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評論 復興は 百年の計を

 東海岸津浪に対する応急施設が各方面の機敏なる活躍と同情とに依って、大体遺憾なく行われたと信ずる。之からは愈々問題の復旧となる訳であるが、岩手県の特殊事情が、政府に認められ尤も県の有力なる人達の熱心なる運動の結果に依る処多いのであるが、国庫補助約六百万円それに六百万円の低利資金が中央から来る様な形勢である。さし詰め一千万円で復旧に取りかかる事になる。我々の望む処は、この金をして最も効果的でありたい事である。緩急を取違えぬ様に、本末を顛倒せぬ様に、適切、公正である事を要する。無論一千万円は、被害の幾分の一にしか当らぬであろう。けれども、時も時、非常時の際である。一千万二千万は何うでもよかろういう者もあろうけれどもそうは欲をいわれまい。この際は、これで極上といわねばなるまい。そこで、地元町村部落として自分のことはさて措いて、又津波が襲来し様とも、動ぜず、而も、天下の同情に侠つ様なさもしき考えを起さず、県の指導によって百年の計を樹てる決心が必要である。土木課長の言明に依ると住宅は十米の高さにするとのことであるが、海岸の人達は自ら進んでそういう計画を樹つべきである。二十九年の経験から、高地に住宅を移動した地方は比較的損害が少なかった。又防潮林、防波堤に依って被害を減殺したことも明らかな事実である。こういう例を挙ぶれば際限がないが要するに、又津波は何年か後に来るものと覚悟せなければならぬ。故に、この際漁村は三十年も五十年も進む積りでハ思い切った施設をなし、現在の生活改造をなさなければならぬ。夢の様な事であるが三十年躍進する決意を必要とするのである。扨そうなると一千万円の復旧費では、何うにもならぬであろう。然る時は、県民団結して更に国の補助を■ごうではないか。すでに政府に於ても震災調査費四万円かを計上して居るのである。津波の惨禍を未発に防ぐ事は地方の為でもあり国の為めでもあるのだ。不急の事業は、更に研究して之が実現を図る事にせねばならぬ。又中央に於て岩手県を特別行政区にしたらという声が起って居る際である。岩手県は全国中最も惨目な県である。昭和七年三月末現在の県町村債を一瞥すると、県債六百四十万円である。それに銀行問題の県債五百万円があるから県債は一千万円に上って居る。町村債は四百万円に達して居る。今日ではそれに増すとも減じて居ないだろう。団体個人の負債は何の位あるか、而も、休銀問題は整理更に進捗せず、県民は半死半生の中に居るのである。其処に以て来て今度の党海岸漁村の破局である。漁業組合の負債も少なくないであろう。真に、たまったものではないのである。自力更生など、何処にも出来る状態にない。特別行政区の叫ばるるも又故あるかなである。我々は何も好んで特別に国に縋り度いと思うものではないが、如何せん、打続く天災地変に依ってこのどん底に陥没したのである。国庫の補助を要求する実に巳むを得ざるに出づるのである。天下の同情というも、時去りぬれば、最早顧みては呉れない。然し災害は我々の出くわしたものであって、天下の災害ではない 我々は先ず忍ばねばならず、泣かねばならない。我々の復興は決して遠き将来には光明ではあるが、この十年、二十年は誠に苦痛と過労であるに相違ない。我々は本当に緊褌一番してこの大役を果さねばならない。我々の祖先は良き祖先ではなかった。周期的に来襲するこの海の災厄を防止すべく暢気であった。然し我々は子孫の為によき親となり、先輩とならねばならぬ子孫の為に、借金に驚かず過激な労働に耐えねばならないのだ。

市内の青物類  払底—暴騰   震災地へ送られて品不足    安いのは蕪だけ

東海岸震災後罹災地方は野菜果実類の欠乏をつげ応急盛岡青物市場より送附したものは市農会斡旋を初め四千貫から買上げられた結果市内青物類は品不足を来し大暴騰をつげいる。最も値上りとなったものは葱類である、例年なれば春三月を迎えると殆んど投げ棄てる様な相場を示したものであるが今年は全国的に払底し一把二三銭のものが七八銭と三倍高で地元商人が関東産地に出張して買入れしたが間に合なかったと云われている次いで甘■、人参、牛蒡、大根、馬鈴薯等の需要物は三割高其の他三ツ葉、京菜、ウド、サヤ等の移入物は一二割高である果実類は大した値上りもなく大体保合っている安いのは蕪で七貫三十銭の暴落振りである目下の値段左の如し。
 玉葱一貫十銭 人参十五銭 牛蒡一把三十五銭 三つ葉一把八銭 馬鈴薯十貫一円 大根一本三銭五厘から一銭五厘 長芋一函一円五十銭から一円二十銭位林檎紅玉一貫六十銭 国光六十銭 柳玉四十銭 梨早赤四十銭 今村秋三十銭位

信託も支払停止  目下更生案作成中

盛岡信託会社は一昨年休銀三行破綻以来休銀同様の運命に逢着しつつ支払い制限を続行して鋭意業務回復に万社長は各方面と折衝の上努力していたが休銀の整理は益々遅延し加えて財界不況の結果到底制限支払にも耐え得ざる状態となり過般万社長が大蔵当局に出頭し今後の整理方針の指示を受くると共に右苦衷を述べ信託預金利子支払い中止新規取引停止の願出をなした所当局でもこれを認めることになったので三月始めより一切の支払いを中止するに至った。依って今後は貯蓄銀行同様資金の融通を受け更生方針を確立することになっている。右に就て平野支配人は語る。
 大蔵省から営業停止とか新規取引中止の命令はないが若し現在の状態を続けると資産の分散を来す恐れがあり今後の整理に支障ある模様となっているので預金者と相談して支払を猶予して貰うことに決めました、預金.並に信託も受けつけるが出来るだけ遠慮している、休業状態と云っても差支えない訳ですが、貯蓄銀行の問題が片付いたら同様に更生さして頂く様目下大蔵省に折衝中である。

釜石町復興  資金二万円   殖銀貸出決定

釜石町では被害地の復興を計るため殖産銀行に対し復興資金二万円の融通方を申込んでいたが二十三日希望額通り殖銀より貸出された尚現在三陸地方で復興資金を申込んでいるのは左の通りである。
 ▲大槌町     一万五千円
 ▲岩手県水産会    十万円