御沙汰書(写)
宮城県
今般其管内震災ノ為損害不尠趣被聞食 思召ヲ以テ
天皇
皇后両陛下ヨリ御救恤トシテ金八千円下賜候事
昭和八年三月四日
宮内省
序
過ぐる三月三日午前二時三十二分突如として発せる三陸沿岸の地震は狂暴なる津浪をも件ひ近年稀に見るの大惨害を蒙らしめたり。我が宮城県に於ても被害の及ぶ所五郡二十町村に亘り、不幸にして身命を奪はれ、叉は行方不明となれる者三百九、負傷せる者百六十一、家屋の流失、倒壊及浸水三千三百八十八の多きに上り、漁船の流失破損亦二千六十五を算し、為めに一家全滅の悲運に遭遇し、或は肉親を喪ひ、家産生業を失ひたる者等枚挙に遑あらず。此の報一たび伝へらるるや畏くも皇室の優渥なる御仁澤に浴し奉り、各宮家よりも御救恤金を下し賜り洵に恐懽感激に禁へず。尚各地より金品の寄贈に、労力奉仕其他に、侭きざる同情を寄せられたるは、罹災地住民と共に肝銘措く能はざる所にして、感謝に禁へず。爾来挙県一致、全力を傾注して救護慰問其他臨時応急の措置に遺漏なきを期し、以て皇恩の厚きに副ひ奉り叉江湖の御同情に酬いんことを念とせり。乃ち茲に本県に於ける震嘯災害救護の概況を印行して清鑑に供し、今後一層の御後援を仰ぐ次第なり。
本編は勿卒の間に成れるものなるを以て悉さざる所甚だ多し、之等は他日を期して補正せんとす、御諒恕を請ふ。
昭和八年四月
宮城県
写真
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地図
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一、宮城県の地勢
本県は本州の東北部に位し奥羽地方の略々中央部を占め二市十六郡を管轄し面積四百七十一方里余にして西は山嶽連互して秋田、山形の二県を画し南は福島県に接し北は岩手県に界す束部一帯は大平洋に面し沿海百五十八里海浜曲浦相連る其の東端牡鹿郡は遠く海中に突出して仙台湾を擁し半島の先端に近く孤島金華山あり。
二、三陸沿岸に於ける過去の震災
三陸(陸前、陸中、陸奥)沿岸の地は遙かにタスカロラ海溝に臨み、此の海溝附近よりしばしば著大なる地震発する為夙に本邦に於ける大地震発生地帯の一とせらる。
加之本県の牡鹿半島以北の海岸は凸凹著しく所謂リァス式海岸を構成せり、斯かるリアス式海岸はv字形をなしたる小湾が大洋に開口せると湾口より海岸に至るに従ひ次第に深度を減少する關係上津浪を生ずる惧れ十分なり。過去の歴史に徴するも本邦中海嘯の被害最も多きを見る。近くは明治二十九年の激震当時に於て牡鹿半島の北部牡鹿、桃生及本吉の三郡に渉り其の惨害最も甚だしく本県の被害戸数二千三百八十四戸、死者三千四百五十二名、負傷者一千二百四十一名を算したり。
三、今回の地震及海嘯の状況
(一)地震の状況
中央気象台及本県石巻測候所に於て観測せる地震の状況左の如し。
中央気象台発表
三月三日午前二時三十二分頃千島から北海道、東北地方、関東地方の全般、本州中部地方の大半に亘り弱震若くは強震を感じた。
本台、地震計室の観測によると束京に於ける観測は
発震時 午前二時三十二分十四秒
初期微動継続時間 六十秒
最大振幅 三十六粍
震度 弱震
性質 緩
総震動時間 約一時間
であつた。各地方測候所より電信により報告せられたる所によると前述した如く震域頗る広範囲に亘り岩手県、宮城県、福島県の海岸では強震を感じ震央は東経四十四度六、北緯三十九度二、金華山の束北東約二百八十粁、釜石の東方約二百三十粁の遠き沖合に当つてゐる。此の位置は所謂外側地震帯上に位し常に頻々として地震を発する所である。即ち此の地帯に発する地震の回数は毎年千回を越ゆる位である。
然し此の地帯に発する地震としても今回の如き大規模の地震は稀に見る大地震である。
石巻測候所発表(三月三日午前九時)
発震時 昭和八年三月三日午前二時三十一分三十九秒一
初期微動継続時間 二十秒一
最大震幅 二十三粍
総震動時間 二時間
震度 強震(壁に亀裂を生ずる程度)
震源地 石巻測候所を去る約百五十粁の金華山東南東沖合
地震学より見れぱ外側地帯による大なる地震にして牡鹿半島及岩手県釜石地方には相当被害ある見込。女川町附近には四尺内外の海嘯襲来せり。
(二)海嘯の状況
地農の後約三十分を経て襲来せる海嘯は県下金華山以北の本吉郡、桃生郡、牡鹿郡、亘理郡及名取郡の各沿岸町村を襲ひたり。今各地の海嘯来襲状況を総合するに、午前二時五十分頃束方海上と思料せらるる方面に於て大砲の轟くが如き音響あり、又同五十五分頃同様の音響を聞けり其の後海水著しく干たりと見えたるに間も無く三尺乃至四丈の海嘯各地に反覆来襲するに至りたり。海嘯の高さは各地に於て区々なるも明治二十九年の海嘯に比すれぱ桃生郡十三浜村大指、小指部落に於て約二十五尺高く、牡鹿郡女川町に於て約三尺低し。
四、被害状況
今回の震嘯災害を被りたる町村数は二十にして、五郡に亘り就中被害の最も激甚を極めたるは本吉郡唐桑村、歌津村、十三浜村、牡鹿郡大原村及桃生郡十五浜村なり。今県下全般に亘る被害状況を挙ぐれば左の通なり。
尚各種の損害見込額左記の通なり
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五、救護の状況
(一)畏き大御心
至仁至慈なる
天皇皇后両陛下には今回当地方震災の被害激甚なるを、深く御軫念あらせられ、御救恤として、特に内帑の資を下し賜ひ恵撫慈養の道を御示し給ひしことは、洵に恐懼感激に堪へざる所なり又三月五日親しく大金侍従を災禍の現地に御差遣在らせられしことは聖恩の宏大なる只々感泣の外なき次第なり。県に於ては、直ちに左の通告示を発し、一般県民に聖旨を伝ふると共に、此の聖恩に浴したる県民は這般の災厄に罹りたる者なると否とに拘らず、真に感奮興起匪躬の誠を致し、同心協力、賑恤救護の目的を達成し、進んで災害地復興の実を挙げ、以て君恩の厚きに副ひ奉らんことを誓ひたり。
宮城県告示第百十号
今般県下海岸地方強震ノ為被害不尠趣被聞召罹災者御救恤トシテ天皇皇后両陛下ヨリ金八千円下シ賜ハリタリ
昭和八年三月五日
宮城県知事三邊長治
其の後
皇后陛下には四月一日重ねて、罹災傷病者並六十歳以上十四歳未満の孤独者に対し、特に衣服地並裁縫料下賜あらせられ、又各宮殿下よりも御救恤金下賜の思召を拝し奉りたることは、之亦感激に堪へざる所なり。
両大金侍従は三月五日午前九時本県庁正庁に於て、宮城、岩手、青森、各県知事に対し御救恤金の伝達を了せられたる後、三県知事より震災状況を聴取し、同十時仙台駅を震し石巻町を経て牡鹿郡大原村谷川、鮫ノ浦を視察せられ、翌三月六日桃生郡十五浜村雄勝視察後、本吉郡志津川町に赴かるる途中十三浜村の災害状況を聴取し、志津川町を経て歌津村伊里前小学校に於て同村の災害状況を聴取せられ、更に唐桑村只越を観察翌三月七日岩手県に向はれたり。
(ニ)御下賜金品の伝達
御下賜金の伝達に付ては、聖旨の徹底を図るに万遣漏なきを期する為、罹災地の町村長及所轄警察署長をして、慎重に罹災者の罹災状況を調査せしめ、之を左記御下賜金交付要項に基き、県下十四箇所に於て関係町村長に対し三月二十日一斉に伝達を了したり。尚其の際には関係町村長に知事より左の告諭を発したり。
御下賜金交附要項
1、死亡者行方不明者 一人当 交附標準一〇
2、負傷者 同同四
3、住宅全流失 一世帯当 交附標準七
4、住宅全壊 同同五
5、仕宅半流失若は半壊 同同二
6、住宅の床上浸水 同同一
備考
一、各罹災者に御下賜金交附する標準は大体右に依ること
二、右標準に依り算出の際円位未満み端数を生ずるも成るべく之を円位に止むること
御下賜金町村別伝達額
亘理郡坂元村 一三一円
名取郡閑上町 三
桃生郡十五浜村 二、二七七
牡鹿郡女川町 三〇三
同荻浜村 五二
同大原村 一、一〇一
同鮎川村 四五
本吉郡志津川町 一〇〇
同戸倉村 一〇三
同十三浜村 四七八
同歌津村 一、三八二
同小泉村 三三五
同大谷村 四四
同階上村 四〇
同鹿折村 八二
同唐桑村 一、四七三
同大島村 五一
計 八、○○○
告論第二号
亘理郡坂元村長
名取郡閑上町長
桃生郡十五浜村長
牡鹿郡女川町長荻浜村長大原村長鮎川村長
本吉郡志津川町長戸倉村長十三浜村長歌津村長
小泉村長大谷村長階上村長鹿折村長
唐桑村長大島村長
本月三日県下震災ノ為損害不尠趣被聞食至仁至慈ナル天皇皇后両陛下ヨリ御救恤ノ思召ヲ以テ金八千円、御下賜アラセラレタルハ、恐催感激ニ禁へサル所ナリ、乃チ茲ニ其ノ伝達ヲ行フへキニ付各位ハ此ノ鴻恩ニ感銘シ各罹災者ニ対シ迅速交付ヲ了スルト共ニ、各拝受者ヲシテ斉シク優渥ナル聖旨ヲ奉体シテ御救恤金ヲ最モ有数適切ナル方途ニ利用セシメ、以テ自奮自励家運ノ挽回ニ勉メ、進ンテ地方災害ノ復興ニ力ヲ致サンコトヲ期セラルヘシ
昭和八年三月二十日
宮城県知事三邊長治
皇后陛下より特に罹災傷病者並六十歳以上、十四歳未満の孤独者に対し、御下賜あらせられたる衣服地並裁縫料の伝達に付ては、慎重調査を遂げ、四月十一日罹災地町村長会開会劈頭県庁正庁に於て、知事より関係町村長に夫々伝達したり術各宮殿下より御下賜の御救恤金に付ても最も有数適切なる方途に充てしむる為目下慎重考究中なり
(三)陸海軍の救援
1、陸軍の救援
イ、被害調査及救護班の派遣
三月三日第二師団は三陸沿岸被害の情報に接するや、直ちに亘理郡、牡鹿郡、桃生郡、及本吉郡の各地方に将校以下五名を急派し、被害状況の調査に当らしむると共に、左記の如く救護班を派遣し救護に当らしめられ、父罹災民中寝具に困窮する者の為に、毛布二千五百枚貸付せられたり(毛布ハ其ノ後給與セラルルコトトナル)
ロ、工兵隊の出動
工兵第二大隊は三月四日第一作業隊三十七名を編成し、伊藤少尉指揮の下に、被害最も甚だしき桃生郡十五浜村に出動し、更に三月七日第二作業隊三十六名を編成し、黒沼少蔚指揮の下に、本吉郡歌津村に出動し主として左の作業に従事したり尚被害地は何れも人心極度に安定を欠き復旧頗る困難なる状態にありしが、作業隊の出動と共に被害地の整理迅速に行はれ人心頓に鎮静したり。而して第一作業隊は三月九日、第二作業隊は三月十二日作業を完了して、何れも原隊に帰還す
(1)橋礎の構築、橋梁の架設、加工
(2)倒壊家屋の解体及障害物の排除
(3)電話の架設
特に電話の架設に付ては野砲兵第二連隊より電動式電話機四、工兵第二大隊より中被覆線二〇巻を貸興し、桃生郡十五浜村雄勝、舟越、荒等の各部落間に通信網を構成し救護上に興へられたる便益大なるものあり。
ハ、師団司令部附少将以下の慰間並視察
第二師団長代理として吉富少将は三月八、九の両日に亘り、本吉郡地方に於ける被害状況の視察並罹災者の慰間を為し、殊に在郷軍人、出征軍人の遺族及家族に付ては被害の状況救護の状況を詳細に視察し、且慰問を為したり、叉三月四、五の両日亀井軍医部長及沼田獣医部長等は牡鹿、桃生及本吉郡方面に派遣せられ、各救護班の救護事務の指導督励を為すと共に家畜の被害状況の視察ありたり。
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2、海軍の救援
三月三日横須賀鎮守府司令長官は特に駆逐隊(神風、野風、沼風)を急派して、連日海上方面の救護に努めしめらるる所ありたる外、三月五日軍艦厳島は救恤品を搭載して釜石港に来り、本県に左の通寄贈せられたり。
其の際又海軍高等官同判任官一同より左の慰問品の寄贈ありたり(配給先は海軍救恤品の通り)白米三、六五〇瓩、白砂糖三六七瓩、醤油三二〇立、グリコ三一五箇、キヤラメル三〇〇箇、圧搾麦四五〇瓩尚駆逐艦沼風は三月三日毛布四〇〇枚、白米一、二五〇瓩、圧搾麦一八○瓩、缶詰一六二瓩、乾麺包二四○瓩を、桃生郡十五浜村に配給し、女川湾、雄勝湾及追波湾一帯の救難作業に従事せられたり。
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(四)県の救護措置
1、救護事務の開始
三月三日午前、県下亘理郡、桃生郡、牡鹿郡及本吉郡方面の被害甚大なりとの情報達するや、知事は各部長各課長等を招集して、緊急会議を開を臨時応急措置として、罹災者救護事務を開始すること及共の事務分担を定むること並災害地の災害状況及救護状況を視察せしむること等を決し、一斉に罹災町村(二十三箇町村)に向け官吏々員十六名を急派したり、尚被害状況特に著しと認められたる町村に対しては、視察並慰問のため別に庁内の課長等を特派し、併せて救護の徹底と復興計画に資する所あらしめたり。
又宮城県水産試験場の指導船宮城丸及大東丸は、直ちに沿岸罹災町村の地先に出動して救援に努めたり。
2、災害善後委員会の組織
三月三日災害善後に関する事務の円滑にして機敏なる促進を図る為、庁内に左の通臨時災害善後委員会の組織及委員長其の他の任命を見日々罹災地の情報を収集総合して之が対策を講ずることとしたり、其の後三月五日右委員会に救護部、配給部及復興部の三部会を設け叉社会課の外に義捐金品係及物品の調達、発送係を設け救護事務の円滑を期したり。
臨時災害善後委員会規程
第一條 昭和八年三月ノ宮城県下災害善後二関スル事務ノ促進ヲ期スル為宮城県庁内ニ臨時災害善後委員会ヲ置ク
第二條 委員会ハ、委員長一人、副委員長二人及委員若干名ヲ以テ之ヲ組織ス
第三條 委員長ハ内務部長ヲ以テ之ニ充ッ
副委員長ハ警察部長及学務部長ヲ以テ之ニ充ツ
委員ハ知事之ヲ任命ス
第四條 委員長ハ会務ヲ総理ス
副委員長ハ委員長ヲ輔佐シ委員長事故アルトキハ知事ノ指定スル副委員長其ノ職務ヲ代理ス
第五條 委員会二幹事若干人ヲ置キ知事之ヲ命ス
幹事ハ委員長ノ指揮ヲ承ケ庶務ヲ掌理ス
第六條 委員会二部会ヲ設クルコトヲ得部会ノ組織及名称等ハ別ニ之テ定ム
3、知事の告諭並災害地慰問視察
知事は三月四日左の告諭を発して罹災民に対する県民の協力を促し、更に同日応急救護の措置を了するを待つて、災害地牡鹿郡大原村、荻浜村及桃生郡十五浜村の視察を兼ね罹災者を慰問し、且つ死亡又は行方不明と為りたる者の遺族に対し弔慰金を贈りて弔問せり。尚知事は三月五、六日の両日間に大金侍従と同行し、牡鹿郡大原村、桃生郡十五浜村、本吉郡志津川町、歌津村及唐桑村の災害状況を視察し、且罹災者の慰問、弔慰を為し、越て四月七日本吉郡十三浜村、戸倉村、志津川町、歌津村及小泉村の内前回未済の各部落に赴き親しく視察慰問を為したり。
告諭第一号
本月三日午前二時三十一分過キ突如金華山東南東沖合海底ニ発シタル地震ハ最大震動二十三粍総震動時間凡ソ二時間ニ渉リ近年稀ニ見ル強震ナリ、而シテ一度地震起ルヤ次テ忽チ海波荒レ為ニ三陸一帯ノ沿岸ニ時ナラヌ海嘯テ生シ同日午後十時迄ニ達シタル情報ヲ総合スルモ死傷者百六十余名ヲ出シタル外行方不明者二百二十余名家屋ノ倒壊約三百ニ上リ共ノ流失セルモノ四百七十余船舟ノ覆没流失セルモノ亦千百四十ノ多キニ達シ浸水家屋亦極メテ多シ而シテ就中本吉郡唐桑村、歌津村、十三浜村、牡鹿郡大原村及桃生郡十五浜村ノ如キハ其ノ被害最甚大ニシテ罹災者ノ近状真ニ察スルニ余リアル所ナリ即チ県ノ巡回診療班ハ陸軍衛生班及束北帝国大学医学部衛生班並日本赤十宇社宮城支部臨時救護班ト共ニ直ニ救療ノ任ニ就キ罹災者ノ救護ニ当ルト共ニ県ハ各地ニ吏員職員ヲ急遽特派シテ具サニ共ノ実状ヲ調査視察セシメ救護ノ徹底ト復興ノ計画ニ資スル所アラシムコトヲ期シタリ又第二師団ヨリ陸軍用毛布ヲ、日本赤十字杜宮城支部ヨリ備付用毛布ヲ借入レ直ニ災害地ニ向ケテ発送シ或ハ本県水産試験場ノ試験船ニ艘テ沿岸罹災町村地先ニ派シテ救護ニ遺憾ナカラムコトヲ期シタリ、叉同日災害善後ニ関スル事務ヲ最円滑機敏ニ促進セシメムカ為県庁内ニ新ニ臨時災害善後委員会ヲ組織シ更ニ又余ハ今親シク災害地ヲ巡リテ実情ノ視察ニ併セテ不幸ナル遺族ヲ弔慰セムトス
当地方ノ災害ノ報一度天下ノ知ルトコロトナルヤ各方面ヨリ翕然トシテ深甚ナル見舞ヲ寄セラレ殊ニ横須賀鎮守府司令長官ハ特ニ、駆逐隊ヲ急派シテ救護ニ努メラル洵ニ感謝措ク能ハサル所ナリ
災害地附近ニ於ケル県民ハ必スヤ古来ノ伝統的精神ノ発露タル隣保相助ノ道ヲ尽シテ罹災者ノ救護慰問ニ万全ヲ期シツツアルヲ信ス、サレハ斯ル災禍ヲ伝聞スルニ過キスシテ地異ノ身邊ニ及ハサル者ニ在リテハ不幸ナル同胞ノ為ニ絶大ナル救援ヲ吝シムヘキニアラス、即チ内ニ誠意ヲ披櫪シ外ニ熱烈ナル愛県ノ至情ニ愬へ相協力シテ救援慰問並興復ノ実ヲ挙ケムコトヲ期セサルヘカラス、若夫レ更ニ其ノ詳細ニ至リテハ日ヲ逐フテ実ヲ効サム、切ニ自重奮励アラムコトヲ
昭和八年三月四日
宮城県知事三邊長治
尚内務部長、警察部長及学務部長も災害地に出張し、災害状況並救護状況の視察をすると共に、慰問を為し且県の救護出張所及県より派遣の救護班、駐在員共の他の指導督励に当り、叉各課長も罹災各地に出張し視察慰問を為すと共に、漁業、土木、農業、商業、其の他各方面の復興計画に付、実地研究をと月遂げたり。
4、救護出張所の開設並駐在員の派遣
救恤品の配分及救護事務の円滑機敏を促進せしむる為、三月六日災害地方三ヶ所に左記の通救護出張所を設け、主任以下職員を配置し、県及町村其他関係方面との連絡を緊密にし、応急救護に遺憾なきを期したり。尚救恤品を罹災状況に応じ適当に配分すると同時に、地方救護出張所をして敏活に配給せしむる為、仙台駅前に臨時出張所を設け主任以下十五名を配置し、慰問品の配分に遺憾なきを期したり。
石巻救護出張所(石巻警察署内)職員十名
管轄区域 牡鹿郡女川町、大原村、荻浜村、鮎川村、本吉郡十三浜村、桃生郡十五浜村
志津川救護出張所(志津川警察署内)職員五名
管轄区域本吉郡志津川町、小泉村、歌津村、戸倉村
気仙沼救護出張所(気仙沼警察署内)職員六名
管轄区域本吉郡唐桑村、鹿折村、大島村、大谷村、階上村、松岩村、御岳村
罹災地中名取郡閖上町、亘理郡坂元村及桃生郡宮戸村に対しては、当初より県直接救護事務を取扱ひつつあり。
更に震災当日各災害地に急派したる官吏々員は三月六日全員帰庁せるを待ち、新に被害最も激甚なる左記六ヶ村に対し、属技手其他一名乃至二名を駐在せしめ、本庁関係救護出張所及其他関係方面と連絡を取り、救護に遺憾なきを期せしめたり。
牡鹿郡大原村、桃生郡十五浜村、本吉郡唐桑村、十三浜村、小泉村及歌津村
尚三月末にて大体応急救護措置終了せるを以て、四月五日限地方救護出張所を閉鎖し、慰問品は仙台駅前出張所より直接配給することとせり。又町村の駐在員も救護出張所の閉鎖と同時に廃止し爾後各町村に随時官吏々員を派遣の上指導督励を為さしむることとなしたり。
5、救護物資の配給
各地の被害情報入るや、県は直ちに之等町村に対し電報を発し見舞を兼ね救護上に必要なる物品、数量等の申告方を照会すると共に、取敢へず被害最も甚しく、着るに衣なく寝るに疲具なき多数の罹災者を生じたる町村に対し第二師団より陸軍用毛布を三月三日に二千枚同四日に五百枚の貸付を受け、孰れも当日トラツクを以て運搬し所轄警察署を経、左記の通貸付をなしたり。
陸軍用毛布貸付先
牡鹿都大原村 八百枚 桃生郡十五浜村 七百枚
本吉郡唐桑村 六百枚 本吉郡十三浜村 百五十枚
本吉郡小泉村 八十枚 本吉郡歌津村 八十枚
本吉郡志津川町 四十枚 本吉郡戸倉村 三十枚
本吉郡大谷村 二十枚
尚三月八日亘理郡坂元村へ歩兵第四連隊より毛布二百枚を借受け貸付したり其の後右毛布は何れも陸軍より給與せらるることに決定せられたり
又三月五日より同十二日迄の間に於て各罹災地の情況に応じ県より応急救護に要する寝具衣類食料品等左記の通義捐金を以て調達配給したり。
食料品(三月五日配給)
更に県は政府所有白米四八○叺(一九二石)の払下を受け、三月七日之を配分給輿し、尚必要の向に対し、九六〇叺(三四八石)の払下を受け、三月十四日配給を了したり。
尚屋根用亜鉛引生子板六千枚を罹災町村の希望に依り東京より購入配給し、叉三月十二日には畳に代るべき薄縁一千枚及布団二百五十組を女川町の申告に依り送附せり、叉桃生郡十五浜村に牡鹿郡農会の斡旋に依り白菜一千貫供給の手配をなし、其の他の罹災町村に対しても野菜の供給を為す等、罹災地に於ける生活必要品の購入斡旋送付に遣憾なき様努力したり。
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6、罹災救助基金の支出
罹災救助基金の支出に付ては災害当日より関係町村当局及本県派遣の官吏々員をして食料救助を始とし各種の救助に努めしめ、三月六日には特に罹災町村十三箇町村に対し、取敢へず金一万八千八百三十五円を前渡し救護上の便に供し、又三月七日別に政府所有白米を罹災救助基金に依り払下を受け配給し、共他小屋掛材料の供給、農具の配給等に付遺感なきを期したり。之が救助費を掲ぐれば左の如し。
備考 前記の外医療費に付ては本基金に依り救助のもの六九名あり之が支出額未定なり尚其の他運搬費雑費等の支出あり。
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7、共の他
イ 三月十一日の県参事会に於て七年度に於て救護警備等に要する諸費四万五千九十六円並小漁船建造、耕地復旧、稚蚕共同飼育所設置等の費用に充当せしむる貸付金十七万九千六百円の議決を経て。救護警備其他応急施設を促進するに遺憾なきを期したり。
ロ 県電気局に於ては罹災地部落の枢要道路、海岸に災害直後十燭乃至二百燭光の臨時電燈を架設し一般の便に供し、又罹災者中生活困難なりと認むる者に対しては五月末日迄電澄料無料供給することとし三月二十八日迄決定したるもの桃生郡九十六戸牡鹿郡三百三十戸本吉郡二百八十二戸計七百八戸あり、尚電燈の流矢破損八百十一戸、一千三百九十七燈、電柱の倒壊流失三百三十八本あり之が復旧に付ては配電線路費一万七百五十円、引込内線費六千五百五円計一万七千二百五十五円の予算を以て急速復旧に努めつつあり三月末日迄復旧したる電燈数六百四十三燈なり
(五)各方面よりの救護
1、日本赤十字祉宮城支部の活動
災害当日直ちに救護班三班を組織し左の通派遣し、又愛国嬬人会宮城県支部と協力し吏員を罹災地に急派し、被害状況の調査及慰問を為したり。
尚被害甚大と認むべき罹災地八ケ村に対し感冒予防、下痢止、胃腸藥等の家庭藥総量二万二千錠を配給せり。
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2、愛国婦人会宮城県支部の活動
災害当日日本赤十字社宮城支部と協力し直ちに吏員を災害地に急派し、被害状況の調査及慰問を為さしむると共に、比較的被害甚大と認むべき町村に対し麺包二十二箱及足袋百足乃至三百足(総数一千足)を配給し、又仙台市内に於ける支部役員は女子青年団員と共に県に於て配給すべき布団の調製に従事し六百枚を調製したり。
尚仙台市内諸官衛、仙台市内支部役員及町村委員区其の他に対し義捐金員の募集を為し、義捐品は現在迄三千五百点に達し何れも罹災町村に配給し、義捐金は二千五百円に上り之亦近く適当の方法に依り罹災町村に配付の見込なり。
三月七日以降支部長以下各役員は罹災地を慰問し死者の遺族に対し弔慰料(一人に付二円)を贈呈し、尚出征軍人の家族、戦死者遣族及傷病軍人の羅災者に対しては慰問金(各金五円)を贈呈せり。
上記の外罹災地に臨時託児所設置の計画を樹て近く開設を見るもの二ケ所あり。
3、水難救濟斉会宮城支部並日本海員掖済会宮城支部の活動
水難救済会宮城支部並日本海員掖済会宮城支部に於ては三月十二、三の両日(桃生郡十五浜村船越に於ては更に二日間延期)に亘り左記により海嘯の為行方不明となりたる者の捜索を為したり。
区域並捜索船配置 災害地を六区に分ち各区に捜索船一艘を配置す
捜索員の乗込 各捜索船二十名を乗込ましめ捜索に当らしむ(各船に潜水夫一名宛乗込)
捜索の要領 災害地を中心に分担区域内を警邏し行方不明者の捜索を為す
報告連絡 捜索船は左記配置警察官に捜索の状況を報告し互に連絡を図り遺漏なきを期したり
第一区捜索船 牡鹿郡大原村谷川
第二区捜索船 桃生郡十五浜村船越
第三区捜索船 本吉郡十三浜村相川
第四区捜索船 本吉郡歌津村田浦
第五区捜索船 本吉郡小泉村二十一浜
第六区捜索船 本吉郡唐桑村只越
捜索船は廿噸乃至廿五噸(卅馬力乃至四十馬力)発動機船にして女川港、志津川港、気仙沼港に各二隻準備し出動せしめたり
捜索成績 桃生郡十五浜村船越に於て三月十四日三名同十五日一名の死体を発見せり
4、宮城県教育会の活動
宮城県教育会に於ては震災の翌日県下各学校長に対し羅災地に送る義捐金の募集方を依頼すると共に宮城県教育職員互助会より取り敢へず四千五百五十円の一時立替支出を受け、香川理事を三月七日より五日間、山本主事を三月七日より七日間、各罹災地に派遣し各学校長に贈呈し児童の応急救護費に充てしめたり。
而して学校長はこの義捐金を夫々罹災直後の児童に対す最も適当なりと思料する方法に於て使途を講じたり。(以下小学校児童の救護の項参照)
5、県及市町村青年団の活動
イ、宮城県青年団及女子青年団
三月五日県青年団長及県女子青年団長より各市町村男女青年団長に対し罹災者救援に関する通牒を発し、各団をして自発的に義捐金品の醵出、労力奉仕其の他適当なる方法に依り罹災者救護を促したる結果、或は義捐金品を送付し、或は現地に至りて労力の奉仕をなしたり、尚三月一日より七日迄宮城県青年製作品展覧会開催中なりしを以て、其の出品物中罹災者救護に必要なる物品を寄贈せしめ、又は本団に於て買上げ之を罹災地に送付せり。
本団に於て発送の品名数量左の如し
品名数量
農産物加工品 四二三点
木竹製品 四七点
水産物加工品 四点
金工手芸、食料品 三七点
計 五一一点
三月九日在仙理事会を開催し救護に関する協議をなし、仙台駅前に設置せる県の臨時出張所の手伝として仙台市内各青年団
員二名を三月十日より十八日迄交替に出動せしめたり、尚近く罹災地青年団長会議を開催し、男女青年をして復興精神の振
作を図らんとす。
ロ、各市町村青年団及女子青年団
罹災地町村の青年団員にして災害を受けざるものは当時自警団、消防組等と協力し震災地の整理及避難所の建設に努力し、女子青年団員は浸水のため汚損せる衣類等の洗濯に従事したり、其他の町村青年団にありては義捐金品を贈り、又は現地に至りて破損家屋の修理及障害物の整理等をなし、若くは義捐品配給事務に従事する等罹災者の救援に貢獄したる所尠からず。
尚遙に岩手県釜石町の罹災地に至リバラック建築に従事し大いに感謝せられたり。
現在迄判明の義捐金及労力奉仕の状況左の如し
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6、消防組の活動
三月三日海嘯襲来するや、罹災地消防組は非常召集を行ひ、又附近町村の消防組は災害地に出動し連日罹災者の救護、倒壊家屋の整理、死体の捜索、道路交通の復旧、食料品の供給等に努めたり。而して罹災地町村の消防組にして出動せるもの九組にして其の出動延日数五十二日、人員五千二百九十八人なり。叉他町村より出動せる消防組は十二組にして其の出動延日数廿八日、人員一千三百二十二人に達し、何れも其の活動目覚ましく罹災民の救護並罹災地の応急復旧に遺憾なを期し得たり
(六)医療救護並防疫
牡鹿郡以北及亘理郡方面に海嘯あるを聞くや、本県は勿論平素医療を為しある各方面に於ては直ちに救護班、衛生班等を特に組織し出動せしめ、尚又他府県の医療団体よりも来援あり、罹災民の救療に或は防疫等に努めたる外、災害地附近の町村の医師も奉仕的に活動したる結果医療救護に遺憾なきを期し得たり。尚救護班等の活動状況左の如し。
1、応急救護の状況
イ、県の救護班
三日午前恩賜金に依る巡回診療班二班を編成し(医師、看護婦、藥剤師、巡査部長各一名を加へ計四名)一班は本吉郡小泉村、大谷村、唐桑村に、一班は同郡十三浜村方面に派遺し直ちに救療に従事せしめたり。
ロ、第二師団の救護班(陸軍の救援の項参照)
ハ、赤十宇社宮城支部の救護班(赤十字社宮城支部の活動の項参照)
ニ、束北帝国大学の救護班
東北帝国大学医学部附属病院に於ては救護班一班を編成し、三月三日より三月九日迄本吉郡歌津村方面へ出動せしめ、他の救護班と連繋を保ち傷病者の救療に当りたり。
ホ、医師会員の活動
罹災地所在の各郡医師会に於ては会員を夫々必要の箇所に配置し救療に当らしめたり。
尚本吉郡医師会の如きは毎日四班を編成も救療に当らしめたり。
へ、日本赤十字社新潟支部の救護班
三月五日日本赤十字社新潟支部の救護班来援あり桃生郡十五浜村荒部落の救護に当り三月七日帰還したり。
2、爾後の救療並防疫施設
イ、巡回診療
三月五日迄の応急救療後感冒、胃腸疾患等の発生を顧慮し恩賜救療班の従来の巡回地を左の如く変更し救療に当らしめつつあり。尚従来の巡回診療場所の改廃を行ひ罹災地にして出張診療を行はざる場所に対しては順次巡回し救療に当らしむべき予定なり。
イ、第一班 桃生郡十五浜村方面
ロ、第二班 牡鹿郡鮎川村、大原村、女川町方面
ロ、出張診療
今回内務省より特に罹災地防疫の為防疫職員増員の配当ありたるを以て取敢えず三月十日防疫医務囑託二名の増員を行ひ志津川、気仙沼の両警察署に各一名を配置し当分の中主として唐桑村、歌津村及戸倉村に於ける罹災民の救療に当らしめつつあり。尚十五浜村、大原村に対しても同様救療を行ふ計画中なり。又恩賜金に依る出張診療所の改廃を
行ひ唐桑村に出張診療所設置の予定なり。
ハ、防疫施設の状況
飲料井戸の消毒
災害直後汚染せる飲料井戸消毒施行の為左の四班を編成出動せしめたり。
一、本吉郡唐桑村、大谷村、小泉村、歌津村方面
衛生技手(薬剤師一)、防疫雇一、巡査部長一
二、桃生郡十五浜村、本吉郡十三浜村方面
衛生技師(薬剤師一)、防疫事務嘱託一
三、牡鹿郡大原村、女川町方面
衛生技師(薬剤師)一、防疫事務嘱託一
四、亘理郡坂元村
衛生技師(薬剤師)一、防疫事務嘱託一
今回防疫職員増員に依り防疫事務嘱託五名を任命し左の防疫事務に当らしめつつあり。
慰問品の消毒
慰問品中衣類等を消毒する為三月八日より左記職員を派し之に当らしむ。
石巻救護出張所へ 衛生技手一、防疫事務嘱託一
志津川救護出張所へ 防疫事務嘱託一
気仙沼救護出張所へ 防疫監吏一、防疫事務嘱託一
清潔法の督励並検病調査
三月十日より左記の通り防疫職員を派し罹災地消毒的清潔方法の督励並健康状態の視察を兼ね伝染病不審患者の早期発見に当らしめ、病者発見の場合は救療班の診療を受けしむる等相連繋を保たしめ活動せしめつつあり。
一、牡鹿郡女川町、大原村方面、防疫事務嘱託一、巡査部長一
二、桃生郡十五浜村方面、防疫事務嘱託一
三、本吉郡志津川町、歌津村、十三浜村方面、防疫事務嘱託二
衛生施設の改善
災害地復興衛生施設として改良便所七百五十五、費用二万二千六百五十円。飲料井戸二百、費用一万円の築造計画中なり。
尚災害後罹災地衛生施設に関し三月四日関係各警察署長に通牒を発し最善の処置を講ぜしめつつあり。
三月十日以後災害地へ派遣の救療班左の如し。
一、桃生郡十五浜村雄勝、荒方面、一班
二、牡鹿郡大原村谷川、鮫ノ浦、大谷川方面、一班
三、亘理郡坂元村磯浜方面、一班
四、本吉郡小泉村二十一浜、同歌津村湊、田浦、石浜、馬場、名足方面、一班
五、本吉郡十三浜村相川、桃生郡十五浜村熊澤、大須、荒、船越、名振方面、一班
(七)軍人遺家族の救護
今回の震災に際し日支事変関係の戦死者の遺族並戦傷病者の家族及日支事変の為出動中又は現役軍人の家族にして罹災せる者に対しては普通一般的の救護に努むるの外別に帝国軍人後援会の軍人援護資金中遺家族義捐金残金千二百二十四円の内より夫々被害程度に応じて見舞金を贈る計画中なり。
(八)小学校児童の救護
罹災地小学校に於ては共の奉戴せる御真影並に御真影奉安所には何等異状を拝せず。叉小学校舎にして倒壊せるものなかりしは不幸中の幸とする所なるも、浸水床上に達せるもの二校あり。災害地小学校三十一校の児童総数一万七千三百十八人にして内罹災せる児童数二千三百五十六人其の中救護を要する児童二千五十名(内尋常科一、六七五高等科三七五)なり。
児童にして海嘯の為死亡したるもの三十八名、負傷せるもの八名あり。而して之が救護につきては災害地小学校に対して罹災児童救護方に関し遺感なきを期する様夫々通牒を発すると共に、本県教育会発企の下に災害地を除く他の小学校児童及教員並中等学校生徒より罹災児童救護義捐金品を募集することに決し、差当り四千五百五十円を夫々災害地小学校に配当したる外、筆記帳三千六十一冊を購入し、寄贈にかかる教科書一万二千二十三冊と共に配給したり。この外県外よりの慰問品中には八千三百七十四箇の学用品あり、同様罹災町村に配給し、又罹災救助基金より一千五百九十二円五十銭を支出し学用品を購入給輿したるを以て、一般救護施設と相俟ちて児童就学に支障無きを得たり。
更に昭和八年度に於ては国庫より補給されたる一万三十二円を罹災児童中継続して救助を要すべき者に対する昼食及被服の給輿費に充当し、之が救護に遣憾なきを期せんとす。
小学児童の罹災状況及救護の状況左の如し。
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(九)罹災町村の自救状況
1、桃生郡十五浜村
本村の被害甚大なるを以て避難民は即日各部落小学校伝閤等に収容し、申には親戚知巳を頼り差当り必要なる寝具衣類等を罹災地以外の部落より供給し、叉県より貸輿したる毛布の配給及海軍の駆逐艦沼風の救恤品の配給に依り辛うじて寒さを凌ぐことを得たり。共の後三月四日工兵隊の出動に次いて各方面より救護班続々として来援あり、倒壊家屋の解体、障害物の排除、橋梁の架設、傷病者の救護等に努め、又県救護出張所の開設及駐在員の派遣等に依り食糧衣類の給輿行届き、現在バラック住宅一七〇棟、仮設納屋三〇棟完成し、外にバラック住宅二〇棟、仮設納屋二〇棟起工中なり。尚漁船の復旧等に付ては目下船材擢材等営林局より払下を受け建造の手配中なり。
住毛の復興に付ては三月十五日家屋復興委員会を設け海嘯被害防止上適地の選定共他復興の計画をなしつつあり。
2、牡鹿郡女川町
災害当日罹災者全般に渉り迅速に焚出救助を行ひ又緊急町会を招集して善後策を協議し、県の斡旋に依り布団二百五十組及薄縁一千枚を購入配付したり。尚罹災部落に対しては直ちに井戸の消毒的浸渫を行はしむると共に、罹災家屋(浸水)全部に対し床板を除き消毒的清潔法を施行せしめ、叉一面罹災者の健康診断を施行したり。災害直後消防組員、実業団員、青年団員等協力して流失品捜索拾集に努力し大いに効果を奏したり。其の後各地より寄贈を受けたる慰問品其の他の救護品に付ては各部落毎に区長及実業団長以下役員をして敏話に配給せしめ救護に遺憾なきを期し得たり。
3、牡鹿郡大原村
本村被害者は全部災害当日中に親戚知己に収容し、辛うじて雨露を凌ぐを得たるも食料の配給を要するを以て村当局は急遽米二十五俵及炊事道具を購入して配給し、衣服寝具等は罹災地以外より臨時徴収し、県より送付の毛布八百枚と共に貸輿したり、共の後救護班の出動、県救護出張所の開設及駐在員二名の派遣等に依り医療救護其他の救護よく行はれ、慰問品及共他の救護品の配給も円滑に行はれたるを以て、日用衣食のことに遺憾なきを期し得たり。尚緊急村会に於てバラツク建設の決議あり四月一日現在に於てバラック住宅一〇棟、仮設納屋六棟を完成し、外に仮本住宅二十一棟及仮設納屋三棟が着工中なり。
本住宅の建設に付ては三月十五日家屋復興委員会を設け適地の選定其の弛計画中なり、又小型漁船の建造に付ては目下船材調査中にして建造困難の分に付ては県に依頼し復旧の進行を図りつつあり。
4、本吉郡十三浜村
本村の罹災者は被害なき部落に収容したるも、被害甚大なる部落にありては全部収容困難なるを以て、即日村当局に於て仮小屋を建設の上之を収容し、食糧は緊急村会の決議を経て自米其の他を購入配給し、衣類は親戚其の他より借着をなし県より貸輿の毛布を以て僅かに寒さを凌ぐを得たり。其の後県救護出張所の開設駐在員二名の、派遣及救護班の出動等に依り、災害地の整理医療其の他の救護よく行はれ、慰問品及其の他の救護品等の配給漸次行届き寝食に困難することなき状況となれり。尚バラヅクの建設に付ては、石春救護出張所の手を経て材料を購入し、青年団員、自警団員等の活動に依り建築を為し、四月一日現在に於てバラック住宅二〇棟、仮設納屋六棟完成し、外にバラツク住宅五棟、仮設納屋七棟着手中なり。尚漁船の建造に付ては、約半数は村に於て船材の調達建造の手配中にして他の半数は県に依頼し目下建造中なり。
5、本吉郡歌津村
本村の罹災者は何れも災害後直ちに被害なき親戚知己に収容せられ、野宿を為すものなく、食糧は被害なき同村毎戸より白米五升づつ拠出して給輿し、衣類は婦人会其の他団体等の活動に依りて配給をなし、寒餓を凌がしむることを得たり。其の後救護班の出動及県救護出張所の開設、駐在員の派遣等に依り慰問品の配給は行き渉り、特に三月七日工兵隊の出動後罹災地の整理よく行はれ、現在バラック住宅二四棟、仮設納屋五棟完成し外に仮設納屋五棟起工中なり。尚目下小船建造漁業器具の斡旋に努め、叉近く海嘯善後委員を選任し全力を塁挙げて復興を早からしめんことを期しつつあり
6、本吉郡小泉村
本村の罹災者は小学校及各親戚に収容し食糧給輿を為し、急施村会を召集して救済金三千円を支出することとなしたり、其の後救護班の出動県の救護出張所の開設及駐在員等の派遣に依り、罹災青に対する医療救護及諸給輿等は充分行き届きたり尚四月一日に於けるバラック建設状況はバラツク住宅四棟、仮設納屋五棟完成し外にバラック住宅一六棟、仮設納屋五棟着手中なり。
本住宅の復興に付ては三月十五日家屋復興委員会を設け適地の選定其の他の計画をなしつつあり。
7、本吉郡唐桑村
本村は県下罹災町村中被害程度甚しきものの一にして災害当日は直ちに罹災者を親戚知人宅神社叉は仮小屋等に収容し緊急村会を招集して一人に付一週間分の食料及衣服一枚並小屋掛料一戸十円を交付したり其の後青年団其の他各方面より救護団体の応援あり罹災現場の後片付及医療其の他の救護順調に行はれ又慰品及其他の救護品に付ては各部落毎に委員を設け県の救護出張所と連絡を取り県駐在員二名と協力し迅速に配給を為したるを以て衣食の給輿よく行はれたり尚バラック等の建設に付ては隣郡より建築組合員等の救援あり村の材料供給と共に直ちに着手し四月一日現在に於てバラック住宅四六棟仮設納屋二五棟完成し外にバラック住宅五棟仮設納屋一〇棟着手中なり本住宅の復興に付ては三月十五日家屋復興委員会を設け海嘯被害防止適地定其他復興の計画をなしつつあり又小型漁船の建造に付ては船材、船具材共地方より調達の上自村にて建造の見込を以て手配中なり
8、其他の町村
亘理郡坂元村、牡鹿郡鮎川村、本吉郡志津川町、戸倉村、大谷村、階上村、鹿折村及大島村、に於ては罹災者を近隣親戚に収容し町村役場又は他方面より食料、薪炭、寝其等を給輿し救護上遺憾なきを期し得たり尚夫々材料を供給の上バラックを建設したり本住宅の建設に付ては海嘯被害防止の為適地の選定等に付考研中なり又小型漁船の建造に付ては目下船材の調達建造に努めつつあり。
六、警備の状況
三旦三日の海嘯に際し被害地管轄警察署(石巻、飯野川、志津川、気仙沼、亘理)に於ては直に非番員の非常召集を行ひ海嘯地の警戒を為し一面被害者の救護及調査等に当らしめたりしも尚署員に不足を生じ充分なる活動を為すこと能はぎりし為め警察部より警部補二名、巡査部長八名、巡査一名を被害地に即日派遣し警備応援に当らしめたる外被害最も甚しき町村を管轄する気仙沼、飯野川署に対し各十名(飯野川署へ仙台署、涌谷署より各五名づつ気仙沼署へ登米署、佐沼署より各五名づつ)志津川署へ五名(登米署より三名、佐沼署より二名)を急派し警備其の他の応援を為さしめ更に同日警務課長は自動車を以て気仙沼、志津川、石巻飯野川各署の被害地に出張各署長を督励して警備並に救護の活動に当らしめ治安維持は完全に行はれたり尚各被害地に於ける警戒救護の状況左の如し
一、気仙沼警察署
気仙沼警察署にありては午前三時頃管内大谷村に居住する防疫事務嘱託より公衆電話を以て大谷村に海嘯襲来海岸線に相当の被害ある旨報告ありたるを以て管内全般に亘りても相当の被害あるべしと予想し署所在地非番員並に新月、鹿折、各駐在析巡査に対しては直に非常召集を行ひ情報係巡査部長以下四名を残留せしめ唐桑、大島、松岩、階上、大谷、小泉各村に急遣し警備救護等に当らしめたり
更に午前七時三十分管内全部の被害概況報告を受けたるを以て罹災地以外の各村消防組員、自警団員、青年団員等を召集し罹災地に急派現場警察官之を指揮して現場取片付救助応急手当等に従事せしめたり尚気仙沼警察署罹災地唐桑、大島の両村は交通通信機関不便なる為め予て警察署に於て飼育中の伝書鳩を使用通信連絡の便を得たり
気仙沼警察署管内に於て
警備救護に従事したる警察官其の他の団体
警察官 三三名
消防組員自警団員 三三○名
青年団員 六〇名
一、志津川警察署
志津川警察署に於ては強震後海嘯襲来の恐あるを以て直に署所在地非番員並に海岸に接せざる横山村、入谷村駐在所巡査の非常召集を行ひたるに各海岸に面せる十三浜、歌津、戸倉の各駐在所より海嘯襲来の報告ありたるを以て召集中の署員を各被害地に急派し警備救護に当らしめたるも署員の数僅少にして充分なる活動を為すこと能はざるを以て被害地以外の消防組員、自警団員、青年団員等の応援を求め弊察官の指揮に依り警備、救護等に当らしめたり而して更に警察部、登米佐沼署等より急派したる応援警察官の到着を待ち警備救護の完全を期したり
警備救護に従事したる警察官其の他団体
警察官 二一名
消防組員 三一〇名
青年団員 三五〇名
自警団員 六四〇名
一、飯野川警察署
飯野川警察署に於ては強震後十五浜村雄勝駐在所巡査より海嘯襲来の報告ありたるも其の後電話不通となり被害の状況全く不明なりしを以て署備付の自動車に署員四名を同乗、雄勝浜に急派せしめたるに其の報告に依れば被害甚大なるに依り警察部に応援警察官の急派を電報を以て要求一面消防組員、自警団員、青年団員の応援を得て警備救護に当らしめたり尚十五浜村船越部落、雄勝部落は約二里の距離なるも交通不便にして通信連絡に最も困難なるを以て、第二師団工兵第二大隊より電用電話を借受け之を架設し、通信連絡の円滑を得たり。
警備救護に従事したる警察官其の他団体
警察官 二一名
消防組員 六一五名
一、石巻警察署
石巻警察署に於ては強震と共に町内の電燈消えたるを以て、署長は石巻測候所及北上川口見張番に対して電話を以て海嘯襲来の恐なきや否やを問合中、女川駐在所勤務巡査より海水に異状の干水あり海嘯襲来の前兆ならんとの電話報告あり更に幾何もなく同駐在所より海嘯襲来したりとの報告に接したるを以て、直に打鐘の上署員及消防組員の非常召集を行ひ町民に海嘯襲来を警告せしめ河岸繋留船の警戒に当らしむると同時に渡波、根岸、流溜、女川、大原、荻浜、鮎川、矢本、野蒜、小野の各駐在所をして消防組其の他の団体と協力し沿岸住民に之が周知方を取計しめたり、尚一面召集したる署員を沿岸駐在所に急派し、署長は署員三名を随へ女川に急行罹災民の救護に従事中、大原村谷川、鮫浦地方は被害殊に甚しきを知り即時貞山丸の出動を命じ警備救護に任ぜしめたり。
警備救護に従事したる警察官其の他の団体
警察官 一四名
消防組員 五〇名
自警団員 二○名
石巻義勇団員 二五名
一、亘理警察署
亘理警察署に在りては三月三日未明管内坂元巡査駐在所詰巡査より警察電話を以て同村磯浜海岸一帯に海嘯襲来し住家の倒壊浸水、人畜にも被害多数ある旨の報告を受くるや、署長は瞥備救護の急なるを認め直に開業医一名を依嘱し在署員巡査部長以下一名を伴ひ自動車にて急行し、同伴せる医師をして負傷者の応急手当を施さしむると共に、一面署員及既に現場に召集しありたる坂元消防組員百七十七名を督励し之が警備警戒に当らしめ遺憾なきを期したり。
七、義捐金品の応募及配給
(一)義捐金品の募集
今回の震災並海嘯の被害殊の外甚大にして、之が救護に付ては広く社会の同情に遡へ義捐金品を募集するの必要を認め、三月四日知事より全国各府県知事、並北海道庁長官に義捐金品の募集に関し、特別の御配慮を請ふ旨電報を以て依頼し、更に同日知事、仙台市長、県会議長、県町村長会長、在仙新聞社長、同支局長等、県庁会議室に参集し協議したる結果、罹災地以外の県下一般より義捐金品を募集することに決し即時公告したり。叉警察部長は知事代理として三月四日午後六時二十五分JOHKより三陸海嘯の被筈に就てと題し、宮城、岩手、及青森県下に於ける震災当時の状況、罹災地の現状及之に対する応急措置を述べ全国の志士仁人の同情に愬へたり。
又県官吏々員は高等官同待遇者年俸月割額の百分の三、判任官同待遇者月俸百分の二其の他の者月俸百分の一の割合を以て卒先義捐金を拠出することに決定せり。尚義捐金募集の発表以前に於て既に出捐を申出たるもの件数十二件、総額四千九百十円に及び其の後各地方より絶大の同情を受け、続々として義捐金品の寄贈あり、現に本県庁に於て受理したる義捐金総額は金十二万五千三百二十円三十五銭の多きに達し尚引続き寄贈あり、中には可憐なる小学校児童の純清に依るもの、或は労働者の時問外勤務になる金を集め、或は傷病兵が煙草代を節して出捐したるもの等感激すべきもの枚挙に遑あらざる次第なり。
県に於て今日迄受理したる義捐金の内訳左の如し。
義捐金総額金十二万五千三百二十二円三十五銭 四月十二日日現在
内
金三万五千四十九円六十四銭 宮城県分
金九万二百七十二円七十一銭 其の他の分
右の外直接罹災地町村に於て寄贈を受けたる義捐金額左の如し
尚各方面より贈られたる慰問救護品にして、仙台駅前出張所に於て受理したる総個数は七千百ニ十個(四月九日現在)なり。
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(二)義捐金品の配給
災害に依り罹災民の先づ以て必要とする所のものは衣類、寝具及食料品にして、之等は県及罹災地附近町村其他各方面の救援に依り才かに飢餓寒威を凌ぐを得たりと雖、尚充分なりと謂ふを得ざるに付、義捐金の内より罹災民の特に必要とする衣類、食料品等を購入調達し、之を罹災地町村に配給せり、其の総額九千七百四十六円三十三銭なり。(物資の配給の項参照)県庁扱の義捐金に付ては被害の程度並今後に於ける生活の難易等を考慮し適当なる分配標準並方法等を決定して分配し、之を最も有効適当なる方途に充てしめんとす。
尚県に於て受領したる義捐品は各救護出張所又は罹災地町村役場に送付し、各罹災民に迅速に配給せしめたり。而して各救護出張所其他に配給したる数量左の如し。
石巻救護出張所 三千五百七十三個
志津川救護出張所 一千五百五十二個
気仙沼救護出張所 一千六百八個
坂元村 四十個
罹災地町村へ直接送付(坂元村以外)三百四十七個
右の内重なる慰問品の寄贈者及配給先左の如し。
又石巻、志津川、気仙沼の各救護出張所に於て罹災地町村に配給したる慰問救護品の種類別、数量及配給先左の如し。
各救護出張所に於ける救恤品の配給状況(合計)(四月五日現在)
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八、復旧及復興
(一)震嘯災害復旧予算成立の経過
本県の財政は従来窮乏なるに加へ今回の罹災地亦富裕ならざるに地震後続発せる海嘯の被害激甚なれば罹災民又は県の力のみにては到底災害の復旧並予防施設を樹つること能はざるを以て被害の状況を詳にし計画の樹立を急ぎ成案を得るや直ちに政府に本県の事情を明かにし其の実現を期したり。時恰も帝国議会開会中なりしを以て他の罹災県と協力し復旧予算の提案を熟望したり。然るに関係各省は到底当時に見ること能はざる程度に敏速に予算の編成に当られ三月二十四、五の両日中に満場一致貴衆両院の協賛を得るに至れり。斯の如く短時日に追加予算の提案議決を見たるは政府当局並議会の罹災地に対する深厚なる同情の発露に外ならずして偏に感謝感激に堪へざる所なり。
次で四月六日県会臨時会を招集し震嘯災害復旧費等に関する予算を附議し議案全部は翌七日満場一致可決せられたり。
復旧其の他災害善後予算の編成に当りては(一)本県並罹災地の現状は容易に自已資金の出資を見込む能はざる実情にあるを以て能ふ限り国庫補給又は国庫補助金を多額に配当を受くる事を主眼として事業を計画したり。(二)国庫補給又は国庫補助金以外の財源は総て大蔵省預金部低利資金の供給を受くることとし之が供給に当りては努めて利子補給に依る助成を求めたり(三)利子補給なき低利資金は将来県民の負担に帰するものなるが故に復旧上必要にして且充分なる限度に止め一時の便宜の為に将来に憂を貽すことなきを念としたり。四将来震嘯災の反覆を見る場合人命財産等に対する被害を予防する根本施設は百年の大計に属し最も必要とするものなるを以て之に要する経費の計上を熱望せるも本件に付ては政府に於て調査の上実施するを適当とせられたるを以て復旧計画と不可分にして今日の場合最も緊要とする住宅適地造成の如きは此の機会に断行することとせり。而して県会臨時会の議決を経たる復旧費並に関連して必要とする経費は合計二百七十八万六千三百二十五円にして之が財源は国庫補助及補給金百三万五千六百八十二円、貸付返納金三万七千八百二十九円、県債百六十六万九千八百円及一般県費四万三千十四円なり。
(ニ)震嘯災害復旧事業概要
1、土木復旧
イ、県土木復旧
震嘯災害に因り道路、橋梁、河川、海岸等の復旧工事の施行を要す、其の施行箇所は道路二十六ケ所、橋梁は五ケ所、河川は二ケ所、海岸は五十五ケ所にして五郡に亘りて之を行ひ道路の土留護岸は練積石垣或は混凝土擁壁とし又は天端を相当幅員丈混凝土鋪装を施行することとし橋梁は殆ど鐵筋混凝土橋に架換へ海岸堤防は道路土留護岸同様練積石垣或は混凝土とするの外重要なる箇所は天端或は裏方面に張石等を施し高さを高め其の他波浪の衝点を被害なき箇所に誘導する方法等を講じ将来津浪の襲来に対し被害を可級的少からしめむとす。
事業費総額 五十一万六千九百七十三円
内国庫補助 四十三万四千三百二十七円
低利資金(利子補給あり)八万二千六百円
県費 四十六円
ロ、町村土木復旧助成
尚震嘯災害に因り町村に於て道路十二箇所、橋梁二箇所、河川一箇所、海岸十三箇所等の復旧を要するものあり、其の費六万八千二百四円に達するを以て其の八割五分を補助し之が助成を為さむとす其の工法は大体県工事に同し。
事業費総額 六万八千二百四円
内国庫補助 五万七千九百七十三円
低利資金(利子補給あり)一万円
純自己資金 二百三十一円
2、農事復旧
イ、農作物種苗購入費補助
震嘯罹災農家八百九十三戸に対しの(1)自家食糧補給用農作物種苗購入並(2)次季作付用農作物種苗購入を助成するの必要なるを認め(1)は三千五百七十二円を以て馬鈴薯購入に要する経費一戸当四円(2)は四千四百三十八円を以て水稲、大豆等の種苗購入配付に要する経費一戸当四円九十七銭の全額補助を為さむとす。
事業費 八千十円
内国庫補助 八千十円
ロ、農具購入費補助
震嘯罹災農家にして農具購入助成を要する三百三十戸に対し一戸当八十円の割合にて二万六千四百円を要する見込なるを以て其の半額を補助し之が助成を為さむとす。
内国庫補助 一万三千二百円
低利資金 一万三千円
自己資金 二百円
ハ、納舎及肥料舎建築費補助
震嘯罹災農家にして納舎及肥料舎の建設助成を要する二百三十九戸に対し一戸当八坪八十円の割合にて復旧費一万九千百二十円を要する見込なるを以て其の半額を補助し之が助成を為さむとす。
内国庫補助 九千五百六十円
低利資金 九千五百円
自己資金 六十円
3、蚕業復旧
イ、稚蚕共同飼育所設置貴補助
震嘯罹災養蚕家の急造家屋に於て養蚕を営むは鯛育上注意を要するを以て蚕作に最関係深き稚蚕飼育の安全を期する為稚蚕共同飼育所を設置せしめむとし経費二万八百円(一ケ所の建築費二千六百円にして八ヶ所)の半額を補助し之が助成を為さむとす。
内国庫補助 一万四百円
低利資金 一万円
自己資金 四百円
ロ、蚕具購入費補助
震嘯罹災養蚕家の蚕具購入費一万四千円を要する見込なるを以て其の半額を補助し之が助成を為さむとす一戸当購入費八十円の割合にて養蚕戸数百七十五を見込みたり。
内国庫補助 七千円
低利資金 七千円
4、畜産業復旧
イ、家畜購入費補助
震嘯罹災家畜補充の為購入する費用に対し補助するの必要なるを認め馬二十頭分一頭平均百円として総額二千円の半額を補助せむとす。
内国庫補助 一千円
低利資金 一千円
ロ、家畜飼料購入費補助
震嘯罹災者の飼養する家畜の飼料購入を助成するの必要を認め百九十七頭(一頭一日二十銭)の五十日分総額千九百七十円の半額を補助せむとす。
内国庫補助九百八十五円
低利資金 九百五十円
自己資金 三十五円
5、水産業復旧
イ、漁艦復旧費補助
震嘯被害漁船の復旧を助成するの必要なるを認め動力附漁船七十七艘並無動力漁舳千九百七十一艘の復旧費総額三十八万九千六百円の二分の一を補助せむとす復旧費は動力附漁船一艘千ニ百五十円無動力漁船一艘七百七十円なり
内国庫補助 十九万四千八百円
低利資金 十九万四干五百五十円
自己資金 二百五十円
ロ、漁具復旧費補助
震嘯被害漁具の復旧を助成するの必要を認め復旧費総額二十万六千八百円の四分の一乃至二分の一を補助せむとす其の内訳は小漁具九百九十(一万九千八百円)曳網類七(七千円)旋網類一〇(四万円)刺網類四十(千円)定置漁具九〇(十二万円)なり
内国庫補助 八万三千四百円
低利資金 十四万三千四百円
ハ、共同施設復旧費補助
震嘯被害共同販売所、共同製造場、共同倉庫、共同養殖の設備等の復旧を助成するの必要を認め復旧費総額十六万円の二分の一を補助せむとす復旧費の内訳は共同販売所は五箇所(一箇所二千八百円)一万四千円、共同倉庫は十箇所(一箇所一千五百円)一万五千円、共同養殖設備は海苔養殖場四万八干坪(一坪五十銭)二万四千円、海苔乾燥場九十六箇所(一箇所百円)九千六百円、牡蠣養殖場筏二百四十台(一台六十円)一万四千四百円、洪四千坪(一坪二円)八千円にして計五万六千円なり
内国庫補助 八万円
低利資金 八万円
ニ、船溜、船揚場復旧費補助
震嘯被害船溜、船揚場の復旧費総額六万円に対し四分の三を補助し之を助成せむとするものにして五箇所を見込みたり
内 国庫補助 四万五千円
低利資金(利子補給あり)一万五千円
ホ、築磯復旧費補助
震嘯被害築磯の復旧費総額九千六百円(四ケ所一ケ所二千四百円)に対し其の二分の一を補助し之を助成せむとす
内国庫補助 四千八百円
低利資金(利子補給あり)四千八百円
6、耕地復旧
イ、耕地復旧助成費
震嘯に因り土砂埋没叉は流矢せる耕地約八十町歩の復旧を助成せむとするものにして工事費総額三万六千九百三十円の二分の一を補助する外之が復旧工事の調査指導に要する経費七千八百八十円を計上せり
内国庫補助 二万二千四百五円
低利資金 一万八千四百円
貸付返納金 三千九百四十円
自已資金 六十五円7、商工業復旧
商工業復旧
イ、工場店舖設備費補助
震嘯に因り被害を蒙れる工場、店舖は鉄工業スレート石版製造業、海産物商其の他四百余戸に及べり此の内復旧を要する三百六十戸の設備を助成せむとし総額九万円の五分の二の補助費を計上せり
内国庫補助 三万六千円
低利資金 五万四千円
ロ、運送船建造費補助
震嘯災害に因り海運業者の運送船の被害十七隻に及び之が復旧を要するを以て建造費総額一万七干円に対し約一割八分を補助せむとし之を計上せり
内国庫補助 三千円
低利資金 一万四千円
8、警備事務の整備
イ、警備費の充実
昭和七年度に於て罹災民の救護行方不明者の捜索被害調査、衛生施設事務に遺憾無きを期せしめたるが尚災害後に於て震嘯災地の特殊警備を要する為八年度に於て応援警察官を派遣し災害地警察官と協力従事せしめ遺憾無きを期せむとするものにして其の旅費自動車借上料並需用費なり
内国庫補給金 四千七百一円
県費 四千七百一円
ロ、警察電話補修費
牡鹿、桃生、本吉、三郡に亘り震嘯災地に於ける警察電話の補修並未設被害地駐在所に架設を行ひ連絡を緊密にし警備救護事務の円滑復旧の促進を期せむとするものにして其の工事費並技術者工夫等の旅費なり
内国庫補給金 九千八百三十四円
県費 九千八百三十四円
9、欠食児童給食費並就学児童奨励
イ、罹災児童就学奨励
震嘯罹災児童中給食を要するもの及被服の給輿を要するものあるを似て之が給興を為さむとし食費は一人当約八円(約ニ百日分)被服費は一人当約四円五十銭の範囲にて施設の見込なり。
事業費 一万三十二円
内国庫補給金 一万三十二円
10、医療救護
イ、医療救護費
震嘯罹災者医療救護の完きを期する為、罹災地に出張診療並巡回診療を行はむとするものにして、其の旅費手当及需用費等なり。出張診療は被害最著しき箇所四ケ所に診療所を開設し、各四日毎に一回(一ケ月七回)救療を行ひ、巡回診療は五箇所に対し一箇所毎月二回(一回二日)計一ケ月二十日の予定を以て診療班を巡回せしむるものとす。
事業費 六千六百二十五円
内国庫補給金 六千六百二十五円
11、震嘯災害救護事務費の計上
イ、震嘯災害救護費
震嘯罹災地に於ける救護事務の円滑を期し、救護並復旧事務特に多忙なる関係課に囑託員を配置し、一方指導監督の為官吏吏員を頻繁に出張せしむることとし之が所要経費を計上せり。
事業費 四万二千円
内国庫補給金 二万一千円
県費二万一千円
12、貸付金
イ、罹災住宅復旧資金貸付
罹災住宅復旧資金二十七万六千五百円は要助成住宅五百五十三戸に対し、一戸五百円(建坪二十坪、一坪二十五円)を以て至急復旧を為さしめむとす。
全額低利資金
ロ、住宅適地造成資金貸付
住宅適地造成資金十九万五千円は、将来の震嘯災害防止上適当なる場所に住宅を移転せしめむが為に必要なる宅地造成費、取付道路費及雑工事に要する経費なり。宅地造成に要する敷地は約八万坪道路は延長五千六百間の見込なり。
全額低利資金(利子補給あり)
ハ、小学校舎復旧資金貸付
小学校舎復旧資金四千七百円は震災に因り大破せる雄勝小学校の復旧を為さむとするものなり。
全額低利資金(利子補給あり)
ニ、町村歳入欠陥補填資金貸付
町村歳入欠陥補填資金五万九千円は震嘯災に因り町村税の減収又は欠損あるべき町村に対し、其の七年度分及八年度分の欠陥額補填に必要なる金額を見込みたり。
全額低利資金(利子補給あり)
ホ、肥料資金貸付
肥料資金三万二千円は被害農家八百九十二戸、一戸耕作面積七反歩に対し、反当五円余の肥料代を貸付けむとするものなり。(震嘯災害産業復旧資金)
全額低利資金
へ、蚕室復旧資金貸付
蚕室復旧資金九万円を以て流矢、倒壊せる蚕室百七十五の復旧を行ひ、毎年一戸当八十瓦の掃立に支障なからしめ養蚕を主業とする罹災者の復旧を促進せむとす。(震嘯災害産業復旧資金)
全額低利資金
ト、漁船復旧事業資金貸付
漁般復旧事業資金一万六千円は無動力漁船修繕費八百五十円、動力附漁船修理費二千四百円及動力附漁船が第一回就航に要する燃料餌料等の着業資金一万二千七百五十円を見込たり。(震嘯災害産業復旧資金)
全額低利資金
チ、共同製造場復旧事業資金貸付
共同製造場復旧事業資金四万五千円は製造場三〇箇所の復旧に要する経費を見込みたり。(震嘯災害産業復旧資金)
全額低利資金
リ、共同養殖設備復旧事業資金貸付
共同養殖設備復旧事業資金二万円は十二箇町村に亘る各種養殖設備の復旧に要する経費なり。(震嘯災害産業復旧資金)
全額低利資金
ヌ、個人製造所復旧資金貸付
個人製造所復旧資金十六万円は二百箇所の製造場及附属製造設備、乾燥場の復旧を為さしむる経費なり。(震嘯災害産業復旧資金)
全額低利資金
ル、工場店舖運転資金貸付
工場店舖運転資金六万円は中小商工業者三百六十戸の設備復旧に件ひ必要なる事業資金を計上せるものなり。(震嘯災害商工業復旧資金)
全額低利資金
以上の貸付金の内、住宅適地造成資金、町村土木復旧資金、小学校舎復旧資金、町村歳入欠陥補填資金、船溜船揚場復旧資金及築磯復旧資金に対しては国庫より利子の補給を得て更に之を転貸先に補給する見込なり。
13、県歳入欠陥補填資金
震嘯災害の為め昭和七年度に於ける未納県税の徴収不可能となりたるものの見込額十三万七千円、及昭和八年度に於ける租税の免除と課税標準の減少消滅とに因る減収見込額三万九千三百円を補填せむが為、県歳入欠陥補填資金を県債(低利資金)に求むることとせり。
(三)県会の意見書議決
四月七日の県会臨時会に於て満場一致を以て左の意見書を可決したり。
意見書
一、這般突発セル震嘯災害ノ甚大ナルニ鑑ミ本県沿岸全部二対シ根本的調査ヲ遂ケ速二有効適切ナル防難方策ヲ樹立セラレンコトヲ要望ス
理由
三陸沿岸震嘯ノ惨害ハ古来一再ニ止マラス殊ニ去ル明治二十九年及今回ノ災害ニ於テ最モ惨鼻ヲ極メタリ震嘯ノ被害ヲ予防スル根本施設ハ罹災地百年ノ大計ニシテ内務、農林、文部ノ各省ニ於テ必要ナル調査ヲ遂ケ以テ実施セラルル計画アルハ洵二罹災地生民ノ至上ノ幸福ナリト雖、今回ノ罹災地ニ止マラス本県百五十余里ノ海浜曲浦ノ全部ニ亘リ悉ク之ヲ調査シ、苟モ海嘯襲来ノ恐アル地域ニ対シテハ速二適切ナル防難施設ヲ完成スルニアラスンハ沿岸ノ生民ヲシテ其ノ堵ニ安ンセシムル能ハサルニヨリ本意見書ヲ呈出シ其ノ実現ヲ要望スル所以ナリ
右府県制第四十四條ニ依リ意見書呈出候也
年月日
宮城県会議長
内閣総理大臣
内務大臣
大蔵大臣
農林大臣
文部大臣
宮城県知事
(四)精神振作の告諭と罹災地町村長会議の開催
四月十日知事は罹災地町村民の精神振作に関し左の告諭を発したり。尚同月十一、十二の両日県庁に之等関係町村長を招致して震嘯災害善後措置に関し知事より訓示ありたる後別記要項に基き詳細なる指示協議を遂げ災害善後措置に関し、万遣漏なきを期したり。
告諭第三号
亘理郡 坂元村
名取郡 閑上町
桃生郡 宮戸村 十五浜村
牡鹿郡 女川町 荻浜村 大原村
鮎川村
本吉郡 志津川町 戸倉村 十三浜村
歌津村 小泉村 御岳村
大谷村 階上村 松岩村
鹿折村 唐桑村 大島村
去三月三日三陸沿岸ニ襲来セル海嘯ノ惨害ニ対シテハ全国各方面ノ同情翕然トシテ集リ或ハ救恤品義捐金ノ寄贈トナリ或ハ労力奉仕トナリ公共ノ施設ト相俟チテ災害善後ノ措置着着其ノ実ヲ挙ケツツアリ
畏クモ我力 至仁至慈ナル天皇皇后両陛下ニハ本県ノ災害ノ甚大ナルヲ聞召サレ罹災者ニ対シテ救恤金ヲ御下賜アラセラル聖恩広大恐懼感激ニ堪ヘス政府亦速ニ災害復旧ノ方策ヲ講シ国庫窮乏ノ際ナルニ拘ラス議会ノ協賛ヲ経テ多額ノ補助支出ヲ決セラレ本県復臨時県会ヲ開キ災害善後ノ方途ヲ議シ以テ復旧計画ヲ樹立シ近ク其ノ実施ヲ見ムトス
惟フニ災害復旧ノ事タル罹災町村民ノ自奮自励ニ俟ツ事最モ肝要ニシテ厳ニ浮華放縦ヲ戒メ民風ノ刷新教育ノ充実生活ノ改善経済機構ノ統制ヲ策シ協力一致更生ノ郷土建設ノ為ニ邁進シ以テ所謂災禍ヲ転シテ幸福ヲ招来スル永遠ノ復興計画ヲ確立セサルヘカラス宜シク勤勉力行産ヲ治メ業ヲ励ミ堅忍持久ノ精神ヲ振起シ戮力諧和家運ノ挽回ト堅実ナル町村再建ノ為努力精進シ速二復興ノ大業ヲ成就シ以テ上ハ優渥ナル
聖旨二副ヒ奉リ下ハ熱誠ナル国民ノ援助ニ酬イムコトヲ期セラルへシ
昭和八年四月十日
宮城県知事三邊長治
罹災地町村長会に於ける指示事項
一、更生精神の作興に関する件
一、県税免除に関する件
一、町村税免除に関する件
一、復旧町村補助工事に関する件
一、宅地造成に関する件
一、復興建築に関する件
一、農作物種苗購入費補助に関する件
一、農具購入費補助に関する件
一、納舎及肥料舎等建築費補助に関する件
一、肥料資金の供給に関する件
一、稚蚕共同飼育所設置に関する件
一、被害桑園復旧に関する件
一、蚕室復旧低利資金に関する件
一、蚕具復旧に関する件
一、家畜購入補助の件
一、家畜飼料費補助の件
一、震災地に於ける小作地の小作料に関する件
一、産業組合設立促進に関する件
一、商工業復旧施設に関する件
一、災害耕地の復旧に関する件
一、無動力船復旧に関する件
一、動力船復旧に関する件
一、漁船復旧資金に関する件
一、漁具復旧に関する件
一、水産共同施設復旧に関する件
一、共同養殖設備復旧資金に関する件
一、個人製造場復旧に関する件
一、船溜、船揚場築磯復旧に関する件
一、児童就学奨励費交付に関する件
一、罹災住宅の復旧に関する件
一、罹災救助に関する件
一、罹災救助終了後に於ける救助に関する件
一、海嘯被害地に於ける家屋建設に関する件
一、罹災地の救療に関する件
一、井戸便所築造に関する件
昭和八年四月十二日印刷
昭和八年四月十五日発行
宮城県
仙台市東八番丁一四八
印刷人相澤政足
宮城県庁構内
印刷所宮城県印刷所