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地変も招くチリ地震

恐怖におののく南米一帯
日本本土の太平洋岸一帯に大きな津波の被害を引起こした南米チリの大地震は、二十五日になっても衰えず、さらに超ド級の“地変”
とも呼ぶべきゆれ方を示し、その規模は地震測定装置の実用化(一八七七年)以来最大のものといわれる。二十五日のサンチアゴ、ブ
エノスアイレス発UPI、AFP通信によると、これまでチリの太平洋岸を襲っていた地震は、二十五日にはアンデス山脈を越えて大
西洋岸のアルゼンチンにも飛び、南米の南部一帯に地震が広がり、その範囲はフランス本土と同じくらいといわれている。さらにこの
地震がもとで休火山が噴火をはじめ、新火山が生まれるなど南米一帯は地震、津波、噴火の三つの恐怖におののいている。

休火山まで噴火 新山も出現

冬なのに20度の高温
同日のチリ政府発表では死者、行
方不明は合計五千人を越えたと推
定されるが、被害地の状況が明ら
かになるにつれさらに大きくなる
とみられている。二十五日に噴火
を始めたのはアンデス山脈中のプ
エフエ、カサブランカ、コーリな
どの七山で、二、三千メートルの高さだ
が、いずれも過去四十年も煙を吹
いたことがない休火山であった。
 二十五日朝の地震と同時にプエ
 フエ山が噴火、ついで他の山も
 連鎖的に噴火をはじめ、猛然と
 煙と灰を吹きあげ溶岩を噴出し
 ている。灰は七千メートル上空にま
 で達し、チリやアルゼンチンの
 各都市、とくに同国南端に近い
 大西洋岸のホモドロ・リバダビ
 ア市あたりまで降りそそぎ、道
 路や屋根は灰の厚い層におお
 われている。
最も猛烈な噴火を始めたのは、ブ
エノスアイレスの南千八百キロの地
点にあるサン・マルチン・デ・ロ
ス・アンデス付近の火山で、同地
域一帯には一日中振動が続き、非
常警戒体制がしかれている。また
サン・カルロス・デ・パリロッチ
ェ地域では降灰のため温度が上昇
し、二十五日には摂氏二十度(南
半球は現在冬で大体五度くら
い)にも上昇、住民の不安を一層
深めている。
休火山の活動だけでなく、これま
で平地だったところにぽっかり火
山ができたところもある。
 チリ中部のリニフエ湖岸に二十
 五日二つの火山が生まれ、猛烈
 に活動、一つはすでに百メートルもの
 高さになっている。このため周
 囲四十キロの地面がもち上がり、
 道路はこわれ、付近の六百人の
 住民は孤立状態に陥り、軍隊が
 救出に急行している。
また流失した溶岩が廃墟に流れ込
んでいると報道されており、かな
りの被害が出ている模様である。

学者派遣し研究を

東大地質学教室小林貞一教授の話
 チリの地質はアンデス山脈の続
 きで、日本とよく似た新しいし
 ゅう曲山脈だ。チリの震源地あ
 たりも何回も造山運動が行われ
 ているから、きっと複雑な地質
 構造だろう。日本から専門学者
 を派遣し調査する必要がある。

学問的に興味深い

東京大学地震研究所表俊一郎助教
授の話 チリ付近には環太平洋地
 震帯が海岸沿いに走っており、
 これまでも深発地震の多かった
 ところだ。しかしこんどのよう
 に大きいのははじめてのよう
 だ。また休火山が生きかえった
 というが、例のないことだ。振
 動で表面付近のガスが噴き出す
 ようなことは日本にもあった
 が、地中の溶岩が噴きだしたと
 すると、全く珍しく学問的にも
 興味深い。地震の中心が大きく
 移動したというがこれも初耳
 だ。海岸を走っている地震帯が
 深部で大陸の下に入りこんでい
 るためではないか。

測定器の完成以来 83年間で最大地震

こんどのチリ地震が最初に起こっ
たのは五月二十一日午後六時五分
(日本時間二十二日午前七時五
分)で、サンチアゴの南五百キロの
コンセプシオン市が被害の中心。
翌二十二日の朝さらに大きな地震
が起こり、この地震が日本に大津
波をもたらした。
地震規模は測定器ができて以来八
十三年間の最大のものといわれ、
六千二百キロ離れたカリブ海のプエ
ルチ・リコにあるサン・ファン測
候所の地震計の針が吹っ飛んでし
まったほか、北欧やモスクワなど
でおおきくキャッチされている。
 地震規模はおよそ八・五−八・
 九が多く、そのうちには一四と
 か九・二という“地変”とも呼ぶ
 べき最大震が記録されている。
 エネルギーの大きさからいえば
 関東大震災より二ケタも大きい
 といえる。

地震帯、アンデス越える

この日の記録的な地震に引き続き、
二十四日には十九回、二十五日に
も十数回の余震があり、しかも太
平洋岸中央部から次第に南部に広
がり、アンデス山脈の両側約五十
五万平方キロ以上(フランス本土よ
り少し広い)の広い地域が地震地
帯となってしまっている。
 【注】地震規模のあらわし方に
 はいろいろあるが、エネルギー
 で示すのがインターナショナル
 ・マグニチュード、またはリヒ
 ター・マグニチュードと呼ばれ
 る。そのさい過去の経験から最
 大を八・五としていた。日本で
 起こった第一級の三陸沖地震も
 八・五程度だった。

やっと電気ともる 津波禍 志津川町 まだ遠い復興の道

【志津川町で阿部特派員】一瞬の
うちに町の中心部が津波のため壊
滅した宮城県志津川町は、二十五
日から自衛隊の救援部隊とともに
力強い復興への意欲をみせている
が、被害はさらにふえ死者三十二
人、行方不明五人、家屋流失、破
損千五百三十余戸、被害総額四十
三億四千万円に上り、町民の表情
は暗い。それでも自衛隊員の救援
で正午過ぎ中央部に車が通れるほ
どの道が作られ、救援物資を満載
した大型ヘリコプターも飛来し、
いくらか元気づいたようだ。
 魔の奔流だった八幡川の水はす
 っかりもとの清水に戻り、川の
 なかでは女の人々が衣類や戸障
 子の水洗い、男は家の泥払いを
 始めた。一番困るのは畳の上に
 二十センチ近くもたまった土砂で、
 いくら取り除いてもつきないほ
 ど。嘆いているのは商店関係。
 商品はすっかり水に浸り、売り
 ものにはならない。
午後になってやっと一部に水道が
出始めたが、変質していて当分は
飲めそうにもない。しかし待ちこ
がれていた電気が夕刻から復旧
し、暗黒の町だっただけに町民の
喜びはまたひとしおだ。だが被災
者を利用する目先の早い商人がか
なり入り込み、一升百十円前後だ
ったヤミ米が百二十円にハネ上っ
た。
 一方、自衛隊と保険所はクレゾ
 ールや石灰をまきながら防疫に
 当たっているが、人手が足りず
 すでに被災者のなかから数人の
 下痢患者も出ている。

国鉄東北・三線不通

【仙台】国鉄東北支社管内の津波
による不通区間は二十五日午後五
時現在、気仙沼線の本吉−気仙沼
間、大船渡線の陸前高田−盛岡
間、山田線の磯鶏−津軽石間、津
軽石−豊間木間の四区間だけ。気
仙沼線は二十六日、大船渡線は同
月末まで復旧の見込みがない。

被災 三万六千世帯 警視庁の調べ

 二十五日午後四時半現在、警察
 庁調べの被害はつぎのとおり。
▽死者九五▽行方不明八五▽負傷
八五四▽家屋全半壊四、〇〇三▽
同流失一、二一六▽堤防決壊八一
▽被災世帯三六、三九二▽被災者
数一七二、二七三
各地の被害(26日午前1時現在各県警調べ)
    死者  行方  負傷 家屋半壊 家屋流失 床上浸水 田畑被害 船舶被害
        不明                    (ヘクタール)
計   113   31   855  4127   1269   23667  14156   2935
北海道 10    5   15   335    248    2456   4561    192
青森   1    3    3   144     9    2471    81    611
岩手  53    9   206  1297    690    3560   405    634
宮城  41    12   625  2095    307    8088   7305   1258
福島   4    1                      13     7
千葉   1        2    9          2   173    82
その他  3    1    4   247    15    7092   1628    201

「チリ地震津波」と命名

和達気象庁長
官は二十五日、こんどの津波
を「チリ地震津波」と命名す
ることに決めた。

個人にも復旧融資 津波対策

補助金 漁船建造費の八割
チリ地震津波の災害金融につき政
府、民間金融期間はそれぞれつぎ
のような応急対策をとっている。
個人 ①預金 預金者が印
鑑、通帳を流失した場
合でも、被災証明などの提出で
引き出しうる措置をとり、また定期
預金も期限前に払い戻す。
②生命保険 保険金の支払いは契
約に災害賠償支払い条項が含まれ
ておれば、契約金の倍額を支払
う。貸付は契約者の保険料の責
任準備金の範囲で貸出す。
業者 ①手形交換 不渡手形
が発生しないよう、各
銀行協会で交換延期を検討中。
②商工中金 取引先の貸金償●の
延長などを検討している。
③農林漁業金融公庫 天災融資法
が発動され次第、自動的に主務大
臣指定災害復旧資金(本年度二億
四千万円)を使用して復旧融資を
行う。これは個人にも貸付ける。
農林関係の被害対策 一、小
型漁船
の建造補助金として漁業協同組合
単位に、災害を受けた船三隻に対
し一隻の割合で補助金を出す。補
助金の割合は建造資金の約八割。
一、天災融資法により、漁具につ
いては購入資金一千万円を融資す
る。田畑の一般産業営農資金につ
いてもこれに準じた融資を行う。

日赤で救援金募集

日赤は二十五日、救援金品募集を
各支部長に指示した。義捐金は六
月三十日まで、品物は六月二十日
まで支部窓口で受付ける。

共同募金も

厚生省は災
害地救援のため共同募金活動を行
うことになった。

国鉄、運賃を減免

国鉄は被災者に送られる生活必需
品や応急建築材料に対し、二十四
日から八月二十三日まで無賃また
は五割引で輸送する。

伝染病予防地域に指定

厚生省は二
十五日、災
害救助法の適用された三十三市町
村を伝染病予防法指定地域にする
ことをきめた。