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復興は 蠣の養殖から  種蠣配給の大量申込みに   目を廻す渡波水試

三陸海嘯災害地方の復興に最も有望であるカキ生産増殖をしたいというので災害地方の関係当業者より県渡波水産試験場に対し続々種蠣配給方を申込んで来ており、
 桃生郡十五浜村雄勝よりは従来垂下式■八台位で探取してたが本年は是非十倍の八十台を増殖したいとあり、この外気仙沼沿海岸舞根、梶浦、波板、鶴浦等の各海岸地方も続々増殖計画を立て復興はカキからという意気込を示してるが
実の所申込まれた水産試験場では本年は米穀輸出のカキ種が注文激増によって大不足を来たしたので松島、万石浦等の残った種カキを取纏め、出来るだけ要求に応じたいとのことである。

手っ取り早い 生産対策

【別項】震災地方からのカキ種註文激増につきカキ養殖部の矢野技手は曰く
「災害地復興にはカキ増殖は手っ取り早い生産対策である、老幼男女が投下するばかりに■縄をするにいいので働き盛りの男子はただ投下しさえせばいいのだ冊■込み分には間に合うよう配分したいと苦心している」云々

恐ろしい三陸津浪  三つの型種と其破壊力   東北帝大助教授理学博士 林氏の研究(一)

釜石水産試験場では、未曾有の大震災の被害を受けその恐ろしさに泣きながらも正確なる記録、調査のなき為、只徒らに自然の暴威にしいたげられて居た三陸沿岸地方民に、将来津波に対する正確なる知識と予防法とを授くべく、海洋学の権威東北帝大林博士に依頼して三旬に亘り、宮城県鮎川港から青森県鮫間を早池峰丸に便乗してつぶさに調査中の所、此の程漸く完成発表されたが、之は津波の特徴の種々、即ち「廻し津波」「引き津波」「潮吹き津波」と海岸に依って異にする、津波の型を分類し、波浪の高さ、区域等を詳細に研究将来津波の予防に重大なるヒントを与えて居る貴重なものであるが、此所に特に釜石水試小安正造氏に請いその全文を数日に亘って掲載し災害におののく三陸、数十万の読者に捧げる。
【1】三陸津浪襲来の状況は三陸沿岸の特異的地形に関係あり。
 三陸津浪被害地の沿岸について著者が曽て踏破調査した材料によると、該地方を構成する地盤岩層の地質時代は大体古生代と中生代である。而して所々中生代斑入による火成岩が露出している。試みにその試料(理化学研究所■■第十二章、第一■188頁)を表出すれば次の如くである。
 探集場所  岩石種類
 鮫(唐島) ■岩   中生代迸入に
 (青森)       よる火成岩
 鮫(弓は  同    同
 じ)(同)      
 鮫(小湊大 同    同
 島)(同)      
 田 老   石英斑岩 同
 (岩手)    
 三貫島   粘板岩、 古生代
 (同)   石英斑岩
 釜石(同) 粘板岩  同
 唐丹(同) 同    同
 広田(同) 花崗岩  中生代迸入に
            よる火成岩
 気仙沼   粘板岩  中生代
 (宮城)     
 船越(同) 同    同
 女川(同) 砂岩   同
 江ノ島   粘板岩  同
 (同)     
 渡波(同) 同    同
 荻ノ浜   同    同
 (同)    
 鮎川(同) 閃緑岩  火成岩
 即ち青森県三戸郡鮫港の鼻を廻って太平洋に出た地点より久慈に至る間については特徴はあるが大抵砂浜である。この久慈より以南牡鹿半島並に金華山に至る地域は主として山岳、丘陵が急峻な絶壁を作って海に臨んだ砂浜のない海岸であることが特徴である。この絶壁に向って太平洋の波が日夜その攻撃力を発揮している。この波を防禦している絶壁を構成している岩石は大体上に表出した様な種類であって、大体北殊に岩手県沿岸の岩石が硬くて南程軟く、気仙沼、女川地方においては殊に軟い様である。論者は先ずこの岩石の硬さという点に注意を置いて貰いたい。
 一地方の岩石は一種であるとは限らない。たとえば釜石湾の絶壁を構成している岩石は大体次の様であるが、主として粘板岩より成立っているといってよい。
   釜石湾を囲繞する岩石
 岩石の種類  地質年代
 硬 砂 岩  古生代
 ■   岩  中生代迸入
        による火成岩      
 粘 板 岩  古生代
 珪   岩  同
 変質粘板岩  同
 千 枚 岩  同
 花 崗 岩  中生代迸入に
        による火成岩
 さてこの硬い岩石の絶壁からなる海岸の地形が又東北地方特有で非常に屈曲が多いのである。その重なる湾を挙げると、北より八戸(青森県久慈、宮古、山田、船越大槌、両石、釜石、唐丹、吉浜、越喜来、綾里、大船渡、広田(以上岩手県)気仙沼、伊里前、志津川、渡波、雄勝、女川、鮫ノ浦、(以上宮城県)の順序であって、先に申し上げた岩石の硬さということを考えに入れると、岩手県の岩石の硬い地方程水深が大きいのである。即ち前表によって、湾の深さと地質構造を考えると、中生代地質の地方の湾の深さは古生代地質の地方の湾の深さより浅いのである。
 又北の方八戸附近から下北半島尻■岬までの地は殆ど湾のない砂浜の接続した海岸であって、その地質は主として新しい第三紀並に第四紀の地層に属して、下北半島の中央部には太平洋岸へ火成岩が噴出せられている。この海岸地域の海も古生代の岩石より成立している海岸地域の海より浅い。これを他の言葉で言い表わすと岩手県沿岸の海岸の海■は青森県並に宮城県沿岸の海■より非常に深いということになる。而も岩手県下における津浪による災害は最も激甚で、宮城県下における該災害の比ではない。なお宮城県下における津浪の災害は青森県下における津浪の災害より大きい。即ち津浪による被害程度は岩手県、宮城県、青森県の順序でよく当該地方の岩石の新古地質時代による硬軟と、当該地方沿岸における海湾の水深にも関係があって、一概に震源地よりの遠近によって軽く片づける訳には行かない。
 今自ら岩手県水産試験場の早池峰丸に乗って視察研究した結果と他人の視察談より考察すれば津浪災害の様式は明かに大別して二つに区別することが出来る。岩手県下下広出■より久慈湾に至る地域に分布せられた津浪災害の一様式と宮城県下気仙沼湾以南の地域並に岩手県久慈以北及びこれに続いた青森県下尻屋岬に至る地域に分布せられた津浪災害の一様式とは明かな相異がある。この二つの津浪襲来の様式をその分布地域の地殻を構成する地層の新古による時は第一の様式は古生代、岩手県地層の地域に起ったもので、第二の様式は、中生代、宮城県並に第三紀第四紀(青森県)地層の地域に起ったものと言える。然るに宮城県気仙沼湾より牡鹿半島の突端金華山に至る地域の海湾は、青森県八戸より下北半島の突端尻屋岬に至る地域沿岸の海より深いのでその津浪襲来の様式は後者の様式より多少複雑である。この原因について陸地沿岸海湾の水深を考慮に入れると或は地殻運動に関係があるのではないかという疑問が起きて来る。これについて当大学地質学教室において矢部長克博士指導の下に研究せられるつtある地殻運動の方向について教を乞いしに気仙沼以南金華山の地域並に久慈以北、下北半島の地域において最近地質時代に近くの隆起があり、この中間久慈より広田に至る地殻は沈下の■■を■っている由である。これを水路部の海図によって調査するに地殻沈下の地域における各■は非常に水深が大きいのであって、地殻隆起の傾向ある気仙沼湾以南金華山の地域においては各湾が非常に浅いのが特徴である。久慈以北の地殻が隆起の傾向を取る地域は該して砂浜が多い。
 本編において三陸津浪襲来の特異性を述べたいと思うのは地殻沈下の傾向ある地域即ち広田湾を起点として北へ大船渡、越喜来、吉浜、唐丹、釜石、両石、大槌、船越、山田、宮古、田老の各湾における波の動向並にその破壊力である。地方的に考えれば岩手県の津浪による惨害が最も甚だしいのはこの特徴ある津浪の襲来に基くものであることを特記したい。
 この津浪を他の津浪と区別するために津浪襲来の様式に依って三つの型種に分ちたいのである。
 (1)廻し津浪(本郷型)
   被害激烈(一村全滅の例あり)
 (2)引き津浪(気仙沼型)
   被害僅少
 (3)潮吹き津波(綾里湾)
   被害甚大