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死者・不明一七五に 「チリ津波」の被害増大

二十四日未明、本土の太平洋円が一帯から沖縄を襲った「チリ津波」による被害は、各地の状況がはっきりするにつれ、ますます大き
くなり、死者・行方不明は、百七十五人に達している。この津波は南米チリ沖で発生した大地震が原因となって、日本列島付近で“収
れん現象”を起こして急に波が高くなったもので、規模の大きさでは観測史上最大のものだった。被害は宮城、岩手、青森、北海道な
ど三陸海岸でいちじるしく、東海道、南街道と南へいくにつれて少なくなっている。
●陸海岸としては明治二十九年
(死者二万七千百二十二人)昭和
八年(同二千九百八十六人)の大
津波につぐもので、宮城県志津川
町では一瞬にして二十五人が波に
さらわれたのをはじめ、岩手、宮
城などでも多数の死者が出てい
る。
このため各県では被災地に被害救
助法を発動、自衛隊、日赤などと
協力、救護に全力をあげている。
なお九州、瀬戸内地方は二十四日
午後九時四十五分までに津波警報
を解除したが、北海道、三陸、関
東などの一部では二十四日夜遅く
まで一−二メートル前後の津波が引続き
来襲しているので、太平洋沿岸地
域は二十五日午前三時現在まだ津
波警報を発令中である。

復旧へつなぎ融資 大蔵省の方針

大蔵省では二十四日午後、太平洋
沿岸の津波被害の対策について検
討した結果、取りあえず資金運用
部からの災害つなぎ融資によって
応急復旧工事と災害救助の促進を
図る方針を決め、同日夕各管区の
財務局長にこの旨を通達した。ま
たすでに二億円のつなぎ融資を申
請している東北財務局に対して
は、これを認め、他の財務局から
も申請があり次第認可する方針で
ある。

対策本部の設置 きょう再び検討

政府は二十四日午後三時から緊急
関係次官会議を官房長官公邸で開
き、津波の被害状況を検討すると
ともにその対策を練ったが、二十
五日午前十一時から再び会議を開
き、災害対策本部の設置、具体的
災害対策を検討することになっ
た。

災害救助法発動の市町村

 二十四日午後二時までに厚生省
 に報告された災害救助法発動市
 町村はつぎのとおり。
【北海道】浜中村【青森】八戸市
【岩手】大船渡市、陸前高田市、
釜石市、宮古市、大槌町、山田町
【宮城】気仙沼市、志津川町、雄
勝町、女川町【三重】尾鷲市、南
島町、南山町、紀勢町、長島町、南
勢町【和歌山】田辺市、海南市、
白浜町【高知】須崎市

被害、十億円に達す 建設省報告

二十四日午後十一時半までに各道
県庁から建設省防災課へ報告され
た被害総額は九億八千六百七十六
万円にのぼっている。和歌山、徳
島県などから報告がないので、被
害額はふえるもよう。
各地の被害額はつぎのとおり。
△北海道六億八千万円△青森県千
四百六十万円△岩手県二千八百八
十一万円△宮城県一億三千二百万
円△福島県七十万円△千葉県五千
三百六十万円△三重県六千五百万
円△高知県線二百五万円。

大船渡局は交換不能

電電公社が二十四日午後七時まと
めたところによると、市内電話の
不通は石巻市で一千が不通になっ
た。気仙沼、塩釜両市でいずれも
三百が不通、大船渡局は交換不能。
【仙台】東北電通局の調べによる
と東北の津波被災地の通信電話の
不通は合計二九八四回線、二十四
日正午から復旧工事に着手した
が、完全復旧には二、三週間かか
る見込み。

なお16ヵ所不通 国鉄被害

大津波による国鉄の被害は、二十
四日午前函館本線が開通したのに
続いて午後六時すぎまでに根室本
線釧路−東釧路間、八戸線小中野
−陸奥湊間と山田線大槌−吉里吉
里間がそれぞれ開通した。しか
し、同夜十時現在、七線区十六ヵ
所がまだ不通で、不通区間は、バ
ス連絡を行っている。
 車両関係の被害は、青函、盛岡、
 仙台、四国の各管理局で計四百
 二十九両が浸水した。
【不通区間】(カッコ内は開通見
込み)△大船渡線=陸奥高田−脇
ノ沢間、脇ノ沢−小友間、下船渡
−大船渡間、大船渡−盛岡(六月
三十日ごろ)△山田線=豊間根−
津軽石間、津軽石−磯鶏間(六月
十日ごろ)△気仙沼線=松厳−南
気仙沼間、南気仙沼−気仙沼港間
(二十五日中)△石ノ巻線=女川
港(調査中)△塩釜線=塩釜港
(同)△仙台線=本塩釜、東塩
釜、野蒜−陸前小野間、矢本−陸
前赤井間(同)△土讃線=多ノ郷
−須崎間(二十四日中)

国鉄、無賃または五割引輸送

三県向け救済物資
国鉄は青森、岩手、宮城各県下の
津波の被災者に送られる生活必需
品や応急建築材料に対し、二十四
日から八月二十三日まで無賃、ま
たは五割引きで輸送する。ただし
小荷物は配達しない。
沖縄の被害【那覇】琉球
警察本部は二十四日、津波被害を
まとめた、もっともひどかったの
が沖縄本島北部の石川市と久志、
羽地村で、政府では同日食糧や毛
布など応急救援物資を送った。被
害つぎのとおり。(二十四日午後
七時現在)
 死者三、負傷一、家屋全壊一
 七、同半壊七六、床上浸水五八
 四、床下浸水七三六、非住家全
 壊三四、同半壊四、橋流失六、
 道路流失四、船流失七、真喜屋
 小学校全壊一むね、同半壊四む
 ね。

チリの地震まだつづく

【サンチアゴ二十四日発UPI】
チリでは二十四日、またも一連の
地震があり、チリ沖合にあるチロ
エ島の高台が海に向ってくずれ落
ちた。この高台に難を避けていた
住民は海中に放り出された。
サンチアゴから七百五十キロ南の
バルジビア地方では、釈放または
逃走した囚人から住民を保護する
ため、事実上の戒厳令にあたる非
常事態宣言が出された。

比国、豪州にも津波

【マニラ二十四日発AFP】チリ
の地震で生じた津波は二十三日、
フィリピンのルゾン島東海岸を三
度にわたって襲った。この津波は
最高六メートルにも及ぶものがあり、付
近一帯を恐怖のドン底に陥れた。
【シドニー二十四日発AP=共
同】チリの地震から生じた津波は
二十四日早朝、オーストラリア東
海岸を襲った。

本日臨時十二ページ

津波被害特集
第九面 写真グラフ
第十面 第二社会面

余禄

南米チリは日本か
らいえば、ほぼ地球
の真裏に当たる。こ
こで起こった地震
が、一昼夜後には津波となって
日本を襲い、太平洋沿岸を水び
たしにした、死者、行方不明が
百人を越え、船舶や家屋の被害
も大きい、世界は案外せまいな
どと、感心している段ではない
▲明治三十九年にもチリ沖の地
震で、日本に津波が押しよせ
た。前例のないことではない。
こんどもハワイを初め、太平洋
沿岸の国々は、大なり小なり津
波の洗礼を受けた。だが日本の
被害は、おそらくそのうちの上
位を占めるだろう。津波の規模
は、かならずしも震源地からの
距離とは一致しない▲津波とい
えば、昭和八年の三陸津波をす
ぐ思い起こすほど有名だ。これ
は震源地が三陸沖にあったのだ
が、こんどのはそれよりも大規
模だという。対象十四年んい東
大地震研究所が観測を始めてか
ら、最大の記録だそうだ。三陸
沿岸はラッパ形湾が多いので、
津波の被害が大きく、こんども
ひどい目にあった▲“ツナミ”
という日本語は、そのまま世界
中に通用する。日本は津波被害
の代表国となっているのだろ
う。四方を海にかこまれ、しか
も海岸線の出入りが激しいか
ら、これは宿命かもしれない。
だがその割に、これに対する
予報措置は十分ではないようだ。
こんども気象庁の手抜かりが非
難されている▲もっとも津波の
現象は、洋上ではなかなか捕え
られない。波の高さがせいぜい
数メートルなのに、波長は数百キロにも
及ぶから、肉眼ではほとんど平
たんに見える。これが岸に近づ
くと、波長が短くなり、高さが
増してくる、猟師が海上では何
も知らず、帰港して初めて惨害
を知った例もすくなくない▲だ
が地震があってから、津波が海
岸に達するまでにはかなりの時
間がある。科学的観測を怠らな
ければ、刑法を間に合わせるの
は決して不可能ではない。現に
ハワイでは、サイレンで避難を
命じたので、死者は比較的すく
なくすんだという。太平洋のど
こかで大きな地震があったら、
ともかく万全の警戒措置をとる
べきであった。