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●海嘯當時各地沿岸海面の潮况

 去月三陸地方
海嘯の當時參謀本部陸地測量部に於て觀測した
る各地沿岸海面の潮候なりとて參謀次長川上中
將は此程各府縣に一小誌を回附したるが今其大
要を摘記すれば左の如し
 明治廿九年六月十五日に於ける海嘯慘状■■
 々打電の報道よく日に新聞紙上に顯はる然り
 と雖も當時其沿岸の海面は如何なる景况に在
 りしかを報道するものなし蓋し當人の眼力容
 易に之を觀察する能はざるなり然るに當地に
 於ては明治廿三年以來日本全國沿岸■■ヶ所
 の驗潮塲を設け海水滿干を觀測し以て中等海
 水面上に於ける眞高の■■を决定し陸地高低
 を確証する爲め英國■■ムソン式の自画驗潮
 儀を備へたれば幸にして今回の海嘯に於ける
 驚瀾怒濤の如何に激烈なりしかを驗■■得た
 り
 甲(宮城縣陸前國牡鹿郡鮎川村)午前中は■に
 平穩なる海面の景况を示し午後八時二十分に
 至て滿潮の■なるにも拘らず俄然として約二
 十珊米(六寸六分)許の退潮を示し同三十分に
至て突如として襲來する■浪は一米四〇(■
 尺六寸)余の高度に昇り凡そ五分間んして■
 落■爾後四五分毎に■昇一■其■■尖なる鋸
 齒の如く駢列する犬牙の如く九時三十分同五
 十分の二回は殆と等高に達し十一時に於ては
 殆と二米(六尺六寸)許り昇し此の際に於ける
海嘯高低差は二米七〇(八尺九寸)にして激浪
 の形状時を移し日を累ぬるに至て■次■■■
 減すると雖も平常の海面に復するには尚■■
 を要したり
 乙(北海道根室國花咲郡花咲村)午後八時五十
分に於て平素に異なる■の■■俄然として四
 十珊米(約一尺三寸)■を■■■■て約五分間
にして約一米(三尺三寸)許下降し爾後五六回
 の■■を感じ殆と一時間鋸齒形を描画■るの
 際不幸にも機器の一分■浮■を昇降する■■
 は輪■を脱し對錘■庄板に■へられ波状を画
 く鉛筆は滑走して下位を占め■時間不可思議
 なる形状を顯はしたる後一直線を画けり其夜
 海面は防波堤と等高なりし爲め器械塲に至る
 能はず翌十六日午前八時十分を以て器械を整
 備したるに既に海面は幾分の平穩を示し暴風
 の際に於けるか如き凹凸の波状を画くに過き
 さりし
 丙(神奈川縣相模國三浦郡三崎町)六月十五日
 午後八時四十分より平素に異なる所の小波紋
 を描画せり蓋し其波浪の高さは二十珊米(約
 七寸)にして殆と五分間毎に其波動を感じ原
 後漸次に其大さを減少し數時ならすして平状
 の形状に復せり
 以上海上當日に於ける波浪の景况を察するに
 銚子以南には餘威の幾分を感せしのみ甲乙に
 就て時刻を案するに殆と二十分の差異を以て
 激變を現はしたり故に波動の速力を同等なり
 と假定すれは其原因は釜石の東方たる太平洋
 中に在りし者ならん■■■て鮎川驗潮塲の位
 置たるや東に金華山■■■岬の斗■■るあり
 ■に網地島ありて直接に太平洋■激浪に面せ
 す花咲の驗潮塲に於けるも亦北東に面したる
 に灣底にして南方は■■母緩島の駢列するあ
 ■■■■を遮障す此の二事は甲乙兩所■も殆
 んと同一■然るに甲地■■ては■■退潮を感
 し次■■潮の攻撃する所と■る■乙地の花咲
 と少しく其趣を異に■り■に由て之を觀れは
 海嘯の起點は乙地より甲地に稍近きか如し何
 となれは高浪侵入の時間に■■十分差異ある
 のみならす最■退潮を感じ次て激浪高潮■■
 りし差異あれは■■

●慈善■永續の計畫

 去る七、八の■■■鹽町
なる■■■に於て擧行した■海■救助の慈善會
は實に意外の盛况を呈し靑森町民慈心の甚■■
るを證明したる次第なるが事情斯の如くなれば
事變ある毎に會合を催會して慈善の事に從はヾ
其功德廣大なるべしとの事より發起人の間に此
機に乘じて慈善會を永續するの議あり一昨夜靑
森病院樓上に於て發起人の間に催ふされたる報
告に於て愈々永續の事に一决し這回の發起人等
を始じめ■し更に賛成會員を募集する事となり
たるが然る上は目前に擧行すべき慈善事業の第
一着として今度東京にて新たに出來上りたる大
海嘯實况の幻燈繪画を購入し更に幻燈會を催ふ
せざる可らずとの事より直ちに數十枚を注文せ
りと云ふ靑森に永續の慈善會の起るは靑森の一
大美擧なり余輩は靑森の人民男女相共に協力し
て此會の盛大に至らん事を切望するなり

●萬歳座主の義侠

 前報の如く先日鹽町なる萬
歳座に於て擧行したる嘯害救助慈善音樂幻燈會
は二回とも非常の盛况を呈し入塲料と義捐金を
併せし収入金百拾圓に上ぼりたる事なるが此會
に■■此所に特書を禁す可らざる義擧こそあれ
是れ他にあらず同座主曾根忠兵衞氏の義侠心な
り同氏は慈善會に對して燈油實費の外は一切無
料にて二日間會塲を貸し與へたるのみならず二
日間の盛况を見るや發起人に對し第三回を續行
せんことを慫慂し若し収入充分ならさるに於て
は實費をも申受けざるべき旨を申出でられたり
と云へり目下中村座には芝居の興行あり他に好
會塲もなき折柄曾根氏をして單純なる營利的小
屋主ならしめば充分の賃料を収むるを得べきに
喜んで無料貸與を諾するのみばらず更に進んで
其繼續を促す義侠の程こそ殊勝なれ

●三戸郡五戸村通信(九日發)

●昨日の天候

 午後一時半觀測温度七十度最低
温度六十二度九北西の疾風午前小雨午後晴れ

●微震あり

 昨日午前十時五十一分十秒に

  本 社 取 扱 大 海 嘯
  罹 災 救 助 義 金
一金貳圓六拾七錢五厘   西津輕郡鰺ヶ澤
    舞戸組合■ 高等小學校職員生徒一同
一金貳圓六拾八錢 仝郡鰺ヶ澤 西海尋常小學校
一金五拾錢  賴森濱町     菱沼 常吉
一金壹圓  新潟縣越後國南蒲原郡 加茂町
            字■町 本間榮太郎
一金壹圓 同縣同國三■町字常盤町塩谷 新助
一金貳圓 同國同縣一ノ木戸村字田島 馬塲 佐吉
一金拾錢   賴森大町     佐々木五郎
 計金九圓九拾五錢五厘
通計金四百四拾六圓九拾五錢貳厘
 内 ■百八拾八圓三拾五錢貳厘  本 縣
   貳拾八圓四拾錢       宮城縣
   三拾圓貳拾錢        岩手縣