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海 嘯 義 捐 金  琅  梏

天、海嘯の慘害ヲ三陸の沿海に下すや江湖の慈
善家諸氏は競ふて義金を喜捨し以て無告の難民
救恤に盡力せられたり、我同胞の義氣に富むや
常に如此にして是等は所謂倭魂の美德として最
も賞讃に堪ざる所なり、
而して吾人が最も賞讃に堪ざるは彼金滿家なり
素封家なりと世間に持囃され自らも亦紳士を以
て居る人の三百圓四百圓の大金を投じたるより
も朝夕を計らざる貧民が性來の義侠心に驅られ
て一枚の襤褸を義捐し晩酌を節して數錢を喜捨
したる者と又年俸何千圓の大官鉅吏が數十百圓
を施與したるよりも縣廳郡役所警察署監獄署等
の小吏及び巡査看守押丁の輩が同胞相救の至誠
より出で月俸額の一割(宮城縣廳に隷属する諸
官廳は何れも月俸の一割を義捐せり、即ち七圓
の傭員にして七十錢の割)を惜氣もなく醵出し
て救助費に投じたるにありとす
數萬乃至數十萬の財産を擁する紳士が三五百圓
の大金を醵出すると所謂其日暮しの貧民が僅か
に十錢を義捐すると年俸三四千圓の大官鉅吏が
百十圓を投ずると月俸七八圓の傭吏が七八十錢
を喜捨するとは其金位に於てこそ大小多寡固よ
り言を俟たざるも其赤誠の度合に至りては吾人
は同じく賞讃する乍らも後者は前者に比して何
層倍の感謝を致す事を惜まざるなり、況んや各
自が義捐するに當りて貧民や小吏は却て自ら進
んで喜捨の實意を表したるも豪商紳士大官鉅吏
に至りては有志者の勸誘と世間の義理合とに責
られて餘儀なく義捐(?)したる輩もありと聞く
に於ては吾人は前者の或者(年俸の千分一以内
の義捐を爲したる者ありとは驚くべき次第なら
ずや)に對して大に慊焉せざるもの之なくんば
あらず、
今回の天災に就ては北松前より南長崎に至る迄
仁人義士は言ひ合せたるが如く何れも進みて義
捐金を投じ以て難民を賑恤せり松前の如き長崎
の如きは相距る數百里言はヾ痛痒相感ぜさる赤
の他人なり、然るも猶此の如し、若し三陸の天
地に生活して醉鮑暖衣に日を送り乍ら其日暮し
の貧民と七八圓の小吏に如かざる行動をなす者
あるに於ては吾人は皷を鳴して其無慈悲無廉耻
を責めざるを得ざるなり、知らず吾人がこの言
を作すを聞て赧顔に堪ざる人ありや無しや

    雜    報

●本 縣 大 海 嘯 彙 報

●海嘯瑣談(三) 迂  鐵

欄外   ●救助金支出御裁可        (昨日午後六時東京通信員發)

本日総理大臣臨時代理黑田淸隆氏參内の上第二
豫備金の内より三陸災害救助として四十五萬二
千六百余圓支出の件を奏上し御裁可あらせられ
たり