3.十勝沖地震(大船渡湾口)

湾の中の水面は普段は穏やかです。ちょうど、誰も使わないブランコが静かにしてい るようなものです。しかし、ブランコを片方に持ち上げ、手を離して御覧なさい。ブ ランコは前後に揺れ、そして次第に収まって行くでしょう。
同じような事が湾内の海水にも起こります。低気圧( atmospheric low-pressure) の 様な気象擾乱(disturbance)が通り過ぎた後、揺れが起こります。これを湾水振動 (harbor oscillation)と云います。長いブランコがゆっくりと、短いブランコが早 く揺れるように、長い湾では、ゆっくりと揺れます。
岩手県大船渡湾は、細長い形状をして居ます。いったん、揺れ始めると、40分位の周 期で揺れるのです。これを固有振動周期(natural period)と云います。
次にブランコを大きく揺する事を考えてみましょう。ブランコが揺れ戻る瞬間をね らって力を加えると、ブランコはどんどん大きく揺れて行きます。これが共鳴 (resonance)です。湾の水を最初の津波が揺らし、湾の水が揺れ戻ろうとする時、次 の第二波が来る。このタイミングが良ければ、湾の水は共鳴して、どんどん大きく揺 れて行き、湾の奥ほど津波が大きくなります。
1960年のチリ津波は、周期が40分程で、ちょうど大船渡湾の固有振動周期と同じでし た。共鳴が起こり、特に湾奥がひどくやられたのです。
 この災害が二度と起こらないようにと、全国のチリ津波被災地に対し、昭和35年か ら昭和41年まで、7カ年にわたって対策工事が行われました。主な事業は海岸に海岸 堤防(coastal dike)や防潮壁(sea wall)を築く事でした。
 大船渡湾の湾奥は、セメント積み出しを始めとする貨物の行き来の激しい所です。 ここに高い防潮堤(sea wall)を建設すると、日常の作業に支障が出ます。そこで、湾 の入口に津波防波堤(tsunami breakwater)を建設する事としました。最大水深が38m もある湾口部を殆ど締め切り、船を通す港口を幅200m、水深16.3mだけ残してありま す。
 このように港口が開いて居ますから、津波も勿論入ります。しかし、狭められた港 口のため、中に入る水量は制限されます。制限された水量が広い湾全体に広がります から、湾内の津波は小さくなるのです。  こうして出来た大船渡湾の津波防波堤は世界最初のものです。
 完成してから間もなく、昭和43年に十勝沖地震津波が襲いました。このビデオはそ の時の模様を、特に津波防波堤の港口部分に生じた流れを中心に撮影されたもので す。
1:20の頃、港口近くで白波が立っています。右側が湾内、左側が外海です。今、津波 による流れは外側へと流れて居ます。外海から来た風波が、津波で押し戻され、湾内 に入れません。足を止められた風波は、背が高くなり、波の峰から砕け、白波となっ ているのです。
1:42頃の、遠くの海岸を見て下さい。磯に打ち付けた風波が白く砕けています。津波 と同時に風波もあったのです。
2:36頃、港口から流れ出す津波による流れと、その周りの海とでは状況が違う事が見 て取れます。津波による流れの幅は港口幅と同程度です。白い泡が表面に乗ってお り、その周りの海の様な細かい波が無いので、大きなうねりはあるものの、比較的な めらかに見えます。
2:46~3:08は津波の出入りによる港口近くでの流れの発生を説明したものです。右側 が湾内です。
4:15、今度は津波が湾内へと侵入を始めました。津波が直接影響している範囲は、防 波堤先端から右側へとつながる白い線で確認できます。
5:50頃、勇敢な漁船が1隻、流れ込んでくる津波に向かって沖へ出ようとしていま す。
6:13頃、湾の中で大きな渦が出来ました。こうした事は珍しくありません。巻き込ま れると、船の操船が難しくなります。見くびってはなりません。