岩手縣沿岸大海嘯取調書(甲・乙・丙・丁)

陸中国南閉伊郡鵜住居村(現、岩手県釜石市 両石、箱崎など)

陸前國南閉伊郡鵜住居村

●本村被害地ハ 字水海 両石 桑ノ濱 白濱 仮宿 大仮宿 米崎
                    根濱 片岸 室ノ濱 拾ケ所トス
○流亡戸数  二百壹戸○潰戸數      二十七戸○流亡納屋 二百六十八棟
○潰納屋   六拾九棟○死亡人口   千二百八拾人○負傷人口   七十五人
○流亡牛馬      ○流亡耕地・田畑      ○流亡舩舶
○流亡財産      ○流亡道路・堤防

漁村の新位置
一、新住家ヲ設クヘキ地及旧住家トノ利害
  ○本村 被害地 拾ケ所ノ内 両石ヲ 以テ 第一トス 元宅地 海面ヨリ 四尺位ノ地 ナレトモ 市街
   路 殆ト 海面平均ト云 如シ(街路ヨリ宅地 両側 四尺位 高キ町ナリ)今回 海嘯ニ 土地陥落セ
   ラレ 加ルニ 海成トナリ 又タ 大シケ(ヨタ トモ云)平素 五尺位ノ激浪 打込シ 事 時々アリ
   弘化四年六月十八日 霖雨 供水ニモ 山津浪ニテ 男 壹人 死亡   家屋 ヒヤシ 流亡セシ事モアリ
      故ニ 西山手 両新宅ヲ設ケ 地形  五六尺モ盛立 居地ヲ据ルニ 便アリ 平素の小霖雨ニモ 両石町
      街路  河川 同様ニナリ 一時 往来ヲ 停止スル事アリ 故ニ元宅地 街道ヨリ  石垣ヲ 高ク 地磐
     築キタルナリ
  ○室濱 箱崎ノ二ケ所モ 元宅地 少々 引揚ケ 地磐 盛立 新宅地ヲ設ル  必要ナリ 惣テ 部落地 
      詳細ニ 記ス
  ○桑ノ濱ノ如キハ 再興ノ見込 無
二、海面ヨリ高低及沿岸の地形方位
  ○海面ノ高低ハ 詳細部落図ニ 記ス 本村ノ地形方位ハ 字水海 両石ハ  小湾内ニアリ 桑濱 仮宿ハ
     南釜石町界 馬田崎ヲ見 南ニ海面ス 東  御箱崎 大洋ニ 突出シ 其 北方 箱崎 根濱 大槌湾ニ
      面シ 片岸 室濱ハ  東 大洋 海面シ 鵜住居村 両石山脈ヨリ 箱崎山 御箱崎マテ山脈  南東北ニ
      海濱アリ 故ニ 今回ノ津浪 激ナリ
三、津浪ノ耒タリタル場所
  ○南東ヨリ(辰巳)打込ミタルヤノ如シ 両石湾ニ 三貫島ノアルニモ  拘ハラス 逆浪 激ナリ 両石 
      其他桑ノ濱方面(南西)流亡 土地陥落  セシム 北西 箱崎ヨリ 室ノ濱ノ諸濱ハ 眞東ヨリ 打込ミ
     流亡 破壊  甚シ 詳細 地図ニ記ス
四、防風林及防浪林其他堤防必要の有無
  ○防風林ハ 昔 箱崎村 槻ノ木 海濱ニ 多クアリトス 安政津浪ニ枯レ 自然ニ失ヘタリト
  ○將耒 防風林ノ必要ハ 水海 箱崎 根濱 片岸 室ノ濱ニ別紙 絵図ニ記ス如ク必要ナリ


五、魚付場及海湾近傍山林原野の景況并ニ林相種目
  ○従耒 魚付森林ハ 伐木禁止ノ所 一新以耒 乱伐の為メニ 魚付 大ニ 変ス 尤 大石辺ハ 山間ニ
   切替 畑ヲ起シ そハヲ 蒔キタルニ 蕎麦ノ花 開花中 海面ニ 白ク ウツリ 鰯ノ寄ラサル事モ 
   有リ 実ニ 魚付森林 保(全)必要ナリ
六、新道路ノ見込ミ及古道の便否
  ○本村ヲ 通シル濱街道 小白濱 本郷 宅地変更ニ付 随テ 変更ヲ企望ス
七、漁村沿岸運搬ノ便否
  ○陸路 開ケタリト 雖モ 本村海湾ニ 三方ニ 部落アル 故ニ 海運の便ヲ欠ク 能ハス

住 家
一、海濱住屋建造ノ方法
  ○未詳
二、住家ト納屋ト離合の利害
  ○本宅納屋離隔ニ 大ニ 便アリ 
三、海濱住屋建造ノ遺法の有無
  ○未詳

漁民風俗
一、祭事婚姻家庭ノ状況
  ○祭事ハ 大漁ハ 村社等ニ於テ 大ニ 祭典ヲ行フ 不漁ニハ 浦祭リ 竜神祭リヲ 神官ニ 托シ 
   祭ル 溺死者 アレハ 僧侶ニ 托シ 経(施)餓鬼ヲナシ后 神官ヲ以テ 浦濱 清浄の為メ 渚祭リヲ行フ
  ○婚姻ハ 成丈 漁民ハ 漁民ト縁組 農家ハ農家ト 結婚ト云カ 如
  ○家庭ノ状況 夫ハ 海ニ漁シ 其 漁獲物ヲ 婦妻 是ヲ 調製ス 男子拾五才  位ヨリ 鰹舩ニ 乘リ
     賄方 餌差蒔ヲ スルハ 漁民家 家庭状況ナリ  (農 弐分  漁 八分)
二、漁民ノ禁物
  ○死ト云事 忌ム ゴ子ルト云 猿ルヲ ヤヱント云 ヱヒシト云
   アンコトモ云 返シト云事 忌ミ ヤルト云 産婦ヲ 忌ム
三、食物
  ○米 少々ヘ粟 稗 麦 布ノ粉等 適宜ニ交セ(糧トス)常食トス
四、衣服
  ○木綿 麻 反物四分  古着六分
五、漁民衣食物供給ノ時季
  ○盆 七月 旧年末 十二月 五月節句 村祭リ


六、被害町村漁民年々北海道及其他出稼ノ状況
  ○年々 北海道出稼 三十人位 石巻 十二三人 山田辺へ 秋 出稼 少々アリ
七、良習慣ト不良習慣トノ種類
  ○本村 農漁 昔々 病死 アレハ 金五銭(拾銭)宛 香奠ニ遣シ 親族  友人ハ 関セス)部落毎ニ 
      之ヲ 行フ 葬式ハ 手傳ニ 皆 行ク
  ○両石ニテハ 漁民 結婚ニハ 一タノ漁獲物 贈与シテ 補納トナシ

漁村制
一、漁業組合ノ状況及改善ノ策
  ○漁民 解セサルヨリ 方今 充分行ハレス
二、漁民ノ労働及稼業の順序
  ○男子ハ 海沖ニ漁シ 女子ハ 家在リ 網等 修繕 漁獲物ヲ調製 販賣ス
三、旧漁場ト新漁場トノ位置ノ状況
  ○未詳
四、漁場紛擾仲裁法
  ○未詳
五、捕獲魚類沖合販賣の利害
  ○本村ニ無
六、藩政當時ノ方法及税法
  ○鰹舩ヨリ■■ 壹ケ年 廿五本宛
  ○沖漁舩ヨリ魚油 小サメ 壹ケ年■■■■  鱈十二枚
  ○塩竃ヨリ五斗ヨリ六斗マテ■■  箱崎村税法
  ○両石村ニテハ 左ノ如シ
  ○小漁舟 壹艘ニ付 蛸五枚 鯣 カラカイ 壹枚
  ○鮪網五十円ヨリ五十銭マテ

凶荒調査
一、海産物凶年ノ備荒品及製造
  ○布ノ粉 ■■
二、凶年ノ状況
  ○路傍 斃死 多シト云(天明 天保 宝暦)
三、凶年ノ際藩政の救助法
  ○未詳


四、凶年及津浪后の流行病
  ○凶年 津浪后 流行病ハ不詳 

漁民需用品
一、海岸山林原野ノ状況及將耒の企望但材木薪炭木ヲ云
  ○用材 欠乏ノ為メ 近比(頃) 植立ノ企望アリ 近比 村民 植立テ従事  薪炭木ニ 別ニ方法 アルヲ
     聞カス
二、竹木大麻藁物消費年額
  ○網ハ 水沢 宮古 麻ハ 東京 藁ハ 遠野 石巻(鮪網ヲ云)ヨリ需ム
三、造舩種類及年々造舩の員数
  ○天當舩 二間 三間  命 十壹ケ年 百三拾艘
   沖漁舩 四間 五間  命  九ケ年  二十艘
   網 舩    五間  命 十五ケ年   拾艘
   小■■  百六拾艘   年々平均十分ノ一ヲ新造スル
                              是 鵜住居村
  ○小漁舟 三間 艘未満(小天當)命十三四年 代 壹艘   四十円
   沖漁舟 四間 (五体力与板) 命  九年 代 壹艘 百二三十円ヨリ
   タンベ 四間 五間      命 十二年 代    百二三十円
                                箱崎村
  ○舟喰虫 八月 九月 盛ニ害ヲ与ヘ 駆除スルニハ 燒クカ(コルタル)  用ヘルニ効アリ
四、木材ヲ需ル便宜の場所
  ○近傍便利ノ地 無 石巻 九戸地方ニテ木材 購求スルヨリ 別法 無
五、將耒漁舟漁具改良の方法
  ○漁民馴レサル為メ好マス
六、漁民衣食供給ノ場所
  ○衣服 大槌町 釜石町 食物 遠野町

海 湾
一,旧漁場ノ位置及変更ノ状況
  ○末タ 調査セス
二、海湾主産
  ○蚫 赤魚 鱈 鮭 鮪 鰯 とど(海鹿) サカ 鰈 細布 鰹 ブリ 角又




三、海湾捕魚ノ種類及時期
  ○釜石ト仝ス
四、沖合漁業ノ位置里程
  ○鰹 夏ハ 二日路先マテ(山見エス之ヲ山無トス) 秋 一日歸ル 赤魚モ  日歸リ路ニテ漁獲シテ 歸帆
五、製塩所位置荒廃
  ○本村ニ 八ケ所ニ在リ 二ケ所廃業 六ケ所再興

海事考
一、四季ノ氣候
  ○雪 旧十二月ヨリ三月マテ 降ル (積ル事壹尺五寸位)  梅花 三月中旬咲
二、起風雨前知
  ○未詳
三、不漁前知
  ○仝
四、大漁前知
  ○未詳
五、潮流状況
  ○仝
六、海湾ニ関スル事歴
  ○本町 片岸ハ 寛政年間ヨリ 宝暦ノ比(頃)迄 塩田ノ内
  ○本村 字両石 弘化四年 山津浪ニテ 男壹人 死亡
七、固有漁場ノ変遷ノ状況
  ○未詳
八、津浪ノ歴史
  ○寛政五年正月七日 津浪ニテ 字両石 過般流ト云事 在リ  又タ 聞 所ニヨルト 家 五十八軒 人
     十六人 流亡 水海ニテ  家十四軒 塩竈 流亡ト事 有リ
  ○弘化四年六月十八日 山津浪ニテ 両石 家屋ノ内 ヒヤシ 流亡セシト云  男壹人 死亡
  ○安政三年七月廿三日 地震 津浪ニハ 両石 打上浪 拾尺 桑ノ濱  宅地七尺 上水ト云
  ○箱崎ハ 打上浪 三間余 今回 海嘯ト打上浪ニ 差 無 安政ニハ 流亡  家屋 無 家ヲ浸セシマテ
      ナリ 室ノ濱ハ 安政ニ 九尺打上ト云
  ○室濱ニテ 弘化四年六月十八日 霖雨ニテ山津浪の為メ 家 壹軒  流亡セシ事アリト云
  ○天明二年寅七月 海嘯の為メ 大仮宿 人民 不残 流亡 其后 民家 無シ
  ○天明二年七月 武蔵 相模 両国 地 大ニ震フ 下総 雪 降ル  江戸 逆浪 溢リ 溺死者 数十人



      トアル 此トキナラン
  ○箱ノ白濱ニ 安政津浪 海岸 宅 板間 潮浪 打上タルノミ 家人ニ流亡 無
九、津浪の耒ルヘキ前兆
  ○未詳

漁村挽回
一、迅速ナル業務
  ○小舩ヲ造ルニアリ
二、造舩職工有無
  ○舩大工モ家作大工 欠乏 他ヨリ雇入ル見込ミ

漁民將耒の企望
一、管内沿岸一致漁業組合ヲ設ル方法
  ○良法ト云ナカラモ 人物 乏敷 故 六敷ナリ
二、授産方法ニ付便利見込有無
  ○授産方法 第一着 納屋 建築 沖 漁舩具 網等 購求ノ便ニ有リ
三、他ヨリ團体ヲ造リ漁業ニ耒ル者アルトキハ如何スルヤ
  ○改良産地ヨリ 各業ニ付 良漁民 移住 尤 策ナリ

陸地産業被害調査
一、家畜関係
  ○
二、耕地被害
  ○

商業調査
一、物價相場魚類販路
  ○鯣 鮑 鰹 其他 小肴 海中 居ルト 雖 舟具 無 漁獲スル能ハス  漁獲スルトキハ販路 大ニ 
      在ルナリ
  ○物價三割以上 騰貴(米 壹舛 拾貳錢  酒 廿弐錢)
二、貸借変動及金利質屋ノ景況
  ○金利 二割ヨリ 二割五歩




商業調査
一、物價相場魚類販路
  ○鯣 鮑 鰹 其他 小肴 海中 居ルト 雖 舟具 無 漁獲スル能ハス  漁獲スルトキハ販路 大ニ 
      在ルナリ
  ○物價三割以上 騰貴(米 壹舛 拾貳錢  酒 廿弐錢)
二、貸借変動及金利質屋ノ景況
  ○金利 二割ヨリ 二割五歩