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津波の奇襲は予知できた    ハワイ情報を軽視       ほしい世界的な警報体制

二十四日太平洋岸一帯を襲った大津波は全く
の”寝耳に水”だった。一番早く警報が出さ
れたのは札幌管区気象台の
午前五時。被害の大きかっ
た三陸沿岸を受け持つ八戸
地方気象台では、同五時十
九分予報を出した。ところ
が津波の第一波は同二時四
十七分に岩手県宮古で観測
され、同五時十四分には八
戸で最高の五メートルを記録した
警報の出遅れについて気象台では
①地球の裏側からの津波による災害はこれま
でになかった。
②情報が不足していた。
③気象業務法による津波警報は、日本近海の
地震に対して出すことになっている。
などをおもな理由にあげている。しかし同庁
には二十三日午前中にハワイの津波情報セン
ターから情報がはいっていた。この情報がか
えりみられなかったことに今度の大被害の原
因の一半があるといってよさそうだ。気象庁
の説明によるとこれまでの状況は次のようだ
津波情報に ついては現在、国 際的データ交
換協定はない。しかし在日米軍がいる関係で
太平洋地域に津波警報を出すホノルル沿岸測
地局からの情報は常時同庁にはいる。
こんどの場合も半日以上前の二十三日午前十
時二十分には『チリ地震で被害を伴う津波が
あるかもしれない』との一報(気象庁ではこの
電報はホノルル沿岸測地局管内の南太平洋の
島々を対象とした注意報で、日本向けのデー
タとは受け取れなかったと弁解している)が
入電、さらに同日午後六時五十七分、強さの
程度は不明だったがハワイ諸島に対する津波
到着予想時間を含めた情報がもたらされてい
る。ところが気象庁地震課ではいままでにチ
リ付近の地震で災害のある津波を受けた経験
がないため、警戒態勢をとらなかったという
このためハワイからの第二報は退庁時間後で
あったため予報官の手もとに届かなかった。

無残なツメ跡  ◇空から見た八戸◇

大津波で暁の夢を破られた八戸の被害は、空から
みるとさらに地震のツメ跡がひどい。東北火力発
電所、日東化学などの工業地帯は浸水でキラキラ
反射。またもっとも被害の大きい小中野町一帯は
赤茶けた水につかっていた。新井田川には漁船が
オモチャのように押し上げられているのも無残だ
八戸線沿いには家財道具が点々としていて、逃げ
まどった市民の姿が空からでも痛いほどわかるよ
うだ。
 【写真…新井田川に打ち上げられた漁船】

復旧、救援作業続く    終日、無気味な海鳴り

前ぶれもなくやってきた太平洋
岸の津波は、本県では八戸市を
はじめ沿岸各地に大きい被害を
残した。県警調べとは別に同日
県知事室に設置された県高潮対
策本部の調べによると、二十四
日午後十時現在の被害状況は死
傷者四人、行方不明四人のほか
住家の倒壊流出は六十二棟、床
上、下浸水は五千六百四十二戸
を数えた。県では八戸市に災害
救助法を発動、一方関係各市町
村も復旧対策本部を設けたほか
県警、陸、海上自衛隊三沢米空
軍をはじめ各地消防団が出動し
本県初の立体的な大がかりな救
助対策を行なった。この津波は
太平洋岸だけでなく陸奥湾にも
影響して異常干満潮を見せ、同
日早朝の第一波に続いて押し寄
せた無気味な波音は沿岸住民を
恐怖の底にたたき込んだ。この
波音は同日いっぱい続き、避難
した人たちは夜になっても帰宅
できず、それぞれの避難先で、
不安の一夜を送った。津波によ
る被害は八戸市だけでも百億円
を上まわるといわれ、復旧には
相当の時日がかかるものとみら
れている。
  
二十四日早朝八戸市を襲った大津波は、夕方まで断続的に押し寄せ、被災地の住民約五万人は不安におののきながら夜を明かした。こ
の間午前五時五十五分には五メートル八十センチという昭和八年の三陸大津波を上まわる大津波が防波堤を越え、このほか四㍍を超す津波が五回
も押し寄せた八戸測候所の検潮機は午前八時二十八分までに十九回の津波を記録、その津波に洗われて測定不能となったが、目測で午
後議事まで三十数回の津波が確認された。住家全壊十九戸、同半壊九十一戸、同流出五戸に床上千四百余戸、床下二千三百余戸が浸水
五千人が避難したが、夜減水とともに四千人が帰宅した。また漁船は沈没、座礁四十二隻のほか流出などあわせて三百隻となり、死者
一人、行方不明三人を出した。

浸水、五千人が避難     津波で暮れた八戸     ”百億”を押し流す

岩岡市長を隊長に設けた災害対策
本部では九カ所の避難所を設け危
険区域の住民に避難命令を出すと
ともに、避難民の救済指導にあた
った。水道が止まって飲み水に困
っている三島上、淀地区にはタン
ク車、消防車が出動し給水に努め
災害後に発生する伝染病対策とし
て予防法の発動を要請、浸水地域
の住民に伝染病に対する注意を呼
びかけた。陸上自衛隊高舘駐とん
地部隊も五百人が出動したほか、
ヘリコプター「セスナ機」で海陸
から救助、現場掌握に当たった。
 一方米軍三沢基地でも同夜八戸
 沖合にいぜん退避を続けている
 漁船約六十隻に食糧を投下する
 など協力した。このほか工業港
 の護岸が決壊したため、工場街
 に日曹製鋼が完全に昨日を停止
 したのをはじめ、火力発電所、
 日本高周波、中外製鋼、日東化
 学など軒並みに多大な被害をう
 けた。
一方漁業関係では小中野第二魚市
場が使用不能になった。
損害は漁業関係二億六千五百万円
加工場関係一億八千五百万円、冷
蔵庫、漁業資材など四億円、港湾
関係三億九千七百三十万円、道路
柵など千四百二十五万円、計十二
億六千百五十五万円となつている
が、この中には民家、工場、田畑
などの被害が含まれていないので
総額では百億円をはるかに突破す
るものと見られている。

 損害は五千万を越える    百石町川口部落

上北郡百石町の川口部落は、住家
八戸が流出、倒壊したのをはじめ
床下浸水四十戸、非住家の流出、
倒壊、浸水など六十棟を出したほ
か、橋の流出一、損壊一、導流堤
百五十メートルが決壊、防波堤百五十メートル
も決壊、河口護岸工事中の仮設堤
防一千メートルがトロッコ二十台もろと
も流出。また川舟十隻、漁網千間
も流出、田畑、家畜にも相当の被
害があり、五十三百余万円の損害
が見込まれている。

青森署管内の被害

陸奥湾も津波の余波を受け、沿岸
各地は異常な緊張に包まれた。
△青森市=午前九時各支所を通じ
て町会、部落に警戒態勢を指示、
市消防本部でも各消防団に出動体
勢をとらせ、奥内小学校は休校し
た。午後二時五分ごろ、青森港は
高さ一メートル三十五センチの津波が寄せ、
このため海に注ぐ排水路などは逆
流した。
青森署の調べでは、署内の状況次
【写真…市民会館に家財道具とと
もに避難している被災者たち】
の通り。
△原別川=高潮が逆流、床上一戸
床下七戸浸水、また奥内川流域も
床下二十六戸浸水。
△平内町=浦田沖合約千㍍のとこ
ろで西平内第一漁協のホタテとり
機九カ所が流出。

大湊田名部市で一人が行方不明

大湊田
名部市
宇曾利山道、漁業浅井藤三郎さん
(76)は、二十四日朝五時ごろ、同
市大平小学校下の海岸にエビ採り
に出かけたまま帰らないので捜し
たところ、同人が持って出たアミ
が海岸から発見された。津波にさ
らわれたものらしい。

水田、畑百ヘクタールに被害    県農務課、今後の対策を発表

高潮の被害は農作物にも大きな損
害をあたえた。県農務課が各農業
改良普及所を通してまとめた二十
四日午後六時現在の被害は、水田
や畑などおよそ百余㌶が水びたし
になっている。ほとんどが植えた
ばかりの田んぼや苗代などである
が、同課は県農試と連絡をとって
対策を急いでいる。海水をかぶっ
た水田は生育を鈍らせるので、植
えなおしなどの対策が必要である
が、県はとりあえず次のことを考
えている。
①海水をかぶった田んぼは淡水を
かけ流して塩分を少なくすること
②植え直しをする田んぼは、でき
るだけ付近から苗を準備すること
③肥料がはいっている田んぼは肥
料のきき目が薄くなっているので
その後の生育ぶりによって追肥す
ること。
各地区の被害次の通り。
△上北郡百石町=水田五十㌶苗代
三・三ヘクタール、畑二ヘクタール△八戸市=水田
七ヘクタール、苗代四ヘクタール、畑二十ヘクタール△大湊
田名部=水田五ヘクタール、苗代三ヘクタール

新井田川鉄橋が復旧

八戸市の新井田川鉄橋の橋脚が傾
斜し、線路が曲がって不通となっ
ていた。八戸線小中野ー陸奥湾間
は復旧作業が進み、二十四日午後
五時五分開通した。まだ気動車だ
けの徐行運転で、正常運転に復す
るのは一両日かかる見込み。
 

日赤で救護班

日赤県支
部では、二十四日午前救護班(医
者一、看護婦二、職員二)を八戸
三沢地区に派遣、ケガ人などの治
療に当たったが、同午後二時半、
さらに避難者用の毛布二百五十枚
を八戸へ運び救済に当たった。

タンク車で給水  八戸市

県では二十四日午前十時八戸市白
銀、鮫地区に災害救助法を発動し
たまた八戸市では同地区が断水し
ているので、タンク車三台で飲料
水の給水を行なっている。
 なお白銀、鮫、工業街、小中野
 四地区の人たち千三百人は小中
 野小校、市民会館、鮫小中校、
 水翠高、白銀小中校、湊小中高
 の六カ所に避難している。

百石町に自衛隊出動

陸上自衛隊高舘駐とん一二二特科
大隊五十人が、上北郡百石町の津
波による災害復旧のため、車両五
台で二十四日夜現場に到着、決壊
した川口部落から明神下に至る古
川町の橋のタモトの復旧作業にあ
たった。

連絡船のダイヤ混乱

青函連絡船のダイヤが津波で混乱
した。二十四日貨物船が函館発午
前七時三十五分石狩丸から上下十
二本運休、客船は下り便青森発午
前六時三十五分の摩周丸が五時間
五分遅れて函館へ着岸したのをは
じめ、上下とも二時間から三時間
のおくれを出した。なお青函局で
は二十四日午前八時半甲種警戒態
勢をとり、洞爺丸遭難事件のよう
なことのないよう運行に万全を期
した。