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   ●英國皇帝の傷悼

今回三陸地方非常海嘯の 災 に罹りたるに附き
我 天皇陛下大に宸襟を惱させられしが早くも
英國皇帝陛下の叡聞に達し我 天皇陛下竝に我
邦臣民と感情を同くし痛悼に堪へざる旨本邦駐
剳サールアルネスト、サトウ公使に訓令して慰
問の詞を寄せられたるに依り宮内大臣は之を奏
上せしに 天皇陛下は英國皇帝陛下が我皇室の
憂慮と國民の艱難とを以て念とせられたる友誼
の懇到なるに對せられ叡感斜ならず思召され同
公使を經て親厚の謝意を英國皇帝陛下に致すべ
き旨御沙汰に附き宮内大臣は直に之れを同公使
に通告せり

   ●板垣内相曠職の誹議

板垣内務大臣か今回の海嘯に付いて世人より曠
職の誹議を受るに至りたる事實を記せば被害確
報の内務省へ到着せしは十六日にして夫より續
々到來する被害の電報は一々大臣の出張先へ急
報し且つ夫々の手續を經て畏き邊りへ奏上せし
に深く宸襟を惱ませられ東園侍從は被害地視察
を命せられ十九日の拂曉を以て主務大臣よりも
先に視察の途に上りたり然るに板垣内相は此空
前の慘害を詳知しながら敢て巡視の途に上るこ
とをなさず自由黨員及随行御用記者等と共に各
所の饗宴に臨み海嘯後八日を經過せし末二十二
日を以て漸く巡視の途に就きたるも而かも急速
に被害地へ至らずして巖手縣知事に打合ありと
云ひ三崎縣治局長と會合の都合ありと稱して一
日に達し得べき所を三日を費すが如きは事實上
决して曠職の責を免るべからず然るに内務省は
之を辨護して曰く當時大臣の巡回中にして其宿
所分明ならざりしを以て海嘯の事を報告する能
はざりし云々と果して然ば内務省員も亦 曠 職
の責を免るべからず是迄の例に依れば大臣の巡
回先等は最も詳密に最も迅速に主務省に打電し
來り時々刻々其居所を知り得べき筈なり況んや
大臣巡 回 の日割は公然半官報を以て發表しあ
るをや縦し大臣の居所分明ならずとするも大臣
の歡迎に狂奔せる地方官に向て打電せば百事を
擲ちて之を傳達するは言を待たざるなり之を要
するに板垣内相が三陸の海嘯を冷眼に看過し去
り已を得ずして巡視の途に上りたるは蔽ふべか
らざる事實なり是れ决して等閑に附すべからず
とて進歩黨及國民協會にては充分に之が調査を
なす事に决したるが或は第十議會の一問題とな
すやも知れずと云ふ者あり因に記す慘害の最も
甚 しき巖手縣知事服部一三氏は被害地へ向け
出 張 中内務大臣の來縣を聞き俄に遠野より引
き返し大臣と共にゆるゆる宮古地方へ出掛けた
るが爲め釜石地方の人民中には知事未だ仙人峠
(遠野釜石の中間にあり)を越さずとて其不親切
を咎め居る者ありと云ふ