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津波被災者は訴えている

チリ沖地震津波災害復旧のため、県は三十日臨時県議会を召集し、災害救助法発動の追加
更正予算と公共事業の応急対策を決める。二十六日夜小川副知事らが中央に陳情のため上
京した。死者行くえ不明六
十二人、被災世帯やく七千
総被害百億円を越す昭和八
年の三陸津波に次ぐ大災害
だ。被災者や被災地で復旧
指導している町村関係者は、国や県になにを訴え、どんな対策を望んでいるだろうか。現
地のナマの声を録音した。[写真は山田町織笠小学校の教室で不自由な生活を続ける被災者達]

“緊急”のサイレンを きれいな水で顔を洗いたい

大船渡市
死者四十五人を出した大船渡町の
中心街は全滅の被害を受けたが、
体ひとつで放り出された被災者の
一ばん欲しいもの、すぐやっても
らいたいことは—。対策本部長の
鈴木市長は「二十六日から現地で
被災者の座談会を開き、それを吸
い上げて対策を講ずるが、とりあ
えず十七平方メートル(五坪)程度のバ
ラック百戸を建てて被災者に与え
たい」といっているが、被災者一
人一人は—。

生業資金を早く 原形復旧でなく“改良”を

宮古市
対策本部長菊池良三市長は「宮古
市の被害は明治二十九年を上まわ
り、そのうえノリ、カキがここ数
年は不作だったので、生業と生産
資金のほか、住宅対策にも積極的
な応援がほしい。道路の復旧は二
級国道のほか宮古—釜石間に産業
道路をつくり、商業振興と災害時
の輸送確保に役立つようにねがい
たい」と語り、宮古漁業組合長山崎
権三氏は「こんどの津波は湾の奥
ほど大きい被害を受けた。とくに
ノリ、カキなどと浅海無動力船や
定置網などの被害が大きい。被災
者は漁民が多いのですぐ生業資金
の援助をたのみたい。こんどの復
旧は単なる原形復旧でなく、昭和
八年のように改良復旧でやってほ
しいと語った。

釜石市 内陸部に苗の補給頼む

災害対策本部副本部長千葉茂助役
 釜石しの場合は二十六日いっぱ
 いで毛布やゴザなどが確保出
 来、生活必需品も確保できた。
 また食品類も現地調達出来た。
 ■住居、方岸の防波堤を補修し
 一刻も早く三十ヘクタールの田植えをし
 なければならない。遠野、宮寺
 花巻に苗の補充方を依頼してい
 る。いま困っているのは市内の
 中、小企業者の立ち上がり資金
 の融資で、金融機関が融資条件
 を緩和、貸し付けてくれねば困
 るので、この点をとくに関係機
 関に要望したい。また漁民たち
 の救済対策として低利融資など
 も必要で、こうした政治的配慮
 を一刻も早くやってほしい。

うわべの復旧はご免 希望を与える施策て

山田町
町の三分ノ一が被災して総額十五
億円の被害を出したが、陸上自衛
隊員六十二人の活動で、二十五日
夕刻不通だった同町織笠地内の二
級国道が開通した。復旧資材の輸
送が南北から自由になり、二十六
日から自衛隊員も二百四十人に増
員されて急ピッチな復旧が期待さ
れ、浸水のためポンプが故障して
いた同町の上水道も二、三日中に
は復旧し、休校中の小・中学校も
二十七日から授業を再開するので
町はようやく明るさをとりもどし
ている。しかし、山田町はスルメ
の不漁などが続いたあとの津波で
決定的な打撃となり、農業五億、
水産三億、工業一億のほか、町の
心臓部だった商店街も二億一千万
円の被害を受けるなど、山田町に
とってこんどの津波は致命傷とな
った。佐藤町長はひとまず災害の
全ぼうを報告するため二十六日出
県したが「こんどの対策は単なる
災害復旧でなく、とことんまでう
ちひしがれた町民に明るい希望を
もたせるような施策を考えてもら
いたい」と語った。

川水引くのを見て通報 “警報”の前に避難

宮古市消防署 白鳥さんに感謝の声
宮古沿岸は
明治二十九
年、昭和八
年を上回る
被害を出し
ながら、行
くえ不明一人を出しただけですん
だ。最初に津波を発見した市消防
署員白鳥定男さん(二一)=写真=の
適切な措置のためで、市民の感謝
と称賛の的になっている。
白鳥さんは津波襲来の二十四日未
明に消防署の望楼で火災の発生を
監視していたところ、午前三時四
十五分ごろ閉伊川川口の水が激し
く引き、係留中の漁船が川底に横
倒しになったのをみて「津波の
襲来」を直感した。
 直ちに菊池市長と一条市消防署
 長に報告、指示を仰いで、避難
 サイレンをならすと同時に市内
 各消防分団員へ避難誘導するよ
 う通報した。サイレンに驚ろい
 た市民はすぐに高台に避難、約
 一時間後に気象だから津波警報
 が発令になったとき市民の避難
 はすでに終わっていた。
市民は「白鳥さんの適切な措置が
なかったら死傷者がたくさん出た
だろう」ち語り合っている。

県高教組も募金運動決める

県高教組
は二十五
日、盛岡
市加賀野新小路県高校会館で緊急
執行委員会を開き、津波被害の救
援協力について協議した。津波の
被害を受けた久慈、宮古、釜石、
気仙の四支部に対して被害状況の
報告を求めるとともに、同本部か
ら現地に調査団を派遣、被害調査
を行なう。
 また県内高校教職員千八百人と
 高校生約三万人に呼びかけて、
 被害者に義援金品を贈る運動を
 進めるほか、全国各高教組に実
 情を訴え、協力を呼びかけ、さ
 らに六月五日富山県で開かれる
 日高教組全国大会にも救援対策
 を進めるよう提案する。

人海戦術で作業 自衛隊、機械は使えず

大船渡の民間救援隊は大船渡、盛
などの救援隊と合わせて五千人に
上り、廃墟と取りくみ、力と汗の
戦いを見せている。陸上自衛隊の
救援は岩手駐とん部隊、宮城県船
岡駐とん隊三百二十九人がダイヤ
フラムポンプ、給水セットなど各
種車両五十八台をフルに動かして
いる。隊は五個中隊で、一個中隊
が陸前高田へ、また一隊は管理中
隊として連絡や資材の管理に当た
り、大船渡には三個中隊が直接作
業に活躍している。朝八時から夕
方六時まで奉仕しており、市民の
感謝の的となっている。雑然とし
た流木などの整理で近代工法には
およそ縁遠い人海作戦の作業に終
始し、作業は予想外に手間取って
いる。二十六日には東京から予防
衛生中隊三十五人と青森から第九
衛生中隊三十人が出動し災害後の
防疫活動に当たっている。
 一方地元大船渡市、気仙郡三陸
 村の消防団員は自衛隊と並んで
 大きな労力源となっている。こ
 の日千四百人が佐々木団長、水
 野本部長の指揮に従って整然と
 して作業を行なった。作業は交
 通網の開設と死体の収容に主力
 を注いでいるが、二十五日には
 流木で途絶していた二級国道仙
 台—八戸線地ノ森—須崎間四キロ
 にわたってやっと車が通れるほ
 ど復旧した。また盛高校男女生
 徒約三百人が二十四日に引き続
 き奉仕作業を買って出ている。

国有林の払い下げを 住宅五十戸、急造したい

大槌町
災害対策本部長今崎節町長の話
 被害総額は十億円にのぼり、予
 想以上の被害だ。被災者は日赤
 などから救援の毛布、シャツな
 どを贈られたが、まだまだ足り
 ない。被災者をいつまでも学校
 などに収容しているわけにいか
 ない。五十戸ほどの住宅を早急
 に建て民政を安定したい。また
 町民の住宅建築のため国有林払
 い下げをお願いしたい。水田に
 冠水したり、カキダナや漁具を
 流失した農漁家もかなりあり、
 こうした町民の再生産のための
 補助や長期定理の事業資金融資
 を早急に望む。

零細漁民忘れるな

久慈市
津波対策本部■■文雄助役 切実
 に感じるのは被災者は零細漁民
 なだけに、動力船や漁具を失
 い漁期を目前に控えて生計にも
 響くことだ。煮干しなど小規模
 な加工場を個人で持っている沿
 岸では釜を失ってコウナゴな
 どせっかくとったものも腐らせ
 てしまう結果になる。零細漁民
 へも金融の道を開いて欲しいが
 現在の復興融資の形ではこれも
 困難なので、補助を考えてほし
 い。王ノ脇港などの被害もかな
 り大きいが、こうした問題にく
 らべると第二次的なことになろ
 う。何よりも零細漁民への救援
 対策だ。

天災法の適用を こんご住宅は高台に

陸前高田市
助役熊谷喜一郎氏の話 公共施設
 がかなり被害を受けたので、天
 災法を適用し工事を早急するよ
 う県災害対策本部を通じて要請
 した。被害者の生活安定のため
 建網、漁船など生産面の復旧資
 金もどしどし融資してもらいた
 い。国鉄関係の被害も大きく、
 現在の状態ではマヒ状態同然な
 ので、十日以内に復旧するよう
 要望している。被災者に対して
 はとりあえず部落ごとに炊き出
 しを行なって支給し、寝具も県
 や日赤などをはじめ片倉製紙女
 子寮から百人分の寝具を借りた
 ので心配ない。被害地域はほと
 んど井戸なので飲料水に困って
 いるが、水道の末端からビニー
 ル管をひいて飲料水を確保して
 いる。
 水田約三百ヘクタールが耕作不能となっ
 たが、ほとんどが堤防の決壊で
 海水が入り塩害によるものだ。
 早急に堅固な堤防をつくり、真
 水を流して早く植えられるよう
 耕地の確保につとめる。家をな
 くした被災者には資金融資で建
 てられるよう関係方面に強く働
 きかけるが、こんど家を建てる
 時は津波対策としても高台が望
 ましい。

冠水田の復旧へ さしあたり資金が欲しい

野田村
 大沢幸蔵助役 まだ被害集計が
 完了していないので実情調査が
 先決だが、水産と耕地関係の被
 害が大きいのでその復旧が目あ
 てだ。財政困難だけに単独工事
 はむずかしいので補助などの形
 で有利な措置を講じて欲しい。
 被災者や生活困窮家庭にとりあ
 えず食糧、衣類などを贈り、近
 所でもいろいろ世話している。
 植えつけのすんだ水田の復旧な
 ども急がねばならない。
野田漁協組の話 魚市場事務所、
 倉庫などが完全にやられ、早急
 に再建しなければならない。さ
 し当たり資金面で困っている
 ので補助なり融資なりを大幅に
 考えてほしい。幸い漁民個々の
 被害が軽かったので、この辺で
 は助かったと思う。

苗不足に塩害に悩む 農業地帯にも大打撃

津波の被害は沿岸農業地帯にも打
撃を与え、苗不足と塩害で農民は
うちひしがれている。
◇陸前高田市の長砂町から脇ノ沢
一帯は同士の穀倉地帯だが田植え
するばかりのなわしろ九ヘクタールが波に
洗われ市は農家の浮沈にかかわる
と隣接町村に苗の提供を呼びかけ
ている。同地内の埋没流失水田面
積は二百九十二ヘクタールで、同市の水田
六百ヘクタールの約半分を占めているが、
津波の漂流物や泥で埋まり、作付
け不能の状態となっている。市の
対策本部は復旧がすみしだい海水
塩分を緩和して田植えする緊急対
策をたてたが、かんじんのなわし
ろが全滅したので苗の供給を呼び
かけている。
 ◇釜石、大槌地方の海岸一帯の
 水田約六十ヘクタールがつないで冠水した
 ほかなわしろ約千五百平方メートルが
 泥水に埋まった。一番こわい塩
 分の先例を受けて大槌地区の人
 は平年作から五割近い減収は必
 至とみている。鵜住居農業改良
 普及所は水田に水を流しっぱな
 しにして塩分を緩和するほかな
 わいろにはカル、ウスプルンな
 どの水銀剤を散布するよう指導
 している。冠水のひどかったの
 は鵜住居川の堤防と防潮堤が決
 壊したため鵜住居、方岸地区約
 三十五ヘクタール、それに大槌、小槌両
 河川流域の一部二十五ヘクタール。また
 大槌町下野地区の八ヘクタールは田植え
 が終わったばかりだったが、冠
 水による塩害で苗はすっかり赤
 く枯れている。冠水した水田に
 は、土砂や漂流物が残り、手も
 つけられない状態なので、この
 整理にはかなり日数を要するも
 のとみられている。

本県に8600万円 災害救助交付金

厚生省は二十五日津波被害の多い
北海道、青森、岩手、宮城、三重
五道県の災害救助法にもとづく災
害救助費の国庫負担分概算交付額
を決めた。二十六日大蔵省と協議
一両日中に関係県に概算交付する
同省の概算内容と五道県の災害救
助費貸与見込み額は■億九千三百
四十五万円にのぼる。それに対す
る国庫負担額一億一千百五十八万
六千円になり、このうち北海道関
係が少ないので、交付しないで四
県にだけ概算交付する。関係分救
助費と国費負担額次のとおり。
 岩手 八千六百万円、六千二百
 三十五万六千円。