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貧困部落にまた恐怖 気仙沼 市塩田 こんどは水害の危険  津波のツメ跡消えぬうち

津波が去ってすでに一ヶ月という
のに、まだ惨禍そのまま。しかも
雨期が目前に迫り、こんどは水
害の危険にさらされている部落が
気仙沼市にある。同市階上の塩田
部落だ。戸数わずか十八戸。いま
から十数年前、塩田作業のために
仙台や北海道から移住してきた人
たちでできた部落である。頼み
の製塩は戦後すっかりさびれ、ほ
とんどの世帯は定職もなく、出か
せぎ、人夫、磯漁といった恵まれ
ない生活をしている。先月二十四
日のチリ津波は、この細々と暮ら
す部落にも容赦なく襲った。この
朝三時ごろ、ワカメひろいに浜辺
に出ていた岩下なつのさん(三三)が
異常な引き潮をみて津波来襲を部
落中に知らせたが、そのときはも
う部落は荒れ狂う波にもまれてい
た。水が引くのに三日もかかっ
た。部落民は付近の寺に避難した
が二日目にはお寺からの立ちのきを
迫られた。「よそ者に冷たい仕打
ち」と聴いてみたが、どうにもな
らず、みんな泥土をかぶったわが
家にもどり床にムシロを敷いて生
活を始めた。その日の米代をかせ
ぐためにみんな働きに出なければ
ならず、跡始末も家の修理もあと
まわし、津波直後の惨状そのまま
である。
 しかもそれに追い打ちをかける
 ようにこんどは雨だ。このあた
 りは土地が低く、三日も降り続
 けば潮が逆流して浸水するとい
 う水害地帯である。このうえ水
 害があったらどうしよう。橋本
 ちよ子さん(三三)は「つゆがこわ
 い」とおびえている。部落民は
 高台に引越ししたいと願ってい
 る。市当局もそれをすすめてい
 る。しかし先立つものは金で、
 いまのところ実現の見通しは全
 くついていない。つゆ空をなが
 めて部落民は暗然としている。

目標の二割足らず  振るわぬ津波復興融資

 きょう二十四日は、いまわしい
 チリ津波災害後一ヶ月、被災者
 の大部分はまだ住む家さえ満足
 でないが、頼みの綱の復興資金
 融資もなかなかはかどらず、各
 金融機関の融資実績は目標の一
 割から二割程度にすぎない。
各金融機関の幹部が被災地をひと
回りした印象は「家がなくて落ち
着けないので、商売の金を借りる
までいっていない」と一致してい
る。これを裏書きしているのが融
資実験だ。最も出足の早かった国
民金融公庫でさえ二十三日現在の
申し込み一千百五十件五億八千七
百万円に対し、化し付け決定は五
百五十二件一億四千七百三十三万
円、このうち実際に現金をにぎっ
たものは三百四十五件九千七百六
十二万円。やはり申込書、保証人
担保など手続きに手間どるほか、
申し込みをうけたあとの調査が大
変なことを物語っている。東北一
の大銀行といわれる七十七件は「申し
込みが出てきたのは十日すぎ、
それも大半が従来からの取り引き
先です」といい、融資実績は約六
百件四億円どまり。特別ワク二十
億円に対し二割にとどまっている
また担保のない業者に代わって融
資を保証している県信用保証協会
は、申し込み二百八十一億三千
万円に対し、保証承諾は二百七件
一億三百十万円にすぎない。
 このほか公共団体むけに三億円
 のつなぎ融資を用意した東北事
 務局には借り手がなく、そっく
 り眠ったまま。これは交付金の
 繰り上げ交付や少額の簡保資金
 でまかなえたためもあるが「国
 会で起債の特例法が通れば、安
 い資金が使える」と待遇したこ
 とが主因だ。これらを総合する
 と、本格的な融資が軌道に乗る
 のは八月ころとなる見込みで、
 それまでは住宅と店舗の整備や
 再起などに重点がおかれよう。