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チリ大津波で 全滅状態の三陸沿岸漁業  その実情と救済策

チリ大津波は、東北地方の太平洋沿岸に大きな被害を与えました。青森、岩手、宮城、福島四県が最もひどかったようですが、各県災
害対策本部の推定した被害額は、二百五億円にものぼっています。この中で打撃の大きかったのはノリ、カキを中心にする浅海養殖と
底引き、はえなわなど零細な沿岸漁民でした。チリ津波の復旧対策はそのまま沿岸漁民の救済策といっても過言ではないでしょう。そ
こで関係官庁や漁業団体はこぞって「救済対策の特別立法措置と、それに基づいた水産施設再建の高率国庫補助」を要求しています。
この際、東北の漁民は「どうしたら立ち上がれるのか」を真剣に考えてみましょう。

被害61億円に上る  関係官庁漁業団体 特別立法措置を要求 ひどいノリ、カキ 被害の実情

各県の災害対策
本部が推定したところでは青森県
二十三億二千三百万円、岩手県十
八億三千四百七十一万円、宮城県
十九億三千五百四十二万円、福島
県千三百万円、合計六十一億とい
う大変な額になっています。岩手
宮城両県の例ですが、仕込みを始
めたばかりのカキ施設はカキだな
種苗とも文字通り全滅、定置網は
大、中、小とも根こそぎ流され、
毎日数十万トンを水揚げしていた小
型漁船は破損したり、流されたり
して当分出漁の見込みが立ちませ
ん。岩手県で全国一の生産量をあ
げているワカメは、これから最盛
期にはいりますが、いそ舟が役に
立たないため大幅な減産は免れな
いようです。植えつけ期にあるカ
キ種苗は肝心の供給源である宮城
県が全壊なので、ことしの生産は
ゼロになりそうです。また青森県
では加工施設一億五千万円、製氷
冷凍施設五億円、保管中の水産物
一億八千万円、共同施設など八千
八百万円という被害がありました

融資より助成金を 対策

 ▽特別立法措置=こ
うした災害を救済する法律は、い
まのところ何もありません。三十
三年にできた被災農林漁業者に対
する資金融通に関する法律は、伊
勢湾台風とか十勝沖津波など特定
の災害にしか通用しないものです
から、当然こんどの災害に適用す
るように改めるか、つくり直すか
しなければなりません。また農林
水産施設の災害復旧法では、ノリ
カキ養殖施設や、定置網などが含
まれていませんから、早速これら
を補助の対象にする必要がありま
す。なにしろ着のみ着のままで投
げ出された漁民のことですから、
融資という手ぬるい方法ではとて
も立ち上がることはできません。
だから融資より助成金を望む声が
強いようです。
 ▽融資=助成金を思い切って出
すことが返済能力のない漁民への
救済ですが、それほどでない漁民
には、天災融資をはずんでもらわ
なければなりません。だから政府
は農林中金や、農林漁業金融公庫
から貸し出している一般融資資金
とは別に、天災融資のワクを設け
て、資金需要にこたえる一方、被
害者の中で伊勢湾台風などで借り
た金をまだ返していないものには
償還をのばしてやること。さらに、
漁船を新造したり、修理する漁
民には、これまでの金利七分五厘
を六分五厘ないしは六分くらいに
引き下げ、償還期間も二、三年延
長することが必要です。

外洋に漁場開く  くいとめる津波の被害

 ▽資材のあっせん=ノリ、カキ
など浅海養殖関係の漁民は、一つ
三万円から五万円もするいかだを
破損したり、流されたりしまし
た。どうしても作り直さなければ
なりません。そのために必要な竹
棒ぐい、ロープなどの資材は簡単
に入手できないでしょう。また漁
船を建造や修理するにしても、木
材の値上がりは必ずやってきま
す。国や県は公有林を払い下げる
とか、値段の高騰をおさえて、適
正な価格で供給することが望まれ
ます。また水産庁は広島や熊本な
どカキの生産地からカキ種のあっ
せんをして、ことしの生産をゼロ
にしないよう努力すべきでしょう
 ▽漁船保険=漁船保険組合に加
入している人には手続きをすれば
約一ヵ月くらいで契約に応じた保
険金が支払われます。しかし夏漁
がすでに始まっているいまは、そ
んなにのんびりしておれません。
材料費だけでも仮払いできるよ
う、政府のつなぎ融資が痛切に望
まれています。漁船を持っていて
も保険に加入していない人もあり
ますが、チリ津波のような災害で
は全くほどこす手段がありません
不安定な水産業のことでもあるの
で、漁船保険は掛金の五〇パーセントを自
分が払い込み、残りの五〇パーセントは政
府が出しています。こうした特別
な保険には「損をした」と思わず
に積極的に加入することが今後の
ためにも大切でしょう。

危ない浅海や湾内 津波と養殖

津波が去ったあ
との海は、まるでなにごともなか
ったように平静です。しかし津波
は絶対にさけられない災害でしょ
うか。これを機会に恒久的な対策
を考える必要があるでしょう。東
北水産研究所の話では、津波の被
害があるのは岸に近い浅海や奥ま
った湾内だけだそうです。大きな
波は海岸の水産施設や湾内にビッ
シリとたて込んだノリ、カキいか
だを破壊します。また急激に海水
をかき回しますから、水温の違
う海水が流れ込んでカイ類や小魚
などを死滅させます。
しかしその半面、魚族の栄養物で
あるプランクトンを大量に運んで
くる役割りも果たしますから、長
い目で見るといい面もないわけで
はありません。またこんどの津波
でも沖合では何も被害がなかった
のですから、湾内にノリひびやカ
キいかだを集中させていたことが
被害を大きくしたともいえましょ
う。防波堤や防波サクによって外
洋に漁場を開拓すれば、同じ津波
がやってきても被害はグッと少な
くなるはずです。多くの漁協は財
政的に弱いので、外洋養殖をやり
たくてもやれないのが実情ですか
ら、国の大きなテコ入れで、漁場
の開拓事業をどしどし進める必要
があります。

謝津波御見舞

このたびの津波に際し早速御見舞を■うし誠に有難く厚く
御礼申し上げます。
 昭和三十五年五月二十八日
   宮城県牡鹿郡女川町鷲神一六七
    株式会社阿部喜商店
   女川営業所 鮎川営業所
   宮古営業所 石巻営業所
   釜石営業所 磐城営業所
   気仙沼営業所 三浦営業所
   塩釜営業所

津波被災地の皆さまへ 心からお見舞申し上げます

このたびの大津波の災害に対しまして
下記広告掲載の商社ではお見舞金及び
お見舞品を寄贈いたしました