岩手縣沿岸大海嘯取調書(甲・乙・丙・丁)

陸中国東閉伊郡津軽石村(現、岩手県宮古市 赤前 など)

陸中國東閉伊郡津軽石村

●本村海嘯被害地   字小田濱 赤楊沢 堀内 小堀内 金井沢
                   赤前 法の脇   七ケ所ナリ
○流亡戸数    九戸 ○潰戸數    四十三戸 ○流亡納屋    六棟
○潰納屋     二棟 ○死亡人口    十六人 ○負傷人口    壹人
○流亡牛馬       ○流亡耕地・田畑     ○流亡舩舶
○流亡財産       ○流亡道路・堤防

漁村ノ新位置
一、新住家ヲ設クヘキ地及旧住家トノ利害
  ○本村ハ 別ニ宅地ヲ移轉セシ所モ無シ 字法リ脇 長洞林蔵 壹人ノミ  山手ニ移住スルト云ノミ
二、海面ヨリ高低及沿岸ノ地形方位
  ○海面ヨリ 本村被害地部落ハ 二三尺 四五尺 壹ケ所(小堀内)十尺ト云 地形方位ハ 本村海面ハ 
      宮古湾ノ南ニ在リ 湾ニヨリ 風  南ヘ 六七哩ノ内海ナリ 被害地ハ 東南西 沿岸の海濱ニアリ
三、津浪の耒ル場所
  ○北方 宮古湾ヨリ直線ニ耒リ 三方 海濱ヲ破壊セシメタリ
四、防風林及防浪林其他堤防必要の有無
  ○本村 字赤前 須賀ノ松原ハ 安政の津浪 多ク 潮浪の為メ 枯らサレ老木  壹本殘リ(十ケ年前枯)
      是ハ 種トナリ 繁忙 村民の手入ト 或ハ 植付  今ニ 至ルマテ 二尺廻リノ 松樹林トナリ 今回
      ノ津浪モ 是レカ為メニ  赤前方面ノ損害 少シ 只 若杢丈 枯損多シ 將耒 必要の防風林ナリ
五、魚付場及海湾ノ近傍山林原野ノ景況并林相ノ種目
  ○本村海面ハ 近傍海岸ハ柴山 雑木種 多シ  魚付場 格別 乱レタルモノニアラス
六、新道路ノ見込ミ及古道の便否
  ○本村赤前ヨリ 重茂村 字里ニ 通スルノ里道 本村ヨリ 白濱通リ  平坦の道路及 本村 字根井沢ヲ
      越 花輪ヲ経テ 閉伊川道路  達スル(花原市) 三道路 開鑿ニ便アリ
七、漁村沿岸運搬ノ便否
  ○海運 便ヲ多ク 要スル事 不足ナリ

住 家
一、海濱住屋ノ建造の方法
  ○別ニ無


二、住家ト納屋ト離合ノ利害
  ○離隔スルニ 大ニ利アリ 
三、海濱住屋建造遺法之有無
  ○別ニ無

漁民風俗
一、祭事婚姻家庭ノ状況
  ○本村ハ 一ノ小半島 故ニ 結婚等ニハ 嫌ふ無
  ○溺死者アルトキハ 僧侶ヲ以テ 渚祭ヲ行フ
二、漁民ノ禁物
  ○鍬ヶ崎町ニ仝ス
三、食物
  ○米 粟(二石飯)稗ノミ食物多シ 米 壹分 稗九分 交セ飯ト  ナシモノアリ 其他 麦 布ノ粉
四、衣服
  ○木綿 麻 
五、漁民衣食物供給ノ時季
  ○旧盆 七月 旧年末 十二月
六、被害町村漁民年々北海道及其他出稼ノ状況
  ○年々 北海道ヘ出稼 弐百名余 近年 北海道行キノ 多キ訳ハ本村  津軽石川 他ニ 公賣セシ 故ニ
     村内漁民 愛セサルヨリ 多シ  又タ 津軽石漁業モ 近年 不漁ナリ
七、良習慣ト不良習慣トノ種類
  ○別ニ無

漁村制
一、漁業組合ノ状況及改善ノ策
  ○本村ニ準則ハ 適セス 從耒ノ習慣ニテ 足ル
二、漁民ノ労働及稼業ノ順序
  ○本村ハ 耕作ヲ 男女共 重クシ 漁業 副業ナリ
三、旧漁場ト新漁場ト位置状況
  ○別ニ無
四、漁場紛擾仲裁法
  ○本村 大須賀ト 津軽石の鮭川 年々 紛議ニハ 仲裁法の無ニ 困却セリ
  ○鮭 地洩浪ハ 方位ヲ定メ 漁獲スル 故ニ 方今 昔 慣 無


五、捕獲魚類沖合販賣ノ利害
  ○本村 沖漁師 不足 故 無シ
六、藩政ノ當時ノ方法及税法
  ○本村 鮭川及海産ハ 書類ヲ以テ 記スル 能ハス

凶年調査
一、海産物凶年ノ備荒品及製造
  ○布ノ粉 東海婦人
二、凶年ノ状況
  ○天保ノ凶年ニ 人多ク 死亡
三、凶年ノ際藩政ノ救助方法
  ○藩政ノ書類 引續キ無ヨリ 記スル 能ハス
四、凶年及津浪后ノ流行病
  ○凶年 津浪后 流行病 未詳  明治廿二年ニ 時疫 流行 二十二人死亡

漁民需用品
一、海岸山林原野ノ状況及將耒ノ企望但材木薪炭木トモ云
  ○本村 薪炭材木ニ 欠乏無ト 雖モ 私有山ニ杉 植立 盛ナリ
二、竹木大麻藁物消費年額
  ○網ハ岩谷堂 麻・九戸地方 藁物・地元ニテ 足ル
三、造舩ノ種類及年々造舩ノ員数
  ○小漁舩 四拾艘余  年々 五六艘宛  新ニ造舩ス
四、木材ヲ需ル便宜ノ場所
  ○米山官林ヲ便トス(多少 檜葉アリ)
五、將耒漁舟漁具改良ノ方法
  ○本村 漁民ニ適セス
六、漁民衣食供給ノ場所
  ○宮古町

海 湾
一,旧漁場ノ位置及変更の状況
  ○本村 内海 故ニ 変更 無ト云



二、海湾ノ主産
  ○鮭 鰯
三、海湾捕魚ノ種類及時期
  ○春・鰯  夏・鱒  秋・鮭  冬ハ貝類
四、沖合漁業ノ位置里程
  ○鍬ヶ崎町ト仝ス
五、製塩所位置興廃
  ○未詳

海事考
一、四季ノ氣候
  ○雪 冬至ヨリ 春 旧二月下旬迄 二尺 降リ積ル
  ○梅花 旧三月中旬 桜モ 又タ仝ス
二、起風雨前知
  ○未詳
三、不漁前知
  ○仝
四、大漁前知
  ○かもめ 多ク 海面 見ヘルトキ 鰯 大漁ト云
五、潮流ノ状況
  ○未詳
六、海湾ニ関スル事歴
  ○未詳
七、固有漁場変遷ノ状況
  ○川口ハ 昔ヨリ 山手ニ 寄ルト云
八、津浪ノ歴史
  ○本村 抜川 今 海岸ヨリ貳丁余ノ陸ニアリ 昔ハ 海面ト云
九、津浪ノ耒ルヘキ前兆
  ○本村 高濱ニテ 海岸の白砂ニ 海苔 生ヘ うなき 多ク 春ヨリ  捕獲スト云 安政ノ津浪ニモ 
      如此ト云
漁村挽回
一、迅速ナル業務
  ○小漁舩ヲ造リ 漁民ニ 貸与スルニアリ


二、造舩職工有無
  ○在耒の職工ノミ 舟大工 不足 故ニ 困却

漁民將耒ノ企望
一、管内沿岸一致漁業組合設ル方法
  ○別考無
二、授産方法ニ付便利見込ノ有無
  ○仝
三、他ヨリ團体ヲ造リ漁業ニ耒ルモノアルトキハ如何スルヤ
  ○仝

陸地産業被害調査
一、家畜ノ関係
  ○
二、耕地被害
  ○今回ノ津浪ニテ 損毛セシ 耕地 二三回 蒔キタルニ生育セス  (大豆 粟)

商業調査
一、物價相庭魚類販路
  ○鯣 盛 海ニ見ル 價 相應 舟ニ 無シ 困ル 漁アレハ 販路アリ
  ○物價 二三割 騰貴
二、貸借変動及金利質屋ノ景況
  ○金利 二割