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社説  チリ津波被災者の立場から

 参議院はきのうのう本会議
で安保条約の関係諸法案を
抜き打ち的に成立させた
が、その際にチリ地震津波対策関係の
八つの法案も可決成立した。被災者待
望の特別立法が可決されたことは、災
害関係者にとって大きな朗報に違い
ないが、自民党だけの単独審議という
形で、何かこそこそと人目を盗むかの
ようにして成立したのは、被災者側と
しては情けないという感じを禁じ得な
いだろう。またこのような成立の過程
から今後の実施段階において思わぬ支
障が起こったりしはせぬかという不安
もないとはいえない。だから災害関係
者としては心からその成立を喜ぶには
何か心にひっかかるものを感じるので
あるが、ことは緊急を要する災害対策
でもあるから関係各方面が特別の配慮
の下に、この災害立法を政局と切りは
なしスムーズな運用を期してもらい
たい。
 ことが災害対策ともなれば、本来な
ら野党といえども積極的に審議に参
加し、むしろ政府の重いシリをたたい
て対策の促進に大いに努力するのが、
これまでの実情である。災害の復旧は
超党派的な要素をもつものでもある。
それに政党としては選挙対策のうえか
らも極めて大きなウェートをもつ。こ
んどの津波災害にあっても、各政党
が党内に特別委員会を特設して対策に
努力したのもそのためであった。社会
党としては、安保審議の問題で今期の
延長も認めてないし、安保の採決も認
められない立場から、いっさいの国会
審議を拒否している時でもあるので止
むを得ず災害立法の審議にも参加しな
かったのである。
 このような、わが国議会史上いまだ
かつてない異常国会のさなかに津波災
害が起こったことは全くの不幸であっ
た。このために、安保審議をめぐる大
きな政局のうねりに巻きこまれて、苦
しい被災者の実情を訴える声も、とか
くかき消されがちであって、ほんとう
に被災地の実情が国会という機関を通
じて、どれだけ全国民に理解されたか
どうか疑わしい。政府与党といえども
目前の大きな政局の動きのために、と
もすれば災害復旧に対する熱意を失い
だちで、おそらく昨年の伊勢湾台風に
対する立法措置という前例がなかった
ならば、どんな措置になったか想像に
難くない。被災者はもちろん、関係自
治体などは、このようにその正常な状
態を失った国会の有様をみて、いかに
政治家の無能をうらんだことであろう
か。
 差しあたっての災害応急措置は立法
を待つまでもなく、行政的な措置によ
って処理できるが、しかし災害の復旧、
生産対策となると、それはどうにも
ならない。いくつかの特別立法があっ
て、はじめてその見通しもたてられる
のであって、これなしには、心から再
起するだけの気力もないのが災害地
の現実である。われわれが異常国会の
さなかにも、何らかの妥協により早急
な立法化を強く望んだ理由もそこにあ
った。
 とはいえ、国政の基本である議会政
治がゆがむことは絶対に許されない。
政府与党が安保審議に際してとった
一連の態度にはあくまでも反対する
し、これを是正するためには国会を解
散すべきことを、これまでも再三指摘
してきた。これはいまでも同じであ
る。安保審議を白紙にもどし国会を正
常化するためには、いまとなっては、
やはり批准前の解散以外はない、し
かし、この間事態が進み、形のうえで
は変則ながら災害立法は成立した。あ
すに解散が行なわれても、これは生き
ることになる。しかもこの立法の内容
は安保条約とちがって何らの疑点も、
問題点もなく、与野党こぞってその実
施を望んでいるものである。この法律
は安保審議のとばっちりを受けた被害
者であるに過ぎない。いまの段階で野
党がこの法律を消極的に認めても、国
会正常化への努力の障害とはならない
だろう。われわれは被災者の立場か
ら、この特別立法が成立過程から受け
た暗い影を今後の実施段階にまで引き
ずることなく、力強い災害復旧のテコ
とするよう関係者の配慮を望むもので
ある。

低利貸し付けを実施  融資法 改正 特別被害地域を指定

 政府は二十日の次官会議で、チ
 リ地震津波に関する天災融資法
 の適用に関する政令の一部を改
 正する政令を決めたが、その要
 旨は次のとおり。
一、チリ地震津波による災害で特
別被害地域として年三分五厘の低
利貸し付けを行なうことのできる
都道府県は
①農業関係=岩手、宮城、三重、
福島各県
②漁業関係=北海道、青森、岩手
宮城、静岡、和歌山、徳島、
愛媛、高知の各県とする。
一、貸付限度額 ①真珠またはカ
キの養殖資金=特別被害者五十万
円、一般被害者三十五万円
②漁具購入資金=一千万円
③水産動植物の養殖資金、漁船建
造資金=ともに二十万円、そのh
か十五万円(いずれも真珠または
カキ養殖資金、漁具購入資金を除
く)
④すでに災害資金を貸し付けてい
るばあいは二十万円
⑤特別被害者の償還期間=五年
⑥融資総額三十億円。