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被災にめげず再起を 大船渡の金さん 傷心の友に家贈る

妻子四人と店員一人を一瞬にして
失い、ただた一人とり残された大
船渡市の一被害者に友人から家が
贈られることになり、悪夢を忘れ
て復興に立ち上がった。家を贈ら
れる人は大船渡町茶屋司オートバ
イ販売業熊谷源仁さん(四六)で、贈
り主は被害をまぬがれた同市盛町
宇ノ沢ハイヤー業金■さん(二二)。
三千トン岸壁の近くにあった熊谷さ
んの家は二十四日朝の津波で全壊
二階に避難させていた妻初枝さん
(三二)に、子どもの綾乃さん(一四)昌
二君(一一)睦子さん(一〇)の三人と店
員一人が家もろとも流されてしま
った。家がくずれる時の衝撃で家
の外へほうり出された熊谷さんは
二百メートルほど離れた家の屋根にはい
上がり、左手指に軽いケガをした
だけでただ一人助かった。この四
月には店舗を改造するなどつぎの
事業への希望と家族五人の平穏な
家庭は一瞬のうちにふっとんでし
まった。熊谷さんは現在近くの姉
の家に寄宿して生気をとり戻して
いるが、愛妻と目に入れても痛く
ない子どもたち三人を一度に失
ったショックは大きく「苦しかっ
ただろうに…」と当時を思い起こ
しては男の目に涙をにじませてい
る。
 こうした悲惨にあった熊谷さん
 と金さんの仲は親類以上のつき
 合いで、■底から信じ合う大の
 仲良し。友だちを救うのはこの
 時と家を贈ることを心に決め
 た。金さんは災害後の忙しい商
 売の間をみては、なれぬ手つき
 で金ヅチをふるった。金さん宅
 の裏手にはトタンぶきの平屋二
 十五平方メートルの家が二十八日でき
 あがり、あとは被災地の熊谷さ
 ん宅跡に運ぶだけになっている
 が、金さんは「あり合わせの材
 料で家といわれるほどのもので
 はないバラックだが、熊谷さん
 の一日も早い立ちなおりに少し
 でも役立てば」とけんそん。一
 方、熊谷さんもこの友情にただ
 感激「金さんの好意に報いるた
 めにも、りっぱに立ちなおらね
 ば」と決意のほどを語っている