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三陸沿岸防波陣  土堤や壁、または砂丘など   復旧計画防波施設

復興計画案による防波施設は土木山林、耕地の三課の合議によって実施するが山林課では五十一万円を以て防波堤に防潮林を造成する案を樹てることになった。又耕地課に於ては罹災地沿岸耕地保護のため田老、山田北部、大船渡、吉浜の四ヶ所に防波壁を設ける事になったが更に土木課に於ては二百七十万円の予算を以て釜石町に防波建築をなすと同時に防波壁を建て、田老村、野田村に防砂土堤を築き又久慈には防波砂丘を築く筈で、この他沿岸各地に徹底的の災害予防施設を施すことになったが県の防波施設定規は左の如く決定された。
  防波施設定規
△津浪に依り被害を蒙りたる住家は再建の際は附近の高地に移住するを原則とす。
 但し国有地に移住する場合は無償譲渡又は無償貸付を受くる見込み。
△津浪による被害を防催する必要なる土地に対しては地形に応じて左の方式に依る。
 一、海に直面せる市街地にありては防波建築を施すこと、建築物は鉄筋コンクリート耳釶■固なる不燃質構造とし幅員七米以上、高満潮面上十米以上とすること
  門扉並に窓扉は水■に耐ゆる鉄扉を使用すること。
 二、海に直面する村落にありては前面に防波壁を設け背面に余地ある箇所には可成防波植林を施すこと。
  防波壁の高さは満潮面上五米以上とし植林は幅員二十米以上とす。
 三、山腹又は傾斜地にありては階段式とし下段面より防波壁天端までの高さは四米以上とす。
 四、平坦地にありては満潮面上高八米以上の土堤を築設しその内外又は内側に復員各二十米以上の植林を施すこと。

暴利盗難を厳戒  県警察部各署へ命令

県警察部では沿岸地方災害により現在は生活必需品としては各地から輸送或は県から配給された救護品の他には物資がなく、これ等日用品の不足に乗じて不正商人が多数災害地に向い悪辣な手段で暴利をむさぼらんとしているので、これが暴利取締及び盗難防止命令を十一日被害地管下の各署に通牒を発した。

災害地の警官交代  十日から開始

県警務課では震災突発と同時に二戸、軽米、沼宮内、盛岡教習所、警察部、遠野、花巻、日詰、千厩水沢、岩谷堂各署から二百十名の警官を災害地に送り罹災地の百九名の警察官と合流して警察取締事務に全力を挙げて居るが以来殆んど不眠不休で活躍しているのでその疲労夥しく斯くては之が能率にも影響するので十日から順次応援警察官の更替を開始したが警察官の活躍は之から本格的な舞隊に入り漂流物の拾い合い慰問救助品の配給の公平非常時につけ込む暴利取締盗難予防に全力を挙げる筈である。

精神慰問  岡崎俊郎君  釜石着

全国で只一人の相続税倍増安国論の主唱者であり且つ静岡県光の村の経営者神奈川県茅ヶ崎西海岸民政党前代議士岡崎久次郎氏長男俊郎君(三四)は三陸沿岸災害地方慰問のため十一日午後一時頃来釜し本社支局を訪問し次の如く語った。
 静岡県に七十五万坪の敷地を選定し百万円の経費で『光の村』を開き六月から不幸な悩みの児童保護児童等二千名を収容、農業牧畜を営みそれら恵まれざる人達のために一生の生活を保證してやります。今度の災害は予想以上にひどかった。七日遠野、八日釜石を経て唐丹村字本郷部落及び唐丹村役場で心ばかりの見舞金を置いて参りました。私の真の慰問は金ではありません。私の格好をごらん下さい。ごらんの通りに菜っぱ服に靴下なしでズックの運動靴のいでたちです。罹災者と同じ格好です。私の慰問は精神的方面の慰問にあるのです。私の立場から私の主張する相続税倍増安国論は壇上に起って大衆に呼びかける事は出来ないので新聞の力で与論を喚起して下さい。

在京岩手人  救援運動   一丸となって

在京十ヶの岩手県人団体では三日の母県沿岸を襲った天災地変の為住むに家なく惨苦を一時にうけ地獄にも超ゆる瀕死の状態にある県民同胞婦女子の災厄救護一人は一人をの標語の下に全日本罹災者救援の運動を起すことになった。右同情金品の発送荷受人は岩手県知事、九戸下閉伊上閉伊気仙各郡下各町村長、着駅は盛岡一関両駅、期間は五月三日まで詳細は東京市丸の内三のニ、三菱二十一号舘一階金子計理士事務所内在京岩手県人団体連合会

土淵青年団帰る

岩手郡厨川村字土淵 年団員五十余は伊藤 治氏に引率され今度の津波で一村全滅の厄にあった下閉伊郡田老村に於て道路の片付けバラックの建設等に労力奉仕していたが一段落したので十一日釜石に帰町十三日帰盛の途につく。

釜石無料診療

釜石町医師会では鉱山病院で協議会開催した結果三月一杯罹災者に対し各病院共無料診療することとなった。

鮑代表寄附申出

(東電)満州国代表鮑観澄氏は十一日外務省に内田外相を訪問し三陸地方震災に対するフ儀執政の深厚なる同情を伝え二万元を義捐金として寄附方申出た。

被害現在調べ  ゆうべ八時半発表

十一日午後六時現在の被害調べは同夜八時半発表された。
 流失二千九百六十一戸 全壊六百五十一戸 半壊四百四十戸 焼失二百十六戸 浸水床上二千七十三戸 床下二百四戸 死者千五百二十九名 負傷者七百三十七名 行方不明一千〇四十五名

警察電話大体復旧

県警察部の今警察電話係技手は人夫数名同行災害突発と同時に釜石から北上沿岸各罹災地の電話復旧工事に活躍したが十一日大体の工事を終え帰県したが工事は工兵隊の応援に俟つ処多かったと

各地の救援

×
金ヶ崎町では去る三日の三陸地方罹災者に対し慰問品を発送すべく各種団体で募集方を奔走中の処衣類白米日用品等が役場に届けられたので九日午前中にトラックにて罹災地に輸送して配布した。
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見前村津志田青年団にては十日午後六時から同村津志田分校に於て演芸大会を催しその純益金を以て雑記帳百冊を震災慰問として本社に依頼した。

涙の挿話数々  田老 災害線を行く(B)

 田老村でいちばん悪かったことは強震襲来と同時に村内の電燈が一時停電したが間もなく又ベカッと元通り電燈がついたことだった。停電で海嘯襲来の予感を感じた人達もちょっと安心したのか不可なかった。それに村は平地なので海の潮が引いたかどうかを見るためには余程の距離を歩いて浜辺に出なければならなかった。屈強の若者が犠牲となって海に浚われたのもこの潮見に行った侭、轟然と押寄せて来た海嘯に呑まれてしまったのが多いそうだ。
  ○
役場の助役野与惣治氏は家族八人のうち孫の愛子(一三)さん一人だけ残されあとはみんな悲しい■へ去ってしまった。役場吏員中井清一(二五)君の家では清一君が五ツになる甥を背負って逃げ出したのみで七人の家族は行方不明となってしまった。清一くんは以来役場へ逃げたときのドテラ姿で事務を執っている。足袋は十一文の白足袋をはいている。これは慰問品に貰ったのなそうでガフガフだが寝巻姿に白足袋で丹羽社会局長官が見えたときにはこの姿で気をつけをして迎えたそうだ。夜遅くまで事務を執っていると甥君が唯一人の身内の清一くんを慕って役場に泣いて来るのにはみんな泣かされている。
  ○
 小学校の児童は約百二十人が海に浚われてしまった。暗の中で「先生!先生!」と呼んで受持の教員に助けを求めた児童もあった。それを助けようと思って己が助かる身を犠牲に捧げた先生が二人ある。花輪村出身の元田光雄(二八)田老村赤沼ナツ(二〇)両先生だ。吉田中先生も身体十数ヶ所に打撲を負い重症に陥って居る。木村校長は学校に起臥して居るので災に遭わなかった。
  ○
山田町釜谷ヶ洞米商上野三吾(三〇)君は海嘯の夜田老村のさる旅舘に泊っていたが海嘯と同時に起きた火事に宿屋の二階から飛降りて両手両足をモギ取られるの重傷を負った宮古病院にかつぎ込まれている。
  ○
 折角浪打際岩蔭に打ち揚げられ乍ら酷寒零下十余度の寒さに凍死を遂げたものがあり「凍えて死にます」と遺書してあった。
  ○
六十余歳の老婆が電柱にしがみついて助かった。電柱は物凄い勢いで倒れたが老婆は必死の力で電柱に抱きついていた。水が引いた時■も口も■でいっぱいだったが電柱を伝わって山ノ手の方へ逃げた。
  ○
 旧社会民衆党村上慶助君は二三年前に買った純血アラブ種馬を海辺近くに繋いであったので危険をおかして海辺に降りて行った。切り見えなくなってしまったアラブ馬は六千円の優良馬だった。
  ○
若き母が二人の愛児を両手にかき抱いて波間に押し流されたが力尽きて右腕の方の女の子を捨て左の方の男の子だけは助けたいともがいたがその子を抱いた侭溺死を遂げた。捨てられた女の子は却って浜辺に打ち揚げられて助けられた皮肉な運命である。
  ○
 学校近くの砂の中で地震災翌日の四日朝、生後百日位いの男の子が丈夫で息づいているのを発見した。ホンとに奇蹟のようだ又藁布団の上に赤ん坊が安らかに眠って砂の上に打揚げられて居た。獰猛な海嘯の悪魔も無心の赤ん坊を海底へ持去るには忍びなかったのだろう。
  ○
田老村の南に続く崎山村秀島の漁師某は此の夜一時半頃沖に漁に出かけた。夜明けてから田老浜辺に差かかると村はガランとして荒原のようになってるので初めて夜半沖で大波が押寄せて来たのが地震の為だったことが判り呆然とした
  ○
 崎山村役場農会荒谷健治君の話に依ると村人達は朝になっても海嘯のことは知らなかったいつもの様に薪、炭を売りに宮古、鍬ヶ崎へ出て行って初めて海嘯を知り隣村田老の惨害を耳にし急いで炭薪を置いて村へ戻って行った。その頃には此の災害ニュースは既に世界を一周して居たに違いない。
  ○
も一つ挿話、宮古町でも地震後海嘯が来るとて、提灯をつけてドンドン山ノ手へ逃げ出したが篠田町の建設詰所藤田治郎君が逃げる途中ドシンと恐ろしく大きなモノを落して宮古街道へ走り去ったトラックがあった。藤田君が近づいて見るとソレは箪笥だった。気の早い自動車屋サンが家財道具を取纏めて盛岡方面へ逃げ去る途次の落しモノだった。(松本生)
(写真は田老村で岩かげに衣類を乾す村人)

三陸海嘯義 捐金(十一日本社扱)

十円和賀郡二子村宿百万遍講一同衣類一包市内大通高橋勇 五十銭横須賀田口末蔵 ■■十二ヶ鍋三ヶ市内紺屋町丸正商店 一円衣類一包三重県四日市町皇道本部四日市支部 五円十三銭岩手県師範学校生徒一同 五円市内日影門小田島旅舘支店女中一同 一円足袋五足無名氏 衣類一包市内谷小路一方井ひさ 五円同仁王小路内村さよ 四円十銭岩手郡藪川郵便局小倉寅太郎小倉悟工藤吉郎千葉正千葉重次郎 十一円七十銭紫波郡不動村女子青年団一同 衣類一包ツマゴ岩手郡田頭村小学校生徒一同五百円東磐井郡摺沢町佐藤良平
 小計 金五百四十三円四十三銭
 累計 金二千六百二円八十九銭

県扱い(十一日)

五円岩手県種鶏場員一同 一〇、〇〇〇円東京市 一円五十銭山形村日野沢女子青年団団長千葉泉 十一円六十銭鬼柳小学校職員児童五円藤根村後藤青年団長池田忠幸三十円上閉伊郡■曽部村民有志 七円八沢村新沼小学校職員児童 十円二子小学校児童 六円八一銭小山田小学校職員児童 八円五四銭茂市小学校職員児童 十六円八二銭一方井小学校職員児童 十二円二六銭門間村田代小学校職員児童 十二円五二銭葛巻村小屋瀬小学校職員児童 四円三十銭同小屋瀬青年訓練所職員生徒 二円御堂村久保女子青年団 八円五十銭久保小学校職員児童 六円四十銭晴山村観音林小学校職員児童 六円一五銭小鳥谷村平糠小学校職員児童 五円十七銭谷内村倉沢小学校職員児童 七円(立花村役場扱黒岩青年会)二三円六十銭同一般村民 三円立花村役学吏員一同 三〇〇円新潟県(罹災消防組員と指定)財団法人新潟県消防義会長留岡幸男 三五円四七銭埼玉県羽生町青年団軍人分会女子青年団 十円福岡県山田まさ 一二五円東京成■学園代表浅野孝之 五十円神奈川県湘南岩手県人会根子末吉 一円東京市菅沼清 十円宇都宮野砲第二十連隊金子諭吉 二十円千葉県佐久間守 一二七円二十銭乙部村外四団体 二円山形県小松とめ 十円新潟県立柏崎商業学校 卅円東京市長崎公同会 五七円一五銭紫波郡赤沢村 七円九九銭九戸郡戸田小学職員児童 一円五四銭同戸田青年訓練生一同 三五円五十銭九戸郡戸田消防組在郷軍人会男女青年団 一九円四二銭奈良県三輪土木公営所上之郷事務所監督員並人夫一同 五円静岡県田中村消防組大仁部々長石垣英太郎 五円東京市下谷区谷中初音町代表豊島金松梶沼紀良笹森英隆柳川正明 十六円五七銭東京やまと新聞社 三円八二銭長野県岩村田高等女学校四年白井ふみ外三十九名 五円四三銭小岩井小学校児童 一六〇円刈屋村(役場扱) 四円東京町会々長こうけつ長太郎 六円三九銭中内村浮田小学校職員児童 一円札幌市坂下忠光 一円新潟県渡辺幸三郎 十七円五十銭群馬県甘楽基督教会 八十円東京瓦斯供給従業員組合組合長田中義六 二七円東京市小石川郵便局高田分室傭人共同組合代表青島■吉 十六円前橋市同志会倉田真吉外三名 十円福島県太田勝雲 三七円五十銭盛岡海産物商業組合代表畑中米吉 八円二八銭岩手県庁知事官房秘書係 五円八十銭盛岡むつみ幼稚園職員園児 一一九円六七銭岩手県渋民村(一般村民) 二九円三銭(同)同 二十円六一銭花巻土木管区員 一六六円二八銭岩手県庁土木課員 十円滝沢村大釜自警団長勝田仁太郎 一〇〇円岩手県立盛岡高等女学校同窓会長菅野義之助 一〇〇円盛岡高等女学校職員一同 三円清明会紫波郡支部 一円四三銭滝沢村鵜飼小学校児童 二六円三銭岩手郡太田小学校職員児童 一〇〇円世田米村泉田嘉右エ門 七二円四五銭西磐井郡厳美村(役場扱)四十円東磐井郡長島 五円宮城県登米郡登米町(町役場扱)公立登米病院看護婦一同二三円九二銭土淵村青年団 二十円土淵村軍人分会 三八円七八銭松尾小学校職員一同 十円松尾鉱山女子青年団 一五円東京市諏訪町真宗説教所藤本義教 一五円群馬県内田耕作 三円八十銭■川村八円七十一銭相川小学校同農業補習学校職員生徒 十円七十銭朝鮮大邱歩兵第八十連隊幹部候補生一同 八三円一関町(役場扱) 二十円平舘青年団 十円平舘花巻軍人分会 八円六十銭一関町(警察署扱)五〇〇円東京魚市場組合 一五〇円大阪市奥羽会代表甘糟勇雄五一円五五銭■沢村(役場扱) 二円新潟県千手盛岡在籍者 一円大阪市一店員 一円埼玉県松本広一二円二十銭二戸郡荒沢青年訓練所職員所生一同 三円五十銭気仙郡猪川小学校職員一同 五円六十二銭西山村西根小学校職員児童 五円五銭与田村天狗田小学校職員児童 六円十銭八幡村八幡小学校職員児童 八円三七銭鰻沢内村猿橋小学校職員児童 二十円九十二銭湯口村(村役場扱) 二 五十銭青森県鰺ヶ沢町神セツ 一〇〇円長野市大日本法令出版株式会社一一五円五十銭岩手郡太田村(役場扱) 一〇〇円滋賀県犬上婦人会長 八〇〇円新潟県株式会社北越新聞社五円三十三銭広島県大日本仏教救済世軍尾道支部長住吉春山 十二円五十一銭衣川村衣里小学校職員児童 十九円若柳村農業補習尋常高等小学校職員児童 七円湯田村越中畑小学校職員児童十円六十七 銭沢内村小舟小学校職員児童 四円七十銭山根村戸鎖小学校職員児童 七六円五銭巻堀村(第二回) 二円二銭田部村田野小学校職員 一円四二銭同校生徒十五円巻堀小学校職員一同 四円巻堀女子青年団 三六円四十銭前沢実科高女小学校職員生徒 三十円六九銭湯田村川尻小学校職員児童 三六円四六銭久慈■学校職員 二一一円八銭岩手県教育会江刺郡部会長鈴木与三治(郡部会内分)
 日計 一万四千八百九十七円四十三銭
 累計 九万五千二百七十円四十八銭
福岡支局扱い 十三円二十五銭一戸町ボルケイノ映画部 累計五十円二十五銭