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町に山に起こる愛の運動 “津波被災地を救え”  学生から坊さんまで募金

悪夢は去った。しかし三陸一帯の海岸には、十二万人を越える被災者たちが、肉親を失い、家を失い、船を失って悲嘆に暮れている。
被災者たちを救おう—本社は東北放送を共催で二十六日から救援募金を受け付けるが、東北の各地でも愛の手をさしのべる運動が起
こっている。

浄財、続々本社へ寄託

 ○…「太平洋沿岸を襲った津波
被災者を救おう」と学生援護会寮
仙台学生会館にはいっている東北
大の学生約八十人が二十五日、仙
台市内の街頭で義援募金を呼びか
けた。午前九時半ころから東一番
丁藤崎デパート前と東一番丁、青
葉通り交差点角の二ヵ所に立った
学生たちはハンディマイク片手に
被災地の惨状を訴えた。道ゆく人
たちも足を止め、心からの見舞い
金を募金箱に入れるサラリーマン
や家庭の主婦などの姿が多くみら
れ、またわずかな小遣いをさいて
募金する子どもたちのほおえまし
い風景もみられた。この日集まっ
た浄財は二万八千三百三円で同日
早速本社に寄託された。
 ○…一方本社が東北放送と共催
二百万円を募金にして二十六日か
ら始める「チリ津波被災地へ愛
の手を」運動に先立ち同日、早く
も本社へ十二万九千三百三円の浄
財が寄せられた。東北大医学部医
師一同、仙台青年商工会議所、仙
台急行運送会社などの人たち、そ
れに四人の篤志家からの愛の寄金
だった。

在京県人も立ち上がる

 ○…この日、宮城県栗駒町岩ヶ
崎茂庭、円鏡寺住職の菅原一■さ
ん(二七)ら四人も、同町の町角に立
ち津波被災者救援の“たくばつ”
を行なった。集まったお金は四千
円、早速■柳署に寄託したが、菅
原さんらはこれからたくばつ行脚
を続けるという。
 ○…遠野市でも遠野駅前子ども
会のよい子たちが、この日街頭に
立ち、街頭募金を始めた。かわい
い声で三陸の困っている人たちを
救いましょうと道ゆく人に呼びか
けていた。また遠野市役所も救援
本部をおき救援金、救援物資の受
け付けを始めた。
 ○…東京在住の東北各県人会も
二十五日「郷土を救え」といっせ
いに立ち上がった。都内にザッと
七十万人はいるといわれる宮城県
人会連合会は同日夕、高橋義次会
長らが協議して、慰問団の派遣や
在京県人の慰問品、救援物資を集
めることなどを話し合い、目黒の
同県人会(約二千人)ははやくも
救援物資を持ち寄っている。また
東北地方に事業所をかまえている
各会社でも社員から義援金募集を
始めたところがかなりある。

故郷を心配す る在京県人

多数の死傷者とおびただしい被害
の出たこんどの津波に、東京在住
の東北地方出身者は、故郷のこと
を心配、いたたまれない思いにか
られている。
 二十四日朝、ラジオやテレビで
 被害のニュースが流れると同時
 に各県東京事務所、それに本社
 東京支社(中央区銀座西八ノ
 九)には、被害状況の問い合わ
 せ電話が殺到した。電話は二十
 五日もひっきりなし、わざわざ
 事務所を訪れる人も多かった。
 「志津川には親がいるのだが
 …」「塩釜に死者はなかったで
 しょうか」と声をくもらせる。
東京から東北地方へ市外電話、電
報の遅れが、一層のあせりをかき
たてた。都内の電報、電話、郵便
局窓口は、災害者の故郷へ肉親の
安否を問い合わせる電報、市外電
話の取り扱いが、ふだんの二、三割
増。しかし災害地への電報は遅延
承知のものしか受け付けず、市外
電話も塩釜、石巻でさえ特急で四
五時間の待ち合わせ。「もっと早
くならないか」の押し問答がそち
こちで繰り返された。
 本社東京本社前にはり出された
 本誌のなまなましいニュースは
 通行人の足をとらえて、一日中
 黒山の人だかり。災害地とゆか
 りのない銀座マンまでが、くい
 いるように記事と写真に見いっ
 ていた。二十五日上野駅にはさ
 っそく、三陸向けの救援物資が
 つぎつぎ持ち込まれ、東北本線
 常磐線の下り列車に息せきっ
 て乗り込む人もかなりあった。

電話続々復旧  仙台−大船渡などに遅れ

東北電通局津波災害対策本部に二
十五日夕刻はいった連絡によると
青森県下の電話は徐々に回復、青
森−八戸間の電話は同午前中に正
常に戻り即時通話となったが、青
森−盛岡間は「普通」で五時間二
十分の遅れをみせている。また岩
手県下では盛岡−釜石間、盛岡−
宮古間の電話が「特急」で四、五
時間遅れているほかは、ほとんど
平常通話に復した。宮城県の電話
は仙台−気仙沼、石巻、塩釜間が
いせんとして待ち時間が「特急」
で平均三時間四十分となってい
る。しかし仙台からの申し込み数
が次第に減少気味となり、正常化
への見通しが明るくなった。
 一方、仙台−大船渡、志津川間
 の電話は市外回線の復旧が遅れ
 ているので警察などの連絡通信
 用だけにしか利用されていない
 状況だ。このため同局は仙台か
 ら石巻、気仙沼、釜石への電話
 に対しては、通話時間の制限を
 行なっている。夕刻までの復旧
 状況次のとおり。(カッコ内は
 復旧回線数)
▽大船渡=市外四九(十七)、電信
四(一)、市内一、二五〇(一二)
▽釜石=市外一五(六)、電信二
(〇)、市内二一四(三二)▽宮古
=市外二六(一一)、電信二(〇)、
市内一三二(九)▽久慈=市内全
線開通▽八戸=市内三二六(八
二)▽塩釜=市外五(一)、市内一
五四(三一)▽石巻=市外九(一)、
電信一(〇)、市内五六〇(一二二)
気仙沼=市外二六(一一)、電信二
(〇)、市内四九八(一〇二)

津波被災地義援金 25日受付分(敬称略)

【本社扱い】▽百万円(仙台
市東二番丁)河北新報社▽百万円
(同)東北放送株式会社▽五千円
(同清水小路)登米病院▽一万円
(同東一番丁)楠島正▽五千円
(同光禅寺通)抜山四郎▽一千円
(古川市新堀旭町)千葉繁三郎▽
五万円(仙台市荒巻堤)仙台急行
運送株式会社▽一万円(同東二番
丁)仙台青年商工会議所▽二万八
千三百三円(学生援護会寮仙台学
生会館内)東北大学生一同▽二万
円(仙台市北四番丁)東北大医学
部医師一同
◇計二百十二万九千三百三円

工業被害数十億  仙台通産局 本省に対策要望

津波による東北地方の工場事業場
の被害は膨大なものになりそう
だ。仙台通産局は被災四県のおも
な工場、事業場の被害状況を調べ
ているが、二十六日夕刻までにわ
かっただけでも被害額は約六億円
その他中小企業を加えると数十億
の損害が見込まれる。
 このため及川仙台通産局長は二
 十六日夕方、飛田総務課長を上
 京させ、本省への説明に当たら
 せるとともに、
①中小企業復旧のために中小企業
金融公庫、国民金融公庫に特別ワ
クを設け、伊勢湾台風のときと同
様の低利融資を行なうこと。②北
海道東北開発公庫の融資ワクをふ
やすこと。③被害地に対する電力
料金、ガス料金の調整措置。④油
槽所の脂が相当流失したので、漁
業用重油に万全の手配をするこ
と。
 などを本省に要望した。

損害は一億八千万  仙台、盛岡鉄道局の調査

 仙台、盛岡の両鉄道管理局は津
 波による損害を二十五日まとめ
 た。それによると、一億八千万
 円の損害となり、調査が進むに
 つれて損害はさらにふえる模
 様。
仙鉄局管区では仙台、石巻、塩釜
の三線区で損害総額千八十二万円
このうちレール、建物など施設関
係の損害が最も大きく五百二十九
万九千円。次いで電気関係の百七
十九万円、荷物損傷の百五十万円
その他百三十万円で、機関車と客
貸車の損害は九十四万円となって
いる。

みちのく

 ◇…世の中には頭
のいい人もいるも
の。各地に大被害を
与えた“チリ津波”
を利用して、チャッ
カリ仕事の能率を上げた人があ
る。
 ◇…宮城県松島町高城の漁師赤
間今朝治さんは、カキ養殖の仕事
が一段落ついたので、舟を陸に揚
げて干そうと思っていた。たまた
ま二十四日朝、舟をつないである
高城川にいってみると、津波襲来
の真っ最中。大ていなら波を恐れ
てにげるところだが、赤間さんと
っさに「この波を利用したら、重
い舟も簡単にあがるべえ」と思い
ついた。
 ◇…早速波加減をみて最も高く
押し寄せたところを利用して、舟
は一気に陸へ……。ふだんなら大
の男四、五人の手がいるところを
なんなく成しとげた赤間さんは一
人でニヤリ。ところがその直後、津
波のためにカキだなが流され、せ
っかく揚げた舟を大アセかいて引
き下し、赤間さんブツブツいいな
がら手入れに向かったという。楽
あれば苦ありというお話(塩釜)