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町ぐるみ職種転換 宮城県 牡鹿町 不安定な沿岸漁業に見きり

【石巻】こんどのチリ
地震津波で軒並み壊滅
的な打撃をうけた三陸
沿岸の沿岸漁業は職種
転換が必要だといわれ
ていますが、宮城県牡
鹿町は不安定な沿岸漁
業に見きりをつけ、こ
としから町ぐるみで安
定性のあるワカメとノ
リの養殖事業に職種転
換することになりまし
た。これは宮城県水産
試験場の勧告にもとづ
き、町と牡鹿漁協組が
強力に推進するもので
水産庁も全国のモデル
・ケースとして側面援
助する形をとっていま
す。すでにことしの二
月からノリとワカメの
人工採苗場の建設にと
りかかっていますが、
東北大学や東北海区水
産研究所などでも、職
種転換の前途にタイコ
判をおしていますので
資金対策など一連の指
導さえよければ、この
大事業はかならず成功
するものと期待されて
います。

 チリ津波で お先真っ暗

牡鹿町には人口四千七百六十二
人のうち沿岸漁民が二千二百二十
二人もいます。かつて三陸漁場を
背景に漁業はかなり栄えました
が、捕鯨(資本漁業)が栄えるに
つれて徐々に後退、さいきんは定
置網や小舟による小漁で細々と生
活してきました。これがこんどの
津波で定置網が全滅、小漁も小舟
が流失するなどのため、多難な先
行きとなってきまし。このため
漁民の生活は一部を除いてドン底
におちいり、その日暮らしもやっ
とというものではじめました。
 戦後、沿岸漁業の乱獲で資源が
枯渇し、沿岸漁民はなんらかの対
策にせまられていました。たまた
ま水産庁でもこの実体に着目して
宮城県水産試験場に沿岸漁業集約
経営調査を依頼、沿岸漁民対策の
研究をはじめました。この調査は
三ヵ年**事業でことし終わりま
したが、この研究で、ノリ、ワカ
メを中心とする養殖事業への転換
が一番の近道だという方策は明ら
かにされました。そこで町は職種
転換のハラを決め、宮城県や水産
庁に働きかけ、予算化の折衛を進
めてきたものです。

 人工採苗場 も着々建設

 定置網漁業からワカメとノリの
産地化への転換を計画して、こと
しからワカメとノリの人工採苗場
をつくり、人工ワカメの栽培とノ
リの養殖を奨励することになりま
した。ノリはとりあえず百万枚、
ワカメは五百トンの生産目標をたて
ています。このためことしの二月
に鮎川浜**に第一期分として七
十八平方メートルの人工採苗場を二百万
円で建設しました。この費用は県が
百万円、町が二十五万円、鮎川
漁協組が七十五万円です。採苗能
力はノリが三万間、ワカメ一万六
千間ですが、さらに七月中旬に第
二期、七月一ぱいに第三期工事が
終わり、ワカメは七万円のタネが
とれるようになります。この町で
は去年からワカメの試作にとりか
かかり、タネは荻浜から買ってきま
したが、こんごはどしどしよいタ
ネをつくって移出できるようにな
見込みです。町ではこのほか三
百万円を投じて町営のワカメ共同
加工場(二百平方メートル)をつくる計
画で、宮城県水産課や水産庁と折
*しています。なおノリ、ワカメ
も販売は県漁連の共販に乗せ、業
者の買いたたきを防止する一方、
代金のコゲつきをなくす方針で
す。
 採苗場は東北地区水研の黒木技
官の考案になる黒木式採苗場には培
養タンクが十四糟あります。ワカ
メのタンクは六つ、ノリは八つで
す。ほかにロ過槽が二基、貯水槽
が一基あります。海水は海から運
びますが、これには五馬力のモー
ター付きポンプを使っています。
水が腐らないようにコンプレッサ
ー一台も備えてあります。こんご
増設するのはワカメだけで、培養
タンクをさらに十四基増設、主力
をワカメにしぼる予定です。タネ
つけ料は一間当たりノリが二百五
十円、ワカメが二千円程度です。

 先立つもの はやはり金

 沿岸漁業家はあげて養殖事業へ
の希望をもらしています。しかし
先立つものはやはり資金です。一
挙に五百トンの人工ワカメをつくる
にはその設備にはかなりの資本
を投入する必要があります。町も
漁協組もできるだけ扶助の手をの
べる方針ですが、底積みの零細業
者にまで手がとどくかどうかはわ
かりません。事業が成功するかど
うかは、生産指導とこの資金がう
まく手当てできるかどうかにかかっ
ているといえるでしょう。