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河北新報 昭和8年3月8日 (3) 

惨害予防の為
 の用意
 前の三陸海嘯は明治二十九年のことだから今度の海嘯は三十八年目で反復した訳である。同じ現象が明治以前の歴史上にあったかなかったかに就ては、記録に明記がないが、この現象は遠い昔から不規則な周期を以て繰返されているのかも知れない。少なくとも、五十年も経たない間に、二回反復されているのだから、今後においても同様の反復がないとは限らぬ。こういうことを予想しなければならないというのは、甚だ気持のわるいことではある、けれども、目のあたりに反復の事実を見せられている以上、将来について、反復はないものと否定してかかる訳に行かない。
 往年の海嘯では、三万に近い死者を出したというから、財の損失に至っては測り知るべからざるものがあったろう。今度の被害は之との比較からいうと遥かに軽減されては居るが、しかし、原因を別にする他の場合の被害と比べるなら、被害の深刻性において同日に論じられない。被害の範囲は、他の何物よりも広汎であり、中には全滅に帰した地域もあれば、半滅されたところもある。被害が深刻であるから、復興も従って容易のことではない。今度の破壊を完全に復興するには、二十年も三十年もかかることと思われるが、かくの如き破壊現象の襲来を、繰返して受けねばならず、而して、その度ごとに被る破壊を不可抗力の致すところとして、甘受しなければならないことではたまらない。
 火災とか、水難とか、人間の暴力行為とかいうものならば、これを防ぐ方法があるが、地震、海嘯に至っては、不可抗力だから、その起る事に対して防止の方法は素よりない。けれどもこれが逞しうする破壊現象に対する抵抗の方法或は、被害を軽減する方法に至っては、今日の科学知識の可能の限界を越える問題ではない筈だ。三陸海嘯を以て、繰返す現象と見なさざるを得ない限りは、惨害予防の方法を講究するために、最善をつくすことは当然の要件でなくてはならぬ。
 惨害予防の方法は、地震を予知出来る条件の上にこれを立て得るならば、勿論完全するが、地震の予知は、遺憾ながら今日の学術の進歩程度では、急速に望める問題でないだろう。海嘯において殊に然りで、現象を調査した中央気象台の国富技師も海嘯の予知を以て不可能だと断言しておる。仮に予知という事が、究極可能の問題であるとしても、これは将来の話であって、今日の場合に関せざる事柄だ。だから、今日の事実問題としては、今日の智識の可能の範囲においてなし得る方法を講ずるという事にするより途はない。
 こういえば、予防法の関する範囲がごく制限されてしまうように見えるけれども、実際について精密な調査を遂げるならば、予防のために現有智識を活用すべき余地は、寧ろ極めて多いことになるに違いない。事前において、三陸沿岸には、惨害に対する予防施設というものは殆ど看過されている予防の為の方法として、今日では常識となった智識さえも、ここでは全く看過されていた。若し、今日の科学を最善に活用した予防方法が配慮され、そして、実施されていたとしたならば、惨害を予知することができないでも、惨害を軽減することは必ず出来た筈ではないか。
 大震火災後の東京市においてはこの予防方法が十分に考慮され、復興計画において、之に関する用意が重要な条件となったこと周知の如くであるが、今度の三陸災害地についても、復興計画を立てる場合、同様の用意をこめることは絶対必要条件をなすものであることを閑却してはいけない。条件に該当する用意をなすためには、いきおい復興計画は経費問題において、負担を重くする結果になるかも知れない。しかし、それ故に、予防の用意を閑却するというならば、断じて浅慮である。以上の趣意から、被害地復興については、学者専門家の智識を動員して惨害の跡について、学術的方向から、その他の方面から精密な調査研究をきわめ、それに基いて周到なる予防方法を発見して、然る上に復興計画を立てるでなければならぬ

側圧

義捐金
仙台市民諸君よ!諸君等は三陸地方の震災大津浪によって貴重なる命と財を失い又重傷に苦しんでいる人々をかわいそうだとは思いませんか。一家を失い又一家の働き手を失った人々のことを考えるとき諸君はそれ等の人々をかわいそうだとは思いませんか。若し自分等にこのような災難がふりかかって来たときのことを考えて御覧なさい。
それを考えるとき、市民諸君よ、ふるって、三陸沿岸の罹災者に義捐金を出し会わうではありませんか。諸君等に苦しむだにつかってしまう金があるなら、それを三陸沿岸地方の罹災者のためにささげた方がよいと思います。
市民諸君よ、ふるって義捐金を出そうではありませんか。熱ある義捐金を!むだな費用をはぶいて罹災君のためにささげることが、いや自分の必要な金をさいてもささげるのが隣人に対するわれわれの道徳的な義務ではないでしょうか。

又火災保険会社の諸君に告ぐ!

罹災民に対して保険金をはらわないというのは法律を楯に私は遺憾にたえない。約款もさることながら、保険会社そものもの本質その社会性道徳性を積極的に発動せしめて、こういう時に保険金を支払ってこそ真に意義ある事と思うのである市民諸君よ!
くりかえしていうようであるが、どうか多くの諸君が義捐金を出し合うことを小生心から希うてやまないのである。(学院生)

まごころの慰問

妹が飢える場合ありとしたら、自分の食べ物を半分割いて妹の危機を救うのが人情の自然ですが、この関係は骨肉の間だけに局限さるべきものではありません、同じ人間が隣人の間に流れるところ、社会の美しい姿が健全に保たれると思います三陸沿岸の不幸な罹災者の方々に対してこのこころを以て接したいものです。
私達は、若しそういうことが許されるなら、生活必需品を自動車に満載して現場にかけつけ、私達の手で■えた温かいご飯を以て不幸な方々を慰めたくてなりません、私達生徒のために、こうした準備を興えて貰える方法はないものでしょうか
私達は不幸な方々を慰める金品を持ちませんが、いくらなり幸福にして上げたいとの真情を持ちます、酸鼻すべき惨禍をまのあたりに見て、じっとしては居られせまん(一女学生)

仙台会議所か  ら委員上京   実情団に救援    を懇請

仙台商工会議所では今般の三陸災害に対し心からなる同情を表し青森、盛岡両会議所とも連絡の上実情報告委員会を近く上京せしめ日本商工会議所に報告全国の実業団に救援を懇請することになった