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  唯 た 急 に す べ し

縣下嘯害善後の計は其實行一日も早からん事を
欲するの理由は前々號の本欄に於て畧陳したり
しが卑見に就ては當局者も亦同感なるべきを信
ずるなり今般佐和知事の上京も盖し此實行を急
にせんが爲めにはあらざる乎余輩は知縣の决斷
と斡旋に依つて善後設計の急施せられん事を切
望に堪へさるなり乃ち前論正面的の理由と相對
して此所に反面的の理由を略説せんと欲す盖し
善後設計を急施する利益は略ぼ前論に依つて見
るべしと雖も之を急施せざるの損害に就ては甚
だ完からさるを感すればなり
想ふに水産業は本縣産業の將來に於て尤も囑望
すべき所にして近年に至り官民一致協同して其
改良と發達を謀りたるの効、該業の進歩特に著
るしき者あり皆人をして大に前途の好望を謳歌
せしめたりし而して縣下の水産業上改良と發達
の範圍尤も廣大にして無比の水産區と稱すべき
は太平洋岸一帶の地たりしは云ふまでもなき所
なり夫れ然り然るに不幸にして今回の海嘯は洋
岸一帶の中比較的繁盛の地を侵害して特に慘状
を極め瞬時に數十万圓の〆粕を奪去すると同時
に漁舟、網罟、釜より以下一切の漁具大半を亡
失せしめたり、夫れ此の數年間漸くにして改良
發達し來れる漁業が圖らずも斯る大災害を被り
しもの本縣水産業の爲め長大息に堪へざるのみ
ならず若し善後策にして其宜しきを得ずんば斯
業此所に一大頓挫を得て多數の歳月を經過する
にあらざれば舊態に復し難きの虞あり、此の故
に善後策の考究は獨り漁民其物の爲めのみに止
まらず一縣經濟の爲めにも深く省察を要する所
なり余輩の見る所にては善後の計にして若し緩
慢に亘りて適當の時機を失するに於ては被害漁
民にして北海道其他に移住を企つるに至るもの
少なからざるべしと思惟せらるヽ者あり斯の如
くにして若し漁民の數を減ずるに至れば水産業
の衰退極まるべきは當然の結果にして而して事
一旦其極に至れは特別の僥運あらざる以上回復
は人口の增加に依らさる可らずして數十百年の
歳月を待たざる可らず
往古外敵其他の禍害を受けたる地の跡に徴する
も其單に財産に對する損害即ち家屋倉庫を壞ぶ
られ財寳を奪はれたるが如きは多年ならずして
舊■に復するに反し人畜の減少を受けたる塲合
に於ては容易に復舊する能はさるは特に著明な
る事實に屬せり此の故に被害後尤も慮るべきは
民人の散逸に在り苟くも被害地の舊態を回復せ
んと欲せは先つ第一に民人の散逸を防くの道を
講せざる可らず
而して■■を防くの法は速かに生業を授けて其
恒心を■ふるの外あら■■■余輩が■民に對し
ては一日も早く生業に就くの道を授く■し■■
論する所以にして想ふに■■なる善後策は此の
外になかるべ■
若し之を施す事急ならず單に衣食等を給與しつ
ヽ冬■に至らん乎被害遺■の強壯にして充分出
稼の体力ある者に多年愛顧を受けたる北海道雇
主の來縣を■とし■■移住の計を爲さんとする
の恐甚だ大なり果して然るに於ては太平洋岸一
帶の水産業は痛く衰微して又容易に復舊の期な
かるべく縣下經濟上多年に亘り莫大の損失を脱
かれざらんとす
此の故に余輩は前論既に速べたるが如く當局者
に於て此の際非常の果斷に就き難民の爲めに神
速に諸般の漁具を整備し時を失はざるに先つて
恒業に就かしめて以て永住の恒心を决せしめ必
ず民人の散逸を防遇せん事を切望するなり
被害地方は萬事共に不便を極む頗ぶる細心せず
んば諸般の準備或は手後れとなるの恐多し夫れ
然り若し不幸にして時を失はん乎臍をむとも
又及ふへきにあらず是れ余輩が唯だ急にすべし
と急呼する所以なり

    雜    報