bull. Earthq. Res. Inst. of Tokyo, University, Vol. 51, pp. 197-207, 1976 (In Japanese).

Reprinted from Coastal Engineering 1994 Proceedings, 24th International Conference Coastal Engineering Research Council/ASCE Held October 23-28, 1994, Kobe, Japan CHAPTER 1 On The Characteristics of One-Dimensional Spectra and Non-Dimensional Parameters of Wind Waves Toshio Aono* Chiaki Goto**

ABSTRACT

Similarity relationship among non-dimensional significant wave parameters are discussed which is based upon the 3/2 power law. The characteristics of the wind wave spectra in deep water are investigated by using the parameters of JONSWAP spectrum and the 3/2 power law. From theoretical and empirical arguments, it is confirmed that a f^-4 power law exists at high frequency range, that JONSWAP spectrum parameter y and \sigma are varied with fetch, and that parameter \alpha and \gamma satisfied a -1/3 power law. In shallow water region, spectral form of wind waves is varied with the shoaling coefficient. Through the analysis of the wind wave spectra, a new spectral formula is obtained.

* Senior Research Engineer, Technical Research Institute, Toa Corporation, 1-3 Anzen-cho, Tsurumi-ku, Yokohama 230, Japan
** Professor, Department of Civil Engineering, Tokai Univ., 1117 Kitakaname, Hiratsuka city, Kanagawa 259-12, Japan

1.Introduction

Relationship between the marine surface wind and wind waves gives us the basic knowledge in field as diverse as air-sea interaction, wave hindcasting and engineering design of maritime structures.
Many researchers pointed out that the frequency spectra of windgenerated gravity waves shows similarity. It is well known that a similarity law is applicable to the spectral form of wind waves. Phillips (1959) derived the f^-5 power law using the similarity and dimensional analysis argument. Many functional forms of the wind wave spectrum have been proposed in the past, such as Pierson-Moskowitz (1964), BretshneiderMitsuyasu (1970) and JONSWAP (1973). However, such spectral forms represent the fully developed condition of wind waves, except the JONSWAP, so that in the case of rapid development of wind waves by typhoon, observed and calculated spectral forms do not show good agreement, especially near the peak frequency. Recently, Toba(1973) derived the f 4 power law based on 3/2 power law. This argument of spectral gradient was related to the resistance law between the wind and the wind waves.
These characteristics of wind waves are investigated in deep water, but field observation data is limited at shallow water region, especially under high wave condition. The standard form of shallow water spectrum is proposed by Thornton (1977) and Bouse et. al (1985). These spectrum is based upon the f 5 power law.
The present work reveals the quantitative relationship linking marine surface wind and wind waves. The paper discusses the significant wave parameters and the frequency spectrum of wind waves by using the 3/2 power law relation.

2.Observation of wave data

In this study, field observation wave data are used. To get long fetch wave data, 13 wave observation points around the coasts of Japan are used, and to get short fetch wave data, Meteorological station or MT station at Osaka bau is used.
(1) Ocean wind waves
Figure. 1 shows the wave observation system called as NOWPHAS operated by Port and Harbour Research Institute, Ministry of Transport.
There are 41 wave observation points. In this study, ocean wave data obtained at 13 major points around the Japan coast are used. These points are located at relatively deep water and there are no topography effects. Table 1 shows the observation systems and condition of each points. The sampling frequency of wave data is 2 Hz.
Waves are defined by using the zero up crossing method. Frequency spectra are calculated by using the FFT method. The number of total observa
tion cases are 2546.
These observation points have no wind profile. Thus, a data of the wind waves are determined by using the following criteria.
a) From the time series of significant parameters, significant wave height should be in its developed stage.
b) The swell component is not included in wave data clearly. Thus, a spectral form should be a single peak spectrum.
c) The JONSWAP spectrum parameter \gamma should be greater than 1.
(2) Wind waves of short fetch
Short fetch waves are obtained at MT station in Osaka Bay. Figure 2 shows the location of MT station. The water depth is 17m. The wave data and wind velocity at 10m high from sea surface are measured at MT station.
Sampling frequency is 10 Hz. The analysis method is the same as for ocean waves. The duration of observation used is from 1984 to 1991. The FFT analysis is applied to the duration of storm or typhoon. The number of total observation data is 70080 and the data analyzed by FFT is 246.

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Fig.1 The NOWPHAS system
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Table 1 Observation points
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Fig.2 Location of MT station

3. Non-dimensional parameters of wind waves

The non-dimensional parameters that describe the characterstics of wind waves are as follows.
(1)
where H_1/3 is the significant wave height, T_1/3 the significant wave period, E the wave energy, F the fetch, f_m the peak frequency of spectrum, C the wave celerity, L_1/3 the wave length corresponding to the significant wave period, u^* the friction velocity of wind, and g the gravity acceleration. Equation (2) is the 3/2 power law relation of Toba (1972):
(2)
Goto (1990) modified the coefficient B to 0.067. Toba (1992) also showed that if wind waves include components of swell, the exponent of the power law is changed from 3/2 to 2. The friction velocity of wind is calculated by using Eq. (3):
(3)
where U_10 is wind speed at a 10m high from the sea surface. To determine the drag coefficient C_D of sea surface, the following Mitsuyasu’s formula (1980) is applied:
(4)
Figure 3 shows the relation of gH_(1/3)/(u^*)^2 and gT_1/3/u^* by using the data at MT station. The solid line shows Toba’s 3/2 power law while the dotted line shows the Goto’s. The deviation of the data from the corresponded line represents the effects of swell components. It is confirmed that the measured wind waves data satisfied the 3/2 power law.
If the relationship linking non-dimensional fetch and energy, significant wave height and wave energy, peak frequency and significant wave period are revealed, all non-dimensional parameter are related to each other by using 3/2 power law.
Table 2 shows the relationship among the non-dimensional parameters. In this table, a is the coefficients of the relationship between wave height and wave energy (Fig. 4), A the coefficients of the relationship between fetch and energy (Fig. 5), b the coefficients of the relationship between peak frequency and wave periods (Fig. 6), and B the coefficient of 3/2 power law. These relation indicate that if the friction velocity and other only one parameter of wind waves are determined, all significant wave parameters can be calculated. The coefficients determine from observed data, are as follows:
A = 0.00016, a = 3.86, B = 0.067, b = 1.13 (5)
Table 3 shows the comparison between observed and calculatedresults. The results show good agreement. Thus, table 2 shows similarity of wind waves parameter.

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式(1〜5)
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Fig.3 3/2 power law relation
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Table 2 Relationship among the non-dimensional parameters (Y=aX^n)
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Fig. 4 Relationship between H_1/3 and E
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Fig.5 Relationship between E* and F*
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Table 3 Comparison between observed and calculated results
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Fig. 6 Relationship between fm* and T_1/3

4. Wave spectrum in deer and shallow water

On the basis of the nondimensional significant wave parameter, frequency spectra of wind waves in the deep and shallow water region are discussed and a new functional form of wind wave spectrum is proposed.
The JONSWAP spectrum is an extension form of Pierson-Moskowitz spectrum and is applicable to cases ranging from developing wave to fully developed wave. Equation (6) is the generalized JONSWAP spectrum.
(6)
where \alpha is scale factor, \gamma the peak enhancement factor, \sigma the band width near peak frequency. By using this equation, the similarity and the characteristics of slope of high frequencies and parameter of spectrum are discussed.
Figure 7 shows the slope of wind wave spectra at high frequencies by using leastsquares estimation. The high frequency range is the same as Donelan」s (1985). The x-axis is significant wave height. In this figure, the vertical lines are the standard deviations of the data toindicate the amount of scatter. From Fig. 7 , the mean slope of wind wave spectra at high-frequency range is approximated by f^-4 power law. The amount of scatter decreases with increasing wave height. This fact implies that the 3/2 power law is applicable in the frequency domain and the development of the wind waves is essentially a strongly nonlinear phenomenon. Hence, the JONSWAP spectrum follows the f4 law, expressed as follows:
(7)
The functional forms of the peak enhancement factor y are proposed by Donelan (1985) and Mitsuyasu (1980). They use the nondimensional peak frequency as variable. Figure 8 shows the relationship linking \gamma and non-dimensional peak frequency f_m*=f_mu*/g. The vertical lines are standard deviations. There is a large scatter in \gamma, but the mean value is increasing with non-dimensional peak frequency and has loglinear relation. It means the spectral form is change to Pierson-Moskowitz spectrum with the increase of the fetch. Hence, the following empirical formula for y is obtained:
(8)
 The scale factor \alpha is varied with spectral form.
In this study, the relationship between \alpha and \gamma is discussed. The total energy of DONS WAP spectrum is
(9)
where, M_0 is expressed as Eq. (10)
(10)
therefore, M_0 is approximated by (Goto and Aono, 1993) M_O=0.30\gamma^1/3 (11) By using this approximate formula for M_0 and the relation of nondimensional energy and peak frequency, and the 3/2 power law, this equation is derived:

\alpha=\gamma^-1/3 (12)

From Eq. (12), \alhap is related to \gamma. Table 4 shows the relationship linking \alpha and \gamma derived using the 3/2 power law for various spectral forms.
Figure 9 shows the relation of \alpha and \gamma, while solid line correspond to the least squares estimate. The coefficient is determined from the line and yields

\alpha = 0.17\gamma^-1/3 (13)

Figure 10 and Fig. 11
show the relation of \sigma_1, \sigma_2, and the non-dimensional peak frequency. The symbol \sigma_1 is low frequency side while \sigma_2 is high frequency side. Because the low frequency side include the weak swell components, there are no trends in \sigma_1. In the high frequency side, \sigma_2 varies inversely as the non-dimensional frequency on a log-log axis. This means the spectral form near peak frequency is varied from sharp to mild in the case of developing wind waves. Hence the band width near peak frequency is determined:

\sigma_1=0.144,\sigma_2=0.07f_m*^-0.16 (14)

These characteristics of spectral parameters are in deep water region.
Next, the spectrum in shallow water region is discussed.
Figure 12 show the change of the coefficient of 3/2 power law in shallow water. The x-axis is relative depth, the shaded bar is the histogram of observed data and the solid line is the linear shoaling coefficient K_s.
The mean value of B/B_0 shows good agreement with K_s. The 3/2 power law is also extended in a shallow water region by using the shoaling coefficient.
The spectral form in shallow water is derived by using 3/2 power law. In this derivation, subscript 0 indicates values in deep water and s indicates there in shallow water. The integrated form of the JONSWAP spectrum is

E_0 = a_0gu_*f_m^3 M_1(15)

where M_1 is
(16)
From the analogy of M_0, M_1 is approximated by Eq. (17)

M_1 =c\gamma_0^1/3(17)
Thus, Eq.(15) is expressed as

E_0 = c\alpha u*\gamma_0^1/3 f_m^-3 (18)

Using the relationship of u*f_m/g and gT_0/u* and the relationship of gH_0/u*^2 and g^2E_0/u*^4, Eq. (19) is derived.
(19)
Equation (19) is the 3/2 power law which derived from the spectral form.
The coefficient B_0 of 3/2 power law in deep water region is expressed as Eq. (20).
(20)
If the coefficients a, b and Bo is constant, the relationship between \alpha_0 and \gamma_0 is
(21)
The same argument applies in shallow water. The total energy and the coefficient of 3/2 power law in shallow water is expressed by the following equations:
(22)
(23)
The coefficient of 3/2 power law is
(24)
The combination of Eq. (20) and Eq. (24) lead to Eq. (25).
\alpha_0=\alpha_s (25)
Equation (25) determine the spectral form in shallow water. Figure 13 shows the change of \gamma with relative depth h/L_0. The mean value of \gamma and K_s show good agreement.
The characteristics of the wind waves spectrum in deep water are investgated by using the parameters of JONSWAP spectrum. From theoretical and empirical arguments, it is confirmed that a f^-4 power law exists at high frequency range, that \gamma and \sigma are varied with fetch, and that a -1/3 power law, based on 3/2 power law, also exists in relation between \alpha and \gamma.
Wave energy is concentrated near the peak frequency during the development stage, and approaches the Pierson-Moskowitz spectrum gradually with the increase of fetch. In shallow water region, the spectral form of wind waves varies with the shoaling coefficient. From these characteristics of the wind wave spectrum, the following new spectral formula is obtained:
(26)
(27)
In shallow water region, the spectral form of wind waves is expressed as
(28)
In this spectrum, the input variables are significant wave height and period only. Figure 14 shows the comparison of the newly-proposed spectral model with the observed spectral data and Bretshneider-Mitsuyasu spectrum. The spectral form varies with h/L_0 and the proposed model and observed data show good agreement.

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式(6〜28)
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Fig.7 Slope of the spectrum in high frequency range
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Fig.8 Relationship between y and fm*
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Table 4 Relationship between \alpha and \gamma
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Fig. 9 Relation between \alpha and \gamma
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Fig.10 Relation of \sigma_1 and f_m*
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Fig.11 Relation of \sigma_2 and f_m*
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Fig.12 Relation of B and h/L_0
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Fig. 13 Change of \gamma with h/L_0.
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Fig.14 Change of the spectral form with h/L_0

5. Discussion

Table 4 shows the relationship between non-dimensional wave height and period derived from selected spectral forms. Where B is coefficients and 13 is power. It is confirmed that 3/2 power law relation applies to f^-4 power law and 2 power law relation applies to f^-5 power law. 2 power law relation is revealed under the condition that the swell components are included in the wind waves. This is the reason of such change of power.
The 3/2 power law is not dependent on the fetch and shows local equilibrium between wind and wind waves. In the frequency domain, such local equilibrium is revealed by the f^-4 power law. It implies that the spectral form depends on the characteristics of the high frequency range.
However, spectral parameters depend on the fetch, so that the spectral form cannot be determined from the 3/2 power law directly. The implication in the case of developing wind waves is that \alpah varies with \gamma, which depends on the fetch, in order to satisfy the 3/2 power law.
To apply Eq. (28) for actual work, it is necessary to investigatethe error between the observed data and Eq.(28).The error of the calculated spectrum is defined as
(29)
Figure 15 shows the characteristics of the error of proposed spectrum and Bretschneider-Mitsuyasu spectrum. The horizontal axis is the U_10 calculated by using the 3/2 power law and Mitsuyasu’s C_D law.
The error of the proposed spectrum is relatively small in the entire range of wind velocity. The error is being large in the range of low wind velocity and the wind velocity is greater than the 22m/s. These characteristics of error indicates the mixture ofwind waves and swell at low wind velocity range.The increase of error at high wind velocity range suggest the change of the wind resistance law.
but there is not enough the data such high wind velocity range.
Figure 16 shows the results of comparison of the observed and proposed spectra. The spectrum of Bretschneider-Mitsuyasu is given in this figure for reference. Observation data was taken from Kochi-Oki on July, 1981. Time series of H_1/3, T_1/3, h/L_0, and error which defined by Eq.
(29) is also shown in Fig. 16. It can be seen that the proposed spectrum shape agrees well with the observed one.

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式(29〜)
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Table 4 Relationship between H* and T* derived from spectral forms.
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Fig. 15 Error of the spectrum
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Fig. 16 Results of the comparison of the observed and proposed spectra.

6. Conclusions

The major conclusions of this study are as follows:
(1) It was confirmed that the measured wind waves data satisfied the 3/2 power law which is an empirical formula between non-dimensional wave height and period.
(2) By using the 3/2 power law relation, non-dimensional parameters of wind waves are all related.
(3) The new spectral model, which is based on the 3/2 power law, is proposed. This spectral model is evaluated from H_1/3 and T_1/3, and calculated result is very accurate. The applicability of this new spectrum is very wide, ranging from the case of developing wind to that of fully developed wind, and from deep to shallow water region.

Reference

(1) Bouws, E., H. Gunther, W. Rosenthal and C. L. Vincent (1985): Similarity of the wind wave spectrum in finite depth water 1.Spectral form, J. Geophys. Res., Vo1.90 No.C1, pp.975-986.
(2) Donelan, M.A., J. Hamilton and W. H. Hui (1985): Directional spectra of wind-generated waves, Phil. Trans. R. Soc. Lond. A315,pp.509-562.
(3) Ebuchi, N., Y..Toba and H. Kawamura (1992): Statistical study on the local equilibrium between wind and wind waves by using data from ocean data buoy stations, J. Oceanogr., Vo1.48, pp.77-92.
(4) Goto, C., K. Suetsugu and T. Nagai (1990): Wave Hindcast Model for Short Fetch Sea, Rep. of P.H.R.I. Vo1.29, No.3, pp. 3-26.
(5) Goto, C. and T. Aono (1993) : On the Characteristics of One-Dimensional Spectra and Non-Dimensional Parameters of Wind Waves - Wave Hindcast Model Using the Hybrid-parameter Methods (2nd report) -, Rep. of P.H.R.I, Vol. 32, No.1, pp. 53-99 (in Japanese)
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(7) Mitsuyasu, H (1968): On the growth of the spectrum of wind generated waves (1), Rep. Res. Inst. Mech. Kyushu Univ., Vol.16, pp.459-482.
(8) Mitsuyasu, H., R. Nakamura and T. Komori (1971): Observation of the wind and waves in Hakata Bay, Rep. Res. Inst. Mech. Kyushu Univ., Vo1.19, pp.37-74.
(9) Phillips, O. M. (1958): The equilibrium range in the spectrum of windgenerated waves, J. Fluid Mech., 4, pp. 426-434.
(10) Pierson, W. J. and L. Moskowitz (1964): A proposed spectral form for fully developed wind seas based on the similarity theory of S. A. Kitaigorodskii, J. Geophys. Res., 69, pp.5181-5190.
(11) Thornton, E. B. (1977): Rederivation of the saturation range in the frequency spectrum of wind-generated gravity waves, J. Phys. Oceanogr., Vol.7, pp.137-140.
(12) Toba, Y. (1972): Local balance in the air-sea boundary processes, I. On the growth process of wind waves, J. Oceanogr Soc. Japan, 28, pp. 109-120.
(13) Toba, Y. (1973): Local balance in the air-sea boundary processes, III. On the spectrum of wind waves, J. Oceanogr. Soc. Japan, 29, pp. 209-220.

A TSUNAMI NUMERICAL MODEL USING NON-LINEAR DISPERSIVE LONG WAVE THEORY by Toshifumi Mikami1,Kenichi Ujii2,Hiroyuki Iwase3 and Chiaki Goto4

1.INTRODUCTION

In 1993, the Hokkaido Southwest Earthquake Tsunami brought serious damages around Okushiri Island. Soliton fission was identified through hydraulic model experiments to be the cause of high tsunami at Aonae area.
Soliton appears under two conditions: beaches have very gentle slope and tsunami initial profile is steep. At the coast meeting these two conditions, estimation of tsunami height increase by soliton fission is an important subject on coastal disaster mitigation measures.
In the past years, for disaster mitigation measures, tsunami height was often estimated by the mean of numerical simulations. But usual computation model using non-linear long wave theory as a governing equation cannot compute soliton fission of tsunamis. And, for computation model considering soliton fission, no studies were reported to have include runup calculation on land.
We propose practical tsunami computation model which considered soliton fission and runup simultaneously. This model use Boussinesq typed equations as governing equations.
Staggard leap-flog scheme and ADI scheme with two steps mixed algorithm are used for the stability of computation.

1) Senior Engineer, Alpha Hydraulic Engineering Consultants Co.,Ltd. 4-15-35 Mita Minato city Tokyo 108, Japan telephone ; +81 35 445 6543 facsimile ; +81 35 445 6545 e-mail ; mika-t@po.iijnet.or.jp
2) Senior Engineer, Alpha Hydraulic Engineering Consultants Co.,Ltd. 4-15-35 Mita Minato city Tokyo 108, Japan telephone ; +81 35 445 6543 facsimile ; +81 35 445 6545 e-mail ; ujii@po.iijnet.or.jp
3) Technician, Faculty of Engineering Tokai University, 1117 Kitakaname Hiratsuka Kanagawa 259-12, Japan telephone ; +81 463 58 1211 facsimile ; +81 463 50 2045 e-mail ; pong@keyaki.cc.u-tokai.ac.jp
4) Professor, Faculty of Engineering Tokai University, 1117 Kitakaname Hiratsuka Kanagawa 259-12, Japan telephone ; +81 463 58 1211 facsimile ; +81 463 50 2045 e-mail ; goto@keyaki.cc.u-tokai.ac.jp

2.ALGORITHM OF NEW TSUNAMI COMPUTATION MODEL

We investigated several equations containing dispersion term through the analysis of dispersion relationship. As a result we found that a Boussinesq type equation as mentioned bellow was the most suitable for calculation of tsunami.
(1)
Where Q is the discharge flux, \eta is the water level, and h is the hydrostatic water depth.
In older tsunami numerical model, governing equation can handle nested grid and runup through staggard leap-frog scheme using linear or non-linear long wave theory. But instability or incorrect solution occurs in the computation of the dispersion terms when non-linear dispersive long wave theory is solved. Also, ADI scheme generates some problems in the computation of nested grid and runup.
For this reasons we choose a two step mixed finite difference scheme. staggard leap-flog scheme is used as a first step of computation for linear and non-linear terms, and ADI scheme as second step for dispersive terms.
By this method we could keep stability in computation, and it became easy to handle nested grid and runup calculation.

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式(1)

3.RELIABILITY OF NEW TSUNAMI COMPUTATION MODEL

We compared the result of a one dimensional computation with hydraulic model experiment results in order to check reliability of the proposed model (Fig.1). Good agreement was found between the computation and the experiment values for the first wave, but the second wave appears to be smaller and steeper i n the hydraulic model.
Furthermore, we reproduced the Hokkaido Southwest Earthquake Tsunami of 1993 with the new tsunami numerical model. Result can be seen in Fig.2, and Fig.3. Figure2 shows the comparison of computed wave profiles obtain from non linear long wave theory and from non linear dispersive long wave theory. In fig.3, it can be seen that wave is higher at shallow sea when using non linear dispersive long wave theory. Maximum runup height is almost equal in both models. And computation results and observed runup heights showed good agreement.

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Fig.1 Comparison of 1-D computation and experiment results
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Fig.2 Comparison of wave profiles
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Fig.3 Comparison of maximum tsunami level

4.CONCLUSIONS

We developed a tsunami computation model including soliton fission of tsunami. We made clear that Boussinesq typed equation was suitable as a governing equation to compute dispersive term. We proposed two step finite difference scheme including leap-frog scheme and ADI scheme.
To check the reliability of the model, we compared numerical results and hydraulic model experiment results. Finally, we found good agreement with observed data in case of 1993 Hokkaido Southwest Earthquake Tsunami.

SIMULATION MODELS OF TIMBER AND OIL SPREAD DUE TO TSUNAMIS C. Goto Hydraulic Engineering Division Port and Harbour Research Institute, Ministry of Transport, Yokosuka, Japan 239

Abstract

Numerical models of timber and oil spread due to tsunamis are developed. The models are applied to Miyako Bay, on the North Sanriku Coast of Japan. It is assumed that 6,000 timbers are being stored on both the ground and in a lumber harbor and that 2,000 m^3 of oil spill from tanks due to an earthquake. The input tsunami is the same magnitude as the Tokachi-oki tsunami which hit in 1968.

Introduction

Once floated and washed away by tsunamis, timbers stored in port areas often become destructive forces to houses and other port facilities. Inflammable materials, such as oil stored in large quantities, also may be potentially devastating if discharged because of earthquakes and tsunamis.
Hydraulic experiments were carried out In order to determine the drag coefficient and virtual mass coefficient of a timber as well as the diffusion coefficient of timbers (Goto,1982). These coefficients are important to describe the behavior of timbers in water flow. A model was built to estimate the motion of timbers in a tsunami flow. The motion consists of two parts, a mean motion and a diffusion. The mean motion Is governed and determined by the mean current induced by tsunamis, combining the drag and added-mass effects of timbers. The diffusion is determined by a consideration that the spread of timbers around their center of gravity follows a random process, the variance of the probability density of which is equivalent to the magnitude of diffusion obtained by experiments. A simulation model of oil drift has also developed by the author (Goto,1985). The method used is for transport during a short time period only, since no effects of surface tension are Included.
The model equations are derived from the Navier-Stokes equations and the continuity equation and are solved by FDM scheme.
In the paper, these methods are applied to Miyako Bay, on the North Sanriku Coast of Japan.
It is assumed that 6,000 timbers are being stored on both the ground and in a lumber harbor and that 2,000 m^3 of oil spill from tanks due to an earthquake. The input tsunami is the same magnitude as the Tokachi-oki tsunami which hit in 1968.
We assume that the motion of timber consists of two parts, a mean motion and a diffusion.
The mean motion is governed and determined by the, mean current induced by tsunamis, on combining the drag and virtual mass effects of timbers. The mean motion of timbers is governed in following equations,
(1)
where U_t and U are speed vectors of timbers and water particles, respectively. And \rho_ and \rho express the density of timbers and water. In this equation, C_M denotes the virtual mass coefficient and C_D, the drag coefficient. These coefficients are determined by hydraulic experiments as follows:
C_M = 1.78 (2)
(3)
where R_e and F_r Indicate the Reynolds and Froude numbers of the timbers spread.
The diffusion is determined by a consideration that the spread of timbers around their center of gravity follows a random process, the variance of the probability density of which is equivalent to the magnitude of diffusion obtained by experiments. The position of timber X after an infinitesimal
(4)
where lk is given as a random function uniformly distributed In the interval -1 and 1. k denotes the diffusion coefficient determined by the hydraulic experiment as the following equation,
k = 0.032 U * h (5)
In Eq. (5), U^* is the friction velocity of water flow and h is the water depth.

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式(1〜5)

Numerical Method of Oil Spread

As preliminary studies dealing with forces in action permit simplification of the problem, the spread of oil is divided into three regimes: gravity-inertia, gravity-viscous and surface tension-viscous.
From the Navier-Stokes equations and the equation of continuity, we assume that the vertical acceleration of oil particles is negligible compared with the gravity acceleration, then we have the governing equations of the spread of oil as follows:
(6)
(7)
(8)
where (u, v) denotes spread speed of oil; \rho_0, the oil density; D, the oil thickness; \eta, the height of oil surface from original plane; (M, N) the discharge flux of oil spread; and \tau_x and \tau_y indicate the interaction forces between the oil and the tsunami current.
Application to Miyako Bay Numerical simulation models of timber and oil spread are applied to Miyako Bay on the North Sanriku Coast of Japan. It is assumed that 6,000 timbers are being stored on ground and in a lumber harbor and that 2,000 m^3 of oil spill from tanks due to an earthquake. The input tsunami has the same magnitude as the Tokachi-oki tsunami of 1968.
The work is divided into three parts: computation of the tsunami current, spread of the timbers and the oil. The motion of the tsunami current is computed by the finite difference scheme, TOHOKU MODEL, using the shallow water theory and a grid size of 50 m. The motion of timbers and oil is also computed by the finite difference scheme governed by Eqs. (1)-(8).
Figure 1 shows the numerical results of timber spread at 40, 60, 80 and 100 minutes after the tsunami occurred. The black circles indicate the grid size of 50 m where timbers are found.
Numerical results of the oil spread at 10 minute intervals after the tsunami occurred are shown in Fig. 2. The shaded area indicates the region of drifting oil.
As the results indicate, it is concluded that the present method can be applied, without difficulty, to actual topography of a complicated geometry.

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式(6〜8)
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Figure 1. Numerical results of timber spread.
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Figure 2.Numerical results of oil spread.

References

Goto, C. et al. (1982) Timbers spread due to tsunamis. Proc. 29th Japanese Conf. on Coastal Eng., p.491-495. (in Japanese)
Goto, C. (1985) A simulation model of oil spread due to tsunamis. Proc. JSCE, no.357, p.217-223. (in Japanese)

Discussion

Comment: In tracing the timbers there is one parameter, kappa, related to diffusion or dispersion, which must be determined by experiment.

UNTIED. STATES DEPARTMENT OF COMMERCE National Oceanic and Atmospheric Administration NATIONAL ENVIRONMENTAL SATELLITE, DATA, AND INFORMATION SERVICE National Geophysical Data Center Boulder, Colorado March 1991 2ND UJNR TSUNAMI WORKSHOP HONOLULU, HAWAII 5-6 November 1990 PROCEEDINGS NGDC Key to Geophysical Records Documentation No. 24

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表紙

港湾技術概究所報告第29巻第3号(1990・9) 1.短フェッチ海域の波浪推算モデル 後藤智明*・末次広児**・永井紀彦***

要旨

 大阪湾における気象・海象観測資料を用いた海上風の抵抗則と風波の発達則に関する種々の検討を通し,短フェッチ海域の風波を対象とした1地点出力型パラメータ波浪推算モデルを提案した。そして,実測値および従来の有義波法,スペクトル法による波浪推算結果と比較することにより推算特性に関して検討した。
 提案したパラメータ波浪推算モデルは,無次元エネルギーと無次元フェッチの1乗則および無次元波高と無次元周期の3/2乗則という2つの経験則で風波の発達特性が記述できるという仮定に基づき定式化されたものである。そこで,経験則を構成する無次元特性量のなかで最も重要と考えられる代表風速に焦点をあて,種々の考察を行うとともに経験則そのものの精度を波浪推算結果と実測結果の比較から検討している。
得られた主要な結論は,以下のとおりである。
1)風速15m/s程度以下の気象擾乱による風波に関しては,無次元エネルギーと無次元フェッチの1乗則および無次元波高と無次元周期の3/2乗則がともに代表風速によらず精度よく成立する。ただし,風速20m/s程度以上に関しては,本報告で提案する抵抗則を用いた摩擦速度を用いる必要がある。
2)短フェッチ海域の波浪推算に利用されてきた有義波法およびSMB法は,風速20m/s程度以上の気象擾乱に関して推算精度が悪くなる。また,スペクトル法による波浪推算値は,短フェッチ海域の出現周波数スペクトルがスペクトル法で仮定しているものと大きく特性が異なるため,風速値によらず推算精度が著しく劣る。高風速の擾乱に対しては,ここで提案したパラメータ波浪推算モデルを用いる必要がある。
キーワード:波浪推算法,パラメータモデル,短フェッチ海域

*水工部 海洋エネルギー利用研究室長
**前海洋水理部 海象調査研究室(現運輸省第四港湾建設局北九州港工事事務所第二工事課)
***海洋水理部 主任研究官

REPORT OF THE PORT AND HARBOUR RESEARCH INSTITUTE Vol. 29, No. 3 (Sept. 1990) 1. Wave Hindcast Model for Short Fetch Sea Chiaki GoTO* Koj i SUETSUGU** Toshihiko NAGAI***

Synopsis
A parameter wave hindcast model for wind generated waves in short fetch sea was developed through the investigation of the wind stress and wave growth formulas using the data obtained in Osaka Bay. Accuracy of the numerical results of the wave hindcast model was also studied by the comparison with the results of other convensional and the measured data.
Presented wave hindcast method is based on similarity laws of the growing wind waves, 3/2-power law of nondimensional significant wave height and wave period and 1-power law of nondimensional wave energy and fetch. Therefore, the accuracy of numerical results is considered to be governed by the exactness of similarity laws. Then, the accuracy of similarity laws were investgated through the comparison of wind stress formulas as a most imortant physical formula related with the growthing rate of wind waves.
The main conclusions are as follows :
1) Data obtained in Osaka Bay less than 15 m/s of 10 m wind speed satisfied simiarity laws with good accuracy independing on wind stress formulas.
2) The significant wave hindcast model and SMB method can not be got accurate results when wind speed is more than 20 m/s. Spectrum model also can not obtaine good results independing on wind speed renge because wave spectra in short fetch sea have a tendance to overshoot against fully developed spectrum. Even if the wind speed is more than 20 m/s, similarity laws describing shear velocity with the presented wind stress formulas are suitable and the parameter wave hindcast model computes accurate results.
Key Words : Wave Hindcast Method, Parameter Model, Short Fetch Sea

*Chief. Ocean Energy Utilization Laboratory, Hydraulic Engineering Division
**Formerly, Marine Observation Laboratory, Marine Hydrpodynamics Division (Section of Second Construction, Kitakyuusyuu Port Construction Office, Fourth District Port Construction Bureau, Ministry of Transport)
***Sinior Research Engineer, Marine Hydrpodynamics Division

目次

要繍 3
1.まえがき 7
2.大阪湾の気象・海象観測 7
2.1観測の概要 7
2.2出現海上風・波浪特性の概要 8
3.無次元波高と無次元周期の3/2乗則の検討 10
3.1代表風速 10
3.2無次元波高と無次元周期の3/2乗則 11
4.1地点出力型パラメータ型波浪推算モデル 12
4.1モデルの定式化 12
4.2数値計算法 14
5.代表風速の違いによる発達式および推算精度の差 14
5.110m高度風速 14
5.2鳥羽のZ_0則 15
5.3光易のC_0則 17
5.4提案C_D則 18
6.考察 18
6.1スペクトル法による波浪推算結果との比較 18
6.2東京湾の台風8506号による高波の推算 20
6.3パラメータ型波浪推算モデルの推算特性 20
7.まとめ 22
参考文献 22
主要記号一覧表 23
付録A 波浪諸元からの風の推算 25
付録B 波浪推算例 25

1.まえがき

 波浪災害の原因の究明や港湾溝造物の設計波浪の算定には,有義波法およびスペクトル法と呼ぼれる2種類の数値シミュレーション法がよく用いられる。有義波法は,海の波を単一の波で代表させ,推算する方法であり,井島1)の追跡法や堀川ら2)の格予点法などが著名である。一方,スペクトル法による波浪推算は,複雑な海面を2次元エネルギースペクトルで表現し,その時間的変化を計算する方法である3)。
 スペクトル法は,周波数および方向別のスペクトル成分の発達,伝播,減衰の過程を理論的に定式化したエネルギー平衡方程式に基づくものであり,極めて一般性のある手法であると考えることができ,特に風波とうねりが混在する波浪に対する推算精度が有義波法に比べ良いため,次第に適用事例が多くなってきている。しかしながら,スペクトルの各成分が独立に発達,伝播,減衰するという線型関係を基調としたモデルであり,また風から波へのエネルギー供給に関する力学機構が十分に解明されていないことなど数多くの問題点が残されていることも事実である。
 最近,風波の発達にかかわる力学機溝が非線型性の強い極めて複雑な過程であることが明らかとなり,また風波には乱流に似て顕著な相似則が存在することが分かってきた4)。これらの知見を背景にして,風波の相似則を用いたハイブリッド・パラメータ法が研究されるようになってきた。ハイブリッド・パラメータ法は,風波の発達を相似則に基づく少数のパラメータで表現し,うねりをスペクトルで取り扱う方法であり,有義波法とスペクトル法の両者の長所を組み合わせた方法であるということができる。
波浪推算の精度向上の観点から考えると,うねりを精度よく取り扱い得る可能性があるという理由でスペクトル法またはハイブリッド・パラメータ法が有義波法に比べ将来性のある手法と言うことができる。特に,風波の発達に関する力学的機構を完全に理解することが難しい現段階においては,波浪観測資料により推算モデルが容易に検証・改良でぎるハイブリッド・パラメータ法を研究開発していくのが得策であると思われる。
本研究では,ハイブリッド・パラメータ波浪推算モデルの開発研究の第一段階として,大阪湾の観測資料により倹討した風波の相似則に関する知見を用いて開発した短フェッチ海域を対象としたパラメータ波浪推算モデルについて報告する。
 提案したパラメータ波浪推算モデルは,無次元エネルギーと無次元フェッチの1乗則および無次元波高と無次元周期の3/2乗則という2つの経験則で風波の発達特性が記述できるという仮定に基づき定式化されたものである。したがって,推算の精度は経験則そのものの精度であると言っても過言ではない。そこで,経験則を構成する無次元特性量のなかで最も重要と考えられる代表風速に焦点をあて種々の考察を行うとともに経験則そのものの精度を波浪推算結果と実測結果の比較から検討している。

2.大阪湾の気象・海象観測

2.1観測の概要
解析に利用したデータは,1984年から1987年の4年間に写真-1に示す海上観測局の超音波式波高計および10m高度のプロペラ型風向・風速計で観測したものである。
海上観測局は大阪湾泉州海岸から東方6.5㎞,水深17mの地点にあり,関西国際空港の建設のため昭和53年から経常的に気象および海象の観測が実施されている。図-1に観測機器の配置を示している。観測項目は気温・水温・気圧・風・波・潮位・潮流の多岐にわたっており,毎正時に13分間または20分間の観測値をテレメータにより中央監視局に伝送し,波高,周期,風向,風速などの各台帳諸元に処理され保存されている。波浪データについては,0.ls間隔のデジタル値をゼロアッザクロス法で解析することにより有義波諸元を求めており,風向・風速データも同じく0.1s間隔の値から算出し,台帳諸元としている。なお,超音波式波高計は海上観測局から40m離れた位置にあり,設置水深は平均水面から17.5mであり,出現波浪のうち周期4.8s程度以下の波浪は深海域の波と考えられる。また,海上観測局における風向・風速観測は,平均水面から約10mの高度のプロペラ式風向・風速計で実施されている。大阪湾の潮差が1搬程度であり,潮位による多少の差異があると思われるが,十分な精度で観測値そのものが101n高度の海上風を表しているものと考えられる。
大阪湾観測データを用いて風波の発達に関する経験則の検証を行なうため,海上観測局の有効フェッチの算定を行なった。図-2はSavilleの方法を用いて求めた有効フェッチFを描いたものである。具体的には,主波向に対して±45°の角度幅をさらに5°の幅で細分化した線フェッチをF_Iとおき,\theta方向の有効フェッチFを
(1)
で算定している。
海上観測局の16方位別の有効フェッチは表-1となり,東から南方向が短く7㎞程度以下,西南西から北北東が25㎞から30km程度であり,最も長いのは北西方向の33.4㎞である。
2.2出現海上風・波浪特性の概要
(1)海上風
海上観測局で観測された1984年から1987年の4年間の風向・風速データから季節別に出現風の特性を述べると以下のようになる。すなわち,冬季の大阪湾の風は,冬季特有の西高東低の気圧配置が長く続くため,西から西北西方向の季節風が卓越する。風速も他の季節に比べ大きく,風速10m/sを超えるものが全体の15%程度となる。春季は,冬季の西高東低の気圧配置が崩れて移動性の気圧配置となるため,冬季の北西方向の季節風が弱まり,北東および南西方向の風が多くなる。夏季には,太平洋高気圧の発達に伴い,南西方向の風となるが,風速自体はさほど大きくならない。ただし,夏季のデータには,日中に海から陸へ向い,夜間に陸から海に吹く,いわゆる海陸風が顕著に観測されており,風向・風速ともに局所的な値であると考えられる。秋季は再び移動性の気圧配置となるため,北北東から東方向の風となる。
(2)有義波高と周期の結合分布
大阪湾の波浪は,東京湾のような閉鎖的な湾と異な短フェッチ海域の波浪推算モデルり,台風や冬季季節風によって湾内で発生する風波ほのか,湾外から侵入するうねりを考える必要がある。図-3は,1984年から1987年の4年間に観測されたデータから有義波高と周期の結合頻度分布を描いたものである。図中のコンターラインは順に1,4,7,11,16%の出現頻度を表している。冬季の結合分布は,三角形に近い分布となり,波形勾配は波高が高くなるに連れ0.025から0.05程度まで変化する。この特徴は,日本海沿岸で見られる分布特性と同一であり,湾内において発生する風波が卓越することを表している。一方,夏季は円形に近い分布となり,波高は小さくても周期の長いうねりの出現頻度が無視できないことを示している。波形勾配から見ても勾配の大きい風波と小さいうねりが混在していることがよくわかる。通年は,冬季と夏季の中間の分布図となっている。海上観測局の超音波波高計設置地点が水深17.5mであり,深海波として周期4,8s程度の波までは考えることができるため,全体の99%の出現波浪が深海波の条件を満たしていることになる。
波向を含んだ季別の波浪特性は以下のとおりである。すなわち,冬季は,西から西北西方向の季節風が吹くため,西から北の波となり,また波高1mを越すものが10%程度発生する。春季は,南西から西北西方向の波向が多くなり,出現波浪のうち波高1mを越すものが3%程度である。夏季は,南西から西南西方向の波向であり,90%程度が0.5m以下の波浪であり,波高1mを越すものが1%程度である。秋季は,北から西南西方向の頻度が高く,春季と同様に波高1mを越すものが3%程度である。
(3)有義波とスペクトルのモーメント積分値
風波の相似則または経験則の検討のため,ここでは海上観測局で観測された波浪に関して有義波諸元とスペクトルのモーメソト積分値の関係を調べている。この有義波諸元と周波数スペクトルの積分値の関係は,Longuet-Higginsの研究をきっかけに種々の機会に取り扱われている。光易ら5)は,種々の海域の実測資料から,周波数スペクトルS(f)をとおき,スペクトルモーメント積分値を
(2)
で定義して,
(3)
を求めている。
大阪湾の観測データに関して有義波諸元とスペクトルモーメント積分値の関係を整理した一例が図-4である。図は1984年1月3日から同月6日の擾乱に関するものである。相関線は光易の結果と非常によい一致を示し,
(4)
となる。また,有義波周期とスペクトルピーク周期T_pの関係も図-5に示すように光易5),の経験式
(5)
に一致する。
なお,平均波と有義波の間には,4年間の全体で図-6に示したように
(6)
の関係がある。ただし,季別により多少の変化が見られ,これは夏季から秋季に到来するうねりの影響である。

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式(1〜6)
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写真 写真-1 海上観測局全景
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図-1 海上観測局計測器配置
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図-2 海上観測局の有効フェッチ
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表-1 海上観測局の16方位別有効フェッチ(単位 km)
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図-3 有義波高と周期の結合分布図
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図-4 有義波諸元とスペクトルモーメント積分値
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図-5 有義波周期とスペクトルピーク周
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図-6 有義波と平均波の相関

3.無次元波高と無次元周期の3/2乗則の検討

風波の発達則のうち無次元エネルギーと無次元フェッチの関係は,5章で波浪推算結果と同時に検討することにして,ここでは無次元波高と無次元周期の3/2乗則の精度および代表風速の違いによる差異について調べる。
3.1代表風速
風と風波の関係について調べた従来の研究は,Wil-son16),Mitsuyasu5),Hasselmanら7)の報告のように10m高度の風で風波の発達則を定式化しているものが多い。最近,より適切であると考えられる風の摩擦速度を用いた整理法が着目され,Charnock,Wu,MitsuyasuToba-Koga,Masuda-Kusaba,Tobaなどにより種々の検討結果が報告されている。本研究においても代表風速として10m高度風速以外に摩擦速度を用いた検討も行う。
一般に,10m高度風速U_10と摩擦速度U*との関係は,対数分布劉
(7)
を仮定する方法と抵抗係数C_Dにより
(8)
と記述するものがある。ここに,U_Zは高度gの風速を短フェッチ海域の波浪推算モデル意味し,\kappaはカルマン定数,z_0は水面粗度である。
対数分布則を適用する方法では,水面粗度を決めるものとしてWu,Toba-Koga,Masuda-Kusaba,Tobaが経験式を提案している。C_D値に関しては,Mitsuyasuらを始めいろいろな研究者により各種経験式が提案されている。
本研究で検討対象とした抵抗則は,z_0則としてCharnock-Wu8),9),Toba-Koga11),Masuda-Kusaba12),Toba13)の式,C_D則の代表的なものとしてMitsuyasu10)の式の5つである。なお,Charnock-Wuのz_0則は,
(9)
Toba-Kogaのz_0則(-1乗則)は,
(10)
Masuda-Kusabaのz_0則は,
(11)
Tobaのz_0則(-1/2乗則)は,
(12)
MitsuyasuのC_D則は,
(13)
で表される。ここに,\rho_Pはスペクトルのピーク角周波数を表し,本研究では式(5)から\rho_P=2π/1.05T_1/3として算出している。
3.2無次元波高と無次元周期の3/2乗則
従来から無次元波高と無次元周期の間には3/2乗の関係があることが知られている。Wilsonの推算式からは,フェッチにわずかに依存するが平均的に
(14)
の関係が導かれる。また,鳥羽14)は風波に関する非線型自己相似構造の観点から独立に
(15)
を提案している。
代表風速として10m高度風速と前節でのべた5種類の抵抗則による摩擦速度について無次元波高と無次元周期の関係を描いたものが図-7である。図は,1984年の1年間の観測値から風波であるという条件でデータを抽出したものであり,風波の条件としては,(1)波高,周期とも発達段階にあること。(2)風向と波向が一致し,2時間以上風向・波向が変化しないこと。(3)風速が2m/s以上であること。(4)周期が4.8s以下であること(沖波と見なすことができること)。を採用した。図中の実線は最小自乗法で定めた回帰直線であり,どの代表風速でも大阪湾で観測されたデータは良好な精度で無次元波高と無次元周期の3/2乗則を満足することがわかる。ただし,表-2に示した比較から明らかなように代表風速の取り方による係数Bの違いが大きい。同表にそれぞれ既往の係数の値を記載してあるが,大阪湾の観測値は代表風速1および代表風速5をよく支持する結果となる。代表風速3に関しては既往の提案値に比べ小さめに,代表風速4は大きめになる。特に,代表風速4のMasuda-Kusabaのz_0則に関しては現地波浪と差異が大きく,これは既往の係数が水理実験データのみで決められているためであると考えられる。以上のことから,大阪湾の風波データは高度風速および鳥羽のz_0則(-1/2乗則)による摩擦速度で記述された無次元波高と無次元周期の3/2乗則を精度よく満足すること,また,係数Bに関して既往研究例はないが,波諸元に関係しないCharnock-WuおよびMitsuyasuの抵抗則を用いても無次元波高と無次元周期のは精度の良い相関を示すことが明らかとなった。
なお,無次元波高と無次元周期の関係は,(15)を書き換えると
(16)
となることから明らかなように,波形勾配と波齢の関係を蓑すものと解釈できる。ここに,L_1/3およびC_1/3は有義波周期に対応する波長および波速である。図-8は図-7と同じ条件で抽出したデータをMitsuyasuらの抵抗則を用いて波形勾配と波齢に関してプロットしたものの一例である。図-7に比べデータのバラツキが大きいが,式(16)においてB=0.067として描いた実線がデータ群の中心を通っている。
また,無次元波高と無次元周期の3/2乗則は,時々刻々の風と風波の局所平衡状態を表しているため,波浪推算と反対に波諸元から風を予測できるという特徴がある。この波浪諸元からの風の推算に関しては,付録Aを参照されたい。

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式(7〜16)
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図-7 無次元波高と無次元周期の3/2乗則
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表-2 代表風速の違いによる3/2乗則の係数の差異
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図-8 波形勾配と波齢の関係(Mitsuyasuの抵抗則)

4. 1地点出力型パラメータ型波浪推算モデル

4.1モデルの定式化
本研究で提案するパラメータ型波浪推算モデルは,風波を対象とした推算手法で,無次元波高と無次元周期の3/2乗則および無次元エネルギーと無次元フェッチの1乗則により外力項を定式化したエネルギー平衡方程式を用いて風波の発達・減衰を追跡する方法である。そして,1地点出力というのは計算出力地点を1地点に絞り,対象地点に到達する各波向成分を波向線上の発達・減衰計算を通じ対象地点の波浪の経時変化を算出する方法である。
いま,無次元波高と無次元周期の3/2乗則および無次元エネルギーと無次元フェッチの1乗則をそれぞれ
(17)
および
(18a)
(18b)
とおく。ここで,風速Uは10m高度風速または摩擦速度の何れかであり,最終的に次章の検討結果により定めるものとする。また,E^*_maxは無次元エネルギーの風波としての発達の限界値を意味する。
まず,発達段階すなわち無次元エネルギーが限界値E^*_maxより小さい場合について考える。演算を簡単にするため
(17)
なる無次元量を定義し,さらに,有義波高H_1/3とエネルギーE(=m_0)との関係を
E=H_1/3/a^2 または E^*=H^*/a^2 (20)
有義波周期と平均周期の関係を
(21)
とおく。なお,a,bの値は,2章で説明した大阪湾の観測波浪から,a=3.38,b=0.86である。無次元エネルギーの風波の伝播に沿った時間変化dE^*/dt^*は,発達段階の風波に関して
(22)
となり,
(23)
が導かれる。ここで,式(23)にエネルギーが方向別に
(24)
なる分布をなすと仮定すると,方向別エネルギーE^*(\theta)は,結局,
(25)
となる。式(25)は波の伝播に沿って考えた時間変化を表すものである。場に固定した座標系でしかも有次元表示にすると
(26a)
となる。ここに,xは図-9の計算格子模式図で示すように出力地点を原点とした距離方向の座標である。
一方,風が弱まったり風向きが変化するといった無次元エネルギーが限界E^*_max値を超えた場合に関しては,式(18b)から
(式1)
となり,最終的なエネルギー平衡方程式は
(26b)
で表される発達がない伝播のみの式となる。
 出力地点の有義波諸元は,式囲で計算された方向別エネルギーを用いて式(17),(20),(21)を用いて
(27a)
(27b)
で算出される。
4.2数値計算法
式(26)で表されるエネルギー平衡方程式の計算は,方程式の右辺を零とおいた伝播方程式と伝播項を零においた発達方程式に分けて扱う。伝播方程式
(28)
をの1次風上差分法により差分式に書き換えると
(29)
となる。発達方程式
(30)
を差分化すると
(31)
である。ここに,(J,N,K)はそれぞれ距離,波向,時調方向の格子点を表し,E^K-1_J,N,E^K-1_J,N,認は伝播計算慶および発達計算後の方向別エネルギーであり,U^K+1_J,Nは空間格子(J,N)の時間ステップK+1の代表風速を意味する。また,\Delta{x}および\Delta{t}はそれぞれ計算の距離間隔および時間間隔を表す。したがって,本研究で提案する1地点出力パラメータ波浪推算は,式(29),(30)を各時間ステップ毎に解いていくことになる。なお,計算の陸岸境界はエネルギーを零とおくことにより表現しており,初期条件は有義波高0.05mに対応するエネルギーを分布させている。
次章以降の検討に用いた波浪推算では,海上観測局を計算出力地点として格子間隔が」\Delta{x}=1㎞の計算格子網を組み,時間ステップ\Delta{t}=120s,方向分割\Delta{\theta}=\pi/8として計算している。対象とした擾乱は,1984年1月3日から6日の冬型気圧配置による季節風によるもので,最大風速が20m/sと15m/s程度の擾乱が続けて発生したものである。その他の大阪湾の顕著な擾乱に関する推算例は付録Bに記載してあり,参照されたい。
波浪推算の入力条件すなわち風向・風速に関しては,冬季の波長の長い擾乱を対象としていること,また大阪湾の広さが40㎞程度であることから,海上局で観測した風向・風速が大阪湾全域にそρまま適用できるものとしている。ただし,利用できる風向・風速データは1時間毎の台帳データであるため,推算の時間ステップに合わせて線型内挿している。

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式(17〜31)
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(式1)
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図-9 演算格子
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図-10 無次元波高・周期と無次元フェッチの関係(10m高度風速)

5.代表風速の達いによる発達式および推算精度の差

ここでは,パラメータ型波浪推算モデルに用いる風波の経験則に関して検討を行う。既往の各種経験則のうちここで取り上げたものは,大阪湾の観測波浪がよく適合するという理由で10m高度風速およびToba(-1/2乗則),Mitsuyasuの抵抗則による摩擦速度を代表風速としたものである。また,検討の結果,風速20m/s程度以上に関しては従来の抵抗則を修正する必要があることがわかったため,修正則に関する提案も行う。
5.1 10m高度風速
風波の有義波諸元の発達特性を記述する経験則を通常推算式と呼んでいる。特に,時間的に定常に達し,風下方向に発達しているfetch-limitedの風波の推算式には,Sverdrup-Munk15)の以後数多くの研究が行われ,改良が加えられている。現在,最もよく利用されるのはWilson6)が提案したWilson IV式と言われるものである。
大阪湾で観測されたデータは風向・風速の変動が大きくfetch-limitedの状態に達しているか否かを容易に判定することが難しいため,風波であるという条件を課して波向方向の無次元フェッチと無次元波高・周期の関係を調べることにした。風波の条件としては,無次元波高と無次元周期の3/2乗則を検討する際に課したものより厳しい条件,すなわち,(1)波高,周期とも発達段階にあること。(2)風向と波向が一致し,4時間以上風向・波向が変化しないこと。(3)風速が2皿/s以上であるごと。(4)
周期が4.8s以下であること(沖波と見なすことができること)とした。これらの条件によりデータを抽出し無次元フェッチと無次元波高・周期の関係を描いたものが図-10である。図は,黒丸で表している実測値のほかにSMB15,16),Wilsoh6),Mitsuyasu5),Hasselman7)の各提案式を実線で描いている。抽出条件から判断できるようにプロットされたデータは完全にfetch-limitedに達した風波に関するものばかりでなく,またデータの誤差などを考慮すると正確に判定するのは難しいが図のデータ群の上方の包絡線をfetch-limitedに達した状態すなわち発達線と考えることができる。無次元波高に関してデータの包絡線と各提案式を比べると,大阪湾のデータはSMBおよびWilsonの式によく適合すること,光易の式は多少大きめであること,そしてHasselmannらの式は小さめであることがわかる。一方,無次元周期に関しては,光易とHasselmannらの両式が大きめであり,SMBとWilsonの式が若干小さめであることがわかる。以上のことから,大阪湾の風波の発達特性は,光易およびHasselmanらの式に比べ図式解法または有義波法に利用されているSMBおよびWilsonの式で表現できることがわかる。
10m高度風速を代蓑風速とした推算式の中からWil-sonの式を取り上げ前章で提案したパラメータ法を用いて推算した例が図-11である。ただし,Wilsonの式がもともと無次元波高・周期と無次元フェッチの関係で表されるため,Wilson.の式を誤差の最小自乗近似で無次元波高と無次元周期の3/2乗則
(32)
および無次元エネルギーと無次元フェッチの1乗則
(33a)
(33b)
A=3.93x10^-7,E^*_max=・6.1×10^-2
に書き換えて推算に用いている。
図は,上から風向,10m高度風速,推算波向と実測波向,推算有義波高と実測有義波向そして推算有義波周期と実測有義波周期である。推算した例は1984年1月3日から6日までの擾乱である。推算手法が風波を対象としたパラメータ法であるため,3日13時以前,4日15時から23時そして6日4時以降の風が弱くなった時刻に関しては波高,周期ともに推算値と実測値に差が見られるが,風速が大きくなると良好な一致を示すことがわかる。ただし,風速20m/s程度以上に関しては実測値に比べ推算値が小さくなっている。したがって,平均的にはWilsonの式は大阪湾の波浪に関してもよい精度で成り立つが,高風速時の推算精度に多少の問題があると言える。
5.2鳥羽のZ_0則
無次元波高と無次元周期の3/2乗剣の検証から,大阪湾の風波データはTobaにより提案されたZ_0則(-1/2乗則)を満たすことが明らかとなった。ここでは,まず,3/2乗則の係数がTobaの提案した0.062であると仮定した場合のTobaのZ_0則の適合度を調べることにした。図-12がその結果である。図には,比較のため水理実験結果,白浜およびBass海峡の観測データ13)のバラツキ分布およびTobaのZ_0則(-1/2乗則)以外にCharnock-Wu,Masuda-Kusaba,TobaのZ_0則(-1乗則)の提案則を実線で示してある。黒丸で示す大阪湾の観測データぱ,バラツキが大きく確たることが言えないが,平均的には白浜の観測値と同様にTobaのZ_0則(-1/2乗則)を満たしていることがわかる。
TobaのZ_0則(-1/2乗則)を用いて算定した摩擦速度を用いて無次元エネルギーと無次元フェッチの関係を描いたものが図-13である。先に述べたようにデータの包絡線がfetch-limitedの状態を意味することを考慮し,さらにデータにある程度バラツキがあることを考えると実線,
(34)
が発達式と考えられる。ただし,無次元フェッチが10^7程度で発達式を表す線が折れ曲がっているが,これは,波浪推算上の平衡状態すなわち風波の発達限界を仮定しているためである。なお,摩擦速度を算出する際に用いたTobaのZ_0則(-1/2乗則)が波浪諸元に関係するため,本来ならばこのような相関をとることには問題があるが,後に述べるように波諸元による摩擦速度の変化量が小さいため発達式が特別おかしなものとはなっていない。
TobaのZ_0則(-1/2乗則)による摩擦速度による無次元波高と無次元周期の3/2乗則および無次元エネルギーと無次元フェッチの1乗則を用いてパラメータ法で波浪推算した結果を図-14に示す。図-11に示したWilson式の場合と同様に風速が15m/s程度までの推算値は実測値とよく一致するが,風速を20m/s超えるとやはり精度が悪くなっている。したがって,TobaのZ_0則(-1/2乗則)による摩擦速度を用いても従来のWilson式より精度の良い推算結果が得られないことがわかる。
5.3光易のC_D則
前節と同様に3/2乗則の係数を.0.067に固定してC_D値を逆算したものを描いたものが図-15である。図中小黒丸が風速18m/s未満,大白丸が18m/s以上の大阪湾のデータを表す。MitsuyasuのC_D則の適合性についても,図-12と同様にデータのバラツキが大きく確たることは言えないが,風速の抵抗則を記述するパラメータがよくわからない現状では波諸元に関係しない摩擦抵抗則を用いても大きな問題は無いと考えられる。
また,抵抗係数と水面粗度が
(35)
であることを利用してTobaのZ_0則(-1/2乗則)から求まるC_D値とMitsuyasuのC_D則を比較したものが図-16である。TobaのZ_0則から算出したC_D値は周期により異なるが,周期2sと12sでもその差は約30%程度である。したがって,摩擦速度の違いにすると10%程度以下であり,先にも述べたように精密な測定が難しく,風速の抵抗則を記述するパラメータがよくわからない現状では波諸元の影響をことさら海上風の抵抗則に取れ入れる効果がないと思われる。
図-17はMitsuyasuのC_D則による摩擦速度を用いて無次元エネルギーと無次元フェッチの関係を描いたものである。図-13と同様にデータ群の法絡線がfetch-limitedの状態であり,風波の発達式は
(36)
で表される。
図-18は図-11,図-14と同じ擾乱に関してMitsuyasuのC_D則による摩擦速度を用いた発達式による推算結果である。Wilsonの式,Tobaの式の場合と同様に風速15m/sまでは実測値と推算値に良好な一致が見られる。
しかしながら,20m/s程度以上では,やはり推算精度が劣っている。
5.4提案C_D則
前節までの検討において,代表風速として10m高度風速と摩擦速度のいずれを採用しても,観測データで検証した風波の発達則を用いるならば波浪推算結果が平均的には良好な精度で実測値と一致すること,また,風速20m/s程度以上になると実測値に比べ過小な推算結果となることが明らかとなった。そして,摩擦速度を算定する方法としては,風速と波諸元に関係するTobaの抵抗則と風速のみに関係するMitsuyasuの抵抗則を比較したが,優劣を判断するのが難しいくらいデータのパラツキが大きいため,現状ではMitsuyasuの抵抗則でも十分な精度を有しているものと判断できる。
ここでは,比較的簡単でありしかも理論構成上で整合性があるMitsuyasuの抵抗則を多少修正することにより高風速時の推算精度を向上させることを考える。
Mitsuyasuの抵抗則を修正するのに用いたデータは,大阪湾の風速18m/s以上のデータとMiller10)のHaurricane Donnaのデータである。図-15にそれぞれ白丸印および星印で表している。15rn/s程度までは本来のMitsuyasuの抵抗則で十分な精度で推算が可能であること。そしてこれらのデータの重心が風速25m/sでC_D値が0.04程度であることを考慮すると新しく提案する抵抗則として
(37)
が求まる。
新しい抵抗則による摩擦速度を用いた無次元波高と無次元周期の3/2乗則と無次元エネルギーと無次元フェッチの1乗則は,風速15m/s以下のデータに比べ風速20m/s以上のデータが少ないため相関をとっても係数の変化はない。各式の係数がB=6.7x10^-2およびA=1.8x10^-4で表されるものとして波浪推算した結果が図-19である。高風速時の推算値が改善され,全般的に実測値と良好な一致を示し,提案した抵抗則が波浪推算のモデル化にとっては妥当なものであることがわかる。

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式(32〜37)
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図-11 推算値と実測値の比較(10m高度風速)
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図-12 無次元エネルギーと無次元フェッチの関係
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図-13 無次元粗度と無次元ピーク周波数
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図-14 推算値と実測値の比較(Tobaの抵抗則-1/2乗則))
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図-15 抵抗係数と10m高度風速
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図-16 Tobaの抵抗則(-1/2乗則),Mitsuyasuの抵抗則および提案則の比較
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図-17 無次元エネルギーと無次元フェッチの関係(Mitsuyasuの抵抗則)
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図-18 推算値と実測値の比較(Mitsuyasu の抵抗則)
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図-19 推算値と実測値の比較(提案則)

6.考察

6.1スペクトル法による波浪推算結果との比較(1)モデルの定式化
現在,提案されているスペクトル法による波浪推算モデルとしては,わが国で開発されたものに限定しても,INOUE17),MRI18),MRI-219),山日・土屋20),TOHO
KU21)の合計5種類のモデルがある。本研究では,気象庁の波浪予測業務または港湾施設の設計波の算定に長年利用されてきたという実績があるという理由からMRI法を選び,1点出力型のモデルに修正したものを用いる22)。
任意の1地点へ襲来する波浪の波向線に一致する座標係をx軸に採ると,波浪スペクトルSの発達・減衰・伝播を表す方程式は
(38)
で表される。ここに,C_gは群速度を意味し,S_netは外力項である。外力項は,波向と風向のなす角\thetaと平衡スペクトルS_PMとの関係から
(39)
と記述される。ここに,A,Bは井上17)の定式化した発達係数,Dは減衰係数,fは成分波の周波数,\lambda(\theta)は方向分布関数である。また,平衡スペクトルS_PMとしてはPierson-Moskowitzスペクトルを仮定している。
式(38)に基づく伝播計算には,演算速度が速いことおよび方向・周波数の離散化が比較的粗いときに高精度なスキームを用いるとエネルギーの集中化をもたらす場合があることからパラメータ波浪推算モデルで用いたものと同じ風上差分を用いている。以上の説明で明らかなように,計算法を1地点出力型に変更した以外は外力項の定式化など従来のMRI法と同じであり,顕著な修正を行なっていない。ただし,フェッチが短い大阪湾を対象とした推算では高周波成分が重要なため,取り扱う周波数の範囲を本来のMRI法の0.04-0.25Hzから0.1-1.OHzに変更している。計算の離散化は,パラメータ波浪推算と同じ\Delta{x}=1㎞の計算格子網を組み,時間ステップ\Delta{t}=120s,方向分割\Delta{\theta}=\pi/16としている。また,周波数の離散化については\Delta{f}=0.01としている。
(2)推算結果
前章で対象とした擾乱すなわち1984年1月3日から6日までの擾乱に関して推算を行い,実測値と比較したものが図-20である。3日から始まる擾乱も5日から始まる擾乱も有義波高および周期ともに指算値が小さくなっている。特に,ピーク波高は,3日から始まる擾乱で実測値が2.6mであるのに比べ推算値が1.6mとなっており,また,5日から始まる擾乱においても実測値の1.5撮が0.8mに推算されるように実測波高の50-60%程度の再現しかできていない。したがって,フェッチの長い外洋でよく用いられるスペクトル法も短フェッチの海域では他の方法に比べ推算精度が著しく劣ることがわかる。
このように推算値が過小となる理由としては,スペクトル法のモデルの定式化で最も重要である平衡スペクトル形に問題があることが考えられる。図-21はスペクトル法で用いている平衡スペクトルすなわちPierson-Moskowitzスペクトルと実測スペクトルを比較した一例である。図は周波数が0、1Hz以上の範囲で描かれている。Pierson-Moskowitzスペクトルに比べ実測スペクトルはピーク付近でかなりのスペクトルのオーバーシュートが見られる。いま,スペクトルのオーパーシュート量を図の斜線部で表し,そのエネルギーをE_0で表す。
図-22は実測スペクトルの全エネルギーを基準としてオ一バーシュートするエネルギー量と無次元エネルギーの関係を調べたものである。バラツキがあるものの無次元エネルギーと比較的良い相関があり,無次元エネルギーが小さいほどオーパーシュートするエネルギー量が多いことを示している。スペクトル法による波浪推算は,平衡スペクトルであるPierson-Moskowitzスペクトルで各周波数成分の発達を抑えるためオーバーシュートしたエネルギーを評価することができないという特性を考慮すると図-20のように短フェッチ海域で推算結果が過小となることがわかる。したがって,現状のスペクトル法は,波高が大きくまたフェッチの長い波浪を対象としたものであり,波高が低くフェッチの短い波浪に対しては精度が劣るものと結論づけられる。
6.2東京湾の台風8506号による高波の推算
 風速15m/s程度までは従来手法である有義波法でも十分な推算精度を持つが,20m/s以上の風速になると精度が劣るため新しく提案した抵抗則に基づく摩擦速度を用いる必要がある,というのが前章までの結論であった。しかしながら,大阪湾では20m/sを超えるデータが少なく十分な検討がでぎなかった。ここでは,東京湾の東京灯標で観測された台風8506号による推算を実施することにより前章の結論を検証する。
 台風8506号は東海地方沼津市付近に上陸した首都圏を直撃した台風で,東京管区気象台における最大風速が36.7m/sという大型のものである。図-23は推算結果と実測結果の比較である。凡例に示すように,実測値,パラメータ法,有義波法そしてスペクトル法の推算値が同時に描かれている。ピーク波高に関するパラメータ法の推算結果は実測値に比べ多少の時間遅れがあるが最大波高に関しては非常に良い一致が見られる。有義波法の推算値はピーク波高の実測値3.09mに対して2.Om程度の推算値となっており,やはり高風速時の推算精度に問題があることがよくわかる。スペクトル法の推算値も有義波法の結果と同様に過小な推算値となっている。以上のことから,東京湾においても高風速の気象擾乱により発生する波浪に関しては,従来手法である有義波法およびスペクトル法ともに推算精度が劣り,本研究で提案した方法を用いる必要があることが確認できる。
6.3パラメータ型波浪推算モデルの推算特性
(1)有義波法との比較
 前節までの検討により,大阪湾のような短フェッチ海域に関する波浪推算モデルとして式働の抵抗則を用いて換算した摩擦風速を用いたパラメータ型波浪推算モデルが適していることが明らかとなった。ここでは,従来手法である有義波法と風波の発達特性に関して比較検討した結果を述べる。
 パラメータ型波浪推算モデルは,有義波諸元そのものでないがエネルギーという単一パラメータとフェッチの関係で発達特性を表し推算する方法である。したがって,有義波法と比較するには無次元フェッチと波浪諸元の関係を見ればよい。図-24(a),(b)はそれぞれ無次元波高,無次元周期と無次元フェッチの関係で有義波法とパラメータ型波浪推算法を比較したものである。図中の実線がWilson式および10m高度風速が10m/s,20m/s,30m/sのパラメータ型波浪推算法の発達特性を表したものである。風波の発達時の多くは無次元フェッチで10^2から10^4程度であることを考慮すると,図から風速10m/s程度では有義波法と同程度または以下であり,風速20m/s以上はパラメータ法の発達率の方が大きくなる特性があることがわかる。
(2)SWAMPテスト
ここでは,推算特性に関して従来手法である各種スペクトル法に関するSWAMPテスト23)の一例を通して比較した結果を述べる。SWAMPテストは風波の物理特性をモデリソグの観点から調べる各種モデルの相互比較テストで,7種類のテストからなる。ここで比較に用いるのはケース2と名づけられたもので,フェッチあるいは吹続時聞により波浪の発達が推算モデルによりどのように変化するかを調べたものである。ケース2の推算条件は,1000㎞四方の海域を対象として風速20m/sの一様な風を波浪場が定常となるまで吹かし続けるものである。
図-24(c)から(f)は無次元エネルギーと無次元フェッチおよびスペクトルの無次元ピーク周波数と無次元フェッチに関して各種推算モデルと比較したものである。図-24(c)および(e)のわが国で開発されたモデルとの比較では,太実線で示すパラメータは無次元フェッチが小さい範囲でTOHOKUモデルに近い性質を持ち,全体ではINOUEモデルに似た発達特性があることがわかる。図-24(d),(f)の外国のモデルとの比較では,EXACT NL,GORO,SAILそしてVENICEと近い特性を有することがわかる。なお,本研究は大阪湾を対象とした波浪推算を中心に種々の検討をしているため短フェッチ海域の波浪推算手法と位置づけているが,発達特性に関する他手法との比較検討結果から判断するとフェッチの長い外洋の波浪にも精度よく適用することが可能であると思われる。

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式(38〜39)
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図-20 推算値と実測値の比較(スペクトル法)
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図-21 周波数スペクトルのオーバーシュートの模式図
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図-22 周波数スペクトルのオーバーシュートに走因する推算誤差
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図-23 東京港の台風8605号の波浪推算
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図-24 パラメータ波浪推算モデルの特性

7.まとめ

本研究で得られた主要な結論は以下のとおりである。
(1)無次元波高と無次元周期の3/2乗則と無次元エネルギーと無次元フェッチの1乗則により定式化したパラメータ波浪推算モデルを提案した。
(2)観測風速(10m高度の海上風)を用いて無次元波高と無次元周期を整理すると良好な精度で乗則が成立する。また,SMB,Wilsonの発達式に観測データはよく適合する。ただし,10m高度の海上風により定式化した発達則を用いた波浪推算結=果は,風速15m/s程度以下であると観測値とよく一致するが,風速20m/s以上の場合に適合度が悪くなる。
(2)大阪湾の観測データはToba(-1乗則)およびMasda-Kusabaの抵抗則との適合性はあまりよくなく,Toba(-1/2乗則)に近い,Toba(-1/2乗則)の抵抗則を用いた波浪推算結果は,(1)の場合と同様に風速15m/s程度以下であると観測値とよく一致するが,風速20m/s以上の場合に適合度が悪くなる。
(3)Mitsuyasuの抵抗則を用いた推算値もWilsonおよびToba(-1/2乗則)の場合と同じ傾向となる。
ただし,20m/s以上のデータを用いて修正した抵抗則を用いると高風速時の波浪に関しても実測値とよく合致する推算結果が得られる。
(4)スペクトル法による波浪推算値は,短フェッチ海域における出現周波数スペクトルがスペクトル法で仮定しているものと大きく特性が異なるため,風速値によらず推算精度が著しく劣る。
(1990年6月30日受付)

謝辞

 本研究を行うにあたり,東北大学工学部首藤伸夫教授,理学部鳥羽良明教授ならびに港湾技術研究所海洋水理部海象調査研究室小舟浩治室長から御指導,御助言を得た。なお,本論文で用いた観測データは運輸省第三港湾建設局および関西国際空港株式会社および東京都港湾局から提供していただいたものである。ここに記して謝意を表す。

参考文献

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14) Toba, Z.: Wind waves and turbulence, In 「Recent Studies of Turbulent Phenomena」, eds. T.Tasumi, H. Maruo and H. Takami, Assoc. for Sci. Doc., Tokyo, 1985, pp. 277-296.
15) Sverdrup, H. U. and W. H. Munk : Wind, sea and swell, theory of relations for forecasting, U. S. Navy Hydro. Offide, 1947, Pub. 601.
16) Bretschneider, C. L.: The generation and decay of wind waves in deep water, Trans. AGU, 1952, Vol. 33, No. 3, pp. 381-389.
17) Inoue, T.: On the growth of the spectrum of a wind generated sea accoding to a modified Miles-Phillips mechanism and its application to wave forecastng, Dept. of Meteorol. and Oceanogr., New York Univ. Report, 1967, TR-67-5, 74p.
18) Isozaki, I, and T. Uji : Numerical prediction of ocean wind waves, Papers in Met. and Geophys., 1973, Vol 23 (4), pp. 347-359, 1973.
19) Uji, T.: A coupled discrete wave model MRI-II, Oceanogr. Soc. Japan, 1984, Vol. 40, pp. 303-313.
20)山口正隆・土屋義人:有限風域場における波浪の数値予知法,第26回海岸工学講演会論文集,1979,pp.96-100.
21) Kawai, S., P. S. Joseph and Y. Toba : Prediction of ocean waves based on the single-parameter growth equation of wind waves, J. Oceanogr. Soc. Japan. Vol. 35, pp. 151-167.
22)後藤智明・小舟浩治:現地で簡単にできる波浪推算法について,第35回海岸工学講演会論文集,1988,pp.26-30.
23) The SWAMP Group : Ocean wave modeling, Plenum, 1985, 256p.

主要記号一覧表

C_1/3:有義波周期に対応する波速
C_D:海上風の抵抗係数
E:波浪エネルギー
E(\theta):方向別波浪エネルギー
E_0:オーバーシュートするエネルギー
E^*:無次元エネルギー
E^*_max:無次元エネルギーの限界値
F:有効フェッチ
F_I:I方向の線フェッチ
F^*:無次元フェッチ
\bar{H}:平均波高
H_1/3:有義波高
H^*:無次元有義波高
L_1/3:有義波周期に対応する波長
m_n:スペクトルのn次モーメソト積分値
S:方向スペクトル
S(f):周波数スペクトル
S_net:スペクトル法の外力項
S_PM:平衡スペクトル
\bar{T}:平均波周期
T_1/3:有義波周期
T_P:スペクトルピーク周期
Y^*:無次元有義周期
U_10:10m高度風速
U_*:摩擦速度
z_0:水面粗度
\sigma_P:スペクトルピーク角周波数
\lambda(\heta):方向分布関数

付録A 波浪諸元からの風の推算

無次元波高と無次元周期3/2の乗則の関数を用いて海上風を波浪データから推算するには,3/2乗則を書き換えれぽよい。すなわち,
(A-1)
である。摩擦速度から10m高度風速は,式(37)を用いれぽよい。
 1984年の冬季と夏季の代表的な月について波浪データから推算した風速と実測風速を比較した例を付図-1に示す。冬季に関しては逆算風速と実測風速が非常によい一致を示すことがわかる。これは,西系の風が支配的であり外洋からのうねりの侵入が少なく,風波という条件が満たされるためである。一方,夏季の場合は大阪湾にうねりが来襲することと海陸風が顕著になるため波浪データから海上風の逆算精度が悪くなる。
以上のように風波であるならば,波浪諸元から海上風を推算する手法として無次元波高と無次元周期の3/2乗則が利用できることがわかる。したがって,波浪推算で最も重要な問題として残されている気象データからの求めた推算風を補正する手法として利用したり,本研究で提案したような3/2乗則を組み込んだ波浪推算モデルを開発することにより点で観測した波浪を面的に精度よく補間する手法が確立できる可能性もある。

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式(A-1)
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付図-1 波浪諸元からの風の推算

付録B 波浪推算例

ここでは,本研究で提案したパラメータ波浪推算モデルを用いて先に扱った擾乱以外に特徴のある気象擾乱として4ケース
(1)1984年10月20日から23日の擾乱
(2)1985年12月14日から17日の擾乱
(3)1986年12月27目から30日の擾乱
(4)1987年1月12日から15日の擾乱
を選び,波浪推算した結果を述べる。推算の諸条件は本論で扱ったケースと同じであり,推算結果は付図-2から付図-5に示してある。
1984年10月20日から23日の擾乱は,日本海低気圧北上に伴う最大風速が西方向の15m/s弱のもので,波高1.7m,周期4.3sを記録したものである。風波を対象とした推算モデルであるため,風速の弱い20日前半および21日後半以降が実測値に比べ推算値が小さい結果となるが,擾乱のピーク前後は非常に良好な一致を示している。
1985年12月14日から17日の擾乱は,比較的強い冬型気圧配置が長く続いたケースであり,風速は6m/sから16m/s,風向は西南西から西北西である。以上のように,この擾乱は強い風速が継続したため,全期間にわたり波高,周期とも実測値と良好な一致を示している。
1986年12月30日から27日の擾乱は,九州のすぐ南で低気圧が発生しこの低気圧が発達しながら本州南岸を東進したもので,最大で風速18m/s,波高1,9m/s,周期5,1sが観測されたものである。推算結果はピーク値が多少小さくなっているが,風速が強い期間は良好な一致を示す。
1987年1月15日から日の擾乱は,本州南岸と目本海を東進する二つの玉低気圧によるもので,12日の後半から13日の前半にかけて15m/s強の風が続いたものである。
推算値と実測値に多少の差異が見られるが全般的には良好な一致を示している。

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付図-2 波浪推算例(1984年10月20日から23日の擾乱)
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付図-3 波浪推算例(1985年12月14日から17日の擾乱)
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付図-4 波浪推算例(1986年12月27日から30日の擾乱)
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付図-5 波浪推算例(1987年1月12日から15日の擾乱)

港湾技術研究所報告 第29巻第4号(1990.12) 4.ハイブリッドパラメータ法による波浪推算モデル (第1報)-東京湾における検討- 永井紀彦*・後藤智明**・小舟浩治***

要旨

 大阪湾における気象・海象観測データをもとにして著者らが開発したパラメータ法による短フェッチ海域波浪推算モデルを,東京港における現地観測データを用いて検証し,その妥当性を確認することができた。また,風波の周波数スペクトルの相似則について検討したハイブリッドパラメータ法による波浪推算モデルを提案するとともに,その適用性について調べた。
 東京港における風観測は,その風速計の設置条件に問題点が残されている。このため,海上風と風波の関係式を用いた観測風の補正方法を提案した。また,補正された観測風と観測有義波高を比較検討した結果,無次元波高と無次元周期の間には3/2乗則が精度よく成立すること,無次元フェッチと無次元エネルギーの間には,大阪湾のデータから得られた関係式がやはり成立すること,減衰後期を除き,発達期,最盛期,減衰初期屯期を通じて周波数スペクトルはJONSWAPスペクトルで精度よく相似されること,などを明らかにした。
 以上の検討結果をふまえて,パラメータ法およびハイブリッドパラメータ法による波浪推算を5擾乱に関して実施した結果,従来の有義波法やスペクトル法による推算結果と比較して,より精度が高い結果が得られることが確認された。
キーワード:波浪推算,パラメータ法,短フェッチ海域,東京湾,周波数スペクトル

*海洋水理部主任研究官
**水工部海洋エネルギー利用研究室長
***海洋水理部海象調査研究室長

REPORT OF THE PORT AND HARBOUR RESEARCH INSTITUTE Vol. 29, No. 4 (Dec. 1990) 4. Wave Hindcast Mobel Using the Hybrid-parameter Method (1st report)-Application to the Tokyo Bay- Toshihiko NAGAI* Chiaki GOTO** Koji KOBUNE***

Synopsis
The parameter wave hindcast model for wind generated waves in short fetch sea, developped through the investigation using the data obtained in the Osaka Bay, was applied to the Tokyo Bay and compared with the data obtaind at the Tokyo Tohyo Wave and Wind Measurement Station in the bay.
Wind velocity obtained at the station U_23 was transferred to the 10m height wind velocity U_10 by using the Wilson」s equations. For the non-dimensional analysis, U_10 was transferred once again to the friction velocity U_*, defined by the authors’ previous report.
Parameters were checked with the 6 years field data and it was concluded that the equations derived from the data obtained in the Osaka Bay were also applicable to the Tokyo Bay.
The wave frequency spectrum was also investigated and compared with the JONSWAP standard spectrum. It was found that the JONSWAP spectrum is widely applicable not only to the wave height increasing conditions but also decreasing conditions, except when the waves are fairly small.
Various wave hindcast models were compared by carrying out wave hindcast calculation on the 5 extreme sea conditions. The parameter method and the hybrid-parameter method showed the better agreement with the observed wave heights aed periods than the traditional significant wave method and the spectrum method.
Key words : Wave hindcast method, Parameter model, Short Fetch Sea, Tokyo Bay, Frequency Spectrum

*Senior Reseach Engineer, Marine Hydrodynamics Division
**Chief, Ocean Energy Utilization Laboratory, Hydraulic Eneineering Division
***Chief, Marine Observation Laboratory, Marine Hydrodynamics Division

目次

1.まえがき 89
2.東京港における気象・海象観測 90
2.1観測の経緯 90
2.2観測方法 90
2.3観測位置における方向別フェッチ 91
2.4波浪および風の出現特性 92
3.観測風の補正 93
3.1概要 93
3.2無次元波高と周期の3/2乗則を仮定した一次補正 93
3.3海上風速による二次補正 95
4.風波の発達則 96
4.1無次元波高と周期の3/2乗則 96
4,2無次元フェッチと波高・周期・エネルギーの関係 98
4.3風波の無次元量の関係 101
5.周波数スペクトルの標準形 103
5,1海洋波のスペクトル形 103
5.2スペクトルパラメータ 104
5.3スペクトルの相似則 105
5.4周波数スペクトルと有義波諸元 106
6.波浪推算モデル 107
6.1一点型出力方法 107
6.2有義波法 108
6.3スペクトル法 108
6.4パラメータ法 109
6.5ハイブリッドパラメータ法 110
6,6計算条件 111
6.7計算結果 112
7.結論 116
参考文献 117
主要記号表 117

1.まえがき

港湾・海洋構造物の設計にあたっては,波浪推算は必要不可欠なものである。このため,より精度の高い波浪推算モデルを確立することは,設計を合理的に行うために,きわめて重要である。
今日に至るまで,さまざまな波浪推算モデルが数多くの研究者によって提案されているが,実務上,十分と考えられる精度を有する手法は,いまだ,確立されていないと言うことができる。これは,推算モデルを検証するに足りる気象・海象データが十分に取得されていなかったことに起因しているものと思われる。
外洋の波浪推算を行う場合,計算対象領域は相当に広いものでなければならず,対象領域内全体の風の場を十分な精度で把握することは難しい。たとえ,大水深海域における精度の高い方向スペクトルデータが得られたにしろ,推算値の検証には,波浪を発生させる外力である風推算上の誤差が多く含まれる問題が残される1)。
これに対して,内湾の閉鎖海域の場合には,計算領域を湾内に限定できるため,実測気象・海象データによって波浪推算モデルを検証することが,比較的容易になる。前報2)において,著者らは,大阪湾における気象・海象データから海上風の抵抗則と風波の発達則に関する種々の検討を行い,短フェッチ海域の風波を対象としたパラメータ波浪推算モデルを開発した2),3),4),5〉。
波浪推算モデルの開発の歴史を見ると,SMB法に代表される有義波法が最初に提案され6),7),8),追跡法9)あるいは格子点法10)といった有義波法のさまざまなモデルが開発された。ここに,有義波法とは,不規則な海の波を,単一な波高と周期を有する波で代表させて(有義波),実測データおよび経験から得られた風による波の発達式によって波浪推算を行う手法と言うことができる。
その後,スペクトル法による波浪推算法が誕生した。開発初期のスペクトル法は,周波数成分および方向成分に波浪のエネルギーを分割し,各成分についてそれぞれ波の発達・伝播・減衰を計算するので,成分波法とも言うことができる。スペクトル法(成分波法)による波浪推算モデルとしては,わが国では,井上モデル11),MRIモデル12),山口・土屋モデル13)などがある。
スペクトル法は,有義波法に比べてより合理的な手法であるため,より高い精度が期待できるわけであるが,風波の発達段階においては,平衡スペクトルとして仮定しているPierson-Moskowitzスペクトルで各周波数成分の発達を抑えているため,オーバーシュートしたエネルギーを評価することができない問題点をかかえている。
そこで,風波の発達段階においては有義波法で用いられているパラメータ相互の関係を取入れ,スペクトル法を修正したハイブリッドパラメータ法が,第2世代の波浪推算法として登場する。ハイブリッドパラメータ法による波浪推算モデルとしては,TOHOKUモデル14),MRI-2モデル15),DOLPHINモデル16)・17)などが提案されている。しかしながら,ハイブリッドパラメータ法による波浪推算モデルは,いまだに開発途上のモデルであるため,今後解明しなければならない問題が数多く残されている。その中でも,大きい問題点は,風波の発達式等のパラメータ相互の関係式である。このため,前報2)および本報に述べる検討を行っているわけであるが,この検討にあたっては,実測された気象・海象データが最も重要なものとなる。
風波の発達式は,当初は10m高度風によってとりまとめられており,無次元波高と無次元周期の間の3/2乗則などの関係式および標準スペクトル形18),19)が求められた。その後,摩擦速度の概念が導入され,風波の発達式および無次元パラメータ相互の関係式は,摩擦速度によってより精度よくとりまとめられることが明らかにされた20),21),22),23),24),25)。摩擦速度の定義は,大きくC_D則とZ_0則とに分類されるが,前報2)で述べたように,MitsuyasuによるC_D抵抗則を高風速時の実測データを用いて修正した抵抗則をもちいればよいことが,SWAMPテスト26)等の結果から明らかにされている。
本報は前報で開発したパラメータ波浪推算モデルを東京湾に適用し,東京港における気象・海象観測データによって,その検証を行ったものである5)。あわせて,風波に関する無次元パラメータ相互の関係,周波数スペクトルの相似形に関しても詳細な検討を行い,パラメータ波浪推算モデルは,大阪湾に限ることなく他の内湾の閉鎖海域にも汎用的に適用できることを確認した。
なお,このパラメータ波浪推算モデルは,東京湾や大阪湾などの波浪推算に用いられるばかりでなく,現在開発中の外洋におけるハイブリッドパラメータ法の波浪推算モデルの確立のための重要なステップとなる。
本報の波浪推算は,すべて一点法を用いた。波浪推算における計算格子の設定法として,格子点法と一点法があるが,さまざまなモデルによる波浪推算結果の比較にあたっては,一点法の方が比較的計算が簡便であるためである27),28)。

2.東京港における気象・海象観測

2.1観測の経緯
東京港では,高潮対策事業の実施にあわせて昭和37年に港内に観測計器の設置工事を行い,昭和38年から観測を開始している。港外における本格的な観測は,東京港前面の品川沖約3kmの海上にstation 1と呼ばれる観測塔を建設した昭和40年から始まる。station 1における観測は,設置水深AP-2.5mと-6.5mの2台の水圧式波高計,塔脚部に設置したステップ式波高計および測定高度・4P+6.5皿と+12mの2台の三杯式風向風速計の構成からなる。なお,APは荒川工事基準面を意味し,東京湾中等潮位TPと
(TP)=(AP)-1.1341m (2.1)
の関係がある。
昭和44年からは,東京港の埋め立て工事などでstation1の維持が困難となったため,station 1の南南東約3.5kmの東京灯標(東経139度50分,北緯35度34分)において観測が継続されるようになった。
2.2観測方法
東京灯標における観測は,水深AP-3.5mと-14.8mに設置された水圧式波高計,ステップ式波高計,水圧型潮位計および測定高度AP+23mのプロペラ式風向風速計を用いて行われていた。昭和57年には,ステップ式波高計にかわり超音波式波高計が設置され,観測データをテレメータにより伝送するシステムへと改良された。
図-2.1および写真-2.1,2.2に昭和57年から現在に至る東京灯標の観測機器の配置状況を示す。
東京灯標における波浪観測結果は,毎偶数時に10分間の計測データが0.2s間隔にデジタル化され,有義波諸元およびスペクトル演算処理がなされている。また,属向風速については,整数時毎に風向,平均風速,瞬間最大風速などの諸元に整理されている。
本報告では,昭和58年から昭和63年の6年間に観測されたデータのみを用いることとした。これは,風波の発達過程を詳細に検討し,波浪推算モデルを開発するためには,均質でかつ海面波を直接測定した精度のよいデータであることが不可欠なためである。
2.3観測位置における方向別フェッチ
観測地点,すなわち東京灯標の対岸距離を整理したものが図-2.2および表-2.1である。この対岸距離は,波浪の発達に直接関係するものでフェッチと呼ばれる。
図中の実線は16方位別のフェッチを表し,数字はkm単位の距離を意味する。また表-2.1中には有効フェッチも記載した。有効フェッチとは,波向および風向の分布形を考慮したフェッチを意味し,Savilleに従い計算される。すなわち,主波向に対して±45°の角度幅を考え,この角度幅をできるだけ細分し,それぞれの方向について陸岸までの線分の長さF_iを求めたとぎ,\theta_i方向の有効フェッチFは
(2.2)
となる。表-2.1に示した東京灯標の有効フェッチは,細分化した角度を5度として,16方位別に式(2.2)を用いて算出している。
東京灯標の有効フェッチは,西から北方向で約5kmと短く,東から南方向で20kmである。また,最長フェッチは南の22.7kmである。
2.4波浪および風の出現特性
昭和58年から昭和63年の6年間の観測値を用いて有義波高と有義波周期の出現頻度を調べたものが表-2.2である。この表から,出現波浪の99%程度が波高1m以下で周期4s以下の波浪であることがわかる。最多出現波浪は,波高0.25m以下,周期2sから3sである。このことから,東京港の波浪は,湾内で発生した風浪であり,湾外からの海洋性風波とうねりの侵入はほとんどないと考えられる。なお,周期4s以下の波は,波長が25m以下であり,東京灯標の水深が151n程度であるので,深海波とみなすことができる。
図-2.3は,波高階級と風向の分布を示したものである。春から秋にかけて卓越する南南西からの強風にともなって波高階級も南南西方向が他方向に比べて高くなっている。しかし,冬に頻度が多くなる北北西からの季節風の吹き出しによって,北北西からの出現頻度も,波高階級は比較的低くなってはいるものの多くなっている。
なお,昭和58年から昭和63年の6年間の観測値の高波浪を20位まで抽出したものを表-2.3に示している。期間中の最高は,台風8506号によるもので,昭和60年7月1日に有義波高3.09m,周期4.2s,風速38m/sを記録している。

1/2
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2/2
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式(2.1〜2.2)
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図-2.1 東京灯標における風と波の観測
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図-2.2 東京灯標における方向別フェッチ
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図-2.3 波高階級と風向の分布(U>10m/s)
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写真 写真-2.1 東京灯標全景
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写真 写真-2.2 東京灯標の風向風速計の配置
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表-2.1 方位別有効フェッチ
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表-2.2 有義波波高・周期出現頻度表
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表-2.3 昭和58年〜昭和63年の上位20位までの擾乱

3.観測風の補正

3.1概要
東京灯標における風向および風速は,写真-2.1および風向風速計の設置状況を示した写真-2.2を見ると明らかなように,東京灯標の施設全体が大きいこと,風向風速計がドーム状の屋根の上に設置されていること,しかも北北東には灯台があることにより,観測値そのものが海上風を表していると考えにくく,風向および風速により,かなり海上風とは異なる風を観測しているものと考えられる。また,観測高度がAP+23mである一方,従来の風と風波の関係に関する経験則の多くは10m高度の風速値を用いているため,東京灯標の観測値を10m高度の海上風に修正し,波浪の発達に関する検討を行う必要がある。このため,観測風の補正法を検討する。
3.2無次元波高と周期の3/2乗則を仮定した一次補正
Wilsonの提案した波浪の発達式は,無次元フェッチと無次元波高と周期の関係式で,下記のように表される。
(3.1)
(3.2)
ここに、H*,T*,F*はそれぞれ10m高度風で無次元化した有義波高、有義周波数およびフェッチ示をす。
すなわち,
(式1)
である。
ここに,H_1/3は有義波高,T_1/3は有義波周期,Fはフェッチ,gは重力加速度を意味する。両式は無次元フェッチが10^3位までは,ほぼ一定勾配で増加するが,それ以上では一定値に近づき,無次元波高は0.30,無次元周期は1.37に収束する。
式(3.1)と式(3.2)を書き換えると,
(3.3)
となる。この式の右辺の値は,無次元フェッチにわずかに依存するが,変動は小さく,平均的には0.013となる。図-3.1は式(3.3)で与えられる無次元波高と周期の関係を無次元フェッチを適当な間隔で与えプロットしたものである。この図より実線は
H*=B_wt*^3/2 B_w=0.013(3.4)
で非常によい精度で近似できることがわかる。また,この式は鳥羽により,全く別の観点から独立に導かれた風波に関する3/2乗則と同型である。式(3.4)は,
(3.5)
とも書くことができ,波浪諸元から10狐高度の海上風を推算する式に変換できる。したがって,観測された風および波の諸元を用いて,無次元波高と周期に関してプロットし,この関係を式(3.5)と同様に
(3.6)
と置けば,3/2乗則に合う係数Bを求めることにより,10m高度観測風U_10と海上風U_23の比率\muを
(3.7)
と算定することができる。
図-3.2は,無次元波高と周期の相関であり,風速(実測風)が8m/s以上で風向の変化がなく,風速,波高,周期ともに発達時のものを選んでプロットしたものである。図中の実線は式(3.4)を表す。なお,風向WとWNWは風速8m/s以上で発達時の条件を満たしたデータがない。図からわかるように,観測風で無次元化しても3/2乗則は,成立することがわかる。ただし,若干のばらつきが見られるのと同時に,プロットが実線よりも下側に集中している偏りも見られる。このことは,U_23に対るBは,U_10に対するB_Wより,小さい値になっていることを,意味している。
図-3-3は式(3.5)から求めた10m高度の海上風U_10と観測風U_23との比率を16方位別に表したものである。
図から,10m高度風は海上風の0.5から0.8倍程度の値となっていることがわかる。一般に,高度10mと23mの風速比は,対数分布則や1/7乗則で見積ってもその差が1割程度であることから判断すると,東京灯標の風速値は構造物の影響をかなり受けているものと考えられる。観測風と海上風の比率が風向SSEを境にして大きく異なるのは,東の風向は粗度の小さい海上を比較的長い間伝わってくる一方,西の風向は都心の建築物など粗度の大きい陸上から直接吹くため,両者の鉛直風速分布に差があることに起因すると考えられる。また,灯台の位置するNNEおよびNEはN,ENEに比べ比率が大きく,灯台による遮蔽の影響を表している。
3.3海上風速による二次補正
3.2で説明した一次補正は,無次元波高と周期の3/2乗則を用いた風向別に平均的な海上風への変換である。しかし,先にも述べたように構造物が観測風に大きく影響を及ぼしているため,本来の観測風と海上風の比率が風向のみならず風速値により変化すると考えられる。
図-3.4は,図-3.2で示したのと同様な条件を課してデータを選択し,方向別に観測風速と海上風速をプロットした例である。図中の実直線は前節で求めた方位別補正(一次補正)であり,各風向とも,平均的にみると一次補正のまわりにプロットされているが,風速が小さい部分で小さい方へ,風速が大きい部分は大きい方へずれていることもわかる。このため,風速値により補正量を試行錯誤により変化させ,図中の折れ線に示す二次補正式を求めた。
表-3.1は二次補正式を
U_10=aU_23+b (3.8)
とおき,係数a,bを16方位および風速階級別に整理したものである。
図-3.5および図-3.6は,それぞれ,1985年の2月および8月に観測された波浪諸元から逆算された風の経時変化と実際の観測風の経時変化を比較した例である。図は上から一次補正値による比較,二次補正値による比較,波浪諸元が示され,一次補正と実測値の比較は極大値付近で大きめになるのに比べ,二次補正ではかなりの精度で一致することがわかる。
なお,各図面における上側2図面では,プロットは実測された有義波高と有義波周期から式(3.5)を用いて求めた風速であり,折れ線は図-3.4に示した一次補正および二次補正を用いて23m高度風速を10m高度風速に換算したものである。

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式(3.1〜3.8)
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(式1)
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図3.1
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図-3.2 実測無次元波高と無次元周期
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図-3.3 16方位別1次補正係数
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図-3.4 観測風と海上風
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表-3.1 実測風から10m高度風への補正係数表(U_10=aU_23+b)
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図-3.5 観測風と波浪から逆算された風(1985.2)
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図-3.6 観測風と波浪から逆算された風(1985.8)

4.風波の発達則

4.1無次元波高と周期の3/2乗則
ここでは,無次元化のために用いる風速として,従来からよく用いられている10m高度の風速U_10と,風波の発達を表すのに適切であるとされている摩擦速度U_*の両者を用いた風波の発達の表現法について検討する。無次元化された波高H*,周期T*,エネルギーE*,フェッチF*は,それぞれ下記のように表される。
波高,周期,エネルギー,フェッチ
(4.1)
ここに,H_1/3およびT_1/3はそれぞれ有義波高および有義波周期,Eは,(H_1/3/3.83)^2で定義されたエネルギー,gは重力加速度である。摩擦速度の算定法としては,前報2)で報告したように,Mstsuyasuらによる式を一部修正した次式を用いた。
(4.2)
(4.3)
無次元波高と無次元周期の間には3/2乗の関係がある。U_10で無次元化したWilsonの推算式からは,前章で述べたように平均的に
B_W=0.013(4.4)
の関係が導かれる。また,Tobaは全く別の観点から独立に摩擦速度硫で無次元化して
B_T=0.062
(4.5)
を提案している。
無次元波高と無次元周期の関係は,式(4.4)あるいは式(4.5)を書き換えることにより
(4.6)
となることから明らかなように,波形勾配と波齢の関係を表すものと解釈できる。ここに,L_1/3およびC_1/3は有義波周期に対応する波長および波速である。
図-4.1は,風波であるという条件でデータを抽出し,無次元波高(gH_1/3/U_10^2)と無次元周期(gT_1/3/U_10)の関係を描いたものである。ここに,風波の条件としては,波高,周期とも発達段階にあること,2時間以上風向が変化しないこと,10m高度風速が10m/s以上であること,周期が4.5s以下であること(沖波と見なすことができること)の4条件を考慮した。
 図-4.1と図-3.2を比較すると,データのばらつきは後者の方が小さくなっており,また,直線からの偏りも後者のほうが小さくなっていることがわかる。これは,U_23からU_10への換算をWison式を仮定して行ったため,当然のことであるが,無次元波高と無次元周期の間の3/2乗則がより精度よく成立しているためである。
図-4.2は,摩擦速度で無次元化して図-4.1を再プロットしたものである。図-4,2においても3/2乗則はよい精度で満たされているが,その係数はB=0.064となっている。これは,大阪湾のデータを用いて著者らが前報で検討した結果の0.067に極めて近い。したがって,ここでは係数を0.064として以後の検討を行うことにする。
4.2無次元フェッチと波高・周期・エネルギーの関係
風波の有義波諸元の発達特性を記述する経験式を通常推算式と呼んでいる。特に,時間的に定常に達し,風下方向に発達しているfetch-limitedの風波の推算式は,Sverdrup-Munk以後数多くの研究が行われ,改良が加えられている。現在最もよく利用されるのはWileonが提案したWilsonIV式と言われる式(3.1)および(3.2)である。
東京港で観測されたデータは風向・風速の変動が大きくfetch-limitedの状態に達しているか否かを容易に判定することが難しいため,風波であるという条件を課して波の伝播方向の無次元フェッチと無次元波高・周期の関係をプロットすることにした。風波の条件としては,図-4.1と同様の条件を採用した。
図-4.3は,10m高度風速で無次元化した無次元フェッチと無次元波高・周期の関係を描いたものである。図には比較のためWilsonの推算式が実線で描かれている。抽出条件から判断できるようにプロットされたデータは完全にfetch-limitedに達した風波に関するものばかりでないため,プロットしたデータの中心線ではなく包絡線がfetch-limitedに達した状態に対応するものと考えることができる。図から,Wilson式は無次元周期が過小評価気味であるものの無次元波高については比較的よい精度があることがわかる。
 同様な条件で無次元フェッチと無次元エネルギーの関係を描いたものが図-4.4である。図には比較のためMitsuyasu18)およびHasselmannら19)の推算式も描いている。データの中心は2種類の推算式の中間となっていることが図から読み取られる。しかし,ここでは,周波数スペクトルの積分値と有義波高の相関結果からE=(H_1/3/3.83)^2でエネルギーを算定しているため,光易らおよびHasselmannらがE=(H_1/3/4.0)^2で計算していることを考えると,東京港のデータは光易らの推算式に近いと考えられる。
図-4.5は摩擦速度で無次元化されたフェッチとエネルギーの関係をプロットしたものである。データのバラツキが大きく確たることは言えないが,図-4.4に比べデータの包絡線がより線形に近くなっている。図中の線は,大阪湾におけるデータを基に求めた推算式2)
(4.7)
である。無次元フェッチが10^7程度で折れ曲がっているのは波浪推算する上での平衝状態を仮定しているためである。
図-4.6(1),(2),(3)は,それぞれ,N-SW,SSW-SEおよびESE-NNE方向の風向に分類し,図-4.5をプロットしなおしたものである。図-4.6においては,プロットの条件を図-4.1から図-4.5までのものより若干緩くして,観測風速5m/s以上のデータをプロットしている。図-4,6のなかで,(2)および(3)は(1)に比べて,式(4.7)とプロットしたデータの包絡線の一致が比較的よい。図-4.6(1)がはずれるのは,図-2.1および表-2.1で求めた有効フェッチの中に,航路の影響が十分に評価されていないためであると考えられる。すなわち,東京灯標の西北方向には,多くの航路が存在しており,このことは,見かけ上の有効フェッチを長くする。
以上のことをまとめると,東京港の風波の無次元フェッチと無次元波高・周期・エネルギーの関係は,従来の経験則でよく説明できることがわかる。
4.3風波の無次元量の関係
これまでに風波の特性を検証するにあたり,無次元化された波高,周期,エネルギー,およびフェッチ等の関係を調査したが,これらと一緒に波齢,無次元ピーク周波数(次章参照),および波形勾配の関係をとりまとあると,表-4.1のように記述できる。表-4.1は縦方向に並ぶ諸元をY,横方向をXとし,関係式を,
Y=\alphaX^n
と仮定したときの係数\alphaとnをまとめたものである。
表-4.1ををみると式中に表れる変数は,A,a,B,bの四種類だけである。ここに,A,a,B,bは,それぞれ,無次元フェッチと無次元エネルギーとの関係係数(図-4.5),無次元波高と無次元エネルギーとの関係係数(図-5.13),無次元波高と無次元周;期との関係係数(図一4.2),無次元周期と無次元周波数との関係係数(図-5.14)を意味しており,それぞれ,以下に示す値となることが確認されている。
A=0.00018,a=3.83,B=0.064,b=1.05
表-4.2の各欄の中段は,上記変数A,a,B,bの値から3/2乗則をはじめとした指数法則から,表-4.1に従って計算した係数\alphaである。また,上段には指数nを表-4.1のものと仮定して,観測データから最小自乗法で計算した係数\alphaを記入している。ただし,ここで,Uは,著者らによって修正されたMitsuyasuの抵抗則
から算定された摩擦速度である。
表の上段と下段は,比較的近い値となっていることがわかる。このことは,無次元パラメータ相互の関係は,表-4.1によって精度よく示されることを,意味している。図-4.7から図-4.15に,表-4.2の上段の係数を求めたプロットと,表-4.2の下段の係数から引かれる縦軸と横軸の関係を示しているが,これらの図からも,やはり,表-4.1の関係式の妥当性が確認される。

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式(4.1〜4.7)
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図-4.1 10m高度風で無次元化した波高と周期
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図-4.2 Mitsuyasuの抵抗則で算定した摩擦速度で無次元化した波高と周期
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図-4.3 10m高度風で無次元化したフェッチと波高・周期の関係
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図-4.4 10m高度風で無次元化したフェッチとエネルギー
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図-4.5 Mitsuyasuの抵抗則で算定した摩擦速度で無次元化したフェッチとエネルギー
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(1)N-SW方向
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(2)SSW-SE方向
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図-4.6 風速が5m/s以上のときの方向別無次元フェッチとエネルギー
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表-4.1 無次元パラメータの関係式における係数\alphaと指数n(Y=\alphaX^n)
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表-4.2 \alphaの算定(Y=\alphaX^n)
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図-4.7その他の無次元パラメータ相互の関係1(無次元エネルギーと無次元周期)
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図-4.8その他の無次元パラメータ相互の関係2(無次元周波数と無次元波高)
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図-4.9 その他の無次元パラメータ相互の関係3(無次元周波数と無次元フェッチ)
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図-4.10その他の無次元パラメータ相互の関係4(波齢と無次元エネルギー)
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図-4.11その他の無次元パラメータ相互の関係5(波齢と無次元フェッチ)
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図-4.12その他の無次元パラメータ相互の関係6(波形勾配と無次元エネルギー)
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図-4.13その他の無次元パラメータ相互の関係7(波形勾配と無次元周波数)
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図-4.14その他の無次元パラメータ相互の関係8(波形勾配と無次元フェッチ)
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図-4.15その他の無次元パラメータ相互の関係9(波形勾配と波齢)

5.周波数スペクトルの標準形

5.1海洋波のスペクトル形
海洋波のスペクトルに関しては,古くから調査研究が行われており,特に,風波のスペクトル形に強い相似性のあることが知られている。また,海洋波のスペクトル形としては,これまでに種々の提案があるが,代表的なものは,PiersonとMoskowitzによるPMスペクトルと,HasselmannらによるJONSWAPスペクトルである。PMスペクトルは海洋で十分発達しきった,いわゆる,風から波へのエネルギー供給と砕波等によるエネルギー損失が釣り合った平衡状態のスペクトルの標準形として,多くのスペクトル法の波浪推算モデルに組み入れられている。一方,JONSWAPスペクトルは発達過程にある風波の標準スペクトル形としてPMスペクトルを拡張し提案されたものである。
JONSWAPスペクトルは,PMスペクトルに比較して,湾内波浪において出現頻度の高い幅の狭いエネルギーピークを再現できること,5つのパラメータを有するため,パラメータを選択することにより適合度を上げることができ汎用性があること,の2点の長所を有する。
JONSWAPスペクトルは次式の形で提案されている。
(5.1)
ここで,fは周波数,f_mはスペクトルピーク周波数を表す。またt,\sigmaは周波数により
(5.2)
となる。\gammaはpeak enhancement factorと呼ばれ,スペクトルピーク付迎のエネルギーの増幅率を表わすパラメータである。また,\sigmaは,スペクトルピーク付近のバンド幅を表わすものである。したがって,ピーク付近のスペクトルの形状は,\gammaと\sigmaで決定される。また,スケールはf_mと\alphaから決められる。図-5.1はスペクトル形状とこれらのつのパラメータの関係を模式的に示したものである。
なお,\gammaはPMスペクトルとJONSWAPスペクトルの,ピークエネルギーとの比で書かれているが,これはPMスペクトルが
(5.3)
と記され,JONSWAPスペクトルの\gamma=1としたもと同形であることによる。
一方,スペクトル法の推算モデルで扱われる平衝状態のPMスペクトルは,高度19.5mの風速値の関数として
(5.4)
と表される,ここで\alpha,\betaは
\alpha=0.0081,\\beta=-0.74
の経験定数,U_19.5は高度19.5mの風速である。
5,2スペクトルパラメータ
昭和58年から昭和63年に測得された波浪データのうち有義波高1.5m以上の高波浪を記録した擾乱に関してスペクトル解析を行い,スペクトル形をJONSWAPスペクトルに仮定した場合の5つのスペクトルパラメータを算出した。図-5.2から図-5.6に各パラメータと無次元エネルギーとの関係を示す。ここで,パラメータ海は
(5.5)
と無次元化している。\gamma,\sigma_1,σ\sigma_2ともばらつきが大きいながら,平均して\gamma=2.0,\sigma_1=0,08,\sigma_2=0.10であるといえる。f_m*についてはより負の相関で分布していることが明確になり,-1/3の勾配のあることも読み取れる。\alphaもf_m*ほどまとまりは無いにせよ,負の一定勾配により分布することがわかる。そこでスケールパラメータf_m*と\alphaに対して回帰直線を当てはめてみると,
(5.6)
(5.7)
を得る。しかし,無次元エネルギーが約2,000を超えるとf_m*と\alphaはバラつきだし,共に上式より低い値に分布する。これは後に述べるスペクトルの相似性が,保たれなくなった状況を表すものであり,風波のエネルギー平衝域,即ち風波とうねりの境界値であるといえる。また,これは風波の発達式(4.7)にて,無次元エネルギーが2,000以上はエネルギーの平衡域として,一定値としていることの理由である。
5.3スペクトルの相似則
図-5.7は,1985年5月25日から26日における有義波高の経時変化を示したものである。この時の周波数スペクトルを示したのが図-5.8であるが,図中には,実測値をプロットで結んでいる他,曲線で有義波諸元と図-5.2から図-5.6によって推定されるJONSWAPスペクトルも示している。ピーク周波数において両者は若干異なっているものの,5月26日12時の減衰後期を除いては,その形状はよく一致している。なお,図の縦軸は,エネルギーのレベルに応じて異なっていることには,注意を要する。
図-5.9は,図-5.8の縦軸と横軸を,それぞれ,エネルギーEと,ピーク周波数f_mで無次元化したものである。プロットは実測値を,曲線は理論値を示しており,両者は,やはり,減衰後期を除いては,よく一致している。このことは,風波のスペクトルには,強い相似性があることを意味している。
図-5.10から図-5.12は,1985年8月11日から12日の別の擾乱における経時変化を示しているが,ここでもスペクトルの相似性が確認される。
以上のことは,スペクトル法による波浪推算で問題となるうねりを含む波浪における風波成分とうねり成分の分離は,標準スペクトルに無次元エネルギーの上限値を設定することで可能となることを示唆している。
5.4周波数スペクトルと有義波諸元
波の統計理論によると,ゼロアップ法等で定義された波浪解析による統計量とスペクトルの間には,比較的単純に記述できる関係下にあると推定されている。例えばスペクトルのn次モーメントは
(5.8)
とされるが,波高分布がレーリー分布にしたがうとき,0次モーメントと有義波高の間には次のような関係が成立する。
(5.9)
また,Mitsuyasuらは
(5.10)
を提案している。図-5.13は東京灯標におけるm_0と有義波高の関係をプロットしたもので,実線はMitsuyasuらの提案した関係式であるが,両者は非常によく適合している。
次に,有義波周期については,理論的に導けないものの,スペクトルのピーク周波数f_mとは経験的に次の関係にあるといわれている。
(5.11)
図-5.14は東京灯標におけるピーク周波数と有義周期の関係をプロットしたもので,実線は式(5.11)である波高データに比べるとバラつきが多いものの,経験式の妥当性が示されている。
すなわち,東京港の波浪解析による統計量と周波数スペクトルの間には,式(5.10)および式(5.11)が成り立つことが確認されたので,スペクトルから有義波諸元を推定,換算することができることが明らかにされた。

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式(5.1〜5.11)
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図-5.1 JONSWAPスペクトル
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図-5.2 無次元エネルギーとピーク周波数
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図-5.3 無次元エネルギーと\sigma_1
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図-5.4 無次元エネルギーと\sigma_2
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図-5.5 無次元エネルギーと\gamma
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図-5.6 無次元エネルギーと\alpha
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図-5.7 有義波高の経時変化(1985.5)
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図-5.8 周波数スペクトルの経時変化(1985.5)
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図-5.9 無次元周波数スペクトルの経時変化(1985.5)
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図-5.10 有義波高の経時変化(1985.8)
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図-5.11 周波数スペクトルの経時変化(1985.8)
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図-5.12 無次元周波数スペクトルの経時変化(1985.8)
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図-5.13 エネルギーと有義波高
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図-5.14 有義波周期とピーク周波数

6.波浪推算モデル

6.1一点型出力方法
本報では,波浪推算は,以下に述べる有義波法,スペクトル法,パラメータ法およびハイブリッドパラメータ法に共通して一点型出力法を用いて実施した。
波浪推算モデルを出力方法で区別すると,格子点法と一点法に分けられる。前者は対象海域を格子網で覆い,格子点ごとのエネルギー,または方向スペクトルの時間変化を算出する方法である。後者は特定の一地点に到達するエネルギー,または方向スペクトルの変化を求める方法である。図-6.1に,具体的な一地点モデルの計算点の模式を示す。
 計算線(波向線)は,推算点から16方位に放射型に伸び,計算線上には等間隔に計算点が配置される。各計算点ではタイムステップ毎に,計算線方向から伝播するエネルギー,またはスペクトルの時間的変化が計算される。また,推算点では全方位から伝播し,到達するエネルギーを積分することにより波浪の経時変化を求めている。
目的地点外の波浪の計算をおこなわない一点法では,格子点法に比べ計算時間が短縮される。また,計算機内の記憶容量も節約できるため,計算点間隔を細かく分割できる。したがって,一地点目的の波浪推算には,一点型出力モデルは非常に有効な手法といえる。
6.2有義波法
有義波法とは,S-M-B法をはじめ,Wilson法や浅海域における波の推定法であるBretschneider法,および,これらを数値計算化した方法の総称名である。これらの手法に共通していることは,不規則な波浪を代表波(有義波)で表現していることである。本報で用いた有義波法とは,Wilson式を基本とした推算手法であるが,以下に述べるように,エネルギーの方向分布を考慮することとして,エネルギー平衡方程式の形で基礎式を表現したものである。
波浪の発達に関するWilsonの式は,有義波の無次元波高をH_10*,無次元フェッチをF_10*,重力加速度をg,10m高度の風速をU_10とすると
(6.1)
ここで,a_1=0.30,a_2=0.004である。
またエネルギーをE,無次元エネルギーをE_10*,a_0=3.83とすると
(6.2)
である。したがってWilson式を方向分布を含んだエネルギーで表示すると
(6.3)
と書ける。ただし\lambda(\theta)はエネルギーの方向分布である。
また
(6.4)
とすると
(6.5)
であるから,無次元フェッチの変位によるエネルギーの増分は
(6.6)
と表せる。式(6.5)を次のエネルギーの平衡方程式(6.7)に代入すると式(6.8)が得られる。
(6.7)
(6.8)
すなわち,式(6.8)がモデルの基礎式となる。また,エネルギーと有義波周期の関係については
(6.9)
(6.10)
と関係づけられる。
式(6.8)からもわかるように,本手法は,エネルギーという波浪の代表パラメータの変化を追跡する原理となっている。すなわち,本手法は,分類上は有義波法と称しているが,パラメトリックな推算モデルとして位置付けができる。
6.3スペクトル法
スペクトル法とは,周波数成分および方向成分に波浪のエネルギーを分割し,各成分についてそれぞれ,波浪の発達,伝播,減衰を計算する波浪推算モデルの総称であるが,本報で述べるスペクトル法とは,気象庁の波浪予測業務および港湾施設の設計波の算定に長年利用されているMRI(Meteorological Research Institute)法を一点型出力モデルに修正したものである。
任意の地点に襲来する波浪のエネルギー平衡方程式は
(6.11)
で記述される。ここでSは周波数f伝播方向\thetaからなる成分波のエネルギー密度,C_gは各成分波の群速度,F_1は風から波へ供給されるエネルギーの量,F_2は各種機構によるエネルギーの消散量,\nablaは微分演算子である。
式(6.11)の右辺第1項は移流項であり,この項は原理的に差分方程式に直し,時間的に積分して求められる。右辺第2項は
F_1=A+B・S
と記せられる。ここでAはPhillpsの共鳴理論に対応した周波数と風速の関数,BはMilesの不安定理論を表す周波数と摩擦速度の関数であり,共に経験的な値を持つ波浪の成長率である。
式(6.11)の右辺第3項は波浪の消散過程であり,砕波によるエネルギーの消散FB,内部摩擦によるエネルギーの消散FD,および逆風によるエネルギーの消散FWを含んでいる。すなわち
F_2=-FB-FD-FW(6.12)
である。
波がある程度以上に発達すると砕波の現象によりエネルギーを失うが,この消散過程は波の成長と共に急速に活発となり,究極には風からのヱネルギーの供給と砕波による消散とが釣り合うので,FBは平衡スペクトルS_PMを用いたモデル仮定式として
(6.13)
と表す。S_PMとしてはPierson and Moskowitzのスペクトル
(6.14)
を採用する。ここで
\alpha=0.0081,\beta=0.74(経験的な無次元定数),gは重力加速度,Uは19.5m高度の風速である。
次にFDは次式のモデルにより計算される。
(6.15)
D_1は実験的に与えられる値で,本プログラムでは「3」としている。逆風による急速なエネルギーの消散FWは次式で記される。
(6.16)
ここでは,D_2=1としている。
上に述べた波浪のエネルギーの発達,消散効果を総合すると数値モデルの基本式は次のようになる。
追風(|\theta|<90°)かつ波は発達中(S≦S_PM)
(6.17)
追風(|\theta|<90°)かつ波は十分発達(S>S_PM),または
無風状態
(6.18)
逆風(|\theta|≧90°)
(6.19)
ここで\nablaは微分演算子,\thetaは風向と成分波の伝播方向の差であり,\lambda(\theta)は方向分布関数である。
上記の基本式を基に,計算された推算点のスペクトルの具体的な扱いは下図に示すように,各周波数成分の計算スペクトル値が,式(6.14)による平衡スペクトルの2倍を上回ればうねりと判定している。
スペクトル法は海洋波浪の力学的機構が盛んに研究,解明される中で,数値モデルとしても確立されつつあるが,未だ多くの問題点を残している。その中でもオーバーシュートの問題は推算精度を大きく左右する。オーバーシュ一トとは平衡状態のスペクトルよりも,成長過程のスペクトルのピークが大きくなることである。しかし,現時点ではこの問題に対しての有効手段が無いため,平衡スペクトルをあくまでも風波の上限パラメータとして処理している。
6.4パラメータ法
パラメータ法とは,波浪を規定するパラメータの変化を追跡することにより,波浪を推定するものであり,パラメータを少数化することにより,計算速度の短縮が可能となる。ここでは東京港の海象特性に即したハイブリッドパラメータモデルの開発を目的とするが,これは,パラメータモデルにうねりの扱いを組み込んだものである。基礎式は前章での風波の特性結果より導き出された無次元フェッチと無次元エネルギーの関係式(5.7)と,検証された無次元波高と無次元周期の3/2乗則の関係を用いている。これらは,摩擦速度で無次元化された無次元フェッチをF*,無次元エネルギーをE*,無次元波高をH*,無次元周期をT*とすると,それぞれ
(6.20)
(6.21)
であった。式(6.20)から時間変化に対するエネルギーの増分は
(6.22)
となる。ここで
(6.23)
であり,無次元群速度C_g*は重力加速度をgとすると
(6.24)
となることから
(6.25)
となる。これに風向に対する方向分布を考えると
(6.26)
と表わされる。ここで\lambda(\theta)は方向分布関数である。また,C_g*はT_1/3に対応する群速度なので,平均周期に対する無次元群速度C_Bg*を
C_Bg*=dC_g*
とすると,結局発達式は
(6.27)
を得る。ここでA=1.8X1O^-4,B=0.064,a_0=3.83,d=0.87である。また,無次元エネルギーと平均周期に対する群速度C_Bg*の関係が
(式1)
であることから
(6.28)
となる。
6.5ハイブリッドパラメータ法
ハイブリッドパラメータ法は,風波に対するパラメータモデルに,うねりの推定を組み込んだモデルである。相似形を保ちながら発達する風波のスペクトルを規定するパラメータとして,スペクトルピーク周波数とエネルギーを用いる。そして,これにより波浪のスペクトルを推定すると同時に,無次元エネルギーより風波のエネルギー平衡域を仮定することにより,風波からうねりに変化する波浪を推算する。このモデルは前述したスペクトルの相似性を仮定しているが,東京港の波浪のスペクトルも発達時から最盛期には相似性がよく成立ち,そして減衰時においても中盤までは比較的維持されていることが,前章で確認された。また,更に今後の検討を必要とするものの,うねりと風波を分離する条件は,無次元エネルギーを媒介することにより,近似的に求められることがわかった。したがってこれらの成果を踏まえると,ハイブリッドパラメータ法は比較的簡易でかつ,高精度な推算結果が得られる手法といえる。
風波のエネルギーの発達式はパラメータ法と同様に式(6.27)による。一方,波浪スペクトルはスペクトル形をJONSWAPスペクトルに適合すると仮定するならば,スペクトルの正規化表示は次のような式となる。
(6.29)
ここにS(f)は波浪スペクトル,f_mはピーク周波数,Eはエネルギー,そしてS_J(f/f_m)のは周波数方向で正規化されたJONSWAPスペクトルである。したがって波浪のスペクトルは
(6.30)
のように書き直される。すなわち標準スペクトルであるS_Jとエネルギーおよび,ピーク周波数から求めることができる。また,東京港の波浪は無次元エネルギーがおよそ2000を超えると風波からうねりに転換する知見が得られているので,風波としての最大無次元エネルギーを規定し,これをE*_maxと置けば
(6.31)
が得られ,E_maxを式(6.30)に代入することにより,風波の平衡スペクトルが得られる。そして,これより求めた平衡スペクトルと計算値の大小関係をみることにより,うねりの算定が可能となる。
6.6計算条件
本報ではパラメータモデルにうねりを組み入れた,ハイブリッドパラメータモデルを開発することが目的であるが,スペクトル法および有義波法についても,結果の比較を行うため,一点型出力として計算を実施した。計算は各モデルとも時間間隔を1/15時間(4分)とし出力は1時間毎である。風データは東京灯標で毎時観測された実測風から10m高度に補正したもので,4分間隔で与える風速は毎時風速を線形補間したものである。また,風は湾内で空間的に均一としている。波向線は16方位にとり計算点間隔は2kmで計算した。方向分布関数については各モデルともcos^4\theta型を用いた。方向分布関数はcos^2\theta型とcos^4\theta型の二種類が一般的であるが,cos^2\theta型はcos^4\theta型に比べ集中度が低くなるため,推算結果が幾分低めになるようである。
検討対象とした擾乱は,観測期間中最大の波高を記録したT8506によるものに加えて,西,北,東および南系統の代表的擾乱を1つずつ選定した。図-6.2から図-
6.6に各擾乱を示す代表天気図を示す。
T8506は,1985年7月1目3時頃沼津付近に上陸し,本州東の海岸線に沿って北上した大型台風である。東京湾を直撃したため,東京灯標において最大風速32m/s,最大有義波高3.09mを記録している。西系統の擾乱としては,1985年11月11日から12日にかけての冬型気圧配置を選定した。西方向のフェッチは短いため,西方向からは大きな波浪は来襲しにくいが,この時の最大有義波高は,1.Omをわずかに上回っている。北系統の擾乱としては,1986年3月23目から24日にかけての台湾低気圧が房総沖を北上した時を選定した。東系統の擾乱としては,1987年11月13日から14日にかけての前線を伴った低気圧が房総南岸を西から東に移動した時を選定した。南系統の擾乱としては,1987年6月7日から9日にかけての梅雨前線の活動による時を選定した。
6.7計算結果
 図-6.7から図-6.11は,各手法による計算結果である。上段に描かれている風の経時変化は10m高度に換算したものである。波高については,波浪の発達時は1985年11月のケースを除くと,スペクトル法以外は比較的精度よく実測値を再現している。ピーク付近ではパラメータ法,およびハイブリッドパラメータ法はかなりの高い精度となっている。一方,有義波法は,発達初期では比較的パラメータ法と近い結果となっているが,ピーク近くではパラメータ法に比べ過小計算となっている。また,T8506の結果をみると,有義波法は風速15mを超えるあたりから実測値に追従していない。これはパラメータ法と有義波法の発達式の違いから起きるものである。
有義波法とパラメータ法の発達式は,前者は風速に係わることなく1本の線で決められるのに対し,後者は風速に応じて発達式がかわる。これは,パラメータの発達式の中のエネルギー,およびフェッチの無次元化にあたって,式(4.2)および(4.3)に示す風速値に応じて変化する摩擦風速をもちいているからである。したがって風速が約20mを超える風場では,有義波法はパラメータ法に比べ計算結果が過小となる。
また,スペクトル法をみるといずれの試算ケースも実測有義波高の60〜70パーセント位の結果となった。これは,モデル内で仮定した平衡スペクトルよりも,現実のスペクトルがピーク付近において超えてしまうオーバーシュートが原因である。オーバーシュートは特に内湾のように,フェッチの短い閉鎖海域で著しいことが知られているが,ここでも同様の現象が確認された。したがって,現状のスペクトル法は東京湾のようなフェッチの短い海域には適用が困難な推算モデルであるといえる。
次に,パラメータ法とハイブリッドパラメータ法を比べてみると,発達時においては両モデルにあまり精度の違いは認められないものの,風速が落ちて徐々に減衰する波高に対して,パラメータ法では推算値が実測値によりかなり小さなものとなる。これに比ベハイブリッドパラメータ法ではうねりの効果が比較的精度よく推算されている。周期についてみると,波高推算に比べ精度が落ちるが,スペクトル法を除き,比較的実測値に追従している。周期は波高に比べ統計量的性質,あるいは力学的機構の把握が難しく,モデルを推測しなければならないのが現状である。推算結果からみると,フェッチの長い南系統から襲来する波浪周期の推算値は良好であるが,フェッチの短い西から北系統に掛けては過小結果となっている。また,風向の変化に際して周期が長めに算定されるなど問題点が見られる。
以上のように台風を含む5ケースの擾乱について各手法を比べた結果から,東京港ではパラメータ法およびうねりを組み入れたハイブリッドパラメータ法が,推算精度の良好な手法であることが検証できた。特に,減衰時を考慮しなければ,本調査で提案したパラメータモデルは,パーソナルコンピュータでも実用可能なことから,今後の現地での波浪追算,または,予測に期待の持てる手法といえる。

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式(6.1〜6.31)
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(式1)
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図-6.1 一点出力モデルの計算点の模式
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図-6.2 天気図(T8506,1985.7.1)
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図-6.3 天気図(西系統の擾乱,1985.11.12)
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図-6.4 天気図(北系統の擾乱,1986.3.23)
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図-6.5 天気図(東系統の擾乱,1987.11.13)
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図-6.6 天気図(南系統の擾乱,1987.6.8)
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図-6.7 推算結果の比較(T8506)
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図-6.8 推算結果の比較(西系統の擾乱)
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図-6.9 推算結果の比較(北系統の擾乱)
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図-6.10 推算結果の比較(東系統の擾乱)
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図-6.11 推算結果の比較(南系統の擾乱横)

7.結論

大阪湾における気象・海象観測データをもとにして著者らが開発したパラメータ法およびハイブリッドパラメータ法による短フェッチ海域波浪推算モデルを,東京港における現地観測データを用いて検証し,その妥当性を確認することができた。
東京港における風観測は,その風速計の設置条件に問題点が残されている。このため,Wilson式を仮定した観測風の補正方法を提案した。補正された観測風と観測有義波高を比較検討した結果,無次元波高と無次元周期の間には3/2乗則が精度よく成立すること,無次元フェッチと無次元エネルギーの間には,大阪湾のデータから得られた関係式がやはり成立すること,減衰後期を除き,発達期,最盛期,減衰初期中期を通じて周波数スペクトルはJONSWAPスペクトルで精度よく相似されること,などが明らかになった。
以上の検討結果をふまえて,パラメータ法およびハイブリッドパラメータ法による波浪推算を5擾乱に関して実施した結果,従来の有義波法やスペクトル法による推算結果と比較して,より精度が高い結果が得られることが確認された。この結果は,東京湾や大阪湾などの内湾における波浪推算に用いられるばかりではなく,現在開発中の外洋におけるハイブリッドパラメータ法の波浪推算モデルの確立のための,重要なステップとなる。

謝辞

本研究は,東京都への技術指導として当研究所が実施したものである。研究の遂行にあたうては,著者の一人である小舟を座長とし,寺中啓一郎日本大学教授,服部昌太郎中央大学教授,運輸省第二港湾建設局横浜調査設計事務所,および東京都港湾局技術管理課をメンバーとする東京港気象海象特性調査検討会から数多くの御指導と御助言を受けた。また,データ解析や図表の作成にあたっては,前沿岸海洋調査㈱(現(株式会社)日本データサービスの青木克巳氏に御協力いただいた。ごこに記して謝意を表する。(1990年9月29臼受付)

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26)The SWAMP Group:Ocean wave modeling, Plenum,1985,256p.
27)後藤智明・小舟浩治・現地で簡単にできる波浪推算法について,:第35回海岸工学講演会論文集,1988,pp.26-30.
28)山口正隆・畑田圭男・宇都宮好博:一地点を対象とした波浪推算モデルとその適用性,土木学会論文集,第381号/2-7,1987,pp.151-160.

主要記号表

a:u_23をU_10に変換するための係数a_0:波高とエネルギーの間の係数3.83A:無次元フェッチとエネルギーの間の係数a_1,a_2:Wilson式の係数b:U_23をU_10に変換するための係数および,有義波周期とピーク周波数の間の係数
B:波高と周期の3/2乗則の係数(観測風)
B_W:波高と周期の3/2乗則の係数(10m高度風)
C_1/3:有義波周期に対応する波速
C_D:海上風の抵抗係数
C_g:群速度
C_g*:無次元群速度
C_Bg*:平均周期に対する無次元群速度
E:波浪エネルギー
E(\theta):方向別波浪エネルギー
E*=無次元エネルギー
EB*:式(6.4)で定義される方向別無次元エネル
ギー
E*_max:無次元エネルギーの限界値
F:有効フェッチ
F_J:J方向の線フェッチ
F*:無次元フェッチ
f:周波数
f_m:スペクトルピーク周波数
f_m*:無次元スペクトルピーク周波数
g:重力加速度
H:代表波高
H_1/3:有義波高
H*:無次元有義波高
L_1/3:有義波周期に対応する波長
m_n:スペクトルのn次モーメント積分値
n:無次元パラメータ相互の関係式の指数
および,モーメントの積分次数
S(f):周波数スペクトル
S_PM:平衡スペクトル
T:代表波周期
T_1/3:有義波周期
T_P:スペクトルピーク周期
T*:無次元有義波周期
U_10:10m高度風速
U_23:東京灯標における実測風速
U*:摩擦速度
\alpha:無次元パラメータ相互の関係式の係数
および,JONSWAPスペクトルの係i数
\beta:PMスペクトルの係数
\sigma:JONSWAPスペクトルの係数
\gamma:JONSWAPスペクトルの係数
\lambda(\theta):方向分布関数

港湾技術研究所報告 第30巻第1号(1991.3) 1.遠地津波の外洋伝播計算 後藤智明*

要旨

 北米沖や南米沖で発生した地震により発生した津波が太平洋を長距離伝播し,日本沿岸へ来襲することがある.この津波を日本沿岸付近で発生する近地津波と区別し,遠地津波と呼んでいる. 日本沿岸に被災をもたらした遠地津波に1960年のチリ津波が著名である.この津波により被った災害は,死傷者が1,000名以上であり,北海道から九州に至る太平洋岸一帯で家屋,耕地,港湾および船舶などに大きな被害を被っている.
 一般に,津波の現象のスケールは沿岸地形と同じ程度の大きさであり,沿岸海域によりそれぞれ特性が大きく異なるのが通常である.このような理由により津波防災対策には数値シミュレーションが利用されている.遠地津波の数値計算は,伝播距離が長いため,近地津波に比べ波数分散性を無視することができなく,また,数値計算上の誤差の累積に注意する必要がある.このような遠地潮皮の伝播計算に関して支配方程式の各項のオーダー比較と計算誤差解析などによる若干の検討を行った結果,数値シミュレーションを所要の精度で行うための条件に関する知見が得られたので報告する.
キーワード:遠地津波,支配方程式,計算誤差,津波シミュレーション

*水工部 海洋エネルギー利用研究室長

REPORT OF THE PORT AND HARBOUR RESEARCH INSTITUTE vol.30, No. 1 (Mar 1991) 1. Numerical Simulation of the Trans-oceanic Propagation of Tsunami. Chiaki GOTO*

Synopsis
Numerical simulations of the trans-oceanic tsunami propagation require a well designed computation program. In order to obtain good, reliable results, spatial and temporal grid sizes should be carefully determined. The area included in and the time for the computation are so wide and long that a huge computer memory is inevitable. There are two mejor sources of error which are closely related with grid size. One is the dispersion, physical or numerical, and the other is the accumulation of round-off errors.
After a comparison of the magnitude of terms in the fundamental equations for long waves, it is concluded that the convection term can be negligible and that the linear Boussinesq equations including the Coriolis force, expressed in the longitude-latitude coordinates, should be used.
Effects of the grid size on the computed results are examined as the one-dimensional problem for four different grids assuming that staggard leap-frog scheme is applied to the linear long wave and linear Boussinesq equations. For comparisons, the linear surface wave equation is considered as the best equation,because it fully includes the effects of dispersion. The linear Boussinesq equations give better results with finer grid size, while the linear long wave equations give the best result with grid size 10km, with which the numerically introduced dispersion approximates well the physical dispersion.
Diagrams are provided to estimate errors in wave profile and wave length as a function of the grid size, travel distance and original wave length, for both the linear long wave and linear Boussinesq equations.
As an example of practical application, the Great Alaska Earthquake Tsunami of 1964 in the North Pacific Ocean is simulated with the linear long wave and linear Boussinesq equations.
Key Words : Distant Tsunami, Gorverning Equations, Numerical Error, Tsunami Numerical Simulation

*Chief, Ocean Energy Utilazation Laboratory,
Hydraulic Engineering Division

目次

要旨 3
1.まえがき 7
2.遠地津波の外洋伝播に関する支配方程式の検討 7
3.計算の格子間隔に関する検討 9
3.1計算格子問隔の違いによる計算結果の変化 9
3.2計算誤差を考慮した支配方程式と計算格子間隔の選定 10
4.二次元伝播計算に関する検討 13
4.1計算法 13
4.2数値計算結果 14
5.まとめ 14
参考文献 17
付録 緯:度・経度座標による非線形長波理論 17

1.まえがき

 わが国が遠地から襲来した津波により被害を受けた例としては,1960年のチリ沖地震津波が著名である。この津波による死傷者は,三陸地方を中心に1000名を越える.このような遠地津波の第一の特徴は,地震の規模が大きく波源が広いため,周期の長い津波になることである.したがって,近地津波の場合では湾の固有周期が異なり,波高の増幅がそれほど見られなかったところでも,被害が大きくなる可能性がある.さらに,火力または原子力発電所の多くが沿岸域に設置されるようになり,通常の津波による破壊,浸水などの被災の他に,長時間にわたる水位低下による冷却取水の中断といった新たな問題が生ずると考えられる.以上のように,遠地津波は,近地津波と異なった防災上の問題が残されているにもかかわらず,予測のための数値計算手法が十分確立されていないのが現状である.
近地で発生する津波に比べ遠地津波の数値計算で問題となると考えられることは,対象とする領域が広いため多くの演算時間および記憶容量が必要となること,さらに長距離伝播するため伝播に波数分散効果を考慮しなければならないことである.また,現象時間が長いため計算誤差の累積にも注意する必要がある.
 過去の遠地津波の計算例としてはUeno1),Hwangら2),3)によるものがある.しかし,差分格子が粗く,計算の支配方程式の精度が劣るといった理由により,計算結果の信頼性は低く,遠地津波の来襲を予測,再現する充分な方法とは考えられていない.
 以上のことから,本研究では,1964年アラスカ地震津波を取り上げ遠地津波の外洋伝播計算法に関する基礎的な検討を行う.題材として選んだアラスカ地震津波は,地盤変位の測量結果などから波源の様子が精度よく求められており,また,計算結果と比較検討するための検潮記録が数多く残されているものでもある.
 本研究では,まず始めに,運動の式中の各項のオーダーを比較することにより遠地津波計算の支配方程式に関する検討を行う.次に,支配方程式および計算格子間隔の違いによる計算結果の差について検討し,適切な支配方程式と計算格子間隔について提案する.最後に,実用問題の例として北太平洋を対象領域にしたアラスカ地震津波の二次元伝播計算を行い,遠地濤破計算を実施する上で問題となる事項について考察する.
 本論文で報告する計算は,すべてリープフロッグ形式の差分法に基づくものである.これは,演算時間,記憶容量の問題,境界条件の設定の容易性および数値計算の誤差の性質などの理由による.また,実用計算は緯度,経度による球面座標系の式群を用いているが,数値計算の誤差解析は,簡単のためすべて平面座標系に関して実施している.表記法は異なるものの,本質的な現象は両者共に同じであるという判断による.

2.遠地津波の外洋伝播に関する支配方程式の検討

 一般に,滴皮の伝播は,波源の大きさに比べ水深が小さいため長波理論で取り扱われる.後藤4),藤間ら5)の展開によると,コリオリ項を考慮した二次元伝播に関する長波理論式は,(x,y)を静水面に採った空間座標,tを時間座標,(\bar{u},\bar{v})を(x,y)軸方向の断面平均流速,\etaを水位変動,hを静水深,gを重力加速度,fをコリオリ因子とすると
(1)
(2)
(3)
となる.ここで,M,NおよびF_1,F_2は次の諸式で与えられる.
M=(h十\eta)\bar{u},N=(h十\eta)\bar{v}
(式1)
この式は長波理論の第二次近似にあたり,Boussinesq,Korteweg-de Vrice,Mei-Le Mehaute,PeregrineおよびKakutaniによって導かれたものと等価な式である.4)第三次近似以上の理論式も藤間ら5)により導かれているが,5階以上の微分項を含むなど数値計算に用いるのは難しい.したがって,式(1)-(3)が現状の計算機および数値計算手法で扱い得る最も高次の長波の式と考えてもよい.
遠地津波の計算は,対象とする領域が近地津波の場合に比べ格段に広いので式(1)-(3)でも難しく,さらに伝播距離も長くなるので計算誤差の累積にも注意する必要がある.したがって,精度を落とさず式(1)-(3)をさらに簡単にすることを考えなくてはならない.以下,遠地津波の大まかなスケールを用いて運動の式の各項の重要性を調べ,数値計算に適した支配方程式について検討する。
いま,津波の一次元伝播問題を取り上げ,水位変動\etaと水平流速貢を最も簡単な線形長波の関係から,波速をc_0=\sqrt{gh}として
(4)
と与えるものとする.津波波形を無限に続く正弦波と考え,振幅aおよび波数kを津波初期波形の代表的な寸法で近似するといった現実におきる津波とややかけ離れた条件を仮定したが,大まかな津波の伝播状況のオーダー比較を考える場合には問題がないと思われる.
移流項の大きさは局所項で正規化すると
(5)
となり,波高水深比のオーダーであることがわかる.静水圧力項に関しては線形の部分と有限振幅の効果の部分に分けると
(6)
および
(7)
となる.同様にして,コリオリ項および分散項のオーダーを求めると
(8)
(9)
となる.ただし,分散項は水平床近似に関するもので,分散項申の斜面勾配の効果を考慮していない.これは,長尾ら6)により比較的急勾配の斜面においても,分散項中の斜面勾配の効果は分散項全体の数%程度の大きさであることが明らかにされているためである.
運動量の式の各項の大きさを具体的に調べるために津波の波高を5mに仮定すると,式(5)-(9)から運動量の式(2)の各項の大きさは表-1のようになる.表中の数字は水深4kmの海域を伝播する津波に関して,局所項の大きさに対する各項の比を表している.また,津波の代表的な波長としては1000km,100kmおよび10kmの3種類のものを仮定している.表から,移流項,静水圧力項中の有限振串副生の効果は10^-3のオーダーと小さく無視可能であることがわかる.分散項は,津波の代表スケールにより異なり10^-5から10^-2のオーダーとなる.したがって,現実の津波は多くの波長成分の重ね合わせで表され,たとえ波源が大きい津波であっても波長の短い成分も考慮する必要があることを考え合わせると,分散項は無視できないものと判断される.また,コリオリ項は波長が長い成分ほど大きくなり,場合によっては10^-1以上のオーダーとなるため無視することはできないこともわかる.
以上の検討結果をまとめると,遠地津波の外洋伝播計算の支配方程式としてはコリオリ力項を考慮した線形Boussinesq理論が適しており,式(1)-(3)に比べ簡単な
(10)
(11)
(12)
を用いればよいことになる.
日本沿岸で発生する津波を考える場合では,せいぜい1000km四方の海域を対象とするため式(10)-(12)のような平面座標で扱うことが多い.しかし,アラスカまたはチリで発生した津波が我が国へ来襲するといった10,000km以上も伝播する現象を扱うには精度の点で問題があり,球面座標を用いる必要がある.いま,地球を半径Rの球体として考え,緯度,経度座標を(\lambda,\Psi)のとし,各方向の線流量を新たに(M,:N)とすると,平面座標の式(10)-(12)に相当する緯度・経度座標系の式は
(13)
(14)
(15)
となる.なお,緯度・経度座標の非線形分散波理論に関しては付録を参照されたい.

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式(1〜15)
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(式1)
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表-1 長波理論式の各項のオーダー比較

3.計算の格子間隔に関する検討

3.1計算格子間隔の違いによる計算結果の変化 数値計算では,計算格子間隔に比例して離散化誤差や打ち切り誤差が大きくなり,物理的な性質とは異なる分散効果が生じたり散逸効果が働くことが知られている.6)この種の誤差は対象とする津波波形により変化するため,ここでは比較的波源の精度が良いと考えられているアラスカ地震津波を例にとり検討する.
計算は簡単のため一次元伝播とする.用いた理論は線形長波理論,線形Boussinesq理論および微小振幅表面波理論の3種類である.微小振幅表面波理論を計算の対象に加えた理由は,非線形効果が無視できる遠地濁皮の外洋伝播計算において,微小振幅表面波理論の解が真値と考えられるためである.計算に用いた津波初期波形は,図-1に示すPlafker7)の推定したアラスカ地震津波の代表的な断面波形A-A」であり,簡単のため水深4kmの水平床を仮定(アラスカ津波の波源は平均水深が0.91kmであるため,本計算ではGreenの法則から波長を2倍,波高を0.7倍している.)し,約6000km(アラスカからメキシコまたは日本の三陸沿岸までに相当)の距離を伝播させている.計算の方法としては,線形長波理論がリープフロッグ法(陽解法),線形Boussinesq理論は計算点の配麗をリープフロッグ法と同じにした陰差分法,そして微小振幅表面波理論がフーリエ変換による方法を用いている.
図-2に,線形長波理論および線形Boussinesq理論を用いて計算した結果の一例を示す.図は空間水位に関するものであり,計算格子間隔(\Delta{x})を5,10,20,30kmの4種類について変化させて,微小振幅表面波の解と比較したものである.上段の図,すなわち線形長波理論による計算結果は,本来ならば図-1に示す初期波形の半分の寸法のものが相似形を保って伝播しているものになるはずであるが,打ち切り誤差に起因する数値分散性のため,主峰が減衰し高波数成分が顕著に現れた結果になる.この数値分散効果は計算の格子間隔に関係し,格子間隔が小さいものほど波長の短い分散波列が発生し,大きいものほど波長の長いものが起こる性質があることがわかる.また,真値と考えられる微小振幅表面波理論も水深に関係する分散性(以後,物理分散性と呼ぶ)が現われる.したがって,両者の効果がほぼ等しくなる場合もあり,この場合には\Delta{x}=10km程度がその条件であることもわかる。過去のUenoおよびHwangらの計算は線形長波理論を用い,それぞれ緯度,経度で5度,10分すなわち60Okm,20-30km程度の比較的粗い差分格子を用いて実施されたものである。この程度の差分格子間隔では,図からも明らかなように真値との差が大きくなり,計算精度に関しては問題が残されていたこともよく理解できる.図-2の下段の図は,線形Boussinesq理論の場合について同種の比較を行ったものである.線形長波理論の計算では\Delta{x}=10km程度に最適な結果を与える条件があったが,線形Boussinesq理論の計算では格子間隔を細かくするほど精度がだんだん良くなる傾向があることが図から判断できる。線形BoussiResq理論では第一次近似ではあるものの物理分散効果が考慮されており,計算結果に現れる最終的な分散現象はこの物理的なものと打ち切り誤差に起因する数値的なものが合わさったものである.したがって,格子間隔を小さくするほど数値分散効果が小さくなり,本来の物理分散効果に近づくためである.
3.2誤差を考慮した支配方程式と格子間隔の選定
前節において,物理的に精度が劣る線形長波理論を用いても計算条件によっては,線形Boussinesq理論を用いた結果と同程度の精度が得られる場合があることが明らかとなった.本節では,この理由を数値計算の打ち切り誤差の理論解析から明らかにし,また,所要の精度を得るための計算の支配方程式と格子間隔について検討する.
一般に,発展方程式の数値計算8).9)の打ち切り誤差としては数値散逸または数値分散効果が知られている.各効果は用いる計算手法により異なり,ここで用いているリープフロッグ差分法には数値分散効果があることが明らかにされている.8),9)したがって,計算精度を量的に吟味するためには,波速の誤差について調べればよい.
水平床を仮定した線形長波理論のリープフロッグ差分計算上の波速に関する厳密解c_Lは,(\Delta{x},\Delta{y})を計算格子長,\Delta{t}を時間間隔,(k_x,k_y)を(x,y)方向の波数:とすると
(16)
で表される.10)ここに,
(式)であり,
(式)である.線形
Boussinesq理論の計算上の波速c_Bは
(17)
である.10)ここに,S_B=(S_1/S_2)^1/2,
(式)である。
c_B/c_0=[tanh(kh)/kh]112(18)
である.一方,真値として考えられる微小振幅表面波の波速c_sは
(18)
である.
各計算上の波速の誤差を
(19)
で定義し,波速の誤差が5%以内となる津波の波長を調べてみた結果が図-3および図-4である.
図-3は平均的な太平洋の水深をh=4kmと仮定し,\Delta{x}=2\Delta{y},K_x=0.2の条件で\Delta{x}を3種類に変化させた場合である.\Delta{x}=5,10,20kmは後に述べる球座標系(緯度,経度座標系)においてそれぞれ2.5,5,10分格子に相当するものであり,\Delta{x}=2\Delta{y}としたのは球座標では高緯度になるほど経度方向の格子間隔が短くなることを考慮したことを意味する.また,図の縦軸L_x,横軸L_yはx,y方向の津波波形をフーリエ分解したときの成分波の波長を示し,各曲線より長い波長の成分の誤差が5%以内で計算できることを表している.この図から,線形Boussinesq計算は格子長を小さくするほど精度が良い計算が可能となることがわかる.また,線形長波計算は線形Boussinesq計算に比べ単純ではなく,\Delta{x}=10kmが3種類の中では最も精度が良いことがわかる.これは\Delta{x}=5kmまたは20kmの場合の数値分散性は物理分散性に比べ小さすぎたり大きすぎたりするためであり,先に述べたように10km程度で物理分散効果と数値分散効果がほぼ等しくなるためであると考えられる.
図-4は\Delta{x}=2\Delta{y}=10km,K_x=0.2の条件で水深を変化させた場合である.線形Boussinesq計算の精度はほとんど変わらないが,線形長波計算は水深により大きく精度が異なることがわかる.ただし,遠地津波の外洋伝播を考える場合には,水深4km程度の海洋底が長く続き,水深10km程度の海溝部および水深2km以下の浅海部は比較的距離が短いため,全体を通すと大きな誤差を生ずる可能性は少ないと考えられる.
以上の議論では,波速の誤差5%を一種の判定基準にとり計算誤差の説明をしているが,波速の誤差から最終的な津波波形の誤差に直接結び付けるのは難しい.津波波形の誤差を調べるには,具体的な初期波形を与える必要がある.そこで,初期波形の標準形としては比較的精度が良いと考えられているアラスカ津波の波源と相似なものを選び,津波波形に関する誤差評価を行うことを考える。具体的な誤差評価としては,波速の誤差が明らかとなっている数値計算を用いて波速の誤差と津波波形の誤差の関係を調べる方法を用いている.計算は線形長波理論の一次元伝播問題とし,\Delta{x}=2\Delta{y}=10km,h=4km,K_x=0.2の条件で行っている.また,初期波形はアラスカ津波の断面波形であり,水平距離を3種類(0.5,1.O,2.0倍)に変化させて計算している.
波速の誤差と波形の誤差の関係を計算結果から整理すると図-5が求まる.図の縦軸は
(20)
で定義した津波波形の誤差,横軸は伝播距離そして内部パラメタはL」/L_0である.ここで,L」は波速の誤差が5%となる成分波の波長である.また,\eta_cは津波波形に関する数値計算結果.\eta_sは真値として考えられる微小振幅波理論の解,x_0は津波の先端の位置そしてL_0はzero-up-crossで定義した津波主峰部の波長である.この図から,所要の精度を得るための適切な支配方程式および計算格子を定めることができる.例えば,初期波形の寸法がL_0=1,000kmの津波で伝播距離が20,000kmとした場合,波形の精度を20%以内で計算しようとするとL」/L_0=1/10であるので,波長100km程度まで誤差5%以内で計算する必要がある.したがって,図-3から\Delta{x}=20kmの線形長波理論または線形Boussinesqの式を用いればよいことがわかる.同様にして,波形の誤差10%であるなら\Delta{x}=10kmの線形長波理論または線形Boussinesqの式,そして波形の誤差8%までなら\Delta{x}=5kmの線形Boussinesq理論を選べばよいことになる.
以上の計算誤差に関する検討では,K_xの値について詳しい議論をしていない.K_xの値による打ち切り誤差の変化は,K_x=0.1-0.4の範囲で無視できる程度に小さく,あまり問題とはならない.ただし,安定条件の許す範囲でK_xの値を大きくすると,徐々に打ち切り誤差が小さくなる性質があるので,打ち切り誤差の性質を利用する線形長波理論を用いた計算では逆に注意が必要である.また,数値計算の誤差には,打ち切り誤差の他に離散化誤差が考えられる.これは,連続量を離散量で取り扱うことに起因するもので,フーリエ解析のエリアジングと同種の問題と考えてもよい.この誤差に関しては\Delta{x}/L_0=1/30程度以下であればほとんど問題とならない.

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式(16〜20)
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(式)
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図-1 1964年アラスカ津波の初期波形
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図-2 計算格子間隔の違いによる計算結果の差
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図-3 波速の誤差が5%以内となる計算格子間隔
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図-4 計算格子間隔を10kmとした場合に波速の誤差が5%以内となる水深
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図-5 伝播距離と津波波形の誤差

4.二次元伝播計算に関する検討

4.1計算法
前節までの結果から遠地津波の外洋伝播計算では,コリオリ項を考慮した線形Boussinesq理論を支配方程式とすればよいことが明らかになった.また,線形長波理論を用いても,\Delta{x}=10kmの条件で計算するなら,比較的精度の良い結果を得ることができることなどを明らかにした.ここでは,実用計算への応用としてアラスカ津波を対象とし,線形長波理論と線形Boussinesq理論を用いた計算を行う.
線形Boussinesq理論を用いた計算の差分式は,陽的なリープフロッグ法と同じ計算点の配置をすると
(21)
(22)
(23)
となる.ここに,
(式1)
である.また,(j,m,n)は(\lambda,\psi,t)軸方向の計算点を表し,(\Delta{\lambda},\Delta{\psi},\Delta{t})は格子間隔である.ただし,簡単のためここではV\Delta{\lambda}=\Delta{\psi}としている.また,\gammaは地球の自転の角速度を意味する.差分式から判断してわかるように,この線形Boussinesq理論を用いた計算は陰解法により行われる.一方,線形長波理論の計算の差分式は(22),(23)中の分散項を無視したものであり,計算は陽解法である.
線形Boussinesq理論に関する計算は緯度,経度各5分の1種類,線形長波理論計算では5,10,30分の3種類に関して実施している.前節の誤差解析では,アラスカ津波の代表断面の水深4km相当寸法が約900kmであるので,それぞれ10,20,40%の津波波形の誤差を許す計算をしていることになる.時間間隔は,空間格子5分の場合が10秒,10分で20秒,30分で60秒としている.計算領域は,図-6に示すように日本近海から北アメリカ西海岸までの北太平洋全域としている.
緯度,経度5分の計算格子で日本列島,ハワイ諸島を含みアメリカ西海岸に至るほぼ北太平洋全域を覆っている.
この場合の総計算点数は約83万個である.また,本計算では潮汐などの津波以外の波は一切考慮していない.
アラスカ津波の計算はかつてHwang-Divoky2)とHwang-Butler-Divoky3)によって研究されたことがある.前者では直交座標系で表された線形長波理論による波源域付近の計算とRay-tracingによる伝播図の作成がなされている.後者では本計算とほぼ等しい範囲で緯度,経度座標を採用した外洋伝播計算を実施している.
計算格子間隔は本計算に対して経度方向が3倍の15分,緯度方向が2倍の10分を用いている.また,これらの計算の初期条件には,地盤の立ち上がり速度と破壊進行速度が考慮されている.本計算では,Aida11)の研究成果から判断し,アラスカ地震の場合波源域の平均水深が900mと浅いこと,立ち上がり時間および破壊進行時間が短いことから,これらのの影響は小さいと考え無視している.
4.2計算結果
線形Boussinesq理論を用いた計算結果の一例を図-7に示す.図は津波発生後2時間毎の空間水位分布である.波源域では10m近い波高を有していたが,アメリカ西海岸付近では30から70cm程度,日本に向かうものは10cm以下であるといった傾向がわかる.実際アラスカ津波の検潮記録を調べて見るとアメリカ西海岸で0.6から3.Om,ハワイ州で0.4から2.Om,日本沿岸で0.05から0.2mとなっており,この計算結果と定性的には良く一致している.
図-8は,線形Boussinesq計算と線形長波理論計算の4種類の津波発生後3時間30分の空間水位分布に関する結果を比較したものである.線形長波計算のうち格子間隔10分と30分の結果は線形Boussinesq計算との差が見られるが,前節で予測したように5分の結果は非常に良い一致を示す.図-9は図-6に示す3地点A,B,Cの水位の時聞変化で比較したものである.線形長波理論計算の10分のものは比較的線形Boussinesq理論計算に近い結果となるが,分散効果の違いがあり主峰の減衰が多少大きいものとなる.30分の結果は非常に大きな差が見られ,同じ津波を対象とした計算とは考えにくいほどのものとなる.5分の結果は高波数成分の位相に若干の差があるものの良好な一致を示している.
図-10にWake島における水位経時変化に対する検潮記録12)と線形Boussinesq理論計算による結果の比較を示す.図には同時にHwangらの結果も参照のため示しているが,両者とも全体的に検潮記録とはよい対応を見せている.検潮所が津波の進行方向に対して島の裏側に位置しており,計算格子に比べ島が小さく,計算では島の影響を考慮していないことなどを考え合わせると,Hwangらの結果は一致しすぎるきらいがある.
 最後に,演算時間について述べる.計算機としてはスーパーコンピューター(SX-1)を用いている.5分格子の線形長波理論による二次元伝播計算では7時間を再現するのに要した演算時間は3分5秒,線形Bous-sinesq理論では11分24秒であった.ベクトル演算機能およびプログラムのベクトル化率の向上により,従来の汎用大型計算機(ACOS1000)を用いた計算に比べ1/100程度に演算時間を短縮することができている.

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式(21〜23)
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(式1)
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図-6 計算領域
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図-7 線形Boussinesq理論による計算例
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図-8 支配方程式と計算格子間隔の違いによる計算結果の差
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図-9 支配方程式と計算格子間隔の違いによる経時変化の差
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図-10

5.まとめ

本究では遠地津波の外洋伝播計算に関して基礎的な検討を行った.得られた結果は次の通りである.
(1)簡単な理論解析から,非線形項は無視できるが,分散項,コリオリ項は無視できないことを確認した.
(2)計算の打ち切り誤差に起因する数値分散効果と物理分散効果が同程度となる条件を用いれば,比較的簡単な計算で済む線形長波理論を用いても実用上問題のない結果が得られることを明らかにした.
(3)所要の計算精度を得るための支配方程式および格子間隔の選定法として図-3および図-5を用いる方法を示した.津波初期波形として,主断層と副断層運動が重なった比較的複雑なアラスカ津波の代表断面を用いているため,この選定法の有効範囲はかなり広いと思われる.
(4)コリオリカを考慮した線形長波理論と線形Bous-sinesq理論による二次元伝播計算を実施し,大領域,長時間にわたる計算でも安定かつ短時間に実施可能であることを示した.また,本研究で扱った数値計算法を用いることにより遠地津波の外洋伝播計算が精度良く実施可能であることが明らかとなった.ただし,本計算では浅海域での津波の変形や局地特性を十分考慮することはできず,浅海計算への境界入力値を与えるものである.今後,浅海域と結合した計算を行い最終的な精度を検討する必要がある.
(1990年11月30日受付)

謝辞

水深データをアメリカ合衆国テキサスA&M大学Prof.Reid and Dr.Whitekerから提供していただいた.
また,本研究の一部は著者のひとりが東北大学に在籍中に開始したものであり,研究成果は東北大学首藤教授グループとの共同研究による.

参考文献

1)Ueno, T . : Numerical computations for the Chilean earthquake tsunami, Oceanogr. Mag.,1965, 17, Vol.1-2, pp.86-94.
2)Hwang, L. and D. Divoky : A numerical model of the major tsunami, The great Alaska earthquake of 1964, Oceanography and Coastal Engineering, National Academy of Sciences, Washington, D . C . , 1972 , pp .191-210 . Hwang, L . , H. Butler and D . Divoky : Generation and open-sea characteritics, Bull. Seism. Soc. Ame. , 1972, Vol. 62 , pp .1579-1597 .
4)後藤智明:アーセル数が大きい場合の非線形分散波の方程式,土木学会論文集,1984,Vo1.351/II-2,pp.139-148.
5)藤間功司,後藤智明,首藤伸夫:非線形分散波式の精度の検討,土木学会論文集,1986,Vol.369/II-5,PP.223-232.
6)長尾昌朋,後藤智明,首藤伸夫:非線形分散波の数値計算,土木学会海岸工学講演会論文集,1985,Vol.32,pp114-118
7) Plafker, G. : Tectonics of the March 27 , 1964,Alaska earthquake U. S. Geological Survey Professional Paper 543-1. Washington : : Government Printing Office, 1969, 74p.
8)矢嶋信夫,野木達夫:発展方程式の数値解法,岩波書店,1977.
9)今村文彦,後藤智明:差分法による津波計算の打ち切り誤差,土木学会論文集,1986,Vol.375/II-6,pp.241-250.
10)佐山順二,今村文彦,後藤智明,首藤伸夫:外海域における津波の高精度計算法に関する検討,土木学会海岸工学講演会論文集,1987,VoL.34,pp.31-35.
11)Aida, I. : Numerical experiments for tsunamis caused by moving deformation of the sea bottom. Bull. Earthq. Res. Inst. , 1969, Vol.47, pp.849- 862.
12)Van D. and G. William : Tsunamis, advances in hydroscience, 1965, pp. 1-47 .

付録 緯度・経度座標系の非線形分散波理論

地球を半径Rの球体と近似し,緯度および経度をそれぞれ\lambda,\psiとする.(\lambda,\psi)軸は静水面上にあるものどし,静水面から鉛直上方にz軸をとる.(\lambda,\psi,z)軸方向の流速を(u,v,w),静水面からの水位変動をeta,圧力をp,静水深をh,重力加速度をg,密度を\rhoとおき,津波の現象として非圧縮流体の非回転運動を考える.さらに,z軸方向のコリオリカと地球の曲率効果力を無視すると緯度・経度座標系で記述された連続および運動の式は下記のようになる.
(1)
(2)
(3)
(4)
ここで,
(5)
であり,fは地球の自転の各速度を\omegaとしたときのコリオリ因子,
(6)
を表す.
水表面は,
z=\etaでp=0(7)
および
(8)
であり,水底の条件は,
(9)
である.
まず,連続および運動の式を水表面と水底の境界条件を用いてz軸方向に積分する.連続の式は,
(10)
となり,運動の式は,
(11)
(12)
となる.ここに,
(13)
(14)
である。
いま,波高水深比と相対水深が共に小さくアーセル数が1のオーダーであるような長波の現象を考え,著者が提案した摂動展開4)を用いると,
(15)
(16)
と近似することができ,緯度・経度座標系で記述された非線形分散波理論の連続および運;動の式は下記のようになる.
(17)
(18)
(19)
ここに,\bar{u},\bar{v}は(\lambda,\psi)軸方向の断面平均流速を表し,M,Nは
(20)
で定義される流量フラックスであり,
(21)
(22)
である.

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式(1〜22)

港湾技術研究所報告 第31巻第2号(1992.6) 3.単地点出力型スペクトル法による波浪推算システム 後藤智明*・青野利夫**

要旨

台風や季節風による高波をパーソナルコンピュータで推算することを目的として沖波を対象としたスペクトル法による単地点出力型波浪推算システムを開発した。
この波浪推算システムは,風推算の方法により台風モデル推算と傾度風モデル推算の2種類で構成されている。台風モデルを利用した推算では,過去の台風を想定した追算計算および台風の規模・経路を任意に与えた予測計算が可能である。傾度風モデルを利用する方法では,天気図の読み取り結果を入力することにより自動的に海上風波浪を一貫して推算することができる。また,波推算手法としては,スペクトル法を採用しており,有義波法に比べ,うねりを合理的に取り扱うことができる。
推算結果から,海上風の推算方法により推算特性が多少異なるものの面的な推算結果とほぼ同等な精度を有すること,また,高波浪の波浪追算および台風接近時の高波浪予測などに利用できることなどが明かとなった。
キーワード単:単地点出力,波浪推算システム,スペクトル法,台風モデル,傾度風モデル,パーソナルコンピュータ

*水工部海洋エネルギー利用研究室長
**水工部海洋エネルギー利用研究室(科学技術特別研究員)

REPORT OF PORT AND HARBOUR RESEARCH INSTITUTE Vol.31, No.2 (June.1992) 3. A Spectral Wave Prediction System For A Single Point Chiaki GOTO* Toshio AoNo***

Synopsis
In order to predict wind waves by typhoon and monsoon, wave hindcast system imagined use of personal computer, which based on a spectral method at single point, has been developed.
The system is divided into two calculation systems by the difference of wind computation method, typhoon wind model and gradient wind model. In the typhoon wind system, it can be easily carried out not only wave hindcast in past typhoon by use of typhoon data base but also wave forecast by estimated typhoon parameter. In the gradient wind system, atomospheric pressure data is given, then a series of hindcast from generation of grid point values of pressure to wind and wave computations are automatically carried out.
The wave model is based on a discrete spectrum propagation of the radiative transfer equation in which the source functions consists of energy change processes originated from momentum transfer between wind and wave. And the model is able to obtain more accurate results for swell propagation compare with significant wave hindcast method.
It is concluded that the system gives same accuracy of hindcast results as conventional models for two dimensional area. And the system would be much avail to practice wave forecast or hindcast because a computation for 5 days weather condision is able to finish within 2 minutes by personal computer.
Key Words : Single point, Wave hindcast system, Spectral model, Typhoon model, Gradient model, Personal computer

*Chief, Ocean Energy Utilization Labolatory,Hydraulic Engineering Division
**Ocean Energy Utilization Labolatory, (National Institute Post Doctral Fellow), Hydraulic Engineering Division

目次

1.まえがき 59
2.単地点出力型波浪推算システム 60
2.1システムの構成 60
2.2台風モデル推算 60
2.3傾度風モデル推算 61
2.4支援システムおよびデータベース 61
3.数値解析手法 63
3.1台風モデルによる風推算 63
3.2台風の暴風圏情報と台風定数の関係 63
3.3傾度風モデルによる風推算 64
3.4スペクトル法による波浪推算 66
4.波浪推算システムの適用性に関する考察 68
4.1推算精度 68
4.2演算時間 73
5.まとめ 73
参考文献 73
主要記号一覧表 74

1.まえがき

波浪予測,波浪災害の原因究明および港湾構造物の設計波浪算定などを目的とした波浪推算の事例は多い。しかし,波浪推算には,気象データ作成,気象データの格子点補間,気圧値の時間内挿,風推算そして波推算という手順が必要であり,かつ,各手順に比較的多くの演算時間を要する。このような理由により,現地港湾事務所で波浪予測などを目的として推算作業を実施するためには,即時性および簡便性に問題が残されていた。そこで,現地港湾事務所に設置されているパーソナルコンピュータにより,台風や季節風による高波が波浪推算できる波浪推算システムの開発を行った。
システム化した波浪推算モデルは,沖波を対象としたスペクトル法による単地点出力型波浪推算システムであり,これは特定した1地点に着目し,来襲する波浪エネルギーを同地点から放射状に展開した波向線ごとに計算し,総和をとることによって波浪諸元を算出するものである。したがって,2次元的な拡がりのある場を計算する通常の格子点法に比較して,計算点が少なくてすみ,また,各波向線上の計算点において特定した波向の波浪エネルギー成分のみを計算すればよいという利点がある。
波浪の発達・減衰のアルゴリズムとしては,各種の波浪推算業務に関して実績があることと,単地点出力の演算時間上の利点が生かせる成分波モデルであることから磯崎・宇治1)の開発したMRI法を用いている。ただし,MRI法は特殊な伝播スキームを利用しており,そのままでは単地点出力型推算モデルに組み込みことが難しい。このため,伝播スキームに関してのみ通常の差分スキームに変更している。
提案した単地点出力型波浪推算システムは,風推算の方法により台風モデルと傾度風モデルの2種類で構成されている。台風モデルを利用した推算では,過去の台風を想定した追算計算および台風の規模・経路を任意に与えた予測計算が可能である。また,傾度風モデルを利用する方法では,天気図の読み取り結果を入力することにより自動的に海上風,波浪を一貫して推算することができる。演算速度の面では,台風モデルを用いた波浪推算であると,32ビットのパーソナルコンピュータを用いて5日問の擾乱を約2分で推算することが可能であり,現地の港湾事務所などで高波浪の概算的な波浪追算および台風接近時の高波浪予測などに利用できるシステムである。
なお,同種の波浪推算モデルに関しては,山口ら2),3)が研究を実施しているが,彼らのモデルに比べ,本システムは演算速度が2倍程度速いこと,一連の波浪推算処理がシステム化されていることなどが異なる。推算精度に関しては,本システムが成分波モデルを採用しているのに比べ,山口らの最新のものがハイブリッド・パラメータモデルを用いている点が異なるものの両者ともほぼ同等であると考えられる。

2.単地点出力型波浪推算システム

2.1システムの構成
単地点出力型波浪推算システムの構成を図-1に示す。
システムは,風推算の違いにより,台風モデル推算と傾度風モデル推算の2つに分けられる。また,波浪推算を支援するシステム・データベースとしては,気象図処理システム,気象図データベース,推算格子データベースそして観測波浪データベースがある。
本報では,パーソナルコンピュータのひとつであるNEC PC9801DAに組み込んだ単地点出力型波浪推算システムに関して説明する。機器の構成を図-2に示す。パーソナルコンピュータ本体としては,80386の演算チップおよび数値演算プロセッサが登載されていること,および5メガ程度のメモリーの拡張が必要な条件となる。また,本システムを利用するためには,観測波浪データベースの容量が大きいため,パーソナルコンピュータ本体のハードディスク以外に外付けのハードディスクが必要である。さらに,紙面出力のためにレーザーショットプリンター,そして気象図を読み取るためにデジタイザーが必要である。ただし,デジタイザーに関しては,新たに気象図を読み取る場合にのみ必要となる。プリンターについては,本システムがLBPLOTというレーザーショットプリンターへの図化出力専用のソフトライブラリーを利用しているためLIPSモードが利用できる機種に限られる。なお,レーザーショットプリンターが用意されていないと,本システムのうち台風モデル推算だけが実施可能となる。
2.2台風モデル推算
 既往台風の推算は,出力地点および既往台風番号を指定すると,計算地点の緯度・経度座標データおよび各計算格子座標を収納した推算格子データベースと6時間ごとの台風の位置と規模に関するデータを収納した台風定数データベースに自動的にアクセスし,海上風と波浪の推算を同時に実施する。推算結果は台風経路・諸元とともにパーソナルコンピュータ画面に表示され,波浪観測がなされている地点に関する推算であれば自動的に観測波浪の経時変化も出力される。また,推算最大波高出現時に関しては,推算の方向スペクトル,周波数スペクトルおよび方向別エネルギー分布が表示される。
写真-1は,高知沖に関して台風8213号の波浪推算した場合のパーソナルコンピュータ画面を表す。画面には,風経路(白色),台風規模(白色),観測波浪の経時変化(赤色)が表示され,計算の進行とともに有義波高,周期,波向に関する推算値(白色)が表示される。写真-2は,推算最大波高出現時の推算の方向スペクトル,周波数スペクトルおよび方向別エネルギー分布に関する画面出力例である。なお,最終的な推算結果の保存としては,画面のハードコピーまたは推算値のファイル出力が利用できる。
台風の高波予測は,台風諸元として予想経路および規模をマウスまたはキーボード入力した値を利用して波浪推算するものである。推算方法としては,まず,入力時間間隔を指定し,台風の予想経路および規模を必要日数だけ入力する。その後,自動的に推算が行われ,写真-3のような画面出力が現れる。やはり,写真の右下の白線が推算値を表す。また,この予測計算に関しても写真-2と同様なスペクトルおよび方向分布が表示される。
なお,台風の規模に関しては,藤田4)の台風モデルにもとつくパラメータr_0(台風中心から最大風速出現地点までの半径)と\Delta{p}(台風の中心示度)の組み合わせ,または気象庁により予想された台風の暴風圏(台風中心から風速25m/sの半径)に関する情報が利用でき,後者を利用すると台風モデルに関する知識を必要としないで現地港湾事務所において簡便に台風による高波の予測が可能となる。
2.3傾度風モデル推算
傾度風モデル推算は,天気図の気圧データを用いた波浪推算である。このシステムは,台風モデルを利用する推算に比べ海上風の計算が複雑であるため,気象データの作成,格子点補間,時間内挿,海上風推算,波推算の手順でシステムの構成がなされている。まず,対象とする気象擾乱に関して気象データを作成する。気象図データベースに収録されていない場合は,気象図処理システムを利用して気象図を数値化する。次に,スプライン補間により推算格子に気圧値が割り付けられ,気圧値の時間内挿および海上風の推算が行われる。最後に,推算された海上風を用いて波浪が計算される。以上のような手順が波浪推算に必要であり,しかも格子点補間の演算時間が比較的長いため,傾度風モデル推算は推算結果をレーザーショットプリンターへの紙面およびファイル出力のみに限定している。ただし,推算作業の効率化をはかるため,複数地点および複数擾乱の推算作業を連続して実施可能なようにシステム化されている。
傾度風モデル推算の紙面出力結果の一例として,日本の北太平洋沿岸に高波をもたらした低気圧に関する気象図,風ベクトル図およびむつ小川原港の波浪の経時変化を図-3から図-5に示す。図-5の経時変化図において,実線が推算風速,風向,有義波高,有義波周期を表し,黒丸・白丸が観測有義波高,有義波周期である。
2.4支援システムおよびデータベース
2.4.1推算格子データベース
単地点出力型波浪推算モデルにおいては,対象とする出力地点を中心にして放射状に波向線を組み,同心円状単地点出力型スペクトル法による波浪推算システムの推算格子を設定する。したがって,対象地点ごとに推算格子が異なる特徴がある。図-6は波浮に関する推算格子を一例として示したものである。図中の黒丸が各波向線に沿った計算点を表す。なお,陸地に遮蔽されている波向に関しては描いていない。
 推算格子データベースは対象地点ごとの各計算格子点の緯度・経度座標値および各波向線の遮蔽率を収録しているものであり,現在のところ,データベース化されている地点は表-1に示す44地点である。
2.4.2気象図処理システム
この支援システムは,気象図の読み取りとデータ編集をするものである。気象図の読み取りは,デジタイザーを用いて6時間ごとの極東天気図に記載されている等圧線,前線,台風諸元,低気圧と高気圧の位置を緯度・経度座標として数値化し,ファイル出力するシステムである。写真-4に気象図の読み取り処理に関するパーソナルコンピュータ画面の一例を示す。等圧線,前線を色別に表示し,また,デジタイザーのトレースモードを利用するなど人的なミスを軽減する工夫がなされている。また,台風に関しては,藤田モデルにもとつく台風定数の算定プログラムも完備されている。
また,気象図データ編集システムは,6時間単位で数値化したデータを1日単位のデータとして編集し,データベース化するものである。
2.4.3気象図データベース
気象図処理システムにより作成された気象図データファイルは,5インチフロッピィに収録され,オフライン形式でデータベース化されている。収録形式は面的な波浪推算システムと共通であり,現在のところ,昭和30年以降のデータとして約1,500日分が収録されている。
2.4.4台風定数データベース
これは,台風モデル推算を支援する目的で開発したデータベースである。6時間ピッチの台風中心の緯度・経度座標ならびに藤田モデルにもとつく台風定数が収録されている。現在のところ,収録したデータは表-2に示す64個の台風である。
2.4.5観測波浪データベース
推算結果の精度の検証のために,観測波浪データベースが完備されている。本波浪推算システムが起動すると,観測波浪データベースに対し推算期間および地点に関する観測データを自動的に検索し,適合する観測データがあると推算結果と同時に経時変化を図化出力するように設定されている。
このデータベースは,代表波諸元のうち有義波と最高波に関するものであり,日本沿岸で観測された波浪のうち港湾技術研究所において集中解析処理した2時間ピッチのデータが収録されている。期間的には最長もので20年分のデータであり,観測地点数は約40地点である。港湾技術研究所において集中解析処理している観測地点および期間に関しては,毎年出版されている波浪観測年報を参照されたい。

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図-1 単地点出力型波浪推算システム
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図-2 単地点出力型波浪推算システムの機器構戒
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写真 写真-1 既往台風推算のパーソナルコンピュータ画面出力(台風経路と経時変化)
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写真 写真-2 既往台風推算のパーソナルコンピュータ画面出力(スペクトルと方向分布)
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写真 写真-3 台風モデルによる予測計算のパーソナルコンピュータ画面出力(台風経路と経時変化)
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図-3 天気図出力例
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図-4 風ベクトル図出力例
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図-5 波浪推算経時変化図出力例
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図-6 推算格子の一例(波浮)
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表-1 推算格子データベースの収録地点
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写真 写真-4 気象図読み取り実施中のパーソナルコンピュータ画面出力
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表-2 台風定数データベースの収録台風

3.数値解析手法

3.1台風モデルによる風推算
 台風モデルを用いた風推算では,台風の中心位置と台風規模を表現するパラメータがわかれば計算が可能である。台風の気圧分布推定式としては,Myersモデル,藤田モデルなどがあるが,本波浪推算システムでは,気象庁における実績を考慮して,次式で表される藤田モデルを利用する。
(1)
ここに,Pは台風の中心から距離rにおける気圧,P_cは台風の申心気圧,\Delta{P}は申心示度(\Delta{P}=P」一P_c),P」は台風から遠くはなれた地点での気圧,r_0は台風定数(台風中心から最大風速地点までの距離に相当する)である。
 気象図処理システムを用いて天気図から台風の中心位置および等圧線を読み取ることにより,式(1)のモデル定数である\Delta{P}とr_0が計算される。\delta{P}とr_0が求められると任意地点での気圧分布が式(1)から計算され,中心対称風場の風,合成風がそれぞれ以下のように推算される。
中心対称風は,台風が停止していると仮定したときの風で,コリオリカ,遠心力,気圧傾度力が釣り合うと考えた傾度風モデル式(2)で計算することができる。
(2)
ここに,rは台風中心から風推算点までの距離,fはコリオリパラメータ,\rhoは大気の密度,Vはスカラー傾度風速である。風向は,台風中心と風推算点を結ぶ直線に直角な方向である。
さらに,式(2)で表される傾度風速は摩擦を考慮していないため,式(3)を用いて傾度風速を海上風速に補正する。
(3)
ここに,C_1は理想気体の傾度風から海上風への補正係数であり,本システムではC_1=0.7を採用している。また,風向に関しては,風速ベクトルから半時計回りに30°の補正を行っている。
場の風は,宮崎5)に従い,台風の移動速度と中心対称風に比例し,かつ台風の移動方向に平行な風であると仮定する。具体的には,台風の移動速度をV_Tとすると場の風速V_2は式(4)で表される。
(4)
C_2は比例定数であり,本システムでは,C_2=C_1とした。
合成風の風速は,式(3)と(4)のベクトル和として計算する。
このような台風モデルを用いた風推算は,場の風という気圧場の時聞変化を取り込み,風推算が簡便かつ高速に行える特徴がある。しかも,台風の気圧分布が同心円で近似できる範囲では,他の風推算手法に比べ精度が同等であると考えることができる。そのためパーソナルコンピュータで高速に波浪推算を行うには,最も適した手法であると言うこともできる。
3.2台風の暴風圏情報と台風定数の関係
本推算システムでは,台風定数を用いる推算の他に,テレビなどにより比較的入手しやすい情報である台風の中心気圧と暴風圏の半径を用いた波浪の予測手法についても検討している。すなわち,台風定数と暴風圏半径との関係を明らかにし,仮想的な台風定数を算出して風推算を行う方法である。
台風定数と暴風圏の半径との関係は,中心対称風の推定式(2)に気圧分布式(1)を代入して,整理することにより求められ,式(5)のようになる。
(5)
ここに,R=(r/r_0)^2である。なお,台風中心からの暴風圏単地点出力型スペクトル法による波浪推算システムの半径に関する情報は暴風圏の平均的な値であるため,場の風の効果については無視している。本システムにおいては,台風モデル推算において暴風圏情報を選択すると自動的に式(5)を用いて台風定数に換算して推算を実行するようにプログラム化されている。
図-7は,暴風圏半径(台風の中心から風速25m/s以上の暴風域の半径)rが与えられたときの台風常数を式(5)にV=25m/sを代入し,逐次近似法により算定したものである。図中の数字は,中心示度を表している。中心示度が60以下に関しては,台風定数r_0の実数解が存在する範囲のみ図化している。気象予測では,風速25m/s以上の暴風圏の他に風速20m/s以上で定義した強風圏があり,強風圏の情報を用いる場合には,式(5)にV=20rn/sを代入した算定式が利用できる。
3.3傾度風モデルによる風推算
3.3.1スプライン法による格子点補間
採用したスプライン補間法は,読み取った気圧線データを拘束条件として,弾性体の微小変位理論に基づく張力と曲げの歪エネルギーを最小にする解を利用して格子点に気圧データを補間するものである。6),7)具体的には,歪エネルギーを最小にする4階の偏微分方程式を誘導し,差分法を用いて数値的になめらかな気圧面を作成する方法である。
(1)基礎方程式
対象とする解析領域Sにおいて,次式で示されるエネルギーEを最小とする曲面Z(x,y)を定義する。
(6)
ここに,
(7)
でありi,jはそれぞれx方向,y方向への単位ベクトルを示す。式(6)の第1項は歪エネルギーに比例する項で,第2項は張力による伸びエネルギーに比例する項である。\sigmaはこれらの項の復元力の強さを表し,\sigma=0で最も滑らかな曲面を,\simga=無限で平面を表す。
 式(6)の第一変分を0と置き,部分積分すると,
(8)
となる。ここに,領域Sの境界C上で
(9)
とすれば,式(8)は領域S内で式(10)または式(11)のように変形される。
(10)
(11)
式(11)において
(12)
とおくと式(11)は式(13)とおくことができ,
(13)
このとき,境界C上の条件式(9)は式(14)となる。
(14)
また,Z(x,y)はN個の地点で与えられたデータを満足しなければならない。
(15)
したがって,天気図から得られたデータを用いて,条件式(14),(15)の下で,式働,側を連立させて解けば格子点上への内挿が行えることになる。
(2)差分計算
式(12)を2階の中央差分で表示すると式(16)となる。
(16)
ここで,\delta{x}=\delta{y}=hとおくと式(16)は式(17)となる。
(17)
同様にして,式(13)は,
(18)
となる。ここでi,jはそれぞれx,y方向の格子点を示す。
いま,図-8のような格子点上で斜線の領域を考える。
図中にPで示したように読み取った天気図データがこの斜線部に存在する場合に,原点をZ、とする局所座標\alpha軸,\beta軸を考え点P(x,y)との距離をそれぞ\alpha*,\beta*とす
ると
(19)
となる。局所座標系での点Z_k(\alpha,\beta)を,Z_i(i=1,4)を用いて表現すると
(20)
となる。ここで,関数N_i(\alpha,\beta)は次式のようになる。
N_1=(1-\alpha)(1-\beta)
N_2=\alpha(1-\beta)
N_3=\alpha\beta
N_4=(1-\alpha)\beta
格子点(i,j)では,(\alpha,\beta)=(1/2,1/2)であり,Z_kが点(\alpha_0,\beta_0)で与えられているとすると,Z(1/2,1/2)は,式(21)で求められる。
(21)
したがって,領域内にデータが存在する場合は式(12)の代わりに式(21)で格子点(i,j)に内挿する。
境界上では,式(14)を差分化した式(22)より求める。
(22)
 図-9は,それぞれ天気図からデジタイザーで入力した等圧線の分布とその結果をスプライン補間した天気図を示したものである。スプライン補間によって合理的な気圧分布が内挿されているのが認められる。なお,スプライン補間の計算格子としては,試行錯誤の結果0.5°メッシュを採用している。
3.3.2海上風の計算
台風モデルによる海上風の推算は,式(1)のような簡単な式で気圧場を近似しているため,減衰期の台風のように気圧場が同心円状からずれてきたり,台風以外の低気圧などの気象擾乱に対しては適用が難かしい。このような場合,対象となる領域の気象データ(気圧データ)を読み取って,計算格子点に内挿し,風推算を行う必要がある。
本波浪推算システムにおける傾度風モデルによる海上風の計算は,3,3.1で説明した緯度・経度格子に対する気圧値のスプライン補間値を時間内挿した結果を用いて,以下の要領で行われる。まず,理想大気の風を緯度および経度方向の成分ごとに地衡風を次式で求め,風向およびスカラー風速V_gを算出する。
(23)
(24)
(25)
ここに,xおよびyはそれぞれ経度および緯度座標を表し,u_gおよびv_gはそれぞれ経度および緯度方向の地衡風速である。一方,スカラー傾度風速Vは式(2)および式(25)から
(26)
と表される。
次に,仮想的な等気圧線の曲率半径rを
(27)
から差分化して計算すると,式(26)から,スカラー傾度風速Vが算出され,地衡風近似で求めた風向に合わせて緯度および経度方向の傾度風速ベクトルを計算する。さらに,以上の計算で求められた理想大気の傾度風から摩擦を考慮した海上風への補正は,表-3に示す気象庁が経験的に求めた係数を利用する。
最後に,緯度・経度に沿った風の推算格子から出力対象地点から放射状に展開している波の推算格子にベクトル補間して波推算の入力データとする。なお,風推算に関しても格子点補問と同じ0.5°格子で計算が行われる。
3.4スペクトル法による波推算
3.4.1基礎方程式
現在,提案されているスペクトル法による波浪推算モデルとしては,わが国で開発されたものに限定しても,井上8),MRI,MRI=II9),山口・土屋10)そして,東北11)などのモデルがある。ここでは,気象庁の波浪予測業務ま
たは港湾施設の設計波の算定に長年利用されてきたとい
う実績があるという理由から,磯崎・宇治の開発した
MRI法を選び,単地点出力型のモデルに改良している。
図-10に示すように任意の一地点へ襲来する波浪の波
向線に一致する座標系を採ると,波浪スペクトルS(f,\theta)
の発達・減衰・伝播を表す方程式は
(28)
で表される。ここに,C_gは群速度を意味し,Fは外力項で
ある。外力項は,風から波へのエネルギーの流入,砕波
による消散,内部摩擦による消散そして逆風による消散
の効果が考慮されており,波向と風向のなす角\thetaと平衡
スペクトルS_PMを用いて
(29)
と記述される。ここに,AはPhillipsの共鳴理論に対応し
た発達係数BはMilesの不安定理論による発達係数であ
る。ともに井上8)によって,
(30)
(31)
と定式化されている。ここに,uは19.5m高度の風速,u_*
は摩擦風速,Cは成分波の波速,fは成分波の周波数,kは
成分波の波数を表す。また,Dは内部摩擦によるエネルギ
ー減衰係数(本システムでは3.0を採用している)であ
り,\lambda(\theta)は方向分布関数である。十分に発達した波のエ
ネルギーを表す平衡スペクトルS_PMとしては,Pierson-
Moskowitzスペクトル
(32)
を仮定している。
なお,エネルギースペクトルから有義波高および有義
波周期を算定する式としては,
(33)
(34)
を用いている。
3.4.2数値計算法
式(28)に基づくエネルギー伝播計算には,演算速度が速
いこと,および方向・周波数の離散化が比較的粗いとき
に高精度なスキームを用いるとエネルギーの集中化をも
たらす場合があることから,1次の風上差分を用いる。
まず,式(28)の右辺を零とおいた伝播方程式と伝播項を零
においた発達方程式とに分けて扱う。伝播方程式の差分
式は,
(35)
となる。次に,波浪の発達・減衰に関して差分化すると
(36)
となる。ここで,(J,N,K)はそれぞれ距離,波向,時間方向の格子点を表し,S^K+1_J,N,\tilde{S^K+1_J}は伝播計算後と発達計算後の方向別エネルギーである。
 なお,本システムでは,著者の一人が行った検討12)から格子幅,時間間隔,周波数分割幅,方向分割幅をそれぞれ100km,1s,0,01Hz,22.5°と固定している。また,方向分布関数形として(cos\theta)^2則を用いている。なお,本推算モデルにおいては,陸地による遮蔽効果を波向線の遮蔽率の形で考慮している。
以上の説明で明らかなように,外力項の定式化は従来のMRI法と同じであり,特にパーソナルコンピュータの利用を前提とした顕著な修正を行なっていない。ただし,従来のものに比べ演算時間を短縮するため,発達・減衰過程の計算に必要な種々の関数を全て離散化し,データテーブルとして取り扱う手法を採用している。

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式(1〜36)
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図-7 暴風圏の半径とr_0の関係
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図-8 データ検索範囲と局所座標系
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図-9 スプライン補間結果
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表-3 海上風への補正係数
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図-10 推算格子の座標

4.波浪推算システムの適用性に関する考察

4.1推算精度
単地点出力型波浪推算システムによる推算精度を調べる目的で,台風モデル推算に関して20擾乱,傾度風モデル推算に関して14擾乱の波浪推算を実施した。
図-11および図-12は,それぞれ台風モデル推算および傾度風モデル推算に関して最大観測有義波高と最大推算有義波高の相関を調べたものである。台風モデル推算は,名瀬,那覇,中城湾,油津,高知沖,波浮の5地点に関して図化している。また,傾度風モデル推算は,紋別,留萌,輪島,浜田,玄界灘,那覇,中城湾,油津,御前崎,むつ小川原の10地点に関するものである。どの地点も水深50m程度以上に観測機器が設置されており,観測波浪は大きな浅海変形を受けていない沖波として考えられる。
図から,台風モデル推算および傾度風モデル推算ともに多少相関データがばらつくものの,平均的には45°の線に乗っており本システムから得られた推算値は良好な精度を有することがわかる。ただし,台風モデル推算は低波浪・高波浪に関わらず一定の精度があると考えられるが,傾度風モデル推算では多少観測値に比べ推算値が小さくなるケースが見られる。これは,台風モデルにおいては場の風という形で気圧場の時間変化の効果を考慮しているのに比べ,傾度風モデル推算では定常の気圧場を仮定して風を計算していることに起因していると考えられる。個々の推算結果をみると,やはり,比較的スケールの長い気象擾乱に関しては観測波浪と相関が良く,前線を伴ったり移動速度が速い気象擾乱とは一般的に相関が悪い傾向がある。したがって,天気図の気圧データを利用する傾度風モデル推算に関しては,気圧場の時間変化の効果を考慮することが今後の課題となる。また,本システムの推算結果は,観測値から大きくずれているものもあり,設計波算定あるいは極値統計に本システム波浪推算を用いる場合には,観測データとの照合が必要である。
図-13は,過去に港湾設計波調査などで実施した面的な波浪推算値と観測値の最大有義波高に関する相関の一例である。推算手法としては,Cardonの風推算と面的なMRI法による波浪推算を組み合わせたモデル(スペクトル法)と傾度風推算と井島により開発された追跡型有義波法(有義波法)である。ここに,Cardonの風推算モデルとは,傾度風モデルに気温・水温差および温度風の効果を考慮した方法であり,スペクトル法は100km格子,有義波法は1°格子による推算である。本システムの相関結果である図-11および図-12を面的な波浪推算の相関結果の図-13と比較すると,両者の相関データのばらつきは同じ程度であり,単地点出力型波浪推算システムは面的な波浪推算モデルと遜色のない推算精度を有することがわかる。
一方,観測有義波周期と本システムで推算した有義波周期の最大有義波高出現時に関する相関を調べたものが図-14および図-15である。図-14が台風モデル推算,図-15が傾度風モデル推算に関するものである。最大有義波高と同様に,両者に比較的良い相関があり,有義波周期単地点出力型スペクトル法による波浪推算システムの推算精度も良好であることがわかる。
4.2演算時間
推算対象地点によって陸地の遮蔽範囲が変わるため計算する波向線数が異なり,演算時間に影響を及ぼすが,平均的な演算時間をまとめると表-4で表される。表は,5日間の気象擾乱を想定して推算法,計算機による違いについて調べたものであり,参考のため山口らのモデルに関しても比較している。
使用する計算機種により異なるが,現状の32ビットパーソナルコンピュータを用いると台風モデル推算が2分程度で終了し,台風による高波の予測に十分に活用できることがわかる。また,面的な波浪推算モデルに比べ,本システムは1/100程度に演算時間が短縮される。一方,傾度風モデル推算は,気圧データの格子点補間に時間がかかるため,全体で60分程度の演算時間となる。したがって,傾度風モデル推算は,波浪予測の手段として考えるのは難しい。先に述べたように多数の気象擾乱を複数の地点に関して連続的に推算できるようにバッチプログラムを構成しており,波浪災害の原因究明や港湾設計波の概算調査など波浪追算の手段として活用できると考えられる。なお,最新の山口らの台風モデル推算と比べ,本システムは2倍程度の推算速度を有している。

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図-11 最大有義波高に関する観測値と推算値の比較(台風モデル推算)
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図-12 最大有義波高に関する観測値と推算値の比較(傾度風モデル推算)
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図-13 最大有義波高に関する観測値と推算値の比較(従来の面的波浪推算)
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図-14 最大有義波高出現時の有義波周期に関する観測値と推算値の比較(台風モデル推算)
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図-15 最大有義波高出現時の有義波周期に関する観測値と推算値の比較(傾度風モデル推算)
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表-4 演算時間の比較

5.まとめ

本報告では,パーソナルコンピュータを対象とした単地点出力型推算システムを開発し,現地への適用性に関する検討を行なった。得られた主要な結論を挙げると以下のようになる。
(1)パーソナルコンピュータ程度の能力で,簡便に波浪予測・追算ができる沖波を対象とした波浪推算システムを開発した。この推算システムは,現地港湾事務所などで台風による高波予測,波浪災害の原因究明や港湾設計波の概算調査に活用できる。
(2)台風モデル推算においては,台風定数データベースを用いた波浪追算および気象庁の台風予報を利用した波浪予測が短時閻で可能である。また,傾度風モデル推算では,台風以外の気象擾乱に関しても気象図処理システムおよび気象図データベースを利用したシステム化された一連の波浪推算が可能である。
(3)本システムを用いた波浪推算の精度は良好であり,面的な波浪推算の精度に比べ遜色がない。ただし,台風モデルおよび傾度風モデルの風推算には多くの問題が残されているため,推算結果の利用に際しては観測波浪との照合をするなど注意が必要である。
(1992年3月31日受付)

謝辞

本研究を実施するにあたり,小舟浩治前海象観測研究室長,永井紀彦海象観測研究室長,亀山豊海洋エネルギー利用研究室研究官の指導・助力を得た。また,システムの構築にあたり,株式会社エコー柴木秀之氏および財団法人気象協会関西本部森田務氏の協力を得た。ここに記して謝意を表す。

参考文献

1) Isozaki, I. and Uji: Numerical prediction of ocean wind waves, Papers in Met. and Geophys., Vol.23 (4), pp.347〜3569, 1973.
2)山口正隆・畑田佳男・大福学・宇都宮好博:パーコンを利用した深海波浪推算モデルとその適用性-エネルギー平衡方程式に基づく方法-,自然災害率学,6-3,pp.1〜10,1987.
3)山口正隆・畑田佳男・早川淳・宇都宮好博:パーソナルコンピュータを利用した現場用波浪推算モラル,土木学会論文集,第405号/II-11,pp.259〜262,1989.
4)Fujita,T.:Pressure distribution within typhoon,Geo.Mag.23,pp.437〜451,1952.
5)気象庁海洋気象部・東京都港湾局:東京湾高潮総合報告,1962.
6)大西行雄:スプライン法を用いた2次元補間につして,Jour.Oceanograph.Soc. Japan,Vol.31,pp.259〜264,1975.
7)安中正・土屋義人・光田寧・藤井健・大下哲則:スプライン法を用いた海上風推算における気圧データ作成方法,土木学会第32回海岸工学講演会論文集,pp.134〜138,1985.
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9) Uji. T. : Acoupled discrete wave model MRI-2, J.Oceanogr. Soc. Japan, Vol.40, pp.303〜313,1984.
10)山口正隆・土屋義人:有限風域場における波浪の数値予知法,第26回海岸工学講演会論文集,pp.96〜100,1979。
11)Kawai, S., P.S.Joseph and Y. Toba : Prediction of ocean waves based on the single-parameter growth equation of wind waves, J. Oceanogr. Soc. Japan, Vol.35, pp.151〜167, 1979.
12)後藤智明・小舟浩治:現地で簡単にできる波浪推算法について,土木学会第35回海岸工学講演会論文集,pp.222〜226,1988a

主要記号表

A:Phillipsの共鳴理論による発達係数(m^2/s^2)
B:Milesの不安定理論による発達係数(s^-1)
C_g:群速度(m/s)
D:減衰係数
g:重力加速度(m/s^2)
H_1/3:有義波高(m)
P:台風の中心から距離rでの気圧(mb)
P_c:中心示度(mb)
r:台風の中心からの距離(m)
r_0:台風定数
S(f):周波数スペクトル(m^2/s)
S_PM:平衡スペクトル(m^2/s)
T_1/3:有義波周期(s)
V:傾度風速(m/s)
V_1:海上風速(m/s)
V_2:場の風速(m/s)
V_T:台風の移動速度(m/s)
\lambda(\theta):方向分布関数

REPORT OF THE PORT AND HARBOUR RESEARCH INSTITUTE Vol. 31, No. 5 (Mar. 1993) 5. Multiple Regression Wave Forecast Models Described in Physical Parameters - Chiaki GOTO* Hidenori SHIBAKI** Toshio AONO***

Synopsis

The Multiple Regression wave forecast models described in physical parameters, named MRPH models, are developed. In the MRPH models, ocean waves are described by two representative waves: wind waves and swells. The propagation speed of each wave components assumed to be constant. From these assumptions, governing equations of the MRPH models are expressed as linear algebraic equations. Explanation variables are energy of wind waves and swells in each direction.
To verify the MRPH models, wave forecast was carried out for three ports in Japan, The MRPH models were confirmed to have a greater accuracy in forecasting than any other models. The MRPH models also solve the difficult problem of eliminating the delay time of predicted values to observed ones which often appears at the initial stage of wave growth in the conventional multiple regression mdels. The MRPH models maintain a high level of accuracy even in the case of long term wave forecasting. Furthermore, the MRPH models are able to predict items which can not be predicted by the. existing statistical models such as wave period, direction, and the component value of wind waves and swells.
Key Words: Wave forecast model, multiple regression models, physical factors, wave hindcast models.

*Chief, Ocean Energy Utilization Laboratory, Hydraulic Engineering Division.
**Research Trainee, (ECOH Co., Ltd.), Ocean Energy Utilization Laboratory, Hydraulic Engineering Division.
***Ocean Energy Utilization Laboratory, (National Institute Post Doctral Fellow), Hydraulic Engineering Diovision.

港湾技術研究所報告 第31巻 第5号(1992.12) 5.物理因子重回帰波浪予測モデル 後藤智明*・柴木秀之**・青野利夫***

要旨
 港湾建設の施工管理から船舶の航行,海洋性レクリェーションに至る幅広い海洋活動における安全性の確保には,的確な波浪予測情報の提供が不可欠である。従来より,波浪予測を目的として用いられてきた手法として波浪推算モデル,統計モデルがある。しかしながら,波浪推算モデルでは,推算結果をそのまま予測値とすることに波浪予測精度上の問題があり,また,重回帰波浪予測モデルでは,予測波高の立ち上がりの遅れや長期予測に対する予測精度の低下といった実用化を考える上で多くの課題が残されていた。
 本研究では,これらの問題を克服するための新たな手法として,波浪推算モデルと統計モデルのそれぞれの長所を組み合わせた物理因子重回帰モデルを提案し,その予測理論を述べるとともに,現地へ適用した結果と予測精度に関する考察を行った。得られた結論は以下の通りである。
(1)物理因子重回帰モデルは,本来なら微分方程式で記述される波浪の発達,伝播,減衰を,代数方程式に書き換え,係数を回帰的に算定し,これを波浪予測式としている。
(2)物理因子重回帰モデルによる出力緒元は,有義波高,有義波周期のみならず,波向,風波とうねりそれぞれの相当有義波高,相当有波周期,成分波波向である。
(3)予測モデルAの係数は,期間が長いほど次第に平均的な値になる傾向を有する。また,モデルBの短期予測式の係数は観測波浪に強く依存する傾向を持つが,長期予測では依存度は低下する。
(4)物理因子重回帰モデルは,従来の手法に比べ良好な予測精度を有し,重回帰モデルの大きな欠点であった予測値の時間遅れの問題を解決している。また,長期予測についても,重回帰モデルのように著しく予測精度が低下する問題もない。
キーワード:波浪予測モデル,重回帰モデル,物理因子,波浪推算モデル

*水工部海洋エネルギー利用研究室長
**水工部海洋エネルギー利用研究室研修生(株式会社エコー)
***水工部海洋エネルギー利用研究室(科学技術特別研究員)

Contents

Synopsis 135
1.Introduction 139
2.Theory of wave forecasting 139
2.1Assumptions 139
2.2Model A 141
2.2.1Forecasting theory for significant wave height 141
2.2.2Forecasting theory for significant wave period 143
2.3Model B 144
2.4Consideration of sheltering effects 145
3.Application of MRPH models 145
3.1Locations of wave forecasting 145
3.2Duration for multiple regression analysis 145
3.3Forecasting of marine surface winds 145
3.4Identification of regression coefficients 146
3.5Forecasting result for significant wave 147
3.5.1Predicted significant wave 147
3.5.2Predicted components both wind waves and swells 150
4.Accuracy of wave forecasting 150
5.Conclusion 152

1. Introduction

Reliable wave information is indispensable for maintaining safe ocean activities such as the construction of maritime structures, the navigation of ships, marine recreation, etc..
Especially, in managements of port and harbor construction works, it is important to develop a reliable wave forecasting system.
Recently, numerical wave hindcast modelsl).2).3)based on an energy equilibrium equation have been used for the wave forecasting. However, such wave hindcast models have some problems concerning accuracy. A major object of wave hindcast models are the hindcasting of very high wave height ranging 4.0 m - 15.0 m which is encountered in a typhoon or monsoon. But the low wave height is most important in wave forecasting as this pertains to the critical height (0.5 m - 1.5 m) for maritime works. Both the verification of equations and the determination of any parameters are carried out on such high wave height conditions. Furthermore, results of wind hindcasting are inaccurate in lower wave height condition so wave hindcasting is still not satisfactory.
As alternative to wave hindcast models, statistical models (for example, multiple regression model4),5)s)) have been proposed. An advantage to using statistical models is that equations are expressed as multiple regression forms so that the wave height in present time, the wind velocity and the pressure are members of variables, thereby allowing the calculation to be readily carried out without any special knowledge. However, owing to the strong reliance on observed wave height in statistical models, predicted wave height is subject to delay. Furthermore, the accuracy of wave forecasting decreases with long term wave forecasting. There are many difficulties for practical use.
In this study, a new model which departs from conventional methods is proposed: Multiple Regression wave forecast models described in Physical parameters (MRPH). The MRPH models hold advantages over both the wave hindcast model and the statistical model.
The proposed MRPH models consist of two different models, Model A and Model B. Model A describes each process of wave growth, wave propagation and wave decay, and is a kind of wave hindcast model. The main difference between Model A and conventional wave hindcast model is that the governing equations of Model A are expressed by a set of algebraic equations, while the wave hindcast model is expressed by a set of partial differential equations. As the governing equations of the model are expressed by a set of algebraic equations, the coefficients contained in the model can be identified by the comparison between calculated wave energy and observed wave energy explicitly. Furthermore, the forecasting results are more accurate.
Model B is formulated on the basis of Model A, but is modified to decrease the prediction error by considering the difference in the predicted and observed wave energy every forecasting hour and in the changing rate of wave energy.
As compared with multiple regression models, the coefficients of both Model A and B are able to be understood physically. And output constitutent of these models is not only significant wave height and period, but also representative wave direction predicted by evaluated wave energy distribution on each wave direction, and the component value of both wind waves and swells.

2. Theory of wave forecasting

2.1 Assumptions
In order to formulate multiple regression models described in physical parameters, the following assumptions are applied to wave growth, wave propagation and wave decay.
The growth of wave height is described with 1/2 power law for nondimensional significant wave height and fetch, and wave period with 1/3 power lawn for nondimensional significant wave period and fetch. As shown in Fig. 1, wave rays propagate radially in sixteen directions centered to the location of wave forecasting. Wave growth and decay go on independently on each ray.
Essentially, wave propagation speed varies depending on wave growth, but in these models, waves are described by two wave components: wind waves and swells. The wave period and the propagation speed for each wave component are assumed to be constant.
The propagation of wind waves and swells is described by each characteristic line as shown in Fig. 2. In these models, from the consideration of the wind prediction with six hour intervals, the optimum period of wind waves and swells is chosen. Specifically, significant wave period of wind waves is 6.9s (5.9s: mean wave period) based on the assumption that wave propagates 200 km per 6 hours. As for the swells, significant wave period is 13.8s (11.9s: mean wave period) and wave propagates 200 km per 6 hours.
Furthermore, wave decay is treated similar to Bretshneider’s equation8). Namely, in regions of favorable wind, decay of wind waves does not occur until the wind energy equilibrium is attained. For wave going away from wind field or a wave coming into the adverse wind field, the energy of swells decays in inverse proportion to propagation distance, and the period of swells increases in proportion to propagation distance.
2.2 Model A
2.2.1 Forecasting theory for significant wave height
From above assumptions, by using 1/2 power law for nondimensional wave height and fetch, equation of wind wave development is described as follows:
(1)
where H_1/3 is a significant wave height, U the wind velocity at a height of 10 m above sea surface, F a fetch, g the gravity acceleration, respectively.
Then, energy equation of wind waves is
(2)
where \epsilon is energy of wind waves. Equation (2) is the governing equation for wind wave development in this study. And energy distribution in each direction of wind waves is assumed to always maintain a similar profile, thus,
(3)
where E(q) is energy component of wind waves which propagates from the direction of \theta, \lambda(\theta) is a directional distribution function defined as:
(4)
where \lambda_0, is a normalized coefficient that satisfies the following relation
(5)

From Eq. (2),(3),(4) and (5), the energy of wind waves in each direction is
(6)
In an arbitrary wave direction, wind energy U^2\lambda(\theta) on characteristic line of wind waves is described as shown in Fig. 3. In a certain wave direction J, considers the case of wind waves growing between I=1 and I =N_w within the grid points from I=1 to I=N. From Eq. (6), energy of wind waves is noted as follows.
In direction J, energy of wind waves at I= N_w is E(N_w, J) = 0, thus E(Nw-1, J) at I = N_w -1 is
(7)
where \Delta{F} is the distance between adjacent grid points. Similarly, energy of wind waves at I = N_w- 2 is
(8)
where F_\gamma is equivalent fetch so that energy of wind waves at I = N_w - 1 is E(N_w - 1, J) under the condition that component of wind energy is U(Nw- 2, J)2X(Nw- 2, J), and written as follo
(9)
By substituting Eq. (9) into Eq. (8), Eq. (8) is rewritten as:
(10)
Similar arrangements are carried out from I =N to I = 1, and energy of wind waves in direction J is expressed as:
(11)
and the wave energy in all directions is as follows:
(12)
where B_w is the coefficient nearly equal to A\Delta{F} and is defined as results of regression analysis between calculated wave energy and observed wave energy.
By considering the case that wind waves are transformed to swells and propagate between I = N_s and I = N_E, as shown in Fig. 4, initial energy of swells is equivalent to that of wind waves at I = N_s, so the following equation is obtained,
(13)
Swells are assumed to decay in inverse proportion to the propagation distance, so energy of swells at I = 1 is
(14)
where A」 is the same kind of coefficient to A in Eq. (6). According, total energy of swells in all directions is summed up as follows:
(15)
where B_s is the coefficient nearly equal to A」\Delta{F}, and is defined the same as B_w in Eq. (12).
From Eq. (12) to (15), total energy of wind waves and swells at I = 1 is
(16)
where [\epsilon]_f is the predicted wave energy. Conversion of predicted wave energy to the sigcant wave cant wave height is carried out by Eq. (17).
(17)
2.2.2 Forecasting theory for significant wave period
By using 1/3 power law for nondimensional significant wave period and fetch, the growth of wind waves in period is expressed as:
(18)
By raising both members of Eq. (18) to 3th power, the following equation is obtained.
(19)
where \tau is a significant wave period to the 3th power, and is defined as a characteristic period in this study.
Similar to 2.2.1, the directional distribution function \lambda(\theta), as Eq. (4), of the characteristic period is defined. From this, Eq. (19) is able to be rearrenged, so characteristic period in each direction is
(20)
In a similar manner as with the wave height, characteristic period of wind waves in all directions is described as follows:
(21)
where D_w is the coefficient nearly equal to C\Delta{F}, and determined as the result of regression analysis similar to the case of wave height.
Period of swells is assumed to increase in proportion to the propagation distance, so characteristic period of swells in all directions is,
(22)
where D_s is the coefficient that is defined the same as D_w in Eq. (21).
From Eqs. (21) and (22), characteristic period at the location of wave forecasting is described as:
(23)
where predicted characteristic period [\tau] _f is defined as a weighed average value of wave energy in each direction. Conversion from the characteristic period to the significant wave period is carried out by Eq. (24).
(24)
2.3 Model B
Model B is formulated on the basis of Model A. However, Model B has a funciton to minimize the difference between calculated and observed wave energy at every calculating stage. The wave prediction error Er brought by Model A is not Gaussia, but may be caused by any opther physical factors. The factors related to the wave prediction error are the difference between calculated and observed wave energy at present time, and the changing rate of calculated wave energies.
From above consideration, the wave prediction error is described as follows:
(25)
where E_w(J) and E_s(J) are calculated energies of wind waves and swells at the forecasting time, respectdively, and E_wb(J) and E_sb(J) are calculated energies at the present time. The symbol [\epsiolon]_Mb is observed wave energy at the present time. By assuming error as written in Eq. (25), the equation of Model B is formulated as follows:
(26)
where five coefficients in Eq. (26) are defined by the regression analysis similar to Model A.
As for characteristic period of Model B, the following equation is described.
(27)
2.4 Consideration of sheltering effects
In case of adapting the MRPH models to coastal locations, the consideration of sheltering effects by lands is important. In this study, since the coefficients in each direction are equivalent, sheltering effects are considered in the following way.
Correctional coefficients for each calculated energy of wind waves (E_w(J)) and swells (E_s(J)) are introduced and adopted according to sheltering rate by lands and capes. For the wave rays toward land shorter than 100 km, correctional coefficients are also carried out by multiplying the energy by the coefficients in proportion to distance.

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式(1〜27)
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Fig. 1 Schematic diagram of the location of wave forecasting and wave rays radially
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Fig. 2 The characteristic lines of propagation for wind waves and swells in any direction
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Fig. 3 Schematic representation of wind energies distribution on the characteristic line on wind waves propagation
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Fig. 4 Schematic representation of wind energies distribution on the characteristic line of swells propagation

3. Application of MRPH models

3.1 Locations of wave forecasting
Long-term wave observation data is required for the application of the MRPH models at the location of wave forecasting. In this study, three ports are selected for the wave forecasting: the port of Hitachinaka, the port of Mutsu-ogawara facing the Pacific Ocean, and the port of Fukaura facing the Japan Sea.
3.2 Duration and Schedule of multiple regression analysis
The forecast analysis is scheduled from February 1th to 28th, from May Ith to 31th, from August 1th to 31th, from November Ith to 30th in 1983, and from January 17th to February 28th, from April 17th to May 16th, from August 1th to 31th, and from September 27th to October 24th in 1989. These time periods incorporate the four seasons, and total duration is 252 days (about 8 momths).
3.3 Forecasting of marine surface winds In MRPH models, marine surface wind at a height of 10 m is the necessary input data for the calculation of wave energy. In this study, calculation process of marine surface wind is as follows:
1. Evaluate atomspheric pressure distribution on grid points from isobalic line by using the typhoon wind model.
2. Evaluate wind by using the hybrid model combined with the gradient wind model and the typhoon wind model.
3. Convert evaluated wind into marine surface wind by the atmospheric boundary layer model9).
3.4 Identification of regression coefficients
In order to determine the regression coefficients in the MRPH models, multiple regression analysis is carried out at the port of Hitachinaka, the port of Mutsu-ogawara, and the port of Fukaura. Identification of regression coefficients is performed for each of the eleven different time period, namely, one for each month, in February, May, August, November of 1983, January to February, May, August, from September to October of 1989, and for four months in 1983 and in 1989, and for eight months in all.
Figure 5 shows eleven series of regression coefficients for wave height of wind waves and swells which are calculated by 12 hours wave forecasting Model A, at the port of Hitachinaka. In case that the duration of identifying the coefficients is one month, obtained coefficients differ from each duration remarkably. In the case of four months, obtained coefficients are close to the average value over the case of one month.
Furthermore, in the case of eight months, obtained coefficients show approximately the average value over the case of four months in 1983 and in 1989. Therefore, the regression coefficients are gradually approaching the average values as the duration of analysis are longer. Because the coefficients for eight months are approximately the same as thoes for four months, it is expected that the difference of coefficients between the case of eight months and a case of longer duration would only be slight.
Figure 6 shows the regression coefficients for wave height by Model B. Wave forecasting term using Model B is 6 hours, 12 hours, 24 hours, 36 hours, 48 hours, 72 hours (3 days), 120 hours (5 days), 168 hours (one week) and regression coefficients are identified for the duration of eight months. As in Fig. 6, the value of the coefficient related to observed significant wave height at the present time shows high contribution (0.6 - 0.8) in the short term wave forecasting. Namely, the value from 60% to 80% of the-predicted wave height is related to observed wave height at the present time. The coefficients, which are related to calculated wave energy of wind waves and swells at the prediction time, are positive. In contrast, the coefficients, which are related to the present time, are nearly equal to zero or negative. Furthermore, as the forecasting term becomes longer, there is a tendency for coefficients which were related to observed wave height at the present time to decrease, and for coefficients which were related to other variables to increase. This means that the predicted results strongly depend on observed waves in the short term wave forecasting. On the other hand, in the long term wave forecasting, the dependence on observed waves is weak and the dependence on the other explanation variables is strong. To make wave forecasting over a long term, such as after 120 hours or 168 hours,regression coefficients tend to gradually approach Model A.
3.5 Forecasting result for significant wave
3.5.1 Predicted significant wave
Forecasting of significant wave height and period is carried out over a period of eight months, in which the coefficients in equations of Model A and B are identified by regression analysis.
Figure 7 shows the comparison of predicted significant wave with observed one for 12 hours wave forecasting using Model A at the port of Hitachinaka in February of 1983. Figure 8 shows the predicted significant wave far 12 hours wave forecasting using Model B, and Fig. 9 shows 168 hours wave forecasting (long term wave forecasting), at same location and same duration in Fig. 7. These figures also show the predicted wve direction.
As in Fig. 7, the difference between predicted wave height and observed one is noticed near the peak during stormy wave conditions, but predicted wave height agrees approximately with observed one in the duration of both stormy waves and calm waves. As for the wave period, the predicted result is not in agreement with the observed one, but for a long term trend, the predicted result falls within acceptable engineering limits. As in Fig. 8, the predicted waves for 12 hours wave forecasting using Model B are in good agreement with the observed ones. As in Fig. 9, the predicted wave for 168 hours wave forecasting using Model B are similar to those in Fig. 7. Namely, the predicted waves sing Model B tend to approach those using Model A as the wave forecasting term is longer.
Figure 10 shows the example of the 12 hours wave forecasting using conventional mulutiple regression model at the porgy of Mutsu-ogawara. In this figure, from the comparison of predicted significant wave’height with that which was observed, delay time appears in the predicted wave height at the initial stage of stormy wave condition from 20th to 21th May, which is equal to wave forecasting term. On the other hand, as shown from Fig. 7 to Fig. 9, the predicted wave height using the MRPH models agrees approximately with the trend of observed wave height.
Figures 11 and 12 show the comparison of predicted significant wave with observed signi- ficant wave for 12 hours wave forecasting using Model B, at the port of Mutsu-ogawara and the port of Fukaura, respectively. As in Fig. 11, the predicted waves agree with the observed ones at the port of Mutsu-ogawara. However, at the port of Fukaura, in Fig. 12, the degree of agreement with predicted waves and observed ones is not sufficient. In case of the port of Fukaura, wave forecasting is conducted during winter when stormy waves prevail on the Japan Sea. The wave component is mostly occupied wind wave components, and are affected con- siderably by the local wind fields near the location of wave forecasting. Therefore, for the improvement of the wave forecasting accuracy at any location facing the Japan Sea, it is necessary to improve the hindcasting method of stormy wind attacking locally and periodically.
3.5.2 Predicted components both wind waves and swells
Figure 13 shows the evaluated significant wave height and period of wind waves and swells, respectively, with wave direction of each component for 12 hours wave forecasting using Model B. The location and the duration at Fig. 13 is same as in Fig. 8. There are no methods to sort wind waves from swells in observed wave data, so a quantitative comparison is not possible. However, by considering the topography around the port and characteristics of wind waves and swells, it is presumed that each time series of wave height, period and wave direction indicates interesting physical tendencies. The direction of compounded wave agrees with that of wind wave component during wave growth. While during wave decay and calm waves, the direction of compounded wave agrees with that of swell component. Judging from the equivalent wave height, wind wave component is highly occupied in the duration of maximum growing wave, on February 17th. On the other hand, swell component is highly occupied in the duration of wave decaying, on 20th to 21th, February. Also each predicted component of equivalent wave period shows that swell components are mostly longer than those of wind waves for about one month shown in the figure, and that the period of wind wave component approuches that of swell component only at the time of occuring maximum wave height in this duration.

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Fig. 5 Relation between regression coefficients and the duration of identification for significant wave height forecasting using Model A
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Fig. 6 Relation between regression coefficients and forecasting time for significant wave height forecasting using Model B
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Fig. 7 Wave forecasting results and observed wave data at the port of Hitachinaka using Model A (12 hours wave forecasting)
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Fig. 8 Wave forecasting results and observed wave data at the port of Hitachinaka using Model B (12 hours wave forecasting)
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Fig. 9 Long term wave forecasting results and observed wave data at the port of Hitachinaka using Model B (168 hours wave forecasting)
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Fig. 10 Wave forecasting results and observed wave at the port of Mutsu-Ogawara using conventional multiple regression model (12 hours wave forecasting)
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Fig. 11 Wave forecasting results and observed wave at the port of Mutsu-Ogawara using Model B (12 hours wave forecasting)
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Fig. 12 Wave forecasting results and observed wave at the port of Fukaura using Model B (12 hours wave forecasting)
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Fig.13 Characteristics of wind waves and swells at the port of Hitachinaka using Model B

4. Accuracy of wave forecasting

The fitting rate of wave forecasting on wave height is defined as a probability that the predicted result is included in a permissible error range ofア0.3 m within therange of waveheight between 0.0 m and 1.0 m, orア3 0 % ofboserved waveheight greater than 1.0 m. In the case of wave period, the fitting rate is defined as the portion ofア30 % error rangeto observed value all over the range.
Figure 14 shows the fitting rates evaluated from eight kinds of wave predicted results using Model A and B at three ports: the port of Hitachinaka, the port of MutsuOgawara and the port of Fukaura. As in Fig. 14, the fitting rates show a tendency to decrease with the longer term wave forecasting, from 6 hours to 168 hours. However, the fitting rates in the case of 168 hours wave forecasting using Model B approach the same level of Model A.
As stated in 3.4, this tendency is able to explain that predicted values depended weakly on observed waves, and that the equations of Model B approach those of Model A with the longer forcasting term.
Therefore, the accuracy of long term wave forecasting using Model B tends to approach that of Model A, and if the forecasting accuracy of Model A is enhanced, then the accuracy of long term wave forecasting would be improved correspondently.

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Fig.14 The fitting rate of significant wave height and period using the MRPH models (Model A and B)

5. Conclusion

In this study, Multiple Regression models described in Physical parameters, named MRPH models, are newly developed. These models include advantageous points of both wave hindcast model and statistical model. The results of this study may be summarized as follows.
(1) In the MRPH models, ocean waves are described by two representative waves:
wind waves and swells, and the propagation velocity of each wave component is assumed to be constant. From these assumptions, governing equations of the MRPH models are expressed as algebraic equations, though wave growth, wave propagation and wave decay are essentially described as partial differential equations. The coefficients of algabraic equations can be obtained by regression analysis to minimize the error between calculated wave energy and observed one.
(2) Explanation variables in the MRPH models are energy of wind waves and swells in each direction. Predicted factors are not only significant wave height and period but wave direction, and the component of value both wind waves and swells, which have not been predicted by existing statistical model.
(3) Parameter fitting of the wave forecasting equations is carried out to the three ports: the Port of Hitachinaka, the Port of Mutsu-Ogawara and the Port of Fukaura. The verification of the characteristic of regression coefficients is also carried out to the same ports. From this verification, the coefficients in the equation of Model A are modified with each duration of identification, but these values approach the average value with longer duration. The coefficients in the equation of Model B for short term forecasting show remarkable dependence on observed wave. As compared with this, the coefficients for long term wave forecasting decrease with longer forecasting term, and show a lower dependence on observed wave.
(4) The MRPH models show greater accuracy of forecasting than the existing wave forecasting models, and solve the difficult problem of removing delay time during the initial stage of the waves growth. The MRPH models don’t decrease the forecasting accuracy even in the case of long term wave forecasting. The MRPH models are expected to hold the dominant positions in wave forecasting in the near future.
(Received on August 31, 1992)

References

1) WILSON, B.W.: Numerical prediction of ocean waves in the North Atlantic for December, Deut. Hydgr., Vol. 18, pp. 114-130, 1965.
2) ISOZAKI, I AND T. Uji: Numerical Model of Marine Surface Winds and Its application the Prediction of Ocean Wind Waves, Papers in Met. and Geo, Vol. 25, No. 3, Sep. 1974.
3) YAMAGUCHI, M. AND Y. TSUCHIYA: Wave Prediction Methods in Limited Wind Fields,Pro. 26th Conf. Coastal Eng., JSCE, pp. 96-100, 1979. (in Japanese)
4) SUDA, K AND A. YUZAWA: Study on Wait Matrix of Seabase at Open Sea based on wave forecast. Proc. of JSCE, No. 339, pp. 177-185, 1983. (in Japanese)
5) KOBUNE, K, N. HASHIMOTO, K. KAMEYAMA, M. KUDAKA: Applicability of Wave Forecasting Using Multiple Regression Methods, Proc. 34th Con. Coastal Eng., JSCE, pp. 167-171, 1987. (in Japanese)
6) KOMAGUCHI, T, N. SHINDO, N. KAWAI AND K. KIMURA: Applications of Wave Forecasting Methods in Managements of Construction Works, Proc. 38th Conf. Coastal Eng., JSCE, pp. 961-965, 1991.
7) GOTO, C, K. SUETSUGU AND K. KOBUNE: Investigation of the Wind Stress and Wave Growth Formulas, Proc. 38th Con. Coastal Eng., JSCE, pp. 170-174, 1990. (in Japanese)
8) BRETSCHNEIDER, C.L.: Decay of Wind Generated Waves to ocean Swell by Significant Wave Method, Fundamental of Ocean Engineering, 8, Ocean Industry, 1968.
9) SHIBAKI, H. AND C. GOTO: Dependence of Surface Wind on Inland Sea for Wind Driven Length and Land Topography, Proc. 40th Coastal Eng., JSCE, 1992.
(in Japanese)

List of Symbols

A : a /g a coefficient which relates to growth oh wind waves
A 」:  a coefficient which relates to growth of swells
a : squared on a」
a」: a coefficients of 1/2 power law
B_M : a coefficient which relates to observed wave energy at the present time
B_S : a coefficient which relates to calculated energy of swells at the forced time
B_Sb : a coefficient which relates to calculated energy of swells at the present time
B_w : a coefficient which relates to calculated energy of wind waves at the forecast time
B_wb : a coefficient which relates to calculated energy of wind waves at the present time
C : c/g^2
c : value of raised c」 to 3th power
c」 : coefficient of 1/3 power law
D_M : a coefficient which relates to observed wave period at the present time
D_S : a coefficient which related tob e calculated period of swells at the fore-
cast time
D_Sb : a coefficient which related to e calculated period of swells at the
forecast time
D_w : a coefficient which related to be calculated period of wind waves at the
forecast time
D_wb : a coefficient which related to be calculated period of wind waves at the
present time
E_r : prediction error of model A
E_r」 : prediction error of model B
[E_S(J)] : calculated energy of swells in J direction at forecast time
[E_Sb(J)] : calculated energy of swells in J direction at present time
[E_w(J)] : calculated energy of wind waves in J direction at forecast time
[E_wb(J)] : calculated energy of wind waves in J direction at present time
E_w(N_w,J) : initial energy of swells in J direction at N_w
E(\theta) : energy of wind waves in each direction
F : fetch
F_T : equivalent fetch
g : gravity acceralation
H_1/3 : significant wave height
U : marine surface wind velocity
T_1/3 : significant wave period
[T_w(J)] : characteristic period of wind waves in J direction at forecast time
[T_wb(J)] : characteristic period of wind waves in J direction at present time
[T_S(J)] : characteristic period of swells in J direction at forecast time
[T_Sb(J)] : characteristic period of swells in J direction at present time
T(\theta) : characteristic period of wind waves in each direction
\epsilon : energy of wind waves
[\epsilon]_f : total energy of wind waves and swells at forecast time
[\epsilon]_Mb : energy of observed wave at present time
[\epsilon]_M_S : total energy of swells in all directions at forecast time
[\epsilon]_w : total energy of wind waves in all directions at forecast time
\theta : wave direction

港湾技術研究所報告 第32巻第1号(1993.3) 3.沿岸域における風波の周波数スペクトルと無次元パラメータの特性 -ハイブリッドパラメータ法による波浪推算モデル(第2報)- 後藤智明*・青野利夫**

要旨

海上風と風波の関係を明らかにし,新たな波浪推算モデルの開発のための基礎的な知見を得るため,大阪湾および日本沿岸における観測データを基に有義波諸元,風波の抵抗則,風波の平均的な周波数スペクトル形に関する検:討を行った。得られた主要な結論は,以下のとおりである。
(1)風波においては,無次元波高と無次元周期間の経験則である3/2乗則が精度良く成立する。また,浅海域では,浅水係数を考慮することにより3/2乗則が拡張される。
(2)風波スペクトルの高周波域での特性は3/2乗則と矛盾しない形で-4乗則に従う。
(3)深海域における風波スペクトルの形状は,発達過程でピーク周波数付近のエネルギーレベルが高く,フェッチの増大に伴う風波の平衡状態への移行と共にエネルギーが広がりPierson・Moskowitzスペクトルに漸近する。
(4)風波の周波数スペクトル標準形として,3/2乗則と整合性のあるJONSWAP型の式を提案した。提.案した標準形は,有義波高と有義波周期のみによってそのスペクトル形が算定され,その精度はBretschneider-Mitsuyasuスペクトルよりも高く,発達および平衡状態にある風波でかつ深海域および浅海域に対して適用できる。
キーワード:風波,3/2乗則,有効風速,周波数スペクトル,-4乗則,標準形

* 水工部 海洋エネルギー利用研究室長
** 水工部 海洋エネルギー利用研究室(科学技術特別研究員)

REPORT OF THE PORT AND HARBOUR RESEARCH INSTITUTE Vol.32, No.1, (Mar 1993) On The Characteristics of One-Dimensional Spectra And Non-Dimensional Parameters of Wind Waves - Wave Hindcast Model Using the Hybrid-parameter Method (2nd report) - Chiaki GOTO* Toshio AONO**

Synopsis
In order to obtain the basic knowledge on growth of wind waves, relationship between wind speed and significant wave parameters and characteristics of frequency spectra were investigated by using the data measured at Osaka Bay and 13 points along Japanese coasts. The main results were as follows :
1 . It was confirmed that the measured wind waves data were satisfied the 3/2 power low which was an empirical formula between non-dimensional wave height and period. The 3/2 power law was also extended in shallow water region by using shoaling coefficient.
2. The slope of wind wave spectra at high frequency region was approximated by a function of -4 power.
3. In growth stage, the energy density of wind wave spectra was concentrated near peak frequency band. Owing to increase fetch, it gradually approached Pier son-Moskowitz spectrum.
4. The new standard spectrum form of wind waves based on JONSWAP spectrum was obtained. The spectrum could be applied wind waves in both deep and shallow water region. The spectrum could be calculated by significant wave height and period, and agreement with measured spectrum was very well.
Key Words : wind waves, 3/2 power law, effective wind velocity, frequency spectrum, -4 power law, standard form

*Chief, Ocean Energy Utilization Labolatory, Hydraulic Engineering Division
**Ocean Energy Utilization Labolatory, (National Institute Post Doctral Fellow), Hydraulic Engineering division

目次

要旨 53
1.まえがき 57
2.既往の研究 57
2.1無次元波高と無次元周期の3/2乗則 57
2.2深海波浪スペクトル 59
2.3浅海波浪スペクトル 60
3.解析データ 62
3.1大阪湾MT局 62
3.2沿岸観測波浪 62
3.3風波とうねりの分離基準 64
4.有義波諸元と周波数スペクトル 64
4.1波高とスペクトル積分値 66
4.2周期とスペクトル積分値 68
4.3周期とスペクトルピーク周波数 69
4.4代表波とスペクトル積分値の関係 70
5.無次元波高と無次元周期の3/2乗則 73
5.1風波の無次元特性量の関係 73
5.2大阪湾MT局観測値の定式化 75
5.3有効風速 75
6.浅海・深海域の周波数スペクトル 79
6.1スペクトルの相似性 79
6.2JONSWAPスペクトル 79
6.3高周波数域のスペクトル特性 79
6.4深海域でのスペクトルパラメータの特性 80
6.5浅海域でのスペクトルパラメータの特性83
6.6周波数スペクトルの標準形 86
7.風波の標準スペクトルに関する考察 88
7.13/2乗則と標準スペクトルの関係 88
7.2有義波諸元による標準スペクトル形 89
7.3既往の標準スペクトル形との比較 89
7.4適用限界と誤差 90
8.おわりに 91
参考文献 94
主要記号一覧表 95
付録A.10m高度風速を用いた場合の風波の無次元特性量 96
付録B.超音波波高計の観測スペクトル特性 97
付録C.スペクトルパラメータの同定手法 98
付録D.スペクトルモーメント積分値と\gammaの関係 98
付録E.提案スペクトルのプログラム表示99

1.はじめに

海上風と風波の関係を明かにすることは,大気と海洋の運動量交換のメカニズムを理解するばかりでなく,港湾構造物の設計および波浪誰算モデルの改良・開発を行う上で重要な要素となる。このような目的から過去半世紀にわたって風波に関する研究が行われ多くの知見が得られている。なかでも海上風と風波の関係を示すものして代表的なものに,鳥羽1)によって提案された局所的な海上風と風波の関係を表す経験則である無次元波高と無次元周期の3/2乗則がある。ただし,用いた資料は水理実験結果であり,現地波浪に関して検討した例が少ない。また,風波波面の抵抗係数は,海上風による波への運動量供給を支配するものと考えられるが,風波の抵抗則特性は明確ではなく,3/2乗則との関係も明かではない。
 一方,発達過程にある風波のスペクトル形には,強い相似性があることが多くの研究者によって指摘されている。Phillips2)はエネルギー平衡領域の概念からf^-5則を提案している。この相似性に基づいてBretschneider一光易型3),Pierson-Moskowitzs型4)などを代表とするスペクトルの標準型が提案され,波浪推算などの代表スペクトルとして用いられている。このような標準スペクトルの多くは風波が完全に発達した状態を表現しており,急激な風波の発達期や内湾のような短フェッチ海域における波浪スペクトルには,特にピーク周波数付近でのover shoot現象を正確に表現することが難しい。そのため発達過程にある風波の標準スペクトル形としてJONSWAPスペクトルが提案されているが,スペクトルを構成する各パラメータの特性が明確でないため実用的な面で使いにくいという問題がある。
最近,鳥羽5)は無次元波高と無次元周期の3/2乗則に基づいて,スペクトルの高周波域の勾配がf^-4となること,光易6)も風波スペクトルの発達率の検討から風波に普遍的な平衡領域が存在するならばf^-4となることを示している。この風波のスペクトル形の問題は海上風-風波間の抵抗則(局所平衡理論)と密接な関係にあり,また浅海変形計算の境界条件,設計外力の評価,波浪推算手法の改良などに反映され工学的にも重要な問題であると考えられる。
上述した風波の特性に関しては,その多くが深海波を対象として議論されている。ところが,本研究で対象とする波浪観測地点の多くは水深が50m程度であり,特に高波浪時では有義波を用いた相対水深が0,5以下の浅海領域に相当する波浪データが得られ易い。このような浅海領域での海上風と風波の関係について検討した例はまだ少なく,また浅海でのスペクトル標準型として提案されているものも僅かである。
著者らは第1報7)において,短フェッチ海域に適用できる波浪推算手法としてハイブリッドパラメータ法を開発した。ハイブリッドパラメータ法は,風波に対する有義波法にうねりの推定を組み込んだモデルであり,風波スペクトルの相似性を前提としている。ただし,開発したハイブリッドパラメータ法は,風波のスペクトル相似性に関する知見がまだ不十分であるため,適用範囲が内湾のような短フェッチの領域に限られ太平洋沿岸などの領域への適用には問題があった。
本研究は,内湾である大阪湾MT局と沿岸域での波浪観測地点とで得られた波浪データに基づいて海上風と風波の関係を明らかにし,さらに膚義波諸元と周波数スペクトルの関係からスペクトル標準形を提案し,新たなハイブリッドパラメータ法の開発のための基礎的な知見を得ることを目的として行ったものである。そのため,本研究では風波の諸元に対する基礎的な検討を行い,有義波諸元とモーメント値相互の関係を明らかにする。次いで,現地波浪における3/2乗則の適用性を検討し,海上風と有義波諸元との関係,さらに有効風速の適用性を検討する。これらの結果を基にして,高周波域でのスペクトル勾配がf^-4則かf^-5則かを含め,浅海域から深海域に至る風波の発達過程でのスペクトル相似性を検証
し,最適なスペクトル形の選定と膚義波諸元によるスペクトル表示を行う。

2.既往の研究

2.1無次元波高と無次元周期の3/2乗則
(1)有義波の概念に基づく風波の表示
大気-海洋間における運動量,力学的エネルギー,熱エネルギーなどの交換に際して,大気と海洋のinter-faceとなる海面における波動-風波の関係が中心的な役割を果たすことが知られている。特に海面から流体内に流入した運動量は風波の発生・発達と流れ(いわゆる吹送流)の発生を引き起こす。風波の発達はSverdmpとMunk8)によって,ランダムな波浪場を有義波高と有義波周期という2つのパラメータを用いてモデル化することが示されている。さらに,この方法はBretschneiderによって波浪の発達を予測するSMB法として結実し,この方向での改良が進められた結果,WilsonIV式と呼ばれる推算式が得られている。このことは,本来不規則で非常に複雑な海面の変動が少数のパラメータで表現できることを意味し,風波の場が持つ相似構造を代表波を用いて取り扱う一つの基礎となっている。
(2)代表風速と抵抗則
 風波の発生・発達に対して海面から供給される運動量が重要であるが,その供給元となる海上風に関しては風波の発達則に関連して従来より10m高度風速が代表風速として用いられている9),10),11)。さらに,風波の発達機構を考慮して海面の抵抗に密接に関係する量として風の摩擦速度(後述)を代表風速として用いた研究が行われている12),13),14)。海上風と風波間の物理的機構のみを考慮すれば,より直接的な量である摩擦速度が代表風速として適していると考えられる。しかしながら,実際には,測定データに誤差が多く含まれること,また,風波の抵抗則自体に対する理解が充分でないことなどから,代表風速として摩擦速度が完全に良いとは言い切れない状況にある。
一般に,温度成層がない場合のconstant stress layerにおける風速の鉛直分布は式(1)の対数分布で近似できる。
(1)
ここに,z:鉛直座標,U(z):高度zでの風速,u_*:風の摩擦速度,\kappa:カルマン定数,z_0:海面の粗度係数である。摩擦速度はu_*=\sqrt{\tau/\rho_a}で表されここに\tau:風の摩擦応力,\rho_a:空気の密度である。摩擦応力は通常\tau=\rho_0C_D{U_10}^2のバルク公式で表現される。無次元常数C_Dは10m高度風速U_10を基準風速とした海面の抵抗係数であり,u_*とは式(2)の関係にある。
(2)
式(1)と式(2)から,式(1)での高度を10mとすれば海面の抵抗係数と粗度係数とは1対1の対応をしていることが分かる。したがって,10m高度風速と抵抗係数あるいは粗度係数が求まれば,摩擦速度が算定できることになる。
粗度係数z_0に関しては,u_*とgとによって正規化した無次元粗度gz_0/u_*^2が一般に波齢の関数となると考えられることから(Stewart15)),表2.1に示すようなz_0則と呼ばれる式が提案されている。ここに\sigma_Pはスペクトルのピーク角周波数を表す。z_0則は提案者によって種々の表現が見られ,鳥羽16)は表2.1の\epsilonが0,-1,その他の場合をそれぞれA:波に関係しないもの,B=発達しつつある風波,C:BからAへの遷移とするMultiple regimesを仮定することによって表現の多様性を説明できるとしている。
C_D則に関しては,一般に高風速時と低風速時とで異なる特性を示すことが知られている。表2.2 17)は抵抗則に関する従来の成果が示されている。抵抗則に関する特徴は,光易が指摘しているように係数値に若干の違いはあるもののZ_0則と異なり関数形がほぼ同一であることである。また,C_D則には波浪の諸元が含まれていないため,波浪とは無関係に抵抗係数が決定されるように見えるが,(3)の3/2乗則に見られるように波浪の諸元は海上風速と密接な関係にあり,海面の抵抗係数は海上風速を介して波浪と関係すると考えても良い。また鳥羽による3/2乗則の成立を前提とすると,光易によるC_D則が良好な結果を与えることが著者らによる検討から明らかにされている18)。ただし,図2.1に見られるように海面の抵抗値は大きく変動しておりC_D則自体は平均的な抵抗値を与えるものと考えられる。
海面の抵抗則の問題は,いまだ未解明な部分が多いことから風波の発生・発達機構,スペクトル構造などの解明の困難さの主要な原因の一つになっている。ただ海面の抵抗機構に関する考え方はまとまりつつあり,光易によると海面の抵抗は主として風波の高周波成分(短周期の波)によって支配されること,また風から水面へ輸送される運動量の多くが波により吸収されるがそのほとんどは乱れ・流れなどに変換され波によって運ばれるものが僅かであることが指摘されている。
(3)3/2乗則
風波に関する3/2乗則の成立は,従来からWilsonの推算式による関係があり,フェッチに僅かに依存するが代表風速をU_10とした次の関係,
(3)
が経験的に成立することが知られている7)。一方,鳥羽によって提案された3/2乗則は,風波に乱流仮説を導入し自己相似構造を仮定することによって導くことができ,代表風速を摩擦速度とした式(4)のように表現される19)。
(4)
式(4)の関係は,主要周波数帯の1波1波の風波についても成立する事力鵯羽によって指摘されている。
また,鳥羽ら20)は,有義波諸元が変化せずu_*のみが変化する場合,次元的に式(4)が〔gH/{u_*}^2〕〜〔gT/u_*]^2となることから,純粋な風波の成分にうねり性の波浪が含まれた場合に3/2乗則が歪み1.5〜2乗則に変化することを指摘している。
式(3)と式(4)が同時に成立するとして,式(2)の関係を用いると式(5)のようなC_D則が得られる。
(5)
もし,式(3)と式(4)が厳密に成立するならば,上の関係から風波の抵抗則は一定値をとることになる。しかしながら,式(3)と(4)は共に経験則であり,特に式(3)の関係を基礎とする有義波法では波浪ピーク値付近での観測値と推算値の一致度が低いという指摘があり,また風速によるC_D値の変化が表2.2に示すように実験および観測結果から得られていることを考慮す,ると高風速時の式(3)の係数B_wが定数かどうかは必ずしも明確ではない。
著者ら18)は,大阪湾MT局で観測された風データ及び波浪データを用いて,抵抗則の違いによる3/2乗則の係数の差異について比較・検討している。その結果,Wilson則とTobaのz_0則,光易のC_D則が3/2乗則の関係を精度良く満足することを示している。
2.2深海波浪スペクトル
風波のような複雑な場を表現する手法として,有義波などの代表波を用いる方法と別に,Pierson21)やNeumann22)はスペクトルを用いて風波の不規則な水位の変化を,成分波としての正弦波の重ね合わせによって表現するモデルを構築した。つまり全ての成分を自由波の集まりと考えるモデルであり,このような線形重ね合わせのモデルは解析的な取扱いが可能なことから従来より広く受け入れられてきた。現実の風波では,強制波の発生,分散関係式を満足しない周波数成分の波速などの問題があるが,弱非線形を仮定した理論展開によって問題点の説明が可能であるとしている23),24)。一方このような風波のスペクトルの解釈には批判もあり,鳥羽は風波の本質が乱流と類似の強非線形性にあるとして,スペクトルを「ある数学的な手続きの結果得られるエネルギー分布に関する一種の情報」18)と説明している。
このように,風波スペクトルの物理的な解釈には,まだ不明確な点が多く解析的な取扱いも議論が分かれている.ただし,経験的な風波の周波数スペクトルの特性については多くの観測,実験から様々な知見が得られている。特にある期間,一定の風向・風速で発達した風波のスペクトル形が相似形を保つことは,多くの研究者から指摘されている。この相似性に基づいて経験的に求められた風波スペクトルの標準形が多く提案されている。
図2.2は,今までに提案された代表的な風波の標準スペクトルに関する研究の流れを示したものである。標準形そのものはNeumannによる提案式が先行しているが,風波のスペクトル研究はPhillips(1958)による-5乗則の提案によって一気に加速されたと言って良い。その後すぐPlerson・Moskowitzによる風波スペクトルの平衡形が提案され,さらにわが国における有限フェッチでの風波の平衡スペクトル標準形ともいえるBretschneider・Mitsuyasu型が定式化され,さらに発達過程にある風波のスペクトル形としてJONSWAPスペクトルがHasselmannらによって提案されている。これらのスペクトル形は,高周波域をエネルギー平衡領域とする-5乗則で表現することにより,経験的なスペクトル形にたいして物理的な意味をもたせている。
特に、JONSWAPスペクトルは,図2.2からわかるようにPierson・Moskowitz型スペクトルに\gammaという集中化係数を掛けた式形となっており,いわばPlerson・Moskowitzスペクトルを拡張した式形で提案され,発達過程にあるエネルギーの集中度が高い風波のスペクトルを表現する標準形といえる。また,JONSWAPスペクトルはパラメータの数が5個と多く,実測値との高い適合性を有することが指摘されている。ただし,JONSWAPスペクトルのパラメータの特性はまだ未解明の点が多く実用的な面で問題が多い。
鳥羽は,砕波しない領域でも風波には高周波域での自己相似性が成立し,さらに風波の本質が乱流と類似の強非線形性にあるとする立場から,砕波が支配的となるエネルギー平衡領域の概念は誤りであるとし,3/2乗則と矛盾しない形でのスペクトル形として-4乗則を提案した。現実の風波スペクトルの高周波域特性は測定系の問題やスペクトル解析上の問題などからどちらのべき乗則に従うかよくわからない面があったが(波のスケールで考えると両者の差異はごく僅かである),最近の測定装置の精度の向上から-4乗則に従う測定例が増える傾向にある。ただし,-4乗則に従うスペクトル標準系の提案は著者らの知る限りにおいてはDonelan25)によるもののみである。最近,Phillips自身による検討から-5乗則は誤りであるとして-4乗則をあらためて提案している26)。
 光易-I型27),Darbyshire28)およびScott29)によるスペクトルは,早くから提案され,JONSWAPと同様に風波の発達過程の表現が可能なスペクトル形を有するが現在は殆ど用いられていないようである。また最近では山ロ30)による-4.5乗則に基づいた標準形が提案されている。
2.3浅海波浪スペクトル
本研究で用いる波浪データは有義波諸元から算定される相対水深が,特に擾乱の発達初期からピークにかけて0.5よりも小さくなることが多い。このようなケースでは波の浅海変形を考慮する必要がある。良く知られているように波は浅海域に進入すると浅水変形・屈折・回折の影響を受けて変形し,最終的に砕波して岸に打ち寄せられる。このような浅海域での風波スペクトルは深海域でのスペクトルに対してさらに水深hの効果が加わることになる。
有限水深における風波のスペクトルに関しては数種類の標準形が提案されているが,ここではこれらの浅海スペクトルを紹介する。比較的初期に提案されたものとしてはPierson・Moskowitzスペクトルに基づいた式(6)のBasinski・Masselスペクトル31)がある。
(6)
ここで,\bar{f}:経験公式から求められる平均的な周波数である。式(6)の右辺第1項が波の浅水変形による2次波成分に相当する。なお式(6)の2次波成分に関する項は経験的に得られたものであり,この式がわが国で用いられたことはないと思われる。
Thornton32)はPhillipsのエネルギー平衡領域のスペクトル形である-5乗則に水深hの項を加え次元解析によって次式の-3乗則を誘導した。
(7)
したがって,式(7)は浅海域におけるエネルギー平衡領域の存在を前提として成立する式であるといえる。式(7)の-3乗則は,砕波現象が本質的である砕波帯での観測結果との適合性が高いことが指摘されている。このことはエネルギー平衡領域という砕波によって波エネルギーの発達が抑制された領域の成立を前提とした式(7)が,砕波帯のような領域で成立すると考えられる。
Bouws et.al33)は有限水深での風波の周波数スペクトルの相似性を検証するため,現地観測を行い式(8)〜(10)に示されるTMAスペクトルを提案した。
(8)
(9)
(10)
ここで,S_JONSWAP(f)は沖波のJONSWAPスペクトル,kは波数,\omega_hは各周波数での相対水深に相当するパラメータ,\phi_k(\omega_h)はKitaigorodski et.alによる波数スペクトルから周波数スペクトルへの変換係数である。\omega_h<1ではTMAスペクトルの高周波側はThorntonによる式(7)と同様に-3乗則が成立する。また,\omega_h≧1では,TMAスペクトルは深海でのJONSWAPスペクトルに一致する。
以上のように有限水深における既往のスペクトル標準形は,-5乗則とエネルギー平衡領域の存在による相似性の仮定とを前提とした-3乗則が提案されている。しかしながら風波の浅海スペクトル形が既往の標準形のように-5乗則で記述されることは極浅海域である砕波帯を除いてあまり妥当性は高くなく,深海域との連続性を考慮すれば-4乗則により記述すべきであると考えられる。

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式(1〜10)
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表2.1 Z_0則に関する既往の研究
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図2.1 抵抗係数C_DとU_10の関係
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表2.2 海面の抵抗係数に関する既往の実験式
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図2.2 風波の標準スペクトルに関する既往の研究

3.解析データ

本研究で対象とした波浪観測地点は,内湾の大阪湾関西空港MT局,沿岸域の日本海側と太平洋側の代表的な13地点である。
3.1大阪湾MT局
解析に利用したデータは海上観測局(写真3.1:MT局)の超音波式波高計と10鵬高度に設置されたプロペラ型風向・風速計とによって観測されたものである。海上観測局は大阪湾泉州海岸から東方6.5㎞,水深17.5mの地点にあり(図3.1),関西空港建設のための気象・海象の経常的な観測が昭和53年から行われている。観測項目は多岐にわたり,毎正時に13分間または20分間の観測値をテレメータにより中央監視局に伝送し各台帳諸元に処理される。海上風データはサンプリング周波数0.2Hzで得られ,風速値は平均値を用い,また風向は16方位分割し最多の方位を風向とした。波浪データは,サンプリング周波数10Hzで得られる水面変動値から有義波諸元,周波数スペクトルを算定している。波の定義は,ゼロアップクロス法によって行っている。本研究で扱ったデータは,有義波諸元が1984年から1991年までの8年間分であり,周波数スペクトルは1984年から1987年までの期間で顕著な擾乱が発生した期間を抽出してスペクトル解析を行った。用いたデータの個数は,有義波諸元が70,080ケースでスペクトル解析は217ケースについて行っている。
3.2沿岸観測波浪
運輸省の港湾関係機関で観測を実施している地点は,図3.2に示すように39地点であり,本研究ではこれらの観測地点から
(a)波高計設置水深が比較的深いこと,
(b)周辺地形の影響が受けにくいこと,
(c)日本沿岸全域を網羅できること,
等を考慮して表3.凄に示す沿岸波浪観測点(13地点)を選択した。観測は高知沖(加速度計式波高計)を除いて超音波式波高計を用いて行っている。各観測点では,2時間毎20分間分の水面変動値をサンプリング周波数2HzでAD変換し,有義波諸元を算定している。波の定義は,波高はゼロアップクロス法によって行い,周期についてはクレストツウクレスト法によって行っている。
スペクトル解析は表3.2に示すような期間に対して行い,周波数スペクトルとモーメント,エネルギー,ピーク周波数等の代表量を算定した。スペクトル解析は,全観測地点で計2546ケースについて行っている。ただし,沿岸観測波浪に関しては,MT局と異なり海上風の測定を行っていないため海上風データはない。そのため風と風波の関係を検討する際は全てMT局のデータを用いている。
3.3風波とうねりの分離基準
観測波浪から風波成分とうねり成分を分離する手法はまだ確立されておらず,また風波の判定基準となり得る海上風の測定もMT局以外では行われていない。しかしながら,本研究の対象となるのは風波であり,観測波浪から風波をできる限り抽出する必要がある。そのため以下の基準を設けることにより風波性の波浪とそれ以外の波浪とに分離した。
1)波高と周期の経時変化から,波浪が発達段階であること
2)風向と波向が発達時に一致していること(MT局のみ)
3)風波とうねりが明らかに共存していないこと,すなわち単峯型スペクトルであること。
4)」ONSWAPスペクトルのパラメータである\gammaが1以上であること。
具体的には,まず波浪の波高値の経時変化にたいして数値フィルターをかけて変動を滑らかにした後,有義波高の時間変化率∂H/∂古を算定し\partial{H}/\partial{t}>0の場合を波浪の発達状態であるとしてその区間を抽出する。そして,抽出区間に対して,スペクトル形状がピーク周波数および非線形性に起因するピーク値以外にピーク値が存在しないもの,すなわちうねりによる朋確なピークが存在しないデータを抽出する。さらにJONFSWAPスペクトルパラメータ\gammaが1以上となるデータを選んで風波性の波浪であるとした。
この分離基準を用いることにより,明瞭なうねりの成分が含まれる波浪データの分離は可能となるが,スペクトルの低周波側にわずかにうねり成分が含まれるような場合は風波と見なされる。

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図3.1 大阪湾MT局の位置
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写真 写真3.1 大阪湾海上観測塔
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図3.2 沿岸波浪観測点
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表3.1 波浪観測地点の諸元

4.有義波諸元と周波数スペクトル

波の統計理論34) 35)によると,有義波諸元と波の周波数スペクトルの特性量との間には良好な相関があることが知られている。すなわち狭帯域スペクトルを仮定すると,式(11)で定義されるスペクトルのモーメント値と有義波諸元との間には式(12)〜(15)の関係がある。
(11)
(12)
(13)
(14)
(15)
一方,本多・光易36)は,外洋波のデータ56例から以下の関係を求めている。
(16)
(17)
(18)
(19)
(20)
(21)
また,合田37)は,周波数スペクトルの形状を変化させた場合の波浪統計量問の関係の変化を数値シミュレーションによって算定し,スペクトルが狭帯域の場合か`広帯域の場合までの波高・周期の関係を明らかにしている。
 ここでは,内湾である大阪湾MT局と表3.1に示す沿岸波浪観測地点とで得られた波浪スペクトルと有義波諸元との関係を検討する。なお本研究で扱う波浪データは比較的顕著な高波浪が出現する擾乱期間を抽出していることから,小舟38)による長期波浪統計結果とは若干意味が異なり,高波浪時における統計量となっている。
4.1波高とスペクトル積分値
 図4.1〜4.4は,MT局および沿岸波浪観測地点(以後,沿岸波浪と呼ぶ)で得られた有義波高H_1/3とスペクトルモーメント値の平方根(\sqrt{m}:水面変動の標準偏差\eta_max,に相当)を風波の部分と全データについてそれぞれ示したもので,縦軸は有義波高,横軸は\sqrt{m_o}である。各図はデータの存在する区間を25分割し,それぞれの区間に含まれるデータの平均値(黒抜円)と平均値を基準とした正側・負側のデータの標準偏差が縦線で示されている。また各区間の観測度数(全データ数に対する各区間のデータ数の比率)も同時にヒストグラムで示沿岸域における風波の周波数スペクトルと無次元パラメータの特性-ハイプリッドパラメータ法による波浪推算モデル(第2報)-してある。白抜きの円はデータの個数が10個以下のものでありデータの信頼性が低下していることを示す。また図中の直線は最小2乗法で得られた回帰式である。
H_1/3と\sqrt{m_o}の関係はMT局で,
風波(22)
全データ(23)
であり,沿岸波浪では以下の関係となっている。
風波、全データとも(24)
この関係は,図4.3,4.4から明らかなようにデータのばらつきが非常に少ないものから得られている。この結果から,MT局では理論値と光易らの結果との中間値をとる傾向がみられ,沿岸波浪では光易らの結果に近い傾向が見られる。ただ,今回の解析に用いたMT局のスペクトルデータが少ないため,MT局の有義波高とモーメント値の関係の信頼性は沿岸波浪に比較すると低下している。また,フェッチの関係から,内湾であるMT局と外洋の沿岸波浪ではm_oの大きさが相当異なっており,これらのことを考え合わせると有義波高とスペクトルモーメント値の関係は光易らの結果[式(17)]とほぼ同一であると考えられる。
4.2周期とスペクトル積分値
一般にスペクトル法で波浪推算を行う場合,最終的にスペクトルから有義波高と有義波周期を逆算することが行われている。有義波高は前述したような\sqrt{m_0}との関係を用いて算定し,有義波周期は通常式(19),(20)の関係から逆算される。図4.5,4.6は,MT局と沿岸波浪とにおける有義波周期とm_0/m_1との関係を示したもので,また図4.7と4.8は有義波周期と\sqrt{m_0/m_2}との関係を示したものである。有義波周期とm_0/m_1の関係は,MT局と沿岸波浪で若干異なり,
MT局(25)
沿岸波浪(26)
となる。同様に有義波周期と\sqrt{m_0/m_2}の関係もMT局と沿岸波浪とで異なり以下の関係となる。
MT局(27)
沿岸波浪(28)
このようなMT局と沿岸波浪の関係の変化は,短フェッチである内湾の波浪場と沿岸波浪との問の相似構造の変化を示しているようであるが,後述するように沿岸波浪とMT局とでは正規化されたスペクトルの形状は殆ど一致しており(図4.9),相似構造の変化ではなくデータ数の違いによるMT局の信頼性の低下および3.2に述べたように周期の定義法の違いがその主要な原因であると考えられる。さらに,MT局と沿岸波浪の解析区間を見ると,沿岸波浪のデータが存在しないm_o/m_1の小さい領域(m_o/m_1<4)がMT局の解析領域であり,両者の平均を考えると沿岸波浪とMT局とのこの程度の差異はそれほど大きな問題とはならないと思われる。ただ実際の問題では,統計的な信頼性から沿岸波浪の閣係を用いる必要がある。
 図4.9は,沿岸波浪とMT局のスペクトル形状を比較したもので,縦軸は無次元スペクトル,横軸は無次元周波数である。スペクトル形は後述するようにフェッチ依存性があるため,沿岸波浪とMT局で無次元フェッチ(これも後述)の値が近いデータを選んでその平均値を示してある。図4.9から明らかなように,沿岸波浪とMT局のスペクトル形状は相似性が保たれている。
 有義波周期とm_o/m_1,\sqrt{m_o/m_2}との関係では,m_o/m_1との関係がデータ群の線形性,誤差標準偏差などから\sqrt{m_o/m_2}に比較して良好である。このことはスペクトルの誤差による影響が\sqrt{m_o/m_2}に強く現れるためこのような変化が生じたと考えられる。
4.3周期とスペクトルピーク周波数
 図4.10,4.11は有義波周期とスペクトルのピーク周波数との関係をMT局と沿岸波浪それぞれについて示したものであり,縦軸はピーク周波数f_m,横軸はT_1/3である。また図中には,光易による式(21)の関係,合田による数値シミュレーション結果から得られた関係式が示されている。その他の諸元は図4.1と同一である。
 ピーク周波数と有義波周期の関係は,MT局と沿岸波浪では異なった傾向を示す。MT局では光易による関係式(21)を満足するが,沿岸波浪では合田によって提案された修正BMスペクトルの次の関係式
(29)
に近い関係が得られている。風波の相似性を考えると本来両者は一致しなければならないが,MT局と沿岸波浪の周期の定義法の違い(MT局はゼロアップクロス法,沿岸波浪はクレストツウクレスト法),有効フェッチの極端な違い(MT局では数10kmであるが太平洋岸では数
千kmにも達する)などが原因と考えられ,4.1と4.2で指摘したような点を考慮して本研究では,式(29)の関係を周期とピーク周波数の関係として用いる。
4.4代表波とスペクトル積分値の関係
 表4.1,表4.2は代表波波高に関する諸元およびスペクトルモーメント値相互の関係を風波と全データについて示したものである。表中には太平洋側と日本海側および内湾である大阪湾MT局での結果がそれぞれ示されている。また,太平洋側と日本海側との平均値も示されている。表4.3はレイリー分布を仮定したときの有義波諸元相互の関係を示したものである。表4.3中のH_maxに関しては,一般に設計波の算定に用いられている関係39)
(30)
を用い,各代表波相互の関係から換算して用いている。
表4.1,表4.2から有義波高に関する関係は風波の場合と全データの場合に大きな違いはなく,また日本海側と太平洋側および内湾では殆ど同一の結果が得られている。表4.3との比較では,観測値は全体的にレイリー分布から得られる理論値と同様の傾向にあることが認められる(例えば,観測値\bar{H}=0.627H_1/3,レイリー分布bar[H}=0.6261H_1/3)。H_maxに関しては全体的にH_max=1.6H_1/3に基づく関係と良く一致している。これらの関係は,沿岸観測波浪15か年統計から小舟が求めた結果とは若干異なるが,前述したように本研究で得られた関係は高波浪時におけるものであり,常時波浪を多く含む長期統計である小舟の結果とは意味が多少異なっている。
表4.4,表4.5は周期およびスペクトルモーメント値相互の関係が示されている。風波の場合と全データの場合とでは係数の差は最大で3%程度であり殆ど差はないといえる。代表波周期相互の関係は,観測波浪毎に若干異なることが指摘されているが,日本沿岸では高波浪時の平均的な周期の関係が表4.4,表4.5とによって表される。

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式(11〜30)
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表3.2 抽出擾乱一覧表
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図4.1 H_1/3と\sqrt{m_o}の関係(風波:MT局)
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図4.2 H_1/3と\sqrt{m_o}の関係(全データ:MT局)
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図4.3 H_1/3と\sqrt{m_o}の関係(風波:沿岸波浪)
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図4.4 H_1/3と\sqrt{m_o}の関係(全データ:沿岸波浪)
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図4.5 T_l/3とm_0/m_1の関係(全データ:MT局)
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図4.6 T_1/3とm_0/m_1の関係(全データ沿岸波浪)
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図4.7 T_1/3と\sqrt{m_0/m_2}の関係(全データ:MT局)
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図4.8 T_1/3と\sqrt{m_0/m_2}の関係(全データ:沿岸波浪)
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図4.9 MT局と沿岸波浪の無次元スペクトルの形状
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図4.10 f_mとT_1/3の関係(MT局)
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図4.11 f_mとT_1/3の関係(沿岸波浪)
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表4.1 各代表波およびモーメント間相互の関係(風波)
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表4.2 各代表波およびモーメント間相互の関係(全データ)
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表4.3 各代表波およびモーメント間相互の関係(レイリー分布)
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表4.4 各代表波周期およびモーメント問相互の関係(風波)
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表4.5 各代表波周期およびモーメント問相互の関係(全データ)

5.無次元波高と無次元周期の3/2乗則

 ここでは,波浪と海上風の同時観測が行われている大阪湾MT局で得られた有義波諸元と海上風速を用いて,鳥羽に代表される摩擦速度を代表風速とする無次元波高と無次元周期との3/2乗則の適用性について考察する。
具体的には,風波を表現する無次元パラメータ相互の特性とこれらの無次元パラメータから逆算される海上風の比較・検討から代表風速に対して考察を行う。なおここで用いた波浪データは全て有義波に関して深海の条件(h/L_0>0.5)を満足するものである。
5、1風波の無次元特性量の関係
 波浪を表現するパラメータとして,ここでは波高H_*,周期T_*,エネルギーE_*,フェッチF_*,ピーク周波数f_m*を考え摩擦速度と重力加速度gを用いて無次元表示する。さらに波齢Cu_*,波形勾配H_1/3/L_1/3などの無次元量も加えて無次元パラメータ相互の関係を検討する。無次元化されたパラメータは以下のように表現される。
(式1)
ここで,エネルギーはm_0であり有義波高とは式(24)の関係にある。フェッチは,著者ら20)による結果をそのまま用いている。代表風速となる摩擦速度はMit-suyasuのC_D則から得られる抵抗係数と10m高度風速から式(2)により算定している。
 図5.1は深海波の条件に適合するデータを用いて,無次元波高gH_1/3/u_*^2と無次元周期gT_1/3/u_*との関係を示したもので,図中には鳥羽による3/2乗則(B=0.062:破線)と著者らによる3/2乗則(B=0.067:実線)の関係が直線で示されている。両者の関係に大きな相違はないが,図5.1の関係から最小自乗法によって求められた3/2乗則の係数はB=0.067であり,著者らによる関係に近いことが認められる。また,図に見られるデータのばらつきは,鳥羽が指摘したようなうねり性の波浪および風向の急激な変化による3/2乗則からのずれがMT局のデータに現れていることを意味している。さらにつけ加えると現地波浪の場合,鳥羽の言うpure windwavesは殆ど存在せず何らかの風波以外の成分が波浪には必ず含まれていることを図5.1は示している。
 図5.2〜図5.6は,各無次元量相互の関係の一例を示したもので,図5.6は無次元フェッチと無次元ピーク周波数図5.3は無次元エネルギーと波齢,図5.4は無次元周期と無次元エネルギー,図5.5は無次元波高と無次元ピーク周波数,図5.6は無次元フェッチと無次元エネルギーの関係がそれぞれ示されている。これらの中で図5.2の関係は後述する表5.1を構成するための重要な関係であり,無次元フェッチと無次元エネルギーとの関係は以下のようになっている。
(式2)
無次元エネルギーについて示すと次のようになる。
(式3)
図5.3から図5.6までの図中の実線は後述する表5.1の関係が示されている。全体として各無次元パラメータ間の相関は高いことが認められる。各無次元量問の物理的特性については永井らによる文献17)を参照されたい。
5.2大阪湾MT局観測値の定式化
 無次元化された有義波パラメータ相互の関係は,表5.1のように整理できる41)。表5.1は縦の諸元をY,横をXとしてY=aX^nとしたときのaとnの関係を示したもので表中に表れる記号は無次元パラメータ問の係数であり,それぞれ,Aは無次元フェッチと無次元エネルギー則の係数,aは無次元波高と無次元エネルギー則の係数,Bは3/2乗則の係数,bは無次元周期と無次元周波数則の係数である。前節までの検討結果から,各無次元量問の係数は以下のようになっていることが確認されている。
A=0.00016,a=3.86,B=0.067,b=1.13(式4)
表5.2は表5.1に上に示した係数値を代入して計算した結果と,観測データから指数nを表5.1と同じべき乗則であると仮定して算定した係数\alphaが示されている。ここでの摩擦速度は永井ら17)と同様に光易の抵抗則から得られたものを用いている。表5.2の観測値と計算結果との比較から両者の一致度が高く,無次元パラメータ相互の関係が表5.1の関係で示されることがわかる。このことは3/2乗則が成立する範囲では,海上風から得られる摩擦速度を媒介として波浪を表現する諸元問の独立性は失われることを意味する。言い替えれば風波の波浪諸元は風の摩擦速度と他の諸元1個が得られれば全て算定でき,波浪諸元に関する相似性がこの表5.2から示されたといえる。
5.3有効風速
前節では,3/2乗則の成立を前提として海上風と波浪の諸元が互いに関係していることを示したが,このことは波浪の諸元から海上風が逆算できることを意味する。
有義波高・周期のような比較的取得の容易な諸元から海上風が逆算されさらにその精度が高ければ,現在わが国の海上風の観測点が非常に少ない現状を考慮すると,この手法が確立されれば波浪推算結果の補正や波浪推算手法の改良に対して非常に有力な手法となると考えられる。
本節では,数種類の方法を用いて風波の有義波諸元から海上風を逆算し(以後光易40)にならって有効風速と言う),3/2乗則の適用性を確認する。ここで取りあげる有効風速の算定方法は以下の4種類である。(1)3/2乗則とMitsuyasu C_D則を用いる方法
式(4)の3/2乗則を変形したu_*に関する式(31)
から摩擦速度を求める。
(31)
ここで係数Bは著者らによって提案された数値を用いている。次に式(31)から得られたu_*を式(2)と式(32)のC_D則に代入してU_10を算定する。
(32)
(2)Wilson則から直接計算する方法
式(3)をU_10について示すと次式となる。
(33)
式(33)は鳥羽の3/2乗則を認めると,先に述べたように式中には表れないがC_Dが一定値となることを暗黙に認めたことになる。
(3)3/2乗則(鳥羽)と鳥羽Z_0則を用いる方法
u_*を式(4)の鳥羽による3/2乗則から逆算し,逆算したu_*を鳥羽によるZ_0則に代入して海面の粗度Z_0を算定する。鳥羽のZ_0則は式(34)で表される。
(34)
ここで
(35)
さらに,式(2)の対数則に高度とZ_0を代入しU_10を算定する。
(4)光易の方法40)
式(36)を用いて直接U_10を算定する。
(36)
図5.7は,MT局で得られた10m高度観測風速と各有効風速との比較結果の一例である。期間は1985年1月で図中の黒抜き丸が有効風速で実線が観測値である。また有義波高と周期の経時変化も同時に示されている。図5.7から(1)の3/2乗則とC_D則を用いた方法と(2)のWilson則を用いた方法が風波域であるとないとに拘らず観測値との一致度が高いことが認められる。
これらの傾向は図5.8〜5.11においてより明瞭に認められる。図5.8〜5.11は1984年から1991年までの8年間分の観測データに対して有効風速との相関を検討した図であり,縦軸は有効風速,横軸は観測風速であり図中の黒ぬき丸は平均値,縦線は誤差の標準偏差である。これらの図から,観測波浪との相関が最も良いのは(1)の方法であり(2)の方法も比較的高い精度を示すことが認められる。しかし,(3)の方法は観測風を過小評価する傾向にあり,(4)の方法は過大評価する傾向がある。したがって,海上風の特性を評価するには,現状では(1)の方法か(2)の方法で行うのが適切であると言える。また既往の研究で述べたように風波の抵抗則で重要となる20m/s以上の風速値は殆ど得られておらず,MT局のデータでは抵抗則に関する手法の妥当性を完全に検討することは出来なかった。しかし測定風速範囲内では光易のC_D則が最も抵抗則として妥当であり,さらにこのC_D則が抵抗則に関する水理学的な知見に基づいて提案されていることから現状ではこの抵抗則を用、いるのが良いと考えられる。

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式(31〜36)
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図5.1 無次元波高と無次元周期の3/2乗則
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図5.2 無次元フェッチと無次元エネルギーの関係
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図5.3 無次元フェッチと無次元ピーク周波数の関係
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図5.4 無次元エネルギーと波齢の関係
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図5.5 無次元周期と無次元エネルギーの関係
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図5.6 無次元波高と無次元ピーク周波数の関係
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表5.1 無次元パラメータ相互の関係
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表5.2 無次元量間の係数値の比較
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図5.7 各有効風速と観測風速の比較結果
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図5.8 3/2乗則と光易C_D則から得られる有効風速と観測風速との相関
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図5.9 Wilson則から得られる有効風速と観測風速との相関
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図5.10 3/2乗則と鳥羽のZ_0則から得られる有効風速と観測風速との相関
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図5.11 光易の有効風速と観測風速との相関

6.深海域・浅海域の周波数スペクトル

 風波の周波数スペクトルに関する研究では,既往の研究で述べたように実に多くのスペクトル標準形が提案されている。中でも,Pierson・Moskowitzスペクトル(PMスペクトル)とBretschneider・Mitsuyasuスペクトル(BMスペクトル)さらにJONSWAPスペクトルは波浪推算や模型実験の代表スペクトルあるいは設計スペクトルとして良く用いられている。特にJONSWAPスペクトルは,発達過程にある風波を表現する標準形としてPMスペクトルを拡張した式形で提案され(したがって,パラメータによって発達状態から平衡状態まで表現できる可能性がある),エネルギーの集中度が高いスペクトルを再現できる。さらにスペクトルを表現するパラメータの数も5個(PMスペクトル,BMスペクトルは共に2個〉と多く実測値との高い適合性を有することが指摘されている。
 ここではスペクトルの標準形を考える上で重要となるスペクトルの相似性,高周波域の特性,スペクトルパラメータの特性についてそれぞれ検討する。
6.1JONSWAPスペクトル
 図2.2に示した」ONSWAPスペクトルを任意のスペクトル勾配に対して適用できるように拡張したJONS-WAPスペクトルは次式で表現される。
(37)
ここで,\alphaは比例係数,\gammaはpeak enhancement factor,\sigma_1,\simga_2はピーク周波数付近での低周波側と高周波側のバンド幅である。式(37)からわかるようにJONSWAPスペクトルは\gamma=1とするとPM型のスペクトルになる。\gammaは,スペクトルのピーク値におけるPMスペクトルと観測スペクトルとの比を表しており,風波の平衡スペクトルに対するピーク値付近でのエネルギーの集中度の違いを表現する。JONSWAPスペクトルでは,f_m,\alpha,\gamma,\sigma_1,\sigma_2の5個のスペクトルパラメータとスペクトルの勾配[式(37)中のm,m=5以外の場合はさらにu_*]が決定されればスペクトル形が計算されることになる。
観測波浪から計算したスペクトルに対してJONSWAPスペクトルを当てはめる方法に関しては,付録Cを参照してほしい。
6.2スペクトルの相似性
 風波のスペクトル形に相似性が見られることは2.で述べたように多くの研究から指摘されている。特に風洞水槽における実験結果41)および平衡状態にあるスペクトルは,高い精度で相似性が成立する。
 発達過程にある風波のスペクトルの場合,本来のJONSWAPスペクトルでは\gammaが一定値をとるため相似性が成立する。しかし後述するように\gammaが各発達段階で変化する場合,スペクトル形は発達状態によって異なることになる。したがって\gammaが変化する場合,風波スペクトルの相似性の検討は各発達段階毎に行う必要がある。しかしながらこのような作業は現実的ではなく,また現地の波浪データでは風向の経時変化特性,うねり成分の存在などにより風波スペクトルの相似性は相対的に低下する傾向にあるため,本研究では6.4以後の風波の周波数スペクトルのスペクトルパラメータに対する検討から相似性を確認し,標準スペクトル形の妥当性を検証する。
6.3高周波数域のスペクトル特性
 スペクトルの高周波域に対しては,Phillips,Tobaによりそれぞれエネルギー平衡領域に基づく-5乗則,3/2乗則に基づく-4乗則が提案されている(2.2参照)。-5乗則は砕波による平衡状態の発生を意味し,-4乗則は風波を強非線形であるとして自己相似性を仮定したときのスペクトル形を意味する。従来までの風波のスペクトル標準形(例えばPMBMなど)では-5乗則に基づいたスペクトルが中心となっている。一方,最近の現地観測結果,及び室内実験結果はスペクトルの高周波域特性が-4乗則に近いことを示している。
 このような風波の高周波域のスペクトル特性に関しては,対象となる周波数領域がユ.臨≦∫≦鉱、程度であり,風波の全エネルギーに対して高周波域が高々数%のエネルギーしか持たないことから工学的な有用性は高くないと考えられるかも知れないが,その考え方は正しくない。
なぜならば,風から波への運動量供給は風波の高周波側によって行われ,風波のスペクトル特性に対して高周波域での勾配が重要な位置を占め,これよりスペクトルからの風波とうねりの分離などの工学的にも重要な手法の開発の基礎となる知見が得られるからである。
 実際に風波のスペクトルの高周波域の勾配がどのような特性を示すか検討するため,観測値から計算された周波数スペクトルのピーク周波数の1.5倍から3倍の区間に対して最小自乗法によりスペクトル勾配を算定した。ただし,スペクトルの高周波側は測定系の影響を強く受けるため(付録B参照),測定系の影響がないケースについて勾配を比較した。図6.1は,スペクトルの勾配と有義波高の関係を示したもので,図中の縦線は誤差(標準偏差)を表す。図6.1から平均的な風波の高周波域の特性は,-4乗則で表現できることが認められる。このことは周波数空間における風波の特性も平均的にみて3/2乗則によって記述できることを意味し,風波の場の実体が弱非線形ではなく強非線形にあると言える。今,-4乗則が平均的にみて成立すると考えると,式(37)のJONSWAPスペクトルは式(38)で表現される。
(38)
6.4深海域でのスペクトルパラメータの特性
 ここでは,深海域(ここでの深海とは前述したように,スペクトルに対応した有義波諸元から算定した相対水深がh/L_1/3>0.5の波浪)におけるスペクトルパラメータの特性について検討することにより,パラメータの定式化を試みる。
(1)\gammaの特性
a)既往の研究結果との比較
 風波スペクトルに対するJONSWAP型スペクトルの当てはめは過去にも多く行われているが,ここでは定式化がなされている光易ら40)およびDonelan et.al26)による結果との比較を行う。ここで問題となるのは代表風速の取扱いである,両者ともU_10が無次元量に用いられており,さらにU_10についても光易は自身の有効風速を,またDonelanは観測値をそのまま用いている。本研究の立場では,海上風の特性は摩擦速度で与えるべきであるが,ここでは比較のためいくつかの有効風速を用いて\gammaの特性について比較し,その後摩擦速度を用いた無次元パラメータと\gammaとの関係を検:討する。
 図6.2は光易の有効風速から得られたU_10を用いた無次元ピーク周波数f_m*=f_mU_10/g\gammaとの関係を示したもので縦線は誤差の標準偏差を表す。また図中の実線は,光易による式
(39)
Donelan et.alによる式
(40)
である。光易の有効風速で整理された\gammaとf_m*の関係はf_m>0.1ではγのフェッチ依存性が認められDonelanおよび光易の経験式に近い傾向が見られる。一方f_m<0.1では,\gammaの変動が大きく特定の傾向は認められない。
図6.3は,5.3で最も精度の高かった3/2乗則と光易のC惣則から得られたU1◎によって正規化された無次元ピーク周波数f_m*と\gammaの関係を示したものである。図6.3の結果は図6.2と異なり\gammaのフェッチ依存性はそれほど高くなく,またどちらの経験式とも相関は高くない。
b)\gammaの定式化
 図6.4は3/2乗則から得られた摩擦速度によって正規化された無次元ピーク周波数f_m*と\gammaの関係を示したものである。\gammaの変化特性は,基本的にばらつきが大きく個々に変動している。しかし,平均的にはf_m*に対してほぼlog-linearの関係にあり,図6.2と6.3のU_10を用いた場合と比較的似た傾向にある。このことは発達過程にある風波が平衡状態に達した場合に\gammaが1に近づく,すなわちフェッチの増大に伴ってJONSWAP型スペクトルからPM型スペクトルヘスペクトル形状が変化することを示している。\gammaが1に漸近する特性は図6.4からは判定することができずまた解析的に取り扱うことも困難なため,ここでは式(39)の光易の経験式と同様に\gammaを式(41)によって定式化する。
(41)
ただし,式(41)は第一近似として提:案するものであり,\gammaの本質がデータのばらつきにある可能性もある。しかし,現有のデータの解析では新しい知見が得られる可能性が低く,本報告ではこれ以上の検討は行わない。
(2)\alphaの特性
\alphaの特性については従来より多くの研究が行われているが,\alphaが一種のスケールファクターであることから高周波側の特性,また関数形によってその特性が異なる。
そのためここでは既往の経験式との比較を行わず観測値から\alphaとgammaとの関係を明らかにする。従来のJONSWAPス尽クトルのパラメータの議論では\alphaと\gammaとは別個に扱われていたが,3/2乗則を用いることにより両者の関係が解析的に明らかにされる。
a)3/2乗則に基づいたJONSWAP型スペクトルの\alphaと\gammaとの関係
 風波のスペクトルが-4乗則に従うことは6.3で明らかにされたが,ここでは高周波域でのスペクトル形が-4乗則の場合と-5乗則の場合における深海域でのJONSWAPスペクトルの\alphaと\gammaとの関係について検討する。
-5乗則
 -5乗則のJONSWAPスペクトルは次式で表される。
(42)
式(42)は解析的な積分が行えないが,式(43)のような積分が定義されておりその近似解も提案されている
(43)
式(43)は\sigma=const.(実際には若干変化するがM_0に対する寄与は小さい)とすると\gammaの関数となる。
(44)
したがって,JONSWAPスペクトルの全エネルギーEは式(45)のようになる。
(45)
ここで式(43)に対する光易の近似式である式(46)
(46)
の関係を用いると,式(45)は式(47)のようになる。
(47)
さらに3/2乗則を認めて式(48)の無次元エネルギーと無次元ピーク周波数の関係式
(48)
を用いて変形すると-5乗則での\alphaと\gammaとの関係は 
(49)
となる。
-4乗則
-4乗則でのJONSWAP型式のスペクトルは式(38)と同型であり
(50)
となる。-4乗則におけるM_0は,本報告の付録.Dにおける検討から明らかなように近似的に
(51)
とおけるので,-5乗則の場合と同様な展開を行うと最終的に
1/3
(52)
の関係が成立する。PMスペクトルについても同様の議論ができ,それらの結果とを合わせてまとめると表6.1のようになる。表6.1から明らかなように3/2乗則を認めるとJONSWAPスペクトルでは\alphaと\gammaとは互いに独立ではなくなることになり,-4乗則では\alphaは\gammaと-1/3乗則の関係にあることがわかる。
図6.5は本研究で得られた\alphaと\gammaの関係を示したもので,図中の実線は\alphaa\gamma_-1/3と仮定した時の係数aを最小自乗法によって求めた結果である。なお図中の縦線は誤差の標準偏差を表す。図6.5から明らかなように\alphaと\gammaとの問には式(53)の関係が成立する。
(53)
したがって,スペクトルのパラメータ\alphaか\gammaのどちらかが求められれば良いことになる。
(3)\sigma_1と\sigma_2の特性
\sigmaは6.2で述べたようにスペクトルのピーク値付近でのエネルギー集中に対するバンド幅を意味し,低周波側を\sigma_1,高周波側を\sigma_2としている。従来の研究では,HasselmannらによるJONSWAPも含めて\sigmaの寄与は比較的少ないとして観測値の平均値を与える場合が多かったが,ここでは\sigmaの特性からある程度のモデル化を行う。
a)全エネルギーにたいする\sgimaの影響
\sigmaのスペクトルに対する寄与は式形から判断するとそれほど大きくないと考えられるが,実際の影響を調べるためJONSWAPスペクトルのパラメータで\sigmaのみを変化させた場合の全エネルギーの変化を計算した。具体的には\gammaを除いた本来のJONSWAPのパラメータ値\sigma_1=0.09,\sigma_2=0.07を用いてびi=a_s\sigma_i,i=1,2とする。
\gamma=1.5,2,2.5,3,3.3について倍率a_sを0.02から2まで変化させた場合のスペクトルの面積をシンプソン則で計算した。図6.6は横軸を倍率a_s、,縦軸をエネルギー比E/E_s_a=1とし\gammaをパラメータとして示したものである。
\sigmaのスペクトル積分値に対する寄与は,図6.6から明らかなように\sigmaの変動に対する面積比が\gammaによって異なっている。すなわち,\gammaが大きくなるにつれて\sigmaの寄与率が高くなり\sigmaが50%変動すると面積比が5%〜13%程度に変化するのが認められる。
光易40)も指摘しているように,日本沿岸で得られる風波スペクトルの\gammaの平均値はHasselmann et al.の\gamma=3.3に対して相当低めの値(\gammaが2.5前後)をとる。このことを考慮すると,\sigmaのスペクトル積分値にたいする影響が比較的小さいことが認められ,式(44)の妥当性が示されたと考えられる。ただし,スペクトル形状に対する定式化を行う上で,この誤差の存在は\sigmaに対しても単純に平均値を用いるのではなくある程度の定式化が望ましいこと示唆している。
b)\sigma_1の特性
図6.7は\sigma_1と無次元ピーク周波数との関係を示したものであるが,同図からは\sigma_1とf_m*との間に顕著な傾向は認められない。これは低周波域での相似則が成立しない成分,つまりうねりを含む非風波の成分が比較的強い影響をスペクトルの低周波側に与えていることを示している。そのため\sigma_1が本来持っている何らかの特性がこれらの雑音の中に埋もれていると考えられる。しかしながら,スペクトル上で風波とうねりを分離する手法が確立されていない現状では,その特性を明らかにすることはできない。そのため問題はあるものの\sigma_1については従来と同様に平均値を考えて
\sigma_1=0.144(54)
とする。
c)\sigma_2の特性
図6.8は\sigma_2とf_m*の関係を示したもので,この図から\sigma_2とf_m*には対数軸上で逆比例の関係にあることが認められる。このことは\sigma_2がフェッチの増大と共に大きくなることを意味し,風波の発達の初期には非常に鋭くピーク値が立ち上がり,それが平衡状態に移行するにつれてピーク値付近でのエネルギーの幅が広がることを表している。本研究では\sigma_2とf_m*の関係を最小自乗法によって算定した式(55)によって定式化する。
(55)
6.5 浅海域でのスペクトルパラメータの特性
ここでは,浅海域における風波のスペクトルについて検討し,スペクトルパラメータの定式化を行う。
 浅海域における風波の特性は,既往の研究で述べたように風以外に水深の影響を受けて浅水変形・屈折・回折・砕波による波浪変形を受ける。本研究では第一近似としての風波の周波数スペクトル形の変形を考えるため,線形で扱える領域のみを考慮する。また屈折・回折による変形は,各港湾で測定点が1地点であるため考慮せず浅水変形による効果のみを考慮することにする。
(1)浅海域の波浪に関する3/2乗則とスペクトルの相似則
 浅海域での3/2乗則の定式化とその結果得られる浅海域でのスペクトル相似則を検討する。ここでは沖波と浅海波浪を区別するため各諸元に対して添字0とSを付けている。
a)3/2乗則
 沖波の波高 と周期をH_0,T_0とおくと3/2乗則の関係は,
(56)
となる。浅海波浪に関しては水深変化のみを考慮し有義波高を等価な規則波で表現できるものとしてH_S=K_SH_0,T_S=T_0(K_S:浅水係数,式(58)参照)が成立すると考え周期の変化を無視すると浅海域での3/2乗則は式(57)となる。
(57)
したがって,浅海波浪の3/2乗則の係数は,波浪に関する係数Bに浅水係数K_Sを掛け合したBK_Sとなる。
図6.9はMT局の観測結果を用いて3/2乗則の係数Bの浅水特性を検討したもので,横軸を相対水深h/L_0(L_0はT_1/3と水深hを用いて微小振幅波理論より算定)縦軸を沖波の係数で正規化した3/2乗則の係数B_S/B_0(B_0=0.067)として表示したものである。図中には浅水係数K_Sが実線で示されている。K_Sは次式で表されるように線形のエネルギー流束の保存則を意味する。
(58)
図6.9から明らかなように,浅海域での3/2乗則の係数は第一近似としてみると浅水係数と一致すると考えて良いことがわかる。このことは有義波諸元で表される不規則波のパラメータが,それと等価な規則波の諸元で表示されることを意味する。またスペクトルを成分波的に考えて周波数毎に浅海変形を考えても,代表波を用いた場合との違いは2〜3%程度であり37)成分波的な考えでもK_Sを用いることができる。この一致は,形式的に風波のスペクトルが成分波の重ね合わせで記述できることを意味するが,現象の本質は3/2乗則および前述した-4乗則で表現されると考えられる。
b)スペクトル形
 いま,深海域での周波数スペクトル形を式(59)で表し
(59)
とおくと,深海域での全エネルギーは式(60)のように表される。
(60)
ここで,M_0は式(61)で表される。
(61)
いま,M_0と\gamma_0の関係が式(62)で近似できるものとすると
(62)
となる。したがって全エネルギーE_0は式(63)と表される。
(63)
風波の特性量の関係から無次元波高と無次元ピーク周波数の関係は
(64)
で表され,これより式(63)は
(65)
となる。さらに,以下の無次元波高と無次元エネルギーの関係
(66)
を利用することにより式(65)は式(67)となる。
(67)
式(67)の関係はスペクトル形から導かれる3/2乗則である。式(56)と式(67)から3/2乗則の係数Bは式(68)で表される。
(68)
もし係数a,b,Bなどが一定値であるとすると,\alpha_0と\gamma_0との間には,の関係があることになる。
 一方,浅海波浪に関しては,沖波と同様な形
(70)
を仮定すると,浅海での全エネルギーE_Sおよび3/2乗則の関係は以下のように表される。
(71)
(72)
式(57)と式(72)から3/2乗則の係数には式(73)の関係があることがわかる。
(73)
したがって,式(73)に式(68)を代入すると
(74)
なる関係式が得られる。故に結論として
(75)
である必要がある。m=1/3を代入すると式(75)から
(76)
の関係が導かれる。式(75)と(76)の関係は,風波スペクトルの浅海変形がピーク周波数付近でのエネルギー集中の度合いの変化によって表現されることを意味する。
c)浅海域での\alphaと\gammaの特性
 式(75)において,沖波のスペクトルの諸元である\gammaは直接算定することができない。そのため,平均的な\gamma_Sの変化がほぼ同一の無次元ピーク周波数の下にあると仮定して,\gamma_0を一定値とし(\gamma_S/\gamma_0)^1/6の変化がK_Sと最も等しくなるような\gamma_0を算定した。図6.10は浅海域での\gammaの特性を示した図であり,横軸は相対水深,縦軸は(\gamma_S/\gamma_0)^1/6である。図中の実線は浅水係数の変化を示し,また図中下部の棒グラフはデータの相対度数を示している。図6.10から浅海域での\gammaの変化特性は,深海域と同様にデータのばらつきが存在するものの平均的には式(76)の関係を満足することが認められる。
 図6.11は\alpha_S/\alpha_0の浅海域での特性を図6.10と同様に示したもので,浅海域ではh/L_0が0.1前後で多少変化が見られる\alpha_Sは殆ど一定値をとり式(75)の関係が満足されているのがわかる。図6.10および図6.11の結果は第一近似としてみると浅海域での3/2乗則の成立および有義波の浅水変形をK_Sで表現することの妥当性および有義波の浅水変形をK_Sで表現することの妥当性が示されたものと考えられる。ただし3/2乗則が成立する周波数スペクトルと浅水係数とが関係することは一見矛盾しており,浅海域における風波のスペクトルの物理的な意味について充分な考察を行う必要がある。浅海域での\alphaと\gammaの特性に関する考察は後述する7.2で行う。
d)浅海域での\sigma_1,\sigma_2の特性図6.12および図6.13はそれぞれ\sigma_1と\sigma_2の浅海域での特性を示したものである。これらの図より\sigma_1と\sigma_2とは共に大きく変動し,浅海での特性は明確ではない。
\sigmaがばらつくのは,JONSWAPスペクトルそのものの問題もあるがむしろ波群の存在によるピーク周波数付近の特性変化に\sigmaが強く影響されていると考えられる。そのため本研究では\sigmaの浅海変形は考慮しない。
6.6周波数スペクトルの標準形
本節では深海域および浅海域における風波の周波数スペクトルとスペクトルパラメータとについて検討し定式化を行った。風波のスペクトルは高周波域で-4乗則が成立し,深海域では\gammaと\sigmaのフェッチ依存性,3/2乗則に基づく\alphaと\gammaの-1/3乗則の成立が認められた。また浅海域では\gammaが浅水係数K_Sによって支配されることが理論解析と観測結果とから明かにされた。これらの結果から6.2で述べたように発達過程における風波のスペクトルは,PMやBMなどの平衡スペクトルと異なり標準スペクトル形が各発達段階毎に異なった形状となることを示している。
 浅海域でのスペクトルの標準形は,\gammaのK_Sによる変化を考慮することにより検討する。図6.14は,図6.10の\gammaの相対水深による変化に対応した正規化した風波のスペクトル形を示したものである。各図の縦軸は無次元のスペクトル密度関数S(f)f_m/Eであり横軸は無次元周波数f/f_mである。図中のスペクトルは無次元周波数毎の沿岸域でのスペクトルの平均値(黒抜き丸)と正負の偏差(縦線)によって表されている。また,図6.14のスペクトルには観測値と同時にBMスペクトルおよび後述する7.3で提案する風波の標準スペクトルが示されている。図から浅海域での風波のスペクトル形が,\gammaのh/L_0による変化に対応してエネルギーのピーク値付近で変化していることがわかる。また当然ながらBMスペクトルとの適合性は低下している。

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式(37〜76)
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図6.1 スペクトルの勾配とH_1/3の関係
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図6.2 \gammaと無次元ピーク周波数の関係(光易の有効風速を代表風速として使用)
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図6.3 \gammaと無次元ピーク周波数の関係(3/2乗則と光易C_D則による有効風速を代表風速として使用)
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図6.4 \gammaと無次元ピーク周波数の関係(摩擦速度を代表風速として使用)
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表6.1 \alpha〜\gammaの関係の周波数スペクトルの形状による違い
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図6.5 \alphaと\gammaの関係
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図6.6 JONSWAPスペクトルの積分値に対する\sigmaの影響
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図6.7 \sigma_1と無次元ピーク周波数の関係
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図6.8 \sigma_2と無次元ピーク周波数の関係
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図6.9 3/2乗則の係数の浅水変化特性
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図6.10 \gammaの浅水変化特性
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図6.11 \alphaの浅水変化特性
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図6.12 \sigma_1の浅水変化特性
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図6.13 \sigma_2の浅水変化特性
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図6.14 浅海スペクトルの標準形

7.風波の標準スペクトルに関する考察

 これまで,有義波諸元とスペクトルモーメントとの関係,風波の無次元パラメータの特性と風波のスペクトルに関する諸特性について検討した。特に風波スペクトルの標準形を構成するスペクトルパラメータは3/2乗則との関連から定式化され,有義波諸元と海上風とからなる3/2乗則と風波の周波数スペクトル形との関係が明かとなった。
 ここでは,風波の周波数スペクトル形と3/2乗則との関係および浅海域でのスペクトル特性について考察し,6.で定式化されたスペクトルパラメータから得られるスペクトル標準形を3/2乗則を利用して有義波諸元のみで表現し,深海域から浅海域にかけて風波の発達時から平衡状態に至るスペクトル形を提案する。さらにここで提案したスペクトル形の観測スペクトルどの誤差とその適用範囲についても検討する。
7.1 3/2乗則と標準スペクトルの関係
 摩擦速度で無次元化した有義波高と有義波周期との関係を表す3/2乗則は,風波性の波浪に関して広い範囲において成立する。この3/2乗則に基づいて有義波諸元からなる無次元パラメータ間の関係が得られ,さらに3/2乗則とC_D則を用いて逆算した海上風速と観測風速との高い一致度が示された。以上のことから風波と海上風の関係が3/2乗則によって適切に表現されることが示されたと考えられる。3/2乗則の関係はまた6.5で誘導したように風波の周波数スペクトルからも導くことができる。
 前節の式(67)は-4乗則のJONSWAPスペクトル形から得られる3/2乗則を示したものであるが,同様の関係は他のスペクトル形からも得られる。いま,-5乗則のPMスペクトルを考えると式(77)のように表される。
(77)
式(77)の全エネルギーEは解析的に積分が行え式(78)のようになる。
(78)
式(78)に式(64),(66)の関係を用いると無次元波高と無次元周期の関係は式(79)のようになる。
(79)
したがって,式(79)に示すように-5乗則のPMスペクトルではスペクトル形から得られる無次元波高と周期の関係が一-乗則となる。同様に-4乗則のPMスペクトル,-5乗則のJONSWAPスペクトルについても無次元波高と周期の関係が得られ,これらの関係をまとめると表7.1のようになる。
 表7.1から明らかなように,3/2乗則の関係はスペクトルの高周波域が-4乗則の場合について成立する関係であり,-5乗則では無次元波高と周期との間が-2乗則の関係にある。-2乗則の成立は,前述〔2.1(3)〕したように波浪の諸元が一定で摩擦速度のみが変化する状態を意味しており,風波にうねり性の波浪が含まれた場合に現れるものである。したがって,3/2乗則の成立が普遍的なものであるとするならば-5乗則に従うスペクトル形は風波によるもの以外の成分が多く含まれていると考えられる。
 鳥羽の3/2乗則はWilson式からの類推によりフェッチに依存しないと考えられ,海上風と風波の局所的な平衡状態を表現する。このことをスペクトル形から見ると,海上風と風波の局所的な平衡状態が高周波域の-4乗則の成立によって示され,さらに有義波諸元がスペクトルのピーク周波数付近のエネルギーレベルで決定されることから,3/2乗則の成立は高周波域での特性がスペクトルの全体形状に強い影響を与えること示唆している。ただし,スペクトルの詳細な形状は6.で示したように\gammaおよび\sigmaがフェッチに依存する傾向にあることから,3/2乗則から直接求めることは出来ない。このことは3/2乗則における係数Bが一定であるとして得られる\alphaと\gammaどの関係式(69)からも明かであり,風波のスペクトルの発達はフェッチに依存する\gammaの変化に対して3/2乗則の関係を満足するように\alphaが変化すると考えることができる。
7.2浅海域におけるスペクトルの物理的機構
 前節の6.5において,スペクトルパラメータである\gammaは浅海域で浅水係数K_Sと式(76)の関係にあることが示された。このことは風波スペクトルの浅海変形がピーク周波数付近のエネルギー変化で表現され,さらにそれがスペクトル積分値に対応する有義波と等価な規則波の浅水変形によって表現されることを示している。ただし\gammaは不規則な風波のスペクトルのピーク値でのエネルギー集中を表現するパラメータであり,またK_Sは線形の規則波のエネルギー流束の保存則を表す係数であることから,\gammaの浅海域での変化がK_Sのみで表現されるのは直感的には理解しにくい面がある。またこの事実は風波の強非線形性を前提とする-4乗則の成立と一見矛盾した結果となるが,以下のような解釈を行うことにより説明可能である。
(a)浅海域における風波の全エネルギーの変化は風波スペクトルの相似性および浅海でのスペクトルパラメータの特性である\alpha=const.からフェッチに依存する\gammaの変化によって表現されることになる。またこのことは前述したように風波の浅海変形がピーク周波数でのエネルギー変化で表されることを意味し,本来不規則な風波が規則波的な特性を示すことになる。これは風波の特に高波浪時の波群的な特性が浅海では支配的な特性を持つことを意味する。
(b)風波の全エネルギーの変化は,また有義波諸元の変化で表すことができる。浅海域では3/2乗則の係数変化で示したように有義波と等価な規則波の浅水係数によって風波の浅水変形が説明される。
(c)以上のことから風波の有義波の浅海変化がスペクトルパラメータ\gammaの変化に対応し,\gammaの変化が浅水係数K_Sで表されることになる。
(d)ピーク周波数付近を境界としてスペクトルの低周波域と高周波域では,群速度の特性が異なり低周波域では自由波的に各成分毎に伝播し,高周波域ではピーク周波数付近の波速で全成分が伝播(拘束波的)することが指摘されている18)。このことはスペクトルの低周波域と高周波域を分けて取り扱う必要があることを示唆している。
(e)\gammaとK_Sの関係を-4乗則から見ると,浅海域では風波のスペクトルが成分波の重ね合わせで表現されるのではなく,一つのスペクトル形に対応する規則波が存在することを示している。実際,高波浪時における波浪は一波毎の周期・波高の変化が少なく規則波的な特性を示す傾向にある。またスペクトルの高周波数側がピーク周波数の波速で伝播するのに対し,低周波側は自由波的な伝播をし成分波として取り扱う形になるが,うねりのない場合低周波数側はスペクトルの相似性から3/2乗則を満足するように高周波側に対応して変化するため-4乗則を満足する事になる。
7.3有義波諸元による標準スペクトル形
 前節6で得られた風波スペクトルのスペクトルパラメータに関する関係式および高周波域の特性,さらに3/2乗則を用いることにより有義波諸元(具体的には有義波高と周期)のみを用いて風波の周波数スペクトル標準形を算定する。
(1)沖波スペクトル
スペクトル形を式(80)で表し,6.で得られたスペクトルパラメータの関係式および摩擦速度に関する3/2乗則,さらにピーク周波数と有義波高の関係式(29)を用いて有義波高と有義波周期とによってスペクトル標準形を算定する。まず摩擦速度,ピーク周波数が有義波高と周期から算定され,さらに無次元ピーク周波数が算定される。したがって各スペクトルパラメータが計算されスペクトル形が求まることになる。
(80)
(81)
(82)
上式の関係は表5.1の関係を用いることにより容易に他の無次元パラメータに変換することができる。
(2)浅海スペクトル
 式(76)の関係を上の式(80)に代入すると,浅海でのスペクトルは容易に式(83)で表される。
(83)
ここでK_S:浅水係数である。
 式(83)が本研究で提案する風波の周波数スペクトルの標準形であり,K_Sの特性から式(83)が深海域から浅海域までそのまま適用できる。また\gammaおよび\sigmaのフェッチ依存性を考慮してあるため,発達過程から平衡状態に至る風波を再現することができる。式(83)の具体的な計算は付録Eに計算プログラムを示したのでそちらを参照してほしい。
 式(83)の計算結果は前出の図6.14に示されており浅海域におけるスペクトル標準形としての適用性の高さを表している。
7.4適用限界と誤差
 本研究で提案されたスペクトル標準形の式(83)は,入力データとして有義波高と周期のみがあれば良く,また深海域から浅海域にかけて,風波が発達過程から平衡状態に至るまでの周波数スペクトルが計算可能となっている。このように式(83)は風波に関して適用範囲の広い標準スペクトル形を与えるが,実際の適用にあたってはどの程度の誤差が観測スペクトルとの問にあるのかをあらかじめ評価しておく必要がある。ここでは誤差としてスペクトル形状の違いを考え,誤差の評価を行う。
 各周波数毎の観測値と計算値との差の絶対値を誤差とすると,計算スペクトルの誤差E.は次式で表される。
(84)
ここで,S_c(f):提案スペクトルの計算結果,S_0(f):実測スペクトルである。
 図7.1と7.2は提案スペクトルの平均的な誤差特性を示したもので,縦軸は誤差E,,横軸は図7.1が有義波高,図7.2が有効風速U_10である。図中には参考のためBMスペクトルを用いた場合の誤差が同時に示されている。図7.1より提案スペクトル形の誤差は,4m〈H_1/3<8mではE_rが0.1程度,8m<H_1/3では若干増加する傾向にある。H_1/3<4mではE_rは有義波高値が小さくなるにつれて大きくなりH_1/3=1mでE_r=0.2程度となり4mくH_1/3〈8mでのE_rに対して誤差はほぼ倍となっている。またBMスペクトルとの比較では提案スペクトルが全体的に誤差が小さいことがわかる。ただし,低波浪時(H_1/3〈2m)ではBMスペクトルと提案スペクトルの精度は殆ど同一となる傾向にある。図7.2の有効風速による変化特性は,図7.1と同様な傾向にあり全体的にBMスペクトルよりも誤差が小さく,低風速時とU_10>22m/sの高風速域で誤差が大きくなる傾向にある。
 提案スペクトルのこのような誤差特性は,低波浪時における風波成分とうねり成分の混在,減衰時における風波からうねりへの変換などによる風波スペクトルの適応性の低下を示している。また,高波浪あるいは高風速時における誤差の増大は,U_10が22m/sを越えるような領域で風波の抵抗特性が若干変化する可能性を示唆するが,本研究ではそのような領域でのスペクトルデータが不足しているため充分な検討は出来なかった。
提案スペクトルのより詳細な誤差特性を明らかにするため,波浪の経時変化に対応するスペクトルの経時変化特性について検討する。
 図7.3と7.4はそれぞれ太平洋側の高知沖と日本海側の浜田における観測スペクトルと提案スペクトルの比較結果を,一つの擾乱期間に対して示したものである。
期間は図7.3の高知沖が1981年7月29日から8月1日までの4日間,また図7.4の浜田が1983年12月30日から1984年1月1日までの3日間である。スペクトル図には4時間毎の観測値と提案スペクトルおよびBMスペクトルが同時に示され,経時変化図にはH_1/3,T_1/3,相対水深h/L_0,各手法のE_r.が同時に示してある。スペクトル図に関しては,紙面の関係から波高が完全に減衰した領域については示していない。
 図7.3と7.4は太平洋および日本海の代表的な地点での比較結果であるが両者に対する提案スペクトルの特性には大きな違いはなく,観測スペクトルとの形状の違いは比較的小さい。また提案スペクトルの定式化に用いていない擾乱初期のエネルギーレベルの低いスペクトル形状に対する提案スペクトルとの比較は以下のようである。すなわち観測スペクトルに風波成分が多く含まれている場合は,提案スペクトルのパラメータの算定が良好に行われており観測値と一致度は高いが,うねり成分が強い時はBMスペクトルと同程度の精度となる。
 波浪の発達期および減衰期では全体的に提案スペクトルは観測スペクトルと一致するか若干過大評価傾向にある。誤差E_rの差に比較すると,スペクトル図から得られる。BMスペクトルと提案スペクトルとの差異は顕著であり,ピーク周波数付近でのエネルギー集中は本研究による式(83)を用いることにより良く再現するといえる。

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式(77〜84)
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表7.1 スペクトル形から得られる無次元波高と無次元周期の開係([gH/(u_*)^2]=B[gT/u_*]^β1)
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図7.1 提案スペクトルの誤差とH_1/3の関係
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図7.2 提案スペクトルの誤差とU_10(有効風速)の関係
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図7.3 高地沖における観測スペクトルと提案スペクトルの比較(1981年7月29日〜1981年8月1日)
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図7.4 浜田における観測スペクトルと提案スペクトルの比較(1983年12月30日〜1984年1月1日)

8、おわりに

 本研究では,大阪湾MT局および日本沿岸の主要な波浪観測地点から得られた有義波諸元,周波数スペクトルおよび海上風速を用いて,風波の相似構造について検討し相似性を仮定して得られる種々の関係を観測値から明らかにし,その結果を基に新たな周波数スペクトルの標準形を提案した。本研究で得られた主要な結論は以下の通りである。
(1)高波浪時のデータを対象とした解析から代表波高・周期とスペクトルモーメントの関係は,光易の観測結果とほぼ同様の傾向を示し,有義波高間の関係はレイリー分布を仮定した理論解とほぼ同一の結果となった。有義波周期とm_0/m_1,\sqrt{m_0/m_2}の関係は,相関特性からm_0/m_1との関係の精度が高いことが認められた。有義波周期とピーク周波数との関係式における係数は,光易の提案した1.O5よりも合田の提案した1.13に近い。
(2)無次元波高と無次元周期との間の3/2乗則は,内湾域沿岸波浪の両方について広い範囲で成立する。ただし,その係数は鳥羽によるB=0.062ではなくB=0.067であった。また,浅海域では浅水係数の項を入れることにより3/2乗則が成立する。
(3)有義波高・周期から逆算される有効風速は,3/2乗則と光易のC_D則から得られる風速が最も実測の風速を良く説明する。またWilson式より得られる有効風速の精度も比較的高かった。
(4)風波スペクトルの高周波域での特性は鳥羽によって提案された-4乗則に従う傾向が見られる。
(5)風波スペクトルにJONSWAPスペクトルを当てはめた時のスペクトルパラメータの特性は以下のとおりであった。
深海域:
 ピーク周波数での観測スペクトルとPMスペクトルの比である\gammaは光易が指摘しているようにフェッチに依存する,すなわちフェッチの増大に伴い\gamma=1のPMスペクトルに漸近する。
 ピーク周波数より高周波側のバンド幅を表す\sigma_2はフェッチの増加にともない増大する傾向にあり,風波の平衡状態への移行と共にピーク付近でのエネルギーの広がりが大きくなる。
 \sigma_1は低周波域のバンド幅であるが,低周波域ではうねりその他の影響が強いためその特性は明確に認められなかった。
 \alphaと\gammaとの間に3/2乗則の仮定の下で導かれた-1/3乗則が成立する。
浅海域:
3/2乗則の成立を前提とすると,浅海域では\alpha_S=\alpha_0ならば(\gamma_S/\gamma_0)^1/6=K_S
 の関係が成立し,風波スペクトルの浅海での特性が浅水係数K_Sによって示されることが明かとなった。
(6)風波の周波数スペクトル標準形として,3/2乗則と整合性のあるJONSWAP型の式を提案した。提案した標準形は,BM型スペクトルと同様に有義波高と周期のみによってそのスペクトル形が算定され,その精度はBMスペクトルよりも高く,発達および平衡状態にある風波
でかつ深海域および浅海域に対して適用できる(但し,h/L_0が0.1以上)。

謝辞

本研究を実施するにあたり,港湾技術研究所野田次長および堀江海洋水理部長から貴重な助言を受けた。また,海象調査研究室からは貴重なデータを提供して頂いた。さらに海洋エネルギー利用研究室研修生柴木秀之氏(株式会社エコー)および亀山研究官(現運輸省第2港湾建設局横浜調査設計事務所)から有益な助言を受けた。ここに謝意を表する。
(1992年11月25日受付)

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主要記号一覧表

a:無次元波高と無次元エネルギーの関係式に
おける係数
A:無次元フェッチと無次元エネルギーの関係式における係数
b:無次元周期と無次元ピーク周波数の関係式における係数
B:3/2乗則の係数
C:波速
C_D:抵抗係数
E:波のエネルギー
E_r:標準スペクトルと観測スペクトルとの誤差
f:周波数
f_m:スペクトルのピーク周波数
g:重力加速度
h:水深
\bar{H}:平均波高
H_1/3:有義波高
H_1/10:1/10有義波高
H_max:最大波高
K_S:浅水係数
L_1/3:有義波波長
m_n:n次のスペクトルモーメント
M_0:JONSWAPスペクトルの積分を行うためのモーメント
S(f):周波数スペクトル
S_c(f):計算周波数スペクトル
S_O(f):観測周波数スペクトル
\bar{T}:平均周期
T_1/3:有義波周期
T_1/10:1/10有義波周期
T_max:最大周期
u_*:摩擦速度
U(z):高さzでの風速
U_10:高度10mにおける海上風速
z:海面からの高度
Z_0:海面の粗度高さ
\alpha:JONSWAPスペクトルのパラメータ(エネルギーにたいする比例係数)
\beta:Z_0則で用いる係数
\agmma:JONSWAPスペクトルのパラメータ
(peakenhancementfactor)
ε:Zo則で用いるべき乗値
\sigma_P:ピーク角周波数
\sigma_1:JONSWAPスペクトルのパラメータ(ピーク周波数低周波側のバンド幅)
\sigma_2:JONSWAPスペクトルのパラメータ(ピーク周波数高周波側のバンド幅)

付録A.10旧高度風速を用いた場合の風波の無次元パラメータ

 本文では摩擦速度で正規化した無次元パラメータを用いて風波の特性を検討したが,摩擦速度ではなく10m高度風速を用いた無次元パラメータも当然考えられる。スペクトル法などの波浪推算手法に対する海上風の補正などに用いるにはむしろ10m高度風速を用いたものが便利である。10m高度風速を用いた無次元パラメータは次式で与えられる。
(式1)
3/2乗則の係数と無次元エネルギーと無次元フェッチ間の関係式の係数は表5.1と異なるため以下のようにする。まずWilsonの3/2乗則の係数B=0.013として,さらに図A-1こ示すようなE_*とF_*の関係から最小自乗法によって得られる係数A=2.1×10^-7を用いる。他の係数を表5.1と同一にすれば無次元パラメータの関係式は表A-1となる。表A-1から明らかなように代表風速として10m高度風速を用いた場合でも,摩擦速度の場合と同程度の精度で無次元パラメータ間の関係は成立する。

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(式1)
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表A-1 U_10を用いた無次元パラメータ相互の関係
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図A-1 U_10を用いた無次元エネルギーと無次元フェッチの関係

付録B.超音波波高計の観測スペクトル特性

 超音波式波高計(USW)は海底設置型の波高計であり,水面に向かってある放射角で超音波を発射し水面での反射エコーが送受波器に戻って来ることによりその地点の水深を求めるものである。いま,図B-1で示すように水深hの地点に設置されたUSWから放射角\thetaで超音波が発射されると水面では式(B-1)で表される直径aの円となる。
(B-1)
したがって,超音波式波高計の出力は直径aの円内の水面変動の平均値となる。この円の直径に対応する波浪の周期は深海波を仮定すると式(B-2)となる。
(B-2)
このようなある領域の平均値を用いてスペクトル解析を行うと,スペクトルの高周波数域に誤差が現れる,すなわち平均化誤差である。これは不規則変動を長さsの区間ごとに平均して読み取った場合に現れる誤差で,真のスペクトルに対してフィルターをかけることに相薮する。超音波式波高計の場合,フィルターは式(B-3)で表せる。
(B-3)
したがって,超音波波高計から得られた水面変動から計算されるスペクトルは真のスペクトルに式(B-3)がかけられた形になり,スペクトルは式(B-4)のようになる。
(B-4)
いま,最も簡単なスペクトル形として式(B-5)のような関数形を考える。
(B-5)
式(B-4)に式(B-2)と式(B-5)を代入するとスペクトル形は式(B-6)となる。
(B-6)
 図B-2は,式(B-6)でn=4として得られるスペクトルの勾配の変化を示したもので,縦軸はスペクトルの勾配で横軸はスペクトルピーク周波数である。さらに図中の数字は設置水深を意味しここでは10m-60mの場合について示されている。平均化誤差の影響は,ピーク周波数が高くなるほど顕著に現れ,また,設置水深が深いほど強くなっているのがわかる。したがって,超音波式波高計で得られた水面変動値は高周波数側の特性が波高計の設置水深と入射波特性によって変動することになる。

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式(B-1〜B-6)
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図B-1 超音波式波高計の測定原理
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図B-2 水深とピーク周波数の違いによるスペクトル形状の変化特性

付録C.スペクトルパラメータの同定手法

ここで観測波浪データから計算されたスペクトル形に対してJONSWAPスペクトルを当てはめる手法つまりパラメータの同定手法について述べる。-4乗則のJONSWAPスペクトルのパラメータは式(C-1)に示すように,\alpha,\gamma,\sigma_1,\sigma_2,f_m,u_*の6個(-5乗則の場合は,u_*がなくなり5個となる)であるがf_mに関しては観測スペクトルから直接求めることができ,またu_*に関しては3/2乗則から逆算できるためf_m,u_*を除いた4個のパラメータの同定法について述べる。
(C-1)
(1)\alphaの同定
 標準スペクトルの観測スペクトルに対する比例係数に相当する\alphaは,\gammaおよび2次波の影響を受けないと考えられる式(C-2)の区間で算定される。
(C-2)
\alphaは,上の区間に対する観測スペクトルとPMスペクトルの平均的な比として表され,式(C-3)で計算される。
(C-3)
(2)\gammaの同定
実測スペクトルとPMスペクトルのピーク値(f=f_m)での比が\gammaの定義であるから,\gammaは(1)で求めた\alphaとf_mを用いて式(C-4)によって与えられる。
(C-4)
(3)\sigma_1,\sigma_2の同定
(C-5)
上の周波数範囲で\sigma_1,\sigma_2をそれぞれ0.0〜1.0まで変化させ,改訂マルカート法を用いて自乗誤差
(式)
を最小にするような\sigma_1,\sigma_2を求める。

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式(C-1〜C-5)
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(式)

付録D.スペクトルモーメント積分値を\gammaの関係

JONSWAP型のスペクトル関数形はPMスペクトル形と異なり解析的に積分が行えない。ただし,式(D-1)のような積分が定義されていて,その近次解が光易によって提案されている。
(D-1)
しかしながら式(D-1)は-5乗則の場合にのみ成立する関係であり-4乗則の場合は式(D-2)で表される積分を行う必要がある。
(D-2)
このスペクトルの近似解を求めるため数値積分を行った。数値積分はSimpson則を用いて行い積分範囲は0≦f/f_m≦200とし,積分の刻み幅は0.03とした。図D-1は積分結果を対数軸上で示したもので横軸を\gammaとし縦軸に積分値を示してある。また,図中の実線は積分値と\gammaとの間に最小自乗法を当てはめた結果が示されている。図D-1からM_04と\gammaの関係は若干log-linearからはずれてはいるものの近似的に光易と同様な関係にある
ことがわかる。したがって,-4乗則の場合のJONS-WAPスペクトルで用いるM_04は式(D-3)で表すことができる。
(D-3)

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式(D-1〜D-3)
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図D-1 モーメント値と\gammaの関係

付録E.提案スペクトルのプログラム表示

 図E-1は本文中の式(80)〜(83)で示した提案スペクトルの簡単な計算プログラムを示したものである。プログラムspctは提案スペクトル値を計算するFUNC-TION文で入力値としてf:周波数,H3:有義波高,T3:有義波周期,aK_S:浅水係数が必要となる。プロクラムsco,khはそれぞれ浅水係数khを算定するFUNCTION文,SUBROUTNE文でspctの入力データaK_Sを計算するために用いる。ここでプログラムkhは,Hunt(1979)によるkhの近似解法を用いており,繰り返し計算を行わずに直接解を求めることができる。近似解は式(E-1)で表される。
(E-1)
ここで,y=\sigma^2h/g=k_0hである。また,各係数値はプログラムkhに示されている。式(E-1)の誤差は全範囲で0.1%程度であり高い精度でkhを計算できる。
 これらのプログラムを用いた簡単な例を示すことにでる。水深30m,有義波高4m,有義波周期10sの風波ペクトル形は以下のようなプログラムで簡単に算定で書る。計算範囲は0〜5Hzで刻み幅は1/100である。

dimension ss (500)
df=1./100.
nmax=500
H3=4
T3=10
ah=30
call kh (T3, ah, akh, C)
aKs=sco (akh)
do 10 i=1, nmax
f=df * float (i)
ss (i) =spot (f, H3, T3, aKs)
10 continue
stop
end

function spct(f, H3, T3, aKs)
data pi, g, B/3.14159265, 9.8, 0.067/
pi2=pi*2
fm=1. /(1.136*T3)
u=H3**2 / (g*B**2*T3**3 )
fmn=fm*u/g
sgml=0. 144
sgm2=0.07*fmn**(-0.16)
gm=6.*fmn**(0.15)
alp=0. 17*gm**(-1. /3. )
if(f.le.fm) sgm=sgm1
if(f.gt.fm) sgm=sgm2
if(fm) eq. 0.) return
if(f . eq. 0.) return
gep=exp(-(1-f/fm)**2/(2*sgm**2))
gml=gm**gep
spctl=alp*g*(pi2)**(-3)*u*f**(-4)*exp(-(f/fm)**(-4))*gml
spct=aKs**(6. *gep)*spctl
return
end
C
function sco(akh)
scol=sgrt(tanh(akh)*(1.+2*akh/sinh(2*akh)))
sco=1. /scoff
return
end
C
subroutine kh(T.ah,akh,C)
real*8 d(6), y, yy, x
data d/0-6666666666,0.3555555555,0.1608465608,
1 0.0632098765,0.0217540484,0.0065407983/
data pai, g/3. 14159265, 9.8/
sgm=pai*2/T
y=sgm**2*ah/g
yy=0
do 10 i=1,6
yy=Yy+d(i)*y**(i)
10 continue
x=y**2+y/(1+yy)
akh=sqrt(x)
C=g*ah*(y+
1 (1.+0.6522*y+0.4622*y**2+0.0864*y**4+0.0675*y**5)**(-1))**(-1)
C=sqrt(C)
return
end

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式(E-1)
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図E-1 提案スペクトルの計算プログラム

港湾技徳研究所報告 第32巻第2号(1993,6) 1.三陸沿岸を対象とした津波数値計算システムの開発 後藤智明* 佐藤一央**

要旨

 三陸沿岸に関する津波対策調査の便宜をはかることを目的として,津波数値計算システムを開発した。
また,津波数値計算の精度を調べるために三陸沿岸の大船渡湾,釜石湾,久慈湾および八戸湾の4つの港湾に関して,明治三陸大津波,昭和三陸大津波,十勝沖地震津波およびチリ地震津波を想定した数値シミュレーションを行った。
 開発した津波数値計算システムは,津波の非線形効果,越流を含む防波堤・防潮提の効果および陸上遡上の効果を数値計算に組み入れたものであり,三陸沿岸の近傍で発生する近地津波および北米・南米沖で発生し,わが国に伝播してくる遠地津波の両方を対象としたものである。また,八戸湾から女川湾に至る三陸沿岸全域を200mの計算格子で表現し,調査対象港湾を50mという細密な計算格子で近似したシステムでもある。さらに,防波堤の位置ならびに計画,現況,対象津波来襲時の各地形資料が支援システムとしてデータベース化されており,津波数値計算の即時性および簡便性のための各種の工夫が施されたシステムである。
キーワード:三陸沿岸,近地津波,遠地津波,数値計算システム

*水工部海洋エネルギー利用研究室長
**水工部海洋エネルギー利用研究室

REPORT OF THE PORT AND HARBOUR RESEARCH INSTITUTE VoL 32, No. 2 (June. 1993) Development of Tsunami Numerical Simulation System for Sanriku Coast in Japan Chiaki GoTO * Kazuo SATO ***

Synopsis
For prevention of tsunami disasters, a tsunami numerical simulation system for Sanriku Coast in Japan is developed. The system developed here can gives a result including the effects of tsunami nonlinear behavior, flow over sea walls and run-ups on land. And the system can be applied not only to tsunamis generated in sea near Sanriku Coast but also to trans-oceanic tsunamis. Numerical grid in deep sea region of the system is set as 5,400 m, and is made small in shallow sea regions down to 50 m which could express the sea and land topography accurately.
In order to investigate an accuracy of numerical simulation of tsunami, numerical computations are carried out for the Meiji Great Sanriku Tsunami,. the Shouwa Great Sanriku Tsunami, the Tokachi-oki Earthquake Tsunami and the Chilean Earthquaku Tsunami for Ofunato, Kamaishi, Kuzi and Hachinohe port.
Key Words : Sanriku Coast, Tsunami, Distant Tsunami, Numerical simulation system

*Chief, Ocean Energy Utilization Laboratory, Hydraulic Engineering Division
** Ocean Energy Utilization Laboratory, Hydraulic Engineering Division

目次

1.はじめに 7
2.津波の特性 7
2.1地震津波の発生と発達 7
2.1.1津波の発生 7
2.1.2津波の伝播 8
2.1.3津波の変形 8
2.2海底地震以外の原因による津波とその特徴 9
3.津波数値計算システム 10
3.1システムの構成 10
3.1.1システムの特徴 10
3.1.2計算領域と水深データ 11
3.1.3ファイル構成12
3.1.4コントロールデータ 12
3.2近地津波の数値計算法 15
3.2.1支配方程式と差分式 15
3.2.2運動量損失係数 17
3.2.3計算領域の結合 17
3.2.4初期条件 17
3.2.5境界条件 18
3.3遠地津波の数値計算法 20
3.3.1支配方程式と差分式 20
3.3.2初期条件と境界条件 21
3.4津波数値計算の誤差とシステム利用上の留意事項 21
3.4.1誤差の分類 21
3.4.2支配方程式の誤差 21
3.4.3離散化誤差と打ち切り誤差 25
3、4.4境界条件の誤差 27
3.4.5初期波形の誤差 28
3.4.6その他の誤差 28
4.防波堤開口部の運動量損失 29
4.1水理模型実験の概要と計算条件 29
4.1.1水理模型実験 29
4.1.2湾口防波堤開口部前後のエネルギー損失と運動量損失の関係 30
4.1,3計算方法 31
4.2数値計算結果 32
4.3運動量損失係数f_Dの評価 33
5.津波数値計算結果 34
5.1大船渡湾 34
5.1.1チリ地震津波 34
5.1.2明治三陸大津波 35
5.1.3昭和三陸大津波 36
5.2釜石湾 36
5.2.1チリ沖地震津波 36
5.2.2明治三陸大津波 37
5.2.3昭和三陸大津波 38
5.3久慈湾 38
5.3.1チリ地震津波 38
5.3.2明治三陸大津波 38
5.3.3昭和三陸大津波 39
5.4八戸湾 39
5.4.1チリ地震津波 39
5.4.2昭和三陸大津波 39
5.4.3十勝沖地震津波 40
5.5津波数:値計算の精度 40
6.おわりに 40

1.はじめに

環太平洋地震帯の北西部に位置するわが国は,明らかになっているものだけでも数十回にわたる津波の来襲を受けており,世界有数の津波の被災国である。特に,日本の北東部に位置する三陸沿岸は,南米からわが国まで太平洋を伝播してきた昭和35年(1960年)のチリ地震津波,さらに明治29年(1896年)および昭和8年(1933年)の三陸大津波といった高さ30mにも達する巨大な津波によって大きな被害を受けている。この2のつ三陸大津波で受けた被害は,被災家屋が10,000戸,死者が25,000人を超える大きなものであり,tsunamiという言葉が国際語になるきっかけとなった。
 わが国の沿岸は,昭和29年(1959年)の伊勢湾台風による高潮災害とチリ地震津波災害が契機となり,港湾や海岸の保全事業が進められ,各地に防潮堤・水門が整備された。高潮,津波対策以外でも,侵食対策などのための構造物が建造され,日本全国の沿岸地域では高さ5から6m程度の防潮堤が建設され,防災施設の無い海岸は少なくなってきている。また,三陸鉛岸の大船渡湾,釜石湾,久慈湾では,津波の低減を目的として湾ロ防波堤が築造,計画されており,津波防災施設がある程度完備されつつあるというのが現状である。実際,昭和45年(1968年)に起こった十勝沖地震津波に対しては,津波防災施設が有効に働き,浸水被害が一部の沿岸を除き発生しなかった。しかし,昭和58年(1983年)の日本海中部地震津波では,北秋田海岸で津波の高さが防災施設の天端高を超え,大きな災害を被っている。
 このように現状は,防波堤,防潮堤など防災施設に重点を置いた津波防災対策が行われている。しかし,津波災害を完全に防ぐ防災施設を建設することは難しく,今後の災害対策には,防災施設のみならず防災地域計画,防災体制を含めた総合的な防災のあり方を考える必要がある。そのためには,まず始めに過去の津波災害の検証と対策後の予測が重要である。津波災害の検証や予測の方法としては,理論解析や水理模型実験,数値計算など各種の方法が考えられるが,現地への適用性,模型実験における相似率の問題経済性などの観点から判断すると数値計算の利用が最適であると考えられる。
 津波の数値計算は,1960年代のIsozaki-Unoki1)の東京湾の津波,Ueno2)のチリ地震津波,伊藤ら3),4)の津波に対する防波堤の効果に関する研究から始まると考えてよい。当時は,津波の初期波形の推定や計算機の能力などが十分でなかったために,精度の高い津波数値計算が難しかったが,その後の1980年代に,津波の初期波形として地震断層モデルの適用,防潮堤・防波堤からの越流陸域への遡上を含む計算技術が確立された。
 一方,現在の津波防災計画は,1960年代から1970年代の津波数値計算技術の開発当初に策定されたものが多い。例えば,チリ津波により被災を受け,1968年に建設された大船渡湾ロ防波堤は,流入方式という計算方法で津波減殺効果を推定している。この方法は,感潮湖水の水位変動に用いられてきたものであるが,津波と湾の共振現象などの津波の波動的な性質が考慮されていないという問題があった。また,建設中の釜石湾ロ防波堤の計画では,線形長波理論式に基づく数値計算が利用されており,津波の波源,陸上遡上および防波堤からの越流などが課題として残されていた。したがって,簡便的なモデルおよび開発初期の津波数値計算モデルを利用して計画されたものであると言うことができ,最新の津波数値計算技術により再度検討する必要があると思われる。
 以上の背景から,最新の数値計算技術を組み入れた津波数値計算システムの開発を行った。本稿では,三陸沿岸を対象とした津波数値計算システムの概要とその数値計算結果の精度に関して述べる。
 開発した津波数値計算システムは,津波の非線形効果,越流を含む防波堤・防潮提の効果および陸上遡上の効果を数値計算に組み入れたものであり,三陸沿岸の近傍で発生する近地津波および南米で発生し,わが国に伝播してくる遠地津波の両方を対象としたものである。また,八戸湾から女川湾に至る三陸沿岸を200mの計算格子で表現し,調査対象港湾を50mという細密な計算格子で近似したシステムである。さらに,防波堤の位置ならびに計画現況,対象津波来襲時の各地形資料が支援システムとしてデータベース化されており,津波数値計算の即時性および簡便性のための各種の工夫が施されたシステムである。

2.津波の特性

2.1地震津波の発生と発達
2.1.1津波の発生
地球はよく半熟の卵に例えられることがある。卵の黄身にあたる部分が核,白身にあたる部分がマントル,殻にあたる部分が地殻である。ただし,卵と違うのは,核は液体であること,マントルは柔らかい固体であり組織的な流動すなわちマントル対流を起こすこと,地殻が7枚の大きなプレートといくつかの小さなプレートで構成されていることなどである。また,プレートの片方の境には海嶺と呼ばれる海底大山脈があり,地球内部から高温の物質が湧き出ている。この湧き出した物質が,冷えて固まり新しいプレートとなり,マントルの対流に乗り,一年間に数cm程度の速さで移動していく。
太平洋では,図-1に示すように,アメリカ大陸西岸で湧き出たプレートが太平洋を横断して日本列島へ押し寄せてくる。この太平洋プレートは,日本列島付近でユーラシアプレートと衝突し下に押し込められ,もぐり込んでいく。この地点が日本海溝である。太平洋プレートがユーラシアプレートと衝突することにより,日本列島は圧縮されると同時に下に引きずり込まれるような力を受け,境界付近の岩盤にストレスが生じる。岩盤はいつかはこのストレスに耐えかね急激に破壊され,断層運動すなわち地震が発生する。以上がプレート・テクトニクス説による海底地震の発生の大局的なストーリである。
 地震のメカニズムに関しては,情報が地震波のみに限られていることもあり,未だその詳しい内容が明らかにされていない。現在よく用いられている地震のモデルは点震源に二対の偶力が作用し,それが岩盤の亀裂の進進とともに移動していくというものである。このモデルを用いて計算した地震波の波形と観測されたものを比較することにより最適の断層解すなわち断層の長さ,幅,変位量,すべり角,傾斜角,走向の6つのパラメータを選ぶことが行われている。
 震源の断層パラメータが明らかになると,海底地盤の変位の分布は弾性論で近似的に計算できる。この計算では,海底面から震源までの深さが海底地盤の変位量を定める重要な要素となる。平均的には,80kmを越えると海底面の変化に現れる影響はほとんど無く,50から80kmの震源で断層の1/10以下の変位量,40kmより浅いときに1/10以上の変位量が海面に現れると考えてよいい。したがって,たとえ地震のマグエチュードが大きくても震源の深さが50km以上の深発地震では,大きな津波を発生する可能性は少ない。
 海底地盤変位にともなう水面の変化は,海水を非圧縮と考え,地盤変位と同じと考えるのが普通である。地盤の変化に必要な時間を立ち上がり時間と呼んでいるが,これは長くても100s程度と考えられている。したがって,津波波源が大きい場合には瞬時に起こると考えてもさしつかえない。
 このようにしてできる津波の初期波形は,断面が一山一谷の形状で,平面形状としては長軸が100から200km,短軸が50から10Okm程度の楕円形が多い。太平洋で生ずる最大なものは,1960年のチリ地震津波を起こしたものであると考えられており,長軸は800km位である。水位は数m程度の大きさが普通であり,最大値はチリ地震津波での21mであると考えられている。
2.1.2津波の伝播
 海底地盤の変動により,津波波源域の水面が変化すると,周囲の水面と水位が異なるため,水圧差が生ずる。
これが原因となって,まわりの水が動かされ,水の波となって伝播していく。津波初期波形の長短両軸の長さが等しいときには,全方向にわたり等分されるように伝播していく。長軸の長さが長くなる程,その中央部付近で,短軸方向に出ていく伝播成分が増大し,長軸方向の伝播成分が減少する。これを津波の指向性と呼んでいる。わが国の沿岸で近くで発生する津波は,波源の長軸が沿岸に平行である場合が多い。これが,津波の波源に面した沿岸域で災害を大きくしているひとつの理由である。平均的な津波の初期波形は,波艮が100kmのオーダー,波高は数m程度である。発生箇所の水深は数km程度であるから,水深波長比は10^-3のオーダーであって,長波と呼ばれる理論で近似できる。また,深海部においては,波形勾配が10^-3,波高水深比が10^-4程度となり,微小振幅の波と考えてもよく,波速は重力加速度をg,水深をhとすると\sqrt{gh}で近似でき,水深だけで決まると考えてよい。したがって,津波は水深の深いところで早く,浅いところで遅いという性質があり,水深分布により波峰線が曲がる。この現象を屈折と呼んでおり,津波のエネルギーが集中,発散する場所が生ずる原因である。
2.3津波の変形
 発生時に一山一谷であった津波は,外洋を伝播するにともない,海底地形の変化による反射,屈折,大陸棚による陸棚セイシュやエッジ波の発生,島や岬による回折,港湾の湾水振動などにより変形する。そして,沿岸部で観測される津波は複数個の山谷をもつ波列からなる複雑な波形となる。ここでは,この一連の津波の変形のうち沿岸部において津波が大きくなる理由を簡単に説明する。
津波の先端が沿岸近くに来ると,水深が浅くなるたあに速度が落ち,後方はまだ深い位置にあるので早く追いついてくる。したがって,水面はだんだん上昇し,波高が大きくなる。これを浅水効果と呼んでいる。また,湾に侵入した津波は,狭い湾奥ヘエネルギーが集中して行く。似たような現象は津波が屈折することによっても生ずる。いずれにせよ,津波が集中するためにおこるのであるから,集中効果と呼んでいる。入ロが広く深く,奥へ行くほど狭くなるV字形状の湾では,この2種類の原因で津波が大きくなる。三陸地方には,V字形状のリアス式海岸が多く,津波の打ち上げ高さが30mを越えた場所もある。
湾内での津波を大きくする原因の他のひとつに共鳴効果がある。湾内の水は外力が与えられない限り静水状態であるが,力が作用すると振動する。こうした振動系には,それ特有の固有振動があり,来襲した津波が湾の固有振動に近いもの,すなわち,湾奥から反射してきた津波と続いて入射してくる津波の出会いの条件が整えば,共鳴が生じ,湾奥へ行く程津波振幅は大きくなる。津波の場合,連続して3波来襲すると共鳴は完成すると考えてもよい。簡単に津波の共鳴現象を調べるためには,津波の見かけの周期と湾の代表的な固有振動周期の比を考えればよい。この比が1に近いほど共鳴効果が起こる可能性が高い。以上のような浅水,集中,共鳴の3つの効果が沿岸での津波増幅の主原因であると考えられてきた。
ところが,1983年の日本海中部地震津波では15mという最大打ち上げ高さが極めて滑らかな55kmもの海岸線の中程の地点で発生した。この時,津波の写真が数多く撮られ,その幾つかにいわゆるソリトン波列が写っていたため注目を集めることになった。ソリトン分裂とは,非線形効果と分散効果の複雑な干渉により一山の津波が多数の波列に分裂することを意味する。こうしてできた分裂波は,通常の津波が短いものでも5分程度の周期であるのに比べ10s位の周期でしかなく,また異常に波高が発達するので注意を要する。ソリトン分裂が発生する条件としては,津波の立ち上がり勾配が急であること,遠浅な海岸が長く続くことの2点が考えられる。
2.2海底地震以外の原因による津波とその特徴
 津波の発生原因としては,地震による海底地盤の変動以外に,火山活動(噴火・爆発),地滑りそして核爆発が考えられる。7世紀以降にわが国沿岸付近で発生した津波の記録を調べてみると,発生事例の約95%が地震による海底地盤の変動により発生した津波であり,残りの約5%が火山活動を主体としたその他の原因による津波である。
 火山活動・地滑りによる津波の発生を直接的な要因で分類すると下記の4種類になる。すなわち,火山噴火による水蒸気爆発火山活動により副次的に発生した山体崩壊または地滑り,火山活動に伴う地震による海底地盤の変位,地震活動により発生した地滑りである。
 既往の津波の中では,1883年のクラカトア島の火山噴火による津波,1919年のハワイ島の火山噴火による津波およびBC1450年のエーゲ海の火山噴火による津波が火山噴火による水蒸気爆発を原因とする津波である。だだし,クラカトア島とエーゲ海の例は火山島自体が噴火により大爆発を起こしたものであり,ハワイ島の例は火砕流が海中へ流入し水蒸気爆発を起こしたものである。火山活動により副次的に発生した山体崩壊または地滑りによって発生した津波としては,1914年の鹿児島湾の火山噴火による津波および1741年の北海道渡島大島の火山噴火による津波,1833年のセントオーガスチン火山の噴火に伴う津波があてはまる。ただし,1741年の津波に関しては,火山活動に伴う津波としては規模が大きく,火山噴火が直接的な原因と考えにくいため,断定できない。
地震活動による津波としては,1792年の島原半島の眉山崩壊に伴う津波とリツヤ湾の崖崩れによる津波があてはまる。
 火山活動・地滑りに起因する津波の特徴としては,海底地震により発生する津波に比べ波源域が狭く,コーシーポアソン波で表されるような分散性の強い津波となることが多いことである。ここに,コーシーポアソン波というのは,水の自由表面に突然与えられた擾乱のたあに発生する波を意味する。身近な例では,池面に小石を投げ入れたとき石の落下点から同心円状に波紋が広がっていく波がある。これがコーシーボアソン波である。コーシーボアソン波の特徴としては,波源において高い水位があっても,四方に伝播するにっれ,波高が急激に小さくなることがあげられる。また,波長により伝播速度が異なるという分散性のため,第一波は遠方に伝播するほど伝播速度の早い成分のみで構成された比較的波長の長い波となる。
 その他の特性としては,火山活動・地滑りに伴う津波は海岸付近で発生する場合が多いため,発生域の海岸に津波のエネルギーがトラップされることがある。津波のエネルギーの一部は,もちろん外海に伝播するが屈折または反射により海岸に戻ってくるエネルギーもあり,海岸線に沿って伝播するエッジ波またはエッジボアが形成されることもある。

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図-1 地殻プレートの移動

3.津波数値計算システム

3.1システムの構成
3.1.1システムの特徴
三陸沿岸の港湾開発・建設・整備・防災を担当する運輸省第二港湾建設局横浜調査設計事務所の協力により,三陸沿岸の津波評価を目的とした津波数値計算システム港湾津波II型(三陸)を開発した。なお,過去に,港湾技術研究所では,関東大地震の東京湾5),日本海申部地震津波の北秋田海岸6)および南海道地震津波の須崎湾7)を対象とした津波の数値計算を実施している。この際に利用した津波計算モデル港湾津波I型は,相田8)・9)の開発したモデルを改良したものであり,津波の非線形効果および陸上遡上効果などを考慮していないものであった。
 津波の数値計算は,津波波源を含む沖合の海域から対象とする海岸・港湾域にかけて,格子間隔の異なる領域を順次結合して計算する必要がある。これは,沖合では波長の長い津波が,水深が浅くなるにつれて波長が短くなるとともに海岸地形の影響を受けやすくなるためである。従来の津波数値計算では,はじめに津波の波長と水深の関係から各々の計算格子を用いる領域を設定し,各々の領域での水深データを作成し,これらの領域を計算プ
ログラム上でうまく結合させる必要があった。したがって,作成されたプログラムは,対象とする港湾に合わせて計算領域が設定・結合されるため,その港湾専用のプログラムとなり,他の地点に適用する際には,プログラムをその都度作成し直すのが実態であった。
 一方,電算機の容量・演算時間などの点から,津波の数値計算を2段階に分けて,始めに波源から対象地:域沖合までを比較的粗い格子で計算しておき(外海域計算),その結果を境界条件として,さらに細かな格子を用いて港湾域の計算を実行する(内海域計算)という方法がしばしぼ用いられている。しかしながら,もともと連続に扱うべき計算を分離して行うため,内海域で地形の近似が大きく変化した場合に,陸側からの反射波が変化し,沖側の境界条件に影響を及ぼす可能性がある。
 近年,記憶容量および演算時間に関する制約が少ないスーパー・コンピューターが手軽に利用できる環境が整いつつあり,また一方で,港湾計画策定の際の津波に対する影響評価,津波防災対策の検討における評価などの面で津波数値計算の必要性が高まってきている。開発した津波数値計算システムは,上記の問題点に対する省力化を図り,簡単な入力で多くの港湾および津波に対応できるように開発・整備したものである。なお,津波数値計算システム港湾津波II型(三陸)の特徴を整理すると下記のようになる。
(1)基本となるメイン・プログラムは1本とし,コントロール・データを書き換えることにより,多様な計算条件に対応できる。
(2)計算対象とする津波,港湾,および地形条件を実行時のデータとして指定できる。既往津波については,明治三陸大津波,昭和三陸大津波,十勝沖地震津波,チリ地震津波を指定できる。チリ地震津波の場合は,三陸沿岸における太平洋伝播計算出力結果をデータベースとして収録しており,自動的にこれを利用する。港湾にっいては,大船渡湾,釜石湾,久慈湾,八戸湾の4港湾の指定と,各々の港湾においてあらかじあ設定された地形(各港湾4種類)を指定できる。
(3)上記の港湾地形の他に,港湾地形データを修正して計算する必要が生じてきた場合(港湾計画等による防波堤,埋立等を評価する場合など),修正したデータファイルの指定により容易に計算できる。また,津波の断層モデルの別途指定入力(位置の変更,新規津波のパラメータ入力など)にも対応できる。
(4)計算値と痕跡高の相違が大きい場合には,痕跡高と一致するように波源のパラメータに補正を加えることができる。また,チリ地震津波の場合には,沖側境界で強制水位として与える方法および入射波成分のみを取り出して与える方法を選択できる。さらに,必要に応じてチリ津波の周期特性が補正できる。
(5)海底および陸域の底面摩擦を一様なマニングの粗度係数で与える方法および家屋密集地域での水流抵抗が大きい場合などに摩擦係数の分布をデータとして与える方法が選択できる。
(6)津波による被災想定などで,浸水域と浸水量,あるいは水位の絶対値などが問題となる場合には,あらかじあ計算:初期水位を朔望平均満潮位,朔望平均干潮位などに潮位条件が設定できる。
(7)湾口防波堤の開口部では,断面の急縮・急拡に関係する数値計算の支配方程式に考慮されていない運動量損失が考えられる。釜石湾の湾口防波堤に関しては,第3章で検討する運動量損失を考慮した数値計算ができる。
(8)計算結果として必要な情報を選択してリストに出力できる。また,プロッター等による作図の際に,簡便に利用できる形式でファイルに出力できる。
(9)将来的に他の港湾域を追加することが可能なように拡張性を考慮してある。また,三陸沿岸以外の地域においても同様なモデルの構築が可能なように条件・手法(入出力,サブルーチン等)の一般性を考慮している。
3.1.2計算領域と水深ヂータ
1)計算領域
チリ地震津波の太平洋伝播計算に関する計算領域は,図-2に示す極東アジア,オーストラリア,北米および南米に囲まれた太平洋全域が含まれる南緯60度から北緯60度,東経120度から西経70度までの範囲である。計算格子は,緯度・経度で10分(赤道距離で約18.5km)の1領域であり,総計算点数は約73万個である。なお,図中のコンターは,数値計算から求められたチリ地震津波の伝播の様子を描いたものである。数字は,津波発生からの経過時間を表す。
近地津波計算の対象としている領域は,北海道根室半島沖から宮城県沿岸部までの北緯36度20分から43度00分,東経139度40分から145度20分までの範囲であり,三陸沖に来襲する近地津波の発生域を網羅できる広さである。
計算領域は,三陸沿岸の水深分布に応じて33領域に分割している。図-3に分割された計算領域の格子間隔および他領域との対応関係を示す。計算領域は格子間隔によりAからFまでの6段階に分けられる。深海域は格子間隔5,400m(Aの1領域)とし,浅海域はしだいに格子を細かくし,1,800m(.B_l-B_2の2領域),600m(C_1-C_7の6領域),200m(D1-D_15の15領域),
100m(E_1-E_4の4領域),50m(F_1-F_4の4領域)まで細分化している。図-4に計算領域Aの水深分布を示す。図中において数字は東京湾中等潮位(T.P.Om)を基準としたm単位の水深であり,コンターは等水深線を意味する。また,図には,本研究で取り扱った近地津波の波源域を黒塗りで示している。なお,領域A以外の計算領域に関しては付図-1から付図-9に示す。
このような計算領域を採用した理由としては,三陸沿岸全域を200m程度の格子で表現することにより,三陸沿岸全域の津波波高が比較的良好な精度で求めることができることが明らかにされていること,そして計算の焦点をあてた港湾に関しては50m格子を採用することで陸上遡上を含む詳細な流況が計算できるためである。今のところ50m格子まで細分化された港湾は,大船渡湾,釜石湾,久慈湾,八戸湾の4港湾であるが,先に述べたように,必要に応じ,他の港湾域をシステムに追加することが可能なシステムとなっている。
2)水深データ
三陸沿岸に来襲する津波においても発生域や周期により被災を受ける港湾が異なる場合が多い。これは,港湾の地形形状のスケールが津波のスケールとほぼ同じオーダーになるときに大きな被災を受けることによる。特に,陸上遡上を考える場合には,地形の起伏が計算結果に大きな影響を及ぼす可能性がある。三陸沿岸においても国道の開通,鉄道の付設などにより地形が大きく変化した港湾が数多くあり,過去の津波の検証計算をする場合に注意しなければならない項目のひとつである。
 本システムにおいても,大船渡湾,釜石湾,久慈湾,八戸湾の陸ヒ遡上を考慮する港湾に関しては,計算対象としている明治,昭和三陸大津波来襲時,チリ地震津波来襲時および十勝沖地震津波来襲時の大船渡湾,釜石湾,久慈湾,八戸湾の推定地形データを古地形図,来襲時の記録などを基に作成している。さらに,現在建設済,建設中および計画中の津波防波堤を考慮した地形データについてもそれぞれ作成し,データベース化している。
 なお,計算格子200m以上の領域に関しては,精度の良いデータの入手が難しいことから,市販品の海図から読み取っている。なお,水深データの作成は以下の要領で実施している。すなわち,平行等深線を持つような平滑な海域ではデジタイザーにより等深線の座標を求めて格子データに変換し,複雑な等深線の場合には1点ずっ手作業により読み取っている。読み取り値は,格子の中心点(水位計算点)に対応した水深値であり,陸域との整合性をとるためにT.P.基準値に換算したものである。海溝・海嶺・岩礁等のように格子間隔に比べて小さいスケールで水深が急変するような場合には,1計算格子内の平均的な水深値を採用している。
陸域での地盤高は,1/2,500地形図をもとに1格子ずつ手作業で読み取っている。防波堤・護岸パラペット等のように格子間隔よりかなり小さな幅を持ち,1格子の地盤高として与えることが困難な場合には,流量計算点位置の水深として天端高を与えて,線境界として本間公式による越流計算を行うものとしている。なお,岸壁・護岸等のように特に天端の高い部分を持たない構造物では,通常の自然地形と同じ扱いとした。また,幅の広い河川堤防も1格子の地盤高として与えている。
3.1.3ファイル構成
 本システムのファイル構成を図-5に示す。入力データは大きく4種類のものに分けられる。コントロールデータ,水深データ,局所損失係数データ,チリ津波沖側境界値水位データそして計算出力地点データである。コントロールデータファイルは,対象とする港湾,津波,地形条件,潮位条件などを設定するものであり,詳細については次節で述べる。水深データは3種類のファイルに分離してデータベース化されている。No.11のファイルは計算領域AからDに関する水深データであり,No.12およびNo.13のファイルは詳細調査を行う4つの港湾の水深データである。この違港湾の水深データには,上述のように既往津波来襲当時,現況および湾口防波堤設置後の各地形データが収録されている。No.14の局所損失係数データは湾ロ防波堤開ロ部の運動量損失係数データを収録しているファイルであり,釜石湾の津波計算において湾ロ防波堤を考慮する計算に利用する。
No.51のチリ地震津波の水位データは,チリ地震津波の太平洋伝播計算における三陸沿岸の入射津波条件をデータベース化したものである。No.1からNo.3の計算結果出力地点データは,A,D,E,Fの各計算領域における津波水位の経時変化出力地点座標をデータ化したものである。この出力地点に関しては,エディターにより変更可能なように設定してある。
津波計算のプログラムは,SANRlKUの1本のプログラムとなっていが,コントロールデータの設定により,各種条件下の計算が可能なように77本のサブルーチンで構成されている。
出力ファイルは,各計算領域の水深・変位・最高水位・最大流速および水位の時間変化・流速の時間変化に関する出力データに関するものである。出力結果は,PLDURA,PLCONT,PLWAVEの3種類の図形出力プログラムを利用することにより,水位・流速分布,水深分布図,施設配置図,断層変位図,最大水位分布図,最大流速ベクトル図,水位・流速の経時変化図として図面出力される。
3.1.4コントロールデータ
コントロールデータは,計算の対象とする港湾,津波および出力方法を指示するものであり,図-6にそのリストを示す。コントロールデータにおいて指示する項目は6種類あり,その概要は下記のとおりである。
(1)対象港湾
対象港湾は計算を実施する港湾を選択するものである。ここで0を選択すると,防波堤の効果や陸上遡上を考慮しない20Om格子の三陸沿岸の概略津波水位に関する計算を行うことができる。また,1から4は,それぞれ八戸,久慈,釜石,大船渡港の陸上遡上計算を含む詳細な計算である。
(2)対象津波
対象津波は,対象とする津波を選択する項目である。現状においては,チリ地震津波,明治三陸大津波,昭和三陸大津波,十勝沖地震津波に関する地震断層パラメータがデータベースに収録されており,それぞれ0から3を選択することにより計算が実行できる。この4種類以外の津波に関しては,4を選択し,コントロ一ルデータの最下段にある地震断層パラメータを設定する必要がある。
(3)地形条件
地形条件においては,港湾の地形に関して既往津波来襲当時,現況および湾口防波堤の設置後のそれぞれが0から4で選択できる。5は,システムに登録されていない新規の地形条件に関するものであり,この場合は,ファイル番号10に新規の地形条件をセットする必要がある。
(4)オプション条件
オプション条件は,断層パラメータの補正,潮位条件およびチリ地震津波計算時の入力条件を選択するものである。0は,断層パラメータの補正なしで潮位を東京湾中等潮位(T.P.Om)とし,チリ地震津波の計算において進行波の条件で行うものである。1では,断層パラメータの補正値および潮位を任意に与えることが可能となり,チリ津波の入力も進行波および強制波の条件が選択できる。
(5)演算時間
演算時間の項目は,計算の再現時間,計算出力時間に関するものである。通常,近地津波においては2時間程度チリ地震津波においては5時間程度の再現が必要である,0を選択すると自動的にこの数字に設定される。計算時間を長くとる場合には,1を選択し,下段のデータセットに指示することになる。
(6)リスト出力
リスト出力は計算出力のうちLP紙面に出力する諸元を指示する項目である。
3.2近地津波の数値計算法
3.2.1支配方程式と差分式
津波の運動は,長波理論式で記述することができる。本システムでは,扱う計算領域に応じて非線形長波理論式と線形長波理論式の2つの基礎方程式を用いる。 非線形長波理論式すなわち浅水理論式は,水深と波長の比が小さいものとして導かれる。この近似では,圧力は静水圧分布となり,水平流速は鉛直方向に一様な分布となる。海底から水面までを鉛直方向に積分した形で非線形長波理論式を表すと次のようになる。
(1)
(2)
(3)
ここで,(x,y)は静水面に採った空間座標,tは時間座標,\etaは水位変動,hは静水深,DはD=h+\etaで表される全水深,gは重力加速度,fは運動量損失および底面摩擦の合算係数(M,N)はそれぞれ(x,y)方向の流量フラックス,Q=\sqrt{M^2+N^2}である。
以上の非線形長波理論式は,海岸の近くでの津波の挙動を表す際に用いられるものであり,水深の大きい波源域から対象地点沖合まではさらに簡単な式で十分に表現できる。すなわち,先に述べた長波近似に加えて,津波の波高と水深の比が小さい場合,微小振幅波としての取り扱いが可能となり,浅水理論における非線形項を無視できる。また,海底摩擦についても水深が大きい海域ではそれほど影響しないと考えられる。したがって,波源域から海岸近くまでは,次の線形長波理論式を用いることができる。
(4)
(5)
(6)
 なお,本津波数値解析システムにおいては,コントロールデータにおける(1)対象港湾において0を選択すると,計算領域全体が線形長波理論式で計算されることになる、また,1から4を選択すると水深が大きく,計算格子間隔の粗いAらC領域では全て線形理論長波計算としている。また,三陸沿岸をカバーするD領域では,計算対象港湾周辺の領域のみ非線形長波理論式とし,その継の領域では線形長波理論式を用いている。港湾域を含むE,F領域では非線形長波理論式とする。なお,陸域への遡上は最も細かな格子を用いるF領域でのみ考慮している。
 式(1)〜(6)の計算には,スタッガードリープフロック差分法を用いている。この差分法は,図-7に示した計算格子を用い,水位計算点と流量計算:点が1/2メッシュ分だけ空間方向にも時間方向にもずれていることに特徴がある。
 いま,計算格子(i,j,k)における水位を\eta_i,j^k,計算格子(i+1/2,j,k+1/2)におけるx方向の流量フラックスをM_i+1/2,j^k+1/2そして計算格子(i,j+1/2,h+1/2)におけるy方向の流量フラックスをN_i,j+1/2^k_1/2とおくと,線形長波理論の差分式は,
(7)
(8)
(9)
で表される。したがって,k+1/2の時間ステップまでの水位および流量フラックスの値が分かるとk+1時間ステップの水位が式(7)で,またん+3/2時間ステップの流量が式(8)および(9)で計算できる。さらに先の時間ステップの値は,同様にして,式(7)から(9)を順々に計算することにより求めることができる。ここに,\Delta{s}および\Delta{t}は空間および時間方向の差分間隔であり,h_i+1/2,jおよびh_i,j+1/2,jはそれぞれ計算格子(i+1/2,j)および(i,j+1/2)における静水深である。
非線形長波理論の差分式は,非線形項(移流項)と運動量損]失項があるため,若干複雑な形となり,
(10)
(11)
(12)
となる。ここに,
(13)
(14)
であり,sgn(F)は,F≧0のとき1,F<0のとき-1となる符号記号である。なお,非線形長波理論の差分式も陽的な形式で表されるため,線形理論の差分式と同様な手順で計算できる。
3,2.2運動量損失係数
本システムで取り扱っている運動量損失は,海底摩擦と湾ロ防波堤開口部の損失である。両者共に式(2)および(3)の最後の項の形で計算に取り込まれる。
海底摩擦損失は,マニングの粗度係数により評価する。
本システムでは,海底を規則的な断面を持つ大流路と考えて,マニングの粗度係数をn=0.025m^-1/3sとし,換算した運動量損失係数f_nを
(15)
とおく。ただし,先に述べたように摩擦係数を一定にしないで空間分布をデータとして与えた計算も可能である。
湾口防波堤の開口部では,断面の急縮・急拡に関係する運動量損失があり,この損失を数値計算において考慮できる。ただし,運動量損失係数f_Dの値については,今のところ,第3章に示した釜石湾に関する値f_D=0.5しか求まっていないため,数値計算も釜石湾の場合に限られる。
 なお,両者の運動量損失はf=f_B+f_Dの形で数値計算に取り込まれる。
3.2.3計算領域の結合
格子間隔の異なる領域を結合して同時に計算する際には次のような処理を行う。大格子領域で計算された流量を補間して小領域に与え,小格子領域で計算された水位のうち大格子領域の中心に相当する位置の値をそのまま大格子に与える。2分割のように両者の位置が一致しない場合は線形補間により与える。また,大小領域間の補間値を与える格子点として,図-8のように,小領域側を大領域側へ1格子余分にはみ出した形で設定する。
3.2.4初期条件
近地津波の数値計算の初期条件としては,地震断層モデルを用いて計算される海底地殻変動の鉛直成分を海面上の水位変動として与える方法を用いている。
地球内部に蓄積された歪みが,ある限界に達すると亀裂(断層)が生じ,これに沿って両側の地殻が急激にずれる。この現象が断層運動であり,断層面が食い違う際に地震動が生じる。海底下で断層運動が起こると海底に鉛直方向の隆起・沈降が生じ,津波の原因となる。
断層運動自体は,微細に見ると非常に複雑な過程を持っが,運動全体を巨視的に見ると簡単なモデルで表すことができる。最も単純なモデルは,図-9に示すような,長さL,幅Wの矩形の断層面が平均的にD(すべり量,あるいは食い違い量という)だけ互いにずれるものと考える。典型的なものとしては,水平方向にずれる横ずれ断層(右ずれ・左ずれ)や鉛直方向にずれる縦ずれ断層(正・逆断層)がある。断層の幾何学的特性は,すべりの方向\lambda,断層の走向\phi,断層面の傾斜角\deltaによって表される。以上の6個が断層パラメータであり,地震波解析により推定される。
上記の断層パラメータが与えられると,断層近傍の海底面(地表面)での鉛直変位分布は弾性論を基礎としたMansinha and Smylie10)の方法により計算で求めることができる。この鉛直変位を海面の水位として与えて,津波数値計算の初期条件とする。
 海底の変位を海面上に与える際には,変動全体が瞬時に完了するものとしている。実際の地震断層運動においては,変動は瞬聞的に生じるのではなく,数秒から100秒程度の継続時間を持つことが知られているが,津波の発生時の水位変動としては,瞬間的に海面上に変化が生じた場合と,1から2分の立ち上がり時間で完了させた場合とでは,ほとんど差がないことが確認されている11)。
 なお,本研究で検討した津波は,明治三陸大津波,昭和三陸大津波,十勝沖地震津波およびチリ地震津波であり,その断層パラメータ諸元を表-1に示す。ここに,縦ずれ成分の負号は逆断層であることを表し,横ずれ成分の負号は右ずれ断層であることを示す。
3.2.5境界条件
1)沖境界条件
沖側計算領域からの流出量については,進行性長波の特性曲線をもとに,流量を自由透過させるものとした。詳細は著者の報告12)による。なお,チリ地震津波の場合には,あらかじめ太平洋の伝播計算を行い,その結果得られた三陸沖側の境界位置での水位・流量をもとに,次の2通りの入力条件を選択できるようにした。
a)水位の強制入力
太平洋伝播計算により得られた三陸沖側の境界位置での水位を強制的に与える。この場合,太平洋伝播計算での計算格子間隔と三陸沿岸での計算格子間隔が異なるため,適宜補間を行っている。
b)入射波成分のみを取り出して与える方法
上記の方法において,太平洋伝播計算により得られる沖側境界地点での水位は,三陸沿岸への入射する成分と三陸沿岸からの反射波成分を含んでいる。そのままの水位を強制的に与えると,陸側の地形(計算格子間隔および水深)が異なった場合には陸からの反射波が太平洋伝播計算時と変わってくるため,沖側境界付近では物理的に意味のない振動が発生する。特にチリ地震津波の場合には,最高水位に達するまで5時間の再現計算を行うことから,沖側境界での処理が問題となってくる。ここでは,この現象を避けるため,まず,太平洋伝播計算時に沖側境界地点での水位変動を線形長波理論の特性曲線法12)により入射波成分と反射波成分に分離する。次に,三陸沿岸域計算の際には,このうちの入射波成分のみを与え,三陸沿岸計算で生じる陸からの反射波は沖側境界を自由透過させるという方法を採用する。
なお,図-10にチリ地震津波の時間水位変化を示す。
この津波の水位は,三陸沿岸の計算領域境界の計算結果であり,細線がチリ地震津波の太平洋伝播計算結果,太線が特性曲線法により分離した入射波成分である。
2)沿岸境界条件
線形長波理論式を用いて計算する場合には,内陸部への遡上を考慮せず,汀線を鉛直壁と考えて岸に直角な流量を0とした。また,計算の安定性のたあ,汀線より1個海側の格子の水深を10m以上にとり,海底の露出ズ生じないようにした。
3)陸上遡上境界条件
陸上への津波の遡上に関しては,計算の支配方程式として非線形長波理論式を用いる場合のみ考慮した。陸上への遡上を扱う場合には,岩崎・真野3)の方法を用いた。これは,図-11に示すように波先端部での地形を階段状に考え,陸側格子点の地盤高hより海側格子点の水{\etaが低い場合に,境界の線流量を0とし,高い場合に,その差を実水深Dと仮定して式,㈲を用いた流量計隻を行う方法である。なお,プログラム上は,D>10^-5の時に陸上遡上するものとして流量計算するものと1た。
4)越流境界条件
計算領域内の防波堤・堤防等において,水位がその天端高を越えた場合には,次の本間公式を用いて単位幅当りの越流量Qを計算する。
(16)
(17)
ここに,H_1,H_2は図-12に示すように天端高を基準とした堤前後の水深で,H_1≧H_2とする。
5)計算の時聞間隔
 計算全領域を一様の時聞間隔\delta{t}で計算する。差分スキームの安定条件(C.F,L.条件)
(18)
を各領域で満たすように,\Delta{t}は1sとした。ここに,h_maxは各計算領域の最大静水深を意味する。
6)その他の条件
通常の計算では,地形(水深)データをT.P.基準値(平均潮位)で作成しているため,津波来襲時の潮位はT.P.+0.Omで計算される。津波による被害予測などで,浸水域のひろがりや地盤上の水位の絶対値などが重要な場合には,計算初期潮位を自由に設定することができる。ただし,計算途中で潮位を変動させることはできない。
津波発生(チリ津波の場合は沖合入射開始)から計算で再現する時間を任意に設定できる。特に指定しない場合は,ほぼ三陸沿岸全体で最高水位が生じるのに十分な時間として,近地津波の場合は2時間,チリ津波の場合は5時間に設定している。なお,チリ津波の沖合入射開始は,チリ沖で実際に津波が発生してから21時間後である。
3.3遠地津波の数値計算法
3.3.1支配方程式と差分式
日本沿岸で発生する津波を考える場合では,せいぜい1,000km四方の海域を対象とするため平面座標の式で扱うことが多い。しかし,チリで発生した津波が我が国へ来襲するといった10,000km以上も伝播する現象を扱うには精度の点で問題があり,球面座標を用いる必要がある。また,遠地津波の場合はコリオリカと波数分散性を無視することはできなく線形分散波理論を支配方程式として考える必要がある14)。
 いま,地球を半Rの球体として考え,緯度,経度座標を(\lambda,\phi)とし,各方向の線流量を新たに(M,N)とすると,緯度,経度座標系の遠地津波の支配方程式は
(19)
(20)
(21)
(22)
となる。
線形分散波理論の差分式は,近地津波の差分式と同様な計算格子を用いると
(23)
(24)
(25)
となる。ここに,
(26)
である。ここに,\gammaは地球自転の角速度である。差分式から判断できるように,線形分散波理論の計算は,陰解法により行う。差分格子は,緯度,経度各10分の空間格子を採用している。時間間隔は,20sとしている。
3.3.2初期条件と境界条件
 遠地津波の初期条件に関しても近地津波の計算と同様に,断層パラメータを与えることによりMansinha andSmylieの方法を採用している。
沖側計算領域からの流出量に関する境界条件についても,近地津波の計算と同様に,進行性長波の特性曲線をもとに,流量を自由透過させている。海岸線の境界条件も内陸部への遡上は考慮せず汀線を鉛直壁と考えて岸に直角な流量を0としている。また,汀線より1個海側の格子の水深を100m以上にとり,海底の露出が生じないようにしている。
3.4津波数値計算の誤差とシステム利用上の留意事項
3.4.1誤差の分類
本文では,津波数値計算システムの開発例として三陸沿岸を対象とした港湾津波II型(三陸)を紹介した。
このシステムに組み込まれている津波数値計算モデルは,最新の研究成果を取り入れたものであるが,未だモデルの仮定上の問題数値計算上の誤差の問題などが残されており,津波の諸現象を完全に表現できるものとなっていない。ここでは,モデルの仮定を含む津波数値計算の誤差を整理するとともに本文で紹介した津波数値計算システムの利用上の留意点にっいて述べる。
実際の津波の現象と数値計算の差すなわち誤差を簡単にまとめると以下のようなる。まず,誤差として,数値計算に用いる支配方程式に関するものが考えられる。方程式を導く際に設けた仮定あるいは近似が実際の現象にどの程度近いかということである。方程式が定まると,次ぎに考えなければならないことは,支配方程式を電子計算機で数値的に解く際に発生する誤差に関してである。
この誤差は,初期条件,境界条件の精度に関するものと数値計算自体の誤差に分けることができる。初期値,境界値の誤差は,初期波形,水深分布,陸上遡上条件などの精度と考えても良い。数値計算自体の誤差は,電子計算機の有限桁性に由来する丸め誤差,連続量を離散量で表現することによる離散化誤差および微分を差分で近似することによる打ち切り誤差に分けられる。
3.4.2支配方程式の誤差
本文で紹介した津波数値計算システムでは,津波の伝播・変形を表すモデルとしで線形分散波理論式,線形長波理論式および非線形長波理論式が用いられている。これらの理論式は全て長波理論と呼ばれるものである。ここで,長波理論とは,波長水深比が小さく,重力加速度に比べ水粒子の鉛直加速度が小さい場合に用いられる近似である。
津波の諸現象を厳密に記述するためには,これらの近似を一切していない本来の質量保存則(連続の式)と運動量保存則(Navier-Stokesの式)
(27)
を適用する必要がある。ここに,(u,v,w)はそれぞれ(x,y,z)方向の流速を表し,tは時聞,\rhoは密度,pは圧力,gは重力加速度,\nuは動粘性係数である。なお,空間軸(x,y,z)は,式(28)から(30)の形から明らかなように水平に(x,y)軸,鉛直上向きに2軸を採用している。この式群を用いた数値計算としては,個体境界付近の乱流計算などごく少数の例があるが,計算機の容量および演算時間の関係で領域の狭い問題への適用に限られる。津波の現象のように数100km以上の広い領域を対象とする数値計算では,電子計算機が発達した今日でも実現不可能と考えられており,実際に適用した例もない。そこで,これらの式群を津波の現象に合わせて簡単化し,数値計算に利用することになる。簡単にするために適用した考え方と導かれた方程式を長波理論と呼んでいる。
上述の連続および運動量保存則に関する式群と長波理論式の関係は,以下のようになる。まず,津波は水の現象であるため密度を一定の流体と近似し,連続の式を
(31)
と簡単にする。さらに,この式を鉛直方向に積分し,海底条件と波形連続条件を適用すると
(32)
が求まる。いま,水平方向の線流量(単位幅流量)として(x,y)方向にそれぞれ(M,N)をと定義すると式(32)は,
(34)
となる。式(34)は,長波理論式である式(1)および(4)と同じ形をしている。式(27)との差は,密度を一定としたことと積分した際に適用した波形連続条件の誤差である。
津波が砕波する場合に波形連続条件が破綻することも考えられるが,通常,これらの条件は十分な精度を有しているものと考えることができる。したがって,少なくとも連続の式は,積分表示したことにより精度が極端に落ちるということがない。
長波理論式のうち運動量の式に関しても,連続の式と同様にNavier-Stokesの運動の式を鉛直方向に積分した方程式との差を検討すればよい。x方向とy方向の式は同種の形となるため,ここではx方向の式のみを取り上げる。Navier-Stokesの運動の式を鉛直方向に海底から水表面まで積分して,水表面の圧力条件,波形連続条件そして海底条件を適用すると
(35)
となる。ここに,Dw/Dtは
(36)
である。また,(u」,v」)は,断面平均流速(\bar{u}\bar{v})を用いて
(37)
分けたときの(x,y)方向の断面平均流速からのずれ流速を表す。式(28)から式(35)への展開では,積分する際に適用した水表面の圧力条件および波形連続条件が誤差を引き起こす唯一の因子である。ただし,連続の式と同様に津波が砕波する場合などを除くと大きな問題とならない。
非線形長波理論との大きな違いは,式(35)のうち,
(38)
が考慮されていないことである。1行目の項は,断面平均流速からのずれ流速成分に関する運動量輸送を表す移流項である。津波の流速分布が断面方向にほぼ一様であると近似できる場合には,この項の寄与がなくなる。しかし,鉛直方向に大きな流速の差が見られる場合には,この項を無視することができない。2行目の項は,分散項と呼ばれ水粒子の鉛直方向加速度に起因するものである。水面形および海底地形の影響で流線が曲がってくると遠心力が作用する。簡単には,この遠心力の効果により圧力分布が変化することを記述していると考えてよい。したがって,鉛直方向の圧力分布を静水圧分布として考えることができる場合には,無視できる項であるが,波形の曲率が大きくなると無視することができなくなる。長波理論においては,この項の一部を考慮した非線形分散波理論式という高次近似式も提案されている。3行目の項は,粘性の効果に関するものであり,海底摩擦の効果以外は,非線形長波理論式に考慮されていない。なお,Navier-Stokesの式では,渦径を考慮した細かい格子で計算をすることにより乱れの効果を計算することが可能である(乱流の直接解法)。しかしながら,鉛直方向に積分した方程式では,3次元的な特性のある乱れの効果を暗黙のうちに無視したことになっている。
一方,線形長波理論式と式㈹の差に,式(38)以外に
(39)
である。すなわち,線形長波理論式では,運動量の輸送を表す移流項全部,静水面から上の圧力勾配項,分散項そして粘性項が無視されている。なお,遠地津波の太平洋伝播に関する支配方程式として用いられている線形分散波理論式との差は,線形長波理論式とほぼ同じであるが,式の2行目の分散項のうちその一部が考慮された式となっている点が異なる。時々刻々の分散項の大きさそのものは小さいが,チリから伝播してくる津波に関しては伝播距離が長いため波数分散性が無視できなくなるためである。
以上のことから,本来の質量保存,運動量保存則に比べ長波理論式は,鉛直方向に積分したことにより3次元の現象を平面2次元の運動として取り扱うことができるたあ数値計算を行う上で有利であるが,移流項の一部,分散項そして粘性項などを無視された方程式となっているため,適用可能な諸条件をよく考えて数値計算に利用する必要がある。
再度,運動量保存則を整理すると,運動量保存則は
(局所項)+(圧力項)+(移流項)
+(分散項)+(粘性項)=0 (40)
の形式で表すことができる。これを近似した長波理論では,式(40)の第1項と第2項の線形項までの釣り合い
(41)
を線形長波理論式,式㈹の第1項,第2項,第3項の一部の組み合わせ
(42)
を非線形長波理論式,式㈹の第1項,第2項の一部,第4項の一部の組み合わせ
(43)
を線形分散波理論,そして式(40)の第1項,第2項の一部,第3項,第4項の一部の組み合わせを
(44)
非線形分散波理論と分類して呼んでいる。ここに,
(45)
である。近海で発生する津波を考える場合は主たる力の釣り合いは線形長波理論で近似でき,式(40)の第2項のうちの非線形項と第3項は水深が浅くなるまでさほど大きくはならず,第4項は全般的に小さいことが知られている。このような理由で,本津波数値解析システムでは,深海域に線形長波理論式,浅海域に非線形長波理論式を用いている。
深海域と浅海域の区別の目安を与えるものとして首藤15)の研究がある。首藤は,移動座標系で表された非線形分散波理論のひとつであるKakutaniの式16)を利用して,近似的であるが,非線形長波理論の非線形項の大きさが線形項のq%となる水深の条件として,
(46)
を導出している。ここで,h_0境界条件を与える地点の静水深,Aは入射津波の波高,Tは周期,mは海底勾配である。いま,三陸沿岸の平均的な海底勾配をm=1/50とし,水深h_0=500m地点の津波波高をA=lmとして式(46)を計算すると,図-13が求まる。図は,非線形項の大きさが線形項のそれぞれ10,50%となる津波周期と水深の関係を表したものである。三陸沿岸で来襲する津波の周期が15分程度であることを考慮すると非線形項の大きさが線形項の10%以上となる水深が40m程度であり,それ以上浅い地点では非線形項が無視できないことがわかる。なお,本システムのコントロールデータのうち(1)対象港湾において,0を選択すると,三陸沿岸の浅海域も線形理論式による計算が行われる。この計算で注意しなければならないことは,浅海域の津波の波速が非線形長波理論の圧力項(非線形項)および移流項の効果により,線形理論の波速より大きくなり,入射波と反射波の位相がずれる可能性があることである。この位相のずれは,津波の最大水位および流速分布に影響する可能性がある。したがって,この計算は,あくまでも三陸沿岸全域の概算値を調べる目的に利用しなければならない。
また,首藤は,非線形項と分散項の比較に関しても考察しており,分散項の大きさが非線形項のq%となる水深の条件として,
(47)
を導出している。ここで,H=(h_0/h)^3/4である。図-14は,分散項の大きさが非線形項のそれぞれ1,10%となる津波周期と水深の関係を表したものであり,海底勾配をm=1/50,水深h_0=500m地点の津波波高をA=1mとした結果が実線海底勾配をm=1/200,水深h_0=80m地点の津波波高をA=3mとした結果が点線である。実線で表される結果は,平均的な三陸沿岸を想定したものであり,周期15分に対して分散項が非線形項の10%となるのが水深0.5mと相当浅くなってからのことであることがわかる。一方,点線で表されるは,津波がソリトン分裂を起こしたことで話題となった北秋田海岸の日本海中部地震津波を想定したものである。この場合は,津波の周期が5分程度のものであるから,水深23m付近すなわち汀線から5,000m程度の地点から分散項が非線形項の10%を越える大きさになることがわかる。なお,本システムで用いている支配方程式は,線形理論と非線形長波理論であるため,このような分散項が重要となる津波を扱うことができない。ソリトン分裂する津波の数値計算モデルとしては,一次元伝播問題に関していくつかの計算法が開発されている17),18)。しかしながら,実用的な平面2次元伝播モデルに関しては,将来の研究に期待するしかない。
なお,本津波数値解析システムでモデル化して取り扱っている湾口防波堤の運動量損失および防波堤・防潮堤からの越流の問題は,長波理論式に断面平均流速からのずれ流速成分の運動量輸送に関する移流項と粘性・乱れの効果が考慮されていないために起こる問題のひとつである。このような,津波の局所的な現象に関しては,長波理論式に考慮されていない項が重要となる場合があり,これらの項が計算誤差に直接結びつくので注意が必要である。
3.4.3離散化誤差と打ち切り誤差
 初期値および境界値に関する誤差を除くと数値計算上の誤差の中で重要なものは,離散化誤差と打ち切り誤差である。丸め誤差は倍精度計算をすることにより小さく抑えることができることが知られている19)。離散化誤差と打ち切り誤差は,共に津波の水位を減衰させるように働くため,防災対策調査を目的とした数値計算を考える上で危険である。ここでは,離散化誤差と長波理論式をスタッガードリープフロッグ差分法を用いて数値計算を行う場合の打ち切り誤差について検討する。
 連続量を差分化して離散量として扱うために生ずる離散化誤差は,有限フーリエ解析のエリアジングの問題と考えてよい。すなわち,有限フーリエ級数展開においてサンプリング間隔(差分法では格子間隔に相当する)の2倍を波長とする成分(ナイキスト波長)までしか表現できず,これより波長の短い成分はナイキスト波長を軸として波長の長い成分方向へ折り重ねられる問題である。
この誤差は,津波の初期波形のみを議論する範囲では大きな問題とならないが,その後伝播することにより打ち切り誤差の効果と重なり合って徐々にその影響が現れる。
なお,図-15は,無次元波長1.0(静水面上の水の体積が99%である長さと定義),波高水深比0.02の孤立波を例にして,分割数の違いによる離散化誤差(エリアジングの効果)を調べたものである。1波長あたりの分割数Nに応じて,モードがN/2に相当するナイキスト波数\kappa=\pi\Delta{s}おいてフーリエスペクトルが打ち切られるため,それより高波数(高モード)成分が低波数側に折り重ねられる様子がわかる。片対数図で描かれているため多少わかりずらいが,各分割数のフーリエスペクトルの積分値は,当然一致している。
線形長波理論の打ち切り誤差に関しては,厳密な解析手法も提案されているが19),ここでは,疑似微分方程式とその近似式を用いて誤差特性を説明する。いま,簡単なため水平床上の1次元伝播の場合を仮定した線形長波理論の差分式について考える。差分式は,式(7)および(8)からy方向に関係する項を無視したものとなる。その差分式の各項をテーラー展開を用いて逆に微分形にすると
(48)
(49)
となる。ここに,C_Dは線形長波理論の波速である。式(48)は疑似微分方程式と呼ばれ,差分式と数学的に等価な方程式である。本来解くべき方程式に比べ,高階微分の項が加わっており,この項が数値計算上の打ち切り誤差を意味している。したがって,数値計算では,線形長波理論式(4)から(6)を解くっもりが,実際には打ち切り誤差を含む疑似微分方程式(48)および(49)を解いていることになっているのである。
式(48)および(49)のうち線形長波理論を表す本来の項と打ち切り誤差を表す項の第1項のみを考え,両式から線流量Mを消去すると,疑似微分方程式の近似式として
(50)
が求まる。ここに,
(51)
である。式(50)は,線形分散波理論式を時間変化に関して1階の微分方程式表示にした
(52)
と類似な形をしており,計算の格子聞隔に関係する分散性を有する方程式である。式(50)に\eta=\alphae^ik(x-Ct)で表される波を代入すると,
(53)
なる式(50)の波速が求まる。式(53)の形から,波数kが大きいほど波速が遅くなり,伝播するにっれて波数の違いにより波が分かれていく性質があることがわかる。この
性質は,計算の格子間隔に関係するため数値分散性と呼んでいる。少なくとも発生初期の津波は,通常の風浪と異なり,局所的な水位の高まりで近似できる。これをフーリエ展開して成分波に分けると波数の長いものから短いものまでエネルギーが分布する幅広のスペクトル形となる。したがって,過度に数値分散性が大きくなるような計算格子を採用すると水位の高まりを構成している各成分が徐々に別れていき計算される水位が低くなるという問題が発生する。なお,図-16は,\xi=0.5および\xi=0.9に関して式(53)で表される波速と本来の線形長波理論の波速の比C/C_0(実線)と\Delta{s}/Lの関係について調べたものである。図から,スタッガードリープフロッグ差分法の数値分散性は,\xiの値で多少異なるもののナイキスト波数(図では\delta{s}/L=0.5)近傍の成分において数値分散性の影響が大きいことがわかる。したがって,ナイキスト波数近傍は離散化誤差の影響も強く受けるため,津波の主要なフーリエスペクトル成分の波数がナイキスト波数に比べて十分小さくなるように計算格子を決める必要がある。
非線形長波理論式の打ち切り誤差も,線形長波理論と同様な解析を行うことにより,その性質を考察することができる。ただし,非線形長波理論式は移流項を考慮しており,しかも風上差分で近似するため,数値計算結果に数値分散性以外に数値粘性も作用する。非線形長波理論式の数値計算に対応する疑似微分方程式の詳細は,式が煩雑となるため省略するが,線形理論式の場合と同様に打ち切り誤差の第1次近似を考慮し,1次元伝播現象に簡単化して表すと,
(54)
となる。ここで,第1項および第2項がそれぞれ局所項と線形の圧力項,第3項が残りの圧力項と移流項が結びっいた非線形項,第4項が数値分散項そして第5項が数値粘性項である。数値分散項および数値粘性項ともに差分の格子間隔に関係し,格子間隔が粗く,また波数が大きいほど影響が大きくなる傾向がある。
以上のような津波計算の離散化誤差および打ち切り誤差を小さく抑える基準としては,
(55)
を満たす計算格子\Delta_s、を採用することが提案されている19),20)。ここで,Lは津波の波長,Tは津波の周期をさす。式(55)は,津波の波長に比べ,1/20から1/30以上細かい格子間隔を適用する必要があることを示唆しており,また,波速C_0は水深の平方根に比例するため,水深が浅くなると共に計算格子をだんだん小さくする必要もある。
さらに計算の精度を上げる手段として,打ち切り誤差の性質を逆に利用する方法がある。先に述べたように津波計算に用いているスタッガードリープフロッグ差分法は,打ち切り誤差として数値分散性を有している。本来の津波の伝播も線形分散波理論式で近似できるような分散性があるため,両者がほぼ同じ大きさになる条件で計算を行えば良いのである。式(50)および式(52)の分散項の係数の比を1とする条件は,
(56)
で与えられる。
本津波数値計算システムにおいては,式(55)および式(56)の両者をできるだけ満足するように計算領域を分割し,差分格子を決めている。ただし,式(55)の形から明らかなように,数値計算上の誤差に,入射津波の周期により変化する。本論文で取り上げた4つの津波に関しては,比較的周期が長いため大きな問題がないと考えられるが,小規模で周期の短い津波を対象とする場合に注意が必要となる。もし,式(55)および式(56)の条件を満足しない津波の数値計算を本システムを用いて行う場合には,計算格子の間隔をさらに小さく設定しなおす必要がある。
なお,非線形理論式を用いた計算において,図-17に見られるような計算結果に鋸の歯のようにギザギザした水面分布の結果が得られ,それが徐々に減衰していくことがある。この現象は,非線形分散波理論のひとつであるK-dV方程式21)
(57)
と式(54)を比較すると理解できる。すなわち,数値粘性項を除くと両方程式は分散項の係数が異なるが類似な形をしており,物理的な本来の非線形項と数値的な分散項が干渉し,数値的なソリトン分裂を起こしているためである。その後,K-dV方程式にない粘性項が働き徐々に水位が減衰していくのである。今までところ,本システムを利用した計算では,数値ソリトン分裂が発生した例がないが,北秋田海岸,仙台市沿岸,九十九里浜など遠浅海岸を対象とした津波計算をする場合に注意しなければならない問題のひとつである。
3.4.4境界条件の誤差
 津波数値計算においては,港湾の地形を含む水深分布,陸上遡上条件といった境界条件の設定法が誤差発生の要因となることがある。既往の津波を対象として数値計算を行う際には,津波来襲当時の港湾地形を条件として計算する必要がある。これは,津波のスケールが港湾地形のスケールとほぼ同じオーダーであることから判断できるように,地形により津波の挙動が大きく変化するためである。少なくとも三陸沿岸は,近年になって港湾整備が進み,また国道および鉄道が付設され,陸上地形を含む港湾全体の地形が津波来襲時から大幅に変化している。
本システムにおいては,対象とした4つの津波に関する来襲当時の港湾地形および水深分布を古地図,東大地震研資料,津波被害予測報告書などを参考にして可能な限り精度の高いデータとして収録している。
 陸上遡上条件に関しては,津波先端の陸上地形を階差的に近似しているため,物理的に正しい条件が用いられていない。そこで,
(58)
を満たすように格子間隔\Delta{s}を定めなければならないことが報告されている22)。ここで,mは水深100mまでの平均的な海底勾配を意味する。また,海岸付近は地形が入り組んでいる場合が多く,数値計算においては少なくとも対象とする海岸の特徴的な地形または人工構造物を10格子以上で近似する必要がある。これは,数値計算で表し得る最小の波長(ナイキスト波長)が2\Delta{s}であり,この成分が最も離散化誤差および打ち切り誤差が大きくなるので,このナイキスト波長からなるべく離すという考え方である。なお,本システムでは,以上の条件を平均的に満足する格子間隔として50mを採用している。適用する港湾地形によっては,さらに細かい格子にする必要も考えられる。
差分法を用いた津波数値計算における境界条件の影響によってどうしても再現できない現象がある。それは回し津波と呼ばれる現象である。すなわち,V字型の谷の片斜面に沿って陸上遡上した津波が反対側の斜面に沿って海に戻る特異的な津波である。身近かな例では,コップに少々の水を入れ,コップを回すと中の水がコップの壁面に沿って流れる状態を考えるとよい。このような水の流れを再現できない理由は,非線形長波理論式の移流項の計算精度が悪いことも原因のひとつあるが,地形境界が階差的に近似されるため,階差状の各部分から局所的な反射が起こり進行方向の運動量が減衰するためである23)。この問題の解消方法のひとつは,地形を写像して直線境界に置き換えることであるが,湾の形状が複雑な場合はこれも難しい。
3.4.5初期波形の誤差
 防災構造物の効果を調べるために津波数値計算がよく用いられる。まず,過去の大きな津波の再現計算を行い,津波波源を確定し,その後計画断面に関して計算するという段階を踏む。
 再現計算においては既存の断層パラメータを初期値に選び計算することが多いが,中には上述の留意事項に注意して計算を行っても痕跡値と計算値が一致せず当惑することがある。この理由は簡単である。すなわち,既存の断層パラメータを定めた計算モデルとこの再現計算モデルの計算誤差の大きさが異なるためである。すなわち,津波初期波形が同じであっても水深データや計算格子網の違いに起因する誤差の現れ方が異なるのである。既存の断層パラメータは,これを導くために用いた計算モデルにおいては最適なものと考えても良いが,他の計算モデルでは単なるひとつの近似値にすぎず,他のパラメータが最適なものとなる可能性があるのである。また,地震の情報から推定された断層パラメータを利用する場合に関しても,Manshinha-Smylieの水平地盤上の弾性係数を一定とした微少変位弾性理論に基づく海底地盤の変位を利用するため,津波の初期波形が正確に求められる訳ではない。したがって,このような場合には津波波源を最初に導くのと同様に既存の断層パラメータから試行錯誤により最適値を新たに求めることを考えなければならない。
 以上のような場合に本システムでは,断層のすべり量を補正するたあの係数を入力データとして与えることができる。また,対象湾の湾口部と湾奥部で計算値と痕跡高の比が系統的にずれているような場合は,津波の周期特性が異なっている可能性が高く,断層の幅を変えることにより,ある程度対応できる。チリ津波の場合には,大型湾の固有周期と津波の周期がほぼ一致することによる共振の影響で津波が大きくなりすぎた計算例がある。
太平洋伝播計算自体が完全な再現性をもっものではないため,沖側境界で与える津波の振幅・周期ともに補正が必要となる場合があるたあ,チリ津波の入射波振幅および周期を補正することができるように設定している。
3.4.6その他の誤差
 本節では,支配方程式,離散化,打ち切り,境界条件初期条件に係わる誤差の概要に関して述べてきた。この他の大きな誤差発生の要因としては,海底地盤の立ち上がり時間,領域接含,津波の屈折に関する誤差がある。地震運動による海底地盤の立ち上がりに関しては,相田11)の研究がある。相田の報告によると60s程度の立ち上がり時間であれば,瞬時に立ち上がったものと考えて問題がないとされる。厳密には,津波波源の短軸方向の
距離を波速で除した時間内で地盤の変動が終了するかどうか検討すればよい。三陸近海で発生した既往の大規模な津波の場合は,全て瞬時に立ち上がると考えてもさしつかえなく,本数値解析システムにおいても立ち上がり時間は考慮していない。
 領域接合に係わる誤差には,まず,外海域と内海域に分離した計算の場合の海岸からの反射波の問題が考えられる。この場合,通常,外海域計算の入射波と反射波が重合した結果を内海域計算の境界条件とするのであるが,外海域の計算において,海岸が粗く近似され,また陸上遡上が考慮されていないことにより海岸からの反射波の精度が著しく劣ることが誤差発生の要因となる。この誤差を小さく抑えるたあには,外海域の計算結果を入射波と反射波に分離し,入射波のみを内海域計算に入力し,反射波を境界外へ自由透過させればよい。本津波数値解析システムにおいては,チリ地震津波の場合にこの方法を採用している。なお,三陸近海で発生する近地津波に関しては,各計算領域が連続して計算されるようにシステム化されているため,この問題を考慮する必要がない。
 次に考えなけれぼならないことは,大格子領域と小格子領域の内挿上の問題である。本津波数値解析システムにおいても,2分割および3分割の領域結合がある。この誤差は,\Delta{s}を小領域の格子,津波として波長Lの正弦波に仮定すると,2分割で5π^2(\Delta{s}/L)^2程度,3分割で10π^2(\Delta{s}/L)^2と評価できる。したがって,誤差を5%程度に抑えるためには,
(59)
とする必要がある。なお,この条件は式(59)に比べ多少厳しいものとなっているので注意が必要である。
 津波の屈折の現象も,近似的にスネルの法則に従う。
浅海域の波浪の屈折変形解析を実施したことのある技術者なら,計算の伝播時間間隔を変えると結果が多少異なることを経験している。津波の数値計算においても同様な現象が発生する。すなわち,格子間隔が粗い場合には,地形近似が粗くなるとともに所定長さあたりのスネルの法則を考慮する回数が少なくなり,本来の現象に比べ屈折が少なく評価される。この問題は,岬などで遮蔽された海岸,津波の進行方向に直交する軸となる湾などで特に重要となってくると思われる。なお,津波の屈折現象を精度良く取り扱うたあの格子間隔の条件としては,佐山ら24)の研究がある。

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式(1〜59)
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図-2 チリ地震津波の太平洋伝播計算に関する計算領域
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図-3 近地津波計算領域の分割
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図-4 計算領域A
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図-5 システムのファイル構成
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図-6 コントロールデータファイル
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図-7 差分格子
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図-8 計算領域の結合
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図-9地震断層モデルとパラメータ
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表-1 対象津波の断層パラメータ
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図-10 三陸沖のチリ地震津波の水位変化
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図-11 陸上遡上境界条件の模式図
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図-12 防波堤からの越流に関する模式図
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図-13 非線形項の重要度
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図-14 分散項の重要度
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図-15 分割数による離散化誤差の違い
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図-16 スタッガードリーププロッグ差分法の数値分散性
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図-17 数値ソリトン分裂を起こした計算例

4.防波堤開口部の運動量損失

4.1水理模型実験の概要と計算条件
4.1.1水理模型実験
湾口防波堤の津波の低減効果としては,(1)湾内への流入量の抑制,(2)津波の共振の防止,そして(3)防波堤開口部前後の運動量損失の3種類が考えられる。これらの効果のうち(1)および(2)に関しては,防波堤を考慮した平面2次元の津波数値計算を行うだけで,計算結果にその効果を考慮することができる。しかしながら,(3)の運動量損失の効果は,海底摩擦による運動量損失と同様に長波理論から導かれる数値計算の支配方程式に取り込んでいない効果であるため,モデル化して考慮する必要がある。
防波堤開ロ部の運動量損失としては,防波堤の形状抵抗による効果,防波堤開ロ部前後で乱れが発生する効果,また開口部付近で流速分布が水平・鉛直方向ともに大きく変化することによる効果などが考えられる。なかでも主体的なものは,防波堤の形状抵抗による運動量損失である。
従来の津波数値計算においては,この運動量損失を表現するために流速の2乗に比例する損失項を長波理論式に組み込んだ計算が行われている。運動量損失の係数に関しては,管路の急縮。急拡部に関して経験的に求めたエネルギー損失の値を用いている例が多い。線形長波理論式を用いる計算であるならば,定常状態において圧力勾配と運動量損失が釣り合うものとしてエネルギー損失係数を利用したモデル化4)が可能であるが,非線形長波理論を用いた計算では,支配方程式自体に移流効果が含まれており,線形長波理論を用いた計算のような定式化が難しい。
ここでは,質量,運動量およびエネルギーの各保存則を利用した簡単な理論解析と釜石湾口防波堤に関する水理模型実験結果25)と数値計算の比較検討から,湾ロ防波堤開口部の運動量損失に関する考察を行う。
水理模型実験は,図-18に示す361m×20mの平面水槽の中央部に釜石港の湾口防波堤をモデル化したハの字型防波堤を設置して行われている。実験では,定常流および規則波を対象として,開口部近傍の水位・流況を詳細に測定している。実験に用いた防波堤の形状は,マウンドの高さが0.7m,幅が3.28m,防波堤ケーソンの高さが0.66m,幅が0.6mであり,防波堤開ロ部の長さが6.Omである。図中のa,bは,水理模型実験と数値計算の空間波形に関する比較検討のために設定した測線である。なお,実験水槽の防波堤マウンド以外の水深は1.2mで一様である。
4.1.2湾口防波堤開口部前後のエネルギー損失と運動量損失の関係
 まず,数値計算を利用した湾口防波堤の運動量損失に関する検討の前に,定常流を前提としたマクロ的に見た場合の運動量損失係数とエネルギー損失係数の関係を調べてみる。湾口防波堤開ロ部前後の質量保存,運動量保存およびエネルギー保存則は,検査面1および2を防波堤の上流と下流に採用し,上流部の断面平均流速と水位をそれぞれV_1およびD_1,下流部の断面平均流速および水深をV_2、およびD_2,開口部の断面平均流速をV_Bとおくとそれぞれ
(60)
(61)
(62)
で表される。ここに,D_Bは防波堤開口部の水位,C_Dは防波堤の単位幅あたりの運動量損失係数であり,\xiはエネルギー損失係数である。いま,防波堤前後の水位差を\Delta{D}=D_1-D_2で表し,上流水深に比べ水位差が小さくO(\Delta{D}/D_1)《1のような場合を考え,質量保存則を用いて下流の断面平均流速を上流の流速と水位で表すと
(63)
と近似できる。これらの近似式を用いて運動量損失係数とエネルギー損失係数を上流側の流速,水深,開口部の流速で表すとO(\Delta{D}/D_1)の近似で
(64)
(65)
となり,運動量損失係数とエネルギー損失係数の関係は,
(66)
で表される。したがって,マクロ的な運動量損失係数はエネルギー損失係数の1/2の値となる。
 定常流を用いた水理模型実験結果によると,防波堤開口部の流速と防波堤前後の水位差には,図-19のような関係がある。図には,等エネルギー係数に関する曲線が描かれており,黒丸が水理模型実験結果である。水理模型実験結果から求められるエネルギー損失係数は,1.0程度の値となっていることがわかる。したがって,従来の管路に関する断面の急縮に伴う損失と急拡に伴う損失の合算値で与えられるエネルギー損失係数1.5に比べ小さい値となっている。これは,断面の急縮と急拡が連続する防波堤前後にそのまま適用できないこと,防波堤開ロ部の流速が厳密な意味で断面平均流速となっていないことなどが原因として考えられる。どちらにしてもエネルギー損失係数と運動量損失係数の関係は,式(66)の関係があり,釜石湾ロ防波堤の水理模型実験結果から推定される運動量損失係数C_Dは0.5程度の値である。ただし,このエネルギー損失係数と運動量損失係数は,あくまでも防波堤による損失をマクロ的に見たものであり,線形長波理論式を用いた数値計算であるならばかまわないが,移流項を考慮した非線形長波理論式を用いた数値計算にそのまま適用できる値でないことに注意が必要である。
4.1.3計算方法
運動量損失の検討に用いた水理模型実験は,境界流速0.1m/s,防波堤開ロ部流速が1.1m/sで,防波堤内外で7cmの水位差が生じた定常流のケースである。運動量損失係数の推定には,水理模型実験と同条件の運動量損失項を組み入れた数値計算を多数行い,計算結果と実験結果が適合する運動量損失係数を試行錯誤により見いだす方法を用いている。数値計算に用いた支配方程式は,運動量損失項を含む線形長波理論式と非線形長波理論式である。
線形長波理論式を用いた計算における運動量損失は,マクロ的に考えた運動量損失係数をそのまま用いることができる。計算の支配方程式は,伊藤ら4)と同様に
(67)
(68)
(69)
とする。ただし,運動量損失は,防波堤開口部の1計算格子のみに作用させるものとする。また,運動量損失の項に計算の格子間隔が含まれているのは,数値計算において運動量損失を考慮する1格子で損失に見合う水位差を発生させることを考えたものである。すなわち,防波堤開口部の位置を(i+1/2,j)とし,式(68)の第1項を無視し,差分化した場合,
(70)
となり,少なくとも定常流の場合の水位差が,関係を用いて近似的に
(71)
と表わし得ることを考慮したことによる。
非線形長波理論を用いた計算においては,断面の急縮・急拡に伴う移流効果が支配方程式に考慮されているため,防波堤の形状抵抗が主体のマクロ的に導かれた運動量損失係数をそのまま利用することができない。考慮されていない現象として考えられることは,断面の急拡・急縮に伴う鉛直方向の流速分布の非一様化と乱れの発生・拡散である。このような運動量損失に対して流速の2乗に関係する項を考えると,計算の支配方程式は,
(72)
(73)
(74)
となる。ここで,f_Dは運動量損失係数である。運動量損失項の定式化として線形長波理論式を用いる場合と同様な差分格子に関係したモデル化も考えられるが,非線形長波理論式を用いる場合の損失は,断面の急拡・急縮に伴う鉛直方向の流速分布の非一様化と乱れの発生・拡散の効果(非線形長波理論式で考慮されていない移流効果に対する補正)であることから,流速の鉛直断面分布および渦径に関係する考えられる全水深を用いたモデル化を行っている。
なお,運動量損失項が移流効果に関する補正という意味から考えると運動量に関する支配方程式に運動量補正係数\beta_xx,\beta_xy,\beta_yx,\beta_yyを導入して
(75)
(76)
とモデル化することがより妥当であると考えられる。ただし,各運動量補正係数が一定値になるとは考えにくく,それぞれの係数を求めるのが難しいため,ここでは流速の2乗に関係するモデル化を行っている。
計算条件としては,線形長波理論計算,非線形長波理論計算ともに空間格子間隔0.2mで水理実験水槽を近似し,時間格子間隔を0.02sとし,計算の再現時間を80s間としている。流れの条件としては,定常流を用いているが,立ち上がり時間5sで所定の流量となるように上流境界条件を設定している。流れ下端の条件は,水理模型実験と同様な強制流量の条件を与えている。
計算ケースとしては,線形長波理論計算が運動量損失係数としてC_D=0.0,0.15,0.2,0.5の4通り,非線形長波理論計算が運動量損失係数としてf_D=0.0,0.5,1.0,1.5の4通りに変えて行っている。また,非線形長波理論計算においては,参考のため,境界流速(上流端および下流端)が水理模型実験に比べ小さい0.05m/sおよび0.075m/sの場合に関しても実施している。
4.2数値計算結果
1)線形長波理論式による計算結果
測線aおよびbの水位,流速絶対値に関する線形長波理論の計算結果を図-20および図-21に示す。線形長波理論計算では,運動量損失係数の違いによる絶対流速値の違いは見られない。これは,上流および下流で強制流速を与えており,しかも水位が一定の条件で流量が計算されるためである。ただし,防波堤開日部付近では,断面の急縮・急拡のため流速の変化が起きている。水位に関する計算結果では,運動量損失係数と関係する防波堤前後の水位差が見られる。水理模型実験結果の水位差は7cmであり,運動量補正係数C_D=0.5の計算結果と一致する。なお,運動量損失係数として0.0を与えた場合の計算結果は図に描いていないが,この場合の計算水位は基準水位である0.0から変化しない。以上のことから,防波堤開口部に関する数値計算に線形長波理論式を利用する場合には,マクロ的に算定した運動量損失係数を用いた数値計算を行えばよいことがわかる。
2)非線形長波理論式による計算結果
非線形長波理論の計算結果を図-22および図-23に示す。図は図-20および図-21と同様な水位,流速絶対値に関するものであり,水理模型実験結果との比較をしたものである。図から非線形長波理論式の計算結果は,運動量損失係数f_Dを0.0としても水位差が発生し,支配方程式に含まれる移流項のため防波堤による運動量損失の一部が考慮されたものとなっていることがわかる。ただし,移流項だけで表すことができない損失があり,水理実験結果と適合する計算結果は,運動量損失係数f_D=0.5の結果である。流速に関しても,測線aにおいて,f_D=0.5のときに良好に再現されていることがわかる。測線bの防波堤背後においては,一致度があまり良くない。これは,測線bでは防波堤マウンド下流部で逆流が発生するなど複雑な鉛直流速分布になっており,実験値が表面付近の流速測定値であるのに対し,計算が断面平均値であるためと考えられる。
流れが定常に達した計算開始後80sの流速分布を図-24に示す。この計算結果は,損失係数f_D=0.5に関するものであり,図中の数字はcm/s単位の流速値である。防波堤が特殊な形状をしているため,流れ方向からみた防波堤右側手前と防波堤左側背後に流速が小さい死水域が見られる。また,防波堤下流には,主流の左右に移流項の効果による渦が発生している。なお,線形長波理論計算の結果では,このような死水域渦の発生が見られない。死水域の発生が防波堤前後の圧力差に強い関係があり,線形理論計算をそのまま適用するだけでは,防波堤の形状抵抗が考慮できないのである。
水理模型実験に比べ小さな境界流速を与えた計算結果を図-25および図-26に示す。この計算は,計算結果と水理模型実験結果がよく適合した運動量擾失係数f_D=0.5を用いたものである。境界の流速値が小さくなると防波堤前後の水位差も小さくなる様子が見られる。また,流速も同様な傾向を示す。
4.3運動量損失係数f_Dの評価
非線形長波理論式を用いた計算による防波堤開ロ部流速V_aと防波堤前後の水位\Delta{D}に関して図-19と同様な形にまとめたものが図-27である。図には,運動量損失係数および開口部流速を変化させた数値計算結果をそれぞれ白三角および黒丸で示している。先に述べたように水理実験結果をよく説明できる値としては,運動量損失係数f_D=0.5であり,また,境界流速が小さいケースも,運動量損失係数f_D=0.5で水理模型実験の開ロ部流速と防波堤前後の水位差の関係と一致する結果となることがわかる。
以上のことから,釜石港の湾口防波堤のマクロ的に算定したエネルギー損失係数は\xi=1.0程度,運動量損失係数はC_D=0.5程度であり,同等な現象を再現するために非線形長波理論式を用いた数値計算で適用する運動量損失係数はf_D=0.5であると考えることができる。
なお,ここでは,釜石港の湾口防波堤の運動量損失に関する検討を行ったが,他の地点の湾口防波堤に適用するためには,エネルギー損失係数および運動量損失係数が,防波:堤の開口幅,水深,法線形状,流速条件などによってどのように変化するかをより詳細に調べる必要がある。また,運動量損失項のモデル化として,ここでは全水深を用いた定式化を行っているが,これが適切であるかどうか再度検討する必要もある。また,定常の現象と異なり非定常の場合には,付加質量の効果も無視できないたあ,非定常流に関する検討も実施しなければならない。

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式(60〜76)
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図-18 水理模型実験の平面図
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図-19 水理模型実験の防波堤開口部流速と流速と水位差の関係
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図-20 水位空間波形の比較
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図-21 流速絶対値分布の比較(線形長波理論)
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図-22 水位空間波形の比較(非線型長波理論)
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図-23 流速絶対値分布の比較(非線形長波理論)
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図-24 流速ベクトルの空間分布(非線形長波理論)
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図-25 境界流速の違いによる水位空間波形の差(非線形長波理論)
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図-26 境界流速の違いによる流速絶対値分布の差(非線形長波理論)
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図-27 数値計算の防波堤開ロ部流速と水位の関係

5.津波数値計算結果

対象とした港湾は,大船渡湾,釜石湾,久慈湾および八戸湾である。このうち大船渡湾に関しては,1967年に総延長736mの湾ロ防波堤が完成しており,釜石湾は,現在,湾口防波堤が建設されている地点である。
対象とした津波は,チリ地震津波,明治三陸大津波,昭和三陸大津波,十勝沖地震津波のうち各港湾において被害が大きかった3種類の津波である。大船渡湾,釜石湾そして久慈湾に関しては,チリ地震津波,明治三陸大津波および昭和三陸大津波が対象であり,八戸湾は,チリ地震津波,昭和三陸大津波,十勝沖地震津波である。
数値計算の精度に関しては,統一的な整理するために相田16)により提案された痕跡値と計算値の対数幾何平均K,対数幾何標準偏差\kappa,
(71)
(72)
を導入した。ここに,\eta_iおよびR_iは,それぞれ各地点の計算水位および痕跡高である。幾何平均K,幾何標準偏差\kappaの値としては,従来の津波数値計算結果から判断すると,Kで0.8から1.2程度,\kappaで1.2から1.6程度が普通である。
検証計算の精度の検討に利用した津波の痕跡記録は,チリ地震津波に関して津波合同調査班,岩手県チリ地震津波災害復興誌の報告,明治および昭和三陸大津波に関して松尾,内務大臣官房,中央気象台,東京大学地震研究所,首藤らの報告,十勝沖地震津波に関して岸ら,八戸港工事事務所の報告である。なお,痕跡値の利用にあたっては,各報告の記載事項から信頼度の高い値のみを採用している。
なお,三陸沿岸の既往津波来襲時の潮位は,チリ地震津波,明治三陸大津波,昭和三陸大津波の到達時刻でT.P.+0から+30cm程度であり,十勝沖地震津波がT.P.-70c皿程度である。津波による被災調査などで陸上浸水が問題となる場合には,あらかじめ計算初期水位を対象とする津波来襲時の潮位に設定するのが望ましい。ここでは,陸上の痕跡値との比較を行うため,津波来襲時の潮位を考慮した計算を行っている。
なお,大船渡湾と釜石湾に関するチリ津波の計算においては,湾口防波堤を考慮した仮想的な計算も実施している。大船渡湾に関しては湾ロ防波堤による運動量損失係数を考慮していないが,釜石湾に関しては第3章で検討した湾口防波堤による運動量損失を考慮した場合と考慮しない場合の2種類にっいて計算を行っている。
5.1大船渡湾
5.1.11960年チリ地震津波
1)検証計算
まず,太平洋伝播計算結果の三陸沖合いの出力波形をそのまま入射波として用いた計算を行った。相田の指標の値は,K=・1.06,\kappa=1.19である。過去の津波数値計算例から判断すると,通常がKで0.8から1.2程度であるため,湾全体で平均的に良好に一致する結果となったと考えても良い。しかしながら,痕跡高の高いところで計算値が小さく,痕跡高が低いところで計算値が大きくなる傾向が見られる。痕跡高が大きい地点が湾奥部であることから,入射津波の周期特性が実際とやや異なったため共振の効果が十分に現れなかった可能性がある。
 さらに計算精度をあげるために,入射津波の周期と波高をそれぞれ0.8および0.65倍した数値計算を行った。
この結果は,K=0.99,\kappa=1.14となり,非常に良い再現性が見られた。図-28は,最高水位分布に関する数値計算結果を等水位線および痕跡値が明かとなっている地点における津波水位を表したものである。図中の数値は,T.P.を基準としたm単位の津波水位であり,括弧内の数字は痕跡高である。また,黒塗りの部分は陸上浸水域を表す。
 大船渡湾のチリ地震津波は,湾ロ部で1.8m程度,湾奥部で4.5m程度の水位となり,湾全体でみると,湾口部から湾奥部に向かって水位が徐々に高くなっている。
したがって,湾口部を節とし,湾奥部を腹とした湾の固有振動との共振が起こっていると判断できる。また,津波の陸上浸水域は,湾奥部へ流れ込む盛川に沿って市街地まで拡がっており,津波による被害が大きかったことを示唆する。
2)湾口防波堤を考慮した計算
 検証計算と同じ断層パラメータを用いた湾口防波堤設置後の仮想的なチリ地震津波の最大水位分布に関する数値計算結果を図-29に示す。図から,津波の水位は,湾口部で1.2m程度,湾奥部で1.9m程度となり,湾ロ防波堤により半減していることがわかる。陸上浸水域に関しても,茶屋前地区および埋立地,大船渡漁港細浦地区などの防潮堤がなく地盤高の低い区域に限られている。
ただし,これらの地区の浸水深は大きくても数10cm程度であり,大きな災害をもたらすことがないと考えられる。なお,防波堤開口部の津波流速は,流入および流出ともほぼ同じ5.5m/s程度となる。
 なお,湾ロ防波堤の効果は,平均的に見ると50%以上の津波水位の低減となって現れる。
5、1.2明治三陸大津波
 既往の断層パラメータをそのまま用いて実施した再現計算結果では,湾全体の平均値としてK=0.90となり,やや大きい傾向となった。そこで,断層のすべり量を0.9倍とした計算を行った結果,K=0.96,\kappa=1.25とに良好な結果が得られた。図-30に津波最大水位分布,等水位線および代表的な地点での数値を示す。
大船渡湾の明治三陸大津波は,湾口部で4.5m,湾奥部で4.5m程度の水位である。チリ地震津波と湾奥部の水位がほぼ等しいが,湾奥と湾中央の中間部分に水位の低い海域があり,湾全体の様相は大きく異なる。また,昭和三陸大津波と同様に湾内の局所的な地形と干渉し,所々に水位が高くなる箇所がある。
5.1.3昭和三陸大津波
 昭和三陸大津波に関して相田の推定した地震断層パラメータをそのまま用いた計算では,K=0.90となり,痕跡値に比べ計算値が若干大きい結果となった。そこで,地震断層パラメータを0.90倍とし,再度数:値計算を行ったところ,K=0.96,\kappa=1.19の比較的良好な結果が得られた。なお,痕跡値として採用した資料は,松尾28)の報告である。
 図-31に最大水位分布図を示す。昭和三陸大津波の水位は,湾ロ部で5.0m以上と高く,湾中央部付近が2.4m程度,湾奥部が3.Om程度である。チリ地震津波に比べ津波の周期5から6分と短いため,湾ロ部に比べ湾奥では水位が低く,湾全体で共振するような現象は見られない。しかし,湾口に直面した石浜地区で局所的に水位が高くなるなど,湾内の局所的な地形と干渉して水位が高くなっている地点がある。湾奥の水位が3.Om程度であり,陸上浸水域はチリ地震津波や明治三陸大津波と同等な範囲となる。
5.2釜石湾
5.2.1チリ沖地震津波
1)検証計算
平洋伝播計算による入射波形をそのまま用いた結果では,計算値が2倍近く大きく,K=0.55,\kappa=1.14となった。\kappa値を1に近づけるために,三陸沖の境界地点から入射させる津波水位の振幅を補正した再現計算を行った。まずはじめに,振幅を0.5倍に補正した計算を実施したが,この時のK値は0.94であった。そこで,さらに0.50×0.94=0.47倍とした計算を実施した。この結果,K=1.0となった。地点間のばらっきは\kappa=1.16である。
図-32に検証計算の最大津波水位分布を示す。釜石湾のチリ地震津波の水位は,湾口部で1.5m程度,湾奥部で3m程度となる。チリ地震津波は周期が長いため,釜石湾内の局所的な地形と干渉して水位が高くなるようなことがなく,湾ロから湾奥にかけて徐々に水位が高くなっている。
2)湾口防波堤を考慮した計算
上述の補正した入力条件を用いて,湾ロ防波堤を考慮した場合の計算結果が図-33および図-34である。図-33は第3章で検討した湾ロ防波堤による損失を考慮しないもので,図-34は考慮した結果である。
運動量損失を考慮しない結果では,湾ロ部で1.2m,湾中央部で1.4m,湾奥の釜石港で1.6m程度となる。
検証計算に比べ,湾奥部で1.2m程度の減衰が見られる。
また,湾中央部の水位も2.4mから1.4mと低くなっており,湾口防波堤の効果が比較的大きい。
運動量損失を考慮した計算結果では,湾中央部で1.2m,湾奥部で1.4m程度となって運動量損失を考慮しないものに比べ0.2m程度水位が低い結果となった。明治三陸大津波,昭和三陸大津波のような近地津波の場合に比べて周期が長いため,湾ロ防波堤内でほぼ一様に水位が低減する。なお,開口部での流速も,損失を考慮しない場合は4m/s程度であるが,損失を考慮すると2、5m/s程度と軽減される。
なお,湾口防波堤を考慮した計算では,運動量損失を考慮しなくても津波の陸上浸水が見られない。また,湾ロ防波堤の設置により,隣接の両石湾でも津波水位がかなり低下する。これは,湾口防波堤設置により釜石湾と両石湾の合わせた固有振動特性が変化するたあと考えられる。
5.2,2明治三陸大津波
相田による波源モデルをそのまま用いた計算結果では計算値が15%程度大きく,K=0.87,\kappa=1.19であった。さらにK値を1.0に近づけるために,断層パラメータのすべり量,すなわち,津波発生時の初期水位を補正した再現計算を行った。はじめに,すべり量を補正係数0.87倍とした計算を実施したが,津波計算は非線形であるため,湾内の水位は単純に0.87倍とはならず,この時のK値は0,91であった。そこで,さらに0.86×0.91=0.78に,非線形性の余裕を見て0.75倍とした計算を実施した。この結果,K=1。0となり,地点間のばらっきは\kappa=1.13となった。
図-35に検証計算の最大水位分布図を示す。釜石湾の明治三陸大津波は,チリ地震津波に比べ周期が10分程度と短いため,湾内の局所的な小湾と干渉し合って複雑な様相を呈する。すなわち,基本的には湾口から湾奥にかけて徐々に水位が上昇しており,それに湾内の局所的な地形に応答した水位上昇が見られるのである。なお,対象とした3津波の中では,湾口部の水位が2.5m程度と最も高く,湾奥の水位も6mを越え,釜石市街地に大規模な津:波浸水が見られる。
5.2.3昭和三陸大津波
相田による波源モデルをそのまま用いた計算結果では,計算値が2倍近く大きく,K=0.58,\kappa=1.28であった。そこで,K値を1.0に近づけるために,断層パラメータのすべり量を補正した再現計算を行った。はじめに,すべり量を0.58倍に補正した計算を実施したが,この時のK値は0.80であった。そこで,さらに0.58×0.80=0.46に,余裕を見て0.45倍とした計算を実施した。この結果,K=0.96となった。なお,地点間のばらつきは\kappa=1.24である。
図-36に再現計算の最大水位分布図を示す。釜石湾の昭和三陸大津波は,周期が5分程度と短いため,湾内の局所的な地形と干渉し合って複雑な様相を呈する。しかし,急峻な地形のため,陸上浸水は湾奥部で大きく,他の地点ではごく限られた範囲にとどまる。
5.3久慈湾
5.3.1チリ地震津波
太平洋伝播計算による入射波形をそのまま用いた結果では,計算値がやや大きく,K=0.80となった。K値を1に近づけるために入射津波の振幅を0.80倍した計算をすることによりκ=0.99,\kappa=1.24となり,良好な再現性が得られた。
図-37に最大水位分布図を示す。久慈湾のチリ地震津波は,湾口部で3m程度,湾奥部で4.5m,程度の水位となる。ただし,痕跡高は湾全体でほぼ一様に4m程度であるのに対し,計算では湾の奥ほと高く,しかも湾の北側(半崎地区)でピークとなるなど,ややばらっきが大きい。
5.3.2明治三陸大津波
図-38に最大水位分布図を示す。久慈湾の明治三陸大津波の痕跡地点として明かとなっているのは1箇所のみであり,浸水域も不明であるため,再現性について十分に検討はできない。既往の断層パラメータによる計算結果では,唯一の痕跡高の11mに相当する地点での計算水位が7.42mであったため,断層パラメータのすべり量を1.5倍して再計算している。
久慈湾の明治三陸津波の周期は,8から10分とやや短いため,津波の陸岸からの反射と重複したピークが顕著に現れている。また,久慈川に沿って広範囲な陸上浸水が見られる。
5.3.3昭和三陸大津波
1)検証計算
図-39に最大水位分布図を示す。久慈湾の昭和三陸大津波に関する痕跡資料としては,松尾,中央気象台,地震研究所の報告がある。松尾の報告は他の資料に比べかなり大きいため,ここでは中央気象台の値と比較する。
中央気象台の報告によると,久慈湾の昭和三陸大津波の記録は3地点であり,検証計算結果との比較では,K=0.98,\kappa=1.03と良好な再現性が得られ,再計算を行わなかった。
昭和三陸大津波は,湾全体として見ると5から9mの水位であり,周期が7から8分と短いため,湾内の局所的な地形からの反射波が重なり,複雑な最大水位分布となる。
5.4八戸湾
5.4.1チリ地震津波
太平洋伝播計算結果による沖合入射波形をそのまま用いた計算では,K=0.54,\kappa=1.21となった。そこで,沖側の入射波振幅を0.54倍として再度計算した結果,図-40}に示すようにK=0.99,\kappa=1.19とほぼ一致する結果となった。計算値はほぼ3.4から4.4mで一様であるが,痕跡高の高い地点で計算水位が低く,痕跡高の低い地点で計算水位が高いという傾向が見られる。
5.4.2昭和三陸大津波
痕跡高測定地点の位置が明確にされている資料として,地震研究所による痕跡高および浸水域の記録がある。痕跡高としては鮫地区付近の2.9皿のみである。なお,中央気象台による津波の高さは,鮫で2.1mとなっている。
相田による波源モデルをそのまま用いた場合で,図一弔に示すようにK=0.99,\kappa=1.15とほぼ一致する結果となった。ただし,痕跡高は1地点のみであり,当時の地形が明確ではないこと,および,津波の周期が短いため図のコンターに示すように局所的に最高水位がかなり異なることから,周辺の計算格子3点で比較して平均したものである。
鮫における痕跡高自体も,地震研究所と中央気象台の値ではかなり異なっており,計算結果に見られるように,津波の実態としても場所によって水位がかなり異なっていたものと推定される。他に資料がないため,津波振幅に関する補正は行わないで予測計算を実施した。
5,4.3十勝沖地震津波
痕跡高・浸水域に関する資料としては,岸および八戸港工事事務所による調査結果を用いた。
相田の波源モデルを1.4倍に補正した計算を行った。
その結果,八戸においてK=1.08,\kappa=1.19となった。
そこで,さらに1.08倍,すなわち1.4×1.08=1.51倍として再度計算した結果,図-42に示すようにK=1.01,\kappa=1.20とほぼ一致する結果となった。
5.5津波数値計算の精度
対象港湾で平均的に痕跡高と一致する再現性を得るためには,津波振幅(断層パラメータのすべり量)に対して補正係数を掛けて,一致するまで繰り返し計算を行う必要がある。K値は(痕跡高)/(計算水位)の対数幾何平均であるため,線形の方程式を用いる場合は,K値そのものが補正係数となるが,三陸沿岸で扱うような津波は非線形が極めて強いため,これを何度か繰り返して計算する必要がある。本研究では,今回は,いずれの津波に対しても1から2回の繰り返し計算により,ほぼK=1.0の結果が得られた。
地点間については,計算結果全体について\kappa=1.2前後であり,±20%程度のばらっきで一致していると評価される。痕跡高の信頼性や,計算では再現できないスケールの局所的な水位ピークなどが痕跡高として反映されている可能性などを考えると,本研究で示した計算は十分に良好な再現性が得られたものと言える。なお,地点間のばらつきが大きい場合や,痕跡高と計算値が系統的にずれているような場合には,大船渡港のチリ地震津波において示したように来襲津波の周期を補正する操作により,ばらつきを小さくすることができることも併せて確認された。

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式(71〜72)
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図-28 検証計算の津波最大水位分布(大船渡湾,チリ地震津波)
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図-29 湾口防波堤を考慮した計算の津波最大水位分布(大船渡湾,チリ地震津波)
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図-30 検証計算の津波最大水位分布(大船渡湾,明治三陸大津波)
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図-31 検証計算の津波最大水位分布(大船渡湾,昭和三陸大津波)
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図-32 検証計算の津波最大水位分布(釜石湾,チリ地震津波)
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図-33 湾口防波堤を考慮した計算の津波最大水位分布(釜石湾,チリ地震津波,運動量損失なし)
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図-34 湾口防波堤を考慮した計算の津波最大水位分布(釜石湾,チリ地震津波,運動量損失あり)
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図-35 検証計算の津波最大水位分布(釜石湾,明治三陸津波)
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図-36 検証計算の津波最大水位分布(釜石湾ss,昭和三陸津波)
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図-37 検証計算の津波最大分布(久慈湾,チリ地震津波)
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図-38 検証計算の津波最大水位分布(久慈湾,明治三陸津波)
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図-39 検証計算の津波最大水位分布(久慈湾,昭和三陸津波)
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図-40 検証計算の津波最大水位分布(八戸湾,チリ地震津波)
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図-41 検証計算の津波最大水位分布(八戸湾,昭和三陸津波)
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図-41 検証計算の津波最大水位分布(八戸湾,昭和三陸津波)

6.おわりに

本論文では,三陸沿岸を対象とした津波数値計算システムの概要を述べるとともに数値計算精度に関する考察結果を報告した。主要な結論をまとめると以下のようになる。
(1)三陸沿岸の津波対策調査に資することを目的として,津波数値解析システム港溝津波II型(三陸)を開発した。この津波数値解析システムは,近地津波および遠地津波を対象として陸上遡上を含む詳細な津波の挙動を検証・予測するものである。また,防波堤の位置ならびに計画,現況,既往津波来襲時の各地形データが支援システムとしてデータベース化されており,迅速かつ適切な津波数値計算の実施のための工夫が施されているシステムである。
(2)釜石湾口防波堤の水理模型実験結果を用いて湾口防波堤の運動量損失に関する検討を行った結果,湾口防波堤前後のエネルギー損失係数が1.0程度であること,またこのエネルギー減衰量に見合う効果を数値計算で再現するためには,運動量損失係数を0.5として計算を行えば良いことを明かとした。ただし,これらの損失係数は,防波堤の形状,設置水深などにより変化する可能性があり,そのまま他の湾口防波堤に適用することできない。(3)開発した津波数値計算システムを用いて大船渡,釜石,久慈,八戸の4港湾を対象とした検証計算を行った結果,既往の断層パラメータをそのまま用いた計算では平均的に見ると2割程度の誤差がある結果となること,誤差を小さく抑えるためには断層パラメータを修正した計算を行えば良いことがわかった。
(4)湾口防波堤による津波減衰効果に関しては,対象港湾および対象津波により異なるが,50%程度の効果があること,防波堤開口部の運動量損失を考慮するとさらに10%程度の減衰効果があることを明かにした。

謝辞

津波数値計算システムの開発および本論文のとりまとあにあたっては,運輸省第二港湾建設局横浜調査設計事務所の片山前所長,菅原前調査課長,八木橋係長,黒川係長および港湾技術研究所野田節男次長,堀江 毅海洋水理部長,高山知司水工部長の指導・助言を得た。また,港湾技術研究所海洋エネルギー利用研究室の青野利夫氏(科学技術庁特別研究員),柴木秀之(研修生)ならびに株式会社INAの山木滋氏の助力を得た。
ここに記して謝意を表す。
(1993年3月31日受付)

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18)長尾昌朋・後藤智明・首籐伸夫:非線形分散波の数値計算,第32回海岸工学講演会論文集,pp.114〜118,1985.
19)今村文彦・後藤智明:差分法による津波計算の打ち切り誤差,土木学会論文集,Vol.375,pp.241〜250,1986.
20)長谷川賢一・鈴木孝夫・稲垣和男・首藤伸夫:津波の数値計算における格子間隔と時間積分間隔に関する研究,土木学会論文集,Vol.381,pp.111〜120,1987.
21) Korteweg, D. J. and G. de Vries : On the change of form of long waves advancing in a rectangular canal, and on a new type of long stationary waves, J. F. M., Vol. 27, pp 815〜827, 1967.
22)後藤智明・首籐伸夫:各種津波遡上計算法と波先端条件の比較,第27回海岸工学講演会論文集,1980.
23)後藤智明・首籐伸夫:河川津波の遡上計算,第28回海岸工学講演会論文集,1981.
24)佐山順二・後藤智明・首籐伸夫:屈折に関する津波数値計算の誤差,第33回海岸工学講演会論文集,pp.204〜208,1986.
25)谷本勝利・木村克俊・宮崎啓司:津波防波堤開ロ部潜堤の安定性に関する実験的研究,港湾技術研究所報告,Vol.27,No.4,pp.93〜121,1988.
26) Aida, I.: Reliability of a tsunami sourcmodel derived from fault parameters, J. Phy. of Earth, Vol.26,pp.57〜73, 1978.

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付図-1 計算領域B_1
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付図-2 計算領域B_2
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付図-3 計算領域C_1
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付図-4 計算領域C_2
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付図-5 計算領域C_3
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付図-6 計算領域C_4
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付図-7 計算領域C_5
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付図-8 計算領域C_6
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付図-9 計算領域C_7

主要記号一覧表

C_0:線形長波の波速(m/s)
D:全水深(m)
f:運動量損失係数
f_B:海底摩擦による運動量損失係数
f_D:湾ロ防波堤開ロ部の運動量損失係数
g:重力加速度(=9.8m/s^2)
h:静水深(m)
K:痕跡値と計算値の対数幾何平均
k:波数(m^-1)
L:津波の波長(m)
(M,N):(x,y)方向の線流量(流量フラックス)
(m^2・s)
m:海底勾配
n:マニングの粗度係数(m^-1/3s)
R:地球の半径(m)
L:津波の周期(S)
t:時問座標(s)
V_B:防波堤開口部の流速(m/s)
(x,y):水平座標(m)
\beta:運動量補正係数
\eta:津披の水位(m)
\Delta{s}:計算格子間隔(m)
\Delta{t}:時間間隔(s)
\gamma:コリオリ因子(s^-1)
(\lambda,,\Phi):水平座標(緯度・経度)
\kappa:痕跡値と計算値の対数幾何標準偏差

港湾技術研究所報告 第32巻第3号(1993.9) 2.沿岸波浪観測値を利用した重回帰波浪予測 青野利夫*・後藤智明**・佐藤一央***

要旨

 観測波浪値,観測風速値,気圧分布値を説明変数とする重回帰モデルは,現地で比較的簡便に運用できる波浪予測システムとして用いられている。
しかしながら,気圧データの作成に人手がかかることや,予測値が高波浪の立ち上がり時に観測波浪に対して時間的に遅れるという問題があった。
 本研究では,これらの課題を克服するための研究の第1段階として,手始めに予測対象地点を除いた日本沿岸において取得された観測波浪データだけを説明変数とする重回帰波浪予測モデルの構築に関して検討を行った。得られた結論は,以下のとおりである。
(1)波浪観測地点相互の相関解析から,日本沿岸における波浪の伝達時間は,日本海側では九州から北海道までの時問がほぼ1日で,冬期が速く夏期が遅いのに対し,太平洋側では夏期を除いて1日半程度とほぼ同じ速度であることが明かとなった。
(2)相関解析結果をもとに観測波高だけで24時間先までの波高および周期の予測が可能な重回帰モデルを開発した。本モデルは,目的変数となる地点と説明変数となる地点との出現時間差を考慮した2段階の波高予測を行うことで,重回帰モデル特有の予測値と観測値の間に見られる時間的遅れの問題を解消した。
キーワード:観測波浪,相互相関,出現時間差,波浪予測,2段階重回帰モデル

*水工部海洋エネルギー利用研究室(科学技術庁特別研究員)
**水工部海洋エネルギー利用研究室長
***水工部海洋エネルギー利用研究室

REPORT OF PORT AND HARBOUR RESEARCH INSTITUTE Vol.32, No. 3 (Sept. 1993) Wave Prediction by Multiple Regression Model with Coastal Wave Observation Data Toshio AONO* Chiaki GOTO** Kazuo SATO***

Synopsis
One of the wave forecasting models applied relatively easily to port construction sites is a multiple regression model which uses the observation values of wave, wind velocity, and barometric distribution. However, this model involves the following problems: a) It requires too much man power for obtaining barometric distribution data; and b) It delays the estimation of high wave rising, because the observed wave height acquired at the objective point is used as an explanatory variable. This study, as a rudimentary study to solve the above problems, examined the multiple regression model only using the wave observation values acquired at non-objective points. Obtained results are as follows; (1)From the results of cross correlation analysis for observed wave height, an appearance time difference of high wave is about one day from Kyushu to Hokkaido in Japan sea. In Pacific ocean side, phase difference is 1.5 days except summer. (2)wave prediction model to forecast the wave height accurately up to 24 hours after using observed wave height only. This model solves the problem of phase difference between forecasted and observed values by using the two-step multiple regression model.
Key Words: coastal observed wave height, cross correlation, lag time, wave forecasting, two-step multiple regression model

*Ocean Energy Utilization Laboratory, Hydraulic Engineering Division (National Institute Post Doctoral Fellow)
**Chief, Ocean Energy Utilization Laboratory, Hydraulic Engineering Division
***Ocean Energy Utilization Laboratory, Hydraulic Engineering Division

目次

1はじめに 43
2波浪予測モデルに関する既住の研究 43
2.1物理モデル 43
2.2統計モデル 44
3沿岸観測波浪の相互相関解析 44
3.1解析対象地点と解析期間 44
3.2相互相関解析方法 45
3.3相互相関解析結果 46
4重回帰波浪予測モデルの構築 46
4.1重回帰波浪予測モデルの構築方法 51
4.22段階重回帰モデルの構築 52
4.32段階重回帰波浪予測モデルによる予測結果 54
4.4観測波浪重回帰波浪予測モデルの適用性に関する考察 59
5おわりに 63

1.はじめに

港湾構造物の施工・維持管理あるいは航路の安全確保を考慮する上で,的確な波浪予測情報の提供が必要不可欠である。
代表的な波浪予測モデルとしては,有義波法やスペクトル法などの波浪推算モデル1),重回帰モデルなどの統計モデル,また波浪推算モデルと統計モデルを組み合わせた物理因子重回帰モデル2)などがある。なかでも,観測波浪値,観測風速値,気圧分布値を説明変数とする重回帰モデル3),4)は,現地で比較的簡便に運用できる波浪予測システムとして用いられている。しかしながら,気圧分布データの作成に人手がかかることや,予測地点の現時刻の波高を説明変数としているため予測される高波浪の立ち上がりが観測波浪に対して遅れるといった問題があった。物理因子重回帰モデルは,この問題を解決しているが,気象データの作成と入力にかかる労力が重回帰モデルよりも大きく,現地で簡便に行うにはまだ問題がある。
本研究では,これらの課題を克服するための研究の第1段階として,気象データを用いずに予測対象地点を除いた日本沿岸において取得された観測波浪データだけを説明変数とする重回帰波浪予測モデルの構築に関して検討を行った。これは,日本近傍で通常見られるような大気現象の南西から北東方向への移動と類似の傾向が波浪についても想定できるという考えが基礎となっている。
したがって,各観測地点の波高値の経時変化から地点間の平均的な出現時刻のずれ(出現時間差)がわかれば,この出現時間差を重回帰モデルに取り入れることにより,気象データを用いずに比較的良好な波浪予測が可能であると考えられる。また本研究で得られた知見を,従来の重回帰モデルや物理因子重回帰モデにブイードバックすることができれば,より高精度な予測モデルの構築が可能となる。

2、波浪予測モデルに関する既往の研究

 現在,波浪予測に用いられている手法としては図-1に示すように波浪推算モデルに代表される物理モデルと統計モデルおよび両者を組み込んだハイブリッド型の物理因子重回帰モデルが存在する。工学的な意味での波浪予測の始まりは1943年の第2次世界大戦にまでさかのぼる。前年の北アフリカの上陸作戦において,連合軍はしばしば大しけに遭遇し補給が充分に行われずそのため大苦戦を強いられた。この経験から波浪予測の必要性が指摘され,米国海軍水路部が中心となって波浪予測モデルの開発が行われた,いわゆる有義波法5)である。ここで開発された有義波法は,直ちにその年の秋に行われたノルマンディー上陸作戦で用いられ,作戦を成功に導く要因となった。
波浪予測モデルはその後も改良が続けられ,有義波法はSMB法6)へと発展しさらにスペクトルの概念に基づくPNJ法6)が提案され,現在はエネルギー平衡方程式にへ基づくスペクトル法8)による波浪推算手法が確立されつつある状況にある。一方,波浪観測の技術の進歩と観測データの蓄積が進んできたことから,近年統計的な手法を用いた波浪予測手法が提案されている。この統計的波浪予測手法では,適切な統計モデルを用いれば非常に精度の高い予測結果が得られ,しかも波浪推算モデルに比較して簡便に予測が行えるという利点がある。ここでは,波浪予測モデルを物理モデルと統計モデルにわけて概説する。なお物理因子重回帰モデルについては著者らによる文献2)を参照されたい。
2.1物理モデル
物理モデルは,波浪の発生・発達,伝播,減衰を理論的な考察を基に定式化したモデルで,具体的には有義波法やスペクトル法などの波浪推算モデルである。特に,スペクトル法では用いた仮定や経験式の違いから様々なモデルが提案されている。波浪予測を目的とした手法として代表的なものには,気象庁の波浪予測業務で用いられているMRI法8)がある。また最近では,有義波法とスペクトル法を組み合わせたハイブリッド・パラメータ法が提案されている9)。
代表的なスペクトル法であるMRI法の基本式は,式(1)のエネルギー平衡方程式で表される。
(1)
ここで,S(f,^\theta)は波浪の方向スペクトル,fは周波数,\thetaは成分波の波向,C_gは成分波の群速度,F_1は風から波へ供給されるエネルギー,F_2はエネルギー消散である。
物理モデルでは,このスペクトル法に代表されるように波浪の発達・伝播が理論的に定式化されており一般性の高い手法であることから,波浪予測モデルとして最適な手法であるといえる。しかしながら,これらの物理モデルには風から波浪へのエネルギー輸送機構や砕波によるエネルギー消散などの未解明な問題が多く存在し,そのため多くの経験式や係数が用いられている。これらの経験式の検証は,高波浪時を対象にして行われているため,沿岸での波浪予測にとって最も重要となる1.Om前後の稼働限界波高に相当する低波高時での予測精度が著しく低下する。現状では,この問題を解決するのは困難である。
2.2統計モデル
統計モデルは,波浪の発生に関する諸要因の影響が,観測波浪自身に含まれると考え,要因間の物理的な因果関係や定量化を決定論的に行わず,波高値とその他の要因間の関係を統計的に解析し定式化するモデルである。
統計モデルを用いた波浪予測手法としては,これまでに種々の方法が提案されているが代表的なものとして,重回帰式に基づく波浪予測手法がある。この手法は,1次の簡単な回帰式を用いて波浪予測を行うものであり,説明変数の選択方法により種々のモデルの構築が可能である。本研究で開発を行う波浪予測モデルもこの重回帰式による統計モデルといえる。重回帰式を用いた波浪予測では,重回帰係数さえ算定されれば容易かつ速やかに予測結果が求められる。また運用面でも作業が比較的軽度であることから,現地での運用も行われている10),11)。
重回帰モデルによる波浪予測式は,須田2)によって提案された基本式をもとに,小舟ら3)によって予測精度を上げる式として式(2)が提案されている。
(2)
ここに,\hat{x_i}は予測有義波高,x_iは予測対象地点の時刻iにおける有義波高,y_iは予測対象地点の時刻iにおける風速,物は気圧読み取り地点jの時刻iの気圧値で,i=1,2,3はそれぞれ予測対象時刻,現時刻,12時間前を表す。また,a_i,b_i,c_ijは重回帰係数,\epsilonは残差である。
式(2)は,説明変数として現時刻と一定時間前の観測波高,風速,気庄を用いて定式化した1次回帰式で,重回帰係数は3〜4年程度の長期間における観測波高,観測風速,観測気圧から,式(2)を用いて計算される予測波高と予測対象地点の観測波高との残差が最小となるように決定された係数である。ただし,説明変数は予測対象地点に応じてAIC最小化12)によって選択されている。
したがって,説明変数として与えられている気象・海象データを式(2)に代入することにより,予測時刻の波高が簡便に得られることになる。
このように,統計モデルである重回帰式を用いた波浪予測手法は,特別な専門知識を必要とすることなく簡便に予測が行える利点を持っている。しかし,予測精度に関しては問題があり特に現時刻の観測波浪に関する項の寄与率が際だって高いために,予測波高がその影響を受けて高波浪時の立ち上がりが遅れて現れるという問題がある。

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式(1〜2)
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図-1 従来の波浪予測モデル

3.沿岸観測波浪の相互相関解析

ここでは,波浪予測モデルを構築するための基礎解析として沿岸波浪相互の相関特性について検討する。
高波浪の出現特性が,大気現象の南西から北東方向への移動と類似した傾向にあるとすると,図-2の模式図に示すように太平洋側と日本海側でそれぞれ波浪観測地点間相互の波高変化特性に時間遅れを伴った相関が存在する。したがって,沿岸波浪の出現時間差が算定できれば,この出現時間差を重回帰モデルに取り入れることにより予測精度を向上させることができる。ここでは,有義波高について波浪観測地点間で相互相関解析を行い,各波浪観測地点間における波浪の出現時間差を求める。
3.1解析対象地点と解析期間
日本沿岸の34地点で2時間ごとに観測された有義波高を用い,相互相関解析を行った。解析対象地点を図-3に,各地点の波浪データの得られている期間を表-1に示す。解析対象期間は,全地点でほぼ共通にデータが得られている1981年〜1990年の10年間とした。なお,高波浪の出現時間差を的確にとらえるため,解析には,各観測地点の有義波高データのうち10年間の平均値より大きい高波浪時のデータを用いた。また,表-1の中で観測期間が短い新潟沖・室津・御前崎・下田と,内湾である浜金谷・神戸の6地点は,解析対象地点から除外してある。
3.2相互相関解析方法
 相互相関解析は,2地点間の時間差を0時間から2時間ごとに順に増やし,おのおのの時間差に対応する相関係数を式(3)から計算することにより行った。
(3)
ここで,\sigma_1と\sigma_2はそれぞれi地点とj地点の波高値の分散,C[H_i(t),H_j(t-\tau)]はi地点とj地点の波高値の共分散で式(4)で表される。
(4)
ここで,Nはデータ数である。この方法によれば,最大値が1となる正規化された相互相関係数が求められ,対象地点間での相関の比較も可能となる。
相互相関解析は34地点全てを対象とし,各地点間の相関を総当たり的に算定した。時間差については,相互相関係数が最初に極大となったときの時間差を2地点間の波浪の出現時間差と定義した。計算は,10年間のデータのうち,波浪の発達期の時間差を的確にとらえられるよう,対象地点の波高値が解析対象期間における平均波高値以上のものを対象とした。波浪の出現時問差は季節ごとに異なった傾向を示すと考えられることから,1月から12月について各月毎に相関係数を算定した。
3.3相互相関解析結果
図-4,5,6,7は深浦と日本海側の地点におけるそれぞれ1月,4月,7月,10月の相互相関解析結果を,また図-8〜11はむつ小川原と太平洋側の各地点との相関解析結果を深浦と同様に示したものである。
各図の横軸は対象地点と比較地点との時間差,縦軸が相互相関係数を表す。なお,日本海側の地点と太平洋側の地点との相互相関解析も行っているが,ほとんど相関が認められなかったためここには掲載していない。
図-4〜7の日本海側の相関特性を見ると,明確な相関係数のピークが現れており,平均的に見るとある出現時間差を持って波浪が伝達していることがわかる。しかも,南西から北東に向かって出現時間差が小さくなっており,高波浪の出現が大気現象と同様に南西から北東に向かって移動していくことが確認できる。一方,図-8〜11の太平洋側では明確なピークが現れていない。これは,日本海側の海岸が南西から北東への大気現象の移動方向に面しているのに比べ,太平洋側の海岸が移動方向の反対側に面しているため,南西から北東へ連続的に移動するような高波浪のケースが少ないためである。
全地点の相互相関解析結果をもとに,日本沿岸での平均的な波浪の移動速度を1月・4月・7月・10月について求めたものを図-12に示す。図中の数字は,日本海側,太平洋側それぞれについて±0を基準とした波浪の出現時間差を時間単位で示したものである。日本海側の時間差は九州から北海道までがほぼ1日で,冬期が長く,春期・夏期が短いのに対し,太平洋側では夏期を除いて1日半程度とほぼ同じである。なお,太平洋側の夏期に関しては,長いフェッチを有するうねり性の波浪が多く,波浪の発生位置が日本沿岸から離れた区域であることが多いことから出現時間差が短く現れている。
これらの沿岸観測波浪の相互相関解析結果から明らかになったことをまとめると以下のようになる。
(1)日本海側と太平洋側の観則地点問での相関はほとんど認められない。また,沖縄などの南西諸島と日本海側・太平洋側との相関も低い。
(2)日本海側の深浦の相互相関を見ると,明確な相関係数のピーク(2地点間の位相差)が存在し,しかも北東から南西に向かって位相差が大きくなっているのがわかる。これより,波浪の出現が大気現象と同様に南西から北東に向かって伝達していくことが確認できる。
(3)太平洋側のむつ小川原と常陸那珂の相互相関を見ると,深浦ほど明確にピークは現れない。また,房総半島を境に,北東と爾西の地点では波浪の出現の傾向が違うことがわかる。
(4)日本海側と太平洋側の相互相関の傾向が違うのは,日本海側では,海域が閉鎖しているため地点問で吹送距離と吹送時間に差が少なく,大気現象の移動に伴い同程度の波浪が南西から北東に向かって伝わりやすいことに対し,太平洋側では,海域が広いため沖側のあらゆる地点で発達した様々な波浪が独立して海岸に伝達し,結果として地点間の相関が低くなることがその原因として考えられる。この波浪の出現傾向の違いは,有義波高の平均値が,日本海側では夏が低く冬が高いという季節変動が明確に現れるのに対し,太平洋側では季節変動がみられないことにも現れている。
(5)波浪の伝達時間は,日本海側では九州から北海道までの時間がほぼ1日で,冬期が速く夏期が遅いのに対し,太平洋側では夏期を除いて1日半程度とほぼ同じ速度である。太平洋側の夏期の移動速度が速いのは,地点間の相関がほとんどなく,見かけ上,速くなっているためである。
以上の結果を考慮すると,各波浪観測地点間に現れる時間差を重回帰モデルに組み込むことにより,観測値と予測値との間の時間遅れなどの問題を解決できる精度の高い予測が可能になると予想される。

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式(3〜4)
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図-2 沿岸波浪の出現時間差の発生
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図-3 波浪観測地点
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表-1 波浪観測地点と観測期間
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図-4 深浦と日本海側の波浪観測地点との1月の相互相関
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図-5 深浦と日本海側の波浪観測地点との4月の相互相関
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図-6 深浦と日本海側の波浪観測地点との7月の相互相関
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図-7 深浦と日本海側の波浪観測地点との10月の相互相関
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図-8 むつ小川原と日本海側の波浪観測地点との1月の相互相関
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図-9 むつ小川原と日本海側の波浪観測地点との4月の相互相関
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図-10 むつ小川原と日本海側の波浪観測地点との7月の相互相関
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図-11 むつ小川原と日本海側の波浪観測地点との10月の相互相関
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図-12 日本沿岸における波浪の出現時間差

4.重回帰波浪予測モデルの構築

 ここでは,前節で検討した沿岸観測波浪の相互相関解析結果を利用して,観測波浪のみを用いた重回帰波浪予測モデルの構築を行う。ここで得られるモデルは,当然気象データを含むことが可能であり,そのようなモデルを構築した方がより予測精度の向上を望むことができると思われる。しかし,本研究では観測波浪のみでどの程度予測が可能なのかを検証することが主要な目的の1つであることから,気象データに関しては考慮していない。
4.1重回帰波浪予測モデルの構築方法
地点間の出現時間差を考慮した重回帰式は次式で表される。
(5)
ここに,H(t)はt時刻の予測波高(目的変数),H_i(t-\Delta{t_i})はt時刻より\Detla{t}時間前のi地点の波高(説明変数),a_0,a_1は重回帰係数,\epsilon(t)は残差,nは説明変数の数である。(5)式中の重回帰係数は,連立1次方程式
(6)
の解として得られる。ここに,Nはデータ数である。
 相互相関解析結果から,日本海側の地点と太平洋側の地点では相関が無いことが判明したので,目的変数が日本海側の地点であれば説明変数は日本海側で目的変数の地点より南西にある地点から選択し,目的変数が太平洋側の地点であれば説明変数は太平洋側で目的変数の地点より南西にある地点から選択する。
 重回帰モデルの場合には,モデルの予測精度は的確な説明変数の選択に左右されるが,説明変数の数とその組み合わせによって様々なモデルが考えられるため,一意的に決めることは難しい。説明変数の選択にはいくつかの方法あるが,一般には,AIC最小化法12)が用いられる場合が多い。AIC最小化法を用いれば,客観的な変数選択が可能になるが,今回説明変数として用いる波浪データには欠測が多く,組み合わせによってデータ数が大きく変動するため,説明変数として同一サンプル数のデータが必要となるAICによる変数選択は困難である。そこで,予測対象地点に近い地点の方が出現時間差が小さく相関が高いことは相互相関解析からも明かであるので,本研究では,予測時間以上の出現時間差を持つ地点のうち相関係数の高い地点から順に数点を選ぶ方法を採用した。説明変数の数は,必要以上に用いるとモデルの安定性を欠くことから,1ないし2とした。
4.22段階重回帰モデルの構築
波浪予測モデルの構築に当たって,まず説明変数の選択法として3種類の基礎的な方法を採用し,予測特性について検討した。
波浪予測モデルをそれぞれモデルA,モデルB,モデルCとすると,各モデルにおける説明変数の選択基準は以下のようになる。
モデルA:波浪の出現時間差を無視して,予測対象地点の波高値と最も相関の高い地点を説明変数とする。
モデルB:予測対象地点との出現時間差が,予測時間に対応した地点を説明変数とする。
モデルC:モデルBで選択した地点に加えて,予測値を補正するため相関値の高い地点を説明変数とする。
ただし,これらのモデルでは予測対象地点の波高値を説明変数に加えていない。2.2で述べたように,予測対象地点の波高値を説明変数にするとその寄与率が圧倒的に高くなり,他の説明変数の影響が相対的に弱くなるからである。
図-13〜図-15は,深浦の1986年1月の有義波高の観測値(細線)と,1986年を除く1981年〜1990年の9年分の1月のデータで作成した3種類の重回帰モデルによる6時間後予測値(太線)との比較結果である。
ここで,予測値の推定精度を判定するための基準として以下に示す的中率を用いた。すなわち,予測値が,
観測値-0.3m≦予測値≦観測値+0.3m
(観測値≦1mの場合)
観測値×0.7≦予測値≦観測値×1.3
(観測値>1mの場合)
の範囲にある場合を的中とし,予測値に占める的中の割合(的中率)を計算して推定精度の基準とするものである。図-13から図1515の右側の図が予測値と観測値の相関を示しており,破線の内部が的中範囲を示す。
図-13(モデルA)は,出現時間差を無視し,相関係数の最も高い秋田と酒田の2地点を説明変数として用いた場合の予測結果である。的中率と相関係数は高いが,2地点の本来の出現時間差はともに0であるので,予測される高波浪の立ち上がりが観測波高に比べちょうど6時間だけずれているのがわかる。これに対し,図-14(モデルB)は,出現時間差が6時間である輪島と金沢を説明変数とした場合の予測結果である。図-13に比較して,的中率は下がるものの高波浪時の立ち上がりのずれは生じていない。図-15(モデルC)は,モデルBで用いた輪島と金沢に予測値を補正する目的で時間差を無視した秋田を説明変数として加えた予測モデルである。的中率が格段に上がり,時間差もモデルAと比べて少なくなっているが,補正の目的で加えた秋田のモデルに対する寄与率が高く,若干の時間差が生じている。
以上の3種類の基礎的モデルを用いた予測結果から,観測波浪のみを用いた重回帰波浪予測モデルの予測特性として以下の点が明かとなった。
(1)相関値の高い地点を用いると,予測精度は高くなるが従来の重回帰モデルと同様に高波浪の立ち上がり時に予測値に時間的遅れが生じる。
(2)予測時間と等しい波浪の出現時間差を持つ地点を用いると,予測精度そのものは低下するが,予測値と観測値の時間的遅れの問題は殆ど解消される。
(3)相関値の高い地点と,出現時間差のある地点を同時に用いると,相関値の高い地点からの寄与率が高くなり,結果的に時間遅れが生じる。
以上の点を考慮すると,時間的な遅れの解消と予測精度の向上は別個に取り扱う必要があることがわかる。そこで,本研究では以下に示す2段階型の予測モデルを構築した。まず,予測時間以上の出現時間差を持つ地点のうち相関係数の高い順に1ないし2地点を選び,(5)式に示す重回帰モデルを作成する(第1段階)。次に,(5)式中の残差を目的変数とし,予測時間より出現時間差の少ない地点を説明変数として,(7)式により重回帰モデルを作成する(第2段階)。
(7)
ここに,b_0は重回帰係数,\delta(t)は残差,mは説明変数の数である。第2段階における変数選択には,予測時間より出現時間差の少ない地点の中から相関係数の低い順に1ないし2地点を順にモデルに組み込み,高波浪の立ち上がりのずれがなく的申率が最も高くなる地点を取る方法を採用した。2段階予測モデルによる予測結果を図-16に示す。他の3種類の予測モデルに比較して,的中率が最も高くなっているのが認められる。また,観測値と予測値の高波浪時の立ち上がりの遅れもほとんど生じていないのが認められる。
4.32段階重回帰波浪予測モデルによる予測結果
本研究で提案した2段階型の重回帰波浪予測モデルについて,その予測特性,予測精度を検証する。本モデルでは,有義波高と同様の手順で有義波周期についても予測が可能であることから,ここでは有義波高と有義波周期の両者について波浪予測を行う。
4.3.1有義波高
2段階重回帰波浪予測モデルを用いて,深浦・むつ小川原・常陸那珂の3地点で波浪予測を行い,予測モデルの評価を行った。重回帰係数の算定に用いた波浪データは,1981年〜1990年の10年分のデータのうち,予測結果を評価する年度を除いた9年分である。予測モデルは,季節変動特性を明確にするため各地点の1月・4月・7月・10月の各月に対してそれぞれ6時間・12時間・24時間・48時間後予測の計16ケースを作成した。
 予測結果の例として,1986年1月の有義波高の予測結果を図-17〜図-19に示す。図は,経時変化と相関図から構成されており,経時変化の横軸は日を示し,図中の太実線が予湖値で,細実線が観測値である。また,相関図には的中率の範囲が示されている。さらに,予測に用いた目的変数と9年分の観測波浪から得られた重回帰係数の一覧を,表-2〜表-4に示す。図-17〜図-19から3地点とも,予測時間に相当する出現時間差を持った波浪観測地点があるため,24時間後までの予測では立ち上がりのずれがなく,実用上は問題のない予測精度を確保できていることがわかる。しかし,予測時間が長くなるに従って目的変数と説明変数の相関が低くなるため,予測精度は低下している。特に,48時間後予測は,予測対象:地点と48時間の出現時間差を持った波浪観測地点が無いため,予測が困難である。
これらの予測特性をさらに詳細に見ると,3地点ともに6時間予測の精度が高いことが認められる。観測波高と予測波高の問には時間差も殆どなく,精度の高さは相関図からも認められる。12時間予測では,観測値と予測値の間に時間差はないものの,3m以上の高波浪期間(日本海側ではさらに1m以下の低波浪期間)での予測精度が低下しているのが認められる。24時間予測では,12時間予測と同様に時間差はないものの予測精度の低下する期間がさらに増大する傾向にある。48時間予測では観測値と予測値がほぼ無相関であることが相関図から認められる。また,海域毎の予測特性を見ると予測時間が長くなるにしたがって,太平洋側では高波浪に対する予、測精度が低下するのに対して,日本海側では低波浪時と高波浪時の期間での予測精度が低下する。
表-5〜表-7は,各地点で波浪予測を行った期間の的中率を示したものである。日本海側の深浦では,7月の適中率が高く10月が低い。これに対し,太平洋側の常陸那珂,むつ小川原ではどの月もほぼ同じ的中率である。
これは,波高の平均値が日本海側では夏が低く冬が高いという季節変動が明確に現れるのに対し,太平洋側では明確に現れないことによるものと思われる。図-20は,物理因子重回帰モデルによる的中率を示したもので,モデルIは観測波浪を用いない方法,モデルIIは予測対象地点の観測波浪を用いた方法である。図-20と比較すると,本研究で提案した重回帰モデルは月別による違いはあるものの,24時間程度の短期予測では物理因子重回帰モデルに対してほぼ同程度の的中率であることが認められる。本モデルでは,的中率を高くするために2段階重回帰の方法をとっているが,この方法は短期予測に関しては有効であることがこのことからわかる。ただし,48時間以上の予測では物理因子重回帰モデルと同程度の的中率を達成するためには気象データ等を組み込む必要があるかもしれない。
4.3.2有義波周期
周期予測に関しては,従来型の重回帰モデル4)では取り扱ってる例が少ない。図-21〜23は,波高値の場合と同一の地点,および期間に対する有義波周期の予測結果を示したもので,的中率の算定方法も波高の場合と同様に行っている。また,有義波周期の予測モデルで用いた説明変数と時間差は,有義波高予測と同一のものを用いている。
図-21〜23を見ると,有義波周期の予測精度は,太平洋側のむつ小川原と常陸那珂では24時間予測,日本海側の深浦では12時間予測までは比較的良好であるが,それ以上の予測時間では予測周期の変化が弱くなり観測周期のほぼ平均値をとる傾向にある。この傾向は特に日本海側で顕著である。
有義波周期の全体的な予測精度に関しては,有義波高の場合と同程度であることから本予測モデルでは波高と周期の予測がほぼ同一の精度で行えることになる。また的中率は,どの予測時間でも70%以上を示すが,48時間予測の場合の予測周期と観測周期の経時変化特性を見ると,この的中率の数値はかなり許容範囲が広いことが認められる。周期の場合,波高値とは異なった的中率の算定を考慮する必要がある。
4.4観測波浪重回帰波浪予測モデルの適用性に関する考察
 本研究で構築した2段階重回帰波浪予測モデルは,沿岸観測波浪の相互相関解析から得られた日本沿岸における波浪の出現時間差を基礎にして,気象データを用いずに波浪観測値のみを説明変数として用いたモデルである。
 本モデルの特性として,以下の点が上げられる。
(1)従来より,重回帰予測モデルの問題となっていた高波浪の立ち上がり時の遅れを他地点の観測波浪との出現時間差を考慮することにより解消した。
(2)重回帰モデルの説明変数として観測波浪のみが用いられているため,入力に多大な労力がかかる気象データを用いる予測モデルに比較してより簡便である。
(3)従来の重回帰モデルは波高値のみを予測対象としているが,本モデルでは波高と周期の予測が行える。
(4)予測時間に関しては,日本沿岸の波浪出現時間差が最大で30時間程度であるためその制約を受げて24時間予測までが限界である。
(5)的中率に関しては,24時間程度の短期予測では他の重回帰モデルや物理因子重回帰モデル等の予測モデルとほぼ同一の傾向にある。
(6)本モデルの説明変数の選択基準からその適用範囲は,南西側に説明変数となる波浪観測地点が多数点得られる関東地方から,東北および北陸方面の地点に限られる。
現在,ケーソン据え付けなどの大規模な海上工事では,波浪予測期間として1週間程度が要求される。このような長期の波浪予測では,本モデルは有力な手法とは言えず物理因子重回帰モデルなどが主要な手法となる。本モデルが有力となるのは,上部工打設や消波工設置などの比較的工期の短い作業や,親水性護岸に対する警報データなどで,このような作業では気象データの入力作業を行う必要がなく,予測値に時間遅れもない本モデルが適していると考えられる。
2段階重回帰モデルが有効となるのは,全ての波浪観測地点が回線で接続され,リアルタイムの波浪データが得られる場合である。現在の波浪観測状況はまだそのような状況にはなっていないが,将来的には全国の波浪データを集中管理するシステムを構築すれば,本研究で提案したモデルを用いることにより,天気図から気圧値を読みとる作業がなく,半自動的な波浪予測システムの運用が可能となる。

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式(5〜7)
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図-13 有義波高予測結果(モデルA,1月,1986年) 図-14 有義波高予測結果(モデルB,1月,1986年) 図-15 有義波高予測結果(モデルC,1月,1986年)
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図-16 2段階予測による有義波高予測結果(1月,1986年)
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図-17 深浦の有義波高予測結果(1月,1986年)
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図-18 むつ小川原の有義波高予測結果(1月,1986年)
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図-19 常陸那珂の有義波高予測結果(1月,1986年)
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表-2 説明変数と重回帰係数(深浦,1月)
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表-3 説明変数と重回帰係数(むつ小川原,1月)
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表-4 説明変数と重回帰係数(常陸那珂,1月)
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表-5 深浦の予測波高の的中率
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表-6 むつ小川原の予測波高の的中率
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表-7 常陸那珂の予測波高の的中率
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図-20 物理因子重回帰モデルの的中率
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図-21 深浦の有義波周期予測結果(1月,1986年)
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図-22 むつ小川原の有義波周期予測結果(1月,1986年)
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図-23 常陸那珂の有義波周期予測結果(1月,1986年)

5.おわりに

重回帰型波浪予測モデルの問題点を解決するための基礎的検討として,観測波浪のみを用いた予測システムについて波浪の出現時間差などを考慮した解析を行った。
その結果,従来の重回帰波浪予測モデルのようにデータ入力に手間のかかる気圧や風速のデータを用いずに,予測対象地点を除いた観測波浪データだけを説明変数として,24時間先までの予測が可能な重回帰波浪予測モデルを開発した。本モデルは,地点間の高波浪の出現時間差を考慮して説明変数の選択を行っているので,従来の重回帰波浪予測モデルで問題となっていた予測値の高波浪の立ち上がりが時間的に遅れる問題を解消している。さらに,第2段階で,出現時間差の小さい地点を説明変数として観測値と予測値の問の残差を予測しているので,全体としての予測の精度が向上している。
一方,説明変数の出現時間差が大きくなるに従って目的変数と説明変数の相関が低くなるため,長期の予測では予測精度が低下する。また,南西に位置する地点の予測を行う場合には有意な出現時間差を持った波浪観測地点がないため,当然ながら本方法での波浪予測が難しい。
(1993年6月30日受付)

謝辞

本研究で用いた波浪観測データは,各港湾建設局港湾工事事務所,港湾技術研究所海洋水理部海象調査研究室の好意により提供されたものである。また,本研究を行うにあたり,港湾技術研究所野田節男次長,堀江毅海洋水理部長,高山知司水工部長,橋本典明海洋水理部主任研究官から御指導,御助言を,海洋エネルギー利用研究室研修生柴木秀之氏から有意義な討論を得た。さらに,東亜建設工業株式会社佐藤典之氏の助力を得た。ここに,記して謝意を表す。

参考文献

1)後藤智明・青野利夫:単地点出力型スペクトル法による波浪推算システム,港湾技術研究所報告,Vol.31,No.2,pp.55-73,1992.
2)後藤智明・柴木秀之・青野利夫・片山忠:波浪予測を目的とした物理因子重回帰モデル,土木学会論文報告集,No473/II-24,pp.45-54,1993.
3)小舟浩治・橋本典明・亀山豊・久高将信:重回帰式を用いた波浪予測手法の適用について,第34回海岸工学講演会論文集,pp167-171,1987.
4)須田熈・湯沢昭:波浪予測に基づく外海シーバースの待ち行列に関する基礎的研究,土木学会論文集,第339号,pp。177-185.,1993.
5) Sverdrup,H.U.and W.H. Munk:Wind, sea and swell; Theory of relations for forecasting, Hydrographic Office Pub. 601,1947.
6) Bretschneider, C. L.:Hurricane design wave practices, Proc. ASCE, Vol.83, WW2, pp. ,1951.
7) Pierson, W. J., G. Neumann and R. W. James:Practical methods for observing and forecasting ocean waves by means of wave spectra and statistics,Hydrographic Office Pub.603,1955.
8)磯崎一郎・宇治豪:海上風数値モデルの波浪予測への応用,気象研究所報告,第25巻,第3号,
pp.197-231,1974.
9)永井紀彦・後藤智明・小舟浩治:ハイブリッドパラメータ法による波浪推算モデル(第1報)-東京湾における検討-,港湾技術研究所報告,第29巻,第4号,pp.85-118,1990.
10)駒ロ友章・進藤信博・川合紀章・木村克俊:海上工事の施工管理における波浪予測の運用について,海岸工学論文集第38巻,pp.961-965.1991.
11)駒ロ友章・松岡道男・進藤信博・木村克俊・窪内篤:浜益漁港における波浪予測の運用について,海岸工学論文集第39巻,pp.1056-1060,1992.
12)坂本慶行・石黒真木夫・北川源四郎:情報量統計学,共立出版株式会社,pp.138-142.,1983.

主要記号表

a_0,a_i:重回帰係数(第1段階)
b_0,b_j:重回帰係数(第2段階)
C(J_i,H_j):観測波高間の共分散
c_g:群速度
c_ij:気圧値の重回帰係数
F_1:風から波へ供給されるエネルギーの項
F_2:エネルギー消散項
f:周波数
H:有義波高
H_f:予測有義波高
N:波浪データの個数
n:説明変数の個数
R_ij:相互相関係数
S(f,\theta):方向スペクトル
T:有義波周期
z_ij:気圧値
\epsilon(t):第1段階の重回帰式に現れる残差
\delta(t):第2段階の重回帰式に現れる残差
\sigma:観測波浪データの分散

港湾技術研究所報告 第32巻第3号(1993.9) 3.陸上地形の影響を考慮した海上風推算 後藤智明*・柴木秀之**

要旨

 波浪推算および高潮推算の外力条件となる海上風に関して,観測データをもとに解析を行った。海上風のその結果より,境界層特性を検討するとともに,陸上地形の影響を考慮した内湾海上風推算モデルの開発を行った。得られた主要な結論は,以下のとおりである。
(1)自由大気の風を海上風に換算する手法として大気境界層モデルを提案した。このモデルによる外洋海上風の推定値は,観測データと良い一致を示す。
(2)観測データの解析から,風の有効吹送距離と陸上地形からの影響度を含む内湾海上風に関する経験式を得た。この経験式から,内湾海上風は海上の吹送距離が長くなるとともに風速が増大し,次第に外洋海上風に漸近することが明らかになった。
(3)内湾海上風の地形依存特性を表す経験則と3次元マスコンモデルを組み合わせたハイブリッド海上風推算モデルを開発した。この推算モデルを陸上地形の影響を強く受ける伊勢湾の海上風推定に適用した結果,観測風の時問変化傾向を精度良く再現できる。
キーワード:海上風,境界層,経験則,内湾,陸上地形依存性,ハイブリッドモデル

*水工部海洋エネルギー利用研究室長
**水工部海洋エネルギー利用研究室(研修生,(株)エコー)

REPORT OF PORT AND HARBOUR RESEARCH INSTITUTE Vol.32, No. 3 (Sept. 1993) A Hindcast of Maritime Surface Wind Including Effects of Land Topography Chiaki GOTO* Hidenori SHIBAKI**

Synopsis
Maritime surface wind, which is used as external force conditions for wave hindcasting and storm surge simulation, is investigated by observed wind data. And an atmospheric boundary layer model and a wind hindcasting model for inland sea including land topography was also developed. Main conclusions are following:
(1)Maritime surface wind speed estimated by the atmospheric boundary layer model agree with observed wind data.
(2)From the analysis of observed wind data on inland sea surface, an emperical formula including both effects of fetch length and land topography was obtained. And it was clarified that speed of inland maritime surface wind becomes high in proportion as fetch length inceases.
(3)A hybrid wind hindcasting model for marine surface wind on inland sea which is combained the emperical formula and the MASCON model was developed. The model is taken account of land topography effects for maritime surface wind and gives an accurate wind profile which agrees with obtained data on Ise Bay.
Key Words : maritime surface wind, boundary layer, emperical formula, inland sea, land topography, hybrid model

*Chief, Ocean Energy Utilization Laboratory, Hydraulic Engineering Division
**Ocean Energy Utilization Laboratory, Hydraulic Engineering Division (Trainee, ECHO CO. LTD.)

目次

1はじめに 69
2海上風推定に関する既往の研究 69
2.1観測風を利用した推定 69
2.2風推算モデル 70
3外洋の海上風 71
3.1風推算モデル 71
3.2境界層モデルによる海上風推定 73
3.3外洋海上風の特性 75
3.4海上風観測データと推算風の相関 76
4内湾の海上風 78
4.1内湾海上風の地形依存性 78
4.2海上風観測データの相関解析 78
4.3東京湾・伊勢湾・大阪湾の海上風特性 80
4.4地形依存性に関する経験則 83
4.5経験則による内湾海上風分布の推定 84
5内湾海上風推算モデル 85
5.13次元マスコンモデル 85
5.2経験則・マスコンハイブリッド風推算モデル 88
5.3気流数値計算モデル 88
6伊勢湾海上風によるモデルの適用性の検討 90
6.1計算に用いた伊勢湾の地形 90
6.2対象気象擾乱及び推算対象期間 91
6.3風推算精度の検討 91
6.4初期風場に関する検討 93
6.53次元気流数値計算モデルによる試算 94
7モデル気象擾乱の風推算手法に関する考察 95
8おわりに 95

1.はじめに

近年,空港島の建設,港湾施設の拡充,海洋性レクレーション基地の開発などに見られるように内湾海域が高密度に利用されるようになり,内湾海域の円滑な利用と防災対策のための気象・海象予測が重要な課題となってきた。一方,波浪推算・高潮推算は,港湾構造物の設計条件を決定するための基礎資料作成の手段として必要不可欠であるが,推算の外力条件となる海上風の推定によって,推算精度は大きく影響を受けることが知られている。
海上風の推定法としては,各種の風推算法,観測データの補間法,マスコンモデルによる方法などあるが,いずれも底面の摩擦を考慮した海上風に補正することが必要である。特に,内湾は,周辺を囲む陸上地形から大きな影響を受けるため,海上風は空間的に大きく変動し,従来の風推算モデルでは満足な推定を行うことが困難であった。
 本研究では,はじめに,外洋海上風を対象とする大気境界層理論に基づく海上風の推算手法について検討し,海上風観測データとの相関解析より,この手法の検証を行う。次に,陸地の影響を強く受ける内湾の海上風に焦点を当て,その特性を観測データの解析により検討し,経験的な推定式を示す。この経験推定式を用いた内湾海上風推算モデルを新たに提案する。さらに,提案モデルを伊勢湾に来襲した代表的な気象擾乱に適用し,観測値との比較を通して,モデルの現地適用性を検証するとともに,従来モデルによる推算値との精度検討を行う。最後に,以上の解析成果を踏まえ,気象図または1地点の海上風観測データから内湾全体の海上風分布を推定する手法,および提案する内湾海上風モデルのモデル気象擾乱への風場に対する適用性に関して報告する。また,スーパーコンピュータの発達により近年脚光を浴び始めた3次元粘性流体の基本式を解く気流数値計算モデル(3次元SOLAモデル)についても着目し,その適用性ならびに将来性についても言及する。

2.海上風推定に関する既往の研究

2.1観測風を利用した推定
(1)経験式による海上風推定
 海上風推定に関する初期の研究は,例えば傾度風のような地表面の摩擦の影響を受けない自由大気の風と観測風の相関解析を行い,両者の平均的な関係を表す経験式を求めることが主な内容であった。観測風と傾度風速の関係は,直線回帰式,対数回帰式,ベキ乗回帰式などでまとめられ,いずれも気圧分布から計算される自由大気の風速をこれらの式に代入することにより,海上風が推定できるものであった。
 以上のような経験式は多数提案されており,主なものでも,高橋1)が提案した緯度別の経験式,気象庁予報部2)の気圧配置別の経験式,地類別の経験式3)などがある。これらは,いずれも直線回帰式で表され,その回帰係数である風速比\alphaおよび偏向角\betaは,それぞれ表-1,表-2,表-3に示すように整理されている。また,傾度風のみでなく,気温と水温の差を指標とする大気安定度を考慮した経験式4)も提案されており,図-1のように示されている。ここで,V,V_grおよび\Delta{T}は,それぞれ海上風速,傾度風速および気温・水温差を表す。
これらの経験式は,波浪推算等種々の調査において海上風ないしは陸上風の概略推定に用いられてきたが,理論的な裏付けがないこと,個々の経験式間の関係が整理されていないことなど,実際の適用に当たっての指標が明確でない。
(2)観測風による内挿法
内湾のように,観測風が比較的多数点で得られる海域においては,観測風を空間的に内挿することにより,海域内の海上風を推定する方法がある.代表的な内挿方法としては,有限要素法で用いられる一次形状関数を用いて推定点の風速を観測風から平面近似する方法が山ロら5)により報告されている。また,観測点と推定点の距離の2乗の逆数による重み付平均により補間する方法等もある。
図-2は,運輸省第四港湾建設局の調査6)において,観測風を空間的に内挿する方法で利用された風観測地点と補間空間の関係を示すものである。この方法によれば,三角形で区切られた領域内の風が各頂点に位置する3つの観測地点の値により補間が行われる。
以上のような平面内挿法は,観測風を直接的に使用することから,特に内湾のような複雑な地形条件下で風を推定する場合に有用な方法である。しかしながら,観測風が観測地点の局所的な影響を受けること,通常多数の観測点が海上にないため,陸上風を海上風に換算して利用する必要があること,さらに,モデル気象擾乱のように観測値の測得が不可能な仮想的風場推定に適用できないこと等の問題がある。
2.2風推算モデル
風推算法には,カルドンモデルによる風推算法7)と変圧風モデルによる風推算法8)がよく用いられている。これらのモデルは大気の不安定効果を考慮したモデルであり,主に外洋のような地形の影響を受けない海域の海上風推定において事例が多い。ただし,大気の不安定効果を考慮することから,気圧情報以外に気温ならびに水温が必要となり,入力データ作成に労力を要する。
また,陸上地形の影響を受ける風の推算法として,マスコンモデルによる風推算9)が近年着目されるようになってきた。マスコンモデルによる風推算については,後の章において詳細に記述するため,ここでは省略する。

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表-1 緯度別の海上風・陸上風と傾度風の関係(高橋(1947)1))
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表-2 気圧配置別の海上風・陸上風と傾度風の関係(気象庁(1970)2))
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表-3 局所別の海上風・陸上風と地衡風の関係(合田(1971)3))
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図-1 大気安定度(気温-水温)と海上風の関係(磯崎・宇治(1974)4))
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図-2 観測風内挿空間と観測点位置の関係6)

3.外洋の海上風

3.1風推算モデル
3.1.1傾度風モデルによる風推算
波浪推算・高潮推算等の外力条件となる海上風は,気圧分布から推算される自由大気の風を,海上10m高度の風に変換することにより求められる。ここでは,大気境界層上端の自由大気の風を推算する理論についてまとめる。
いま,自由大気内において等圧線が平行に走っていると仮定すると,気圧傾度力とコリオリカが釣り合う地衡風平衡の関係が成立する。
(1)
(2)
ここで,u_g,v_gは地衡風速のx,y成分,fはコリオリ係数,\rho_aは空気密度,Pは大気圧である。
等圧線が閉じている場合には,気圧傾度力とコリオリカの他に遠心力が働き,図-3で示す傾度風の力学バランスが成立する。ただし,図は北半球における低気圧と高気圧の力学バランスを表しており,傾度風は低圧部を左手にして等圧線の接線方向に吹く特性がある。
このときの傾度風の力学バランスは,等圧線の曲率半径rを用いる円筒座標表示により,
(3)
と表される。ここで,V_grは傾度風速,fはコリオリ係数(f=2\omegasin\theta),\omegaは地球自転の角速度,\thetaは緯度,rは等圧線の曲率半径,\rho_aは空気の密度である。曲率半径rが非常に大きい場合には,式(1),式(2)の地衡風となる。地衡風,傾度風ともに緯度と気圧分布が与えられると自由大気の風が計算可能である。
 傾度風バランスの式(3)から,傾度風速は,
(4)
で求められる。ここで,V_grは傾度風速,fはコリオリ係数(f=2\omegasin\theta),\omegaは地球自転の角速度,thetaは緯度,rは等圧線の曲率半径,\rho_aは空気の密度である。
気圧値は,格子点情報として与えられるため,閉曲線の曲率半径方向の気圧傾度を計算することは計算上複雑となる。そこで,地衡風V_gを用いて傾度風を計算する。
地衡風は,
(5)
(6)
が成立することから,式(5)に式(6)を代入し,
(7)
となる。ここで,+は低気圧,-は高気圧の場合の風速となる。式(7)の曲率半径rは,気圧の1次微分,2次微分を用いて計算される。
(8)
式(8)に示された気圧の1次微分,2次微分は,差分化することにより格子点気圧値から計算される。
傾度風を海上風の風速ならびに風向に補正する場合,例えば,後述する台風圏内においては,従来から経験的に,風速は傾度風速の6割から7割,風向は低圧部に約30°の角度で吹き込むように補正される。このときの力学バランスは,図-4に示すように風速ベクトルと反対の方向に底面摩擦力が作用する。気圧傾度力の方向は等圧線の方向によって決まるため変化しないが,風速ベクトルとコリオリカの方向は変化する。
3.1.2台風モデルによる風推算
台風モデルを用いた風推算では,台風の中心位置,中心気圧と台風規模を表現するパラメータである台風半径により計算が可能である。台風の気圧分布推定式としては,Myersモデル,藤田モデル10)等あるが,波浪推算・高潮推算等で多くの使用実績があるMyersモデルを採用する。
Myersモデルの気圧分布は,台風中心からの距離の関数として次式で表される。
(9)
ここで,Pは台風の中心から距離P_c,における気圧,\Delta{P}は台風の中心気圧,\Delta{P}は中心示度(\Delta{P}=P」-P_c),P」は台風から遠くはなれた地点の気圧で通常1013mb,r_0は台風半径であり,台風中心から最大風速発生地点までの距離に相当するパラメータである。
台風の中心位置および台風圏内の等圧線情報から,式(9)の定数である\Delta{P}とr_0が計算される。\Delta{P}とr_0が求められると,任意地点での気圧分布が式(9)から計算され,台風を中心とする対称風,台風移動により発生する場の風2つを合成した風がそれぞれ以下のように推算される。
中心対称風は,台風が停止していると仮定するときの風で,コリオリカ,遠心力,気圧傾度力が釣り合うと考える傾度風の式(4)で計算することができる。この時の風向は,台風中心と風推算点を結ぶ直線に直角な方向となる。式(4)で表される傾度風速は摩擦を考慮していないため,式(10)を用いて傾度風速を海上風速に補正する。
(10)
ここで,C_1は傾度風から海上風への補正係数であり,通常C_1=0.6〜0.7を採用している。また,風向に関しては,傾度風の風向が低圧部に偏向するように,風速ベクトルを半時計回りに30°補正している。
 場の風は,台風の移動速度と中心対称風に比例し,かつ台風の移動方向に平行な風であると仮定する。計算式は,台風の移動速度をV_Tとし,式(11)で表される。
(11)
ここで,V_2は場の風の風速,C_2は比例定数であり,通常は中心対象風の補正係数C_1と同様の値を与える。
合成風の風速と風向は,式(4)と式(11)のベクトル和とその方向として計算される。台風モデルにより計算される風の概念図は,図-5のように表される。このような台風モデルを用いた風推算は,場の風という気圧移動に伴う変圧効果を組み込み,風推算を簡便かつ高速に行える特徴がある。しかも,台風の気圧分布が同心円で近似できる範囲では,他の風推算手法に比べても精度的に同等であることが観測データ等から検証されている。そのため,波浪推算・高潮推算等では広く採用されている風推算法である。
台風モデルによる風推算に必要な台風規模・台風位置等のデータも,通常傾度風モデルと同様,3時,9時,15時,21時の1日4回しか与えられない。このため,データのない時刻については,4時刻のデータ値をそれぞ この推算法は,台風半径r_0内の風に台風モデルの推算結果V_rY を適用し,台風影響範囲よりも遠方の地点に傾度風モデルの推算結果V_grを適用する。この間の風については,これら2つの推算法による結果を内挿することにより求めるものである。台風影響範囲と傾度風適用範囲を滑らかに接続させる空間内挿の関数は,次式で表されるものを用いる。
(12)
式(12)によれば,自由大気の風は,台風中心からの距離rが増加するとともに,次第に傾度風速に漸近するように計算され,この関係は図一6のように表される。

3.2 境界層モデルによる海上風推定
3.2.1 境界層モデルの仮定
 自由大気から海面近傍までの大気は,気圧傾度力・コリオリ力・摩擦力がバランスし,高度とともに風向・風速は変化する。境界層を理論的にとり扱った代表的な海上風推定モデルであるカルドンモデル^4),6)は,境界層を渦動粘性係数一定として摩擦項を評価したエクマン境界層と,コリオリカならびに気圧傾度力を無視し,鉛直方向に風の対数分布を仮定した接地境界層の2層に分離した。ここでは,このモデルをさらに進め,境界層全てにおいて,気圧傾度力・コリオリカ・摩擦力の力学バランスを仮定し,海上風鉛直分布の解析解を求める「境界層モデル」を提案する。境界層モデルは,大気を自由大気と大気境界層の2層に分離し,自由大気は気圧傾度力とコリオリカ,大気境界層は気圧傾度力・コリオリカ・摩擦力がバランスする層と定義する。すなわち,接地境界層内で風の鉛直分布について成立する対数則を,気圧傾度力とコリオリカが影響する状況下で自由大気の層まで外挿したモデルである。
 この境界層モデルでは,以下の3つの仮定を置いた。
(1) 大気は中立状態である。(水温気温差は無視する。)
(2) 渦動粘性係数は鉛直上方に直線的に増加する。
(3) 大気境界層は,海面上約1000mとする。
 (1)で述べた大気中立状態の仮定は,風が大気の安定度に影響を受けることを考えると問題があると考えられる。しかしながら,江淵ら^11)が報告した海上ブイの風観測データから得られた成果を見ると,風速が強い場合には,中立状態の近似はほぼ妥当であることが裏付けられる。図一7は,リチャードソン数R_iと海上風の風速Vとの関係ならびに,大気の安定度の指標となる気温水温差\Delta Tとの関係を観測値から求めたものである。リチャードソン数R_iは,
(13)
で定義される量であり,鉛直方向の風速勾配du/dzと温度勾配dT_a/dzの比率を表すパラメータである。ここで,海面の温度勾配は気温水温差で代表される。式(13)の温度は中立状態となる。また,温度勾配が負の時に,リチャードソン数R_iは負となり,大気は不安定な状態となる。
図一7によれば,風速1Om/sを超える強風時には,リチャードソン数は0に漸近し,大気はほぼ中立状態で近似できることが示されている。また,気温水温差とリチャードソン数の関係を見ると,データがかなりのばらつきを示すことがわかる。このことは,必ずしも気温水温差とリチャードソン数言い換えると風速勾配とは明確な関係が見られないことが示されている。
 本研究では,波浪推算・高潮推算等に適用される気象擾乱時の風を主に対象としていることから,強風時において成立する大気中立状態は,モデルの仮定として十分妥当であると考える。さらに,カルドンモデル等において用いられる気温水温差は,気温が1日1回の気温分布を,水温が5日に1回の水温分布をもとに計算する。この現状を考えると,使用するデータ精度に多くの問題を含んでいるものと考えられる。以上の点から,気温水温差の効果を風推算に考慮することが,必ずしも精度向上につながると考えることに疑問が残る。そこで,本研究における風推算では,入力データとして気圧分布のみを用いる方法を採用する。
3.2.2 境界層モデルの基本式
 自由大気では地衡風平衡が近似的に成立し,式(1)と式(2)により,力学バランスが表されることは既に述べた。
 いま,式(1),式(2)を複素数を用いて合成すると,次式のように書き換えられる。
(14)
さらに,地衡風成分風速u_g,v_gを複素速度を用いて表すと,
(15)
となる。ここで,でV_g=u_g+iv_gである。等圧線が曲率を持つ場合には,式(14)に遠心力項が加わり,傾度風の力学バランスの式(3)が成立することは既に述べた。
 一方,大気境界層の力学バランスは,式(1),式(2)のそれぞれに摩擦力の項を加え,
(16)
(17)
で表される。ここで,u,vは海上風速のx,y成分,K_iは鉛直渦動粘性係数である。
 式(16),式(17)についても,成分風速を複素速度を用いて表すと,
(18)
と書き換えられる。ここで,V=u+ivであり,式(15)と式(18)から気圧傾度力の項を消去すると,
(19)
が成立する。式(19)の鉛直方向の風速差をW=V-V_gとすると,次式のように力学バランスの式が記述される。
(20)
ここで,鉛直渦動粘性係拠は,鉛直上方に直線的に増加すると仮定し,カルマン定数\kappa=0.4と海面の摩擦速度u_*を用いて表すと,
(21)
となる。式(21)を式(20)に代入し,さらに,
(22)
と置くと,式(20)の第1項,第2項は,それぞれ次式のように変形される。
(23)
(24)
これらの式の関係から,式(20)において,
(25)
が成立する。式(25)の解は,Bessel関数J_0(y),N_0(y)を用いて,次式のように得られる。
(26)
いま,海面(z=z_0)と上空(z=z_infinity)の境界条件として,
(27)
が成立することから,式(26)の係数A,Bは,
(28)
となる。式(28)を,式(26)に代入すると,次式が得られる。
(29)
式(29)が境界層モデルの風の鉛直分布を与える解であり,自由大気の風速V_gが与えられれば任意高度zにおける風速Vが計算可能となる。ただし,式(22)で示したように,高度zをyに変換するためには,摩擦速度u_*を与える必要がある。
 海面の摩擦速度u_*は,海面上10m高度の風として定義される海上風V_10,海面抵抗係数C_Dを用いて,
(30)
で表される。海面抵抗係数C_D値は種々の提案式がある。
本研究で提案する境界層モデルは,次式で表される光易・草場^12)のC_D則を採用する。
(31)
 以上の関係を用いると,境界層モデルによる海上風の推定は,次の手順により行うことが可能となる。
(1) 自由大気の風V_gを傾度風モデル等によりあらかじめ計算する。
(2) 初期値としてV_10=0.6V_gを仮定し,C_D則からu_*を計算する。
(3) 境界層モデルの解に当てはめて,海上風V_10を計算する。
(4) 新たに計算された海上風V_10を次のステップの初期値とし,風速の変化を0.001m/s以下とする収束条件を満足するまで,(1)と(2)を繰り返す。
 本モデルにおける不確定な要素は,海面抵抗係数の経験式として,どのような式を用いるかにある。近年の研究では,海面抵抗係数C_Dは波浪に依存するという報告^13)14)がある。より精度の高い海上風の推定において,海面抵抗係数の定式化は必要不可欠な課題であると考えられる。

3.3 外洋海上風の特性
 式(29)から得られる風は,海上風のみならず任意高度の風についても計算可能である。図一8は,緯度35度,自由大気の風速V匿35rn/sの場合に計算される海面上の風の鉛直分布であり,海面上任意高度の成分風速u_s、,v_sと2成分をベクトル合成した風速V_sが描かれている。
海面上の風の鉛直分布は対数分布となり,任意高度の合成風速V_sと自由大気の合成風速V_gとの比が風の低減率を表す。また,任意高度における成分風速比の逆正接tan^-1(v_s/u_s)と自由大気の成分風速比の逆正接tan^-1(v_g/u_g)との差が,低圧部への吹き込み角,すなわち偏向角を表す。図一8の条件で,海上風(海面上10m高度の風)の風速V_10は,自由大気の風速V_gの0.67となり,風向の偏向角は23.8度と計算される。
 このように,緯度と自由大気の成分風速u_g,v_gが与えられると,式(29)から海上風の成分風速,すなわち風の低減率と偏向角が計算される。図一9は,北緯20度から50度までの10度間隔の緯度毎に,自由大気の風速と海上風の風速低減率(風速比と同じ),ならびに偏向角との関係を示したものである。図によれば,高緯度になるほど,破線で示した偏向角は小さく,実線で示す風速低減率は増加する傾向が明らかになる。また,自由大気の風の風速増加とともに,偏向角は大きくなり,風速低減率は低下することも図より明かである。前述した台風モデルの風推算等において,自由大気の風を海上風に変換する場合に,用いられる風の低減率C_1=C_2=0.66,偏向角30度は,いずれも自由大気の風速が強い場合に適用されるべき数値であることがわかる。
 なお,式(29)は,複素Bessel関数を含み取扱いが面倒なため,実用上の簡便式として,図一9の風速低減率の関係を近似するベキ乗型近似式を,緯度別に求める。
近似式は次式で表される。
(32)
ここで,a,bは回帰係数であり,北緯35度における値は,a=1.69,b=0.735である。なお,以降の解析に当たって,ベキ乗の係数bは,緯度のみにより決定される値とし,係数aは,海面摩擦の違いまたは周辺地形等の影響により変化する比例定数と定義する。

3.4 海上風観測データと推算風の相関
 境界層モデルにより明かとなった海上風特性が,観測風において成立することを検証するために,外洋において風観測が実施されている海上ブイの観測データと格子点の気圧値から推算した傾度風との相関解析を行う。また,相関解析から得られる回帰式と前述したべキ乗型の解析式(32)との比較を行う。解析に用いる観測風は,北緯39.5度,東経145.5度の三陸沖にある21001ブイと,北緯29.0度,東経135.O度の太平洋上にある21004ブイのデータである。
 図一10は,2地点の海上観測風と推算された傾度風の風速相関を示すものである。横軸は推算風の風速,縦軸は観測風の風速である。実線はデ一タ群の平均的な特性を表すべキ乗型の回帰式,破線は観測地点緯度を境界層モデルに当てはめて求められる解析解を,式(32)の形で近似したべキ乗型の式である。データ点の数値または符号は,22.5度間隔に全方向を等分割した16個の方位を意味し,それぞれのデータに対応する観測風の風向を図に示す。解析の結果,21001ブイデータの回帰式はV=1.686V_g^0.745,21004ブイデータの回帰式はV=1.725V_g^0.705となる。これらの回帰式と破線で示した境界層モデルの近似式との差は,推算風の風速が高い場合においても,観測風に換算して1.Om/s程度となり,両者はほぼ一致している。このことから,境界層モデルを利用することにより,外洋海上風の推定は可能であることが検証される。
なお,収集したブイデータの個数が少ないことから,相関解析は観測された全ての方向のデータを対象に行った。
 また,風向についても海上観測風と推算された傾度風との相関解析を行い,傾度風の風向がどの程度偏向すると,観測風の風向と平均的に一致するかを解析した。
図一11は,ブイ21001と21004の観測海上風と傾度風の風向相関を示したものである。風速相関と同様に,横軸は推算風の風向を,縦軸は観測風の風向をとり,両軸とも16個に分割される方位を単位としている。実線は全方向一定の偏向角があると仮定した場合のデータ群の平均的な偏向特性を表す回帰式である。また,偏向角が0の場合は,推算風の方位と観測風の方位が一致する点を結ぶ直線が偏向角を表す特性線となる。また,破線は境界層理論から推定される推算風速10m/sと30m/sの場合の観測点緯度における全方向一定とする偏向角を表す特性線すなわち,推算風の風向と海上風の風向のずれの推定値を表している。ブイ21001の偏向角は回帰式より0.036方位,角度に換算すると0.8度となり,ブイ21004の偏向角は0.563方位,角度に換算すると12.7度となる。ブイ21004は,境界層理論により推定される2本の偏向角特性線聞に回帰線がはいる。しかし,ブイ21001は0.5方位程度の差で偏向角特性線からずれる。解析に用いた21001ブイのデータ群は,21004ブイと比較するとばらつきが大きく,波浪等によるブイ自体の振動に影響されていることも考えられ,風向に関して十分信頼できるデータとするのに問題が残る。このため,ブイ21004のデータ解析結果を重視して判断すると,外洋海上風の風向推定は,境界層理論により可能であることが検証される。
 外洋風の観測は,日本沿岸の風観測と比較して費用が高く,精度の高い測得も困難さを伴う。そのため解析可能なデータ個数はかなり限られる。今後,より多数のデータを用いて解析を行うことが望まれる。

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図-3 北半球における低気圧と高気圧の傾度風力学バランス
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図-4 底面摩擦による傾度風の力学バランスの変化
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図一5 台風モデルにより計算される中心対象風場の風,合成風の模式図
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図一6 傾度風・台風ハイブリッドモデルに適用した空間内挿関数
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図一7 海上ブイの風データから解析された強風時の風の鉛直分布特性と大気安定度との関係^11)
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図一8 海面上の風の鉛直分布構造(緯度35度,自由大気の風速V_g=35m/s)
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図一9 緯度別の自由大気の風と海上風の風速・風向の関係
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図一10 海上ブイの観測風風速と推算された傾度風風速との相関図と境界層モデルのべキ乗型近似解
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図一11 海上ブイの観測風向と推算された傾度風風向との相関図と境界層モデルから推定された偏向角の特性線

4.内湾の海上風

4.1 内湾海上風の地形依存性
 内湾は,周囲が複雑な陸上地形に囲まれ,この影響を受けて複雑な風向・風速分布をしている。いま,図一12に示すように,陸上から海上に向けて湾内に一様な風が吹く場合を仮定した簡単なモデル化を行い,海面上1Om高度の風の変化に着目する。
 地表面を吹送する風は,底面摩擦の影響により鉛直上方に風速が増大するような対数式で近似可能な風速分布を形成する。この風速分布ができる層を境界層と呼ぶことは既に述べた。境界層上端の自由大気においては,陸上と海上の風速差はないが,摩擦の影響を受ける陸上10m高度と海上10m高度の風速を比較すると,陸上の底面粗度がより大きいため,陸上10m風速は海上10m風速よりも相対的に弱くなる。
 図一12に示すように,風が陸上から海上に吹く状況を想定すると,この時の風の変化は図中で模式的に表すような対数分布形の変化となる。陸上の風上端では比較的上空まで風速が弱い対数分布形となるのに対して,海上では低高度においても風速が強い分布形となる。陸上の標高が高いときには,破線で示すような障害物背後に形成される遮蔽域と同種の空間が形成され,ここでは対数分布で表現できないような逆風層が存在する場合もある。このような地形背後の遮蔽域を離れると,海上は底面粗度が相対的に小さいため,海上吹送距離の増加に伴い,10m高度の風が強まるように対数分布は次第に変化する。また,図の風下端で表すように十分な吹送距離が確保される場合,海上風の鉛直分布は,外洋海上風のそれに漸近する。すなわち,陸上の影響を受けた内湾の海上風が吹送に伴って変化する状況は,陸上の影響圏から離れるとともに次第に外洋の海上風分布に回復する過程であると考えられる。したがって,内湾海上風は吹送距離Fと陸上地形の代表標高Hならびに代表標高地点からの距離Xに関係することが推定される。これら3つのパラメータは,図に示すように定義され,吹送距離Fは陸上地形の影響を受ける海域の距離\Delta Fを差し引いた仮想的な吹送距離F」としても定義される。
 以上のような内湾海上風の地形依存性に関するモデルを,日本の代表的な内湾である東京湾・伊勢湾・大阪湾の海上風観測データの解析から検証する。


4.2 海上風観測データの相関解析
4.2.1 内湾の海上風観測データ
 東京湾の海上風観測点は,東京灯標と第二海保,伊勢湾は伊勢湾シーバース,大阪湾はMT局がある。図一13は,3つの湾の地形とそれぞれの湾の海上風観測地点の位置を示す。また,観測地点からの16方位の有効吹送距離(フェッチ)を合わせて示す。東京湾の湾軸はN-S方向であり,東京灯標は湾の北側に位置し,有効吹送距離の最大はS方向の23㎞,第二海保は湾の南側に位置し,有効吹送距離の最大はNNE方向の26㎞である。伊勢湾の湾軸はN-S方向であり,伊勢湾シーバースは湾の北側に位置し,有効吹送距離の最大はS方向の35㎞である。
大阪湾の湾軸はNE-SW方向であり,MT局は湾の南東側に位置し,有効吹送距離の最大はW方向の27㎞である。4観測地点の有効吹送距離は,方向により差があり,前述した内湾海上風の地形依存性に関するモデルを検証するのに適するデータである。
解析に用いる海上風データは,東京灯標と第二海保が1974年から1989年までの16年間,伊勢湾シーバースが1984年から1989年までの5年間,MT局が1984年から1987年までの4年間にわたり観測されたものであり,毎時の10分間平均風速である。観測期間がそれぞれの地点により違うため,解析に使用するデータ数に差はある。
いずれの風データも,観測地点において高風速を記録した全97個の気象擾乱期間の記録である。ここに,気象擾乱期間は,最大風速発生時刻を中心時刻とする前後2,3日間とする。
 東京灯標の観測高度はAP+17.5m高度にあり,灯標の施設が大きく,風速計のNNE方向に灯台があるため,構造物の影響を強く受けている。このため,永井ら 15)が整理した観測風の補正係数を用いて海上風に変換する。また,第二海保はAP+21.3m高度にあり,伊勢湾シーバースの観測高度は平均水面上35m高度にあるため,風の鉛直分布を簡便に表す次式を用いて海上風に変換する。
(33)
ここで,V_sは高度Z_sの風速である。MT局の観測高度は平均水面上10m高度にあるため,観測値をそのまま用いる。

4.2.2 東京湾海上観測風の相関
 海上風観測点のうち,東京湾は,湾北側に位置する東京灯標と南側に位置する第二海保の2地点あることから,海上風観測データを用いて,湾内海上風の分布特性について解析を行うことができる。東京灯標と第二海保において同時刻に観測された風速の相関解析を方位別に行った。図一14は,観測風の風速相関解析結果のうち,S方向の相関図であり,東京灯標の風向がSを中心とする左右2方位に該当するデータを対象に図を描いたものである。図の横軸に東京灯標の風速を,縦軸に第二海保の風速をとる。データ群に対応する数字は,16方位単位の方向を示すものであり,7から9の値はそれぞれSSEからSSWまでの方向を表している。また,データ群の平均的な傾向を表す回帰直線式の勾配から,東京灯標の風速を基準とする2地点の風速比が求められる。
 この図から,東京灯標の風向がSの場合に,東京灯標の風速に対して,第二海保の風速は平均すると約9割程度低い値が観測される。
 同様の解析を全方位について行い,整理した結果が図一15である。図の横軸は16方位を単位とする方向をとり,左側の縦軸は第二海墾の風速を東京灯標の風速で除した2地点の風速比を,右側の縦軸は第二海保の方位別有効吹送距離を東京灯標の同方位の有効吹送距離で除した2地点の吹送距離比をとった。また,図中の黒丸を付けた細線は方位別風速比の変化を,太線は方位別有効吹送距離比の変化を表している。ここで,風速比が大きいほど第二海保の風速が相対的に強いことを表し,有効吹送距離比が大きいほど第二海保の距離が相対的に長いことを表している。
 風速比,有効吹送距離比ともに方向によって変化し,風速比と有効吹送距離比はほぼ同じ変化傾向となる。すなわち,有効吹送距離が長いほど,相対的に風速が大きくなることが観測データから明かとなった。

4.3 東京湾・伊勢湾・大阪湾の海上風特性
4.3.1 海上風の風向特性
 傾度風モデルにより推算される摩擦の影響を受けない自由大気の風と,観測海上風との風向相関解析を行い,底面摩擦ならびに陸上地形により,内湾海上風の風向がどのような影響を受けるかを検討する。推算地点は,前述した東京灯標,第二海保,伊勢湾シーバース,MT局の4地点とし,解析データは前述した気象擾乱時のものとする。
 海上風の風向は,自由大気の風速が増大するとともに偏向角も大きくなることは既に述べた。この特性を踏まえて,推算される傾度風風速を10m/s間隔の階級に分類し,階級別に推算風向と同時刻の観測風風向間で相関解析を行う。全方位を対象とする相関解析から,相関図上におけるデータ群の平均的な分布を表す一次回帰式,
(34)
を求める。ここで,\theta_10は観測海上風の風向,\theta_grは推算された傾度風の風向,\theta_aは偏向角である。図一16は,4地点の風向相関解析から,式(34)により傾度風の風速階級別偏向角\theta_aを求め,これを地点別に表すものである。横軸は傾度風の風速をとり,風速が10m/s〜20m/sの階級に相当するデータについては,中央値である15m/sの位置にそれぞれの結果を示した。縦軸は風向の偏向角を示しており,正の角度は,海上風の風向が傾度風の風向に対して反時計回りに変化することを表す。また,無印の実線は,前述した境界層モデルから推定される緯度35度における風速階級別の偏向角を示す。
 図によれば,大阪湾の高風速階級を除いて,傾度風の風速増加とともに偏向角は大きくなり,境界層モデルによる推定結果と同様の傾向を示す。ただし,推定値よりもかなり大きい偏向角となった。境界層モデルによる推定値が,外洋海上風の特性を表すものであると考えると,内湾海上風の偏向角は外洋に比べて平均的に大きくなる。境界層モデルによれば,高風速ほど底面粗度は大きくなり,それに伴って偏向角も大きくなる。この点から類推すると,内湾は外洋に比べて相対的に底面粗度が大きいため,偏向角も外洋より大きくなると考えられる。
 次に,4地点において,方位別の風向相関解析を行い,偏向角を求める。このような解析を行う理由は,内湾周辺は陸上地形に囲まれており,方向毎に陸上地形の影響度が異なると考えられるためである。すなわち,傾度風の風速が,同じ風速階級に該当するデータにおいても,傾度風の風向により,偏向角は変化すると予想される。
 いま,図一13に示した東京湾の地形をもとに,海域延長距離が最も長いN-S方向を湾軸と定義する。そして,推算された傾度風の風速が10m/s以上のデータを対象に,方位別の風向相関解析を行い,湾軸と方位別平均偏向角との関係について調べる。図一17は,東京灯標と第二海保において,方位別に求められる偏向角と東京湾の湾軸との関係を表す図である。ここで,方位別のデータ分類は,傾度風の風向をもとに行い,横軸は16方位の傾度風風向,縦軸は偏向角をとる。海上風の風向が傾度風の風向に対して反時計回りに変化する場合に,偏向角は正の値をとる。また,N,Sの方位に示す縦線は,湾軸の方向を表している。図によれば,湾軸と角度を有する方位ほど,偏向角は相対的に大きくなる傾向がわかる。
この傾向は,図一18に示す伊勢湾,ならびに図一19に示す大阪湾においても同様に見られる。ただし,伊勢湾のW〜SWの方向については,負の偏向角となる点,東京湾の湾軸に直交するE方向とW方向で,偏向角が大きく異なる点等が注目される。伊勢湾に吹くW方向の風は,湾の西側に位置する1000m級の山によって遮蔽されるため,この山を避けるように風向は変化する。その結果,W方向の風の偏向角は負になると考えられる。
 このように,傾度風の風速に伴う風向の変化は,内湾海上風の偏向角を決定する要因ではあるが,各方向の陸上地形の影響による風向の変化も重要な要因になると考えられる。詳細を明らかにするためには,後述するような陸上地形の起伏を計算条件に取り入れた数値計算モデルの導入が必要である。

4.3.2 海上風の風速特性
 観測風の風向を基準にデータを類別し,方位別に風速の相関解析を行う。データ群の平均的な分布特性を表す回帰式は,境界層モデルにより海上風推定を行うために提案した式(32)の近似式と同じベキ乗型とする。回帰式は次式のように表される。
(35)
ここで,V_10は観測海上風の風速,V_grは推算された傾度風の風速,aは風速の相関解析から決定される回帰係数,bは緯度により決定される係数である。3つの湾の代表緯度35度では,係数b=0.735となることが既に示されている。そのため,解析では比例定数aのみを求める。なお,推算された風向は,1方位程度の誤差が含まれるものと考え,解析対象とする方位の+-1方位を合わせた3方位のデータを用いて方位別の風速相関解析を行う。
 図一20は東京灯標の解析結果の1例として,S方向の相関図を示したものである。図の横軸は推算された傾度風風速を,縦軸は観測風風速をとる。破線は傾度風の風速を10m/s階級毎に分類し,各階級のデータ重心点を結んだものである。実線は,破線を上回る高風速に相当するデータ群から求めた回帰線である。このような処理は,階級内のデータ群のうち,観測風の上限に相当するデータ群に対して適合する回帰式を求めるように配慮したものである。また,データ群に当てはめられた数字は,16方位単位の風向を示し,7〜9はSSE〜SSWに相当する。
 図によれば,東京灯標のS方向の回帰式は,V_10=1.362V_gr^0.735となり,係数a=1.362となる。また,図一21に伊勢湾シーバースのS方向の相関図を,図一22に大阪湾MT局のS方向の相関図を示す。この図から回帰係数として,伊勢湾シーバースはa=1.333,大阪湾MT局はa=1.172を得た。前述した境界層モデルの議論によれば,回帰係数は周辺地形の影響を反映していると考えられるため,地点により係数値は異なる。
 いま,東京灯標において,全方位の風速相関解析結果から回帰係数を求め,これらの値と方位別の有効吹送距離との関係を調べる。図一23は,両者の方位別変化の比較結果である。図の横軸は16方位を,左側の縦軸は回帰係数aの大きさ,右側の縦軸は有効吹送距離をとる。黒丸を付けた細線が方位別の回帰係数の変化を,太線が方位別の有効吹送距離の変化を表す。
 回帰係数aと有効吹送距離の方位別変化傾向は,良く一致し,吹送距離が長いほど回帰係数は大きくなる。すなわち,吹送距離が長いほど海上風の風速は増大することがわかる。同様の処理を他の3地点についても行い,図一24に第二海保を,図一25に伊勢湾シーバースを,図一26に大阪湾MT局の比較図を示す。伊勢湾シーバースのW方向を除いて,3地点とも東京灯標と同様の傾向が見られる。
 以上のような特性は,先に提示した内湾海上風の簡単なモデルで予想された特性と一致する。前述した海上風の風向特性に関する検討も合わせて考えると,本研究で行った海上観測風の解析結果から,日本の主な内湾において定性的に成立する海上風の風向・風速特性が存在することがわかる。

4.4 地形依存性に関する経験則
 推算された傾度風と観測海上風の風速相関解析から,明かとなる地点別方向別の回帰係数aと有効吹送距離との関係が,内湾で普遍的に成立することを検証する。そのために,4地点の方位別回帰係数と有効吹送距離を図一27に示す。
 図一27は,横軸に有効吹送距離をとり,縦軸に回帰係数aをとったもので,データ点は4地点の方位別解析結果に相当する。また,曲線はデータ群の分布特性を平均的に表す回帰式である。前述した内湾海上風の簡単なモデルから推定すると,陸上では風速が弱く,海上を吹送するとともに風速は強くなり,外洋海上風の係数に漸近することが予想される。これより,図一28に示す回帰式は,吹送距離0の時に縦軸と交わり,吹送距離が長くなるとともに,外洋海上風の回帰係数a=1.690に漸近する関数型であることが必要条件となる。
 図より,データ群は,有効吹送距離の増加とともに回帰係数が大きくなる傾向を示す。しかしながら,いくつかの点は,求められた回帰式から離れて分布する。すなわち,有効吹送距離のみでは十分に特性を説明できない。
そこで,さらに陸上地形の起伏の影響について検討を行った。ここで,有効吹送距離のみをパラメータとして求められる回帰式を,第一次近似の経験式と定義する。
 陸上地形の起伏は,標高Hと風観測点までの距離Xによって特徴付けられることは既に述べた。この2つのパラメータを用いる無次元長さX/Hを導入し,この値から陸上地形の影響を数値化する。ここで,2つの長さを単位とするパラメータは,縦横のスケールが大きく異なることから,標高Hはm単位,水平距離Xは㎞単位とする。
 はじめに,各データの有効吹送距離と,第一次近似式に回帰係数を代入することから計算される吹送距離との差\Delta Fを求める。この差と,地形図から読み取った方位別の無次元長さX/Hとを比較し,図一28にその結果を示す。データ群はかなりばらつくものの,定性的には無次元長さX/Hが小さいほど,吹送距離の差\Delta Fは正の方向に増加する傾向が見られる。無次元長さX/Hが小さいことは,海岸線が陸上の起伏に近いか,もしくは起伏の標高が高いことに対応する。吹送距離の差が正の方向に大きいことは,距離を過大に評価していることに相当する。データ群の傾向は,陸上地形の起伏により,その背後に風の弱い領域が形成され,背後の有効吹送距離が相対的に減少することを表している。図一31に示すデータのうち,吹送距離の差が正の値で大きく,かつ無次元長さが小さい場合を抽出する。正の方向に5.0㎞以上の吹送距離の差があるデータについて,回帰式を求めると,
(36)
の関係が得られる。式(36)の関係を用いて,有効吹送距離の差\Delta Fを求め,\Delta Fを有効吹送距離Fから差し引いた仮想吹送距離F」を新たに定義する。ここで,仮想有効吹送距離の概念は,内湾海上風の簡単なモデルで既に述べたものである。
 仮想有効吹送距離辺と回帰係数との関係は,図一29のように表され,データ群の特性は実線の回帰式で良く近似される。図に実線で示した特性線から,吹送距離の増加とともに回帰係数も増加し,吹送距離無限大で,境界層モデルより推定された緯度35。における外洋風の係数a=1.690に漸近することが検証された。この特性線を第二次近似式とすると,海上風と傾度風との関係は次式で表される。
(37)
ここで,F」は仮想有効吹送距離(F一\Delta F),V_grは傾度風速,V_10は海上風の風速である。式(37)は,傾度風速から内湾の海上風を推定するための経験則である。このように,陸上地形を仮想吹送距離として定義するパラメータで組み込むことにより,内湾に共通な海上風推定式が求められた。

4.5 経験則による内湾海上風分布の推定
 自由大気の風と海上風の風向が湾内で一様と仮定する。内湾の風推算地点における有効吹送距離Fと無次元長さX/Hが,あらかじめ方位別に求められれば,式(37)に示した内湾海上風の経験則(第二次近似)に,1代表地点において推算された傾度風の風速を代入し,内湾の任意地点における海上風を推定することができる。海上風の風向についても,推算された傾度風の風速階級別に求められた偏向角(図一16)か,もしくは風向別に求められた偏向角(図一17から図一19)を用いて推定できる。また,東京湾・伊勢湾・大阪湾のように,湾内に海上風観測データがある場合には,観測地点と内湾海上風を推定する各点の方位別風速比が経験式から計算できる。これを用いて,面的な海上風分布を推定できる。図一30は,観測風を用いた面的な海上風分布を推定する手法を適用した例である。東京灯標の観測海上風の風速を1.Oとし,NE方向の海上風の風速比を平面分布として表すものである。
 以上に述べた内湾海上風の平面分布推定法は,図一31のようにまとめられる。図一31に示す手順に従えば,1地点の観測風,ないしは推算風の情報から,簡単に湾内全体の海上風分布が推定できる。ただし,この方法は,あくまで1地点の風が極端に局所的な地形の影響を受けないことが前提としてあることに注意を要する。
 さらに,内湾各地点において傾度風を面的に推算し,それぞれの地点の風向偏向角を風速階級別か風向別に求められた偏向角により決定し,方位別の経験式(37)に代入する。これより,気象擾乱の空間スケールを概略考慮し,内湾海上風の風向・風速分布を推定することも可能である。

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式(33〜37)
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図一12 内湾海上風の地形依存性に関する模式図
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図一13 東京灯標・第二海保・伊勢湾シーバース・大阪湾MT局の16方位の有効吹送距離(単位km)
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図一14 東京灯標と第二海保の観測風の風速相関図(東京灯標の観測風向がSを中心とした左右2方位に該当するデータを解析に用いた)
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図一15 東京灯標と第二海保の方位別風速比と有効吹送距離比の関係
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図一16 傾度風の風速階級別に求められた海上風の風向偏向角と境界層モデルにより推定された風向偏向角
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図一17 東京湾における傾度風風向別の海上風風向偏向角と湾軸との関係
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図一18 伊勢湾における傾度風風向別の海上風風向偏向角と湾軸との関係
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図一19 大阪湾における傾度風風向別の海上風風向偏向角と湾軸との関係
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図一20 東京灯標において推算された傾度風と観測海上風の風速相関
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図一21 伊勢湾シーバースにおいて推算された傾度風と観測海上風の風速相関
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図一22 大阪湾MT局において推算された傾度風と観測海上風の風速相関
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図一23 東京灯標において方位別に求めた海上風推定式の回帰係数と有効吹送距離との関係
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図一24 第二海保において方位別に求めた海上風推定式の回帰係数と有効吹送距離との関係
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図一25 伊勢湾シーバースにおいて方位別に求めた海上風推定式の回帰係数と有効吹送距離との関係
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図一26 大阪湾MT局において方位別に求めた海上風推定式の回帰係数と有効吹送距離との関係
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図一27 海上風推定式の回帰係数と有効吹送距離の関係と一次近似した経験式
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図一28 陸上地形の特性を表す無次元長さX/Hと有効吹送距離の差\Delta Fの関係(ここに,有効吹送距離の差は,実際の有効吹送距離と第一次近似式から求められる有効吹送距離との差である。)
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図一29 内湾海上風を推定する経験式の回帰係数特性線
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図一30 東京灯標における観測海上風の風速を基準とした風向NE時の東京湾海上風分布

5. 内湾海上風推算モデル

5.1 3次元マスコンモデル
5.1.1 モデルの基本式
 3次元マスコンモデルは研究例も多く,陸上地形の影響を受ける風場を再現可能な手法として期待されている。^9)
 モデルの基本方程式は,質量保存則を束縛条件とする変分式で記述される。いま,大気を非圧縮性と見なすと,質量保存則は連続式で表される。
(38)
ここで,x,y,zは直交座標系における水平及び鉛直座標,u,v,wは成分風速である。従来の方法では,観測風の内挿値または傾度風の海上補正風等を初期の風場条件とし,全格子点において風ベクトルの3次元空間分布を作成し,この分布を質量保存則を満足するような風場に調節する。マスコンモデルは,初期に与える風場は真値に近いと仮定することから,調節をできる限り小さくとどめることが望ましい。このため,調整値(補正後の値一初期の値),すなわち真値からの誤差の2乗和を最小とするように補正風場を計算する方法がとられる。調整値の誤差を変分方程式で表すと,次式となる。
(39)
ここで,u,v,wは質量保存則を満たすように調整された成分風速,u^0,v^0,w^0は初期風速成分,\lambdaはラグランジュの未定乗数,a_1,a_2はガウスの精度係数である。a_i(i=1,2)は,
(40)
により決定される。ここで,\sigma_iは観測誤差であり,調整した風速成分からの観測した風速成分の偏りを表す。
a_1とa_2の比は,調整した風速の水平成分と鉛直成分の相対的な大きさを定める係数となる。
 式(39)の最小解を持つオイラー・ラグランジュ方程式は,
(41)
(42)
(43)
(44)
であり,これらの方程式は次の境界条件,
x方向の境界:n_x \lambda \delta(u)=0
y方向の境界:n_y \lambda \delta(v)=O
z方向の境界:n_z \lambda \delta(w)=0
を満足しなければならない。ここで,\delta()は括弧内の量の第1変分,n_x,n_y,n_zはそれぞれの方向の外向きを正にとった単位法線ベクトルである。式(41)から式(43)をそれぞれの方向で微分し,変分方程式(39)に代入すると,ポアソン型微分方程式が得られる。
(45)
この式より\lambdaを求め,これを式(41)から式(43)に代入すると,質量保存則を満たすように調整されたu,v,wが得られる。なお,底面・側面の境界条件としては,次式を用いる。
(46)

5.1.2 基本式の差分化
 質量保存則を束縛条件とする風場の3次元変分式(31)を用いた解析は,ラグランジュの未定係数\lambdaに関するボアソン型偏微分方程式(45)を解く問題に帰着する。この偏微分方程式を数値的に解く方法として,最も多く用いられている緩和法のうち,収束を早めた過緩和法と呼ばれる方法を採用する。偏微分方程式を解くために必要な変数は,\lambdaのみであるが,入力条件として,各格子点上に初期風速u^0,v^0,w^0を与えることが必要である。これらの量の格子点における配置は,図一32に示すように定義する。
 偏微分方程式(45)を各格子点において解くために,差分化を行うと,
(47)
となる。差分式(47)は境界に接しない格子点について適用されるものである。境界に接する格子点については,境界条件に応じた2次微分を考える。ここで,x方向の2次微分を例に考えると,次の差分式として記述できる。
(48)
式(48)の係数A,B,Cの値は,種々の境界条件において,表一4のように与えられる。
 表一4の関係を用いると,式(47)は境界に接する格子点も含めた一般形の差分式として、
(49)
のように書き換えられる。ここで,D_i,j,kは,
(50)
であり,初期に与えた風場の発散,すなわち初期風場からの偏りを表す。また,A_x,B_x,C_x,A_y,B_y,C_y,A_z,B_z,C_zは,各成分に対する境界条件によって,表一4から決定される係数である。
 ポアソン方程式の格子点(x_i,y_i,z_i)における差分式は,発散量\sigma_i,j,kを用いると,次式のように記述される。
(51)
ここで,\nabla^2は2階微分の差分表示を表す。この式を解く方法として採用する緩和法は,適当な方法で設定した成分風速の初期値を式(49)に代入し,推定値の誤差のために生ずる右辺の0からの差,すなわち剰余を小さくするように次のステップの推定値を与え,順次同様の処理を繰り返すことにより,剰余値を次第に減少させていく方法である。
 いま,2次元の場合について,緩和法を説明すると,n回目の繰り返しステップにおける格子点(x_i,y_j)の剰余R_i,j^nは,
(52)
と表される。式(52)においてR_i,j^n=0となるように,次のステップn+1で与える推定値を求めると,
(53)
で表される。過緩和法は,収束を早めるための加速パラメータを導入して,式(52)の推定値のうち既にn+1ステップの計算を終了しているQについては,n+1ステップ目の値に置き換えて,右辺が0となるように推定値Qを求める方法である。式(40)は,次式のように書き換えられる。
(54)
ここで、wは加速パラメータで0〜1の値を与えるが、格子点(p,q)を用いた最適値の参考式、
(55)
により与えることが,解析により明らかにされている。
式(54)を3次元に拡張して,変分方程式の一般形差分式(41)に当てはめると,求める変数λの逐次近似解は,次式のようになる。
(56)
式(56)で計算される\lambdaが全格子点において収束条件を満足する場合に,これを解とし,各格子点において調整された成分風速を計算する。調整風速の計算式は,オイラー・ラグランジェ方程式を差分化した次式により計算する。
(57)
(58)
(59)
5.1.3 境界層上端の境界条件
 境界層上端の自由大気の風は,傾度風・台風ハイブリッド風推算モデルにより計算される。台風圏内では台風モデルの風,台風の影響範囲外では気象図の気圧分布から計算される傾度風モデルの風となるように,式(12)を用いて空問的な内挿操作を行う。ただし,本研究で対象とする風推算範囲は内湾に限定され,かつ台風が湾に接近する強風時を推算期間とおくことから,台風モデルのみにより風推算を行う。
 境界条件となる境界層上端風場の計算に用いる台風モデルの気圧分布は,式(9)に示したMyersモデルを適用する。また,この気圧分布から,傾度風風速V_grは式(4)により推算する。台風の移動に伴って生じる場の風は,式(4)で示した傾度風速と台風の進行速度V_Tに比例するものと仮定し,次式で計算する。
(60)
ここで,式(60)は,前掲した式(11)の風の低減率C_2=0.0としたものである。海面摩擦の影響を受けない自由大気の風は,式(4)で求められる傾度風速と式(60)で求められる場の風をベクトル合成することにより求められる。

5.2 経験則・マスコンハイブリッド風推算モデル
 先に示した東京湾,伊勢湾,大阪湾の観測海上風と推算された傾度風の相関解析結果から,内湾海上風の風速Vは,傾度風の風速V_gr,ならびに陸上地形特性を代表する有効吹送距離Fと陸上地形の起伏に関する無次元パラメータX/Hから求められる仮想有効吹送距離F」の2つのパラメータを用いた簡単な経験則(37)で推定できることを明らかにした。また,内湾海上風の風向偏向角は,傾度風の風速ならびに湾軸の方向に依存することも明らかにした。これら観測データから得られた内湾海上風の特性を,風推算モデルにおいて生かすために,経験則から求められる風場を最下層の初期条件とする3次元マスコンモデルを開発し,このモデルにより風推算を行う。
 従来のマスコンモデルは,観測値等を内挿するか,もしくは傾度風モデル等により推算される風を初期の風場条件として与えている。そして,この初期風場を真値とみなし,各格子点において質量保存則を満たしながら,初期風場からの誤差を最小とする調整風場を全格子点で求める。そのため,マスコンモデルの特性である調整された風場が初期風場に強く依存することが問題となる。
仮に観測風を初期風場として用いる場合でも,観測風が陸上のものであれば,海上風への変換処理を行うことが必要となる。このように,適切な情報を初期風場として与えることは,マスコンモデルの適用上,最も注意を要する問題となる。
 この初期風場を,観測海上風の解析結果から求めた経験則を利用して設定することが,本研究で提案する改良型モデルの特徴である。また,風の鉛直分布は,例えば対数分布を仮定する等,種々の設定方法がある。本研究では,境界層上端において与えた自由大気の風と最下層で与えた経験則による推定海上風を単純に線形内挿して与えることとする。また,初期の風向の設定については,最下層の風向偏向角は30度とし,鉛直方向に風速同様線形内挿する方法を採用する。前述した観測海上風の解析結果から,海上風の風向偏向角に関する知見は得られたが,局所的な陸上地形の影響までは考慮できない。そのため,風向の偏向角については,内湾海上風モデルによる風推算結果に期待することとした。

 5.3 気流数値計算モデル
 5.3.1 モデルの基本式
 粘性流体の流れの状態は,慣性項と粘性項の比率として定義されるレイノルズ数により概略判断できる。レイノルズ数の値が異なると,障害物をよぎる流れにおいて,その下流側背後における流速分布が異なる。
 レイノルズ数R_eは,代表流速U,障害物の流れに対する規模L,粘性係数\nuにより,次式のように定義される。
(61)
このレイノルズ数が55〜1000程度の範囲で,背後にカルマン渦列が生ずることはよく知られている。カルマン渦列は,ビル背後の流れ等に見られる。さらに,大規模なスケールの例として,冬季の季節風吹き出し時に朝鮮半島南に位置する済州島の風下側で渦状の雲列が気象衛星写真から観測されている。このような障害物をよぎる流れに発生する渦を再現可能な数値計算モデルが開発され,SOLA^16)と名づけられた。この数値計算モデルは,複雑な粘性流れを,大型コンピュータを使用することなく解くことを目的として開発されたものである。本研究が目的としている陸上地形の影響を受ける風場を,可能な限り迅速に計算する点と主旨が一致している。本研究で採用する気流数値計算モデルは,3次元に拡張したSOLAモデルであり,3次元の粘性流体の連続式と運動方程式を直接的に解く方法である。このモデルは,構造物背後に生じる渦の再現等,小スケールの風場推算について既に適用されており,マスコンモデルで問題とされた初期風場の影響に大きく左右されない収束解を求めることが可能である。このような3次元の気流計算モデルが,近年利用され始めていることを考慮し,モデル実用化の第一段階として現地スケールの風推算を行う。
 3次元流れに関する連続式と運動方程式は,Navier-Stokesの方程式で表される。
(62)
(63)
(64)
(65)
ここで,Pは気圧,\rho_aは空気密度,u,v,wはそれぞれx,y,z方向の成分風速,\nuは粘性係数である。ただし,本研究で取り扱うようなスケールの大きい風推算において,粘性係数は,レイノルズ応力として流体に作用する力の場合に適用される渦動粘性係数を与える。
 このモデルの問題点は,海面及び陸上面の境界条件,ならびに側方境界条件をどのように設定するかにある。
特に,底面の摩擦を考慮した境界条件は,現在研究レベルにある。例えば,境界層の近似として,\kappa-\epsilonモデル等を導入すると,計算時問は膨大なものとなり,実用的に困難なモデルとなる。そこで,本研究では,摩擦なしの条件により計算結果の特性のみを検討することとする。

5.3.2 基本式の差分化
 基本式の差分化にあたり,流れを離散量として表現するため計算格子と変数の配置を,図一33のように定義する。
 この定義に沿って,基本式(62)から(65)を差分する。ここでは,簡単な記述を行うために2次元平面の場合について差分化を行う。2次元における差分式は,次式のように表される。
(66)
(67)
(68)
ここで,Pは気圧であり,FUX,FUY,FUZ,FVX,FVY,FVZ,FWX,FWY,FWZは移流項,VISX,
VISY,VISZは粘性項である。また,添字nは計算時間ステップを表す。式(67),式(68)の移流項ならびに粘性項は,次式のように表される。
(69)
(70)
(71)
(72)
(73)
(74)
ここで,aは移流項に係る重み係数であり,本研究では,a=1の風上差分を用いる。
 これらの差分式に基づいて計算を行うと,u,vが求められる。一般に,連続式を満足しない流速が計算されることから,次式で定義される発散量を計算する。
(75)
任意格子の発散量Dが負の場合には,格子内に質量が流入することを意味しており,この格子の圧力は質量を流入しないように増加させることが必要となる。また,発散量Dが正の場合には,逆に格子内から質量が流出することを意味しており,この格子の圧力は質量を流出させないように減少させることが必要となる。SOLAモデルでは,圧力Pを調整して発散量Dが0になるように順次繰り返し計算を継続し,全ての格子において発散量が収束条件を満足するまで行う。発散量を0とするように調節すべき圧力Pの増分は,次式のように表される。
(76)
繰り返し計算において計算されるkステップ目の発散量Dは,kステップ目の成分風速u,vから,式(75)を用いて計算されるが,この発散量から,式(76)を用いて\delta Pを計算すると,発散を0とすべき新しいステップの成分風速が次式のように求められる。
(77)
(78)
このような計算を繰り返して,収束条件を満足する風場を求める。

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