岩手縣沿岸大海嘯取調書(甲・乙・丙・丁)

陸中国北九戸郡種市村(現、岩手県九戸郡種市町種市)

陸中國北九戸郡種市村

●本村被害地  字八木 大濱 土釜 玉川 鹿沼 荒地内 小橋 川尻 八ケ所
○流亡戸数  四十四戸 ○潰戸數      壹戸 ○流亡納屋  四十三棟
○潰納屋    廿壹棟 ○死亡人口  百八十六人 ○負傷人口  三十九人
○流亡牛馬       ○流亡耕地・田畑     ○流亡舩舶
○流亡財産       ○流亡道路・堤防

漁村の新位置
一、新住家ヲ設クヘキ地及旧住家トノ利害
  ○本村 海岸 流亡 家宅 各自 移轉スル者 アラヤノ如シ 居宅ヲ 一區域ニ設ケ 移住 スルモノ 無
二、海面ヨリ高低及沿岸ノ地形方位
  ○海面ヨリ 高低ハ 部落図ニ 詳記ス 沿岸地形ハ 荒石  砂濱ニシテ 多ク 遠浅 方位 丑寅ノ大洋ニ
     面シ 一方面ナリ
三、津浪耒ル場所
  ○本村 海濱 大洋 一方面ヘ 卯辰ヨリ 激浪 打込ミタルヤノ如シ
四、防風林及防浪林其他堤防必要ノ有無
  ○將耒 防風林ヲ設ケ 海濱ハ 字玉川 鹿沼 荒地内 小橋ノ四海岸ニ 植付ハ 急務ナリ 如何トナレハ
     此 海岸ニ 道路 在リ 是ニ  樹木 アレハ 電中(柱) 張 人ノ為メニモ 大ニ 便アリ
五、魚付場及海湾近傍山林原野ノ景況并林相種目
  ○本村 海岸 宿と 第四地割 第五地割ノ地方ニ 魚付 森林ヲ  植付ルハ 目下ノ 急務ナリ
六、新道路ノ見込ミ及古道ノ便否
  ○濱街道 大濱 近傍 海嘯ノ為メ 海域 三四百間 在リ 此 道路ハ 山手ニ変換 改築スルニ 便アリ
七、漁村沿岸運搬ノ便否
  ○荒濱 故ニ 海運ノ便 無

住 家
一、海濱住屋ノ建造ノ方法
  ○別無
二、住家ト納屋ト離合ノ利害
  ○本宅ト 離隔スルハ 大ニ 便アリ



三、海濱住屋建造ノ遺法ノ有無
  ○

漁民風俗
一、祭事婚姻家庭ノ状況
  ○不漁の際ハ 諸社(八幡)ニテ 御神■ヲ 援キ 漁氣ヲ 祈ルナリ
  ○溺死者等アレハ 僧侶ヲ以テ 大供養ヲ 行フ
  ○結婚ハ 漁民ハ 山手 村落ヨリ 聟 嫁ヲ 貰 事ヲ 好マス(十人ニ 壹人位 アルナリ)如何トナレハ
     漁業 舟 乘 塩 煮  漁獲物 所理ニ 不便ヨリ 忌ムナリ
二、漁民禁物
  ○猿ヲ ヤヱント云 蛇ヲ 長虫ト云 鯨ヲ ヱヒシト云 狐ヲ 尾長ト云 味噌ヲ 豆ト云 酢ヲ 
      ■■ノ酒ト云
  ○沖漁中ニ 鯨ニ 追ハレタル トキハ「サイ」「ケニヘ」 之ハ 起 タト云テ 遁レルト云
  ○産婦ハ 七日 忌ム 婦人ノ月経ニモ 忌ム 猟師ヲ 忌ム 獣医ヲモ忌ム ライ病モ 忌ム 死亡等ハ
     忌 嫌ハス
三、食物
  ○米 粟 稗 多分 稗ノミ 食スル 多シ
四、衣服
  ○木綿 麻 麻衣ハ 漁農 両民 稼動ノトキ 用ヘ
五、漁民衣食物供給ノ時季
  ○旧盆七月 年末十二月   村社祭 旧五月十五日
六、被害町村漁民年々北海道出稼ノ状況
  ○北海道ヘ 本村ヨリ 七百人(八百人)ニ至(壹戸 三人位)出稼ニ 出張 地元 漁業ノ期ニ 多分 
      歸ル 故ニ 如此 多人数 出稼モ  差 支 無
七、良習慣ト不良習慣トノ種類
  ○家屋 建築等ニハ 親族 友人 材木等 惠与ス 一部落毎ニ 米  壹戸 壹舛(粟二舛)人夫 普請中
     助合スルナリ 元の規約ナリ  家屋 建築等ニ 大ニ 便アリ
  ○流行病等 アルトキハ 根付魚 漁獲物ハ 病家ニ 配當ヲナシ 与ヘ  又 農作ニモ 持弁當ニテ 
      耕作物 収入ニ 加勢 スルナリ 

漁村制
一、漁業組合の状況及改善ノ策
  ○末タ 組織セスト 雖 是非 必要ナリ



二、漁民ノ労働及稼業ノ順序
  ○本村 海濱 漁農 兼業 農 三分 漁 三分 塩業 四分 漁獲物ハ 地元 賣捌キ 女ハ 駄送 
      スルナリ
  ○女子ハ 糸ヲ モム 布ヲ 製シ 冬氣中ノ業 ナリ
三、旧漁場ト新漁場ノ位置ノ状況
  ○末タ 別 然セス 鮭建アミノ位置 如何哉
四、漁場紛擾仲裁法
  ○
五、捕獲魚類沖合販賣ノ利害
  ○本村ニ 無
六、藩政當時ノ方法及税法
  ○塩竈 壹箇ニ付 金 貳匁ヨリ四匁迄 御礼金ト 唱ヘ 納ム
  ○舟 壹艘ヨリ 錢 弐百文ヨリ三百文迄(三間舟ナリ)納ム
  ○藩廳の御買上ケハ(御奉行ヘト唱ヘ)塩 大豆 粕 魚油 昆布 鮑等ナリ
  ○浦税 宿戸村ニテ 五貫貳百文マテ 壹ケ年済ト云

凶年調査
一、海産物凶年ノ備荒品及製造
  ○メノコ 若布 
二、凶年ノ状況
  ○未詳
三、凶年ノ際藩政ノ救助方法
  ○凶年ニハ ■高壹社ニ付 五舛八合 宛 分与ス
  ○市中 市民 客民ニ 粥ヲ 施ス 皆 藩主令 仝ス
四、凶年及津浪后流行病
  ○天明ノ凶年ノ后 赤痢病 流行 アリト云
  ○安政三年七月廿三日 津浪后ハ チウツフシ流行
  ○明治十九年 コレラ■■■ 死亡

漁民需用品
一、海岸山林原野ノ状況及將耒ノ企望但材木薪炭木ヲ云
  ○木材 薪炭木ハ 是マテ 余リ 欠乏ヲ 見サル方ナリ 村々ニ  將耒の覚束 無ヲ 語リ 壹戸ニテ 
      杉 植立モ アリ



二、竹木大麻藁物消費年額
  ○網ハ 水沢地方ヨリ八戸 製ハ 六節 四節ノ アミナリ
三、造舩ノ種類及年々造舩ノ員数
  ○本村 百六拾艘 命(十三ケ年 二十ケ年)十ケ年 本村 荒濱  故ニ 小屋ニ 入ル為メ 舟命 永シ
     他ハ 皆 十ケ年位ナリ
四、木材ヲ需ル便宜ノ場所
  ○青森縣 田名部
五、將耒漁舩漁具改良方法
  ○漁具 釣具 自製 イカ釣 道具ハ 宮古 前濱ヨリ 需ム
六、漁民衣食供給ノ場所
  ○八戸町

海 湾
一,旧漁場ノ位置及変更ノ状況
  ○海底 捜索セスト 雖 二三百貫匁 位ノ大石 陸上 打揚ケ 海中モ  大ニ 轉動ス 昆布岩 轉動 
      鮑ノ食物 欠乏(昆布ハ 鮑ノ餌 食物ナリ)却(脚)根付物 欠乏ヲ 見ルハ 當然 ナラシト云
二、海湾主産
  ○鮑 昆布 鰯 粕 魚油 カセ 若布 天草 鰹
三、海湾捕魚ノ種類及時期
  ○春・鰯 カセ  夏・鰹 若布 昆布  秋・鯣 鮭  冬・鮑 鱈
四、沖合漁業ノ位置里程
  ○海底 沖 百四五十尋 岸 五十尋ノ所ニ 鰹ハ 居ルト云 十五哩位ノ所 ニテ 釣ル 漁期ハ 
      宮古ヨリ 二周間 後レ 大槌 山田ヨリ 三周間モ 後ルルト 云
五、製塩所位置興廃
  ○字八木  二 竈  壹 竈  再興  ○字宿戸  四 竈
  ○字ヘルケ 二             ○字玉川  二
  ○字鹿糠  四             ○字小橋  三
  ○字平内  三             ○字角濱  三

海事考
一、四季ノ氣候
  ○雪 冬至ヨリ 翌 旧三月初旬迄 降ル(積ル事 4尺 平年 二尺)梅花 旧四月中旬 咲




二、起風雨前知
  ○風 前知ハ 朝日 南北 或ハ 北ニ コヒ掛(サビトモ云)リタルトキハ 其 方向ヨリ 風 起ル
  ○春秋 西ニ 虹 立トキハ 雨風 其 方角ヨリ 耒ル
  ○■州雪端 ヤワラカニ ナルトキハ 「シケ」激浪アル
  ○旧二三月ニ 根岩ニ 海苔 多ク 着ク 年ハ 夏 雨 多クアル
三、不漁前知
  ○不漁ハ 鰯ハ 晴天 續キ 不漁ナリ(海 明リク ナル為メ)鰹ハ 晴天ニ 漁アリ
四、大漁前知
  ○沖ヨリ かもめ鳥 多ク 耒ルトキハ 鰯漁アリ 又 ユルカ(鹿海)鯨 沖 立廻ルトキハ 大漁 
      アルナリ               見込地ナリ
五、潮流ノ状況
  ○春ハ 南ニ 流ルトキハ 晴天 續キ 北ニ流ストキ 雨天 曇天
  ○土用中 南ニ 流ルルハ■ ■之年 北ニ流ルトキハ 雨天
  ○四五月ノ比 鮪流網中 南 流ルルトキハ 漁アルナリ
六、海湾ニ関スル事歴
  ○本村 字八木ハ 天明ノ凶年前マテ 六戸 家アリ 本年 海嘯前マテ  三拾三戸 在リ 海嘯ノ為メ 
      二十七戸 流亡差リ 六戸 殘ル  内二戸ハ 天明ヨリ 連續ノ家 ナリ
  ○天明ノ凶年前マテ 拾七戸ノ内 拾壹戸 潰レ 六戸 殘リシトモ云
  ○六戸モノ共ハ 米沢平七 高屋敷藤兵エ 石橋三之丞 八木惣三郎  梅沢甚四郎 中家彦三郎 等 ナリ
  ○吹切丑松 曾祖父 三郎兵ヱ 當 宿戸村 鰯漁場 二ケ所ノ発見セシ為メ 八戸港 白銀村 艀クリ網
     長サ 五十間アミヲ 以テ(買入)海底サクリ 発見セリ 宿戸 鰯網ノ祖ナリ 凡 百十ケ年前 舟税
   二艘丈 免税ス(八戸藩)
七、固有漁場ノ変遷ノ状況
  ○未詳
八、津浪ノ歴史
  ○安政三年七月二十三日ノ津浪ハ 本年ノ津浪ノ五分一ト云 十分一ト云 不詳ナリト 雖 當村ハ塩竈
     納屋 三棟 人口 三四人死亡ト云
九、津浪ノ耒ルヘキ前兆
  ○本村 字八木 十文字要助老人(七十七才)話ニ 四十七年前 大地震の際ノ前兆 仝スト云 其 當時
     旧正月廿三日 夜 月 左ノ如ク  欠タリ ト云 故 要助老人 左ノ月ヲ 見テ 本年 夏 天災 
      アルナラント 話タリ ト云




尋常ノ
二十三夜
ノ月
明治廿九年旧正月
廿三日ノ夜ノ月四十七
年前仝月仝夜月ト
] 仝ス■如此



漁村挽回
一、迅速ナル業務
  ○舟ヲ 造リ 塩煮等ヲ 早ク 造ルニ アリ
二、造舩職工有無
  ○舟大工 欠乏 八戸地方ヨリ 雇入員モ 村規約ニテ 耒ラス 話シ困却

漁民將耒ノ企望
一、管内沿岸一致漁業組合設ル方法
  ○此 方法ヲ 行レルトキハ 大ナル 公益 人物 無キ為メ 容易ナラン
二、授産方法ニ付便利見込有無
  ○製塩 改良ニ アリ
三、他ヨリ團体ヲ造リ漁業ニ耒ル者アルトキハ如何スルヤ
  ○耒ルモノ 無ト 考フト云

陸地産業被害調査
一、家畜ノ関係
  ○
二、耕地被害
  ○

商業調査
一、物價相場魚類販路
  ○米 壹舛 拾貳錢 ■■■ 壹舛■■ 三四錢 塩 壹舛 三錢ヨリ四錢マテ
  ○漁獲物 アレハ 販路 速ナリ
二、貸借変動及金利質屋ノ景況
  ○質屋 無 金利 壹円ニ付 壹ケ月 廿五錢 廿錢 拾五錢マテ トス