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  ●水 害 と 郵 便 電 信

◎去二十六日東京發直行列車に搭載の郵便物は
廿七日午后八時四十分到着し一昨廿七日發の分
は昨日午後四時到着し悉皆復舊したり
◎逓信屬前川親正氏は東北鐵道破損の箇所郵便
物逓送の實况視察として出張中の處一昨夜午后
八時四十分着の列車にて曩に盛岡附近へ郵便物
陸送指揮の爲め出張せし坂井郵便課長と共に來
靑當局と事務打合の上昨日直行列車にて引返し
水害地に出張したり
◎大坂函舘新潟を始め各線の通信は殆んと平常
に復したりと云ふ

●各地水害救濟策

 當局者の語る處によれば各
地の水害は電報に依りて概畧を知りたるも未だ
實地視察を爲さヾれば其被害の程度を知ること
能はざるが故政府より土木復舊工費として幾千
の金額を支出して可なるや今日明言すること能
はず假令其被害大にして第二豫備金を支出して
猶不足ありとするも臨時議會を召集する事萬々
之あらざるべし政府と民間と所説を異にすると
も政府は國庫の剰餘金を支出し事後承諾を求む
るより外なかるべしと云へり

●水害國庫補助問題

 水害基金法案及水害補助
法案は已に其筋に於て編製濟となりて土木會議
に附せられしも多少論議の爲めに第九議會には
提出せられさりしが右両法の規定如何は世に公
にするに由なしと雖も若し今回の水害に際して
兩法の實施あらんには悉く完全に補助せらるヽ
事を得へきも今や唯舊來の慣行によりて補助を
行ふの外詮術なき次第なるか從來水害に關する
復舊工事に就ては町村及縣之れを負擔するを以
て當然とし若し町村之れか負擔に堪さるに於て
縣費之を補助し縣費堪ざるに於て始めて國庫之
を補助する者にして而して府縣の負擔力は地租
に於て府縣制施行地は十分の四未施行地は十分
の三戸數割は一戸一圓と云ふが如き一定の標準
ありて復舊工事土木費にして非常の巨額に達し
其負擔力に堪へずとの認定あるときは府縣知事
は府縣會の決議を經て内務省に請願し來る次第
なり去れば今回の岐阜三重岩手其他數縣に亘れ
る復舊土木費も素より調査を經ざれば果して幾
何を要すべきやも定まらざれど其國庫補助に及
ぼす影響に至ては各縣負擔力の多寡に關するも
のあり然れとも富山縣の如き本年再度の出水な
りと云ひ岐阜縣又廿四年の出水あり縣負擔力の
餘裕なき察するに足るものありと思はるヽのみ
ならす今回の水害は範圍頗る大なれは國庫補助
の金額到底三十萬圓(第二豫備金の殘額)のみに
止るへからす經驗家の談に依れは木曾川の如き
大堤防にては一回の修繕費は少くとも七八千圓
を要すへしと云へば土木復舊は存外の費用を要
するものたるや明なり復舊費已に此の如く巨額
の補助を要するものとせは第二豫備金は到底其
餘裕ある可らす又々政海の一問題なるべしと頻
りに憂慮する者なきに非されと調査の上復舊工
事の急施を要するもの丈は一時豫備金より支出
し置くも差支あるまじく又之に對しては二十餘
万圓にて随分餘裕ある事と思はる通常の補助に
至ては調査の順序あるものにて第一被害の状况
第二町村の負擔調査第三水利組合團体の調査第
四縣參事會の調査第五縣會の議決等を經て知事
に具申したる後内務省は更に技師を派遣して知
事請願の適否を査定する譯なれは此間少くとも
二三ヶ月の日子を要するものあるべし即ち此調
査の結了する事十月頃に有りとせは通常第十議
會に向て補助費の協議を求むるに綽々たる餘裕
あるべし要するに今回の水害に就き果して幾何
の補助を要すべきや目下未定の一問題なれど剰
餘金の支出を云々するが如き憂ひなく到底第十
議會の一問題となるべしと某御味方代議士は語
れりとか、是れ板伯の内務省が臨時議會説に反
對する口實なるべく災民をば見殺にして構はぬ
考と見ゆ

●造林と洪水の關係

 森林增殖の如何は直に旱
魃と洪水に關係を及ぼし從つて濫伐の弊害は啻
に一町一村の休戚に止まらずして國土保安の上
に尠からざる影響を與ふるは固より論を俟たず
而して今回各地洪水の原因は職として一時の天
災に由るべしと雖も亦森林濫伐の餘弊延て茲に
到りたるやも計られず現今の林制は其大林區署
の森林収入を以て支出を償ひ得る程度に成り居
れば動もすれば収入と支出金比較の關係上より
濫伐の弊を生ぜんとの疑問起れりと小林區署の
一ヶ年収支豫算なるものは殖樹案と斫伐案とを
造り理學上濫伐の弊を防ぐの方法を採り居るも
如何せん民間一部の造林家は収入を速かならし
めんとの結果より斫伐期の樹齢(假令へば楠は
百年松は八十年杉は四十年雜木は二十五年と云
ふが如し)を俟たずして伐採する故自然學理に
戻り其れが爲め國土保安の上に尠なからざる影
響を及ぼす事あり而して此等は畢竟民間造林家
の不注意なりやと云ふに决して然らざるものあ
り即ち我國森林法は未だ十分の制度完備せず從
つて歐州各國の如く民林に對する保護の方法到
らざる處あると尚一つは明治維新後廢藩置縣の
際に無數の士族に授産の爲め一時多くの官林を
引渡したる事あり而して此士族授産林は瞬く中
に伐採せられ其余弊今日に及べるもの數ふるに
遑あらず而して以上二個の原因は今回の洪水に
直接の關係なしと雖も又間接に不利益を與へた
るやも計り難し故に今日以後の造林に就ては官
民共に大に反省して國土の保安を害する如き事
なからん事は勉めざるべからずと或る森林家は
語れり

●中央備荒儲蓄金の請求

 海嘯被害の爲め中央
備金より支出したるは僅かに三陸を合して四萬
三千圓に過ぎざれば精算の上不足の分は更らに
大藏省に請求する計畫なりと

●久米參事官視察

 三陸海嘯災害支拂監督の爲
同地出張中の久米内務參事官は再び今回巖手縣
の水害に遭遇したれば支拂監督の傍ら水害の實
况をも視察する事となりたりと云ふ

●一等郵便電信局長會議

 去廿六日より開會の
豫定なりし同會議は今回の水害にて善後經理の
爲め出京延引の巳むる得ざる局長あるに依り期
日を延して來る八月三日より開會する事になり
たりと云ふ

●七尾港の將來

 海軍省にては先年來日本海岸
に於ける水雷團に設地の撰定中なりしが今回い
よ々々能州七尾を以て其候補地と指定し又大藏
省にては同港を特別輸出港と爲すの計畫ありて
目下主税官を派して物貨聚散の實况を取調中な
りと而して或る者ハ同港に就き論じて曰く
北陸道中港灣と云ふもの曰く若狭國小濱越前國
敦賀能登國七尾越中國伏木越後國直江津新潟是
なり吾人を以て之を見れば新潟直江津伏木の三
港は以て港灣と稱すべからず否决して港灣にあ
らざるなり唯多少の船舶が由りて以て物貨を積
卸をなすを得るものは佐渡國夷港あるを以ての
み夷港は天然の良港灣にして而も日本海を眞背
にして南に開けるが故に北陸沿岸怒濤天を衝き
海鰐空に舞ふの時尚ほ平波靜穩白眠を貪ぼる
の日たり而して三港は同一距離を以つて此の良
港を包む故に一朝風浪の起るを察すれば三港に
碇泊する船舶は蒼忙碇を抜て夷港に走り風波鎭
まるを待て再ひ寄港す故に十月より翌年春四月
の候に在りて此等三港に貨物の積卸をなすもの
二千噸以上の船舶は大凡一ヶ月餘を費すに非ざ
れば其終了を見ることを得ざる事あり新潟港の
如き信濃川流末の土砂常に灣内を埋め船舶の碇
泊するもの市街を去る二哩の沖に在り直江津は
只だ官線鐵道の終點たるが故に偶々小蒸船の
寄港するありと雖も港形寧ろ沿岸と云ふを適當
とす伏木も亦た射水小矢部二川合流して注入す
るが故に灣内常に土砂を埋め又た海潮の逆流を
防ぐに由なし是れ吾人が以上三港を以て港灣に
非ずと云ふ所以なり敦賀は灣形深く陸地に入り
水尋亦た甚だ深く一見良港の形を備ふ然れども
是れ其外 觀 の美なるに過ぎずして港灣の眞相
を査察すれば蓋し思ひ半に過ぐるものあり此灣
ハ陸地に蝕入すること四里餘にして屈折なく灣
曲なく對岸同距離恰も人爲的港渠の如し而も北
面に向て開けるが故に日本海特有の風浪一回起
れば大海の高浪一時に小溝に向て逆溢し西岸に
激して忽ち怒濤を爲し大船巨舶も其入るや辛ふ
じて得べきや其出づるや到底能はざるに至る况
んや商港としては多くは帆船にして北風少しく
起るの日は其何旬なるも决して揚帆出港するを
得ざるべし世間或は灣内常宮の好碇泊塲なるを
説くものあり然れども常宮の海面たる甚だ狭小
にして小蒸船日本形船等を繋ぐに足ると雖も
一朝開港して大船巨舶の舳艫相啣んで來るに逢
は葢し之を容るヽの餘地なからん假りに一歩を
讓り如此大船巨舶の一時に集合碇泊することな
しとするも常宮の地たる地積限りあり倉庫を建
て市街を形成する僅かに數千の戸口を容るヽに
過がず海岸に沿ふて高山峻陵隆起し到底他日の
大市街大貿易塲となすの餘地なきを奈何せん况
んや其常宮も亦同しく溝混的灣内の一部なるに
於てや現今工事中に係る坂鶴鐵道の一回び舞鶴
港頭に達するの日に敦賀常宮は遂に顧みる者决
してあらざるを信ず小濱は港形甚だ好く水尋亦
た深し唯惜むらくは現模頗る狭小にして到底商
港となすに足らず蓋し港灣防禦、設市餘地、供給
飲料水等一も欠くることなく完備し而も其位置
の適當なるもの北陸道中七尾灣に過ぐるものあ
るを見ざるなり云々