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衆院を通過した津波特別法

個人の救済を重視 伊勢湾台風なみに措置
チリ地震津波被災地の人々が待ちのぞんでいた八件の災害措法が十七日衆院本会議でようやく成立し衆院に送付された。公共
土木被害に対する事実補助が見送られ、被災市町村職員の共済見舞金の特例が未決定になるなど、まだ不満足な点は多いが、災害地の
津波対策事業がとりあげられたほか、大体において伊勢湾台風なみの特別措置が盛りこまれ、特に個人被害の救助が重視されているな
ど、被災地の要求が大幅に認められている。以下は津波特別措置法の全文である。

水産業施設の災害 復旧の特別措置法

(農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措
置に関する法律の特例)第一条 昭和三十五年五月
のチリ津波による災害(以下「チリ地震津波被災
害」という)を受けた地域についての農林水産業施
設災害復旧事業国庫補助の暫定措置に関する法律
(昭和三十五年法律第百六十九号、以下「暫定措置
法」という)の規定の適用については、チリ地震津波
災害を受けた共同利用施設(水産業共同組合の所有
するものに限る)のうち、政令で定める地域内のも
のについては、暫定措置法第二条第六項及び第七項
中「十万円」とあるのは「三万円」と、暫定措置法第
三条第二項第五号中「十分の三」とあるのは「十分
の九」とし、その他のものについては同号中「十
分の二」とあるのは「十分の五」とする。
 (水産動植物の養殖施設に対する助成措置)第二条
 都道府県が、水産動植物の養殖施設で政令で定め
るもの(暫定措置法第二条第四項に規定する共同利
用施設に該当するものを除く)で、政令で定める地
域に発生したチリ地震津波災害を受けたものの
災害復旧事業であって、その工事の費用が三万円以上の
ものの事業費につき十分の九範囲内で政令で定める
率を下らない率による補助をすれば場合には、国は、
予算の範囲内で、当*都道府県に対し、その補助に
要する経費(都道府県が当該政令で定める率をこえ
る率による補助をする場合には、そのこえる部分の
補助に要する経費を除いた経費)の全部を補助する
ことができる。
 付則 この法律は、公*の日から施行する。

小型漁船の建造に 関する特別措置法

1 昭和三十五年五月のチリ地震津波による災害
(以下「チリ地震津波災害」という)に係る小型漁
船の被害が著しい都道府県で政令で定めるものが、
漁業共同組合の必要とする共同利用小型漁船建造費
につき、当該漁業協同組合に対し、三分の二を下ら
ない率による補助をする場合には、国は、予算の範
囲内において当該都道府県に対し、その補助に要
する経費(都道府県が三分の二をこえる率による補
助をする場合には、そのこえる部分の補助に要する
経費を除いた経費)の二分の一を補助することがで
きる。
2 前項の共同利用小型漁船建造費とは、政令で定
める要件該当する漁業協同組合が、政令で定める
小型漁船でチリ地震津波災害を受けたもの(沈没、
流失その他で定める著しい被害を受けたものに
限る)をチリ地震津波災害の発生の際に所有し、か
つ、その営む漁業の用に供していた組合員の共同利
用に供するため、政令で定めるところにより小型の
漁船を建造するために要する経費をいうものとす
る。
 付則 この法律は、公布の日から施行する。

中小企業者への 融資特別措置法

(目的)第一条 この法律は、昭和三十五年五月の
チリ地震津波による災害を受けた中小企業者につい
て、その事業の再建に必要な資金(以下「再建資
金」という)の融通を円滑にするため、商工組合中
央金庫の貸し付け利率の引き下げのための措置を定
めることにより、その事業の再建を促進し、経営の
安定を図ることを目的とする。
(定義)第二条 この法律について、「指定被害中
小企業者」とは、次に掲げる者で政令に定めるもの
をいう。
一 政令で定める地域内に事業所を有し、かつ、前
条の災害を受けた中小企業者及び中小企業等協同組
合その他の主として中小規模の事業者を直接または
間接の構成員とする団体(以下「中小企業者団体」
という)。
二 中小企業者団体であって、その直接または間接
の構成員のうちに前号に掲げる者を含むもの。
(商工組合中央金庫に対する利子補給)第三条 政
府は、商工組合中央金庫が指定被害者中小企業者に対
して再建資金の貸し付けを行なうときは、政令で定
めるところにより、当該貸し付けにつき貸し付け後
三年間を限り利子補給金を支給する旨の契約を商工
組合中央金庫を結ぶことができる。
(利子補給の対象となる貸し付け)第四条 前条の
契約による利子補給金の支給の対象となる貸し付け
は、商工組合中央金庫が指定被害中小企業者に対し
て昭和三十五年十月三十一日(再建資金の融通に関
しとくに必要がある場合において、政令で同後日の
日を指定したときには、その日)までに行なう再建資
金の貸し付けであって、その全部または一部の利率
が年六分五厘で
あるものとし、
その利子補給金
の支給の対象と
なる金額は、指
定被害中小企業
者ごとに、その
利率によって貸
し付けた額(そ
の額が次の各号
に規定する貸し
し付けの区分に応
じ当該各号に掲
げる金額をこえ
るときは、当該
金額)以内の額
とする。
一 指定被害中小企業者(中小企業者団体を除く)
に対する貸し付けについては、五十万円(その指定
被害中小企業者の直接または間接に所属する中小企
業者団体が当該指定被害中小企業者に対し転貸する
再建資金の貸し付けを受けている場合において、そ
の転貸する額のうちに利子補給金の支給の対象とな
る額があるときは、その対象となる額を控除した金
額)。
二 中小企業者団体に対する貸し付け(次号の貸し
付けを除く)については、百五十万円。
三 中小企業者団体に対する再建資金であって、そ
の直接または間接の構成員たる指定被害中小企業者
(以下この条において「被害構成員」という)に転
貸されるもの(以下次項において「転貸資金」とい
う)の貸し付けについては、それぞれの被害構成員
に転貸する金額のうち五十万円(その被害構成員が
再建資金の貸し付けをうけている場合において、そ
のうちに利子補給金の支給の対象となる額があると
き、またはその直接もしくは間接に所属する他の
中小企業者団体が、当該被害構成員に対し転
貸する額のうちに利子補給金の支給の対象となる額
があるときは、その対象となる額を控除した金額)
までの額に相当する金額の合計額。
2 転貸資金の貸し付けを受ける中小企業者団体が
その転貸資金を被害構成員に転貸する場合におい
て、その利率が年六分五厘をこえるときは、そのこ
える率により転貸した金額は、前項の利子補給金の
支給の対象となる金額には含まれないものとする。
3 政府が前条の契約による利子補給金の支給の対
象とすることができる金額の総額は、二億五千万円
を限度とする。
(利子補給金の支給額)第五条 第三条の契約によ
り政府が支給する利子補給金の額は、商工組合中央
金庫が貸し付けた再建資金の額のうち利子補給の金の
支給の対象となる金額につき前条第一項に規定する
利率により計算した利子の額と、当該利子補給金の
支給の対象となる金額につき商工組合中央金庫がそ
の貸し付けと同種類の貸し付けを行なう場合におけ
る通常の利率により計算した利子の額との*額に相
当する金額とする。
 付則 この法律は、公布の日から施行する

地方公共団体 起債の特例法 (起債の特例) 第一条 昭和三十五年5月のチリ地

震津波による災
害を受けた地方
公共団体のうち
政令で定めるも
のは、次の各号
に掲げる場合に
おいては、昭和
三十五年度に限
り、地方財政法
(昭和二十三年
法律第百九号)
第五条の規定に
かかわらず、地
方債をもってそ
の財源とするこ
とができる。
一 地方税、使
用料、手数料そ
の他の徴収金で命令で定めるものの当該災害のため
の減免であって、その程度及び範囲が被害の状況に
照らし相当と認められるものによって生ずる財政収
入の不足を補う場合
二 当該災害に係る災害救助対策、伝染病予防対策
その他これらに類する命令で定める災害対策に通常
要する費用で、当該地方公共団体の負担に属するも
のの財源とする場合
(地方債の引き受け)第二条 前条の地方債は、国
が資金運用部資金または簡易生命保険及び郵便年金
特別会計の積立金をもってその金額を引き受けるも
のとする。
2 前項の場合における利息の***及び**の方法
は政令で定める。
(起債許可についての協議)第三条 自治大臣は、
第一条の規定による地方債について地方自治法(昭
和二十二年法律第六十七号)第二百五十条の規定に
よる許可をしようとするときは、あらかじめ大蔵大
臣と協議しなければならない。この場合において、
当該地方債が簡易生命保険及び郵便年金特別会計の
積立金をもって引き受けるものであるときは、あわ
せて郵政大臣と協議しなければならない。
 付則 1 この法律は、公布の日から施行する。
2 自治庁設置法の一部を改正する法律が施行され
るまでの間は、第三条中「自治大臣」とあるのは、
「自治庁長官」を読み替えるものとする。

公営住宅法の特 例に関する法律

1 昭和三十五年五月のチリ地震津波による災害で
あって政令で定める地域に発生したものに関し、事
業主体が、当該災害により減失した住宅に当該被害
の当時居住していた者に関するため第二種公営住
宅を建設するときには、公営住宅法(昭和二十六年法
律第百九十三号)第八条第一項の規定にかかわら
ず、国は、予算の範囲内において、その費用の四分
の三を補助することができる。ただし、当該災害に
より減失した住宅の戸数の五割に相当する戸数をこ
える分については、この限りではない。
2 前項の規定による公営住宅の建設に要する費用
についての国の補助金の算定については、公営住宅
法第七条第三項の規定を準用する。
 付則 この法律は、公布の日から施行する。

天災の融資暫定措 置法の一部改正法

天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に
関する断定措置法(昭和三十年法律第百三十六号)
の一部を次のように改正する。
付則に次の一項を加える。
2 昭和三十五年五月のチリ地震津波が第二条第一
項の規定により、政令で同項の大災として指定され
た場合における政令で定める都道府県の区域に係る
当該大災についてのこの法律の規定の適用について
は、同条第四項第一号中「漁具の購入資金として貸
し付けられる場合は一千万円」とあるのは「漁具の購
入資金として貸し付けられる場合は一千万円、真珠
またはカキの養殖に必要な資金として貸し付けられ
る場合は五十万円、その他の漁業経営者に必要な資金
として貸し付けられる場合は一千万円」とする。
 付則 この法律は、公布の日から施行する。

特定漁業施設 の特別措置

1 飛ぼう府県が、昭和三十五年五月のチリ地震津波
による災害に係る漁民の漁業施設、住宅等の被害の
大きい部落で政令で定めるもの(以下「特別被害漁
村」という)の全部または一部をその地区内に含む
漁業協同組合の必要とする特定漁業施設設置費につ
き、当該漁業協同組合に対し、二分の一を下らない
率による補助をする場合には、国は、予算の範囲内
において、当該都道府県に対し、その補助に要する
経費 (都道府県が二分の一をこえる率による補助を
する場合には、そのこえる部分の補助に要する経
費を除いた経費)の全部を補助することができる。
2 前項の特定漁業施設設置費とは、同項の漁業協
同組合が特別被害漁村の区域内に住所を有する組合
員の共同利用に供するための漁業施設(網漁具を含
む)で、政令で定めるものを設置するために要する
経費をいうものとする。
 付則 この法律は、公布の日から施行する。

津波対策事業 の特別措置法

 (目的)第一条 この法律は、昭和三十五年五月の
チリ地震津波(以下「チリ地震津波」という)によ
る災害を受けた地域における津波対策事業の計画的
な実施を図り、もって国土の保全と民生の安定に*
することを目的とする。
(津波対策事業)第二条 この法律で「津波対策事
業」とは、チリ地震津波による災害を受けた政令で
定める地域において、海岸またはこれと同*の効用
を有する河川でチリ地震津波により著しい災害を受
けたもの及びこれらに接続し、かつ、これらと同様
の効用を有する海岸または河川について施行する津
波による災害を防止するために必要な政令で定める
施設の新設または改良に関する事業(それらの施設
について合わせて施行するチリ地震津波に係る災害
復旧に関する事業を含む)をいう。
(津波対策事業計画)第三条津波対策事業に関す
る主務大臣は、当該津波対策事業につき、関係地方
公共団体の意見をきき、かつ、チリ地震津波対策審
議会の審議を経て、その事業計画(以下「津波対策
事業計画」という)の案を作成し、閣議の決定を求
めなければならない。
津波対策事業計画には、津波対策事業の実施の
目標及び事業量を定めなければならない。
3 主務大臣は、第一項の規定による閣議の決定が
あったときは、遅滞なく、津波対策事業計画を関係
地方公共団体に通知しなければならない。
4 第一項及び前項の規定は、津波対策事業計画の
変更について準用する。
(チリ地震津波対策審議会)第四条 総理府に、チ
リ地震津波対策審議会(以下「審議会」という)を
置く
2 審議会は、津波対策事業計画に関する事項その
他津波対策事業に関する重要事項を審議する。
3 この法律に定められるもののほか、審議会に関し必
要な事項は、政令で定める。
(津波対策事業計画の実施)第五条 政府は、津波
対策事業計画を実施する
ために必要な措置を講
じ、かつ、国の財政の許
す範囲内においてその実
施を促進することに努め
るものとする。
 付則(施行期日) こ
の法律は、公布の日から
施行する。
(総理府設置法の一部改
正) 2 総理府設置法
(昭和二十四年法律第百
二十七号)の一部を次の
ように改正する。第十五
条第一項の表中台風常襲
地帯対策審議会の項の次
に次のように加える。
 チリ地震津波対策審議
会=昭和三十五年五月の
チリ地震津波による災害
を受けた施設における津
波対策事業に関する特別
措置法の規定によりその
権限に属せしめられた事
項を行なうこと。

特別法の成立まで

 5月24日 チリ地震津波太平洋
岸を襲う。
 26日 椎名官房長官を本部長と
する津波災害対策本部第一回会議
▼福田農相(29日まで)、渡辺厚相
(27日まで)、社会党津波対策委員
(28日まで)、被災
地視察。
 27日 **運輸
相被災地視察(29
日まで)
 28日 村上建設相被災地視察
(30日まで)
 29日 福田農相、首相に「復旧
対策は個人救済が中心」と報告▼
衆院農林水産委員被災地視察▼被
災一道四県県協議会で特別立法要望
案を決定。
 30日 自民党七役会議で個人、
中小企業の救済を中心にした特別
立法を作る方針を決定。
 31日 自民党東北開発特別委員
会で対策を協議。
 6月1日 政府の津波災害対策
本部は「伊勢湾台風に準ずる立法
措置が必要」と態度を決定。
 2日 自民党の津波災害対策本
部で特別立法を検討。
 4日 岸首相、川島自民党幹事
長、船田同政調会長の三者会談で
特別立法を国会に提出する方針を
決定。
 5日 被災一道四県知事、議長
会で立法促進を協議▼河北新報は
東京虎ノ門共済会館で宮城、岩手
青森三県知事座談会を開催。
 6日 被災一道十七県緊急知事
議会合同会議で伊勢湾台風なみの
特別立法として六十二項目の対政
府要望を決定▼社会党臨時大会で
つなみ対策促進を決議。
 9日 次官会議で特別措置法八
件を内定▼北海道、東北県議会議
長会は山形市で特別立法促進の要
望を決議。
 10日 閣議で特別措置法のうち
四件の国会提出を決定▼東京永田
町全国町村会館で
宮城県町村会長同
議長会は太平洋沿
岸市町村同議会
長会との合同会議
で立法促進を決議、関係機関に要
望▼全国知事会は被災一道十七県
知事、議長会を緊急招集、立法促
進を決議▼閣議で特別措置法四件
を決定、これで法案は八件になる
 17日 衆院本会議で八法案可決

津波恒久対策を立案  予算裏付けに運動必要 災害復興へ強い足がかり

解説 災害復旧については三
十余件の現行がある
が、こんど制定された
特別措置法案は現行法に
規定された適用範囲を広げ、補
助率を高めるもの。今回の八関
係法案の特色は伊勢湾台風のと
きの特別措置法二十七件を比べ
①重点的に問題点をしぼった。
②零細漁業者などの個人補償、
それに貧しい部落や各種組合の
再建に救済の道を開いた。
③恒久対策として国が審議会を
設けて防潮堤、砂地造林など津
波対策計画を立案する。
など、地元の要望は八、九分ど
おり成文化されたといえよう。
しかし具体的な調査は今後決め
られる政令に*られることにな
っている。例えば****や
漁船建造をみると、ノリ、網、
漁具、水産物干し場などの被災
に対しては特定漁業施設再建法
案のなかで五割補助が決まったも
のの、定置網は小型、中型、大
型の全部が認められるのか、小
型だけなのか、また小型の範囲
をどう求めるのか、など一切は
今後の政令で規定することにな
っている。またノリの場合も、
倉庫保管中のノリはどうなるの
か、陸にあったノリ網施設*被
害まで適用されるのかも、これ
また政令に妙にゆだねられている。
小型漁船の再建も被災一隻に対
し一隻の割合で国、県がそれぞ
れ三分の一負担になったが、小
型漁船の定義や協同利用のワク
の中で漁業組から個人へ転貸し
が許されるのか、これも政令に
一任の形だ。
この点宮城県総合開発室は、
「政府のサジ加減で今後これを
運営する場合、恩恵が後退す
る不安がある」と指摘してい
る。
一方、公共土木施設の復興に対
する高率補助はこんどは見送ら
れたが、その代わり海岸、河
川、堤防、港湾、防潮林など津
波対策施設の改良と新設は津波
常襲地帯に限定して国が計画を
立案、恒久的防災事業の中で復
旧対策を推進することにしてい
る。
そのさい、農林、運輸、建設の
主務三省と地元公共団体の長が
「チリ津波対策審議会」を作
り、事業計画はこの審議会を経
て閣議決定に持ち込み、早けれ
ば明年度から実施することをう
たっている。しかし、その補助
率がはっきりしていないので、
これに予算裏付けをするため、
今後も強い運動が必要だ。
しかし大蔵省が強く反対した中
小企業への融資法案が借り入れ
限度を百万円から五十万円に落
とすことで復活、またこんどは
とうとう間に合わなかった被災
市町村職員共済組合への災害見
舞い金も近く閣議決定されるは
ずだし沈船など障害物除去事業
も特別立法からもれたが、行政
措置で二分の一の補助金が出る
ことになり、ともかくも復興へ
の力強い足がかりができようと
している。
北海道 東北四県
チリ地震津波災害状況
(5月31日現在 単価千円)